特許第6072761号(P6072761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072761内燃機関の排気ガス系統に接続された排ガス制御ユニットへと熱エネルギを供給するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072761
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気ガス系統に接続された排ガス制御ユニットへと熱エネルギを供給するための方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20170123BHJP
   F01N 3/027 20060101ALI20170123BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20170123BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20170123BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F01N3/025
   F01N3/025 201F
   F01N3/025 201G
   F01N3/025 201S
   F01N3/027 A
   F01N3/033 A
   F01N3/28 301G
   F01N3/035 E
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-501560(P2014-501560)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-514490(P2014-514490A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012055296
(87)【国際公開番号】WO2012130789
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】102011001596.5
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513244258
【氏名又は名称】ハーヨットエス エミシオン テクノロジー ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】バイアー, ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マウラー, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】シュレーヴェ, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ノアック, フランク
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202009005251(DE,U1)
【文献】 特開2008−202529(JP,A)
【文献】 特開2006−316728(JP,A)
【文献】 特開2006−274838(JP,A)
【文献】 特開2006−266221(JP,A)
【文献】 特開2010−196603(JP,A)
【文献】 特開2004−176571(JP,A)
【文献】 特開平08−312331(JP,A)
【文献】 特開2004−124855(JP,A)
【文献】 特開2007−162578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス系統に接続された排ガス制御ユニット(2)へと流れる排気ガスを設定(SET)温度へと加熱することによって、排ガス制御ユニット(2)へと熱エネルギを供給する方法であって、
前記排気ガスの流れへと量り取られる炭化水素(HC)を、前記排気ガスの流れの方向に直列接続された2つの酸化触媒コンバータ(7、10)において変換することによって、前記内燃機関から排出される排気ガスを前記設定(SET)温度へと加熱し、
前記2つの酸化触媒コンバータのうち、前記排気ガスの流れの方向において前記内燃機関に近い方の第1の酸化触媒コンバータ(10)が副系統(4)に配置されており、排気ガス系統において前記第1の酸化触媒コンバータの下流に接続される第2の酸化触媒コンバータ(7)が、主系統(3)と副系統(4)との合流の後に配置されているもので、
排ガス制御ユニット(2)へと流れる排気ガスの実際(ACTUAL)の温度および前記設定(SET)温度の関数として第1の酸化触媒コンバータ(10)の上流において副系統(4)へと炭化水素を供給するためのHCの量り取りが設定され、および/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れが設定され
−さらに、副系統(4)へと炭素水素を供給するためのHCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れが、前記内燃機関から排出される全排気ガスの流れの関数として設定され、
−排気ガスの流れおよび達成すべき温度上昇を考慮し、現在の状況に対応する、パイロット制御ダイアグラムから得られるパイロット制御値を用いて、HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定が実行され、または、現在の状況に対応するパイロット制御値がパイロット制御ダイアグラムにないならば、現在の状況に対応するパイロット制御値に近い値を用いて、HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定が実行され、
−排ガス制御ユニット(2)へと流れる排気ガスの実際(ACTUAL)の温度繰り返し測定され
−前記実際(ACTUAL)の温度と前記設定(SET)温度との間の相違が検出されたならば、HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定、前記設定(SET)温度に達するように変更され、温度監視の工程が、前記設定(SET)温度に達するまで必要な頻度で繰り返されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度監視の繰り返しの工程を、排ガス制御ユニット(2)の特定のプロセスの完了または前記プロセスの打ち切りまで継続的に繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の酸化触媒コンバータ(10)へと流れる排気ガスの流れを、前記第1の酸化触媒コンバータ(10)へと流れる前に、第1の酸化触媒コンバータ(10)の点火温度以上の温度へと電熱によって加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内燃機関から排出される排気ガスの流れを、少なくとも部分的に副系統(4)を通して導くことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定前に、前記内燃機関から排出される排気ガスの流れのすべてを、前記副系統を通して導くことと、HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定前に、前記副系統における前記排気ガスの流れを、所定のエネルギ量によって加熱し、次いで前記加熱によって達成される温度上昇を測定し、次いで用いたエネルギ量および達成された温度上昇の関数として、前記内燃機関から排出された排気ガスの流れを決定することとを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定前に、前記内燃機関から排出される排気ガスの流れを、一部の排気ガスの流れにて前記副系統を通して導くことと、HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定前に、前記副系統における流れを、所定のエネルギ量によって加熱し、次いで前記加熱によって達成される温度上昇を測定し、次いで用いたエネルギ量および達成された温度上昇の関数として、前記一部の排気ガスの流れを決定し、したがって前記内燃機関から排出された排気ガスの流れを決定することとを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
内燃機関から排出された排気ガスの流れを決定する際に、前記副系統を通して導かれる排気ガスの流れを、電熱によって加熱することを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定を変更する際に、第2の酸化触媒コンバータ(7)が点火温度に達したときに炭化水素を第2の酸化触媒コンバータ(7)へと供給する目的でHCの量り取りを増やす趣旨で、前記HCの量り取りおよび副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定を変更することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の酸化触媒コンバータ(10)の点火温度が、第2の酸化触媒コンバータ(7)の点火温度よりも低いことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定を変更する際に、前記HCの量り取りおよび副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定を、第2の酸化触媒コンバータ(7)へと供給される炭化水素が第2の酸化触媒コンバータに気相にて到達するように設定することを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
HCの量り取りおよび/または副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れの設定を変更する際に、第1の酸化触媒コンバータ(10)の実際(ACTUAL)の温度を、所定の最高温度に達したか否かを判断するために監視することと、前記最高温度への到達が検出されるときに、副系統(4)を通過して流れる排気ガスの流れを増加させ、さらには/あるいは前記HCの量り取りを減らすこととを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
HCの量り取りおよび副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れを設定するときに、排気ガスに含まれる酸素を考慮に入れることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れを制御するために、2つの系統(3、4)の少なくとも一方において自由な流れを許す断面積を前記系統に配置された排気ガスフラップ(8)によって変更することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
排ガス制御ユニット(2)へと流れる排気ガスが前記設定(SET)温度に到達した後に、排ガス制御ユニット(2)へと流れる排気ガスが前記設定(SET)温度に到達したときのHCの量り取りおよび副系統(4)を通って流れる排気ガスの流れに関する設定を、実際(ACTUAL)の温度および排気ガスの流れに関する新たなパイロット制御変数として前記パイロット制御ダイアグラムに保存することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
排ガス制御ユニット(2)は、粒子フィルタ(2)であり、前記方法は、粒子フィルタ(2)の再生プロセスの実行が適正である場合に、前記再生プロセスを開始させるために実行されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(とくにディーゼルエンジン)の排気ガス系統に接続された排ガス制御ユニットへと、この排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスを設定(SET)温度に加熱することによって熱エネルギを供給するための方法であって、内燃機関から排出される排気ガスが、排気ガスの流れの方向に直列に接続された2つの酸化触媒コンバータにおいて、排気ガス中へと量り取られた炭化水素(HC)を変換することによって設定(SET)温度へと加熱され、前記2つの酸化触媒コンバータのうち、排気ガスの流れの方向において内燃機関に近い方の第1の酸化触媒コンバータが副系統に配置され、このコンバータの下流に位置する第2の酸化触媒コンバータが、主系統および副系統の合流後の排気ガス系統に配置されている方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、とくに最近のディーゼルエンジンは、有害または望ましくない排出物を減らすために、排気ガス系統に接続された抑制ユニットを備えている。そのような抑制ユニットは、例えば、酸化触媒コンバータ、粒子フィルタ、および/またはSCR段であってよい。粒子フィルタは、内燃機関が排出するすす粒子を集めるために用いられる。排気ガス中に含まれるすすが、粒子フィルタの上流側の表面に蓄積する。継続的なすすの蓄積の進行において排気ガスの背圧が過度に高まることを防止し、さらには/あるいはフィルタの詰まりの恐れを避けるために、粒子フィルタのすすの量が充分な水準に達したときに、再生プロセスが開始される。そのような再生プロセスにおいて、フィルタに蓄積したすすが焼き払われる(酸化させられる)。そのようなすすの酸化の完了後に、粒子フィルタが再生される。不燃性の灰残渣だけが残る。すすの酸化が生じるためには、すすが特定の温度になければならない。一般に、この温度は、約600℃である。そのようなすすの酸化が始まる温度を、例えば酸化温度が添加剤またはNOの供給によって下げられている場合、より低くすることができる。すすが酸化温度よりも低い温度にある場合、再生を能動的に開始させることができるよう、再生プロセスを生じさせるために熱エネルギを供給しなければならない。能動的な再生を、エンジンの内部の手段を使用し、排気ガスがより高い温度で排出されるように燃焼プロセスを変更することによって、開始させることができる。しかしながら、とくに交通以外の分野における多数の用途においては、能動的な再生を生じさせるために、エンジンよりも後ろの手段が好ましい。多くの場合に、排気ガス中排出物の抑制の文脈において、エンジンにもとづく手段を操作することは不可能である。
【0003】
独国実用新案第202009005251(U1)号明細書から、粒子フィルタの再生を能動的に生じさせる目的で、排気ガス系統が主排気ガス系統および副排気ガス系統に分けられている排ガス制御ユニットが知られている。触媒バーナが、副系統に接続され、副系統を通って流れる一部の排気ガスの流れを加熱し、次いで主系統を通って流れる一部の排気ガスの流れに合流させ、したがってこのやり方で、混合後の排気ガスの質量流は、明らかにより高い温度になる。この排気ガスの流れの温度の上昇が、粒子フィルタの上流側に蓄積したすすを再生プロセスを開始させるべく充分な温度まで加熱する目的に使用される。副系統に配置され、上流側の炭化水素の注入を有している酸化触媒コンバータが、触媒バーナとして使用される。副系統を通って流れる排気ガスの質量流を制御するために、主系統の自由な流れを可能にする断面積を、排気ガスフラップによって設定することができる。副系統に接続された酸化触媒コンバータを点火温度(すなわち、所望の発熱HC変換が触媒表面において生じ始める温度)へと加熱する目的で、電熱加熱素子が、このコンバータの上流に接続されている。この加熱素子が、この酸化触媒コンバータを点火温度へと加熱しなければならない場合に作動させられる。この文献は、副系統に接続された触媒バーナに過度に供給することで、炭化水素を流れの方向において粒子フィルタのすぐ上流に位置する第2の酸化触媒コンバータへと供給でき、したがってこれらの炭化水素が、この第2の酸化触媒コンバータの触媒表面において同じ発熱反応で反応することができる旨も記載している。このやり方で、このすでに知られた排出物抑制設備において、排気ガスの2段階での加熱を実行することができる。結果として、第2の酸化触媒コンバータから流れ出る排気ガスは、すすが酸化されるよう、粒子フィルタの上流側に蓄積したすすを充分に加熱するために必要な温度にある。
【0004】
同様に、例えば酸化触媒コンバータまたはSCR段などの他の排ガス制御ユニットの温度を、より迅速に動作温度へともたらすために、高めることが望まれる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の先行技術にもとづき、本発明の目的は、とくに内燃機関(例えば、車両のディーゼルエンジン)の動的な運転の最中に、短い時間で、排気ガスの質量流の変化といった排気ガス系統における状況の変化によって少なくとも殆ど影響されることなく、粒子フィルタを再生するために再生プロセスを狙いどおりのやり方で開始させることができる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的が、本発明によれば、請求項1の冒頭部分の特徴を有する方法であって、
−内燃機関から排出される全体としての排気ガスの流れの質量ならびに排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスの実際(ACTUAL)の温度および設定(SET)温度の関数として、排気ガスの流れおよび達成すべき温度上昇を考慮に入れるパイロット制御ダイアグラムから取得され、現在の状態に一致し、あるいは現在の状態に接近するパイロット制御変数によって、第1の酸化触媒コンバータの上流において副系統へと炭化水素を供給するためのHCの量り取りおよび/または副系統を通って流れる排気ガスの質量流が設定され、
−排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスの実際(ACTUAL)の温度が繰り返し測定され、
−実際(ACTUAL)の温度と設定(SET)温度との間の相違が指摘される場合に、HCの量り取りおよび/または副系統を通って流れる排気ガスの質量流の設定が、設定(SET)温度に達するように変更され、温度監視の工程が、設定(SET)温度に達するまで必要な頻度で繰り返される
方法によって達成される。
【0007】
この方法においては、排気ガス系統を通って流れる排気ガスの質量に関し、排ガス制御ユニット(すなわち、例えば粒子フィルタ)の上流の排気ガスの温度に関する排気ガス系統の現在の状態が、考慮に入れられる。ここで、排ガス制御ユニットは、ほぼ排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスの流れの温度にあると仮定される。第1の工程において、内燃機関から排出される排気ガスの質量流が決定される。さらに、上述の実際(ACTUAL)の温度が決定される。これらのデータは、設定(SET)温度(すなわち、排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスのあるべき温度)を考慮に入れて熱エネルギの供給を制御するために必要である。粒子フィルタの場合には、設定(SET)温度が、フィルタの再生プロセスを開始させるという目的のために存在しなければならない温度と考えられる。排ガス制御ユニットへと流れる排気ガスの流れを、このユニットの上流側において可能な限り短い時間で設定(SET)温度へともたらすために、排気ガスの流れを加熱するための加熱プロセスを左右するパラメータ(第1の酸化触媒コンバータにおけるHCの量り取り、および副系統の前記コンバータへと導かれる排気ガスの質量流)について、この趣旨で保存済みのパイロット制御ダイアグラムから取得されるパイロット制御変数を使用して、第1の設定が実行される。保存されたパイロット制御変数のダイアグラムから、現在の値(総計の排気ガスの質量流および達成すべき温度上昇)に対応する変数が選択され、そのようなパイロット制御変数が保存されていない場合には、それに近いパイロット制御変数が選択される。パイロット制御変数が制御ダイアグラムに存在しない場合には、それらのパイロット制御変数の周囲の入手可能なパイロット制御変数の間で補間が実行される。必要とされるパイロット制御変数が制御ダイアグラムの外側である場合、外挿が可能であり、あるいは制御ダイアグラムに保存された最も最近の制御パラメータを使用することができる。補間または外挿によって得られた制御パラメータの場合には、後者が触媒バーナの動作のための動作パラメータを設定するために使用される。そのようなパイロット制御ダイアグラムの使用は、温度上昇を決定するパラメータの狙いどおりの設定を可能にし、結果として設定(SET)値への到達に要する時間を短縮できるだけでなく、このプロセスをリソースを節約するやり方で実行することも可能である。最後に、そのような方策の使用は、過度の加熱を防止し、したがって過度の燃料の消費(HCの消費)を防止する。
【0008】
実際(ACTUAL)の温度が、第2の酸化触媒コンバータに対する出口側において繰り返し測定される。この温度が、排ガス制御ユニットへと流れるときの排気ガスの流れの温度である。このやり方で、生じる温度上昇を制御することができる。この観測の文脈において、実際(ACTUAL)の温度と設定(SET)温度との間に相違が検出される場合、炭化水素の量り取りおよび/または副系統を通って流れる排気ガスの質量流を、相応に変化させることができる。パイロット制御設定では所望の温度上昇が依然として生み出されておらず、したがって所望の設定(SET)温度に未だ達していない場合、さらなる加熱を達成するために、例えば量り取られるHCを増やすことが可能である。他方で、実際(ACTUAL)の温度が設定(SET)温度よりも明らかに高い場合には、量り取られるHCを減らすことができる。
【0009】
プリセットの下流の実際(ACTUAL)の温度を繰り返し測定することによって、パイロット制御ダイアグラムに保存されたパイロット制御変数の制御以上のことを行なうことができる。実際、これらの方策によって、変化、とくに排気ガス系統を通って流れる排気ガスの質量流、またはパイロット制御変数の決定の基礎として用いられる条件の変化が、例えば内燃機関の動的な運転によって、速やかに考慮に入れられる。これは、運転状態の変化の結果として排気ガスの質量流が増え、この点において冷却効果を有する場合に、低温状態での内燃機関の動的な運転にとくに当てはまる。そのような場合、量り取られるHCが相応に増やされると考えられる。
【0010】
実際(ACTUAL)の温度を観測または測定し、この温度を設定(SET)温度と比較する工程(この実施形態の文脈において、温度監視と称される)は、設定(SET)温度に達するまで、必要に応じた頻度で繰り返されるか、あるいは継続的に実行される。しかしながら、監視が、設定(SET)温度が維持され続けていることを確認しつつ、特定の時間にわたって行なわれる設計を使用することが好ましい。排ガス制御ユニットとしての粒子フィルタにおいては、温度監視が、典型的には、再生プロセスの継続時間の全体にわたって実行され、再生プロセスが意図されるとおりに行なわれていることを保証する。
【0011】
この方法において、2段階の加熱が、酸化触媒コンバータを異ならしめる設計が可能になるがゆえに好都合である。したがって、副系統に配置される酸化触媒コンバータが、主系統に位置する酸化触媒コンバータより顕著に小さいサイズを有することができる。したがって、副系統に配置される触媒バーナが、主系統に配置される典型的にはより大きいバーナを、点火温度へと加熱されるように加熱するために使用される。また、好ましい実施形態の例のように、副系統に配置される酸化触媒コンバータが、このコンバータの下流に接続される第2の酸化触媒コンバータよりも多くの貴金属を含むことも可能である。これは、コストの利点をもたらす。
【0012】
パイロット制御設定によって達成される温度上昇の下流の制御は、典型的には、このプロセスの進行の最中に設定がリセットされた場合に、それらの新しい設定パラメータを新たなパイロット制御変数として保存し、あるいはパイロット制御ダイアグラムに当初から存在するパイロット制御変数を置き換えるパイロット制御変数として保存するために使用される。したがって、このような手順は、システムに起因する変化(例えば、酸化触媒コンバータの経年劣化によって引き起こされる変化など)の自動的な補償をもたらす自己学習である。同時に、これは、最初は少数のパイロット制御変数しか有していないパイロット制御ダイアグラムに、内燃機関の運転の継続時間を通じてきわめて多数のパイロット制御変数を適用し、あるいは制御ダイアグラムに含まれるパイロット制御変数を修正する可能性をもたらす。
【0013】
エンジン管理部とのインターフェイスが存在し、あるいは生成可能である場合には、内燃機関から排出される全体としての排気ガスの質量流を、「負荷(load)」および「回転数(rpm)」の関数によって決定または提供することができる。負荷を、例えば吸入される空気の量から決定することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、全体としての排気ガスの質量流を、この流れを所定のエネルギ量で加熱し、次いでこのエネルギ量にて達成された温度上昇を測定することで、決定することも可能である。排気ガスの質量流へと導入されるエネルギ量が、それによって達成できる温度上昇に比例する。したがって、供給されるエネルギ量と、それによって達成される温度上昇とが既知であるならば、排気ガスの質量流を簡単なやり方で計算することができる。そのような計算において、例えば流れの特定の部分における冷却などの補正パラメータが、温度上昇の測定において考慮に入れられることを理解すべきである。また、内燃機関から排出される排気ガスの流れを、一部の排気ガスの流れにて副系統を通して導いても良い。そして、この副系統における流れを、所定のエネルギ量によって加熱し、次いでこの加熱によって達成される温度上昇を測定し、次いで用いたエネルギ量および達成された温度上昇の関数として、前記一部の排気ガスの流れを決定し、したがって前記内燃機関から排出された排気ガスの流れを決定するようにしても良い。このような設計は、後付けの技術的解決策にとくに適しており、もしくはエンジン管理部とのインターフェイスが存在せず、あるいは生成不可能である用途の場合にとくに適している。
【0014】
副系統に配置された酸化触媒コンバータが未だ点火温度に達していないときにすでに本方法を実行できるよう、実施形態の一例によれば、熱電加熱素子が酸化触媒コンバータの上流に配置される。この加熱素子が、副系統を通って流れる排気ガスの流れを予熱するために使用され、この流れによって、加熱素子の下流の酸化触媒コンバータが加熱される。酸化触媒コンバータを予熱する目的のために、加熱を、熱電による一定の熱出力および可変の排気ガスの質量流にて実行することができ、あるいは一定の排気ガスの質量流において可変の熱出力を使用して実行することもできる。
【0015】
上述の所定のエネルギ量を加えたときの温度上昇の評価による総質量流の決定を、酸化触媒コンバータおよび対応する炭化水素の量り取りと、電気加熱素子との両方を使用して実行することができる。これらの目的のために、熱電加熱素子を使用することが好ましい。なぜならば、総質量流の決定を、酸化触媒コンバータがすでに点火温度以上であるか否かにかかわらずに実行できるからである。さらに、そのような加熱素子においては、加えられるエネルギ量をより精密に決定することが可能である。なぜならば、排気ガスの流れの加熱に影響を有する因子が、この目的に副系統に配置された触媒バーナを使用する場合と比べて、より少ないからである。
【0016】
適切な制御装置によって、副系統を通って導かれる排気ガスの質量流が設定される。ここで、例えば主系統に配置された排気ガスフラップを使用することが可能である。また、排気ガスフラップに代えて、設定可能な絞り、弁、なども使用できることを、理解すべきである。そのような装置を、副系統または2つの系統に配置することも可能である。
【0017】
この方法は、典型的には、排気ガスの流れが自動的な粒子フィルタの再生に必要な温度に未だ達していない場合に使用され、したがってとくに低い排気ガス温度(例えば、エンジンの始動後、アイドリング時、または低負荷の場合の排気ガスの温度)にある場合に使用される。
【0018】
本方法の好ましい実施形態によれば、副系統に配置された酸化触媒コンバータが、主系統に配置された第2の酸化触媒コンバータよりも低い点火温度を有する。これは、とくに例えば排ガス制御ユニットの上流に位置する第2の酸化触媒コンバータに、そのサイズに鑑みて、とくに大量の触媒を持たせる必要なく、本方法をより低い温度においてすでに使用することができるという利点を有する。当然ながら、上述の第2の酸化触媒コンバータが、すでに設定(SET)温度へともたらすべき排ガス制御ユニットであってよい。これは、相当なコストの利点を伴う。酸化触媒コンバータについて、低い点火温度を得るためには、酸化触媒コンバータが、相応に多くの量の貴金属を有さなければならない。本方法のこの実施形態においては、この条件が、構造的なサイズが比較的小さい副系統に配置された酸化触媒コンバータだけに当てはまる。さらに、構造的なサイズが比較的小さいという第1の酸化触媒コンバータの設計は、加熱すべき質量がより小さいがゆえに、このコンバータをより迅速に点火温度へともたらすことができるという結果ももたらす。
【0019】
第2の酸化触媒コンバータへの供給のためのHCの量り取りは、好ましくは、第1の酸化触媒コンバータへと炭化水素を供給するためのHCの量り取りによって行なわれる。ここでは、特定の量のHCだけが第1の酸化触媒コンバータにおいて変換可能であるという状況が利用される。すなわち、過剰な量り取り(いわゆる、「過度の供給」)の場合に、第1の酸化触媒コンバータを出る未変換の炭化水素を、第2の酸化触媒コンバータへと燃料として供給することができる。典型的には、そのような過度の供給は、第2の酸化触媒コンバータが点火温度に達している場合に限って生じる。これは、例えば短い隔たりで第2の酸化触媒コンバータの上流に接続された温度センサによって観測可能である。第2の酸化触媒コンバータに炭化水素を供給するためのHCの量り取りおよび排気ガスの質量流の調節を、触媒表面において所望の反応を自発的に開始させるために、気相の炭化水素がこの第2のコンバータへと供給されるようなやり方で実行することが好ましい。さらに、これは、第2の酸化触媒コンバータへと供給される炭化水素について、第2の酸化触媒コンバータの反応表面における均等な分布を促進する。
【0020】
第1の酸化触媒コンバータの上流の加熱素子は、有利には、副系統において量り取られた炭化水素がこの素子上で気化することを可能にするためにも使用され、そのようなやり方で、第1の酸化触媒コンバータにも炭化水素が気相で供給される。結果として、これが、反応速度を加速させるだけでなく、酸化触媒コンバータの表面への炭化水素の一様な分布を促進するためにも使用される。加えて、供給された炭化水素の酸化触媒コンバータとの接触に先立つそのような広い分布の場合に、そのようでない場合に許容せざるをえない液体の滴が触媒表面にぶつかる場合の熱損失が、防止される。したがって、酸化触媒コンバータの効率の程度が、それによって顕著に改善され。そのような実施形態において、HCの量り取りが加熱素子の正面で生じると好都合である。第1の酸化触媒コンバータが充分に加熱される場合には、いずれにせよ酸化触媒コンバータにおいて自発的な気化が生じるため、加熱素子をオフにすることができる。そのような設計においては、加熱素子を、とくに副系統を通って流れる排気ガスの質量流などとは無関係に出力を変更できるようなやり方で動作させることが好都合である。エンジンの下流での炭化水素の注入は、エンジン内の手段を用いた炭化水素の供給と比べて、効率がより高いだけでなく、炭化水素による油の希釈も防止する。
【0021】
上述の方法を実施するために、内燃機関から排出される排気ガスの流れの少なくとも一部を、第1の酸化触媒コンバータの動作の開始に先立って、この流れを加熱する目的で、副系統を通って導くことが好都合である。また、副系統に含まれる酸化触媒コンバータの動作段階の終了後に、内燃機関から排出される排気ガスを、すすぎの目的で副系統を通って導くことも好都合である。これの目的は、一方では、酸化触媒コンバータの温度と比べて比較的低温の排気ガスをこの酸化触媒コンバータを通って流すことによって酸化触媒コンバータを冷却し、酸化触媒コンバータが過熱しないようにすることである。さらに、いくつかの状況下では、副系統内に依然として含まれうる炭化水素を、副系統から取り除くことができる。上述の二次的なすすぎは、好ましくは、第1の酸化触媒コンバータの触媒動作の直後に実行される。結果として、酸化触媒コンバータが依然として充分に温かく、したがって副系統に含まれる炭化水素がこのコンバータにおいて反応し、したがって炭化水素として出て行くことがない。このやり方で、生じうる炭化水素のスリップ(slip)が防止される。
【0022】
本発明のさらなる利点および実施形態が、添付の図面を参照して、以下の実施例の説明からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】排ガス制御ユニットの概略図を示している。
図2】NRTC試験の実行時の排ガス制御ユニットの種々の位置における温度の挙動を表わす図を示している。
図3】WHTC試験の実行時の排ガス制御ユニットの種々の位置における温度の挙動を表わす図を示している。
図4図2および図3に示した試験の結果を要約する概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
排ガス制御ユニット1が、車両のディーゼルエンジンの下流に接続されている。ディーゼルエンジンそのものは、図1には示されていない。
【0025】
排ガス制御ユニットとして、排ガス制御設備1は、とりわけ粒子フィルタ2を備えている。粒子フィルタ2の上流において、排ガス制御設備1の排気ガス系統が、主系統3および副系統4へと分割されている。主系統3が、文字どおりの排気ガス系統の部分である一方で、副系統4は、バイパスとして設計されている。図示の実施形態の例では、自由な流れを可能にする断面積が、主系統3および副系統4において同じである。副系統4において自由な流れを可能にする断面積が、主系統3よりも小さく、あるいは他方では主系統3よりも大きい設計を用いることも、同様に可能である。排気ガス系統は、参照番号5で示された位置において主系統3および副系統4へと分かれている。位置6において、副系統4が再び主系統3へと流れている。粒子フィルタ2が、位置6の下流に配置されている。酸化触媒コンバータ7が、この粒子フィルタのすぐ上流に接続されている。
【0026】
図示の実施形態の例では、副系統4を通って流れる排気ガスの質量流の調節の目的で、主系統3に接続された排気ガスフラップ8が使用される。触媒バーナ9が、副系統4に接続されている。触媒バーナ9は、酸化触媒コンバータ10と、排気ガスの流れの方向においてこのコンバータの上流に接続され、炭化水素を副系統4へと量り取る目的のHCポート11とを備えている。図示の実施形態の例では、電気加熱素子12が、酸化触媒コンバータ10の上流において、このコンバータのハウジングに接続されている。簡潔にするために、加熱素子12の電気的な接続は、図示されておらず、エンジンのディーゼル燃料の供給源へのHCポート11の接続も、図示されていない。
【0027】
図示の実施形態の例の排ガス制御設備1は、4つの温度センサ13、13.1、13.2、13.3を有している。温度センサ13は、分岐5の前に配置されている。温度センサ13.1は、酸化触媒コンバータ10の出口温度を測定するために使用される。温度センサ13.2は、酸化触媒コンバータ7に対して入り口側に配置され、温度センサ13.3が、このコンバータに対して出口側に配置される。例えば温度センサ13および/または13.2など、一部の温度センサを、温度モデルの使用によって置き換えることもできる。
【0028】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガスの流れの方向において、排気ガスフラップ8を作動させることによって、副系統4を通って流れる排気ガスの質量流、すなわちディーゼルエンジンに最も近い第1の酸化触媒コンバータ10へと案内される流れを、調節することが可能である。触媒バーナ9の動作の最中に加熱された排気ガスが、主系統3を通って流れる排気ガスと混合され、したがって2つの系統3、4の合流後かつ酸化触媒コンバータ7よりも前において、酸化触媒コンバータ7へと流れる排気ガスの流れが、部分的な排気ガスの流れのそれぞれの部分に対応する混合後温度を有する。触媒バーナ10が、酸化触媒コンバータ7を加熱し、点火温度またはより高い温度にするために使用される。
【0029】
ディーゼルエンジンの下流の副系統4に配置された酸化触媒コンバータ10は、第2の酸化触媒コンバータ7と比べて、大幅に小さい設置サイズを有している。さらに、2つの酸化触媒コンバータ7、10の触媒の量は、異なっている。例えば、白金が酸化触媒コンバータ7として使用される場合、酸化触媒コンバータ10は、より大量の貴金属を有する。したがって、酸化触媒コンバータ10の点火温度は、酸化触媒コンバータ10の下流に接続された第2の酸化触媒コンバータ7の点火温度よりも低い。図示の実施形態の例の場合には、酸化触媒コンバータ10の中身が、この触媒が約200℃の点火温度を有するように設定される。酸化触媒コンバータ7の中身は、より少ない。点火温度は、図示の実施形態の例では、約250℃である。所望であれば、この温度がより高くてもよい。
【0030】
酸化触媒コンバータ7は、排気ガスの流れを加熱するために自身が必要とする炭化水素を、HCポート11を介し、とくに酸化触媒コンバータ10によって変換できる量よりも多くの量のHCを量り取ることによって受け取る。結果として、酸化触媒コンバータ10において変換されなかった炭化水素が、所望の発熱効果を伴って酸化触媒コンバータ7において変換される。
【0031】
排ガス制御設備1のセンサおよびアクチュエータは、これ以上詳しくは示さない制御ユニットへと接続されている。この制御ユニットによって、センサ(ここでは、とりわけ温度センサ13、13.1、13.2、13.3)を読み取ることができ、アクチュエータ(ここでは、HCポート11、加熱素子12、および排気ガスフラップ8)を動作させることもできる。制御ユニットは、ディーゼルエンジンが排出する排気ガスの質量流、この質量流に含まれる酸素の含有量、および粒子フィルタ2の再生が生じる設定(SET)温度に対する質量流の温度の関数として、排ガス制御設備1の上述のアクチュエータの設定が保存されたパイロット制御へのアクセスを有する。
【0032】
排ガス制御設備1の上述の実装の結果として、粒子フィルタ2を再生温度へと加熱するための2段階の触媒バーナが形成され、このような2段階の触媒バーナによれば、低温の排気ガスでさえも、ディーゼルエンジンの動的な運転の最中を含む短時間で、再生プロセスを生じさせるための所望の温度へと加熱することができる。ここで、副系統4に含まれる触媒バーナが、排気ガスフラップ8が接続された並列の主系統3と協働して、加熱モジュールを形成している。粒子フィルタの再生の目的のための排出される排気ガスの加熱は、以下のプロセス段階によって生じる。
【0033】
低い排気ガスの温度、すなわちすすの酸化が自発的には生じない温度において、粒子フィルタ2の再生を実行すべき場合、排ガス制御設備1のアクチュエータ8、11、12が、現時点において排出されている排気ガスの質量流およびその温度の関数として、排気ガスの流れへと追加の熱を供給するという目的に合わせて設定される。そのようなパイロット制御変数をとることによって、短い時間で、粒子フィルタ2に対して上流側の排気ガスの温度を設定(SET)温度に到達させることが可能になる。図示の実施形態の例では、排ガス制御設備1が、排気ガスの流れに含まれる酸素含有量を測定することができるラムダプローブ14をさらに備える。この含有量も、とるべきパイロット制御変数のための条件としてパイロット制御ダイアグラムに保存される。
【0034】
その後に、パイロット制御ダイアグラムから得られるパイロット制御変数によって、アクチュエータ8、11、および12が設定される。図示の実施形態の例では、酸化触媒コンバータ10の上流に接続された加熱素子12が、酸化触媒コンバータ10を点火温度以上にすべく、酸化触媒コンバータ10へと流れる排気ガスの流れを予熱するだけでなく、HCポート11によって量り取られたHCの量を気化させるためにも使用される。したがって、加熱素子12に対する出口側において、排気ガスの質量流は、炭化水素を気相にて豊富に含んだ状態である。酸化触媒コンバータ10へと流れるときの排気ガスの流れにおいて、炭化水素のきわめて適切な均等分布を得るために、図に示されていない実施形態の例では、加熱素子12が導入される炭化水素の中央に露出される。さらに、加熱素子12は、加熱素子12のほとんど直前にHCポート11を配置することができるという利点を有する。結果として、排ガス制御設備1を、きわめてコンパクトな構成を有するように設計することができる。排気ガスフラップ8の位置に応じて、排気ガスの質量流の全体または一部だけが、設定に応じて、副系統4を通って流れる。
【0035】
図示の実施形態の例では、現時点においてディーゼルエンジンが排出している排気ガスの質量流が、エンジン管理部によって入手可能にされるデータ(ここでは、負荷および回転数)によって決定される。
【0036】
副系統4を通って流れる排気ガスの質量流を加熱することによって、第2の酸化触媒コンバータ7が加熱され、点火温度を上回る温度となる。この加熱は、温度センサ13.2または13.3によって制御される。ひとたび酸化触媒コンバータ7が点火温度に達すると、酸化触媒コンバータ10への過度の供給によって酸化触媒コンバータ7へと所望の発熱反応に必要な炭化水素を供給するために、量り取られるHCの量が増やされる。酸化触媒コンバータ7に対する出口側、したがって粒子フィルタ2に対する上流側における排気ガスの流れの温度が、温度センサ13.3によって決定される。実際(ACTUAL)−設定(SET)温度の比較により、行なわれた設定によって所望の温度上昇がもたらされたか否かが判断される。実際の(ACTUAL)温度と設定(SET)温度との間に乖離が存在する場合、HCの量り取りおよび/または副系統4を通過して流れる排気ガスの質量流に関する設定が、排気ガスフラップ8の適切な設定によって変更される。この酸化触媒コンバータ7に対する出口側における温度監視の結果として、パイロット制御ダイアグラムに保存されたパイロット制御変数が制御されるだけでなく、結果として、とりわけディーゼルエンジンの動作の変化もほぼ瞬時に検出され、設定(SET)温度を維持するという目的のためのHCの量り取りまたは副系統4に導かれる排気ガスの質量流の設定の対応する変更ゆえに、少なくとも可能な範囲で補償される。所望であれば、変更後の設定を、新規または随意による追加のパイロット制御変数としてパイロット制御ダイアグラムに保存し、将来の再生プロセスに利用することができる。
【0037】
粒子フィルタ2へと流れる排気ガスの流れが、すすの酸化温度(すなわち、約600〜610℃)を上回る温度である場合、所望の再生プロセスが始まる。図示の実施形態の例では、上述の温度監視が、再生プロセスを開始させるために使用されるだけでなく、再生プロセスの継続時間について、少なくとも必要なすす酸化温度を有する排気ガスが粒子フィルタ2へと流れることを保証するためにも使用される。ここで、フィルタ表面に蓄積したすすの量を事前に決定することによって、再生の継続時間を決定または推定することができる。この継続時間について、必要であれば、上述の温度監視が、排ガス制御設備1のそれぞれのアクチュエータを適切に調節しながら実行される。再生プロセスの完了後に、排気ガスフラップ8が、排気ガスの流れが主として主系統3を通って流れるような位置へともたらされる。
【0038】
図2が、ディーゼルエンジンを非交通過渡サイクル(NRTC)にもとづいて運転する試験の実行について、再生の観察記録を示している。これは、動的な試験である。図2の一番上の図に、全体としての排気ガスの質量流が示されている。ディーゼルエンジンの動的な運転が、関連の視認可能な変動において明らかになる。一番上の図には、副系統4を通って導かれる排気ガスの質量流の設定値も示されている。真ん中の図は、HCポート11を通って供給されるHCの量を示している。温度曲線が、一番下の図に示されている。
【0039】
この試験において、試験の開始時にディーゼルエンジンから排出される排気ガスの温度は、約100℃である(「排気ガス(exhaust gas)」と記された曲線)。この排気ガス温度において、粒子フィルタの再生を生じさせるべきである。第1の段階において、副系統4に配置された酸化触媒コンバータ10が、点火温度またはより高い温度にされる。この目的のため、一部の排気ガスの流れが副系統4へと通され、加熱素子12がこの流れへと曝露される。加熱素子12の温度曲線が、下方の図に示され、HEと記されている。この試験においては、加熱素子12を、明らかに酸化触媒コンバータ10が約200℃という点火温度を上回るまで加熱された後の時点tにおいてオフにした。次いで、HCポート11により、炭化水素を副系統4を通って流れる排気ガスの流れへと量り取った。供給された炭化水素の触媒変換が、温度曲線「DOC I後」の時点t(約120秒)における明確な温度上昇に明らかである。ひとたび酸化触媒コンバータ7が点火温度に達すると、この酸化触媒コンバータ7にも所望の変換を開始させるための炭化水素をもたらすために、HCの量り取りが時点tにおいて増やされる。HCポート11を介して供給されるこれらの炭化水素は、酸化触媒コンバータ10においては変換されず、気相にて酸化触媒コンバータ7へと適用される。酸化触媒コンバータ7への炭化水素の適用を、時点tの直後の温度曲線「DOC II後」の急激な上昇にて検出することができる。
【0040】
排ガス制御設備1のアクチュエータを動作させる目的でパイロット制御ダイアグラムから取得されたパイロット制御変数によって生み出される温度上昇が、酸化触媒コンバータ7に対する出口側(曲線「DOC II後」)において約600℃という設定(SET)温度に達するためには未だ充分でない場合、排ガス制御設備のアクチュエータの設定が変更され、これを温度曲線「DOC II後」のさらなる上昇に見て取ることができる。
【0041】
図2の一番下の図に記録された温度曲線「DOC I後」および「DOC II前(before DOC II)」の比較が、副系統4から導かれる一部の排気ガスの流れを主系統3を通って導かれる一部の排気ガスの流れと混ぜ合わせることによって達成される第2の酸化触媒コンバータ7へと流れる排気ガスの温度の一様な分布を明らかに示している。さらに、酸化触媒コンバータ7(DOC II)を動作させることによって達成される温度上昇が、曲線「DOC II後」に示されるとおり明らかになる。このように、この方法によれば、再生プロセスが実行されるか否かにかかわらず、とくに急激な温度変化を避ける目的で、第2の酸化触媒コンバータおよび粒子フィルタ2の温度を監視することが可能である。結果として、酸化触媒コンバータおよび粒子フィルタの使用可能寿命が、とくにセラミック基材で製作されている場合に、顕著に増加する。
【0042】
説明のために、この温度の図解において、酸化触媒コンバータ10の点火温度はTと記録され、酸化触媒コンバータ7の点火温度はTと記録されている。Tは、すすの酸化が生じ始める温度である。
【0043】
図3が、図2の試験の実施におおむね相当するさらなる試験の実施を示している。図3の試験の設定は、別のサイクルが実行されている点で図2の設定と異なる。図3によるサイクルは、世界統一過渡サイクル(WHTC)にもとづいて実行されている。
【0044】
2つの試験の実施は、ディーゼルエンジンの動的な運転の最中の大きな変動にもかかわらず、第2の酸化触媒コンバータ7に対する出口側で観測することができる排気ガス温度(曲線「DOC II後」には、わずかな変動しか生じないことを明確に示している。これは、上述の方法を使用して、より短い反応時間で動的な変動に反応できるだけでなく、そのような変動の場合およびきわめて低い排気ガス温度の場合でも、粒子フィルタ2の再生プロセスを目的どおりに生じさせることができることを、明確に示している。
【0045】
図4に、粒子フィルタ2において再生のためのすすの酸化を生じさせるための排気ガスの流れの加熱が、図2および図3による試験の結果の要約として図式的に示されている。温度データT、T、Tは、図2および図3の温度データT、T、Tに対応している。図4は、加熱素子12の使用ならびに副系統4に配置された酸化触媒コンバータ10(DOC I)のより小さな構造的サイズおよびより多い貴金属の量ゆえに、このコンバータが主系統3に配置された酸化触媒コンバータ7(DOC II)よりも迅速に加熱されることを、明らかに示している。
【0046】
副系統4に接続された酸化触媒コンバータ10が許容される最高温度を超えて加熱されることがないよう、このコンバータの温度の制御および監視が、上述の動作および調節のプロセスに優先する。このコンバータが過度に高温になりそうになると、HCの量り取りが減らされ、さらには/あるいは副系統4を通って導かれる排気ガスの質量流が増やされる。
【0047】
次いで、副系統4に接続された加熱素子12を、排気ガスフラップ8の動作の信頼性を検証するために使用することができる。これは、測定の継続時間について、ディーゼルエンジンの運転条件をできるかぎり変えないままにして行なわれる。ディーゼルエンジンから排出される排気ガスの質量を基礎として用い、加熱素子12を加熱するための特定のエネルギ量の追加によって、特定の温度上昇が期待される。観測される温度上昇が期待される温度上昇から大きく異なる場合、これは、排気ガスフラップ8が正しい位置になく、したがって必要とされる排気ガスの流れが副系統4を通過していないことを知らせている。
【0048】
上述の排ガス制御設備において、COも主系統に位置する酸化触媒コンバータ7において酸化され、結果としてCOの排出が少なくなる。したがって、動作温度を監視すべき排ガス制御ユニットとして、酸化触媒コンバータだけを、このコンバータの下流に粒子フィルタを接続することなく、使用することも可能であると理解される。
【0049】
副系統に接続された酸化触媒コンバータを動作温度にするために、内燃機関から排出される排気ガスが充分な温度にある場合には、排気ガスの流れの全体または一部を特定の継続時間にわたって副系統を通って導くことが可能である。これは、副系統に配置された酸化触媒コンバータを、このコンバータを動作温度へともたらすために、排気ガスの熱によって可能な程度にまで予熱する目的を果たす。この方策の場合に、排気ガスの流れの全体を、副系統を通って導くことができる。典型的には、そのような方策は、粒子フィルタの与えられた再生の上流で行なわれる。さらに、副系統に接続された加熱素子も、酸化触媒コンバータの予熱の目的に使用できると理解される。
【0050】
加えて、上述の方法は、個別に、または互いに組み合わせて使用することができる診断機能を含むことができる。この文脈において、例えば、本方法の実行前に、本方法をそもそも実施できるかどうかを判断する趣旨で、予備的な検証を行なうことができる。これは、何らかのエラーの存在に関して本方法の実行に関与する構成要素の機能性を検証することを含む。典型的には、これは、副系統に含まれる酸化触媒コンバータにおける温度の測定をさらに含む。例えば、温度が依然として点火温度よりも低い旨の測定が行なわれた場合、エラーメッセージを生成することができ、さらには/あるいはこの触媒コンバータが再び点火温度に達するまで炭化水素の注入を遅らせることができる。同じことが、とくに第1の酸化触媒コンバータへの過剰な供給が、第2の触媒コンバータが点火温度以上の温度に達した場合に限って許されるという趣旨で、第2の酸化触媒コンバータの動作にも相応に当てはまる。
【0051】
さらなる診断機能を、2つの酸化触媒コンバータの変換比率に関して使用することができる。酸化触媒コンバータの機能性の検証を、例えば所定の量の炭化水素を酸化触媒コンバータへと流れる排気ガスの質量流へと導入し、排気ガスの質量流が既知である場合にこの量から計算することができる温度上昇を実際に達成される温度上昇と比較することによって、行なうことができる。このやり方で、酸化触媒コンバータの予期せぬ経年劣化現象を検出することができる。他方で、系統および素材に起因する酸化触媒コンバータの経年劣化を、診断において考慮に入れることができる。
【0052】
さらに別の診断機能を、副系統を流れる排気ガスの流れを調節することができる設定要素を検証するために実施することができる。すでに上述した方法の他に、この設定要素を、排気ガスの質量流へと炭化水素を混ぜることなく実施することも可能である。次いで、主系統および副系統が異なる熱損失を有するという事情が利用される。これらの変数が既知であるため、それらの機能性を、制御要素(例えば、排気ガスフラップ8)の所定の設定について、温度センサ13および温度センサ13.2において測定される排気ガスの温度ならびにそこから決定される熱損失を比較することによって、検証することが可能である。排気ガスフラップが閉じられている場合には、排気ガスの質量流の全体が副系統を通って流れ、したがって排気ガスの質量流が既知であれば、温度センサ13.2において、温度センサ13において測定される温度から副系統の熱損失を控除したものに相当する温度を測定できると考えられる。同じことが、排気ガスフラップの他端位置、すなわち排気ガスフラップが開かれ、排気ガスの質量流の全体が主系統を通って流れる場合にも当てはまる。
【0053】
この熱エネルギ供給法は、有利には、HCのスリップが可能な限り小さく保たれ、あるいは完全に防止されるようなやり方で実行される。上述の診断方法が、この目標の達成に役立つ。さらに、供給されるHCの量を増やす必要が生じた場合に、これを量り取られるHCの量を急に増やすのではなく、斜面状の増加として設計することができる。
【0054】
本発明は、副系統の酸化触媒コンバータの点火温度が、より多い貴金属の量の結果として、主系統において上述の酸化触媒コンバータの下流に配置された酸化触媒コンバータの点火温度よりも低いという実施形態の例に関して説明されている。原理的には、これは必須ではない。むしろ、副系統に配置された酸化触媒コンバータは、副系統に配置された酸化触媒コンバータを例えば適切に設計された加熱装置などの他の手段によってこのコンバータの下流に接続された他方の酸化触媒コンバータよりも迅速に点火温度へともたらすことができるのであれば、主系統に配置されたコンバータの点火温度に一致する点火温度または他の点火温度を有することも可能である。
【0055】
本発明の説明により、上述の方法によって、内燃機関の排気ガス系統に接続された排ガス制御ユニット(例えば、粒子フィルタ)を設定(SET)温度に到達させることができるだけでなく、この方法を使用して、排ガス制御ユニットの温度管理の一様な分布も達成できることが明らかに示されている。
【0056】
本発明の説明は、実施形態の例に関して説明されている。有効な特許請求の範囲の技術的範囲から離れることなく、当業者であれば、詳しく説明するまでもなく、本発明を具現化することができるさらなる実施形態に想到できるであろう。同様に、それらの実施形態も、これらの説明の開示の内容の一部である。
【符号の説明】
【0057】
1 排ガス制御設備
2 粒子フィルタ
3 主系統
4 副系統
5 位置
6 位置
7 酸化触媒コンバータ
8 排気ガスフラップ
9 触媒バーナ
10 酸化触媒コンバータ
11 HCポート
12 加熱素子
13,13.1,13.2,13.3 温度センサ
14 ラムダプローブ
図1
図2
図3
図4