(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載した倒立型液封マウントは上記請求項1において、前記本体部(10)の最小径部(10a)と前記外側金具(3)の内面に設けられているライナー層(8a)との距離をWとするとき、前記制御突起(20)は、前記最小径部(10a)から3W/5以下となる範囲に設けられることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
このような倒立型液封マウントは公知であり、ゴム等の弾性体からなる防振主体をなすインシュレータで液室の一部を囲むとともに、液室を上下に区分して、上側を副液室、下側を主液室とし、副液室と主液室を減衰オリフィスで連結するとともに、インシュレータを上方へ向かって略山型に主液室内へ突出させたものがある。
エンジンマウントとして使用する場合は、インシュレータに一体化した内側金具にエンジンを取付け、液室を囲む外側金具を車体へ取付けるようにしてあり、エンジンを吊り下げ支持することにより、吊り下げ式マウントとも称される。
このような倒立型液封マウントの一例について、本願発明の
図3に相当する断面図を
図9に示す。
図9の(A)は、倒立型液封マウントのマウント軸Lに沿う縦断面(
図9の(B)におけるA−A線に沿う方向の断面)、
図9の(B)は横断面(
図9の(A)におけるB−B線に沿う方向の断面)を示す。この倒立型液封マウントは、エンジンへ取付けられる内側金具102と車体へ取付けられる筒状をなす外側金具103をインシュレータ108で連結し、外側金具の開口部をダイヤフラム104で覆い、内部を仕切部材105により主液室106と副液室107に区画し、主液室106及び副液室107を減衰オリフィス109で連通したものである。
【0003】
インシュレータ108は、中央部が略山型に上方へ突出する本体部110をなし、その周囲は径方向外方へ広がって外側金具103に達して一体にされる脚部112をなす。本体部110の周囲は、略V字状断面の環状液室106aが形成される。この環状液室106aは主液室106の一部であるとともに、マウント軸Lと軸直交方向における振動(以下、横方向振動という)により、環状液室106a内にて液体が環状流動を生じ、減衰オリフィス109における共振周波数よりも高い、高周波数域において、液共振を生じるようになっている。この液共振を環状液室共振ということにする。
さらに、本体部110には、脚部112の外側面から上方へ一体に突出し、上方へ開放された筒状をなす流動抵抗突起120及び130が連続一体に形成されている。この流動抵抗突起120及び130は、
図9の(B)に示すように、本体部110の周囲に同心円状をなしてリング状に形成され、環状流動に対して流動抵抗を生じるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、倒立型液封マウントは、環状液室共振が原因となって車体の振動悪化を招くことがあるため、この環状液室共振を抑制したり、共振周波数を変化させることが必要になる。このための手法として、上記従来例では、主液室内に突出する流動抵抗突起120及び130を設けて、その流動抵抗により液体流動をかき乱して動バネ定数の増大を抑制している。
【0006】
この従来例では、流動抵抗により共振パワーを減少させるものであるため、共振による動特性を改善するという直接的効果が減殺されると共に、共振パワーの減少に応じて反共振も小さくなるから、結果として反共振の動バネ定数上昇を抑制することになる。
しかし、流動抵抗突起120及び130は液体流動を攪乱させる必要上、それ自体に液体の大きな流動抵抗を受けるため、基部付近に応力集中が生じて亀裂等の発生原因となって耐久性が低下する。特に、液量が多くなる環状液室の最深部近傍に設けられる外側の流動抵抗突起120は必須であるが、この外側の流動抵抗突起120が外側金具103の近傍に設けられているため、脚部112の耐久性が低下してしまう。
すなわち、脚部112において、この流動抵抗突起120が設けられている外側金具103の近傍部は、横方向振動により最も応力集中が大きい部分であるため、流動抵抗突起120の付け根部分にも応力が集中し、その結果、脚部112における流動抵抗突起120の付け根部分に亀裂等を誘発させる。
したがって、流動抵抗突起120等の流動抵抗による動バネ定数の増大抑止によらない別の手段で環状液室共振に基づく動バネ定数の増大を抑制して、脚部112の耐久性を向上させることが求められる。
本願発明はこのような要請の実現を目的とする。
なお、本願において、環状液室共振の共振コントロールとは、環状液室共振の最大時における共振周波数のみならず、その反共振の周波数域までを含む範囲における共振周波数のコントロールを意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載した倒立型液封マウントは、
振動源側又は振動受け側のいずれか一方に取付けられる内側金具(2)と、他方に取付けられる外側金具(3)と、
内側金具(2)と外側金具(3)を弾性的に結合するインシュレータ(8)と、
外側金具(3)及びインシュレータ(8)、並びにこのインシュレータ(8)の開口部を覆うダイヤフラム(4)との間に形成される液室を下方の主液室(6)と上方の副液室(7)とに区画する仕切部材(5)と、
仕切部材(5)に設けられ、主液室(6)と副液室(7)を連通接続し、所定の低周波大振幅振動にて液共振する減衰オリフィス(9)と、
インシュレータ(8)の一部で、マウント軸(L)方向に沿って上方へ略山型に突出する本体部(10)と、
この本体部(10)の周囲に形成され、主液室(6)の一部をなす環状液室(6a)と
、
前記本体部(10)の外側部にマウント軸(L)
と平行に上方向へ突出して一体に設けられた制御突起(20)と、を備えるとともに、
前記環状液室(6a)は、マウント軸(L)と軸直交方向の横方向振動により、前記減衰オリフィス(9)の液共振周波数よりも高い周波数域にて環状液室共振を生じさせ、さらにこの環状液室共振の液共振周波数よりも高い周波数域にて反共振を生じさせ、
前記制御突起(20)
は、前記横方向振動による前記環状液室(6a)
内の環状流動により、前記環状液室共振による反共振のピーク周波数近傍にて弾性体共振
することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、前記本体部(10)の最小径部(10a)と前記外側金具(3)の内面に設けられているライナー層(8a)との距離をWとするとき、前記制御突起(20)は、前記最小径部(10a)から3W/5以下となる範囲に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は上記請求項1〜2のいずれか1項において、前記制御突起(20)が側面視で波打ち状をなすことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明は上記請求項1〜2のいずれか1項において、前記制御突起(20)が平面視で波打ち状をなすことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は上記請求項1〜4のいずれか1項において、
前記制御突起(20)は平面視でリング状をなして前記略山型をなす本体部(10)の斜面部上に設けられるとともに、
前記本体部(10)へ補強のためにインサートされたカップ部(2a)と側面視で重なる範囲に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1によれば、環状液室共振による反共振の周波数域にて弾性体共振させることにより、制御突起(20)の弾性体共振を利用して環状液室共振に基づく反共振ピークを下げることにより動バネ定数の増大を抑制するので、従来のような流動抵抗を利用して共振コントロールをするものと異なり、制御突起(20)を流動抵抗による応力が集中しにくいものとすることができる。このため環状液室共振に基づく動バネ定数の増大を抑制すると同時に本体部(10)の耐久性を向上させることができる。
【0013】
請求項2によれば、制御突起(20)の形成位置を本体部(10)の最小径部(10a)から3W/5以下となる範囲に設けたので、制御突起(20)は環状液室(6a)内における応力集中が少ない位置に設けることができる。このため、マウント軸(L)と軸直交方向における振動によってインシュレータ(8)が繰り返し弾性変形しても、制御突起(20)の破損を生じにくくすることができ、さらに耐久性を増大させることができる。
【0014】
請求項3によれば、制御突起(20)が側面視で波打ち状をなしているため、周方向へ部分的に剛性変化させて弾性体共振の共振周波数をコントロールさせることができる。
【0015】
請求項4によれば、制御突起(20)が平面視で波打ち状をなしているため、周方向へ部分的に剛性変化をさせることができ、これにより弾性体共振の共振周波数をコントロールさせることができる。
【0016】
請求項5によれば、制御突起(20)を本体部(10)にインサートされているカップ部(2a)と側面視で重なる範囲に形成したので、弾性変形が少なく応力集中の少ない場所に設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係るエンジンマウントの外観正面図、
図2はその2−2線断面図、
図3は
図2の3−3線断面図、
図4は
図2における一部を拡大して示す図である。
なお、
図1はエンジンマウント1を車体へ取付けた使用状態を示し、図の上方側がエンジンマウント1の上方となる。
【0019】
また、エンジンマウント1の主たる振動の入力方向をZとし、この方向におけるエンジンマウント1の中心線をマウント軸線Lとする。さらに、このマウント軸線Lに直交する平面内において直交する2軸方向をX及びYとする。
以下の説明においては、X方向を車体の前後方向、Yを左右方向、Zを上下方向へ向けて配置するものとする。
【0020】
図1に示すように、このエンジンマウント1は倒立型であり、下部に設けられた内側金具2はエンジンハンガ1aを介してエンジン1bへ連結されている。
一方、筒状をなす外側金具3は、外周部に設けられたブラケット3eにより車体(図示省略)へ取付けられている。
この結果、エンジン1bはエンジンマウント1を介して車体へ吊り下げ支持されている。
4は、外側金具3の上部開口を覆うゴム等の弾性体からなるダイヤフラムである。
【0021】
図2に示すように、外側金具3及びダイヤフラム4の内部には、仕切部材5により主液室6と副液室7が上下に区画されている。
主液室6は下方をインシュレータ8で覆われている。インシュレータ8はゴム等の適宜弾性部材からなる防振主体であり、その弾性変形によりエンジン1bからの入力振動を主体的に吸収する。
主液室6の周囲は外側金具3により覆われている。なお、主液室6を囲む筒状の本体筒部3aの内面には、インシュレータ8から連続一体に延びる薄いライナー層8aが積層一体化されている。
主液室6、副液室7及び後述する減衰オリフィス9には水等の非圧縮性の液体が封入されている。
【0022】
副液室7はダイヤフラム4により囲まれている。ダイヤフラム4の外周部は、支持金具4aと一体化され、支持金具4aに支持されている。
支持金具4aはリング状の金具であり、仕切部材5の外周部にて拡径部4bをなし、同じく仕切部材5の外周部に重なる外側金具3の拡径部3bの外方へ重なり、さらにカシメ部4cにて外側金具3の本体筒部3aと拡径部3bの間に形成される段部3cに重なり、ダイヤフラム4と外側金具3が一体化される。
【0023】
仕切部材5には、主液室6と副液室7を連通接続する減衰オリフィス9が設けられている。減衰オリフィス9は低周波数域における大振幅振動で液共振し、高減衰を実現する。
また、仕切部材5には、弾性膜5aが設けられ、減衰オリフィス9が目詰まりした高周波数域における小振幅振動に対して弾性変形することにより、主液室6側の内圧変動を吸収する。
【0024】
インシュレータ8は、中央部が略山型に上方へ突出する本体部10をなし、その周囲は径方向外方へ広がって本体筒部3aに達する脚部12をなす。
本体部10の内部には、内側金具2の上端部へ取付けられた剛性のカップ部2aがインサートされている。カップ部2aは上方へ開放されたカップ状をなし、その内部まで本体部10の弾性体が充填されている。
本体部10の外側壁11は、上すぼまりの曲面をなしている。
【0025】
本体部10は径方向外方へ広がる脚部12と連続一体化しており、脚部12は外周部で本体筒部3aの下部及び逆テーパー部3dへ弾性的に連結している。逆テーパー部3dは本体筒部3aの下部を下すぼまり状に傾斜させた部分であり、内側金具2が下方へ移動するとき、脚部12の外周部を支持して、脚部12に圧縮を含む弾性変形を生じさせるようになっている。
【0026】
脚部12の下面13は上方へ凸の湾曲面をなし、逆テーパー部3dの下端と内側金具2の上部側面をつないでいる。
脚部12の上面も下方へ凸の湾曲面をなして、本体筒部3aと外側壁11の下部とを連結し、主液室6の底部14をなす。
【0027】
本体部10の周囲は、外側壁11と脚部12及び本体筒部3aに囲まれた略V字状断面の環状液室6aが形成される。この環状液室6aは主液室6の一部であるとともに、マウント軸Lと軸直交方向における振動(以下、横方向振動という)により、外側金具3の本体筒部3aに対して本体部10が相対移動することに伴って、予め封入されている液体が、
図3における矢示aのように、マウント軸Lの回りに流動する環状流動を生じる部分である。
【0028】
この液体の環状流動により、減衰オリフィス9における共振周波数よりも高い、高周波数域において、液共振を生じるようになっている。この液共振を環状液室共振ということにする。
【0029】
次に、環状液室共振における共振コントロール関与部分の構造について説明する。
本体部10には、外側壁11から上方へ一体に突出し、上方へ開放された筒状をなす制御突起20が本体部10と連続一体に形成されている。この制御突起20は、
図3(
図1の3−3線断面図)に示すように、平面視でマウント軸L並びに本体部10の周囲に同心円状をなしてリング状に形成され、環状液室共振の共振周波数より高い特定の周波数にて弾性体共振をするように設定されている。
【0030】
図4にも明らかなように、本体部10の最小径部(頂部)10aと本体筒部3aの内面に形成されているライナー層8aとの距離をW、最小径部10aから制御突起20の外周側位置までの距離を設置距離wとするとき、制御突起20の設置位置は、設置距離wが3W/5以下程度となるように設定されている。
【0031】
制御突起20は所定の突出長さhをなしてマウント軸Lと平行に上方へ突出している。hは制御突起20の付け根部から制御突起20上端までの距離である。
また、本体部10が底部14から突出する高さを突出高さHとすれば、制御突起20の突出長さhはH以下に設定される。突出高さHは本体部10の底部14から上端までの距離である。
【0032】
制御突起20は本体部10の斜面状をなす外側壁11上に設けられ、予め本体部10へ補強のためにインサートされているカップ部2aと側面視で重なる範囲内へ位置するように設けられている。したがって、突出長さhは、制御突起20の上端位置が一定であれば、その設置距離wが長くなる(すなわち制御突起20の形成位置が径方向外側になる)ほど長くなり、逆に短くなるほど短くなる。しかも、カップ部2aと側面視で重なる範囲内は、弾性変形が少なく応力集中の少ない場所である。
【0033】
制御突起20は所定の肉厚T(肉厚が変化する場合は最小肉厚)を有する。
弾性体共振の共振周波数設定における設定要因は、本体部10の最小径部10aから基準位置Pまでにおける設置距離w、突出長さh及び肉厚Tである。
このうち、肉厚Tは従来例の流動抵抗を生じるための流動抵抗突起ほど厚くする必要がなく、所定の周波数にて膜共振が生じる程度に比較的薄くすることができるので、限られたスペースにおいて設けることが容易になり、設置の自由度が高くなる。
【0034】
図5は、制御突起20の径方向設定位置と耐久性の関係を示すグラフであり、縦軸に耐久性(加振回数)、横軸に制御突起20の最小径部10aからの設置距離wをとったものである。耐久試験は、一定の振幅の振動でエンジンマウント1を加振し、制御突起20の破損が生じるまでの加振回数を測定するものである。
【0035】
この図に明らかなように、設置距離wが、3W/5を超えると著しく耐久性が低下する。この耐久性低下は制御突起20の基部(付け根部)における亀裂の発生等によるものである。
すなわち、設置距離wが、3W/5を超えると、制御突起20の基部へ加わる応力集中が大きくなって耐久性が低下することを意味し、設置距離wが3W/5を超えると脚部12における弾性変形に伴う応力集中が大きくなる。
したがって、設置距離wが3W/5以下となる場所は、制御突起20の基部に対する応力集中が小さい場所となる。このため、制御突起20の径方向設定位置は、設置距離wが3W/5以下となるように設けるべきであり、好ましくはW/2以下となるように、より本体部10へ近くする。
【0036】
図6は突出長さhと共振周波数との関係を示すグラフである。
横軸に共振周波数、縦軸に突出長さhをとってあり、突出長さhと共振周波数の関係は直線状に変化し、突出長さhが長くなるほど、共振周波数は次第に低くなることを示す。
【0037】
このため、突出長さhの程度により共振周波数をコントロールでき、突出長さhは希望する共振周波数に応じて長さを設定される。
なお、前述したように、突出長さhは、制御突起20の上端位置が一定であれば、その設置距離wが長くなるほど長くなる。したがって、設置距離wが長いほど共振周波数は低くなり、逆に短くなるほど高くなる。
【0038】
次に作用を説明する。
まず、高周波数の横方向振動が入力すると、環状液室6a内にて環状流動が生じて、液共振(環状液室共振)が生じる。このとき、制御突起20はあまり流動抵抗にならないので、共振パワーは減少されない。
さらに、この環状液室共振周波数より高周波数側の入力振動にて、制御突起20が反共振のピーク周波数近傍にて弾性体共振をするように設定されているため、この弾性体共振により反共振のピークが下がる。これを
図7のグラフで示す。
【0039】
図7は縦軸に動バネ定数、横軸に周波数をとった動バネ曲線である。このグラフは、環状液室において横方向振動により、環状液室共振による第1共振と、弾性体共振による第2共振を生じることを示している。なお、図示した範囲より低い周波数域にて、マウント軸方向の振動(縦振動という)により減衰オリフィス9の液共振による液柱共振が生じているが、これは図示省略している。
【0040】
実線で示す本願発明の動バネ曲線は、A(周波数a)にて環状液室共振による第1共振のボトム(極小値、最大共振を示す)を生じ、その反共振のピーク(極大値)がB(周波数b>a)に生じる。
この第1共振の後に、制御突起20が弾性体共振することによる第2共振が生じ、C(周波数c>b)にてボトムが生じ、その反共振のピークがD(周波数d>c)で生じる。
【0041】
一方、本願発明のような弾性体共振を利用せず、かつ流動抵抗突起も設けず、単に環状液室共振のみを生じる従来例1は、仮想線で示す特性であり、E(周波数e;b<e<d)で環状液室共振に伴う反共振のピークを示す。
これに対して、本願発明は、制御突起20の弾性体共振による第2共振のボトムCにより、動バネ曲線は周波数cの前後で2つのピークB及びDが生じる二コブ状になり、周波数bからdの範囲で、ピークEを引き下げて低くしたような状態となって、この部分を低動バネ化する。
【0042】
また、本願発明のような弾性体共振を利用せず、流動抵抗突起による流動抵抗を利用する従来例2は破線で示す特性であり、F(周波数f)にて環状液室共振のボトムを生じ、G(周波数g)にて反共振のピークを示す。周波数f及びgはいずれもa及びbの近傍となっている。
【0043】
なお、流動抵抗を設けない従来例1では、A(周波数a)にて強い環状液室共振を生じ、その反共振のピークは最も高いE(周波数e)で発生する。
これに対して、従来例2の環状液室共振は流動抵抗により共振パワーが減少されるので、流動抵抗のない従来例1に比較して、液共振が弱くなり、ボトムが浅く、その反共振のピークは低くなる。
【0044】
このグラフより明らかなように、車体の振動悪化を回避することが要求される車体側の共振周波数m近傍部にて要求される動バネ定数の上限をMとするとき、従来例1及び2では、周波数m近傍部における動バネ定数がMより高くなって、要求されるレベルの低動バネを実現できない。
【0045】
一方、本願発明では、M以下となり低動バネを実現できている。このため、車体側の共振周波数m近傍において低動バネを実現し、車体の振動悪化を抑制することができる。
しかも、本願発明は、従来例1に対して、環状液室共振の反共振のピークがEからB及びDへと大きく下げられた状態となり、制御突起20の弾性体共振によるボトムC及びその前後に二コブ状をなす反共振のピークB及びDにより、周波数mの近傍領域は、十分に低動バネ化している。
【0046】
さらに、本願発明は環状液室共振のコントロールを流動抵抗に依存せず、制御突起20を応力集中が小さい場所に設けることができるため、耐久性が著しく向上している。
したがって、本願発明は従来例2のような流動抵抗に依存することなく、弾性体共振によって環状液室共振をコントロールすることで顕著な耐久性も実現できた。
【0047】
図8は別実施例を示す。この図は、
図3に対応するものであり、制御突起20Aが平面視で単純なリング状ではなく、波打ち状になっていることに特徴がある。他の構造は前実施例と同じである。
このように、波打ち状にすると、周方向における部分的な剛性変化により、弾性体共振における共振周波数を調整することができる。
【0048】
また、この例では、制御突起20Aが平面視において波打ち状をなすものであるが、側面視で上端が波打ち状をなすように形成してもよい。すなわち、側面視にて、制御突起の上端が高低に変化することにより波打ち状をなすものである。このようにしても、制御突起が波打ち状をなすことに変わりはなく、やはり周方向において部分的な剛性変化を生じ、弾性体共振における共振周波数を調整することができる。
【0049】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、用途はエンジンマウントに限らず、サスペンションマウント等が可能である。