(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法を
図1〜
図21を参照して説明する。なお、
図3、
図4、
図7〜
図13、
図16〜
図18、
図20の模式図において、ワイヤー同士が交差している部分の一方のワイヤーが湾曲した形状になっている。この湾曲形状は、湾曲している方のワイヤーが、湾曲していない方のワイヤーよりもテンポラリーステントの径方向外側に位置していることを図示するものである。製造されたテンポラリーステントのワイヤーは
図1、
図2に示すように、交差部分において湾曲しているものではない。
【0015】
なお、本実施形態においては、テンポラリーステントの長手方向(軸方向)を上下方向とし、編みはじめ側(ワイヤーWの二つ折り部分側)を上側、編み終わり側(捩り部分側)を下側とする。また、テンポラリーステントの周方向を、上下方向に対して左右方向とする。また、ワイヤーW同士が編み込まれて交差している1回分を軸方向に「1段」と数えるものとし、最も上側に位置する交差部分を1段目とする。また、
図13に示すように、上下に隣り合う段においては、下段の交差部分は、周方向において、上段の周方向に隣り合う交差部分の中間位置に位置している。
【0016】
[テンポラリーステント]
本発明の一実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法において製造されるテンポラリーステント100は、
図1に示される。テンポラリーステント100は、複数のワイヤーWが組紐状に編み込まれて形成されており、本実施形態においては、10本のワイヤーWを用いて製造されている。また、テンポラリーステント100は、円筒状の本体部101と、末端部102と、を備える。本実施形態の末端部102は、隣り合う2本のワイヤーW同士がワイヤーWの末端まで捩られて形成されている。また、本体部101は、ワイヤーWが編み込まれて形成された編み込み部分10であり、末端部102は、ワイヤーWが捩られて形成された捩り部分20である。
【0017】
また、本発明の製造方法で製造されるテンポラリーステントは、
図2に示すように、互いに径寸法が異なる複数の部分を有していてもよい。すなわち、
図2(a)、
図2(c)に示される、テンポラリーステント200Aは、複数のワイヤーWが組み紐状に編み込まれて形成されており、12本のワイヤーを用いて製造されている。また、テンポラリーステント200Aは、円筒状の本体部201と、本体部201に連なり、徐々に縮径するテーパ状の尾部202と、尾部202に連なり縮径した尾部202と同径の支柱部203と、末端部204と、を備える。本実施形態の末端部204は、隣り合う2本のワイヤーW同士がワイヤーWの末端まで捩られて形成されている。また、本体部201、尾部202、及び、支柱部203は、ワイヤーWが編み込まれて形成された編み込み部分10であり、末端部204は、ワイヤーWが捩られて形成された捩り部分20である。
【0018】
また、本発明の製造方法で製造されるテンポラリーステントは、
図2(b)、(c)に示すように、複数の本体部と、複数の本体部に対応した複数のテーパ部と、を有していてもよい。すなわち、テンポラリーステント200Bが、円筒状の第一の本体部205と、第一の本体部205に連なり、徐々に縮径するテーパ状の第一の尾部206と、第一の尾部206に連なり縮径した第一の尾部206と同径の中間支柱部207と、中間支柱部207に連なり、徐々に拡径するテーパ状の第二の尾部208と、第二の尾部208に連なる円筒状の第二の本体部209と、第二の本体部209に連なり、徐々に縮径する第三の尾部210と、第三の尾部210に連なり縮径した第三の尾部210と同径の支柱部203と、
図2(c)に示される末端部204と、を備えるように形成されていてもよい。また、テンポラリーステント200Bにおいては、第一の本体部205、第一の尾部206、中間支柱部207、第二の尾部208、第二の本体部209、第三の尾部210、及び、支柱部203は、ワイヤーWが編み込まれて形成された編み込み部分10である。
【0019】
図3は、本発明のテンポラリーステントの製造方法で製造される、さらに異なる形態のテンポラリーステント200Cの編み込み部分10cを拡大して示す図である。
図1、
図2に示されるテンポラリーステントにおいては、本体部の上端部において、すべてのワイヤーWの二つ折りにされた部分が周方向に沿って並んでいるが、
図3に示すように、ワイヤーWが二つ折りにされた部分(以下、「二つ折り部分Wc」と称する)が軸方向に複数(
図3においては2つ)並ぶように形成されていてもよい。なお、テンポラリーステント200Cは10本のワイヤーWを用いて形成されており、二つ折り部分Wcを二つ折り部分W1c〜W10cと称する。
【0020】
すなわち、例えば、12本のワイヤーWを用いてテンポラリーステントを製造する場合、軸方向に1つ、かつ、周方向に12個の二つ折り部分Wcが並ぶように形成してもよいし、軸方向に2つ、かつ、周方向に6つの二つ折り部分Wcが並ぶように形成されていてもよいし、軸方向に3つ、かつ、周方向に4つの二つ折り部分Wcが並ぶように形成されていてもよい。ワイヤーWの本数によっては、軸方向にさらに多くの二つ折り部分Wcが並ぶように形成されていてもよい。軸方向に複数の二つ折り部分Wcが並ぶように形成することにより、テンポラリーステントをより縮径しやすくなり、カテーテル等のパイプ状の部材に格納しやすくすることができる。
【0021】
また、
図4は、本発明のテンポラリーステントの製造方法で製造される、さらに異なる形態のテンポラリーステント200Dの編み込み部分10dを拡大して示す図である。
図4に示すように、ワイヤーWの二つ折り部分がより小さいアール部分Wdを有するようにテンポラリーステントを形成してもよい。なお、テンポラリーステント200Dは10本のワイヤーWを用いて形成されており、アール部分Wdをアール部分W1d〜W10dと称する。より小さいアール部分Wdを有するように形成することにより、テンポラリーステントをより縮径しやすくなり、カテーテル等のパイプ状の部材に格納しやすくすることができる。
【0022】
また、テンポラリーステントの本体部の端部は、テンポラリーステント100の本体部101(
図1)のように、本体部101が全長に亘って同じ径で形成されていてもよいし、テンポラリーステント200B(
図2(b))の第一の本体部205のように、テンポラリーステントの編みはじめ側の端部205aが徐々に拡径するテーパ部分を有するように形成されていてもよい。
【0023】
以上に記載したように、テンポラリーステントの使用目的、使用態様により、例えば、前述したテンポラリーステント100、200A、200B、200C、200Dの形状を適宜組み合わせるなどして、ワイヤーWの線径、ワイヤーWの本数、テンポラリーステントの長さ寸法、形状等を適宜変更することができる。なお、一般的には、体内管状器官を拡張することができるように、テンポラリーステントが挿入される体内管状器官の内径よりも、特にテンポラリーステントの端部において、少し大きい外径寸法を有するテンポラリーステントが用いられる。
【0024】
また、テンポラリーステントを製造するために用いるワイヤーWには、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タンタル、Ni−Ti系形状記憶合金、Cu−Al−Ni系形状記憶合金、又は、Cu−Zn−Al系形状記憶合金等を用いて形成されたものを好適に用いることができる。ワイヤーWは、テンポラリーステントの使用目的やテンポラリーステントの寸法、所望の拡張力等の性能に応じて、最適な材料、線径を適宜選択することができる。
【0025】
[テンポラリーステントの製造方法]
(第一実施形態)
次に、本発明の第一実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法について説明する。本実施形態においては、前述したテンポラリーステント100を製造する場合について説明する。なお、本実施形態の製造方法で形成される編み込み部分10を編み込み部分10aとする。
【0026】
本実施形態のテンポラリーステントの製造方法は、
図5、
図6に示す編み込み具300を用いて、複数のワイヤーWを組み紐状に編み込んで編み込み部分10aを作成する編み込み工程と、複数のワイヤーWの隣り合うワイヤーW同士を捩って捩り部分20を作成して、複数のワイヤーWの末端を処理する末端処理工程と、組み紐状に編み込まれた複数のワイヤーWを熱処理して複数のワイヤーWが所定の形状に記憶される焼き入れ工程と、を備える。また、本実施形態では、各手順に記載の「(周方向)一方側」を左側(
図7〜
図12の紙面左側)、「(周方向)他方側」を右側(
図7〜
図12の紙面右側)として製造されるが、左右を入れ替えても、すなわち、「一方側」を右側、「他方側」を左側としても同様にテンポラリーステントを製造することができる。
【0027】
<編み込み工程>
編み込み工程について、
図5〜
図13を参照して説明する。編み込み工程は、
図5、
図6に示された編み込み具300を用いて行われる。
図5は、編み込み具300を示す図であり、
図6(a)は編み込み具300の要部を拡大して示す図、
図6(b)は後述する編み込み棒301に固定ピンFが固定された状態を示す平面図、
図6(c)は後述する回転台302に回転ピンRが固定された状態を示す平面図である。
【0028】
編み込み具300は、
図5に示すように、円柱状の編み込み棒301と、編み込み棒301の周方向に等間隔に固定される固定ピンFと、編み込み棒301の周方向に回転可能かつ、編み込み棒301の所定位置に固定可能な回転台302と、回転台302の径方向に突出して回転台302の周方向に等間隔に固定された回転ピンRと、編み込み棒301を支持する支持台303と、を有する。また、固定ピンFと及び回転ピンRは、複数のワイヤーWと同数設けられている。編み込み棒301には、
図6(a)に示すように、固定ピンFを固定するための固定孔311が、編み込み棒301の軸方向の同じ位置に所定の間隔をあけて設けられている。
【0029】
固定ピンFと回転ピンRの数はワイヤーWと同じ数であり、本実施形態においては10本ずつ設けられている。本実施形態において、
図6(b)、
図6(c)に示すように、10本の固定ピンFを反時計回りにF1〜F10とし、10本の回転ピンRを反時計回りにR1〜R10とする。初期状態において、
図6(a)に示すように、固定ピンF1と回転ピンR1、固定ピンF2と回転ピンR2、・・・固定ピンF10と回転ピンR10が、編み込み棒301の周方向において同じ位置に固定されている。
【0030】
回転台302は、編み込み棒301を内挿することができるように、内径が編み込み棒301の外径とほぼ同じ寸法に形成されている。また、回転台302の外面には、径方向にねじ切りされたねじ孔321が、軸方向に同じ位置、かつ、周方向に所定間隔で設けられている。これらのねじ孔321に回転ピンRを螺合させて固定する。また、回転台302の外面には、ねじ孔321の下方に貫通孔322がさらに設けられている。貫通孔322にねじを挿入してねじ締めをすることで、編み込み棒301の所定位置に回転台302を固定することができるように構成されている。
【0031】
次に、ワイヤーWを編み込む手順を
図7〜
図12を参照して説明する、
図7〜
図12は、固定ピンF、回転ピンR、ワイヤーWを模式的に平面で示すものである。なお、
図7〜
図12に示すように、固定ピンF1〜F10に掛けられるワイヤーWをそれぞれワイヤーW1〜W10とする。また、固定ピンF1〜F10の左側に垂れている、ワイヤーWの左側部分Waを左側部分W1a〜W10a(一方側部分)とし、右側に垂れている、ワイヤーWの右側部分Wbを右側部分W1b〜W10b(他方側部分)とする。なお、
図7〜
図12は、1段目〜4段目の交差部分が形成されるときの初期状態〜第五手順における固定ピンF、回転ピンR、ワイヤーWの状態を示すものである。
【0032】
(初期状態)
まず、編み込み具300にワイヤーWを掛けて初期状態(
図7)とし、製造の準備を行う。初期状態とするには、まず、固定ピンFにワイヤーWをかける。ワイヤーWは両端に不図示のおもりが取り付けられており、さらに、二つ折りにされて、編み込み棒301の周方向において同じ位置に固定された固定ピンF及び回転ピンR(例えば、固定ピンF1及び回転ピンR1)をまたぐように、二つ折りにされた二つ折り部分(W1c〜W10c)が固定ピンF1〜F10に掛けられる。
【0033】
(第一手順)
次に、第一手順を行う。第一手順により、
図7の初期状態から、
図8の第一手順後の状態となる。第一手順は、以下のステップAを周方向他方側に一周して、編み込み棒301に固定された全ての固定ピンFにおいてステップAを行う。ステップAの手順は、隣り合う固定ピンF同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、一方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの他方側部分と、他方側の固定ピンに掛けられたワイヤーWの一方側部分とを、他方側部分が径方向外側になるように交差させて、さらに、他方側の固定ピンに掛けられたワイヤーWが初期状態において跨いでいる回転ピンRの他方側に、他方側部分を掛け、一方側の固定ピンに架けられたワイヤーWが初期状態において跨いでいる回転ピンRの一方側に、一方側部分を掛けるというものである。
【0034】
具体的には、まず、
図7に示すように、固定ピンF1と固定ピンF2の間に垂れているワイヤーW1とワイヤーW2のうち、左側に位置する固定ピンF1に掛けられたワイヤーW1の右側部分W1bと右側に位置する固定ピンF2に掛けられたワイヤーW2の左側部分W2aとを交差する。このとき、ワイヤーW1の右側部分W1bがワイヤーW2の左側部分W2aよりも径方向外側になるように交差させる。さらに、右側に位置する固定ピンF2に掛けられたワイヤーW2が初期状態において跨いでいる回転ピンR2の右側にワイヤーW1の右側部分W1bを掛ける。同時に、左側に位置する固定ピンF1に掛けられたワイヤーW1が初期状態において跨いでいる回転ピンR1の左側にワイヤーW2の左側部分W2aを掛ける。以上をステップAとする。
【0035】
続いて、ステップAと同様の操作を、固定ピンF1と固定ピンF2から反時計回り(
図7の紙面右方向)に進んだ固定ピンF2と固定ピンF3との間に垂れているワイヤーW2とワイヤーW3との間で行い、回転ピンR3の右側にワイヤーW2の右側部分W2bを掛け、回転ピンR2の左側にワイヤーW3の左側部分W3aを掛ける。同様にして、固定ピンF10と固定ピンF1との間に垂れているワイヤーW10とワイヤーW1まで反時計回りに進んで、隣り合う全ての固定ピンFの間に垂れているワイヤーWでステップAの操作を行う。
【0036】
図8に示すように、第一手順により、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bが、それぞれ、他の2本のワイヤーWと交差し、交差が2段形成される。固定ピンF側の1段目の交差部分は、隣り合う固定ピンF同士の周方向中間位置に形成され、2段目の交差部分は、固定ピンFの周方向同じ位置に形成されている。また、1段目の交差部分においては、ワイヤーWの右側部分W1b〜W10bが径方向外側になるように交差し、2段目の交差部分においては、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aが径方向外側になるように交差している。なお、固定ピンF1の下方に形成された2段目の交差部分(
図8において符号Xで示す部分)は、上記の手順通りに操作するとワイヤーW10の右側部分W10bが径方向外側になるように交差するため、次の操作に移る前に修正する。以上により第一手順が終了する。
【0037】
(第二手順)
次に、第二手順を行う。第二手順では、回転台302を、他方側に半ピン分回転させて編み込み棒301に固定する。具体的には、貫通孔322に螺合されたねじを緩ませて回転台302を半ピン分、反時計回り(
図8における紙面右方向)に回転させて、再びねじ締めをして回転台302を編み込み棒301に固定する。なお、本実施形態では回転ピンRが10本であることから、半ピン分の回転角度は18°である。第二手順により、
図8の第一手順後の状態から、
図9の第二手順後の状態となり、隣り合う固定ピンF同士の周方向中間位置に回転ピンRが位置する。
【0038】
(第三手順)
続いて、第三手順を行う。第三手順により、
図9の第二手順後の状態から、
図10の第三手順後の状態となる。第三手順は、以下のステップBを周方向一方側又は他方側に一周して、回転台302に固定された全ての回転ピンRにおいてステップBを行う。ステップBの手順は、隣り合う回転ピンR同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、一方側の回転ピンRに沿って垂れているワイヤーWが径方向外側になるように2本のワイヤーWを交差させて、他方側の回転ピンRに沿って垂れているワイヤーWのみを一方側の回転ピンRの一方側に掛けるというものである。
【0039】
具体的には、まず、
図9に示すように、隣り合う回転ピンR1と回転ピンR2との間に垂れている2本のワイヤーW(ワイヤーW10の右側部分W10bとワイヤーW3の左側部分W3a)のうち、左側に位置する回転ピンR1に沿って垂れているワイヤーW10の右側部分W10bが径方向外側になるように、ワイヤーW10の右側部分W10bとワイヤーW3の左側部分W3aを交差させる。さらに、右側に位置する回転ピンR2に沿って垂れているワイヤーW3の左側部分W3aのみを、左側に位置する回転ピンR1の左側に掛ける。以上をステップBとする。
【0040】
続いて、ステップBと同様の操作を、回転ピンR1と回転ピンR2から時計回り(
図9の紙面左方向)に進んだ回転ピンR10と回転ピンR1との間に垂れているワイヤーW9とワイヤーW2との間で行い、回転ピンR10の左側にワイヤーW2の左側部分W2aを掛ける。同様にして、回転ピンR2と回転ピンR3との間に垂れているワイヤーW1とワイヤーW4まで時計回りに進んで、隣り合う全ての回転ピンRの間に垂れているワイヤーWでステップBの操作を行う。なお、第三手順において、ステップBをはじめる回転ピンRは、隣り合う2本の回転ピンRのうちどの2本でもよい。また、ステップBは、回転ピンR1と回転ピンR2から反時計回り(
図9の紙面右方向)に一周するように行ってもよい。
【0041】
第三手順では、3段目の交差が形成され、第三手順後には、
図10に示すように、固定ピンFと回転ピンRとの間で、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bが、それぞれ、他の3本のワイヤーWと交差し、交差が3段形成されている。3段目の交差部分においては、ワイヤーWの右側部分W1b〜W10bが径方向外側になるように交差し、その交差部分は、隣り合う固定ピンF同士の周方向中間位置に形成されている。以上により第三手順が終了する。
【0042】
(第四手順)
次に、第四手順を行う。第四手順では、回転台302を、他方側に半ピン分回転させて編み込み棒301に固定する。具体的には、貫通孔322に螺合されたねじを緩ませて回転台302を半ピン分(本実施形態においては半ピン分の回転角度は18°)反時計回り(
図10における紙面右方向)に回転させて、再びねじ締めをして回転台302を編み込み棒301に固定する。第四手順により、
図10の第三手順後の状態から、
図11の第四手順後の状態となり、固定ピンFと回転ピンRは周方向同じ位置に位置している。
【0043】
(第五手順)
続いて、第五手順を行う。第五手順により、
図11の第四手順後の状態から、
図12の第五手順後の状態となる。第五手順は、以下のステップCを周方向一方側又は他方側に一周して、回転台302に固定された全ての回転ピンRにおいてステップCを行う。ステップCの手順は、隣り合う回転ピンR同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、他方側の回転ピンRに沿って垂れているワイヤーWのみを、一方側の回転ピンの一方側に掛けるというものである。
【0044】
具体的には、
図11に示すように、回転ピンR10と回転ピンR1との間に垂れている2本のワイヤーW(ワイヤーW9の右側部分W9bとワイヤーW3の左側部分W3a)を持ち、右側に位置する回転ピンR1に沿って垂れているワイヤーW3の左側部分W3aのみを、左側に位置する回転ピンR10の左側に掛ける。これをステップCとする。
【0045】
続いて、ステップCと同様の操作を、回転ピンR10と回転ピンR1から時計回り(
図11の紙面左方向)に進んだ回転ピンR9と回転ピンR10との間に垂れているワイヤーW8とワイヤーW2との間で行い、回転ピンR9の左側にワイヤーW2の左側部分W2aを掛ける。同様にして、回転ピンR1と回転ピンR2との間に垂れているワイヤーW10とワイヤーW4まで時計回りに進んで、隣り合う全ての回転ピンRの間に垂れているワイヤーWでステップCの操作を行う。なお、第五手順において、ステップCをはじめる回転ピンRは、隣り合う2本の回転ピンRのうちどの2本でもよい。また、ステップCは、回転ピンR10と回転ピンR1から反時計回り(
図11の紙面右方向)に一周するように行ってもよい。
【0046】
第五手順では、4段目の交差部分が形成され、第五手順後には、
図12に示すように、固定ピンFと回転ピンRとの間で、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bが、それぞれ、他の4本のワイヤーWと交差し、交差が4段形成されている。4段目の交差部分においては、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aが径方向外側になるように交差し、その交差部分は、隣り合う固定ピンFと周方向同じ位置に形成されている。以上により第五手順が終了する。
【0047】
以上の第二手順〜第五手順を、編み込み部分10aが所定の長さになるまで繰り返す。このとき、ワイヤーWの交差部分が所定段数(例えば、10段)作られたときに回転台302を編み込み部分10aごと上方向(固定ピンF側)にずらし、テンポラリーステントにおける所望の拡張力に応じてワイヤーWの角度を整えて、固定ピンFのすぐ下の位置でワイヤーWを固定するとよい。ワイヤーWの固定は、例えば、針金等を用いて編み込まれたワイヤーWごと編み込み棒301を縛ることにより行うことができる。後述する焼き入れ工程において、所望の拡張力に応じてワイヤーWの角度を整えた状態で焼き入れ用型に固定し、焼き入れ工程を行うことにより、製造されたテンポラリーステントをより拡張させやすくすることができる。「拡張しやすさ」とは、テンポラリーステントを縮径したのちに元の径寸法まで拡張して戻るときの拡張しやすさのことをいう。
【0048】
また、上記の編み込み手順は、必ずしも第五手順で終わる必要はなく、第三手順で終わってもよい。すなわち、編み込み部分10aが所定の長さになった時点で編み込み工程を終えることができる。以上により編み込み工程が終了する。
【0049】
図13(a)は、本実施形態の編み込み工程により作成された編み込み部分10aの一部を拡大して、ワイヤーWの交差状態を模式的に示す図である。
図13(a)に示すように、奇数段目(1段目、3段目、5段目・・・)の交差部分においては、左上から右下に延びるワイヤーW(ワイヤーWの右側部分W1b〜W10b)が径方向外側に位置し、偶数段目(2段目、4段目、6段目・・・)の交差部分においては、右上から左下の延びるワイヤーW(ワイヤーWの左側部分W1a〜W10a)が径方向外側に位置している。また、周方向において、奇数段目の周方向に隣り合う交差部分の中間位置に、偶数段目の交差部分が位置している。なお、編み込み工程における左右を入れ替えた場合、すなわち、各手順の「一方側」を右側、「他方側」を左側として製造した場合、
図13(b)に示される編み込み部分10bのように、奇数段目の交差部分においては、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aが径方向外側に位置し、偶数段目の交差部分においては、ワイヤーWの右側部分W1b〜W10bが径方向外側に位置するように、ワイヤーWが交差している状態となる。
【0050】
<末端処理工程>
編み込み工程の次に、末端処理工程を行う。末端処理工程では、隣り合うワイヤーW同士を捩って捩り部分20を作成して、複数のワイヤーWの末端を処理する。
【0051】
末端処理工程は、具体的には、以下のように行う。編み込み部分10aが所定の長さになったのち、さらに、交差部分が所定段数(例えば、5〜6段)余分に形成されるまで第二手順〜第五手順を繰り返して余剰部分を作成する。続いて、編み込み部分10aの所定の長さ近傍でワイヤーWの右側部分W1b〜W10bが径方向外側になっている交差部分(以下、交差部分Yとする)の軸方向直上(固定ピンF側)を、針金等を用いて固定する。
【0052】
固定したのち、編み込み部分10aの余剰部分のワイヤーWを、交差部分Yを残して解き、回転台302を編み込み棒301から外してワイヤーWの末端を処理する。ワイヤーWの末端の処理は、交差部分Yで交差している2本のワイヤーW同士を右回りに所定回数捩って捩り部分20を作成する。このとき、まず、周方向に1つおきの交差部分で交差しているワイヤーW同士を捩り、続いて、残った交差部分でワイヤー同士を捩るとよい。
【0053】
例えば、本実施形態においては、回転ピンR1、R3、R5、R7、R9の直上に形成された交差部分で交差しているワイヤーW同士を捩り、続いて、回転ピンR2、R4、R6、R8、R10の直上に形成された交差部分で交差しているワイヤーW同士を捩るとよい。なお、編み込み部分10aの所定の長さ近傍でワイヤーWの左側部分W1a〜W10aが径方向外側になっている交差部分の軸方向直上(固定ピンF側)を、針金等を用いて固定し、この交差部分で交差している2本のワイヤーW同士を左回りに所定回数捩って捩り部分を作成してもよい。
【0054】
ワイヤーWの末端の処理をしたのち、ワイヤーWのおもりをはずして編み込み部分10aを固定していた針金等、及び、固定ピンFを外す。このようにして末端処理工程が終了する。なお、余剰部分における交差部分の段数は、捩り部分20を形成するために必要なワイヤーWの寸法を確保できる程度に設定すればよい。また、捩る回数は、捩り部分20が解けない程度の回数に設定すればよく、本実施形態においては、12回捩られている。
【0055】
<焼き入れ工程>
末端処理工程に続いて、焼き入れ工程を行う。焼き入れ工程により、組み紐状に編み込まれた複数のワイヤーWを熱処理することで、複数のワイヤーWが所定の形状に記憶される。
【0056】
本実施形態において、焼き入れ工程は、
図14に示す焼き入れ用型400を用いて行われる。焼き入れ用型400は、テンポラリーステント100の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、焼き入れ用型400は、
図14に示すように、本体部101の内形に沿った形状の円柱部分401を有する。
【0057】
焼き入れ用型400には、編み込み部分10aの本体部101相当部分を焼き入れ用型400に固定するピンPを立てるための孔402が複数設けられている。孔402は、
図14に示すように、焼き入れ用型400における、二つ折り部分Wcに対応する位置に、ピンPを用いて二つ折り部分Wcを下方から支持可能なように設けられている。なお、必要に応じて、焼き入れ用型の軸方向における複数箇所(編み込み部分10aの交差部分に対応する位置)にピンPを立てるための孔を設けてもよい。
【0058】
まず、焼き入れ用型400の長手方向一方側端部(上端部)に編み込み棒301の長手方向他方側端部(下端部)を密着させ、編み込み部分10a、捩り部分20を編み込み棒301から焼き入れ用型400にずらして外挿する。所定位置まで挿入したら、編み込み部分10aを焼き入れ用型400に固定するための複数のピンPを孔402に立てて焼き入れ用型400に固定し、編み込み部分10aの網目や角度を整える。このとき、ピンPは二つ折り部分Wcを下側から支持している。また、固定は接着剤等を用いることができる。また、ピンPの上下(テンポラリーステントの軸方向両側)や編み込み部分10aに針金を巻いて、焼き入れ用型400と、編み込み部分10aとを固定することが好ましい。
【0059】
次に、編み込んだワイヤーを焼き入れ用型に固定したまま、オーブン等を用いて350℃、25分間焼き入れを行う。焼き入れ後、すぐに取り出して水に入れて急冷し、ワイヤーWの形状が焼き入れ用型400に合わせた形状に記憶されるようにする。なお、焼き入れ条件は、ワイヤーWの材料、線径、テンポラリーステントの形状等に合わせて適切な条件に適宜変更することができる。
【0060】
最後に、編み込み部分10aと焼き入れ用型400とを固定していたピンP及び針金と、焼き入れ用型400とをはずし、編み込み部分10aの網目が整っていることを確認して、ワイヤーWの余剰部分を切断する。このとき、捩られた2本のワイヤーWがほどけないように、溶接等により2本のワイヤーW同士を固定してもよい。以上により、本体部101、及び、末端部102が形成され、テンポラリーステント100が完成する。
【0061】
以上のようにしてテンポラリーステント100が製造される。
【0062】
本実施形態のテンポラリーステントの製造方法によれば、テンポラリーステントの径寸法、長さ寸法、形状、拡張力等において、必要となる形状に合わせた型を用いてテンポラリーステントを製造することにより、所望の形状、性能を有する、複数のワイヤーが組み紐状に編み込まれたテンポラリーステントをより短時間に精度よく製造することができる。すなわち、テンポラリーステントの径寸法、長さ寸法、形状、拡張力等において、必要となる形状に合わせて、それぞれの患者に合わせたテンポラリーステントを、より短時間に精度よく製造することができる。
【0063】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法について説明する。本実施形態のテンポラリーステントの製造方法は、第一実施形態に示した編み込み工程において、第一手順を変更し、さらに、第二手順〜第五手順の順序を変更してテンポラリーステントを製造するものである。なお、本実施形態の製造方法で形成される編み込み部分10を編み込み部分10bとする。
【0064】
また、本実施形態においては、
図13(b)に示される編み込み部分10bのように、奇数段目の交差部分においては、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aが径方向外側に位置し、偶数段目の交差部分においては、ワイヤーWの右側部分W1b〜W10bが径方向外側に位置するように、ワイヤーWが交差した状態のテンポラリーステントを製造する方法を説明する。前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、また、同じ手順については説明を省略する。
【0065】
(第一手順)
本実施形態の第一手順は、以下のステップDを周方向一方側に一周して、編み込み棒301に固定された全ての固定ピンFにおいてステップDを行う。ステップDの手順は、隣り合う固定ピンF同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、一方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの他方側部分と、他方側の固定ピンに掛けられたワイヤーWの一方側部分とを、一方側部分が径方向外側になるように交差させて、さらに、他方側の固定ピンに掛けられたワイヤーWが初期状態において跨いでいる回転ピンRの他方側に、他方側部分を掛け、一方側の固定ピンに架けられたワイヤーWが初期状態において跨いでいる回転ピンRの一方側に、一方側部分を掛けるというものである。
【0066】
具体的には、まず、
図7に示すように、固定ピンF1と固定ピンF2の間に垂れているワイヤーW1とワイヤーW2のうち、左側に位置する固定ピンF1に掛けられたワイヤーW1の右側部分W1bと右側に位置する固定ピンF2に掛けられたワイヤーW2の左側部分W2aとを交差する。このとき、ワイヤーW2の左側部分W2aがワイヤーW1の右側部分W1bよりも径方向外側になるように交差させる。さらに、右側に位置する固定ピンF2に掛けられたワイヤーW2が初期状態において跨いでいる回転ピンR2の右側にワイヤーW1の右側部分W1bを掛ける。同時に、左側に位置する固定ピンF1に掛けられたワイヤーW1が初期状態において跨いでいる回転ピンR1の左側にワイヤーW2の左側部分W2aを掛ける。以上をステップDとする。
【0067】
続いて、ステップDと同様の操作を、固定ピンF1と固定ピンF2から時計回り(
図4の紙面左方向)に進んだ固定ピンF10と固定ピンF1との間に垂れているワイヤーW10とワイヤーW1との間で行い、回転ピンR1の右側にワイヤーW10の右側部分W10bを掛け、回転ピンR10の左側にワイヤーW1の左側部分W1aを掛ける。同様にして、固定ピンF2と固定ピンF3との間に垂れているワイヤーW2とワイヤーW3まで時計回りに進んで、隣り合う全ての固定ピンFの間に垂れているワイヤーWでステップDの操作を行う。
【0068】
(第二手順〜第五手順)
本実施形態の第二手順〜第五手順は、第一実施形態の第二手順〜第五手順と、それぞれの操作は同一であるが、実施する順序が第一実施形態とは異なる。すなわち、第二手順、第五手順、第四手順、第三手順の順に、編み込み部分10bが所定の長さになるまで繰り返す。また、末端処理工程以降の工程は、第一実施形態と同様の手順で行うことができる。
【0069】
本実施形態のテンポラリーステントの製造方法によれば、テンポラリーステントの径寸法、長さ寸法、形状、拡張力等において、必要となる形状に合わせた型を用いてテンポラリーステントを製造することにより、所望の形状、性能を有する、複数のワイヤーが組み紐状に編み込まれたテンポラリーステントをより短時間に精度よく製造することができる。すなわち、テンポラリーステントの径寸法、長さ寸法、形状、拡張力等において、必要となる形状に合わせて、それぞれの患者に合わせたテンポラリーステントを、より短時間に精度よく製造することができる。また、本実施形態では、各手順に記載の「(周方向)一方側」を左側(
図4の紙面左側)、「(周方向)他方側」を右側(
図4の紙面右側)として製造されるが、左右を入れ替えても、すなわち、「一方側」を右側、「他方側」を左側としても同様にテンポラリーステントを製造することができる。この場合、編み込み部分は、
図13(a)に示す編み込み部分10aのようになる。
【0070】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法について説明する。本実施形態においては、前述したテンポラリーステント200Cを製造する場合について説明する。前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、また、同じ手順については説明を省略する。なお、テンポラリーステント200Cは10本のワイヤーWにより製造されている。なお、本実施形態の製造方法で形成される編み込み部分10を編み込み部分10cとする。
【0071】
<編み込み工程>
本実施形態の編み込み工程について、
図3、
図15〜
図18を参照して説明する。
【0072】
図15、
図16は、本実施形態の編み込み棒301C、固定ピンF、回転ピンR、ワイヤーWを示すものである。
図15(a)、
図15(b)に示すように、本実施形態においては、固定ピンFは、複数のワイヤーWと同数の10本であり、かつ、その半数である5本が編み込み棒の周方向に等間隔で固定されるとともに、残りの半数である5本が、等間隔で固定された5本から、軸方向にかつ前記回転ピン側、すなわち、軸方向下方に、所定間隔をあけてそれぞれ固定されている。換言すると、編み込み棒に、編み込み棒の軸方向に所定間隔をあけて2本ずつ、かつ、周方向に所定間隔をあけて5カ所に、合計10本固定されている。
【0073】
本実施形態においては、軸方向上側の固定ピンFを固定ピンFa、Fc、Fe、Fg、Fi、軸方向下側の固定ピンFを固定ピンFb、Fd、Ff、Fh、Fjとする。また、回転ピンR1〜R10は前述した第一実施形態と同様に、回転台302の径方向に突出して回転台302の周方向に等間隔に固定されている。初期状態において、固定ピンFa〜Fjが、回転ピンR1〜R10のうち、一つおきに並んだ回転ピンR1、R3、R5、R7、R9と周方向において同じ位置に、かつ、編み込み棒の軸方向に所定間隔をあけて配置されている。すなわち、固定ピンFa、Fc、Fe、Fg、Fiと周方向同じ位置に回転ピンR1、R3、R5、R7、R9が固定され、隣り合う固定ピンFの周方向中間位置にR2、R4、R6、R8、R10が固定されている。また、固定ピンFa〜Fjに掛けられるワイヤーWをワイヤーW1〜W10とする。
【0074】
(初期状態)
初期状態とするには、まず、
図16に示すように、固定ピンFにワイヤーWをかける。ワイヤーWは編み込み棒の周方向において同じ位置に固定された固定ピンF及び回転ピンRをまたぐように、二つ折りにされた二つ折り部分Wc(W1c〜W10c)が固定ピンFに掛けられる。具体的には、
図16に示すように、固定ピンFa、Fc、Fe、Fg、Fiに掛けられたワイヤーWは回転ピンR1、R3、R5、R7、R9をまたぐように掛けられ、固定ピンF1b、Fd、Ff、Fh、Fjに掛けられたワイヤーWも同様に、回転ピンR1、R3、R5、R7、R9をまたぐように掛けられる。すなわち、初期状態においては、どのワイヤーWも回転ピンR2、R4、R6、R8、R10をまたいでいない。
【0075】
(第一手順)
次に、第一手順を行う。第一手順により、
図16の初期状態から、
図17の第一手順後の状態となる。第一手順は、以下のステップEを周方向一方側又は他方側に一周して、回転ピンRから離れた側(軸方向上側)に固定された全ての固定ピンFにおいてステップEを行う。ステップEは、固定ピンFのうち回転ピンRから離れた側に固定された固定ピンFに掛けられたワイヤーWであり、かつ、周方向に隣り合う固定ピンF同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、一方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの他方側部分と、他方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの一方側部分とを、一方側部分が径方向外側になるように交差させて、周方向に隣り合う固定ピン同士の周方向中間位置に固定された回転ピンの、一方側に一方側部分を掛け、他方側に他方側部分を掛けるというものである。
【0076】
具体的には、まず、
図16に示すように、固定ピンFaと固定ピンFcの間に垂れているワイヤーW1とワイヤーW3のうち、左側に位置する固定ピンFaに掛けられたワイヤーW1の右側部分W1bと右側に位置する固定ピンFcに掛けられたワイヤーW3の左側部分W3aとを交差する。このとき、ワイヤーW3の左側部分W3aがワイヤーW1の右側部分W1bよりも径方向外側になるように交差させる。さらに、回転ピンR2の左側に左側部分W3aを掛け、回転ピンR2の右側に右側部分W1bを掛ける。以上をステップEとする。
【0077】
続いて、ステップEと同様の操作を固定ピンFaと固定ピンFcから時計回り(
図16の紙面左方向)に進んだ固定ピンFiと固定ピンFaとの間に垂れているワイヤーW9とワイヤーW1との間で行い、回転ピンR10の左側にワイヤーW1の左側部分W1aを掛け、回転ピンR10の右側にワイヤーW9の右側部分W9bを掛ける。同様にして固定ピンFcと固定ピンFeとの間に垂れているワイヤーW3とワイヤーW5まで時計回りに進んで、回転ピンRから離れた側(上側)に固定され、隣り合う全ての固定ピンFの間に垂れているワイヤーWでステップEの操作を行う。なお、ステップEは、固定ピンFaと固定ピンFcから反時計回り(
図16の紙面右方向)に一周するように行ってもよい。
【0078】
図17に示すように、第一手順により、交差が1段形成される。このとき、ワイヤーW1、W3、W5、W7、W9はそれぞれ他のワイヤーWと交差しているが、ワイヤーW2、W4、W6、W8、W10は他のワイヤーと交差しておらず、初期状態と同じ状態である。
【0079】
(第二手順〜第五手順)
第二手順〜第五手順は、前述した第一実施形態と同様の手順で行うことができ、2段目、3段目の交差部分が形成される。第五手順後の状態は、
図18に示すとおりである。また、第二手順〜第五手順を、編み込み部分10aが所定の長さになるまで繰り返す。末端処理以降の工程は、第一実施形態と同様の手順で行うことができる。
【0080】
図3は、本実施形態の編み込み工程により作成された編み込み部分10cの一部を拡大してワイヤーWの交差状態を模式的に示す図である。
図3に示すように、ワイヤーWの二つ折り部分Wcが軸方向に二段(二つ折り部分W1c、W3c、W5c、W7c、W9cが上側、二つ折り部分W2c、W4c、W6c、W8c、W10cが下側)に並び、1段目の交差部分においては、ワイヤーW1、W3、W5、W7、W9同士のみが交差している。また、奇数段目(3段目、5段目・・・)の交差部分においては、右上から左下の延びるワイヤーW(ワイヤーWの左側部分W1a〜W10a)が径方向外側に位置し、偶数段目(2段目、4段目、6段目・・・)の交差部分においては、左上から右下に延びるワイヤーW(ワイヤーWの右側部分W1b〜W10b)が径方向外側に位置している。
【0081】
軸方向に複数の二つ折り部分Wcが並ぶように形成することにより、テンポラリーステントをより縮径しやすくなり、カテーテル等のパイプ状の部材に格納しやすくすることができる。また、本実施形態では、各手順に記載の「(周方向)一方側」を左側(
図14の紙面左側)、「(周方向)他方側」を右側(
図14の紙面右側)として製造されるが、左右を入れ替えても、すなわち、「一方側」を右側、「他方側」を左側としても同様にテンポラリーステントを製造することができる。
【0082】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法について説明する。本実施形態のテンポラリーステントの製造方法は、第二実施形態に示した編み込み工程において、第一手順を変更し、また、第二実施形態と同様に、第一実施形態の第二手順〜第五手順の順序を変更して製造するものである。前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、また、同じ手順については説明を省略する。
【0083】
本実施形態の製造方法により、編み込み部分10cと同様にワイヤーWの二つ折り部分Wcが軸方向に二段に並び、1段目の交差部分においては、ワイヤーW1、W3、W5、W7、W9同士のみが交差し、また、奇数段目(3段目、5段目・・・)の交差部分においては、左上から右下に延びるワイヤーW(ワイヤーWの右側部分W1b〜W10b)が径方向外側に位置し、偶数段目(2段目、4段目、6段目・・・)の交差部分においては、右上から左下の延びるワイヤーW(ワイヤーWの左側部分W1a〜W10a)が径方向外側に位置しているテンポラリーステントが製造される。すなわち、
図3に示された編み込み部分10cとは、奇数段目と偶数段目の交差部分における、径方向外側に位置するワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bが逆の状態となる。
【0084】
(第一手順)
本実施形態の第一手順は、以下のステップGを周方向一方側又は他方側に一周して、回転ピンRから離れた側(軸方向上側)に固定された全ての固定ピンFにおいてステップGを行う。ステップGは、固定ピンFのうち回転ピンRから離れた側に固定された固定ピンFに掛けられたワイヤーWであり、かつ、周方向に隣り合う固定ピンF同士の間に垂れている2本のワイヤーWのうち、一方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの他方側部分と、他方側の固定ピンFに掛けられたワイヤーWの一方側部分とを、他方側部分が径方向外側になるように交差させて、周方向に隣り合う固定ピン同士の周方向中間位置に固定された回転ピンの、一方側に一方側部分を掛け、他方側に他方側部分を掛けるというものである。なお、本実施形態では、「(周方向)一方側」を左側、「(周方向)他方側」を右側とする。
【0085】
(第二手順〜第五手順)
本実施形態の第二手順〜第五手順は、第一実施形態の第二手順〜第五手順と、それぞれの操作は同一であるが、実施する順序が第一実施形態とは異なる。すなわち、第二手順、第五手順、第四手順、第三手順の順に、編み込み部分が所定の長さになるまで繰り返す。また、末端処理以降の工程は、第一実施形態と同様の手順で行うことができる。
【0086】
軸方向に複数の二つ折り部分Wcが並ぶように形成することにより、テンポラリーステントをより縮径しやすくなり、カテーテル等のパイプ状の部材に格納しやすくすることができる。また、本実施形態では、各手順に記載の「(周方向)一方側」を左側、「(周方向)他方側」を右側として製造されるが、左右を入れ替えても、すなわち、「一方側」を右側、「他方側」を左側としても同様にテンポラリーステントを製造することができる。
【0087】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態にかかるテンポラリーステントの製造方法について説明する。本実施形態においては、前述したテンポラリーステント200Dを製造する場合について説明する。前述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、また、同じ手順については説明を省略する。なお、テンポラリーステント200Dは、ワイヤーWを10本用いて製造されているものとする。なお、本実施形態の製造方法で形成される編み込み部分10を編み込み部分10dとする。
【0088】
<編み込み工程>
本実施形態の編み込み工程について、
図4、
図19、
図20を参照して説明する。
図4は、本実施形態の編み込み工程により作成された編み込み部分10dの一部を拡大してワイヤーWの公差状態を模式的に示す図である。また、
図19は、編み込み棒301Dに固定ピンF及び型付けピンMが固定された状態を示す図であり、
図20は、本実施形態の編み込み工程における編み込み具300DとワイヤーWの状態を模式的に示す図である。
【0089】
本実施形態の編み込み具300Dの編み込み棒301Dには、
図19に示すように、10本の固定ピンF(F1〜F10)と、20本の型付けピンM(M1a〜M10a、M1b〜M10b)と、が固定されている。固定ピンF1〜F10は、編み込み棒301Dの軸方向の同じ位置に所定の間隔をあけて10本設けられ、その数は、ワイヤーW(W1〜W10)と同数である。また、型付けピンM1a〜M10a、M1b〜M10bは、固定ピンF1〜F10の周方向両側にそれぞれ隣接して設けられている。すなわち、固定ピンF1〜F10の左側に隣接して型付けピンMa(M1a〜M10a)が固定され、固定ピンF1〜F10の右側に隣接して型付けピンMb(M1b〜M10b)が固定されている。また、固定ピンF1〜F10、型付けピンM1a〜M10a、M1b〜M10bの中心は軸方向の同じ位置になるように固定されている。また、固定ピンFと隣接して設けられた型付けピンMとは、その間にワイヤーWを配索可能な程度に離隔して配置されている。
【0090】
(初期状態)
編み込み具300DにワイヤーWを掛け、編み込み工程の初期状態とする。初期状態とするには、まず、固定ピンF1〜F10にワイヤーW1〜W10をかける。このとき、ワイヤーW1〜W10の二つ折り部分を固定ピンF1〜F10にかける。そして、ワイヤーWの左側部分Wa(W1a〜W10a)をそれぞれ、固定ピンF1〜F10と型付けピンM1a〜M10aの間に通して配索し、ワイヤーWの右側部分Wb(W1b〜W10b)をそれぞれ、固定ピンF1〜F10と型付けピンM1b〜M10bの間に通して配索する。さらに、前述した実施形態と同様に、ワイヤーW1〜W10はそれぞれ、回転ピンR1〜R10をまたぐように配置される。このとき、ワイヤーW1〜W10はそれぞれ軸方向に沿って垂れている。すなわち、
図7は型付けピンMを用いない実施形態を示す図であるが、ワイヤーW、回転ピンRは
図7と同様の状態となる。
【0091】
第一手順以降の工程は、前述した第一実施形態と同様の工程に従って行うことができる。なお、焼き入れ工程においては、ピンPの他に、型付けピンMに相当する位置にピンを立てて、アール部分Wdの形状が保たれるようにすることが好ましい。
【0092】
編み込み工程の手順が進み、編み込み部分10dが形成されるにしたがって、
図20に示すように、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bの間のそれぞれの角度が初期状態よりも大きくなり、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bが型付けピンM1a〜M10a、M1b〜M10bの下側の一部分に沿って配索され、ワイヤーWの二つ折り部分が固定ピンF1〜F10、型付けピンM1a〜M10a、M1b〜M10bの形状に沿った形状、すなわち、アール部分Wd(W1d〜W10d)を有する形状となる。この状態で、焼き入れ工程に供されることにより、ワイヤーWの二つ折り部分がアール部分Wdを有する形状に記憶される。
【0093】
本実施形態によれば、固定ピンFの周方向両側に型付けピンMを固定し、編み込み工程において、ワイヤーWが固定ピンFと型付けピンとの間を通り、型付けピンMの下側の一部分に沿うように、ワイヤーWを配索する。これにより、型付けピンMを設けない場合に比べて、ワイヤーWの二つ折り部分がより小さいアール部分Wdを有するようにテンポラリーステント200Dを形成することができる。よって、製造されたテンポラリーステント200Dがより縮径しやすくなり、カテーテル等のパイプ状の部材に格納しやすくすることができる。
【0094】
また、ワイヤーWの左側部分W1a〜W10aと右側部分W1b〜W10bのどちらが径方向外側になるかが編み込み部分10dとは異なるが、第一手順以降の工程は、第二実施形態に従ってもよい。また、固定ピンF1〜F10を軸方向に二段に設けて、第三実施形態、第四実施形態に従って行ってもよい。
【0095】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0096】
本発明のテンポラリーステントの製造方法の編み込み工程、焼き入れ工程において、編み込み棒301や焼き入れ用型400に編み込み部分10を固定するために、不図示の針金等を用いて適宜固定してもよい。
【0097】
編み込み工程の第一手順、第三手順、及び第五手順のときに、編み込み棒301を周方向に回転させて、作業者が周方向における同じ位置で作業を行ってもよいし、編み込み棒301を回転させずに作業者が周方向に移動して作業を行ってもよい。編み込み棒301を回転させて製造する場合、編み込み棒301を回転させやすくするために、支持台303との編み込み棒301との間にベアリング(不図示)設けておいてもよい。
【0098】
また、編み込み工程の第二手順、第四手順において、回転台302を周方向に回転させるとともに、軸方向下方に移動させてもよい。これにより、固定ピンFと回転ピンRとの間の距離が長くなり、上下に隣り合う段の交差部分同士の距離が短くなりすぎることなく、ワイヤーWへの負担を軽減することができる。
【0099】
本発明のテンポラリーステントの製造方法において、ワイヤーWの種類、材料や本数、テンポラリーステントの寸法(本体部の径寸法、本体部の長手方向の寸法、支柱部の長手方向の寸法等)は適宜変更することができる。これにより、固定ピンF、回転ピンR、編み込み棒301、焼き入れ用型400等の製造に用いられる器具の寸法も適宜変更してもよい。また、ワイヤーWの本数を変えることにより、第二手順、第四手順において、「半ピン分」の角度が変わることから、回転台を回転させる角度を適宜設定する必要がある。
【0100】
また、
図2に示したテンポラリーステント200A、200Bのように、テンポラリーステントの一部分に、径寸法が異なる縮径部分や、径が徐々に大きく、または、小さくなるテーパ状の部分を形成してもよい。また、テーパ状の部分はテンポラリーステントの端部に形成されてもよい。この場合、
図21に示すように、焼き入れ工程において用いる焼き入れ用型の形状を変えることで縮径部分や拡径部分を形成することができる。
図21(a)は、テンポラリーステント200Aを製造するための焼き入れ用型400Aを示す図であり、
図21(b)は、テンポラリーステント200Bを製造するための焼き入れ用型400Bの一部を示す図である。
【0101】
図21(a)に示すように、焼き入れ用型400Aは、テンポラリーステント200Aの本体部201の内形に沿った形状の円柱部分401と、尾部202の内形に沿った形状のテーパ部分403と、支柱部203の内形に沿った形状の縮径部分404と、を有する。また、円柱部分401、縮径部分404には、ピンPを立てるための孔402が複数設けられている。
【0102】
図21(b)に示すように、焼き入れ用型400Bは、テンポラリーステント200Bの第一の本体部205の内形に沿った形状の円柱部分401の端部に、端部205aに沿ったテーパ部分406を有する。また、円柱部分401、テーパ部分406には、ピンPを立てるための孔402、407が複数設けられている。
【0103】
円柱部と、支柱部等の縮径部分やテーパ部分等との境界部分、すなわち、テンポラリーステントの径寸法が変わる部分においては、ワイヤーW同士が交差する角度が変化することから、編み込み部分10を焼き入れ用型400に固定するときに、焼き入れ用型400に合わせて編み込み部分10のワイヤーW同士の交差角度を整えることが好ましい。
【0104】
以上に示したように、焼き入れ用型の形状を種々変更することにより、形状の異なるテンポラリーステントを製造することができる。
【0105】
また、テンポラリーステントの編み込み部分においては、通常、ワイヤーWがテンポラリーステントの軸方向に対して斜行するようにワイヤーW同士が編み込まれているが、
図22に示すように、編み込み部分10の一部において、ワイヤーWがテンポラリーステントの軸方向と同じ方向に沿って配索されるストレート部分30を有するように形成してもよい。
【0106】
具体的には、
図23(a)、
図23(b)に示すように、焼き入れ工程において、編み込み部分10を焼き入れ用型にピンPで固定するときに、軸方向上下に隣り合う交差部分(
図23のS、Tで示す部分)の間の寸法を長くして、また、編み込み部分のワイヤーW同士の角度を調整し、その状態を保つように編み込み部分をピンPで固定して焼き入れを行う。このとき、ストレート部分の上側の交差部分Sにおいては、交差部分Sの下側から、下側の交差部分Tにおいては、交差部分Tの上側から交差部分S、Tを支持するようにピンPで固定することが好ましい。
【0107】
テンポラリーステントがストレート部分30を有することにより、ストレート部分30で切断してパイプ状部材の内側部分にテンポラリーステントを溶着加工する場合などに、加工するまでテンポラリーステントの形状を崩すことなく保管することができる。
【0108】
本発明のテンポラリーステントの製造方法において、さらに、グラフト(人口血管)を接合する工程を行うことにより、ステントグラフトを製造することができる。
【0109】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0110】
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【解決手段】編み込み具を用いて、複数の前記ワイヤーを組み紐状に編み込んで編み込み部分を作成する編み込み工程と、複数の前記ワイヤーの隣り合うワイヤー同士を捩って捩り部分を作成して、複数の前記ワイヤーの末端を処理する末端処理工程と、組み紐状に編み込まれた複数の前記ワイヤーを熱処理して複数の前記ワイヤーが所定の形状に記憶される焼き入れ工程と、を備える。