特許第6073011号(P6073011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073011
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】風水鑑定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20170123BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20170123BHJP
【FI】
   G06F17/50 612C
   G06F17/50 608Z
   G06F17/50 680B
   G06Q50/10
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-195192(P2012-195192)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-52712(P2014-52712A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】512230904
【氏名又は名称】井上 馨一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】井上 馨一郎
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−039710(JP,A)
【文献】 特開2000−339379(JP,A)
【文献】 特開平11−316124(JP,A)
【文献】 特開2006−293668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06Q 50/10
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風水鑑定評価を行うための風水鑑定プログラムであって,
少なくともアナログ平面図の読み取りを可能とする平面図読取工程と,
読み取られた平面図に重心情報を付与する重心付与工程と,
少なくとも玄関または入口の向きの方角情報を平面図に付与する方角付与工程と,
平面図における各部屋がどのような機能を有するかなど部屋に関する情報を付与する部屋属性付与工程と,
平面図の風水評価を行う風水評価工程と,
風水評価結果を表示する風水評価結果表示工程とからなり,
前記風水評価工程が,
方角付与工程により決定された玄関または入口の向きに基づき宅卦を決定する宅卦分類決定工程と,
平面図に風水鑑定図を重ね合わせる風水鑑定図・平面図マッチング工程と,
予め登録されている宅卦分類項目に基づき,平面図にどの宅卦分類項目が適用されるか,ならびに運気のよいアイテムを選出する宅卦分類項目選出工程と,
選出された宅卦分類項目に基づき,宅卦分類項目に付与された風水点数を合計して算出する風水点数算出工程とからなり,
風水評価結果表示工程が
一連の風水評価工程により得られた風水鑑定付平面図および風水点数算出結果,
ならびに,風水鑑定付平面図に運気のよいアイテムとこれに付与された風水点数,
これらを合わせ,風水評価結果を表示することからなり,
これら一連の工程をコンピュータに実行させるための風水鑑定プログラム
【請求項2】
請求項1に記載の風水鑑定プログラムを記録した記録媒体
【請求項3】
請求項1に記載の風水鑑定プログラムを実行するための情報処理装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,風水鑑定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
風水の起源は,紀元前の黄河文明時代にさかのぼる。黄河文明時代より,古来の人々は,太陽や月の動き,天気や季節の移り変わり,山脈の隆起や河川の流れなど,様々な自然の摂理の中から,東洋思想のベースとなる,「陰陽」,「五行」という思想を導き出した。
【0003】
陰陽とは,万物は陰と陽の融合から成り立っているという考え方である。また,五行とは,万物は五つの要素で構成されているという考え方である。
この「陰陽」,「五行」という思想は,風水学のベースとなっただけではなく,気功,鍼灸,漢方,薬膳などの東洋医学や,天文学,易学など,様々な東洋思想のベースとなっている。加えて,「陰陽」,「五行」という思想は,古来からのしきたり,作法,暦,都市計画など,私たちの身の周りに今でも脈々と息づいているものである。
【0004】
このように風水の基本思想は,「陰陽」,「五行」をベースとしたものであるが,黄河文明時代当時,稲作民族が生きていくためには,作物が育つ土地と水の確保が必要不可欠だった。そのため,いかに確実に作物を収穫し,豊かに暮らせる土地を見極めるかが重要であった。それは生きていくため,そして快適に暮らすための知恵であった。その知恵こそが,現代でいう環境学といえるものであり,風水であった。
【0005】
このように風水の起源は,環境学に基づくものであり,約4000年の長い歴史を有するものである。風水では,気の流れを読み,気の流れを整え,天地人の気のバランスを滞りなく巡らせることを基本的概念としている。このことから風水は,土地質や建物の形状・向きなどから,どんな気が流れているのかを調べ,よい気が流れるように整えていく技術といえる。気の流れを整えることで,自然のエネルギーと調和した心地よい住環境に整えることができるのである。
同じ「陰陽」,「五行」をベースとする東洋医学が,体の「証」を明らかにし,処方等により気の流れを整え,人を健康に導くことと比較すると,風水は,「土地質」や「建物」の気の流れを明らかにし,それに対策を施すなどして,気の流れを整え,人を健康に導くものということができる。
【0006】
昨今,日本において,風水ブームにより風水の認知度が高まってきたが,歴史的に見れば,日本においても,風水は古くから活用されてきた。すなわち,どこの土地に町を作ると繁栄するかという視点から,土地の環境を見極め,風水学的に良好と判断された土地に町が作られていたのである。このような町の例として,平安京が挙げられる。平安京は,風水の理にかなった町づくりがなされており,それを継承する京都の町は,現在でも,風水の理にかなった町づくりとなっている。それゆえ,京都の町は,平安京の時代から今日に至るまで,約1200年の長きにわたり,古都として繁栄し続けてきたともいえる。
【0007】
風水において,気の流れを知るために重要な要素の例として,「方位」と「時間」が挙げられる。すなわち,方位が重要な要素となる理由は,気の流れを整えるためであり,気の流れをせき止めてしまっては,天地人の気のバランスを滞りなく巡らせることができなくなるという考えに基づく。また,時間が重要な要素となる理由は,人はこの世に生を受けるが,生を受けたその時の気の流れを人は受けて生き続けているという考えに基づく。
【0008】
風水の基本的概念は,「気の流れを読み,気の流れを整え,天地人の気のバランスを滞りなく巡らせる」と,比較的シンプルで理解しやすいものである。しかしながら,いざ,風水の適用となると,非常に高度かつ複雑で専門的な知識を要する。例えば風水の基礎的知識として,前述の陰陽や五行,十干,十二支,九星,本命卦などが挙げられるが,これらを理解し,最適な風水を適用することは,専門家であっても大変な作業量である。当然のことながら,専門家でない人が風水の適用を行うことは,到底,不可能である。
【0009】
このように,風水は非常に有用であるにも関わらず,その適用には非常に高度かつ複雑で専門的な知識を要するため,これを容易に行うことができないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「風水縁起術」,2000年12月24日,株式会社イースト・プレス
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中,一級建築士である発明者は,風水を,現代における住環境に身近なものにできないかと考えた。すなわち,住環境たる建築物と風水の融合である。自宅や職場等の建築物は人にとって身近な空間であり,この建築物に風水を適用することで,気を滞りなく巡らせ,心身共に健康で快適な生活や職場環境などを提供することができる。このように風水を住環境に適用し,その恩恵を人々が享受することにより,風水の有用性や認知度が広まっていくのではないかと考えた。
【0012】
しかし,前述したとおり,風水の適用には非常に高度かつ複雑で専門的な知識を要するため,これを容易に行うことが出来ない。加えて,昨今,風水ブームでたくさんの情報があふれているものの,その多くが本来の風水からは遠くかけ離れているのが現状であり,結果として,誤った風水の適用がなされていた。
このような事情から発明者は,より多くの人々が住環境における風水の恩恵を享受するには,高度な専門知識を有していなくても,住環境へ風水を適用できる方法の開発が必要と考えた。
【0013】
上記事情を背景として,本発明では,高度かつ複雑で専門的な知識を有していなくても,住環境に風水を適用することができる手法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は,鋭意研究の結果,簡単な操作で住環境に風水を適用でき,風水評価ないし風水対策が可能となるプログラムを開発することにより,本発明を完成させた。
【0015】
本発明は,以下の構成からなる。
【0016】
本発明の第一の構成は,風水鑑定評価を行うための風水鑑定プログラムであって,平面図面の読取りを行う平面図読取工程と,読み取られた平面図に重心情報を付与する重心付与工程と,平面図に方角情報を付与する方角付与工程と,平面図における各部屋がどのような機能を有するかなど部屋に関する情報を付与する部屋属性付与工程と,平面図の風水評価を行う風水評価工程と,風水評価結果を表示する風水評価結果表示工程とを含むことを特徴とする風水鑑定プログラムである。
本発明の第二の構成は,さらに,人物の性別および生年月日時の人物情報を付与する人物属性付与工程を含むことを特徴とする第一の構成に記載の風水鑑定プログラムである。
本発明の第三の構成は,前記風水評価工程が,平面図の宅卦分類を決定する宅卦分類決定工程を含むことを特徴とする第一ないし第二の構成に記載の風水鑑定プログラムである。
本発明の第四の構成は,前記風水結果表示工程において,風水鑑定付平面図が表示されることを特徴とする第一ないし第三の構成に記載の風水鑑定プログラムである。
【0017】
本発明の第五の構成は,第一ないし第四の構成に記載の風水鑑定プログラムを記録した記録媒体である。
本発明の第六の構成は,第一ないし第四の構成に記載の風水鑑定プログラムを実行するための情報処理装置である。
【0018】
本発明において重心とは,平面図の重心をいい,風水でいうところの家屋の中心と同義である。
本発明において風水評価とは,平面図等の風水的評価として定義され,様々な観点から風水評価を行うことができる。例えば,平面図の宅卦分類の決定や表示,宅卦分類による吉凶判断の提示,風水対策や風水アイテム等の提示,風水評価点の算出などである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により,高度で専門的な知識を有していなくても,住環境に風水を適用することができる手法の提供が可能となった。すなわち,作業者は,本発明の風水鑑定プログラムにより,風水の知識が全くなくても,簡単な操作で,風水鑑定付平面図に代表される風水評価情報や風水対策情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】風水鑑定プログラムの例を示した図
図2】風水鑑定付平面図の例を示した図
図3】風水鑑定プログラムを概念的に説明した図
図4】重心付与工程の例を示した図
図5】重心付与の具体的手法を説明するための図
図6】方角付与工程の例を示した図
図7】方角付与工程の例を示した図
図8】部屋機能選択の具体的手法を説明するための図
図9】玄関の角度情報付与の具体的手法を説明するための図
図10】人物属性付与工程の例を示した図
図11】人物属性付与の説明を補助するための図
図12】本命卦を説明した図
図13】風水評価表の例を示した図
図14】風水チャートの例を示した図
図15】風水評価工程の例を示した図
図16】宅卦分類項目選出工程の例を示した図
図17】宅卦分類項目DBの例を示した図
図18】アイテム情報が表示された風水鑑定付平面図の例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明の風水鑑定プログラムについて,図面を用いて詳細に説明するが,当然のことながら,本発明は下記の内容に限定されるものではない。
【0022】
<<風水鑑定プログラムの概容>>
本発明の風水鑑定プログラムは,平面図読取工程(S1),重心付与工程(S2),方角付与工程(S3),部屋属性付与工程(S4),風水評価工程(S6),風水評価結果表示工程(S7)を必須の要素とする(図1)。これら一連の工程により,図2に示すような風水鑑定付平面図に代表される風水評価結果を得ることができる。なお,人物属性付与工程(S5)については,付加的な工程である。
【0023】
風水鑑定プログラムの一連の工程について,イメージで簡略的に例示したのが,図3である。平面図読取工程(S1)により読取られた平面図(図3,a)は,重心付与工程(S2)を経て重心情報が付与された重心付与平面図となる(図3,b)。また,重心付与平面図は,方角付与工程(S3)を経て方角情報が付与された重心・方角付与平面図となる(図3,c)。さらに,重心・方角付与平面図に部屋属性情報が付与され(図3,d),風水評価工程(S6)において,風水鑑定図(図3,e)が重心・方角付与平面図に重ね合わせられ(風水鑑定図・平面図マッチング工程),風水鑑定付平面図(図3,f)を得るなどすることができる。得られた風水鑑定付平面図等の風水評価結果は,風水評価結果表示工程(S7)により表示される。
【0024】
これら必須の要素である,平面図読取工程(S1),重心付与工程(S2),方角付与工程(S3),部屋属性付与工程(S4),風水評価工程(S6),風水評価結果表示工程(S7)により,風水に関する高度かつ複雑で専門的な知識を要することなく,風水鑑定付平面図等の風水評価情報や風水対策情報を得ることができ,風水評価ないし風水対策が可能となるという効果を有する。以下,任意の構成を含め,それぞれの工程について説明する。
【0025】
<<平面図読取工程(S1)>>
平面図読取工程は,一軒家やマンション,商用事務所などの建築物の平面図を読取る工程である。読取る方法については,平面図が読取り可能な限り特に限定する必要はない。例えば,CADで作成された電子的な平面図(以下,「デジタル平面図」)を記録媒体から読取ることもできるし,紙に印刷されている平面図など(以下,「アナログ平面図」)をスキャナーで取り込んだり,写真を撮ったりすることにより,読取るなどすればよい。この際,読取った平面図について,自動処理でその後の重心工程等を行ってもよいし,コンピューターやスマートフォンなどの画面上に平面図を表示させながら,必要に応じ,簡単な手動操作を伴うことにより,その後の工程を行ってもよい。
【0026】
<平面図の種類,デジタル平面図とアナログ平面図>
読取られた平面図により,その後の工程の手作業の有無等が異なってくる。
例えば,デジタル平面図であれば,電子化されたファイル自体に,平面図以外に必要な種々の情報を付加することができる。このような情報として,例えば,平面図の重心情報,平面図の方角情報,平面図における玄関の方角情報,どの部屋がどのような機能を有するかなどの情報(以下,「部屋属性情報」),住所(緯度・経度)情報,平面図の線属性情報などである。このデジタル平面図を用いることにより,その後の重心付与工程や方角付与工程等のすべて,もしくはいずれかの工程を自動で行うことが可能となることから,プログラム処理の迅速性および操作の簡便性が向上するという効果を有する。
【0027】
一方,読取られた平面図がアナログ平面図の場合は,読取った時点において,重心等の情報はもたない。そのため,その後の工程で,平面図をコンピューター画面上に表示させながら簡単な手作業による処理を行うなどして,平面図に必要な各種情報を付与する必要がある。この場合であっても,手作業による処理操作は,風水に関する知識と全く関係ないため,作業者は,風水に関する知識を必要とすることなく,画面上の指示に従うだけで,簡単に一連の処理を行い,風水評価情報や風水対策情報を得ることが可能である。
【0028】
<<重心付与工程(S2)>>
重心付与工程では,読取られた平面図に重心情報を付与する。重心情報を付与する方法については,平面図に重心情報を付与できる限り特に限定する必要はなく,種々の方法を採用することができる。
重心情報が付与されているデジタル平面図の場合は,自動処理により,重心決定を行うことができる。
【0029】
重心情報が付与されていないデジタル平面図もしくはアナログ平面図の場合については,図4を例にとり説明する。平面図をコンピューター等の画面上に表示させ,表示された平面図の角を全て選択し外壁となる部分を作成,もしくは,OCR機能により外壁となる部分を認識させる等して,平面図の外壁を設定する(外壁設定工程,S21)。なお,本発明において外壁とは,風水評価を行う対象である家屋やマンションの一室などにおける最も外側の壁として定義され,時として界壁を含むものとして定義される。
【0030】
この外壁設定工程後,下記断面一次モーメント公式(数1)を当てはめるなどにより,平面図重心情報を算出することができる(平面図重心情報算出工程,S22)。
【0031】
【数1】
【0032】
上記数式1を簡易的に示すと,例えば,「図心(重心)距離=(断面積×図心位置までの距離)の合計÷全断面積」の簡易式で算出することができる。
【0033】
図5を例にとり説明する。図5は,外壁部分が認識された後の簡略化した平面図である。まず,説明の便宜上,aとbの二つの長方形に分割する。分割されたそれぞれの面積は,aが16m2(2m×8m),bが40m2(4m×10m)となる。また,それぞれの長方形の中心座標は,a(X=4m,Y=5m),b(X=5m,Y=2m)となるため,この平面図の重心は,上記簡易式に当てはまると下記のように算出される。

X=(16×4+40×5)÷(16+40)≒4.71,Y=(16×5+40×2)÷(16+40)≒2.86

算出された重心情報を平面図に付与(図5,黒丸)することにより,平面図への重心情報の付与が完了する(重心情報付与工程,S23)。
【0034】
<<方角付与工程(S3)>>
方角付与工程では,平面図に方角情報(東西南北)を付与する。方角付与工程においては平面図に方角情報を付与するものであるが,限定的に,玄関や入口など,気の入口となる区画の方角のみを方角情報として設定することもできる。方角を付与する方法については,平面図に方角情報を付与できる限り特に限定する必要はなく,種々の方法を採用することができる。なお,本発明において,方角情報の基準となる「北」は,「真北(しんぼく)」のみならず,「磁北(じほく)」も含む概念として定義される。方角情報について,磁北を基準に用いることが風水学的に好ましいが,簡略化等種々の事情から真北を方角上の基準として用いても構わない。
方角情報が付与されているデジタル平面図であれば,自動処理により,方角を付与することができる。
【0035】
方角情報が付与されていないデジタル平面図ないしアナログ平面図の場合について,図6を例にとり説明する。コンピューター等の画面上に表示されている平面図をマウスによるドラッグなどにより回転させ,平面図の南が画面の上に来るようにする(平面図方角調整工程,S301)。平面図の方角調整が終了したら,画面上の決定をクリックするなど方角調整を確定して,平面図に方角情報を付与することができる(方角情報付与工程,S302)。
【0036】
別の方法として,電子地図を用いた方角付与が挙げられる。例として図7を用いて説明すると,まず,平面図の住所情報を入力する(住所情報入力工程,S311)。また,スマートフォン等を用いて本発明のプログラムを実行する場合は,GPS情報を元に緯度・経度情報を取得し,住所情報の代わりに用いてもよい。この住所情報等を入力することにより,外部記録媒体から住所地の地図情報が読み込まれる。地図情報での住所地における家屋の形状と,平面図の外壁の形状から,これら二つを比較して,もっとも可能性が高いよう,二つを重ね合わせる(地図家屋・平面図マッチング工程,S312)。この際用いる平面図の外壁の形状については,改めて平面図の外壁設定を行ってもよいし,前述した外壁設定工程(S21)における外壁設定情報を用いてもよい。地図家屋・平面図マッチング工程終了後,地図情報は方角情報を伴っているため,二つの重ね合わせの結果から,平面図に方角情報が付与される(方角情報付与工程,S313)。この場合に用いる電子地図については,記録媒体上に保存されている地図情報を用いてもよいし,インターネット地図を用いてもよい。
【0037】
また,別の方法として,スマートフォン等のコンパス機能を利用して,方角情報を付与することもできる。この場合,例えば,スマートフォンに表示される平面図の画像と,実際の家屋の外壁や玄関の向きなどを合わせて平面図の向きを決定し,コンパス機能からさらに角度情報を読み込み,その角度情報を付与することにより,平面図の角度情報を付与することができる。
【0038】
さらに別の方法として,手入力のみによる方角情報の付与が挙げられる。例えば,コンピューター等の画面上に表示されている平面図に,マウス等を用いて北から南へ一本の線を引き,その線を北から南への方角情報が付与された線として自動認識することにより,平面図の方角情報を付与するなどである。また,単純に,平面図とは別に角度入力欄を設けて,北方向からのずれの角度を手入力することにより,方角情報を付与するなどである。
【0039】
なお,将来建築予定などの現存しない建築物の平面図の場合は,確定した方角情報というのが存在しないため,手動により,所望の方角情報を付与すればよい。同様に,既存の建築物であっても,シュミレーションなど種々の観点から,実際と異なる角度情報を付与しても構わない。
【0040】
<<部屋属性付与(S4)>>
部屋属性付与では,平面図の各部屋に関する種々の情報を付与する工程である。例えば,どの部屋がどのような機能(玄関,リビング,寝室,洗面所,お風呂,キッチン,押入れなど)を有するかや,各機能を有する部屋の区画がどのような角度を有するかなどである。付与する部屋属性情報について特に限定する必要はなく,風水に関連する種々の部屋属性情報を付与すればよい。また,部屋属性情報として,風水学的に評価の対象となり得る物(例えば,ベッド,ガスレンジ,観葉植物)がどの部屋区画に置かれているかや,それらの向きなどの情報を付与することもできる。加えて,既に住んでいる一軒家などのような既定の部屋情報のみならず,将来建築予定の一軒家などのような未定の部屋情報を付与してもかまわない。
【0041】
部屋属性情報を付与する方法について,部屋属性情報が付与できる限り特に限定する必要はなく,種々の方法を採用することができる。
部屋属性情報が付与されているデジタル平面図の場合は,自動処理により,部屋属性付与を行うことができる。
【0042】
部屋属性情報が付与されていない,もしくは十分ではないデジタル平面図ないしアナログ平面図の場合は,図8を用いて説明を行う。まず,部屋属性を付与する部屋区画を決定するため,目的の部屋区画の角を選択していく(図8,黒丸)。選択が完了すると,選択された部屋区画(図8のグレー部分)がハイライトされ,右の部屋機能選択一覧から,該当する部屋機能を選択し,決定を行うことにより,部屋機能属性情報を付与する。
【0043】
また,別の例として,部屋の角度情報付与について,図9を用いて説明する。図9は,既に方角情報と玄関の部屋機能属性情報が付与されている方角付与平面図を用いた例であり,図の真下が北方向である。これについて,例えば,玄関の入口を示す線(a-b線)の向きを,コンピューター画面上でaからbになぞる。これにより,玄関の向き,すなわち,真北を0°とした場合の北方向からのずれの角度(248.5°)が算出され,玄関の角度情報が付与される。なお,図9の風水鑑定付平面図である図2では,「68.5°」の記載があるが(図2,右下),これは便宜的に,図2の真上からのずれの角度を記載したものであり,この値に180°を加えることにより,北方向からのずれの角度,248.5°が算出される。
【0044】
前述のとおり,方角付与工程(S3)では,限定的に,玄関や入口等の気の入口の角度情報を方角情報として付与することもできるので,その場合は,方角付与工程と部屋属性付与が同時に行われていることとなる。
【0045】
<<人物属性付与工程(S5)>>
人物属性付与工程では,平面図の住居に関連する人物の風水情報を付与する工程である。風水において人は,生まれたまさにその時(生年月日時)の,気の流れを受けて,生きていくと考えられている。また,性別により,気の流れが異なるとされている。これらのことから,人物の生年月日時情報および性別情報を入力することにより,人物の風水評価を考慮して平面図の風水評価を行うことができるため,より正確な風水評価ないし風水対策が可能になるという効果を有する。
【0046】
平面図の住居に関連する人について,住居に関連する可能性があれば特に限定する必要はないが,例示すると,平面図が一軒家やマンションなどの住居である場合はそこに住む(もしくは住むであろう)住人,平面図が会社等の場合は会社の社長や役員,スタッフなどである。
【0047】
人物属性付与工程について図10を用いて説明すると,まず,コンピューター等の画面上に属性付与を行う人物の生年月日時の入力(S51)および性別情報の入力(S52)を行う。生年月日時および性別が決まれば,図11のような表から,人物の風水が一義的に決まる(S53)。
例えば,昭和60年1月7日18時10分に出生した男性であれば,「乾」の本命卦と決定することができる。この男性にとっては,南が最大凶,西が最大吉など,どの方位がどのような相性を持つかが,本命卦の決定により,一義的に決まる(図12)。この本命卦に応じた風水評価を加味して,平面図における風水評価を行うことができる(風水評価方法3など)。
【0048】
この人物属性付与工程において,付与を行う人物は,1名であってもよいし,複数名でもよい。例えば,家主や社長の気の流れを最優先して1名とすることもできるし,家族数名の風水評価点数を良くするなどのために複数名とすることもできる。当然のことながら,後述する風水評価結果表示工程においては,1名の風水評価結果の表示に限らず,複数名の平均的な風水評価結果の表示,複数名の個別の風水評価結果の表示など,種々行うことができる。
【0049】
なお,重心付与工程,方角付与工程,部屋属性付与工程,人物属性付与工程の順に説明を行ったが,これら工程の順番を変更しても後述する風水評価工程に支障はないため,工程の順番については適宜変更してもかまわない。
【0050】
<<風水評価工程(S6)>>
風水評価工程では,平面図の風水評価を行う。風水評価は種々の観点から行うことができ,例えば,風水鑑定付平面図の取得(図2図18),風水評価表の提示(図13),風水チャートの作成(図14)などである。また,人物属性付与情報を合わせて,平面図の風水評価を行うこともできる。以下,風水評価の手法について,図15を参考に,具体例を挙げて説明する。
【0051】
[風水評価方法1,風水鑑定付平面図の取得]
風水評価方法1では,風水鑑定付平面図の取得を行う。風水評価方法1では,宅卦分類決定工程(S61),風水鑑定図・平面図マッチング工程(S62)により,図2のような風水鑑定付平面図を得ることが可能となる。この風水鑑定付平面図を風水結果表示工程で表示することにより,視覚的に分かりやすい風水評価情報を得ることができるという効果を有する。
【0052】
風水評価方法1では,平面図の属性情報として,玄関(入口)の角度情報を設定することにより,平面図の宅卦分類を決定し,風水鑑定付平面図を得ることができる。玄関は,人の出入り口であるとともに,気の入口としても機能することから,風水にとって非常に重要な要素である。風水評価方法1では,気の入口として玄関の角度情報を設定し,これにより平面図が有する風水パターンを宅卦分類に従い決定する例を説明する。
なお,宅卦分類は,8方位を基準とした宅卦分類に限定する必要はない。例えば,子・癸・丑・艮・寅・甲・卯・乙・辰・巽・巳・丙・午・丁・未・坤・申・庚・酉・辛・戌・乾・亥・壬の24方位や64方位に分けるなどを基準として,風水的評価を行ってもよい。この場合であっても,8方位を基準とした宅卦分類に準じた方法で,風水評価を行うことができる。
【0053】
<宅卦分類決定工程(S61)>
玄関の向き(角度情報)については,前述したとおり,方角付与工程ないし部屋属性付与工程により設定される。玄関の向きが決まると,北方向からの角度のずれに応じて,下記表1のように,離(リ)・坤(コン)・兌(ダ)・乾(ケン)・坎(カン)・艮(ゴン)・震(シン)・巽(ソン)の八つの宅卦分類のいずれに属するかを決定することができる。それぞれの宅卦分類は,45°づつの角度を有している。
【0054】
【表1】
【0055】
図9を例にとると,玄関の向きは,北(図9の下方向)から,248.5°の角度を有している。これは,玄関の向きが西方に傾いていると評価でき,宅卦分類でいうところの「震宅」として決定される(表1)。
【0056】
宅卦分類に応じて,どの宅卦分類がどのように風水評価されるかを,八宅向による吉凶判断により一義的に決定することができる。例えば,震宅の場合,南が殺気方,西南が洩気方,西が関殺方,西北が旺気方,北が死気方,東北が殺気方,東が生気方,東南が死気方というふうに一義的に決定できる(図2図13)。旺気,生気,洩気,関殺,死気,殺気,これらを宅気といい,これらの用語の意味について,簡単に下記に示す。
旺気・・・家や部屋の中で最も旺盛な地の気が及ぶ場所。大吉の方位。
生気・・・家や部屋の中で,将来,旺盛な地の気が及ぶ場所。穏やかながら良い作用を及ぼす吉の方位。
洩気・・・家や部屋の中で,吉凶の境目にあたる部屋。平常・平凡・単調な作用をもたらす小吉の方位。
関殺・・・家の玄関の向きを表す方位。
死気・・・家や部屋の中で活気に乏しく消極的な地の気がおよぶ場所。別名,財方ともいう。
殺気・・・家や部屋の中で,太極(家の中心)の気にダメージを与えるような悪い地の気が及ぶ場所。大凶の方位。
【0057】
<風水鑑定図・平面図マッチング工程(S62)>
風水鑑定図・平面図マッチング工程では,平面図に風水鑑定図を重ね合わせマッチングを行う。風水評価工程までに,重心付与工程および方角付与工程により,平面図には,風水鑑定図をマッチングするために必要な,重心情報と方角情報が付与されている(重心・方角付与平面図)。この重心・方角付与平面図に,記録媒体上に保存されている風水鑑定図を重ね合わせる。すなわち,重心・方角付与平面図の重心と,風水鑑定図の太極とを合わせて,それぞれの図が有する方角を合致させることにより,風水鑑定図マッチング工程が完了し,図2に示したような,風水鑑定付平面図を得ることができる。
【0058】
[風水評価方法2,宅卦分類項目の選出]
風水評価方法2では,宅卦分類決定工程(S61)により決定された宅卦分類に従い,平面図がどのような風水的評価を受けるかについて,予め登録されている宅卦分類項目の選出を行う。
例えば,図14の平面図は,宅卦分類における「坤宅」に属することから,宅卦分類項目として,「気の流れが安定しやすい家です」,「部屋全体を暖色系の照明にすると,よりリラックスできる空間になるでしょう」,「カーテンは薄い黄色やベージュがおすすめです」というような,文章としての風水評価(宅卦分類項目)を得ることができる。
このように予め登録されている宅卦分類項目を選出することにより,専門家でも多くの時間が必要な風水解析を速やかに行うことが可能となるとともに,文章としての風水評価情報を得ることができることから,迅速かつ分かりやすい風水評価結果が得られるという効果を有する。
【0059】
<宅卦分類項目選出工程(S64)>
宅卦分類項目選出工程では,図16に示す様な一連の工程により,宅卦分類項目の選出を行う。図2の平面図を例にとり説明を行うと,まず,平面図の宅卦分類の確認を行う(宅卦分類確認工程,S641)。図2の平面図は,前述の宅卦分類決定工程(S61)により,「震宅」に該当することが決定していることから,このことを情報として確認する。続いて,宅卦分類項目をDBから読取る(宅卦分類項目DB読取工程,S642)。
【0060】
読取られた宅卦分類項目DBの模式図の一例を表したのが,図17である。図17の宅卦分類項目DBでは,「宅卦分類毎に」,「どの部屋機能が」,「どの方位にあれば」,「どのような宅卦分類項目(風水的評価)に該当するか」が記録されている。
宅卦分類項目DB読取工程後,宅卦分類項目参照・決定工程(S643)により,どの部屋属性がどの宅卦分類項目に該当するかを参照し,宅卦分類項目の決定を行う。図2の平面図を例にとると,玄関が「西南」に存在するため,宅卦分類項目としては,「訴訟・対立・職業上のトラブルに遭う」という項目が選出される。この宅卦分類項目選出は,各部屋機能毎に行われ,図17であれば,玄関,リビング,寝室等の順番で宅卦分類項目が決定され,全ての部屋機能における宅卦分類項目が決定された後,宅卦分類項目選出工程が終了する。
【0061】
宅卦分類項目DBの別の例として,「宅卦分類毎に」,「どの方位に」,「どのようなアイテムを置けば運気が上昇するか」を宅卦分類項目として設定することができる。この場合,運気の良いアイテムを,風水鑑定付平面図上に表示することもできる(図18,二重丸部分)。
【0062】
宅卦分類項目DBの別の例として,「宅卦分類毎に」,「どの場所(方位)に」,「どの部屋機能を与えれば運気が上昇するか」を宅卦分類項目として設定することができる。この場合,方角付与工程(S3)ないし部屋属性付与工程(S4)において,玄関の場所と角度情報を平面図に付与する。その他の部屋属性については付与しない,もしくは付与する数を少なくする。このような条件において平面図の宅卦分類決定を行い,玄関以外の部屋情報については,宅卦分類に従い,「どの場所(方位)に」,「どの部屋機能を与えれば運気が上昇するか」が一義的に決まるため,宅卦分類項目として選出することができる。
【0063】
また,宅卦分類項目DBの別の例として,人物の本命卦に応じた宅卦分類項目選出を行うことができる。これは,人物属性付与工程(S5)で決定された人物の本命卦に従って,宅卦分類項目を選出する一例である。この場合,人物の本命卦に応じた様々な風水評価を行うことが可能であり,例えば,「どの方位を向いて,どの方位に,ベッドを置くと,運気が向上するか」,「どの方位で,仕事や勉強をすれば,効率がよいか」,「どの方位に,商談場所を置けば,商談が進むか」などであり,人物の本命卦の吉凶のみならず,宅卦分類に応じた吉凶を照らし合わせ風水評価を行うことができる。
【0064】
<風水点数算出工程(S66)>
風水点数算出工程では,宅卦分類項目選出工程に準じた方法などにより,平面図の風水評価を点数として表す工程である。例として,図17を用いて説明すると,宅卦分類項目選出工程に準じる方法で,宅卦分類項目を選出する(S64)。各宅卦分類項目には,それぞれ点数が付与されている(図17)。この宅卦分類項目に応じた点数を足すことにより,風水点数を算出することができる。
【0065】
<風水評価結果表示工程(S7)>
風水評価結果表示工程(S7)では,得られた風水評価結果をコンピューター画面上や紙媒体などに表示することにより,風水評価結果表示工程を完了する。表示される風水結果について,特に限定する必要はなく,風水評価結果表示工程で得られた風水評価をそれぞれ,もしくは組合わせるなどして表示することができる。
【0066】
以上,本発明の風水鑑定プログラムを詳細に説明してきたが,当然のことながら,本発明の風水鑑定プログラムは上記で説明した実施形態に記載された内容に限定されるものではない。
【0067】
上記以外の態様として,住宅用平面図と商用平面図で,風水評価に関する宅卦分類項目を区別することができる。
別の態様として,五行による分類を組合わせて,風水評価を行うことができる。例えば,建物の形を,五行(縦長,横長等)を用いて選択したり,マンションの階数や部屋番号,棟数,部屋数など,数に関連する数字を導き出して,この数を五行に分けて,風水評価の加算・減算要素として考慮するなどしてもよい。
また,別の態様として,方位の吉凶は各年度により異なってくるため,これを風水評価の加算・減算要素として組合わせて,風水評価を行うこともできる。
さらに,別の態様として,人物属性情報として,長男,長女,家長等の属性情報を方位と組合わせて,風水評価を行う際の加算・減算要素として考慮するなどできる。例えば,風水において,東は長男に好ましい方位であるなど,家族の属性情報により,好ましい方位が決まっている。この家族の属性情報と方位の組み合わせを,風水評価の加算・減算要素として考慮することができる。
ここで述べた態様については,必ずしも必須の構成ではないが,本発明の風水プログラムの必須要素と組合わせることにより,風水プログラムの評価の利便性や個々人への評価の妥当性等を向上させる効果を有するものである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図17
図18