(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞が胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、筋幹細胞、肺幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)および線維芽細胞からなる群から選択される、請求項4に記載の細胞。
対象においてCFを治療するための、請求項9または10に記載の組成物であって、前記組成物が、前記対象の一つまたは複数の細胞におけるCFTR遺伝子を改変することを特徴とする、上記組成物。
野生型CFTR遺伝子を含む細胞を生成する方法であって、請求項6〜10のいずれか1項に記載の組成物によって細胞における変異型CFTR遺伝子を改変して、前記野生型CFTR遺伝子を含む細胞を得ることを含む方法。
請求項16に記載の方法に従って前記野生型CFTR遺伝子を含む細胞を生成するのに使用するための、変異型CFTR遺伝子を含む細胞を含む組成物であって、前記野生型CFTR遺伝子を含む細胞が、対象におけるCFの治療に使用されることを特徴とする、組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
CFTRまたはSFTPBの遺伝子座を改変するための方法および組成物が本明細書で開示される。また、CF遺伝子(例えば、CFTR)またはSFTPB(例えば、SP−B)の機能を研究するためのモデル、CFおよびSP−B欠損症の創薬のためのモデル、並びにCFまたはSP−Bを治療するためのモデル、並びにこれらのモデル系を作製および使用するための方法についても記載される。本明細書に記載の組成物および方法は、CFTRまたはSFTPBのゲノム編集に使用することができ、例えば、限定はされないが、動物細胞におけるCFTR遺伝子またはSFTPB遺伝子を切断することによる、CFTRまたはSFTPB遺伝子における標的化された改変(挿入、欠失および/または置換変異)(これらの標的化された改変を生殖系列に組み込むことを含む);非内在性核酸配列のCFTRまたはSFTPB遺伝子への標的化された導入、動物におけるCFTR遺伝子の部分的または完全な不活性化;動物におけるSFTPB遺伝子の修復;CFTRまたはSFTPBの遺伝子座に相同組換え修復(homology-directed repair)を誘導する方法;それを必要とする患者に移植するための、修復されたCFTRまたはSFTPB遺伝子を有する肺幹細胞集団の作製、並びにCFTRおよび/またはSFTPB遺伝子座で改変された遺伝子導入動物の作製(例えば、げっ歯類および非ヒト霊長類)が挙げられる。
【0011】
一つの態様では、ゲノム内のCFTR遺伝子における標的部位に結合し、一つまたは複数の操作されたZnフィンガー結合ドメインを含む、Znフィンガータンパク質(ZFP)が本明細書に記載される。一実施形態では、ZFPは、目的の標的ゲノム領域を切断し、一つまたは複数の操作されたZnフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたはヌクレアーゼ切断ハーフドメイン(half-domain)を含む、Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、種々の制限酵素および/またはホーミングエンドヌクレアーゼ(homingendonuclease)から得ることができる。一実施形態では、切断ハーフドメインはIIS型制限酵素(例えば、FokI)由来である。ある実施形態では、ZnフィンガードメインはCFTR遺伝子における標的部位を認識する。いくつかの実施形態では、Znフィンガードメインは変異型CFTR遺伝子における標的部位を認識し、その結果、ZFN対は変異型CFTR対立遺伝子のみを切断する。
【0012】
一つの態様では、ゲノム内のSFTPB遺伝子における標的部位に結合し、一つまたは複数の操作されたZnフィンガー結合ドメインを含む、Znフィンガータンパク質(ZFP)が本明細書に記載される。一実施形態では、ZFPは、目的の標的ゲノム領域を切断し、一つまたは複数の操作されたZnフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたはヌクレアーゼ切断ハーフドメインを含む、Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、種々の制限酵素および/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施形態では、切断ハーフドメインはIIS型制限酵素(例えば、FokI)由来である。ある実施形態では、ZnフィンガードメインはSFTPB遺伝子における標的部位を認識する。
【0013】
ZFNは、CFTRまたはSFTPB遺伝子に対して、その遺伝子のコード配列内で、またはその遺伝子内もしくはそれに隣接する非コード配列(例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等)において、またはそのコード配列の上流もしくは下流のいずれかにある非転写領域内で、結合および/または切断を行うことができる。
【0014】
別の態様では、ゲノム内のCFTRまたはSFTPB遺伝子における標的部位に結合し、一つまたは複数の操作されたTALE DNA結合ドメインを含む、TALEタンパク質(Transcription activator like(転写活性化因子様))が本明細書に記載される。一実施形態では、TALEは、目的の標的ゲノム領域を切断し、一つまたは複数の操作されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたはヌクレアーゼ切断ハーフドメインを含む、ヌクレアーゼ(TALEN)である。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、種々の制限酵素および/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施形態では、切断ハーフドメインはIIS型制限酵素(例えば、FokI)由来である。ある実施形態では、TALE DNA結合ドメインはCFTRまたはSFTPB遺伝子における標的部位を認識する。
【0015】
TALENは、CFTRまたはSFTPB遺伝子に対して、その遺伝子のコード配列内で、またはその遺伝子内もしくはそれに隣接する非コード配列(例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等)において、またはそのコード配列の上流もしくは下流のいずれかにある非転写領域内で、結合および/または切断を行うことができる。ある実施形態では、TALE DNA結合ドメインはCFTR遺伝子における標的部位を認識する。いくつかの実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、変異型CFTR遺伝子における標的部位を認識し、その結果、TALEN対は変異型CFTR対立遺伝子のみを切断する。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載のZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼを一つまたは複数含む組成物が本明細書に記載される。ある実施形態では、前記組成物は、一つまたは複数のZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼを、薬剤的に許容できる賦形剤と共に含む。
【0017】
別の態様では、本明細書に記載のZFNまたはTALENを一つまたは複数コードするポリヌクレオチドが本明細書に記載される。前記ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであり得る。
【0018】
別の態様では、本明細書に記載のZFNまたはTALENを一つまたは複数コードし、プロモーターに機能的に連結したポリヌクレオチドを含むZFNまたはTALEN発現ベクターが本明細書に記載される。
【0019】
別の態様では、一つまたは複数のZFNまたはTALEN発現ベクターを含む宿主細胞が本明細書に記載される。宿主細胞を一つまたは複数のZFPまたはTALEN発現ベクターで安定に形質転換するか、または宿主細胞に該発現ベクターを一過性に形質移入するか、または宿主細胞に対してそれらの組み合わせを行うことができる。一実施形態では、宿主細胞は胚性幹細胞である。一実施形態では、宿主細胞は肺幹細胞である。他の実施形態では、一つまたは複数のZFPまたはTALEN発現ベクターは、宿主細胞内で一つまたは複数のZFNまたはTALENを発現する。別の実施形態では、宿主細胞は外来性ポリヌクレオチドドナー配列をさらに含み得る。本明細書に記載される前記実施形態のいずれかにおいて、宿主細胞は、胚、例えば一または複数のマウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物胚(例えば、非ヒト霊長類)内に存在し得る。
【0020】
別の態様では、細胞中の一つまたは複数のCFTRまたはSFTPB遺伝子を切断するための方法が本明細書に記載され、該方法は、(a)ZFNまたはTALENが発現され、且つ一つまたは複数の遺伝子(CFTRおよび/またはSFTPB)が切断されるような条件下で、一つまたは複数の遺伝子内の標的部位に結合する一つまたは複数のZFNまたはTALENをコードする一つまたは複数のポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。
【0021】
別の実施形態では、細胞のゲノム内の一つまたは複数のCFTRまたはSFTPB遺伝子配列を改変するための方法が本明細書に記載され、該方法は、(a)一つまたは複数のCFTRまたはSFTPB配列を含む細胞を用意し;(b)細胞内で第一および第二のZnフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALENを発現することを含み、該第一ZFNまたはTALENは第一切断部位で切断を起こし、該第二ZFNまたはTALENは第二切断部位で切断を起こし、該遺伝子配列は第一切断部位と第二切断部位の間に位置し、該第一および第二切断部位の切断によって、非相同末端結合および/または相同組換え修復による該遺伝子配列の改変がもたらされる。所望により、切断は、細胞にまた導入された外来性配列(導入遺伝子)の挿入をもたらす。他の実施形態では、非相同末端結合は、第一切断部位と第二切断部位の間に欠失をもたらす。遺伝子配列における欠失のサイズは、第一切断部位と第二切断部位の距離によって決定される。従って、いかなるサイズの欠失をも、いかなる目的ゲノム領域内にも、得ることができる。25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000ヌクレオチド対の欠失を、またはこの範囲内のいかなる整数値のヌクレオチド対をも、得ることができる。さらに、1,000ヌクレオチド対を超えるいかなる整数値のヌクレオチド対配列の欠失をも、本明細書で開示される方法および組成物を用いて得ることができる。これらの方法および組成物を用いて、一つまたは複数の既知のドメインを欠如している変異型CFTRおよび/またはSFTPBタンパク質を開発することができる。これらの構築物は、その後、細胞内での該タンパク質の機能研究に使用することができる。
【0022】
別の態様では、CFTRまたはSFTPBに関連する特定の変異を修復することによって、該変異を有する該遺伝子の機能を理解することができ、並びに/または、例えばCFTRにおける変異ΔF508および/もしくはΔI507を含む、変異遺伝子の修復に関連する表現型を発見することができる。次に、そのような理解を利用して、薬物スクリーニングおよび創薬で使用するための、例えばCFまたはSP−B欠損症の治療のための、細胞、細胞株および遺伝子導入動物を設計することができる。
【0023】
別の態様では、CFTRまたはSFTPB内に部位特異的変異を構築して、既知のまたは新規の変異を設計することができる。例えば、CFTRにおけるΔF508変異を、細胞、細胞株、初代細胞または遺伝子導入動物において構築することができる。一実施形態では、CFTRに関しヘテロ接合性の遺伝子型を有する細胞、細胞株または遺伝子導入動物が構築され、一方で別の実施形態では、所望の遺伝子座の両方の対立遺伝子に2つの変異コピーを有するホモ接合性の細胞、細胞株または遺伝子導入動物が作製される。
【0024】
別の態様では、本明細書に記載の通りに、一つまたは複数のタンパク質、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを細胞に導入することによって、細胞内のCFTRまたはSFTPB遺伝子を不活性化させる方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、ZFNまたはTALENは、細胞のDNA配列の標的変異、標的欠失を誘導し、および/または予定染色体座において標的組換えを促進することができる。従って、ある実施形態では、ZFNまたはTALENは、標的遺伝子の一つまたは複数のヌクレオチドを欠失または挿入する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはTALENの切断と、それに続く非相同末端結合(NHEJ)によって、CFTRまたはSFTPB遺伝子は不活性化される。他の実施形態では、標的遺伝子内のゲノム配列は、例えば本明細書に記載されるZFNまたはTALEN(または前記ZFNもしくはTALENをコードするベクター)、およびZFNまたはTALENを用いた標的切断後に遺伝子に挿入される「ドナー」配列を使用して、置換される。ドナー配列は、ZFNまたはTALENベクター内に存在していてもよいし、別々のベクター(例えば、AdまたはLVベクター)内に存在していてもよいし、あるいは、異なる核酸送達機構を使用して細胞に導入されてもよい。一つの態様では、ドナー配列は既知の変異(例えば、CFTRタンパク質内のΔF508変異)を引き起こす。ある実施形態では、ドナー配列は、ΔF508変異対立遺伝子への該ドナー配列の標的組込み後に、CFTRのイントロン9に塩基対置換(A>G)をもたらす配列を含む(注:A>G置換は、エクソン10の開始点に対し、イントロン9内の−61位で生じる:すなわち−61A>G)。
【0025】
別の態様では、本明細書に記載の通りに、一つまたは複数のタンパク質、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを細胞に導入することによって、細胞内のCFTRまたはSFTPB遺伝子(例えば、変異遺伝子)を修復する方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、ZFNまたはTALENは、細胞のDNA配列の標的変異、標的欠失を誘導し、および/または予定染色体座において標的組換えを促進することができる。従って、ある実施形態では、ZFNまたはTALENは、標的遺伝子の一つまたは複数のヌクレオチドを欠失するか、または標的遺伝子に一つまたは複数のヌクレオチドを挿入する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはTALENの切断と、それに続く非相同末端結合(NHEJ)によって、CFTRおよび/またはSFTPB遺伝子は修復される。他の実施形態では、標的遺伝子内のゲノム配列は、例えば本明細書に記載されるZFNまたはTALEN(または前記ZFNもしくはTALENをコードするベクター)、およびCFTRまたはSFTPB遺伝子の配列を修復するZFNまたはTALENを用いた標的切断後に遺伝子に組み込まれる「ドナー」配列を使用して、置換される。いくつかの実施形態では、ドナー配列はセーフハーバー遺伝子座(safe harbor locus)に挿入される(共有に係る米国特許出願公開第20080299580号参照)。ドナー配列は、ZFNまたはTALENベクター内に存在していてもよいし、別々のベクター(例えば、AdまたはLVベクター)内に存在していてもよいし、あるいは、異なる核酸送達機構を使用して細胞に導入されてもよい。一つの態様では、ドナー配列は既知の変異を修復する(例えば、ΔF508変異の修復)。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、修復は完全にグリコシル化されたCFTRタンパク質の発現をもたらす。
【0026】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかにおいて、CFTRまたはSFTPB遺伝子座を含有する細胞は幹細胞であり得る。本発明の方法および組成物と共に使用することができる特定の幹細胞型としては、胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、筋幹細胞、肺幹細胞および誘導多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。iPSCは患者試料または健常ドナーに由来し得、患者由来iPSCを目的遺伝子において正常な遺伝子配列に変異させることができ、あるいは、正常細胞を目的遺伝子において既知の疾患対立遺伝子に変化させることができる。これらのiPSCのパネルを使用して、内在性CFTRまたはSFTPB遺伝子座に一つまたは複数の変異を有する患者細胞および正常細胞の両方を含む同質遺伝子細胞を作製することができる。これら細胞を使用することで、目的の変異においてのみ異なる細胞株および/または遺伝子導入動物を作製することができ、それにより、疾患重症度の多重遺伝子効果並びにCFおよび/またはSB−P欠損症に対する可能な治療的処置を研究することができる。これらの研究に使用することができる他の細胞型は、患者由来線維芽細胞または患者由来幹細胞である。別の態様では、本発明は、治療を必要とする患者へ移植するための肺(または他の)幹細胞を作製するための方法および組成物を提供する。移植用の肺幹細胞は、患者自身に由来し、CFTRまたはSFTPB遺伝子座における疾患関連部位で修復され、患者に再び導入され得る。他の態様では、肺幹細胞は、一般的供給源に由来し、野生型CFTRまたはSFTPB遺伝子を含有し得、移植細胞が患者に拒絶されないように、HLAおよび/または他の自己標識が改変されている(共有に係る米国特許出願公開第20120060230号)。
【0027】
別の態様では、少なくとも1つの目的のCFTRまたはSFTPB遺伝子座に一つまたは複数の遺伝性変異対立遺伝子を作製する方法が本明細書に記載され、該方法は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって、動物胚の一つまたは複数の細胞のゲノムにおける一つまたは複数のCFTRまたはSFTPB遺伝子座を改変し;その胚を性的成熟期まで育成し;その性的成熟した動物に子孫を産ませること;を含み、その子孫の少なくともいくらかは前記変異対立遺伝子を含む。ある実施形態では、動物は小型の哺乳動物、例えばウサギまたはラット、マウスもしくはモルモット等のげっ歯類である。他の実施形態では、動物は非ヒト霊長類である。
【0028】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、ZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALENをコードするポリヌクレオチドは、DNA、RNAまたはその組み合わせを含み得る。ある実施形態では、前記ポリヌクレオチドはプラスミドを含む。他の実施形態では、前記ヌクレアーゼをコードする前記ポリヌクレオチドはmRNAを含む。
【0029】
またさらなる態様では、核酸配列を染色体のCFTRまたはSFTPB遺伝子座に部位特異的に組込むための方法が本明細書で提供される。ある実施形態では、前記方法は、(a)胚に、(i)組み込まれる核酸配列に隣接する上流配列および下流配列を含む少なくとも1つのDNAベクター、並びに(ii)CFTRまたはSFTPB遺伝子座における組込み部位を認識するZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子、を注入すること、並びに(b)該胚を培養してZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼを発現させることを含み、ZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALENにより組込み部位に導入された二本鎖切断は、該核酸配列を該染色体に組み込むために、該DNAベクターを用いた相同組換えによって修復される。
【0030】
安定な胚は、いくつかの異なる脊椎動物種、例えば哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、および魚の種に由来し得る。一般的に、安定な胚とは、採取することができ、注射することができ、且つ培養してZnフィンガーヌクレアーゼまたはTALEヌクレアーゼを発現させることができる胚である。いくつかの実施形態では、安定な胚には、小型哺乳動物(例えば、げっ歯類、ウサギ等)、伴侶動物、家畜、または霊長類に由来する胚が含まれ得る。げっ歯類の非限定例には、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットが含まれ得る。伴侶動物の非限定例には、ネコ、イヌ、ウサギ、ハリネズミ、およびフェレットが含まれ得る。家畜の非限定例には、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラマ、アルパカ、およびウシが含まれ得る。霊長類の非限定例には、オマキザル、チンパンジー、キツネザル、マカク、マーモセット、タマリン、クモザル、リスザル、およびサバンナモンキーが含まれ得る。他の実施形態では、安定な胚には、魚、爬虫類、両生類、または鳥類に由来する胚が含まれ得る。あるいは、安定な胚には、昆虫の胚、例えば、ショウジョウバエの胚または蚊の胚が含まれ得る。
【0031】
また、組み込まれる核酸配列に隣接する上流配列および下流配列を含む少なくとも1つのDNAベクター、並びに染色体上の組込み部位を認識するZnフィンガーヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子を含む胚も提供される。また、本明細書に記載される胚のいずれかに由来する生物も提供される。
【0032】
別の態様では、本発明の方法および組成物は、CFまたはSB−P欠損症を患う動物の治療に使用するための薬剤ライブラリーおよび/または他の治療用組成物(すなわち、抗体、構造的RNA等)のスクリーニングにおける、細胞、細胞株および動物(例えば、遺伝子導入動物)の使用を提供する。そのようなスクリーニングは、操作された細胞株または初代細胞を用いて細胞レベルから始めることができ、動物(例えば、ヒト)全身を治療するレベルにまで進めることができる。
【0033】
また、本発明に記載のZFPまたはTALENを含むキットも提供される。キットは、ZFPもしくはTALENをコードする核酸(例えばRNA分子、または安定な発現ベクターに含有されるZFPもしくはTALENをコードする遺伝子)、または一定分量のZFPもしくはTALENタンパク質、ドナー分子、安定な宿主細胞株、本発明の方法を実行するための説明書等を含み得る。
【0034】
これらの態様および他の態様は、下記の実施形態を含む全体としての本開示を考慮することにより、当業者には容易に明らかになるであろう。
1.
操作されたZnフィンガータンパク質DNA結合ドメインを含むタンパク質であって、前記DNA結合ドメインが、N末端からC末端に向かってF1からF4、F1からF5またはF1からF6と配列された4、5または6つのZnフィンガー認識領域を含み、前記F1からF4、F1からF5またはF1からF6が表1の単一列に示される配列を含む、上記タンパク質。
2.
実施形態1に記載のタンパク質および野生型のまたは操作された切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む融合タンパク質。
3.
実施形態1または2に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
4.
実施形態1もしくは2に記載のタンパク質または実施形態3に記載のポリヌクレオチドを含む単離細胞。
5.
前記細胞が胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、筋幹細胞、肺幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)および線維芽細胞からなる群から選択される、実施形態4に記載の細胞。
6.
細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子または肺サーファクタントタンパク質B(SP−B)遺伝子を改変する方法であって、CFTRまたはSP−Bに標的化された一つまたは複数の融合タンパク質を用いてCFTRまたはSP−B遺伝子を切断することを含み、該融合タンパク質が実施形態2に記載の融合タンパク質およびSP−Bに標的化されたヌクレアーゼからなる群から選択される、上記方法。
7.
前記改変が、挿入、欠失、置換およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態6に記載の方法。
8.
CFTRまたはSP−B遺伝子に外来性配列を導入することをさらに含む、実施形態6または7に記載の方法。
9.
前記改変がCFTRまたはSP−B遺伝子における変異を修復する、実施形態6〜8のいずれか1項に記載の方法。
10.
前記変異がΔF508、ΔI507、121ins2およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9に記載の方法。
11.
嚢胞性線維症(CF)または肺サーファクタントタンパク質B欠損症の研究用モデル系を作製する方法であって、実施形態6〜10のいずれかの方法に従って細胞を改変することを含む、上記方法。
12.
前記モデル系が細胞株または非ヒト動物を含む、実施形態11に記載の方法。
13.
対象においてCFまたはSP−B欠損症を治療する方法であって、実施形態9または10に記載の方法に従って、前記対象の一つまたは複数の細胞におけるCFTRまたはSP−B遺伝子を改変することを含む、上記方法。
14.
前記細胞がインビトロで改変され、前記細胞が前記対象に投与される、実施形態13に記載の方法。
15.
実施形態1に記載のタンパク質、実施形態2に記載の融合タンパク質、または実施形態3に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
操作されたZnフィンガータンパク質DNA結合ドメインを含むタンパク質であって、前記DNA結合ドメインが、N末端からC末端に向かってF1からF4、F1からF5またはF1からF6と配列された4、5または6つのZnフィンガー認識領域を含み、前記F1からF4、F1からF5またはF1からF6が表1の単一列に示される配列を含む、上記タンパク質。
(項目2)
項目1に記載のタンパク質および野生型のまたは操作された切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む融合タンパク質。
(項目3)
項目1または項目2に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目4)
項目1もしくは2に記載のタンパク質または項目3に記載のポリヌクレオチドを含む単離細胞。
(項目5)
前記細胞が胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、筋幹細胞、肺幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)および線維芽細胞からなる群から選択される、項目4に記載の細胞。
(項目6)
細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子を改変する方法であって、
一つまたは複数の項目2に記載の融合タンパク質を用いてCFTRを切断すること、を含む上記方法。
(項目7)
前記改変が、挿入、欠失、置換およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
CFTR遺伝子に外来性配列を導入することをさらに含む、項目6または項目7に記載の方法。
(項目9)
前記改変がCFTR遺伝子における変異を修復する、項目6〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記変異がΔF508、ΔI507およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目9に記載の方法。
(項目11)
嚢胞性線維症(CF)の研究用モデル系を作製する方法であって、項目6〜10のいずれかの方法に従って細胞を改変することを含む、上記方法。
(項目12)
前記モデル系が細胞株または非ヒト動物を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
対象においてCFを治療する方法であって、項目9または10に記載の方法に従って、前記対象の一つまたは複数の細胞におけるCFTR遺伝子を改変することを含む、上記方法。
(項目14)
前記細胞がインビトロで改変され、前記細胞が前記対象に投与される、項目13に記載の方法。
(項目15)
項目1に記載のタンパク質、項目2に記載の融合タンパク質、または項目3に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
【発明を実施するための形態】
【0036】
CFまたはSB−P欠損症の治療の評価に有用なモデルを治療および/または開発するための組成物および方法が、本明細書で開示される。具体的には、ヌクレアーゼを介した切断および組込みを利用して、CFTRまたはSFTPB遺伝子における既知の変異を導入または修復する。これらの組成物および方法を使用して、選択されたいかなる遺伝的背景においても特定のCFTRまたはSFTPB変異を修復または導入することができ、それにより、CFまたはSB−P欠損症の研究を可能とすることができる。
【0037】
従って、本明細書に記載の方法および組成物を使用して、CFTRまたはSFTPBにおける一連の変異の同質遺伝子的なパネルを作出することができ、それにより、これらの変異の対照試験を可能とし、ある変異と細胞機能障害の因果関係を調査し、その変異またはその変異の修復に関連する表現型を同定することができる。さらに、いずれのCFTR変異をもSFTPB変異をも、患者由来細胞(例えば患者由来誘導多能性幹細胞(iPSC))に導入することができ、それにより、患者細胞背景におけるある変異の影響を調査することができる。さらに、インフレーム改変によるCFTRまたはSFTPB変異の作出も、本明細書に記載の発明の一部であり、これらのタンパク質の機能ドメインのきめ細かい分析を可能とする。さらに、CFまたはSB−P2に関連するCFTRまたはSFTPB変異を、モデル動物(ラット、非ヒト霊長類等)における天然遺伝子内に作出して、CFまたはSB−P欠損症モデルを作製することができる。これらの動物は、一つまたは複数の挿入されたCFTRおよび/またはSFTPB変異を含有し得る。
【0038】
また、患者細胞における特定のCFTRまたはSFTPB欠損を変化させるための方法および組成物も本明細書に記載される。例えば、変異型のCFTRまたはSFTPB遺伝子は、変異対立遺伝子には作用するが野生型遺伝子配列には作用しない特定のヌクレアーゼを使用することで、ノックアウトすることができる。特定遺伝子のノックアウトは、切断後のNHEJの結果、または該遺伝子内の2つの遺伝子座で切断が起こり該遺伝子の大部分が欠失されたことによる結果、または切断後のオリゴヌクレオチドもしくはより大きなドナーDNAの標的組込みによる結果であり得る。さらに、患者細胞におけるCFTRまたはSFTPB関連遺伝子内の特定の変異を修復するための方法および組成物が、本明細書に記載される。次に、そのような修復された細胞は、CFまたはSF−B欠損症の治療のために、患者に再導入され得る。患者細胞は幹細胞であってもiPSCであってもよい。一般的な幹細胞は、本発明の方法を用いて作製され得、その後、いかなるCFまたはSF−B患者の治療にも使用され得る。
【0039】
一般
本明細書で開示される方法の実践、並びに本明細書で開示される組成物の調製および使用には、特に明記しない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学、生化学、クロマチンの構造および解析、計算化学、細胞培養、組換えDNA並びに関連分野における従来技術が使用される。これらの技術は以下の文献において十分に説明がなされている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second edition, Cold Spring HarborLaboratory Press, 1989 and Third edition, 2001; Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS INMOLECULAR BIOLOGY, JohnWiley & Sons, New York, 1987 and periodic updates; the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego; Wolffe, CHROMATINSTRUCTURE AND FUNCTION,Third edition, Academic Press, San Diego, 1998; METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, “Chromatin” (P.M. Wassarmanand A. P. Wolffe, eds.), Academic Press, San Diego, 1999; および METHODS IN MOLECULARBIOLOGY, Vol. 119, “ChromatinProtocols” (P.B. Becker, ed.) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0040】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、同義的に使用され、直鎖または環状高次構造の、且つ一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体を指す。本開示の目的上、これらの用語は、重合体の長さに関する限定と解釈されるべきではない。これらの用語には、天然ヌクレオチドの既知の類似体、並びに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドが包含され得る。一般的に、特定のヌクレオチドの類似体は同一の塩基対形成特性を有し、すなわち、Aの類似体はTと塩基対形成する。
【0041】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指すのに同義的に使用される。これらの用語は、一つまたは複数のアミノ酸が対応する天然のアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体であるアミノ酸重合体にも当てはまる。
【0042】
「結合」は、高分子間(例えば、タンパク質と核酸間)の配列特異的な、非共有結合性の相互作用を指す。全体としての相互作用が配列特異的でありさえすれば、結合性相互作用の構成要素の全てが配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格内のリン酸残基と接触)。そのような相互作用は、一般的には、10
−6M
−1以下の解離定数(K
d)によって特徴付けられる。「親和性」は結合の強さを指し、結合親和性の増加はK
dの低下と相関している。
【0043】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合することができるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合、該タンパク質は、それ自体に結合し得(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成)、および/または異なる1個のタンパク質の一つもしくは複数の分子もしくは複数のタンパク質に結合し得る。結合タンパク質は2つ以上の結合活性型を有し得る。例えば、Znフィンガータンパク質はDNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0044】
「ZnフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位によって構造が安定化する結合ドメイン内アミノ酸配列領域である一つまたは複数のZnフィンガーを介して、配列特異的にDNAと結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ZnフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、Znフィンガータンパク質またはZFPと省略される。
【0045】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、一つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、TALEの、その同起源の標的DNA配列への結合に関与している。1個の「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には33〜35アミノ酸長であり、天然のTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。
【0046】
Znフィンガー結合ドメインは、例えば、天然のZnフィンガータンパク質の認識へリックス領域の操作(一つまたは複数のアミノ酸の変化)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」することができる。同様に、例えばDNA結合に関与するアミノ酸(RVD領域)を操作することによって、所定のヌクレオチド配列に結合するようにTALEを「操作」することができる。従って、操作されたZnフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然タンパク質である。Znフィンガータンパク質およびTALEを操作するための方法の非限定例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、その設計/組成が主に合理的基準から導かれる、天然には発生しないタンパク質である。設計に関する合理的基準には、置換法則、並びに既存のZFPまたはTALEの設計および結合データの情報を保存しているデータベース内の情報を処理するための計算機化アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;同第6,453,242号;および同第6,534,261号;また、WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496を参照されたい。
【0047】
「選択された」Znフィンガータンパク質またはTALEは、その生成が主にファージディスプレイ、相互作用トラップ(interaction trap)またはハイブリッド選択等の経験的な方法からもたらされる、天然には存在しないタンパク質である。例えば、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197およびWO02/099084を参照されたい。
【0048】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報を交換するプロセスを指す。本開示の目的上、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復機構を介した細胞内の二本鎖切断の修復中に起こる交換の特殊な形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を受けた分子)の修復の鋳型とするために「ドナー」分子を使用する。このプロセスは、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらすので、「非交差遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として、様々な名称で知られている。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、そのような移動は、切断された標的およびドナーの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ修復、並びに/または標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング(synthesis-dependentstrand annealing)」、並びに/または関連プロセスを伴い得る。そのような特殊なHRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子配列の変化をもたらす。
【0049】
本開示の方法において、本明細書に記載の一つまたは複数の標的化ヌクレアーゼが標的配列(例えば、細胞性クロマチン)内の所定の部位に二本鎖切断を生成し、切断領域内のヌクレオチド配列に対し相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが細胞内に導入され得る。二本鎖切断の存在によって、ドナー配列の組込みが促進されることが示されている。ドナー配列は物理的に組み込まれてもよいし、あるいは、ドナーポリヌクレオチドは相同組換えにより切断を修復するためのテンプレートとして使用されて、その結果、ドナー内のヌクレオチド配列の全てまたは一部が細胞性クロマチンに導入される。そのようにして、細胞性クロマチン内の第一配列を変化させることができ、ある実施形態では、該配列をドナーポリヌクレオチド内に存在する配列に変換することができる。従って、「置換する」または「置換」という用語の使用は、あるヌクレオチド配列の別のヌクレオチド配列による置換(すなわち、情報的な意味での配列の置換)を表すものと理解することができ、必ずしも、物理的または化学的な、あるヌクレオチド配列の別のヌクレオチド配列による置換を必要とするわけではない。
【0050】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、さらなるZnフィンガーまたはTALENタンパク質対を、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために使用することができる。
【0051】
細胞性クロマチンにおける目的領域内の配列を標的組換えおよび/または置換および/または改変する方法のある実施形態では、外来性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって染色体配列は改変される。切断領域に相同な配列が存在する場合、細胞性クロマチン内の二本鎖切断の存在によって、そのような相同組換えが刺激される。
【0052】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、第一ヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的領域内のゲノム配列と相同であるが同一ではない配列を含有し得、それにより相同組換えを刺激して、非同一配列を目的領域内に挿入する。従って、ある実施形態では、目的領域内の配列に相同なドナー配列の一部は、置換されるゲノム配列に対して、約80〜99%(またはそれらの間のあらゆる整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、例えば、100個超の連続する塩基対から成るドナー配列とゲノム配列の間で1個のヌクレオチドしか異なっていないならば、ドナー配列とゲノム配列間の相同性は99%超である。ある場合では、ドナー配列の非相同性部分は、目的領域内に存在しない配列を含有し得、その結果、新しい配列が目的領域内に導入される。これらの場合、非相同配列は、一般的に、目的領域内の配列と相同または同一な、50〜1,000塩基対(またはそれらの間のあらゆる整数値)の、または1,000を超えるあらゆる数の塩基対の配列に挟まれている。他の実施形態では、ドナー配列は第一配列と非相同であり、非相同組換え機構によってゲノム内に挿入される。
【0053】
目的遺伝子の発現を乱すドナー配列を標的組込みすることにより、細胞内の一つまたは複数の標的配列を部分的または完全に不活性化するために、本明細書に記載の方法のいずれかを使用することができる。また、部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も提供される。
【0054】
さらに、本明細書に記載の標的組込みの方法を使用して、一つまたは複数の外来性配列を組み込むこともできる。外来性核酸配列は、例えば、一つまたは複数の遺伝子またはcDNA分子、またはあらゆる種類のコード配列もしくは非コード配列、および一つまたは複数の調節領域(例えば、プロモーター)を含み得る。さらに、外来性核酸配列は、一つまたは複数のRNA分子(例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、阻害的RNA(RNAis)、ミクロRNA(miRNA)等)を生成し得る。
【0055】
「切断」は、DNA分子の共有結合性骨格の切断を指す。種々の方法、例えば、限定はされないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解によって、切断を惹起することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は2つの別々な一本鎖切断事象の結果として発生し得る。DNA切断は平滑末端または付着末端のいずれかを生み出し得る。ある実施形態では、標的化された二本鎖DNA切断のために融合ポリペプチドが使用される。
【0056】
「切断ハーフドメイン」は、第二のポリペプチド(同一または異なる)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成する、ポリペプチド配列である。「第一および第二切断ハーフドメイン」;「+および−切断ハーフドメイン」並びに「右および左切断ハーフドメイン」という用語は、二量体化する切断ハーフドメインの対を指すために同義的に使用される。
【0057】
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)と強制的にヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインである。米国特許出願公開第2005/0064474号、同第20070218528号および同第2008/0131962号(これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる)も参照されたい。
【0058】
「配列」という用語は、該ヌクレオチド配列は、DNAまたはRNAであり得;直鎖、環状または分岐鎖であり得、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る、いかなる長さのヌクレオチド配列をも指す。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列はいかなる長さであってもよく、例えば2〜10,000ヌクレオチド長(またはそれらの間もしくはそれらを超えるあらゆる整数値)、好ましくは約100〜1,000ヌクレオチド長(またはそれらの間の整数)、より好ましくは約200〜500ヌクレオチド長であり得る。
【0059】
「クロマチン」は細胞ゲノムを含む核タンパク質構造体である。細胞クロマチンは、核酸(主にDNA)、およびタンパク質(例えばヒストンおよび非ヒストン性染色体タンパク質)を含む。真核細胞性クロマチンの大部分はヌクレオソームの形態で存在し、そこで、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4をそれぞれ2つ含む八量体と会合しているおよそ150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物に応じて様々な長さの)がヌクレオソームコアの間に伸びている。通常、ヒストンH1分子がリンカーDNAと会合する。本開示の目的上、「クロマチン」という用語は、原核生物および真核生物両方の、全種類の細胞性核タンパク質を包含するよう意図されている。細胞クロマチンには、染色体性クロマチンおよびエピソーム性クロマチンの両方が含まれる。
【0060】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムはしばしばその核型により特徴付けられ、核型は、細胞のゲノムを構成する全ての染色体の集合である。細胞のゲノムは一つまたは複数の染色体を含み得る。
【0061】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製核酸、核タンパク質複合体または他の構造体である。エピソームの例としては、プラスミドおよびあるウイルスゲノムが挙げられる。
【0062】
「標的部位」または「標的配列」は、十分な結合条件が存在する場合に結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列である。
【0063】
「外来性」分子は、細胞内に通常は存在しないが、一つまたは複数の遺伝学的手法、生化学的手法または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「細胞内の通常な存在」は、細胞の特定の発生段階および環境条件ごとに決定される。従って、例えば、筋肉の胚発生期にのみ存在する分子は、成体筋細胞に対する外来性分子である。同様に、熱ショックにより誘導された分子は、熱ショックされていない細胞に対する外来性分子である。外来性分子は、例えば、正常に機能しない内在性分子の正常機能バージョンまたは正常に機能する内在性分子の機能不全バージョンを含み得る。
【0064】
外来性分子は、特に、コンビナトリアルケミストリー工程により生成されるような小分子、またはタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポ蛋白、多糖類、上記分子のあらゆる修飾誘導体、もしくは上記分子のうちの一つまたは複数を含むあらゆる複合体等の高分子であり得る。核酸は、DNAおよびRNAを含み、一本鎖であっても二本鎖であってもよく;直鎖であっても、分岐鎖であっても環状であってもよく;いかなる長さであってもよい。核酸は、二本鎖を形成することができる核酸、並びに三本鎖形成核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質としては、、限定はされないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構築因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
【0065】
外来性分子は、内在性分子と同種の分子(例えば、外来性のタンパク質または核酸)であってもよい。例えば、外来性核酸には、細胞内に通常は存在しない、細胞内または染色体に導入された感染ウイルスゲノム、プラスミドまたはエピソームが含まれ得る。外来性分子を細胞に導入する方法は当業者に既知であり、例えば、限定はされないが、脂質介在性導入(すなわち、中性および陽イオン性の脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン介在性導入およびウイルスベクター介在性導入が挙げられる。外来性分子は内在性分子と同種の分子であり得るが、細胞が由来する種とは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列を、元々はマウスまたはハムスターに由来する細胞株に導入することができる。
【0066】
対照的に、「内在性」分子は、特定の環境条件下で特定の発生段階の特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然のエピソーム性核酸を含み得る。さらなる内在性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含み得る。
【0067】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が連結した、好ましくは共有結合的に連結した、分子である。サブユニット分子は、同一の化学的種類の分子であってもよいし、異なる化学的種類の分子であってもよい。融合分子の第一の種類の例としては、限定はされないが、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALEDNA結合ドメインと一つまたは複数の活性化ドメインの融合)および融合核酸(例えば、上記融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられる。融合分子の第二の種類の例としては、限定はされないが、三本鎖形成核酸とポリペプチドの融合、および副溝結合剤と核酸の融合が挙げられる。
【0068】
細胞における融合タンパク質の発現は、該融合タンパク質の細胞への送達された結果として、または該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが細胞へ送達され、該ポリヌクレオチドが転写され、その転写物が翻訳され、該融合タンパク質が生成された結果として起こり得る。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションも、細胞内のタンパク質発現に関与し得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞に送達する方法は、本開示の別の場所で示される。
【0069】
「遺伝子」には、本開示の目的上、遺伝子産物(下記参照)をコードするDNA領域、および遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域が含まれ、そのような制御配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているかどうかは問わない。従って、遺伝子には、必ずしも限定はされないが、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列(例えばリボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製開始点、マトリックス付着部位および遺伝子座調節領域が含まれる。
【0070】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは他のあらゆるタイプのRNA)またはmRNAの翻訳により生成されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスにより改変されたRNA、並びに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化(myristilation)、およびグリコシル化により改変されたタンパク質も含まれる。
【0071】
遺伝子発現の「調節」は、遺伝子の活性における変化を指す。発現の調節には、限定はされないが、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれ得る。ゲノム編集(例えば、切断、改変、不活性化、ランダム変異)を使用して発現を調節することができる。遺伝子不活性化は、本明細書に記載のZFPまたはTALENを含まない細胞と比較した場合の、遺伝子発現におけるいかなる低減をも指す。従って、遺伝子不活性化は部分的であっても完全であってもよい。
【0072】
「目的領域」は、細胞性クロマチンのあらゆる領域、例えば、外来性分子と結合することが望ましい、遺伝子または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接した非コード配列である。結合は、標的DNA切断および/または標的組換えのためであり得る。目的領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官のゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染ウイルスゲノム内に存在し得る。目的領域は、遺伝子のコード配列内、転写された非コード配列(例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等)内、またはコード配列の上流もしくは下流の非転写領域内に存在し得る。目的領域は、1個のヌクレオチド対ほどの小ささであってもよく、または最大2,000ヌクレオチド対の長さであってもよく、またはいかなる整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0073】
「真核」細胞には、限定はされないが、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が含まれる。
【0074】
「機能的連結」および「機能的に連結した」(または「作動可能に連結した」)という用語は、近位の2つ以上の構成要素(配列エレメント等)に対して同義的に使用され、ここで、これらの構成要素は、両構成要素が正常に機能し、且つこれらの構成要素のうち少なくとも1つがその他の構成要素のうちの少なくとも1つと接することで発現する機能を媒介することを可能とするように、配置されている。例として、プロモーター等の転写制御配列は、一つまたは複数の転写制御因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写レベルを調節している場合、コード配列に機能的に連結していることになる。転写制御配列は一般的には、コード配列とシスに機能的に連結しているが、それに直接隣接している必要は無い。例えば、エンハンサーはコード配列に機能的に連結した転写制御配列であるが、それらは近接していない。
【0075】
融合ポリペプチドに関して、「機能的に連結した」という用語は、各構成要素が、その他の構成要素に連結した状態において、そのように連結していない場合に発揮するであろう機能と同一の機能を発揮するという事実を意味し得る。例えば、ZFPまたはTALEDNA結合ドメインが活性化ドメインと融合している融合ポリペプチドに関して、仮に、その融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位と結合可能であり、一方活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御可能であるならば、ZFPまたはTALEDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは機能的に連結していることになる。ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが切断ドメインと融合している融合ポリペプチドの場合では、仮に、その融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALEDNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位と結合可能であり、一方切断ドメインが標的部位の近傍のDNAを切断可能であるならば、ZFPまたはTALEDNA結合ドメインおよび切断ドメインは機能的に連結していることになる。
【0076】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能性フラグメント」は、配列は完全長の該タンパク質、該ポリペプチドまたは該核酸と同一ではないが、完全長の該タンパク質、該ポリペプチドまたは該核酸と同一の機能を保持している、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能性フラグメントは、対応する天然分子と比較してより多くの、より少ない、または同じ数の残基を有する可能性があり、および/または一つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの置換を含有する可能性がある。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定する方法は、当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、または免疫沈降アッセイによって決定され得る。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。上記Ausubel et al.を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共に遺伝学的および生化学的な、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは相補性によって決定され得る。例えば、Fieldset al. (1989) Nature 340:245-246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO98/44350を参照されたい。
【0077】
「ベクター」は遺伝子配列を標的細胞に導入することが可能である。典型的に、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」は、目的遺伝子の発現を指示することができ、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる、いかなる核酸コンストラクトをも意味する。従って、前記用語には、クローニング、および発現ビヒクル、並びに組込みベクターも含まれる。
【0078】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、測定が容易な、好ましくは必ずしも通例のアッセイでなくとも測定が容易なタンパク質産物を生成する、いかなる配列をも指す。適切なレポーター遺伝子には、限定はされないが、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、有色タンパク質または蛍光タンパク質または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、並びに細胞成長および/または遺伝子増幅の増強を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素)が含まれる。エピトープ標識には、例えば、一つまたは複数コピーのFLAG、His、myc、Tap、HAまたは検出可能なあらゆるアミノ酸配列が含まれる。「発現標識」には、目的遺伝子の発現をモニターするための、所望の遺伝子配列に機能的に連結し得るレポーターをコードする配列が含まれる。
【0079】
ヌクレアーゼ
例えばCFのモデルを作製するための、一つまたは複数の変異型CFTR対立遺伝子および/または一つまたは複数のCFTR対立遺伝子の変異の修復に有用な組成物、特にヌクレアーゼが、本明細書に記載される。ある実施形態では、ヌクレアーゼは天然のものである。他の実施形態では、ヌクレアーゼは天然でないもの、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインに操作を受けたものである。例えば、天然のヌクレアーゼのDNA結合ドメインを改変して、選択された標的部位に結合することができる(例えば、その同起源の結合部位と異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは異種性のDNA結合ドメインおよび切断ドメインを含む(例えば、異種切断ドメインを有する、Znフィンガーヌクレアーゼ;TAL作動因子ヌクレアーゼ;メガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)。
【0080】
A. DNA結合ドメイン
ある実施形態では、ヌクレアーゼはメガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然のメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の切断部位を認識し、一般的には4つのファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CystボックスファミリーおよびHNHファミリー。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが含まれる。それらの認識配列は既知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997) NucleicAcidsRes.25:3379‐3388; Dujonet al. (1989) Gene 82:115‐118; Perler et al.(1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125‐1127; Jasin(1996) Trends Genet. 12:224‐228; Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163‐180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345‐353およびニュー・イングランド・バイオラボ社(NewEngland Biolabs)のカタログも参照されたい。
【0081】
ある実施形態では、ヌクレアーゼは操作された(天然でない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含む。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列は既知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997) Nucleic Acids Res.25:3379‐3388; Dujonet al. (1989) Gene 82:115‐118; Perler et al.(1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125‐1127; Jasin(1996) Trends Genet. 12:224‐228; Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol.263:163‐180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol.280:345‐353およびニュー・イングランド・バイオラボ社のカタログも参照されたい。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位と結合するように操作することが可能である。例えば、Chevalier et al.(2002) Molec. Cell10:895-905; Epinat et al.(2003) Nucleic Acids Res.31:2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659; Paques et al. (2007) CurrentGene Therapy 7:49-66;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインを、全体としてのヌクレアーゼとの関連において(すなわち、ヌクレアーゼが同起源の切断ドメインを含むように)改変することができ、あるいは異種切断ドメインと融合することができる。
【0082】
他の実施形態では、DNA結合ドメインは、天然のまたは操作された(天然でない)TAL作動因子DNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許出願公開第20110301073号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。植物病原菌であるザントモナス属は、重要な作物において多くの疾患を引き起こすことが知られている。ザントモナス属の病原性は、25種を超える様々な作動因子タンパク質を植物細胞に注入する、保存されたIII型分泌(T3S)装置によるものである。これらの注入されたタンパク質の中には、植物の転写活性化因子を模倣し、植物のトランスクリプトームを操作する転写活性化物質様作動因子(transcription activator-like effector:TALE)がある(Kay et al (2007)Science 318:648-651参照)。これらのタンパク質はDNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も特徴がはっきりしているTALEの一つは、ピーマン・シシトウ斑点細菌病菌(Xanthomonascampestgrispv.Vesicatoria)由来のAvrBs3である(Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136およびWO2010079430参照)。TALEは縦列反復の集中ドメイン(centralizeddomain)を含有し、各反復はおよそ34個のアミノ酸を含有し、これらのアミノ酸は、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。さらに、TALEは、核局在配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(総括に関してSchornackS, et al (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照)。さらに、植物病原細菌である青枯病菌(Ralstoniasolanacearum)において、操作されたbrg11およびhpx17の2つの遺伝子が、ラルストニア・ソラナケアルムビオヴァル1(R.solanacearumbiovar 1)株GMI1000および次亜種4株RS1000におけるザントモナス属のAvrBs3ファミリーと類似していることが発見された(Heueret al (2007) Appl and Envir Micro 73(13): 4379-4384参照)。これらの遺伝子はヌクレオチド配列において98.9%互いに同一であるが、hpx17の反復ドメインにける1,575bpの欠失によって異なっている。しかし、両方の遺伝子産物は、ザントモナス属のAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性しか有さない。
【0083】
従って、いくつかの実施形態では、標的部位であるCFTR遺伝子に結合するDNA結合ドメインは、植物病原体ザントモナス属(Boch et al, (2009) Science 326: 1509-1512 および Moscou and Bogdanove,(2009) Science326: 1501参照)およびラルストニア属(Heueret al (2007) Applied andEnvironmental Microbiology 73(13): 4379-4384参照)由来のものに類似したTAL作動因子を操作して得られたドメインである;米国特許出願公開第20110301073号および同第20110145940号。
【0084】
ある実施形態では、標的部位であるCFTR遺伝子に結合するDNA結合ドメインは、Znフィンガータンパク質を含む。Znフィンガータンパク質は、最適な標的部位に結合するよう操作されているという点で、天然でないことが好ましい。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol.20:135-141; Pabo et al.(2001) Ann. Rev. Biochem.70:313-340; Isalan et al. (2001) NatureBiotechnol.19:656-660; Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol.12:632-637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol.10:411-416;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;同第2005/0267061号(全て、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0085】
操作されたZnフィンガー結合ドメインは、天然のZnフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、限定はされないが、合理的設計および各種の選択が含まれる。合理的設計は、例えば、三つ組(または四つ組)ヌクレオチド配列および個々のZnフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、そのデータベースでは、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列が、特定の三つ組または四つ組配列と結合するZnフィンガーの一つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)
【0086】
例示的な選択方法(例えばファージディスプレイおよびツーハイブリッド法)は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;並びにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に記載されている。さらに、Znフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
【0087】
さらに、これらおよび他の参考文献に記載されているように、DNAドメイン(例えば、多指型(multi-fingered)Znフィンガータンパク質)は、あらゆる適切なリンカー配列(例えば、5以上のアミノ酸長のリンカー)を用いて、連結することができる。6以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列に関する、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のZnフィンガータンパク質は、該タンパク質の個々のZnフィンガー間に、あらゆる組み合わせの適切なリンカーを含み得る。さらに、Znフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
【0088】
標的部位;DNA結合ドメインの選択、並びに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築の方法は当業者に既知であり、米国特許第6,140,0815号;同第789,538号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0089】
さらに、これらおよび他の参考文献に記載されているように、Znフィンガードメインおよび/または多指型Znフィンガータンパク質は、あらゆる適切なリンカー配列(例えば、5以上のアミノ酸長のリンカー)を用いて、連結することができる。6以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列に関する、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、該タンパク質の個々のZnフィンガー間に、あらゆる組み合わせの適切なリンカーを含み得る。
【0090】
B. 切断ドメイン
何らかの適切な切断ドメインをDNA結合ドメインに機能的に連結して、ヌクレアーゼを形成させることができる。例えば、ZFPDNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合することで、ZFN(その目的の核酸標的をその操作された(ZFP)DNA結合ドメインを介して認識し、ヌクレアーゼ活性によってZFP結合部位付近でDNA切断を引き起こすことができる機能的実体)が生成された。例えば、Kim et al. (1996) Proc Nat’l Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照されたい。より最近では、種々の生物におけるゲノム改変にZFNが使用された。例えば、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開番号WO07/014275を参照されたい。
【0091】
上記で言及したように、切断ドメインはDNA結合ドメインに対して異種性であってもよい(例えばZnフィンガーDNA結合ドメインとヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはTALENDNA結合ドメインと切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメイン)。異種切断ドメインは、いかなるエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼからも得ることができる。切断ドメインを得ることができる例示的なエンドヌクレアーゼとしては、限定はされないが、制限酵素およびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、2002年〜2003年カタログ、ニュー・イングランド・バイオラボ社(マサチューセッツ州ベバリー);およびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照されたい。DNAを切断するさらなる酵素が知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;大豆ヌクレアーゼ;膵臓デオキシリボヌクレアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnet al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照)。これらの酵素(またはその機能性フラグメント)の1つまたは複数を、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
【0092】
同様に、切断ハーフドメインは、上記のいかなるヌクレアーゼまたはその部分にも由来し得、切断活性に二量体化を必要とする。一般的に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、切断には2つの融合タンパク質が必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質を使用してもよい。2つの切断ハーフドメインが同一のエンドヌクレアーゼ(またはその機能性フラグメント)に由来していてもよいし、あるいは各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能性フラグメント)に由来していてもよい。さらに、2つの融合タンパク質の標的部位は、その2つの融合タンパク質のそのそれぞれの標的部位への結合が、切断ハーフドメインを、切断ハーフドメインが(例えば二量体化により)機能的切断ドメインを形成するのを可能にする互いに対する空間定位に、配置するように、互いに対して配置されることが好ましい。従って、ある実施形態では、標的部位の近端は5〜8個のヌクレオチドまたは15〜18個のヌクレオチドで隔てられている。しかし、いかなる整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対も、2つの標的部位の間に介在することができる(例えば、2〜50個のヌクレオチド対またはそれ以上)。一般的に、切断の部位は標的部位の間に存在する。
【0093】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在しており、DNAに(認識部位で)配列特異的に結合し、結合部位で、またはその近傍でDNAを切断することが可能である。ある制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド離れた位置で、およびもう一方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチド離れた位置で、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;並びにLi et al.(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279; Liet al. (1993) Proc. Natl. Acad.Sci. USA 90:2764-2768; Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994b) J. Biol.Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。従って、一実施形態では、融合タンパク質は、操作されていてもいなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素に由来する切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)、および一つまたは複数のZnフィンガー結合ドメインを含む。
【0094】
切断ドメインと結合ドメインが分離可能である例示的なIIS型制限酵素はFokIである。この特殊な酵素は二量体であるときに活性がある。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10,570-10,575。従って、本開示の目的上、開示の融合タンパク質に使用されるFokI酵素の部分は、切断ハーフドメインであると考えられる。従って、Znフィンガー−FokI融合体を用いた標的化された二本鎖切断および/または標的化された細胞配列置換のために、FokI切断ハーフドメインをそれぞれ含む2つの融合タンパク質を使用して、酵素として活性がある切断ドメインを再構築することができる。あるいは、DNA結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子も使用することができる。
【0095】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持する、または多量体を形成(例えば二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持する、タンパク質のいかなる部分であってもよい。
【0096】
例示的なIIS型制限酵素は、国際公開番号WO07/014275(その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含有しており、これらは本開示によって企図されている。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res.31:418-420を参照されたい。
【0097】
ある実施形態では、切断ドメインは、例えば、米国特許出願公開第20050064474号;同第20060188987号および同第20080131962号(これら全ての開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるような、ホモ二量体化を最小限にする、またはそれを阻止する、一つまたは複数の操作された切断ハーフドメイン(二量体形成ドメイン変異体とも称される)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位のアミノ酸残基は全て、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。
【0098】
強制的なヘテロ二量体を形成する、FokIの操作された切断ハーフドメインの例には、第一切断ハーフドメインがFokIの490位および538位にアミノ酸残基変異を含み、第二切断ハーフドメインが486位および499位にアミノ酸残基変異を含む一対が含まれる。
【0099】
従って、一実施形態では、490位の変異はGlu(E)をLys(K)に置換し;538位の変異はIso(I)をLys(K)に置換し;486位の変異はGln(Q)をGlu(E)に置換し;499位の変異はIso(I)をLys(K)に置換する。具体的には、本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは、一方の切断ハーフドメインの490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と命名された操作された切断ハーフドメインを作製することによって、並びにもう一方の切断ハーフドメインの486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と命名された操作された切断ハーフドメインを作製することによって、作製された。本明細書に記載される操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小限にされた、またはそれが取り除かれた、強制的なヘテロ二量体変異体である。例えば、米国特許出願公開第2008/0131962号(この開示はあらゆる目的でその全体が参照によって組み込まれる)を参照されたい。
【0100】
ある実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、486位、499位および496位(野生型FokIに対する番号付け)に変異を含み、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基に、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基に、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基に置換する変異を含む(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490位、538位および537位(野生型FokIに対する番号付け)に変異を含み、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基に、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する変異を含む(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490位および537位(野生型FokIに対する番号付け)に変異を含み、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する変異を含む(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)。(米国特許出願公開第20110201055号参照)。
【0101】
本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは、あらゆる適切な方法を用いて、例えば、米国特許出願公開第20050064474号および同第20080131962号に記載される野生型切断ハーフドメイン(FokI)の部位特異的変異誘発によって、作製することができる。
【0102】
あるいは、いわゆる「開裂酵素(split-enzyme)」技術(例えば米国特許出願公開第20090068164号を参照)を用いて、ヌクレアーゼを核酸標的部位でインビボ構築することができる。そのような開裂酵素の構成要素は、別々の発現構築体上に発現され得、または、一方のオープンリーディングフレームに連結され得、そこで個々の構成要素は例えば自己切断型2AペプチドもしくはIRES配列によって分離される。構成要素は、個々のZnフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0103】
ヌクレアーゼは、例えば、WO2009/042163およびWO20090068164に記載の酵母染色体系で、使用前に活性についてスクリーニングされ得る。ヌクレアーゼ発現構築体は、当該技術分野において既知の方法を用いて容易に設計することができる。例えば、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開WO07/014275を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター(例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコース存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーター)の制御下にあり得る。
【0104】
標的部位
上記で詳細に説明したように、DNAドメインは、CFTR遺伝子座またはSFTPB遺伝子座におけるあらゆる最適な配列に結合するように、操作することができる。操作されたDNA結合ドメインは、天然のDNA結合ドメインと比較して、新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、限定はされないが、合理的設計および各種の選択が含まれる。合理的設計は、例えば、三つ組(または四つ組)ヌクレオチド配列および個々の(例えばZnフィンガーの)アミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、そのデータベースでは、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列が、特定の三つ組または四つ組配列と結合するDNA結合領域の一つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、共有に係る米国特許第6,453,242号および第6,534,261号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。TAL作動因子ドメインの合理的設計を行うこともできる。例えば、米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。
【0105】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッド法を含む、DNA結合ドメインに適用可能な例示的な選択法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;並びにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に記載されている。
【0106】
標的部位;ヌクレアーゼの選択、並びに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築の方法は当業者に既知であり、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号(その全体が参照によって組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0107】
さらに、これらおよび他の参考文献に記載されているように、DNA結合ドメイン(例えば、多指型(multi-fingered)Znフィンガータンパク質)は、あらゆる適切なリンカー配列(例えば、5以上のアミノ酸のリンカー)を用いて、連結することができる。6以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列に関しては、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、該タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に、あらゆる組み合わせの適切なリンカーを含み得る。米国仮特許公開(U.S.Provisional Patent Publication)第20110287512号も参照されたい。
【0108】
ドナー
上記で言及したように、CFTRまたはSFTPB遺伝子の改変は、例えば、変異遺伝子の修復または野生型遺伝子の変異のための、外来性配列(「ドナー配列」または「ドナー」とも呼ばれる)の挿入を含み得る。ドナー配列が典型的には置換するゲノム配列と同一でないことは、容易に明らかである。例えば、ドナーポリヌクレオチドの配列は、染色体配列との相同性が十分に存在する限りは、ゲノム配列に対して、一つまたは複数の一塩基の変化、挿入、欠失、逆位または再配列を含有し得る。あるいは、ドナー配列は、2つの相同領域に挟まれた非相同配列を含有し得る。さらに、ドナー配列は、細胞性クロマチン内の目的領域と相同でない配列を含有するベクター分子を含み得る。ドナー分子は、いくつかの非連続的な、細胞性クロマチンに相同な領域を含有し得る。例えば、目的領域内に通常は存在しない配列を標的挿入するために、前記配列を、ドナー核酸分子内に含ませ、目的領域内の配列に相同な領域で挟ませていてもよい。
【0109】
ドナーポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよく、一本鎖でも二本鎖でもよく、細胞に直鎖形態で導入されても環状形態で導入されてもよい。例えば、米国特許第7,888,121号および米国特許出願公開第2009/0263900号;同第20100047805号および同第20110207221号(参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。直鎖形態で導入する場合、当業者に既知の方法で、ドナー配列の末端を(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護してもよい。例えば、一つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖分子の3’末端に付加し、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドを一方または両方の末端に連結する。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4959-4963; Nehls et al. (1996) Science 272:886-889を参照されたい。外来性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法としては、限定はされないが、末端アミノ基の付加および修飾されたヌクレオチド間結合の使用(例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、およびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基等)が挙げられる。
【0110】
ポリヌクレオチドを、さらなる配列(例えば、複製開始点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子等)を有するベクター分子の一部として細胞に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドを、裸の核酸として、リポソームまたはポロキサマー等の媒介物と複合体化した核酸として、導入することができ、あるいは、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスおよびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0111】
通常、組込み部位における内在性プロモーター、すなわちCFTR遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって発現が駆動されるように、ドナーは挿入される。しかしながら、ドナーがプロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば構成的プロモーターまたは誘導性または組織特異的プロモーターを含んでいてもよいことは明らかであろう。
【0112】
さらに、発現には必要ではないが、外来性配列は転写制御配列または翻訳制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列)であってもよい。
【0113】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、並びに本明細書に記載のタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含んで成る組成物は、いかなる適切な手段によっても、インビボまたはエキソビボで送達することができる。
【0114】
本明細書に記載されるヌクレアーゼ送達法は、例えば、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号(これら全ての開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0115】
本明細書に記載のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築体は、ZnフィンガーまたはTALENタンパク質のうちの一つまたは複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することができる。いかなるベクター系をも使用することができ、例えば、限定はされないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター等が挙げられる。米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)も参照されたい。さらに、これらのいずれのベクターも治療に必要な配列のうちの一つまたは複数を含み得ることは明らかである。従って、一つまたは複数のヌクレアーゼおよびドナー構築体が細胞に導入される場合、これらのヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同一のベクター上に保有されていてもよいし、異なるベクター上に保有されていてもよい。複数のベクターを使用する場合、各ベクターは、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築体をコードする配列を含んでいてもよい。
【0116】
従来のウイルスベースおよび非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、ヌクレアーゼおよびドナー構築体をコードする核酸を、細胞(例えば、哺乳類細胞)および標的組織に導入することができる。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマー等の送達ビヒクルと複合体化した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、細胞へ送達された後にエピソーム性ゲノムまたは組み込まれたゲノムを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子治療法の総括については、Anderson Science256:808-813 (1992); Nabel&Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani &Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller,Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer&Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al.,Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds.) (1995);およびYuet al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照されたい。
【0117】
ウイルスを用いずに核酸を送達する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、裸DNA、人工ウイルス粒子、および薬剤によるDNA取り込み増強が挙げられる。例えば、Sonitron2000システム(リッチ・マー社(Rich-Mar))を用いるソノポレーション(sonoporation)も、核酸の送達に使用することができる。
【0118】
さらなる例示的な核酸送達系には、アマクサバイオシステムズ社(AmaxaBiosystems)(ドイツ、ケルン)、マックスサイト社(Maxcyte, Inc.)(メリーランド州ロックヴィル)、BTXモレキュラー・デリバリー・システムズ社(BTXMolecular Delivery Systems)(マサチューセッツ州ホリストン)およびコペルニクス・セラピューティクス社(CopernicusTherapeutics Inc)によって供給されるものが含まれる(例えばUS6008336参照)。リポフェクションについては、例えば、米国特許第5,049,386号;同第4,946,787号;および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適切な陽イオン性および中性脂質には、Felgner、WO91/17424、WO91/16024に記載のものが含まれる。
【0119】
免疫脂質複合体等の標的化されたリポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer GeneTher. 2:291-297 (1995); Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remyet al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722(1995); Ahmad etal., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照)。
【0120】
さらなる送達方法として、EnGeneIC送達ビヒクル(EDV)中への送達される核酸の封入の使用が挙げられる。これらのEDVは、一方の抗体腕が標的組織に対する特異性を有し、もう一方の腕がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織へ特異的に送達される。抗体はEDVを標的細胞表面へと運び、その後EDVはエンドサイトーシスによって細胞内に移入される。細胞内に入ると、中身が放出される(MacDiarmid et al (2009) Nature Biotechnology 27(7):643参照)。
【0121】
RNAウイルスまたはDNAウイルスに基づく系を、操作されたZFPをコードする核酸の送達に使用する際には、体内の特定の細胞に対してウイルスを標的化し、ウイルスの積荷(payload)を核へ輸送するための高度に進化したプロセスが利用される。ウイルスベクターを直接患者に投与してもよいし(インビボ)、あるいはウイルスベクターを使用して細胞をインビトロで処理し、改変された細胞を患者に投与してもよい(エキソビボ)。従来のウイルスに基づくZFP送達系としては、限定はされないが、遺伝子導入用の、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよび単純疱疹ウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノムへの組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入法を用いることで可能となり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い導入効率が認められている。
【0122】
外来性エンベロープタンパク質を組込み、標的細胞の潜在的標的集団を増殖させることによって、レトロウイルスの指向性を変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞への形質導入または感染が可能なレトロウイルスベクターであり、典型的に、高いウイルス価を生み出す。レトロウイルス性遺伝子導入系の選択は、標的組織によって異なる。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列に対しパッケージング容量を有するシス作動性末端反復配列から成る。最少のシス作動性LTRであっても、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、それが治療的遺伝子を標的細胞に組み込むために使用されて、永続的な導入遺伝子発現をもたらす。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組み合わせに基づくレトロウイルスベクターが挙げられる(例えば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731-2739 (1992); Johann etal., J. Virol. 66:1635-1640 (1992); Sommerfelt et al., Virol. 176:58-59 (1990);Wilson et al., J. Virol.63:2374-2378(1989); Miller et al., J. Virol. 65:2220-2224 (1991);PCT/US94/05700参照)。
【0123】
一過性発現が好ましい適用においては、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率での導入が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高い力価およいび高い発現レベルが得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に生産することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ生成における、並びにインビボおよびエキソビボ遺伝子治療法のための、標的核酸による細胞の形質導入に使用される(例えば、West et al., Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin,Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)参照。組換えAAVベクターの構築は、いくつかの刊行物、例えば米国特許第5,173,414号;Tratschinet al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985); Tratschin, et al., Mol. Cell.Biol. 4:2072-2081 (1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);およびSamulskiet al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989)に記載されている。
【0124】
現在、少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが臨床試験における遺伝子導入に利用可能であり、形質導入媒介物を生成するために、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの補完を含むアプローチが利用される。
【0125】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood 85:3048-305 (1995); Kohn et al., Nat. Med. 1:1017-102(1995); Malech et al., PNAS 94:22 12133-12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験に使用された最初の治療的ベクターであった(Blaeseetal., Science 270:475-480 (1995))。MFG−Sパッケージベクター(MFG-S packaged vector)に関しては、50%以上の導入効率が認められている(Ellem et al., ImmunolImmunother. 44(1):10-20 (1997); Dranoff et al., Hum. Gene Ther. 1:111-2 (1997)。
【0126】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥および非病原性のパルボウイルスアデノ随伴II型ウイルスに基づく別の有望な遺伝子送達系である。全てのベクターは導入遺伝子発現カセットと隣接するAAV145bp逆位末端配列のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組込みによる効率的な遺伝子導入および安定な導入遺伝子送達が、このベクター系の重要な特徴である(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702-3 (1998), Kearns et al., GeneTher. 9:748-55 (1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、およびAAVrh10を含む他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。さらに、AAVベクターITRおよびAAVカプシドタンパク質が、異なるAAV血清型、またはカプシドタンパク質が2つ以上のAAV血清型から作出されるキメラAAV粒子由来である、偽型AAVベクターを使用することができる。
【0127】
複製欠損性組換え型アデノウイルスベクター(Ad)は、高い力価で作製することができ、いくつかの異なる細胞型に容易に感染する。大部分のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し;その後、複製欠損性ベクターがトランスに欠失した遺伝子機能を補うヒト293細胞内で増殖するように、操作される。Adベクターは複数種類の組織、例えば、肝臓、腎臓および筋肉に存在するような非分裂性分化細胞に、インビボで形質導入を生じさせることができる。従来のAdベクターは運搬能が大きい。臨床試験におけるAdベクターの使用例には、抗腫瘍性免疫化のための筋肉内注射によるポリヌクレオチド処置が含まれる(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083-9 (1998))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Roseneckeret al., Infection 24:1 5-10 (1996); Sterman et al., Hum. Gene Ther. 9:71083-1089 (1998); Welsh et al., Hum. Gene Ther. 2:205-18 (1995); Alvarez etal., Hum. Gene Ther. 5:597-613 (1997); Topf et al., Gene Ther. 5:507-513(1998); Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083-1089 (1998)が含まれる。
【0128】
宿主細胞に感染可能なウイルス粒子を形成するために、パッケージング細胞が使用される。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージングする産生細胞株によって作出される。前記ベクターは、典型的に、パッケージングおよび後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列を含有し(妥当な場合)、他のウイルス配列は発現されるタンパク質をコードする発現カセットに置換されている。失われたウイルス機能はパッケージング細胞株によってトランスに与えられる。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、典型的には、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組込みに必要とされる、AAVゲノム由来の逆位末端配列(ITR)配列を有するのみである。その他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列は欠如しているヘルパープラスミドを含有するウイルスDNAは、細胞株内でパッケージングされる。細胞株はヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドからの、AAVベクターの複製およびAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如により、有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの混入は減らすことができる(例えば、AAVよりも、アデノウイルスの方がより感受性がある加熱処理)。
【0129】
多くの遺伝子治療への適用において、遺伝子治療ベクターは特定の組織型に高度の特異性でもって送達されることが望ましい。従って、リガンドをウイルスコートタンパク質との融合タンパク質として、ウイルスの外表面上に発現することにより所与の細胞型に対する特異性を有するように、ウイルスベクターは改変され得る。目的の細胞型の表面に存在することが知られている受容体に対し親和性を有するリガンドが選択される。例えば、Han et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747-9751 (1995)では、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変できること、およびその組換えウイルスがヒト上皮増殖因子受容体を発現するあるヒト乳がん細胞に感染することが報告された。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスがその細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス−標的細胞対に拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的にいかなる選択された細胞受容体に対する特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)をも提示するように、操作することができる。上記は主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを好む、特殊な取り込み配列を含有するように、操作することができる。
【0130】
個々の患者に投与することによって、典型的には、下記のような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、真皮下、または頭蓋内の点滴)または局所投与によって、遺伝子治療ベクターをインビボで送達することができる。あるいは、ベクターを、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能給血者の造血幹細胞等の細胞にエキソビボで送達し、その後、通常は組み込まれたベクターを有する細胞の選択の後に、その細胞を患者に再移植することができる。
【0131】
インビボでの細胞の形質導入のために、ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築体を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することもできる。投与は、分子を血液または組織細胞に最大限接触するように導入するために通常用いられる経路のいずれかによるものであり、例えば、限定はされないが、注射、点滴、局所投与およびエレクトロポレーションが挙げられる。そのような核酸を投与する適切な方法は、利用可能であり、当業者に周知である。特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の一経路が、別の経路よりも、より即時的で且つより効率的な応答をしばしば提供し得る。特に、肺組織への送達では、気管支動脈を用いてベクターの導入を行うことができる。取り込みを増加させるために、気管支送達を、流れ停止法と併せて、または内皮バリアー撹乱物質(例えばVEGFまたはヒスタミン)の使用と併せて、起こすことができる。
【0132】
本明細書に記載のポリヌクレオチドの導入に適切なベクターには、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)が含まれる。例えば、Ory et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382-11388;Dull et al. (1998) J. Virol.72:8463-8471; Zuffery et al. (1998) J.Virol.72:9873-9880; Follenzi et al. (2000) Nature Genetics 25:217-222;米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。
【0133】
薬剤的に許容できる担体は、部分的には、投与されている特定の組成物によって、並びに組成物を投与するのに用いられている特定の方法によって、決定される。従って、下記のような、利用できる適切な医薬組成物製剤は種々様々である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989参照)。
【0134】
ヌクレアーゼをコードする配列およびドナー構築体が、同じまたは異なる系を用いて送達できることは明らかである。例えば、ドナーポリヌクレオチドはプラスミドによって運搬され得、一方、一つまたは複数のヌクレアーゼはAAVベクターによって運搬され得る。さらに、同じまたは異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射によって、これらの異なるベクターを投与することができる。同時にまたはいかなる順序でも、これらのベクターを投与することができる。
【0135】
エキソビボ投与およびインビボ投与両用の製剤には、液状懸濁剤または乳化液剤が含まれる。活性成分はしばしば、薬剤的に許容可能で且つ活性成分と混合可能な賦形剤と、混合される。適切な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、本組成物は、少量の補助剤、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤または本医薬組成物の有効性を増強する他の試薬を含有していてもよい。
【0136】
適用
本発明は、CF疾患および/またはSB−P欠損症等の肺障害における変異を導入または修復するために使用することができる方法および組成物を記載している。具体的には、CFの発症において病原性であることが示されているCFTR遺伝子における特定の変異には、ΔF508およびΔI507が含まれる。SFTPBにおける変異は、SB−P欠損症を引き起こす最も一般的な変異であり、121ins2(121C>GAA)が含まれる。従って、本発明の方法および組成物は、患者由来幹細胞の修復によって、またはヌクレアーゼおよびドナー分子のインビボ投与によって、CFTRおよび/またはSB−Pにおける変異を修復するのに有用である。また、CFTRおよびSFTPB変異に関連した細胞内の異常を研究するための、並びにその生物全体におけるこれらの変異の結果を研究するための、細胞および遺伝子導入動物モデルを開発する方法も有用であり、本明細書に記載される。従って、特定のCFTRまたはSFTPB変異(例えばCFTRにおけるΔF508変異)をノックアウト、ノックインおよび/または修復するよう設計された手段を使用して、根底にある生物学の理解を促進することに、および特異的な薬物療法の開発に有用な細胞モデルおよび動物モデルを作製することができる。さらに、特定のCFTRまたはSFTPB変異に標的化された特異的ヌクレアーゼを使用して、その変異をノックアウトまたは修復することができる。CFTRまたはSFTPB変異に特異的な治療薬の研究のための細胞株を開発するために、ヌクレアーゼを使用して、CFTRまたはSFTPB変異に特異的な標識の挿入を引き起こすこともできる。
【0137】
さらに、本明細書に記載の細胞、細胞株および遺伝子導入動物は薬剤開発に有用である。そのような細胞および動物は、特定の変異(例えばCFTRΔF508)またはその修復に関連する表現型を明らかにすることができ、問題の変異と特異的に相互作用する、または罹患動物における疾患の治療に有用である薬剤をスクリーニングために使用することができる。治療上、iPSCは、CFまたはSB−P欠損症に関連する既知の遺伝子変異を持つ患者からエキソビボで得ることができ、その変異は、ZFNまたはTALENを介した遺伝子修復を用いて修復することができる。同様に、肺、皮膚または他の幹細胞を患者から単離し、その後、本発明の方法および組成物を用いてCFTRまたはSFTPB遺伝子座を修復することができる。その後、修復された幹細胞を使用して、患者を治療することができる。さらに、目的のCFTRまたはSFTPB変異を含有する患者試料から細胞株を作製することができる。これらの細胞株により、患者特異的iPS細胞株における特定の変異の影響を研究するための手段が提供され得る。例えば、一方の株では目的の変異が修復されているが、その対応する株では修復されていない、比較細胞株(parallel cell line)を作製することができる。これにより、疾患の原因となる変異によってのみ異なる細胞株が作製される。得られた、内在性遺伝子座にCFTRまたはSFTPBの異なる対立形質を有する同質遺伝子的なiPSCパネルは、疾患特異的変異の修復、薬物スクリーニングおよび創薬、並びに疾患メカニズムの研究のための遺伝的手段を提供する。
【0138】
修復された変異および導入された変異の両方を有する患者特異的iPS細胞株の有効性並びにそれらの同質遺伝子的な対照も、多種多様な医学的応用において有用であり、例えば、限定はされないが、これらの変異が疾患を引き起こすメカニズムの研究、および「実験室的な治療」の、これらの変異により引き起こされる疾患を実際に発症した患者の治療への転化、が含まれる。さらに、これらの細胞株は、高度に特異的な挙動を示す化合物を同定するための、治療化合物候補のスクリーニングに有用であり得る。
【0139】
肺幹/前駆細胞の細胞移植は、CFまたはSB−P欠損症等の種々の遺伝性単一遺伝子肺疾患に対する有望な治療方法の一例である。修復されたCFまたはSB−PiPS細胞は、自己肺細胞の移植のための、または失活した肺の足場をエキソビボで播種して自己の肺を作り出すための(例えば、Ottet al. (2010) Nat Med 16:927-933参照)、種々の肺幹/前駆細胞にインビトロで分化可能な患者特異的細胞の有望な供給源である(例えば、Chenet al. (2009) Proc Am Thorac Soc 6:602-606; Kajstura et al. (2011) N Engl J Med364:1795-1806参照 。さらに、損傷した肺を有するマウスにインビボで与えられた場合に、細気管支、肺胞(aveoli)、および肺血管を形成することができるヒト肺幹細胞を同定したという報告がある(Kajsturaet al、同節参照)。従って、一つの可能性として、肺または他の型の幹細胞が、患者から単離され、ZFNまたはTALENによってエキソビボで改変され、その後前記患者に再導入されることにより、疾患を治療することが可能であり得る。従って、本明細書に記載の方法および組成物を使用することで、CFまたはSB−P欠損性疾患の原因となる変異に関して修復された(遺伝子型および表現型の両方において)、移植に用いる細胞(およびそれらの子孫)を作製することができる。これらの移植細胞は受容者において免疫応答を誘発しないであろう。罹患患者由来の皮膚または血液細胞を使用することで、自己由来の誘導多能性幹(iPS)細胞は得られる。次に、部位特異的相同組換え修復を利用することで、疾患の原因となる変異は内在性の染色体DNA配列において修復されるであろう。最後に、定方向分化アプローチを使用することで、移植を目的とした修復されたiPS細胞から、関連する肺幹/前駆細胞の高度に純化された集団が得られるだろう。
【0140】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがZnフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALENを含む、本開示の例示的な実施形態に関する。例示のみが目的であり、他のヌクレアーゼ、例えば操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または天然のもしくは操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)の融合物を使用することができることは理解されよう。
【実施例】
【0141】
実施例1:材料と方法
A. 嚢胞性線維症初代線維芽細胞
ΔF508変異に関してホモ接合性と報告された患者(17歳男性)由来のCF初代線維芽細胞株GM04320を入手した(コリエルレポジトリー(Coriell Repository)、ニュージャージー州キャムデン)。この患者に関する臨床症状は、進行性肺疾患および膵不全と報告されたが;加えて、不完全なcAMP誘導塩素イオンチャネル活性もこの患者に由来する線維芽細胞で示された。Lin& Gruenstein (1987) J Biol Chem 262:15345-15347も参照されたい。
【0142】
GM04320線維芽細胞から単離されたゲノムDNA内のCFTR対立遺伝子の配列決定によって、患者が、実際には、一方はΔF508で他方はΔI507である対立遺伝子の複合ヘテロ接合体であったことが示された。ΔF508/ΔI507複合型ヘテロ接合性は、以前からCF患者において報告されている。例えば、Kerem et al. (1990) Proc Natl Acad Sci USA 87:8447-8451を参照されたい。
【0143】
B. CF iPS細胞の作製および特徴付け
Lowry etal. (2008) Proc Natl Acad Sci USA 105:2883-2888に記載される、ヒト再プログラム因子(OCT4[17964]、SOX2[17965]、KLF4[17967]、C−MYC[17966]、NANOG[18115])をコードするpMXsレトロウイルスベクターを、CF初代線維芽細胞に導入した。非組込み法または組込みを含まない方法(例えばRNA、エピソームベクター、切除可能な再プログラム導入遺伝子、および/または小分子)を、再プログラム因子の導入に使用することもできる。例えば、Somerset al. (2010) Stem Cells 28:1728-1740; Warren et al. (2010) Cell StemCell7:618-630; Yu et al. (2009) Science 324:797-801; Li et al. (2009) Cell StemCell 4:16-19を参照されたい。Plat−GP細胞(セルバイオラボ社(Cell Biolabs))にベクターDNAおよびVSV−G発現プラスミド(pCMV−VSV−G[8454])を形質移入し、超遠心で100倍に濃縮することにより、VSV−Gエンベロープウイルスのストックを調製した。並行してpMXs−GFPベクターストックの製造を行い;初代ヒト線維芽細胞に感染させることでpMXs−GFPウイルスの力価測定を行い、続いてGFP−発現細胞のFACS解析を行った。
【0144】
0日目に6ウェルプレートに10
5細胞/ウェルを播種されたCF線維芽細胞を、1日目および2日目に、スピンフェクション(spinfection)(200×g、30分間)によって、21.5の感染効率で、10μg/mlの硫酸プロタミンの存在下で、形質導入した。4日目に、線維芽細胞を被照射マウス胚線維芽細胞(MEF;CF−1マウス株、チャールズリバー(CharlesRiver))上に移し、1日後、培地を40ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有するヒト胚性幹(ES)細胞培地に交換し(インターネットで入手できる米国立幹細胞バンク(NationalStem Cell Bank)のプロトコルSOP−CC−001Cに従って)、毎日再供給した。12日目から、被照射MEF上で事前に順化されたヒトES細胞培地を、細胞に毎日再供給した。形質導入後16日目から、形態学的基準に基づくiPS様コロニーが確認され始めた。次に、Alexa488結合抗Tra−1−60モノクローナル抗体(ステムジェント社(Stemgent))または抗Tra−1−81モノクローナル抗体(ミリポア社)のいずれか、続いてAlexa488ヤギ抗マウスIgM(インビトロジェン社)を用いた生細胞染色を使用して、その後の増殖および特徴付けのための再プログラムされたコロニーを同定した。最初に選んだ32個のコロニーのうち(それらは全てTra−1−60陽性および/またはTra−1−81陽性に染色された)、9個のコロニーを引き続き増殖させ、凍結保存し、2つのiPSクローン(クローン17および28)をより詳細な特徴付けのために選択した。
【0145】
NSCBプロトコルSOP−CH−102Cに従ってCFiPS細胞をOct4およびSSEA−4の発現について染色し、蛍光顕微鏡法または蛍光標識細胞解析(LSR−II、ベクトン・ディッキンソン社)のいずれかにより解析した。抗CD29(FITC結合;ソース社(Source))を用いた共染色を使用して、汚染したMEFを除外した。非特異的アルカリホスファターゼ活性も評価した(ベクターラボ社(VectorLab))。CF iPSクローン17(継代数5および17)および28(継代数5および13)の核型分析をテキサス小児病院の臨床および研究細胞遺伝学研究所(TexasChildren’s Hospital Clinical and Research Cytogenetic Laboratory)で行った。ゲノムDNAをCFiPSクローン17および28から単離し;エクソン10を含有する配列をPCRで増幅し、配列決定した。
【0146】
C. 奇形腫アッセイ
CF iPS細胞(クローン17)を四週齢のFox Chase SCIDベージュマウス(チャールズリバー)の後肢背側に筋肉内注射し、腫瘍増殖の様子を毎週モニターした。注射後7週間目に、腫瘍を摘出し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンによる組織学的検討用に調製し、ベイラー医科大学の比較医学センターでの解析を行った。
【0147】
D. ZFNを介した標的化
CFTRに対し標的化されたZnフィンガーヌクレアーゼを、基本的には米国特許第6,534,261号に記載の通りに設計した。表1は、例示的なCFTR標的ZFPの認識へリックスDNA結合ドメインを示している。設計されたDNA結合ドメインは、特定の標的配列(表2参照)を認識する4〜6個のZnフィンガーを含有する。ZFP認識へリックスと接触する標的部位のヌクレオチドは大文字で表され;接触しないヌクレオチドは小文字で表される。
【表1】
【表2】
【0148】
所望のDNA結合モチーフをFokIエンドヌクレアーゼの切断ドメインに融合することにより、ZFN対12897/9940を構築した。ZFNを、DNA発現プラスミドまたはインビトロ生成RNA(エピセンター社(Epicentre)およびアンビオン社(Ambion))のいずれかの形態で、細胞に送達した。野生型エクソン10配列(それぞれエクソン10の上流および下流にあるおよそ860bpおよび290bpの相同配列)を含有する1.6kbドナーを、BACクローンRP11−1152A23から得られたゲノムDNA配列のPCR増幅により、最初に構築した。導入されたZFNが相同組換え修復の前または後にドナーを切断する能力を妨げるために、右側の(right)ZFN結合部位に2つのサイレント一塩基対置換を導入し;新規のClaI制限酵素部位を作出するために、1つの追加のサイレント一塩基対置換を野生型エクソン10ドナー配列に導入した。エクソン10の125bp下流にあるイントロン10ドナー配列に3つの追加の一塩基対変化を導入して、ユニークなAvrII制限酵素部位を作出した。野生型ドナーにおける変化は全て、Quikchange(登録商標)LightningSite-Directed Mutagenesis(アジレント社)で導入した。loxP認識配列およびAvrII部位を含むプライマーを用いる、プラスミドpPthC−Oct3/4由来pgk−puroTK−bpA配列のPCR増幅(例えば、Masuiet al. (2007) Nat Cell Biol9:625-635参照)によって、CFTRドナー内の導入AvrII部位にクローニングするための物質を生成した。
【0149】
DNA発現プラスミド(1または2μg)またはインビトロで転写されたRNA(1.5または3μg)の形態のZFNを、ドナーDNA(4または8μg)と共に、CFiPS細胞(2×10
6個の細胞、Accutase(商標)処理で得た細胞;クローン17)に、nucleofection(AmaxaプログラムA23)を介して送達し、細胞を、10μMのRock阻害剤(アレクシス・バイオケミカルズ社(Alexis Biochemicals)、Y27632)存在下で、ピューロマイシン抵抗性被照射MEF上に播種した。ピューロマイシン選択(0.5μg/ml)をトランスフェクションの4日後に開始し、2〜5日後にピューロマイシン抵抗性のコロニーを採取し、ピューロマイシン存在下で増殖させて、クローン細胞株を確立した。
【0150】
E. 標的iPSクローンの分子解析
継代数2の時点で、QIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kit(キアゲン社)またはArchivePure(商標)DNA Cell Tissue Kit(5プライム社(5 Prime))により、ピューロマイシン抵抗性クローンからゲノムDNAを単離した。製造業者のプロトコルに従って、種々のプライマーを使用するPCR増幅を行った。ABI3730XL配列決定装置上で配列決定を行った。
【0151】
F. サザンブロット法
サザンブロットしたゲノムDNAをプローブするための放射線標識DNAを作製するために、ドナープラスミドをNdeI+SpeIで消化し、0.8%アガロースゲルで分離し、その後2.3kb断片を切り出し、ゲル精製(キアゲン社)した。製造業者の取扱説明書に従ってPrime−It(登録商標)II Random Primer Labelingキット(アジレント・テクノロジーズ社)を用いて、2.3kb断片を[α−
32P]dCTPで標識した。25μgのゲノムDNA(gDNA)をSpeIで一晩消化し、フェノール/クロロホルム抽出で精製した。次にgDNAを1%アガロースゲルで分離し、Nytran(登録商標)Super Chargeメンブレン(シュライヒャー&シュール社(Schleicher and Schuell)に転写し、
32P標識プローブでハイブリダイズした。システム(モレキュラー・ダイナミクス社(MolecularDynamics)を用いてメンブレンを露光し画像をスキャンした。
【0152】
G. 選択マーカーのCre介在性切除
Cre発現プラスミド(pBS513 EF1α−creおよびpCAG−Cre(例えば、Le et al. (1999) Anal Biochem270:334-336; Matsuda & Cepko (2007)ProcNatl Acad Sci U S A 104:1027-1032を参照)を、Amaxa(商標)nucleofectionによりAccutase(商標)処理細胞に送達し、被照射MEF上に播種した。各コロニーを採取して増殖させ、次に2連で播種して、ピューロマイシン感受性になっていたそれらのクローンを同定した。あるいは、いくつかのクローンをFIAU(1μM、モラベック・バイオケミカルズ社(MoravekBiochemicals))に対するそれらの抵抗性に基づいて最初に同定し、増殖させ、次に2連で播種して、ピューロマイシン感受性クローンを同定した。
【0153】
H. mRNA解析
RNeasy(登録商標)キット(キアゲン社)を用いてiPSおよびiPS由来細胞からRNAを単離し、Improm−II(商標)Reverse Transcriptase oligodTキット(プロメガ社)を用いてcDNA合成を行い、Gotaq Hot Start(登録商標)ポリメラーゼ(プロメガ社)を用いてRT−PCRを行った。
【0154】
I. インビトロ分化
基本的にはD'Amouret al. (2005) Nat Biotechnol 23:1534-1541に記載の通りに、iPS細胞の胚体内胚葉(definitiveendoderm)への短期分化を行った。簡潔に説明すると、MEF上に播種されたiPS細胞を、低濃度のウシ胎児血清(0日目は0&、1日目は0.2%、2〜5日目は2%)存在下で、アクチビンA(100μg/ml)に曝した。培養物を示された日にRNA用に採取し、遺伝子発現についてRT−PCRで解析した。長期分化については、VanHaute et al. (2009) Respir Res 10:105により報告された気相液相界面プロトコルを適合して、ヒトES細胞から肺上皮組織を作出した。簡潔に説明すると、コラゲナーゼ消化により回収したiPS細胞を、被照射MEFとの同時播種に先立ち、12ウェルプレートのウェル中の8.0μculture plate insert(P18P01250、ミリポア社)上に細胞塊として播種した。最初の8日間(0〜4日目:ヒトES培地;5〜8日目:分化培地[DM]:βメルカプトエタノールおよび塩基性線維芽細胞増殖因子を含有しないヒトES培地)は、メンブレンに播種された細胞を完全に覆うのに十分なレベルに培地を維持し;8〜28日目は、培地(DM)の体積を減少させて、所望の気相液相界面を得た。培養物を示された日にRNA用に回収し、遺伝子発現についてRT−PCRで解析した。
【0155】
J. CFTR変異に対し標的化されたヌクレアーゼの試験
Δ508変異部位に近接するよう設計された表1に示されるZFN対には、Δ508の部位からおよそ115nt離れて結合するZFN対12897/9940、並びに標的部位がそれぞれ18および48ヌクレオチド離れている対32365/32366および32375/32376が含まれる。
図6を参照されたい。さらに、Δ508対立遺伝子を特異的に標的とし、野生型対立遺伝子は標的としないように、対32401/32398を設計した(
図6参照)。
【0156】
表示されるこれらの対を、K562細胞におけるヌクレアーゼ活性について試験したところ、32365/32366対は測定値9%のインデル形成を引き起こし、32375/32376は12%のインデルを引き起こすことが判明した。Neuro2A細胞におけるDLSSAレポーター系を使用する際の、32401/32398対を試験した(共同所有の米国特許出願公開第20110301073号参照)。このアッセイにおいて、32401/32398対はホタル発光/ウミシイタケ発光の比率が1.45(pVAXベクター対照の0.16と比較)であったが、このことは全ての対が活性であったことを示している。
【0157】
実施例2: CF iPS細胞の誘導および特徴付け
ΔF508CFTR変異に関してホモ接合性と報告された患者から、CF初代線維芽細胞(GM04320;コリエルレポジトリー)を入手した。エクソン10の直接配列決定により、これらの細胞が実際には、CFTR遺伝子座において、一方の対立遺伝子はΔF508で、もう一方の対立遺伝子はΔI507である複合型ヘテロ接合性であることが明らかにされた。
【0158】
再プログラム因子(OCT4、SOX2、KLF4、C−MYC、NANOG)をコードするVSV−G偽型pMXsレトロウイルスベクターを使用して、CF皮膚線維芽細胞に形質導入し、それらをマウス胚線維芽細胞(MEF)上に移し、実施例1に記載の通りにヒトES細胞培地において再プログラム化された細胞を選択した。形質導入後16日目に、形態学的基準に基づいてiPS様コロニーが最初に同定された。次に、抗Tra−1−60抗体および/または抗Tra−1−81抗体を用いた生細胞染色を使用して、再プログラム化されたコロニーを上手く同定し、続いて増殖および特徴付けを行った。9個の再プログラム化されたコロニーを同定し、それをさらに増殖させ、凍結保存した。
【0159】
2つのクローン(番号17および28)をさらなる試験のために選択した。これらのクローンはhES細胞と一致する形態および増殖特性を示した。所望のiPS細胞におけるΔI507/ΔF508複合型ヘテロ接合性を確認した。また、これら2つのクローンが未分化hES細胞に特有な細胞性抗原を発現することを、免疫染色により確認した。FACS解析により、少なくとも33継代間で、90%のiPS細胞によるOct4およびSSEA4抗原の共発現が示された。奇形腫アッセイによりCFiPS細胞の多能性が示され;中胚葉、外胚葉、および内胚葉に特有の細胞型がレシピエントマウスに存在した。また、これらのCF iPS細胞が正常な核型を有していることを確認した。
【0160】
実施例3: ZFN介在性HDRによるCFTR変異の修復
CFTRエクソン10変異の全体的な修復戦略は
図1に要約されており、CFTR特異的ZFNを、適切なCFTRドナーDNAと共に送達することを含み;loxP隣接puroTK選択カセットは、ピューロマイシンによる初期クローンの選択、およびそれに続くFIAUによるCre切除後クローンの選択を可能にする。CFTRエクソン10を標的とするZFNを設計して、HDRによるΔI507またはΔF508の修復を促進させた(
図1参照)。CFTRエクソン10特異的ZFN(CFTR ZFN)は、エクソン10の開始点付近のDNA配列、ΔI507またはΔF508三塩基対欠失のおよそ110bp上流を認識する。
【0161】
CFTR DNAドナー修復テンプレートは、合計がおよそ1.6kbの隣接相同配列を含み;該ドナーにコードされるエクソン10配列は3つのサイレント塩基対置換を含むように改変されている。2つは、修復されたCFTR遺伝子座のZFNによる再切断を防止するために、ZFN−R標的配列内に存在し;並びに、1つのサイレント変異が、遺伝子編集された細胞をPCRにより迅速に同定するための、新規のClaI制限酵素部位を作出するために、修復された3つの塩基対野生型配列の22bp下流に存在する。さらに、loxP隣接pgk−puroTK選択カセットを、エクソン10の末端の125bp下流のドナーのイントロン10に、アンチセンス方向に挿入した。従って、所望のCFTR遺伝子編集事象は、ΔI507またはΔF508対立遺伝子におけるエクソン10内の3つの塩基対欠失の修復、およびイントロン10への選択カセットの標的化された挿入の両方を含む。
【0162】
CFTR ZFNを、実施例1に記載の通りに、DNA発現プラスミドまたはインビトロで転写されたRNAの形態で、CFTRドナーをコードするプラスミドと共に、CFiPS細胞に共送達した。まずピューロマイシン抵抗性コロニーをPCRでスクリーニングし、次に配列決定して、CFTRエクソン10がHDRにより修復されたことを確認した(
図2)。最初のPCRスクリーニングでは、一方のプライマーがイントロン9の上流の配列(ドナー中に存在しない)にアニーリングし、もう一方のプライマーがloxP隣接選択マーカー内にアニーリングすることで、内在性CFTR遺伝子座のイントロン10へのピューロマイシン選択マーカーの標的挿入がアッセイされた(
図2)。
【0163】
この初期スクリーニングにより、ピューロマイシン抵抗性コロニーの33%(分析されたクローンの64種中21種)において、CFTR対立遺伝子の一方で、起こり得る標的挿入事象が確認された。野生型エクソン10ドナー配列の組込みと合わせて、この単位複製配列をClaIで完全に消化した。単位複製配列を直接配列決定でさらに解析して、編集された対立遺伝子が、ΔI507またはΔF508変異遺伝子型の代わりに、ドナー由来の修復配列をコードしていたことを確認した。さらに、右巻きの(right-hand)ZFNに対する認識部位の位置でドナーに導入されたサイレント塩基対置換も、修復された対立遺伝子内に存在していた。
【0164】
ドナーにコードされた相同領域の外側にある配列にアニーリングするプライマーを利用して、21種のクローンにそれぞれ由来する未改変CFTR対立遺伝子のみを選択的にPCR増幅した。未改変対立遺伝子の配列決定により、全てのクローンにおいて、ΔI507変異対立遺伝子(21中3種のクローンに存在)またはΔF508変異対立遺伝子(21中18種のクローンに存在)のいずれかを含有する純粋配列がもたらされ;この結果は、クローンあたり1つのCFTR対立遺伝子のみに生じた選択マーカーの標的挿入と一致する。
【0165】
独立して行われた2つの遺伝子編集実験の結果を表3に示す。表3において、「TI」は標的組込みを指す。
【表3】
【0166】
一方のプライマーがloxP隣接選択マーカーにアニーリングし、もう一方のプライマーがドナー配列の外側のイントロン10内の下流の部位にアニーリングするPCR増幅によって、1/1’基準を満たす21種のクローンをさらに解析した。
【0167】
図2に示すように、この解析によって、21中7種の先に同定されたクローンにおいて、選択マーカーの標的挿入が確認された。
【0168】
表3に示されるように、HDR駆動型のゲノム編集は、ΔF508対立遺伝子よりも、ΔI507CFTR対立遺伝子でより頻繁に生じていた。従って、各変異対立遺伝子(ΔI507またはΔF508)の、ドナーに対応する、1.6kb内在性CFTR配列を完全配列決定して、いずれかの変異対立遺伝子に対するドナー配列の類似度が増加したか否かを調べた(恐らくは、もう一方の対立遺伝子よりも、一方の対立遺伝子対におけるHDRを好む。配列解析)。この配列解析により、ZFN切断部位の76bp上流のイントロン9における一塩基対置換(A>G)(A>G置換が、エクソン10の開始部位に対し、イントロン9における−61位で生じる:すなわち、−61A>G 、が、ΔF508変異対立遺伝子には存在するが、ΔI507変異対立遺伝子およびドナーのどちらにも存在しないことが明らかにされた。この一塩基対の差異は、CFiPS細胞のΔF508対立遺伝子において選択的に生じるため、ΔF508対立遺伝子およびドナー鋳型の相同性対合およびストランド侵入の効率において、有意な減少を引き起こし得る。従って、このA>G変異のドナー配列への導入によって、ΔF508対立遺伝子の標的化修復に有利になることが予想される。
【0169】
実施例4: 遺伝子編集されたiPS細胞およびiPS由来細胞における修復されたCFTR遺伝子の発現
また、RT−PCRおよび配列解析によって、ZFNにより修復された細胞におけるCFTRの発現を決定した。実施例1を参照されたい。
【0170】
図3Aに示すように、および他のヒトES/iPS細胞株の量的発現解析と一致して(例えば、Bock et al. (2011) Cell 144:439-452参照 、元の、未修復のΔI507/ΔF508クローン17 iPS細胞におけるCFTR発現をRT−PCRによって検出した。配列決定により、ΔI507およびΔF508対立遺伝子の両方からの、ほぼ等レベルのCFTR mRNA発現が明らかにされた(
図3B)。対照として、A549肺上皮細胞株の解析により、野生型CFTR発現が確認された(
図3Aおよび3B)。
図3Aに示すように、7種中4種の標的化iPS株(クローン17−1、17−9、17−14、17−16)についてのRT−PCR分析により、ΔI507/ΔF508クローン17 iPSおよびA549細胞株において見られたバンドと同じサイズの単一バンドが生じた。7種中3種のクローン(クローン17−13、17−17、17−20)は、より大きなサイズの第二のRT−PCRバンドも示したため、解析を検討しなかった。
【0171】
配列決定により、予想されたcDNA構成(エクソン9‐エクソン10‐エクソン11)を確認し、非標的化変異対立遺伝子(ΔF508)および修復された対立遺伝子の両方から生じたCFTR発現を明らかにした。
図3Bも参照されたい。特に、修復された対立遺伝子の発現が未改変変異対立遺伝子のおよそ25〜35%であったことが、一貫して観察された。これら4種の各クローンについて、標的化された対立遺伝子(全ての場合でΔI507)および未改変対立遺伝子(ΔF508)の両方におけるCFTRゲノムDNAエクソン10配列を決定し、pgk−puroTKプローブを利用してサザンブロット解析を行い、修復されたCFTR対立遺伝子における正しいゲノム構築を確認し、編集が成功したiPSクローンのいずれかが、ドナー配列の非特異的な組込みも示しているかどうかを確認した。
【0172】
この解析により、これら4種のクローン(17−1、17−9、17−14、17−16)が、いかなる追加のドナー配列組込みも無く、編集に成功したこと;RT−PCR(上記参照)に基づき先に除外したクローンのうちの2種(17−17および17−20)が追加のpgk−puroTK組込みを示したことが明らかにされた。正しく編集されたクローン(17−9、17−16)のうち2種に対して核型解析を行ったところ、両方のクローンが通常の核型を示すことが明らかにされた。
【0173】
配列決定によって、4種全ての細胞株が、参照ゲノムと比較して、同レベルの推定上の新規の一塩基変異(single nucleotide variation:SNV)を有し、変異型CF線維芽細胞には1,155個のSNV、変異型iPS細胞(クローン17)には1,127個のSNV、修復された17−9−C1には1,180個のSNV、および17−14−C1細胞には1,121個のSNVが存在することも示された。全ゲノム配列決定によって、修復された、Cre切断されたiPS細胞(17−9−C1および17−14−C1)の両方において、CFTRエクソン10に修復が導入され、3つの同義的塩基対変化が挿入されたことを、確認することができた。全体的に見て、未修復iPSまたは修復された細胞株において、変異のレベルの増加は見られなかった。iPSクローン17に特有の5個のNSCV、17−9−C1に特有の2個のNSCV、および17−14−C1に特有の8個のNSCVが発見された。さらに、Cradicket al. (2011) BMC Bioinformatics 12:152に記載の通りに決定されたように、非特異的なZFN結合部位は、各ZFN結合部位が25個の塩基対によって隔てられている場合にのみ生じた。従って、非特異的なZFN結合部位の順列間に配列類似性は存在せず、NSCVは修復された細胞株に存在した。
【0174】
pgk−puroTKカセットのCreを介した切除を、Cre−リコンビナーゼ発現プラスミドの一過性送達によって達成した。pgk−puroTKカセットの切除の成功により、クローンのpuro
Rからpuro
Sへの、およびFIAU
SからFIAU
Rへの表現型転換がもたらされることが予想される(
図2)。
【0175】
この方法から、4種の編集に成功したクローン(17−1、17−9、17−14、17−16)の各々から多数のCre切除後クローンを同定することができ、PCR分析およびClaI消化を介して切除の成功を確認した(
図4;Cre切除後クローンは‐C1または‐C2で示される)。
図4に示すように、Cre切除後クローンのRT−PCRおよび配列解析により、修復された対立遺伝子および変異対立遺伝子の両方から、およそ等しいレベルのCFTRmRNA発現が示された。
【0176】
修復されたCF iPS細胞における修復されたCFTR対立遺伝子の発現が示されたため、次に、インビトロ分化条件下で、修復されたCFTR遺伝子の発現の発現上昇が観察され得るかどうかを試験した。hES/hiPS細胞のアクチビンA処置は、胚体内胚葉の発生を誘導することが、以前に示されている。例えば、D'Amour et al. (2005) Nat Biotechnol23:1534-1541を参照されたい。
【0177】
図5に示すように、この方法で3〜5日間培養されたオリジナルクローン17CF iPS細胞および修復された、Cre切除されたクローン17−9−C1 CF iPS細胞は、Sox17およびCFTR両方のmRNAの発現上昇についての証拠を示す。5日目のクローン17−9−C1のCFTRのRT−PCR単位複製配列の配列決定により、修復された野生型および変異型ΔF508CFTR mRNAの両方の、およそ等しいレベルでの共発現が明らかにされた。
【0178】
また、肺上皮のものと似ているある特徴(例えば細胞構成および組織構造)を有する上皮組織をもたらすことが以前に示されている気相液相界面(air-liquid-interface:ALI)分化アッセイ系において、クローン17 CF iPS細胞および修復されたクローン17−14および17−16CF iPS細胞を28日間培養した。例えば、Van Haute et al. (2009)RespirRes10:105; Coraux et al. (2005) Am J Respir Cell MolBiol32:87-92を参照されたい。これらの培養条件下で、CFTR発現は上方制御された。28日目のクローン17−14および17−16のCFTRのRT−PCR単位複製配列の配列決定により、修復された野生型および変異型ΔF508CFTR mRNA両方の等しい強発現が明らかにされた。
【0179】
これらの結果により、修復されたCFTR対立遺伝子の適切に制御された発現が示された。
【0180】
実施例5: CF研究のためのモデル系の作製
このようにして、本明細書に記載の組成物および方法を使用して、CF研究のためのモデル系を作製することができる。例えば、修復された、または破損したΔF508(および/またはΔI507)を有する患者由来iPSCは、CF治療用の薬剤を試験するための細胞および動物モデルを提供する。
【0181】
下流の特徴付けにおいて観察された表現型が、iPSC作製方法(例えば再プログラムカセットのランダム組込み)に内因的な変化によるものであるという懸念を緩和するために、同一患者に由来する最低2種の独立したiPSC株において、ΔF508の修復および破損を行い;同じ方法を、前記変異を有する3人の無関係な患者に由来するiPSCに実行し、それによって、異なる遺伝的背景との関連においてΔF508変異を研究するための、同質遺伝子細胞モデルを得た。
【0182】
あるモデルに関して、CFTR ZFNを使用して、正常対象由来のiPSCにおけるCFTR遺伝子座へDSBを導入し、単一対立遺伝子の、または二対立遺伝子のΔF508変異を新規に生成するためにHDRを引き起こした。細胞がCFTR−正常対象に由来すること、およびドナー構築体がΔF508変異を導入するヌクレオチド配列を含有すること以外は上記の通りに、iPSCを変化させた。予想される消化パターンを有するクローンを配列決定して、操作された変異を確認する。
【0183】
具体的には、免疫ブロット解析を用いて、対応する未改変細胞および/または野生型細胞と比較して、ZFN改変細胞における膜中のCFTRの蓄積を評価することにより、CFTRタンパク質およびiPS細胞におけるその活性に対するZFN介在性遺伝子編集の影響もアッセイする。ある実施形態では、CFTRに標的化された抗体により、CFTR活性のさらなる読み出しを得ることができる。さらに、試薬を使用して、直接標的であるCFTRの改変を検出することができる。同質遺伝子的な対照細胞株によって、これらのモデルに、正確性が大いに加えられる。
実施例6: SFTPBの修復
【0184】
SP−B欠損症に存在する最も一般的な変異は、121ins2(121C>GAA)変異である。従って、CFTR遺伝子座に関する上記の通りに、121ins2(121c>GAA)SFTPB遺伝子座を標的とするようにZFNを設計し、遺伝子修復に使用した。
【0185】
実施例7: TALEN設計およびCFTRの改変
CFTR遺伝子座に対して特異的なTALEN対も設計し、米国特許出願公開第20110301073号(本明細書に記載のように参照によって組み込まれる)に記載の通りに、標準的な、および新規のRVDの両方を用いて構築する。TALENは、上記の通りに試験すると、活性である。
【0186】
本明細書で言及された全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0187】
理解を明確にする目的で、説明および例示として開示について多少詳しく記述したが、本開示の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更および修正を実施することができることは当業者には明らかである。従って、上記の記述および例は、限定と解釈されるべきではない。