(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材鋼板と、基材鋼板の表面に形成された溶融Al、Mg含有Znめっき層と、を有するめっき鋼板を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて、黒色めっき鋼板を製造する方法であって、
密閉容器の内部に配置した前記めっき鋼板を、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスの存在下で加熱する第1工程と、
前記加熱された密閉容器の内部の前記雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする第2工程と、
前記密閉容器の内部に水蒸気を導入して前記めっき層を黒色化する第3工程と、
前記めっき層を黒色化した黒色めっき鋼板が配置された密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする第4工程と、
前記密閉容器の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスを導入して前記めっき鋼板を冷却する第5工程とを、
この順番で行う、黒色めっき鋼板を製造する方法。
前記第3工程において、前記密閉容器の内部に水蒸気を導入した後に、前記密閉容器の内部から一定量の雰囲気ガスを排出し、かつ、前記密閉容器に水蒸気をさらに導入する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の黒色めっき鋼板を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.黒色めっき鋼板を製造する方法
本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう。)は、AlおよびMgを含有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて黒色めっき鋼板を製造する方法である。
【0015】
本発明の方法は、
図1に示すように、密閉容器の内部に配置した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(以下、「低水蒸気ガス」ともいう。)の存在下で加熱する第1工程(工程S110)と、前記密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする第2工程(工程S120)と、前記密閉容器の内部に水蒸気を導入して前記めっき層を黒色化する第3工程(工程S130)とを、この順番で行う。本発明の方法は、
図2に示すように、前記第3工程(工程S130)の後に、前記密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする第4工程(工程S140)と、前記密閉容器の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスを導入して前記めっき鋼板を冷却する第5工程(工程S150)とを、この順番で行ってもよい。なお、雰囲気ガスとは、密閉容器の内部に存在するガスを意味し、本明細書に記載された大気、水蒸気、水素を含有する水蒸気、および低水蒸気ガスの総称である。
【0016】
以下、各工程についてより詳しく説明する。
【0017】
(第1工程)
第1工程(工程S110)では、密閉容器の内部に配置しためっき鋼板を低水蒸気ガスの存在下で加熱する。
【0018】
密閉容器は、めっき鋼板を配置する配置部をその内部に有し、雰囲気ガスの排気による内部の気体の圧力の低下、水蒸気導入、加熱、冷却などに耐えうる強度を有していればよい。密閉容器は、その外部から内部への気体の流入が実質的に不可能な密閉状態と、外部から内部へのめっき鋼板の搬入が可能な開放状態との、いずれをもとることが可能に構成されている。密閉容器は、後述する排気配管、水蒸気供給配管、ガス導入配管およびドレン配管などを接続可能な開口をその壁面または底面に有していてもよく、このとき、これらの配管に設けられた弁を閉じることで、容器の内部を密閉状態にできればよい。また、密閉容器は、容器の内部を密閉状態にできる限りにおいて、後述する加熱部を有していてもよい。
【0019】
めっき鋼板は、基材鋼板と、基材鋼板の表面に形成された溶融Al、Mg含有Znめっき層とを有する。
【0020】
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板として、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、および合金鋼などからなる鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼および低炭素Nb添加鋼などの深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを添加した高強度鋼板を用いてもよい。
【0021】
溶融Al、Mg含有Znめっき層は、水蒸気との接触により黒色化する組成を有すればよい。水蒸気との接触によりめっき層が黒色化するメカニズムは不明であるが、一つの仮説としては、水蒸気との接触によりめっき層表面およびめっき層中に酸素欠乏型の欠陥構造を有するZn、Al、Mgの酸化物(例えば、ZnO
1−xやAl
2O
3−xなど)が生成されるためと推察される。このように酸素欠乏型の酸化物が生成すると、その欠陥準位に光がトラップされるため、酸化物が黒色外観を呈することになる。
【0022】
たとえば、Al:0.1質量%以上60質量%以下、Mg:0.01質量%以上10質量%以下、Zn:残部の組成を有するめっき層は、水蒸気との接触によって好適に黒変することができる。AlまたはMgの含有量を上記上限値以下にすると、めっき時にドロスがより発生しにくいため、めっき層の外観を良好なものにすることができる。一方、Alの含有量を上記下限値以上にすると、めっきの密着性をより高めることができる。また、Mgの含有量を上記下限値以上にすると、より短時間でめっき層を黒色化することができる。
【0023】
なお、本願明細書において、めっき層中の各成分の含有量の値は、めっき層に含まれる各金属成分の質量をめっき層に含まれる全金属の質量で除したものを百分率で表したものである。すなわち、水蒸気処理によって生じる酸化物や水和酸化物などに含まれる酸素および水素の質量は、めっき層中の成分として含まれない。したがって、水蒸気処理の際に金属成分の溶出が起こらない場合、水蒸気処理の前後においてめっき層中の各成分の含有量の値は変化しない。
【0024】
現在、市場で最も多く流通している溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板は、めっき層中にAlを6質量%程度、Mgを3質量%程度含んでいる。このようなめっき組成の場合、めっき層の金属組織は、主として、初晶のAl相とAl/Zn/Zn
2Mgの三元共晶組織とが混在したものとなっている。ここでAl/Zn/Zn
2Mgの三元共晶組織を形成する各相(Al相、Zn相およびZn
2Mg相)は、それぞれ不規則な大きさおよび形状をしており、互いに入り組んでいる。初晶のAl相とAl/Zn/Zn
2Mgの三元共晶組織中のAl相は、Al−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温でのAl”相(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に由来するものである。この高温でのAl”相は、常温では、通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。三元共晶組織中のZn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらにMgを固溶するZn固溶体である。三元共晶組織中のZn
2Mg相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図におけるZnが約84質量%の点付近に存在する金属間化合物相である。
【0025】
基材鋼板とめっき層との密着性をより高めるため、めっき層は、0.005質量%以上2.0質量%以下のSiを含有してもよい。めっき層におけるSiの含有量が0.005質量%以上であると、基材鋼板とめっき層との界面におけるAl−Fe合金層の成長が抑制され、上記密着性がより高まる。めっき層におけるSiの含有量が2.0質量%以下であると、Si系酸化物がめっき層表面に生成しにくく、上記Si系酸化物による黒色化の阻害が生じにくい。また、Zn
11Mg
2相が過剰に生成および成長して、外観および耐食性に悪影響を与えることを抑制するため、めっき層は、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物を含有してもよい。めっき層におけるこれらの化合物の含有量は、Tiの量が0.001質量%以上0.1質量%以内、かつ、Bの量が0.0005質量%以上0.045質量%以内であることが好ましい。めっき層におけるTiまたはBの含有量が上記下限以上であると、上記Zn
11Mg
2相の生成および成長がより抑制される。めっき層におけるTiまたはBの含有量が上記上限以下であると、めっき層への析出物の成長が生じにくい。なお、めっき層がTi、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物を含有することによる、水蒸気処理による黒色化への影響は、無視できる範囲である。
【0026】
めっき層の厚みは、特に限定されないが、3μm以上100μm以下であることが好ましい。めっき層の厚みが3μm以上であると、取り扱い時に入るキズが基材鋼板に到達しにくいため、黒色外観の保持性および耐食性がより高くなる。一方、めっき層の厚みが100μm以下であると、圧縮を受けた際のめっき層と基材鋼板の延性が異なることによる、加工部におけるめっき層と基材鋼板との剥離がより生じにくくなる。
【0027】
めっき鋼板の形状は、水蒸気処理により黒色化すべきめっき層の領域が水蒸気と接触可能であれば、特に限定されない。たとえば、めっき鋼板の形状は、そのめっきされた面が平坦な形状(たとえば、平板状)でもよいし、そのめっきされた面が屈曲した形状(たとえば、コイル状)でもよい。なお、コイル状とは、めっき鋼板により構成される金属帯が、径方向に間隔をあけて巻かれた形状を意味する。密閉容器の内部への配置の容易さ、およびその後の搬送の容易さの観点からは、めっき鋼板の形状は、コイル状であることが好ましい。水蒸気を容易に浸入させるため、上記間隔は、径方向に隣り合う表面同士の最短距離が0.05mm以上となるように設定されることが好ましい。
【0028】
たとえば、コイル状のめっき鋼板における上記間隔は、巻かれためっき鋼板の表面の間にスペーサーを配置するなどして設けることができる。上記スペーサーの形状は、コイル状のめっき鋼板に水蒸気を行き渡らせることができればよく、線状のスペーサーでもよいし、面状のスペーサーでもよい。線状のスペーサーは、めっき鋼板の表面の一部に配置される線材である。面状のスペーサーは、めっき鋼板の表面の少なくとも一部に配置される平板状の部材である。鋼板とスペーサーとが接触する面積は小さい方が好ましく、一つの接触点における接触面積は15mm
2以下であることがより好ましい。スペーサーの材料は、水蒸気処理中に著しい劣化、発火、めっき鋼板との融着または溶解が生じなければ特に限定されないが、金属および樹脂が好ましく、水蒸気透過性を有する材料であることがより好ましい。
【0029】
また、めっき鋼板の表面の一部に黒色されない部分を形成するときは、アルミテープまたは樹脂テープによる、上記黒色化されない部分の形状を有するマスキングが施されていてもよい。
【0030】
めっき鋼板は、単層に配置されてもよいし、積層して配置されてもよい。たとえば、上記コイル状のめっき鋼板は、アイアップで配置することができる。また、2個以上の前記コイル状のめっき鋼板を同時に黒色化するときは、上記2個以上の前記コイル状のめっき鋼板をいずれもアイアップで前記密閉容器の内部に配置し、かつ、前記2個以上のめっき鋼板は、重ねて配置することができる。なお、このときも、水蒸気を容易に浸入させるため、めっき鋼板は、隣り合う表面同士の最短距離が0.05mm以上となるように積層または配置されることが好ましい。めっき鋼板同士の上記間隔も、隣り合うめっき鋼板の間に上記スペーサーを配置するなどして設けることができる。また、任意の形状に加工されためっき鋼板を黒色化してもよく、その際は、密閉容器の内部に設けた棚を前記配置部として、加工されためっき鋼板を上記棚に乗せてもよいし、加工されためっき鋼板を上記棚から吊り下げてもよい。
【0031】
めっき鋼板は、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(低水蒸気ガス)の存在下で加熱される。言い換えると、本工程において、密閉容器の内部に存在する雰囲気ガスは低水蒸気ガスである。作業を容易にする観点からは、低水蒸気ガスは、大気であることが好ましいが、黒色化が可能な限りにおいて、不活性ガスとしてもよい。不活性ガスの例には、Ar、N
2、He、Ne、Kr、H
2、Xeおよびこれらの混合ガスなどが含まれる。これらのうち、安価に入手可能なAr、N
2、HeおよびN
2とH
2との混合ガスが好ましい。低水蒸気ガスは、後述するガス導入部から密閉容器の内部へ導入することができる。
【0032】
加熱前のめっき鋼板の温度は、通常、常温程度である。また、めっき鋼板の熱容量は大きい。そのため、従来のように、露点がめっき鋼板温度以上となる、水蒸気を多く含有するガスの存在下でめっき鋼板を加熱すると、めっき鋼板の表面近傍の雰囲気ガスがめっき鋼板で冷却されて水蒸気が凝縮し、めっき鋼板の表面に結露が生じることがある。めっき鋼板の表面に結露が生じると、結露が生じた部分には水蒸気が接触できず、黒色化が阻害されるため、めっき層を均一に黒色化できないおそれがある。また、結露によってめっき鋼板表面が腐食し、白錆に覆われることで外観を損なうことがある。これに対し、本発明の方法では、低水蒸気ガスの存在下でめっき鋼板を加熱するため、上記水蒸気の凝縮による結露の発生が生じにくい。そのため、本発明の方法では、上記めっき層をより均一に黒色化し、めっき鋼板の外観をより見栄え良くできる。上記観点から、本工程における雰囲気ガスの露点は常温以下であることがより好ましく、たとえば、本工程における雰囲気ガスは大気とすることができる。また、加熱に伴ってめっき鋼板の温度は上昇していくので、加熱開始時における上記雰囲気ガスの露点がめっき鋼板の温度より低い状態であれば、通常、雰囲気ガスの露点は常にめっき鋼板温度未満となる。
【0033】
加熱は、めっき層の表面温度が、水蒸気との接触によってめっき層が黒色化される温度(以下、単に「黒色処理温度」ともいう。)に達するまで行う。たとえば、加熱は、密閉容器の内部に設置した温度測定センサーでめっき層の表面の温度を測定しながら行い、めっき層の温度が上記黒色処理温度を超えた後に終了すればよい。
【0034】
なお、めっき鋼板は熱容量が大きいため、表面の温度が一様に上昇せず、表面の温度にムラが生じることがある。そのため、めっき層の表面のうち複数の点もしくは領域、または表面の全体の温度を測定しながら加熱を行い、測定された温度が最も低い点または領域(以下、単に「最冷点」ともいう。)の温度が上記黒色処理温度に達するまで加熱を行うことが好ましい。ただし、測定データを蓄積すれば、温度を実測しなくとも条件設定のみで加熱工程を終了することも可能である。
【0035】
上記黒色処理温度は、めっき層の組成(たとえば、めっき層中のAlおよびMgの量)もしくは厚み、または必要とする明度などに応じて任意に設定することができるが、50℃以上350℃以下であることが好ましく、105℃以上200℃以下であることがより好ましい。黒色処理温度が105℃以上であると、黒色化をより短時間で行うことができる。一方、黒色処理温度が350℃以下であると、黒色化装置の大型化、ならびに水蒸気の加熱のためのエネルギー消費が低減でき、さらにめっき層の黒色化度合いを容易に制御可能となる。
【0036】
加熱方法は、めっき層の表面を上記黒色処理温度にすることができれば、特に限定されない。たとえば、密閉容器の内カバーと外カバーとの間に設置した加熱部によって加熱してもよいし、熱風を密閉容器の内部に導入して加熱してもよい。上記めっき鋼板を均一に加熱するため、密閉容器の内部で上記雰囲気ガスを撹拌しながら、加熱を行ってもよい。
【0037】
(第2工程)
第2工程(工程S120)では、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする。たとえば、密閉容器外に設置した排気ポンプで、密閉容器の中の雰囲気ガスを排出することで、密閉容器の内部を排気し、密閉容器の内部の気体の圧力を上記範囲にすることができる。本工程において、雰囲気ガスの排気は1回のみ行ってもよいが、密閉容器の内部に残存する水蒸気以外の気体成分の量をより少なくするため、雰囲気ガスの排気と低水蒸気ガスの導入を繰り返し行ってもよい。
【0038】
本発明の方法では、本工程で密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して密閉容器の内部の気体の圧力を低くしているため、後述する第3工程(工程S130)で導入される水蒸気をめっき鋼板の間の隙間にまで十分に行き渡らせることができる。そのため、黒色化すべきめっき層の全体をより均一に水蒸気処理することができ、黒色化のムラを発生しにくくすることができる。また、本工程での排気によって、第3工程で水蒸気を導入した後の密閉容器内の酸素濃度を13%以下にすることができる。上記観点からは、本工程において前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にすることが好ましく、50kPa以下にすることがより好ましい。
【0039】
(第3工程)
第3工程(工程S130)では、密閉容器の内部に水蒸気を導入して前記めっき層を黒色化する。
【0040】
本工程で黒色化を均一に行う観点からは、めっき層の表面のうち複数の点もしくは領域、または表面の全体のうち、測定された温度が最も高い点または領域(以下、単に「最温点」ともいう。)の温度と、前記最冷点の温度との差が30℃以下、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下となってから、第3工程(工程S130)を行うことが好ましい。上記観点からは、上記最温点の温度と上記最冷点の温度とが一致してから、第3工程(工程S130)を行うことがより好ましい。上記温度の差を上記範囲内にするため、第1工程と第2工程との間、または第2工程と第3工程との間に、めっき鋼板を静置してめっき層の表面の温度を均一化させる温度均一化工程を設けてもよい。
【0041】
水蒸気処理中の密閉容器の内部は、雰囲気温度が105℃以上であり、かつ、相対湿度が80%以上100%以下であることが好ましい。雰囲気温度を105℃以上とし、水蒸気の相対湿度を80%以上とすることで、黒色化をより短時間で行うことができる。また、雰囲気温度を105℃以上とすることで、めっき層を十分に黒色化して、たとえばL*a*b*色空間におけるめっき層の明度L
*を60以下、好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下にまで低下させることができる。なお、上記めっき層表面の明度(L
*値)は、分光型色差計を用いて、分光反射測定法で測定される。また、雰囲気温度を105℃以上とすることで、水分を凝縮しにくくして、密閉容器の内部またはめっき層の表面への結露の発生を抑制することができる。上記雰囲気温度は、105℃以上350℃以下であることがより好ましく、105℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。上記相対湿度は、100%であることがより好ましい。また、水蒸気処理中の密閉容器の内部は、酸素濃度が13%以下であることが好ましい。上記酸素濃度を13%以下にすると、黒色化のムラの発生を抑えることができる。
【0042】
上記雰囲気温度を保つため、本工程において、密閉容器の内部を加熱してもよい。加熱方法は、密閉容器の内部の温度および相対湿度が上記範囲に制御される限りにおいて特に限定されない。たとえば、後述する加熱部を作動させるか、導入される水蒸気を加熱することで、密閉容器の内部を加熱しうる。
【0043】
現在の技術では100℃を超える雰囲気での相対湿度や露点、水蒸気分圧そのものを直接測定することは困難である。本工程において、水蒸気の導入開始後は密閉容器の内部はほぼ水蒸気であるため、密閉容器の内部をモニターできる圧力計の値を、そのときの温度での飽和水蒸気圧で除したものが密閉容器の内部の相対湿度となる。しかし、めっき層が黒色化し始めると、めっき層の金属と水蒸気との反応副成物である水素ガスが発生するため、圧力計で測定される密閉容器の内部の気体の圧力は、密閉容器の内部の水蒸気分圧と水素分圧をあわせた全圧となる。この水素ガスが水蒸気処理中の密閉容器の内部の雰囲気ガス内に混入すると、相対湿度が上記好ましい範囲よりも低くなることがある。これに対し、上記相対湿度を保つため、本工程において、密閉容器の内部に水蒸気を導入した後、密閉容器の内部から一定量の雰囲気ガスを排出し、かつ、前記密閉容器に水蒸気をさらに導入してもよい。密閉容器の内部から一定量の雰囲気ガスを排出し、かつ、前記密閉容器の内部に水蒸気をさらに導入しながら本工程を行うことで、密閉容器の内部における上記水素ガスの濃度をより高まりにくくし、相対湿度を上記好ましい範囲内に保ちながら本工程を行うことができる。前記さらに導入する水蒸気の量は、前記排出するガスの量と同じ量とすることが好ましい。上記雰囲気ガスの排出および水蒸気の導入は、本工程の開始から終了まで連続して行ってもよいし、単回のみ行ってもよいし、一定の間隔をおいて複数回行ってもよい。めっき層が所望の程度に黒色化される限りにおいて、上記密閉容器の内部からの雰囲気ガスの排出および内部への水蒸気の導入を行わずに、本工程を行ってもよい。
【0044】
また、密閉容器の内部の全体を上記相対湿度として、黒色化のムラを防ぐため、本工程において、前記密閉容器の内部に水蒸気を導入した後、めっき層が黒色化されているときに、密閉容器の内部の雰囲気ガスを撹拌してもよい。
【0045】
水蒸気処理の処理時間は、めっき層の組成(たとえば、めっき層中のAlおよびMgの量)もしくは厚み、ならびに必要とする明度などに応じて任意に設定することができる。
【0046】
(第4工程)
第4工程(工程S140)では、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする。たとえば、密閉容器外に設置した排気ポンプで、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排出することで、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して圧力を低くすることができる。
【0047】
後述する第5工程(工程S150)で、密閉容器の内部に水蒸気が残ったまま上記めっき鋼板を冷却すると、めっき鋼板の隙間などに残った水蒸気が冷却されて凝縮し、めっき鋼板の表面または密閉容器の内部に結露が生じることがある。本工程でめっき鋼板の表面に結露が生じると、黒色めっき鋼板の表面に水分が付着し、めっき鋼板の黒色にムラが生じる可能性がある。これに対し、本発明の方法では、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器の内部の水蒸気量を少なくした後にめっき鋼板を冷却するため、このような問題が生じにくい。上記観点からは、本工程において前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にすることが好ましく、30kPa以下にすることがより好ましい。
【0048】
(第5工程)
第5工程(工程S150)では、密閉容器の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスを導入して前記めっき鋼板を冷却する。本工程で導入されるガスは、加熱されていないことが好ましいが、必要に応じて、上記密閉容器の内部の雰囲気温度よりも低温に加熱されていてもよい。
【0049】
たとえば、本工程で導入されるガスは、不活性ガスまたは大気とすることができる。本工程で導入されるガスは、前記第1工程における低水蒸気ガスと同一でもよいし、異なっていてもよい。作業を容易にする観点からは、密閉容器を大気開放し、大気を導入することが好ましい。
【0050】
(効果)
上記本発明の方法によれば、水蒸気がめっき鋼板の隙間にまで十分に行きわたり、かつ、めっき鋼板の表面に結露が生じにくいので、めっき鋼板の黒色化すべき領域をより均一に黒色化することができる。
【0051】
2.黒色めっき鋼板を製造する装置
(装置の構成)
本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置(以下、単に「本発明の装置」ともいう。)100は、その一例を示す模式断面図である
図3に示すように、めっき鋼板1を取り外し可能に配置できる配置部を有する密閉容器10と、前記密閉容器の内部を加熱する加熱部20と、前記密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気する排気部30と、前記密閉容器の内部に水蒸気を導入する水蒸気導入部40と、を有する。本発明の装置100は、さらに、前記密閉容器の内部にガスを導入するガス導入部50を有していてもよい。本発明の装置100は、さらに、めっき鋼板1の表面の温度を測定する温度計測部60を有していてもよい。本発明の装置100は、さらに、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを撹拌する撹拌部70を有していてもよい。本発明の装置100は、さらに、
図4に示すように、加熱部20、排気部30および水蒸気導入部40の動作を制御して、密閉容器10の配置部12に配置されためっき鋼板1を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて、黒色めっき鋼板を製造させる、制御部80を有していてもよい。本発明の装置100がガス導入部50または撹拌部70を有しているとき、制御部80はガス導入部50の動作を制御して、上記黒色めっき鋼板を冷却させてもよいし、撹拌部70の動作を制御して、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを撹拌してもよい。本発明の装置100が後述するドレン配管35およびドレン弁36を有しているとき、制御部80はドレン弁36の動作を制御して、装置内部から外部へ水を排出させてもよい。
【0052】
本発明の装置100は、密閉容器の内部に水蒸気を導入した後、めっき層が黒色化されているときに、密閉容器の内部から一定量のガスを排出するための、ガス排出部(不図示)を有していてもよい。なお、上記ガス排出部は、排気部30にその役割を兼務させてもよい。さらに、本発明の装置100は水蒸気導入後に装置内部の鋼板以外の部分で水蒸気が結露して生じる結露水を系外に排出させるためのドレン配管35およびドレン弁36を有していてもよい。
【0053】
以下に、
図3および
図4を参照して、本発明の装置100の例示的な態様について詳しく説明する。
【0054】
密閉容器10は、底部フレーム11、配置部12、内カバー13および外カバー14を有する。底部フレーム11は、密閉容器10の底部を構成する部材である。配置部12は、めっき鋼板1を配置可能な形状およびサイズを有する部材である。内カバー13は、底部フレーム11を覆うように底部フレーム11上に配置された、断面が略コ字状の部材である。外カバー14は、内カバー13よりも大形の、断面が略コ字状の部材であり、内カバー13の外面を覆うように底部フレーム11上に配置される。内カバー13が底部フレーム11に設けられた溝に嵌合されると、内カバー13および底部フレームに囲まれた空間(以下、単に「密閉容器10の内部」ともいう。)は密閉される。密閉容器10は、雰囲気ガスの排気による内部の気体の圧力の低下、水蒸気導入による内部圧力の上昇、加熱、冷却などに耐えうる強度を有している。
【0055】
底部フレーム11または内カバー13は、後述する排気配管31、水蒸気供給配管41およびガス導入配管51などを接続可能な開口をその壁面または底面に有していてもよく、このとき、これらの配管に設けられた弁を閉じることで、容器の内部を密閉状態にできればよい。
【0056】
配置部12は、めっき鋼板1を配置できる形状であればよく、
図3に示すように底部フレーム11上に配置された基台としてもよいし、めっき鋼板を乗せるか、または吊り下げることが可能な棚状の部材としてもよい。
【0057】
配置部12には、めっき鋼板1が配置される。たとえば、めっき鋼板1がコイル状のときは、コイル軸方向が鉛直方向に沿うように配置部12上に配置することができる。めっき鋼板1は、スペーサー2によって積層されてもよい。また、任意の形状に加工されためっき鋼板を上記棚状の部材に乗せてもよく、任意の形状に加工されためっき鋼板を上記棚状の部材から吊り下げてもよい。
【0058】
めっき鋼板の一部に黒色化させない部分があるときは、上記黒色化しない部分を有する面が配置部12と接触するように、めっき鋼板1を配置部に配置することが好ましい。
【0059】
配置部12のめっき鋼板1が配置される面には、めっき鋼板1の金属帯間の隙間と配置部12の内部とを連通するように貫通孔が形成され、配置部12の内部は、上記貫通孔と配置部12の外部とを連通するように中空状に形成される。たとえば、
図3では、配置部12は、めっき鋼板1の下部から配置部12の内部に流出した雰囲気ガスを羽根車71の近辺に吹き出すための流通路を有する上記台座、および下部台座からなり、下部台座は上部台座と連通する貫通孔を有する。このような構成にすると、密閉容器10の内部の気体がめっき鋼板1の金属帯間の隙間を通って循環し、撹拌されるため、めっき鋼板1により均一な相対湿度を有する雰囲気ガスを接触させることができるため好ましい。
【0060】
加熱部20は、密閉容器10の内部を加熱するための手段であり、たとえば、外カバー14の周方向に沿って互いに間隔を置いて配置された複数の送風部からなり、それぞれの送風部は、外カバー14と内カバー13との間に形成される空間に熱風を送風可能に構成される。なお、密閉容器10の内部を加熱するための手段は加熱部20に限られず、内カバー13の内部に直接加熱大気を導入してめっき鋼板を加熱したり、めっき鋼板下部にIHヒーターを設置して鋼板自体を発熱させると同時に内カバー13内部雰囲気を加熱する方法も考えられる。
【0061】
排気部30は、排気配管31、排気弁32および排気ポンプ33を有する。排気配管31は、密閉容器10の内部と密閉容器10の外部とを連通するように底部フレーム11を貫通して設けられた配管である。たとえば、密閉容器10の内部の低水蒸気ガスまたは水蒸気処理後の密閉容器の内部の雰囲気ガスは、排気配管31を通って外部に排気される。排気配管31は、排気弁32を介して排気ポンプ33と連通する。排気部30は、上記雰囲気ガスの排気によって密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にできるように構成される。また、上記排気をしないときは、排気弁32は閉じられて、排気配管31を通じた密閉容器10の内部と外部との間のガスの流通は遮断される。
【0062】
ドレン配管35は、密閉容器10の内部と密閉容器10の外部とを連通するように底部フレーム11を貫通して設けられた配管である。密閉容器10の内部の液体(結露水など)は、ドレン配管35を通って外部に排出される。より多くの液体を排出しやすくする観点からは、ドレン配管の開口は、底部フレーム11と同じ高さかそれより低い位置に設けられることが好ましい。ドレン配管35は、ドレン弁36を介して密閉容器10の外部と連通する。上記液体の排出をしないときは、ドレン弁36は閉じられて、ドレン配管35を通じた密閉容器10の内部と外部との間の液体の流通は遮断される。
【0063】
水蒸気導入部40は、水蒸気供給配管41および水蒸気供給弁42を有し、任意に、たとえば貯水タンクおよびヒーターから構成される水蒸気供給源43、および水蒸気ヒーター44を有する。水蒸気供給配管41は、たとえば水蒸気供給源43と密閉容器10の内部とを、水蒸気供給弁42を介して連通する。水蒸気ヒーター44は、導入される水蒸気の温度が、水蒸気処理中の密閉容器10の内部の雰囲気温度に達するように、水蒸気を加熱する。また、水蒸気の供給をしないときは、水蒸気供給弁42は閉じられて、水蒸気供給配管41を通じた密閉容器10の内部への水蒸気の導入は遮断される。また、他の装置で製造した水蒸気を利用するときは、密閉容器内が所定の相対湿度になるよう水蒸気供給弁42で圧力制御して供給してもよい。
【0064】
ガス導入部50は、ガス導入配管51およびガス導入弁52を有する。ガス導入配管51は、密閉容器10の内部と、密閉容器10の外部または不図示のガス供給源と、を連通するように、底部フレーム11を貫通して設けられた配管である。ガス導入弁52が開かれると、ガス供給源から供給される露点が常にめっき鋼板温度以下であるガスまたは密閉容器10の外部の大気は、ガス導入配管51を通って密閉容器10の内部に導入される。また、上記ガスの導入をしないときは、ガス導入弁52は閉じられて、ガス導入配管51を通じた密閉容器10の内部と外部との間のガスの流通は遮断される。
【0065】
温度計測部60は、めっき鋼板の表面のうちそれぞれ異なる領域に当接して設置された複数の温度センサーであり、たとえば、熱電対を用いることができる。温度計測部60は、めっき鋼板の表面の温度を測定する。なお、めっき鋼板をコイル状にした場合、コイルの板間に熱電対を挿入してもよい。
【0066】
撹拌部70は、内カバー13の内部に配置された羽根車71と、羽根車71を回転駆動する駆動モーター72とを有する。駆動モーター72が羽根車71を回転させると、水蒸気処理中の密閉容器10の内部の雰囲気ガスは、
図3において矢印にて示すように、配置部12の側部から配置部12の外周面と内カバー13の内壁面との間の空隙に流入し、めっき鋼板1の外周面と内カバー13の内壁面との間の空隙を通過して、めっき鋼板1の上部から金属帯間の隙間に流出し、めっき鋼板1の下部から配置部12の内部に流出し、再び配置部12の側部から配置部12の外周面と内カバー13の内壁面との間の空隙に流入して、密閉容器10の内部を循環する。このようにして、水蒸気処理中の密閉容器10の内部の雰囲気ガスは撹拌される。
【0067】
撹拌部70は、加熱部20によるめっき鋼板の加熱中に、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを撹拌してもよい。
【0068】
制御部80は、後述するように、本発明の装置100の動作を制御する。
【0069】
3.黒色めっき鋼板を製造するシステム
以下に、
図3および
図4を参照して、本発明の装置100の例示的な動作と、黒色めっき鋼板を製造するシステムについて詳しく説明する。
【0070】
配置部12にめっき鋼板1が配置され、かつ、内カバー13および外カバー14が底部フレーム11の上へ装着されて密閉容器100が密閉された後に、制御部80は、以下のように、加熱部20、排気部30、水蒸気導入部40、ガス導入部50および撹拌部70の動作を制御する。
【0071】
加熱部20は、外カバー14と内カバー13との間に形成される空間に熱風を送風して、低水蒸気ガスの存在下で前記密閉容器の内部を加熱する。これにより、めっき鋼板1は加熱される。このとき、制御部80は、予め設定されためっき鋼板を水蒸気処理する温度を参照して、温度計測部60が測定しためっき層の温度、好ましくは前記最冷点の温度、が前記黒色処理温度になるまで、加熱部20を作動させる。また、必要に応じて、撹拌部70は、駆動モーター72を駆動して羽根車71を回転させ、内カバー13の内部の雰囲気ガスを循環させ、撹拌しながら加熱してもよい。
【0072】
その後、排気部30は、排気弁32を開放し、排気ポンプ33を作動させて、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを、排気配管31を通じて排出する。これにより、密閉容器の内部の気体の圧力は70kPa以下にされる(第1の排気)。その後、排気部30は排気弁32を閉じて、排気配管31を通じた密閉容器10の内部と外部との間のガスの流通を遮断する。
【0073】
その後、水蒸気導入部40は、水蒸気供給弁42を開放し、水蒸気供給源43に水蒸気を供給させる。これにより、水蒸気供給源43からの水蒸気が水蒸気供給配管41を通じて密閉容器10の内部に導入される。水蒸気導入部40は、温度計測部60が測定した前記最温点の温度と前記最冷点の温度との差が所定の範囲になったことを制御部80が認識した後に、水蒸気供給弁42を開放することが好ましい。このとき、導入される水蒸気を水蒸気ヒーター44で加熱してもよい。
【0074】
このとき、必要に応じて、水蒸気導入部40は、密閉容器10の内部に導入される水蒸気を水蒸気ヒーター44に加熱させてもよい。また、必要に応じて、撹拌部70は、駆動モーター72を駆動して羽根車71を回転させ、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを循環させ、撹拌してもよい。
【0075】
また、必要に応じて、不図示のガス排出部または排気部30は、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを一定量だけ排出してもよい。このとき、排出された雰囲気ガスの量と同量の水蒸気を密閉容器10の内部に導入するように、水蒸気供給弁42が開放される。
【0076】
水蒸気を導入しはじめた後、黒色化処理のための時間が経過したら、水蒸気導入部40は水蒸気供給弁42を閉じて、水蒸気供給配管41を通じた密閉容器10の内部と外部との間のガスの流通を遮断する。その後、必要に応じて、排気部30は排気弁32を開放し、排気ポンプ33に密閉容器10の内部の雰囲気ガスを排出させる。これにより、密閉容器の内部の気体の圧力は70kPa以下にされる(第2の排気)。その後、排気部30は排気弁32を閉じて、排気配管31を通じた密閉容器10の内部と外部との間のガスの流通を遮断する。
【0077】
その後、ガス導入部50は、ガス導入弁52を開放する。これにより、ガス導入配管51を通じて密閉容器10の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスが導入される。こうして導入されたガスによって、めっき鋼板1は冷却される。
【0078】
このとき、任意の時点でドレン弁36の動作を制御して、装置内部から外部へ液体を排出させてもよい。ドレン弁36の動作の制御は、上記本発明の装置100の動作中、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。めっき層が所望の程度に黒色化される限りにおいて、上記動作中を通じて、ドレン弁36は閉じられたままであってもよい。
【0079】
(効果)
上記本発明の装置によれば、水蒸気をめっき鋼板の隙間にまで十分に行きわたらせることができ、かつ、めっき鋼板の表面に結露を生じさせにくいので、めっき鋼板の黒色化すべき領域をより均一に黒色化することができる。
【解決手段】本発明は、AlおよびMgを含有する溶融Al、Mg含有Znめっき層を有するめっき鋼板を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて黒色めっき鋼板を製造する方法に係る。本発明の方法は、密閉容器の内部に配置した前記めっき鋼板を、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガスの存在下で加熱する第1工程と、前記加熱された密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、前記密閉容器の内部の気体の圧力を70kPa以下にする第2工程と、前記内部の気体の圧力を70kPa以下にした密閉容器の内部に水蒸気を導入して前記めっき層を黒色化する第3工程とを、この順番で行う。