特許第6072993号(P6072993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072993作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6072993
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20170123BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20170123BHJP
   G05G 9/047 20060101ALI20170123BHJP
   G05G 1/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   E02F9/20 M
   E02F9/20 K
   E02F3/43 C
   G05G9/047
   G05G1/06
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-535074(P2016-535074)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2016061541
【審査請求日】2016年9月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横尾 貴史
(72)【発明者】
【氏名】島野 佑基
(72)【発明者】
【氏名】中川 智裕
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−278208(JP,A)
【文献】 特開平10−008493(JP,A)
【文献】 特開2000−163145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/20
E02F 3/43
G05G 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
前記作業機の第1操作レバーと、
前記第1操作レバーに設けられた第1操作部材と、
前記作業機の自動制御を行うコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて、前記第1操作部材に割り当てられた前記自動制御の機能を実行する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記自動制御において、作業対象の目標形状を表す設計地形に基づいて前記作業機を制御する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて前記設計地形の位置を変更する、
請求項2に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記第1操作部材は、前記自動制御の第1の機能を実行させるための操作部材であり、
前記自動制御の前記第1の機能と異なる第2の機能を実行させるための第2操作部材をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記実行条件が満たされているときに、前記第2操作部材の操作に応じて前記自動制御を有効化、又は、無効化する、
請求項4に記載の作業車両の制御システム。
【請求項6】
前記第1操作部材と前記第2操作部材とは、共に前記第1操作レバーに設けられ、
前記コントローラは、前記実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて前記第1の機能を実行し、前記実行条件が満たされているときに、前記第2操作部材の操作に応じて前記第2の機能を実行する、
請求項4に記載の作業車両の制御システム。
【請求項7】
前記第2操作部材が設けられる第2操作レバーをさらに備える、
請求項4に記載の作業車両の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1操作レバーが中立位置にあることを含む第1の実行条件が満たされているときに前記第1操作部材の操作に応じて前記第1の機能を実行し、前記第2操作レバーが中立位置にあることを含む第2の実行条件が満たされているときに前記第2操作部材の操作に応じて前記第2の機能を実行する、
請求項7に記載の作業車両の制御システム。
【請求項9】
前記実行条件は、前記第1操作レバーが中立位置にあること、及び、前記第2操作レバーが中立位置にあることを含み、
前記コントローラは、前記実行条件が満たされているときに前記第1操作部材の操作に応じて前記第1の機能を実行し、前記実行条件が満たされたときに前記第2操作部材の操作に応じて前記第2の機能を実行する、
請求項7に記載の作業車両の制御システム。
【請求項10】
前記第1操作レバーに設けられた第3操作部材をさらに備え、
前記実行条件は、前記第3操作部材が操作されていることをさらに含む、
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両の制御システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記第1操作レバーが中立位置にあること、及び、前記第3操作部材が操作されていないことを含む第1の実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて前記自動制御の第1の機能を実行し、前記第1操作レバーが中立位置にあること、及び、前記第3操作部材が操作されていることを含む第3の実行条件が満たされているときには、前記第1操作部材の操作に応じて前記第1の機能と異なる第3の機能を実行する、
請求項10に記載の作業車両の制御システム。
【請求項12】
作業機を有する作業車両の制御方法であって、
前記作業機の第1操作レバーの位置を示す位置信号を受信するステップと、
前記第1操作レバーに設けられた第1操作部材の操作を示す操作信号を受信するステップと、
オペレータによる前記第1操作レバーの操作がないことを含む実行条件が満たされているか否かを判定するステップと、
前記実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて前記第1操作部材に割り当てられた前記作業機の自動制御の機能を実行するステップと、
を備える作業車両の制御方法。
【請求項13】
作業機と、
前記作業機の第1操作レバーと、
前記第1操作レバーに設けられたた第1操作部材と、
前記作業機の自動制御を行うコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、前記第1操作部材の操作に応じて前記第1操作部材に割り当てられた前記自動制御の機能を実行する、
作業車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両の制御システムには、作業機の自動制御を行うものがある。例えば、特許文献1の油圧ショベルでは、作業機のバケットが、予め設定された設計地形を超えないように作業機が制御される。
【0003】
また、作業車両の制御システムには、自動制御の機能を操作するための操作部材が設けられている。例えば上述した油圧ショベルでは、設計地形の位置を変更するための操作部材が設けられており、操作部材は、作業機の操作レバーの後方に配置されたコンソールボックスに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3869792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した油圧ショベルのように、自動制御の操作部材がコンソールボックスに設けられている場合、作業車両のオペレータは、作業機の操作レバーから手を離して操作部材を操作する必要がある。そのため、操作部材を操作するための動作が多くなり、煩雑である。
【0006】
本発明の課題は、自動制御の機能を容易に操作することができる作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る作業車両の制御システムは、作業機の第1操作レバーと、第1操作部材と、コントローラとを備える。第1操作部材は、第1操作レバーに設けられる。コントローラは、作業機の自動制御を行う。コントローラは、第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能を実行する。
【0008】
本態様に係る作業車両の制御システムでは、第1操作部材が第1操作レバーに設けられている。そのため、オペレータは、第1操作レバーを握ったまま、第1操作部材を操作することができる。これにより、自動制御の機能を容易に操作することができる。
【0009】
また、第1操作部材が第1操作レバーに設けられる場合、第1操作部材の操作中に、誤操作により第1操作レバーが動くことが懸念される。その場合、第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能の実行と、第1操作レバーによる作業機の動作とが同時に行われることにより、オペレータが意図しない作業機の動作が起きる可能性がある。そのような意図しない動作が起きると、自動制御による品質の良い施工を行うことが困難になる。
【0010】
そこで、本態様に係る作業車両の制御システムでは、第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能が実行される。そのため、第1操作部材の操作中に第1操作レバーが動いたとしても、第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能の実行と、第1操作レバーによる作業機の動作とが同時に行われることを防止することができる。それにより、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0011】
コントローラは、自動制御において、作業対象の目標形状を表す設計地形に基づいて作業機を制御してもよい。この場合、自動制御によって設計地形に従った品質の良い施工を行うことができる。
【0012】
コントローラは、実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて設計地形の位置を変更してもよい。この場合、オペレータは、第1操作部材を操作することで、第1操作レバーを握ったまま、容易に設計地形の位置を変更することができる。また、第1操作部材によって設計地形の位置を変更しようとしているときに、誤操作によって第1操作レバーが中立位置から動いても、設計地形の位置の変更は実行されない。或いは、第1操作レバーの操作中に、誤って第1操作部材が操作されても、設計地形の位置の変更は実行されない。そのため、作業機が設計地形を超えて地面を掘り込んでしまうことを抑えることができる。
【0013】
第1操作部材は、自動制御の第1の機能を実行させるための操作部材であってもよい。作業車両の制御システムは、自動制御の第2の機能を実行させるための第2操作部材をさらに備えてもよい。第2の機能は、第1の機能と異なってもよい。この場合、オペレータは第1、第2操作部材によって、自動制御の複数の機能の実行を操作することができる。
【0014】
コントローラは、実行条件が満たされているときに、第2操作部材の操作に応じて自動制御を有効化、又は、無効化してもよい。この場合、オペレータは、第2操作部材を操作することで、第1操作レバーを握ったまま、自動制御を有効化、又は、無効化することができる。
【0015】
第1操作部材と第2操作部材とは、共に第1操作レバーに設けられてもよい。コントローラは、実行条件が満たされているときに第1操作部材の操作に応じて第1の機能を実行してもよい。コントローラは、実行条件が満たされているときに第2操作部材の操作に応じて第2の機能を実行してもよい。
【0016】
この場合、オペレータは、第1操作レバーを握ったまま、第1操作部材と第2操作部材とを容易に操作することができる。また、第1操作レバーが操作されているときには、第1操作部材が操作されても第1の機能は実行されず、第2操作部材が操作されても第2の機能は実行されない。そのため、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0017】
作業車両の制御システムは、第2操作レバーをさらに備えてもよい。第1操作部材が第1操作レバーに設けられ、第2操作レバーに第2操作部材が設けられてもよい。この場合、オペレータは、第1操作レバーを握ったまま、第1操作部材を容易に操作することができる。また、オペレータは、第2操作レバーを握ったまま、第2操作部材を容易に操作することができる。
【0018】
コントローラは、第1操作レバーが中立位置にあることを含む第1の実行条件が満たされているときに第1操作部材の操作に応じて第1の機能を実行してもよい。コントローラは、第2操作レバーが中立位置にあることを含む第2の実行条件が満たされているときに第2操作部材の操作に応じて第2の機能を実行してもよい。
【0019】
この場合、第1操作レバーが操作されているときには、第1操作部材が操作されても、第1の機能は実行されない。また、第2操作レバーが操作されているときには、第2操作部材が操作されても、第2の機能は実行されない。そのため、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0020】
実行条件は、第1操作レバーが中立位置にあること、及び、第2操作レバーが中立位置にあることを含んでもよい。コントローラは、実行条件が満たされているときに第1操作部材の操作に応じて第1の機能を実行してもよい。コントローラは、実行条件が満たされているときに第2操作部材の操作に応じて第2の機能を実行してもよい。
【0021】
この場合、第1操作レバーと第2操作レバーとの少なくとも一方が操作されているときには、第1操作部材が操作されても、第1の機能は実行されない。また、第1操作レバーと第2操作レバーとの少なくとも一方が操作されているときには、第2操作部材が操作されても、第2の機能は実行されない。そのため、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0022】
作業車両の制御システムは、第1操作レバーに設けられた第3操作部材をさらに備えてもよい。実行条件は、第3操作部材が操作されていることをさらに含んでもよい。この場合、第1操作レバーが中立位置にあり、且つ、第3操作部材が操作されている状態で、第1操作部材が操作されることによって、第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能が実行される。そのため、誤操作による意図しない作業機の動作をさらに精度良く防止することができる。
【0023】
コントローラは、第1の実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて自動制御の第1の機能を実行してもよい。第1の実行条件は、第1操作レバーが中立位置にあること、及び、第3操作部材が操作されていないことを含んでもよい。コントローラは、第3の実行条件が満たされているときには、第1操作部材の操作に応じて第1の機能と異なる第3の機能を実行してもよい。第3の実行条件は、第1操作レバーが中立位置にあること、及び、第3操作部材が操作されていることを含む。
【0024】
この場合、第3操作部材の操作の有無に応じて、第1操作部材によって、第1機能と第2機能とを実行させることができる。これにより、少ない操作部材によって多くの機能を操作することができる。
【0025】
第2の態様に係る作業車両の制御方法は以下のステップを備える。第1ステップでは、作業機の第1操作レバーの位置を示す位置信号を受信する。第2ステップでは、第1操作レバーに設けられた第1操作部材の操作を示す操作信号を受信する。第3ステップでは、オペレータによる第1操作レバーの操作がないことを含む実行条件が満たされているか否かを判定する。第4ステップでは、上記の実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて第1操作部材に割り当てられた作業機の自動制御の機能を実行する。
【0026】
本態様に係る作業車両の制御方法では、第1操作レバーに設けられた第1操作部材に、作業機の自動制御の機能が割り当てられている。そのため、オペレータは、第1操作レバーを握ったまま、第1操作部材を操作することができる。これにより、自動制御の機能を容易に操作することができる。
【0027】
また、第1操作部材の操作中に第1操作レバーが動いたとしても、第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能は実行されない。そのため、自動制御の機能の実行と、第1操作レバーによる作業機の動作とが同時に行われることを防止することができる。それにより、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0028】
第3の態様に係る作業車両は、作業機と、作業機の第1操作レバーと、第1操作部材と、コントローラとを備える。第1操作部材は、第1操作レバーに設けられている。コントローラは、作業機の自動制御を行う。コントローラは、第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能を実行する。
【0029】
本態様に係る作業車両では、第1操作部材が第1操作レバーに設けられている。そのため、オペレータは、第1操作レバーを握ったまま、第1操作部材を操作することができる。これにより、自動制御の機能を容易に操作することができる。
【0030】
また、第1操作部材の操作中に第1操作レバーが動いたとしても、第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能は実行されない。そのため、自動制御の機能の実行と、第1操作レバーによる作業機の動作とが同時に行われることが防止される。それにより、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明よれば、自動制御の機能を容易に操作することができると共に、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態に係る作業車両の斜視図である。
図2】作業車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の構成を模式的に示す側面図である。
図4】設計地形の一例を示す模式図である。
図5】コントローラの構成を示すブロック図である。
図6】作業機と設計面との間の距離を示す模式図である。
図7】整地制御での作業機の速度制御を示す図である。
図8】案内画面の一例を示す図である。
図9】第1操作レバーを示す図である。
図10】第2操作レバーを示す図である。
図11】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
図12】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
図13】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
図14】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
図15】操作部材の操作時の処理を示すフローチャートである。
図16】角度保持制御時の作業機の動作を示す図である。
図17】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
図18】操作部材の操作時の案内画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業車両100の斜視図である。本実施形態において、作業車両100は油圧ショベルである。作業車両100は、車両本体1と、作業機2とを有する。
【0034】
車両本体1は、旋回体3と走行装置5とを有する。旋回体3は、後述するエンジン及び油圧ポンプなどを収容している。旋回体3には運転室4が載置されている。走行装置5は履帯5a,5bを有しており、履帯5a,5bが回転することにより作業車両100が走行する。
【0035】
作業機2は、車両本体1に取り付けられている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8と、を有する。ブーム6の基端部は、車両本体1の前部に動作可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、ブーム6の先端部に動作可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケット8が動作可能に取り付けられている。
【0036】
なお、バケット8は、作業具の一例である。バケット8以外の作業具がアーム7の先端部に取り付けられてもよい。
【0037】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12と、を有する。ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ作動油によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。
【0038】
図2は、作業車両100の駆動系200と制御システム300との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系200は、エンジン21と、油圧ポンプ22,23とを備える。
【0039】
油圧ポンプ22,23は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ22,23から吐出された作動油は、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とに供給される。また、作業車両100は、旋回モータ24を備える。旋回モータ24は、油圧モータであり、油圧ポンプ22,23から吐出された作動油によって駆動される。旋回モータ24は、旋回体3を旋回させる。
【0040】
なお、図2では、2つの油圧ポンプ22,23が図示されているが、1つの油圧ポンプのみが設けられてもよい。旋回モータ24は、油圧モータに限らず、電気モータであってもよい。
【0041】
制御システム300は、操作装置25と、コントローラ26と、制御弁27とを備える。操作装置25は、作業機2を操作するための装置である。操作装置25は、作業機2を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作量に応じた位置信号を出力する。操作装置25は、第1操作レバー28と第2操作レバー29とを有する。
【0042】
第1操作レバー28は、前後左右の4方向に操作可能に設けられている。第1操作レバー28の4つの操作方向のうち2つが、ブーム6の上げ操作と下げ操作とに割り当てられている。第1操作レバー28の残りの2つの操作方向が、バケット8の上げ操作と下げ操作とに割り当てられている。
【0043】
第2操作レバー29は、前後左右の4方向に操作可能に設けられている。第2操作レバー29の4つの操作方向のうち2つが、アーム7の上げ操作(アームダンプ操作)と下げ操作(アーム掘削操作)とに割り当てられている。第2操作レバー29の残りの2つの操作方向が、旋回体3の右旋回操作と左旋回操作とに割り当てられている。
【0044】
なお、第1操作レバー28と第2操作レバー29とに割り当てられる操作内容は、上記のものに限らず、変更されてもよい。
【0045】
操作装置25は、ブーム操作部31とバケット操作部32とを有する。ブーム操作部31は、ブーム6を操作するための第1操作レバー28の操作量(以下、「ブーム操作量」と呼ぶ)に応じた位置信号を出力する。バケット操作部32は、バケット8を操作するための第1操作レバー28の操作量(以下、「バケット操作量」と呼ぶ)に応じた位置信号を出力する。
【0046】
操作装置25は、アーム操作部33と旋回操作部34とを有する。アーム操作部33は、アーム7を操作するための第2操作レバー29の操作量(以下、「アーム操作量」と呼ぶ)に応じた位置信号を出力する。旋回操作部34は、旋回体3の旋回を操作するための第2操作レバー29の操作量に応じた位置信号を出力する。各操作部31−34からの位置信号は、コントローラ26に入力される。
【0047】
コントローラ26は、取得した情報に基づいて作業車両100を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶部38と演算部35とを有する。記憶部38は、例えばRAM及びROMなどのメモリーと、補助記憶装置とから構成される。演算部35は、例えばCPU等の処理装置によって構成される。コントローラ26は、ブーム操作部31、アーム操作部33、バケット操作部32、及び、旋回操作部34からの位置信号を取得する。コントローラ26は、これらの位置信号に基づいて、制御弁27を制御する。
【0048】
制御弁27は、電磁比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及び旋回モータ24などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ22,23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ22,23からブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及び、旋回モータ24に供給される作動油の流量を制御する。
【0049】
コントローラ26は、上述した各操作レバー28,29の操作量に応じた速度で作業機2が動作するように、制御弁27への指令信号を制御する。これにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及び旋回モータ24などの出力が、各操作レバー28,29の操作量に応じて、制御される。
【0050】
なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。その場合、ブーム操作部31とバケット操作部32とアーム操作部33と旋回操作部34からは、各操作部材の操作量に応じたパイロット圧が出力され、制御弁27に入力される。制御弁27は、入力されたパイロット圧に応じて、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及び、旋回モータ24に供給される作動油の流量を制御する。この場合、各操作部31−34からの位置信号は、各操作部31−34から出力されるパイロット圧を示す信号であってもよい。
【0051】
制御システム300は、第1ストロークセンサ16と第2ストロークセンサ17と第3ストロークセンサ18とを有する。第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のストローク長さ(以下、「ブームシリンダ長」という。)を検出する。第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11のストローク長さ(以下、「アームシリンダ長」という。)を検出する。第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のストローク長さ(以下、「バケットシリンダ長」という。)を検出する。ストロークの計測には角度センサ等を用いてもよい。
【0052】
制御システム300は、傾斜角度センサ19を備える。傾斜角度センサ19は、旋回体3に配置される。傾斜角度センサ19は、旋回体3の車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を検出する。
【0053】
これらのセンサ16−19は、検出信号をコントローラ26に送る。なお、旋回角度は後述するGNSSアンテナ37の位置情報より取得してもよい。コントローラ26は、センサ16−19からの検出信号に基づいて、作業機2の姿勢を判定する。
【0054】
制御システム300は、位置検出部36を備えている。位置検出部36は、作業車両100の現在位置を検出する。位置検出部36は、GNSSアンテナ37と3次元位置センサ39とを有する。GNSSアンテナ37は、旋回体3に設けられている。GNSSアンテナ37は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう。)用のアンテナである。GNSSアンテナ37で受信されたGNSS電波に応じた信号が、3次元位置センサ39に入力される。
【0055】
図3は、作業車両100の構成を模式的に示す側面図である。3次元位置センサ39は、グローバル座標系におけるGNSSアンテナ37の設置位置P1を検出する。グローバル座標系は、作業エリアに設置した基準位置P2を元にした3次元座標系である。図3に示すように、基準位置P2は、例えば、作業エリアに設定された基準杭の先端に位置する。コントローラ26は、位置検出部36による検出結果と作業機2の姿勢とに基づいて、グローバル座標系で見たときの作業機2の刃先P4の位置を演算する。なお、作業機2の刃先P4は、バケット8の刃先P4と表現してもよい。
【0056】
コントローラ26は、第1ストロークセンサ16が検出したブームシリンダ長から、ローカル座標系の垂直方向に対するブーム6の傾斜角θ1を算出する。コントローラ26は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2を算出する。コントローラ26は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8の傾斜角θ3を算出する。
【0057】
コントローラ26の記憶部38は、作業機データを記憶している。作業機データは、ブーム6の長さL1、アーム7の長さL2、バケット8の長さL3を含む。また、作業機データは、ローカル座標系の基準位置P3に対するブームピン13の位置情報を含む。ここでローカル座標系とは作業車両100を基準とする3次元座標系である。ローカル座標系の基準位置P3は、例えば、旋回体3の旋回中心に位置する。
【0058】
コントローラ26は、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、バケット8の傾斜角θ3、ブーム6の長さL1、アーム7の長さL2、バケット8の長さL3、及び、ブームピン13の位置情報から、ローカル座標系における刃先P4の位置を算出する。
【0059】
また、作業機データは、ローカル座標系の基準位置P3に対するGNSSアンテナ37の設置位置P1の位置情報を含む。コントローラ26は、位置検出部36による検出結果とGNSSアンテナ37の位置情報とから、ローカル座標系における刃先P4の位置を、グローバル座標系における刃先P4の位置に変換する。これにより、コントローラ26は、グローバル座標系で見たときの刃先P4の位置情報を取得する。
【0060】
コントローラ26の記憶部38は、作業エリア内の3次元の設計地形の形状および位置を示す施工情報を記憶している。図4は、設計地形の一例を示す模式図である。図4に示すように、設計地形は、ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の設計面41によって構成されている。複数の設計面41それぞれは、作業機2による掘削対象の目標形状を示している。なお、図4では複数の設計面41のうちの1つのみに符号41が付されており、他の設計面41の符号は省略されている。
【0061】
コントローラ26は、設計面41を考慮に入れた作業機2の自動制御を行う。当該自動制御には、バケット8が設計面41を浸食すること防止するための作業機2の制御を含む。コントローラ26は、自動制御において、上述した施工情報と作業機2の位置情報とに基づいて作業機2を制御する。作業機2の自動制御とは、操作装置25を介したオペレータの操作指示に基づいた作業機2の動作制御とは別個に、コントローラ26が独自に行う作業機2の動作制御を意味する。作業機2の自動制御には、或る作業を実行する上での完全自動制御、及び半自動制御が含まれる。以下、コントローラ26によって実行される作業機2の自動制御について詳細に説明する。
【0062】
図5は、コントローラ26の構成を示すブロック図である。コントローラ26の演算部35は、距離取得部51と、作業局面判定部52と、自動制御部53と、作業機制御部54とを有する。距離取得部51は、図6に示すように、作業機2と設計面41との間の距離d1を取得する。詳細には、距離取得部51は、上述した作業機2の刃先P4の位置情報と、設計面41の位置情報とに基づいて、作業機2の刃先P4と設計面41との間の距離d1を算出する。
【0063】
作業局面判定部52は、作業機2による作業局面を判定する。作業局面判定部52は、上述したブーム操作部31、アーム操作部33、バケット操作部32からの位置信号に基づいて、作業機2による作業局面が、掘削、或いは整地などの作業であるのかを判定する。例えば、作業局面判定部52は、ブーム操作、又は、バケット操作が行われているが、アーム操作が行われていない場合に、作業局面が、掘削作業であると判定する。作業局面判定部52は、アーム操作が行われている場合に、作業局面が、整地作業であると判定する。
【0064】
作業局面が掘削作業であるときには、自動制御部53は、速度制限制御を行う。自動制御部53は、速度制限制御において、作業機2と設計面41との間の距離d1が小さくなるほど作業機2の速度を制限する。すなわち、自動制御部53は、速度制限制御において、作業機2と設計面41との間の距離d1が小さくなるほど作業機2の速度の上限を小さくする。これにより、掘削時に、作業機2が設計面41を超えて掘削してしまうことを抑えることができる。
【0065】
作業局面が整地作業であるときには、自動制御部53は、整地制御を実行する。整地制御は、作業機2が設計面41に沿って移動するように作業機2を制御する制御である。図7に示すように、作業機2の刃先P4が設計面41に近づくように速度V1で移動している場合、自動制御部53は、速度V1の設計面41に垂直な速度成分V1aを算出する。自動制御部53は、垂直な速度成分V1aを相殺するように、ブーム6を上昇させる速度を決定する。これにより、整地制御によって、刃先P4が設計面41に沿って移動するように、作業機2が制御される。
【0066】
作業機制御部54は、上述した制御弁27への指令信号を出力することで、作業機2を制御する。作業機制御部54は、作業機2の操作量に応じて、制御弁27への指令信号の出力値を決定する。また、作業機制御部54は、自動制御の実行中には、自動制御部53が決定した作業機2の速度に基づいて、制御弁27への指令信号の出力値を決定する。
【0067】
図2に示すように、制御システム300は、表示部40を備えている。表示部40は、例えばモニタであり、作業車両100に関する情報を表示する。コントローラ26は、設計地形や上述した各種のセンサからの検出結果などに基づいて、案内画面を表示部40に表示させる。図8は、案内画面61の一例を示す図である。図8に示すように、案内画面61は、設計面41と作業機2との位置関係を示している。
【0068】
詳細には、案内画面61は、第1案内画面62と第2案内画面63とを含む。第1案内画面62は、設計面41と作業機2とを側面図で示している。第2案内画面63は、設計面41と作業機2とを斜視図で示している。案内画面61は、作業機2と設計面41との間の距離を示す距離表示65を含む。なお、第1案内画面62と第2案内画面63との一方が省略されてもよい。
【0069】
図2に示すように、制御システム300は、入力部42を備えている。入力部42は、上述した自動制御の設定を入力するための装置である。オペレータは、入力部42を操作することによって、自動制御の設定を変更することができる。本実施形態において、入力部42は、表示部40と一体的に設けられたタッチパネル装置である。ただし、入力部42は、表示部40と別体に設けられてもよい。
【0070】
次に、第1操作レバー28及び第2操作レバー29による自動制御の操作について詳細に説明する。図9(A)は、第1操作レバー28の正面図である。図9(B)は、第1操作レバー28の側面図である。図9(A)及び図9(B)に示すように、第1操作レバー28には、複数の操作部材A1,A2,A3,A4,A5が設けられている。操作部材A1,A2,A3,A4は、第1操作レバー28の正面に設けられている。操作部材A1,A2,A3,A4は、第1操作レバー28の上部に設けられている。操作部材A5は、第1操作レバー28の背面に設けられている。
【0071】
操作部材A1,A2,A3は、押しボタン式のスイッチである。操作部材A1,A2,A3の押圧のON/OFFを示す操作信号が、操作部材A1,A2,A3からコントローラ26に入力される。操作部材A4は、スライド式、或いは回転式のスイッチである。操作部材A4の操作位置に応じた操作信号が操作部材A4からコントローラ26に入力される。操作部材A5はトリガー式のスイッチである。操作部材A5の押圧のON/OFFを示す操作信号が、操作部材A5からコントローラ26に入力される。
【0072】
図10(A)は、第2操作レバー29の正面図である。図10(B)は、第2操作レバー29の側面図である。図10(A)及び図10(B)に示すように、第2操作レバー29には、複数の操作部材B1,B2,B3,B4,B5が設けられている。操作部材B1,B2,B3,B4は、第2操作レバー29の正面に設けられている。操作部材B1,B2,B3,B4は、第2操作レバー29の上部に設けられている。操作部材B5は、第2操作レバー29の背面に設けられている。
【0073】
操作部材B1,B2,B3は、押しボタン式のスイッチである。操作部材B1,B2,B3の押圧のON/OFFを示す操作信号が、操作部材B1,B2,B3からコントローラ26に入力される。操作部材B4は、スライド式、或いは回転式のスイッチである。操作部材B4の操作位置に応じた操作信号が操作部材B4からコントローラ26に入力される。操作部材B5はトリガー式のスイッチである。操作部材B5の押圧のON/OFFを示す操作信号が、操作部材B5からコントローラ26に入力される。
【0074】
これらの操作部材A1−A5,B1−B5の一部には、自動制御の機能が割り当てられている。本実施形態においては、操作部材A2,B2,A5に、自動制御の機能が割り当てられている。
【0075】
なお、操作部材A2,B2,A5以外の操作部材には、作業機2に関する操作、及び、車両本体1に関する操作が割り当てられている。作業機2に関する操作は、例えば、バケット8に代えてブレーカ等の作業具が作業機2に設けられた場合の作業具の操作である。車両本体1に関する操作は、例えばエンジン出力を増大させる操作、或いは、警笛を鳴らす操作などである。
【0076】
詳細には、操作部材A2には、設計面41の位置を上昇させる機能が割り当てられている。操作部材A2が操作されることにより、設計面41の位置が上方に変更される。操作部材A2の一回の操作ごとに、設計面41の位置が、所定距離、上方に変更される。
【0077】
図11は、操作部材A2が1回、押されることによって、案内画面61において、設計面41が、当初の位置(図8参照)から上方に所定距離、移動した状態を示している。図12は、操作部材A2がさらにもう一回、押されることによって、案内画面61において、設計面41がさらに上方に所定距離、移動した状態を示している。
【0078】
操作部材B2には、設計面41の位置を下降させる機能が割り当てられている。操作部材B2が操作されることにより、設計面41の位置が下方に変更される。操作部材B2の一回の操作ごとに、設計面41の位置が、所定距離、下方に変更される。図13は、操作部材B2が一回、押されることによって、案内画面61において、設計面41が、当初の位置(図8参照)から下方に所定距離、移動した状態を示している。図14は、操作部材B2がさらにもう一回、押されることによって、案内画面61において、設計面41がさらに下方に所定距離、移動した状態を示している。
【0079】
以上のように、操作部材A2,B2が操作されることにより、案内画面61における設計面41の位置が上下に変更される。そして、変更された設計面41の位置に基づいて上述した自動制御が実行される。なお、上述した所定距離は入力部42の操作によって変更可能であってもよい。或いは、上述した所定距離は固定値であってもよい。
【0080】
操作部材A5には、自動制御の有効化/無効化の機能が割り当てられている。操作部材A5が操作されるごとに、自動制御の有効化と無効化とが交互に切り換えられる。自動制御の有効化は、自動制御が許可されることを意味している。自動制御の無効化は、自動制御が許可されず、作業機2の操作モードが、作業機2を手動で操作するマニュアルモードとなることを意味している。
【0081】
上述したように、オペレータは、操作部材A2,B2,A5を操作することによって、操作部材A2,B2,A5のそれぞれに割り当てられている自動制御の機能を実行させることができる。ただし、コントローラ26は、実行条件が満たされていることを条件として、操作部材A2,B2,A5に割り当てられた自動制御の機能を実行する。
【0082】
実行条件は、作業機2を動作させるためのオペレータによる操作レバーの操作がないことである。本実施形態において、実行条件は、第1操作レバー28が中立位置にあり、且つ、第2操作レバー29が中立位置にあることである。従って、第1操作レバー28と第2操作レバー29とが共に中立位置にあるときに、操作部材A2が操作されることで、設計面41の位置が上方に移動する。第1操作レバー28と第2操作レバー29とが中立位置にあるときに、操作部材B2が操作されることで、設計面41の位置が下方に移動する。第1操作レバー28と第2操作レバー29との少なくとも一方が中立位置と異なる位置に操作されているときには、操作部材A2、B2が操作されても、設計面41の位置は変更されない。
【0083】
また、第1操作レバー28と第2操作レバー29とが中立位置にあるときに、操作部材A5が操作されることで、自動制御の有効化/無効化が切り換えられる。第1操作レバー28と第2操作レバー29との少なくとも一方が中立位置と異なる位置に操作されているときには、操作部材A5が操作されても、自動制御の有効化/無効化は切り換えられない。
【0084】
図15は、上述した操作部材A2,B2,A5の操作時の処理を示すフローチャートである。ここでは一例として、操作部材A2が操作された場合について説明する。
【0085】
図15に示すように、ステップS1では、操作部材A2の操作が検出される。ここでは、コントローラ26が、操作部材A2からの操作信号を受信することで、操作部材A2の操作を検出する。
【0086】
ステップS2では、操作レバー28,29の位置が検出される。ここでは、コントローラ26が、第1操作レバー28の位置を示す位置信号を操作装置25から受信することで、第1操作レバー28の位置を検出する。また、コントローラ26が、第2操作レバー29の位置を示す位置信号を操作装置25から受信することで、第2操作レバー29の位置を検出する。
【0087】
ステップS3では、実行条件が満たされているか否かが判定される。ここでは、コントローラ26は、第1操作レバー28が中立位置にあり、且つ、第2操作レバー29が中立位置にあるか否かを判定する。第1操作レバー28と第2操作レバー29との両方が中立位置にある場合には、コントローラ26は、実行条件が満たされていると判定する。第1操作レバー28と第2操作レバー29との少なくとも一方が中立位置と異なる位置にある場合には、コントローラ26は、実行条件が満たされていないと判定する。
【0088】
実行条件が満たされているときには、ステップS4において、操作部材A2の機能が実行される。ここでは、コントローラ26は、設計面41の位置を上方に変更する。実行条件が満たされていないときには、操作部材A2が操作されていても、操作部材A2の機能は実行されない。すなわち、実行条件が満たされていないときには、操作部材A2が操作されていても、設計面41の位置は変更されない。
【0089】
なお、操作部材B2が操作された場合には、ステップS4において、設計面41の位置が下方に変更される。操作部材A5が操作された場合には、ステップS4において、自動制御の有効化と無効化とが切り換えられる。なお、操作部材A2,B2,A5に割り当てられている機能は、入力部42によっても操作可能である。
【0090】
以上説明した本実施形態に係る作業車両100の制御システム300では、操作部材A2、A5が第1操作レバー28に設けられている。そのため、オペレータは、第1操作レバー28を握ったまま、操作部材A2,A5を操作することができる。これにより、操作部材A2,A5に割り当てられた自動制御の機能を容易に操作することができる。同様に、操作部材B2が第2操作レバー29に設けられている。そのため、オペレータは、第2操作レバー29を握ったまま、操作部材B2を操作することができる。これにより、操作部材B2に割り当てられた自動制御の機能を容易に操作することができる。
【0091】
具体的には、オペレータは、第1操作レバー28と第2操作レバー29とを握ったまま、操作部材A2,B2を操作することで、設計面41の位置を上下に変更することができる。また、オペレータは、第1操作レバー28を握ったまま、操作部材A5を操作することで、自動制御の有効化と無効化とを切り換えることができる。
【0092】
また、第1操作レバー28と第2操作レバー29との少なくとも一方が中立位置と異なる位置にあるときには、操作部材A2,B2,A5が操作されても、各操作部材A2,B2,A5に割り当てられた自動制御の機能は実行されない。そのため、操作部材A2,B2,A5の操作中に第1操作レバー28又は第2操作レバー29が動いたとしても、各操作部材A2,B2,A5に割り当てられた自動制御の機能の実行と、第1操作レバー28又は第2操作レバー29による作業機2の動作とが同時に行われることを防止することができる。それにより、誤操作による意図しない作業機2の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【0093】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
作業車両100は、油圧ショベルに限らず、ブルドーザー、或いはホイールローダなどの作業機を有する車両であればよい。
【0095】
作業車両100は、遠隔操作可能であってもよい。すなわち、コントローラ26が、作業車両100の外部に配置されるリモートコントローラと、作業車両100の内部に配置される車載コントローラとに分けられて、互いに通信可能に構成されてもよい。
【0096】
作業機2の刃先P4の位置の決定方法は、上記の実施形態のものに限られず、変更されてもよい。例えば、作業機2の刃先P4に位置検出部36が配置されてもよい。
【0097】
作業機2と設計面41との間の距離d1の検出方法は、上記の実施形態のものに限られず、変更されてもよい。例えば、光学式、超音波式、或いはレーザー光線式の距離測定装置により、作業機2と設計面41との間の距離d1が検出されてもよい。
【0098】
各操作部材A2,B2,A5の操作に応じた自動制御の機能の実行条件が互いに異なっていてもよい。例えば、第1操作レバー28の操作部材A2,A5が操作されたときの実行条件(第1の実行条件)は、第1操作レバー28が中立位置にあることを含み、第2操作レバー29が中立位置にあることを含まなくてもよい。また、第2操作レバー29の操作部材B2が操作されたときの実行条件(第2の実行条件)は、第2操作レバー29が中立位置にあることを含み、第1操作レバー28が中立位置にあることを含まなくてもよい。
【0099】
上記の実施形態では、設計面41の位置を上方に変更するための操作部材A2(第1操作部材)と、設計面41の位置を下方に変更するための操作部材B2(第2操作部材)とが、それぞれ別の操作レバー28,29に設けられている。しかし、操作部材A2と操作部材B2とが共通の操作レバーに設けられてもよい。或いは、操作部材A4、又は、操作部材B4のように上下に操作可能な操作部材に、設計面41の位置を上下に変更する機能が割り当てられてもよい。
【0100】
第1操作レバー28及び第2操作レバー29の構造が変更されてもよい。第1操作レバー28に設けられる操作部材、及び、第2操作レバー29に設けられる操作部材の数、配置、或いは、形状が変更されてもよい。自動制御の機能が割り当てられる操作部材は、操作部材A2,B2,A5に限らず、他の操作部材であってもよい。
【0101】
操作部材に割り当てられる自動制御の機能は、設計面41の位置の変更と、自動制御の有効化/無効化の切換に限らず、他の機能であってもよい。自動制御に含まれる機能のうち使用頻度の高いものが、操作部材に割り当てられることが好ましい。例えば、図16に示すように、自動制御は、整地制御において、設計面41に対するバケット8の角度Anを一定に保持する角度保持制御を含んでもよい。角度保持制御の有効化/無効化の切換が、操作部材に割り当てられてもよい。
【0102】
複数の設計面41のうち特定の設計面を選択する機能が、操作部材に割り当てられてもよい。例えば、図17に示すように、刃先P4の直下に位置する設計面41aを選択する機能が操作部材に割り当てられてもよい。選択された設計面41aに基づいて、上述した自動制御が実行されてもよい。或いは、選択された設計面41aが、他の設計面41と異なる態様(例えば異なる色)で示されてもよい。或いは、選択された設計面41aに対して作業車両100が正対しているのか否かが、案内画面61において示されてもよい。図17においては、選択された設計面41aに対して作業車両100が正対しているのか否かが、案内画面61においてコンパス型のアイコン64で示されている。
【0103】
案内画面61における表示スケールを変更する機能が、操作部材に割り当てられてもよい。例えば、図17に示すような概略表示の案内画面61と、図18に示す詳細表示の案内画面61’とを切り換える機能が、操作部材に割り当てられてもよい。図18に示す詳細表示では、図17に示す概略表示よりも、設計面41,41aが大きく表示されてもよい。また、図17に示す概略表示では作業車両100全体が案内画面61に表示されてもよい。これに対して、図18に示す詳細表示では、バケット8のみが、概略表示よりも大きなスケールで案内画面61’に表示されてもよい。
【0104】
操作部材の操作に応じた自動制御の機能の実行条件は、当該操作部材以外の操作部材が操作されていることをさらに含んでもよい。例えば、第1操作レバー28が中立であり、且つ、操作部材A4が操作された状態のまま、操作部材A2が操作されることで、自動制御の機能が実行されてもよい。或いは、第2操作レバー29が中立であり、且つ、操作部材B4が操作された状態のまま、操作部材B2が操作されることで、自動制御の機能が実行されてもよい。
【0105】
或いは、第1操作レバー28が中立であり、且つ、操作部材A4が操作されていない状態で操作部材A2が操作されることで、自動制御の所定の機能(第1の機能)が実行されてもよい。また、第2操作レバー29が中立であり、且つ、操作部材A4が操作された状態のまま、操作部材A2が操作されることで、第1の機能と異なる自動制御の所定の機能(第3の機能)が実行されてもよい。
【0106】
例えば、第1の機能は、上述した設計面41の位置を上方、又は、下方に変更する機能であってもよい。第3の機能は、設計面41を選択する機能であってもよい。或いは、第3の機能は、案内画面61の表示スケールを変更する機能であってもよい。第1の機能、及び、第3の機能は、上述した機能と異なる機能であってもよい。
【0107】
上述した実行条件に含まれる条件は変更されてもよい。或いは、実行条件に含まれる条件に、上述した条件と異なる条件が追加されてもよい。実行条件は、操作レバーが中立位置にあることに限らず、オペレータによる操作レバーの操作がないことを示す他の条件を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明よれば、自動制御の機能を容易に操作することができると共に、誤操作による意図しない作業機の動作を防止することができ、自動制御による品質の良い施工を行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
2 作業機
28 第1操作レバー
29 第2操作レバー
A2 第1操作部材
B2 第2操作部材
A4 第3操作部材
26 コントローラ
100 作業車両
300 制御システム
【要約】
作業車両の制御システムは、作業機の第1操作レバーと、第1操作部材と、コントローラとを備える。第1操作部材は、第1操作レバーに設けられる。コントローラは、作業機の自動制御を行う。コントローラは、第1操作レバーが中立位置にあることを含む実行条件が満たされているときに、第1操作部材の操作に応じて第1操作部材に割り当てられた自動制御の機能を実行する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18