(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側列は、前記固体フィルムのジグザグ部分の前記重ね方向における外側の両方に配置されており、該外側列を構成する赤外線ヒーターは、前記発熱体からみて前記固体フィルムのジグザグ部分とは反対側に、前記電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を反射する反射層を備えている、
請求項3に記載の脱水装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である脱水装置10の縦断面図である。脱水装置10は、固体フィルム80の脱水を赤外線及び冷風を用いて行うものであり、脱水室14と、排気装置25と、複数の赤外線ヒーター40と、搬送ローラー87と、コントローラー70と、を備えている。また、脱水装置10は、脱水室14の前方(
図1の左側)に設けられたロール84と、脱水室14の後方(
図1の右側)に設けられたロール86と、を備えている。脱水装置10は、脱水対象となる固体フィルム80を、ロール84,86、複数の搬送ローラー87により搬送方向に連続的に搬送して脱水を行うロールトゥロール方式の脱水装置として構成されている。なお、本実施形態では、搬送方向を前後方向(
図1の左右方向)とし、前方から後方に向けて固体フィルム80が搬送されるものとした。
【0020】
脱水室14は、固体フィルム80の脱水を行うためのものである。この脱水室14は、略直方体に形成された断熱構造体であり、前端面15及び後端面16にそれぞれ開口17,18を有している。脱水室14は、前端面15から後端面16までの長さが例えば2〜10mである。脱水室14内には、パンチングプレート19と、複数の送風ノズル20と、反射板22a,22bと、複数の赤外線ヒーター40と、複数の搬送ローラー87と、が配置されている。
【0021】
脱水室14内には、複数の搬送ローラー87としての第1搬送ローラー87a〜第7搬送ローラー87gが配置されている。第1,第3,第5,第7搬送ローラー87a,87c,87e,87gは、脱水室14の下側に配置され、第2,第4,第6搬送ローラー87b,87d,87fは、脱水室14の上側に配置されている。この複数の搬送ローラー87は、円筒状の本体の多数の孔から流体(例えば常温や50℃以下の空気)を周囲に流出させることで固体フィルム80を搬送ローラー87自身から浮かした状態で支持つつ搬送する非接触ローラーとして構成されている。固体フィルム80は、ロール84から開口17を通過して第1搬送ローラー87aまで略水平に搬送され、上側の搬送ローラー87と下側の搬送ローラー87とに第1搬送ローラー87a〜第7搬送ローラー87gの順に掛け渡され、第7搬送ローラー87gから開口18を通過してロール86まで略水平に搬送される。第1搬送ローラー87a〜第7搬送ローラー87gが上下に交互に配置されていることにより、固体フィルム80は、脱水室14内で上下に往復するジグザグ部分81を有するように搬送される。なお、搬送ローラー87は、接触式のローラーとして構成してもよい。
【0022】
送風ノズル20は、脱水室14内に流体を送風可能なものである。この送風ノズル20は、ジグザグ部分81の上下に掛け渡された固体フィルム80の各々を前後方向から挟むように1個ずつ配置され、計12個が配置されている。また、送風ノズル20は、ジグザグ部分81の上側且つ第2,第4,第6搬送ローラー87b,87d,87fのやや下方に配置されている。この送風ノズル20には、図示しない給気ファンや配管が接続されており、給気ファンから配管を介して流れる流体を脱水室14内に送風する。流体は、固体フィルム80を冷却可能な冷風であり、例えば常温や50℃以下の空気である。送風ノズル20が送風する流体は、露点が低いほど好ましい。本実施形態では、送風ノズル20は露点が−60℃以下の空気(ドライエアー)を送風するものとした。送風ノズル20は、いずれも開口部が排気装置25の排気口28の方向(
図1の下方向)に形成されており、固体フィルム80のジグザグ部分81の上側から下方向に流体を送風する。これにより、送風ノズル20からの送風はジグザグ部分81の固体フィルム80の表面に沿って下方向に流れていき、脱水室14の下方に取り付けられたパンチングプレート19を通過して脱水室14の底部に流れていく。なお、図示は省略するが、送風ノズル20は、長手方向が左右方向(
図1の紙面に垂直な方向)に平行になるよう取り付けられており、送風ノズル20の開口部はこの左右方向と平行なスリット状に開口している。また、パンチングプレート19は、多数の孔が空けられた板状の部材である。
【0023】
排気装置25は、脱水室14内の雰囲気ガスを排出する装置である。この排気装置25は、排気ファン26と、パイプ構造体27と、複数の排気口28と、を備えている。排気口28は、脱水室14の底部に複数(本実施形態では5個)設けられ、固体フィルム80や搬送ローラー87の方向(
図1の上方向)に向けて開口している。排気口28はパイプ構造体27に取り付けられており、脱水室14内の雰囲気ガス(主にシート50の表面に沿って流れた後の送風ノズル20からの送風)を吸気してパイプ構造体27内に導く。パイプ構造体27は、排気口28から排気ファン26への雰囲気ガスの流路となるものである。パイプ構造体27は、排気口28から脱水室14の底部を貫通して脱水室14の外部の排気ファン26までの通路を形成している。排気ファン26は、パイプ構造体27に取り付けられており、パイプ構造体27内部の雰囲気ガスを排気する。
【0024】
複数の赤外線ヒーター40は、近赤外線(波長が0.7〜3.5μmの赤外線)を含む電磁波を照射して固体フィルム80を脱水するものである。この赤外線ヒーター40は、複数の列(本実施形態では第1〜第7ヒーター列29a〜29gの7つの列)をなすように配置されている。なお、第1〜第7ヒーター列29a〜29fをまとめてヒーター列29とも称する。ヒーター列29の各列は、上下方向に均等配置された3個の赤外線ヒーター40で構成されている(赤外線ヒーター40は合計21個)。第1,第3,第5,第7ヒーター列29a,29c,29e,29gは、それぞれ第1,第3,第5,第7搬送ローラー87a,87c,87e,87gの直上に配置されている。第2,第4,第6ヒーター列29b,29d,29fは、それぞれ第2,第4,第6搬送ローラー87b,87d,87fの直下に配置されている。ヒーター列29は、ジグザグ部分81の固体フィルム80と交互に並べて配置されている。すなわち、ヒーター列29の各列は、隣接する列間でジグザグ部分81の固体フィルム80を挟むように、ジグザグの重ね方向(
図1の前後方向)に並べて配置されている。なお、送風ノズル20は前後方向でヒーター列29と固体フィルム80との間に配置されており、ヒーター列29の各列とジグザグ部分81の固体フィルム80との間の空間に送風ノズル20から流体が送風されるようになっている。
【0025】
また、ヒーター列29の各列は、各列を構成する3個の赤外線ヒーター40のいずれもが、隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向(
図1の上下方向)にずれて配置されている。本実施形態では、ヒーター列29の各列の赤外線ヒーター40は、隣接する列の赤外線ヒーター40と上下に互い違いに配置され、側面視で千鳥状に配置されているものとした。例えば、第1ヒーター列29aの上から1番目,2番目の赤外線ヒーター40の上下方向の中間に、第2ヒーター列29bの上から1番目の赤外線ヒーター40が配置されている。そして、
図1に示すように、第2ヒーター列29bの上から1番目の赤外線ヒーター40は、第1ヒーター列29aの上から1番目,2番目の赤外線ヒーター40と上下方向に距離d(≧0)だけ離れて配置されている。同様に、他の赤外線ヒーター40も、隣接する列の上下方向に最も近い赤外線ヒーター40に対して距離dだけ上下方向に離れて配置されている。また、第1,第3,第5,第7ヒーター列29a,29c,29e,29gの各列は、赤外線ヒーター40の上下方向の配置が互いに同じである。第2,第4,第6ヒーター列29b,29d,29fの各列は、赤外線ヒーター40の上下方向の配置が互いに同じである。
【0026】
ヒーター列29を構成する複数の赤外線ヒーター40は、いずれも同様の構成をしている。また、複数の赤外線ヒーター40は、いずれも長手方向が固体フィルム80の搬送方向(前後方向)と直交するように取り付けられている。以下、1つの赤外線ヒーター40の構成について説明する。
図2は、
図1のA−A断面図である。赤外線ヒーター40は、
図1の拡大部分及び
図2に示すように、発熱体であるタングステン製のフィラメント41を内管42が囲むように形成されたヒーター本体43と、このヒーター本体43の外側に設けられ内管42を囲むように形成された外管44と、を備えており、これらの両端にはキャップ50が取り付けられている。内管42と外管44との間の空間は、冷媒(例えば空気)を流通可能な冷媒流路49となっている。また、赤外線ヒーター40は、外管44の表面温度を検出する温度センサ59を備えている(
図2参照)。温度センサ59は、本実施形態では
図2に示すように外管44の下側に配置されているものとしたが、外管44のうち固体フィルム80に最も近い側に配置してもよい。内管42,外管44は同心円状に配置されており、その円の中心にフィラメント41が位置するようになっている。
【0027】
ヒーター本体43は、両端がキャップ50の内部に配置されたホルダー55に支持されている。このヒーター本体43は、脱水室14の外部に配置された電力供給源60(
図2参照)からフィラメント41へ電力が供給されて、フィラメント41が所定温度(例えば1200〜1700℃)に加熱されると、赤外線を含む電磁波を放射する。フィラメント41が放射する電磁波は、特に限定するものではないが、例えば、ピーク波長が赤外線領域(波長が0.7μm〜8μmの領域)や近赤外線領域(波長が0.7μm〜3.5μmの領域)にあるものである。本実施形態では、ピーク波長が3μm付近の電磁波を放射するものとした。内管42は、フィラメント41を囲む断面円形の管であり、フィラメント41から放射された電磁波のうち3.5μmを超える波長の赤外線を吸収し且つ少なくとも近赤外線を透過する赤外線透過材料で形成されている。内管42に用いるこのような赤外線透過材料としては、例えば、ゲルマニウム、シリコン、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラス、透過性アルミナセラミックスなどのほか、近赤外線を透過可能な石英ガラスなどが挙げられる。本実施形態では、内管42は、上述した赤外線透過材料のうち、電磁波の一部として波長が3.5μmを超える赤外線を吸収し且つ3.5μm以下の赤外線については透過する石英ガラスで形成されているものとした。また、内管42の内部は、真空雰囲気又はハロゲン雰囲気となっている。このフィラメント41に接続された電気配線41aは、キャップ50に設けられた配線引出部57を介して気密に外部へ引き出され、電力供給源60に接続されている。キャップ50は、
図2に示すように、円盤状の蓋54と、その蓋54に立設された円筒部52とを一体成形したものである。外管44の左右両端は、円筒部52に固定されている。
【0028】
外管44は、上述した赤外線透過材料で形成された管である。本実施形態では、内管42と同様に、波長が3.5μmを超える赤外線を吸収し且つ3.5μm以下の赤外線については透過する石英ガラスで形成されているものとした。なお、外管44は、冷媒流路49を流れる冷媒によって、例えば200℃以下に冷却可能になっている。
【0029】
冷媒流路49は、内管42と外管44との間の空間であり、キャップ50に設けられた流体出入口58を通じて冷媒が流通可能となっている。冷媒は、例えば空気などの流体である。流体出入口58は、脱水室14の外部に配置された冷媒供給源65と接続されている。この冷媒供給源65から供給された冷媒は、一方の流体出入口58から冷媒流路49内に流入し、冷媒流路49内を流通して他方の流体出入口58から流出する。冷媒流路49を流通する冷媒は、赤外線ヒーター40の外面である外管44の温度を直接的に下げる役割を果たす。
【0030】
反射板22a,22b(
図1参照)は、赤外線ヒーター40から放射された電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を反射可能な板状の部材である。この反射板22a,22bは、固体フィルム80のジグザグ部分81のジグザグの重ね方向における外側の両方(両外側)に配置され、板表面が向き合うように配置されている。具体的には、反射板22aは、ジグザグ部分81よりも前方且つヒーター列29のうち最も前方に位置する第1ヒーター列29aよりも前方に配置されている。反射板22bは、ジグザグ部分81よりも後方且つヒーター列29のうち最も後方に位置する第7ヒーター列29gよりも後方に配置されている。また、反射板22a,22bの上端は、ヒーター列29の最も上に位置する赤外線ヒーター40(例えば、第1ヒーター列29aの一番上の赤外線ヒーター40)よりも上に位置し、反射板22a,22bの下端は、ヒーター列29の最も下に位置する赤外線ヒーター40(例えば、第2ヒーター列29bの一番下の赤外線ヒーター40)よりも下に位置するようになっている。反射板22a,22bの材料としては、例えばSUS304やアルミニウムなどの金属が挙げられる。また、反射板22a,22bは、板状の部材の表面(ジグザグ部分81側の面)を、赤外線ヒーター40から放射される電磁波のうち、少なくとも近赤外線を反射する赤外線反射材料でコーティングしたものとしてもよい。赤外線反射材料としては、例えば金,白金,アルミニウムなどが挙げられる。コーティングは、例えばスパッタリングやCVD、溶射といった成膜方法を用いて行ってもよい。
【0031】
固体フィルム80は、近赤外線の少なくとも一部を透過する緻密質のものである。また、固体フィルム80は、脱水室14に搬入される前などの脱水前において、内部の水分含有量が0質量%超過1質量%以下のものである。この固体フィルム80は、脱水室14での脱水後に、表面にスパッタリング等で透明導電膜を形成して透明導電フィルムとし、液晶ディスプレイや有機ELなどに用いられる。固体フィルム80は、このような透明導電フィルムに用いられるものであり、例えばPETフィルムなどの樹脂フィルムである。本実施形態では、固体フィルム80はPETフィルムとした。また、固体フィルム80は、特に限定するものではないが、例えば厚さ10〜100μm、幅200〜1000mmである。
【0032】
コントローラー70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。このコントローラー70は、送風ノズル20の図示しない給気ファンや排気ファン26に制御信号を出力して、送風ノズル20から送風される流体の温度及び風量を制御したり、脱水室14の雰囲気の排気口28からの排気量を制御したりする。また、コントローラー70は、熱電対である温度センサ59が検出した外管44の温度を入力したり、冷媒供給源65と流体出入口58とを接続する配管の途中に設けられた開閉弁67及び流量調整弁68に制御信号を出力したりして、赤外線ヒーター40の冷媒流路49を流れる冷媒の流量を個別に制御する(
図2参照)。更に、コントローラー70は、電力供給源60からフィラメント41へ供給される電力の大きさを調整するための制御信号を電力供給源60へ出力して、赤外線ヒーター40のフィラメント温度を個別に制御する(
図2参照)。また、コントローラー70は、ロール84,86の回転速度や搬送ローラー87から流出させる流体の流量を制御することで、脱水室14内の固体フィルム80の通過時間や固体フィルム80にかかる張力を調整することができる。
【0033】
次に、こうして構成された脱水装置10を用いて固体フィルム80を脱水する様子について説明する。まず、内部の水分含有量が0質量%超過1質量%以下である固体フィルム80を用意し、ロール84に巻き付けておく。ここで、水分含有量が0質量%超過1質量%以下である固体フィルム80は、例えば二軸延伸法により水分含有量が1質量%超過であるフィルム(本実施形態ではPET製のフィルム)を作製し、このフィルムを例えば熱風乾燥を行う乾燥炉などの周知の乾燥装置で乾燥することによって得ることができる。本実施形態では、このような乾燥装置により内部の水分含有量が0.1質量%以上1質量%以下の固体フィルム80を用意するものとした。
【0034】
このような固体フィルム80をロール84に巻き付けたものを用意すると、まず、脱水室14内を脱水時の所定の雰囲気にする。本実施形態では、脱水室14内を露点が−60℃以下の大気雰囲気とするものとした。脱水室14内の雰囲気の調整は、例えば送風ノズル20から露点が−60℃以下の空気を送風することにより行ってもよいし、他の図示しない給気装置により脱水時の雰囲気を供給することにより行ってもよい。続いて、コントローラー70がロール84,86,搬送ローラー87を動作させ、固体フィルム80の搬送を開始する。これにより、
図1において脱水装置10の前方に配置されたロール84から固体フィルム80が巻き外され、脱水室14の開口17を通って脱水室14内へ搬入される。そして、固体フィルム80は、複数の搬送ローラー87により、ジグザグ部分81を有するようにジグザグに搬送される。その後、固体フィルム80は脱水室14の開口18を通って脱水室14から搬出されて、脱水室14の後方に設置されたロール86に巻き取られる。
【0035】
このように固体フィルム80の連続的な搬送を行う間、コントローラー70は、送風ノズル20の図示しない吸気ファン,開閉弁67,流量調整弁68,電力供給源60,排気ファン26を制御する。これにより、固体フィルム80が脱水室14を通過する間(特に、固体フィルム80がジグザグ部分81にある間)に、ヒーター列29の各列の赤外線ヒーター40からジグザグ部分81の固体フィルム80に近赤外線が照射されて固体フィルム80内部の水分が脱水される。なお、赤外線ヒーター40は、上述したように3.5μmを超える波長の赤外線を吸収し且つ3.5μm以下の赤外線を透過する内管42及び外管44がフィラメント41を覆っている。そのため、赤外線ヒーター40から固体フィルム80へは、波長が3.5μm以下の赤外線(近赤外線)を含む電磁波が放射される。すなわち、内管42及び外管44が存在することで、フィラメント41から放射される電磁波のうち波長3.5μm以下の赤外線の割合を増大させた電磁波が、固体フィルム80へ放射される。なお、赤外線ヒーター40からジグザグ部分81とは反対方向に放射された近赤外線は、反射板22a,22bによりジグザグ部分81側に反射される。例えば、第1ヒーター列29aから前方(
図1の左方向)に放射された近赤外線は、反射板22aによって後方(
図1の右方向)に反射される。第7ヒーター列29gから後方に放射された近赤外線は、反射板22bによって前方に反射される。また、脱水で固体フィルム80内部から出た水分は送風ノズル20からの送風により除去される。水分を含んだ送風ノズル20からの送風は、パンチングプレート19を通過して排気装置25により排気される。なお、送風ノズル20からの送風は冷風であり、固体フィルム80の冷却も行う。本実施形態では、コントローラー70が、送風ノズル20からの送風の流量を予め定められた値に制御して、固体フィルム80(PET)のガラス転移点(約70℃)以下の所定値(例えば60℃、50℃、45℃など)となるように送風ノズル20からの送風の流量を制御するものとした。これに限らず、例えば固体フィルム80付近など脱水室14内に設けられた温度センサが検出した温度に基づいて固体フィルム80の温度がガラス転移点以下に保たれるように流量を調整するものとしてもよい。
【0036】
このように固体フィルム80の脱水を行うことで、開口18から搬出された状態すなわち脱水後の固体フィルム80の水分含有量は、脱水前の0.1質量%以上1質量%以下の状態から、より水分含有量の低い状態となる。本実施形態では、脱水後の固体フィルム80の水分含有量が所定の0.1質量%未満の所定の目標値(例えば100ppm)以下となるように、コントローラー70による赤外線ヒーター40の出力や送風ノズル20からの送風量、固体フィルム80の搬送速度などが実験により予め定められているものとした。脱水装置10による脱水後の固体フィルム80は、表面にスパッタリング等で透明導電膜が形成されて透明導電フィルムとなり、例えば液晶ディスプレイや有機ELなどに用いられる。
【0037】
以上説明した第1実施形態の脱水装置10では、脱水前における内部の水分含有量が0質量%超過1質量%以下である固体フィルムに対して、赤外線ヒーター40により波長が3.5μm以下の赤外線(近赤外線)を含む電磁波を放射する。この波長の赤外線は、水分子に選択的にエネルギーを与えることができ、効率的に固体フィルム80の脱水を行うことができる。しかも、固体フィルム80は近赤外線の少なくとも一部を透過するため、赤外線ヒーター40からの近赤外線が固体フィルム80内部の水分に直に作用しやすい。これらにより、内部の水分含有量が0質量%超過1質量%以下である固体フィルム80をさらに脱水して、固体フィルム40内部の水分含有量を100ppm以下とするなど、水分含有量をより低減させることができる。しかも、固体フィルム80は緻密質なため水分が外部に逃げにくいが、本実施形態の脱水装置10は水分子に選択的にエネルギーを与えて脱水を行うことができるため、本発明を適用する意義が高い。また、固体フィルム80はPETフィルムでありガラス転移点が例えば約70℃と比較的低いが、PETフィルムは近赤外線ではほとんど加熱されないため、脱水中の固体フィルム80をガラス転移点以下に保ちやすく、本発明を適用する意義が高い。
【0038】
また、脱水室14内で固体フィルム80をジグザグに搬送する搬送ローラー87を備え、赤外線ヒーター40は、複数のヒーター列29をなすように複数配置され、複数のヒーター列29は固体フィルム80を挟むようにジグザグの重ね方向に並べて配置されており、複数のヒーター列29のうち1以上の列が、ヒーター列29の各列を構成する赤外線ヒーター40のうち1以上が隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて配置されている。このため、ずれて配置された赤外線ヒーター40からの赤外線は固体フィルム80を透過してその先にある固体フィルムにも照射されやすい。例えば、第1ヒーター列29aの赤外線ヒーター40からの赤外線は、ジグザグ部分81のうち第1搬送ローラー87aと第2搬送ローラー87bとの間に掛け渡された固体フィルム80だけでなく、ジグザグ部分81のうち第2搬送ローラー87bと第3搬送ローラー87cとの間に掛け渡された固体フィルム80にも照射されやすい。これにより、1つの赤外線ヒーター40からの赤外線をより効率よく固体フィルム80に放射でき、より効率よく脱水を行うことができる。また、隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて赤外線ヒーター40を配置することで、固体フィルム80のうち近赤外線を吸収する領域が分散しやすくなるため、固体フィルム80の温度分布がばらつくのをより抑制することができる。なお、本実施形態では、複数のヒーター列29のいずれの列についても、列を構成する赤外線ヒーター40のいずれもが隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて配置されているため、これらの効果がより高いものとなる。
【0039】
さらに、固体フィルム80のジグザグ部分81のジグザグの重ね方向における外側の両方に、赤外線ヒーター40からの電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を反射する反射板22a,22bを備えており、赤外線ヒーター40は、反射板22a,22bと固体フィルム80のジグザグ部分81との間に配置されてる。このため、赤外線ヒーター40から固体フィルム80のジグザグ部分81とは反対方向に放射される近赤外線を反射板22a,22bにより反射することができ、より効率よく固体フィルム80の脱水を行うことができる。
【0040】
さらにまた、脱水室14内に流体を送風可能な送風ノズル20を備えている。そのため、固体フィルム80の脱水を赤外線ヒーター40により行うと共に、脱水で固体フィルム80内部から出た水分の除去を送風ノズル20からの送風により行って、より効率よく脱水を行うことができる。しかも、送風ノズル20から流体を送風することにより固体フィルム80の冷却を行うため、赤外線ヒーター40により固体フィルム80の脱水を行いつつ、送風により固体フィルム80の過熱を抑制することができる。
【0041】
そしてまた、脱水室14内は、脱水時に真空以外の雰囲気としている。本実施形態の脱水装置10は、近赤外線を照射することで真空以外の雰囲気であっても固体フィルム80内部の水分含有量をより低減させることができ、脱水室14内を真空雰囲気とする場合に比べて簡易な装置構成で脱水を行うことができる。また、脱水室14内は、脱水時に露点が−60℃以下の雰囲気とするため、固体フィルム80内部の水分含有量をより低い値まで脱水させやすい。
【0042】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態の脱水装置110の縦断面図である。脱水装置110は、送風ノズル20,反射板22a,22bを備えない点、複数の赤外線ヒーター40の代わりに、赤外線ヒーター40を備えた複数のノズル付きヒーター30を備える点、複数のヒーター列29の代わりに、ノズル付きヒーター30からなる複数のヒーター列129を備える点以外は、第1実施形態と同様の構成である。そのため、第2実施形態の構成要素のうち第1実施形態と同じ構成要素については第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0043】
ノズル付きヒーター30は、赤外線の照射と流体の送風とが可能なものであり、長手方向が固体フィルム80の搬送方向(前後方向)と直交するように取り付けられている。このノズル付きヒーター30には、一方の面からのみ送風可能なノズル付きヒーター30a,30b,30cと、2つの面から送風可能なノズル付きヒーター30dとの2種類がある。このノズル付きヒーター30は、複数の列(本実施形態では第1〜第7ヒーター列129a〜129gの7つの列)をなすように脱水室14内に配置されている。なお、第1〜第7ヒーター列129a〜129gをまとめてヒーター列129と称する。ヒーター列129の各列は、上下方向に均等配置された3個のノズル付きヒーター30で構成されている。ヒーター列29のうち最も前方に位置する第1ヒーター列129aは、後方の固体フィルム80に向けて送風可能な向きに配置された3個のノズル付きヒーター30aで構成されている。最も後方に位置する第7ヒーター列129gは、前方の固体フィルム80に向けて送風可能な向きに配置された3個のノズル付きヒーター30bで構成されている。それ以外の第2〜第6ヒーター列129b〜129fは、前方及び後方の固体フィルム80に向けて送風可能な向きに配置された各3個のノズル付きヒーター30dで構成されている。なお、ヒーター列129の各列の配置及び各列を構成するノズル付きヒーター30の配置は、第1実施形態のヒーター列29の配置及び赤外線ヒーター40の配置と同様である。例えば、
図3に示すように、第2ヒーター列129bの上から1番目のノズル付きヒーター30dは、第1ヒーター列129aの上から1番目,2番目のノズル付きヒーター30aと上下方向に距離d(≧0)だけ離れて配置されている。また、脱水室14内には、ヒーター列129を構成するノズル付きヒーター30以外にも、固体フィルム80のジグザグ部分81以外の部分に対して赤外線の照射と送風とを行うノズル付きヒーター30が配置されている。具体的には、下方の固体フィルム80に向けて送風可能なノズル付きヒーター30cが、開口17と搬送ローラー87aとの間、及び開口18と搬送ローラー87gとの間、にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0044】
続いて、ノズル付きヒーター30aについて説明する。
図4は、ノズル付きヒーター30aの拡大断面図である。
図5は、
図4のノズル付きヒーター30aをB−B面から見たBB視図である。なお、第7ヒーター列129gを構成するノズル付きヒーター30bは、第1ヒーター列129aを構成するノズル付きヒーター30aの前後を逆にした構成を有している。また、開口17と搬送ローラー87aとの間、及び開口18と搬送ローラー87gとの間、に配置されたノズル付きヒーター30cは、第1ヒーター列129aを構成するノズル付きヒーター30aを
図4において右回りに90°回転させた構成を有している。ノズル付きヒーター30aは、
図4に示すように、赤外線ヒーター40と、赤外線ヒーター40を覆う外周部31aと、を備えている。
【0045】
外周部31aは、
図4に示すように、第1〜第4部材32〜35と、赤外線透過露出面37を有する管状部材36aと、反射層38と、ノズル39a,39bと、封止部材90a,90bと、を備えている。第1部材32は、ノズル付きヒーター30aの最外周を構成する部材であり、後方(
図4の右側)に開口を有している。第1部材32の後方の開口からは、第2,第3部材33,34の後端及び赤外線透過露出面37が露出している。第2部材33,第3部材34は、屈曲した板状の部材であり、それぞれ第1部材32と管状部材36aとの間に配置されると共に、第2部材33と第3部材34とで管状部材36aを上下から挟むように配置されている。第4部材35は、後方が開口するように屈曲した板状の部材であり、管状部材36aの前側を覆うと共に赤外線ヒーター40の前側及び上下を覆っている。第4部材35は、上側の後端が第2部材33の前端と接合され、下側の後側が第3部材34の前端と接合されている。第4部材35と第2部材33,第3部材34とは、例えば溶接などにより接合されている。これにより、第1部材32の内周面と第2〜第4部材33〜35の外周面とで囲まれる空間91が形成されている。第1部材32は、第1実施形態の送風ノズル20と同様の図示しない給気ファンや配管が接続されており、空間91は給気ファンからノズル39a,39bへの送風の流路となっている。なお、図示は省略するが、第1部材32は左右方向(
図5の左右方向)の端部に側部を有し、第1部材32の内部の空間(空間91,92)の左右方向の端部はこの側部により閉じられている。また、第2〜第4部材33〜35の左右方向の端部は、この側部に溶接されている。第1〜第4部材32〜35の材料は例えば金属である。なお、第1〜第4部材32〜35は、例えばSUS304やアルミニウムなど、第1実施形態の反射板22a,22bと同様に少なくとも近赤外線の一部を反射可能な材料で形成することが好ましい。
【0046】
ノズル39aは、第1,第2部材32,33により形成されている。ノズル39bは、第1,第3部材32,34により形成されている。すなわち、第1,第2部材32,33はノズル39aを形成するノズル形成部材となっており、第1,第3部材32,34はノズル39bを形成するノズル形成部材となっている。具体的には、第1部材32の後上端と第2部材33の後端とは離間しており、これにより
図5に示すように長手方向が左右方向(
図5の左右方向)と平行なスリット状のノズル39aが赤外線透過露出面37の上側に形成されている。同様に、第1部材32の後下端と第3部材34の後端とは離間しており、これにより
図5に示すように長手方向が左右方向(
図5の左右方向)と平行なスリット状のノズル39bが赤外線透過露出面37の下側に形成されている。また、第1部材32の後上端部のうち第2部材33の後端部に対向する面と、第2部材33の後端部のうち第1部材32の後上端部に対向する面とは、いずれも後方に進むにつれて赤外線透過露出面37側(下方)に近づくように水平方向(前後方向)から傾斜している。これにより、空間91を通過してノズル39aから流れる流体は、この傾斜に沿って主に後方下向き(
図3,4の右下方向)に流出する。同様に、第1部材32の後下端部のうち第3部材34の後端部に対向する面と、第3部材34の後端部のうち第1部材32の後下端部に対向する面とは、いずれも後方に進むにつれて赤外線透過露出面37側(上方)に近づくように水平方向(前後方向)から傾斜している。これにより、空間91を通過してノズル39bから流れる流体は、この傾斜に沿って主に後方上向き(
図3,4の右上方向)に流出する。ノズル39a,ノズル39bから送風される流体は、第1実施形態の送風ノズル20から送風される流体と同じである。なお、ノズル形成部材である第1〜第3部材32〜34は、赤外線透過露出面37を覆わないように配置されている。
【0047】
管状部材36aは、赤外線ヒーター40の周囲を覆う管状の部材である。管状部材36aは、赤外線ヒーター40からの電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を透過可能であり、上述した赤外線透過材料を一体成形した部材である。本実施形態では、管状部材36aは、赤外線ヒーター40の外管44及び内管42と同様に、波長が3.5μmを超える赤外線を吸収し且つ3.5μm以下の赤外線については透過する石英ガラスで形成されているものとした。この管状部材36aは、後方に赤外線透過露出面37を有している。赤外線透過露出面37は、平面状に形成されており、その平面は垂直方向(
図3,4の上下方向)と平行な面になっている。赤外線透過露出面37と、第1〜第3部材32〜34の後端とは、同じ平面上に位置している。また、管状部材36aの前側は、断面形状が例えばパラボラ、楕円の弧、円弧等の曲線形状となっている。本実施形態では、パラボラ形状になっているものとした。管状部材36aは、図示は省略するが左右方向(
図5の左右方向)の端部に側部を有し、管状部材36aの内部の空間は左右方向の端部がこの側部によりほぼ閉じられている。また、赤外線ヒーター40のキャップ50(
図2)は管状部材36aの側部を貫通しており、この側部が赤外線ヒーター40を支持している。さらに、管状部材36aは、この両端の側部が第1部材32の両端の側部に挟まれており、第1部材32の側部によって管状部材36aが保持されている。管状部材36aの前側の外表面には、反射層38が形成されている。この反射層38は、フィラメント41からみて赤外線透過露出面37とは反対側に設けられており、フィラメント41から放射される電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を反射する上述した赤外線反射材料で形成されている。反射層38は、管状部材36aの表面に塗布乾燥、スパッタリングやCVD、溶射といった成膜方法を用いて赤外線反射材料を成膜することで形成することができる。反射層38は、管状部材36aの前側の表面に形成されているため、断面は管状部材36aの前側の曲線形状に沿った形状をしている。そして、その曲線形状の焦点もしくは中心位置に赤外線ヒーター40(フィラメント41)が配置されている。そのため、フィラメント41から発せられた近赤外線の一部は、反射層38で反射され、赤外線透過露出面37を透過して効率的に後方の固体フィルム80へ照射される。本実施形態では、管状部材36a及び反射層38がパラボラ形状であるため、反射層38で反射した近赤外線は後方に水平に進んでいき、固体フィルム80のうち赤外線透過露出面37と前後方向に対向する領域に照射される。なお、ノズル付きヒーター30aにおいて、赤外線ヒーター40の冷媒流路49を流通する冷媒は、赤外線ヒーター40の外面である外管44の温度を直接的に下げる役割だけでなく、外管44の温度を下げることで赤外線透過露出面37の温度を間接的に下げる役割を果たす。なお、管状部材36aと外管44との間の空間を冷媒流路とし、この冷媒流路に冷媒を流通させることで直接的に赤外線透過露出面37の温度を下げてもよい。
【0048】
封止部材90a,90bは、第2〜第4部材33〜35で囲まれる空間92を封止する部材である。封止部材90aは、長手方向が左右方向と平行な棒状の部材であり、第2部材33の後端部と赤外線透過露出面37を有する管状部材36aの後上側(
図4の右上側)との間のスリット状の開口を封止している。封止部材90bは、長手方向が左右方向と平行な棒状の部材であり、第3部材34の後端部と赤外線透過露出面37を有する管状部材36aの後下側(
図4の右下側)との間のスリット状の開口を封止している。これにより、封止部材90a,90bは、ノズル39a,39bからの送風が空間92内に進入するのを抑制している。封止部材90a,90bは、例えば樹脂などの弾性体である。なお、封止部材90a,90bは中身の詰まった中実の部材であってもよいし、例えばチューブ状など中空の部材であってもよい。
【0049】
次に、ノズル付きヒーター30dについて説明する。
図6は、ノズル付きヒーター30dの拡大断面図である。ノズル付きヒーター30dは、
図6に示すように、赤外線ヒーター40と、赤外線ヒーター40を覆う外周部31bと、を備えている。
【0050】
外周部31bは、
図6に示すように、上側第1部材32a,下側第1部材32b,前側第2部材33a,後側第2部材33b,前側第3部材34a,後側第3部材34b,上側第4部材35a,下側第4部材35bを備えている。また外周部31bは、赤外線透過露出面37a,37bを有する管状部材36bと、ノズル39c〜39fと、封止部材90c〜90fと、を備えている。上側第1部材32a,下側第1部材32bは、ノズル付きヒーター30dの最外周を構成する部材であり、前後(
図6の左右)に開口を形成している。上側第1部材32a,下側第1部材32bの前方の開口からは、前側第2部材33a,前側第3部材34aの前端及び赤外線透過露出面37aが露出している。上側第1部材32a,下側第1部材32bの後方の開口からは、後側第2部材33b,後側第3部材34bの後端及び赤外線透過露出面37bが露出している。前側第2部材33a,前側第3部材34aは、屈曲した板状の部材であり、それぞれ上側第1部材32aと管状部材36bとの間、下側第1部材32bと管状部材36bとの間に配置されると共に、前側第2部材33aと前側第3部材34aとで管状部材36aを上下から挟むように配置されている。後側第2部材33b,後側第3部材34bについても、前側第2部材33aと前側第3部材34aと前後対象(
図6の左右対称)な点を除いて同様に配置されている。上側第4部材35a,下側第4部材35bは、板状の部材であり、管状部材36b及び赤外線ヒーター40の上下に配置されている。上側第4部材35aは、前側第2部材33a及び後側第2部材33bに接合されている。下側第4部材35bは、前側第3部材34a及び後側第3部材34bに接合されている。これにより、上側第1部材32a,前側第2部材33a,後側第2部材33b,上側第4部材35aで囲まれる空間91aが形成され、下側第1部材32b,前側第3部材34a,後側第3部材34b,下側第4部材35bで囲まれる空間91bが形成されている。上側第1部材32a,下側第1部材32bは、第1実施形態の送風ノズル20と同様の図示しない給気ファンや配管が接続されており、空間91a、91bは給気ファンからノズル39c〜39fへの送風の流路となっている。上側第1部材32a,下側第1部材32b,前側第2部材33a,後側第2部材33b,前側第3部材34a,後側第3部材34b,上側第4部材35a,下側第4部材35bの材料は、ノズル付きヒーター30aの第1〜第4部材32〜35と同様のものを用いることができる。
【0051】
ノズル39cは、上側第1部材32aの前端と前側第2部材33aの前端とにより形成されている。ノズル39dは、下側第1部材32bの前端と前側第3部材34aの前端とにより形成されている。ノズル39eは、上側第1部材32aの後端と後側第2部材33bの後端とにより形成されている。ノズル39fは、下側第1部材32bの後端と後側第3部材34bの後端とにより形成されている。すなわち、上側第1部材32a,下側第1部材32b,前側第2部材33a,後側第2部材33b,前側第3部材34a,後側第3部材34bはノズル39c〜39fを形成するノズル形成部材となっている。これらのノズル39c〜39fは、ノズル付きヒーター30aのノズル39a,39bと同様に、長手方向が左右方向と平行なスリット状のノズルとして形成されている。また、上側第1部材32aの前後端,下側第1部材32bの前後端,前側第2部材33aの前端,後側第2部材33bの後端,前側第3部材34aの前端,後側第3部材34bの後端の各面が水平方向から傾斜している。これにより、空間91a,91bを通過してノズル39c,39dから流れる流体は、この傾斜に沿って赤外線透過露出面37aに近づくように流出する。同様に、空間91a,91bを通過してノズル39e,39fから流れる流体は、この傾斜に沿って赤外線透過露出面37bに近づくように流出する。具体的には、ノズル39cから流れる流体は前方下向きに流出し、ノズル39dから流れる流体は前方上向きに流出する。ノズル39eから流れる流体は後方下向きに流出し、ノズル39fから流れる流体は後方上向きに流出する。ノズル39c〜39fから送風される流体は、第1実施形態の送風ノズル20から送風される流体と同じである。なお、ノズル形成部材である上側第1部材32a,下側第1部材32b,前側第2部材33a,後側第2部材33b,前側第3部材34a,後側第3部材34bは、赤外線透過露出面37a,37bを覆わないように配置されている。
【0052】
管状部材36bは、赤外線ヒーター40の周囲を覆う管状の部材である。管状部材36bは、ノズル付きヒーター30aの管状部材36aと同様に赤外線透過材料を一体成形した部材であり、本実施形態では、管状部材36aと同じ石英ガラスで形成されているものとした。この管状部材36bは、前方に赤外線透過露出面37aを有し、後方に赤外線透過露出面37bを有している。赤外線透過露出面37a,37bは、平面状に形成されており、その平面は垂直方向(
図3,6の上下方向)と平行な面になっている。赤外線透過露出面37aと、上側第1部材32a,下側第1部材32b,前側第2部材33a,前側第3部材34aの前端とは、同じ平面上に位置している。同様に、赤外線透過露出面37bと、上側第1部材32a,下側第1部材32b,後側第2部材33b,後側第3部材34bの後端とは、同じ平面上に位置している。赤外線ヒーター40から発せられた近赤外線を含む電磁波は、この赤外線透過露出面37a,37bを透過して固体フィルム80のうち赤外線透過露出面37a,37bと前後方向に対向する領域に照射される。なお、ノズル付きヒーター30dにおいて、赤外線ヒーター40の冷媒流路49を流通する冷媒は、赤外線ヒーター40の外面である外管44の温度を直接的に下げる役割だけでなく、外管44の温度を下げることで赤外線透過露出面37a,37bの温度を間接的に下げる役割を果たす。なお、管状部材36bと外管44との間の空間を冷媒流路とし、この冷媒流路に冷媒を流通させることで直接的に赤外線透過露出面37a,37bの温度を下げてもよい。
【0053】
封止部材90c〜90fは、前側第2部材33a,後側第2部材33b,上側第4部材35a,管状部材36bで囲まれる空間92aや、前側第3部材34a,後側第3部材34b,下側第4部材35b,管状部材36bで囲まれる空間92bを封止する部材である。封止部材90c〜90fは、長手方向が左右方向と平行な棒状の部材であり、空間91a,91bのスリット状の開口を封止している。これにより、封止部材90c〜90fは、ノズル39c〜39fからの送風が空間92a,92b内に進入するのを抑制している。封止部材90c〜90fは、ノズル付きヒーター30aの封止部材90a,90bと同様のものを用いることができる。
【0054】
この脱水装置110は、上述した脱水装置10と同様に脱水室14の雰囲気を調整し、固体フィルム80を搬送し、ノズル付きヒーター30が赤外線ヒーター40からの近赤外線の照射とノズル39a〜39fからの送風とを行うことで、脱水装置10と同様に例えば水分含有量が100ppm以下まで固体フィルム80の脱水を行うことができる。
【0055】
以上説明した第2実施形態の脱水装置110では、ヒーター列129のうち固体フィルム80のジグザグ部分81のジグザグの重ね方向における外側の両方に配置された外側列、すなわち第1ヒーター列129a及び第7ヒーター列129g、を構成するノズル付きヒーター30a,30bの赤外線ヒーター40は、
図4に示したように管状部材36aに形成された反射層38を有している。この反射層38は、フィラメント41からみて固体フィルム80のジグザグ部分81とは反対側に形成されている。そのため、第1ヒーター列129aの赤外線ヒーター40及び第7ヒーター列129gの赤外線ヒーター40からジグザグ部分81とは反対方向に放射される近赤外線は、反射層38によりジグザグ部分81側に反射される。これにより、赤外線ヒーター40からの近赤外線をより効率よく固体フィルム80に照射することができ、より効率よく固体フィルムの脱水を行うことができる。
【0056】
また、ノズル付きヒーター30a〜30cが赤外線ヒーター40と固体フィルム80に対して流体を送風可能なノズル39a,39bとを備え、ノズル付きヒーター30dが赤外線ヒーター40と固体フィルム80に対して流体を送風可能なノズル39c〜39fとを備えている。そのため、固体フィルム80の脱水を赤外線ヒーター40により行うと共に、脱水で固体フィルム80内部から出た水分の除去をノズル39a〜39fからの送風により行って、より効率よく脱水を行うことができる。しかも、ノズル39a〜39fから流体を送風することにより固体フィルム80の冷却を行うことで、赤外線ヒーター40により固体フィルム80の脱水を行いつつ、送風により固体フィルム80の過熱を抑制することができる。
【0057】
しかも、ノズル付きヒーター30aでは、ノズル39aは後下方向(
図4の右下方向)に向かって流体を送風し、ノズル39bは後上方向(
図4の右上方向)に向かって流体を送風するから、赤外線ヒーター40から赤外線透過露出面37を透過して近赤外線が照射される領域(
図4における赤外線透過露出面37に対向する領域及びその周辺の領域)にノズル39a,39bから直接流体が当たることになる。換言すると、本実施形態では、固体フィルム80のうち近赤外線が照射される領域と流体が直接当たる領域(ノズル39a,39bからの送風の流出方向の延長上の領域)とが重なるように、第1〜第3部材32〜34の後端部の傾斜角やノズル付きヒーター30aと固体フィルム80との距離が予め調整されている。これにより、近赤外線により脱水された水分を送風によって効率よく除去できる。ノズル付きヒーター30b,30cや、ノズル付きヒーター30dについても同様である。
【0058】
さらに、ノズル付きヒーター30a〜30cは、ノズル39a,39bと外部に露出しフィラメント41からの電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を透過して固体フィルム80に照射可能な赤外線透過露出面37とを有し赤外線ヒーター40の周囲の少なくとも一部を覆う外周部31aと、赤外線透過露出面37を冷却する冷媒が流通可能な冷媒流路49と、を有している。同様に、ノズル付きヒーター30dは、ノズル39c〜39fと赤外線透過露出面37a,37bとを有する外周部31bと、冷媒流路49とを有している。そのため、外部に露出する面である赤外線透過露出面37,37a,37bの過熱を、冷媒の流通によってより抑制することができる。そして、赤外線透過露出面37,37a,37bの過熱をより抑制することで、例えば固体フィルム80や脱水室14内の雰囲気の過熱をより抑制することができる。また、ノズル付きヒーター30と固体フィルム80との距離(赤外線透過露出面37,37a,37bと固体フィルム80との距離)をより小さくして近赤外線を効率よく照射し、脱水効率を向上させることができる。
【0059】
さらにまた、ノズル付きヒーター30dは、赤外線ヒーター40を1つ有し、ジグザグ部分81の固体フィルム80に挟まれて配置されており、自身を挟む固体フィルム80のそれぞれに対して流体を送風可能な複数のノズル39c〜39fを有している。すなわち、ノズル付きヒーター30dは、前方の固体フィルム80に流体を送風可能なノズル39c〜39dと、後方の固体フィルム80に流体を送風可能なノズル39e〜39fとを有している。こうすれば、1つの赤外線ヒーター40を備えたノズル付きヒーター30dから自身を挟む両側の固体フィルム80に対して近赤外線の照射と送風とを行うことができる。このため、例えばノズル付きヒーター30dの代わりにノズル付きヒーター30a,30bを背中合わせに配置するなど、前後の固体フィルム80に対して別々にノズル付きヒーター30a,30bを配置する場合と比べて少数の赤外線ヒーター40で脱水を行うことができる。
【0060】
ここで、第1〜第2実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。第1〜第2実施形態の脱水室14が本発明の脱水室に相当し、第1〜第2実施形態のフィラメント41が発熱体に相当し、第1〜第2実施形態の内管42,外管44及び第2実施形態の管状部材36a,36bが管に相当し、第1〜第2実施形態の赤外線ヒーター40が赤外線ヒーターに相当する。また、第1〜第2実施形態の搬送ローラー87が搬送手段に相当し、第2実施形態の反射層38が反射層に相当し、第1実施形態の反射板22a,22bが反射板に相当し、第1実施形態の送風ノズル20及び第2実施形態のノズル39a〜39fが送風手段に相当する。さらに、第2実施形態のノズル39a〜39fがノズルに相当し、第2実施形態のノズル付きヒーター30がノズル付きヒーターに相当し、第2実施形態の赤外線透過露出面37,37a,37bが赤外線透過露出面に相当し、第2実施形態の外周部31a,31bが外周部に相当し、第2実施形態の冷媒流路49が冷媒流路に相当する。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0062】
例えば、上述した第1実施形態において、ヒーター列29の各列が備える赤外線ヒーター40の数が同じとしたが、これに限られない。例えば、搬送方向(前後方向)の下流側が密になる傾向に赤外線ヒーター40を配置してもよいし、搬送方向の上流側が密になる傾向に赤外線ヒーター40を配置してもよい。
図7は、変形例の脱水装置210の縦断面図である。
図7に示すように、脱水装置210では、搬送方向の一番奥の第7ヒーター列29gが6個の赤外線ヒーター40で構成されており、第2〜第6ヒーター列29b〜29fと比べて赤外線ヒーター40が密になっている。ここで、搬送方向の下流側、すなわち脱水室14での脱水工程の終期は、固体フィルム80の水分が減少しており固体フィルム80の変形などの問題が生じにくい。そのため、下流側の赤外線ヒーター40を密に配置して近赤外線の放射強度を高めることで脱水機能を効率よく向上させ脱水時間を短縮することができる。また、脱水装置210では、搬送方向の一番手前の第1ヒーター列29aが6個の赤外線ヒーター40で構成されており、第2〜第6ヒーター列29b〜29fと比べて赤外線ヒーター40が密になっている。ここで、搬送方向の上流側、すなわち脱水室14での脱水工程の初期は、固体フィルム80の表面に水分が付着している場合がある。そのため、搬送方向の上流側が密になる傾向に赤外線ヒーター40を配置することで、そのような水分を脱水初期に速やかに蒸発させて脱水時間を短縮することができる。なお、搬送方向の上流側と下流側とのいずれか一方のみ赤外線ヒーター40が密になる傾向に配置するものとしてもよい。また、
図7では一番手前の第1ヒーター列29aと一番奥の第7ヒーター列29gのみ赤外線ヒーター40を密に配置しているが、これに限られない。例えば、下流側が密になる傾向に赤外線ヒーター40を配置する場合には、下流側に向かって徐々に赤外線ヒーター40が密になる(徐々に各列の赤外線ヒーター40の本数が多くなる)ようにしてもよい。同様に、上流側が密になる傾向に赤外線ヒーター40を配置する場合には、上流側に向かって徐々に赤外線ヒーター40が密になる(徐々に各列の赤外線ヒーター40の本数が多くなる)ようにしてもよい。また、
図7では、赤外線ヒーター40が上下方向に密になるように配置しているが、これに限らず前後方向に密になるように赤外線ヒーター40を配置してもよい。なお、
図7では、第1実施形態の変形例を示したが、第2実施形態のノズル付きヒーター30の配置についても同様である。
【0063】
第2実施形態では、反射層38は管状部材36aの外表面に形成されているものとしたが、内表面に形成してもよい。また、反射層38を外管44の外表面又は内表面に形成してもよいし、内管42の外表面に形成してもよい。また、表面に形成するものに限らず赤外線ヒーター40が反射層を独立した部材として備えるものとしてもよい。第1実施形態の赤外線ヒーター40についても、同様に外管44や内管42に反射層を形成したり、反射層を独立した部材として備えるものとしてもよい。この場合、固体フィルム80のジグザグ部分81のジグザグの重ね方向における外側に配置された外側列を構成する赤外線ヒーター40が反射層を備えることが好ましい。具体的には、
図1の第1ヒーター列29aを構成する赤外線ヒーター40や、第7ヒーター列29gを構成する赤外線ヒーター40が反射層を備えることが好ましく、この2つの列の赤外線ヒーター40が全て反射層を備えることがより好ましい。
【0064】
第1実施形態では、ヒーター列29を各列を構成する赤外線ヒーター40は、隣接する列の上下方向に最も近い赤外線ヒーター40に対して距離dだけ上下方向に離れて配置されているものとしたが、これに限られない。例えば、隣接する列の上下方向に最も近い赤外線ヒーター40に対して上下方向の位置が一部重複するものとしてもよい。第2実施形態のノズル付きヒーター30についても同様である。
【0065】
第1実施形態では、複数のヒーター列29のいずれの列についても、列を構成する赤外線ヒーター40のいずれもが隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて配置されているものとしたが、これに限られない。例えば、複数のヒーター列29のいずれか1以上の列において、隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて配置されていない赤外線ヒーター40が存在してもよい。また、隣の列を構成する赤外線ヒーター40に対して重ね方向と垂直な方向にずれて配置されているものが存在しないヒーター列29が1列以上存在してもよい。第2実施形態のノズル付きヒーター30についても同様である。
【0066】
第1及び第2実施形態では、脱水時に脱水室14内を露点が−60℃以下の大気雰囲気とするものとしたが、これに限られない。例えば露点が−60℃以下でなくともよい。また、大気雰囲気に限らず他の真空以外の雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気など)としてもよい。また、脱水室14内の気圧は大気圧に限らず大気圧から減圧した状態としてもよい。あるいは、脱水室14内を真空雰囲気としてもよい。
【0067】
第1実施形態では、送風ノズル20は
図1の下方向に流体を送風するものとしたが、これに限られない。例えば、固体フィルム80に向けて斜め下方向に送風してもよい。また、第2実施形態においても送風ノズル20を備えるものとしてもよい。
【0068】
第1及び2実施形態では、搬送ローラー87が脱水室14内で固体フィルム80を上下に掛け渡してジグザグに搬送するものとしたが、これに限られない。例えば、脱水室14内で固体フィルム80を左右に掛け渡してジグザグに搬送するものとしてもよい。あるは、脱水室14内で固体フィルム80をジグザグに搬送せず、開口17から開口18まで直線上に搬送するものとしてもよい。
【0069】
第2実施形態では、ノズル付きヒーター30aは赤外線透過露出面37を備えるものとしたが、これを備えず赤外線ヒーター40がノズル付きヒーター30aの外部に露出しているものとしてもよい。ノズル付きヒーター30b〜30dについても同様である。
【0070】
第2実施形態では、ノズル付きヒーター30aの外周部31aは、赤外線透過露出面37を有する管状部材36aとは別にノズル形成部材としての第1〜第3部材32〜34を有するものとしたが、赤外線透過露出面37を有する部材にノズルを形成してもよい。例えば、
図8の変形例のノズル付きヒーター130のような構成を採用してもよい。このノズル付きヒーター130は、フィラメント41と内管42とからなるヒーター本体43と、このヒーター本体43の外側に設けられ内管42を囲むように形成された外管144と、を備えた赤外線ヒーター140を備えている。外管144は、上述した管状部材36aと同様にフィラメント41からの電磁波のうち少なくとも近赤外線の一部を透過可能であり、外周面が赤外線透過露出面137となっている。また、外管144は、複数のノズル144aが形成されている。このノズル付きヒーター130では、内管42と外管144との間の空間が冷媒流路49となっている。この冷媒流路49を流通する冷媒はノズル144aからノズル付きヒーター130の外部へ流出し、これが固体フィルム80への送風となる。すなわち、ノズル付きヒーター130では、冷媒流路49からの冷媒が自身の冷却と固体フィルム80への送風とを兼ねることができるようになっている。このノズル付きヒーター130でも、近赤外線の照射と送風とを共に行うことができる。
【0071】
第2実施形態では、ノズル付きヒーター30dが、自身を挟む両側の固体フィルム80に対して近赤外線の照射と送風とを行うものとしたが、ノズル付きヒーター30dの代わりにノズル付きヒーター30a,30bを背中合わせに配置してもよい。また、ノズル付きヒーター30dは赤外線ヒーター40を1つ備えるものとしたが、複数の赤外線ヒーター40を備えるものとしてもよい。例えば、ノズル付きヒーター30dが、自身を挟む両側の固体フィルム80の一方に対して近赤外線を照射する赤外線ヒーター40と、他方に対して近赤外線を照射する赤外線ヒーター40と、の2つの赤外線ヒーター40を備えていてもよい。
【0072】
第1及び第2実施形態において、搬送ローラー87は、流体を周囲に流出させることで、固体フィルム80を搬送ローラー87自身から浮かした状態で支持しつつ搬送するものとしたが、この搬送ローラー87からの流体を、固体フィルム80への送風として利用してもよい。
【0073】
上述した実施形態では、発熱体であるフィラメント41の材料としてW(タングステン)を例示したが、加熱すると赤外線を含む電磁波を放出するものであれば特に限定されない。例えば、Mo,Ta,Fe−Cr−Al合金及びNi−Cr合金でもよい。
【0074】
上述した実施形態では、冷媒流路49を流れる冷媒や冷風として空気を用いたが、窒素などの不活性ガスを用いてもよい。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
図9に示す脱水装置310を作製し、実施例1とした。脱水装置310は、脱水室14と、3本の赤外線ヒーター40と、排気装置25と、給気装置29と、を備えている。脱水室14は前端面及び後端面にそれぞれ開口17,18を有している。赤外線ヒーター40は、第1実施形態の赤外線ヒーター40と同じ構成である。赤外線ヒーター40のフィラメント41は100%出力が750Wのものを用いた。この3本の赤外線ヒーター40は、前後方向に等間隔に配置されている。排気装置25は、開口17を介して脱水室14の雰囲気を排気する。給気装置29は、開口18を介して脱水室14内に熱風(空気)を供給する。固体フィルム80は、175mm×145mm,厚さ38μmのPETフィルムであり、脱水室14内の台の上に載置した。固体フィルム80の水分含有量は、1質量%以下であった。
【0076】
[比較例1]
赤外線ヒーター40を備えず、給気装置29からの熱風のみで脱水を行う点以外は、脱水装置310と同じ構成の脱水装置を作製し、比較例1とした。
【0077】
[評価試験]
実施例1及び比較例1について、脱水室14内に載置した固体フィルム80の脱水を行い、脱水後の固体フィルム80の水分含有量を比較した。実施例1では、給気装置29が給気する熱風の温度を30℃、風量を37.6m
3/h、風速を1.9m/sとした。また、排気装置25が排気する風量(排気量)を29.2m
3/hとした。赤外線ヒーター40は出力を78%とし、冷媒流路49を流通させる空気の流量は300L/min(1本の赤外線ヒーター40あたり)とした。なお、この条件で脱水を行ったところ、排気装置25の排気の温度は70℃であり、赤外線ヒーター40の外管44の表面温度は184℃であった。比較例1では、給気装置29が給気する熱風の温度を82℃、風量を37.6m
3/h、風速を1.9m/sとした。また、排気装置25が排気する風量(排気量)を28.6m
3/hとした。なお、この条件で脱水を行ったところ、排気装置25の排気の温度は64℃であった。実施例1及び比較例1の脱水条件を表1にまとめて示す。この脱水条件で、脱水時間を30分,60分,90分と変化させて試験を行い、それぞれの脱水時間での固体フィルム80の水分含有量を測定した。
【0078】
【表1】
【0079】
上記の評価試験の結果、実施例1では、脱水前の固体フィルム80の水分含有量を値100とすると、脱水時間30分,60分,90分における固体フィルム80の水分含有量はそれぞれ約35,約20,約20であった。比較例1では、脱水前の固体フィルム80の水分含有量を値100とすると、脱水時間30分,60分,90分における固体フィルム80の水分含有量はそれぞれ約70,約45,約45であった。この結果からわかるように、赤外線ヒーター40を用いて脱水を行う実施例1の脱水装置の方が、脱水時間30分,60分,90分のいずれにおいても固体フィルム80の水分含有量が低かった。また、実施例1では、脱水時間が30分であっても、比較例1で脱水時間が30分,60分,90分のいずれの場合よりも固体フィルム80の水分含有量が低くなっていた。また、実施例1,比較例1のいずれも、脱水時間が60分以上の領域では固体フィルム80の水分含有量がほぼ一定の値となった。これらのことから、比較例1において脱水時間を長時間にしたとしても、実施例1と同程度まで固体フィルム80の水分含有量を低くすることはできないと考えられる。実施例1の脱水装置では、赤外線ヒーター40を用いて3.5μmを超える赤外線を吸収して近赤外線を固体フィルム80に照射することにより、固体フィルム内部の水分含有量をより低減させることができていると考えられる。
【0080】
本出願は、2013年4月4日に出願された日本国特許出願第2013−078339号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。