(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るリン酸カルシウム粒子群の製造方法を説明し、次いで、当該製造方法により得られたセラミック粒子群を説明し、次いで、当該セラミック粒子群の用途について説明する。
【0014】
≪1.セラミック粒子群の製造方法≫
<1−1.原料>
焼成前のセラミック原料であるリン酸カルシウム(CaP)としては、具体例として、ハイドロキシアパタイト(Ca
10(PO
4)
6(OH)
2)、リン酸三カルシウム(Ca
3(PO
4)
2)、メタリン酸カルシウム(Ca(PO
3)
2)、Ca
10(PO
4)
6F
2、Ca
10(PO
4)
6Cl
2等が挙げられる。ここで、当該リン酸カルシウム(CaP)は、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。
【0015】
<1−2.プロセス>
本発明に係るセラミック粒子群の製造方法は、少なくとも、「混合工程」、「焼結工程」及び「酸洗い工程」を含んでいればよいが、この他の工程(例えば、「一次粒子生成工程」、「除去工程」、「粉砕工程」、「乾燥工程」など)を含んでいてもよい。
【0016】
例えば、本発明に係るセラミック粒子群の製造方法は、「1.一次粒子生成工程」→「2.混合工程」→「3.焼結工程」→「4.酸洗い工程」の順で行われる。
【0017】
(一次粒子生成工程)
以下、本発明に係るリン酸カルシウム粒子群の製造方法において、一次粒子が略球状及び略ロッド状である場合を例示するが、本発明の製造方法はこれには限定されず、一次粒子としては、製造可能なあらゆる形状であってよい。
【0018】
・略球状セラミック粒子の一次粒子生成工程
まず、「一次粒子」とは、セラミック粒子群の製造工程の焼結前に、セラミック原料{リン酸カルシウム(CaP)、ハイドロキシアパタイト(HAp)等}によって形成された粒子のことを意味する。即ち、セラミック粒子の製造工程において、初めて形成された粒子のことを意味する。また狭義には単結晶粒子のことを意味する。尚、特許請求の範囲及び明細書において「一次粒子」とは、非晶質(アモルファス)、低結晶性の状態のもの、及びその後に焼結を行なった焼結体の状態のものをも含む意味である。これに対して「二次粒子」とは、複数の「一次粒子」同士が、融着等の物理的結合、Van der Waals力や静電的相互作用又は共有結合等の化学的結合によって、結合して形成された状態の粒子を意味する。特に一次粒子同士の結合の個数、結合後の形状等は限定されるものではなく、2つ以上の一次粒子が結合したもの全てを意味する。また、特に「単結晶一次粒子」とは、セラミック原料の単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を意味する。尚、前記「イオン的相互作用にて集合化した粒子塊」とは、水もしくは有機溶媒を含む媒体にて分散させた場合にイオン的相互作用で自己集合する粒子塊であって、焼結により粒子間が溶融して多結晶化した二次粒子を含まないものである。
【0019】
当該一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、上記一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するセラミックの原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、常温下において水酸化カルシウムスラリーにリン酸を滴下すれば、リン酸カルシウム(CaP)の粒子が沈殿する。
【0020】
本発明に係るセラミック粒子群の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼結してセラミック粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるセラミック粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。したがって、粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)セラミック粒子群を製造しようとする場合においては、当該一次粒子生成工程において粒子径が微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成しておく必要がある。
【0021】
かかる場合の好ましい一次粒子の粒子径(平均粒子径及び粒度分布)としては、10nm〜700nmが好ましく、15nm〜450nmが更に好ましく、20nm〜400nmが最も好ましい。また、一次粒子からなる一次粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが最も好ましい。尚、一次粒子の粒子径及び変動係数は、動的光散乱又は電子顕微鏡を用い、少なくとも100個以上の一次粒子について粒子径を測定して計算すればよい。
【0022】
尚、「変動係数」は、標準偏差÷平均粒子径×100(%)で計算することができる粒子間の粒子径のバラツキを示す値である。
【0023】
上記のような微細(ナノメートルサイズ)で且つ粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を生成する方法については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2002−137910号公報、特許第5043436号公報、Journal of Nanoscience and Nanotechnology 7, 848-851, 2007に記載された方法を挙げることができる。
【0024】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0025】
・略ロッド状セラミック粒子の一次粒子生成工程
略ロッド状セラミック粒子{粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造のセラミック粒子}の一次粒子生成工程は、それ自体公知であり、例えば、特開2002−137910号公報、Journal of Nanoparticle Research 9, 807-815, 2007に記載された方法を挙げることができる。
【0026】
また、本工程には、生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
【0027】
(混合工程)
当該混合工程は、一次粒子と融着防止剤とを混合する工程である。上記一次粒子生成工程によって得られた一次粒子群の粒子間に、あらかじめ融着防止剤を介在させておくことで、その後の焼結工程における一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。なお当該混合工程によって得られた一次粒子と融着防止剤との混合物を「混合粒子」と呼ぶ。
【0028】
ここで「融着防止剤」としては、一次粒子間の融着を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、後の焼結工程の焼結温度において、不揮発性であることが好ましい。焼結温度条件下で不揮発性であるために、焼結工程中に一次粒子間から消失することは無く、一次粒子同士の融着を確実に防止することができるからである。ただし焼結温度において100%の不揮発性を有する必要は無く、焼結工程終了後に一次粒子間に10%以上残存する程度の不揮発性であればよい。また融着防止剤は焼結工程終了後に熱により化学的に分解するものであってもよい。すなわち焼結工程終了後に残存していれば、焼結工程の開始前後で、同一の物質(化合物)である必要は無い。
【0029】
また融着防止剤が、溶媒、特に水系溶媒に溶解する物質であることが好ましい。上記のごとく融着防止剤として、溶媒に溶解する融着防止剤を用いることによれば、融着防止剤が混在するセラミック粒子群を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで、融着防止剤(例えば炭酸カルシウム等)を除去することができる。特に水系溶媒に溶解する融着防止剤であれば、融着防止剤を除去する際に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にセラミック粒子群から融着防止剤を除去することができるといえる。上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0030】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物を含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0031】
ここで、融着防止剤の溶媒に対する溶解度は、高ければ高いほど除去効率が高くなるために好ましいといえる。かかる好ましい溶解度は、溶媒100gに対する溶質の量(g)を溶解度とすると、0.01g以上が好ましく、1g以上がさらに好ましく、10g以上が最も好ましい。
【0032】
上記融着防止剤の具体例としては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどのカルシウム塩(または錯体)、塩化カリウム、酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウムなどのカリウム塩、塩化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどのナトリウム塩などが挙げられる。
【0033】
なお、当該混合工程において一次粒子と融着防止剤とを混合させる方法については、特に限定されるものではなく、固体の一次粒子に固体の融着防止剤を混合後、ブレンダーを用いて混合する方法であってもよいし、融着防止剤の溶液中に一次粒子を分散させる方法を行なってもよい。ただし、固体と固体を均一に混合することは困難であるため、一次粒子間に均一かつ確実に融着防止剤を介在させるためには、後者が好ましい方法であるといえる。後者の方法を採用した場合は、一次粒子を分散させた融着防止剤溶液を乾燥させておくことが好ましい。一次粒子と融着防止剤が均一に混合された状態を長期にわたって維持することができるからである。後述する実施例においても、炭酸カルシウム飽和水溶液にハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子0.5gを分散させ、80℃にて乾燥させて混合粒子を取得している。
【0034】
また当該混合工程は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加する工程であってもよい。上記の工程を採用することによって、高分子化合物がヒドロキシアパタイト(HAp)表面に吸着することで融着防止剤混合過程におけるハイドロキシアパタイト(HAp)同士の接触を確実に防ぐことができ、その後にカルシウム塩を添加することでハイドロキシアパタイト(HAp)表面に確実に融着防止剤を析出させることが可能となる。なお、以下の説明において、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物のことを、単に「高分子化合物」と称する。
【0035】
上記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、側鎖にカルボキシル基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、側鎖に硫酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリメタクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリスチレン硫酸等が挙げられ、側鎖にスルホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられ、側鎖にリン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリスチレンリン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にホスホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリスチレンホスホン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリビニルアルキルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にアミノ基を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸アミノアルキルエステル、ポリアミノスチレン、ポリペプチド、タンパク質等が挙げられる。なお当該混合工程においては、上記高分子化合物のいずれか1種類を用いればよいが、複数種類の高分子化合物を混合して用いてもよい。
【0036】
なお上記高分子化合物の分子量は特に限定されるものではないが、100g/mol以上1,000,000g/mol以下が好ましく、500g/mol以上500,000g/mol以下がさらに好ましく、1,000g/mol以上300,000g/mol以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む割合が減少し、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解度が低くなること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなること等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0037】
なお高分子化合物を含む溶液は、水溶液であることが好ましい。ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子は強い酸性条件下で溶解してしまうからである。なお高分子化合物が含まれる水溶液のpHは、5以上14以下でHAp粒子が不溶な条件あれば特に限定されるものではない。当該高分子化合物を含む水溶液は、高分子化合物を蒸留水、イオン交換水等に溶解し、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液でpHを調節すればよい。
【0038】
また上記水溶液に含まれる高分子化合物の濃度は、0.001%w/v以上50%w/v以下が好ましく、0.005%w/v以上30%w/v以下がさらに好ましく、0.01%w/v以上10%w/v以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む量が少なく、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解が困難となること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなる等の操作性が悪くなるために好ましくない。
【0039】
本発明における混合工程では、上記高分子化合物を含む溶液と、一次粒子とを混合する。かかる混合は、例えば、当該溶液中に一次粒子を投入し、撹拌操作等によって、当該一次粒子を分散させればよい。かかる操作によって、上記本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法では、一次粒子表面に上記高分子化合物が吸着し、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを当該一次粒子の表面に付加することができる。このとき当該カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基は、溶液中でイオンの状態で存在している。
【0040】
次に高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加すれば、上記一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと、金属イオン(アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンおよび/または遷移金属イオン)とが結合し、一次粒子の表面にカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる。かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が、上記融着防止剤として機能する。したがって、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩がその表面に生じた一次粒子は、いわゆる「混合粒子」である。なお、かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は沈殿するため、当該沈殿物を回収後、乾燥させて後述する焼結工程に供すればよい。前記乾燥は、例えば減圧条件下(1×10
5Pa以上1×10
−5Pa以下が好ましく、1×10
3Pa以上1×10
−3Pa以下がさらに好ましく、1×10
2Pa以上1×10
−2Pa以下が最も好ましい。)で、加熱(0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がさらに好ましく、40℃以上120℃以下が最も好ましい。)して行なう方法が挙げられる。なお、上記乾燥においては、乾燥温度を下げることができることから減圧条件下が好ましいが、大気圧条件下で行なってもよい。
【0041】
上記アルカリ金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ酸カリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、セレン酸カリウム、亜硝酸カリウム、硝酸カリウム、リン化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等が利用可能である。
【0042】
また上記アルカリ土類金属塩としては、例えば塩化マグネシウム、次亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ酸カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が利用可能である。
【0043】
また上記遷移金属塩としては、例えば塩化亜鉛、次亜塩素酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫酸亜鉛、チオ硫酸亜鉛、セレン酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化鉄、次亜塩素酸鉄、亜塩素酸鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、ヨウ酸鉄、酸化鉄、過酸化鉄、硫酸鉄、チオ硫酸鉄、セレン酸鉄、亜硝酸鉄、硝酸鉄、リン化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄等が利用可能である。またニッケル化合物であってもよい。
【0044】
なお高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に添加する金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩)は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。また金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属)は、固体の状態でもよいが、均一に添加することができること、および添加する濃度を制御することが可能である等の理由から水溶液として添加することが好ましい。また添加する金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)の量(濃度)は、一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと結合して、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる条件であれば特に限定されるものではなく、適宜検討の上、決定すればよい。
【0045】
なお、ポリアクリル酸ナトリウムは水に可溶なため、本混合工程において融着防止剤としてそのまま利用可能であるが、ポリアクリル酸カルシウムは水に不溶なため、一旦ポリアクリル酸のみを一次粒子表面に吸着させた後に、カルシウム塩等を添加することで、ポリアクリル酸カルシウムを一次粒子表面に析出させるようにすることが好ましい。また、高温(約300℃以上)で一次粒子を仮焼する際に高分子化合物は分解するため、仮焼後も融着防止剤として機能するように、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておくことが好ましいといえる。ただし高分子化合物が分解しない(軟化しない)温度において一次粒子を仮焼(熱処理)する場合は、高分子化合物の金属塩を一次粒子の表面に析出させておく必要は特にない。
【0046】
(焼結工程)
当該焼結工程は、上記混合工程によって得られた混合粒子を焼結温度に曝して、当該混合粒子に含まれる一次粒子をセラミック粒子(焼結体粒子)にする工程である。一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在しているために、焼結工程における高温条件に曝された場合であっても一次粒子同士の融着を防止することができるというものである。
【0047】
当該焼結工程における焼結温度は、セラミック粒子の硬度が所望の硬度となるように適宜設定すればよく、例えば、100℃〜1800℃の範囲内がより好ましく、150℃〜1500℃がさらに好ましく、200℃〜1200℃が最も好ましい。なお焼結時間については所望するセラミック粒子の硬度等を基準に適宜設定すればよい。後述する実施例においては、800℃で1時間焼結を行なっている。
【0048】
なお、当該焼結工程に用いる装置等は特に限定されるものではなく、製造規模、製造条件等に応じて市販の焼成炉を適宜選択の上、採用すればよい。
【0049】
(除去工程)
当該除去工程は、焼結工程によって得られたセラミック粒子群の粒子間に混在する融着防止剤を取り除く工程である。
【0050】
除去の手段および手法については、上記混合工程において採用した融着防止剤に応じて適宜採用すればよい。例えば、溶媒溶解性を有する融着防止剤を用いた場合は、セラミック粒子を溶解しない溶媒(非溶解性)でかつ融着防止剤を溶解する(溶解性)溶媒を用いることによって、融着防止剤のみを溶解して除去することができる。用いる溶媒としては、上記要件を満たす溶媒であれば特に限定されるものではなく、水系溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0051】
また上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物を含んでいても良い。さらに上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウムなどの電解質イオンを含んでいても良い。
【0052】
ただし、当該除去工程において有機溶媒の使用に対応する設備が不要となること、有機溶媒廃液処理が不要となること、製造作業の安全性が高いこと、環境に対するリスクが低いこと等の理由から、使用する溶媒は水系溶媒が好ましい。
【0053】
なお、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子の場合は、pH4.0以下の条件においてハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子が溶解するため、pH4.0〜pH12.0で除去工程を行なうことが好ましい。
【0054】
ところで、溶媒を用いて融着防止剤を除去する場合は、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子群を溶媒に懸濁させた後、ろ過または遠心分離によってセラミック粒子のみを回収すればよい。本発明にかかるセラミック粒子群の製造方法において上記操作は、1回に限られるものではなく2回以上行なってもよい。上記操作を複数回行なうことで、セラミック粒子間の融着防止剤の除去率がさらに向上するものといえる。ただし、製造工程が複雑になること、製造コストが高くなること、セラミック粒子の回収率が低下すること等の理由により、必要以上に上記操作を行なうことは好ましくない。よって上記操作の回数は、目標とする融着防止剤の除去率を基準に適宜決定すればよい。
【0055】
なお本工程には、さらに粒子径を均一にするために分級する工程が含まれていてもよい。
【0056】
上記溶媒を用いて融着防止剤を除去する方法の他、融着防止剤に磁性体を用いることによって、マグネットを用いて融着防止剤を除去することができる。より具体的には、焼結工程によって得られた融着防止剤を含むセラミック粒子(粗セラミック粒子)群を適当な溶媒(水等)に懸濁して分散させた後、当該懸濁液に磁力をかけ、融着防止剤のみをマグネットに吸着させ、吸着しなかったセラミック粒子のみを回収する。また特に溶媒に懸濁することなく、粗セラミック粒子をすりつぶして粉体にした後、マグネットによって融着防止剤を分離する方法を行なってもよい。ただし、懸濁液にした方がセラミック粒子と融着防止剤が剥離しやすく、融着防止剤の除去率は高いといえる。なお、この手法を適用することができるセラミック粒子は、非磁性体または、弱磁性体であることが好ましい。
【0057】
(酸洗い工程)
酸洗い工程は、焼結工程により得られたセラミック粒子(焼結体粒子)を酸によって洗浄する工程である。洗浄工程の目的は、焼結体粒子に含まれる炭酸カルシウムなどを除くことである。
【0058】
酸は、セラミック粒子に損傷を与えない程度の弱い酸が用いられる。例えば、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、又はこれらのアンモニウム塩が挙げられる。
【0059】
酸洗い工程は、リン酸カルシウム焼結体を酸溶液に懸濁させることなどによって行われる。例えば、リン酸カルシウム焼結体を酸溶液に懸濁させ、遠心分離を行った後、上澄みを捨てるという操作を、上澄みのpHが6.0〜9(好ましくは、6.5〜8.5、さらに好ましくは7.0〜7.5)になるまで繰り返し行うことによって、酸洗い工程が行われる。より詳細には、例えば、0.2wt%の硝酸アンモニウム水溶液にHApを懸濁させ、5分間超音波照射を行い、遠心分離により固液分離し、上澄みを捨てる。この操作を上澄みのpHが8となるまで繰り返した後、脱イオン水に懸濁させ、遠心分離し、上澄みを捨てる操作を三回以上繰り返すことを行うことによって、酸洗い工程を行ってもよい。
【0060】
(粉砕工程)
粉砕工程は、前記焼結工程後の凝集体を粉砕し、所望サイズの焼成リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。ここで、通常、二次粒子化した焼成体は、相当程度の粉砕工程を実施しても一次粒子サイズまで微小化することはほぼ不可能である。他方、本発明の手法によると、簡素な粉砕工程でも、容易に一次粒子サイズレベルまで粉砕することが可能となる。ここで、粉砕手法は、特に限定されず、例えば、超音波処理、粉砕球を用いての粉砕処理である。尚、粉砕処理後、未粉砕のものを除去する等して、より径の小さい粒子を収集してもよい。
【0061】
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記粉砕工程や前記洗浄工程後、加熱する等して、溶媒を除去し、リン酸カルシウム粒子群を得る工程である。乾燥手法は、特に限定されない。
【0062】
≪2.本製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群≫
<2−1.球状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内で、且つ前記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であり、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含むことを特徴とするセラミック粒子群である。
【0063】
当該セラミック粒子群は、微粒子且つ粒子径の均一な(粒度分布が狭い)ものである。それゆえ、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを実質的に含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性、溶解性が変化する事態を防止することが可能となる。また、当該セラミック粒子群は、高い分散性を示すものである。
【0064】
また、別の側面からは、本製造方法により得られる球状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、球状のセラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を単結晶一次粒子とすると、前記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が過半数を占め、上記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、且つ、前記セラミック粒子群が炭酸カルシウムを実質的に含有しないことを特徴とするセラミック粒子群である。当該セラミック粒子群は、その過半数が溶媒中で分散性の優れた単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)として存在している。それゆえ、既述の医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。また、一次粒子同士の結合が無いため、比表面積が高い。更には、生体内で安定性が高く、分散性に優れることから薬剤の担持及び徐放が可能な医療用材料として利用できるという効果を奏する。しかも、炭酸カルシウムを実質的に含有しないので、生体材料として使用した際に、材料の生体親和性やリン酸カルシウム本来の溶解性が維持される。なお、このように、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を、セラミック粒子としてもよい。
【0065】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群に含まれる単結晶一次粒子の割合が、70%以上であってもよい。このような構成をとることで、医療用高分子基材への吸着がし易くなるという効果を奏する。
【0066】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内であってもよい。当該構成によれば、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0067】
また、当該セラミック粒子群は、上記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であってもよい。当該構成をとることにより、特に高度な分級等の付加的な操作を行なうことなく、医療用高分子材料に対してより均一に吸着させることができるという効果を奏する。
【0068】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0069】
<2−2.ロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られるロッド状リン酸カルシウム焼結体粒子群は、セラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、短軸の最大直径が30nm〜5μm、長軸が75nm〜10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が、1〜30であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造のセラミック粒子であって、前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含むことを特徴とするセラミック粒子群である。
【0070】
当該ロッド状リン酸カルシウム焼成粒子群は、接着に供する面積が従来の微粒子より格段に広いため、高分子基材との接着性を向上できるので、カテーテル等の生体親和性医療材料など、高分子表面に修飾するのに適している。しかも、炭酸カルシウムを実質的に含有しないので、生体材料として使用した際に、材料から炭酸ガスが発生する事態を防止することが可能となる。尚、高分子表面に修飾する方法としては、リン酸カルシウム(例えばハイドロキシアパタイト(HAp)ナノ粒子)の活性基と高分子基体、例えば、表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴム、の活性基と化学反応させて複合体とする方法や、硬化性接着剤を用いる方法、高分子基材を融点近傍まで加熱して基材に埋設させる方法等を用いることができる(これは前記の球状リン酸カルシウム焼結体粒子群も同様)。
【0071】
また、当該セラミック粒子が、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子であってもよい。当該粒子は、更に生体適合性が高く、広範な用途に利用可能なハイドロキシアパタイト焼結体で構成されている。そのため、医療用材料として特に好ましい。
【0072】
<2−3.一般式で表したリン酸カルシウム焼結体粒子群>
本製造方法により得られる、上記の2−1および2−2のリン酸カルシウム焼結体粒子群は、以下の一般式
Ca
x(PO
4)
6−y(CO
3)
y(OH)
2
(式中、xは8以上12以下の数(好ましくは、9以上11以下の数、さらに好ましくは、9.5以上10.5以下の数)であり、yは0より大きく、3以下の数(好ましくは、0より大きく、2以下の数、さらに好ましくは、0より大きく、1以下の数)である)
で表されてもよい。
【0073】
Ca、(PO
4)、CO
3の測定方法は、以下のとおりである。CaならびにPO
4は、測定サンプルを1N 硝酸に溶解し、式量換算で100ppmとなるように測定溶液を調整し、ICP発光分析(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP7600Duo)を用いて上記測定溶液を測定した。また、CO
3は、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価した。
【0074】
<2−3.構造>
次に、本発明に係る製造方法により得られるリン酸カルシウム焼結体粒子群の構造について説明する。
【0075】
本発明は、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含むことなどを特徴とする、リン酸カルシウム焼結体粒子群である。
【0076】
本発明者らは、特許文献1の発明を実施すると、リン酸カルシウム焼結体粒子の表面に炭酸カルシウムが生じることを見いだした。驚くべきことに、炭酸カルシウムなどの炭酸を含む融着防止剤を使用した場合だけではなく、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムなどの炭酸を含まない融着防止剤を使用した場合においても、リン酸カルシウム焼結体粒子の表面に炭酸カルシウムが生じた(下記の比較例2および3を参照)。その理由は、硝酸カルシウムや硝酸ナトリウムは、加熱することにより酸化カルシウム、酸化ナトリウムに変化する。これらの物質は強塩基であり、電気炉内に存在している二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生じる。また、ハイドロキシアパタイト(HAp)はイオン交換を容易に起こすため、融着防止剤として使用した塩を構成するイオンとハイドロキシアパタイト(HAp)を構成するイオンとが交換し、結晶構造が変化する。その際、ハイドロキシアパタイト表面がカルシウムイオン過多となり、電気炉中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成すると推測される。本発明者らは、酸洗い工程などによって、この炭酸カルシウムを除くことによって、リン酸カルシウム焼結体粒子(粒子群)の表面などに、炭酸アパタイトが生じることを見出した。
【0077】
本発明においては、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、少なくともリン酸カルシウム焼結体粒子(粒子群)の表面に、炭酸アパタイトを含むことによって、生体親和性低下や溶解性変化が抑制され、高い分散性を示すリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0078】
さらに、本発明においては、アルカリ金属元素を実質的に含有しないことにより、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。
【0079】
ここで、「炭酸カルシウムを実質的に含有しない」とは、公知の炭酸カルシウムの測定方法に従って測定した結果、炭酸カルシウムが実質的に存在しないことを言う。例えば、(1)熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定において、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されないこと、または(2)FT−IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm
−1〜890cm
−1の間に現れるピークを分離し、炭酸カルシウムに帰属される877cm
−1付近のピークが観察されないことを言う。なお、ピーク分離は、例えば、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行うことができる。
【0080】
「炭酸アパタイトを含む」とは、公知の炭酸アパタイトの測定方法に従って測定した結果、炭酸アパタイトが存在することを言う。例えば、FT−IRスペクトルにおいて、1350cm
−1〜1500cm
−1に吸収が観察されることを言う。
【0081】
なお、FT−IR分析装置及び測定条件は下記の通りである。臭化カリウム〔KBr〕に対して10重量%となるようハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群をとり、メノウ乳鉢にて十分粉砕した測定サンプルを、パーキンエルマー製FT−IR Spectrum100を用いて拡散反射にて450cm
−1〜4000cm
−1の範囲を積算回数8回で測定する。
【0082】
また、熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定条件は下記の通りである。熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価する。
【0083】
また、「アルカリ金属元素を実質的に含有しない」とは、各アルカリ金属元素に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するアルカリ金属元素の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0084】
更には、前述のように、本発明によれば、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を実質的に含有しないリン酸カルシウム焼結体粒子群とすることも可能である。
【0085】
このように、カルシウム以外のアルカリ土類金属元素や、遷移金属元素を実質的に含有しないことで、結晶性がより高められ、溶解し難く、更には細胞接着性に優れるリン酸カルシウム焼結体粒子とすることが可能となる。また、遷移金属元素を実質的に含まないことで、生体への安全性をより高めることが可能となる。
【0086】
なお、「カルシウム以外のアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない」(「遷移金属元素を実質的に含有しない」)とは、上記同様に、各アルカリ土類金属元素(各遷移金属元素)に関して、リン酸カルシウム焼結体粒子全体の重量に対するカルシウム以外のアルカリ土類金属元素(遷移金属元素)の重量が10ppm以下(好適には、1ppm以下)であることを示す。なお、分析方法としては従来公知の方法を適用可能であり、例えば、ICP−MSにより分析を行えばよい。
【0087】
≪用途≫
本発明に係るリン酸カルシウム焼成体粒子群は、生体親和性、生体活性が非常に高いため、医療分野において、例えば、骨充填剤、歯科用充填剤、薬物徐放剤、外用剤等の医療用材料又は歯科用材料として広く用いることができ、その他にも、食品添加物等のあらゆる用途に適用可能である。また、本発明に係るリン酸カルシウム焼成体粒子群は、細胞接着性に優れるため、生体内導入用医療材料(例えば、生体内留置材料)及び当該材料を一材料とする医療機器用等としても好適に利用可能である。なお、本発明に係るリン酸カルシウム焼成体粒子群のより具体的な用途としては、例えば、化粧料(豊胸促進剤、基礎化粧品、化粧品、歯磨剤等)、注入剤(ダーマルフィラー等)、医療機器{創傷被覆材(特には、ヘルニアメッシュ)等}、外科用埋植医療機器{人工骨、人工関節(整形外科用インプラント)、歯科用インプラント等}、循環器用医療機器{カテーテル(カフへの担持/内面処理)、人工血管、ステント、脳塞栓用コイル}等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
≪製造例≫
(実施例1:炭酸アパタイトを含む、球状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)
1.0gのポリアクリル酸ナトリウム(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸ナトリウムを吸着させた。この水溶液のpHはEUTECH製 CyberScan pH1100EUTECH製 CyberScan pH1100を用いて測定した。
次に、上記で調製した分散液に、0.12mol/lの硝酸カルシウム〔Ca(NO
3)
2〕水溶液100mlを添加することで、同一次粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、200℃/時間の昇温速度にて焼結温度600℃まで昇温し1時間保持して焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となり、一部は炭酸カルシウム〔CaCO
3〕となった。
(酸洗い工程)
融着防止剤ならびに炭酸カルシウムの水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NH
4NO
3〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに、上記工程にて得られた焼結体を懸濁し、超音波を5分照射、遠心分離により固液分離し、得られた沈殿物を再度硝酸アンモニウム水溶液に懸濁させ、超音波照射、遠心分離、以上の工程を上澄みのpHが7.5以下になるまで繰り返した。さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、高結晶性ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子を回収した。
【0089】
(実施例2:炭酸アパタイトを含む、ロッド状ハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、80℃で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)・(焼結工程)・(酸洗い工程)
実施例1と同様に行った。
【0090】
(比較例1:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤をポリアクリル酸カルシウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼(HAp)成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
脱イオン水が入った反応容器内に、撹拌しながら、硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム水溶液及びアンモニア水を添加し{カルシウム:リン酸(モル比)=5:3}、24時間、室温で撹拌しながら反応させた。ハイドロキシアパタイト(HAp)の一次粒子を得た。
(混合工程)
1.0gのポリアクリル酸ナトリウム(ALDRICH社製、重量平均分子量15,000g/mol)を含むpH12.0の水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を分散させることで、同粒子表面にポリアクリル酸ナトリウムを吸着させた。この水溶液のpHはEUTECH製 CyberScan pH1100EUTECH製 CyberScan pH1100を用いて測定した。
次に、上記で調製した分散液に、0.12mol/lの硝酸カルシウム〔Ca(NO
3)
2〕水溶液100mlを添加することで、同一次粒子表面にポリアクリル酸カルシウムを析出させた。かかるポリアクリル酸カルシウムは、融着防止剤である。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)
上記混合粒子をルツボに入れ、200℃/時間の昇温速度にて焼結温度600℃まで昇温し1時間焼結を行なった。この際、ポリアクリル酸カルシウムは熱分解し、酸化カルシウム〔CaO〕となり、一部は炭酸カルシウム〔CaCO
3〕となった。
(除去工程)
融着防止剤の水への溶解性を上げるために、50mmol/l硝酸アンモニウム〔NH
4NO
3〕水溶液を調製した。次に、上記で調製した水溶液500mlに、上記工程にて得られた焼結体を懸濁し、遠心分離により分離洗浄し、さらに蒸留水に懸濁し、同様に遠心分離により分離洗浄を行なうことによって、融着防止剤および硝酸アンモニウムを除去し、高結晶性ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子を回収した。
【0091】
(比較例2:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤を硝酸カルシウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
比較例1と同様である。
(混合工程)
0.12mol/lの硝酸カルシウム水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を懸濁させた。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)・(除去工程)
比較例1と同様である。
【0092】
(比較例3:特許第5043436号公報に基づいて、融着防止剤を硝酸ナトリウムとして、製造した、ハイドロキシアパタイト焼成体粒子群)
(一次粒子生成工程)
比較例1と同様である。
(混合工程)
0.12mol/lの硝酸ナトリウム水溶液100mlに、1.0gのハイドロキシアパタイト(HAp)一次粒子群を懸濁させた。その結果として生じた沈殿物を回収し、減圧下(約0.1Pa)80℃にて乾燥させることで、混合粒子を取得した。
(焼結工程)・(除去工程)
比較例1と同様である。
【0093】
なお、実施例1〜2において、アルカリ金属元素などの重量は、10ppm以下であった。
【0094】
≪熱重量示差熱分析≫
図1〜2は、実施例1及び比較例1に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群の熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定の結果である。当該図から分かるように、実施例1(
図1)では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察されなかった。一方、比較例1(
図2)では、650℃〜800℃に明確な吸熱を伴う2%以上の重量減を観察された。したがって、実施例1は、炭酸カルシウムを実質的に含有しないものであるのに対して、比較例1は、炭酸カルシウムを含むものであることが確認された。
【0095】
同様にして、実施例2は、炭酸カルシウムを実質的に含有しないものであるのに対して、比較例2〜3は、炭酸カルシウムを含むものであることが確認された。
【0096】
≪FT−IR分析≫
(炭酸カルシウムについて)
本発明者らは、実施例1のハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を製造するに際して、酸洗い工程によって、どのように炭酸カルシウムの量が変化するかを調べた。それを示したのが
図3である。
図3の左チャートは、酸洗い工程が行われなかったハイドロキシアパタイト粒子であり、
図3の右チャートは、酸洗い工程が行われたハイドロキシアパタイト(HAp)粒子である。詳細には、FT―IR測定において得られるスペクトルをクベルカムンク(KM)式で計算した吸光度を示したチャートにおいて、波数が860cm
−1〜890cm
−1の間に現れるピークを分離し、評価した。この結果、酸洗い工程が行われたハイドロキシアパタイト粒子(
図3の右図)では、炭酸カルシウムに帰属される877cm
−1付近のピークが観察されなくなることが確認された。一方、酸洗い工程が行われなかったハイドロキシアパタイト粒子(
図3の左図)では、炭酸カルシウムに帰属される877cm
−1付近のピークが観察された。
(炭酸アパタイトについて)
図4〜5は、実施例1及び実施例2に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群のFT−IRスペクトルである。当該図から分かるように、実施例1及び実施例2では、1350cm
−1〜1500cm
−1に吸収が観察された。したがって、実施例1及び実施例2は、炭酸アパタイトを含むものであることが確認された。
【0097】
≪熱重量示差熱分析とFT−IR分析の結果に基づく考察≫
熱重量示差熱分析及びFT−IR分析の結果より、実施例1及び実施例2は、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、炭酸アパタイトを含むものであった。
これに対して、熱重量示差熱分析の結果より、比較例1〜3は、炭酸カルシウムを含むものであった。
ハイドロキシアパタイト粒子を製造するに際して、酸洗い工程などによって、炭酸カルシウムが除かれたと考えられる。
【0098】
尚、FT−IR分析装置及び測定条件は下記の通りである。臭化カリウム〔KBr〕に対して10重量%となるようハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群をとり、メノウ乳鉢にて十分粉砕した測定サンプルを、パーキンエルマー製FT−IR Spectrum100を用いて拡散反射にて450cm
−1〜4000cm
−1の範囲を積算回数8回で測定した。また、ピーク分離は、fityk 0.9.4というソフトを用いて、Function Type:Gaussian、Fitting Method:Levenberg-Marquardtという条件で処理することによって行った。
【0099】
また、熱重量示差熱分析(TG−DTA)測定条件は下記の通りである。熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)にて、窒素気流下、10℃/min.の条件で測定し、700℃〜950℃の温度帯において減少した重量から、脱炭酸量を評価した。
【0100】
≪外観観察試験≫
図6及び
図7は、実施例1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。これら写真から、実施例1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群は、略球状のハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子からなるハイドロキシアパタイト焼成体粒子群であることが分かる。また、
図8及び
図9は、実施例2に係るハイドロキシアパタイト焼成体粒子群のSEM写真である(スケール違い)。これら写真から、実施例1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群は、略ロッド状のハイドロキシアパタイト焼成体粒子からなるハイドロキシアパタイト(HAp)焼成体粒子群であることが分かる。
【0101】
≪組成分析≫
実施例1および2に係るセラミック粒子を組成分析した結果、
Ca
x(PO
4)
6−y(CO
3)
y(OH)
2
(式中、xは8以上12以下の数であり、yは0より大きく、3以下の数である)で表されるものの範囲内にあることが判明した。
なお、測定方法は上記で述べたとおりである。
【0102】
≪分散性試験≫
焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)(実施例1及び比較例1に係る焼結ハイドロキシアパタイト(HAp))60mgとエタノール3mlとを混合し、30分間超音波照射して焼結ハイドロキシアパタイト分散液を調製した。レーザー散乱粒度分布計(島津製作所製、SALD−7500nano)の水循環フローセル中に水を200ml加え、レーザー散乱光強度が装置の測定領域となるよう焼結ハイドロキシアパタイト分散液を滴下した。循環槽に超音波を5分照射し、粒度分布を測定した。得られた粒度分布より、体積換算で500nm以下の存在率(%)を調べることによって、分散性を評価した。500nm以下の存在率(%)が高いほど、高い分散性を示す。以下の表1に結果を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
上記の表より、実施例1が、比較例1と比較して、顕著に高い分散性を示すことは、明らかである。
【0105】
なお、実施例1の粒子径の変動係数は17%であった。また、実施例2の粒子径は、短軸の最大直径が51nm、長軸が170nmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が3.33であった。
【0106】
≪細胞接着試験≫
<供試材の製造>
(洗浄処理)
円形のポリエチレンテレフタラート(PET)製シート(直径9mm、厚さ0.1mm)に対し、アルコール処理(アルコール(エタノール、2―プロパノールなど中5分間超音波照射)を実施した。
【0107】
(リンカー導入工程)
洗浄処理を施したPET製シート両面に対してコロナ放電処理(100V、片面15秒)を施した。コロナ放電処理後のPET製シートとアクリル酸(和光純薬工業製)10mlを20ml試験管に入れ、試験管内を真空ポンプにて減圧し、脱気操作を行った。減圧状態のまま試験管を溶封し、温度60℃の水浴中で60分間、グラフト重合を行なった。当該処理後、基材表面上に付着しているアクリル酸ホモポリマーを除去するため、水中、室温で60分間、撹拌した後、基材表面を水続いてエタノールで洗浄した。
【0108】
(焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子固定化処理)
上記処理後、基材を1%の焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子(実施例1、実施例2、及び比較例1に係る焼結ハイドロキシアパタイト(HAp)微粒子)の分散液中(分散媒:エタノール)、20℃で30分間静置した。その後、5分間超音波照射し、基材を取り出し、20℃常圧にて乾燥し、供試材を得た。
【0109】
<細胞接着・細胞形態評価>
作製した供試材を用いて、細胞接着・細胞形態評価試験を実施した。尚、試験に先立ち、供試材をエタノール洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ならびに培地(MEM α(無血清))で洗浄した後(3回)、培地に浸して、使用までインキュベート(37℃,5%CO
2)した。そして、以下の手順で細胞培養を実施した。まず、48穴プレートに培地(200μL/穴)及び供試材(試験用シート)を入れた。その後、骨芽細胞様細胞(MC3T3−E1(subclone14))の懸濁液を入れ(約1×10
5細胞/200μL/穴)、3時間培養した。
【0110】
(細胞観察)
図10〜12は、各々、実施例1、実施例2、及び比較例1に係るハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を用いて製造された供試材のSEM写真である。当該写真に基づき、細胞の集合状態、細胞形態、細胞密度を判断した。その結果を表2に示す。なお、細胞密度に関しては、「+」の数が多いほど、細胞密度が高いことを示す。また、供試材それぞれの平均被覆率は、SEM写真から算出している。
【0111】
【表2】
【0112】
図10〜12および表2から分かるように、実施例1及び実施例2に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いた場合、優れた細胞接着性を示すことが確認でき、また、殆どの細胞は大きく伸長した細胞形態を示すことも確認できた。一方、比較例1に係るハイドロキシアパタイト焼結体粒子群を用いた場合、細胞接着性が劣ることを確認出来た。
【解決手段】 セラミック粒子からなるセラミック粒子群であって、前記セラミック粒子の粒子径が、10nm〜700nmの範囲内で、且つ前記セラミック粒子群の粒子径の変動係数が、20%以下であり、前記セラミック粒子が、リン酸カルシウム焼結体粒子であり、前記セラミック粒子が、炭酸カルシウムを実質的に含まず、且つ、前記セラミック粒子が、少なくともその表面に炭酸アパタイトを含むことを特徴とするセラミック粒子群。