【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の従来技術に基づいて、本発明の課題は、測定結果の品質を向上可能な、渦流量計および渦流量計の動作方法を提供することである。
【0005】
上記課題は、本発明に係る、少なくとも1つの慣性センサが渦流量計に作用する寄生振動を検出するために付加的に設けられている渦流量計により解決される。慣性センサは通常は微小電気機械素子であり、角速度センサ、加速度センサおよび磁気センサから構成される。これらは、動き、配向および位置を測定するために慣性および/または地磁気場を用いる。複数の慣性センサを1つの慣性測定ユニットに組み込むことにより、動きの6つの自由度(3つの空間軸に関する並進および回転)が測定可能である。慣性センサについて以下で述べるが、意味するものは、常に、単一の動きの自由度を検出するための単一の慣性センサ、および、複数の動きの自由度を検出するための、異なる複数の慣性センサを1つの慣性測定ユニットに組み合わせたものである。渦流量計のセンサユニットは、渦測定信号を検出するよう機能し、ピックアップともいわれる。
【0006】
慣性センサは有利には最適な音響的結合で渦流量計に取り付けられ、渦流量計に作用する寄生振動は慣性センサにより検出可能である。好ましくは、本発明に係る慣性センサは、1つまたは複数の、好ましくは3つの垂直な空間軸に対して感度を有する加速度センサである。
【0007】
外側から渦流量計に作用する寄生振動は、たとえば、ポンプ、タービンまたはバルブおよび配管系に生じる他の流れの影響により生じる。慣性センサ(たとえば加速度センサ)の測定信号の評価により、渦流量計の渦測定信号は補正および評価可能であり、測定結果の質は改善される。
【0008】
渦流量計の製造コストは、渦流量計に設けられた測定および評価回路の基板に慣性センサを設ける第1の実施形態においては低減される。慣性センサは測定および評価回路基板に設けられるため、基板の製造における自動化工程により好適に取り付けられ、接続されるので、慣性センサの設置の労力は可能な限り低く維持される。測定および評価回路基板は、通常は渦流量計のケーシングに接続され、配管系に由来し、渦流量計に作用する振動は、ケーシングおよび基板上に拡がり、慣性センサにより検出可能である。
【0009】
渦流量計に作用する寄生振動を有利に検出するため、慣性センサがケーシングに取り付けられた別の実施形態が提供される。寄生振動はこの実施形態の渦流量計の要素により即時にピックアップされ、渦測定信号の補正に用いることができる、慣性センサは、ここでは、ケーシングに硬く、たとえばネジ、接着剤により取り付けられている。慣性センサをケーシングに取り付ける代わりとして、慣性センサが渦流量計の測定管に直接取り付けられた別の有利な実施形態も提供される。測定管に慣性センサを直接取り付けることにより、とりわけ配管系を通って直接測定管上を拡がる寄生振動を検出することができ、たとえば個々の要素による減衰による寄生振動の変化は生じない。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、慣性センサは特定の複数の空間軸にのみ、有利には、流量測定のために渦流量計のセンサユニットが感度を有する空間軸にのみ感度を有する。この実施形態は、センサまたはセンサユニットが1つのまたは2つの空間軸にのみ感度を有し、寄生振動の評価が、渦センサユニットにより検出されない空間方向において必要ではない渦流量計に特に適している。慣性センサ(有利には加速度センサ)は流量測定のために同様に評価される空間軸に対してのみ感度を有する。
【0011】
渦流量計の設計に依存して、有利には、ケーシングおよび測定管に依存して、複数の慣性センサが渦流量計の異なる位置に取り付けられ、有利には各センサが特定の1つの空間方向にのみ感度を有する場合に、別の実施形態が有利であることが示される。渦流量計のこの実施形態により、渦流量計の異なる領域の異なる空間方向に異なる程度で作用する寄生振動を検出することができ、たとえば、とりわけ、振動の一部が1つの特定の空間方向に強く作用する位置において、この振動の一部を特別に検出する加速度センサを設置することが有利である。
【0012】
結果として、渦流量計は、たとえば評価および測定回路の基板に取り付けられたx方向に感度を有する加速度センサと、たとえばケーシングに取り付けられたy方向に感度を有する加速度センサと、たとえば測定管に取り付けられたz方向に感度を有する加速度センサとを有してよい。もちろん、空間方向および加速度センサの位置の選択に関しては、多くの組み合わせが可能である。さらに、3つの空間方向のすべてに感度を有する慣性センサが3つの上記位置のそれぞれに設けられ、3つの慣性センサの測定信号が互いに比較可能なようにしてもよい。
【0013】
別の実施形態では、少なくとも1つの慣性センサが渦流量計を取り囲む配管系に設けられているものが特に有利であることが示される。このような慣性センサはたとえば配管系に磁石で取り付けられているが、有線または無線により渦流量計の測定および評価回路にさらに接続されている。
【0014】
このようにして、外側に設けられた慣性センサの測定信号を渦流量計の評価のためにさらに用いることができる。3つの空間方向すべてに感度を有する加速度センサが配管系の各端部の渦流量計の両側に設けられ、たとえば、寄生振動または異なる寄生振動の発生源をより精確に局所化可能である。
【0015】
渦流量計の測定信号に影響する寄生振動を慣性センサの測定信号の評価において識別し、渦測定信号の処理を慣性センサの評価された測定信号により少なくとも部分的に制御する、渦流量計の動作方法によっても上記課題は解決される。慣性センサの測定信号は、渦流量計に影響する寄生振動を識別するために適切な方法を用いて評価される。慣性センサ(好ましくは加速度センサ)の測定信号の分析により、寄生振動を異なる振動のカテゴリに分類することができる。すなわち、一方では、短期の影響から生じるような振動(たとえばバルブ動作)に割り当てられ、他方では、たとえば配管系において動作するポンプおよびタービンから生じる長期の一定した振動に割り当てられる。
【0016】
寄生振動の種類に応じて、慣性センサの評価された測定信号に基づいて渦信号の更なる処理が制御される。たとえば、相応する寄生振動と重なる渦測定信号は破棄され、または、寄生振動は(少なくとも部分的に)寄生振動に好ましく適応されたフィルタにより除去される。
【0017】
好ましい実施形態では、フィルタパラメタが慣性センサからの評価された測定信号に少なくとも部分的に基づいている適応フィルタにより、渦測定信号を処理することが有利であることが示される。渦測定信号の処理または後処理は、最終的に慣性センサの測定信号の特性に依存する。適応フィルタのパラメタは、最終的に、相応する寄生振動の種類および特性に対して手動でまたは自動で適応化され、有利なフィルタ性能が常に実現される。短期のノイズについては、たとえば相応する渦測定信号の完全な除去が適しており、一方で、長期のノイズについては、相応する渦測定信号の選択的なフィルタ除去が必要である。
【0018】
別の実施形態では、慣性センサの測定信号の振幅スペクトルを形成し、この振幅スペクトルを用いて適応フィルタのフィルタパラメタを決定する場合に、フィルタのパラメタ化が好ましい。慣性センサにより記録された測定信号の振幅スペクトルを用いて、たとえば、連続動作するタービンおよびポンプの寄生振動を測定信号中で識別することができる。慣性センサの測定信号の振幅スペクトルは、たとえば高速フーリエ変換または離散フーリエ変換を用いて計算される。ここで、1ブロック内のすべての離散スペクトル要素は常に計算される。
【0019】
たとえば、評価中のエネルギーおよび/またはメモリの節約を行うため、すなわち計算の労力が低減されるので、ブロックダイアグラムではないアルゴリズムを参照してもよい。ここで、完全な振幅スペクトルが1つのステップで計算されず、振幅スペクトルはステップ順に決定され、完全な振幅スペクトルは1回の全体の実行の後に得られる。たとえば、スライド離散フーリエ変換またはスライドゲーツェルアルゴリズムが計算アルゴリズムとして適している。単一の離散スペクトル部分は上記アルゴリズムを用いて計算され、この計算は周波数選択的に行われる。配管系の振動は、多くは、50Hz未満の周波数の低周波数範囲で生じる。
【0020】
これに関して、本方法の別の実施形態では、振幅スペクトルに生じるピークを適応フィルタのためのパラメタとして用いるときに特に有利であることが示される。フィルタのパラメタ化は人手で行われ、すなわちフィルタパラメタは作業者により設定され、または、評価および測定回路により自動で行われる。帯域消去フィルタ、有利にはノッチフィルタがたとえば渦測定信号のフィルタとして適しており、これは振幅スペクトルを用いて寄生振動(寄生周波数)を渦測定信号から除去し、これらの寄生振動が除かれたものが通される。
【0021】
ここで、寄生周波数が渦測定信号の測定周波数の範囲内にあるか、または、寄生周波数が測定信号の周波数の外側にあるかについて区別されるべきである。測定周波数の範囲内のノイズは基本的に同様にフィルタ除去可能であるが、有用な信号、すなわち渦測定信号が同じ周波数を有し、したがって同様に少なくとも部分的にフィルタ除去される危険性が存在する。渦測定信号と寄生振動とが非常に狭い周波数範囲で重なる限り、たとえば、対応する信号報告が発せられる。
【0022】
たとえばバルブの動作によって発生する短期の寄生振動を識別し、分類するため、別の実施形態では、振幅曲線を評価するために慣性センサの測定信号を測定し、振幅曲線を微分し、突然の変化を識別することができる。まずは、好ましくはデモジュレータによって慣性センサの振幅変調された信号から慣性センサの測定信号の振幅曲線を決定し、ついで、振幅曲線を時間で微分し、微分した振幅曲線を評価して、寄生振動の突然の変化を識別および評価することができる。この評価を用いて識別された寄生振動はたとえば評価および測定回路により破棄されるか、または、それぞれ適応フィルタにより除去される渦測定信号となる。渦測定信号はこの場合寄生振動から分離されず、これはいずれにせよ渦測定信号の短期のノイズに過ぎないため、しかし破棄される。
【0023】
渦測定信号を破棄することに加えてまたはその代わりに、別の実施形態では、たとえば測定がその時点で不可能であることを示す信号報告が生成されて発せられる。渦測定信号の破棄または除去、あるいは、信号報告の発信は、好ましくは、微分した振幅信号が予め定めたしきい値に達するまで、好ましくは超えるまで行われる。
【0024】
さらに、別の実施形態では、慣性センサの測定信号を振幅曲線の評価のために測定し、平均振幅を所定期間にわたって、有利には可変な時間フレームにわたって測定する。振幅曲線は、一方で、デモジュレータにより振幅変調された測定信号から好ましくは決定される。所定期間とは好ましくは可変な時間フレームであり、すなわち、一定に進む振幅信号について等量の時間分を後方に評価し、平均化することにより、平均化された振幅に関する値を得る。このとき、平均化された振幅の値の大きな変化は寄生振動の存在を示す。
【0025】
本発明の別の実施形態では、平均化された振幅が予め定めたしきい値に達したとき、信号報告が生成され、および/または、渦測定信号は破棄される。渦測定信号は、たとえば、評価および測定回路により破棄されるか、または、適応フィルタにより除去される。任意選択的な信号報告は、たとえば、寄生振動が存在することにより、その時点では有意な渦測定信号を測定できないことを示す。好ましくは、渦測定信号は、平均化された振幅が予め定めたしきい値に達するまで除かれるか、または、フィルタ除去される。
【0026】
好ましくは、慣性センサの測定信号の評価は、3つの上記評価方法の少なくとも2つ、すなわち、たとえば微分した振幅曲線の評価と並行した振幅スペクトルの評価、または、微分した振幅曲線の評価に並行した平均化された振幅の評価と並行した振幅スペクトルの評価と同時に行われる。3つの評価方法を用いた同時評価が特に好ましい。
【0027】
詳細には、本発明に係る渦流量計および本発明に係る渦流量計の動作方法の複数の可能な実施形態および改善が存在する。ここで、請求項1および6にかかる請求項、ならびに、以下の好適な実施形態を図面とともに参照されたい。