(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072771
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】B7−H1およびPD−1に結合する抗体およびその他の分子
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20170123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20170123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20170123BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20170123BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
C07K16/28ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/12
!C12N15/00 A
!C12P21/08
【請求項の数】29
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2014-506544(P2014-506544)
(86)(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公表番号】特表2014-523401(P2014-523401A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】US2012034223
(87)【国際公開番号】WO2012145493
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】61/477,414
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ランガーマン,ソロモン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,シャノン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シェング
【審査官】
西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−340714(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/036959(WO,A2)
【文献】
特表2010−530753(JP,A)
【文献】
特表2004−526740(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/089411(WO,A2)
【文献】
特表2010−514791(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/029434(WO,A1)
【文献】
HIRANO, F. et al.,"Blockade of B7-H1 and PD-1 by Monoclonal Antibodies Potentiates Cancer Therapeutic Immunity",Cancer Res.,2005年,Vol. 65,p. 1089-1096
【文献】
NOMI, T. et al.,"Clinical Significance and Therapeutic Potential of the Programmed Death-1 Ligand/Programmed Death-1 Pathway in Human Pancreatic Cancer",Clin. Cancer Res.,2007年,Vol. 13,p. 2151-2157
【文献】
LI, B. et al.,"Anti-Programmed Death-1 Synergizes with Granulocyte Macrophage Colony-Stimulating Factor-Secreting Tumor Cell Immunotherapy Providing Therapeutic Benefit to Mice with Established Tumors",Clin. Cancer Res.,2009年,Vol. 15,p. 1623-1634
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00−7/08
A61K 39/00−39/44
A61K 49/00−49/04
A61P 1/00−43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD−1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号98の24番目〜33番目のアミノ酸を含む第1の軽鎖CDRと、配列番号98の49番目〜55番目のアミノ酸を含む第2の軽鎖CDRと、配列番号98の88番目〜96番目のアミノ酸を含む第3の軽鎖CDRと、
配列番号106の26番目〜35番目のアミノ酸を含む第1の重鎖CDRと、配列番号106の50番目〜66番目のアミノ酸を含む第2の重鎖CDRと、配列番号106の99番目〜111番目のアミノ酸を含む第3の重鎖CDR
とを含む抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
結合した前記PD−1が、生細胞の表面に内因性濃度または形質移入濃度で発現される請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記生細胞はT細胞である請求項5に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記PD−1はヒトPD−1である請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(A)PD−1リガンドの、PD−1に結合する能力を弱める;
(B)PD−1仲介シグナル伝達を刺激する;
(C)T細胞の増殖を増強する;
(D)IFN−γの産生を高める;または
(E)これらの組み合わせを実行する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
免疫グロブリン定常領域(Fc)由来の1つまたはそれ以上の定常ドメインを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記定常ドメインはヒト定常ドメインである請求項9に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記ヒト定常ドメインは、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMドメインである請求項10に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
ヒトlgG定常ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ドメインである請求項11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能に標識化されているか、または、共役毒素、薬剤、受容体、酵素、受容体リガンドを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
PD−1に結合するヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、1つまたはそれ以上のヒトIgG4定常ドメインとを含む、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、生理学的に許容できる担体または添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項17】
癌の対象を処置する方法における使用のための医薬組成物であって、
治療効果のある量の請求項16に記載の医薬組成物を含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、前記癌の任意の症状が出る前に投与される請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
感染症の対象を処置する方法における使用のための医薬組成物であって、
治療効果のある量の請求項16に記載の医薬組成物を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物は、前記感染症の任意の症状が出る前に投与される請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記感染症は慢性ウイルス病である請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
癌の処置のための医薬品の製造における請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項23】
感染症の処置のための医薬品の製造における請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項24】
PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病の対象を処置する方法における使用のための医薬組成物であって、前記方法が、
(i)前記対象が、PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有するかを決定する工程であって、
(a)請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、前記対象の細胞または組織サンプル内のPD−1発現のアッセイを行う工程と、
(b)前記PD−1のレベルを対照レベルと比較する工程であって、前記アッセイを行った前記PD−1のレベルが前記対照レベルと比較して増大している場合、前記対象が、前記PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有することが示されている、工程とによって決定する、工程と、
(ii)前記対象が、PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有する場合、前記対象に、治療的に有効な量の請求項16に記載の医薬組成物を投与する工程とを有する、医薬組成物。
【請求項25】
前記PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病は、癌である請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記PD−1の増大した発現によって特徴付けられる疾病は、感染症である請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病の対象を処置する方法における使用のための医薬組成物であって、前記方法が、
(i)前記対象が、B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有するかを決定する工程であって、
(a)抗B7−H1抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、前記対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1発現のアッセイを行う工程と、
(b)前記B7−H1のレベルを対照レベルと比較する工程であって、前記アッセイを行った前記B7−H1のレベルが前記対照レベルと比較して増大している場合、前記対象が、前記B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有することが示されている、工程とによって決定する、工程と、
(ii)前記対象が、B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病を有する場合、前記対象に、治療的に有効な量の請求項16に記載の医薬組成物を投与する工程とを有する、医薬組成物。
【請求項28】
前記B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病は、癌である請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記B7−H1の増大した発現によって特徴付けられる疾病は、感染症である請求項27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国特許出願第61/477,414号(2011年4月20日出願;係属中)に基づいて優先権を主張するものであり、この米国特許出願の開示内容全体を参照によって本出願に援用する。
【0002】
〔配列表の参照〕
本出願は、37CFR1.821に従い、1つ以上の配列表(以下を参照)を含んでいる。この配列表は、紙媒体とコンピュータ読み取り可能な媒体との両方で開示され、この紙による開示とコンピュータ読み取り可能な開示との全体を参照によって本出願に援用する。
【0003】
〔発明の背景〕
〔発明の技術分野〕
本発明は、B7−H1またはPD−1に対して免疫特異的に結合することが可能な抗体と、その抗原結合性フラグメントと、その他の分子とに関連する。一部の実施形態において、上記分子は、B7−H1またはB7−DCの有する、PD−1に対して結合する能力を調節することがさらに可能であるか、または、B7−H1またはPD−1のシグナル伝達活性に対して影響を与えることが可能である。本発明はさらに、癌およびその他の疾病の診断および治療における上記分子の使用に関連する。
【0004】
〔先行技術の記載〕
(A.細胞性免疫応答)
ヒトおよびその他の哺乳類における免疫系は、感染症および疾病に対する防御の提供を担っている。そのような防御は、体液性免疫応答と細胞性免疫応答との両方によってもたらされている。体液性免疫応答の結果、外来性の標的(抗原)を認識し中和することが可能な抗体およびその他の生体分子が産生される。これに対して、細胞性免疫応答では、マクロファージと、ナチュラルキラー細胞(NK)と、抗原特異性の細胞傷害性Tリンパ球とがT細胞によって活性化され、抗原の認識に反応して種々のサイトカインが放出される(Dong, C. et al. (2003) "Immune Regulation by Novel Costimulatory Molecules," Immunolog. Res. 28(1):39-48)。
【0005】
T細胞が有する、抗原に対する免疫応答を最適に媒介する能力には、2つの異なるシグナル伝達相互作用が必要である(Viglietta, V. et al. (2007) "Modulating Co-Stimulation," Neurotherapeutics 4:666-675; Korman, A.J. et al. (2007) "Checkpoint Blockade in Cancer Immunotherapy," Adv. Immunol. 90:297-339)。まず、抗原提示細胞(APC)の表面に配列された抗原が、抗原特異性のナイーブCD4
+T細胞に対して提示されていなければならない。そのような提示の結果、提示された上記抗原に特異的となる免疫応答を上記T細胞に開始させるように指示するシグナルがT細胞受容体(TCR)を介して伝達される。次に、APCと異なるT細胞の表面分子との間の相互作用によって媒介された一連の共刺激抑制シグナルによって、最初にT細胞の活性化および増殖を引き起こし、最終的にはT細胞の阻害を引き起こす。よって、第1のシグナルは免疫応答に対して特異性を与える一方、第2のシグナルはその応答の性質と、規模と、持続時間とを決定する働きをする。
【0006】
免疫系は、共刺激かつ共抑制的なリガンドおよび受容体によって厳密に制御されている。これらの分子は、上記第2のシグナルを供給してT細胞を活性化させ、正負シグナルのバランスがとれたネットワークを提供して、自己に対する免疫を制限しつつ感染症に対する免疫応答を最大化する(Wang, L. et al. (March 7, 2011) "VISTA, A Novel Mouse Ig Superfamily Ligand That Negatively Regulates T Cell Responses," J. Exp. Med. 10.1084/jem.20100619:1-16; Lepenies, B. et al. (2008) "The Role Of Negative Costimulators During Parasitic Infections," Endocrine, Metabolic & Immune Disorders - Drug Targets 8:279-288)。特に重要なのは、抗原提示細胞のB7.1(CD80)リガンドおよびB7.2(CD86)リガンドとCD4
+Tリンパ球のCD28受容体およびCTLA−4受容体との間の結合である(Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126; Dong, C. et al. (2003) "Immune Regulation by Novel Costimulatory Molecules," Immunolog. Res. 28(1):39-48; Lindley, P.S. et al. (2009) "The Clinical Utility Of Inhibiting CD28-Mediated Costimulation," Immunol. Rev. 229:307-321)。CD28に対するB7.1またはB7.2の結合によってT細胞の活性化が刺激され、CTLA−4に対するB7.1またはB7.2の結合によって前記活性化が抑制される(Dong, C. et al. (2003) "Immune Regulation by Novel Costimulatory Molecules," Immunolog. Res. 28(1):39-48; Lindley, P.S. et al. (2009) "The Clinical Utility Of Inhibiting CD28-Mediated Costimulation," Immunol. Rev. 229:307-321; Greenwald, R.J. et al. (2005) "The B7 Family Revisited," Ann. Rev. Immunol. 23:515-548)。CD28は、T細胞の表面において構成的に発現される(Gross, J., et al. (1992) "Identification And Distribution Of The Costimulatory Receptor CD28 In The Mouse," J. Immunol. 149:380-388)。これに対して、CTLA4の発現は、T細胞の活性化に続いて急速に上方制御される(Linsley, P. et al. (1996) "Intracellular Trafficking Of CTLA4 And Focal Localization Towards Sites Of TCR Engagement," Immunity 4:535-543)。CTLA4は親和性のより高い受容体なので(Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126)、結合によって最初にT細胞の増殖が(CD28を介して)開始され、次にその増殖が(CTLA4の初期の発現を介して)抑制され、これにより、増殖が必要なくなった時に効果を減衰させる。
【0007】
CD28受容体のリガンドをさらに研究することによって、関連するB7分子一式(「B7スーパーファミリー」)の同定および特性決定を行なった(Coyle, A.J. et al. (2001) "The Expanding B7 Superfamily: Increasing Complexity In Costimulatory Signals Regulating T Cell Function," Nature Immunol. 2(3):203-209; Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126; Greenwald, R.J. et al. (2005) "The B7 Family Revisited," Ann. Rev. Immunol. 23:515-548; Collins, M. et al. (2005) "The B7 Family Of Immune-Regulatory Ligands," Genome Biol. 6:223.1-223.7; Loke, P. et al. (2004) "Emerging Mechanisms Of Immune Regulation: The Extended B7 Family And Regulatory T Cells." Arthritis Res. Ther. 6:208-214; Korman, A.J. et al. (2007) "Checkpoint Blockade in Cancer Immunotherapy," Adv. Immunol. 90:297-339; Flies, D.B. et al. (2007) "The New B7s: Playing a Pivotal Role in Tumor Immunity," J. Immunother. 30(3):251-260; Agarwal, A. et al. (2008) "The Role Of Positive Costimulatory Molecules In Transplantation And Tolerance," Curr. Opin. Organ Transplant. 13:366-372; Lenschow, D.J. et al. (1996) "CD28/B7 System of T Cell Costimulation," Ann. Rev. Immunol. 14:233-258; Wang, S. et al. (2004) "Co-Signaling Molecules Of The B7-CD28 Family In Positive And Negative Regulation Of T Lymphocyte Responses," Microbes Infect. 6:759-766)。現在、上記ファミリーのいくつかのメンバーが既知である。すなわち、B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激リガンド(ICOS−L)、プログラム死−1リガンド(PD−L1;B7−H1)、プログラム死−2リガンド(PD−L2;B7−DC)、B7−H3、B7−H4、およびB7−H6が既知である(Collins, M. et al. (2005) "The B7 Family Of Immune-Regulatory Ligands," Genome Biol. 6:223.1-223.7; Flajnik, M.F. et al. (2012) "Evolution Of The B7 Family: Co-Evolution Of B7H6 And Nkp30, Identification Of A New B7 Family Member, B7H7, And Of B7's Historical Relationship With The MHC," Immunogenetics epub doi.org/10.1007/s00251-012-0616-2)。
【0008】
(B.B7−H1/PD1相互作用)
(1.B7−H1)
B7−H1(PD−L1、CD274)は、腫瘍に対する免疫応答を形づくることに中枢的に関与しているため、B7スーパーファミリーでは特に重要なメンバーである(Flies, D.B. et al. (2007) "The New B7s: Playing a Pivotal Role in Tumor Immunity," J. Immunother. 30(3):251-260、米国特許第6,803,192号および第7,794,710号;米国特許出願公開第2005/0059051号、第2009/0055944号、第2009/0274666号、および第2009/0313687号;および、PCT公開公報第WO01/39722号および第WO02/086083号)。B7−H1は、およそ33kDaの1型膜貫通タンパク質である。B7−H1は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、および肝炎などのその他の疾患などの特定の事象の間、免疫系を抑止するのに重要な役割を果たしていると推測されてきた。
【0009】
B7−H1は、ヒトおよびマウスの異なる組織(心臓、胎盤、筋肉、胎児肝臓、脾臓、リンパ節、および胸腺;また、肝臓、肺、および腎臓についてはマウスのみ)に広範囲に発現する(Martin-Orozco, N. et al. (2007) "Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity," Semin. Cancer Biol. 17(4):288-298)。ヒトにおいて、B7−H1タンパク質の発現は、ヒト内皮細胞(Chen, Y. et al. (2005) "Expression of B7-H1 in Inflammatory Renal Tubular Epithelial Cells," Nephron. Exp. Nephrol. 102:e81-e92; de Haij, S. et al. (2005) "Renal Tubular Epithelial Cells Modulate T-Cell Responses Via ICOS-L And B7-H1" Kidney Int. 68:2091-2102; Mazanet, M.M. et al. (2002) "B7-H1 Is Expressed By Human Endothelial Cells And Suppresses T Cell Cytokine Synthesis," J. Immunol. 169:3581-3588)、心筋(Brown, J.A. et al. (2003) "Blockade Of Programmed Death-1 Ligands On Dendritic Cells Enhances T Cell Activation And Cytokine Production," J. Immunol. 170:1257-1266))、合胞体栄養細胞(Petroff, M.G. et al. (2002) "B7 Family Molecules: Novel Immunomodulators At The Maternal-Fetal Interface," Placenta 23:S95-S101)、一部組織の在住マクロファージ、または、インターフェロン(IFN)−γまたは腫瘍壊死因子(TNF)−αで活性化されたマクロファージ(Latchman, Y. et al. (2001) "PD-L2 Is A Second Ligand For PD-1 And Inhibits T Cell Activation," Nat. Immunol 2:261-268)、および、腫瘍(Dong, H. (2003) "B7-H1 Pathway And Its Role In The Evasion Of Tumor Immunity," J. Mol. Med. 81:281-287)においてみられる。マウスにおいては、B7−H1タンパク質の発現は、心臓内皮、膵臓の島細胞、小腸、および、胎盤において確認される(Martin-Orozco, N. et al. (2007) "Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity," Semin. Cancer Biol. 17(4):288-298)。
【0010】
(2.PD−1)
プログラム死−1(「PD−1」)は、B7−H1およびB7−DCの受容体である。PD−1は、T細胞調節因子の拡張CD28/CTLA4ファミリーのおよそ31kDのI型膜タンパク質メンバーである(Ishida, Y. et al. (1992) "Induced Expression Of PD-1, A Novel Member Of The Immunoglobulin Gene Superfamily, Upon Programmed Cell Death," EMBO J. 11:3887-3895、米国特許出願公開第2007/0202100号、第2008/0311117号、および第2009/00110667号;米国特許第6,808,710号、第7,101,550号、第7,488,802号、第7,635,757号および第7,722,868号;および、PCT公開公報第WO01/14557号)。CTLA4と比べ、PD−1は免疫応答をより広範囲で負に調節する。
【0011】
PD−1は、活性T細胞、B細胞、および、単球上に発現し(Agata, Y. et al. (1996) "Expression Of The PD-1 Antigen On The Surface Of Stimulated Mouse T And B Lymphocytes," Int. Immunol. 8(5):765-772; Yamazaki, T. et al. (2002) "Expression Of Programmed Death 1 Ligands By Murine T Cells And APC," J. Immunol. 169:5538-5545)、かつナチュラルキラー(NK)T細胞において低レベルに発現する(Nishimura, H. et al. (2000) "Facilitation Of Beta Selection And Modification Of Positive Selection In The Thymus Of PD-1-Deficient Mice," J. Exp. Med. 191:891-898; Martin-Orozco, N. et al. (2007) "Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity," Semin. Cancer Biol. 17(4):288-298)。
【0012】
PD−1の細胞外領域は、CTLA4における等価ドメインに対して23%の同一性を有する単一の免疫グロブリン(Ig)Vドメインからなる(Martin-Orozco, N. et al. (2007) "Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity," Semin. Cancer Biol. 17(4):288-298)。上記細胞外IgVドメインには、膜貫通領域および細胞内尾部が続く。細胞内尾部は、免疫受容体チロシンベース抑制モチーフおよび免疫受容体チロシンベーススィッチモチーフの中に位置する2つのリン酸化部位を含有し、これは、PD−1が、TCRシグナルを負に調節することを示唆する(Ishida, Y. et al. (1992) "Induced Expression Of PD-1, A Novel Member Of The Immunoglobulin Gene Superfamily, Upon Programmed Cell Death," EMBO J. 11:3887-3895; Blank, C. et al. (Epub 2006 Dec 29) "Contribution Of The PD-L1/PD-1 Pathway To T-Cell Exhaustion: An Update On Implications For Chronic Infections And Tumor Evasion Cancer," Immunol. Immunother. 56(5):739-745)。
【0013】
マウスPD−1に対して免疫特異的に結合することが可能な抗体が報告されてきた(たとえば、Agata, T. et al. (1996) "Expression Of The PD-1 Antigen On The Surface Of Stimulated Mouse T And B Lymphocytes," Int. Immunol. 8(5):765-772、参照)。
【0014】
(C.B7−H1とPD−1との相互作用)
B7−H1とPD−1との相互作用は、重要な負の共刺激のシグナルをT細胞およびB細胞に供給することが確認されており(Martin-Orozco, N. et al. (2007) "Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity," Semin. Cancer Biol. 17(4):288-298)、細胞死誘導因子として機能する(Ishida, Y. et al. (1992) "Induced Expression Of PD-1, A Novel Member Of The Immunoglobulin Gene Superfamily, Upon Programmed Cell Death," EMBO J. 11:3887-3895; Subudhi, S.K. et al. (2005) "The Balance Of Immune Responses: Costimulation Verse Coinhibition," J. Molec. Med. 83:193-202)。
【0015】
低濃度のPD−1受容体とB7−H1リガンドとの間の相互作用により、結果として、抗原特異性CD8
+T細胞の増殖を強く抑制する抑制シグナルが伝達される。より高濃度では、PD−1との相互作用は、T細胞の増殖を抑制しないが、複数のサイトカインの産生を明らかに抑制する(Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126)。以前に活性化されて、現在は休止期にあるCD4およびCD8T細胞の両方、さらには臍帯血からのナイーブT細胞によるT細胞増殖およびサイトカイン産生が、可溶性B7−H1−Fc融合タンパク質により抑制されることがわかっている(Freeman, G.J. et al. (2000) "Engagement Of The PD-1 Immunoinhibitory Receptor By A Novel B7 Family Member Leads To Negative Regulation Of Lymphocyte Activation," J. Exp. Med. 192:1-9; Latchman, Y. et al. (2001) "PD-L2 Is A Second Ligand For PD-1 And Inhibits T Cell Activation," Nature Immunol. 2:261-268; Carter, L. et al. (2002) "PD-1:PD-L inhibitory pathway affects both CD4(+) and CD8(+) T cells and is overcome by IL-2," Eur. J. Immunol. 32(3):634-643; Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126)。
【0016】
B7−H1とPD−1との相互作用は、G0−G1における細胞周期停止を引き起こすが、細胞死を増加させることはない(Latchman, Y. et al. (2001) "PD-L2 Is A Second Ligand For PD-1 And Inhibits T Cell Activation," Nature Immunol. 2:261-268; Carter, L. et al. (2002) "PD-1:PD-L inhibitory pathway affects both CD4(+) and CD8(+) T cells and is overcome by IL-2," Eur. J. Immunol. 32(3):634-643)。よって、抗原性刺激が弱い、あるいは、制限されている場合、B7−H1-PD−1錯化剤は、B7-CD28シグナルに拮抗する能力を有しており、T細胞応答を下方制御する際に重要な役割を果たす。
【0017】
B7−H1とPD−1とによって媒介されるシグナル伝達は、複雑である。両方の分子は、他のタンパク質にさらに結合する。B7−H1は、B7−1(CD80)に対して結合することが可能である(Butte, M.J. et al. (2008) "Interaction of PD-L1 and B7-1," Molecular Immunol. 45:3567-3572)。また、PD−1は、B7−DC(PD−L2)に結合することが可能である(Lazar-Molnar, E. et al. (2008) "Crystal Structure Of The Complex Between Programmed Death-1 (PD-1) And Its Ligand PD-L2," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 105(30):10483-10488)。B7−1は、CD28と相互作用し、免疫応答の初期段階で重要なT細胞活性化のための共刺激シグナルを発する(Elloso, M.M. et al. (1999) "Expression and Contribution of B7-1 (CD80) and B7-2 (CD86) in the Early Immune Response to Leishmania major Infection," J. Immunol. 162:6708-6715)。B7−DCは、T細胞の強力な刺激因子であり、T細胞増殖およびIFN−γ産生を向上させる。しかしまた、B7−DCは、PD−1との相互作用を介して免疫応答に対する抑制効果も示す(Ishiwata, K. et al. (epub January 10, 2010) "Costimulator Responses Induced by Nippostrongylus brasiliensis," J. Immunol. 184:2086-2094)。細菌および腫瘍は、免疫系による根絶を回避するのにPD−1およびB7−H1を利用したようにみられる。PD−1およびB7−H1と相互作用する種々の受容体およびリガンドに対する結合親和性の違いが、疾病モデルにおけるPD−1およびB7−H1の遮断の明らかな機能的結果を提供するという説が出されている(Butte, M.J. et al. (2008) "Interaction of PD-L1 and B7-1," Molecular Immunol. 45:3567-3572)。また、PD−1経路は、慢性感染の間の免疫機能の障害(「T細胞疲弊」)において重要な役割を果たすものとして関与している。そして、PD−1機能を遮断することによって、多くのT細胞機能を回復させることができる(Rodriquez-Garcia, M. et al. (November 19, 2010) "Expression Of PD-L1 And PD-L2 On Human Macrophages Is Up-Regulated By HIV-1 And Differentially Modulated By IL-10," J. Leukocyte Biol. 89: doi:10.1189/jlb.0610327:1-9)。
【0018】
T細胞活性化および増殖の抑制におけるB7−H1およびPD−1の役割は、これらの生体分子が、炎症および癌の治療のための治療標的として役立つであろうということを示唆した。感染および腫瘍を治療し、適応的免疫応答を上方調節するための抗-PD1抗体の使用が提案されている(米国特許出願公開第2010/0040614号、第2010/0028330号、第2004/0241745号、第2008/0311117号、および第2009/0217401号;米国特許第7,521,051号、第7,563,869号および第7,595,048号;および、PCT公開公報第WO2004/056875号および第WO2008/083174号、参照)。逆に、B7−H1とPD−1との相互作用を調節する薬剤が、免疫応答の上方または下方調節において有効性があることが示唆されている(米国特許第7,029,674号および第7,488,802号;米国特許出願公開第2007/0122378号、第2009/0076250号、第2009/0110667号、第2009/0263865号、および、第2009/0297518号;および、PCT公開公報第WO2006/133396号)。同様に、感染および腫瘍を治療し、適応的免疫応答を上方調節するための抗B7−H1抗体の使用が提案されている(米国特許出願公開第2009/0055944号、第2009/0274666号および第2009/0317368号;米国特許第6,803,192号、および第7,794,710号;および、PCT公開公報第WO01/39722号および第WO02/086083号)。
【0019】
しかしながら、上記のすべての進歩に関わらず、B7−H1とPD−1との間の相互作用を調節できる組成物の必要性が残っている。本発明は、癌および他の疾病や状態を治療するための上記組成物およびその使用を対象としている。
【0020】
〔発明の概要〕
本発明は、B7−H1またはPD−1に対して免疫特異的に結合することが可能な抗体と、その抗原結合フラグメントと、その他の分子とに関連する。いくつかの実施形態において、上記分子は、B7−H1の有する、PD−1に対して結合する能力を調節することがさらに可能であるか、または、上記B7−H1またはPD−1のシグナル伝達活性に対して影響を与えることが可能である。本発明はさらに、癌およびその他の疾病の診断および治療における上記分子の使用に関連する。
【0021】
詳細には、本発明は、内因性濃度または形質移入濃度で生細胞の表面に発現されることが好ましい、B7−H1またはPD−1、特にヒトB7−H1またはヒトPD−1に対して免疫特異的に結合する抗体の抗原結合フラグメントを有する分子を実現する。本発明は、上記抗原結合フラグメントが、B7−H1に結合し、かつ、上記生細胞が腫瘍細胞、病原体感染細胞、または、抗原提示細胞である分子の実施形態、および、上記抗原結合フラグメントが、PD−1に結合し、かつ、上記生細胞がT細胞である上記分子の実施形態に関わる。
【0022】
本発明は、B7−H1またはPD−1に対して免疫特異的に結合することが可能な抗体と、その抗原結合フラグメントと、その他の分子とに関連する。いくつかの実施形態において、上記分子は、B7−H1の有する、PD−1に対して結合する能力を調節することがさらに可能であるか、または、上記B7−H1またはPD−1のシグナル伝達活性に対して影響を与えることが可能である。本発明はさらに、癌およびその他の疾病の診断および治療における上記分子の使用に関連する。
【0023】
詳細には、本発明は、内因性濃度または形質移入濃度で生細胞の表面に発現されることが好ましい、B7−H1またはPD−1、特にヒトB7−H1またはヒトPD−1に対して免疫特異的に結合する抗体の抗原結合フラグメントを有する分子を実現する。本発明は、上記抗原結合フラグメントが、B7−H1に結合し、かつ、上記生細胞が腫瘍細胞、病原体感染細胞、または、抗原提示細胞である分子の実施形態、および、上記抗原結合フラグメントが、PD−1に結合し、かつ、上記生細胞がT細胞である上記分子の実施形態に関わる。
【0024】
本発明は、さらに、上記分子が、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、または、ヒト化抗体である、上記分子の実施形態に関連する。本発明は、上記抗体が、単一特異性、二重特異性、三重特異性、または、多重特異性のものである上記実施形態を含む。
【0025】
本発明は、さらに、B7−H1に結合する上記分子または抗体の実施形態であって、その上記抗原結合フラグメントが、抗B7−H1抗体1E12、1F4、2G11、3B6、および3D10のCDRのうちの少なくとも1つのコンセンサスCDRと、以下の(A)から(E):
(A)抗B7−H1抗体1E12の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(B)抗B7−H1抗体1F4の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(C)抗B7−H1抗体2G11の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(D)抗B7−H1抗体3B6の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;または、
(E)抗B7−H1抗体3D10の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR、から選択される全ての残りのCDRとを有する6つのCDRを有する実施形態に関する。
【0026】
本発明は、さらに、上記分子または抗体の実施形態であって、その上記抗原結合フラグメントが、以下の(A)から(E):
(A)抗B7−H1抗体1E12の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(B)抗B7−H1抗体1F4の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(C)抗B7−H1抗体2G11の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(D)抗B7−H1抗体3B6の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;または、
(E)抗B7−H1抗体3D10の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR、である6つのCDRを有する実施形態に関連する。
【0027】
本発明は、さらに、上記抗体の実施形態であって、上記抗体がB7−H1に結合し、かつ、抗体可変領域h3D10 Var1、h3D10 Var2、h3D10 Var3、h3D10 Var4、h3D10 Var5、h3D10 Var6、h3D10 Var7、h3D10 Var8、h3D10 Var9、h3D10 Var10、h3D10 Var11、h3D10 Var12、h3D10 Var13、またはh3D10 Var14を有する実施形態に関連する。
【0028】
本発明は、さらに、上記分子または抗体の実施形態であって、上記分子または抗体がPD−1に結合し、かつ、上記抗原結合フラグメントが、抗PD−1抗体1E3、1E8および1H3のうちの少なくとも1つのコンセンサスCDRと、以下の(A)から(C):
(A)抗PD−1抗体1E3の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(B)抗PD−1抗体1E8の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;または、
(C)抗PD−1抗体1H3の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR、から選択される全ての残りのCDRとを有する6つのCDRを有する実施形態に関連する。
【0029】
本発明は、さらに、上記6つのCDRが以下の(A)から(C):
(A)抗PD−1抗体1E3の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;
(B)抗PD−1抗体1E8の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR;または、
(C)抗PD−1抗体1H3の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDR、のいずれかである、上記抗体の実施形態に関連する。
【0030】
本発明は、さらに、上記抗体の実施形態であって、上記抗体がPD−1に結合し、かつ、抗体可変領域h1H3 Var1、h1H3 Var2、h1H3 Var3、h1H3 Var4、h1H3 Var5、h1H3 Var6、h1H3 Var7、h1H3 Var8、h1H3 Var9、h1H3 Var10、h1H3 Var11、h1H3 Var12、h1H3 Var13、またはh1H3 Var14を有する実施形態に関連する。
【0031】
本発明は、さらに、上記分子または抗体の実施形態であって、上記分子または抗体が検出可能に標識化されているか、または、共役毒素、薬剤、受容体、酵素、受容体リガンドを有する実施形態に関連する。
【0032】
本発明は、さらに、上記分子の実施形態であって、上記分子または抗体が、
(A)B7−H1またはPD−1に仲介されたシグナル伝達を調節する;
(B)B7−H1のB7−H1受容体に対する結合能力、または、PD−1のPD−1リガンドに対する結合能力を弱める;
(C)B7−H1またはPD−1仲介シグナル伝達を刺激する;
(D)T細胞の増殖を仲介する;または、
(E)IFN−γの産生を高める実施形態に関連する。
【0033】
本発明は、さらに、治療効果ある量の上記分子または抗体のいずれか、および、生理学的に許容できる担体または添加剤を有する医薬組成物に関連する。本発明は、さらに、癌、自己免疫疾患、感染症、または、T細胞の数または健康に影響する疾病の治療における上記医薬組成物の使用に関連する。本発明は、さらに、上記医薬組成物の使用であって、上記治療は予防的なものであり、上記癌、上記自己免疫疾患、上記感染症、または、上記T細胞の数または健康に影響する疾病の症状がでる前に施される、または、移植から起こる状態の治療のためのものである上記医薬組成物の使用に関連する。
【0034】
本発明は、さらに、B7−H1またはPD−1に対する対象の細胞の結合能力に関して上記対象の細胞を分析することにより、上記対象における癌、自己免疫疾患(特に、移植片対宿主病)、感染症(特に、慢性ウィルス病)、またはT細胞の数または健康に影響する疾病を診断するための上記分子または抗体のいずれかの使用に関連する。
【0035】
上記発明は、上記分子、抗体、および、組成物の実施形態であって、上記B7−H1がヒトB7−H1であり、上記PD−1がヒトPD−1である実施形態に関連する。
【0036】
上記発明は、特に、対象における疾病(特に、癌)を診断する方法であって、上記B7−H1結合分子のいずれかに対する結合能力に関して上記対象の細胞を分析する工程を含み、上記対象における疾病の存在を診断する細胞学的分析を実現する方法に関連する。
【0037】
さらに、本発明は、対象における疾病(特に、T細胞の数および/または健康に影響する疾病)を診断する方法であって、PD−1結合分子に対する上記対象の細胞の結合能力に関して上記対象の細胞を分析する工程を含み、上記対象における疾病の存在および/または進行を診断するため、または、治療に対する対象の反応を評価するための細胞学的分析を実現する方法に関連する。
【0038】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、B7−H1に結合する抗体に関してテストされたハイブリドーマ上清の結合を示す図である。陽性対照(PC):ハイブリドーマ生成に用いられたマウス由来の1:1000希釈血清;陰性対照(NC):5%ミルク/PBS。B7−H1−Fcに対する結合および抗マウスIgGを用いた検出に関してデータが示される。
【0039】
図2は、単離抗B7−H1抗体がPD−1に対するB7−H1の結合を調節することができるかどうかを判定するための実験結果を示す図である。陽性対照:クローンMIH−1および29E.2A3(両者は抗ヒトCD274(B7−H1);2つの陰性対照:無関係ハイブリドーマ(ランダムAb)およびベクター対照(VC)由来の馴化培地。
【0040】
図3は、CHO−HB7−HLに対するに関してテストされた抗B7−HL抗体の中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。テストされたクローンのいずれも、親CHOラインとの交差反応は認められず、発現した抗体がヒトB7−H1に対して免疫特異性があることを示した。
【0041】
図4は、選択された抗ヒトB7−H1抗体のヒトB7−H1発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【0042】
図5は、抗ヒトB7−H1抗体5H1および1E12のヒトB7−HL発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を比較する図である。
【0043】
図6は、単離された抗ヒトPD−1抗体の抗原結合及びアイソタイプを示す図である。
【0044】
図7A〜
図7Bは、単離されたハイブリドーマの幾つかが、中和抗ヒトPD−1抗体を発現したことを示す実験結果を示す図である。
【0045】
図8は、CHO−hPD−1に対する結合に関してテストされた抗PD−1抗体の中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。テストされたクローンの何れも、親CHOラインとの交差反応は認められず、発現した抗体がヒトPD−1に対して免疫特異的性があることを示した。
【0046】
図9は、選択された抗ヒトPD−1抗体のヒトPD−1発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。陽性対照:EH12(BioLegendから市販されている抗ヒトPD−1抗体);mIgG1:マウスIgG陰性対照。
【0047】
図10は、抗ヒトPD−1抗体の濃度変更時の細胞ベースの競合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【0048】
図11は、ヒトPD−1抗体の濃度が20μg/mlの時の細胞ベースの競合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【0049】
図12は、ヒトの完全長PD−1をトランスフェクトしたCHO細胞を、ビオチン標識hB7−H1−FCまたはhB7−DCmIgにより染色する前に、飽和量の抗ヒトPD−1モノクローナル抗体(mAbs)または対照Igと共に事前培養した実験の結果を示す図である。
【0050】
図13は、パネルAおよびパネルBが、(A)市販の抗PD−1抗体、EH12、と(B)キメラ(”CH”)マウス抗ヒトPD−1のFab領域およびヒトIgG1のFc領域とを有するマウスモノクローナル抗体との比較結合を示す図である。
【0051】
図14は、パネルAおよびパネルBが、ビオチン化B7−HL−Fcとビオチン化B7−DC−FcのPD−1に対する結合のブロッキング効果を発揮する、本発明の抗PD−1抗体の能力を示す図である。
【0052】
図15は、抗hIg抗体によって検出された、CHO.hPD−1細胞に対する1H3抗ヒトPD−1キメラ抗体の結合曲線を示す図である。
【0053】
図16A〜
図16Bは、陰性対照抗体(palivizumab;SYNAGIS(登録商標)、Medimmune、Inc.)と比較して、ヒト初代T細胞CD8
+(
図16A)およびCD4
+(
図16B)に対して結合する、1H3抗ヒトPD−1キメラ抗体の能力の研究結果を示す図である。
【0054】
図17は、破傷風毒素(TT)のリコールの際に、CFSE希釈により測定された抗原特異的T細胞の応答を高める、本発明の抗体の能力を示す図である。
【0055】
図18A〜
図18Dは、CHO.hPDl細胞に結合するヒト化1H3変異体(h1H3 Var1〜h1H3 Var14)の能力を実証する図である。
【0056】
図19A、
図19Bは、B7−H1(
図19A)またはB7−DC(
図19B)を発現するhPD−1−FcおよびHEK293細胞間の相互作用をブロックする、ヒト化抗PD−1抗体の能力を実証する図である。
【0057】
図20は、h1H3 Var1〜h1H3 Var6の結合曲線を示す図である。
【0058】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、B7−H1またはPD−1に対して免疫特異的に結合することが可能な、抗体、その抗原結合フラグメント、およびその他の分子に関連する。一部の実施形態において、上記分子は、B7−H1またはB7−DCの有する、PD−1に対して結合する能力を調節することがさらに可能であるか、または、B7−H1またはPD−1のシグナル伝達活性に対して影響を与えることが可能である。本発明はさらに、癌およびその他の疾病の治療における上記分子の使用に関連する。
【0059】
ある分子が他の分子に結合し、その結合が抗体のその同族抗原に対する特異性および親和性を示す場合、前記分子は、前記他の分子に「免疫特異的に結合する」ことが可能であるといわれる。上記結合が、免疫グロブリン分子の抗原認識部位にかかわる場合、抗体は、抗原(特に、上記抗原:B7−H1またはPD−1)の標的領域または立体配座(「エピトープ」)に対して「免疫特異的に結合している」ことができると言われる。他の抗原が、たとえば、イムノアッセイ、BIACORE(登録商標)アッセイ、または、本技術分野において知られるその他アッセイによりにより割り出される抗原認識部位により認識されるある配列または立体配座的類似性を有する場合、特定の抗原に免疫特異的に結合する抗体は、より低い親和性で上記他の抗原に結合する場合があるが、無関係な抗原には結合しない。しかし、抗体(および、それらの抗原結合性フラグメント)が、他の抗原と交差反応しないことが好ましい。また、抗体は、Fc領域のような抗原認識部位を含まない上記分子の他の領域/ドメインにおける結合ドメインによって、たとえば、FcR受容体に対する結合のように、免疫特異的ではない方法で他の分子に対して結合する場合もある。
【0060】
本明細書において用いられる「調節する(modulate)」という用語は、効果または結果を改変する能に関連する。特に、本発明は、B7−H1とPD−1との間の結合の調節が可能である、および/または、B7−H1−PD−1結合の結果として起こるシグナル伝達の調節が可能である分子(特に、ヒトB7−H1またはヒトPD−1に免疫特異的に結合する抗体、または、それらの抗原結合フラグメント)に関連する。このような調節により、PD−1に対するB7−H1の結合能力を弱めたり、完全に阻止したりできる。さらなる実施形態において、上記の調節により、シグナル伝達を仲介するB7−H1またはPD−1の能力を弱めたり、完全に中和したりできる。さらなる実施形態において、上記の調節によって、(i)B7−H1とPD−1との間の相互作用を高め、B7−H1−PD−1結合を促進すること、または、(ii)B7−H1とPD−1とに直接結合し、これにより、内因性リガンドの活性を模倣すること、等により、B7−H1またはPD−1を介したシグナル伝達を高め得る、または、そうでなければ、シグナル伝達を刺激し得る。さらに別の実施形態において、誘発されるシグナル伝達の性質を変更するように、上記調節により、B7−H1とPD−1との間の相互作用の性質を変更し得る。たとえば、本発明の上記分子は、B7−H1またはPD−1に対する結合により、他のリガンドおよび受容体に対して結合する上記分子の能力を変更し(例、B7−DCに対して結合するPD−1の能力、または、B7−1(CD80)に結合するB7−H1の能力に影響を与える)、さらにそれにより、上記分子の活性全体を変更し得る。このような調節により、計測可能な免疫システム活性が少なくとも10%変化することが好ましく、そのような活性が少なくとも50%変化することがさらに好ましい、または、少なくとも2倍、5倍、または10倍変化することが好ましく、または、そのような活性が少なくとも100倍変化することがさらに一層好ましい。
【0061】
本明細書において用いられる、「抗体」という用語は、「可変領域」抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子を意味することを意図する。上記用語「可変領域」は、免疫グロブリンの上記ドメインを抗体に広く共有されるドメイン(例、抗体Fcドメイン)から識別することを意図する。上記可変領域は、残基が抗原結合に関与する「超可変領域」を有する。上記超可変領域は、「相補性決定領域」、つまり、「CDR」からのアミノ酸残基(たとえば、通常、軽鎖可変ドメインのおよそ24−34(L1)、50−56(L2)および89−97(L3)の残基、および、重鎖可変ドメインにおける、およそ27−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3)の残基;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))、および/または、「超可変ループ」(たとえば、軽鎖可変ドメインにおける26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)の残基、および、重鎖可変ドメインにおける26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3)の残基;Chothia, C. et al. (1987) "Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins," J. Mol. Biol. 196:901-917)からのアミノ酸残基を有する。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書において定義された超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。上記用語、抗体、には、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体(たとえば、Muyldermans et al., 2001, Trends Biochem. Sci. 26:230; Nuttall et al., 2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253; Reichmann and Muyldermans, 1999, J. Immunol. Meth. 231:25;国際公開公報第WO94/04678号および第WO94/25591号;および、米国特許第6,005,079号、参照)、一本鎖Fvs(scFv)(たとえば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)、参照)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、細胞内抗体、および、抗イディオタイプの(抗Id)抗体(たとえば、本発明の抗体に対する抗Idおよび抗抗Id抗体を含む)を含む。特に、上記抗体としては、任意のタイプ(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(たとえば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2)、または、サブクラスの免疫グロブリン分子が挙げられる。
【0062】
本明細書に用いられる、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体の相補性決定領域(「CDR」)を含有し、抗体の「可変領域」抗原認識部位を有するフレームワーク残基を任意に含有し、さらに、抗原に免疫特異的に結合する能力を示す抗体の1個以上のタンパク質を意味する。このようなフラグメントとしては、Fab’、F(ab’)
2、Fv、一本鎖(ScFv)、および、それらの突然変異体、天然の変異体、および、上記抗体の「可変領域」抗原認識部位および異種タンパク質(たとえば、毒素、異なる抗原に対する抗原認識部位、酵素、受容体、または、受容体リガンド、など)を有する融合タンパク質が挙げられる。本明細書に用いられる、用語「フラグメント」は、少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ酸残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、または、少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0063】
ヒト抗体、キメラ抗体、または、ヒト化抗体が、人におけるインビボでの使用目的に特に好ましいが、マウス抗体、または、他種の抗体が多くの使用目的(たとえば、インビトロ、または、原位置検出アッセイ、インビボでの急性使用、など)に有利に用いられ得る。ヒトを対象とする治療上の処置の目的には、完全ヒト抗体が特に望ましい。
【0064】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリを用いる上記のファージ提示法(米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;および、国際公開公報第WO98/46645号、第WO98/50433号、第WO98/24893号、第WO98/16654号、第WO96/34096号、第WO96/33735および第WO91/10741号、参照)含む、本技術において周知の様々な方法で作製することができる。ヒト抗体は、機能性内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて産生できる。たとえば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに、または、相同的組み換えにより、マウス胚幹細胞に導入してもよい。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および、多様性領域を、マウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を、相同的組み換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と、別に、または、同時に、非機能性に変更してもよい。特に、J
H領域のホモ接合体欠失は、内因性抗体の産生を妨げる。修飾された胚幹細胞は、キメラマウスを作製するために、増殖され、未分化胚芽細胞に微量注入される。それから、上記キメラマウスを、ヒト抗体を発現するホモ接合子孫を作製するために繁殖させる。上記トランスジェニックマウスは、選択された抗原、たとえば、本発明のポリペプチドの全て、または、一部を用いて、従来の手順を用いて免疫される。抗原に対して向けられるモノクローナル抗体が、従来のハイブリドーマ技術(たとえば、米国特許第5,916,771号参照)を用いて、免疫されたトランスジェニックマウスから得られる。上記トランスジェニックマウスが有する上記ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列し、その後、クラススイッチおよび体細胞変異をする。よって、上記技術を用いて、治療上有益なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体の産生が可能である。ヒト抗体の産生のための本技術の概要については、Lonberg and Huszar (1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93、この全体を参照によって本明細書に援用する)を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するための本技術の詳細な議論および上記抗体を産生するためのプロトコルについては、たとえば、国際公開公報第WO98/24893号、第WO96/34096号および第WO96/33735号;および、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318および第5,939,598号(これらの全体を、参照によって本明細書に援用する)を参照のこと。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)およびMedarex(Princeton,NJ)などの企業は、上述の技術に類似した技術を用いて、選択された抗原に対して向けられるヒト抗体の提供に携わっている。
【0065】
「キメラ抗体」は、抗体の異なる部分が、非ヒト抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体のような異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。本技術分野において、キメラ抗体の産出方法は周知である。たとえば、Morrison, 1985, Science 229:1202; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214; Gillies et al., 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;および、米国特許第6,311,415号、第5,807,715号、第4,816,567号および第4,816,397号を参照のこと。ヒト以外の生物種由来の1つ以上のCDRおよびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有するキメラ抗体は、たとえば、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;国際公開公報第WO91/09967号;および、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)、または、リサーフェシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7:805;および、Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969)、および、鎖混合(米国特許第5,565,332号)を含む、本技術分野において周知の様々な技術を用いて産生できる。
【0066】
本発明は、特に、「ヒト化抗体」に関連する(たとえば、欧州特許第239,400号、第592,106号および第519,596号;国際公開公報第WO91/09967号および第WO93/17105号;米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,565,332号、第5,585,089号、第5,766,886号および第6,407,213号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805-814; Roguska et al., 1994, PNAS 91:969-73; Tan et al., 2002, J. Immunol. 169:1119-25; Caldas et al., 2000, Protein Eng. 13:353-60; Morea et al., 2000, Methods 20:267-79; Baca et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84; Roguska et al., 1996, Protein Eng. 9:895-904; Couto et al., 1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s; Couto et al., 1995, Cancer Res. 55:1717-22; Sandhu, 1994, Gene 150:409-10; Pedersen et al., 1994, J. Mol. Biol. 235:959-73; Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al., 1988, Nature 332:323-329;および、Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596、参照)。本明細書において用いられる、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(通常、マウス、または、ラット)免疫グロブリン由来の1つ以上のCDRとを有する免疫グロブリンを指す。上記CDRを提供する上記非ヒト免疫グロブリンを、「ドナー」と呼び、上記フレームワークを提供する上記ヒト免疫グロブリンを、「アクセプター」と呼ぶ。定常領域は、存在する必要はないが、定常領域があれば、それらの定常領域は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一のもの、たとえば、少なくとも約85%〜90%、好ましくは約95%以上同一のものでなければならない。したがって、CDRは除く可能性はあるが、ヒト化免疫グロブリンの全部が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを有する抗体である。たとえば、キメラ抗体の可変領域全体が、ヒト以外のものであるため、たとえば、ヒト化抗体は、典型的なキメラ抗体を含まない。ドナー抗体は、「ヒト化」工程によって「ヒト化」されているといわれる。これは、結果として得られるヒト化抗体が、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると見込まれるからである。たいてい、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、このヒト免疫グロブリンにおいて、上記レシピエントの超可変領域残基が、望ましい特異性、親和性、および、能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または、非ヒト霊長類などのヒト以外の生物種(ドナー抗体)由来の超可変領域残基によって置き換えられる。場合によっては、上記ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体の中には見られない残基を有していてもよい。これらの修飾が、抗体の性能をさらに改良するためになされてもよい。一般的に、上記ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの全てを有するものである。上記可変領域において、超可変領域の全て、または、実質全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、かつ、FRの全て、または、実質全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。また、上記ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも1部、通常、FcγRIIBポリペプチドに対して免疫特異的に結合し、アミノ酸残基の置換、欠失、または、付加の導入(つまり、変異)により変化したヒト免疫グロブリンの定常領域の1部を有するものである。
【0067】
本発明の方法において用いられる抗体は、単一特異性のものであってよい。また、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または、B7−H1またはPD−1に加えて異なる標的に対して特異性を示すより大きな多特異性の抗体も対象である。好ましい実施形態において、上記多重特異性抗体は、異なる免疫細胞標的に対して特異性を示すであろう。たとえば、上記抗体は、B7−H1およびB7−DCの両方に結合して、それにより、両方のPD−1依存性反応を調節してもよい。反対に、上記抗体は、PD−1およびB7−1の両方に結合して、両方のB7−H1依存性反応を妨げてもよい。別の実施形態において、上記多重特異性抗体は、CTLA4、TIM3、TIM4、OX40、CD40、GITR、4−1−BB、B7−H4、LIGHT、または、LAG3などの代替的免疫調節経路に含まれる分子(受容体、または、リガンド)に対して、免疫調節効果を高めるために結合してもよい。さらに、上記多重特異性抗体は、急性および慢性免疫反応の両方の調節に特に関連し得る、サイトカイン(たとえば、IL−7、IL−15、IL−12、IL−4 TGF−beta、IL−10、IL−17、IFNg、Flt3、BLys)およびケモカイン(たとえば、CCL21)のようなエフェクター分子に結合してもよい。
【0068】
さらに、多重特異性抗体は、抗体の標的を特定の細胞型または組織とするのに重要な抗原に結合してもよい。たとえば、PD−1とCD27と(または、B7−H1とCD27と)の両者に結合する抗体は、活性記憶B細胞(mB
Act)の生存を助長するように抗原提示細胞(APC)により配列されたPD−1がmB
Act B細胞の表面のリガンドと相互作用することができるように、mB
Act B細胞とAPCとの共存を促進することができる。mB
Act B細胞の喪失は、AIDSへのHIV感染の進行における引き金となるため(Titanji, K. et al. (2010) "Acute Depletion Of Activated Memory B Cells Involves The PD-1 Pathway In Rapidly Progressing SIV-Infected Macaques," J. Clin. Invest. 120(11):3878-3890)、PD−1とCD27との両者に結合する抗体は、感染の治療、および、AIDSの発症を防ぐ、または、遅らせることにおいて有用性がある。上述のように、PD−1経路は、慢性HIV感染中の免疫機能の障害(「T細胞疲弊」)において重要な役割を果たすものとして関与している(Khaitan, A. et al. (2011) "Revisiting Immune Exhaustion During HIV Infection," Curr. HIV/AIDS Rep. 8:4-11; Rodriquez-Garcia, M. et al. (November 19, 2010) "Expression Of PD-L1 And PD-L2 On Human Macrophages Is Up-Regulated By HIV-1 And Differentially Modulated By IL-10," J. Leukocyte Biol. 89: doi:10.1189/jlb.0610327:1-9; Grabmeier-Pfistershammer, K. et al. (2011) "Identification of PD-1 as a Unique Marker for Failing Immune Reconstitution in HIV-1-Infected Patients on Treatment," J Acquir. Immune Defic. Syndr. 56(2):118-124)。マクロファージは、有意にHIV感染の初期段階の一因となる(Carter, C. A. et al. (2008) "Cell Biology Of HIV-1 Infection Of Macrophages," Ann. Rev. Microbiol. 62:425-443; Noursadeghi, M. et al. (2006) "HIV-1 Infection Of Mononuclear Phagocytic Cells: The Case For Bacterial Innate Immune Deficiency In AIDS," Lancet Infect. Dis. 6:794-804)。したがって、PD−1とマクロファージ特異的マーカー(たとえば、CD14、CD68、CD163、TLR2、など)とに結合する抗体は(特に、毒素に接合したならば)、HIV感染を防ぐのに有用性がある。さらに、T細胞疲弊の複数のマーカー(たとえば、PD−1、および、以下のうちのいずれか、または、すべて:CTLA4、TIM3、TIM4またはLAG−3)に結合する抗体は、免疫応答性の治療または診断に有用性がある。対象となる他の標的抗原としては、癌細胞マーカーが挙げられる。
【0069】
さらに、PD−1
+ CD8
+細胞が抗HIV活性を有することが分かっている(Killian, M.S. et al. (2011) "Natural Suppression of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Replication Is Mediated by Memory CD8
+ T Cells," J. Virol. 85(4):1696-1705)。よって、PD−1とCD8との両者に結合する抗体は、たとえば、患者におけるHIV感染やAIDSの治療における最終的な使用目的で上記細胞集団を単離して産生する生体外手段において有用性がある。
【0070】
上記抗PD−1または抗B7−H1二重特異性抗体、三重特異性抗体または多重特異性抗体において用いてもよいその他マーカーとしては、CD4、CD8、CD25およびCTLA−4が挙げられる(De Keersmaecker, B. et al. (2011) ("Fighting with the Enemy's Weapons? The Role of Costimulatory Molecules in HIV," Curr. Molec. Med. 566-5240/11: 1-25、および、Sarikonda, G. (2011) "Immunosuppressive Mechanisms During Viral Infectious Diseases;" Methods in Molec. Biol. 677:431-447、両文献を、参照により本明細書に援用する)。
【0071】
同様に、CD4 T細胞は、結核菌(M.tuberculosis)の成長と拡散を減速するために必要であるが、PD−1を介した抑制も、CD4
+ T細胞が重症疾病を促進するのを防ぐのに必要とされる(Barber, D.L. et al. (2011) "CD4 T Cells Promote Rather than Control Tuberculosis in the Absence of PD-1-Mediated Inhibition," J. Immunol. 186:1598-1607; Sakai, S. et al. (2010) "PD-1 - PD-L1 pathway impairs T
h1 immune response in the late stage of infection with Mycobacterium bovis bacillus Calmette-Guerin," Intl. Immunol. 22(12):915-925; Lazar-Molnar, E. et al. (2010) "Programmed Death-1 (PD-1)-Deficient Mice Are Extraordinarily Sensitive To Tuberculosis," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 107(30):13402-13407)。よって、CD4とPD−1とに結合する抗体は、結核の治療において、および、結核の発症の防止、または、遅延において有用性がある。
【0072】
好ましいヒトアクセプターフレームワーク配列をコードするDNA配列としては、ヒト生殖細胞系VHセグメントVH1−18およびJH6、および、ヒト生殖細胞系VLセグメントVK−A26およびJK4由来のFRセグメントが挙げられるが、これらに限定はされない。具体的な実施形態において、所定の遺伝子組み換え技術を用いて、1つ以上のCDRがフレームワーク領域内に挿入される。上記フレームワーク領域は、天然フレームワーク領域、または、コンセンサスフレームワーク領域であってよく、好ましくは、ヒトフレームワーク領域であってよい(ヒトフレームワーク領域の列挙については、たとえば、Chothia et al., 1998, J. Mol. Biol. 278: 457-479、参照)。
【0073】
本発明のヒト化またはキメラ抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質全てを有していてもよい。上記可変ドメインにおいて、CDR領域の全て、または、実質全てが非ヒト免疫グロブリン(i.e.、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、かつ、フレームワーク領域の全て、または、実質全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列である。本発明の抗体も、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を有することが好ましい。本発明の上記抗体の上記定常ドメインは、上記抗体の提案された機能、特に、必要とされるであろうエフェクター機能に関して選択してよい。いくつかの実施形態において、本発明の上記抗体の上記定常ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMドメインである(または有する)。具体的な実施形態において、本発明のヒト化抗体が治療上の使用を目的とし、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)活性のような抗体エフェクター機能が必要とされる場合、ヒトIgG定常ドメイン、特に、上記IgG1およびIgG3アイソタイプのヒトIgG定常ドメインが用いられる。たとえば、PD−1は、T細胞、および、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)のようなまれな抹消T細胞リンパ腫に高度に発現する。ADCCまたはCDC活性を有する抗PD−1抗体は、上記のような癌を治療するための治療剤として、特に関係がある。代替的な実施例において、本発明の上記抗体が治療目的を対象とし、抗体エフェクター機能が必要とされない場合には、IgG2およびIgG4アイソタイプが用いられる。たとえば、T細胞の表面のPD−1を標的にすることにより、T細胞の活性を増幅したい場合、T細胞を殺すであろうエフェクター機能は、望ましくないであろう。本発明は、米国特許出願公開公報第2005/0037000号および第2005/0064514号に記載されたもののような抗体エフェクター機能を変える1つ以上のアミノ酸修飾を有するFc定常ドメインを包含する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明の上記抗体は、軽鎖と少なくとも重鎖の可変ドメインとの両方を含有する。別の実施形態において、本発明の上記抗体は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域の1つ以上をさらに有していてもよい。上記抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgE含む免疫グロブリンの任意のクラス、および、IgG
1、IgG
2、IgG
3およびIgG
4を含む任意のアイソタイプより選択できる。いくつかの実施形態において、上記定常ドメインは、上記抗体が細胞傷害活性を提示することが望ましい補体結合性定常ドメイン、上記クラスは、通常、IgG
1である。上記のような細胞傷害活性が望ましくない他の実施形態において、上記定常ドメインはIgG
2クラスのものであってもよい。本発明の上記抗体は、1つ以上のクラス、または、アイソタイプ由来の配列を有していてもよい。そして、所望のエフェクター機能を最適化するように特定の定常ドメインを選択することは、本技術分野における通常技術の範囲内にある。
【0075】
ヒト化抗体の上記フレームワークおよびCDR領域は、正確に親配列に対応している必要はない。たとえば、CDRまたはフレームワーク残基がその部位で、コンセンサスまたはドナー抗体のどちらにも対応しないように、少なくとも1個の残基の置換、挿入、または、欠失により、上記ドナーCDR、または、コンセンサスフレームワークを変異させてもよい。しかし、このような変異は、広範囲に及ばないことが好ましい。通例、ヒト化抗体残基の少なくとも75%が、より多くの場合は90%が、さらに好ましくは95%超が、親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のものに対応する。ヒト化抗体は、本技術分野において周知の様々な技術を用いて産生できる。そのような技術としては、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;国際公開公報第WO91/09967号;および、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)、または、リサーフェシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号および第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;および、Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973)、鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)、および、たとえば、以下に開示される技術が挙げられるが、これらに限定されない:米国特許第6,407,213号、第5,766,886号および第5,585,089号;国際公開公報第WO9317105号;Tan et al., 2002, J. Immunol. 169:1119-25, Caldas et al., 2000, Protein Eng. 13:353-60, Morea et al., 2000, Methods 20:267-79, Baca et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84, Roguska et al., 1996, Protein Eng. 9:895-904, Couto et al., 1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s, Couto et al., 1995, Cancer Res. 55:1717-22, Sandhu, 1994, Gene 150:409-10, Pedersen et al., 1994, J. Mol. Biol. 235:959-73, Jones et al., 1986, Nature 321:522-525, Riechmann et al., 1988, Nature 332:323、および、Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596。しばしば、フレームワーク領域におけるフレームワーク残基が、抗原結合を変えるため、好ましくは、改良するために、CDRドナー抗体由来の対応残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、本技術分野において周知の方法で特定される。その方法として、たとえば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定する、CDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリング、および、特定位置における異常なフレームワーク残基を特定する配列比較が挙げられる(たとえば、Queenらの米国特許第5,585,089号;米国公開公報第2004/0049014号および第2003/0229208号;米国特許第6,350,861号、第6,180,370号、第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号および第5,530,101号;および、Riechmann et al., 1988, Nature 332:323、参照).
本発明の抗体は、ポリペプチドの産生に有益な、本技術分野において周知の方法により、産生してもよい。このような方法としては、たとえば、インビトロ合成、組み換えDNA産生、などがある。上記ヒト化抗体は、遺伝子組み換えDNA技術により産生されることが好ましい。本発明の上記抗体は、組み換え免疫グロブリン発現技術を用いて、産生してもよい。ヒト化抗体を含む、免疫グロブリン分子の組み換え体の産生は、以下に記載されている:米国特許第4,816,397号(Boss et al.);米国特許第6,331,415号および第4,816,567号(両方ともCabilly et al.に属する);英国特許第2,188,638号(Winter et al.);および、英国特許第2,209,757号。ヒト化免疫グロブリンを含む、免疫グロブリンの組み換え発現技術も、以下で確認できる:Goeddel et al., Gene Expression Technology Methods in Enzymology Vol. 185 Academic Press (1991);および、Borreback, Antibody Engineering, W. H. Freeman (1992)。組み換え抗体の生成、設計、および、発現に関わる付加情報は、以下で確認できる:Mayforth, Designing Antibodies, Academic Press, San Diego (1993)。
【0076】
本発明の組み換えキメラ抗体の産生工程の例は、以下の工程を有していてもよい:a)マウス抗B7−H1(または抗PD−1)モノクローナル抗体のCDRおよび可変領域がヒト免疫グロブリン由来のFc領域に融合している抗体重鎖をコードし、発現する発現ベクターを、従来の分子生物学的方法により構築し、それにより、キメラ抗体重鎖の発現用ベクターを産生する工程;b)マウス抗B7−H1(または抗PD−1)モノクローナル抗体の抗体軽鎖をコードし、発現する発現ベクターを、従来の分子生物学的方法により、構築し、それにより、キメラ抗体軽鎖の発現用ベクターを産生する工程;c)キメラ抗体の発現用のトランスフェクト宿主細胞を産生するように、従来の分子生物学的方法により発現ベクターを宿主細胞に移入する工程;および、d)キメラ抗体を産生するために、従来の細胞培養技術でトランスフェクト細胞を培養する工程。
【0077】
本発明の組み換えヒト化抗体の産出の工程の例は、以下の工程を有していてもよい:a)ドナー抗体結合特異性を保持する必要があるCDRと可変領域フレームワークの最低限の部分とがマウス抗B7−H1(または抗PD−1)モノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来しており、上記抗体の残りの部分が、ヒト免疫グロブリンに由来している抗体重鎖をコードし、発現する発現ベクターを、従来の分子生物学的方法により構築し、それにより、ヒト化抗体重鎖の発現用ベクターを産生する工程;b)ドナー抗体結合特異性を保持する必要があるCDRと可変領域フレームワークの最低限の部分とがマウス抗B7−H1(または抗PD−1)モノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来しており、上記抗体の残りの部分が、ヒト免疫グロブリンに由来している抗体軽鎖をコードし、発現する発現ベクターを、従来の分子生物学的方法により構築し、それにより、ヒト化抗体軽鎖の発現用ベクターを産生する工程;c)ヒト化抗体の発現用のトランスフェクト宿主細胞を産生するために、従来の分子生物学的方法により、発現ベクターを宿主細胞に移入する工程;および、d)ヒト化抗体を産生するために、従来の細胞培養技術でトランスフェクト細胞を培養する工程。
【0078】
いずれの方法の例についても、異なる選択可能なマーカーを含有していてもよいが重鎖および軽鎖をコードする配列を除いて同一であることが好ましい上記発現ベクターと、宿主細胞が共存していてもよい。この手順により、重鎖および軽鎖ポリペプチドが同等に発現される。あるいは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを用いてもよい。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNA、または、ゲノムDNA、または、これらの両方を有していてもよい。本発明の組み換え抗体を発現させるのに用いられる上記宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)のような細菌性細胞であってもよいし、または、より好ましくは、真核細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、HEK−293細胞)であってもよい。発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択によってきまり、選択された宿主細胞において所望の発現、および、調節特性が得られるように選択してもよい。用いることが可能な他の細胞株としては、CHO−K1、NSO、およびPER.C6(Crucell社、ライデン、オランダ)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、宿主細胞が、種特異的なコドン使用頻度の偏りの主要因となり、タンパク質の発現を高めるように選択される場合、コドン使用頻度は、最適化できる。たとえば、CHO細胞の発現のために、抗体をコードするDNAが、優先的に用いられるコドンをモンゴルキヌゲネズミ(Cricetulus griseus)(これからチャイニーズハムスター卵巣細胞が得られる)により組み込んでいてもよい。コドン最適化方法は、所望の宿主細胞による改良された発現を促進するために用いられる(たとえば、Wohlgemuth, I. et al. (2011) "Evolutionary Optimization Of Speed And Accuracy Of Decoding On The Ribosome," Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 366(1580):2979-2986; Jestin, J.L. et al. (2009) "Optimization Models And The Structure Of The Genetic Code," J. Mol. Evol. 69(5):452-457; Bollenbach, T. et al. (2007) "Evolution And Multilevel Optimization Of The Genetic Code," Genome Res. 17(4):401-404; Kurland, C.G. et al. (1984) "Optimization Of Translation Accuracy," Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 31:191-219; Grosjean, H. et al. (1982) "Preferential Codon Usage In Prokaryotic Genes: The Optimal Codon-Anticodon Interaction Energy And The Selective Codon Usage In Efficiently Expressed Genes," Gene 18(3):199-209、参照)。
【0079】
上述の抗体のいずれかは、本技術分野における当業者に周知の技術を用いて、抗イディオタイプ抗体を生成するために用いることができる(たとえば、Greenspan, N.S. et al. (1989) "Idiotypes: Structure And Immunogenicity," FASEB J. 7:437-444;および、Nisinoff, A. (1991) "Idiotypes: Concepts And Applications," J. Immunol. 147(8):2429-2438、参照)。
【0080】
上記抗体のいずれの結合特性も、望むなら、そのように所望の特性を提示する変異体についてスクリーニングすることによって、さらに改良することができる。たとえば、そのような抗体は、本技術分野において周知の様々なファージ提示法を用いて、生成できる。ファージ提示法では、機能抗体ドメインが、機能抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列があるファージ粒子の表面に提示される。特定の実施形態において、レパートリーまたは組み合わせ抗体ライブラリ(たとえば、ヒト、または、マウス)より発現したFabおよびFv、または、ジスルフィド結合安定化Fvのような抗原結合ドメインを提示するために上記ファージを用いることができる。対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、たとえば、標識化された抗原、または、固体表面あるいはビーズに結合した、または、捕えられた抗原を用いて、選択または特定できる。これらの方法において用いられるファージは、通常、fdおよびM13を含む、線状ファージである。抗原結合メインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のどちらかに組み換え技術で融合したタンパク質として発現される。本発明の免疫グロブリン、または、そのフラグメントの作製に用いることができるファージ提示法の例としては、以下に開示される方法が挙げられる:Brinkman, U. et al. (1995) "Phage Display Of Disulfide-Stabilized Fv Fragments," J. Immunol. Methods, 182:41-50, 1995; Ames, R.S. et al. (1995) "Conversion Of Murine Fabs Isolated From A Combinatorial Phage Display Library To Full Length Immunoglobulins," J. Immunol. Methods, 184:177-186; Kettleborough, C.A. et al. (1994) "Isolation Of Tumor Cell-Specific Single-Chain Fv From Immunized Mice Using Phage-Antibody Libraries And The Re-Construction Of Whole Antibodies From These Antibody Fragments," Eur. J. Immunol., 24:952-958, 1994; Persic, L. et al. (1997) "An Integrated Vector System For The Eukaryotic Expression Of Antibodies Or Their Fragments After Selection From Phage Display Libraries," Gene, 187:9-18; Burton, D.R. et al. (1994) "Human Antibodies From Combinatorial Libraries," Adv. Immunol. 57:191-280;PCT公開公報第WO92/001047号、第WO90/02809号、第WO91/10737号、第WO92/01047号、第WO92/18619号、第WO93/11236号、第WO95/15982号および第WO95/20401号;および、米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号;、第5,427,908号;、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号および第5,969,108号。
【0081】
上記参考文献に記載されるように、ファージの選択後、上記ファージ由来の抗体をコードする領域は、単離して、ヒト化抗体、または、任意の他の所望のフラグメントを含む全抗体を生成するのに用いることができ、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および、細菌を含む任意の所望の宿主において発現できる。この詳細は、たとえば、以下に記載される。たとえば、Fab、Fab’およびF(ab’)
2フラグメントを組み換え技術によって産出する技術も、以下の文献に開示された、本技術分野において周知の方法を用いて、用いることができる:PCT公開公報第WO92/22324;Mullinax, R.L. et al. (1992) "Expression Of A Heterodimeric Fab Antibody Protein In One Cloning Step," BioTechniques, 12(6):864-869; and Sawai et al. (1995) "Direct Production Of The Fab Fragment Derived From The Sperm Immobilizing Antibody Using Polymerase Chain Reaction And cDNA Expression Vectors," Am. J. Reprod. Immunol. 34:26-34;および、Better, M. et al. (1988) "Escherichia coli Secretion Of An Active Chimeric Antibody Fragment," Science 240:1041-1043)。一本鎖Fvsと抗体との産生に用いることができる技術の例として、以下の文献に記載のものが挙げられる:米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Huston, J.S. et al. (1991) "Protein Engineering Of Single-Chain Fv Analogs And Fusion Proteins," Methods in Enzymology 203:46-88; Shu, L. et al., "Secretion Of A Single-Gene-Encoded Immunoglobulin From Myeloma Cells," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90:7995-7999; and Skerra. A. et al. (1988) "Assembly Of A Functional Immunoglobulin Fv Fragment In Escherichia coli," Science 240:1038-1040。
【0082】
ファージ提示技術は、本発明の抗体のB7−H1および/またはPD−1に対する親和性を高めるために用いることができる。この技術は、本発明の組み合わせ方法において用いることが可能な高親和性抗体を得ることにおいて有益であろう。この技術は、親和性成熟と呼ばれ、上記受容体あるいはリガンド(または、それらの細胞外ドメイン)、または、それらの抗原フラグメントを用いた、変異生成またはCDRウォーキング、および、再選択を用いて、初期抗体、または、親抗体と比べて抗原に対してより高い親和性で結合する抗体を特定する(たとえば、Glaser, S.M. et al. (1992) "Antibody Engineering By Codon-Based Mutagenesis In A Filamentous Phage Vector System," J. Immunol. 149:3903-3913、参照)。単一ヌクレオチドよりもコドン全体を変異させる結果として、アミノ酸変異体の半ランダム化したレパートリーが得られる。単一CDRにおける単一アミノ酸変化によってそれぞれ異なる、そして、各CDR残基のそれぞれ可能なアミノ酸置換を示す変異体を含有する、変異型クローンのプールからなるライブラリが構築できる。標識化抗原を有する固定化変異体を接触させることによって、抗原に対して高められた結合親和性を有する変異体をスクリーニングすることができる。抗原に対して高められた親和性を有する変異抗体を特定するのに、本技術分野において周知の任意のスクリーニング方法が用いられる(たとえば、ELISA)(たとえば、Wu, H. et al. (1998) "Stepwise In Vitro Affinity Maturation Of Vitaxin, An Alphav Beta3-Specific Humanized Mab," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95(11):6037-6042; Yelton, D.E. et al. (1995) "Affinity Maturation Of The BR96 Anti-Carcinoma Antibody By Codon-Based Mutagenesis," J. Immunol. 155:1994-2004、参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングを場合によっては用いることができる(Schier et al. (1996) "Isolation Of Picomolar Affinity Anti-C-Erbb-2 Single-Chain Fv By Molecular Evolution Of The Complementarity Determining Regions In The Center Of The Antibody Binding Site," J. Mol. Biol. 263:551-567、参照)。
【0083】
したがって、本発明は、改良CDRおよび/または可変領域を特定するためにファージ提示法と合わせてランダム変異生成を使用することを検討する。ファージ提示技術は、代替的に、対象の変異生成(たとえば、親和性成熟または「CDRウォーキング」)によるCDR親和性を高める(または、低下させる)ために用いることができる。この技術は、初期抗体、または、親抗体と比べた場合に、抗原に対してより高い(または、より低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を特定するために、標的抗原、または、その抗原フラグメントを使用する(たとえば、Glaser, S.M. et al. (1992) "Antibody Engineering By Codon-Based Mutagenesis In A Filamentous Phage Vector System," J. Immunol. 149:3903-3913、参照)。単一ヌクレオチドよりもコドン全体を変異させる結果として、アミノ酸変異体の半ランダム化したレパートリーが得られる。単一CDRにおける単一アミノ酸変化によってそれぞれ異なる、そして、各CDR残基のそれぞれの可能なアミノ酸置換を示す変異体を含有する、変異型クローンのプールからなるライブラリが構築できる。標識化された抗原を有する固定化変異体を接触させることによって、抗原に対して高められた(または、低下された)結合親和性を有する変異体をスクリーニングすることができる。抗原に対して高められた(または、低下された)親和性を有する変異抗体を特定するのに、本技術分野において周知の任意のスクリーニング方法が用いられる(たとえば、ELISA)(Wu, H. et al. (1998) "Stepwise In Vitro Affinity Maturation Of Vitaxin, An Alphav Beta3-Specific Humanized Mab," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95(11):6037-6042; Yelton, D.E. et al. (1995) "Affinity Maturation Of The BR96 Anti-Carcinoma Antibody By Codon-Based Mutagenesis," J. Immunol. 155:1994-2004、参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングを場合によっては用いることができる(Schier et al. (1996) "Isolation Of Picomolar Affinity Anti-C-Erbb-2 Single-Chain Fv By Molecular Evolution Of The Complementarity Determining Regions In The Center Of The Antibody Binding Site," J. Mol. Biol. 263:551-567、参照)。
【0084】
上記の親和性成熟を達成する方法は、たとえば、以下に記載されている:Krause, J.C. et al. (2011) An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody," MBio. 2(1) pii: e00345-10. doi: 10.1128/mBio.00345-10; Kuan, C.T. et al. (2010) "Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas," Int. J. Cancer 10.1002/ijc.25645; Hackel, B.J. et al. (2010) "Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes," J. Mol. Biol. 401(1):84-96; Montgomery, D.L. et al. (2009) "Affinity Maturation And Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41," MAbs 1(5):462-474; Gustchina, E. et al. (2009) "Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fabs With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth," Virology 393(1):112-119; Finlay, W.J. et al. (2009) "Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy: Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions," J. Mol. Biol. 388(3):541-558; Bostrom, J. et al. (2009) "Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development," Methods Mol. Biol. 525:353-376; Steidl, S. et al. (2008) "In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification," Mol. Immunol. 46(1):135-144;および、Barderas, R. et al. (2008) "Affinity maturation of antibodies assisted by in silico modeling," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 105(26):9029-9034。
【0085】
本発明は、特に、上記抗体のいずれかおよびそれらの抗原結合性フラグメントの「誘導体」の生産と使用とに関する。ここで「誘導体」とは、免疫特異的に抗原に結合し、親(または野生種)分子に対して1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上のアミノ酸の置換、付加、欠失、または修飾を含む抗体またはその抗原結合フラグメントのことを言う。そのようなアミノ酸の置換または付加によって、天然の(すなわち、DNAコードされた)または非天然のアミノ酸残基が取り込まれる。そのようなアミノ酸は、細胞リガンドや他のタンパク質に連結された周知の保護基、タンパク質分解的切断等によって、グリコシル化(たとえば、改変されたマンノース、2−Nアセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5−N−アセチルノラミン酸、5−グリコールノイラミン酸等の含有量を有する)、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、誘導体化してもよい。いくつかの実施形態では、改変された炭水化物修飾によって、以下の1つ以上が調節される:抗体の可溶化、抗体の細胞内輸送と分泌の円滑化、抗体集合の促進、立体構造の整合性、および抗体媒介エフェクター機能。特定の実施形態では、改変された炭水化物修飾によって、炭水化物の修飾が欠如した抗体に対する抗体媒介エフェクター機能が強化される。抗体媒介エフェクター機能の改変をもたらす炭水化物修飾は、当該技術において周知である(たとえば、Shields, R.L. et al. (2002) "Lack Of Fucose On Human IgG N-Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody-Dependent Cellular Toxicity.," J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740; Davies J. et al. (2001) "Expression Of GnTIII In A Recombinant Anti-CD20 CHO Production Cell Line: Expression Of Antibodies With Altered Glycoforms Leads To An Increase In ADCC Through Higher Affinity For FC Gamma RIII," Biotechnology & Bioengineering 74(4): 288-294参照)。炭水化物含有量を改変する方法は、当業者に周知である(たとえば、Wallick, S.C. et al. (1988) "Glycosylation Of A VH Residue Of A Monoclonal Antibody Against Alpha (1----6) Dextran Increases Its Affinity For Antigen," J. Exp. Med. 168(3): 1099-1109; Tao, M.H. et al. (1989) "Studies Of Aglycosylated Chimeric Mouse-Human IgG. Role Of Carbohydrate In The Structure And Effector Functions Mediated By The Human IgG Constant Region," J. Immunol. 143(8): 2595-2601; Routledge, E.G. et al. (1995) "The Effect Of Aglycosylation On The Immunogenicity Of A Humanized Therapeutic CD3 Monoclonal Antibody," Transplantation 60(8):847-53; Elliott, S. et al. (2003) "Enhancement Of Therapeutic Protein In Vivo Activities Through Glycoengineering," Nature Biotechnol. 21:414-21; Shields, R.L. et al. (2002) "Lack Of Fucose On Human IgG N-Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody-Dependent Cellular Toxicity.," J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740参照)。
【0086】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は誘導体である。そのようなヒト化抗体は、1つ以上の非ヒトCDRに、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加を含む。このヒト化抗体誘導体は、非誘導体ヒト化抗体に比べて、同じ、優れた、または劣った結合を実質的に有してもよい。特定の実施形態では、CDRの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上のアミノ酸残基が置換、欠失、または付加(すなわち、変異)されている。
【0087】
誘導体抗体また抗体フラグメントは、当業者に周知の技術を用いて化学的修飾によって修飾してもよい。この化学的修飾としては、限定されないが、特定の化学分解、アセチル化、製剤、ツニカマイシンの代謝合成等が挙げられる。ある実施形態では、抗体誘導体は、親抗体と類似または同一の機能を有する。別の実施形態では、抗体誘導体は、親抗体に対して改変された活性を示す。たとえば、誘導体抗体(またはそのフラグメント)は、そのエピトープによって強固に結合することができる。または、タンパク質分解に対して親抗体よりも高い抵抗を示すことができる。
【0088】
誘導体化された抗体における置換、付加、または欠失は、抗体のFc領域に位置してもよく、それによって、1つ以上のFcγRに対する抗体の結合親和性を修飾する働きをしてもよい。1つ以上のFcγRへの結合が修飾された抗体を修飾する方法は、当該技術において周知である(たとえば、PCT出願第WO04/029207号、第WO04/029092号、第WO04/028564号、第WO99/58572号、第WO99/51642号、第WO98/23289号、第WO89/07142号、および第WO88/07089号、ならびに米国特許第5,843,597および第5,642,821号参照)。いくつかの実施形態では、本発明は、FcγRIIIA等の活性化FcγRに対する親和性が改変された抗体を包含する。そのような修飾は、Fc媒介エフェクター機能も改変されていることが好ましい。Fc媒介エフェクター機能に影響を与える修飾は、当該技術において周知である(米国特許第6,194,551号ならびにWO00/42072参考)。1つの特定の実施形態では、Fc領域の修飾によって、抗体の抗体媒介エフェクター機能、他のFc受容体(たとえば、Fc活性化受容体)への改変結合、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)活性、C1q結合活性、補体依存性細胞毒性(CDC)活性、食細胞活性、またはこれらの組み合わせが改変される。
【0089】
誘導体化された抗体は、哺乳類、好ましくはヒト、における親抗体の半減期(たとえば、血中半減期)を改変するのに用いてもよい。好ましくは、そのような改変によって、半減期が15日、好ましくは20日、25日、30日、35日、40日、45日、2ヶ月、3ヶ月、4か月、または5か月を超える。哺乳類、好ましくはヒト、における本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントの半減期の増加によって、哺乳類における上記抗体または抗体フラグメントの血清力価が高くなり、それにより、上記抗体または抗体フラグメントの投与の頻度または投与する上記抗体または抗体フラグメントの濃度が低下する。生体内半減期が増加した抗体またはそのフラグメントは、当業者に周知の技術によって生成することができる。たとえば、生体内半減期が増加した抗体またはそのフラグメントは、FcドメインとFcRn受容体との相互作用に関与すると同定されたアミノ酸残基を修飾(たとえば、置換、欠失、付加)することによって生成することができる。本発明のヒト化抗体は、生物学的半減期を増加させるように設計されてもよい(たとえば、米国特許第6,277,375号参照)。たとえば、本発明のヒト化抗体は、生体内または血中半減期を増加させるようにFcヒンジドメインで設計されてもよい。
【0090】
生体内半減期が増加した抗体またはそのフラグメントは、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)等の高分子を上記抗体または抗体フラグメントに結合させることによって生成することができる。PEGは、上記抗体または抗体フラグメントのN−またはC−末端にPEGの部位特異的接合またはリジン残基に存在するイプシロンアミノ基を介して、多官能性リンカーの有無にかかわらず、上記抗体または抗体フラグメントに結合することができる。生物活性のロスが最小限となる線状または分岐状のポリマー誘導体化が用いられる。接合度は、SDS−PAGEと質量分析法によって注意深く監視し、抗体に対するPEG分子の適正な接合を確保する。未反応PEGは、たとえば、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体とPEGの複合体から分離することができる。
【0091】
実質的な免疫原性反応なしに哺乳類の循環系に注入できる組成物を提供するために、本発明の抗体をDavis et al. (米国特許第4,179,337号参照)に記載の方法とカップリング剤によって修飾してもよい。
【0092】
本発明は、本発明のヒト化抗体のフレームワーク残基の修飾を包含する。フレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、抗原結合を変性、好ましくは改善、するために、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換してもよい。これらのフレームワーク置換は、当該技術において周知の方法によって同定される。たとえば、特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定するための抗原結合および配列比較に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデル化によって同定される(たとえば、米国特許第5,585,089号およびRiechmann, L. et al. (1988) "Reshaping Human Antibodies For Therapy," Nature 332:323-327参照)。
【0093】
また、本発明は、異種分子(すなわち、非関連分子)に組み換え融合または化学的に結合(共有結合および非共有結合を共に含む)される抗ヒトB7−H1および抗ヒトPD−1抗体(および、好ましくは、ヒト化抗体)およびその抗原結合フラグメントを包含する。融合は、必ずしも直接融合である必要はなく、リンカー配列を通じて生じてもよい。
【0094】
融合タンパク質のFc部分は、アイソタイプまたはサブクラスによって変化させてもよく、キメラタンパク質またはハイブリッドタンパク質であってもよく、および/または、たとえばエフェクター機能、半減期の制御、組織の入手しやすさを改善し、安定性などの生物物理学的特徴を強化し、生産の効率(およびコストの削減)を改善するために、修飾されてもよい。開示された融合プロテインの構築に有用な多くの修飾とその方法は、当該技術において周知である(たとえば、Mueller, J.P. et al. (1997) "Humanized Porcine VCAM-Specific Monoclonal Antibodies With Chimeric Igg2/G4 Constant Regions Block Human Leukocyte Binding To Porcine Endothelial Cells," Mol. Immun. 34(6):441-452, Swann, P.G. (2008) "Considerations For The Development Of Therapeutic Monoclonal Antibodies," Curr. Opin. Immun. 20:493-499 (2008)およびPresta, L.G. (2008) "Molecular Engineering And Design Of Therapeutic Antibodies," Curr. Opin. Immun. 20:460-470参照)。いくつかの実施形態では、Fc領域は、天然のIgG1、IgG2、またはIgG4 Fc領域である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ハイブリッド、たとえば、IgG2/IgG4 Fc定常領域から成るキメラである。Fc領域への修飾としては、Fcガンマ受容体と相補体への結合を防止するためのIgG4の修飾、1つ以上のFcガンマ受容体への結合を改善するためのIgG1の修飾、エフェクター機能(アミノ酸変化)を最小限に抑えるためのIgG1の修飾、(通常は発現ホストを変えることによって)グリカンが変性したまたはグリカンがないIgG1があるが、これらに限定されない。Fc領域は、ヒンジ領域全体、またはヒンジ領域全体未満を含んでもよい。
【0095】
非ホジキンリンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症のためのリツキシマブ(CD20に対するキメラマウス−ヒトIgG1モノクローナル抗体)で治療した患者における治療結果は、ヒトIgG1のFcドメインに対して個別に内在する親和性を持ったFcγ受容体の対立遺伝子多型の個人の発現と相関性があった。特に、低親和性活性Fc受容体CD16A(FcγIIIA)の高親和性対立遺伝子を持った患者は、より高い反応速度を示し、非ホジキンリンパ腫の場合は、無進行性生存率が改善した。別の実施形態では、低親和性抑制性Fc受容体CD32B(FcγRIIB)への結合を抑え、かつ、低親和性活性Fc受容体CD16A(FcγIIIA)への結合の野生型レベルを維持または親和性活性Fc受容体CD16A(FcγIIIA)への結合を促進する1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含んでもよい。
【0096】
別の実施形態には、IgG2−4ハイブリッドとIgG4突然変異体が含まれ、これらは、その半減期を延ばすFcRに対る結合を抑える。代表的なIgG2−4ハイブリッドとIgG4突然変異体は、Angal, S. et al. (1993) "A Single Amino Acid Substitution Abolishes The Heterogeneity Of Chimeric Mouse/Human (IgG4) Antibody," Molec. Immunol. 30(1):105-108; Mueller, J.P. et al. (1997) "Humanized Porcine VCAM-Specific Monoclonal Antibodies With Chimeric IgG2/G4 Constant Regions Block Human Leukocyte Binding To Porcine Endothelial Cells," Mol. Immun. 34(6):441-452、および米国特許第6,982,323号に記載されている。いくつかの実施形態では、IgG1および/またはIgG2ドメインが欠失しており、たとえば、Angal et al.では、セリン241をプロリンで置換したIgG1およびIgG2ドメインが記載されている。
【0097】
好ましい実施形態では、Fcドメインは、CD16Aへの結合を促進するアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含む。CD16Aへの結合を増加させ、かつ、CD32Bへの結合を減少させるヒトIgG1のFcドメインにおける多くの置換は、Stavenhagen, J.B. et al. (2007) "Fc Optimization Of Therapeutic Antibodies Enhances Their Ability To Kill Tumor Cells In Vitro And Controls Tumor Expansion In Vivo Via Low-Affinity Activating Fcgamma Receptors," Cancer Res. 57(18):8882-8890に記載されている。CD16Aへの結合増加および/またはCD32Bへの結合減少を持ったヒトIgG1Fcドメインの変異体としては、たとえば、F243L、R929P、Y300L、V305I、またはP296L置換が挙げられる。これらのアミノ酸置換は、任意の組み合わせでヒトIgG1Fcドメインに存在してもよい。一実施形態では、ヒトIgG1Fcドメイン変異体は、F243L、R929P、およびY300L置換を含む。別の実施形態では、ヒトIgG1Fcドメイン変異体は、F243L、R929P、Y300L、V305I、およびP296L置換を含む。別の実施形態では、ヒトIgG1Fcドメイン変異体は、N297Q置換を含むが、この突然変異体はFcR結合を破壊するためである。
【0098】
一実施形態では、そのような異種分子は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を有するポリペプチドである。あるいは、そのような異種分子は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、薬物部分であってもよい。これらの例としては、毒素(たとえば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素(すなわち、PE−40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン、またはヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質)、タンパク質(たとえば、腫瘍壊死因子、インターフェロン(たとえば、α−インターフェロン、β−インターフェロン)、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、またはアポトーシス剤(たとえば、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子−β))、生物学的反応修飾物質(たとえば、リンホカイン(たとえば、インターロイキン-1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、またはマクロファージコロニー刺激因子(「M−CSF」))、または成長因子(たとえば、成長ホルモン(「GH」)))、細胞毒素(たとえば、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE、たとえば、ベドチン)、ピューロマイシン、およびその類似体または同族体等の細胞増殖抑制または細胞破壊剤)、代謝拮抗物質(たとえば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(たとえば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン、BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(たとえば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(たとえば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、または抗有糸分裂剤(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0099】
このような治療部分を抗体に接合させる技術は周知である(たとえば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Reisfeld et al. (eds.), 1985, pp.243-56, Alan R. Liss, Inc.); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in CONTROLLED DRUG DELIVERY (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp. 623-53, Marcel Dekker, Inc. ); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL APPLICATIONS, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp. 475-506); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY,Baldwin et al. (eds.), 1985, pp. 303-16, Academic Press; Thorpe et al. (1982) "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates," Immunol. Rev. 62:119-158; Carter, P.J. et al. (2008) "Antibody-Drug Conjugates for Cancer Therapy," Cancer J. 14(3):154-169; Alley, S.C. et al. (2010) "Antibody-Drug Conjugates: Targeted Drug Delivery For Cancer," Curr. Opin. Chem. Biol. 14(4):529-537; Carter, P. et al. (2005) "Designer Antibody-Based Therapeutics For Oncology," Amer. Assoc. Cancer Res. Educ. Book. 2005(1):147-154; Carter, P.J. et al. (2008) "Antibody-Drug Conjugates For Cancer Therapy," Cancer J. 14(3):154-169; Chari, R.V.J. (2008) "Targeted Cancer Therapy: Conferring Specificity To Cytotoxic Drugs," Acc. Chem Res. 41(1):98-107; Doronina, S.O. et al. (2003) "Development Of Potent Monoclonal Antibody Auristatin Conjugates For Cancer Therapy," Nat. Biotechnol. 21(7):778-784; Ducry, L. et al. (2010) "Antibody-Drug Conjugates: Linking Cytotoxic Payloads To Monoclonal Antibodies," Bioconjug Chem. 21(1):5-13; Senter, P.D. (2009) "Potent Antibody Drug Conjugates For Cancer Therapy," Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244、およびTeicher, B.A. (2009) "Antibody-Drug Conjugate Targets," Curr Cancer Drug Targets. 9(8):982-1004参照)。
【0100】
本発明のいかなる分子も、精製を促進するペプチド等のマーカー配列に融合することができる。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに対応するヘキサヒスチジンペプチドであるヘマグルチニン「HA」タグ(Wilson, I.A. et al. (1984) "The Structure Of An Antigenic Determinant In A Protein," Cell, 37:767-778)、およびフラグタグ(Knappik, A. et al. (1994) "An Improved Affinity Tag Based On The FLAG Peptide For The Detection And Purification Of Recombinant Antibody Fragments," Biotechniques 17(4):754-761)である。
【0101】
また、本発明は、診断用薬、治療薬、または血中半減期を延ばすことが望まれる他の分子に接合される抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを包含する。これらの抗体は、たとえば、所定の治療計画の有効性を決定するための臨床検査手順の一部として、たとえば、疾患、障害、または感染症の発症または進行を監視するために(生体内、自然位、または生体外で)診断に使用することができる。検出は、検出可能な物質に対する抗体を結合させることによって容易にすることができる。種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、当該技術で周知の技術を用いて、中間体(たとえば、当該技術において周知のリンカー等)を介して、直接または間接的に抗体に結合または接合してもよい。本発明に係る診断法として使用する抗体に接合させることができる金属イオンについては、たとえば、米国特許第4,741,900号参照。そのような診断および検出は、検出可能な物質に交代を結合させることによって達成することができる。検出可能な物質としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ等の種々の酵素、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン等の補欠分子族錯体、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリン等の蛍光物質、ルミノール等の発光物質、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン等の生物発光物質、ビスマス(
213Bi)、炭素(
14C)、クロム(
51Cr)、コバルト(
57Co)、フッ素(
18F)、ガドリニウム(
153Gd、
159Gd)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、ゲルマニウム(
68Ge)、ホルミウム(
166Ho)、インジウム(
115In、
113In、
112In、
111In)、ヨウ素(
131I、
125I、
123I、
121I)、ランタン(
140La)、ルテチウム(
177Lu)、マンガン(
54Mn)、モリブデン(
99Mo)、パラジウム(
103Pd)、リン(
32P)、プラセオジム(
142Pr)、プロメチウム(
149Pm)、レニウム(
186Re、
188Re)、ロジムム(
105Rh)、ルテミウム(
97Ru)、サマリウム(
153Sm)、スカンジウム(
47Sc)、セレン(
75Se)、ストロンチウム(
85Sr)、硫黄(
35S)、テクネチウム(
99Tc)、タリウム(
201Ti)、スズ(
113Sn、
117Sn)、トリチウム(
3H)、キセノン(
133Xe)、イッテルビウム(
169Yb、
175Yb)、イットリウム(
90Y)、亜鉛(
65Zn)等の放射性物質、種々の陽電子放出トモグラフィーを用いた陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の分子は、米国特許第4,676,980号においてSegalによって記載されている通り、第2の抗体に接合させて異種複合体を形成することができる。そのような異種複合体は、さらにハプテン(たとえば、フルオレセイン等)、細胞マーカー(たとえば4−1−BB、B7−H4、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG−3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGHT、ICOS、B7−H3、B7−H7、B7−H7CR、CD70、CD47等)、サイトカイン(たとえば、IL−7、IL−15、IL−12、IL−4 TGF−β、IL−10、IL−17、IFNγ,Flt3,BLys)、またはケモカイン(たとえば、CCL21)等に結合してもよい。
【0103】
本発明の分子は、固体担体に取り付けることができ、これら担体は、標的抗原の、または、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントへの結合を介して担体に固定化された標的抗原に結合可能な他の分子のイムノアッセイまたは精製に特に有用である。そのような固体担体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明は、核酸分子(DNAまたはRNA)を伝達または複製することができる任意のそのような抗体、融合タンパク質またはその断片、ならびにベクター分子(たとえば、プラスミド等)をコードするそのような核酸分子を含む。核酸は、一本鎖、二本鎖とすることができ、一本鎖および二本鎖部分の両方を含んでもよい。
【0105】
(A.本発明の好ましいモジュレータ組成物)
本発明は、特に、B7−H1またはPD−1に免疫特異的に結合し、かつ/または、被験者におけるPD−1へのB7−H1の結合能を調節する抗体に関する。ここで、「被験者」は、好ましくは非霊長類(たとえば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(たとえば、サル、ヒト)のような哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。従って、本発明は、ヒトB7−H1またはヒトPD−1に結合し、かつ、ヒトまたはヒトの組織(自然位または生体外で)におけるPD−1へのB7−H1の結合能を調節するヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0106】
最も好ましくは、そのような抗体および抗原結合フラグメントは、(特に、内因性濃度で表現されたときに)被験者の抗原提示細胞の表面に配列されたB7−H1が、(特に、内因性濃度で表現されたときに)当該被験者のT細胞の表面に配列されたPD−1に結合する能力およびその逆の場合の能力を調節するのに十分な親和性を有する。ここで「内因性濃度」とは、正常細胞、がん細胞、または感染細胞において内因性分子が自然に発現されるレベル(すなわち、発現ベクターや組み換えプロモーターない場合)を指す。
【0107】
一実施形態では、そのような調節は、そのように(好ましくは内因的に発現され)配列されたB7−H1およびそのように(好ましくは内因的に発現され)配列されたPD−1の結合を阻害または干渉することを含む。別の実施形態では、そのような調節は、内因的に発現され配列されたB7−H1およびそのように内因的に発現され配列されたPD−1の結合の強化または促進を含む。さらに別の実施形態では、そのような調節は、抗B7−H1または抗PD−1の結合が、対応する受容体を介したシグナル変換のトリガとなる直接的刺激を含む。
【0108】
(1.好ましい抗ヒトB7−H1抗体およびそのCDR)
本発明によると、そのような分子は、ヒトB7−H1に対して免疫特異的な抗体を産生する分子に対するハイブリドーマ系をスクリーニングし、その後任意で、調節活性(たとえば、中和活性、作動活性、変性シグナル変換活性等)を示す分子に対する当該系統の中でスクリーニングすることによって産生することができる。本発明は、特に、抗ヒトB7−H1クローン(すなわち、1E12、1F4、2G11、3B6、および3D10)を提供する。
【0109】
抗ヒトB7−H1クローンによって発現された抗体を配列させて、それらの可変領域を明らかにした。CDR配列を太字と下線で示す。
【0112】
(2.好ましい抗ヒトPD−抗体およびそのCDR)
または、そのような抗体は、ヒトPD−1に対して免疫特異的な抗体を産生する分子に対するハイブリドーマ系をスクリーニングし、その後任意で、調節活性(たとえば、中和活性、作動活性、変性シグナル変換活性等)を示す分子に対する当該系統の中でスクリーニングすることによって産生することができる。本発明は、特に、抗ヒトPD−1クローン(すなわち、1E3、1E8、および1H3)を提供する。
【0113】
抗ヒトPD−1クローンによって発現された抗体を配列させて、それらの可変領域を明らかにした。CDR配列を太字と下線で示す。
【0115】
(3.本発明の抗ヒトB7−H1および抗ヒトPD−1抗体の共通CDR)
同定された抗体のCDRの分析を行って、共通CDR配列および同様の結合特性を示す変異CDR配列候補を同定した。そのような変異CDRは、表1に基づいたBlosum62.iij分析 によって算出した。表1にBlosum62.iij置換スコアを示す。スコアが高ければ高いほど、置換がより同類であり、置換が機能に影響を与えない可能性がより高い。
【0117】
本発明によれば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの変異CDRを有する新規の抗体および抗原結合フラグメントの形成が可能になる。本発明の方法によって相当数の個別のCDRが同定されたため、本発明によれば、特定の同定されたCDRの任意の変異体において必要とされる可能性のあるCDR残基の認識が可能になる。そのような残基を表2〜5に太字で示す。比較されたCDRの中で変化することが分かっている残基については、表1の置換スコアは、許容された置換の同定を決定するための手段となる。たとえば、特定のCDRの特定の残基がRまたはSとして変化することが分かっている場合、RとSは置換スコアが−1であるので、置換スコアが−1以上のRまたはSに対する任意の置換は、観察された変異体(RまたはS)と同程度に(もしくはRまたはSよりも)、特定のCDRと結合特性が十分に類似した変異CDRを作製し、機能的な抗B7−H1、抗PD−1、または抗原結合フラグメントを形成するように、特定のCDRの代わりに変異CDRを採用することを許容する可能性がある。各位置について、置換スコアの高い残基を選択することが、置換スコアの低い残基を選択することより好ましい。
【0118】
表2は、抗B7−H1抗体の軽鎖CDRの分析を示し、本発明の観察された好ましい変異軽鎖抗B7−H1CDRの共通配列を提供する。
【0122】
表3は、抗B7−H1抗体の重鎖CDRの分析を示し、本発明の観察された好ましい変異重鎖抗B7−H1CDRの共通配列を提供する。
【0126】
このように、B7−H1抗体1E12、1F4、2G11、3B6、および3D10のCDRを有する抗体および抗原結合フラグメントに加えて、本発明は、さらに、上記軽/重鎖共通配列を有するCDRを有する抗体および抗原結合フラグメントを提供する。
【0127】
表4は、抗PD−1抗体の軽鎖CDRの分析を示し、本発明の観察された好ましい変異軽鎖抗PD−1CDRの共通配列を提供する。
【0131】
表5は、抗PD−1抗体の重鎖CDRの分析を示し、本発明の観察された好ましい変異軽鎖抗PD−1CDRの共通配列を提供する。
【0135】
このように、抗PD−1抗体1E3、1E8、および1H3のCDRを有する抗体および抗原結合フラグメントに加えて、本発明は、さらに、上記軽/重鎖共通配列を有するCDRを有する抗体および抗原結合フラグメントを提供する。
【0136】
本発明は、上記クローンのいずれかによって生成されるマウスモノクローナル抗体の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に対して、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であり、かつ、B7−H1またはPD−1に免疫特異的結合を示す可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む抗体又はそのフラグメントを包含する。さらに、本発明は、上記に列挙したクローンの相補決定領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であり、かつ、B7−H1またはPD−1に免疫特異的結合を示すCDRを含む抗体またはそのフラグメントを包含する。2つのアミノ酸配列の百分率同一性の決定は、BLASTのタンパク質比較によって決定することができる。
【0137】
ある特定の実施例では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記の好ましい抗体の相補決定領域の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、より好ましくは、6つすべてを含み、ヒトのB7−H1またはPD−1に結合する能力を発揮する。
B.本発明の好ましい組成物の治療的および予防的使用
本発明は特に、ヒトB7−H1またはヒトPD−1に免疫特異的に結合し、および/またはB7−H1およびPD−1間の結合を調節することが可能であり、それによって対象(たとえば、ヒト患者)内において分子(B7−H1またはPD−1)が内生的に発現および配列され、および/またはPD−1またはB7−H1を介した信号伝達を調節することが可能な分子(特に、抗体またはそれらの抗原結合フラグメント)の治療的および/または予防的使用に関する。
【0138】
本明細書に使用されるとき、「処置する」、「処置すること」、「処置」、および「治療的使用」という用語は、B7−H1およびPD−1の相互作用によって悪化した疾患の症状または障害のうちの1つ以上の除去、低減、または改善を指す。本明細書に使用されるとき、「治療的な有効量」はそのような症状の臨床的に関連する除去、低減、または改善を媒介するのに十分な治療薬の量を指す。効果は、受容対象の健康または予後に影響を与えるのに十分な規模である場合、臨床的に関連する。治療的な有効量とは、疾患の発現を遅らせるまたは最小限に抑える(たとえば、癌の拡大を遅らせるまたは最小限に抑える)のに十分な治療薬の量を指す。治療的な有効量はまた、疾患の処置または管理において治療的な利益を提供する治療薬の量を指す。さらに、本発明の治療薬に関する治療的な有効量とは、疾患の処置または管理において治療的利益を提供する治療薬単体の量または他の治療と組み合わせた量を意味し、たとえば、疾患を処置または管理するのに十分な治療的抗体の治療的有効性を増強するのに十分な量である。
【0139】
本明細書に使用されるとき、「予防薬」という用語は、障害または疾患の任意の症状を検出する前に、そのような障害または疾患の防止に使用され得る物質を指す。「予防的に有効な」量とは、そのような保護を媒介するのに十分な予防薬の量である。予防的に有効な量とは、疾患の防止において予防的利益を提供する予防薬の量も指し得る。さらに、本発明の予防薬に関する予防的に有効な量とは、疾患の防止において予防的利益を提供する予防薬単体の量または他の物質と組み合わせた量を意味する。
【0140】
本明細書における投与量および投与頻度は、治療的に有効なおよび予防的に有効なという用語に包含される。さらに、通常は、投与量および頻度はそれぞれの患者に特有な要因によって異なり、投与される特定の治療薬または予防薬、癌の重篤度および種類、投与の経路、ならびに当該患者の年齢、体重、反応、および過去の病歴によって異なる。当業者は、そのような要因を考慮し、また、たとえば、文献において報告され、Physician’s Desk Reference (56th ed., 2002)において推奨された投与量に従って、適切な投与計画を選択することができる。
【0141】
(1.免疫システムの上流修飾因子の使用)
好ましい実施形態において、1つ以上の部位においてそれらの抗原と結合するそのような抗体およびフラグメントは、B7−H1またはPD−1に対して、B7−H1−PD−1結合部位に対して近接し、破壊的である。上述した通り、PD−1およびB7−H1間の相互作用によって、T細胞の増殖が抑制され、多数のサイトカインの生産が減少する(Sharpe, A.H. et al. (2002) "The B7-CD28 Superfamily," Nature Rev. Immunol. 2:116-126参照)。このように、好ましい実施形態において、本発明の分子を対象に投与することによってB7−H1−PD−1結合を相殺し、それによって対象の免疫システムを上流修飾する。別の実施形態では、抗PD−1抗体の結合活性および/または親和性は、非常に高レベルのPD−1を発現するT細胞であって、消耗したまたは機能不全のT細胞とのみ結合する(およびT細胞へのB7−H1結合を阻害する)ような結合活性および/または親和性であり、したがって、この細胞集団を特異的に標的とすることができる。このように、本発明は、IFN−γの生産向上を媒介する本発明の抗体の使用に関連する。このように、本発明は、IFN−γによって処置可能な疾患および病気(卵巣癌および他の形態の癌、慢性肉芽腫性疾患、大理石骨病、フリードライヒ失調症、など)の処置におけるそのような抗体の使用に関する。さらに、本発明は、T細胞の増殖の向上を媒介する本発明の抗体の使用に特に関連する。このように、本発明はT細胞の増殖の向上によって処置可能な疾患および病気の処置におけるそのような抗体の使用に関連し、そのような疾患および病気としては:エイズ;重症複合型免疫不全症(SCID);オーメン症候群;軟骨毛髪形成不全症;器官または組織の移植または化学療法によって起こるT細胞の損失または除去;低ガンマグロブリン血症;伴性無ガンマグロブリン血症;一過性低ガンマグロブリン血症;異ガンマグロブリン血症;IgA欠損症・IgG欠損症;IgM欠損症;高IgM症候群;ウィスコット・アルドリック症候群;高IgE症候群;分類不能型免疫不全(common variable immunodeficiency);ICF症候群;胸腺形成不全症(たとえば;ディ・ジョージ症候群;ネゼロフ症候群;血管拡張性失調症);プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症;アデノシンデアミナーゼ欠損症;ZAP70欠損症;不全リンパ球症候群;白血球減少症;リンパ球減少症(たとえば;特発性CD4+リンパ球減少症);または補体欠損症が挙げられる。本発明は、IFN−γの生産の向上およびT細胞増殖の向上の両方を媒介する本発明の抗体の使用に特に関連する。
【0142】
免疫システムの上流修飾は、癌および慢性感染症の処置において特に好ましく、したがって本発明はそのような障害の処置において有用性を有する。PD−1およびB7−H1の両方は、HIV感染において過剰発現する(Xu, Huanbin et al. (2010) "Increased B7-H1 Expression on Dendritic Cells Correlates with Programmed Death 1 Expression on T Cells in Simian Immunodeficiency Virus-Infected Macaques and May Contribute to T Cell Dysfunction and Disease Progression," J.Immunol. 185:7340-7348; Grabmeier-Pfistershammer, K. et al. (2011) "Identification of PD-1 as a Unique Marker for Failing Immune Reconstitution in HIV-1-Infected Patients on Treatment," J Acquir. Immune Defic. Syndr. 56(2):118-124)。このように、そのような細胞におけるB7−H1の発現は、ヒトのHIVを診断するのに使用することができる。したがって、本発明の抗PD−1および抗B7−H1抗体は、HIV感染およびエイズの処置に対して特定の治療的な有用性を有する。本明細書に使用されるとき、「癌」という用語は、細胞の異常な無制限増殖から起こる新生物または腫瘍を指す。本明細書に使用されるとき、癌は明示的に白血病およびリンパ腫を含む。「癌」という用語は、遠位部位に転移する潜在性を有し、非癌細胞とは異なる表現型形質を示す細胞を伴う疾患を指し、たとえば、軟寒天などの3次元基質におけるコロニーの形成または3次元基底膜もしくは細胞外基質の生成における管状網もしくはクモの巣状マトリクスの形成が挙げられる。非癌細胞は、軟寒天においてコロニーを形成せず、3次元基底膜または細胞外基質の生成においては明確な球状構造を形成する。
【0143】
本発明の方法および組成物によって処置され得るまたは防止され得る癌および関連する障害としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:急性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球、単球、赤白血病(erythroleukemia leukemias)および骨髄異形成症候群などの急性骨髄球性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病などの慢性白血病、などの白血病;真性赤血球増加症;ホジキン病または非ホジキン病リンパ腫(たとえば、びまん性未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陰性、大型B細胞リンパ腫(DLBCL);びまん性未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性、大型B細胞リンパ腫(DLBCL);未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性、ALK+未分化大型細胞リンパ腫(ALCL)、急性骨髄性リンパ腫(AML))などのリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫などの多発性骨髄腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;重度不確定な単クローン性免疫グロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;重鎖病;骨肉腫(bone sarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜性肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(血管内皮腫)、線維肉腫、カポージ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫などの骨および結合組織の肉腫;神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、脳室上皮腫、乏突起神経膠腫、非神経膠の腫瘍、聴神経腫、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫などの脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞性)癌、分泌管内癌、骨髄性乳癌、粘液乳癌、管状腺乳癌、乳頭乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌などの乳癌;褐色細胞腫(pheochromocytom)および副腎皮質癌などの副腎癌;乳頭性または濾胞性甲状腺癌、骨髄性甲状腺癌、および未分化甲状腺癌などの甲状腺癌;インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは膵小島腫瘍などの膵癌;クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症(insipius)などの下垂体癌;虹彩黒色腫、脈絡膜メラノーマ、および毛様(cilliary)体メラノーマなどの眼メラノーマ、および網膜芽細胞腫などの目癌;扁平上皮癌、腺癌、およびメラノーマなどの腟癌;扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病などの外陰癌;扁平上皮癌および腺癌などの子宮頸癌;子宮内膜癌および子宮肉腫などの子宮癌;上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質腫瘍などの卵巣癌;扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌(adenoid cyctic carcinoma)、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌などの食道癌;腺癌、菌状発生的(ポリープ状)、潰瘍形成性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫などの胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌および肝芽腫、腺癌などの胆嚢癌などの肝臓癌;乳頭性、結節性、およびびまん性などの胆管癌;非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、および小細胞肺癌などの肺癌;胚腫瘍、セミノーマ、未分化、標準的(典型的)、精母細胞性、非セミノーマ、胎児性癌、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺癌(腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫など)などの精巣癌;陰茎(penal)癌;扁平上皮癌などの口腔癌;基底(basal)癌;腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌などの唾液腺癌;扁平上皮癌および疣状などの咽頭癌;基底細胞癌、扁平上皮癌およびメラノーマ、表在拡大型メラノーマ、結節性メラノーマ、悪性黒子メラノーマ、末端黒子型メラノーマなどの皮膚癌;腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行細胞癌(腎盂および/または尿管(uterer))などの腎臓癌;ウィルムス腫瘍;移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫などの膀胱癌。さらに、癌としては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、中皮腫、滑膜性腫瘍、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原生癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌および乳頭腺癌が挙げられる(そのような病気については、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照)。
【0144】
したがって、本発明の方法および組成物は、様々な癌または他の異常増殖性疾患の処置または防止においても有用である。これらの様々な癌または異常増殖性疾患としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌および皮膚癌などの癌腫;扁平上皮癌など;白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキット(Berketts)リンパ腫などのリンパ系造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球白血病などの骨髄細胞系造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)などの間葉由来腫瘍;メラノーマ、セミノーマ、テトレート(tetrato)癌腫、神経芽細胞腫、および神経膠腫などの他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫などの中枢神経系および末梢神経系腫瘍;線維肉腫(fibrosafcoma)、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)、および骨肉腫などの間葉由来腫瘍;メラノーマ、色素性乾皮症(xenoderma pegmentosum)、角化性棘細胞腫(keratoactanthoma)、セミノーマ、甲状腺濾胞癌、および奇形癌腫などの他の腫瘍。アポトーシスにおける異常によって引き起こされた癌も、本発明の方法および組成物によって処置されることを意図する。そのような癌としては、濾胞性リンパ腫、p53突然変異による癌腫、胸部、前立腺、および卵巣のホルモン依存腫瘍、および家族性大腸腺腫症および骨髄異形成症候群などの前癌病変などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、卵巣、膀胱、胸部、結腸、肺、皮膚、膵臓、または子宮における悪性または異常増殖性(dysproliferative)変化(化生および異形成など)または過剰増殖性障害が、本発明の方法および組成物によって処置または防止される。他の特定の実施形態において、肉腫、メラノーマ、または白血病が本発明の方法および組成物によって処置または防止される。
【0145】
癌細胞は、様々な機序を通じてではあるが、自身の発達中に機能特性を身につける。そのような機能としては、アポトーシスの回避、増殖信号の自足、抗増殖信号に対する無感覚、組織浸潤/転移、無限説明的潜在性、および持続的血管形成が挙げられる。「癌細胞」という用語は、前癌性細胞および悪性癌細胞の両方を包含することを意味している。いくつかの実施形態では、癌は、限局性を保った良性腫瘍を指す。他の実施形態において、癌は、周辺の身体構造に侵入および破壊し、その後遠位部位に拡大する悪性腫瘍を指す。さらに他の実施形態において、癌は、特定の癌抗原(たとえば、汎癌抗原(KS1/4)、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20、HER2/neu、など)に関連する。
【0146】
本発明の抗体および抗体フラグメントは、異常に高レベルなPD−1を発現する細胞(たとえば、消耗したT細胞、B細胞、単球、など)に関連する癌の処置に特に有用である(Youngblood, B. (2011) "Chronic Virus Infection Enforces Demethylation Of The Locus That Encodes PD-1 In Antigen-Specific CD8(+) T Cells," Immunity 35(3):400-412; Spahn, J. et al. (2011) "Ineffective CD8(+) T-Cell Immunity To Adeno-Associated Virus Can Result In Prolonged Liver Injury And Fibrogenesis," Amer. J. Pathol. 179(5):2370-2381; Wang, C. et al. (2011) "Phenotype, Effector Function, And Tissue Localization Of PD-1-Expressing Human Follicular Helper T Cell Subsets," BMC Immunol. 12:53, 1-15; Eichbaum, Q. (2011) "PD-1 Signaling In HIV And Chronic Viral Infection Potential For Therapeutic Intervention?" Curr. Med. Chem. 18(26):3971-3980; Hallett, W.H. et al. (2011) "Immunosuppressive Effects Of Multiple Myeloma Are Overcome By PD-L1 Blockade," Biol Blood Marrow Transplant. 17(8):1133-1145; Ni, L. et al. (2010) "PD-1 Modulates Regulatory T Cells And Suppresses T-Cell Responses In HCV-Associated Lymphoma," Immunol. Cell. Biol. 89(4):535-539; Inozume, T. et al. (2010) "Selection Of CD8+PD-1+ Lymphocytes In Fresh Human Melanomas Enriches For Tumor-Reactive T Cells," J. Immunother. 33(9):956-964; and Jin, H.T. et al. (2010) "Cooperation Of Tim-3 And PD-1 In CD8 T-Cell Exhaustion During Chronic Viral Infection," Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 107(33):14733-14738)。
【0147】
上述した腫瘍に対する使用と同様に、本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、単独で、またはアジュバントとして、ワクチンまたは抗菌剤(antimibrobial agents)と組み合わせて、毒素または自己抗原に対する、または病原体(たとえば、HIV、HTLV、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ワクシニアウイルス、狂犬病ウイルスなどのウイルス;マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌(Pneumonococci)、髄膜炎菌、コノコッカス、莢膜杆菌、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、コリネバクテリア、サルモネラ、ビブリオ、クロストリジウム、バチルス、パスツレラ、レプトスピラ、ボルデテラ、および、特に、コレラ、破傷風、ボツリヌス中毒症、炭疽病、ペスト、およびライム病に関連するそれらの病原体などの細菌;またはカンジダ(アルビカンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリス、など)などの菌類病原体または寄生性病原体、クリプトコックス、アスペルギルス(フミガーツス(jumigatus)、ニガー、など)、ムーコル目(ケカビ、アブシジア、クモノスカビ(rhizophus)、スポロトリクス(シェンキー)、ブラストミセス(デルマチチジス)、パラコクシジオイデス(ブラジリエンシス)、コクシジオイデス(イミチス)およびヒストプラスマ(カプスラツーム)、エントアメーバ、ヒストリティカ、大腸バランチジウム、ネグレリアフォーレリ、アカントアメーバ種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム種、ニューモシスチス−カリニ、三日熱マラリア原虫、バベシア−ミクロチ、トリパノソーマ−ブルセイ、クルーズトリパノソーマ、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondi)、など)、スポロトリクス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、コクシジオイデス属、ヒストプラスマ属、エントアメーバ属、ヒストリティカ属、バランチジウム属、ネグレリア属、アカントアメーバ属、ジアルジア属、クリプトスポリジウム属、ニューモシスチス属、プラズモディウム属、バベシア属、またはトリパノソーマ属、などに対する免疫反応を促進するために使用することができる。このように、本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、感染症の処置における有用性を有する。
【0148】
(2.免疫システムの下流修飾因子の使用)
別の実施形態において、本発明の抗B7−H1または抗PD−1抗体は、B7−H1またはPD−1の抗イディオタイプペプチドまたは抗体の生成に使用される(Wallmann, J. et al. (2010) "Anti-Ids in Allergy: Timeliness of a Classic Concept," World Allergy Organiz. J. 3(6):195-201; Nardi, M. et al. (2000) "Antiidiotype Antibody Against Platelet Anti-Gpiiia Contributes To The Regulation Of Thrombocytopenia In HIV-1-ITP Patients," J. Exp. Med. 191(12):2093-2100) or mimetics (Zang, Y.C. et al. (2003) "Human Anti-Idiotypic T Cells Induced By TCR Peptides Corresponding To A Common CDR3 Sequence Motif In Myelin Basic Protein-Reactive T Cells," Int. Immunol. 15(9):1073-1080; Loiarro, M. et al.(Epub 2010 Apr 8) "Targeting TLR/IL-1R Signalling In Human Diseases," Mediators Inflamm. 2010:674363)。そのような分子はB7−H1またはPD−1の代用物として機能し、したがって、それらを対象に投与すると、B7−H1−PD−1結合を擬態または促進し、それによってその対象の免疫システムを下流修飾する。そのような分子は、移植片対宿主病の処置における有用性を有する。同様に、i)そのような抗体とそのような受容体/リガンドとの結合を増強するまたはii)B7−H1またはPD−1と直接結合した時に情報伝達を引き起こすアゴニスト抗体は、B7−H1−PD−1間信号伝達のアゴニストとして有用性を有し、したがって、直接的または間接的に受容体活性を刺激することによって、炎症および自己免疫疾患の処置における有用性を有する。
【0149】
PD−1およびB7−H1の両方との免疫特異性結合を示す二重特異性抗体は、APCおよびT細胞の両方との結合が可能であり、したがって、APCおよびT細胞の共局在化を促進する。そのような共局在化は、抗体と錯体を形成しないB7−H1およびPD−1分子を介してまたは共抑制性分子によって、そのような細胞同士の結合能力を促進する。そのような結合は、受容者の免疫システムの下流修飾を提供する。
【0150】
免疫システムの下流修飾は、炎症性および自己免疫性疾患、および移植片対宿主病(GvHD)の処置において好ましい。本発明の抗体を投与することによって処置可能な自己免疫障害の例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎および睾丸炎、自己免疫血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病‐皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャウグ・シュトラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛‐線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺腫、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパシー、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス(lupus erthematosus)、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、視神経脊髄炎症候群(NMO)、1型または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎(polychrondritis)、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、先天性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象(Raynauld’s phenomenon)、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(temporal arteristis)/巨細胞動脈炎、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、疱疹状皮膚炎脈管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症などの脈管炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
本発明の方法によって防止、処置、または管理し得る炎症性障害の例としては、喘息、脳炎(encephilitis)、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性疾患、敗血症性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性ウイルス性感染症または慢性細菌性感染症に起因する慢性炎症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
このように、本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、炎症性および自己免疫疾患の処置において有用性を有する。
【0153】
(C.投与方法)
様々な送達システムが周知であり、本発明の治療的または予防的組成物の投与に使用可能である。たとえば、リポソームによるカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、抗体または融合プロテインを発現可能な組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(たとえば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432参照)、レトロウイルス性媒介動物または他の媒介動物の一部としての核酸の構築などが挙げられる。
【0154】
本発明のヒト化抗体の投与方法としては、非経口的投与としての(たとえば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下)注射、硬膜外投与、および粘膜投与(たとえば、鼻腔内および経口経路)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の抗体は、筋肉内、静脈内、または皮下に投与される。組成物は、任意の都合の良い経路によって投与すればよく、たとえば、注入または静脈内ボーラスによって、上皮内層または皮膚粘膜層(たとえば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜、など)を通じた吸収によって投与することができる。また、他の生物学的に活性な物質と共に投与してもよい。投与は、全身性でも局所性でもよい。さらに、たとえば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を用いた製剤による肺内投与でもよい。たとえば U.S. Patent Nos. 6,019,968; 5,985, 20; 5,985,309; 5,934,272; 5,874,064; 5,855,913; 5,290,540; および4,880,078; およびPCT Publication Nos. WO 92/19244; WO 97/32572; WO 97/44013; WO 98/31346; およびWO 99/66903参照。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を処置が必要な部位に局所的に投与することが好ましい;たとえば、この投与は、注射または移植手段による局所注入によって行うことができるが、これに限定されない。当該移植とは、シラスティック(sialastic)膜などの膜もしくは繊維などの多孔性物質、非多孔性物質、またはゲル状物質の移植である。好ましくは、本発明の抗体が投与される場合、抗体または融合プロテインが吸収されていない物質の使用には、注意しなければならない。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト化またはキメラ抗体は、本発明の抗体の標的化送達用のリポソームに調剤される。リポソームは、水相をカプセル化する、同心円状に配置されたリン脂質(phopsholipid)二重層からなる小胞である。通常は、リポソームは様々な種類の脂質、リン脂質、および/または界面活性剤を含む。生物学的な膜の脂質配列と同様に、リポソームの成分は二層構造で配置される。その生体適合性、低免疫原性、および低毒性が一因で、リポソームは特に好ましい送達媒体である。リポソームの作製方法は当該技術分野において周知であり、本発明に包含される。たとえば、Epstein et al., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688; Hwang et al., 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030-4; U.S. Patent Nos. 4,485,045および4,544,545参照。
【0156】
本発明は、延長された血中半減期、すなわち、U.S. Patent No. 5,013,556に開示されたような延長された循環時間によるリポソームの作製方法も包含する。本発明の方法において使用される好ましいリポソームは、循環から速やかに除去されない、すなわち、単核食細胞系(MPS)に取り込まれない。本発明は、当業者に周知の一般的な方法を用いて作製した立体的に安定化されたリポソームを包含する。特定の作用機序に制約されないが、立体的に安定化されたリポソームは、リポソームと血清タンパク質との不要な反応を低減し、血清成分のオプソニン作用(oposonization)を低減し、MPSによる認識を低減する、高度に柔軟で大きな親水性部分を有する脂質成分を含む。立体的に安定化されたリポソームは、ポリエチレングリコールを用いて作製することが好ましい。リポソームおよび立体的に安定化されたリポソームの作製については、たとえば、Bendas et al., 2001 BioDrugs, 15(4): 215-224; Allen et al., 1987 FEBS Lett. 223: 42-6; Klibanov et al., 1990 FEBS Lett., 268: 235-7; Blum et al., 1990, Biochim. Biophys. Acta., 1029: 91-7; Torchilin et al., 1996, J. Liposome Res. 6: 99-116; Litzinger et al., 1994, Biochim. Biophys. Acta, 1190: 99-107; Maruyama et al., 1991, Chem. Pharm. Bull., 39: 1620-2; Klibanov et al., 1991, Biochim Biophys Acta, 1062; 142-8; Allen et al., 1994, Adv. Drug Deliv. Rev, 13: 285-309参照。本発明は、特定の器官の標的化に適合するリポソーム(たとえば、U.S. Patent No. 4,544,545参照)、または特定の細胞の標的化に適合するリポソームも包含する(たとえば、U.S. Patent Application Publication No. 2005/0074403参照)。本発明の組成物および方法に使用するのに特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。規定の孔径のフィルターを通してリポソームを押し出すことによって、所望の直径のリポソームが生成される。いくつかの実施形態では、本発明の抗体のフラグメント(たとえばF(ab’))は、上述した方法を用いてリポソームと接合することができる(Martin et al., 1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288参照)。
【0157】
本発明のヒト化抗体またはキメラ抗体はまた、免疫リポゾームとして製剤化されてもよい。免疫リポゾームは、本発明の抗体またはそのフラグメントがリポソームの表面に共有結合または非共有結合しているリポソーム組成物を指す。抗体をリポソームの表面に結合させる化学的性質は当該技術分野において公知であり、本発明に含まれる(たとえば、米国特許第6,787,153号;Allen et al., 1995, Stealth Liposomes, Boca Rotan: CRC Press, 233-44;Hansen et al., 1995, Biochim. Biophys. Acta, 1239: 133-144参照)。最も好適な実施形態では、本発明の方法および組成物に使用される免疫リポゾームはさらに、立体的に安定化されている。好ましくは、本発明のヒト化抗体は、リポゾームの脂質二重層に安定して定着している疎水性アンカーと共有結合または非共有結合している。疎水性アンカーの例は、リン脂質(たとえば、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI))を含むが、これに限定されない。抗体と疎水性アンカーとの間に共有結合を実現するために、当該技術分野に公知の任意の生化学的方法を使用してもよい(たとえば、J. Thomas August, ed., 1997, Gene Therapy: Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, CA, p. 399-435参照)。たとえば、抗体分子の官能基は、リポゾームに関連の疎水性アンカーの活性基と反応してもよい。たとえば、抗体のリジン側鎖のアミノ基は、水溶性カルボジイミドで活性化された、リポゾームに関連のN−グルタリル−ホスファチジルエタノールアミンと結合されてもよい。または、還元抗体のチオール基は、ピリジルチオプロピオニルホスファチジルエタノールアミンなどのチオール反応アンカーを介してリポゾームに結合されることが可能である。たとえば、Dietrich et al., 1996, Biochemistry, 35: 1100-1105; Loughrey et al., 1987, Biochim. Biophys. Acta, 901: 157-160; Martin et al., 1982, J. Biol. Chem. 257: 286-288; Martin et al., 1981, Biochemistry, 20: 4429-38参照。特定の作用機序によって結合されることを意図するものではないが、本発明の抗体を含む免疫リポゾーム製剤は、標的細胞(すなわち、本発明の抗体が結合する受容体を有する細胞)の細胞質に本発明の抗体を送達することから、治療剤として特に効果的である。上記免疫リポゾームは、好ましくは血中(特に標的細胞中)の半減期が増大しており、標的細胞の細胞質内へ取り込まれることによって、治療剤の損失またはリソソーム内経路での分解を回避することが可能である。
【0158】
本発明の免疫リポゾーム組成物は、小胞を形成する1つ以上の脂質と、本発明の抗体またはそのフラグメントまたは変異体と、適宜、親水性ポリマーとを含む。小胞を形成する脂質は、好ましくは、2つの炭化水素鎖(アシル鎖など)と極性頭部基とを有する脂質である。小胞を形成する脂質の例は、リン脂質(たとえば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン)および糖脂質(たとえば、セレブロシド、ガングリオシド)を含む。発明の製剤に有用なさらなる脂質は当業者に公知であり、本発明に含まれる。一部の実施形態では、免疫リポゾーム組成物は、親水性ポリマー(たとえば、ポリエチレングリコール)と、リポソームの血中半減期を増大させるガングリオシドGM1とをさらに含む。親水性ポリマーをリポソームに結合する方法は当該技術分野に周知であり、本発明に含まれる。免疫リポゾームおよびその調製方法については、たとえば、米国特許出願公開第2003/0044407号;PCT国際公開第WO97/38731号;Vingerhoeads et al., 1994, Immunomethods, 4: 259-72;Maruyama, 2000, Biol. Pharm. Bull. 23(7): 791-799;Abra et al., 2002, Journal of Liposome Research, 12(1&2): 1-3;Park, 2002, Bioscience Reports, 22(2): 267-281;Bendas et al., 2001 BioDrugs, 14(4): 215-224、J. Thomas August, ed., 1997, Gene Therapy: Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, CA, p. 399-435を参照。
【0159】
本発明はまた、本発明のヒト化抗体またはキメラ抗体が、抗体量を記した密封容器(アンプルまたはサシェットなど)内に詰め込まれていることを規定している。一実施形態では、本発明の抗体は、密封容器内に含まれる、乾燥滅菌が行われた凍結乾燥紛体または無水濃縮物として供給される。本発明の抗体は、たとえば水または生理食塩水を加えて対象への投与に適した濃度としてもどすことが可能である。好ましくは、本発明の抗体は、密封容器に含まれる、乾燥滅菌が行われた凍結乾燥紛体として、少なくとも5mg、より好ましくは、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位投与量で供給される。発明の凍結乾燥抗体は、当初含まれていた容器内に2℃〜8℃で保存されるべきである。また、上記抗体は、乾燥状態からもどされてから12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与されるべきである。代替の実施形態では、本発明の抗体は、抗体、融合タンパク質、または共役分子の量および濃度を記した密封容器に含まれる液体の形態で供給される。好ましくは、上記抗体の液状形態は、抗体含有量を少なくとも1mg/ml、より好ましくは、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlにして、密封容器内に供給される。
【0160】
上記製剤に採用する正確な投与量はまた、投与経路および病態の重症度に依存することになるので、施術者の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系から導かれる投与量−反応曲線より推定されてもよい。本発明に含まれる抗体に関しては、患者への投与量は、通常は患者の体重に対して0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲の比とする。好ましくは、患者への投与量は、患者の体重に対して0.01mg/kg〜20mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜10mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜5mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜2mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜1mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.75mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.5mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.25mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.15mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.10mg/kgの範囲、0.01mg/kg〜0.05mg/kgの範囲、または0.01mg/kg〜0.025mg/kgの範囲の比である。具体的には、本発明では、患者への投与量を0.2mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgの比とする場合を意図している。0.01mg/kg程度の少量の投与量は、かなりの薬力学的効果を示すであろうことが予想される。0.10mg/kg〜1mg/kgの範囲の投与量レベルが最も適当であると予想される。より多量の投与量(たとえば、1mg/kg〜30mg/kg)についても、活性となることが期待されるであろう。一般的に、ヒト抗体のヒト体内における半減期は、異質ポリペプチドに対するヒト体内の免疫反応によって、ヒト以外の種から得られる抗体と比較して長くなる。したがって、ヒト抗体の投与量をより少量にするとともに、その投与頻度をより少なくすることが多くの場合可能である。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントの投与量および投与頻度は、改変(たとえば脂質化)によって本発明の抗体の摂取および組織透過性を向上させることによって減少させてもよい。
【0161】
さらに他の実施形態では、上記組成物を制御放出系または持続放出系内で送達することが可能である。当業者に周知の任意の技術を使用して、本発明の抗体を1つ以上含む持続放出性製剤を作製することが可能である。たとえば、米国特許第4,526,938号;PCT国際公開第WO91/05548号;PCT国際公開第WO96/20698号;Ning et al., 1996, "Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained Release Gel," Radiotherapy & Oncology 39:179 189;Song et al., 1995, "Antibody Mediated Lung Targeting of Long Circulating Emulsions," PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372 397;Cleek et al., 1997, "Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application," Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853 854;およびLam et al., 1997, "Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery," Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759 760を参照。一実施形態では、制御放出系においてポンプを使用してもよい(Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; and Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574参照)。他の実施形態では、ポリマー材料を用いて抗体の制御放出を実現することができる(たとえば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61; See also Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 7 1:105); 米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT国際公開第WO99/15154号;およびPCT国際公開第WO99/20253参照)。持続放出性製剤に用いられるポリマーの例は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン共ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニールアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド共グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルを含むが、これらに限定されない。さらに他の実施形態では、制御放出系を治療標的(たとえば、肺)に近接して配置することができるので、全身投与量の僅か一部のみを必要とする(たとえば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。他の実施形態では、制御放出インプラントとして有用なポリマー組成物をDunn et al. (米国第5,945,155号参照)にしたがって使用する。この特定の方法は、上記ポリマー系からの生体活性材料のin situ制御放出の効果に基づいている。移植は、通常、治療処置を必要としている患者体内のあらゆる部位で行うことが可能である。他の実施形態では、患者体内の非ポリマー性インプラントが薬剤送達系として使用される非ポリマー性の持続送達系を使用する。体内への移植後、上記インプラントの有機溶媒は消散するか、分散するか、または上記組成物から周囲の組織液へと滲出することになるので、上記非ポリマー材料は次第に凝固することになるか、または沈殿して固体状の微孔性マトリクスを形成することになる(米国第5,888,533号参照)。制御放出系については、Langerによる論評(1990, Science 249:1527-1533)内にて検討されている。当業者に周知の任意の技術を用いて、発明に係る治療剤を1つ以上含む持続放出性製剤を作製することが可能である。たとえば、米国特許第4,526,938号;国際公開第WO91/05548号およびWO96/20698号;Ning et al., 1996, Radiotherapy & Oncology 39:179 189;Song et al., 1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372 397;Cleek et al., 1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853 854;およびLam et al., 1997, Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759 760を参照。
【0162】
本発明の治療用または予防用組成物が本発明の抗体をエンコードする核酸またはその抗原結合性フラグメントである特定の実施形態では、この核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築して細胞内核酸となるように投与する(たとえば、レトロウイルスベクターの使用(米国特許第4,980,286号参照)、直接注射法、微粒子照射の使用(たとえば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、脂質によるコーティング、細胞表面受容体、形質転換剤、または、核細胞内に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに連鎖させた投与(たとえば、Joliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868参照)など)ことによって、前記核酸をin vivoで投与して、前記核酸にエンコードされる抗体の発現を向上させることができる。代替法として、核酸を細胞内導入し、発現を目的として相同的組み換えによって宿主細胞DNA内に組み込むことも可能である。
【0163】
本発明の抗体を治療的または予防的に有効な量を用いた対象の治療は単一の治療を含むことができる。または、好ましくは、一連の治療を含むことができる。
【0164】
(D.医薬組成物)
本発明の組成物は、単位剤形の調製に使用することのできる、医薬組成物の製造に有用なバルク薬剤組成物(すなわち、対象または患者への投与に好適な組成物)を含む。このような組成物は、本願開示の予防薬および/または治療薬を予防的または治療的観点から有効とされる量含むか、またはこれと薬学的に許容可能な担体との組み合わせを含む。好ましくは、本発明の組成物は、本発明のヒト化抗体を予防的または治療的観点から有効とされる量と、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0165】
特定の実施形態では、用語「薬学的に許容可能」は、動物(特にヒト)への使用について連邦または州政府の管理機関による認可を受けていること、または、米国薬局方のリストまたはそれ以外で一般に認知されている薬局方のリストに載せられていることを意味する。用語「担体」は、希釈剤、アジュバント(たとえば、(完全および不完全)フロイントアジュバント)、賦形剤、界面活性剤、抗凍結剤、または治療剤の投与媒体を指す。このような医薬担体として、水または油などの滅菌液体を使用することができる。このような用途に用いられる水または油は、石油源、動物源、植物源、または合成源由来の水または油(ピーナッツ油、大豆油、およびゴマ油など)を含む。医薬組成物を静脈内投与する場合には水が好適な溶媒である。また、液体担体(特に注射剤用の液体担体)として、食塩水、デキストロース水溶液、およびグリセロール水溶液を採用することができる。好適な医薬賦形剤は、スターチ、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、およびポリソルベート−80などを含む。必要に応じて、上記組成物は、湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を少量含むことができる。これらの組成物については、溶液、懸濁液、乳濁液、タブレット、ピル、カプセル、粉末、および持続放出性製剤などの形態を採ることができる。
【0166】
通常、本発明の組成物の成分は別々に供給されるか、または単位製剤状に混合されて供給される。たとえば、活性剤の量を表示のアンプルまたはサシェットなどの密封容器内に含まれる、乾燥が行われた乾燥紛体または無水濃縮物として供給される。上記組成物の投与を注射によって行う場合では、滅菌が行われた製薬等級純水または生理食塩水を含む注射用ボトルを用いて上記組成物の分注を行うことができる。上記組成物を注射によって投与する場合では、投与前に成分同士の混合を行い得るように、注射用の滅菌水または生理食塩水を入れたアンプルを提供することができる。
【0167】
本発明の組成物は、中性形態または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容可能な塩は、アニオンを用いて形成される塩(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される塩など)およびカチオンを用いて形成される塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される塩など)を含むが、これらに限定されない。
【0168】
(E.キット)
本発明は、本発明のヒト化抗体で充填された1つ以上の容器を備える医薬パックまたは医薬キットを提供する。さらに、上記医薬パックまたは医薬キットには、疾病治療に有用な他の予防剤または治療剤を1つ以上含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分で充填された容器を1つ以上備える医薬パックまたは医薬キットも提供する。このような容器に適宜関連するものとしては、調合薬または生物学的製剤の製造、使用、または販売の管理行政機関によって指定の形態で呈示される情報を挙げることができる。なお、このような情報呈示は、ヒトに投与される調合薬または生物学的製剤の製造、使用、または販売の管理行政機関から取得した認可を反映するものである。
【0169】
本発明は、上述の方法で使用可能なキットを提供する。一実施形態では、キットは、本発明のヒト化抗体を1つ以上備える。他の実施形態では、キットは、癌治療に有用な1つ以上の他の予防剤または治療剤を1つ以上の容器にさらに備える。他の実施形態では、キットは、癌に関連する1つ以上の癌抗原に結合する1つ以上の細胞傷害抗体をさらに備える。特定の実施形態では、上記他の予防剤または治療剤は化学療法薬である。他の実施形態では、上記予防剤または治療剤は生物学的治療薬またはホルモン治療薬である。
【0170】
(G.診断方法)
本発明の抗体およびその抗原結合性フラグメントは、診断目的(B7−H1またはPD−1発現に関連する疾病、疾患、または感染症の検出、診断、または監視など)に使用することができる。本発明は、疾病、疾患、または感染症(特に、自己免疫疾患)の検出または診断であって、(a)免疫特異的に抗原に結合する1つ以上の抗体(またはそのフラグメント)を使用して、対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1またはPD−1発現のアッセイを行うこと、および(b)前記抗原のレベルを対照レベル(たとえば、正常組織サンプル内の抗原レベルまたは治療前の抗原レベル)と比較することを備え、前記アッセイを行った抗原レベルが前記抗原の対照レベルと比較して増大または減少している場合では、疾病、疾患、または感染症、または、治療に対する患者の反応が示されている、疾病、疾患、または感染症の検出または診断を提供する。したがって、本発明はまた、疾病、疾患、または感染症の進行の監視であって、(a)抗原に免疫特異的に結合する1つ以上の抗体(またはそのフラグメント)を使用して、対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1またはPD−1発現のアッセイを一時点において行う工程、および(b)前記対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1またはPD−1発現の発現レベルの比較を他の一時点または期間において行う工程を備え、前記アッセイを行った抗原レベルの増大または減少は、疾病、疾患、または感染症の進行を示している、監視法を提供する。本発明はさらに、治療に対する応答の監視法であって、(a)抗原に免疫特異的に結合する1つ以上の抗体(またはそのフラグメント)を用いた処理を行う前に、対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1またはPD−1発現のアッセイを行う工程、および(b)処理後の1以上の時点で対象の細胞または組織サンプル内のB7−H1またはPD−1発現のアッセイを事前に行っておき、抗原レベルの経時比較を行う工程を備え、前記アッセイを行った抗原レベルが処理前の抗原レベルと比較して増大または減少している場合では治療に対する応答の存在が示されている、疾病、疾患、または感染症の進行の監視を提供する。このような抗体およびそのフラグメントは、好ましくは、酵素免疫測定吸着(ELISA)法、放射免疫測(RIA)定、および蛍光活性化細胞分類(FACS)法などの免疫学的検定法に採用される。
【0171】
本発明の一態様は、このような抗体およびフラグメント、および、特にヒトB7−H1に結合するような抗体およびフラグメントをIHC分析用の試薬としてin vitroまたはin situ組織サンプルの細胞内またはin vivoで使用することに関する。たとえば、B7−H1は癌細胞によって発現されるが、正常組織によって発現されることはない(Dong, H. (2003) "B7-H1 Pathway And Its Role In The Evasion Of Tumor Immunity," J. Mol. Med. 81:281-287)ので、こうした癌細胞が抗体またはフラグメントと結合することに基づいて細胞上のB7−H1の存在を検出することによって、癌細胞の存在が示唆されるとともに、癌細胞の診断が行われることになる。したがって本発明は、対象内の癌の存在を診断するための細胞学的アッセイを提供する。
【0172】
腫瘍細胞上のB7−H1の存在は、腫瘍に反応するT細胞のアポトーシスを促進させることが見出されてきた(米国特許第7,794,710号)。したがって、癌患者の腫瘍細胞表面上に示されるB7−H1の範囲または程度を決定することによって、本発明は、癌の臨床的な深刻性を決定し、免疫反応に対する癌の抵抗が生じるであろう範囲および程度を決定する手段を提供する。
【0173】
同様に、B7−H1はリンパ系および粘膜系の樹状細胞(骨髄樹状細胞および形質細胞様樹状細胞の両方)上に発現され、その発現はSIV感染後に著しく増大する(Xu, Huanbin et al. (2010) "Increased B7-H1 Expression on Dendritic Cells Correlates with Programmed Death 1 Expression on T Cells in Simian Immunodeficiency Virus-Infected Macaques and May Contribute to T Cell Dysfunction and Disease Progression," J. Immunol. 185:7340-7348)。このような細胞上のB7−H1の発現を用いてヒトのHIVの診断を行い得る。さらに、CD8+細胞上のPD−1発現がHIV感染との関連において増大することが見出されてきた(Killian, M.S. et al. (2011) "Natural Suppression of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Replication Is Mediated by Memory CD8+ T Cells," J. Virol. 85(4):1696-1705)。したがって、PD−1およびCD8の両方に結合する抗体は、HIV感染およびAIDS進行の診断用途に特に有用である。
【0174】
本発明のさらなる態様は、このような抗体およびフラグメント、および、特にヒトPD−1に結合するこのような抗体およびフラグメントの使用に関する。PD−1は、免疫系の慢性的な活性化およびT細胞の疲弊を示すマーカーとして特に有用である。PD−1の発現はHIVウイルス感染患者のT細胞上で促進され、これら患者体内のウイルス量と相関する(Khaitan, A. et al. (2011) "Revisiting Immune Exhaustion During HIV Infection," Curr. HIV/AIDS Rep. 8:4-11; Grabmeier-Pfistershammer, K. et al. (2011) "Identification of PD-1 as a Unique Marker for Failing Immune Reconstitution in HIV-1-Infected Patients on Treatment," J Acquir. Immune Defic. Syndr. 56(2):118-124)。したがって、PD−1はHIV進行を示すマーカーとして特に有用である。最も好ましくは、PD−1発現のアッセイはフローサイトメトリー法を用いて行われる。このような抗体およびフラグメントの使用を介することによって、たとえT細胞(PD−1を発現する)が異種の調製物中に存在している場合であっても、複数の変数(たとえば、細胞カウント、細胞サイズ、表現型、および細胞の健常性など)についてT細胞のアッセイを行うことができる。したがって、PD−1に対する抗体およびその抗原結合性フラグメントと協調してこのような方法を用いることによって、AIDS、白血病、およびT細胞の細胞数および健常性に影響する他の疾病の程度および重症度の診断を行うことができる。本発明の目的に適合し得るフローサイトメトリー―の方法については、Peters, J.M. et al. (2011) "Multiparameter Flow Cytometry In The Diagnosis And Management Of Acute Leukemia," Arch. Pathol. Lab. Med. 135(1):44-54;Meyerson, H.J. (2010) "A Practical Approach To The Flow Cytometric Detection And Diagnosis Of T-Cell Lymphoproliferative Disorders," Lab. Hematol. 16(3):32-52;Vandewoestyne, M. et al. (Epub 2010 Aug 3) Laser Capture Microdissection In Forensic Research: A Review," Int. J. Legal. Med. 124(6):513-521;Ornatsky, O. et al. (Epub 2010 Jul 21) "Highly Multiparametric Analysis By Mass Cytometry," J. Immunol. Meth. 361(1-2):1-20;Mach, W.J. et al. (Epub 2010 Jul 13) "Flow Cytometry And Laser Scanning Cytometry, A Comparison Of Techniques," J. Clin. Monit. Comput. 24(4):251-259;およびChattopadhyay, P.K. et al. (2010) "Good Cell, Bad Cell: Flow Cytometry Reveals T-Cell Subsets Important In HIV Disease," Cytometry A. 77(7):614-622、並びに、米国特許第7,876,436号、同7,847,923号、同7,842,244号、同7,746,466号、同7,590,500号、同7,527,978号、同7,507,548号、同7,491,502号、同7,486,387号、同7,479,630号、同7,465,543号、同7,354,773号、同6,794,152号、および同6,784,981号に開示されている。
【0175】
したがって、本発明の抗体およびフラグメントは、ヒトの疾病、疾患、または感染症の検出および診断に有用である。一実施形態では、このような診断は、(a)B7−H1またはPD−1に免疫特異的に結合する標識抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与(たとえば、非経口的投与、皮下投与、または腹腔内への投与)すること、(b)前記投与後に時間間隔を経過させて、前記対象内のB7−H1またはPD−1発現部位において上記標識分子の濃度を特異的に増大させること(および、上記標識分子のうち非結合状態のものをバックグラウンドレベルまで除去すること)、(c)バックグラウンドレベルを決定すること、および(d)前記対象内の前記標識抗体を検出することを備え、前記バックグラウンドレベルを超える標識抗体の検出は、前記対象が疾病、疾患、または感染症を有していることを示している。上記実施形態によれば、上記標識抗体は、当業者に周知の撮像系を用いて検出可能な撮像部分で標識される。バックグラウンドレベルの決定は、上記標識分子の検出量と特定の系について事前に決定した基準値との比較を含む多様な方法によって行うことが可能である。
【0176】
対象のサイズおよび使用する撮像系によって診断画像の形成に必要となる撮像部分の量が決定されることは、当該技術分野において理解されるであろう。腫瘍のin vivo撮像については、S.W. Burchiel et al., "Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments." (Chapter 13 in Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer, S.W. Burchiel and B. A. Rhodes, eds., Masson Publishing Inc. (1982)に記載されている。
【0177】
上記標識分子の濃度が上記対象の部位において特異的に増大するのを可能にし、かつ上記非結合状態の標識分子をバックグラウンドレベルとなるまで除去することを可能にするための、上記投与後の時間間隔は、使用する標識の種類および投与方法を含む幾つかの変数に応じて、6時間〜48時間、6時間〜24時間、または6〜12時間となる。他の実施形態では、上記投与後の時間間隔は、5日間〜20日間、または5日間〜10日間である。
【0178】
一実施形態では、最初の診断を行ってからたとえば1カ月経過後、6カ月経過後、または一年経過後などに疾病、疾患、または感染症の診断方法を繰り返し行うことによって、疾病、疾患、または感染症の観測を行う。
【0179】
上記標識の存在は、当該技術分野に公知の方法をin vivo走査に用いて対象内で検出することができる。これらの方法は、使用する標識の種類に応じて決まる。専門家であれば、特定の標識を検出する適切な方法を決定することができるであろう。本発明の診断方法に使用し得る方法および装置は、コンピュータ断層撮影(CT)法、陽電子放射断層撮影(PET)法、磁気共鳴映像(MRI)法などの全身走査法、および超音波法を含むが、これらに限定されない。
【0180】
特定の実施形態では、上記分子は放射性同位体で標識され、放射線反応性外科用器具を用いて患者体内で検出される(Thurston et al., 米国特許第5,441,050号)。他の実施形態では、上記分子は蛍光化合物で標識され、蛍光反応性走査用器具を用いて患者体内で検出される。他の実施形態では、上記分子は陽電子放出金属で標識され、陽電子放出断層撮影法を用いて患者体内で検出される。さらに他の実施形態では、上記分子は常磁性標識で標識され、磁気共鳴映像(MRI)法を用いて患者体内で検出される。
【0181】
以上、本発明の概要を説明した。本発明の内容は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。なお、以下の実施例は一例に過ぎず、特に規定のない限り、本発明を制限するよう意図されたものではない。
【0182】
〔実施例1〕:抗ヒトB7−H1抗体の単離および特性決定
高親和性の中和抗ヒトB7−H1抗体の単離を行うために、マウスに最初に免疫性を与え、次にヒトB7−H1−Fcを用いて追加免疫を行った。標準的なプロトコルに従い、抗B7−H1陽性動物の脾細胞を骨髄腫細胞と融合させた。この結果得られたマウスハイブリドーマのうちB7−H1免疫反応性モノクローナル抗体を発現しているものを特定するためにスクリーニングを行った。抗体の評価をさらに行って、これらがIgG抗体またはIgM抗体の何れであるかについての決定を行った。これに応じて、B7−H1−Fcまたは陰性対照を固相担体に固定した。その後、上記固相担体にハイブリドーマ上清を接触させ、B7−H1抗体の存在を標識抗マウス抗IgGまたは標識抗マウス抗IgMを用いて決定した。
図1は、試験を行ったハイブリドーマ上清の結果を示し、ヒトB7−H1に対して免疫反応性を有する抗体を発現する複数のハイブリドーマ株の単離を示す。
【0183】
同定したハイブリドーマをスクリーニングに掛けて、その発現抗体が中和抗体であり、B7−H1とPD−1との結合を阻害可能であるか否かの決定を行った。PD−1−Fcを固相担体に固定し、これをビオチン化B7−H1−Fcを含む希釈馴化培地の存在下で培養した。上記固相担体に対するストレプトアビジンセイヨウワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP)の結合のアッセイを行って、上記B7−H1および上記PD−1の互いに結合する能を検出した。抗B7−H1抗体は、PD−1に対するB7−H1の結合を改変可能なため、上記アッセイにおけるSA−HAS結合の減少を媒介していた。本実験の結果を
図2に示す。
図2の実験結果は、上記単離を行ったハイブリドーマの幾つかはヒトB7−H1中和抗体を発現したことを示す。抗体MIH−1(抗ヒトCD274(B7−H1))(Chen, Y. et al. (Epub 2005 Nov 11)”Expression Of B7-H1 In Inflammatory Renal Tubular Epithelial Cells," Nephron. Exp. Nephrol. 102(3-4):e81-e92)を陽性対照として使用した。29E.2AEは抗PD−1抗体であるが、上記アッセイでは非中和抗体であることが示された。無関係のハイブリドーマ(rand Ab)由来の馴化培地とベクター対照(VC:vector control)を陰性対照として使用した。
【0184】
発現された上記中和抗体が細胞表面上に配列されているB7−H1と結合可能であるか否かを決定するために、細胞結合アッセイを実施した。上記ハイブリドーマの各クローンの上清を1:4の比率で希釈し、これを親CHO細胞と全長ヒトB7−H1を過剰発現するクローンCHO株との存在下で培養した。結合を生じさせた後、上記細胞を洗浄した。そして、蛍光標識抗マウスIgG抗体を用いて、上記洗浄後に残存している細胞結合抗B7−H1抗体の存在を検出した。CHO−hB7−H1に対する結合についての蛍光強度の中央値(MFI)を
図3に示す。試験を行ったクローンの何れについても親CHO株との交差反応が見出されず、このことより、上記発現抗体はヒトB7−H1に特異的であることが示された。
【0185】
さらなる評価として、3つのクローンの濃度を異ならせて抗B7−H1抗体MIH−1と比較した。抗体は、プロテインGを用いて精製されており、内因性レベルを有してAPC表面上に配列されている場合のB7−H1との結合能について評価が行われていた。ヒトB7−H1を発現するCHO細胞を異なる濃度(10μg/ml、1μg/ml、または0.1μg/ml)の抗B7−H1抗体で培養し、その後にAPC結合ロバ抗マウス抗体で培養した。蛍光強度の中央値を測定することによって結合を報告した。結果は、試験抗体が対照抗体(MIH1)よりも大きな結合活性をB7−H1に対して示したことを呈示し(
図4)、抗体1E12が対照の抗B7−H1抗体(5H1)(Dong, H. et al. (2002) "Tumor-Associated B7-H1 Promotes T-Cell Apoptosis: A Potential Mechanism Of Immune Evasion," Nature Med. 8(8):793-800)よりも大きな結合活性をB7−H1に対して示したことを呈示している(
図5)。
【0186】
要約すれば、ハイブリドーマを発現している複数の抗ヒトB7−H1が得られたことをデータに示されている。全クローンは、B7−H1−Fcを認識するIgG抗体であった。クローン1B3、1D11、1E2、1E4、1E10、2A6、2E12、2F2、2F5、2F11、3A4、および3B1は、スクリーニング結合アッセイでは脆弱な抗体であった。低信号は、低発現レベルおよび/または弱親和性に因るものであると考えられる。
【0187】
意義深いことに、幾つかのクローン(たとえば、クローン1D5、1E12、1F4、2A7、2G11、3B6、3D10)は強力な中和活性を示した。上記クローンの全ては、試験を行った各濃度において中和活性を示しており、抗原と良好に結合しているように思われた。CHO−B7−H1細胞と結合するMFIは次のものである:1D5=50,821;1E12=56,152;1F4=62,015;2A7=49,008;2G11=55,947;3B6=59,638;3D10=53,114。
【0188】
〔実施例2:抗ヒトPD−1抗体の単離および特性決定〕
高親和性の中和抗ヒトB7−H1抗体の単離を行うために、マウスに最初に免疫性を与え、次にヒトPD−1−Fcを用いて追加免疫を行った。標準的なプロトコルに従い、抗PD−1陽性動物の脾細胞を骨髄腫細胞と融合させた。この結果得られたマウスハイブリドーマのうち高親和性のヒトPD−1免疫反応性モノクローナル抗体を発現しているものを特定するためにスクリーニングを行った。抗体の評価をさらに行って、これらがIgG抗体またはIgM抗体の何れであるかについての決定を行った。これに応じて、PD−1−Fcまたは陰性対照(B7−H4−Fc)を固相担体に固定した。その後、上記固相担体にハイブリドーマ上清を接触させ、抗PD−1抗体の存在を標識抗マウスIgGまたは標識抗マウスIgMを用いて決定した。
図6は、単離した抗ヒトPD−1抗体の抗原結合およびイソ型を示すとともに、ヒトPD−1に対して免疫反応性を有する抗体を発現する複数のハイブリドーマ株の単離を表す。
【0189】
同定したハイブリドーマをスクリーニングに掛けて、その発現抗体が中和抗体であってB7−DCとPD−1との結合を阻害可能であるか否かの決定を行った。PD−1を結合する融合タンパク質であるB7−DC−Fcを固相担体に固定し、これをビオチン化PD−1−Fcを含む希釈馴化培地の存在下で培養した。上記固相担体に対するストレプトアビジンセイヨウワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP:streptavidin−horse radish peroxidase)の結合についてアッセイを行って、B7−DCおよびPD−1の互いに対する結合する能を検出した。抗PD−1抗体は、PD−1に対するB7−DCの結合を阻害可能であるため、上記アッセイにおいてSA−HRP結合の減少を媒介していた。本実験の結果を
図7Aおよび7Bに示す。
図7Aおよび7Bの実験結果は、単離を行った上記ハイブリドーマの幾つかはヒトPD−1中和抗体を発現したことを示す(
図7Bは
図7Aと同一のグラフを異なるスケールで示している)。
【0190】
発現された上記中和抗体が細胞表面上に配列されているPD−1と結合可能であるか否かを決定するために細胞結合アッセイを実施した。各ハイブリドーマクローンの上清を1:4の比で希釈し、これを親CHO細胞と全長ヒトPD−1を過剰発現するクローンCHO株との存在下で培養した。結合を形成させた後、上記細胞を洗浄した。そして、蛍光標識抗マウスIgG抗体を用いて、洗浄後に残存している細胞結合抗PD−1抗体の存在を検出した。CHO−hPD−1に対する結合についての蛍光強度の中央値(MFI)を
図8に示す。抗体1E3、1E8、および1H3は細胞表面上に発現されたヒトPD−1と特に結合可能であることが結果に示された。試験を行ったクローンの何れについても親CHO株との交差反応が見出されず、このことは、上記発現抗体がヒトPD−1に特異的であることを示すものであった。J116は市販の抗ヒトPD−1対照抗体(eBioscience, Inc.)である。イソ型の同定より、1E3、1E8、1H3はIgG1/カッパであることが明らかになった。
【0191】
さらなる研究用に2つのクローン(1E3および1H3)を選択した。さらなる評価として、上記2つのクローンの濃度を異ならせて抗PD−1抗体M3およびEH−12と比較した。抗体は、タンパク質Gを用いて精製され、CHO細胞表面上に発現されたPD−1と結合する能について評価が行われた。CHO−hPD1細胞を非標識抗PD−1抗体(10μg/mL、1μg/mL、および0.1μg/mL)で染色し、その後にAPC結合ロバ抗マウス抗体で染色し、蛍光強度の中央値を記録した。このアッセイの結果を
図9に報告する。陰性対照はマウスIgG(mIgG1)であり;陽性対照はM3(ヒトPD−1に対する中和モノクローナル抗体(Wu, K. et al. (2009) "Kupffer Cell Suppression of CD8+ T Cells in Human Hepatocellular Carcinoma Is Mediated by B7-H1/Programmed Death-1 Interactions," Cancer Res 69(20):8067-8075)および抗PD−1抗体EH12(Dorfman, D.M. et al. (2006) "Programmed Death-1 (PD-1) Is A Marker Of Germinal Center-Associated T Cells And Angioimmunoblastic T-Cell Lymphoma," Am. J. Surg. Pathol. 30(7):802-810)であった。
【0192】
50,000個のCHO−hPD1細胞を抗PD−1抗体(0mg/ml〜0.1mg/mlの濃度範囲で存在)で30分間培養させることによって、細胞ベースの競合アッセイを行った。その後に10μg/mlのAPC標識B7−DC−Fcを添加し、培養をさらに30分間続けた。その後、結合B7−DC−Fcの蛍光を測定した。蛍光強度の中央値を
図10に示す。抗体濃度を20μg/mLに固定して上記競合アッセイを繰り返し行った(
図11)。
【0193】
要約すれば、クローン1E3、1E8、および1H3は中和活性を示すとともに、抗原を良好に認識していたことが結果に示された。クローン1E6は、PD−1を中和することなくこれと交差結合することが可能であるので、結合の向上をもたらす。しかし、上記クローン1E6は、PD−1を細胞表面上に結合しているようには思われなかった。
【0194】
〔実施例3:ヒト化抗体の産生:一般手法〕
上述のように、特定の目的(たとえば、ヒト疾病のin vivo治療への使用用途など)については、上述の抗ヒトB7−H1抗体および/または抗ヒトPD−1抗体のヒト化誘導体を採用することが好ましい。
【0195】
このような誘導体を形成するためには、最初に、3D10抗体または1H3抗体と受容体ヒト抗体一式とのフレームワーク配列間の差異を同定するために、3D10抗体または1H3抗体のフレームワーク配列(「親」配列)を「受容体」ヒト抗体一式のフレームワーク配列と位置合わせした。上記親および受容体のフレームワーク配列間で不一致の残基を置換することによってヒト化を行った。バーニア域内の位置、VH/VL鎖間界面、またはCDR標準クラスの決定位置などの潜在的に重要となる位置での置換に関しては、想定される復帰突然変異について分析を行った(Foote, J. et al. (1992) ”Antibody Framework Residues Affecting The Conformation Of The Hypervariable Loops,"J. Molec. Biol. 224:487-499参照)。合計で14個のヒト化変異体配列を同定した。
【0196】
保存ドメインデータベース(COD)(Marchler-Bauer, et al. (2011) "COD: A Conserved Domain Database For The Functional Annotation Of Proteins," Nucleic Acids Res. 39:D225-D229)を使用して、各アミノ酸鎖のドメインの含有量および各ドメインのおおよその境界を決定した。一般的に使用される幾つかの定義(Kabat, E.A. et al. (1991) "Sequences of Proteins of Immunological Interest," Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242; Chothia, C. et al. (1987) "Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins," J. Mol. Biol. 196:901-917); Honegger, A. et al. (2001) "Yet Another Numbering Scheme For Immunoglobulin Variable Domains: An Automatic Modeling And Analysis Tool," J. Molec. Biol. 309(3):657-670; Chothia's CDR definition (Chothia, C. et al. (1987) "Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins," J. Mol. Biol. 196:901-917)に従い、可変ドメイン境界を相補性決定領域(CDR)の境界に沿って正確に決定した。以下では、このようなヒト化配列に対して使用する。
【0197】
マウスおよびヒトの生殖細胞配列に対する親配列の多重位置合わせをMAFFTを用いて作製し(Katoh, K. et al. (2002) "MAFFT: A Novel Method For Rapid Multiple Sequence Alignment Based On Fast Fourier Transform," Nucleic Acids Res. 30: 3059-3066)、前記親配列との配列同一性に応じて各位置合わせのエントリを順序付けた。100%の配列同一性でクラスタリングを行い、重複しているエントリを除外することによって、参照配列一式を非反復配列一式にまで減少させた。
【0198】
最適な受容体フレームワークの選択は、上記親抗体全体の配列の両鎖のフレームワーク全域が上記受容体に対して有する配列同一性に基づいて行われた。しかし、VH/VL鎖間界面を形成する位置は特に関心のある対象であった。さらに、何れの生殖細胞のフレームワークが互いに同一の界面残基の両方を備えるとともに、上記CDRの類似のループ構造を支持していることが知られていたかを決定するために、上記CDRの5について定義された不連続な標準構造一式に関与している上記CDRのグループ長および位置(Chothia, C. et al. (1987) "Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins," J. Mol. Biol. 196:901-917; Martin, A.C. et al. (1996) "Structural Families In Loops Of Homologous Proteins: Automatic Classification, Modelling And Application To Antibodies," J. Molec. Biol 263:800-815; Al-Laziniki, B. et al. (1997) "Standard Conformations For The Canonical Structures Of Immunoglobulins," J. Molec. Biol. 273:927-948)を上記生殖細胞系列と比較された。表6および表7は、Chothiaの定義に従って番号付けが行われており、上記VH/VL界面内の保存位置および上記CDRの標準クラスの決定位置をそれぞれ示す。
【0201】
上記ヒト生殖細胞系列に対する上記親抗体配列の位置合わせに応じて、最も一致性の高いエントリを同定した。好適なヒト生殖細胞系列の選択は、順序付けがなされた次の基準(1)〜(5)に応じて行われた:(1)フレームワーク全域の配列同一性;(2)同一または対応する鎖間界面残基;(3)親CDRの標準立体構造によるループの支持;(4)発現抗体に見られる重鎖および軽鎖の生殖細胞系列の組み合わせ;および(5)除去する必要のあるN−グリコシル化部位の存在。
【0202】
抗体1H3のFv領域の構造モデルを作製した。フレームワーク(FR)、相補性決定領域(CDR)、および全長Fvの構造鋳型配列候補は、標的に対する配列同一性および鋳型構造の定性性の結晶学的測定(結晶解像度(単位:オングストローム(Å)))に応じて、スコア付けおよびランク付けを行い、抗体データベースからの選択を行った。
【0203】
上記CDRをFR鋳型に対して構造的に位置合わせするために、上記CDRの何れかの側の5残基をCDR鋳型に含める。上記フラグメントの位置合わせは、重複セグメントおよび作製した構造配列位置合わせに応じて作製した。上記位置合わせに沿った上記鋳型フラグメントをMODELLERで処理した(Sali, A. et al. (1993) "Comparative Protein Modelling By Satisfaction Of Spatial Restraints," J. Molec. Biol. 234:779-815)。このプロトコルによって、位置合わせを行った構造鋳型一式から誘導される立体構造の制限が形成される。共役勾配処置および焼き鈍し最適化処置によって、上記制限を満たす構造集合を作製した。タンパク質構造のスコアおよび構造制限の充足から導き出したエネルギースコアに応じて、この集合からモデル構造を選択した。上記モデルの検査を行い、標的および上記鋳型の間で異なる位置の側鎖は、鎖最適化アルゴリズムおよび最小化したエネルギーを用いて最適化した。視覚化および演算ツール一式を使用して上記CDR構造の可変性、局所包装、および表面分析の評価を行って、1つ以上の好適なモデルを選択した。
【0204】
上記親抗体の構造モデルを構築して、原子の不完全包装、または、結合長、結合角度、またはねじれ角の歪みなどの欠陥について検査を行った。これらの欠陥は、抗体の構造安定性に関わる潜在的な問題を示している。モデル化プロトコルでは、このような欠陥を最小限に抑止することを図っている。ヒト化Fvの初期の構造モデルは、安全な置換(すなわち、結合親和力または安定性に作用を及ぼすことのないであろう置換)および慎重な置換(すなわち、位置置換が行われるが、結合親和力にとって位置が重要になり得る)の全てを含むものである。結合親和力の低下または安定性の低下のリスクに関連していると考えられる位置での置換に対しては改変が行われなかった。親との一致性の高い変異体モデルを作製することよりも、良好な独立モデルを作製するために、親鋳型の選択から独立して鋳型の検索または選択が行われた。潜在的な置換の評価が行われるにつれて、上記モデルはアップグレードされて、好適な置換および復帰突然変異の効果を反映した。
【0205】
〔実施例4:ヒト化抗ヒトB7−H1抗体〕
このようなヒト化誘導体の作製を説明するために、上述の手順に従って抗ヒトB7−H1抗体3D10のヒト化誘導体を作製した。
【0206】
3D10の軽鎖の可変ドメインをヒト生殖細胞系と比較する配列位置合わせは、IGKV3軽鎖の生殖細胞系(IGKV3−11
*01、IGKV3−11
*02、IGKV3−NL5
*01、IGKV3D−11
*01、IGKV3−NL4
*01、IGKV3D−7
*01、IGKV3D−20
*01、IGKV3−20
*01、IGKV3−20
*02、およびIGKV3−15
*01)、IGKV1軽鎖の生殖細胞系(IGKV1−9
*01、IGKV1−39
*01、IGKV1D−13
*01、IGKV1−16
*01、 IGKV1−8
*01、IGKV1−13
*02、IGKV1−NL1
*01、IGKV1D−43
*01、IGKV1−27
*01、およびIGKV1−12
*01)、およびIGKJ軽鎖の生殖細胞系(IGKJ4
*01、IGKJ2
*02、IGKJ2
*01、 IGKJ2
*04、IGKJ2
*03、IGKJ5
*01、IGKJ1
*01、および IGKJ3
*01)を用いて作製した。
【0207】
3D10の重鎖の可変ドメインをヒト生殖細胞系と比較する配列位置合わせは、IGHV1の重鎖の生殖細胞系(IGHV1−2
*02、IGHV1−2
*04、IGHV1−f
*01、IGHV1−48
*01、IGHV1−2
*03、IGHV1−2
*01、IGHV1−46
*02、IGHV1−2
*05、IGHV1−3
*01、およびIGHV1−8
*01)、IGHV3の重鎖の生殖細胞系(IGHV3−49
*04、IGHV3−49
*01、IGHV3−49
*02、IGHV3−49
*03、IGHV3−64
*01、IGHV3−64
*02、IGHV3−72
*01、IGHV3−66
*01、およびIGHV3−23
*01)、およびIGHJの重鎖の生殖細胞系(IGHJ3
*02、 IGHJ6
*01、IGHJ3
*01、IGHJ6
*03、IGHJ5
*02、IGHJ5
*01、IGHJ4
*01、IGHJ1
*01、IGHJ6
*04、およびIGHJ2
*01)を用いて作製した。
【0208】
(A)軽鎖のヒト化
上記基準に基づいて、上記抗体3D10の軽鎖は生殖細胞系IGKV3−11
*01(配列番号78)の軽鎖:
【0210】
および、生殖細胞系IGKV1−9
*01(配列番号79)の軽鎖:
【0212】
に最も類似していることが見出された。なお、表8(上記抗体3D10のCDR残基はイタリック体で示し、位置合わせが行われた同一の残基は下線で示す)に示すように、IGKV3−11
*01が好適である。
【0214】
Jセグメントの遺伝子と親配列とをFR4全域について比較し、軽鎖にはJセグメントのIGKJ4
*01(配列番号80:LTFGGGTKVEIK)を選択した。
【0215】
上記に示すように、上記抗体3D10の軽鎖は、標準クラスIループと類似する残基10個分の短鎖CDRL1を有している。ヒト生殖細胞系列は、このような短鎖CDRLlを有していない。選択した各生殖細胞系列(IGKV3−11
*01およびIGKV1−9
*01)は、こうした種類のループを担持するための正常フレームワーク残基を含むより短鎖のLIループを有する。良好な配列全体の類似性は受容体フレームワークおよび親配列の間に確認されるが、重要な相違点は界面位置Y33およびP45で確認される。残基Y33はCDRLI内に存在する。選択した上記2つの受容体群はこの位置にチロシンを含んでいないが、他の生殖細胞系配列はこの位置にチロシンを含んでいる。上記位置P45における上記受容体フレームワークと上記親配列の相違点は、ヒト生殖細胞系と異なりFR2を有する親生殖細胞系に起因している。この結果として、選択される受容体フレームワークに関わらず、この領域内の変化が提唱され、これにより、IGKV3−11
*01およびIGKV1−9
*01は受容体フレームワークとして促進された。
【0216】
上記2つの好適な受容体フレームワーク(IGKV3−11
*01およびIGKV1−9*01)の各々について3つのヒト化鎖を作製した。3つのLC1鎖をIGKV3−11
*01から誘導し、3つのLC2鎖をIGKV1−9
*01から誘導した。各受容体フレームワークの第1のヒト化鎖がヒト化置換の全てを含むことは可能であると考えられ、3つの鎖で最もヒト鎖の性質を示すものであった。各受容体フレームワークの第2のヒト化鎖は、帯電を改変するか、潜在的にコアのパッキングを妨げるか、またはCDRの立体構造に影響を及ぼし得る位置に幾つかの復帰突然変異を含んでいた。コア受容体フレームワークの第3の鎖は、復帰突然変異のほぼ全て(帯電を改変し、かつ結合親和力を改変する可能性を有し得る置換を含む)を含んでいた。上記6つのヒト化鎖の配列を以下に示す。
【0218】
親3D10軽鎖との相対的な相違点を太字および下線で示しつつ、上記6つのヒト化鎖の配列を表9に示す。
【0220】
(B)重鎖のヒト化
上述の基準に照らして、生殖細胞系受容体フレームワークの2つの候補であるIGHV1−2
*02(IGHV1生殖細胞系)およびIGHV3−49
*04(IGHV3生殖細胞系)を上記抗体3D10の重鎖のヒト化に選択した。
【0221】
上記親配列との配列類似性を有しており、かつドメインのコアパッキングに関与している極めて類似性の高い残基を含んでいることを理由にして、受容体フレームワークIGHV1−2
*02を選択した。IGHV1−2
*02に類似の他の生殖細胞系配列を検討して排斥した後に、受容体フレームワークIGHV3−49
*04を選択した。受容体フレームワークIGHV3−49
*04は、上記親配列に対する非類似性がIGHV1−2
*02よりも僅かに高いので、より多くの置換基が必要とされた。しかし、この生殖細胞系受容体フレームワークは親CDRを担持することが可能である。上記受容体フレームワークIGHV1−2
*02および上記フレームワークIGHV3−49
*04の配列を以下に示す。
【0222】
受容体フレームワークIGHV1−2
*02(配列番号87)
【0224】
受容体フレームワークIGHV3−49
*04(配列番号88)
【0226】
表10は、これら配列と上記抗体3D10の重鎖との位置合わせを示す(上記抗体3D10のCDR残基はイタリックで示し、位置合わせの行われた同一の残基は下線で示す);
【0228】
上記Jセグメントの配列を上記親配列とFR4全域について比較し、上記JセグメントのIGHJ3
*02(配列番号89:DAFDIWGQGTMVTVSS)を重鎖に選択した。
【0229】
上記2つの好適な受容体フレームワークIGHV1−2
*02およびIGHV3−49
*04の各々について3つのヒト化鎖を作製した。IGHV1−2
*02から3つのHC1鎖を誘導し、IGHV3−49
*04から3つのHC2鎖を誘導した。各受容体フレームワークの第1のヒト化鎖は、可能と考えられる全てのヒト化置換を含み、3つの鎖のうち最もヒト鎖に近いものであった。各受容体フレームワークの第2のヒト化鎖は、帯電を改変するか、潜在的にコアのパッキングを妨げるか、CDRの立体構造に影響を及ぼし得るような位置に幾つかの復帰突然変異を含む。各受容体フレームワークの第3の鎖は、復帰突然変異のほぼ全て(帯電を改変し、かつ潜在的に結合親和力を改変し得る置換)を含むものであった。上記6つの鎖の配列を以下に示す。
【0231】
上記親3D10の重鎖に相対的な相違点を太字および下線で示しつつ、上記6つのヒト化鎖の配列を
図11に示す。
【0233】
(C)抗体3D10のヒト化誘導体
IGKV3−11
*01およびIGHV1−2
*02の対合に類似の生殖細胞系の組み合わせを有する抗体が存在したことを検査によって確認した。この対合を受容体1と標識した。さらに、IGKV1−9
*01とIGHV3−49
*04に類似の生殖細胞系の組み合わせを有する抗体を発見した。この対合を受容体2と標識した。
【0234】
上述の重鎖および軽鎖のヒト化鎖を組み合わせて14個の変異ヒト化抗体を作製した。これら変異ヒト化抗体の配列を表12に示す。
【0236】
〔実施例5:ヒト化抗ヒトPD−1抗体の作製〕
このようなヒト化誘導体の作製を説明するために、上述の手順(1H3の可変領域およびヒトIgG1のFc領域を組み込んだキメラ抗体を親抗体として使用した)に従って抗ヒトPD−1抗体1H3のヒト化誘導体を作製した。
【0237】
1H3軽鎖の可変ドメインをヒト生殖細胞系と比較する配列アライメントは、IGKV3軽鎖生殖細胞系(IGKV3−11
*01、IGKV3−11
*02、IGKV3D−11
*01、IGKV3D−20
*01、IGKV3−NL4
*01、IGKV3D−7
*01、IGKV3−20
*01、IGKV3−NL5
*01、IGKV3−15
*01、IGKV3−NL1
*01、IGKV3−20
*01、IGKV3−NL2
*01、IGKV3−NL3
*01)、IGKV1軽鎖生殖細胞系(IGKV1−9
*01、IGKV1D−43
*01、IGKV1−39
*01、IGKV1D−13
*02、IGKV1−8
*01、IGKV1D−13
*01、IGKV1−12
*01、IGKV1D−16
*01、IGKV1−5
*01、およびIGKV1−NL1
*01)、およびIGKJ軽鎖生殖細胞系(IGKJ2
*02、IGKJ2
*01、IGKJ2
*04、IGKJ2
*03、IGKJ5
*01、IGKJ4
*01、IGKJ3
*01、およびIGKJ1
*01)を用いて作製した。
【0238】
1H3重鎖の可変ドメインをヒト生殖細胞系と比較する配列アライメントは、IGHV3重鎖生殖細胞系(IGHV3−48
*01、IGHV3−48
*02、IGHV3−48
*03、IGHV3−11
*01、IGHV3−21
*01、IGHV3−11
*03、IGHV3−30
*03、IGHV3−9
*01、IGHV3−7
*01、およびIGHV3−30
*10)、IGHV1重鎖生殖細胞系(IGHV1−3
*01、IGHV1−69
*08、IGHV1−69
*11、IGHV1−46
*01、IGHV1−69
*05、IGHV1−69
*06、IGHV1−69
*01、IGHV1−46
*02、IGHV1−69
*02、およびIGHV1−69
*10)、および、IGHJ重鎖生殖細胞系(IGHJ6
*01、IGHJ6
*03、IGHJ4
*01、IGHJ6
*04、IGHJ5
*02、IGHJ3
*02、IGHJ5
*01、IGHJ3
*01、IGHJ2
*01、およびIGHJ1
*01)を用いて作製した。
【0239】
軽鎖および重鎖の各々について、全体の配列同一性、マッチング界面位置、および類似分類のCDR標準位置に基づいて、2つの生殖細胞系群を可能な受容体フレームワークとして同定した(軽鎖についてはIGKV3およびIGKV1を同定し、重鎖については1GHV3およびIGHV1を同定した)。抗体1H3は、上記軽鎖の生殖細胞系1GKV3−11
*01および上記重鎖の生殖細胞系IGHV3−48
*01に最も類似しているが見出された。軽鎖および重鎖の各々について、全体の配列同一性、マッチング界面位置、および類似分類のCDR標準位置に基づいて、2つの生殖細胞系群を可能な受容体フレームワークとして同定した(軽鎖についてはIGKV3およびIGKV1を同定し、重鎖については1GHV3、IGHV1を同定した)。
【0240】
(A)軽鎖のヒト化
抗体1H3は、残基10個分の短鎖のCDRL1を含み、標準クラスIに分類される。ヒト生殖細胞系ではこのように短鎖のCDRL1を含むものはないが、選択された各群(IGKV3−II
*01およびIGKV1−9
*01)のうち最も近しい生殖細胞系は短L1ループを有し、クラスIのLIループを担持するのに適正のフレームワーク残基を含んでいる。全体の配列類似性は受容体フレームワークの両方にとって良好であるが、2つの界面位置(Y33およびP45)において相違している。Y33はCDRLl内に存在する。上記2つの受容体群がこの位置にチロシンを含まない一方で、他の潜在的な受容体群はこの位置にチロシンを含んでいる。P45の相違点は、上記親軽鎖のFR2内に存在する多数の他の相違点と結び付いていた。要するに、上記親生殖細胞系は、FR2がヒト生殖細胞系内の何れにも非類似のマウス生殖細胞系群に属している。
【0241】
軽鎖の受容体フレームワークとして、生殖細胞系1GKV3−11
*01およびIGKV1−9
*01を選択した。上記1GKV3−11
*01およびIGKV1−9
*01の軽鎖の配列は、それぞれ配列番号78および配列番号79として先述している。上記配列と抗体1H3の軽鎖との位置合わせを表13に示す(抗体1H3のCDR残基はイタリックで示し、位置合わせを行った同一の残基は下線で示す)。
【0243】
FR4全体についてJセグメントの遺伝子を親配列と比較し、JセグメントのIGKJ2
*02(配列番号96:CTFGQGTKLEIK)を軽鎖に選択した。
【0244】
上記2つの好適な受容体フレームワークIGKV3−11
*01およびIGKV1−9
*01の各々について2つのヒト化鎖を作製した。IGKV3−11
*01から2つのLC1鎖を誘導し、IGKV1−9
*01から2つのLC2鎖を誘導した。各受容体フレームワークの第1のヒト化鎖は、可能と考えられるヒト化置換の全てを含んでおり、3つの鎖のうち最もヒト鎖に近いものであった。各受容体フレームワークの第2のヒト化鎖は、帯電を改変するか、潜在的にコアのパッキングを妨げるか、または、CDRの構造に影響を及ぼし得る位置に幾つかの復帰突然変異を含んでいる。上記4つのヒト化鎖の配列を以下に示す。
【0246】
上記4つのヒト化鎖の配列は、親1H3 Var1軽鎖に相対的な相違点を太字および下線で示して表14に示す。
【0248】
(B)重鎖のヒト化
上述の基準に照らして、生殖細胞系受容体フレームワークの2つの候補であるIGHV3−48
*01(IGHV3生殖細胞系)およびIGHV1−3
*01(IGHV1生殖細胞系)を抗体1H3 Var1の重鎖のヒト化のために選択した。
【0249】
受容体フレームワーク1GHV3−48
*01は、その全体的な配列類似性から一次重鎖受容体フレームワークとして選択した。上記界面残基は、変異の発生可能であって、この変異がCDRH1の標準クラスを決定するための適正残基を含んでいる位置であるH35を除いて一致性を示す。CDRH2は、位置56のチロシンの存在によって、配列系の標準クラスに分類されなかった。上記受容体フレームワークIGHV3−48
*01と密接に関連している任意の生殖細胞系を除いた後、上記第2の重鎖受容体フレームワークの選択を行った。最も近しい生殖細胞系はその後にIGHV1−3
*01となった。考慮すべき相違点の数は、下コアのパッキングが異なっているため増大することになった。しかし、上記生殖細胞系は、CDRを担持し、好適な受容体フレームワークとして機能するものである。なお、上記親配列は、全ヒト生殖細胞系がチロシンを含んでいる保存位置60においてシステインを含む。上記受容体フレームワーク1GHV3−48
*01およびIGHV1−3
*01の配列を以下に示す。
【0250】
受容体フレームワーク1GHV3−48
*01(配列番号101)
【0252】
受容体フレームワークIGHV1−3
*01(配列番号102)
【0254】
表15は、上記配列と抗体1H3の重鎖との位置合わせの結果を示している(抗体1H3のCDR残基はイタリックで示し、位置合わせを行った同一残基は下線で示している)。
【0256】
FR4全体についてJセグメントの遺伝子を上記親配列と比較した。JセグメントのIGHJ6
*01(配列番号103:WGQGTTVTV)を重鎖に選択した。
【0257】
上記2つの好適な受容体フレームワークIGHV3−48
*01およびIGHV1−3
*01の各々について3つのヒト化鎖を作製した。上記IGHV3−48
*01から3つのHC1鎖を誘導し、上記IGHV1−3
*01から3つのHC2鎖を誘導した。各受容体フレームワークの第1のヒト化鎖は、可能とみなされる全てのヒト化置換を含み、上記3つの鎖のうち最もヒト鎖に近いものであった。各受容体フレームワークの第2のヒト化鎖は、帯電を改変するか、潜在的にコアのパッキングを妨げるか、またはCDRの構造に影響を及ぼし得る位置に幾つかの復帰突然変異を含んでいた。各受容体フレームワークの第3の鎖は、ほぼ全ての復帰突然変異(帯電を改変し、かつ潜在的に結合親和力を改変し得る置換を含む)を含んでいた。上記6つのヒト化鎖の配列を以下に示す。
【0259】
上記親1H3との相対的な相違点を太字および下線で示しつつ、上記6つのヒト化鎖の配列を表16に示す。
【0261】
(C)抗体1H3のヒト化誘導体
IGKV3−11
*01および重鎖IGHV3−48
*01との対合に近しい生殖細胞系の組み合わせを有する抗体が存在したことを検査によって確認した。この対合を受容体Iと標識した。その後、IGKVI−9
*01およびIGHVI−3
*01の対合に類似の対合を有する抗体が発見された。この対合を受容体2と標識した。
【0262】
上述の軽鎖および重鎖ヒト化鎖を組み合わせて14個の変異ヒト化抗体を作製した。これら変異ヒト化抗体の配列を表17に記載する。
【0264】
〔実施例6:1H3抗ヒトPD−1抗体の特性決定〕
本発明の抗PD−1抗体の特性の評価を行うために、抗体1H3のマウス抗ヒトキメラ(「ch」)PD−1のFab領域とヒトIgG1のFc領域とを有するコンストラクト(1H3コンストラクト)を作製した。ヒトPD−1との結合能について、上記コンストラクトの試験を行った。
【0265】
ヒト全長PD−1で形質転換したCHO細胞をビオチン標識抗hB7−H1−Fcまたは抗hB7−DCmFcで染色する前に飽和線量のPD−1 mAbsで事前に培養を行った実験の結果を
図12に示す。
図12では、抗体1H3のマウス抗ヒトキメラ(「ch」)PD−1Fab領域とヒトIgG1のFc領域とを有するマウスモノクローナル抗体のコンストラクトは、ヒトPD−1を発現している細胞に抗体が結合した結果として、B7−H1−FcおよびB7−DC−Fcがこの細胞と結合することを阻害したことを示している。M1、m3、1E8は全て、陽性対照の抗PD−1抗体である。非還元ゲル上では、上記コンストラクトが約200MWの単一の帯として遊走した。還元条件下において、上記帯と約52MWの帯との置換を行った。
【0266】
上記1H3コンストラクトは、2.19nMの親和性K
D、0.734×10
-5/Msの「on速度」、および1.61×10
-4/sの「off速度」を示した。上記コンストラクトのEC
50は75gであることが見出された。
図13では、このコンストラクトによって得られた結合を市販の抗PD−1抗体であるEH12によって得られた結合と比較している。上記コンストラクトは、
図14に示すようなB7−H1−FcまたはB7−DC−Fcに対するhPD−1(CHO細胞によって発現)の結合能を完全に阻害することが可能であることが見出された。
図15では、キメラ1H3コンストラクトがhPD−1−Fcと結合し、このようなhPD−1−FcがCHO細胞によって発現されるhB7−H1と結合することを阻害するが可能であることを示している。
【0267】
上記IH3コンストラクトが有するヒト一次T細胞との結合能を対照抗体(palivizumab:SYNAGIS(登録商標)、Medimmune, Inc.)と相対的に評価した。上記IH3は、CD8細胞およびCD4細胞の双方に対する結合が向上していることを示した(
図16Aおよび16B)。
【0268】
本発明の抗体の機能特性を説明するために、上記コンストラクト1H3、抗体1H3のFAB領域を含むキメラ抗体コンストラクト(「コンストラクト1H3」)、抗体1E3のFAB領域を含むキメラ抗体コンストラクト(「1E3コンストラクト」)、および抗体3D10のFAB領域を含むキメラ抗体コンストラクト(「3D10コンストラクト」)について、T細胞活性を向上させる能の評価を行った。未成熟の樹状細胞(DC)をTNFαおよびPGE2に2日間晒した(成熟2日目に細胞を50μg/mlの破傷風トキソイド(TT)の存在下で一晩培養した)。この結果得られた細胞は、B7−H1およびB7−DCを発現する能を獲得してこの能に決定されるような成熟DCとなっていたことが見出された。その後、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した自己T細胞と、100ng/mlのTTと、上述の抗体コンストラクトとの存在下で、成熟後のDC細胞を2週間培養した。
図17に示すように、本発明の抗体は、抗体特異的記憶T細胞の膨張によって測定されるように、B7−H1およびPD−1の相互作用を阻害することが可能であった。7日目、細胞上清中に存在しているサイトカインの分析を行った(表18)。
【0270】
表18に示すように、上記抗hPD−1コンストラクトの双方のTh1反応およびTh2反応が促進された。上記細胞上清中には極めて少量のIL−1β、IL−2、IL−4、IL−7、IL−10、およびG−CSFが見出された。mAbは全て、エンドトキシンが0.01EU/mg未満と極めて少量であった。さらに、上記DC細胞および上記T細胞を無血清培地に保存した。7日目の細胞に細胞内IFN−γ染色を行ったことによって、対照細胞の僅か0.15%のみがIFN−γ
+であったのに対して、上記IH3コンストラクトで培養を行っていた細胞の1.9%がIFN−γ
+であり、上記1E3コンストラクトで培養を行っていた細胞の0.91%がIFN−γ
+であり、上記3D10コンストラクトで培養を行っていた細胞の3.2%がIFN−γ
+であったことが明らかになった。
【0271】
したがって要約すれば、上記1H3コンストラクトは、T細胞の細胞増殖が約7倍に増大することを媒介し、各細胞毎のIFN−γ産生が約12倍に増大することを媒介したことが見出された。このような作用の累積的な効果として、IFN−γ分泌が約100倍に増大した。
【0272】
さらなる機能特性決定として、単球由来のDCをTNFαおよびPGE2で培養することによって成熟させた。その後、クラスIおよびIIの制限CEFペプチド(すなわち、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、エプスタインバーウイルス(Epstein−Barr virus)、およびインフルエンザウイルス(influenza virus)のペプチド)を混合した集合の存在下で細胞にパルスを2時間与え、CFSEで標識した自己T細胞(LDカラム、純度95%)を用いて2週間培養を行った。その後、CFSEで標識した自己T細胞(LDカラム、純度95%)および上述の抗体コンストラクトの存在下において、上記処理を行った細胞を2週間培養した。7日目、CFSEで希釈したT細胞のパーセンテージは、対照抗体で培養した細胞については40%であり、上記1H3コンストラクトで培養した細胞については37%であり、上記3D10コンストラクトで培養した細胞については50%であり、抗体CA−18C3(抗IL−1α特定的モノクローナル抗体)で培養した細胞については57%であることが見出された。11日目、CFSEで希釈したT細胞のパーセンテージの評価を再度行った。その結果、上記CFSEで希釈したT細胞のパーセンテージは、上記対照抗体で培養した細胞については17%であり、上記1H3コンストラクトで培養した細胞については38%であることが見出された。その後、上記CFSEで希釈したT細胞のパーセンテージは、上記抗体CA−18C3で培養した細胞については27%であることが見出された。
【0273】
7日目、IL−2サイトカインおよびIFN−γサイトカインに関しても、上記処理を行った細胞の上清の分析を行った(表19)。
【0275】
11日目、IFN−γサイトカイン、TNFαサイトカイン、およびGM−CSFサイトカインに関しても、上記処理を行った細胞の上清の分析を行った。上記1H3コンストラクトは、3種類全てのサイトカインが対照抗体と相対的して向上するのを媒介したことが見出された(表20)。
【0277】
さらなる機能特性決定として、単球由来のDC(HLA−A2陽性のドナーPBMCから取得)をTNFαおよびPGE2に曝して成熟させた。その後、HLA−A2制限MART−1ペプチドおよびHLA−A2制限FluM1ペプチドと一緒に、上記成熟させたDCにパルスを2時間与えた。その後、CFSEで標識した自己T細胞(LDカラム、純度95%)と上述の1H3コンストラクトまたは3D10コンストラクトとの存在下において、上記細胞を2週間培養した。上記MART−1ペプチドおよび上記M1ペプチドのサイトカイン産生に対する効果を表21に示す。
【0279】
〔実施例7:ヒト化抗PD−1抗体の特性決定〕
上述のヒト化抗体1H3_var1〜1H3_var14(表17参照)の評価を行って、ヒトPD−1に対する結合能および治療能力の確認を行った。上記抗体をエンコードするポリペプチドはCHO細胞内で発現された。ELISA法を用いて機能的抗体の力価の決定を行った(表22)。
【0281】
結合がヒトPD−1に特定的であるよう確実にするために、ヒトPD−1を発現するように形質転換を行ったCHO細胞を用いて結合の評価を行った。このような結合実験の結果を
図18A〜18Dに示す。上記結合の実験を1ng、3ng、10ng、30ng、100ng、300ng、1000ng、または3000ngのh1H3変異体の存在下において繰り返し行うことによって、このようなヒト化抗体のPD−1に対する結合能はあらゆる場合において抗体濃度に依存していることが見出された。
【0282】
PD−1およびその天然リガンドの間の相互作用を阻害する本発明のヒト化抗PD−1抗体の阻害能を実証するために、B7−H1(またはB7−DC)と選択したh1H3変異体との存在下において、PD−1を発現するHEK293細胞を培養した。上記h1H3変異抗体は、上記B7−H1が上記HEK293細胞に結合することを阻害可能であることが見出された(
図19A(B7−H1);
図19B(B7−DC)(Ctl= synagis, WT=キメラ1H3))。
【0283】
表23は、500ml規模での一過性発現および精製手段で得られた結果を示す。非還元性ゲルは、発現された抗体は主として約160kDの単一の帯として遊走することを示した。なお、還元性ゲル中で分析を行った場合では、上記帯は約60kDおよび約30kDの帯に置換されていた。この結果は、受容体1h1H3変異体(h1H3 Var1、h1H3 Var3、h1H3 Var4、およびh1H3 Var6)はヒトPD−1との良好な結合を示す一方で、受容体2h1H3変異体(h1H3 Var7〜h1H3 Var14)はヒトPD−1とのより不良の結合を示した。したがって、受容体1h1H3変異体であるh1H3 Var1〜h1H3 Var6の重鎖および軽鎖をクローニングして二重遺伝子ベクター(DGV:Lonza Biologics, Berkshire, UK; Bebbington, C.R. et al. (1992) "High-Level Expression Of A Recombinant Antibody From Myeloma Cells Using A Glutamine Synthetase Gene As An Amplifiable Selectable Marker," Biotechnology (NY) 10(2):169-175)を作製し、これをCHOに形質転換することによって、安定して抗体を産生する細胞株の作製を可能にした。
【0285】
抗体濃度を0.5ng/ml、1.5ng/ml、5ng/ml、15ng/ml、50ng/ml、150ng/ml、および500ng/ml、並びに1.5μg/ml、5μg/ml、15μg/ml、および50μg/mlとして結合分析を行った結果、結合は抗体濃度に依存していることが判明した。上記変異体のPD−1特異的な結合能は、0nM〜約350nMの範囲の抗体濃度で決定した。
図20は、その結果得られるh1H3 Var1〜h1H3 Var6についての曲線を示し、これらの抗体がPD−1に結合することを示唆している。抗体h1H3 Var1およびh1H3 Var4は、親抗体と相対して低下した結合を示した。その一方、抗体h1H3 Var2、h1H3 Var3、h1H3 Var5、およびh1H3 Var6は、上記親抗体の結合に相当する結合を示した。これらの抗体に関するEC50のデータを表23に示す。
【0286】
本明細書で言及した全ての刊行物および特許については、参照することによって、その内容を援用するものである。なお、援用の範囲に関しては、参照することによって、その内容全体を援用する旨を個々の刊行物および特許について個別具体的に示した場合と同一の範囲まで含めるものである。本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる変更を行うことが可能であることが理解されるであろう。また、本出願は、一般的に本発明の原則に従い、発明の任意の変更、使用、または適合を含むように意図されたものであることも理解されるであろう。そして、本出願は、本願開示内容からの変更が本発明の属する技術分野において公知または慣行の範囲内において行われる場合には、これら変更も含むものであり、先に規定した本質的特徴について適用され得ることも理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【
図1】B7−H1に結合する抗体に関してテストされたハイブリドーマ上清の結合を示す図である。陽性対照(PC):ハイブリドーマ生成に用いられたマウス由来の1:1000希釈血清;陰性対照(NC):5%ミルク/PBS。B7−H1−Fcに対する結合および抗マウスIgGを用いた検出に関してデータが示される。
【
図2】単離抗B7−H1抗体がPD−1に対するB7−H1の結合を調節することができるかどうかを判定するための実験結果を示す図である。陽性対照:クローンMIH−1および29E.2A3(両者は抗ヒトCD274(B7−H1);2つの陰性対照:無関係ハイブリドーマ(ランダムAb)およびベクター対照(VC)由来の馴化培地。
【
図3】CHO−HB7−HLに対するに関してテストされた抗B7−HL抗体の中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。テストされたクローンのいずれも、親CHOラインとの交差反応は認められず、発現した抗体がヒトB7−H1に対して免疫特異性があることを示した。
【
図4】選択された抗ヒトB7−H1抗体のヒトB7−H1発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【
図5】抗ヒトB7−H1抗体5H1および1E12のヒトB7−HL発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を比較する図である。
【
図6】単離された抗ヒトPD−1抗体の抗原結合及びアイソタイプを示す図である。
【
図7A】単離されたハイブリドーマの幾つかが、中和抗ヒトPD−1抗体を発現したことを示す実験結果を示す図である。
【
図7B】単離されたハイブリドーマの幾つかが、中和抗ヒトPD−1抗体を発現したことを示す実験結果を示す図である。
【
図8】CHO−hPD−1に対する結合に関してテストされた抗PD−1抗体の中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。テストされたクローンの何れも、親CHOラインとの交差反応は認められず、発現した抗体がヒトPD−1に対して免疫特異的性があることを示した。
【
図9】選択された抗ヒトPD−1抗体のヒトPD−1発現CHO細胞結合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)を示す図である。陽性対照:EH12(BioLegendから市販されている抗ヒトPD−1抗体);mIgG1:マウスIgG陰性対照。
【
図10】抗ヒトPD−1抗体の濃度変更時の細胞ベースの競合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【
図11】ヒトPD−1抗体の濃度が20μg/mlの時の細胞ベースの競合アッセイの中央値蛍光強度(MFI)の結果を示す図である。
【
図12】ヒトの完全長PD−1をトランスフェクトしたCHO細胞を、ビオチン標識hB7−H1−FCまたはhB7−DCmIgにより染色する前に、飽和量の抗ヒトPD−1モノクローナル抗体(mAbs)または対照Igと共に事前培養した実験の結果を示す図である。
【
図13】パネルAおよびパネルBが、(A)市販の抗PD−1抗体、EH12、と(B)キメラ(”CH”)マウス抗ヒトPD−1のFab領域およびヒトIgG1のFc領域とを有するマウスモノクローナル抗体との比較結合を示す図である。
【
図14】パネルAおよびパネルBが、ビオチン化B7−HL−Fcとビオチン化B7−DC−FcのPD−1に対する結合のブロッキング効果を発揮する、本発明の抗PD−1抗体の能力を示す図である。
【
図15】抗hIg抗体によって検出された、CHO.hPD−1細胞に対する1H3抗ヒトPD−1キメラ抗体の結合曲線を示す図である。
【
図16A】陰性対照抗体(palivizumab;SYNAGIS(登録商標)、Medimmune、Inc.)と比較して、ヒト初代T細胞CD8+(
図16A)およびCD4+(
図16B)に対して結合する、1H3抗ヒトPD−1キメラ抗体の能力の研究結果を示す図である。
【
図16B】陰性対照抗体(palivizumab;SYNAGIS(登録商標)、Medimmune、Inc.)と比較して、ヒト初代T細胞CD8+(
図16A)およびCD4+(
図16B)に対して結合する、1H3抗ヒトPD−1キメラ抗体の能力の研究結果を示す図である。
【
図17】破傷風毒素(TT)のリコールの際に、CFSE希釈により測定された抗原特異的T細胞の応答を高める、本発明の抗体の能力を示す図である。
【
図18A】CHO.hPDl細胞に結合するヒト化1H3変異体(h1H3 Var1〜h1H3 Var14)の能力を実証する図である。
【
図18B】CHO.hPDl細胞に結合するヒト化1H3変異体(h1H3 Var1〜h1H3 Var14)の能力を実証する図である。
【
図18C】CHO.hPDl細胞に結合するヒト化1H3変異体(h1H3 Var1〜h1H3 Var14)の能力を実証する図である。
【
図18D】CHO.hPDl細胞に結合するヒト化1H3変異体(h1H3 Var1〜h1H3 Var14)の能力を実証する図である。
【
図19A】B7−H1(
図19A)またはB7−DC(
図19B)を発現するhPD−1−FcおよびHEK293細胞間の相互作用をブロックする、ヒト化抗PD−1抗体の能力を実証する図である。
【
図19B】B7−H1(
図19A)またはB7−DC(
図19B)を発現するhPD−1−FcおよびHEK293細胞間の相互作用をブロックする、ヒト化抗PD−1抗体の能力を実証する図である。
【
図20】h1H3 Var1〜h1H3 Var6の結合曲線を示す図である。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]