【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1における車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。車載カメラシステムは撮像部(カメラ)を含む映像送信装置1と画像認識部を含む映像受信装置2とを備え、両者の間をネットワーク3を介して接続する。撮像部からの映像を画像認識部で解析することで、ユーザ(運転者)に警報を出力するなどの運転支援機能を実現する。
【0014】
映像送信装置1は、撮像部(カメラ)11、画像処理部12、エンコーダ13、ネットワークインターフェース(IF)14、エンコーダ制御部15を有する。撮像部11は、被写体からの入力光の光電変換を行ない映像信号に変換する。本例の場合、撮像部11は車両の前方または後方を撮影する位置に取り付ける。
【0015】
画像処理部12は、撮像部11からの映像信号にコントラスト補正、輪郭強調、ガンマ補正、ノイズ除去、フィルタ処理、鮮鋭化処理、色彩補正などの画像処理を行う。
エンコーダ13は、画像処理後の映像信号に圧縮符号化処理(エンコード処理)を行ない映像ストリームに変換する。エンコード処理では符号化パラメータ(エンコード処理パラメータ)を変えることで、様々な映像フォーマットの映像信号に変換する。このパラメータには後述するように、画像サイズ、フレームレート、ビット深度、色フォーマット等が含まれる。さらには、注目領域のマクロブロックの量子化ステップ幅を小さくすること、デブロッキングフィルタの有無を選択することなどの設定もここで行う。
【0016】
ネットワークIF14は、映像ストリームのパケット化(パケッタイズ処理)を行い、ネットワーク3を介して映像受信装置2へ映像ストリーム30を送信する。一方ネットワークIF14は、映像受信装置2から送信されたパケット(符号化制御情報31)を受信し、デパケット化(デパケッタイズ処理)してエンコーダ制御部15へ送る。
【0017】
エンコーダ制御部15は、ネットワークIF14から受け取った符号化制御情報31に基づいて、エンコーダ13に対してエンコード処理パラメータを設定する。この符号化制御情報31には後述するように、映像フォーマット情報、注目領域の情報、デブロッキング有無情報、それにエンコード処理開始/停止の情報などが含まれる。このようにしてエンコーダ13は、映像受信装置2から指示されたエンコード条件(例えば映像フォーマット)に従いエンコード処理を行う。
【0018】
映像受信部2は、ネットワークIF21、デコーダ22、出力部23、表示部24、認識制御部25、画像認識部26を有する。ネットワークIF21は、映像送信装置1からネットワーク3を介して送信される映像ストリーム30を受信し、デパケッタイズ処理を行う。
【0019】
デコーダ22は、映像ストリームを伸張復号化処理(デコード処理)して再生画像を生成する。再生画像は出力部23と画像認識部26に供給される。出力部23は、再生画像を表示部24にて表示させるとともに、画像認識部26で生成された警報などのその他情報29を外部へ出力する。
【0020】
画像認識部26は、再生画像を入力して運転支援アプリケーションに従って画像認識処理を行う。例えば入力映像に対して白線認識を行い、車線(白線)を逸脱しそうになった場合車線逸脱警報を生成して出力部23に送る。そのとき出力部23は、表示部24で表示する映像に警報を示すOSD(On Screen Display)を重畳して出力する。あるいはその他の情報29として、警報を示す音声情報や、車線を逸脱しないようにハンドルを制御するためのハンドル制御情報を出力する。
【0021】
認識制御部25は、車両内に設けた走行状態検出部4から走行状態情報40を取得し、画像認識部26の動作を切り替える。走行状態情報40とは、ギアの状態(パーキング、ドライブ、バック)、車速情報、操舵角情報等とともに、ユーザからの指示の情報、外部CPUからの指示の情報をも含む。認識制御部25は、走行状態情報40に対応して画像認識部26の行う処理(運転支援アプリケーション)を予め定めておき、これに従って画像認識部26を制御する。
【0022】
さらに認識制御部25は、画像認識部26の行う処理に応じてこれに適した映像のフォーマットを予め定めておく。そして、画像認識部26の制御と連動して、ネットワークIF21を介して映像送信装置1に符号化制御情報31を送信する。符号化制御情報31には、映像フォーマット以外に、注目領域の情報、デブロッキング有無の情報、エンコード処理開始/停止の情報などが含まれる。
【0023】
伝送路となるネットワーク3にはイーサネット(登録商標)を使用するが、他の通信方式を用いても良い。ネットワーク3には、映像送信装置1から画像認識に適した形式でエンコード処理された映像ストリームを送信することで、画像認識の認識率を高めるとともに、ネットワーク3の限られた帯域を有効に利用する。またネットワーク3には、映像受信装置2から符号化制御情報31が効率良く送信される。
【0024】
図2は、画像認識部26の機能を示す図である。本実施例で備える運転支援アプリケーションの例と、これを実現するための画像認識処理と、画像認識処理に必要な映像フォーマットの関係を示す。運転支援アプリケーションとしては、通常走行時に使用する車線逸脱警報機能、後退走行時に使用する衝突防止機能、また後退走行時に使用する後方映像表示機能を挙げている。これらの機能を実現するため、車線逸脱警報には白線認識処理、衝突防止には障害物(車両認識を含む)認識処理を行う。後方映像表示では画像認識処理は行わない。
【0025】
次に画像認識処理のための映像フォーマットであるが、従来ワイヤーハーネスなどを用いて非圧縮で映像を送信する時は、映像フォーマットの各要素(画像サイズ、フレームレート、色フォーマット、ビット深度)を最高スペックにて送信していた。そして受信側において、画像認識処理に応じて必要な映像フォーマットに変換して処理していた。具体例でいえば、送信する映像フォーマットのスペックは、色フォーマットはYUV4:2:0形式(Y:輝度信号、UV:色差信号)、ビット深度は10ビット、画像サイズは1280x720画素、フレームレートは30枚/秒(fps)としていた。以後、映像フォーマットのスペックを略して表記し、この場合には「1280x720/30fps(YUV10ビット)」とする。
【0026】
しかしながら、画像認識処理に必要な映像フォーマットは最高スペックとは限らず、認識処理の種類により異なっている。また、全ての運転支援アプリケーションが同時に動作することは通常ありえない。例えば、車線逸脱警報は通常走行時に使用するが、後退走行時には使用しない。すなわち、限られた帯域のネットワークを介し、運転支援アプリケーションに関係なく常に最高スペックの映像を伝送するのは効率が良くない。
【0027】
以上により本実施例では、ネットワーク3の伝送効率を考慮し、運転支援アプリケーション毎に最適な映像フォーマットを割り当てる。具体的には、車線逸脱警報の白線認識処理に必要な映像フォーマットは、「640x360/30fps(Yのみ10ビット)」とする。衝突防止の障害物認識処理に必要な映像フォーマットは、フレームレートを下げて「640x360/15fps(YUV10ビット)」とする。また、後退走行時の後方映像表示に必要な映像フォーマットは、表示部24に高画質映像を表示するために画像サイズを上げて「1280x720/30fps(YUV8ビット)」とする。勿論これらの設定は一例であり、使用状況に合わせて適宜設定するものとする。
【0028】
このように本実施例の車載カメラシステムでは、車両に取り付けた走行状態検出部4によりギア状態等を検知して走行状態情報40を映像受信装置2に送る。映像受信装置2の認識制御部25は、走行状態情報40に応じて運転支援アプリケーションを選択し、画像認識部26に対して対応する画像認識処理を指示する。また認識制御部25は、選択した運転支援アプリケーションに適した映像フォーマットを指定する符号化制御情報31を映像送信装置1へ送信する。映像送信装置1は符号化制御情報31に従ってエンコーダ13を制御してエンコード処理を行い、指定された映像フォーマットの映像ストリーム30を映像受信装置2に送信する。
【0029】
次に、本実施例の運転支援アプリケーションを用いた運転支援機能を具体的に説明する。映像送信装置1は車の前方と後方の映像を取得するために、複数の撮像部(カメラ)11を取り付けているものとする。
【0030】
図3は、車両走行状態のパラメータとして車両のギアの状態遷移を示す図である。ギア状態として、パーキング41、ドライブ42、リバース43の3つの状態が存在する。またギアの状態遷移として、パーキング41からドライブ42に切り替わる遷移401a、ドライブ42からリバース43に切り替わる遷移402a、リバース43からパーキング41に切り替わる遷移403aがある。逆に、ドライブ42からパーキング41に切り替わる遷移401b、リバース43からドライブ42に切り替わる遷移402b、パーキング41からリバース43に切り替わる遷移403bがある。このようにギアの状態遷移を取り上げたのは、後述のようにギア状態の切替時に制御信号を伝送するためである。
【0031】
図4は、ギアの状態と運転支援アプリケーションの関係を示す図である。各ギアの状態に応じて特定の運転支援アプリケーションが自動的に選択され動作する。さらに、ユーザの操作指示により特定の運転支援アプリケーションを動作させることもできる。ギアの状態がパーキング41のときは、運転支援アプリケーションは動作しない。ギアの状態がドライブ42のときは、前方映像を用いた車線逸脱警報が動作し、ギアの状態がリバース43のときは、後方映像を用いた衝突防止が動作する。また、ユーザの指示により後方映像の表示を行う。このユーザの指示は、例えばカーナビゲーションシステムの設定により、ギアの状態がリバース43のときは、後方映像表示が起動するように、予め指示しておいても良いし、走行中にユーザがボタン等により指示を出すとしても良い。
【0032】
図5は、車両走行状態と符号化制御情報の関係を示す図である。映像受信装置2の認識制御部25は走行状態情報40やユーザの指示を受けて、
図4に示した運転支援アプリケーションを実行させる。そして、運転支援アプリケーションに対応した符号化制御情報31を、ギアの状態遷移をタイミングとして映像送信装置1へ送信する。車両の具体的な運転を想定すると、送信する符号化制御情報31は次のようになる。
【0033】
ギアをパーキング41に入れてからエンジンを起動すると、映像送信装置1、映像受信装置2及び走行状態検出部4に電源が投入される。エンコーダ制御部15は初期設定を行い指示待ち状態となり、認識制御部25は初期設定を行い走行状態検出部4から走行状態情報40(ギアの状態)を受ける。最初のギアの状態はパーキング41なので運転支援動作は行わず、映像送信装置1や画像認識部26に対して何も指示を与えない。
【0034】
ギアをパーキング41からドライブ42に切り替えると、認識制御部25はギア状態の遷移401aを知り、画像認識部26に対し対応する車線逸脱警報のアプリケーション(白線認識処理)を起動させる。そして、車線逸脱警報に対応する符号化制御情報31として、エンコード開始を指示するエンコード開始情報と、そのときの映像フォーマット情報「640x360/30fps(Yのみ10ビット)」を映像送信装置1へ送信する。
【0035】
映像送信装置1のエンコーダ制御部15は、受け取った符号化制御情報31に基づいてエンコーダ13のエンコード処理パラメータを変更する。すなわちエンコーダ13は、フォーマット「640x360/30fps(Yのみ10ビット)」でエンコード処理を行い、生成した映像ストリーム30を映像受信装置2へ送信する。その結果、映像受信装置2の画像認識部26は、「640x360/30fps(Yのみ10ビット)」のフォーマットの映像を用いることになり、同一ビットレートでエンコードした「1280x720/30fps(YUV10ビット)」よりも高いPSNR(Peak Signal−to−Noise Ratio)の映像であるため、高い認識率を実現できる。
【0036】
次に、ギアをドライブ42からリバース43に切り替えると、認識制御部25はギア状態の遷移402aを知り、画像認識部26に対し対応する衝突防止のアプリケーション(障害物認識処理)を起動させる。そして、衝突防止に対応する符号化制御情報31として、エンコード時の映像フォーマットを「640x360/15fps(YUV10ビット)」に変更する指示を映像送信装置1へ送信する。その際、エンコード処理は継続するのでエンコード開始情報は送る必要がない。映像送信装置1のエンコーダ制御部15は、受け取った符号化制御情報31に基づいてエンコーダ13を制御し、エンコーダ13はフォーマット「640x360/15fps(YUV10ビット)」の映像ストリームを生成する。その結果、映像受信装置2の画像認識部26は、フルカラー(YUV10ビット)の映像を用いて、確実に障害物の認識を行うことができる。
【0037】
ここで、ギアがリバース43のときに、ユーザの操作により後方映像表示の指示を行った場合を説明する。ユーザから指示を受けた認識制御部25は、後方映像表示のアプリケーションを起動させる。そして、後方映像表示に対応する符号化制御情報31として、エンコード時の映像フォーマットを「1280x720/30fps(YUV8ビット)」に変更する指示を映像送信装置1へ送信する。また画像認識部26に対し認識処理を停止するよう指示する。その結果、映像受信装置2の表示部24には、画像サイズの大きくより解像度の高い映像が表示される。
【0038】
あるいは、衝突防止の運転支援アプリケーションを継続させたまま後方映像表示を実行することも可能である。その場合には、最高スペックの映像フォーマットである「1280x720/30fps(YUV10ビット)」を選択し、画像認識部26に対し障害物認識処理を継続するように指示する。このように最高スペックの映像フォーマットを用いることで、衝突防止機能と後方映像表示機能を両立させることもできる。
【0039】
次にギアをリバース43からパーキング41に切り替えると、認識制御部25はギア状態の遷移403aを知り、画像認識部26に対し運転支援アプリケーションを停止するよう指示する。また符号化制御情報31として、エンコード停止の指示を映像送信装置1へ送信する。このようにして、運転支援アプリケーションを使用しないパーキング41状態において、映像送信装置1や映像受信装置2の消費電力を削減する。
【0040】
上記以外のギア状態遷移(401b、402b、403b)についても同様であり、
図5には、認識制御部25から映像送信装置1へ送信する符号化制御情報31の一覧を示す。
【0041】
図6は、ネットワーク3上を流れるイーサネットパケットの構成を示す図である。符号化制御情報31はイーサネットパケットの形式で送信される。イーサネットパケットは、イーサヘッダ300と、データ部310と、フレームチェックシーケンス(FCS)320から構成される。イーサネットヘッダ300には宛先、送信元、パケットの長さ/タイプなどのヘッダ情報が格納される。データ部310には符号化制御情報311を格納し、これには上記したエンコード開始/停止情報や映像フォーマット情報などが含まれる。FCS320はパケットエラーをチェックするための情報である。
図6では、エンコード開始/停止情報と映像フォーマットを同一パケットに格納しているが、これらを分離して異なるパケットに格納しても良い。
【0042】
本実施例の構成によれば、映像受信装置2では、車両の走行状態情報40やユーザの指示に応じて画像認識部26が使用する映像のフォーマットを決定し、認識制御部25は映像送信装置1に符号化制御情報31を送信する。映像送信装置1では、エンコーダ13は受信した符号化制御情報31に基づいた映像フォーマットにて映像信号をエンコード処理し、映像ストリーム30を映像受信装置2に送信する。その際ネットワーク3を伝送する映像ストリーム30は、制限されたビットレート内で画像認識処理に応じて最適なフォーマットで伝送されるので、ネットワーク3に負担を掛けずに画像認識部26は高い認識率にて認識動作を行うことができる。
【0043】
さらに、符号化制御情報31の中にエンコード開始/停止情報を含めることで、映像受信装置2が画像認識処理を停止している期間は映像送信装置1のエンコーダ13のクロックを停止させることにより、映像送信装置1の消費電力を削減する効果がある。
【0044】
以下、本実施例の変形例を説明する。まず、運転支援アプリケーションの種類は
図2に示したものに限定されず、次のような機能が可能である。
映像受信装置2から映像送信装置1へ符号化制御情報31を送るタイミングは、ギア状態の遷移(すなわち運転支援アプリケーションの切り替え)時だけでなく、画像認識処理の途中に送るようにしても良い。例えば、画像認識処理の前処理として粗探索を行って注目領域を決定し、注目領域のみを実際に画像認識処理することもできる。その場合には、映像送信装置1への符号化制御情報31として注目領域情報をリアルタイムで送信することで、エンコーダ13のエンコード処理パラメータを変更し注目領域の量子化ステップ幅を小さくするよう制御する。これより、実際に画像認識処理で使用する注目領域の画質を向上させ、認識率をさらに高めることができる。
【0045】
走行状態情報40として車速情報を用いて、現在の車速に応じて映像フォーマットのフレームレートを制御することも可能である。例えば、高速走行時にはフレームレートを高くして映像の急激な変化に追従して画像認識を行うことで、より安全な運転走行が可能になる。
【0046】
符号化制御情報31に含める映像フォーマットの情報として、画像サイズ、フレームレート、ビット深度、色フォーマットの例を説明したが、画像認識処理の認識率を向上させるためにさらに情報を追加しても良い。例えば、前フレームの画像認識結果を使用して現フレームの画像認識処理を行う場合、映像受信装置2から映像送信装置1へ冗長化伝送を要求する冗長化要求情報を送信する。これにより、エンコーダ13またはネットワークIF14にて映像ストリーム30の冗長化を行い、エラー耐性を高めることにより、伝送経路などでのエラー発生による画像認識の誤動作を防ぐことが可能になる。
【0047】
画像認識部26で処理する映像信号がYUV形式ではなくRGB形式(R:レッド、G:グリーン、B:ブルー)の場合には、RGB形式のエンコード処理を指示するRGB形式情報を送信することで、色フォーマット変換時の変換誤差を軽減することができる。また、画像認識処理でR形式のみが欲しい場合には、R形式情報を送信することで、YUV形式全て伝送して映像受信装置2でRGB形式に変換してから、R形式を画像認識処理に適応するといった無駄な処理を無くすことができる。
【0048】
H.264など次世代映像符号化においては、ブロック境界を視覚的に目立たなくするデブロッキングフィルタ処理が用いられ、これに合わせてデブロッキングフィルタを制御するデブロッキングフィルタ制御情報を追加して送信する。例えば、映像信号を外部表示装置に出力するときはデブロッキングフィルタ機能をオンとし、画像認識処理に使用するときはデブロッキングフィルタ機能をオフとする。これにより、画像認識処理においてエッジ情報を用いて認識処理を行う場合に、ブロック境界と共にエッジ情報も鈍ってしまうことを防止し認識率の低下を防止することができる。
【0049】
画像認識処理で特に重要なエリアを重視エリア情報として送信する。例えば、車両検知を行い衝突する前にブレーキをかけるシステムでは、正面にある車の距離が重要なため、車の前方の画像が重要であり、前方の左右の画像はさほど重要ではない。そこで、画像の前方を重視エリア情報として送信することで、重視エリアの内部は量子化ステップを小さくし、代わりに重視エリアの外部の量子化ステップを大きくするという制御ができる。これにより、ビットレートを保ったまま、重視エリアの内部のみ高画質に伝送することができるので、認識率の低下を防止することができる。
【0050】
符号化制御情報31を伝送するために、映像ストリーム30のパケットを伝送するイーサネットを共用する構成としたが、符号化制御情報31については専用のイーサネットを用いて伝送しても良いし、車内LAN(Local Area Netowork)の規格であるCAN(Controller Area Network)やMOST(Media Oriented Systems Transport)などのネットワークを使用しても良い。
【実施例3】
【0053】
図8は、第3の実施例における車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。本実施例では、実施例1(
図1)の映像送信装置1に対し画像処理部12を制御する画像処理制御部16を追加し、そのための制御情報を映像受信装置2から送信する構成とした。そして、画像処理の制御情報についても車両の走行状態情報40に基づいて生成する。
図1と同一機能のブロックには同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0054】
映像受信装置2の認識制御部25は、走行状態情報40を受けて画像認識部26の動作を切り替える際に、映像送信装置1に対し符号化制御情報31だけでなく、画像処理部12の画像処理パラメータを変更するための画像処理制御情報32を送信する。画像処理部12の画像処理パラメータとしては、コントラスト補正、輪郭強調、ガンマ補正、ノイズ除去、フィルタ処理、鮮鋭化処理、色彩補正などが含まれる。以下、輪郭強調を例として実施例の動作を具体的に説明する。
【0055】
車両の走行状態(ギアの状態)がパーキング41からリバース43に切り替わった場合、認識制御部25はギア状態の遷移403bに対応する符号化制御情報31として、衝突防止機能(障害物認識処理)に用いる映像フォーマット「640x360/15fps(YUV10ビット)」を選択する。さらに画像処理制御情報32として、輪郭強調を施す画像処理パラメータを選択する。これは、画像認識部26で障害物認識を行う場合は、障害物の輪郭をはっきりさせるためである。そして両者の制御情報31,32をパケットに格納して、ネットワーク3を介して映像送信装置1へ送信する。
【0056】
映像送信装置1のネットワークIF14は、符号化制御情報31と画像処理制御情報32の含まれたパケット受信しデパケッタイズを行う。そして、符号化制御情報31をエンコーダ制御部15へ、画像処理制御情報32を画像処理制御部16へ送る。画像処理制御部16は受け取った画像処理制御情報32に基づいて、画像処理部12に対し輪郭強調の画像処理を行うよう設定する。その結果、映像送信装置1からは輪郭強調された映像の映像ストリーム30が送信され、映像受信装置2の画像認識部26における障害物認識の認識率をより向上させることができる。
【0057】
その他の画像処理の例としては、画像認識部26にて車線逸脱警報(白線認識処理)を行う場合、画像処理部12にて映像信号の色彩補正を行い、特に白色の被写体を強調する補正を行うようにする。これにより道路の白線に対する認識率をより向上させることができる。
【0058】
図9は、本実施例におけるイーサネットパケットの構成を示す図である。実施例1(
図6)のイーサネットパケットのデータ部310に、画像処理制御情報312を追加した構成となる。ここでは符号化制御情報311と画像処理制御情報312を同一パケットに格納して送信する構成としたが、各々異なるパケットに格納して送信しても良い。
【0059】
本実施例では、車両の走行状態情報40やユーザの指示に応じて画像認識部26が使用する映像のフォーマットとこれに適した画像処理のパラメータを決定し、認識制御部25は映像送信装置1に符号化制御情報31と共に画像処理制御情報32を送信する。映像送信装置1では、画像処理部12は受信した画像処理制御情報32に基づいた画像処理パラメータにて映像信号を処理する。またエンコーダ13は、受信した符号化制御情報31に基づいた映像フォーマットにて映像信号をエンコード処理し、映像ストリーム30を映像受信装置2に送信する。その結果、ネットワーク3を伝送する映像ストリーム30は、制限されたビットレート内で画像認識処理に応じて最適なフォーマットで伝送されるだけでなく、画像認識部26での画像認識処理に適した画像処理が施されているので、画像認識部26での認識率をより向上させることができる。
【0060】
本実施例では、映像受信装置2から映像送信装置1へ符号化制御情報31と画像処理制御情報32を共に送信する構成としたが、符号化制御情報31は送信せずに画像処理制御情報32だけを送信する構成としても良い。また本実施例では、画像処理パラメータとして輪郭強調の例を説明したが、これに限らず、画像認識部26の行う認識処理に応じてこれに適合した画像処理パラメータを設定すれば良い。
【実施例5】
【0066】
実施例5では、複数の映像送信装置を備えた車載カメラシステムについて記載する。
図11は、第5の実施例における車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。ここでは実施例3(
図8)に記載した映像送信装置1と同一構成の複数(ここでは2台)の映像送信装置1a,1bと、映像受信装置2をネットワーク3を介して接続している。
【0067】
複数の映像送信装置1a,1bを接続することで、それぞれの撮像部11a,11bからの映像をそれぞれのエンコーダ13a,13bでエンコード処理し、映像ストリーム30a,30bを映像受信装置2に送信する。映像受信装置2の画像認識部26は複数の映像ストリーム30a,30bの映像を合成し、あるいは選択することで、より高度の運転支援機能を実現できる。例えば前方カメラと後方カメラの映像を合成し、前後両方向の危険防止機能を実現する。
【0068】
一方、映像受信装置2から複数の映像送信装置1a,1bに対して符号化制御情報31と画像処理制御情報32を送信するが、より高度の画像認識を行うためには、複数の映像を互いに連携させるとともに、符号化制御情報31a,31bと画像処理制御情報32a,32bを送信装置毎に個別に送信することが望ましい。そのための通信方式として、ユニキャスト通信(IPアドレスを指定した1対1通信)を使用することで、映像送信装置1a,1bに向けて異なる制御情報を含むパケットを送信することができる。
【0069】
なお、画像認識処理の種類や接続する映像送信装置の台数によっては、複数の映像送信装置1a,1bに同一の制御情報を送信したい場合もあり得る。その場合には、マルチキャスト配信またはブロードキャスト配信を利用することで、映像送信装置1a,1bに向けて同一の制御情報を含むパケットを送信することができる。
【0070】
このように複数の映像送信装置を備えた車載カメラシステムでは、使用する運転支援アプリケーションに応じて、制御情報31,32の送信方式を選択できることが望ましい。すなわち認識制御部25は、画像認識動作の種類に応じて、ユニキャスト通信とマルチキャスト配信(またはブロードキャスト配信)を自動的に切り替えるよう制御する。これにより、映像送信装置1a,1bに対して必要な制御情報を少ないパケット数で送信可能となり、ネットワーク3の負担を軽減することができる。
【0071】
本実施例では2台の映像送信装置1a,1bを備えた車載カメラシステムの例を記載したが、3台以上の複数台の映像送信装置を備える場合にも同様に適用できることは言うまでもない。また、映像受信装置から複数の映像送信装置に対し、符号化制御情報と画像処理制御情報の両方を送信する例を記載したが、いずれか一方を送信する構成でも良い。
【0072】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成で置き換えたり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することも可能である。