【文献】
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【文献】
"rpigca0_015538.y1 clu Sus scrofa cDNA 5-, mRNA sequence.",[online],NCBI,2011年 3月 4日,ACC: EV964070,[検索日:平成28年5月20日], インターネット,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/EV964070
【文献】
CANUTI, M. et al.,"Two novel parvoviruses in frugivorous New and Old World bats.",PLOS ONE,2011年12月27日,Vol.6, No.12,e29140(P.1-9)
【文献】
XIAO, C.T. et al.,"Complete genome sequence of a novel porcine parvovirus (PPV) provisionally designated PPV5.",GENOME ANNOUNC.,2013年 1月15日,Vol.1, No.1,e00021-12(p.1-2)
【文献】
MARTINEZ, C. et al.,"Production of porcine parvovirus empty capsids with high immunogenic activity.",VACCINE,1992年,Vol.10, No.10,P.684-690
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動物を、少なくとも1種の他のブタ病原性のウイルスまたは細菌による感染に関連する疾患を引き起こすウイルスまたは細菌に対して免疫するために有効な少なくとも1種の免疫原性タンパク質をさらに含む、請求項18に記載の免疫原性キット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブタ(swine)を新しいウイルスの出現に関してモニタリングすること、ならびに新しいウイルスに対するワクチン、治療および検出方法を開発することが継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、とりわけ飼育ブタ(domestic swine)に感染する新しいパルボウイルス株の作製および使用に関する新規のヌクレオチド配列、タンパク質配列、免疫原性組成物、ワクチン、および方法を提供する。これらの株は、臨床的に疾患を有する飼育ブタ由来の組織試料において同定された新規のブタパルボウイルスに関連し、公知のブタパルボウイルス種および株との配列相同性に基づいて、新規のウイルスをブタパルボウイルス5AまたはPPV5Aと命名した。
本発明の組成物および方法は、前記新しいウイルスによる感染の検出、野生動物および飼育動物および群れにおけるウイルス配列の遺伝子変化のモニタリング、ならびにウイルスによる感染から動物を保護するための新規のワクチンの作製および使用をもたらす。
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、配列番号1の核酸配列によりコードされるポリペプチド配列、またはその免疫原性断片を含み、よりロバストな免疫原性応答を誘導するためのアジュバントを含んでもよい。
【0005】
本発明の例示的な組成物は、配列番号2、配列番号3、配列番号4のポリペプチド配列のいずれか1つ、またはPPV5Aに特異的な抗体に対して免疫反応性であるその断片を含む。本発明の好ましいポリペプチドは配列番号2または配列番号4、特に配列番号4の配列を含む。これらのポリペプチド、またはその断片は、PPV5Aに特異的な抗体に対して免疫反応性であることが好ましい。
別の態様では、本発明は、1種または複数種のポリペプチド、抗体構築物、または抗体コンジュゲートをコードする核酸配列を提供する。ポリペプチドをコードする遺伝子配列は、配列番号1の配列と少なくとも95%、90%、85%、さらには80%相同かつ/または同一である核酸配列、特に、配列番号1のヌクレオチド配列2845〜5547(カプシドタンパク質)、またはPPV5Aに特異的な抗体に対して免疫反応性であるポリペプチドをコードする配列番号1の断片を含む。本発明の例示的な核酸配列としては、PPV5Aに特異的な抗体に対して免疫反応性であるポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド1975〜2844、および配列番号1のヌクレオチド2845〜5547の配列、およびその断片のいずれか1つが挙げられる。核酸配列、または遺伝子は、PPV5Aに特異的な抗体に対して免疫反応性であるポリペプチドまたはペプチドをコードするものであることが好ましい。
【0006】
さらに、本発明のポリペプチドとは、本明細書で使用される場合(これらに限定されないが)、
i)配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
ii)i)のポリペプチドと少なくとも80%相同かつ/または同一のポリペプチド;
iii)i)および/またはii)のポリペプチドの断片;
iv)配列番号2または配列番号4の配列内に含まれる少なくとも5個、好ましくは8個、より好ましくは10個、なおより好ましくは15個の連続したアミノ酸を含むiii)またはiv)の断片;
v)配列番号1のヌクレオチド1975〜2844、または配列番号1のヌクレオチド2845〜5547の配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;
vi)vi)のポリヌクレオチドと少なくとも80%相同または同一であるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;
vii)配列番号1のヌクレオチド1975〜2844、または配列番号1のヌクレオチド2845〜5547の配列内に含まれる少なくとも15個、好ましくは24個、より好ましくは30個、なおより好ましくは45個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質断片
を含むポリペプチドを含む。
本明細書で定義されている少なくとも1種、または複数種のPPV5Aポリペプチドを含む本発明の免疫原性組成物は、薬学的にまたは獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せなどの生理的に許容されるビヒクルをさらに含んでよい。
本発明で提供される任意のPPV5Aポリペプチドまたはこれらの本発明で提供されるPPV5Aポリペプチドの1種または複数種を含む任意の免疫原性組成物を医薬として、好ましくはワクチンまたは免疫原性組成物として、最も好ましくはPPV5A感染に対する対象の予防または治療のために使用することができる。
特に好ましいPPV5Aポリペプチドとしては、PPV5Aに対して特異的な免疫学的応答を誘導する免疫原性エピトープを有するものが挙げられる。好ましいPPVAポリペプチドは、関連するPPV1において表面抗原であることが予測されるアミノ酸配列を有するものを含み(Simpson et al. JMB 315、2002)、それらとして、これだけに限定されないが、配列番号4の残基141〜156、272〜278、および329〜339が挙げられる。
【0007】
本発明で使用する組成物には、公知の注射可能な、生理的に許容される滅菌溶液を組み込むことができることが当業者には理解されよう。非経口的な注射または注入のためにすぐに使える溶液を調製するために、水性等張性溶液、例えば、生理食塩水または血漿タンパク質溶液が容易に入手可能である。さらに、本発明の免疫原性組成物およびワクチン組成物は、獣医学的に許容される担体、希釈剤、等張化剤、安定剤、またはアジュバントを含んでよい。
本発明の方法は、これだけに限定されないが、本明細書で定義されている1種または複数種のPPV5Aポリペプチドを含む免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるPPV5A感染に対する免疫応答を惹起する方法を含む。PPV5Aの2種以上の血清型または株に対する免疫応答が惹起されることが好ましい。本発明の組成物を使用して、PPV5A感染を治療すること、あるいは予防することができる。そのような免疫応答により、1種または複数種のPPV5A血清型への感染に付随するまたはそれによって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率またはその重症度が低下することが好ましい。
本明細書では、本発明の組成物を投与することができる適切な対象およびそれを必要とする対象としては、ウイルス、微生物、寄生虫、原生動物、細菌、または真菌に関連する感染、疾患または状態に対する予防薬または治療のいずれかを必要とする動物が挙げられる。本発明の組成物または方法を使用することによって免疫応答が刺激される動物としては、ブタ(porcine)、ウシ(bovine)、家禽(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、またはシチメンチョウ)、ヤギ、およびヒツジなどの家畜(livestock)、ならびにマウス、ウサギ、イヌ、ネコ、およびウマなどの飼育動物(domestic animal)が挙げられる。好ましい動物としては、ブタ(swine)、ネズミ科の動物、ウマ科の動物、ウサギ目の動物、およびウシ科の動物が挙げられる。ブタ(swine)における免疫応答が刺激されることが最も好ましい。
【0008】
本発明は、PPV5A感染に付随するまたはそれによって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率またはその重症度を低下させる方法であって、本発明で提供される1種または複数種のPPV5Aペプチドと、好ましくは担体分子とを含む本発明の免疫原性組成物を投与し、したがって、PPV5A感染の臨床徴候の発生率またはその重症度が、本発明で提供される免疫原性組成物を受けていない対象と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましい少なくとも100%低下するステップを含む方法も提供する。そのような臨床徴候としては、PPV5A単独での感染により生じるウイルス血症および免疫抑制が挙げられる。そのような臨床徴候としては、神経性の徴候(うつ病、運動失調、嗜眠)、下痢、呼吸困難、体調の低下、関節の腫脹(跛行および横臥を生じる)、毎日の体重増加の平均の減少、死亡、および別の生物体、例えば、マイコプラズマ・ヒオリニス(Mycoplasma hyorhinis)への同時感染によって生じる多漿膜炎を挙げることができる。
さらなる態様によると、本発明は、PPV5A感染を予防するための方法であって、前記PPV5A感染が、配列番号1、2、3および/もしくは4のヌクレオチド配列に対して100%配列同一性を有する、配列番号1、2、3および/もしくは4のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%配列同一性を有する、配列番号1、2、3および/もしくは4のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%配列同一性を有する、または配列番号1、2、3および/もしくは4のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%配列同一性を有するPPV5Aによって引き起こされ得るものであり、本発明で提供される1種または複数種のPPV5Aペプチドを含む本発明の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法にも関する。
【0009】
本発明は、本発明で提供される任意の免疫原性組成物を調製する方法も提供し、当該方法は、本発明で提供される1種または複数種のPPV5Aペプチドと担体分子を、好ましくは、1種または複数種のPPV5Aペプチドと担体分子が共有結合によりカップリングする、または互いとコンジュゲートするように混合することを含む。そのようなコンジュゲートは多価であっても一価であってもよい。多価の組成物またはワクチンとしては、多数のPPV5Aペプチドと担体分子の免疫コンジュゲーションが挙げられる。さらなる態様では、本発明は、1種または複数種のPPV5Aペプチドを産生する方法を提供し、当該方法は、宿主細胞、好ましくはE.coliなどの原核細胞を、本発明で提供されるPPV5Aペプチドのいずれかをコードする核酸分子を用いて形質転換することを含む。あるいは、宿主細胞は、動物細胞、昆虫細胞、原生細胞、植物細胞、または真菌細胞などの真核細胞であってよい。真核細胞は、CHO、BHKまたはCOSなどの哺乳動物の細胞、またはサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)などの真菌細胞、またはSf9などの昆虫細胞であることが好ましい。本発明の核酸のバキュロウイルス発現も好ましい。
本発明の別の態様は、PPV5Aの少なくとも1種の遺伝的バリアントおよびより好ましくはPPV5Aの2種以上の遺伝的バリアントに対する免疫応答を誘導する1種または複数種のPPV5Aペプチドを産生する方法を提供する。これは、本明細書に開示されている1種または複数種のPPV5Aペプチドをコードし、発現する形質転換された発現ベクターを培養することを含む。発現されたタンパク質は、発現している生物体に保持されるか、または培養培地中に分泌される。発現は、PPV5Aに対する免疫応答を誘導することができるPPV5Aペプチドが産生されるのに十分な条件下で行う。PPV5Aペプチドによって免疫応答が誘導されるPPV5A血清型としては、これだけに限定されないが、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91または90%の同一性を有する配列が挙げられる。
【0010】
本発明の組成物を作製する方法は、1種または複数種のPPV5Aペプチドと担体分子のコンジュゲートを、薬学的にまたは獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せなどの生理的に許容されるビヒクルと混合することをさらに含んでよい。ビヒクル、アジュバント、または組合せの選択は、とりわけ、送達経路、個人的な嗜好、および動物種によって決定されることが当業者には理解されるであろう。
別の態様では、本発明は、対象におけるPPV5A感染を診断する方法を提供する。当該方法は、1種または複数種のPPV5Aペプチドを用意するステップと、1種または複数種のPPV5Aペプチドを対象から得た試料と接触させるステップと、試料中に1種または複数種のPPV5Aペプチドに結合することができる抗体が検出された場合に、その対象がPPV5A感染を有すると同定するステップとを含む。
別の点では、本発明は、対象が以前にPPV5A感染に曝露したことがあり、PPV5Aに対する免疫応答を発現することができることを確認する方法を提供する。当該方法は、1種または複数種のPPV5Aペプチドを用意するステップと、1種または複数種のPPV5Aペプチドを対象から得た試料と接触させるステップと、試料中に1種または複数種のPPV5Aペプチドに結合することができる抗体が検出された場合に、その対象がPPV5A感染を有すると同定するステップとを含む。
【0011】
本発明は、1種または複数種のPPV5Aペプチドを、好ましくは担体分子と一緒に含む免疫原性組成物;免疫原性組成物を包装するための容器;印刷された指示書のセット;および免疫原性組成物を動物に投与することができるディスペンサーを含むキットも提供する。1種または複数種のPPV5Aペプチドおよび担体分子は、コンジュゲートとして、または別々の化合物として包装することができる。別々に供給する場合には、1種または複数種のPPV5Aペプチドと担体分子をコンジュゲートする手段、ならびに適切な印刷された指示書も供給する。
本発明は、動物へのワクチン接種のためのキットであって、印刷された指示書のセットと、1種または複数種のPPV5Aペプチドを含む本発明で提供される免疫原性組成物を動物に投与することができるディスペンサーとを含み、PPV5Aペプチドの少なくとも1種により、動物がPPV5A感染に関連する少なくとも1種の疾患に対して有効に免疫されるキットも提供する。1種または複数種のPPV5Aペプチドは本発明で提供されるものから選択されることが好ましい。本発明のキットは、獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せをさらに含んでよい。
本発明のキット内のディスペンサーは、その内容物を液滴として分注することができるものであり、キット内に含まれる本発明で提供されるPPV5Aペプチドを含む免疫原性組成物は、動物に、鼻腔内投与、経口投与、皮内投与、または筋肉内投与した場合にPPV5A感染の少なくとも1つの臨床徴候の重症度を低下させることができるものである。臨床徴候の重症度は、無処置の感染動物と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも100%低下することが好ましい。
【0012】
PPV5Aによって引き起こされる感染を治療または予防するための方法も開示されている。当該方法は、有効量の本発明の免疫原性組成物を対象に投与することを含み、前記治療または予防法は、PPV5A感染の徴候を減少させること、PPV5A感染の臨床徴候の重症度または発生率を低下させること、対象のPPV5A感染による死亡率を低下させること、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
本発明の組成物は、獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せをさらに含む。そのような組成物は、ワクチンとして使用することができ、1種または複数種の追加的な弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、またはこれらの組合せを含む。そのようなワクチンにより、ブタパルボウイルス1、2、3、4、5A、5B、他のブタパルボウイルス種、他のブタ病原性ウイルスおよび細菌、およびこれらの組合せからなる群から選択されるウイルスに関連する少なくとも1種の疾患に対する防御的な免疫学的応答が引き出される。PPV5Aに対するワクチンと組み合わせて同時投与することができる他の種類のワクチンとしては、これだけに限定されないが、ブタサーコウイルス2型(例えば、Ingelvac(登録商標)CircoFLEX、Ingelvac(登録商標)CircoFLEX−MycoFLEX)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(例えば、Ingelvac(登録商標)PRRS ATP、Ingelvac(登録商標)PRRSV MLV)、ブタパルボウイルス(例えば、ReproCyc(登録商標)PRRSV−PLE)、マイコプラズマ(例えば、Ingelvac(登録商標)MycoFLEX)などが挙げられる。
本発明で使用する組成物に公知の注射可能な、生理的に許容される滅菌溶液を組み込むことができることが当業者には理解されよう。非経口的な注射または注入のためにすぐに使える溶液を調製するために、水性等張性溶液、例えば、生理食塩水または血漿タンパク質溶液が容易に入手可能である。さらに、本発明の免疫原性組成物およびワクチン組成物は、薬学的または獣医学的に許容される担体、希釈剤、等張化剤、安定剤、またはアジュバントを含んでよい。
【0013】
本発明の方法は、本発明の組成物を獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せと混合することも含んでよい。担体、アジュバント、または組合せの選択は、とりわけ、送達経路、個人的な嗜好、および動物種によって決定されることが当業者には理解されるであろう。
本発明は、組成物を動物に投与することによって動物において進行中のPPV5A感染の重症度を低下させる方法も提供する。組成物は、弱毒化ウイルス培養物または1種または複数種のPPV5Aペプチドを、許容される獣医学的担体と組み合わせて含んでよい。
好ましい投与経路としては、鼻腔内、経口(例えば、飲料水に入れて)、皮内、および筋肉内が挙げられる。最も好ましくは単回投薬での筋肉内投与が好ましい。本発明の組成物を2つ以上の用量で、ならびに他の投与経路によって投与することもできることが当業者には理解されよう。例えば、そのような他の経路としては、皮下、皮内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、気管内、皮内、心臓内、葉内、髄内、肺内、または膣内が挙げられる。所望の治療の持続時間および効果に応じて、本発明による組成物を、1回または数回、また断続的に、例えば、数日、数週間または数ヶ月にわたって毎日、異なる投与量で投与することができる。
【0014】
本発明は、印刷された指示書のセット;動物にワクチンを投与することができるディスペンサー;および、PPV5A、他のパルボウイルス株、他の病原体、および/またはその組合せに関連する少なくとも1種の疾患に対して動物を有効に免疫する、これだけに限定されないが、細菌細胞培養物、真菌細胞培養物、昆虫細胞培養物または哺乳動物細胞培養物を含めた細胞培養物からの少なくとも1つの単離物を含む、動物へのワクチン接種のためのキットも提供する。本発明のキットは、獣医学的に許容される担体、アジュバント、またはその組合せをさらに含んでよい。
本発明のキット内のディスペンサーは、その内容物を液滴として分注することができるものであり、キット内に含まれる分離物は、動物に、鼻腔内投与、経口投与、皮内投与、または筋肉内投与した場合にPPV5A感染の少なくとも1つの臨床徴候の重症度を低下させることができるものである。いくつかのキットでは、分離物は、PPV5A感染の少なくとも1つの臨床徴候の重症度を低下させることができるものである。臨床徴候の重症度が無処置の感染動物と比較して少なくとも10%低下することが好ましい。
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この発明の詳細な説明から、本発明の主旨および範囲内のさまざまな変化および改変が当業者に明らかになるので、発明の詳細な説明および特定の実施例には本発明の好ましい実施形態が単に例示として示されていることが理解されるべきである。
以下の図は本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図の1つまたは複数を本明細書で提示されている特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによってよく理解することができる。本出願は、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含有する。この特許出願公開のカラーの図面を伴うコピーは、要請し、必要な料金を支払えば、特許庁により提供されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本明細書において開示されている新規のブタパルボウイルス5Aおよびそのバリアントに関連する核酸およびその断片、ポリペプチドおよび免疫学的に有効なその断片、ワクチン、免疫学的に有効な調製物、抗体、診断アッセイおよびキット、ならびに前記組成物および調製物を作製し、使用する方法を提供する。
本発明の実施には、別段の指定のない限り、当技術分野の技術の範囲内にある分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、タンパク質化学および免疫学の従来の技法を使用する。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vols. I and II (D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R. K. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL press, 1986);Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the series, Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Protein purification methods - a practical approach (E.L.V. Harris and S. Angal, eds., IRL Press at Oxford University Press); and Handbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照されたい。
【0017】
本発明を詳細に説明する前に、DNA、ポリペプチド配列またはプロセスのパラメータは当然変動し得るので、本発明は特定のDNA、ポリペプチド配列またはプロセスのパラメータに限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、単に本発明の特定の実施形態を説明するためのものであり、限定的なものではないことも理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形 「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、その内容からそうでないことが明らかでない限り複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって、例えば、「an(1つの)抗原」への言及は、2つ以上の抗原の混合物を含み、「an(1つの)賦形剤」への言及は、2つ以上の賦形剤の混合物を含むなどである。
A.定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、出願時に本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。この用語の意味および範囲は明らかであるはずだが、あらゆる潜在的な多義性の事象では、本明細書において提供される定義が辞書または外部の定義よりも優先される。さらに、文脈により必要とされない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書では、「または(or)」の使用は、別段の指定のない限り「および/または(and/or)」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態は限定的なものではない。本明細書で言及される特許および刊行物は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
「疾患に対する防御」、「防御免疫」、「機能免疫」および同様の句は、1種または複数種の本発明の治療用組成物、またはこれらの組合せを投与することによって生じる、疾患または状態に対する応答を意味し、その結果、疾患または感染に曝露された免疫されていない対象において予測されるものよりも生じる有害作用が少ないことを意味する。すなわち、ワクチン接種された対象では感染の有害作用の重症度が低下する。ワクチン接種された対象では、感染が減少し得る、遅くなり得る、または場合により完全に予防され得る。本明細書では、感染の完全な予防を意味する場合には、その旨明確に記載される。完全な予防と記載されていなければ、この用語は、部分的な予防を包含する。
本明細書では、「臨床徴候の発生率および/または重症度の低下」または「臨床症状の減少」とは、野生型感染と比較した、群内の感染した対象の数の減少、感染の臨床徴候を示す対象の数の減少もしくは排除、または1または複数の対象に存在する任意の臨床徴候の重症度の低下を意味するが、これに限定されない。例えば、病原体負荷量の減少、病原体の排出、病原体の伝染の減少、またはPPV5Aへの感染の任意の症候性の臨床徴候の減少のいずれかを指すべきである。本発明の治療用組成物を受けた1または複数の対象において、組成物を受けずに感染する対象と比較して、これらの臨床徴候が少なくとも10%減少することが好ましい。本発明の組成物を受けた対象において臨床徴候が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは 少なくとも40%、なおより好ましくは少なくとも50%減少することがより好ましい。
【0019】
「防御の増大」という用語は、本明細書では、感染因子、好ましくはPPV5Aによる感染に付随する1つまたは複数の臨床症状が、ワクチン接種された対象の群において、ワクチン接種されていない対象の対照群に対して有意に減少することを意味するが、これに限定されない。「有意な臨床症状の減少」という用語は、感染因子による攻撃後に、ワクチン接種された対象の群における少なくとも1つの臨床症状の発生頻度が、ワクチン接種されていない対照群よりも少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、なおより好ましくは50%、なおより好ましくは70%低いことを意味するが、これに限定されない。
「長期にわたる防御」とは、少なくとも3週間、より好ましくは少なくとも3ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月にわたって持続する「改善された有効性」を指すものとする。家畜の場合では、長期にわたる防御は、動物が食肉用に販売される平均年齢まで持続するものとされることが最も好ましい。
「免疫原性組成物または免疫学的組成物」とは、組成物に対する細胞または抗体に媒介される免疫応答である宿主における免疫学的応答を引き出す少なくとも1種のPPV5Aタンパク質もしくはポリペプチドまたはその免疫原性部分を含む組成物を指す。本発明の好ましい実施形態では、免疫原性組成物により、免疫応答が誘導され、PPV5A感染の臨床徴候のうちの1つまたは複数に対する防御免疫が付与されることがより好ましい。
【0020】
「免疫原性」PPV5Aポリペプチド、または「抗原」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の免疫学的応答を引き出すポリペプチドまたはタンパク質を指す。「免疫原性」PPV5Aタンパク質またはポリペプチドとは、本明細書において同定される任意のコード配列の全長配列またはその類似体もしくは免疫原性断片を包含する。「免疫原性断片」または「免疫原性部分」という用語は、1つまたは複数のエピトープを含み、したがって、本明細書に記載の免疫学的応答を引き出す、PPV5Aタンパク質のアミノ酸配列の断片または、短縮されたおよび/もしくは置換された形態を指す。一般に、そのような短縮されたおよび/もしくは置換された形態、または断片は、全長のタンパク質、例えば、カプシドタンパク質からの少なくとも6つの連続したアミノ酸を含むまたはそれをコードする。短縮されたもしくは置換された形態、または断片は、全長のタンパク質、例えば、カプシドタンパク質からの少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個、さらに好ましくは少なくとも19個、なおより好ましくは30個の連続したアミノ酸を有することがより好ましい。
【0021】
「エピトープ」という用語は、免疫系によって、具体的には抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される組成物のセグメントまたは断片、例えば、タンパク質またはポリペプチドを意味する。本発明では、エピトープは、一般に、ウイルスタンパク質のポリペプチド配列の1つまたは複数の断片である。
そのような断片は、任意の数の当技術分野で周知のエピトープマッピング技法を使用して同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jerseyを参照されたい。例えば、直線状エピトープは、固体支持体上で多数のペプチドを同時に合成することによって決定することができ、ペプチドはタンパク質分子の部分に対応し、ペプチドは抗体と反応する一方でペプチドはなお支持体に付着している。そのような技法は当技術分野において公知であり、記載されている。例えば、米国特許第4,708,871号;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3998-4002;およびGeysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23: 709-715を参照されたい。同様に、立体構造エピトープは、例えば、X線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴によってなどでアミノ酸の空間的なコンフォメーションを決定することにより、容易に同定される。Epitope Mapping Protocols、上記を参照されたい。合成の抗原、例えば、ポリエピトープ(polyepitope)、フランキングエピトープ(flanking epitope)、および他の組換え抗原または合成により誘導された抗原もこの定義に包含される。例えば, Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23: 2777-2781;Bergmann et al. (1996) , J. Immunol. 157: 3242-3249;Suhrbier, A. (1997) , Immunol. and Cell Biol. 75: 402-408;およびGardner et al., (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998を参照されたい(その教示および内容が全て参照により本明細書に組み込まれる)。
【0022】
「免疫応答」または「免疫学的応答」とは、対象の組成物またはワクチンに対する細胞および/または抗体に媒介される免疫応答の発生を意味するが、これに限定されない。通常、免疫応答または免疫学的応答は以下の作用の1つまたは複数を含む(ただしこれらに限定されない):対象の組成物またはワクチンに含まれる1つまたは複数の抗原を特異的に対象とする抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞の産生または活性化。宿主は治療的または防御的な免疫学的(記憶)応答のいずれかを示し、したがって、新しい感染に対する抵抗性が増強され、かつ/または疾患の臨床的な重症度が低下することが好ましい。そのような防御は、症状の数の減少、症状の重症度の低下、もしくは病原体の感染に伴う症状の1つまたは複数が存在しないこと、ウイルス血症の発症の遅延、ウイルスの持続性の低下、全ウイルス負荷量の減少および/またはウイルス排泄の減少のいずれかによって実証される。
本明細書では、「特異的に免疫反応性」とは、PPV5A感染に特徴的な抗原は認識するが、厳密な攻撃対照に特徴的な抗原とは反応しない免疫反応性タンパク質またはポリペプチドを指す。潜在的なPPV5A免疫反応性タンパク質または他のポリペプチドの特異性を決定するために、種々のイムノアッセイ(ELISA、IFA、ウエスタンブロット)を使用して、タンパク質を、遺伝的に類似したウイルスを含有する動物血清に対して試験する。同様に、タンパク質を、種々のイムノアッセイにおいて、発現方法(バキュロウイルス、Sf9細胞など)に関連するタンパク質を含有する材料に対して試験する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「薬学的または獣医学的に許容される担体」または「賦形剤」とは、任意のかつ全ての溶媒、分散媒、被覆剤、アジュバント、安定化剤、希釈剤、防腐剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤、吸着遅延剤などを包含する。一部の好ましい実施形態、特に凍結乾燥した免疫原性組成物を含む実施形態では、本発明において使用するための安定化剤は、凍結乾燥またはフリーズドライのための安定剤を含む。
【0024】
一部の実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、アジュバントを含有する。「アジュバント」とは、本明細書で使用される場合、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えば、Quil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水エマルション、水中油エマルション、水中油中水エマルションを含み得る。エマルションは、特に、軽質流動パラフィン油(European Pharmacopea type);スクアランまたはスクアレンなどのイソプレノイド油;アルケン、特にイソブテンまたはデセンのオリゴマー形成によって生じる油;直鎖アルキル基を含有する酸またはアルコールのエステル、より詳細には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)または二オレイン酸プロピレングリコール;分枝脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルに基づくものであってよい。油を乳化剤(emulsifier)と組み合わせて使用して、エマルションを形成する。乳化剤(emulsifier)は、非イオン性界面活性物質、特に、エトキシ化されていてもよい、ソルビタンのエステル、マンニドのエステル(例えば、無水マンニトールオレエート)、グリコールのエステル、ポリグリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステルおよびオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸のエステル、ならびに、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン共重合体ブロック、特にプルロニック製品、特にL121であることが好ましい。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S), JohnWiley and Sons, NY, pp 51-94 (1995) and Todd et al., Vaccine 15: 564-570 (1997)を参照されたい。例示的なアジュバントは、"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されているSPTエマルション、および同じ書籍の183頁に記載されているエマルションMF59である。
【0025】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよび無水マレイン酸とアルケニル誘導体の共重合体から選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルと架橋したアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物はカルボマーという用語で公知である(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者は、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルで置き換えられているポリヒドロキシル化(polyhydroxylate)化合物と架橋したそのようなアクリルポリマーについて記載されている米国特許第2,909,462号を参照することもできる。好ましいラジカルは、2〜4個の炭素原子を含有するもの、例えば、ビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。不飽和ラジカルは、それ自体がメチルなどの他の置換基を含有し得る。Carbopolの名称で販売されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が特に適している。これらは、アリルスクロースまたはアリル ペンタエリスリトールと架橋している。それらとしては、Carbopol 974P、Carbopol 934PおよびCarbopol 971Pを挙げることができる。Carbopol 971Pを使用することが最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体の共重合体としては、共重合体EMA(Monsanto)が挙げられ、これらは無水マレイン酸とエチレンの共重合体である。これらのポリマーを水に溶解させることにより酸性溶液が生じ、これを、免疫原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物自体が組み込まれるアジュバント溶液をもたらすために、好ましくは生理的なpHまで中和する。
【0026】
さらに適切なアジュバントとしては、多くの他のものの中でも、これだけに限定されないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロック共重合体(CytRx、Atlanta GA)、SAF−M(Chiron、Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質−アミンアジュバント、E.coli由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換えまたは他のやり方)、コレラ毒素、IMS 1314またはムラミルジペプチド、または天然に存在するもしくは組換えサイトカインもしくはその類似体または内在性サイトカインの放出の刺激薬が挙げられる。
アジュバントは、用量当たり約100μg〜約10mgの量で、好ましくは用量当たり約500μg〜約5mgの量で、より好ましくは用量当たり約750μg〜約2.5mgの量で、最も好ましくは用量当たり約1mgの量で添加することができることが予想される。あるいは、アジュバントは、最終製品の体積で約0.01〜50%の濃度、好ましくは約2%〜30%の濃度、より好ましくは約5%〜25%の濃度、さらに好ましくは約7%〜22%の濃度、最も好ましくは10%〜20%の濃度であってよい。
「希釈剤」としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを挙げることができる。等張化剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを挙げることができる。安定剤としては、とりわけ、アルブミンおよびエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が挙げられる。
【0027】
「単離された」とは、その天然の状態から「人間の手によって」変更されたこと、すなわち、それが天然に存在する場合、その元の環境から変化したまたは取り出された、またはその両方であることを意味する。例えば、本明細書でこの用語が使用される場合、生きている生物体内に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離され」ていないが、その天然の状態で共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離され」ている。
「安全性」とは、ワクチン接種された動物において、ワクチン接種後に、これだけに限定されないが、生ウイルスに基づくワクチンの毒性への潜在的な復帰、持続性の全身性疾病またはワクチン投与の部位における許容できない炎症などの臨床的に有意な副作用を含めた有害な結果が存在しないことを指す。
「ワクチン接種(vaccination)」または「ワクチン接種すること(vaccinating)」という用語またはその変形は、本明細書で使用される場合、動物に投与されると、動物におけるPPV5Aに対する免疫応答を直接または間接的に引き出すまたは引き出すことができる本発明の免疫原性組成物を投与することを含むプロセスを意味するが、これに限定されない。
「死亡率」とは、本発明に関しては、PPV5A感染、および/またはPPV5A感染によって増強される他の生物体との同時感染によって引き起こされる死亡を指し、感染が、苦痛を予防し、その生涯に人道的な終わりをもたらすために動物を安楽死させるほど重症である状況を含む。
【0028】
「弱毒化(attenuation)」とは、病原体の毒性を低下させることを意味する。本発明では、「弱毒化」は「非病原性(avirulent)」と同義である。本発明では、弱毒化ウイルスは、PPV5A感染の臨床徴候を引き起こさないが標的哺乳動物における免疫応答を誘導することはできるように毒性を低下させたものであるが、弱毒化PPV5Aを感染させた動物における臨床徴候の発生率または重症度が、弱毒化していないPPV5Aを感染させ、弱毒化ウイルスを受けていない「対照群」の動物と比較して低下することも意味し得る。この場合、「低下する/低下した」という用語は、上で定義された対照群と比較して少なくとも10%、好ましくは25%、なおより好ましくは50%、さらに好ましくは60%、なおより好ましくは70%、さらに好ましくは80%、なおより好ましくは90%、最も好ましくは100%の低下を意味する。したがって、弱毒化した弱毒性PPV5A株は、改変生PPV5Aウイルスを含む免疫原性組成物に組み込むために適したものである。
「死菌」または「不活化」とは、PPV5Aウイルスを死滅させ、かつ/または他のやり方で再生することができないようにする物理的または化学的な薬剤を用いて処理することを意味する。PPV5Aは、例えば、熱、放射線または紫外線の存在下のソラレンなどの従来の手段によって死滅させることができる。PPV5Aは、例えば、これだけに限定されないが、バイナリーエチレンイミン(BEI)、ベータ−プロピオラクトン、ホルマリン、グルタルアルデヒド、および/またはドデシル硫酸ナトリウムのうちの1つまたは複数を含めた1種または複数種の化学的な不活化剤を使用した化学的不活化によるものなどの従来の手段によって不活化することができる。これらのウイルスの毒性株を弱毒化する方法および不活化ウイルス調製物を作製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、U.S.4,567,042および4,567,043に記載されている。したがって、本発明のワクチン組成物において使用するためのPPV5A由来の抗原は、とりわけ、改変および/または弱毒化した生ウイルス調製物または死滅または不活化ウイルス調製物であるウイルス全体の形態であってよい。
【0029】
「抗体」とは、本明細書で使用される場合、抗PPV5A抗体、例えば、本発明のPPV5Aポリペプチドを特異的に認識するCDR配列を含む化合物を含めた、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ブタ抗体、およびCDR移植抗体を含む。「に特異的」という用語は、本発明の抗体の可変領域が、排他的にPPV5Aポリペプチドを認識し、それに結合し(すなわち、単一のPPV5Aポリペプチドを、関連するポリペプチドと、ポリペプチドのファミリーに見いだされる配列同一性、相同性、または類似性にもかかわらず区別することができる)、また、抗体の可変領域、特に、抗体分子の定常領域の外側の配列との相互作用によって他のタンパク質と相互作用することが可能である(してもよい)(例えば、ELISA技法におけるS.aureusプロテインAまたは他の抗体)ことを示す。本発明の抗体の結合特異性を決定するためのスクリーニングアッセイは当技術分野において周知であり、常套的に実施される。そのようなアッセイの包括的な考察に関しては、Harlow et al. (Eds), Antibodies A Laboratory Manual: Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988), Chapter 6を参照されたい。本発明のPPV5Aポリペプチドの断片を認識し、それに結合する抗体も、抗体が、上で定義されている通り、その断片が由来する本発明のPPV5Aポリペプチドに対して、第1に、真っ先に特異的であるのであれば意図される。明瞭にするために、「抗体」とは、特異的な抗原に、その抗原に対する免疫応答の結果として結合することができる免疫グロブリン分子を指す。免疫グロブリンは、「定常」領域および「可変」領域を有する「軽」ポリペプチド鎖および「重」ポリペプチド鎖で構成される血清タンパク質であり、定常領域の組成に基づいてクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)に分けられる。抗体は、例えば、Fv、Fab’、F(ab’)2を含めた種々の形態で、ならびに単鎖で存在してよく、1つまたは複数の抗体単鎖ポリペプチド配列の全部または一部を含有する合成ポリペプチドを包含する。
【0030】
本明細書では、「有効用量」とは、抗原が投与される動物における臨床症状の減少をもたらす免疫応答を引き出す、または引き出すことができる抗原の量を意味するが、これに限定されない。
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、組成物に関しては、動物において感染または疾患の発生率を低下させるまたはその重症度を軽減する免疫応答を誘導することができる免疫原性組成物の量を意味する。特に、用量当たりのプラーク形成単位(PFU)の数または同等の尺度によって測定される弱毒化生ウイルス調製物の有効量を、50%組織培養感染量(TCID50)、すなわち、接種され、感染しやすい細胞培養物の50%において病理学的変化を生じさせる病原因子の量によってモニタリングする。死菌ワクチンまたは抗原性サブユニットに関しては、有効量とは、相対的な抗原含有量(RAC)、すなわち、有効用量当たりの抗原の包含レベルを指す。あるいは、療法に関しては、「有効量」という用語は、疾患もしくは障害、または1つもしくは複数のその症状の重症度または持続時間を低下または好転させるため、疾患または障害の前進を予防するため、疾患または障害の後退を引き起こすため、疾患または障害に付随する1つまたは複数の症状を再発、発生、発症、または進行を予防するため、または、別の療法または治療剤による予防もしくは治療を増強もしくは改善するために十分である療法の量を指す。
【0031】
当技術分野で知られた「配列同一性」とは、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間、すなわち、参照配列と、その参照配列と比較される所与の配列の間の関係を指す。配列同一性は、所与の配列と参照配列を、配列をそのような配列のひと続きの間のマッチングによって決定される最も高い程度の配列類似性が生じるように、必要であればギャップ導入を伴って最適にアラインメントした後に比較することによって決定する。そのようにアラインメントしたら、位置ごとに配列同一性を確認し、例えば、配列は、特定の位置においてヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一であればその位置において「同一」である。次いで、そのような位置同一性の総数を参照配列内のヌクレオチドまたは残基の総数で割って%配列同一性をもたらす。配列同一性は、以下に限定されないが、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York (1988) , Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York (1993) ;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey (1994) ;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press (1987) ;Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991) ; and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されているものを含めた公知の方法によって容易に算出することができる。配列同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間に最も大きなマッチングが生じるように設計される。配列同一性を決定するための方法は、与えられた配列間の配列同一性を決定する公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。そのようなプログラムの例としては、これだけに限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12 (1) : 387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびBLASTX(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215: 403-410 (1990))が挙げられる。BLASTXプログラムはNCBIおよび他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul, S. et al. , NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894, Altschul,S. F. et al. , J. Molec. Biol, 215:403-410(1990)、その教示が参照により本明細書に組み込まれる)。これらのプログラムでは、所与の配列と参照配列の間に最高レベルの配列同一性を生じさせるために、初期値のギャップ重みを使用して配列を最適にアラインメントする。例として、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも、例えば、85%、好ましくは90%、なおより好ましくは95%の「配列同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、所与のポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドごとに15個まで、好ましくは10個まで、なおより好ましくは5個までの点変異を含み得る以外は所与のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と比較して少なくとも85%、好ましくは90%、なおより好ましくは95%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでは、参照配列内のヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、なおより好ましくは5%までが欠失しているか別のヌクレオチドで置換されていてもよく、参照配列内の総ヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、なおより好ましくは5%までのいくつものヌクレオチドが参照配列に挿入されていてもよい。これらの参照配列の変異は、参照ヌクレオチド配列の5’末端位もしくは3’末端位において、またはこれらの末端位の間のどこにおいても起こり得、参照配列内のヌクレオチドの間に個別に散在しているか、または参照配列内の1つもしくは複数の連続した群として散在している。同様に、参照アミノ酸配列に対して少なくとも、例えば、85%、好ましくは90%、なおより好ましくは95%の配列同一性を有する所与のアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、ポリペプチドの所与のアミノ酸配列が、所与のポリペプチド配列が参照アミノ酸配列の100アミノ酸当たり15個まで、好ましくは10個まで、なおより好ましくは5個までのアミノ酸の変更を含み得る以外は参照配列と同一であることを意図する。言い換えれば、参照アミノ酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、なおより好ましくは95%の配列同一性を有する所与のポリペプチド配列を得るためには、参照配列内のアミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%まで、なおより好ましくは5%までが欠失しているかまたは別のアミノ酸で置換されていてもよく、参照配列内のアミノ酸残基の総数の15%まで、好ましくは10%まで、なおより好ましくは5%までのいくつものアミノ酸が参照配列に挿入されていてよい。これらの参照配列の変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端位もしくはカルボキシ末端位において、またはこれらの末端位の間のどこにおいても起こり得、参照配列内の残基の間に個別に散在しているか、または参照配列内に1つもしくは複数の連続した群として散在している。同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換によって異なることが好ましい。しかし、保存的置換は配列同一性を決定する際にマッチングとして含まれない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「配列相同性」とは2つの配列の関連性を決定する方法を指す。配列相同性を決定するために、2つ以上の配列を最適にアラインメントし、必要であればギャップを導入する。しかし、「配列同一性」とは対照的に、保存的アミノ酸置換も配列相同性を決定する際にマッチングとして計数される。言い換えれば、参照配列に対して95%の配列相同性を有するポリペプチドを得るためには、参照配列内のアミノ酸残基の85%、好ましくは90%、なおより好ましくは95%がマッチングするか、または別のアミノ酸との保存的置換を含まなければならない、または、参照配列内の、保存的置換を含めずに、総アミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%まで、なおより好ましくは5%までのいくつものアミノ酸が参照配列に挿入されていてよい。相同な配列は、相同なアミノ酸をコードする少なくとも50ヌクレオチドのひと続き、さらに好ましくは100ヌクレオチドのひと続き、さらに好ましくは250ヌクレオチドのひと続き、さらに好ましくは500ヌクレオチドのひと続きを含むことが好ましい。
「保存的置換」とは、アミノ酸残基のサイズ、疎水性などを含めた特性または性質が類似しており、したがって全体的な機能性が有意に変化しない別のアミノ酸残基による置換を指す。これは、保存的アミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換も意味し得る。
【0033】
B.担体分子
本発明のPPV5Aタンパク質またはペプチドをコンジュゲートまたは共有結合により連結することができる担体分子は上記のものであることが好ましい。動物への使用に好ましい担体はウシ血清アルブミンおよびキーホールリンペットヘモシアニンである。担体タンパク質自体が免疫原であることが好ましい。
本発明のPPV5Aタンパク質またはペプチドは、当技術分野で公知の任意の都合のよい方法によって担体と共有結合によりカップリングさせることができる。Schneerson et al, J. Experimental Medicine, 152, 361-376 (1980)に記載されているアジピン酸ジヒドラジドなどの対称のリンカー、またはFattom et al, Infection and Immunity, 56, 2292-2298(1988)に記載されているN−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートなどのヘテロ二官能性(heterobifunctional)リンカーの使用は本発明の範囲内であるが、いかなるリンカーの使用も回避し、その代わりに本発明のPPV5Aペプチドを直接担体分子とカップリングすることが好ましい。そのようなカップリングは、Landi et al J. Immunology, 127, 1011-1019 (1981)に記載されている還元的アミノ化の手段によって実現することができる。
平均分子量によって定義される免疫原性組成物のサイズは変動し、選択されるPPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)、およびPPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)を担体とカップリングする方法に左右される。したがって、これは1,000ダルトン(10
3)ほど小さくもなり得、10
6ダルトンを超えることもあり得る。還元的アミノ化カップリング法を用いて、PPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)の分子量は、通常、5,000〜500,000の範囲またはそれ以上であり、例えば、配列番号4のカプシドタンパク質に関しては、分子量はおよそ80,000ダルトンであることが予測され、これは、60個の単量体タンパク質で構成されるウイルス様粒子(VLP)を形成することが予測される。
【0034】
本発明のPPV5Aタンパク質またはペプチドに特異的に結合する担体分子、すなわちペプチド、その誘導体および類似体、ならびにペプチド模倣薬は、これだけに限定されないが、固相合成または溶液によるもの(Nakanishi et al., 1993、Gene 137: 51-56; Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc. 15:2149-2154; Neurath, H. et al., Eds., The Proteins, Vol II, 3d Ed., p. 105-237, Academic Press, New York, N.Y. (1976)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含めた、当技術分野で公知のさまざまな方法によって産生することができる。
本発明のPPV5Aタンパク質もしくはペプチドまたは本発明の抗体もしくはその結合性部分は、薬学的または獣医学的担体を伴う希釈剤中の液剤または懸濁剤により注射可能な投与量で投与することができる。
そのような分子の安全性および有効性は、Center for Veterinary Biologics(CVB)により記載され、規制されている細胞培養物または実験動物における標準の手順によって決定される。そのような分子の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における、例えば、LD
50(集団の50%に対して致死的な用量)を決定するための標準の薬学的手順によって決定することができる。
本発明のワクチンは多価であっても一価であってもよい。多価ワクチンは多数のPPV5Aタンパク質またはペプチドと担体分子の免疫コンジュゲーションによって作製される。
一態様では、PPV5Aタンパク質またはペプチド組成物は、好ましくは免疫賦活薬と組み合わせた有効な免疫量の免疫原性コンジュゲート;および生理的に許容されるビヒクルを含む。この状況において使用される場合、「免疫賦活薬」とは、免疫応答の1つまたは複数のエレメントの活性に対する、特異的な抗原と組み合わせた特異的な強化効果であるか、単に独立した効果であるかにかかわらず、免疫系の活性を増強する能力を有するあらゆる化合物または組成物を包含するものとする。免疫賦活薬化合物としては、これだけに限定されないが、無機物ゲル、例えば、水酸化アルミニウム;リゾレシチン、プルロニックポリオールなどの表面活性物質;ポリアニオン;ペプチド;油エマルション;ミョウバン、およびMDPが挙げられる。これらの材料を利用する方法が当技術分野で公知であり、所与のワクチンに対する刺激薬の最適量を決定することは十分に当業者の能力の範囲内である。2種以上の免疫賦活薬を所与の製剤に使用することができる。免疫原は、リポソームに組み込むこともでき、ワクチン製剤に使用するための多糖および/または他のポリマーとコンジュゲートすることもできる。
【0035】
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス中に存在してよい。このパックは、例えば、ブリスター包装などの金属またはプラスチックホイルを含んでよい。このパックまたはディスペンサーデバイスには、投与、好ましくは哺乳動物、特にブタ(pig)に投与するための指示書が付随してよい。
C.アジュバント
本発明で提供される、1つまたは複数のPPV5Aタンパク質またはペプチドを含有する免疫原性組成物は、その免疫原性をさらに増大させるために、1つまたは複数のアジュバントも含んでよい。
アジュバントは、以前に記載されているまたは当技術分野で公知の任意の技法によって精製することができる。好ましい精製技法は、シリカゲルクロマトグラフィー、特に、W. Clark Still et al, J. Organic Chemistry, 43, 2923-2925(1978)に記載されている「フラッシュ」(迅速)クロマトグラフィー技法である。しかし、HPLCを含めた他のクロマトグラフィー法をアジュバントの精製に使用することができる。結晶化を使用してアジュバントを精製することもできる。いくつかの場合には、分析的な純度の産物が合成により直接得られるので精製は必要ない。
【0036】
本発明のワクチン組成物は、アジュバントとPPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)を適切な滅菌条件で、アジュバント添加組成物を産生するための公知の技法に従って物理的に混合することによって調製される。PPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)とアジュバントの複合体形成は、コンジュゲート上に、長鎖アルキル化合物アジュバント上に存在する正電荷に静電気的に誘引される正味の負電荷が存在することによって容易になる。
【0037】
D.生理的に許容されるビヒクル
本発明のワクチン組成物は、他の医薬ポリペプチド組成物に使用されるものと同様の技法を使用して製剤化することができる。したがって、アジュバント、および好ましくは担体分子とコンジュゲートし、かつ/またはアジュバントと混和したPPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)を凍結乾燥した形態で保管し、投与前に生理的に許容されるビヒクル中に再構成して懸濁剤を形成することができる。あるいは、アジュバントおよびコンジュゲートをビヒクル中で保管することができる。好ましいビヒクルは、滅菌溶液、特に、滅菌緩衝溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水などである。免疫原性組成物の免疫学的効果が改善されるようにアジュバントとコンジュゲートをビヒクル中に組み合わせる方法のいずれも適する。
本発明のワクチンの単一用量の体積は変動し得るが、一般に、従来のワクチンに関して一般に使用される範囲内に入る。単一用量の体積は、上記のコンジュゲートおよびアジュバントの濃度で、約0.1mlから約3ml、好ましくは約0.2mlから約1.5ml、より好ましくは約1.0mlであることが好ましい。
本発明のワクチン組成物は、任意の都合のよい手段によって投与することができる。
【0038】
E.製剤
担体分子とカップリングしたPPV5Aタンパク質(複数可)またはペプチド(複数可)を含む免疫原性コンジュゲートを、PPV5Aの1種または複数種の血清型に対して免疫するためのワクチンとして使用することができる。生理的に許容されるビヒクル中に免疫原性コンジュゲートを含むワクチンは、動物、好ましくはブタ(swine)を、PPV5Aによる感染の治療または予防のために免疫する方法において有用である。
免疫原性コンジュゲートを用いた免疫によって本発明の免疫原性コンジュゲートに対して生じる抗体を、PPV5Aの感染を治療または予防するための受動免疫療法および抗イディオタイプ抗体の生成において使用することができる。
組成物を投与する対象は、これだけに限定されないが、ウシ(cow)、ウマ、ヒツジ、ブタ(pig)、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムスター、マウスおよびラット;最も好ましくはブタ(pig)を含めた動物であることが好ましい。
本発明の製剤は、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物またはそれに対する抗体および生理的に許容されるビヒクルを含む。ワクチンは、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物および生理的に許容されるビヒクルを含む。製剤は投与形式に適したものであるべきである。
免疫原性組成物は、所望であれば、微量の湿潤剤または乳化剤(emulsifying agent)、またはpH 緩衝剤も含有してよい。免疫原性組成物は、液剤、懸濁剤、エマルション、錠剤、ピル、カプセル剤、持続放出製剤、または散剤であってよい。経口的な製剤としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を挙げることができる。
【0039】
F.有効用量
本明細書に記載の化合物は、PPV5Aに関連する疾患を治療するために治療有効用量で対象に投与することができる。投与量は、ワクチンを受ける宿主ならびに宿主のサイズ、体重、および年齢などの因子に左右される。
製剤中に使用される本発明の免疫原性コンジュゲートまたは抗体の正確な量は、投与経路および対象の性質(例えば、種、年齢、サイズ、疾患の病期/レベル)に左右され、実医師の判断および各対象の状況に応じて、標準の臨床的技法に従って決定されるべきである。有効な免疫量は、対象におけるPPV5A感染症を治療または予防するために十分な量である。有効用量は、動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定することもでき、0.1mg/kgから20mg/kgまで、好ましくは1mg/kgから10mg/kgまで変動し得る。
組成物の免疫原性は、試験対象の免疫応答を、組成物を用いて免疫した後に当技術分野で公知の任意のイムノアッセイを使用することによってモニタリングすることにより決定することができる。体液性の(抗体)応答および/または細胞性免疫の生成を免疫応答の指標とすることができる。試験対象は、ブタ(pig)、マウス、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ(cow)、ウマ、ヒツジ、および家禽(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、およびシチメンチョウ)などの動物を含み得る。
試験対象の免疫応答は、公知の技法、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫ブロット、免疫沈降などによってアッセイされる、免疫原性コンジュゲートに対して得られた免疫血清の反応性などの種々の手法によって、または、感染症病原因子(infectious disease agent)のレベルをアッセイするための当技術分野で公知の任意の方法、例えば定量的PCR、ウイルス単離または当技術分野で公知の他の技法によって決定される、免疫された宿主の病原体による感染に対する防御および/もしくは免疫された宿主における病原体による感染に起因する症状の減弱によって分析することができる。感染症病原因子のレベルは、免疫グロブリンが指向した抗原のレベルを測定することによって決定することもできる。感染症病原因子のレベルの低下または感染症の症状の好転は、組成物が有効であることを示す。
【0040】
本発明の治療薬を、動物におけるin vivoでの使用の前にin vitroにおいて所望の治療活性または予防活性について試験することができる。例えば、特定の治療薬の投与が必要であるかどうかを決定するために使用することができるin vitroアッセイとしては、細胞株由来の適切な細胞または特定の疾患または障害を有する対象から培養された細胞を治療薬に曝露させるまたは他のやり方で治療薬を投与し、細胞に対する治療薬の効果を観察する、in vitro細胞培養アッセイが挙げられる。
あるいは、治療薬は、感染症病原因子による感染を受けやすいがその感染症病原因子に感染していない細胞(対象または培養細胞株のいずれかから培養したもの)に治療薬を接触させ、細胞を感染症病原因子に曝露させ、次いで、治療薬と接触させた細胞の感染率が、治療薬と接触させていない細胞の感染率よりも低いかどうかを決定することによってアッセイすることができる。感染症病原因子による細胞の感染は、当技術分野で公知の任意の方法によってアッセイすることができる。
さらに、治療薬は、動物モデル対象における抗体が対象とする分子のレベルを、療法の前、その間、またはその後に適切な時間間隔で測定することによって評価することができる。分子の量の任意の変化または変化がないことを同定し、対象に対する治療の効果と相関させることができる。分子のレベルは、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。
動物に本発明の方法および組成物を使用してPPV5Aに対するワクチン接種を行った後、当技術分野で公知の任意の結合アッセイを使用して、生じた抗体と特定の分子の間の結合を評価することができる。特定の抗原に対して高い親和性または特異性を示す抗体を選択するためにこれらのアッセイを実施することもできる。
【0041】
G.検出および診断方法
本発明のネイティブなPPV5A、弱毒化ウイルス、タンパク質またはペプチドの使用によって生じる抗体、またはその結合性部分は、試料中のPPV5Aの存在を検出するために有用である。この検出方法は、本発明のネイティブなPPV5A、弱毒化ウイルス、タンパク質またはペプチドに対して生じた単離された抗体またはその結合性部分を用意するステップと、単離された抗体またはその結合性部分にある分量のPPV5Aウイルスを含有する疑いのある試料を添加するステップと、単離された抗体またはその結合性部分とPPV5Aウイルスが結合した複合体の存在を検出するステップとを含む。
本発明の抗体またはその結合性部分は、試料中のPPV5Aタンパク質またはペプチドの存在を検出するためにも有用である。この検出方法は、ネイティブなPPV5A、弱毒化ウイルス、タンパク質またはペプチドに対して生じた単離された抗体またはその結合性部分を用意するステップと、単離された抗体またはその結合性部分にある分量のPPV5Aタンパク質またはペプチドを含有する疑いのある試料を添加するステップと、単離された抗体またはその結合性部分とPPV5Aタンパク質またはペプチドが結合した複合体の存在を検出するステップとを含む。
結合対のメンバーである特異的な分子に結合する免疫グロブリン、特に抗体(および機能的に活性なその断片)を、本明細書に記載の通り診断薬(diagnostics)および予後判定薬(prognostics)として使用することができる。種々の実施形態では、本発明は、結合対のメンバーの測定値およびそのような測定値の臨床的適用における使用を提供する。本発明における免疫グロブリンは、例えば、生体試料中の抗原の検出において使用することができ、それにより、対象を、免疫グロブリンが結合する分子の異常なレベルについて、および/またはそのような分子の正常でない形態の存在について試験することができる。「異常なレベル」とは、疾患を有さない対象の体の一部または対象に由来する類似した試料中に存在するレベルまたは疾患を有さない対象の体の一部または対象に由来する類似した試料存在するレベルを代表する標準のレベルと比較して、上昇または低下していることを意味する。本発明の抗体は、診断技法または予後判定技法において使用するためのキットに試薬として含めることもできる。
【0042】
一態様では、PPV5Aのネイティブなまたは弱毒化されたウイルス、タンパク質またはペプチドに免疫特異的に結合する本発明の抗体を使用して、PPV5A感染について診断、予後判定またはスクリーニングすることができる。
別の態様では、本発明は、PPV5A感染の存在またはそれに対する免疫について診断またはスクリーニングする方法であって、対象において抗体と対象由来の試料の免疫特異性結合のレベルを測定することを含み、抗体がPPV5Aタンパク質またはペプチドに免疫特異的に結合し、前記免疫特異性結合のレベルが、感染症病原因子を有さない対象由来の類似した試料における前記免疫特異性結合のレベルと比較して上昇していることにより、PPV5Aの存在が示される方法を提供する。
PPV5Aペプチドまたはそれに対するアンタゴニストの存在を検出するための適切なアッセイの例としては、これだけに限定されないが、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ゲル内拡散沈降反応アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、または免疫電気泳動アッセイが挙げられる。
特定の分子に対するイムノアッセイは、一般には、生体液、組織抽出物、新たに回収した細胞、または培養細胞の溶解物などの試料を、検出可能に標識した抗体の存在下でインキュベートし、結合した抗体を当技術分野で周知のいくつもの技法のいずれかによって検出することを含む。
所与の抗体の結合活性は、よく知られた方法に従って決定することができる。当業者は、各決定に対する効力のある最適なアッセイ条件を常套的な実験を使用することによって決定することができる。
【0043】
本発明のさらなる態様は、PPV5Aを検出または測定するための診断用キットに関する。1つまたは複数の容器内に、抗PPV5A抗体を含み、抗体に対する標識された結合パートナーを含んでもよい、診断に使用するためのキットが提供される。あるいは、抗PPV5A抗体が標識されていてもよい(検出可能なマーカー、例えば、化学発光部分、酵素部分、蛍光部分、または放射性部分を用いて)。したがって、本発明は、抗PPV5A抗体および対照免疫グロブリンを含む診断用キットを提供する。特定の実施形態では、前述の容器の化合物のうちの1つが検出可能に標識されていてよい。キットは、容器内に、標準物質または対照として使用するための、キットの抗体によって認識される所定量のPPV5Aウイルス、タンパク質またはペプチドをさらに含んでもよい。
【0044】
H.対象への投与
投与経路としては、鼻腔内、経口(例えば、飲料水に入れて)、皮内、および筋肉内が挙げられるが、これらに限定されない。筋肉内投与が特に好ましい。本発明の組成物は1用量、2用量、またはそれ以上の用量で、かつ、他の投与経路によって投与することもできることが当業者には理解されよう。例えば、そのような他の経路としては、皮下、皮内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、気管内、心臓内、葉内、髄内、肺内、および膣内が挙げられる。所望の治療の持続時間および効果に応じて、本発明による組成物を、1回または数回、また断続的に、例えば、数日、数週間または数ヶ月にわたって毎日、異なる投与量で投与することができる。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。実施例に開示されている技法は本発明の実施において十分に機能することを本発明者らが発見した代表的な技法に従い、したがって、それを実施するための好ましい方式を構成するとみなすことができることが当業者には理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の主旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。
【0045】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、表題"Porcine Parvovirus 5B, Methods of Use and Vaccine," Attorney Docket No. BIC-1153と同日付で出願された出願に関連する。
【0046】
(実施例)
材料および方法
材料の供給源:
3匹のブタ(pig)由来の組織ホモジネートを、異常な大発生の調査から入手した。農場における病歴は、全身筋振動せんが安静時に存在し運動時に激化した90.7kg(200lb)のブタ(pig)に関するものであった。ウイルス性病原因子(viral agent)が示唆された(顕微鏡レベルの病変に基づいて)ものの病原因子X(非古典的豚コレラウイルス関連ペスチウイルス)と同定されただけであった獣医学的診断診察室における広範囲にわたる試験の後、これらの動物におけるCNS徴候の根本原因の決定を補助するために試料が本発明者らに提供された。
【0047】
DNAおよびタンパク質の分析:
罹患したブタ(pig)由来の試料のDNA分析を、454 Life Sciences(Branford CT)からのハイスループット配列決定(「454技術」)を使用し、Operon(Huntsville AL)による実施で行った。試料を、概してVictoria et. al PLoS pathogen 2008 Sep 26; 4 (9): e1000163に記載の通り実施したウイルス粒子保護核酸のヌクレアーゼ処理、その後の抽出、ランダム増幅およびハイスループットな配列決定によってウイルス配列について濃縮した。
得られた配列は、最初にBLASTx分析により、Parvoviridae科の別のメンバーであると特徴付けられた。Sequencherソフトウェアを使用して配列をアッセッンブルし、これらのDNA分析の結果を標的化配列決定と併せることにより、PPV5Aと称されるウイルスの推定される完全なコード配列である配列番号1のDNA配列がもたらされた。Sequencherソフトウェアを使用したDNA配列のさらなる分析により、ウイルスレプリカーゼ(配列番号2)、オープンリーディングフレーム「ORF3」(配列番号3)、およびウイルスカプシドタンパク質(配列番号4)を含む、他のパルボウイルス種に見いだされるものに対応する3つの推定コード領域が同定された。
【実施例1】
【0048】
新規のウイルスの同定
異なる州からの無関係のブタ(pig)2匹の肺ホモジネートの試料において、454技術(ウイルスメタゲノミクス)によってDNA配列を同定した。BLASTn分析およびBLASTx分析により、ブタパルボウイルス4との最も近い同一性が明らかになり、レプリカーゼ遺伝子(REP)の保存された領域のヌクレオチド同一性は最大で67%であったが、カプシド(CAP)コード領域ではヌクレオチドレベルで識別可能なマッチングは示されなかった。タンパク質レベルでは、推定レプリカーゼタンパク質は約60%のアミノ酸同一性、カプシドタンパク質において約50%の同一性を示した。このウイルスを新しい種、ブタパルボウイルス5A(PPV5A)と名付けた。カプシドコード配列に基づいて特異的なプライマーを開発し、組織および病理学的/臨床的特性が類似したホモジネートのPCRに基づくスクリーニングにより、試料の約16%に当該病原因子が存在することが明らかになった。報告された臨床徴候およびスクリーニングした組織に関連するウイルス学的データに基づいて、いくつかの他のウイルス性病原因子および臨床病理/病理組織検査との統計的に有意な関連性が観察された。
【実施例2】
【0049】
新規のパルボウイルスとしてのPPV5Aの同定および系統発生解析
多数の公知のウイルス種の推定されるレプリカーゼ(REP)タンパク質およびカプシド(VP1/CAP)タンパク質の両方についてのペアワイズアミノ酸同一性が
図5に示されている。PPV5Aの、最も近い類縁であるPPV4に対するREPおよびCAPの両方の配列同一性(それぞれ約60%/50%)により、新しい種としてのPPV5Aの命名が支持される。
系統発生解析(
図6)により、CAPタンパク質の保存された領域に基づいて、当該ウイルスがParvoviridae科パルボウイルス属の新規の種であることが示される。より保存されたREPタンパク質配列を使用して同様の結果が実現される(示されていない)。
【実施例3】
【0050】
疾患の病原因子としてのPPV5Aの確認
ウイルスを増幅し、新規のパルボウイルスとPRRSVの同時感染により呼吸器の臨床徴候が増加するかどうかを決定するための試みにおいて、ISU由来の3つのPPV5a PCR陽性組織ホモジネートを使用して、帝王切開由来初乳未摂取(cesarean-derived-colostrum-deprived)(CDCD)動物に接種した。この試験では、新規のパルボウイルスを含有する組織ホモジネートを接種した群における死亡数が予想外に高く(20〜22%)、カプシドコード領域を標的とするPPV5A特異的PCRを使用して血清中の高力価のPPV5Aが同定された。この試験では、次いで、1匹の動物由来の組織を使用してCDCDブタ(pig)を攻撃して臨床徴候を再現した。この試験では、高力価のウイルス血症の全身感染が大多数の感染動物において認められた。PPV5Aを含有する接種物を受けた群では、高死亡発生率(20%)、跛行、毎日の体重増加(gain)の平均の減少、発熱、および巨視レベルの病変と顕微鏡レベルの病変の両方が見られた。
【実施例4】
【0051】
PPV5Aの培養、単離および精製
PCR陽性組織の小さな切片(例えば、脾臓、脳、肺、腸 など)を、滅菌した乳鉢と乳棒ですりつぶす。すりつぶした組織を、HEPES緩衝液および抗生物質を含有する改変EMEM、5〜10mlに再懸濁させ、清澄化して大きな組織塊を排除する。上清を採取し、種々のフィルターを段階的に通過させて、細菌を含めた大きな粒子の大部分を排除する。さらに、PCR陽性動物由来の糞便試料懸濁液および血清も同様にウイルス単離のために段階的に濾過することによって処理する。
濾液の希釈物をトリプシンで処理するかまたは無処理のまま放置し、6ウェルプレート中の樹立初代細胞培養物(以下に列挙されている)に特定の温度で吸着させる。種菌を吸引し、新鮮な維持培地2mlと交換する。次いで、プレートを5%CO
2雰囲気中、33〜37℃でインキュベートし、モック(培地のみ)を接種した対照と比較して、例えば、細胞の円形化、細胞間融合、脱落、細胞の集合などの細胞変性効果について毎日観察する。潜在的な陽性ウェルを、ウイルス成長/単離についてPCRによってスクリーニングする。
ウイルスの単離において有用な樹立細胞系としては、とりわけ、ST(ブタ(swine)精巣)、SK6(ブタ(swine)腎臓)、BHK−21(ベビーハムスター腎臓)、VIDO R1(胎児ブタ網膜)、PK−15 NADC(ブタ腎臓)、PK/WRL(ブタ腎臓)、HRT−180(ヒト結腸直腸腺癌)、Hep2(ヒト上皮の)、Vero(アフリカミドリザル腎臓)およびRK−13(ウサギ腎臓)が含まれた。
プロセスにおいて有用な初代細胞培養物としては、とりわけ、ブタ胎児の肺、腎臓、精巣、気管、および腸の培養物が含まれた。
ウイルスが単離されたら、それを多数のラウンドのプラーク精製または限界希釈によって精製し、より大きな数量に増幅し、動物実験用のストック培養物を生成する。
【実施例5】
【0052】
不活化ウイルスおよびワクチンの調製
約35〜39℃、2〜15mMのBEIの存在下、さらに好ましくは約10mMのBEIの存在下で不活化を実施する。少なくとも24時間、最大で24〜72時間にわたって不活化を実施する。次いで、溶液中の不活化剤を中和する薬剤を等価量で、例えば、チオ硫酸ナトリウムを等価量で添加する。不活化ウイルス調製物を当技術分野で公知の方法に従って、例えば、Preuss, T., et al., Comparison of Two Different Methods for Inactivation of Viruses in Serum, CLINICAL AND DIAGNOSTIC LABORATORY IMMUNOLOGY, (1997), 504-508またはBahnemann, H.G., Inactivation of viral antigens for vaccine preparation with particular reference to the application of binary ethylenimine, VACCINE, (1990), 299-303に開示されている通り調製する。不活化ウイルスが調製されたら、最終的なワクチン製剤化のために材料を担体調製物と組み合わせる。
【実施例6】
【0053】
弱毒化ウイルスおよびワクチンの調製
弱毒化ウイルス調製物を、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、Vaccine Protocols, 2nd edition; Robinson, Husdon, Cranage, eds, Humana Press 2003に開示されている通り調製する。例えば、“…wild type viruses are extensively passaged in tissue culture/animal hosts until an acceptable balance is reached between loss of virulence and retention of immunogenicity…”
弱毒化ウイルスを、プラーク精製または限界希釈の多数のラウンドによって精製する。PCRアッセイ、ディープシークエンシングまたは免疫蛍光法アッセイを利用して、培養材料の特異性を決定する。
精製した弱毒化ウイルス調製物と担体調製物とを組み合わせることによって弱毒化ウイルスワクチンを調製する。
【実施例7】
【0054】
カプシドタンパク質を含むサブユニットワクチンの調製
配列番号4のカプシドタンパク質を、クローニングした配列番号4またはその断片を種々のタンパク質の発現系において発現させることによって調製した。
バキュロウイルス発現:配列番号4のPPV5Aカプシドタンパク質をバキュロウイルスの発現系において、概してKost et al. (6), 2012に開示されている方法に従って発現させた。最初の精製の際にはタンパク質は不溶性画分中に低分量で見いだされた。収量および溶解性を増加させる方法としては、これだけに限定されないが、代替の緩衝条件(例えば、尿素または塩酸グアニジン)、代替の結合および精製条件(例えば、コバルトまたはニッケルアフィニティーカラム、陰イオンまたは陽イオン交換カラム)、または代替の発現条件(例えば、温度、時間、代替の細胞株)の使用が挙げられる。
細菌による発現: 配列番号4のPPV5Aカプシドタンパク質を、概してEMD Chemicals Inc. Novagen User Protocol TB184に開示されている方法に従って、細菌発現系において発現させた。この方法は、産生されたタンパク質の精製を容易にするために、細菌ベクター(EMD Chemicals Inc., 2011(7))に含有される固有のHISタグを添加することを含んだ。細菌によって発現されたHISタグ付きカプシドタンパク質を、概してGE Healthcare, 2012(8)に開示されている方法に従って精製し、生じた産物を使用して、実施例8に記載の通りPPV5A特異的抗体を生成した。
弱毒化サブユニットワクチンを、精製されたカプシドタンパク質調製物と担体調製物とを組み合わせることによって調製した。
【実施例8】
【0055】
PPV5Aに特異的に結合する抗体の調製
PPV5Aに特異的に結合する抗体を、ウサギをPPV5Aウイルスの抗原性調製物、またはカプシド(配列番号4)タンパク質またはその断片のサブユニットタンパク質調製物で免疫することによって調製する。接種を行ったウサギ由来の血清試料を、PPV5A抗原に結合するポリクローナル抗体についてスクリーニングする。抗原に対する抗体を産生することが決定された、接種を行ったマウス由来の脾臓を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生した。次いで、ハイブリドーマを、PPV5A抗原との結合についてスクリーニングする。
ポリクローナル抗体:実施例7に従って調製した、細菌により発現されたHISタグ付きのカプシドタンパク質を使用して、New Zealand White rabbit2匹を受託抗体生産サービス(Rockland Antibodies and Assays;Gilbertsville、PA)において免疫した。ウサギを、D0、D7、D14およびD28に、ウサギ当たり抗原およそ100μgを用いて免疫した。D0およびD7の接種については、動物の皮内に接種し、D14およびD28での接種は皮下投与した。最初の接種では完全フロイントアジュバントを使用し、その後の接種では不完全フロイントアジュバントを使用した。免疫前、および免疫の38日後および45日後に両方のウサギから血清試料を採取した。
【0056】
ポリクローナル抗体調製物を、Rockland Antibodies and Assaysによって抗PPV5A特異性についてスクリーニングした。精製されたまたは部分的に精製されたPPV5Aタンパク質に対して免疫蛍光アッセイ(IFA)、ウエスタンブロット、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)による結合特異性を有する抗体を産生した。各アッセイの特異性についてのパラメータは以下の通りであった: ウエスタンブロットによる特異性は、予測される88.8kDaのサイズのタンパク質の検出によって測定し、IFAによる特異性は感染していない細胞と比較することによって測定し、ELISAによる特異性はプレートを関連性のないタンパク質でコーティングすることによって測定した。
モノクローナル抗体:受託抗体生産サービス(Rockland Antibodies and Assays;Gilbertsville、PA)において、実施例7に従って調製したバキュロウイルスにより発現されたHISタグ付きのカプシドタンパク質を使用してBalb/cマウスでモノクローナル抗体を生成する。マウスを、受託抗体生産施設により設計された標準のプロトコールに従って種々のPPV5A抗原性調製物を用いて免疫する。接種後の免疫応答を受託抗体生産施設によりモニタリングし、ハイブリドーマを生成するための抗体候補を選択する。モノクローナル抗体を生成するための標準のプロトコールは、例えば、Gabriele et al. (9), p.117-135に開示されている通り当業者には周知である。
Gabriele et al. (9), p.117-135に開示されている通り、標準のプロトコールに従って、ハイブリドーマ培地において増殖期まで培養したB細胞腫瘍細胞と、PPV5A抗原に対する抗体を産生することが決定された接種されたマウスから回収した脾臓細胞を組み合わせることによってハイブリドーマを生成する。融合し、ハイブリドーマを培養した後、ハイブリドーマを、PPV5A抗原との結合についてスクリーニングし、抗PPV5Aを産生するハイブリドーマを選択する。ハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体を、アフィニティークロマトグラフィーを使用し、Gabriele et al. (9), p.209-232に開示されている通り、標準のプロトコールに従って精製する。
【0057】
PPV5Aに特異的な高親和性抗体を同定し、それらが結合するエピトープ、他の関連するウイルス種に対する抗体の特異性の決定を含めたさらなる特徴付けを行い、PPV5Aウイルス抗原(複数可)に対する特異性が高い適切な高親和性抗体を、当技術分野で周知の免疫学的技法、例えば、ELISA、ウエスタンブロット分析およびエピトープマッピング(Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press、Totowa、New Jersey)を使用して選択する。
【実施例9】
【0058】
PPV5Aに対する診断アッセイ
ELISAアッセイ:実施例8に従って調製した抗体を使用し、ELISA手順を使用して生体試料中のPPV5Aを測定する。アッセイを以下の通り行う:
配列番号4のカプシドタンパク質から選択されるコーティング抗原をコーティング緩衝液(0.05Mの炭酸−炭酸水素緩衝液;pH9.6)中に希釈して8ng/μlの最終濃度を実現する。プレート(高タンパク質結合性96ウェルELISAプレートPhenix cat no.MPG−655061)をウェル当たり50μlのコーティング抗原でコーティングする。プレートを密閉し、37℃で1時間または4℃で一晩インキュベートする。コーティング溶液を除去し、プレートをウェル当たり200μlのPBST(1×PBS+0.05%Tween−20)で3回洗浄する。プレートをウェル当たり300μlのブロッキング溶液(PBS中0.5%w/vの脱脂粉乳)でコーティングし、密閉し、37℃で1時間インキュベートする。ブロッキング溶液を除去し、プレートをウェル当たり200μlのPBSTで3回洗浄する。試料をブロッキング溶液中に1:100に希釈し、ウェル当たり100μlの血清試料をプレートに加える。プレートを密閉し、37℃で1時間インキュベートする。血清試料を除去し、プレートをウェル当たり200μlのPBSTで3回洗浄する。二次抗体(HRPとコンジュゲートしたヤギ 抗ブタ(swine)IgG(H+L);Jackson Immuno−Research 114−035−003)をブロッキング溶液中1:10,000に希釈し、それを使用してウェル当たり100μlでプレートをコーティングする。プレートを密閉し、37℃で1時間インキュベートする。二次抗体を除去し、プレートをウェル当たり200μlのPBSTで3回洗浄する。プレートをウェル当たり50μlのTMB(3,5,3’,5’−テトラメチルベンジジン;KPL cat no.53−00−01)でコーティングする。プレートを室温、暗闇中でおよそ10分間インキュベートする。プレートをウェル当たり50μlの停止液(2MのH
2SO
4;KPL cat no.50−85−04)でコーティングする。450nmにおける光学濃度を読み取る。
【0059】
PCRアッセイ:PPV5Aについてのゲルに基づくPCRおよびqPCRアッセイが最適化されている。これらのアッセイを以下の通り行う:qPCRアッセイについては、各反応を、以下の試薬を添加することによって調製する:反応当たり10μlの2×SsoFast probe supermix(BioRad、cat no.172−5233)、反応当たり5μlのDEPC−処理水、濃度6μM、反応当たり1μlのフォワードプライマー(AAT GCG TGT GCT TAC GCT TA:配列番号6)、濃度6μM、反応当たり1μlのリバースプライマー(TGG GTT CGA ATA TGA AGA GG:配列番号7)、濃度4μM、反応当たり1μlのプローブ(6−FAM/TC ATC AGG AAC CCT GGA GTG ATC TCA /BHQ_1:配列番号88)、および反応当たり2μlの抽出されたDNA。反応をT100 thermal cycler(Bio−Rad)において、95℃で2分を1サイクル、その後、95℃で5秒、その後、60℃で5秒の2つの温度の40サイクルを実施する。CFX96 optical imaging system(Bio−Rad)を使用してデータを読み取る。ゲルに基づくアッセイについては、各反応を、以下の試薬を添加することによって調製する:反応当たり12.5μlの2×AmpliTaq Gold Mastermix(Applied Biosystems、cat no.4302758)、反応当たり8.0μlのDEPC処理水、濃度10μM、反応当たり1.25μlのフォワードプライマー(GTA CTA TGA ATT TCC AAA CGA TCT TCC TTT CG:配列番号9)、濃度10μM、反応当たり1.25μlのリバースプライマー(TTA CAC CAA ATC TGG GAC TCT AAA CAG GC:配列番号10)、および反応当たり2μlの抽出されたDNA。反応を、T100 thermal cycler(Bio−Rad)において、95℃で5分を1サイクル、その後、95℃で30秒、60℃で30秒および72℃で45秒の温度で40サイクル、その後、72℃で10分の最終的な伸長で実施する。
【実施例10】
【0060】
ブタ(pig)におけるPPV5Aワクチンの有効性の評価
ブタ(pig)における少なくとも1種のPPV5Aタンパク質またはポリペプチド(プロトタイプPPV5Aワクチン)を含む組成物の有効性を評価するために、3つの群にランダム化した5週齢の初乳未摂取帝王切開由来(colostrum-deprived-cesarean-derived)(CDCD)動物を使用したランダム化試験(表2参照)を実施する。試験0日目(D0)およびD14に、動物に組成物またはプラセボ(リン酸緩衝生理食塩水;PBS)をワクチン接種する。D28に、PPV5Aを含有することが分かっている材料を用いて動物を攻撃する。臨床的観察、直腸の温度、体重測定値および血液採取をモニタリングする。D56に、動物を剖検して肉眼で見える病変を評価する。ワクチン接種した動物とワクチン接種していない動物の間でパーセント死亡率、ウイルス血症(力価および持続時間)、抗体陽転(力価および持続時間)ならびに臨床徴候を統計学的に比較することによってPPV5Aワクチンの有効性を決定する。
【0061】
【表2】
【0062】
本明細書において開示され、特許請求されている組成物および方法は全て、本開示に照らして、過度な実験を伴わずに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本明細書に記載の組成物および方法ならびに方法のステップまたは一連のステップに、本発明の概念、主旨および範囲から逸脱することなく変形を適用することができることが当業者には明らかになろう。より詳細には、化学的にかつ生理的に関連する特定の薬剤で本明細書に記載の薬剤を置換することができるが、同じまたは同様の結果が実現されることが明らかになろう。当業者に明らかであるそのような同様の置換および修飾は全て、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨、範囲および概念の中にあるとみなされる。
【0063】
参考文献
以下の参考文献は、それにより本明細書に記載のものを補足する例示的な処置上のまたは他の詳細が提供される限りでは、明確に参照により本明細書に組み込まれる。
(1) Csagola A, et al., Detection, prevalence and analysis of emerging porcine parvovirus infections. Arch Virol. Jun; 157(6):1003-10 (2012).
(2) Hijikata M, et al., Identification of new parvovirus DNA sequence in swine sera from Myanmar. Jpn J Infect Dis 54:244-245 (2001).
(3) Wang F, et al., Novel parvovirus sublineage in the family of Parvoviridae. Virus Genes 41:305-308 (2010).
(4) Lau SK, et al., Identification of novel porcine and bovine parvoviruses closely related to human parvovirus 4. J Gen Virol 89:1840-1848 (2008).
(5) Cheung AK, et al., Identification and molecular cloning of a novel porcine parvovirus. Arch Virol 155(5):801-806 (2010).
(6) Kost et al., Recombinant baculoviruses as mammalian cell gene-delivery vectors, Trends in Biotechnology, 20, 173-180, Apr. 2002. cited by other.
(7) EMD Chemicals Inc. 2011. Xa/LIC Kits, User Protocol TB184.
(8) GE Healthcare. Recombinant Protein Purification Handbook. 18-1142-75.
(9) Gabriele et al. (eds.), Antibody Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, 2012, vol. 901, chapter 7.