特許第6072958号(P6072958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6072958
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
   B65B 39/00 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   B65B39/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-46459(P2016-46459)
(22)【出願日】2016年3月10日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142850
【氏名又は名称】株式会社古川製作所
(72)【発明者】
【氏名】森 英二
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−313404(JP,A)
【文献】 実開昭54−126955(JP,U)
【文献】 特開2013−018505(JP,A)
【文献】 特開2012−250743(JP,A)
【文献】 特開2007−106460(JP,A)
【文献】 特開2007−007619(JP,A)
【文献】 特開2006−240706(JP,A)
【文献】 実開平05−037094(JP,U)
【文献】 特開昭52−060779(JP,A)
【文献】 特開2000−264308(JP,A)
【文献】 米国特許第4893733(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物が流入する吐出通路を備え、前記吐出通路の一端側が充填物を吐出する吐出口となるシリンダと、前記シリンダの吐出通路に内嵌し、吐出通路内の充填物を押し出すピストンと、を備えた充填ノズルであって、
前記シリンダは、前記吐出通路に充填物を流入させる供給口が側壁に形成されたシリンダ本体と、前記シリンダ本体に外嵌し、前記供給口と連通する連通孔を備えたクランプ継手からなり、
前記シリンダ本体の側壁に形成された供給口の一端開口部に、前記シリンダ本体の吐出通路の他端側に鋭角に傾斜する剪断面が形成されていることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
シリンダ本体側壁に形成された供給口は、一端側下縁部が円弧状、他端側上縁部が方形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の充填ノズル。
【請求項3】
前記シリンダ本体とピストンの少なくともいずれか一方に、焼き入れによる熱処理が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の充填ノズル。
【請求項4】
前記シリンダ本体の供給口の周縁部とピストンの剪断部の少なくともいずれか一方に、DLC処理を施すか、又は前記シリンダ本体とピストンの少なくともいずれか一方に、クロムメッキを施していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の充填ノズル。
【請求項5】
ピストンの一端側の押し出し端部が凹入湾曲面とされていることを特徴とする請求項1に記載の充填ノズル。
【請求項6】
ピストンの一端側の押し出し端部の円周部が円周方向に連続する波線状の湾曲面を組み合わせた請求項5に記載の充填ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物を含む流動体をカップまたは袋などの包装容器に充填する際に使用される充填ノズルの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形物を含む流動体、例えばイカの塩辛、モズク、メカブなどをカップまたは袋などの包装容器に自動充填する装置として充填ノズルが知られている。図6は、特許文献1のカットノズル(以下、充填ノズルとする。)の全体及び部分説明図である。この図6に示すように、吐出通路2が貫通したシリンダ4の側壁に充填物の供給口3を設け、この供給口3に充填物の供給通路7が接続し、計量シリンダ9より供給された充填物をシリンダ4に内嵌するピストン5で吐出通路2内から押し出す。また、ピストン5は中空とされ、下端にエアー孔6が形成され、付着した固形物及び液状物をエアーで下方の容器内に吹き飛ばすようになっている。
【0003】
前記特許文献1のような一般的な充填ノズルは、シリンダ4に、吐出通路2と連通する供給口3が穿設され、この供給口3の外周縁にパイプ状の供給通路7が溶接されている。前記供給口3は、シリンダ4の側壁に円形に穿たれており、このシリンダ4に穿たれた供給口3の周縁部は、水平な供給通路7と垂直な吐出通路2とが交差して、直角な孔部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−264308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の充填ノズルでは、剪断容易なイカの身はピストン5の下端周縁と、供給口3の孔部により剪断されるが、イカの薄皮は剪断されずにピストン5に引っ張られてピストン5の外周壁とシリンダ4の内周壁の間に引き込まれることがあり、充填物に対する剪断能力が劣るという課題がある。
【0006】
さらに、特許文献1のような、充填ノズルは、シリンダ4に、パイプ状の供給通路7が溶接されているため、充填ノズルのシリンダ4内の吐出通路2や供給通路7を清掃する場合に、清掃しづらいという課題がある。
【0007】
本発明は、イカの塩辛のような剪断し難い充填物であっても、確実に剪断することが可能で、しかも分解して清掃が容易な充填ノズルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充填ノズルは、充填物が流入する吐出通路を備え、前記吐出通路の一端側が充填物を吐出する吐出口となるシリンダと、前記シリンダの吐出通路に内嵌し、吐出通路内の充填物を押し出すピストンと、を備えた充填ノズルであって、前記シリンダは、前記吐出通路に充填物を流入させる供給口が側壁に形成されたシリンダ本体と、前記シリンダ本体に外嵌し、前記供給口と連通する連通孔を備えたクランプ継手からなり、前記シリンダ本体の側壁に形成された供給口の一端開口部に、前記シリンダ本体の吐出通路の他端側に鋭角に傾斜する剪断面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成において、シリンダは、前記吐出通路に充填物を流入させる供給口が側壁に形成されたシリンダ本体と、前記シリンダ本体に外嵌し、前記供給口と連通する連通孔を備えたクランプ継手からなることから、シリンダ本体とクランプ継手とに分解することができ、清掃が容易になる。
【0010】
さらに、前記シリンダ本体の側壁に形成された供給口の一端開口部に、前記シリンダ本体の吐出通路の他端側に鋭角に傾斜する剪断面が形成されたことから、ピストンの一端部と、前記の剪断面により、剪断し難い充填物であっても剪断することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成により、シリンダがシリンダ本体とクランプ継手とに分解することができ、充填ノズルの清掃が容易になった。また、ピストンが充填物を吐出通路から押し出す際に、ピストンの一端部と、前記の剪断面とにより、剪断し難い充填物であっても確実に剪断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の充填ノズルの部分断面図
図2】本発明の充填ノズルの部分分解断面図
図3】本発明の充填ノズルの要部断面図
図4】本発明の充填ノズルの使用状態の断面図
図5】本発明の充填ノズルの他の実施例の要部断面図
図6】従来の充填ノズルの全体及び部分説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の充填ノズルの部分断面図である。この図に示すように、本発明の充填ノズル10は、上部に駆動シリンダ11を備え、下部に液充填用のノズル12を備え、前記駆動シリンダ11とノズル12はパイプ状の継手13で連結されている。(以後、充填ノズル10の上側を他端とし、下側を一端として説明する。)前記駆動シリンダ11は、後述するピストン14を駆動する駆動源であって、ロッド18を介してピストン14の他端と連結している。15はスピードコントローラを示し、16はセンサースイッチを示している。前記継手13の側壁にはエルボ17が取り付けられ、後述するピストン14に形成されたエアー通路19に圧縮空気を供給する。
【0014】
前記ノズル12はシリンダ20とピストン14とから構成され、ノズル12の他端は、前記継手13の一端にクランプ21により連結されている。図2はノズル12の分解断面図であって、シリンダ20はシリンダ本体22とクランプ継手23とからなり、ピストン14は、シリンダ本体22の充填物が流入する吐出通路24に内嵌している。前記吐出通路24の一端側は充填物を吐出する吐出口25となっており、前記駆動シリンダ11によりピストン14が往復移動して吐出通路24内の充填物を吐出口25から押し出す。
【0015】
前記シリンダ本体22はステンレス製の筒体であって、このシリンダ本体22の中央部より少し一端側の側壁に、クランプ継手23から前記吐出通路24に充填物を流入させる供給口26が形成されている。この供給口26については、さらに詳細に後述する。なお、シリンダ本体22の一端部はテーパ状に加工されている。
【0016】
前記シリンダ本体22は、材質を硬くしてピストン14の剪断部27と供給口26の剪断面28のエッジとの剪断性を良くするため、焼き入れによる熱処理が施されている。さらに、このピストン14にクロムメッキを施してもよい。なお、特許文献1の従来の充填ノズルは、シリンダ4と供給通路7は焼き入れによる熱処理を施すとシリンダ4と供給通路7の溶接ができなくなるため、前記のような焼き入れによる熱処理は施されていない。
【0017】
シリンダ本体22の側壁に形成された供給口26は、図3の左図に示すように、一端側下縁部が円弧状、他端側上縁部が方形状に形成されている。この供給口26の前記円弧状の一端開口部に、前記シリンダ本体22の他端側に鋭角に傾斜するU字形の剪断面28が形成されている。この剪断面28はシリンダ本体22の内壁29に対する角度θは30度±10度の角度であるのが好ましく、さらに好ましくは30度±5度の角度である。この剪断面28のエッジと前記ピストン14の一端側の剪断部27により、イカの薄皮のような剪断しづらい充填物であっても確実に剪断することができる。
【0018】
前記供給口26の周縁部は、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)処理が施されている。即ち、供給口26の少なくとも剪断面28は、切れ味を良くするため、できるだけ硬質とするのが望ましい。そのためにシリンダ本体22を焼き入れすると共に、供給口26の周縁部(例えば、図3の左図のグレーで示した部分)をDLC処理することにより表面の硬質化を図ってもよい。ここで、DLCとは、イオンを利用した気相合成法により合成されるダイヤモンドに類似した高硬度な性質を持つカーボン薄膜を指す。DLC処理法によれば、望みの面だけを容易に硬質化処理できるので、好都合である。なお、シリンダ本体22を焼き入れにより熱処理をするか、前記供給口26の外周部をDLC処理するか、何れかであってもよい。
【0019】
前記シリンダ本体22に外嵌したクランプ継手23は、前記シリンダ本体22に外嵌する主管31と、この主管31に直角に接合した分岐管32から構成されている。主管31には、前記シリンダ本体22の供給口26と連通する連通孔30が形成され、この連通孔30とシリンダ本体22の供給口26が重なり合うように、シリンダ本体22にクランプ継手23が外嵌している。このクランプ継手23もステンレス製である。
【0020】
シリンダ本体22内を往復移動する前記ピストン14は、前記のように、シリンダ本体22に内嵌し、駆動シリンダ11のロッド18の一端と接合している。このピストン14は、円柱状のステンレスでできており、シリンダ本体22と同様に焼き入れによる熱処理が施されている。さらに、このピストン14にクロムメッキを施してもよいし、このピストンの剪断部27に前記DLC処理を施してもよい。このピストン14の軸線の他端から一端にかけてエアー通路19が貫通形成されている。このエアー通路19の他端は継手13内と連通し、エルボ17から圧入された圧縮空気がこのエアー通路19を通ってピストン14の一端の開口から噴射されピストン14の一端部に付着した充填物を容器33内に吹き落とす。
【0021】
前記ピストン14の一端側の押し出し端部は剪断部27を構成し、前記供給口26の一端側開口部の剪断面28のエッジと共働して剪断し難い充填物を剪断する。前記剪断部27は、図5に示すように、ピストン14の一端側の押し出し端部を凹入湾曲面35としてもよいし、図3に示すように、ピストン14の一端側の押し出し端部を凹入湾曲面35と、円周方向に連続する波線状湾曲面36と、を組み合わせて形成したものであってもよい(図3の右下図では4つの波線状湾曲面36が形成されている。)。ピストン14の一端側の押し出し端部を図5に示す凹入湾曲面35とすることにより、供給口26の剪断面28とでハサミで剪断するように確実に剪断することができる。さらに、ピストン14の一端側の剪断部27に凹入湾曲面35を形成すると共に、円周方向に連続する波線状湾曲面36を組み合わせて形成することにより、剪断しづらい充填物を波線状湾曲面36で捕らえながら確実に剪断することができる。なお、前記ピストン14、又はピストン14の少なくとも剪断部27にDLC処理を施してもよい。
【0022】
次に、前記充填ノズル10の使用状態を説明する。
図4は、前記充填ノズル10の使用状態を示す断面図であって、上段の図はピストン14が上昇位置にあり、センサースイッチ16がONして計量シリンダ(図6参照)により充填物が分岐管32を通って連通孔30と供給口26を介して吐出通路24に押し出された状態を示している。この図に示す通り、分岐管32と吐出通路24に跨って剪断しづらい例えばイカの切れ端34などが停留している。
【0023】
図4の中段の図は、駆動シリンダ11が駆動してロッド18を介してピストン14が一端方向に摺動し始め、センサースイッチ16がOFFになって計量シリンダが停止した状態を示している。ピストン14の一端側の剪断部27により、イカの切れ端34が剪断される直前である。この後、ピストン14がさらに一端側に摺動すると、切れ端34がピストン14の一端側の剪断部27に形成された波線状湾曲面36で捕らえて、この剪断部27とシリンダ本体22の供給口26の剪断面28のエッジとで確実に剪断される。
【0024】
図4の下段の図は、ピストン14がさらに一端側に摺動してピストン14の一端がシリンダ本体22の吐出口25から突出した状態を示している。剪断されたイカの切れ端34の一部は、シリンダ本体22の一端から落下して容器33内に落ち、残りは分岐管32に留まり、次の充填まで停留する。図4の下段の図では、エアー通路19の一端の開口から圧縮空気が噴射され、ピストン14の一端部に付着した充填物を容器33内に吹き落とす。上記のような動作を繰り返して充填物を容器33に充填する。
【0025】
なお、図4の使用状態は、ピストン14の一端側の剪断部27に波線状湾曲面36が形成された例で説明したが、図5に示すような、ピストン14の一端側の剪断部27に凹入湾曲面35を形成したものでも同様である。
【0026】
上記のような充填作業が終わって、充填ノズル10を清掃する場合、シリンダ20は、シリンダ本体22と、クランプ継手23に分解することができることにより、シリンダ本体22とクランプ継手23とピストン14とを別々に分解して洗浄することができる。このため、充填ノズルの清掃が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、イカの塩辛、モズク、わかめなどのように流動性の充填物を、容器に自動充填する充填ノズルに有用である。
【符号の説明】
【0028】
10 充填ノズル、11 駆動シリンダ、12 ノズル、14 ピストン、19 エアー通路、20 シリンダ、22 シリンダ本体、23 クランプ継手、24 吐出通路、25 吐出口、26 供給口、27 剪断部、28 剪断面、30 連通孔
【要約】
【課題】剪断しにくい軟体物を含む流動状の充填物(例えばイカの塩辛)を充填ノズルにより充填する際、充填物が剪断されずに切れ残って停留することがあった。さらに、従来の充填ノズルは清掃しづらいという課題もあった。
【解決手段】充填物が流入する吐出通路24を備え、前記吐出通路24の一端側が充填物を吐出する吐出口25となるシリンダ20と、前記シリンダ20の吐出通路24に内嵌し、吐出通路24内の充填物を押し出すピストン14と、を備えた充填ノズル10であって、前記シリンダ20は、前記吐出通路24に充填物を流入させる供給口26が側壁に形成されたシリンダ本体22と、前記シリンダ本体22に外嵌し、前記供給口26と連通する連通孔30を備えたクランプ継手23からなり、前記シリンダ本体22の側壁に形成された供給口26の一端開口部に、前記シリンダ本体22の吐出通路の他端側に鋭角に傾斜する剪断面28が形成されている。
【選択図】図2
図1
図2
図4
図6
図3
図5