【文献】
Journal of Molecular and Cellular Cardiology,2010年10月26日,50,793-802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
「網膜細胞」という用語は、本明細書において、網膜神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞、双極細胞、ならびに桿体および錐体を含む光受容体細胞、ミュラーグリア細胞、および網膜色素上皮等の網膜を含む細胞型のうちのいずれかを指し得る。
【0010】
「AAV」は、アデノ関連ウイルスの略語であり、ウイルス自体またはその誘導体を指すために使用されてもよい。本用語は、別に要求される場合を除いて、すべてのサブタイプ、ならびに天然に存在する形態および組換え形態の両方を包含する。「rAAV」という略語は、組換えアデノ関連ウイルスを指し、組換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)とも称される。「AAV」という用語には、AAV型1(AAV−1)、AAV型2(AAV−2)、AAV型3(AAV−3)、AAV型4(AAV−4)、AAV型5(AAV−5)、AAV型6(AAV−6)、AAV型7(AAV−7)、AAV型8(AAV−8)、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAVが含まれる。「霊長類AAV」は、霊長類に感染するAAVを指し、「非霊長類AAV」は、非霊長類哺乳動物に感染するAAVを指し、「ウシAAV」は、ウシ哺乳動物に感染するAAVを指す、等である。
【0011】
AAVの様々な血清型のゲノム配列、ならびに天然末端反復(TR)の配列、Repタンパク質、およびキャプシドサブユニットは、当技術分野で既知である。このような配列は、文献またはGenBank等の公開データベースで見つけることができる。例えば、GenBank受託番号NC_002077(AAV−1)、AF063497(AAV−1)、NC_001401(AAV−2)、AF043303(AAV−2)、NC_001729(AAV−3)、NC_001829(AAV−4)、U89790(AAV−4)、NC_006152(AAV−5)、AF513851(AAV−7)、AF513852(AAV−8)、およびNC_006261(AAV−8)を参照されたく、これらの開示は、AAV核酸およびアミノ酸配列を教示するために、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、Srivistava et al.(1983)J.Virology45:555、Chiorini et al.(1998)J.Virology71:6823、Chiorini et al.(1999)J.Virology73:1309、Bantel−Schaal et al.(1999)J.Virology73:939、Xiao et al.(1999)J.Virology 73:3994、Muramatsu et al.(1996)Virology221:208、Shade et al.,(1986)J.Virol.58:921、Gao et al.(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA99:11854、Moris et al.(2004)Virology33:375−383、国際特許公開第WO00/28061号、同第WO99/61601号、同第WO98/11244号、および米国特許第6,156,303号も参照されたい。
【0012】
本明細書で使用される「rAAVベクター」は、AAV由来ではないポリヌクレオチド(すなわち、AAVと異種のポリヌクレオチド)配列、典型的には、細胞の遺伝子形質転換のための目的とする配列を含むAAVベクターを指す。概して、異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1つ、一般的には2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)によって隣接される。rAAVベクターという用語は、rAAVベクター粒子およびrAAVベクタープラスミドの両方を包含する。rAAVベクターは、一本鎖(ssAAV)または自己相補的(scAAV)のいずれかであり得る。
【0013】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質からなるウイルス粒子(典型的には、野生型AAVのキャプシドタンパク質のすべてによる)およびキャプシド形成されたポリヌクレオチドrAAVベクターを指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される導入遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、これは、典型的には、「rAAVベクター粒子」または単に「rAAVベクター」と称される。したがって、rAAV粒子の生成は、rAAVベクターの生成を必然的に含み、例えば、このようなベクターは、rAAV粒子内に含有される。
【0014】
「パッケージング」は、AAV粒子の組み立ておよびキャプシド形成をもたらす一連の細胞内事象を指す。
【0015】
AAV「rep」および「cap」遺伝子は、アデノ関連ウイルスの複製およびキャプシド形成タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。AAV repおよびcapは、本明細書において、AAV「パッケージング遺伝子」と称される。
【0016】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、AAV(例えば、野生型AAV)が哺乳類細胞によって複製およびパッケージングされることを可能にするウイルスを指す。様々なそのようなAAVのヘルパーウイルスは、当技術分野で既知であり、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニア等のポックスウイルスを含む。アデノウイルスは、いくつかの異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型が最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳類、および鳥類由来の多数のアデノウイルスが知られており、ATCC等の受託者から入手可能である。ヘルペスファミリーのウイルスには、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタインバーウイルス(EBV)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が含まれ、これらもATCC等の受託者から入手可能である。
【0017】
「ヘルパーウイルス機能(複数を含む)」は、(本明細書に記載の複製およびパッケージングの他の要件と併せて)AAV複製およびパッケージングを可能にするヘルパーウイルスゲノムにおいてコードされた機能(複数を含む)を指す。本明細書に記載される「ヘルパーウイルス機能」は、ヘルパーウイルスを提供すること、または例えば、必要な機能(複数を含む)をコードするポリヌクレオチド配列をトランスにおいて産生細胞に提供することを含む、いくつかの方法で提供され得る。例えば、1つ以上アデノウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドまたは他の発現ベクターは、rAAVベクターとともに産生細胞にトランスフェクトされる。
【0018】
「感染性」ウイルスまたはウイルス粒子は、コンピテントに組み立てられたウイルスキャプシドを含み、かつそのウイルス種が指向性である細胞にポリヌクレオチド構成成分を送達することができるものである。本用語は、必ずしもそのウイルスの任意の複製能力を暗示しない。感染性ウイルス粒子を計数するためのアッセイは、本開示の別の箇所および当技術分野において説明される。ウイルス感染性を、全ウイルス粒子に対する感染性ウイルス粒子の比率で表すことができる。全ウイルス粒子に対する感染性ウイルス粒子の比率を決定する方法は、当技術分野において既知である。例えば、Grainger et al.(2005)Mol.Ther.11:S337(TCID50感染力価アッセイを説明する)、およびZolotukhin et al.(1999)Gene Ther.6:973を参照されたい。実施例も参照されたい。
【0019】
「複製コンピテント」ウイルス(例えば、複製コンピテントAAV)は、感染性であり、かつ感染細胞内で複製されることもできる(すなわち、ヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス機能の存在下で)表現型的に野生型のウイルスを指す。AAVの場合、複製コンピテンスは、概して、機能的AAVパッケージング遺伝子の存在を必要とする。概して、本明細書に記載のrAAVベクターは、1つ以上のAAVパッケージング遺伝子の欠失のため、哺乳類細胞(特にヒト細胞)において複製非コンピテントである。典型的には、そのようなrAAVベクターは、複製コンピテントAAVがAAVパッケージング遺伝子と入ってくるrAAVベクターとの間の組換えによって生成される可能性を最小限に抑えるために、任意のAAVパッケージング遺伝子配列を欠失する。多くの実施形態において、本明細書に記載のrAAVベクター調製物は、例えあったとしてもわずかな複製コンピテントAAV(rcAAV、RCAとも称される)を含有するものである(例えば、10
2rAAV粒子当たり約1rcAAV未満、10
4rAAV粒子当たり約1rcAAV未満、10
8rAAV粒子当たり約1rcAAV未満、10
12rAAV粒子当たり約1rcAAV未満、またはrcAAVなし)。
【0020】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体等の修飾ヌクレオチドを有し得、非ヌクレオチド構成成分によって妨害され得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立て前または後に付与され得る。本明細書で使用される際、ポリヌクレオチドという用語は、同義に、二本鎖および一本鎖分子を指す。別途明記または要求されない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載の本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態とその二本鎖形態を構成することで知られているか、または構成すると予想される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0021】
核酸ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行われてもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は周知であり、当技術分野において公開されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照されたい。例えば、Sambrookらのページ7.52を参照されたい。関連条件の例には、(ストリンジェンシーを高める順に)25℃、37℃、50℃、68℃のインキュベーション温度;10倍SSC、6倍SSC、1倍SSC、0.1倍SSC(1倍SSCが、0.15MのNaClおよび15mMのクエン酸緩衝液である)の緩衝液濃度および他の緩衝液システムを用いたそれらの等価物;0%、25%、50%、および75%のホルムアミド濃度;5分〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれ以上の洗浄ステップ、1、2、15分の洗浄インキュベーション時間;6倍SSC、1倍SSC、0.1倍SSCの洗浄液または脱イオン水が含まれる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃以上および0.1倍SSC(15mMの塩化ナトリウム/1.5mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、50%ホルムアミド、1倍SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性かつ剪断されたサケ精子DNAの溶液中で一晩42℃でのインキュベーションであり、その後、約65℃の0.1倍SSCでフィルタを洗浄する。別の例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6倍単一強度クエン酸(SSC)(1倍SSCは、0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム;pH7.0)、5倍デンハート液、0.05%のピロリン酸ナトリウム、および100μg/mLのニシン精子DNAを含む溶液中で65℃で8時間〜一晩のプレハイブリダイゼーション;6倍SSC、1倍デンハート液、100μg/mLの酵母tRNA、および0.05%のピロリン酸ナトリウムを含有する溶液内で65℃で18〜20時間のハイブリダイゼーション;ならびに0.2倍SSCおよび0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含有する溶液内で65℃で1時間のフィルタ洗浄を含む。
【0022】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上述の代表的な条件と少なくとも同程度ストリンジェントであるハイブリダイゼーション条件である。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で既知であり、本発明のこの特定の実施形態の核酸を識別するためにも用いられ得る。
【0023】
「T
m」は、ワトソン・クリック塩基対合によって逆平行方向に水素結合された相補的な鎖で作成されたポリヌクレオチド二本鎖の50%が、この実験の条件下で分離して一本鎖になる摂氏温度である。T
mを、以下のような標準の式に従って予測することができる。
【0024】
(数1)
T
m=81.5+16.6log[X
+]+0.41(%G/C)−0.61(%F)−600/L
【0025】
式中、[X
+]は、mol/L単位のカチオン濃度(通常、ナトリウムイオン、Na
+)であり、(%G/C)は、二本鎖中の全残基の割合としてのGおよびC残基の数であり、(%F)は、溶液中のホルムアミドの割合であり(重量/体積)、Lは、二本鎖の各鎖中のヌクレオチドの数である。
【0026】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対してある特定の割合の「配列同一性」を有し、整列したときに、塩基またはアミノ酸の割合が、それら2つの配列を比較したときに同一であることを意味する。配列類似性をいくつかの異なる様式で決定することができる。配列類似性を決定するために、配列は、ワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.gov/BLAST/上で利用可能なBLASTを含む方法およびコンピュータプログラムを用いて整列することができる。別の整列アルゴリズムは、Oxford Molecular Group,Incの完全所有子会社であるGenetics Computing Group(GCG)のパッケージ(Madison,Wisconsin,USA)から入手可能なFASTAである。整列の他の技法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.(Harcourt Brace & Co.の一部門),San Diego,California,USAに記載されている。配列間のギャップを許容する整列プログラムが特に興味深い。Smith−Watermanは、配列整列におけるギャップを許容する一種のアルゴリズムである。Meth.Mol.Biol.70:173−187(1997)を参照されたい。また、Needleman−Wunsch整列方法を用いたGAPプログラムを利用して、配列を整列させることができる。J.Mol.Biol.48:443−453(1970)を参照されたい。
【0027】
配列同一性を決定するためのSmith−Watermanのローカルホモロジーアルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981))を用いたBestFitプログラムが興味深い。ギャップ生成ペナルティは、概して、1〜5、通常2〜4の範囲であり、多くの実施形態においては3である。ギャップ伸長ペナルティは、概して、約0.01〜0.20の範囲であり、多くの場合、0.10である。このプログラムは、比較するために入力された配列によって決定されるデフォルトパラメータを有する。好ましくは、配列同一性は、このプログラムによって決定されるデフォルトパラメータを用いて決定される。このプログラムは、Genetics Computing Group(GCG)パッケージ(Madison,Wisconsin,USA)からも入手可能である。
【0028】
興味深い別のプログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127−149,1988,Alan R.Liss,Inc.で説明されている。配列同一性パーセントは、以下のパラメータに基づいてFastDBによって計算される。
ミスマッチペナルティ:1.00、
ギャップペナルティ:1.00、
ギャップサイズペナルティ:0.33、
接合ペナルティ:30.0。
【0029】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。
【0030】
「遺伝子産物」は、特定の遺伝子の発現に由来する分子である。遺伝子産物は、例えば、ポリペプチド、アプタマー、干渉RNA、mRNA等を含む。
【0031】
「低分子干渉」もしくは「短干渉RNA」またはsiRNAは、目的とする遺伝子(「標的遺伝子」)を標的とするヌクレオチドのRNA二本鎖である。「RNA二本鎖」は、RNA分子の2つの領域間の相補的対合によって形成される構造を指す。siRNAは、siRNAの二本鎖部分のヌクレオチド配列がその標的化された遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的であるという点で遺伝子を「標的とする」。いくつかの実施形態において、siRNAの二本鎖は、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態において、二本鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態において、二本鎖の長さは、19〜25ヌクレオチド長である。siRNAのRNA二本鎖部分は、ヘアピン構造の一部であり得る。二本鎖部分に加えて、ヘアピン構造は、その二本鎖を形成する2つの配列間に位置するループ部分を含有し得る。ループの長さは変化し得る。いくつかの実施形態において、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、または13ヌクレオチド長である。ヘアピン構造は、3’または5’オーバーハング部分も含有し得る。いくつかの実施形態において、オーバーハングは、3’または5’オーバーハングであり、0、1、2、3、4、または5ヌクレオチド長である。
【0032】
「短ヘアピンRNA」またはshRNAは、siRNA等の干渉RNAを発現するように作成され得るポリヌクレオチド構築物である。
【0033】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え」は、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限、またはライゲーションステップの様々なf組み合わせ、および自然界に見られるポリヌクレオチドとは異なる構築物をもたらす他の手順の産物であるということを意味する。組換えウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含むウイルス粒子である。これらの用語は、それぞれ、初代のポリヌクレオチド構築物の複製および最初のウイルス構築物の子孫を含む。
【0034】
「制御因子」または「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、または分解を含む、ポリヌクレオチドの機能調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。この調節は、プロセスの頻度、速度、または特異性に影響を与え得、本来、促進的または阻害的であり得る。当技術分野で既知の制御因子は、例えば、プロモーターおよびエンハンサー等の転写制御配列である。プロモーターは、ある特定の条件下でRNAポリメラーゼを結合し、かつ通常プロモーターから(3’の方向に)下流に位置するコード領域の転写を開始することができるDNA領域である。
【0035】
「動作的に結合される」または「動作可能に結合される」は、遺伝要素の並列を指し、これらの要素は、それらが予想される様式で動作することを可能にする関係にある。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写を開始する助けとなる場合、コード領域に動作的に結合される。この機能的関係が維持される限り、プロモーターとコード領域との間に介在残基が存在し得る。
【0036】
「発現ベクター」は、目的とするポリペプチドをコードする領域を含むベクターであり、対象とする標的細胞におけるタンパク質の発現をもたらすために使用される。発現ベクターは、その標的におけるタンパク質の発現を促進するためにコード領域に動作的に結合される制御因子も含む。制御因子とそれらが発現のために動作可能に結合される1つの遺伝子もしくは複数の遺伝子との組み合わせは、「発現カセット」と称されることもあり、その多くは、当技術分野で既知であり、かつ入手可能であるか、または当技術分野で入手可能な構成成分から容易に構築され得る。
【0037】
「異種」とは、比較される実体の残りのものとは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって異なる種に由来するプラスミドまたはベクターに導入されるポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである。その天然コード配列から除去され、かつ自然には結合されていないコード配列に動作的に結合されるプロモーターは、異種プロモーターである。したがって、例えば、異種遺伝子産物をコードする異種核酸を含むrAAVは、天然に存在する野生型AAVに通常は含まれない核酸を含むrAAVであり、コードされた異種遺伝子産物は、天然に存在する野生型AAVによって通常コードされない遺伝子産物である。
【0038】
「遺伝子改変」および「遺伝子修飾」(ならびにそれらの文法的変形)は、本明細書において、遺伝因子(例えば、ポリヌクレオチド)が、有糸分裂または減数分裂以外により、細胞に導入されるプロセスを指すために同義に使用される。この因子は、その細胞に対して異種であり得るか、または、その細胞中にすでに存在する因子のさらなるコピーもしくは改良型であり得る。遺伝子改変は、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、またはポリヌクレオチドリポソーム複合体との接触等の当技術分野で既知の任意のプロセスを介して細胞を組換えプラスミドまたは他のポリヌクレオチドでトランスフェクトすることによって達成され得る。遺伝子改変は、例えば、DNAもしくはRNAウイルスまたはウイルスベクターでの形質導入あるいは感染によっても達成され得る。概して、遺伝因子は、細胞内の染色体またはミニ染色体内に導入されるが、その細胞およびその子孫の表現型および/または遺伝子型を変化させる任意の改変がこの用語に包含される。
【0039】
細胞は、遺伝子配列が、生体外でのその細胞の延長培養中にその機能を果たすことができる場合、その遺伝子配列で「安定的に」改変されるか、形質導入されるか、遺伝子修飾されるか、または形質転換されるといわれている。概して、そのような細胞は、「遺伝的に」改変(遺伝子修飾)され、そこで、改変された細胞の子孫によっても遺伝可能な遺伝子改変が導入される。
【0040】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために同義に使用される。本用語は、修飾された(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識構成成分との接合)アミノ酸ポリマーも包含する。抗血管新生ポリペプチド、神経保護ポリペプチド等のポリペプチドは、遺伝子産物を哺乳類対象に、およびその組成物を送達するという文脈において論じられるとき、無傷のタンパク質の所望の生化学的機能を保持するそれぞれの無傷のポリペプチドまたはその任意の断片もしくは遺伝子操作された誘導体を指す。同様に、抗血管新生ポリペプチドをコードする核酸、神経保護ポリペプチドをコードする核酸、および遺伝子産物の哺乳類対象への送達に用いる他のそのような核酸(これは、受容細胞に送達される「導入遺伝子」と称され得る)への言及は、所望の生化学的機能を保持する無傷のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは任意の断片もしくは遺伝子操作された誘導体を含む。
【0041】
「単離された」プラスミド、核酸、ベクター、ウイルス、ビリオン、宿主細胞、または他の物質は、その物質もしくは類似の物質が、天然に存在するか、あるいは最初に調製される場所に存在し得る他の構成成分のうちの少なくともいくつかを欠く物質の調製物を指す。したがって、例えば、単離された物質は、それを供給源混合物から濃縮するための精製技法を用いて調製され得る。濃縮度を、溶液の体積当たりの重量等の絶対基準で測定することができるか、または供給源混合物中に存在する第2の干渉する可能性のある物質と関連させて測定することができる。本開示の実施形態の増加する濃縮物は、次第により単離される。いくつかの実施形態において、単離されたプラスミド、核酸、ベクター、ウイルス、宿主細胞、または他の物質は精製され、例えば、約80%〜約90%純粋であるか、少なくとも約90%純粋であるか、少なくとも約95%純粋であるか、少なくとも約98%純粋であるか、または少なくとも約99%以上純粋である。
【0042】
本明細書で使用される際、「治療」、「治療する」等の用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。その効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという観点において予防的であり得、かつ/または疾患および/もしくはその疾患に起因する副作用の部分的または完全な治癒という観点において治療的であり得る。本明細書で使用される際、「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)その疾患にかかりやすいか、その疾患にかかる危険性を有し得るが、まだそれを有すると診断されていない対象における発病を予防すること、(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発現を阻止すること、および(c)その疾患を軽減すること、すなわち、その疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0043】
「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書において同義に使用され、サルおよびヒトを含むヒトおよび非ヒト霊長類、哺乳類スポーツ動物(例えば、ウマ)、哺乳類家畜動物(例えば、ヒツジ、ヤギ等)、哺乳類ペット(例えば、イヌ、ネコ等)、ならびに齧歯類(例えば、マウス、ラット等)を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。
【0044】
本発明をさらに説明する前に、本発明が、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、言うまでもなく、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するよう意図されないことも理解されたい。
【0045】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値および下限値の間の各介在値(文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1まで)、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、表示範囲内の任意の具体的に除外された値に従って本発明内にも包含される。表示範囲がそれらの上限値および下限値のうちの1つまたは両方を含む場合、それらの包含される上限値および下限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に包含される。
【0046】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と同様もしくは同等の任意の方法および物質を本発明の実践または試験において使用することもできるが、好ましい方法および物質は、これから説明される。本明細書で言及されるすべての出版物は、それらの出版物が引用される方法および/または物質を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数指示対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「組換えAAVビリオン」への言及は、複数のそのようなビリオンを含み、「光受容体細胞」への言及は、1つ以上の光受容体細胞および当業者に既知のそれらの等価物等への言及を含む等である。特許請求の範囲が任意の要素を除外するように作成されてもよいことにさらに留意する。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」、「のみ」等の排他的な専門用語の使用のため、または「否定的な」制限の使用のための先行記述となるよう意図される。
【0048】
明確にするために別個の実施形態の文脈において説明される本発明のある特定の特徴を、単一の実施形態において組み合わせで提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の好適な副組み合わせで提供することもできる。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、ありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明確に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態およびそれらの要素のすべての副組み合わせも本発明によって具体的に包含され、ありとあらゆるそのような副組み合わせが個別にかつ明確に本明細書に開示されたかのように本明細書に開示される。
【0049】
本明細書で論じられる出版物は、本出願の出願日前にそれらを開示するためだけに提供される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような出版物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる場合があり、別々に確認する必要があり得る。
【0050】
詳細な説明
本開示は、改変キャプシドタンパク質を有するアデノ関連ウイルス(AAV)ビリオンを提供し、AAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、野生型AAVと比較してより高い網膜細胞の感染性を呈する。本開示は、遺伝子産物を個体の網膜細胞に送達する方法、および眼疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0051】
網膜細胞は、光受容体(例えば、桿体、錐体)、網膜神経節細胞(RGC)、ミュラー細胞(ミュラーグリア細胞)、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、または網膜色素上皮(RPE)細胞であり得る。
【0052】
変異体AAキャプシドポリペプチド
本開示は、変異体AAVキャプシドタンパク質を提供し、この変異体AAVキャプシドタンパク質は、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するキャプシドタンパク質GHループまたはループIVにおける挿入部位での約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含み、その変異体キャプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞の感染性と比較して、増加した網膜細胞の感染性を付与する。ある場合には、網膜細胞は、光受容体細胞(例えば、桿体、錐体)である。他の場合には、網膜細胞は、RGCである。他の場合には、網膜細胞は、RPE細胞である。他の場合には、網膜細胞は、ミュラー細胞である。他の網膜細胞には、アマクリン細胞、双極細胞、および水平細胞が含まれる。「約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入」は、本明細書において、「ペプチド挿入」(例えば、異種ペプチド挿入)とも称される。「対応する親AAVキャプシドタンパク質」は、ペプチド挿入なしの同一のAAV血清型のAAVキャプシドタンパク質を指す。
【0053】
挿入部位は、AAVキャプシドタンパク質のGHループまたはループIV、例えば、AAVキャプシドタンパク質のGHループまたはループIVの溶媒接近可能な部分にある。AAVキャプシドのGHループ/ループIVについて、例えば、van Vliet et al.(2006)Mol.Ther.14:809、Padron et al.(2005)J.Virol.79:5047、およびShen et al.(2007)Mol.Ther.15:1955を参照されたい。例えば、挿入部位は、
図17Aおよび17Bに示されるように、AAVキャプシドタンパク質のアミノ酸411〜650内にあり得る。例えば、挿入部位は、
図6に示されるように、AAV2のアミノ酸570〜611内、AAV1のアミノ酸571〜612内、AAV5のアミノ酸560〜601内、AAV6のアミノ酸571〜612内、AAV7のアミノ酸572〜613内、AAV8のアミノ酸573〜614内、AAV9のアミノ酸571〜612内、またはAAV10のアミノ酸573〜614内にあり得る。
【0054】
ある場合には、約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸は、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対してキャプシドタンパク質のGHループまたはループIVにおける挿入部位に挿入される。例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587と588との間、または別のAAV血清型のキャプシドサブユニットの対応する位置にあり得る。挿入部位587/588は、AAV2キャプシドタンパク質に基づくことに留意されたい。約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸は、AAV2以外(例えば、AAV8、AAV9等)のAAV血清型における対応する部位に挿入され得る。当業者であれば、様々なAAV血清型のキャプシドタンパク質のアミノ酸配列の比較に基づいて、「AAV2のアミノ酸587〜588に対応する」挿入部位が、任意の所与のAAV血清型のキャプシドタンパク質のどこにあるかを理解するであろう。様々なAAV血清型のAAV2のキャプシドタンパク質VP1のアミノ酸570〜611に対応する配列(
図5を参照のこと)は、
図6に示される。例えば、AAV1についてはGenBank受託番号NP_049542、AAV5についてはGenBank受託番号AAD13756、AAV6についてはGenBank受託番号AAB95459、AAV7についてはGenBank受託番号YP_077178、AAV8についてはGenBank受託番号YP_077180、AAV9についてはGenBank受託番号AAS99264、およびAAV10についてはGenBank受託番号AAT46337を参照されたい。
【0055】
いくつかの実施形態において、挿入部位は、任意のAAV血清型のVP1のアミノ酸570〜614の間に位置する2つの隣接アミノ酸の間の単一挿入部位であり、例えば、挿入部位は、任意のAAV血清型または変異体のVP1のアミノ酸570〜610、アミノ酸580〜600、アミノ酸570〜575、アミノ酸575〜580、アミノ酸580〜585、アミノ酸585〜590、アミノ酸590〜600、またはアミノ酸600〜614に位置する2つの隣接アミノ酸の間にある。例えば、挿入部位は、アミノ酸580と581との間、アミノ酸581と582との間、アミノ酸583と584との間、アミノ酸584と585との間、アミノ酸585と586との間、アミノ酸586と587との間、アミノ酸587と588との間、アミノ酸588と589との間、またはアミノ酸589と590との間にあり得る。挿入部位は、アミノ酸575と576との間、アミノ酸576と577との間、アミノ酸577と578との間、アミノ酸578と579との間、またはアミノ酸579と580との間にあり得る。挿入部位は、アミノ酸590と591との間、アミノ酸591と592との間、アミノ酸592と593との間、アミノ酸593と594との間、アミノ酸594と595との間、アミノ酸595と596との間、アミノ酸596と597との間、アミノ酸597と598との間、アミノ酸598と599との間、またはアミノ酸599と600との間にあり得る。
【0056】
例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587と588との間、AAV1のアミノ酸590と591との間、AAV5のアミノ酸575と576との間、AAV6のアミノ酸590と591との間、AAV7のアミノ酸589と590との間、AAV8のアミノ酸590と591との間、AAV9のアミノ酸588と589との間、またはAAV10のアミノ酸588と589との間にあり得る。
【0057】
別の例として、挿入部位は、
図17Aに示されるように、AAVキャプシドタンパク質のアミノ酸450〜460の間にあり得る。例えば、挿入部位は、
図17Aに示されるように、(例えば、N末端直近の)AAV2のアミノ酸453、AAV1のアミノ酸454、AAV6のアミノ酸454、AAV7のアミノ酸456、AAV8のアミノ酸456、AAV9のアミノ酸454、またはAAV10のアミノ酸456にあり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、主題のキャプシドタンパク質は、
図18A〜Cに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGHループを含む。
【0059】
挿入ペプチド
上述のように、約5アミノ酸長〜約11アミノ酸長のペプチドは、AAVキャプシドのGHループに挿入される。挿入ペプチドは、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、または11アミノ酸長である。
【0060】
挿入ペプチドは、以下に記載の式のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0061】
例えば、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式Iのものであり、
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Leu、Asn、およびLysから選択され、
X
2は、Gly、Glu、Ala、およびAspから選択され、
X
3は、Glu、Thr、Gly、およびProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gln、およびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、Arg、Asn、およびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、ProおよびAsnから選択される。
【0062】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIaのものであり、
【0063】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0064】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1〜X
4はそれぞれ、任意のアミノ酸であり、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0065】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIbのものであり、
【0066】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0067】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、LeuおよびAsnから選択され、
X
2は、存在する場合、GlyおよびGluから選択され、
X
3は、GluおよびThrから選択され、
X
4は、ThrおよびIleから選択され、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0068】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIIのものであり、
【0069】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0070】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Lysであり、
X
2は、AlaおよびAspから選択され、
X
3は、GlyおよびProから選択され、
X
4は、GlnおよびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、AsnおよびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、Asnである。
【0071】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IVのものであり、
【0072】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0073】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはLeu、Asn、Arg、Ala、Ser、およびLysから選択され、
X
2は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGly、Glu、Ala、Val、Thr、およびAspから選択され、
X
3は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGlu、Thr、Gly、Asp、もしくはProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gly、Lys、Asp、およびGlnから選択され、
X
5は、極性アミノ酸、アルコール(遊離ヒドロキシル基を有するアミノ酸)、もしくは疎水性アミノ酸であるか、または、Thr、Ser、Val、およびAlaから選択され、
X
6は、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはArg、Val、Lys、Pro、Thr、およびAsnから選択され、
X
7は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはPro、Gly、Phe、Asn、およびArgから選択される。
【0074】
非限定的な例として、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0075】
ある場合には、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちのいずれか1つのアミノ末端および/またはカルボキシル末端で1〜4個のスペーサーアミノ酸(Y
1〜Y
4)を有する。好適なスペーサーアミノ酸は、ロイシン、アラニン、グリシン、セリンを含むが、これらに限定されない。
【0076】
例えば、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:LALGETTRPA(配列番号45)、LANETITRPA(配列番号46)、LAKAGQANNA(配列番号47)、LAKDPKTTNA(配列番号48)、LAKDTDTTRA(配列番号61)、LARAGGSVGA(配列番号62)、LAAVDTTKFA(配列番号63)、およびLASTGKVPNA(配列番号64)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:AALGETTRPA(配列番号49)、AANETITRPA(配列番号50)、AAKAGQANNA(配列番号51)、およびAAKDPKTTNA(配列番号52)。さらに別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:GLGETTRPA(配列番号53)、GNETITRPA(配列番号54)、GKAGQANNA(配列番号55)、およびGKDPKTTNA(配列番号56)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、AAによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含むか、またはGによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、主題の変異AAVキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入以外に、任意の他のアミノ酸置換、挿入、または欠失を含んでいない。他の実施形態において、主題の変異体AAVキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入に加えて、親AAVキャプシドタンパク質と比較して、1〜約25個のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。例えば、いくつかの実施形態において、主題の変異体AAVキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入に加えて、親AAVキャプシドタンパク質と比較して、1〜約5個、約5〜約10個、約10〜約15個、約15〜約20個、または約20〜約25個のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、主題の変異体キャプシドポリペプチドは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含まない:Y273F、Y444F、Y500F、およびY730F。
【0079】
いくつかの実施形態において、主題の変異体キャプシドポリペプチドは、上述の挿入ペプチドに加えて、以下のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む:Y273F、Y444F、Y500F、およびY730F。
【0080】
いくつかの実施形態において、変異体AAVキャプシドポリペプチドは、キメラキャプシドであり、例えば、そのキャプシドは、第1のAAV血清型のAAVキャプシドの一部および第2の血清型のAAVキャプシドの一部を含み、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、主題の変異体キャプシドタンパク質は、
図5に提供されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、および対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、主題の変異体キャプシドタンパク質は、単離される、例えば、精製される。ある場合には、主題の変異体キャプシドタンパク質は、AAVベクターに含まれ、これも提供される。以下に詳細に説明されるように、主題の変異体キャプシドタンパク質は、組換えAAVビリオンに含まれる。
【0083】
組換えAAVビリオン
本開示は、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ビリオンを提供し、a)変異体AAVキャプシドタンパク質であって、該変異体AAVキャプシドタンパク質は、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するキャプシドタンパク質GHループまたはループIVにおける挿入部位において約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含み、該変異体キャプシドタンパク質は、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞の感染性と比較して、増加した網膜細胞の感染性を付与する、変異体AAVキャプシドタンパク質、およびb)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。ある場合には、網膜細胞は、光受容体細胞(例えば、桿体および/または錐体)である。他の場合には、網膜細胞は、RGC細胞である。他の場合には、網膜細胞は、RPE細胞である。他の場合には、網膜細胞は、ミュラー細胞である。他の場合には、網膜細胞は、アマクリン細胞、双極細胞、および水平細胞を含み得る。「約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入」は、本明細書において、「ペプチド挿入」(例えば、異種ペプチド挿入)とも称される。「対応する親AAVキャプシドタンパク質」は、ペプチド挿入なしの同一のAAV血清型のAAVキャプシドタンパク質を指す。
【0084】
挿入部位は、AAVキャプシドタンパク質のGHループまたはループIV、例えば、AAVキャプシドタンパク質のGHループまたはループIVの媒接近可能な部分にある。GHループについて、例えば、van Vliet et al.(2006)Mol.Ther.14:809、Padron et al.(2005)J.Virol.79:5047、およびShen et al.(2007)Mol.Ther.15:1955を参照されたい。例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸570〜611内、AAV1のアミノ酸571〜612内、AAV5のアミノ酸560〜601内、AAV6のアミノ酸571〜612内、AAV7のアミノ酸572〜613内、AAV8のアミノ酸573〜614内、AAV9のアミノ酸571〜612内、またはAAV10のアミノ酸573〜614内にある。
【0085】
約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸は、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対してキャプシドタンパク質のGHループまたはループIVにおける挿入部位に挿入される。例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587と588との間、または別のAAV血清型のキャプシドサブユニットの対応する位置にあり得る。挿入部位587/588は、AAV2キャプシドタンパク質に基づくことに留意されたい。約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸は、AAV2以外(例えば、AAV8、AAV9等)のAAV血清型における対応する部位に挿入され得る。当業者であれば、様々なAAV血清型のキャプシドタンパク質のアミノ酸配列の比較に基づいて、「AAV2のアミノ酸587〜588に対応する」挿入部位が、任意の所与のAAV血清型のキャプシドタンパク質のどこにあるかを理解するであろう。様々なAAV血清型のAAV2のキャプシドタンパク質VP1のアミノ酸570〜611に対応する配列(
図5を参照のこと)は、
図6に示される。
【0086】
いくつかの実施形態において、挿入部位は、任意のAAV血清型のVP1のアミノ酸570〜614の間に位置する2つの隣接アミノ酸の間の単一挿入部位であり、例えば、挿入部位は、任意のAAV血清型または変異体のVP1のアミノ酸570〜614、アミノ酸580〜600、アミノ酸570〜575、アミノ酸575〜580、アミノ酸580〜585、アミノ酸585〜590、アミノ酸590〜600、またはアミノ酸600〜610に位置する2つの隣接アミノ酸の間にある。例えば、挿入部位は、アミノ酸580と581との間、アミノ酸581と582との間、アミノ酸583と584との間、アミノ酸584と585との間、アミノ酸585と586との間、アミノ酸586と587との間、アミノ酸587と588との間、アミノ酸588と589との間、またはアミノ酸589と590との間にあり得る。挿入部位は、アミノ酸575と576との間、アミノ酸576と577との間、アミノ酸577と578との間、アミノ酸578と579との間、またはアミノ酸579と580との間にあり得る。挿入部位は、アミノ酸590と591との間、アミノ酸591と592との間、アミノ酸592と593との間、アミノ酸593と594との間、アミノ酸594と595との間、アミノ酸595と596との間、アミノ酸596と597との間、アミノ酸597と598との間、アミノ酸598と599との間、またはアミノ酸599と600との間にあり得る。
【0087】
例えば、挿入部位は、AAV2のアミノ酸587と588との間、AAV1のアミノ酸590と591との間、AAV5のアミノ酸575と576との間、AAV6のアミノ酸590と591との間、AAV7のアミノ酸589と590との間、AAV8のアミノ酸590と591との間、AAV9のアミノ酸588と589との間、またはAAV10のアミノ酸589と590との間にあり得る。
【0088】
挿入ペプチド
上述のように、主題のrAAVビリオンは、AAVキャプシドのGHループに挿入される約5アミノ酸長〜約11アミノ酸長のペプチドを含む。挿入ペプチドは、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、または11アミノ酸長である。
【0089】
挿入ペプチドは、以下に説明される式のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0090】
例えば、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式Iのものであり、
【0091】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0092】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Leu、Asn、およびLysから選択され、
X
2は、Gly、Glu、Ala、およびAspから選択され、
X
3は、Glu、Thr、Gly、およびProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gln、およびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、Arg、Asn、およびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、ProおよびAsnから選択される。
【0093】
別の例として、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIaのものであり、
【0094】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0095】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1〜X
4はそれぞれ、任意のアミノ酸であり、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0096】
別の例として、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIbのものであり、
【0097】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0098】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、LeuおよびAsnから選択され、
X
2は、存在する場合、GlyおよびGluから選択され、
X
3は、GluおよびThrから選択され、
X
4は、ThrおよびIleから選択され、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0099】
別の例として、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIIのものであり、
【0100】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0101】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Lysであり、
X
2は、AlaおよびAspから選択され、
X
3は、存在する場合、GlyおよびProから選択され、
X
4は、GlnおよびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、AsnおよびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、Asnである。
【0102】
別の例として、挿入ペプチドは、5アミノ酸長〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IVのものであり、
【0103】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0104】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはLeu、Asn、Arg、Ala、Ser、およびLysから選択され、
X
2は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGly、Glu、Ala、Val、Thr、およびAspから選択され、
X
3は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGlu、Thr、Gly、Asp、もしくはProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gly、Lys、Asp、およびGlnから選択され、
X
5は、極性アミノ酸、アルコール(遊離ヒドロキシル基を有するアミノ酸)、または疎水性アミノ酸であるか、または、Thr、Ser、Val、およびAlaから選択され、
X
6は、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはArg、Val、Lys、Pro、Thr、およびAsnから選択され、
X
7は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはPro、Gly、Phe、Asn、およびArgから選択される。
【0105】
非限定的な例として、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0106】
ある場合には、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちのいずれか1つのアミノ末端および/またはカルボキシル末端に1〜4個のスペーサーアミノ酸(Y
1〜Y
4)を有する。好適なスペーサーアミノ酸は、ロイシン、アラニン、グリシン、セリンを含むが、これらに限定されない。
【0107】
例えば、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:LALGETTRPA(配列番号45)、LANETITRPA(配列番号46)、LAKAGQANNA(配列番号47)、LAKDPKTTNA(配列番号48)、LAKDTDTTRA(配列番号61)、LARAGGSVGA(配列番号62)、LAAVDTTKFA(配列番号63)、およびLASTGKVPNA(配列番号64)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:AALGETTRPA(配列番号49)、AANETITRPA(配列番号50)、AAKAGQANNA(配列番号51)、およびAAKDPKTTNA(配列番号52)。さらに別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:GLGETTRPA(配列番号53)、GNETITRPA(配列番号54)、GKAGQANNA(配列番号55)、およびGKDPKTTNA(配列番号56)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、AAによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含むか、またはGによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約7個のアミノ酸〜約10個のアミノ酸の挿入以外に、任意の他のアミノ酸置換、挿入、または欠失を含んでいない。他の実施形態において、主題のrAAVビリオンキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約7個のアミノ酸〜約10個のアミノ酸の挿入に加えて、親AAVキャプシドタンパク質と比較して1〜約25個のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。例えば、いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンキャプシドは、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約7個のアミノ酸〜約10個のアミノ酸の挿入に加えて、親AAVキャプシドタンパク質と比較して1〜約5個、約5〜約10個、約10〜約15個、約15〜約20個、もしくは約20〜約25個のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンキャプシドは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含まない:Y273F、Y444F、Y500F、およびY730F。
【0110】
いくつかの実施形態において、主題の変異体キャプシドポリペプチドは、上述の挿入ペプチドに加えて、以下のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む:Y273F、Y444F、Y500F、およびY730F。
【0111】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンキャプシドは、キメラキャプシドであり、例えば、そのキャプシドは、第1のAAV血清型のAAVキャプシドの一部および第2の血清型のAAVキャプシドの一部を含み、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、
図5に提供されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、および対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸の挿入を含むキャプシドタンパク質を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、
図18A〜Cに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGHループを含むキャプシドタンパク質を含む。
【0114】
主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上増加した網膜細胞の感染性を呈する。
【0115】
ある場合には、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上増加した網膜細胞の感染性を呈する。
【0116】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の光受容体(桿体または錐体)細胞の感染性の増加を呈する。
【0117】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の光受容体(桿体または錐体)細胞の感染性の増加を呈する。
【0118】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRGCの感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のRGCの感染性の増加を呈する。
【0119】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRGCの感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のRGCの感染性の増加を呈する。
【0120】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRPE細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のRPE細胞の感染性の増加を呈する。
【0121】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるRPE細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のRPE細胞の感染性の増加を呈する。
【0122】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるミュラー細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のミュラー細胞の感染性の増加を呈する。
【0123】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるミュラー細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のミュラー細胞の感染性の増加を呈する。
【0124】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる双極細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の双極細胞の感染性の増加を呈する。
【0125】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる双極細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の双極細胞の感染性の増加を呈する。
【0126】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるアマクリン細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のアマクリン細胞の感染性の増加を呈する。
【0127】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによるアマクリン細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上のアマクリン細胞の感染性の増加を呈する。
【0128】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる水平細胞の感染性と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の水平細胞の感染性の増加を呈する。
【0129】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる水平細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の水平細胞の感染性の増加を呈する。
【0130】
ある場合には、主題のrAAVビリオンは、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンのILMを通過する能力と比較して、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の内境界膜(ILM)を通過する能力の増加を呈する。
【0131】
ある場合には、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンのILMを通過する能力と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の内境界膜(ILM)を通過する能力の増加を呈する。
【0132】
主題のrAAVビリオンは、ILMを通過することができ、ミュラー細胞、アマクリン細胞等を含む細胞層を横断して、光受容体細胞および/またはRPE細胞に到達することもできる。例えば、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、ILMを通過することができ、ミュラー細胞、アマクリン細胞等を含む細胞層を横断して、光受容体細胞および/またはRPE細胞に到達することもできる。
【0133】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、網膜細胞を選択的に感染させ、例えば、主題のrAAVビリオンは、非網膜細胞、例えば、眼の外側の細胞よりも10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍以上の特異性で網膜細胞を感染させる。例えば、いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、網膜細胞を選択的に感染させ、例えば、主題のrAAVビリオンは、非網膜細胞、例えば、眼の外側の細胞よりも10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍以上の特異性で光受容体細胞を感染させる。
【0134】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、光受容体細胞を選択的に感染させ、例えば、主題のrAAVビリオンは、眼内に存在する非光受容体細胞、例えば、網膜神経節細胞、ミュラー細胞等よりも10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、または50倍以上の特異性で光受容体細胞を感染させる。
【0135】
いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、硝子体内注入を介して投与されるときに、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる光受容体細胞の感染性と比較して、硝子体内注入を介して投与されるときに、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または50倍以上の光受容体細胞の感染性の増加を呈する。
【0136】
遺伝子産物
主題のrAAVビリオンは、遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、干渉RNAである。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、アプタマーである。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンをもたらす部位特異的ヌクレアーゼである。
【0137】
干渉RNA
遺伝子産物が干渉RNA(RNAi)である場合、好適なRNAiは、細胞中のアポトーシス因子または血管新生因子のレベルを低下させるRNAiである。例えば、RNAiは、細胞におけるアポトーシスを誘導または促進する遺伝子産物のレベルを低減させるshRNAもしくはsiRNAであり得る。遺伝子であって、その遺伝子産物がアポトーシスを誘導または促進する遺伝子は、本明細書で「プロアポトーシス遺伝子」と称され、それらの遺伝子の産物(mRNA、タンパク質)は、「プロアポトーシス遺伝子産物」と称される。プロアポトーシス遺伝子産物は、例えば、Bax、Bid、Bak、およびBad遺伝子産物を含む。例えば、米国特許第7,846,730号を参照されたい。
【0138】
干渉RNAは、血管新生産物、例えば、VEGF(例えば、Cand5、例えば、米国特許公開第2011/0143400号、米国特許公開第2008/0188437号、およびReich et al.(2003)Mol.Vis.9:210を参照のこと)、VEGFRl(例えば、Sirna−027、例えば、Kaiser et al.(2010)Am.J.Ophthalmol.150:33、およびShen et al.(2006)Gene Ther.13:225を参照のこと)、またはVEGFR2(Kou et al.(2005)Biochem.44:15064)にも対抗し得る。米国特許第6,649,596号、同第6,399,586号、同第5,661,135号、同第5,639,872号、および同第5,639,736号、ならびに米国特許第7,947,659号および同7,919,473号も参照されたい。
【0139】
アプタマー
遺伝子産物がアプタマーである場合、目的とする例示のアプタマーは、血管内皮成長因子(VEGF)に対するアプタマーを含む。例えば、Ng et al.(2006)Nat.Rev.Drug Discovery5:123、およびLee et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA102:18902を参照されたい。例えば、VEGFアプタマーは、ヌクレオチド配列5’−cgcaaucagugaaugcuuauacauccg−3’(配列番号17)を含み得る。PDGF特異的アプタマー、例えば、E10030も使用に好適であり、例えば、Ni and Hui(2009)Ophthalmologica223:401、およびAkiyama et al.(2006)J.Cell Physiol.207:407)を参照されたい。
【0140】
ポリペプチド
遺伝子産物がポリペプチドである場合、ポリペプチドは、概して、網膜細胞の機能、例えば、桿体もしくは錐体光受容体細胞、網膜神経節細胞、ミュラー細胞、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、網膜色素上皮細胞の機能を高めるポリペプチドである。例示のポリペプチドは、神経保護ポリペプチド(例えば、GDNF、CNTF、NT4、NGF、およびNTN)、抗血管新生ポリペプチド(例えば、可溶性血管内皮成長因子(VEGF)受容体、VEGF結合抗体、VEGF結合抗体断片(例えば、一本鎖抗VEGF抗体)、エンドスタチン、タムスタチン、アンギオスタチン、可溶性Fltポリペプチド(Lai et al.(2005)Mol.Ther.12:659)、可溶性Fltポリペプチドを含むFc融合タンパク質(例えば、Pechan et al.(2009)Gene Ther.16:10を参照のこと)、色素上皮由来因子(PEDF)、可溶性Tie−2受容体等)、メタロプロテイナーゼ−3(TIMP−3)の組織阻害剤、光応答性オプシン、例えば、ロドプシン、抗アポトーシスポリペプチド(例えば、Bcl−2、Bcl−Xl)等を含む。好適なポリペプチドには、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、線維芽細胞増殖因子2、ニュールツリン(NTN)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−4(NT4)、脳由来神経栄養因子(BDNF、例えば、
図11に示されるアミノ酸配列(配列番号11)の一続きの約200個のアミノ酸〜247個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)、上皮成長因子、ロドプシン、アポトーシスのX結合阻害剤、およびソニックヘッジホッグが含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
好適な光応答性オプシンには、米国特許公開第2007/0261127号(例えば、ChR2、Chop2)、米国特許公開第2001/0086421号、米国特許公開第2010/0015095号、およびDiester et al.(2011)Nat.Neurosci.14:387に記載される、例えば、光応答性オプシンが含まれる。
【0142】
好適なポリペプチドには、レチノスキシン(例えば、
図10に示されるアミノ酸配列(配列番号10)の一続きの約200個のアミノ酸〜224個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)も含まれる。好適なポリペプチドには、例えば、網膜色素変性GTPase調節因子(RGPR)相互作用タンパク質−1(例えば、GenBank受託番号Q96KN7、Q9EPQ2、およびQ9GLM3を参照のこと)(例えば、
図16に示されるアミノ酸配列(配列番号21)の一続きの約1150個のアミノ酸〜約1200個のアミノ酸、または約1200個のアミノ酸〜1286個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;ペリフェリン−2(Prph2)(例えば、GenBank受託番号NP_000313を参照のこと)(例えば、
図14に示されるアミノ酸配列(配列番号19)の一続きの約300個のアミノ酸〜346個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;ならびにTravis et al.(1991)Genomics10:733);ペリフェリン(例えば、
図15に示されるアミノ酸配列(配列番号20)の一続きの約400個のアミノ酸〜約470個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;網膜色素上皮特異的タンパク質(RPE65)(例えば、
図12に示されるアミノ酸配列(配列番号12)の一続きの約200個のアミノ酸〜247個のアミノ酸に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド)(例えば、GenBank AAC39660、およびMorimura et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:3088を参照のこと)等が含まれる。
【0143】
好適なポリペプチドには、欠陥があるか、または欠損しているときに先天性脈絡膜欠如を引き起こすポリペプチドである、CHM(先天性脈絡膜欠如(Rabエスコートタンパク質1))(例えば、Donnelly et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:1017、およびvan Bokhoven et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:1041を参照のこと)、ならびに欠陥があるか、または欠損しているときにレーバー先天黒内障および網膜色素変性症を引き起こすポリペプチドである、クラムスホモログ1(CRB1)(例えば、den Hollander et al.(1999)Nat.Genet.23:217、およびGenBank受託番号CAM23328を参照のこと)も含まれる。
【0144】
好適なポリペプチドには、欠陥があるか、または欠損しているときに色覚異常をもたらすポリペプチドも含まれ、このようなポリペプチドには、例えば、錐体光受容体cGMPゲートチャネルサブユニットα(CNGA3)(例えば、GenBank受託番号NP_001289、およびBooij et al.(2011)Ophthalmology118:160−167を参照のこと)、錐体光受容体ゲートカチオンチャネルβサブユニット(CNGB3)(例えば、Kohl et al.(2005)Eur J Hum Genet.13(3):302を参照のこと)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、α形質導入活性ポリペプチド2(GNAT2)(ACHM4)、およびACHM5、ならびに欠陥があるか、または欠損しているときに様々な形態の色覚異常をもたらすポリペプチド(例えば、L−オプシン、M−オプシン、およびS−オプシン)が含まれる。Mancuso et al.(2009)Nature461(7265):784−787を参照されたい。
【0145】
部位特異的エンドヌクレアーゼ
ある場合には、目的とする遺伝子産物は、例えば、エンドヌクレアーゼが網膜疾患に関連する対立遺伝子をノックアウトする場合、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンをもたらす部位特異的エンドヌクレアーゼである。例えば、優性対立遺伝子が、網膜構造タンパク質であり、かつ/または正常な網膜機能を提供する遺伝子(野生型の場合)の欠陥のあるコピーをコードする場合、部位特異的エンドヌクレアーゼは、欠陥のある対立遺伝子を標的とし、かつその欠陥のある対立遺伝子をノックアウトすることができる。
【0146】
欠陥のある対立遺伝子をノックアウトすることに加えて、部位特異的ヌクレアーゼを用いて、その欠陥のある対立遺伝子によってコードされるタンパク質の機能的コピーをコードするドナーDNAで相同組換えを刺激することもできる。したがって、例えば、主題のrAAVビリオンを用いて、欠陥のある対立遺伝子をノックアウトする部位特異的エンドヌクレアーゼを送達することができ、その欠陥のある対立遺伝子の機能的コピーも送達することができ、その欠陥のある対立遺伝子の修復をもたらし、それによって、機能的網膜タンパク質(例えば、機能的レチノスキシン、機能的RPE65、機能的ペリフェリン等)の産生をもたらす。例えば、Li et al.(2011)Nature475:217を参照されたい。いくつかの実施形態において、主題のrAAVビリオンは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする異種ヌクレオチド配列、および欠陥のある対立遺伝子の機能的コピーをコードする異種ヌクレオチド配列を含み、この機能的コピーは、機能的網膜タンパク質をコードする。機能的網膜タンパク質は、例えば、レチノスキシン、RPE65、網膜色素変性GTPase調節因子(RGPR)相互作用タンパク質−1、ペリフェリン、ペリフェリン−2等を含む。
【0147】
使用に好適な部位特異的エンドヌクレアーゼには、例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が含まれ、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼは、天然に存在せず、特定の遺伝子を標的化するように修飾される。そのような部位特異的エンドヌクレアーゼを操作して、ゲノム内の特定の位置を切断することができ、その後、非相同末端結合は、いくつかのヌクレオチドを挿入または欠失しながらその破損を修復することができる。その後、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼ(「INDEL」とも称される)は、タンパク質を骨組みから追放し、遺伝子を効果的にノックアウトする。例えば、米国特許公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0148】
調節配列
いくつかの実施形態において、目的とする遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに動作可能に結合される。他の実施形態において、目的とする遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに動作可能に結合される。ある場合には、目的とする遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、組織特異的または細胞型特異的調節因子に動作可能に結合される。例えば、ある場合には、目的とする遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、光受容体特異的調節因子(例えば、光受容体特異的プロモーター)、例えば、光受容体細胞における動作可能に結合された遺伝子の選択的発現をもたらす調節因子に動作可能に結合される。好適な光受容体特異的調節因子には、例えば、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al.(2003)Ophthalmol.Vis.Sci.44:4076)、βホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al.(2007)J.Gene Med.9:1015)、網膜色素変性遺伝子プロモーター(Nicoud et al.(2007)上記参照)光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud et al.(2007)上記参照)、IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al.(1992)Exp Eye Res.55:225)が含まれる。
【0149】
薬学的組成物
本開示は、a)上述の主題のrAAVビリオン、およびb)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または緩衝液を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または緩衝液は、ヒトにおける使用に好適である。
【0150】
そのような賦形剤、担体、希釈剤、および緩衝液は、過度の毒性を伴うことなく投与することができる任意の薬学的作用物質を含む。薬学的に許容される賦形剤には、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール等の液体を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩をその中に含んでもよい。さらに、湿潤剤または乳化剤等の補助剤、pH緩衝物質等は、そのようなビヒクルに存在し得る。多種多様の薬学的に許容される賦形剤が当技術分野で既知であり、本明細書で詳細に説明される必要はない。薬学的に許容される賦形剤は、様々な出版物、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7
th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assoc.において十分に説明されている。
【0151】
遺伝子産物を網膜細胞に送達する方法および治療方法
本開示は、遺伝子産物を個体の網膜細胞に送達する方法を提供し、該方法は、個体に、上述の主題のrAAVビリオンを投与することを含む。この遺伝子産物は、上に記載されるように、ポリペプチドもしくは干渉RNA(例えば、shRNA、siRNA等)、アプタマー、または、部位特異的エンドヌクレアーゼであり得る。遺伝子産物を網膜細胞に送達することで、網膜疾患の治療をもたらし得る。網膜細胞は、光受容体、網膜神経節細胞、ミュラー細胞、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、網膜色素上皮細胞であり得る。ある場合には、網膜細胞は、光受容体細胞、例えば、桿体または錐体細胞である。
【0152】
本開示は、網膜疾患を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする個体に、有効な量の上述の主題のrAAVビリオンを投与することを含む。主題のrAAVビリオンを、眼内注入を介して、硝子体内注入によって、または任意の他の好都合な投与モードもしくは経路によって投与することができる。他の好都合な投与モードまたは経路には、例えば、静脈内、鼻腔内等が含まれる。
【0153】
「治療的に有効な量」は、実験および/または臨床試験を通じて決定され得る比較的広い範囲に入る。例えば、生体内注入の場合、すなわち、眼内への直接注入の場合、治療的に有効な用量は、約10
6〜約10
15のrAAVビリオン、例えば、約10
8〜10
12のrAAVビリオンである。生体外での形質導入の場合、細胞に送達されるべき有効な量のrAAVビリオンは、約10
8〜約10
13のrAAVビリオンである。他の有効な投与量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を通じて、当業者によって容易に確立され得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、2回以上の投与(例えば、2回、3回、4回、またはそれ以上の投与)を用いて、例えば、1日1回、週1回、月1回、年1回等の様々な間隔にわたって所望のレベルの遺伝子発現を達成することができる。
【0155】
主題の方法を用いて治療することのできる眼疾患には、急性黄斑視神経網膜症;ベーチェット病;脈絡膜血管新生;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;黄斑変性症、例えば、急性黄斑変性症、加齢に関連した非滲出性黄斑変性症、および加齢に関連した滲出性黄斑変性症;浮腫、例えば黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、および糖尿病性黄斑浮腫;多巣性脈絡膜炎;後眼部位または位置に影響を及ぼす眼外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト・小柳・原田(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼レーザー治療によって引き起こされるか、または影響を受ける後眼疾患;光線力学療法によって引き起こされるか、または影響を受ける後眼疾患;光凝固;放射線網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞症;前部虚血性視神経症;非網膜症糖尿病性網膜機能不全;網膜分離症;網膜色素変性症;緑内障;アッシャー症候群;錐体桿体ジストロフィ;シュタルガルト病(黄色斑眼底);遺伝性黄斑変性症;脈絡網膜変性;レーバー先天性黒内障;先天性固定夜盲症;先天性脈絡膜欠如;バルデー・ビードル症候群;黄斑毛細血管拡張症;レーベル遺伝性視神経症;未熟児網膜症;ならびに色覚異常、赤色覚異常、緑色覚異常、および第三色覚異常を含む色覚障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
核酸および宿主細胞
本開示は、上述の主題の変異体アデノ関連ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供し、この変異体AAVキャプシドタンパク質は、対応する親AAVキャプシドタンパク質に対するそのGHループまたはループIVにおける約5個のアミノ酸〜約11個のアミノ酸挿入を含み、変異体キャプシドタンパク質は、AAVビリオンに存在するとき、対応する親AAVキャプシドタンパク質を含むAAVビリオンによる網膜細胞の感染性と比較して、増加した網膜細胞の感染性をもたらす。主題の単離核酸は、AAVベクター、例えば、組換えAAVベクターであり得る。
【0157】
挿入ペプチド
主題の核酸によってコードされる変異体AAVキャプシドタンパク質は、AAVキャプシドのGHループに挿入される約5アミノ酸長〜約11アミノ酸長の挿入ペプチドを有する。挿入ペプチドは、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、または11アミノ酸長である。
【0158】
挿入ペプチドは、以下の式のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0159】
例えば、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式Iのものであり、
【0160】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0161】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Leu、Asn、およびLysから選択され、
X
2は、Gly、Glu、Ala、およびAspから選択され、
X
3は、Glu、Thr、Gly、およびProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gln、およびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、Arg、Asn、およびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、ProおよびAsnから選択される。
【0162】
例えば、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIaのものであり、
【0163】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0164】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1〜X
4はそれぞれ、アミノ酸であり、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0165】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIbのものであり、
【0166】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0167】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、LeuおよびAsnから選択され、
X
2は、存在する場合、GlyおよびGluから選択され、
X
3は、GluおよびThrから選択され、
X
4は、ThrおよびIleから選択され、
X
5は、Thrであり、
X
6は、Argであり、
X
7は、Proである。
【0168】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IIIのものであり、
【0169】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0170】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、Lysであり、
X
2は、AlaおよびAspから選択され、
X
3は、GlyおよびProから選択され、
X
4は、GlnおよびLysから選択され、
X
5は、ThrおよびAlaから選択され、
X
6は、AsnおよびThrから選択され、
X
7は、存在する場合、Asnである。
【0171】
別の例として、挿入ペプチドは、5〜11アミノ酸長のペプチドであってもよく、この挿入ペプチドは、以下の式IVのものであり、
【0172】
Y
1Y
2X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7Y
3Y
4
【0173】
式中、
Y
1〜Y
4はそれぞれ、存在する場合、Ala、Leu、Gly、Ser、およびThrから独立して選択され、
X
1は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはLeu、Asn、Arg、Ala、Ser、およびLysから選択され、
X
2は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGly、Glu、Ala、Val、Thr、およびAspから選択され、
X
3は、負に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはGlu、Thr、Gly、Asp、もしくはProから選択され、
X
4は、Thr、Ile、Gly、Lys、Asp、およびGlnから選択され、
X
5は、極性アミノ酸、アルコール(遊離ヒドロキシル基を有するアミノ酸)、もしくは疎水性アミノ酸であるか、または、Thr、Ser、Val、およびAlaから選択され、
X
6は、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはArg、Val、Lys、Pro、Thr、およびAsnから選択され、
X
7は、存在する場合、正に荷電したアミノ酸もしくは荷電していないアミノ酸であるか、またはPro、Gly、Phe、Asn、およびArgから選択される。
【0174】
非限定的な例として、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0175】
ある場合には、挿入ペプチドは、LGETTRP(配列番号13)、NETITRP(配列番号14)、KAGQANN(配列番号15)、KDPKTTN(配列番号16)、KDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちのいずれか1つのアミノ末端および/またカルボキシル末端で1〜4個のスペーサーアミノ酸(Y
1〜Y
4)を有する。好適なスペーサーアミノ酸は、ロイシン、アラニン、グリシン、セリンを含むが、これらに限定されない。
【0176】
例えば、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:LALGETTRPA(配列番号45)、LANETITRPA(配列番号46)、LAKAGQANNA(配列番号47)、LAKDPKTTNA(配列番号48)、LAKDTDTTRA(配列番号61)、LARAGGSVGA(配列番号62)、LAAVDTTKFA(配列番号63)、およびLASTGKVPNA(配列番号64)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:AALGETTRPA(配列番号49)、AANETITRPA(配列番号50)、AAKAGQANNA(配列番号51)、およびAAKDPKTTNA(配列番号52)。さらに別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する:GLGETTRPA(配列番号53)、GNETITRPA(配列番号54)、GKAGQANNA(配列番号55)、およびGKDPKTTNA(配列番号56)。別の例として、ある場合には、挿入ペプチドは、AAによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含むか、またはGによってC末端上に、かつAによってN末端上に隣接されるKDTDTTR(配列番号57)、RAGGSVG(配列番号58)、AVDTTKF(配列番号59)、およびSTGKVPN(配列番号60)のうちの1つを含む。
【0177】
主題の組換えAAVベクターを用いて、上述の主題の組換えAAVビリオンを生成することができる。したがって、本開示は、好適な細胞に導入されるときに、主題の組換えAAVビリオンの産生をもたらし得る組換えAAVベクターを提供する。
【0178】
本発明は、主題の核酸を含む宿主細胞、例えば、単離された(遺伝子修飾された)宿主細胞をさらに提供する。主題の宿主細胞は、単離細胞、例えば、生体外培養物中の細胞であり得る。主題の宿主細胞は、以下に記載の主題のrAAVビリオンの産生に有用である。主題の宿主細胞を用いて主題のrAAVビリオンを生成する場合、「パッケージング細胞」と称される。いくつかの実施形態において、主題の宿主細胞は、主題の核酸で安定的に遺伝子修飾される。他の実施形態において、主題の宿主細胞は、主題の核酸で一時的に遺伝子修飾される。
【0179】
主題の核酸は、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム媒介トランスフェクション等を含むが、これらに限定されない確立された技法を用いて、安定的または一時的に宿主細胞に導入される。安定的な変換の場合、主題の核酸は、概して、選択可能なマーカー、例えば、ネオマイシン耐性等のいくつかの周知の選択可能なマーカーのうちのいずれかをさらに含む。
【0180】
主題の宿主細胞は、主題の核酸を様々な細胞、例えば、例えば、マウス細胞および霊長類細胞(例えば、ヒト細胞)を含む哺乳類細胞のうちのいずれかに導入することによって生成される。好適な哺乳類細胞には、初代細胞および細胞株が含まれるが、これらに限定されず、好適な細胞株には、293細胞、COS細胞、HeLa細胞、Vero細胞、3T3マウス線維芽細胞、C3H10T1/2線維芽細胞、CHO細胞等が含まれるが、これらに限定されない。好適な宿主細胞の非限定的な例には、例えば、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL−2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL−1573)、Vero細胞、NIH3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL−1658)、Huh−7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS−7細胞(ATCC番号CRL1651)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞等が挙げられる。主題の宿主細胞を、AAVを産生するSf9細胞等の昆虫細胞を感染させるバキュロウイルスを用いて作成することができる(例えば、米国特許第7,271,002号、米国特許出願第12/297,958号を参照されたい)。
【0181】
いくつかの実施形態において、主題の遺伝子修飾宿主細胞は、上述の変異体AAVキャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に加えて、1つ以上のAAV repタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。他の実施形態において、主題の宿主細胞は、rAAVベクターをさらに含む。rAAVビリオンを主題の宿主細胞を用いて生成することができる。rAAVビリオンを生成する方法は、米国特許公開第2005/0053922号および米国特許公開第2009/0202490号に記載されている。
【実施例】
【0182】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように作製および使用するかの完全なる開示および説明を提供するように提示され、本発明者が自身の発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の実験が全てまたは唯一の実行される実験であると示すようにも意図されていない。使用される数値(例えば、量、温度等)に対する正確さを確保する努力がなされているが、いくつかの実験によるエラーおよび偏差が計上されるはずである。別途示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧であるか、またはそれに近い。例えば、bpは塩基対(複数を含む)、kbはキロベース(複数を含む)、plはピコリットル(複数を含む)、sまたはsecは秒(複数を含む)、minは分(複数を含む)、hまたはhrは時間(複数を含む)、aaはアミノ酸(複数を含む)、kbはキロベース(複数を含む)、bpは塩基対(複数を含む)、ntはヌクレオチド(複数を含む)、i.m.は筋肉内の(に)、i.p.は腹腔内の(に)、s.cは皮下の(に)等の標準的な略語を使用してもよい。
【0183】
実施例1
網膜細胞の形質導入が改善されたAAV変異体
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発により、一意のAvrII部位をアミノ酸587と588との間の野生型AAV2ゲノムに導入することによってペプチド表示ライブラリを作製する手段を用いた。アンチセンスプライマー7mer Revに加えて、ランダム21ヌクレオチド挿入物7mer Forを用いて、dsDNA挿入物を合成した。結果として生じたdsDNA挿入物を、NheIでの消化後にゲノムのAvrII部位にクローニングし、様々な7mer表示ライブラリを産生し、その後、これをパッケージングした(Perabo et al.,2003、Muller et al.,2003)。ウイルスを、それぞれのウイルスゲノムがそのゲノムがコードしたキャプシドタンパク質変異体内にパッケージングまたはキャプシド形成されるように生成した。この点において、選択を介して識別された機能改善を、ウイルスキャプシド内に含有されたこの改善された機能をコードするゲノム配列に結合することができる。
【0184】
このライブラリをrho−GFPマウス(Wensel et al.(2005)Vision Res.45:3445)内の正の選択に供した。簡潔に、1ラウンドの選択において、成人rho−GFPマウスに、2μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を硝子体内注入し、透析し、ライブラリを約1×10
12ウイルスゲノム(vg)/mLのゲノム力価でイオジキサノール精製した。極細の30 1/2ゲージの使い捨て針をマウスの眼の赤道部であり、縁に隣接する強膜に通して、硝子体腔に入れた。針を硝子体腔の中心になるよう直接観察しながら2μLのウイルス注入を行った。注入から1週間後、眼を摘出し、光パパインプロテアーゼ処理で網膜を解離し、その後、光受容体集団を蛍光活性化細胞選別装置(FACS)で単離した。次に、成功したビリオンをその後のゲノム抽出からPCR増幅し、さらにクローニングし、注入のために再パッケージングした。
【0185】
この選択をさらに繰り返し、変異体のプールを最も認可的な変異を有するサブセットに絞り込んだ。3回繰り返した後に、エラーを起こしやすいPCRのラウンドを行い、選択的変異体のさらなる生成をもたらした。合計で、このプロセスを2世代繰り返した。この点において、この指向進化プロセスは、自然進化のプロセスと同様に、正の選択を適用して光受容体許容的AAV変異体を生成し、変異生成を誘導した。
【0186】
その後、50個の変異体のcap遺伝子を配列決定して、硝子体内光受容体形質導入のために許容的変異を有する最も卓越した成功を収めた変異体を決定した。50個のクローンのうち46個が、7mer挿入の可読配列をもたらした。注目すべきことに、約3分の2のクローンが同一のはっきりと異なる7merモチーフ(〜
588LGETTRP〜、配列番号13)を含有した。興味深いことに、次の最も卓越した変異(〜
588NETITRP〜、配列番号14)も、極性トレオニンと無極性プロリン残基(TRP)との間の正に荷電したアルギニン残基からなる同様の隣接モチーフを含有した。
【表1】
【0187】
表1 指向進化からの単離された変異体の配列決定が、ウイルスライブラリにおける高度の収束を明らかにする。すべての変異体は、AAV2 7merライブラリに由来しており、約64%の変異体が同一の7merモチーフ(〜
588LGETTRP〜(配列番号13))を含有した。
【0188】
7mer挿入配列のうち、適度の選好が特定の位置、例えば、正に荷電した1位のアミノ酸、負に荷電した2位のアミノ酸、5位のアルコール(例えば、ThrまたはSer等のアルコール基(遊離ヒドロキシル基)を有するアミノ酸)で存在した。
【0189】
7mer挿入物を、表2に示されるように、スペーサーによって隣接した。
【表2】
【0190】
図1。アミノ酸587の後にランダム7量体(オレンジ色で示される)を含有するAAV2の代表的な3次元キャプシドモデル。AAV2キャプシドのこの領域は、細胞表面受容体結合に関与する可能性が高い。
【0191】
上述の選択からの高度のライブラリ収束の観点から、組換え形態のAAV2〜
588LGETTRP〜(配列番号13、7M8の異名をとる)をクローニングし、ベクターをscCAG−GFP導入遺伝子でパッケージングして、その形質導入特性を可視化した。成人マウスへの硝子体内注入から3週間後、網膜神経節細胞(RGC)およびミュラー細胞を含む多数の細胞型におけるロバスト発現が観察された。重要なことに、外核層(ONL)核(赤色の矢印)および外側部分(
図2、青色の矢印)におけるGFP発現によって見られる7M8を注入した網膜における光受容体の形質導入が観察された一方で、AAV2は、識別可能な光受容体発現を示さなかった。
【0192】
図2。AAV2 7M8変異体(右)は、AAV2(左)と比較して、より高いレベルの硝子体内光受容体形質導入を示す。成人マウスへの2μLの1×10
12vg/mLのAAV2 7M8およびAAV2 scCAG GFPの硝子体内注入から3週間後の網膜横部分の共焦点顕微鏡検査。赤色の矢印(上)は、光受容体核を示し、青色の矢印(上)は、光受容体外側部分を示す。
【0193】
網膜細胞形質導入におけるこれらの利益の観点から、光受容体特異的ロドプシンプロモーターを含有するssRho−eGFP導入遺伝子を用いて発現特異性の増大を試みて、特に光受容体における形質導入効率をより良好に解明した(
図3)。実際には、光受容体特異的Rhoプロモーターの使用は、その光受容体に対するGFP発現を制限した。合理的な設計手段と先の指向進化手段を組み合わせることにより、7M8形質導入効率の向上を試みた。したがって、4つの表面が露出したチロシン残基は、7M8キャプシド上のフェニルアラニンに変異させられ(Y273F、Y444F、Y500F、およびY730F)、これらは、光受容体感染性を増加させると以前に示されている(Petrs−Silva et al.,2009)。興味深いことに、変異の付加は、7m8または7m8−4YF感染網膜由来のGFP(+)光受容体のFAC選別によって示される初期のウイルスと比較して、形質導入された光受容体の数を減少させた(
図4)。
【0194】
図3。ユビキタスCAGプロモーター(左)または光受容体特異的Rhoプロモーター(右)の制御下でGFP遺伝子を担持する7m8に起因するGFP発現を示す網膜冷凍スライスの代表的な蛍光画像。
【0195】
図4。フローサイトメトリーで計数された100万個の網膜細胞当たりのGFP(+)光受容体細胞。7m8は、4チロシン変異を担持する7m8(上)と比較して、2倍以上の量の光受容体を形質導入する。
【0196】
実施例2
網膜分離症の治療
発現構築物7m8−rho−RS1を用いて、機能的レチノスキシン(RS1)タンパク質をレチノスキシン欠損マウス(Rs1h欠損マウス、Rs1hは、ヒトRS1のマウスホモログである)に送達した。ベクターは、ロドプシンプロモーターの転写制御下で機能的レチノスキシンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
図13A〜Cを参照して、太字および下線を引いたヌクレオチド配列(ヌクレオチド4013〜4851)は、ロドプシンプロモーターであり、ヌクレオチド4866〜5540(太字で示される開始atgおよび終止tga配列)は、ヒトRS1タンパク質をコードする。
【0197】
7m8−rho−RS1構築物をP15でRs1h−/−マウスに硝子体内投与した。説明されるように、Rs1h遺伝子のエクソン3を標的破壊してRs1h−/−マウスを生成した(Weber et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:6222)。Rs1h−/−マウスは、Rs1hタンパク質産物が不足しており、電気陰性ERG(例えば、a波の相対保存により減少したb波)および網膜層の分裂を有し、ヒト網膜分離症患者において見られるものと類似している。7m8−rho−RS1ベクターをRs1h−/−に注入することにより、網膜中の光受容体からの高レベルの汎網膜RS1発現をもたらした。RS1発現は、スペクトル領域光コヒーレンストモグラフィー(SD−OCT)イメージング(
図7A〜I)、ERG b波の救済(
図8A〜D)、網膜の長期間の構造保持(
図9A〜E)において見られるように、網膜内の空洞の数および大きさの低減により網膜形態の改善をもたらした。
【0198】
図7A〜I。7m8−rho−GFPを注入した網膜(左列)、7m8−rho−RS1を注入した網膜(中央列)、または注入されていない野生型動物の網膜(右列)の代表的な高解像度SD−OCT画像。上網膜の内顆粒層を介して眼底画像を撮り、他の層(a〜c)を除外した。視神経頭を目印として用いて、上(d〜f)および下(g〜i)の網膜の横断画像を撮った。
【0199】
内網膜を分裂するスキーシスの結果、病状が進行するため、内境界膜(ILM)から光受容体まで測定するときに、未処理のRS1網膜の全体の厚さが増加する。このプロセスは、スキーシスを形成しないが、INLにおける進行性の光受容体細胞死および同時に起こる菲薄化、ならびにERG振幅の損失を呈する大半の網膜変性疾患(RDD)において観察されるものとは異なる。RS1において、ONLは、その疾患が原因で光受容体が死亡するときに菲薄化するが、これは、全体の網膜厚変化とは異なる。RS1の功を奏する治療が、全体の網膜厚を野生型の厚さに戻し、ONLにおける光受容体の喪失を改善すると一般に考えられている。RS1以外の大半のRDDにおいて、ONL菲薄化を特徴とする光受容体の喪失は、ERG振幅によって測定される生理学的網膜産出量の減少を伴う。RS1は、網膜疾患の病状が同時に起こるERG振幅損失を伴って網膜厚を増加させる網膜疾患のごく少数の例のうちの1つである。要約すれば、RS1遺伝子産物を回復させることにより、細胞外網膜「接着剤」は、網膜を菲薄化して野生型の厚さに戻し、ERG振幅は、スキーシスが分解するときに正常に近いレベルに戻る。
【0200】
図8aは、注入から1ヶ月後(左)および4ヶ月後(右)のAAV2−rho−RS1、7m8−rho−GFP、および7m8−rho−RS1を注入した眼と、未処理のRS1−/−眼の機能的救済との比較を示す。注入から1ヶ月後、7m8−rho−RS1がERG b波振幅の著しい救済をもたらした一方で、AAV2−rho−RS1は、未処理の眼とは統計的に区別できなかった。
【0201】
4ヶ月後、7m8−rho−RS1振幅は、野生型振幅(右)に向かってさらに増加した。
図8bは、7m8−rho−GFPを注入した眼と比較して、a波およびb波ならびに野生型の眼により近い波形の振幅の改善を示す7m8−rho−RS1を注入した眼の代表的なERGトレースを示す。
図8cは、それぞれの条件においてP15で注入の1ヶ月後から月1回の頻度で記録を開始した、高強度(1log cd×s/m2)の刺激に起因する全界磁暗順応b波の振幅を示す。3つの応答を記録し、それぞれの時点でそれぞれの眼を平均化した。
【0202】
平均ERG b波振幅を注入後の時間の関数としてプロットした。n=7を両方の条件に用いた。
図8dは、暗順応条件(上のトレース、−3〜1log cd×s/m2の刺激範囲)下および明順応条件(下のトレース、−0.9〜1.4log cd×s/m2の範囲)下のERG応答の分析が、刺激強度の範囲にわたって桿体および錐体機能の改善を示すことを示す。
【0203】
図9A〜E。7m8−rho−RS1での処理後10ヶ月時点で測定された網膜厚の持続的改善。視神経頭の中心への注入から10ヶ月後のa)7m8−rho−RS1またはb)7m8−rho−GFPで処理した網膜の代表的なSD−OCT横断画像。c)網膜の厚さ、d)ONLの厚さ、ならびにe)内側部分および外側部分の厚さの測定結果を、視神経頭からの距離の関数としてプロットする。
【0204】
実施例3
タンパク質をマカクにおける網膜細胞に送達するために使用されるAAV変異体
組換えAAV2ビリオン(コネキシン36プロモーターの制御下でGFPを担持する7m8)を生成した。組換えAAV2ビリオンは、AAV2キャプシドのアミノ酸587とアミノ酸588との間にLALGETTRPAペプチドが挿入されたAAV2キャプシド変異体、および介在ニューロンにおいて発現するコネキシン36プロモーターの転写制御下のGFPを含んだ。このrAAV2ビリオンをマカクの眼内に硝子体内注入した。データが
図18に示される。
【0205】
図18は、コネキシン36プロモーターの制御下でGFPを担持する7m8の投与から9週間後の網膜の後部でGFP発現を示す蛍光眼底画像を提供する。親AAV2血清型(Yin et al,IOVS 52(5);2775)と比較して、より高いレベルの発現が中心窩リングにおいて見られ、可視蛍光が中心窩の外側の中心網膜において見られた。
【0206】
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【0207】
本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、かつ等価物を代用することができることを当業者は理解するべきである。加えて、多くの修正を行って、特定の状態、材料、物質の組成物、プロセス、1つのプロセスステップ、または複数のプロセスステップを本発明の目的、精神、および範囲に適応することができる。すべてのそのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であるよう意図されている。