【課題を解決するための手段】
【0011】
当該懸案によりよく対処するために、本発明の第1の態様では、モバイル・デバイスのD2D通信セッションを確立するための方法を提供する。モバイル・デバイスは、D2D通信チャネルを介して相互に接続可能であると共にモバイル・ネットワークに個別に接続可能である。当該方法は以下のステップを含む。即ち、
− 各モバイル・デバイスに開始キーをプリロードするステップであって、開始キーが有効期間に関連付けられているステップ、並びに
各モバイル・デバイスにおいて、
− 現在の時間に基づいて開始キーの有効性を検証するステップ、
− 開始キーが有効とみなされる場合に、D2D通信チャネルを通じてモバイル・デバイス間でキー・アグリーメント手順を実行する際に開始キーを用いることによって、開始キーを用いてセッション・キーを生成するステップであって、キー・アグリーメント手順の結果、各モバイル・デバイスによって用いられる開始キーが一致する場合にセッション・キーとする、ステップ、および、
− セッション・キーに基づいてD2D通信チャネルを通じたD2D通信セッションを確立するステップ
を含む。
【0012】
本発明の別の態様は、制御ソフトウェアであり、モバイル・デバイスにおいて当該制御ソフトウェアを実行すると、上記の方法にしたがってモバイル・デバイスにD2D通信セッションを確立させる命令を含む。
【0013】
本発明の別の態様は、モバイル・デバイスであり、更なるモバイル・デバイスとのD2D通信セッションを確立するためのものであり、当該モバイル・デバイスおよび更なるモバイル・デバイスがD2D通信チャネルを介して相互に接続可能であると共に、モバイル・ネットワークに個別に接続可能である。当該モバイル・デバイスは以下を備える。即ち、
−プリロード手順の間に提供される開始キーを格納するストレージ領域(SA1)であって、開始キーが有効期間に関連付けられる、ストレージ領域、並びに
−コンピューティング・サブシステム(CS1)であって、
−現在の時間に基づいて開始キーの有効性を検証し、
−開始キーが有効とみなさる場合に、D2D通信チャネルを通じて更なるモバイル・デバイスとのキー・アグリーメント手順を実行する際に開始キーを用いることによって、開始キーを用いたセッション・キーを生成し、キー・アグリーメント手順の結果、モバイル・デバイスおよび更なるモバイル・デバイスによって用いられる開始キーが一致する場合に、セッション・キーとするコンピューティング・サブシステム、および
−セッション・キーに基づいてD2D通信チャネルを通じてD2D通信セッションを確立するためのモバイル・サブシステム
を備える。
【0014】
本発明の別の態様は、上記のモバイル・デバイスがモバイル・ネットワークに接続されると、モバイル・デバイスに開始キーをプリロードするように構成されるモバイル・ネットワーク(MN)を提供し、開始キーが有効期間と関連付けられる。
【0015】
上記の手段により、D2D通信チャネルを介して相互に接続可能であると共に、モバイル・ネットワークに個別に接続可能なモバイル・デバイス間でD2D通信セッションを確立する、またはその手段を提供する。ここで、通信チャネルなる用語は、モバイル・デバイス間での情報の交換のためのコンジットに関し、また、通信セッションなる用語は情報の相互交換に関し、当該情報の相互交換は通例、規定の開始および終了を有する。
【0016】
モバイル・デバイスはモバイル・ネットワークに接続することができる。当該モバイル・デバイスがモバイル・ネットワークに接続されるときに、モバイル・デバイス間のモバイル通信が、モバイル・ネットワークを介して、例えばモバイル・ネットワークの基地局およびコア・ノードを介して実施できる。モバイル・デバイスはまた、モバイル・デバイス間のD2D通信チャネルを確立するように構成される。D2D通信は2つのモバイル・デバイス間で確立することができるが、D2D通信は3以上の複数のモバイル・デバイスを均等に関与させてもよい。
【0017】
D2D通信セッションは、次のようなやり方で、確立、即ちセットアップされる。最初に、開始キーがモバイル・デバイスの各々にプリロードされる。ここで、プリロードなる用語は、D2D通信セッションを確立する前にモバイル・デバイスに開始キーをロードすることに関する。例えば、要求がD2D通信セッションを確立するために受け取られる前に、開始キーを既にモバイル・デバイスにロードすることができる。開始キーは、D2D通信セッションを確立する際にモバイル・デバイスの各々で使用される。したがって、D2D通信セッションを確立する要求が、例えばユーザまたは別のモバイル・デバイスから受け取られたときは、開始キーの取得は、D2D通信セッションを確立するためには必ずしも必要ない。即ち、D2D通信セッションはモバイル・デバイスで既に使用可能である。
【0018】
開始キーは、次のやり方でD2D通信セッションを確立するのに用いる。開始キーは有効期間に関連付けられる。有効期間は、次の開始キーが提供されること、開始キーから導出されること等によりモバイル・デバイスは使用可能となる。有効期間は、D2D通信セッションの確立時に開始キーを使用するために有効とみなされる時間上の期間を示す。開始キーの有効性は、D2D通信セッションに参加することになるモバイル・デバイスのそれぞれにおいて現在の時間に基づいて検証される。D2D通信セッションを確立する要求に応答することになる。つまり、現在の時間を用いて、開始キーが有効とみなされるかどうかについて決定することができる。例えば現在の時間が有効期間にあり、開始キーが有効であるとみなされる場合に、開始キーはモバイル・デバイス間のキー・アグリーメント手順を実行するのに用いられる。
【0019】
ここでは、キー・アグリーメント手順とはモバイル・デバイス間で実行される手順に関する。キー・アグリーメント手順の結果、セッション・キーが配置されることになり、モバイル・デバイスのそれぞれが手順の成り行き(outcome)、即ちセッション・キーに対し影響を与えることができる。キー・アグリーメント手順は、D2D通信チャネルを介して、例えばモバイル・デバイス間のメッセージを交換することにより、当該キー・アグリーメント手順を共に構成するメッセージを用いて実行される。メッセージはD2D通信チャネルを介して確立した初期D2D通信セッションの一部として交換することができる。
【0020】
キー・アグリーメント手順では、当該キー・アグリーメント手順において各モバイル・デバイスによって使用される開始キーが一致するかどうかに基づいて、セッション・キーを提供する。このように、有効なセッション・キーは、各モバイル・デバイスがキー・アグリーメント手順で同一の開始キーを用いる場合に取得される。セッション・キーは、暗号化を用いた機密保護またはメッセージ認証コードを用いた完全性保護のように、通信セッションにおいて暗号化保護したメッセージに使用されるキーを構成する。D2D通信セッションはセッション・キーを用いて確立される。つまり、D2D通信セッションが取得され、ここでは、モバイル・デバイス間の音声または動画伝送のメッセージのようなメッセ−ジがセッション・キーを用いて暗号化保護される。セッション・キーは、特定のD2D通信セッションについて用いられる。したがって、後の時点で新規の通信セッションを確立するために、通例は新規のセッション・キーを取得または生成することが必要となる。
【0021】
上記の手段は、D2D通信セッションが開始キーに基づいて確立されるという効果を奏する。したがって、開始キーは、基本的に、モバイル・デバイスがD2D通信セッションを確立するために開始キーを必要とする点では、認証トークンとして機能する。有効期間に関連付けられる開始キーを提供し、現在の時間に基づいてモバイル・デバイスの開始キーの有効性を検証することによって、時間ベースの制御機構が提供され、当該開始キーが所定の期間にのみ有効とみなされ、また当該期間外では無効とみなされる。
【0022】
上記の手段は、次のやり方でD2D通信を介して運行業者への制御を提供する。D2D通信セッションを確立する有効な開始キーを要求することにより、運用業者は制御を取得し、その条件にしたがってどれに開始キーを提供するかを運用業者は選択できる。更に、有効期間の手段により、運用業者は時間ベースの制御を取得し、例えば、その結果古い開始キーの再使用を防止することができる。モバイル・デバイスによって使用される開始キーの一致に基づくキー・アグリーメント手順において開始キーを用いることにより、運用業者は制御を取得し、任意の開始キーがD2D通信セッションを確立するのに使用できるのではなく、寧ろ、キー・アグリーメント手順に成功するかについては、D2D通信セッションを確立する際に各モバイル・デバイスが用いる開始キーが一致するかどうかに依存する。
【0023】
有利なことに、開始キーをプリロードすることによって、D2D通信セッションは、例えばモバイル・ネットワークの範囲外となることにより、1つ以上のモバイル・デバイスが現在運用業者の直接の制御外であるときでさえ、運用業者の制御下において確立することができる。有利なことに、モバイル・デバイスは、独立して、即ちサード・パーティとコンタクトする必要無しに、D2D通信セッションを確立することができる。
【0024】
任意で、開始キーをプリロードするステップは、各モバイル・デバイスがモバイル・ネットワークに接続されるときに、モバイル・ネットワークを介して各モバイル・デバイスに開始キーを提供するステップを含む。モバイル・ネットワークを介して開始キーをプリロードするステップは便利なものとなる。何故ならば、モバイル・デバイスは頻繁にモバイル・ネットワークに接続され、つまり、開始キーをプリロードするのに追加の手段は必要とされないからである。有利なことに、モバイル・ネットワークは開始キーをプリロードするためにセキュア・チャネルを提供する。有利なことに、開始キーは、即ちユーザ動作を要求することなく、自動的にプリロードすることができる。
【0025】
任意で、開始キーをプリロードするステップは、各モバイル・デバイスにおけるセキュア・ストレージ領域内に開始キーを格納するステップを含む。つまり、開始キーは、例えばユーザによって、即ちモバイル・デバイスで起動しているアプリケーションによって、簡単には読み出すことができないように開始キーは格納される。有利なことに、開始キーを改竄することは、より困難ものとすることができる。
【0026】
任意で、セキュア・ストレージ領域は各モバイル・デバイスにおける信頼性のあるコンピューティング・サブシステムによって設けられる。ここで、モバイル・デバイスは、統合部または取り外し可能部のいずれかとして、信頼性のあるコンピューティング・サブシステムを備える。このような信頼性のあるコンピューティング・サブシステムは、モバイル・デバイスにおいて計算ステップを実行するのに使用することができる。当該計算ステップは、モバイル・ネットワークにおいてモバイル・デバイスを認証するような特定のセキュリティ・レベルを要求する。取り外し可能な信頼性のあるコンピューティング・サブシステムの例は、所謂ユニバーサル統合回路カード(UICC;Universal Integrated Circuit Card)である。UICCは、モバイル・ネットワークにおいてモバイル・デバイスを認証するのに使用されるユニバーサル・サブスクライバ・アイデンティティ・モジュール(USIM;Universal Subscriber Identity Module)を備える。セキュア・ストレージ領域はこのような信頼性のあるコンピューティング・サブシステム、例えばUICCのメモリによって設けられ、モバイル・デバイスに開始キーをセキュアに格納するのに良く適したものとなる。
任意で、開始キーの有効性を検証するステップ、およびキー・アグリーメント手順を実行する際に開始キーを使用するステップからなる群の内少なくとも1つが、信頼性のあるコンピューティング・サブシステムによって実行される。したがって、信頼性のあるコンピューティング・サブシステムによって設けられたセキュア・ストレージ領域の外部での開始キーの使用が削減または回避される。有利なことに、開始キーの改竄がより困難なものとなる。
【0027】
任意で、本方法は更に、
− 各モバイル・デバイスに一組の開始キーをプリロードするステップであって、一組の開始キーが一組の有効期間のそれぞれに関連付けられるステップ、および
− 各モバイル・デバイスにおいて一組の開始キーの内の一致する1つを開始キーとして選択するために、D2D通信チャネルを通じてモバイル・デバイス間のキー同期手順を実行するステップ
を含む。
【0028】
このように、モバイル・デバイスの各々は複数の異なる開始キーが提供される。同一の開始キーが、D2D通信セッションを確立する際にモバイル・デバイスの各々によって使用されるのを可能にするために、キー同期手順が実行される。ここでは、どの開始キーが、モバイル・デバイスの全部またはほとんどに使用可能であるかについて識別される。当該開始キーは、D2D通信セッションを確立するのに使用されるように選択される。有利なことに、適切な開始キーは適宜確立することができる。有利なことに、キー・アグリーメント手順を実行する前にモバイル・デバイスが適切な開始キーを有しない場合に、キー同期手順はフィードバックを供給する。
【0029】
任意で、本方法は更に、
− 各モバイル・デバイスに一組のキー識別子をプリロードするステップであって、一組のキー識別子のそれぞれが開始キーのセットの内のそれぞれ1つを識別するステップ、および
− モバイル・デバイス間の一組のキー識別子の内の1つ以上の交換に基づいて、キー同期手順を実行するステップ
を含む。
【0030】
一組のキー識別子の内1つ以上の交換に基づいてキー同期手順を実行するステップにより、例えば、D2D通信チャネルを通じて開始キーを交換することによって、キー同期手順において開始キー自体を関与させることは必要とはしない。有利なことに、開始キーの改竄はより困難なものとなる。何故ならば、キー識別子のみが交換されるからである。それでいて、例えば開始キーの一致を装うようなキー識別子の改竄はなおも失敗することになる。何故ならば、キー・アグリーメント手順は、実際の開始キーが一致する場合にセッション・キーを提供するのみに過ぎないからである。
【0031】
任意で、本方法はまた、D2D通信セッションを確立する際に使用されたた後に、開始キーを一組の開始キーから無効化または削除するステップを含む。つまり、開始キーは、一旦D2D通信セッションを確立しない限り使用することができない。新規のD2D通信セッションを確立ためには、新規の開始キーが必要とされる。有利なことに、運用業者は、例えばD2D通信セッションを確立できる回数を制限するために、当該回数にわたる制御を取得する。
【0032】
任意で、一組の有効期間は、異なるものの重複する有効期間の少なくとも一部によって構成される。異なるものの重複する有効期間は、より大きな時間期間を共に構成する。有効期間は重複するので、より大きな時間期間においてギャップが存在しない。異なるものの重複する有効期間は、開始キーに関連付けられる。結果として、より大きな期間において如何なる時点であっても開始キーは使用可能であり、D2D通信セッションを確立する際に用いるのに有効なものとすることができる。
【0033】
任意で、開始キーが仮想ネットワーク・アイデンティティ(identity)に関連付けられる。開始キーの有効性を検証するステップは更に、D2D通信チャネルを介して各モバイル・デバイスの仮想ネットワーク・アイデンティティの一致を判断するステップを含む。つまり、D2D通信セッションは、同一の仮想ネットワーク・アイデンティティを有するモバイル・デバイス間で確立できるのみである。有利なことに、運用業者は、D2D通信が可能なモバイル・デバイス間の仮想ネットワークをセットアップすることができるが、仮想ネットワークの外部でのモバイル・デバイスとのD2D通信、または異なる仮想ネットワークに所属するモバイル・デバイス間のD2D通信を防止する。
【0034】
任意で、開始キーは、当該開始キーの使用の回数を制限するために使用カウントに関連付けられており、開始キーの有効性を検証するステップは更に当該使用カウントに基づく。有利なことに、運用業者はD2D通信セッションを確立することができる回数にわたり制御を取得する。有利なことに、当該制御は、複数のD2D通信セッションを確立するために使用することができる1つの開始キー、例えばマスター・キーの提供を受けることができる。つまり、それぞれが一旦D2D通信セッションを確立するために用いることができるのみである一組の開始キーを提供する必要がない。
【0035】
任意で、本方法は更に、D2D通信セッションを確立する際に開始キーを使用した後に、使用カウントを調整するステップを含む。したがって、D2D通信セッションを確立する際の開始キーの使用は使用カウントに反映される。
【0036】
任意で、本方法は更に、i)どの開始キーも有効とみなされず、またはii)キー・アグリーメント手順がセッション・キーを提供する際に失敗する場合に、モバイル・ネットワークを介して更なる開始キーを要求するステップを含む。
【0037】
任意で、キー・アグリーメント手順が、
− スリー・パス認証手順(166)、または
− 共有シークレットを取得するためにモバイル・デバイス間でのメッセージ交換を暗号化するための開始キーの使用(164)、および共有シークレットに基づいて開始されるディフィー・ヘルマン(Diffie-Hellman)キー交換手順を含む。
【0038】
本方法について説明した修正および変形に対応する、当業者にとって、制御ソフトウェア、モバイル・デバイス、およびモバイル・ネットワークについての修正態様および変形態様を本記載に基づいて実行することができる。
【0039】
発明は独立請求項に規定され、更なる有利な任意の実施形態が従属請求項で規定される。
本発明のこれらのおよび他の態様は、本明細書で以降に説明する実施形態から明らかなものであり、また、これを参照して解明されることになる。