特許第6072911号(P6072911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072911大きい温度差で外部流体を加熱するためのヒートポンプを含む機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072911
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】大きい温度差で外部流体を加熱するためのヒートポンプを含む機器
(51)【国際特許分類】
   F25B 30/02 20060101AFI20170123BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F25B30/02 Z
   F25B1/00 396A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-524823(P2015-524823)
(86)(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公表番号】特表2015-527559(P2015-527559A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】FR2013051701
(87)【国際公開番号】WO2014020255
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】1257562
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイ・プールー
(72)【発明者】
【氏名】アリ・ブリグ
(72)【発明者】
【氏名】アサード・ゾーハイブ
(72)【発明者】
【氏名】カリム・ベズブ
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−024113(JP,A)
【文献】 特開2005−049087(JP,A)
【文献】 特開2005−052544(JP,A)
【文献】 特開2007−190257(JP,A)
【文献】 特開2007−192464(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0212178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 30/02
F25B 1/00
F26B 21/00
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース流体(F)から大きい温度差の外部流体(Fe)を加熱するためのヒートポンプ(10)を備える機器(1)であって、前記ヒートポンプ(10)は、
− 第1熱交換器(11)の近くに位置する前記ソース流体(Fs)、および第2熱交換器(12)の近くに位置する前記外部流体(Fe)それぞれと熱を交換するよう構成された第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)であって、それぞれが入口および出口を有する第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)と、
− ハイドロフルオロカーボン冷却剤およびハイドロフルオロオレフィン冷却剤から選択された冷却剤と、
− 前記第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)の間で前記冷却剤を循環させるのに適した冷却剤回路であって、前記第1熱交換器(11)の前記出口に接続された入口、および前記第2熱交換器(12)の前記入口に接続された出口を有する圧縮ユニット(13)と、前記第2熱交換器(12)の前記出口に接続された入口、および前記第1熱交換器(11)の前記入口に接続された出口を有する膨張ユニット(14)とを備える、冷却剤回路と、
を備え、
前記ヒートポンプ(10)の前記第2熱交換器(12)および前記冷却剤回路は、前記冷却剤を遷臨界サイクルで循環させるのに適しており、
前記機器(1)は、前記ヒートポンプが、温度差が20℃より大きい温度差で加熱するのに適しており、かつ120℃より大きい高い目標温度Tcを達成することができることを特徴とし、
かつ、機器が
− 入口(3a)および出口(3b)を有するチャンバ(3)であって、前記第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)はそれぞれ、前記チャンバ(3)の前記出口(3b)の近く、および前記入口(3a)の近くに配置されている、チャンバ(3)と、
− 前記チャンバ(3)に配置された処理システム(2)であって、前記チャンバ(3)の前記入口(3a)および前記出口(3b)がそれぞれ、前記処理システム(2)の上流および下流に配置された、処理システム(2)と、
− 前記第2熱交換器(12)の近く、および前記処理システム(2)の近くに前記外部流体(Fe)を連続的に循環させるのに適した外部流体回路(4)であって、前記外部流体回路(4)は、前記処理システム(2)の下流かつ第1熱交換器(11)の近くに前記外部流体を前記ソース流体として循環するようさらに適合され、前記外部流体(Fe)が前記処理システム(2)を通る際に、前記処理システム(2)の上流の前記外部流体および前記処理システム(2)の下流の前記外部流体の間の大きい温度差で熱を移送する、外部流体回路(4)と、
をさらに備えることを特徴とする、機器(1)。
【請求項2】
前記冷却剤が臨界温度および臨界圧力を有する臨界点を有し、かつ前記冷却剤が前記圧縮ユニット(13)の前記出口および前記第2熱交換器(12)の前記入口において、前記臨界圧力より大きい超臨界圧力、および前記臨界温度より大きい超臨界温度を同時に示すように、前記圧縮ユニット(13)が前記冷却剤を圧縮するよう構成されている、請求項1に記載の機器(1)。
【請求項3】
前記第2熱交換器が超臨界流体状態の前記冷却剤を冷却するよう構成されたガスクーラー(12)であり、前記ガスクーラー(12)に入る際には、前記冷却剤は同時に、前記臨界圧力より大きい超臨界圧力、および前記臨界温度より大きい超臨界温度であり、かつ一定の超臨界圧力において前記冷却剤の冷却が行われる、請求項2に記載の機器(1)。
【請求項4】
前記冷却剤が、ハイドロフルオロカーボン冷却剤R−32である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項5】
前記ヒートポンプ(10)が前記チャンバ(3)内に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項6】
前記処理システムが乾燥すべき材料を受け入れるよう意図された乾燥ラック(2)であり、前記外部流体回路(4)は、前記第2熱交換器(12)の近く、前記乾燥ラック(2)の近く、および前記第1熱交換器(11)の近くに空気を連続的に循環するのに適している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項7】
前記第2熱交換器(12)の近くに循環された前記外部流体(Fe)からの熱を貯蔵するのに適した熱貯蔵ユニットをさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項8】
前記処理システム(2)の上流に配置された追加的な加熱デバイス(5)をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項9】
前記ヒートポンプが、30℃より大きい温度差で加熱するのに適している、請求項1に記載の機器(1)。
【請求項10】
前記ヒートポンプが、40℃より大きい温度差で加熱するのに適している、請求項1に記載の機器(1)。
【請求項11】
前記ヒートポンプが、60℃より大きい温度差で加熱するのに適している、請求項1に記載の機器(1)。
【請求項12】
ソース流体(F)から大きい温度差で外部流体(Fe)を加熱するために機器(1)におけるヒートポンプ(10)の使用であって、前記温度差は、20℃より大きく、かつ120℃より大きい高い目標温度Tcに到達することが可能であり、
前記ヒートポンプ(10)は、
− 第1熱交換器(11)の近くに位置する前記ソース流体(Fs)、および第2熱交換器(12)の近くに位置する前記外部流体(Fe)それぞれと熱を交換するよう構成された第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)であって、それぞれが入口および出口を有する前記第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)と、
− ハイドロフルオロカーボン冷却剤およびハイドロフルオロオレフィン冷却剤から選択された冷却剤と、
− 前記第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)の間で前記冷却剤を循環させるのに適した冷却剤回路であって、前記第1熱交換器(11)の前記出口に接続された入口、および前記第2熱交換器(12)の前記入口に接続された出口を有する圧縮ユニット(13)と、前記第2熱交換器(12)の前記出口に接続された入口、および前記第1熱交換器(11)の前記入口に接続された出口を有する膨張ユニット(14)とを備える冷却剤回路と、
を備え、
前記第2熱交換器(12)および前記冷却剤回路は、前記冷却剤を遷臨界サイクルで循環させるのに適しており、
前記機器(1)は、
− 入口(3a)および出口(3b)を有するチャンバ(3)であって、前記第1熱交換器(11)および第2熱交換器(12)はそれぞれ、前記チャンバ(3)の前記出口(3b)の近くおよび前記入口(3a)の近くに配置された、チャンバ(3)と、
− 前記チャンバ(3)に配置された処理システム(2)であって、前記チャンバ(3)の前記入口(3a)および前記出口(3b)がそれぞれ、前記処理システム(2)の上流および下流に配置された、処理システム(2)と、
− 前記第2熱交換器(12)の近く、および前記処理システム(2)の近くに前記外部流体(Fe)を連続的に循環させるのに適した外部流体回路(4)であって、前記外部流体回路(4)は、前記処理システム(2)の下流かつ第1熱交換器(11)の近くに前記外部流体を前記ソース流体として循環するのに適しており、前記外部流体(Fe)が前記処理システム(2)を通る際に、前記処理システム(2)の上流の前記外部流体および前記処理システム(2)の下流の前記外部流体の間の大きい温度差で熱を移送する、外部流体回路(4)と、
を備える、ヒートポンプ(10)の使用。
【請求項13】
前記処理システムが乾燥すべき材料を受け入れるよう意図された乾燥ラック(2)であり、前記外部流体回路(4)は、前記第2熱交換器(12)の近く、前記乾燥ラック(2)の近く、および前記第1熱交換器(11)の近くに空気を連続的に循環するのに適している、乾燥すべき材料を乾燥させるための機器(1)におけるヒートポンプ(10)の請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記温度差が30℃より大きい、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記温度差が40℃より大きい、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記温度差が60℃より大きい、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きい温度差で外部流体を加熱するためのヒートポンプを含む機器に関連する。
【背景技術】
【0002】
工業界においては、とりわけ、初期温度および目標温度の間の大きい温度差での外部流体(液体または気体)の加熱に対応して60℃〜150℃の温度範囲内で加熱するという需要がある。熱をそこから抽出する熱源として使用される流体源は、通常液体または気体の流出物である。温度差は、これら流出物の流速により変化する場合がある。
【0003】
本発明は、特に、
− 加熱システム、または他のシステムにおける水、洗浄水または他のプロセス流体などの液体の加熱
− 工業用の乾燥、部屋の加熱、または他の用途のための気体の加熱
に適用される。
【0004】
特に、本発明は、これらの用途に限定されないが、乾燥用途で普及しており、紙、食品加工、下水処理、織物、木材、塗装等の多くの分野において用いられる。フランスにおいて乾燥に関連したエネルギー消費分布は以下の通りである:39%が紙/段ボール産業、23%が農業関連産業セクター、13%が化学、11%が材料セクター、2%が製錬、2%が繊維、および10%が他の産業である。13,000を越える工業用乾燥設備がフランスにあることが推定され、幅広い範囲の技術に使用されている。対流乾燥が興行的に使用される最も一般的な方法である。方法は、できる限り、熱く乾燥した気体の流れを乾燥する材料の上に循環させることから構成される。このガス流、通常空気は、材料に含まれる液体を蒸発させるために必要な熱を提供し、および作られた(水)蒸気を押し流す。ガスは、乾燥設備を入り、出る間に冷却し、かつ湿度を得、その間に次第に乾燥された材料は、温かくなる。
【0005】
外部流体による加熱の場合、大きい温度差を達成するための1つの解決策は、乾燥の場合は乾燥設備によって生成された湿り空気であるソース流体からの熱を収集することである。
【0006】
このために、チューブ式熱交換器、中間流体を有するフィン式熱交換器、ヒートパイプ交換器、プレート熱交換器、またはスパイラル熱交換器などの熱交換器を使用することが知られている。交換器製造業者によって提供された仕様書には、熱効率が40%〜90%であることが示されている。しかし、この比率は、熱い(および湿った)流出物における利用可能なエネルギーがそのような収率で回収されるということを意味していない。乾燥の場合、例えば抽出湿り空気およびthe流入乾燥空気の間の単純交換器は、流入乾燥空気の温度を増加させるために湿り空気から抽出される熱エネルギーの少量しか回収しない。高い乾燥温度のためには、乾燥設備に導入されるエネルギーの8%未満である。
【0007】
エネルギー使用および二酸化炭素排出の減少に貢献するために、ヒートポンプ(HP)の開発は、外部流体の加熱のために、魅力的な技術的オプションである。
【0008】
ヒートポンプは、典型的には蒸発器を形成する第1熱交換器を備え、その出口は、凝縮器を形成する第2熱交換器の入口に接続され、間に圧縮ユニットを有する。凝縮器出口は、膨張ユニットによって蒸発器入口に接続される。したがって、冷却剤が蒸発器および凝縮器の間で流れることができ、蒸発器においてソース流体からの熱を収集し、かつ凝縮器において熱を外部流体に移動させる。乾燥の場合、抽出空気は、ヒートポンプの蒸発器(水分の凝縮を伴う)を通り冷却されることができ、かつ流入空気は、凝縮器を通り加熱されて、所望の温度になる。
【0009】
フランスの記録による(木材およびスラッジを乾燥するための)乾燥設備は、ヒートポンプがエネルギー消費低減することができることを確認している。
【0010】
しかし、従来のヒートポンプは、60℃に制限された目標温度しか達成できない。さらに、このようなヒートポンプで実行される従来の熱力学的なサイクルは、ヒートポンプの性能に大きな損害を与えることなく非常に高い凝縮温度に到達することができない。したがって既存のヒートポンプの性能は、大きい温度差を有する加熱の場合制限され、かつ現実的には、費用効果がない。
【0011】
大きい温度差での利用、特に住宅、および小さい民間企業においてお湯を作るためにヒートポンプの性能を増加させるために、遷臨界サイクルを有するCOヒートポンプを使用することが知られている。この解決策は、非常に高い関連する圧力により90℃まで有効である。
【0012】
遷臨界サイクルにおいてハイドロフルオロカーボン(HFC)冷却剤を用いたヒートポンプは、非特許文献1および特許文献1に記載されている。遷臨界サイクルを有するCOヒートポンプと同様に、これらのヒートポンプは、温度が90℃を越えない水の加熱などの家庭向け用途に使用される。しかし、このようなヒートポンプは、特に90℃より高い、より具体的には100℃より高い、好ましくは120℃より高い、および例えば150℃までの非常に高い温度に達するような工業的利用には適していない。
【0013】
例えば特許文献2から、ヒートポンプをカスケード配置で使用することがまた知られている。この配置は、各ヒートポンプから見た温度差を低減すること、および各ヒートポンプの状態に冷却剤を適合可能であることにより、全体としての性能を増加させる。より離散したシステムは、より良い性能となる。しかし、実際には経済的な利益に関連する条件により、2つのヒートポンプのシステムに制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 27 953号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2008 047 753号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「A Thermodynamic analysis of a transcritical cycle with refrigerant mixture R32/R290 for a small heat pump water heater」 Yu ら、 Vol.42、 No.12、 p. 2431-2436、2010年12月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、満足する性能および経済性を提供する、高温での乾燥用途のための、および大きい温度差を有するより一般的な高い温度での加熱用途のための機器の需要がある。
【0017】
本発明は、上述した課題を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明の第1態様は、ソース流体から大きい温度差の外部流体を加熱するためのヒートポンプを備える機器を提案し、該人ポンプは、
− 第1熱交換器の近くに位置するソース流体、および第2熱交換器の近くに位置する外部流体それぞれと熱を交換するよう構成された第1および第2熱交換器であって、それぞれが入口および出口を有する第1および第2熱交換器と、
− ハイドロフルオロカーボン冷却剤およびハイドロフルオロオレフィン冷却剤から選択された冷却剤と、
− 第1および第2熱交換器の間で冷却剤を循環させるよう構成された冷却剤回路であって、第1熱交換器の出口に接続された入口、および第2熱交換器の入口に接続された出口を有する圧縮ユニットと、第2熱交換器の出口に接続された入口、および第1熱交換器の入口に接続された出口を有する膨張ユニットとを備える、冷却剤回路と、
を備え、
ヒートポンプの第2熱交換器および冷却剤回路は、冷却剤を遷臨界サイクルで循環させるのに適しており、
ヒートポンプが、温度差が20℃より大きい、好ましくは30℃より大きい、特に40℃より大きい、より具体的には60℃より大きい温度差で加熱するのに適しており、かつ90℃より大きい高い目標温度Tcを達成することができ、
かつ、機器は、
− 入口および出口を有するチャンバであって、第1および第2熱交換器はそれぞれ、チャンバの出口の近く、および入口の近くに配置されている、チャンバと、
− チャンバに配置された処理システムであって、チャンバの入口および出口がそれぞれ、処理システムの上流および下流に配置された、処理システムと、
− 第2熱交換器の近く、および処理システムの近くに外部流体を連続的に循環させるよう構成された外部流体回路であって、外部流体回路は、処理システムの下流かつ第1熱交換器の近くに外部流体をソース流体として循環するようさらに適合され、外部流体が処理システムを通る際に、処理システムの上流の外部流体および処理システムの下流の外部流体の間の大きい温度差で熱を移送する、外部流体回路と、
をさらに備える。
【0019】
遷臨界サイクルでハイドロフルオロカーボン(HFC)冷却剤またはハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷却剤を使用することは、2つの主な利点を提供する。1つは、第1熱交換器における蒸発段階の間冷却剤が一定温度のままであるということであり、これは例えば凝縮から熱を回収する場合に特に関心がある。もう1つは、遷臨界システムにおいて第2熱交換器を通る冷却剤の通過が起こる場合に、第2熱交換器に沿って温度が変化し、それにしたがって外部流体の再加熱にミラーリングされる。使用される冷却剤の適切なペアリング、および意図された適用は、決定的な経済性要因の1つであるヒートポンプのエクセルギー効率を最適化する。したがってヒートポンプ性能は、著しく改善される。
【0020】
さらに、本発明による機器において使用されるヒートポンプにより、特に100kWを超える著しい熱発電容量が可能となり、中程度の温度、特に40℃超、より具体的には50℃超、および例えば70℃までのソース流体から、特に90℃超、より具体的には100℃超、好ましくは120℃超、および例えば150℃までの高い目標温度に達することができる。チャンバ内の外部流体回路および第1および第2熱交換器に対する処理システムの特定の配置とあいまって、これらの容量は、機器を工業的用途、特に工業用乾燥設備に特に適するようにしている。
【0021】
冷却剤は、臨界温度および臨界圧力を有する臨界点を有する。冷却剤が圧縮ユニットの出口および第2熱交換器の入口において、臨界圧力より大きい超臨界圧力、および臨界温度より大きい超臨界温度を同時に示すように、圧縮ユニットが冷却剤を圧縮するよう構成されることができる。
【0022】
さらに、第2熱交換器は、超臨界流体状態の冷却剤を冷却するよう構成されたガスクーラーとすることができ、ガスクーラーに入る際には、冷却剤は同時に、臨界圧力より大きい超臨界圧力、および臨界温度より大きい超臨界温度であり、かつ一定の超臨界圧力において冷却剤の冷却が行われる。
【0023】
1つの特定の実施形態においては、冷却剤は、ハイドロフルオロカーボン冷却剤R−32とすることができる。
【0024】
ヒートポンプをチャンバ内に配置することができる。
【0025】
特に、処理システムは、乾燥すべき材料を受け入れるよう意図された乾燥ラックとすることができ、外部流体回路は、第2熱交換器の近く、乾燥ラックの近く、および第1熱交換器の近くに空気を連続的に循環するのに適している。
【0026】
上記に定義されたようなヒートポンプの乾燥機器における使用により、流入空気を加熱または除湿するため、または材料の乾燥段階において、大量のエネルギーを乾燥ラックの上流に導入することができる。さらに、この実施方法により、排出される湿り空気に含まれるエネルギーを使用することができる。廃熱として知られる、排出される湿り空気に含まれるエネルギーは、乾燥工程におけるエネルギー効率を増加させてエネルギーを節約し、それに伴い費用を低減するための魅力的な潜在能力を表す値を有する。
【0027】
機器は、第2熱交換器の近くに循環された外部流体からの熱を貯蔵するのに適した熱貯蔵ユニットをさらに備えることができる。
【0028】
機器は、処理システムの上流に配置された追加的な加熱デバイスをさらに備えることができる。
【0029】
本発明の第2態様は、ソース流体から大きい温度差で外部流体を加熱するために機器におけるヒートポンプの使用に関し、温度差は、20℃より大きく、好ましくは30℃より大きく、特に40℃より大きく、より具体的には60℃より大きく、かつ90℃より大きく、および高い目標温度Tcに到達することが可能であり、
前記ヒートポンプ(10)は、
− 第1熱交換器の近くに位置するソース流体、および第2熱交換器の近くに位置する外部流体それぞれと熱を交換するよう構成された第1および第2熱交換器であって、それぞれが入口および出口を有する第1および第2熱交換器と、
− ハイドロフルオロカーボン冷却剤およびハイドロフルオロオレフィン冷却剤から選択された冷却剤と、
− 第1および第2熱交換器の間で前記冷却剤を循環させるのに適した冷却剤回路であって、第1熱交換器の出口に接続された入口、および第2熱交換器の入口に接続された出口を有する圧縮ユニットと、第2熱交換器の出口に接続された入口、および第1熱交換器の入口に接続された出口を有する膨張ユニットとを備える冷却剤回路と、
を備え、
第2熱交換器および冷却剤回路は、冷却剤を遷臨界サイクルで循環させるのに適しており、
前記機器は、
− 入口および出口を有するチャンバであって、第1よび第2熱交換器はそれぞれ、チャンバの出口の近くおよび入口の近くに配置された、チャンバと、
− チャンバに配置された処理システムであって、チャンバの入口および出口がそれぞれ、処理システムの上流および下流に配置された、処理システムと、
− 第2熱交換器の近く、および処理システムの近くに外部流体を連続的に循環させるのに適した外部流体回路であって、外部流体回路は、処理システムの下流かつ第1熱交換器の近くに外部流体をソース流体として循環するのに適しており、外部流体が処理システムを通る際に、処理システムの上流の外部流体および処理システムの下流の外部流体の間の大きい温度差で熱を移送する、外部流体回路と、
を備える。
【0030】
特にヒートポンプは、乾燥すべき材料を乾燥させるために機器において使用することができ、処理システムが乾燥すべき材料を受け入れるよう意図された乾燥ラックであり、外部流体回路は、第2熱交換器の近く、乾燥ラックの近く、および第1熱交換器の近くに空気を連続的に循環するのに適している。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例によって与えられた本発明の特定の実施形態の以下の説明を読むことにより明らかになるだろう。説明は、以下の添付図面を参照してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態によるヒートポンプの概略図であり、ソース流体から大きい温度差で外部流体を加熱するために、前記ヒートポンプは、遷臨界サイクルにおいてハイドロフルオロカーボン冷却剤およびハイドロフルオロオレフィン冷却剤から選択された冷却剤を用いる。
図2図1のヒートポンプを使用した乾燥機器の図である。
図3図1のヒートポンプ内の外部流体へ熱を移送するガスクーラーの斜視図である。
図4図1のヒートポンプ内のソース流体から熱を収集する蒸発器の斜視図である。
図5a図1のヒートポンプにおけるハイドロフルオロカーボン冷却剤R−32の遷臨界熱力学サイクルを示す温度−エントロピー図である。
図5b】従来のヒートポンプにおけるハイドロフルオロカーボン冷却剤R−245faの亜臨界熱力学サイクルを示す温度−エントロピー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図において、同じ参照符号は、同一、または類似した要素/を示すために使用される。
【0034】
図1は、大きい温度差でソース流体FSから外部流体Feを加熱するためのヒートポンプ10を示す。この例に限定されることなく、図1のヒートポンプ10は、乾燥空気が外部流体Feである用途に使用され、例えば50℃のソース温度Tsのソース流体Fsである湿り空気によって、外部流体Feは、例えば60℃の初期温度Tiから例えば120℃の目標温度Tcに加熱される。
【0035】
考慮される用途に応じて、外部流体は、乾燥空気以外の任意の流体とすることができ、かつソース流体は、湿り空気以外の任意の流体とすることができる。さらに外部流体の初期温度および目標温度の差を上述の差とは異なるようにすることができ、特に大きい温度差、つまり20℃以上、好ましくは30℃以上、特に40℃以上、より具体的には60℃以上の温度差を構成するような任意の差とすることができ、これにより特に40℃以上、より具体的には50℃以上、および例えば70℃までのソース温度から始まり、90℃以上の高い目標温度特に100℃以上、好ましくは120℃以上、および例えば150℃までの目標温度Tcに到達することができる。
【0036】
ヒートポンプ10は、ソース流体Fsとして湿り空気が流れることができる第1熱交換器11と、外部流体Feとして乾燥空気が流れることができる第2熱交換器12とを備える。第1熱交換器11および第2熱交換器12は、冷却材回路によって互いに接続され、冷却材回路は、
− 第1熱交換器11の出口に接続された入口と、第2熱交換器12の入口に接続された出口とを有する圧縮ユニット13、および
− 第2熱交換器12の出口に接続された入口と、第1熱交換器11の入口に接続された出口とを有する膨張ユニット14
を備える。
【0037】
したがって冷却剤は、第1熱交換器11および第2熱交換器12の間の冷却剤回路内を流れることができる。第1熱交換器11は、冷却剤がソース温度Tsの湿り空気から熱を収集する蒸発器を形成し、および第2熱交換器12は、初期温度Tiから目標温度Tcに上げるために冷却剤が乾燥空気に熱を放出する凝縮器またはガスクーラーを形成する。
【0038】
本発明によれば、冷却剤は、ハイドロフルオロカーボン冷却剤である。特に、選択されたハイドロフルオロカーボン冷却剤は、ジフルオロメタン(R−32)である。
【0039】
あるいは、冷却剤は、ハイドロフルオロオレフィンから選択された冷却剤とすることができる。
【0040】
冷却剤は、臨界温度および臨界圧力における臨界点を有する。大きい温度差の加熱を確実にするために、圧縮ユニット13は、圧縮ユニット13の出口およびガスクーラー12の入口において臨界圧力以上の超臨界圧力、および臨界温度以上の超臨界温度を同時に示すように、冷却剤を圧縮するように構成される。
【0041】
さらに、ガスクーラー12は、超臨界流体状態の冷却剤を冷却するように構成される。そして冷却剤は同時に臨界圧力以上の超臨界圧力、および臨界温度以上の超臨界温度であり、ガスクーラー12に入ると、一定の超臨界圧力にて冷却剤の冷却が行われる。ガスクーラー12は、外部流体が所望の温度に達することができるように、超臨界流体状態における冷却剤の特性によって設計される。ガスクーラー12の構造は、冷却剤および加熱される外部流体の発生温度の間の一定の最小差を維持するように決定される(類型、交換面積、形、流路数等)。この温度差は、経済的な基準に基づいて設定される。
【0042】
したがって冷却剤が遷臨界サイクルにおいてヒートポンプ10内を循環することができることが残りの説明から明らかになるだろう。
【0043】
図2に示すように、上述したヒートポンプ10を機器1において利用することができ、機器は、上流に配置されたガスクーラー12を有する処理システム2、および、ガスクーラー12の近くかつ処理システム2の近くにおいて外部流体Feを連続的に循環するよう構成された外部流体回路を備える。
【0044】
処理システム2は、概して、ガスクーラー12を通る際に外部流体Feが収集した熱を処理において使用するシステムである。処理システム2の上流の外部流体および処理システム2の下流の外部流体2の間における大きい温度差を有する外部流体Feは、処理システム2を通る際にこの熱を放出する。
【0045】
図2に示される特定の適用において、ヒートポンプ10は、乾燥機器1において利用される。高温での乾燥は、熱に敏感ではない製品に対して多くの利点を提供する(乾燥速度の増加、製品滞留時間の低減、乾燥器の大きさ、熱損失の減少、出資の低減等)。材料を乾燥させるために、最も一般的な方法は、乾燥した熱い空気をチャンバ3内に吹き付けることである。そして湿気の多くなったこの熱い空気は、チャンバ3の外へ排出される。乾燥工程は、流入する乾燥空気を上流で加熱または除湿するために、または製品脱水段階の間、大量のエネルギーを与えることが必要である。さらに、乾燥作用に関連する熱損失は、工業界においては約40TWhである。したがって、乾燥器からの湿った排気から熱を回収することに関連するエネルギー問題は、非常に重要である。
【0046】
したがって図2に示すように、乾燥機器1は、乾燥すべき材料を受け入れる乾燥ラックの形の処理システム2が配置されたチャンバ3を備える。チャンバ3は、乾燥ラック2の上流および下流にそれぞれ配置された入口3aおよび出口3bを有する。
【0047】
ヒートポンプ10は、チャンバ3内に配置され、蒸発器11およびガスクーラー12がチャンバ3の出口3bおよび入口3aにそれぞれ配置される。図2において、チャンバ3の入口3aおよび出口3bは、対応する熱交換器が配置される導管をそれぞれ備える。あるいは、ヒートポンプ10は、チャンバ3の外部に配置されることができる。
【0048】
特にファンを備える外部流体回路4は、乾燥ラック2の上流のチャンバ3の入口3aからガスクーラー12を通り乾燥ラック2へ向かう外部流体Feとして流入する乾燥空気を循環させるように設けられ、そこには電気抵抗5などの追加的な加熱装置が適合される。そして外部流体回路は、乾燥すべき材料を通って流れてきた抽出されたソース流体Fsとしての湿り空気を乾燥ラック2の下流から蒸発器11へ循環させることができる。蒸発器11は、抽出された湿り空気Fsから熱を回収し、かつガスクーラー12は、流入する乾燥空気Feを加熱する。
【0049】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷却剤またはハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷却剤を遷臨界サイクルで使用するヒートポンプ10を利用することにより、空気に含まれる水のかなりの部分を凝縮するのに十分低い温度まで抽出された湿り空気Fsを冷却し、この熱エネルギーをチャンバ3に移送するためにヒートポンプ10を用いて温度を上げることで、失われるエネルギーのほとんどの部分を回復することができる。
【0050】
大きい温度差での利用によって与えられる温度範囲に適している遷臨界サイクルにおけるハイドロフルオロカーボン(HFC)冷却剤またはハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷却剤の使用は、ヒートポンプ10の性能を大幅に増加することができる。この熱力学サイクルは、ヒートポンプを有する乾燥機器1の全体効率における最も重要な寄与因子である。
【0051】
遷臨界サイクルにおけるHFCR−32冷却剤で動作する上記のヒートポンプ10の特定の設計寸法は、乾燥空気を60℃から120℃に加熱するために、50℃において飽和した湿り空気によって実行される熱の回収における非限定的な例示によって与えられる。このような実施方法は、上述した乾燥用途に対応する。
【0052】
ガスクーラー12
考え得るガスクーラー構造は、図3のように提案される。
【0053】
円形フィンを有するチューブ式ガスクーラー12を通るモデルは、議論されている実施方法のための構造を提案することができる。ガスクーラー12は、長軸12aに沿って延在する。それは、エルボ12cによって接続された端部を有する軸方向チューブ12bからなる蛇行形状を形成する。フィン12dは、各チューブ12bから垂直に延在する。
【0054】
この例において約40kWの熱交換容量が考えられる。ガスクーラー12において、圧力は、80barに維持され、かつ冷却剤は、空気と逆に流れる。
【0055】
幾何構造は、以下の表1にまとめられている。
【0056】
【表1】
【0057】
圧縮ユニット13
圧縮ユニット13は、R−32が冷却剤として使用される特定の場合、GEA HAX2 CO2 T Bock圧縮機(半密閉型2シリンダ往復式圧縮機)などの現在の技術での高圧圧縮機を備える。
【0058】
例えば最高容量に適合されたGEA Grassoスクリュー圧縮機などの他の高圧圧縮機技術を使用することができる。
【0059】
蒸発器11
蒸発器11の考え得る幾何構造が図4に提供される。
【0060】
円形フィンを有するチューブ式蒸発器11を通るモデルにより、議論される実施方法のための構造を提案することができる。蒸発器11は、ガスクーラー12に類似した構造を有する。特に、蒸発器11は、長軸11aに沿って延在し、エルボ11cによって接続される端部を有する軸方向チューブ11bからなる蛇行形状を形成する。フィン11dは、各チューブ12bから垂直に延在する。
【0061】
この蒸発器の熱交換容量は、35kWである。流れは逆流であり、および圧力は、25barである。
【0062】
幾何構造は、以下の表2にまとめられている。
【0063】
【表2】
【0064】
ガスクーラー12、圧縮ユニット13、および蒸発器11を有するヒートポンプ10における冷却剤R−32の遷臨界熱力学サイクルは、温度−エントロピー図の形で図5aに示される。この図は、圧縮ユニット13の排出口およびガスクーラー12の入口において到達する圧力および温度の値の範囲を強調している。達成される値は、飽和曲線より上に位置することが特に明らかである。
【0065】
関連する性能および容量は、以下の表3にまとめられている。
【0066】
【表3】
【0067】
以下の表4において、ヒートポンプHPの熱力学的性能は、HFCR−32を用いた遷臨界サイクルにおいて計算され、図5bに示されるHFCR−245faでの亜臨界サイクルと比較され、亜臨界サイクルは、温度50℃における水分飽和空気を用いて1kg/sの速度で乾燥空気が60℃から120℃に加熱される類似の実施方法である。
【0068】
【表4】
【0069】
したがって、乾燥空気を60℃から120℃に加熱するために50℃で飽和した湿り空気から熱エネルギーを回収するヒートポンプ(すなわち工業的乾燥用途)のために、遷臨界サイクルにおけるジフルオロメタン(R−32)の使用は、COPを約2から4以上に変化させる。乾燥用途によって課される温度範囲に適している遷臨界状態におけるHFCR−32冷却剤の使用は、純物質(例えばHFC−R245fa)を亜臨界で使用する従来の熱力学サイクルと比較して2倍、エネルギー消費を低減することができる。
【0070】
乾燥機器1に関して上述した本発明は、他の用途、特に適切な処理システムを使用するガス処理機器を有する。
【0071】
考えられる用途に応じて、機器は、外部流体回路と異なる個別の、かつ蒸発器11の近く、および処理システムの近くにおいて連続的に空気を循環するよう適合されたソース流体回路を含むことができる。さらに、間欠的に加熱する必要がある場合、機器は、ガスクーラー12の近くで循環される外部流体からの熱を貯蔵するよう適合された熱貯蔵ユニットを含むことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 機器
2 処理システム
3 チャンバ
3a 入口
3b 出口
4 外部流体回路
5 電気抵抗
10 ヒートポンプ
11 第1熱交換器
12 第2熱交換器
13 圧縮ユニット
14 膨張ユニット
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b