【課題を解決するための手段】
【0012】
切除を伴わないざ瘡の処置および予防のための方法およびシステムが、提供される。例示的な実施形態において、焦点を合わせた、焦点をもたない、または焦点をはずした超音波エネルギーが、ざ瘡を処置するために関心のある領域に加えられる。例示的な方法およびシステムは、治療だけの使用、治療およびモニタリングの使用、画像化および治療の使用、または治療、画像化、およびモニタリングの使用によるなどの様々な方法における、毛包脂腺単位構造、特に、皮脂腺およびそれらの内容物の標的化処置のために構成されている。皮脂腺の標的化治療は、様々な空間的および時間的なエネルギー設定における焦点をもたない、焦点を合わせた、または焦点をはずした超音波エネルギーの使用によって提供され得る。
【0013】
例示的な方法およびシステムは、焦点をもたない、または焦点をはずした超音波エネルギーを関心のある領域に加えることによって患者の皮膚の表面の約1ミクロンから10ミリメートル下で関心のある領域を加熱するように構成されている。したがって、本発明は、皮膚の表面(または表面のすぐ下)に、および特定の深さで熱を加える。1つの例示的な実施形態において、超音波エネルギーが、最初の画像化または同時の画像化を伴うことなく、広範な範囲にわたって既知の深さで加えられる。
【0014】
例示的な実施形態において、加熱は、患者の皮膚の表面の約1ミクロンから5ミリメートル下に生じ、そして、この深さにおいて、患者の通常の体温よりも約1℃〜25℃の範囲で温度を上昇させる。ざ瘡を処置するための、関心のある領域における一定の物理的効果をもたらす。例示的な実施形態において、温度増加は、患者の通常の体温よりも1℃〜15℃高い。したがって、加熱は、皮脂腺の深さと、皮脂腺から離れた皮膚の表面とにおいて生じる。したがって、関心のある領域における特定の深さにおける温度は、約35℃〜49℃の間で上昇させられる。代替の例示的な実施形態において、関心のある領域の中の温度が、約35℃〜約60℃の範囲の間で上昇させられ得る。しかし、他の温度範囲が、使用され得、そして、本発明の範囲に該当する。
【0015】
例示的な実施形態において、充分なエネルギーが、組織の熱容量の下にとどまるように超音波システムから放出される。したがって、組織の切除または凝固は生じない。特定の例示的な実施形態において、温度増加は、劇的であり得るが、エネルギーが、短い期間の間、加えられるだけである場合には、全体的に、エネルギーを加えることは、組織の切除または凝固を起こさないように充分に低い。他の実施形態において、温度増加は、小さくなり得るが、切除または凝固が生じることなく、皮脂腺に適切に影響を与えるために、より長い期間にわたって加えられる。本質的に、時間で平均した電力または投与熱量は、切除または凝固が生じるレベルよりも下に留まる。
【0016】
これらの深さで関心のある領域を加熱することが、ざ瘡を処置する1つ以上の生理学的効果をもたらす。例示的な実施形態において、加熱は、関心のある領域における血液灌流の増加をもたらす。さらに、加熱は、関心のある領域の中のタンパク質が変性させられるレベルに温度を上昇させる。
【0017】
さらに、熱は、ざ瘡に寄与するバクテリア細胞のプログラム細胞死または細胞消滅を開始させ得る。プログラム細胞死は、細胞が、細胞の死をもたらす一定の化学物質を生成する自然のプロセスである。ざ瘡が横行する関心のある領域に熱を加えることが、バクテリア細胞(例えば、アクネ桿菌)にそれらの化学物質を生成させ、そして、さらにざ瘡を減少させる、バクテリア細胞のプログラム細胞死を開始させ得る。最後に、エネルギーを加えることが、関心のある領域において熱を加えることによって、および関心のある領域のおける様々な物理的効果によって皮脂の生成を減少させ得る。
【0018】
例示的な実施形態において、処置が、ざ瘡が生じることを予防するために使用される。例示的な実施形態において、処置は、皮脂腺の活性を抑制するために使用され、それにより、皮膚の孔のサイズと数とを減少させ、皮膚の脂性を減少させ、そして、望ましい美容効果を達成する。
【0019】
例示的な実施形態において、例示的なシステムは、超音波システムを備え、該超音波システムは、上記のように、関心のある領域を加熱するために、患者の皮膚の下の、特定の深さまたは標的化された深さにおいて、集中されたレベルにおける超音波エネルギーを関心のある領域に放出する。例示的な超音波システムは、制御システムと、プローブと、ディスプレイまたはインジケータシステムとを備えている。プローブは、様々なプローブおよび/またはトランスデューサ構成を備え得る。例示的な実施形態において、プローブは、画像化機能を行うことなく、焦点をもたない超音波エネルギーを関心のある領域に送達する。他の例示的な実施形態において、プローブは、強く焦点を合わせた、または弱く焦点を合わせた超音波エネルギーを送達する。さらに別の例示的な実施形態において、画像化は、処置の間に完遂され得る。さらに別の例示的な実施形態において、プローブは、組み合わされたデュアルモードの画像化/治療トランスデューサ、結合されたまたは共に収容された画像化/治療トランスデューサ、または単なる治療プローブもしくは画像化プローブとして構成され得る。
【0020】
制御システムおよび表示システムはまた、プローブおよびシステムの機能性を制御するために様々な構成を備え得、例えば、ソフトウェアおよび複数の入力/出力デバイスを有するマイクロプロセッサ、トランスデューサの電子的および/もしくは機械的な走査および/もしくは多重化を制御するためのシステム、電力送達のためのシステム、モニタリングのためのシステム、プローブおよび/もしくはトランスデューサの空間的な位置を感知するためのシステム、ならびにユーザ入力を処理し、そして、処置結果を記録するためのシステムなどを含む。
【0021】
例示的な実施形態において、ゲル、クリーム、液体、エマルジョン、薬品、または他の化合物のうちの少なくとも1つを含む結合剤が、プローブを患者の体に音響的に結合するために使用され得る。例示的な実施形態において、結合剤は、プローブからのエネルギーの放出の間に、患者の体に送達される薬および他の薬物を含む。この例示的な実施形態において、薬剤の中の薬物と薬とは、ざ瘡などの疾患を処置するために皮膚の処置および修復に向けられる。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
ざ瘡を処置するための方法であって、
毛包脂腺単位構造を含む範囲を標的に超音波エネルギーを向けること
を包含し、
該超音波エネルギーは、患者の皮膚の下の特定の深さにおいて、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の温度を上昇させ、
該超音波エネルギーは、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中で組織の切除または凝固をもたらすことなく、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織に効果をもたらすために充分であり、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の該上昇させられた温度は、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中のざ瘡を処置する生理学的効果をもたらす、方法。
(項目2)
上記生理学的効果は、血液灌流の増加、タンパク質の変性、プログラム細胞死、皮脂およびそれの生成の減少、およびざ瘡に寄与する有機物にとって生息に適さない環境の創出である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記有機体は、バクテリアである、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の皮脂腺およびそれらの内容物は、上記血液灌流の増加、上記タンパク質の変性、上記プログラム細胞死、上記皮脂およびそれの生成の減少、および上記ざ瘡に寄与する有機物にとって生息に適さない環境の創出によって特に影響を受ける、項目3に記載の方法。
(項目5)
上記特定の深さは、約1ミクロンから10ミリメートルの範囲内である、項目4に記載の方法。
(項目6)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の温度は、35℃〜49℃まで上昇させられる、項目1に記載の方法。
(項目7)
ざ瘡を処置するための方法であって、
焦点をもたない超音波エネルギーを放出するトランスデューサプローブを提供することと、
毛包脂腺単位構造を含む範囲を標的に超音波エネルギーを向けることと
を包含し、
該超音波エネルギーは、約1ミクロンから10ミリメートルの深さにおいて、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の温度を上昇させ、
該超音波エネルギーは、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織の切除または凝固をもたらすことなく、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織に効果をもたらすために充分であり、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の該上昇させられた温度は、
血液灌流の増加と、
タンパク質の変性と、
皮脂の生成の抑制と、
プログラム細胞死と
をもたらす、方法。
(項目8)
上記温度は、50℃以上に上昇させられ、そして、そのレベルにおいて、5秒よりも長い間、維持される、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記温度は、上げられたり下げられたりし、パルス化されたプロフィールを作り出す、項目7に記載の方法。
(項目10)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の皮脂腺およびそれらの内容物が、影響を受けるが、破壊されない、項目7に記載の方法。
(項目11)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲を標的に上記超音波エネルギーを向けるステップの前に、該毛包脂腺単位構造を含む範囲に薬剤を適用するステップをさらに包含する、項目7に記載の方法。
(項目12)
切除を伴わないざ瘡の処置のための超音波処置システムであって、
該超音波処置システムの制御を容易にするための制御システムと、
炎症した皮脂腺を含む範囲を標的とした、焦点を合わせていない超音波エネルギーの送達のために構成されたプローブであって、該プローブは、該皮脂腺およびそれらの内容物に影響を与えるが、該皮脂腺を破壊しない、プローブと
を備えている、超音波処置システム。
(項目13)
上記プローブに取り付けられた使い捨て先端をさらに備えている、項目13に記載の超音波処置システム。
(項目14)
ざ瘡を処置し、そして、患者に薬物を送達するための方法であって、
毛包脂腺単位構造を含む範囲に薬剤を適用することと、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲を標的に超音波エネルギーを向けることと
を包含し、
該超音波エネルギーは、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の温度を1〜15℃だけ上昇させ、
該標的に向けられた超音波エネルギーは、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織の切除または凝固をもたらすことなく、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織に影響を与えるために充分であり、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の該上昇させられた温度は、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中のざ瘡を処置する生理学的効果をもたらし、
該上昇させられた温度は、該毛包脂腺単位構造を含む範囲に対する該薬剤の中の薬物の送達を容易にする、方法。
(項目15)
上記薬剤は、上記超音波エネルギーを放出するプローブを患者の皮膚に結合する、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記薬剤は、皮膚の処置のために使用される薬を含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
上記生理学的効果は、上記毛包脂腺単位構造を含む範囲における血液灌流の増加である、項目14に記載の方法。
(項目18)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲の中のタンパク質の変性である第2の生理学的効果をさら包含する、項目17に記載の方法。
(項目19)
上記毛包脂腺単位構造を含む範囲の中でざ瘡に寄与する有機物にとって生息に適さない環境の創出である第3の生理学的効果をさらに包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
プログラム細胞死である第4の生理学的効果をさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
皮脂およびそれの生成の抑制である第5の生理学的効果をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目22)
ざ瘡を処置するための方法であって、
超音波エネルギーを放出するプローブを提供することと、
毛包脂腺単位構造を含む範囲に該プローブを結合することと、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲を標的に該プローブからの該超音波エネルギーを向けることと
を包含し、
該超音波エネルギーが、特定の深さにおいて、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の細胞に一定の物理的効果を有し、
該超音波エネルギーは、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織の切除または凝固をもたらすことなく、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の組織に効果をもたらすために充分であり、
該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中の該物理的効果は、該毛包脂腺単位構造を含む範囲の中のざ瘡を処置する生理学的効果をもたらす、方法。
(項目23)
上記物理的効果は、キャビテーションを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
上記物理的効果は、皮脂腺を含む細胞に関する細胞の壁における剪断応力を含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
上記物理的効果は、ストリーミングを含む、項目22に記載の方法。