(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という。)につき適宜図面を参照して説明するが、本発明の実施の態様は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の変形が可能である。
【0015】
以下の実施形態では、本発明に係るスイッチング電源を厚さ10mm以下にすることで、このスイッチング電源を内蔵する液晶テレビやプラズマテレビのセット厚みの薄型化に貢献する例について述べる。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態につき、
図1〜
図6、及び
図15を用いて説明する。
【0017】
≪回路図≫
図2は、本発明に係る第1実施形態のスイッチング電源の構成を示す回路図である。
図2において、交流電源1から供給される交流電力は、ダイオードブリッジ2によって全波整流され、ダイオードブリッジ2の出力電圧は、
図1に示す全波整流電圧Vacとなる。また、ダイオードブリッジ2の直流側の正負端子間には、入力コンデンサ16(Cin)が接続される。入力コンデンサ16は入力フィルタ用であり、容量は数μFである。ダイオードブリッジ2と入力コンデンサ16との間の入力電流Isnsが、電流計測器14によって計測される。
【0018】
また、ダイオードブリッジ2と入力コンデンサ16に対して並列に、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)5c(Q3)と瞬停補償コンデンサ4(Ctk)との直列対が接続される。パワーMOSFET5cは、NチャンネルのパワーMOSFETであり、ソースが入力コンデンサ16の正極側に、ドレインが瞬停補償コンデンサ4に接続され、瞬停補償コンデンサ4の放電を阻止する向きとなっている。瞬停補償コンデンサ4は瞬停補償用のコンデンサであり、その容量は瞬停補償時間により変わるが、100μF〜1000μF程度を想定している。
【0019】
また、絶縁トランス9(Tr)の1次巻線N1とパワーMOSFET5a(Q1)との直列対が、入力コンデンサ16と並列に接続される。このとき、1次巻線N1の巻き始め(
図2の黒丸印側)は入力コンデンサ16の正極側と接続される。さらに、コンデンサ8(Cc)とパワーMOSFET5b(Q2)との直列対が、絶縁トランス9の1次巻線N1の両端に接続される。このとき、パワーMOSFET5aのドレインとパワーMOSFET5bのソースとが接続される。
【0020】
絶縁トランス9の2次巻線N2の巻き終わり側にはダイオード10a(D1)のアノードが接続され、ダイオード10aのカソードと2次巻線N2の巻き始めの間に出力平滑コンデンサ11(Co)が接続される。出力平滑コンデンサ11には負荷12が並列接続される。
【0021】
さらに、絶縁トランス9の3次巻線N3に瞬停補償コンデンサ4を充電するための充電回路15が接続され、瞬停補償コンデンサ4の負極側と充電回路15の出力端のうち電流の吸い込み口にあたる端子との間に、パワーMOSFET5d(Q4)が接続される。このときパワーMOSFET5dのドレインは瞬停補償コンデンサ4の負極側に、ソースは充電回路15側に接続される。パワーMOSFET5dは、NチャンネルのパワーMOSFETであり、充電回路15による瞬停補償コンデンサ4への充電電流を制御する。
【0022】
充電回路15においては、3次巻線N3の巻き終わり側にはダイオード10cのアノードが接続され、カソードと3次巻線N3の巻始め側との間に平滑コンデンサ48が接続され、さらにダイオード10cのカソードと瞬停補償コンデンサ4の正極側との間にコイル49が接続され、3次巻線N3の巻始め側はパワーMOSFET5dのソースと接続される。これにより、1次巻線N1と3次巻線N3との巻線比によって決まる電圧まで、充電回路15中の平滑コンデンサ48に蓄積される電荷が、パワーMOSFET5dの制御によって瞬停補償コンデンサ4に充電される。
【0023】
ここでは、絶縁トランス9の2次側の負荷12への供給電圧は24Vであるものとし、負荷12としては液晶テレビのバックライト、論理回路、チューナなどを想定しているので、実際にはそれぞれインバータやDC・DCコンバータを介して負荷に接続される。このため、出力電圧Voutの精度は負荷が直接接続される構成よりも緩く設定することが可能であり、本実施形態における精度は±10%程度である。
【0024】
パワーMOSFET5a〜5d(Q1〜Q4)の各ゲートは、コントローラ51からの制御信号をそれぞれドライバ29a〜29dに入力して得られる出力によって駆動される。このうち、特にパワーMOSFET5a,5bを駆動する2つのゲート制御信号は、駆動周波数fのPWM(Pulse Width Modulation)信号で構成され、本実施形態においては入力電圧と負荷12の状態とにより、駆動周波数fが制御される。
【0025】
なお、本実施形態では、スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いたが、電流容量や電圧の条件によってはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。また、ダイオードを含め、SiC(Silicon Carbide)を素材としたパワーデバイスを用いることも好適である。
【0026】
≪制御回路ブロック≫
図3は、第1実施形態のスイッチング電源の制御回路の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の検出系では、少なくとも入力電圧Vin(もしくは全波整流電圧Vac)(
図1、
図2参照)と、整流後の入力電流Isns(
図1、
図2参照)と、出力電圧Vout(
図1、
図2参照)と、瞬停補償コンデンサ4の電圧(瞬停補償容量電圧Vtk)(
図1、
図2参照)との4つの値を取得して用いている。
【0027】
このうち、電圧系の値は応答に時間的なマージンがあるため、制御サイクルの数回に1度のように間引いて取得するものとしてもよいが、電流については可能な限り短いサイクルで取得することが重要で、少なくとも2回に1回は取得することが望ましい。
【0028】
前記の各取得値は、コントローラ51(
図2、
図4参照)内部で演算し、第1〜第4の4つのスイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれ制御するパルス幅制御信号(PWM信号)を出力する。これらの出力信号は、直接またはドライバICなどを用いて間接的に、パワーMOSFET5a〜5d(Q1〜Q4)のゲート端子に印加され、
図2の回路のスイッチング動作が行われる。
【0029】
≪制御フロー≫
スイッチング電源の制御方法にはデジタル制御とアナログ制御とがあるが、以下ではアナログ回路で構成した場合を例に、その基本的な制御フローを
図3を参照して説明する。
図3において、入力電圧Vinは商用交流である交流電源1の電圧であり、これが停電検出器21に入力される。停電検出器21の出力はスイッチ19a及び乗算器22dに接続される。
【0030】
出力電圧Voutは、アンプ20a及びアンプ20bの反転入力に接続される。アンプ20a及びアンプ20bの非反転入力には、出力電圧指令値が入力される。アンプ20aの出力は乗算器22aに接続される。乗算器22aには全波整流電圧Vacも入力される。そして乗算器22aの出力はアンプ20cの非反転入力に接続される。アンプ20cの反転入力には整流後の入力電流Isnsを電圧に変換した信号が入力される。アンプ20cの出力は、スイッチ19aの一方の入力端子に接続される。
【0031】
また、アンプ20bの出力は、スイッチ19aのもう一方の入力端子に接続される。スイッチ19aは、このようにアンプ20bとアンプ20cとの出力を、停電検出器21の出力に応じて切り替えるもので、定常時(通電時)と停電時の動作を切り替える働きを有する。
【0032】
また、スイッチ19aの出力端子は、PWMコンパレータ27aの正入力に接続される。このPWMコンパレータ27aの負入力には、三角波発生器25が接続される。なお、
図3では三角波発生器25を「三角波」と表記し、PWMコンパレータ27aを「PWM CMP」と表記している。
【0033】
三角波発生器25には乗算器22dの出力が接続されており、停電あるいは全波整流電圧Vacが参照電圧以下となってコンパレータ27cの出力がある場合に、三角波の傾きを変化させて、ドライバ29aと29bとを介してスイッチング素子Q1とQ2との駆動周波数fを制御する。
【0034】
PWMコンパレータ27aの出力は、ドライバ29aを介してスイッチング素子Q1、すなわちパワーMOSFET5aのゲートに接続される。また、PWMコンパレータ27aの出力は、NOT回路28及びドライバ29bを介してスイッチング素子Q2、すなわちパワーMOSFET5bのゲートに接続される。さらに、PWMコンパレータ27aの出力は、停電検出器21の出力とともに乗算器22bに接続され、乗算器22bの出力がドライバ29cに入力される。そしてドライバ29cの出力は、スイッチング素子Q3、すなわちパワーMOSFET5cのゲートに接続される。これにより、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは、互いに排他的にスイッチング動作を行う。また、停電時あるいはゼロクロス付近においては、スイッチング素子Q3はスイッチング素子Q1に同期してスイッチング動作を行う。
【0035】
瞬停補償コンデンサ4の電圧である瞬停補償容量電圧Vtkは、コンパレータ27bの正入力に接続され、同じく負入力に接続される参照電圧の上限値(瞬停補償容量電圧上限値Vtk_lim)と比較される。そして、上限値以下であれば、その出力を乗算器22cに入力することで、ドライバ29dがスイッチング素子Q4、すなわちパワーMOSFET5dのゲートに、スイッチング素子Q2と同位相のパルス信号を出力する。
【0036】
なお、デジタル制御であれば、停電検出信号は入力電圧Vin(もしくは全波整流電圧Vac)の値を判定して生成することが可能であり、その方がより回路を簡略化できる。
【0037】
≪演算器≫
図4は、第1実施形態のスイッチング電源の演算器の入出力信号を示すブロック図である。
図4に示すように、演算器、つまりコントローラ51には、入力電圧Vin(もしくは全波整流電圧Vac)、整流後の入力電流Isns、出力電圧Vout、及び瞬停補償容量電圧Vtkの各信号が入力され、それらの情報を基にコントローラ51が状況、状態を判断して各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作を制御するパルス幅制御波形を決定して出力する。
【0038】
図4で示した演算器、つまりコントローラ51は、
図3で示した制御回路の一部である。コントローラ51を構成するコントローラICには、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよいし、安価なマイコンを用いることも可能である。
【0039】
実際の製品(部品)としてのコントローラICは様々なものがあり、内蔵される機能は様々である。コントローラIC(コントローラ51)として、どのようなICの部品を用いるかにより、
図3の制御回路におけるコントローラ51の担当する機能は異なり、それとともに
図4における制御回路ブロックの構成は異なるものとなる。
【0040】
例えば、
図4における出力電圧Voutや入力電圧Vinなどの入力信号は、何らかの検出回路で検出するが、入力部にADC(Analog to Digital Converter:アナログ・デジタル変換器)を内蔵するコントローラICであれば検出したアナログ信号を直接入力し、ADCを内蔵していないコントローラICであれば外部に別途備えたADCによってデジタル信号に変換した結果の信号を入力する構成となる。
【0041】
また、後記するように、本発明では、入力電圧が高く十分な入力電流が得られる位相と、入力電圧が低く入力電流が殆ど得られない位相(いわゆるゼロクロス付近)とで動作条件を切り替えるので、デジタル制御とするのが好適である。デジタル制御では、コントローラ51に内蔵される演算処理部が制御プログラムを実行することによって、各検出値に応じて
図3で説明したような各ゲートの制御信号を出力する。
【0042】
≪スイッチング電源の動作≫
以上、本実施形態のスイッチング電源の回路構成について説明したところで、次に、商用交流の入力電圧と入力電流(電力)との関係と、スイッチング電源の具体的な駆動法について、
図1及び比較のための
図15を用いて説明する。
【0043】
始めに定常時の動作について説明する。定常時には50Hzあるいは60Hzの商用交流の入力電圧Vin(100VAC)に対して、ダイオードブリッジ2の整流手段によって全波整流された全波整流電圧Vacが入力コンデンサ16に伝達される。ここで、
図4に説明したような処理に従って、入力高調波の規格を満足させるための力率改善を実施すると、整流後の入力電流波形は、概ね
図1の入力電流Iinのような略正弦波状の波形となるように制御できる。なお、商用交流の周期は50Hzまたは60Hzであるため、
図1の横軸のスケールは最大で40〜50msのオーダーである。
【0044】
電力は電圧と電流との積で表されることから、整流後の入力電力波形もまた、
図1の入力電力Pinのような略正弦波状の波形を示す。つまり、入力電圧Vinの絶対値が小さい領域において、入力電力Pinが0となるか、極めて小さくなる位相が存在する。
【0045】
以下、定常時において入力電圧Vinの絶対値が比較的大きく、入力電力Pin≠0の期間を期間A、入力電圧Vinの絶対値が小さく、0Vを通過するいわゆるゼロクロス近傍の入力電力Pin=0の期間を期間B、そして停電検出時の出力電圧補償動作を行う期間を期間Cと称することとして説明を続ける。
【0046】
なお、実際には、期間Aと期間Bとの境界は動作条件により変動の余地があり、厳密に規定しうるものではないため、全波整流後の入力電圧波形である全波整流電圧Vacに任意の閾値を設定し、その閾値との比較によって期間Aか期間Bかを判定するのが現実的である。また、検出時の動作条件や応答時間を考慮して、全波整流電圧Vacが増加時と減少時とでは前記閾値が別の値となるようにヒステリシス特性を持たせることも可能である。
【0047】
1次側から2次側に送出される送出電力Ptの波形は、期間Bに瞬停補償コンデンサ4からの補償動作を行わない場合は、入力電力Pinとほぼ一致する(
図15)。そのため、期間Bの送出電力Ptが0となってしまい、出力電圧リップルが増大することになる。
【0048】
この出力電圧リップルの増大を回避すべく、本実施形態では期間Bにスイッチング素子Q3となるパワーMOSFET5cをオンすることで、1次側から2次側へ瞬停補償コンデンサ4に蓄積したエネルギーを送出するための制御を行う。
【0049】
ここで、期間Aと期間Bとの電流を供給する際のスイッチング素子Q1のオン時間が共にt1であるとすると、期間Aの最大電流ia及び期間Bの最大電流ibはそれぞれ、全波整流電圧Vacの最大値をV1(=141V)、瞬停補償コンデンサ4(Ctk)の充電設定電圧をV2とし、絶縁トランス9の1次巻線N1のインダクタンスをL1とするとき、
ia=V1/L1・t1
ib=V2/L1・t1
の式で表される。
【0050】
ところで、瞬停補償コンデンサ4(Ctk)の電圧は、3次巻線N3に接続される充電回路15によって、定常的に上限となる充電設定電圧V2(ここでは220Vとする)に保持されているため、
ib=(V2/V1)・ia
となる。前記の仮定により、
V2/V1=220/141=1.56
であるから、期間Bでは期間Aの最大電流の約1.56倍の電流が生じることとなる。その結果、絶縁トランス9の磁気飽和を引き起こしたり、スイッチング素子の破壊や誤動作を引き起こしたりするおそれがある。
【0051】
この問題を回避するためには、期間Bでのスイッチング素子Q1のオン時間が短縮されて最大電流レベルが期間Aと同等となるように、PWM制御の駆動周波数fbを、期間Aでの駆動周波数faの(V2/V1)倍以上とすればよい。なお、回路の構成部品の素子耐性には数十%の動作マージンを見込んでおり、また動作上デッドタイムというオン時間比率に組み込めない期間が含まれることから、駆動周波数の倍率は必ずしも厳密でなくとも良い。
【0052】
例えば、期間Aの駆動周波数が100kHzのシステムでは1周期あたりの時間が10μsとなるが、ON/OFF各0.5μsのデッドタイムがある場合には、オン時間比率は最大でも90%を超えることがない。素子特性から、デッドタイムは駆動周波数にあまり依存しないため、駆動周波数を増大させることは実効的なオン時間比率の低下に相当する。
【0053】
一方、素子耐圧的には駆動周波数をさらに増大させれば電流はより小さくなって安全であるが、逆にスイッチング回数が増えることによる損失増のためにエネルギー効率が低下する。以上のことから、期間Bの駆動周波数fbは、基準となる期間Aの駆動周波数faの(V2/V1)倍±20%を目安とする範囲に制御することが望ましいと考えられる。
【0054】
本実施形態のスイッチング電源においては、1次側から2次側への送出電力Ptは、
図1に示すように、期間Bで補償されたエネルギーによって期間Bにおける0となる期間がなくなる一方、この補償動作で消費したエネルギーを、期間Aの途中でスイッチング素子Q4を制御して3次巻線N3からの出力により瞬停補償コンデンサCtkに再充電を行い、再び充電設定電圧V2まで充電してから状態を保持するため、ピーク付近がやや削られたような波形となる。結果として、送出電力Ptが平準化され、出力電圧リップルが抑えられるので、出力平滑コンデンサ11の容量値を小さくすることが可能となる。
【0055】
次に、期間Cとなる瞬停(瞬間停電)発生時の動作について説明する。瞬停が発生して停電検出器21(
図3)の出力がハイ(High)となる状態では、入力電圧Vin、入力電流Iin、入力電力Pinは、
図1の期間Cに示すように、いずれも0となるため、前記した期間Bと同じようにスイッチング素子Q3をオンすることで瞬停補償コンデンサCtkからエネルギーを供給し、出力電圧Voutが一定となるように制御を行う。
【0056】
この間、瞬停補償コンデンサCtkの電圧は一貫して減少するため、電源復帰後は期間Aの間に3次巻線N3からの充電を行う。なお、瞬停期間の補償エネルギー量が大きく、上限電圧に到達する前に期間Bを迎えた場合は、一旦スイッチング素子Q4をオフして充電は停止した状態で、スイッチング素子Q3を制御して電力送出を行い、再び期間Aを迎えてから、充電を再開するものとする。すなわち、スイッチング素子Q3とQ4のオン期間は互いに排他的となるように制御し、瞬停補償コンデンサCtkに充電する際はスイッチング素子Q4をオンし、瞬停補償コンデンサCtkから放電する際はスイッチング素子Q3をオンして、充放電期間が重複しないようにする必要がある。
【0057】
<定常時の回路動作>
次に、定常時の回路動作の詳細について、回路図と動作波形図を参照して説明する。
【0058】
(期間A・高入力電圧時)
始めに、定常時の期間Aにおける基本的なスイッチング周期毎の動作について、
図5及び
図6を参照して説明する。スイッチング周波数は数十kHz〜200kHz程度の範囲が目安であり、仮に期間Aの駆動周波数を100kHzとすれば、
図6の動作波形図の横軸は10数μsの時間を表している。
【0059】
図5A〜5Dは、第1実施形態のスイッチング電源の定常時動作の電流経路を模式的に表した図であり、入力コンデンサ16(Cin、
図2)をCinという名称の可変電圧源で表記している。
【0060】
図5Aには、定常時(
図1の期間A)において、スイッチング素子Q1がオンしているときの電流の流れを示している。期間A(
図1)では、ダイオードブリッジ2(
図2)の出力に相当する全波整流電圧Vac(
図1、
図2)が大きいため、スイッチング素子Q2がオフの状態でスイッチング素子Q1をオンすることにより、電流は可変電圧源Cinから絶縁トランスTr(9、
図2)の1次巻線(N1、
図2)を介してスイッチング素子Q1に流れる。このとき絶縁トランスTrは励磁されるが、ダイオードD1(10a、
図2)によってブロックされる方向であるので、2次巻線(N2、
図2)には電流が流れず、2次側には電力は伝達されない。その代わりに、出力平滑コンデンサCo(11、
図2)に蓄積されていたエネルギーが負荷(12、
図2)へ放電される。また、スイッチング素子Q4をオフして充電回路(15、
図2)による充電機能を停止しているため、瞬停補償コンデンサCtk(4、
図2)への充電は行われず、3次巻線(N3、
図2)にも電流は発生しない。
【0061】
図5Bには、定常時(
図1の期間A)において、スイッチング素子Q1がターンオフ(オフ)したときの電流の流れを示している。
図5Aの状態でスイッチング素子Q1をターンオフすると、
図5Bに示すように、スイッチング素子Q1を流れていた電流は、スイッチング素子Q1を流れることができなくなるため、スイッチング素子Q2の寄生ダイオードへと転流し、後記する
図6に示すIQ2の波形のように、スイッチング素子Q2の電流は大きくマイナス側に振れることとなる。
【0062】
図5Cには、定常時(
図1の期間A)において、スイッチング素子Q1がオフ、スイッチング素子Q2,Q4がオンであるときの電流の流れを示している。
図5Bの状態でスイッチング素子Q2,Q4をオンすると、
図5Cに示すように、2次側の負荷に電流が供給されると共に、1次側では3次巻線(N3、
図2)からの電流により、瞬停補償コンデンサCtk(4、
図2)の充電が行われる。また、
図5Bの状態では、電流がスイッチング素子Q2の寄生ダイオードへと転流しているので、スイッチング素子Q2には電流が流れていないことを示唆している。従って、
図5Bの状態でスイッチング素子Q2をオンすることは、スイッチング素子Q2に流れる電流が0の状態でスイッチング素子Q2をオンすることになり、ZCS(Zero Current Switching)となって、スイッチング損失を抑制し、効率を向上することができる。
【0063】
図5Dには、定常時(
図1の期間A)において、スイッチング素子Q1がオフで、スイッチング素子Q2,Q4がターンオフ(オフ)されたときの電流の流れを示している。
図5Cの状態で、瞬停補償コンデンサCtk(4、
図2)の電圧が別途定めた設定値に到達した時点で、スイッチング素子Q4のスイッチをターンオフして瞬停補償コンデンサCtkへの充電を停止する。その後、スイッチング素子Q2をターンオフすると、
図5Dに示すように、スイッチング素子Q2を流れていた電流はスイッチング素子Q1の寄生ダイオードへと転流し、後記する
図6に示すIQ1の波形のように、スイッチング素子Q1の電流は大きくマイナス側に振れることとなる。このタイミングで再びスイッチング素子Q1をターンオンすれば、スイッチング素子Q1に流れる電流が0の状態でスイッチング素子Q1をオンすることとなるため、前記と同様にZCSとなり、スイッチング損失を抑制し、効率を向上することができる。
【0064】
(期間B・低入力電圧時)
一方、商用交流の入力電圧Vinの絶対値が小さい期間Bにおいては、前記のようにそのままでは殆ど入力電流が発生しないか、電流値が小さいため、通常では2次側に伝送すべきエネルギーが絶縁トランス9に励磁されない。しかし本発明では、スイッチング素子Q1のターンオンに先立って、スイッチング素子Q3をターンオンすることにより、1次側の回路では、スイッチング素子Q3と直列接続されている瞬停補償コンデンサCtkが、入力電源として機能する。従って、期間Bにおいては、前記の
図5Aの入力電源の整流出力に相当する可変電圧源Cinの代わりに、瞬停補償コンデンサCtkから電流が供給されて
図5A〜
図5Dで説明した動作が実現され、2次側にエネルギーが伝送される。
【0065】
また、低入力電圧時(期間B)の回路動作は、後記する瞬停検出時(期間C)の回路動作と同様であるが、瞬停補償コンデンサCtkからのエネルギー供給時間が短い分、期間Cよりも出力電圧Voutの低下は少なく、瞬停補償コンデンサCtkの充電時間も短くなる。
【0066】
<期間Aにおける動作波形>
図6は、第1実施形態のスイッチング電源の定常時の期間Aにおける動作波形を示す図である。
図6において、Q1ゲートがハイ(High)でスイッチング素子Q1がオンとなっている期間が
図5Aの状態に対応し、Q1ゲート、Q2ゲート、Q4ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1,Q2,Q4がオフとなっている期間が
図5Bの状態に対応し、Q1ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1がオフ、Q2ゲート、Q4ゲートがハイ(High)でスイッチング素子Q2,Q4がオンとなっている期間が
図5Cの状態に対応し、Q1ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1がオフ、Q2ゲート、Q4ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q2,Q4がオフとなっている期間が
図5Dの状態に対応している。
【0067】
なお、VQ1はスイッチング素子Q1のソース、ドレイン間に加わる電圧を表している。スイッチング素子Q1のゲート電位であるQ1ゲートがハイ(High)のときは、スイッチング素子Q1がオンしているためVQ1は0となり、かつスイッチング素子Q1のソース、ドレイン間に電流IQ1が流れている様子が示されている。
【0068】
また、スイッチング素子Q1のゲート電位であるQ1ゲートがロー(Low)のときは、スイッチング素子Q1がオフしているためVQ1は高い電圧を示し、かつスイッチング素子Q1のソース、ドレイン間の電流IQ1は0となっている。
【0069】
また、スイッチング素子Q2におけるQ2ゲート、VQ2、IQ2の関係についてもスイッチング素子Q1における関係とほぼ同様である。ただし、Q2ゲートがロー(Low)の状態でQ1ゲートがターンオフした瞬間には、スイッチング素子Q2のソース、ドレイン間には高い電圧が加わるため、IQ2は負の電流値を示している。これは、スイッチング素子Q2の寄生ダイオードに電流が流れていることを表している。
【0070】
なお、期間Aにおいては、Q3ゲートはロー(Low)となっていて、スイッチング素子Q3はオフ状態を保っている。
【0071】
<力率改善動作>
次に、力率改善動作について
図1と
図6を参照して説明する。
図1における期間Aは概ね10ms(交流入力50Hzの場合)であり、
図6のQ1,Q2ゲートがハイ、ローを繰り返す期間は概ね10μs(駆動周波数f=100kHzの場合)である。つまり、
図1の期間Aの概ね10msの時間内で、
図6のQ1,Q2ゲートがハイ、ローに変化する動作を繰り返すことによって、スイッチング素子Q1,Q2(
図2)のオンオフ動作が約1000回程度、繰り返されることになる。
【0072】
このとき、
図6のQ1,Q2ゲートがハイ、ローに変化する周期を変えたり、ハイの期間とローの期間との比率を変えたりすると、入力電流Iinにおける高調波成分の電流波形が変化する。この原理を用いてコントローラ51(
図4)がスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4(
図2)のパルス幅を含めたオンオフを状況に応じて最適に制御することによって、交流電源1における入力電流Iinの高調波成分の除去と、力率の改善ができる。
【0073】
<瞬停検出時(期間C)の回路動作>
次に、瞬停検出時(期間C)の回路動作の詳細について説明する。商用交流(交流電源1)の入力電圧Vinの急激な低下を停電検出器21(
図3)が検出した場合(
図1の期間C)は、
図1に示すように入力電流Iinも低下して、入力電力Pinが途絶えてしまうため、2次側に電力を伝送できなくなる。
【0074】
そのままでは出力電圧Vout(
図1)が低下して制御範囲以下となってしまうため、スイッチング素子Q3をオンし、瞬停補償コンデンサ4(Ctk、
図2)からエネルギーを供給する。このとき、瞬停補償コンデンサ4(Ctk、
図2)が3次巻線N3(
図2)から充電中であれば、図には示さないが、先にスイッチング素子Q4をターンオフして充電を停止し、しかる後にスイッチング素子Q3をオンするものとする。
【0075】
その後は、スイッチング素子Q1をオンすることで、絶縁トランス9(Tr、
図2)には電流が発生し、続いて、スイッチング素子Q1をターンオフして、スイッチング素子Q2をオンすることで、2次側ではダイオードD1を介して出力平滑コンデンサ11(Co、
図2)及び負荷12(
図2)に電流が供給され、出力電圧Voutを制御範囲内に維持することができる。
【0076】
従って、スイッチング素子Q4をオフし、スイッチング素子Q3をオンした後の基本的な動作は、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数を増大させる点を除いて期間Aと共通となる。すなわち
図1において、停電発生とともに全波整流電圧Vacと入力電流Iinが0となり、スイッチング素子Q3がオンされて、瞬停補償コンデンサCtkからエネルギーが供給されるので、瞬停補償容量電圧Vtkは除々に低下し、かつ出力電圧Voutも除々に低下するが、負荷12(
図2)への電力の供給は継続される。また、交流電源1の復電とともに、定常時の動作(
図1の期間A及び期間B)に復帰する。なお、この期間Cにおいては、補償動作を行う期間を通じて、スイッチング素子Q4をオフし、スイッチング素子Q3をオンした状態に維持するものとしてもよい。
【0077】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態につき、
図2、
図7A、
図7Bを参照して説明する。この第2実施形態は、回路構成や基本的な駆動手順は前記の第1実施形態とほぼ同じであるが、期間Aと期間Bとの移行時の処理をより詳細に規定するものである。
【0078】
第1実施形態のなかでも説明したように、交流電源1の周波数が概ね50〜60Hzであるのに対して、PFC(力率改善)動作をしている期間Aにおける駆動周波数fは100kHz前後と大きく異なっている。従って、
図1では、およそ10msの期間Aの時間内に10μsの周期で1000回のスイッチング動作が行われていることとなる。ここで、期間Aにおける駆動周波数faを100kHzとすれば、実際にはPFCの動作状況や
図3の参照電圧に依存するが、仮に交流電源1の周波数が50Hzで期間Aが9msの長さであるとすると、Q1ゲートにはこの間に900回の制御パルスが出力されることとなる。
【0079】
一方、残る1msの期間Bにおいて、瞬停補償コンデンサCtkの充電設定電圧V2が220Vである場合には、V2/V1=1.56より駆動周波数fbは150kHz程度となるので、Q1ゲートには期間Bの間に150回程度の制御パルスが出力されることとなる。このように
図1の横軸はQ1ゲートの制御パルス信号のスケールと大きな差があるため、切替時の動作について
図7Aを用いてより詳細に説明する。
【0080】
図2の回路図において、改めて、まず期間Aから期間Bに移行する際の動作を確認すると、スイッチング素子Q3をオンしたタイミングで、スイッチング素子Q1,Q2から見た入力電源が、ダイオードブリッジ2の出力から瞬停補償コンデンサCtkに切り替わり、駆動周波数fがfaからfbに切り替えられて、その後入力電圧の低下と共に0に近付いていたスイッチング素子Q1の電流IQ1はピーク電流レベルまで急速に立ち上げられる。
【0081】
この動作を
図7Aの波形図を用いて説明する。入力電圧Vinの低下にともなって入力コンデンサ16(Cin)の電圧(=全波整流電圧Vac)が低下すると、スイッチング素子Q1の電流IQ1もまた低下する。このときのスイッチング周期はta(=1/fa)である。
【0082】
ここでスイッチング素子Q3がオンされて、充電設定電圧V2に充電された瞬停補償コンデンサCtkが接続されると、両者の電位が等しくなるように入力コンデンサCinが充電されてCin電圧が上昇する。
図7Aでは安全のため、Cin電圧が瞬停補償コンデンサCtkの電圧と等しくなるまでの2周期はスイッチング素子Q1,Q2(不図示)の動作を停止している。
【0083】
なお、絶縁トランス9(Tr)のインダクタンスにより電流IQ1の急激な変化も抑制されるため、前記の2周期の停止期間は必ずしも設定しなくてもよい。また、回路条件によってはさらに長い停止期間を設けることも可能である。
【0084】
次に、Q1ゲートとQ2ゲートとの駆動周波数fをfbに増大させるが、その目的はピーク電流レベルが過大とならないようにすることにある。スイッチング素子Q1の電流IQ1は直前までの状態(=初期条件)にも影響されるので、直ちに電流値が過大とならない場合は、
図7Aのように数周期にわたって周期とオン時間比率とを段階的に絞ることで、連続的に駆動周波数を上げるようにしてもよい。
【0085】
続いて、期間Bから期間Aに移行する際の動作を、
図7Bを用いて説明する。期間B中の入力コンデンサ16(Cin)及び瞬停補償コンデンサ4(Ctk)の電圧であるCin電圧は、期間Bにおける放電処理により充電設定電圧V2(=Vtk_lim)よりも僅かに低下するが、本来20ms程度の瞬停期間を補償するためのエネルギーを蓄積しているので、1ms程度に過ぎない期間Bでの変化量は小さい。
【0086】
図7Bでは、期間Aを迎えるよりも数周期早くスイッチング素子Q3をオフしている。これにより、2次側に放電可能なエネルギー源は入力コンデンサCinのみに限られ、続く数周期でCin電圧及びそれに依存するスイッチング素子Q1の電流IQ1もまた大きく低下する。電流の低下と共に、周期tb(=1/fb)及びオン時間比率を期間Aの周期ta(1/fa)及びオン時間比率へと段階的に増加させて、入力コンデンサCinの電圧がダイオードブリッジ2の出力と一致したところで、期間Aの動作モードに切り替わる。
【0087】
このようにスイッチング素子Q3を早めにオフして、入力コンデンサCinの電圧がスムーズにダイオードブリッジ2の出力電圧と一致するように制御することで、電流IQ1も連続的な変化となるよう制御することができる。
【0088】
なお、期間Bから期間Aへの移行では、
図7Aのようにスイッチング素子Q1(及び不図示のスイッチング素子Q2)をオフする周期を設けていないが、タイミング調整のために数周期の停止期間を設けてもよい。また、停止期間を除いて、第1実施形態のように、スイッチング素子Q3をスイッチング素子Q1と同期した制御パルス信号で制御するものとしてもよい。
【0089】
以上、期間Aと期間Bとの移行時の詳細動作について説明した。
図1のスケールでは周期の桁が異なるため、駆動周波数fは不連続に変化するようにも見え、そのような制御も可能であるが、この第2実施形態のように短期間での連続的な制御を行っても、本発明の目的とする過電流防止と出力電圧リップルの抑制を実現できることは言うまでもない。
【0090】
さらに、ここでは期間Aと期間Bとの間の移行時について説明したが、瞬停を検出して期間Aから期間Cに移行する場合、あるいは電源が復帰(復電)して期間Cから期間Aに移行する場合も、以上説明したような制御を実施できることは言うまでもない。
【0091】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、
図8、
図9、
図10A〜10D、及び
図11を用いて説明する。この第3実施形態は、第1実施形態がアクティブクランプ方式のフライバックコンバータによる電源回路であったのに対して、電流共振型コンバータによる電源回路を採用している。
【0092】
図9は、第3実施形態のスイッチング電源の構成を示す回路図である。
図9において、交流電源1の入力はダイオードブリッジ2を介して全波整流波形に変換される。ダイオードブリッジ2の直流側には、第1実施形態と同じように入力コンデンサ16(Cin)が接続される。入力コンデンサ16は入力フィルタ用であり、容量は数μFである。
【0093】
さらに、ダイオードブリッジ2と入力コンデンサ16に対して並列に、パワーMOSFET5c(Q3)と瞬停補償コンデンサ4(Ctk)との直列対が接続される。パワーMOSFET5cは、NチャンネルのパワーMOSFETであり、ソースが入力コンデンサ16の正極側に、ドレインが瞬停補償コンデンサ4に接続され、瞬停補償コンデンサ4の放電を阻止する向きとなっている。瞬停補償コンデンサ4は瞬停補償用のコンデンサであり、その容量は瞬停補償時間により変わるが、100μF〜1000μF程度を想定している。
【0094】
ダイオードブリッジ2と入力コンデンサ16にはさらに、パワーMOSFET5a(Q1)とパワーMOSFET5b(Q2)との直列対が並列に接続されており、パワーMOSFET5bには絶縁トランス9(Tr)の1次巻線N1と共振コンデンサ17(Cr)との直列対が並列に接続される。
【0095】
絶縁トランス9の2次巻線N2は、各端子がそれぞれダイオード10a(D1)とダイオード10b(D2)とのアノードに接続され、ダイオード10aとダイオード10bとのカソードは、共に出力平滑コンデンサ11(Co)の正極側に接続される。2次巻線N2の中点は、出力平滑コンデンサ11の負極側と共にアース接続される。さらに、出力平滑コンデンサ11には負荷12が接続される。
【0096】
絶縁トランス9の3次巻線N3には、瞬停補償コンデンサ4を充電するための充電回路15が接続され、瞬停補償コンデンサ4の負極側と充電回路15の出力端のうち電流の吸い込み口にあたる端子との間に、パワーMOSFET5d(Q4)が接続される。このときパワーMOSFET5dのドレインは瞬停補償コンデンサ4の負極側に、ソースは充電回路15側に接続される。パワーMOSFET5dは、NチャンネルのパワーMOSFETであり、充電回路15による瞬停補償コンデンサ4への充電電流を制御する。
【0097】
充電回路15においては、3次巻線N3の両端がダイオード10c(D3)及びダイオード10d(D4)のアノードに接続され、各カソードは共通してコイルを介して瞬停補償コンデンサ4の正極側と接続される。さらにダイオード10c及びダイオード10dのカソードは、平滑コンデンサ48を介して3次巻線N3の中点及びパワーMOSFET5dのソースと接続される。
【0098】
この充電回路15が第1実施形態(
図2)と異なるのは、電流共振型に合わせてダイオード10dを介しての充電経路が追加されていることであるが、瞬停補償コンデンサ4への充電は2次側への電力送出に比べてバックグラウンドで緩やかに行うべき性質のもので、出力電流及び動作期間は短いものであるから、1系統でも瞬停補償コンデンサ4の充電が可能である場合には、ダイオード10dは省くことができる。この場合、ダイオード10cを介して接続される平滑コンデンサ48と3次巻線N3との接続は、3次巻線N3の中点ではなく、ダイオード10cのアノードと接続される端子と逆側の端子で行われることとなる。
【0099】
この平滑コンデンサ48の正極側と、1次側回路の瞬停補償コンデンサ4の正極側とは、充電電流が過大とならないようにコイル49を介して接続される。平滑コンデンサ48の負極側は、パワーMOSFET5dのソースと接続され、パワーMOSFET5dの制御によって、充電回路15の動作を制御することができる。
【0100】
パワーMOSFET5a〜5d(Q1〜Q4)の各ゲートは、コントローラ51からの制御信号をそれぞれドライバ29a〜29dに入力して得られる出力によって駆動される。このうち、特にパワーMOSFET5a,5bを駆動する2つの信号については、駆動周波数fのPWM信号で構成され、本実施形態においては入力電圧と負荷12の状態とにより、駆動周波数fを制御する。
【0101】
なお、本実施形態では、スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いたが、電流容量や電圧の条件によってはIGBTを用いてもよい。また、ダイオードを含め、SiCを素材としたパワーデバイスを用いることも好適である。
【0102】
なお、コントローラ51の入出力については、第1実施形態の
図4と同じである。また、制御回路ブロックについては、概ね第1実施形態の
図3と同じであるが、電流共振方式では、入力電流の制御をスイッチング素子Q1,Q2のオン時間比率ではなく、駆動周波数を変動させる方式のため、
図3のアンプ20cの出力が三角波発生器25に接続され、出力される三角波の傾きを変動させて駆動周波数を変化させる点が異なっている。
【0103】
さらに動作の詳細について、
図8を用いて説明する。電流共振型の電源回路では、スイッチング素子Q1とQ2とのオン期間は相補の関係にあり、デッドタイムを無視すれば各素子のオン時間比率は通常それぞれ50%で駆動し、力率改善制御における入力電流Iinの流量制御は周期を増減させて、すなわち駆動周波数を変動させてこれを制御するところが第1実施形態と異なっている。
【0104】
第1実施形態と同様に、入力電力の状況に応じて交流周期でみた場合の各段階を期間A、期間B、期間Cとすると、期間Aでは入力電圧と共に力率改善動作の効果で電流を増減させるため、期間Aの駆動周波数fは入力電圧に連動して変化する。この中で駆動周波数が最大(=f
0)となるのは、入力電圧がピーク値V1をとる位相とほぼ一致する。
【0105】
次に期間Bを迎え、スイッチング素子Q3をオンして充電設定電圧V2に昇圧充電された瞬停補償コンデンサ4からの補償動作を行う。電流共振型の電源の場合、直前の駆動周波数fはむしろf
0よりも低下しているため、そのままの周期をオン時間にあてると、印加電圧の増分とオン時間の増分の相乗効果でさらに大きな電流が発生する。
【0106】
従って、ピーク電流レベルを期間Aの最大レベルと同等に抑制するためには、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数fbを
fb=(V2/V1)・f
0
のように上昇させる必要がある。なお、第1実施形態でも説明したように、変更時の駆動周波数fbの倍率は必ずしも厳密である必要はなく、ベースとなるf
0に対して(V2/V1)倍±20%を目安とする範囲に制御することが望ましいと考えられる。
【0107】
期間Bの補償動作で瞬停補償コンデンサ4から出力されたエネルギー分は、その後の期間Aに充電される。また、瞬停発生を検出後の期間Cにおいても同様に、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数fcは
fc=f
0×V2/V1
となるように上昇させる必要がある。なお、こちらも駆動周波数の倍率は厳密なものではなく、また
図8では期間Cを通じてほぼfcで一定のように示しているが、瞬停補償経過時間の長さによっては徐々に瞬停補償コンデンサCtkの電圧が充電設定電圧V2から低下してくることから、上式を満たす範囲で、瞬停補償コンデンサCtkの印加電圧にあわせて駆動周波数fcを下げていく操作を行うことも可能である。
【0108】
図10A〜10Dは、第2実施形態のスイッチング電源の定常時動作の電流経路を模式的に表した図であり、入力コンデンサ16(Cin、
図9)をCinという名称の可変電圧源で表記している。
【0109】
図10Aには、定常時(
図8の期間A)において、スイッチング素子Q1がオンしているときの電流の流れを示している。期間A(
図8)では、ダイオードブリッジ2(
図9)の出力に相当する全波整流電圧Vac(
図8、
図9)が大きいため、スイッチング素子Q2がオフの状態でスイッチング素子Q1をオンすることにより、電流は可変電圧源Cinからスイッチング素子Q1を介して絶縁トランスTr(9、
図9)の1次巻線(N1、
図9)に流れる。このとき共振コンデンサCr(17、
図9)が充電され、絶縁トランスTrが励磁されると共に、2次巻線(N2、
図9)ではダイオードD2(10b、
図9)にはブロックされるが、ブロックされていないダイオードD1(10a、
図9)には電流が流れ、出力平滑コンデンサCo(11、
図9)や負荷(12、
図9)に電力が供給される。
【0110】
このとき、3次巻線(N3、
図9)では、スイッチング素子Q4をオンしていれば、ダイオードD3(10c、
図9)を通じて電流が流れ、瞬停補償コンデンサCtk(4、
図9)への充電が行われる。
【0111】
図10Bには、定常時(
図8の期間A)において、スイッチング素子Q1がターンオフ(オフ)したときの電流の流れを示している。
図10Aの状態でスイッチング素子Q1をターンオフすると、
図10Bに示すように、スイッチング素子Q1を流れていた電流は、スイッチング素子Q1を流れることができなくなるため、スイッチング素子Q2の寄生ダイオードへと転流し、後記する
図11に示すIQ2の波形のように、スイッチング素子Q2の電流は一旦マイナス側に振れることとなる。
【0112】
図10Cには、定常時(
図8の期間A)において、スイッチング素子Q1がオフ、Q2がオンであるときの電流の流れを示している。
図10Bの状態でスイッチング素子Q2をオンすると、
図10Cに示すように、共振コンデンサCr(17、
図9)に充電された電荷が放電され、2次側ではダイオードD2を介して電流が供給されると共に、スイッチング素子Q4がオン状態であれば、1次側では3次巻線(N3、
図9)からの電流がD4を通じて流れることで、瞬停補償コンデンサCtk(4、
図9)の充電が行われる。また、
図10Bの状態では、電流がスイッチング素子Q2の寄生ダイオードへと転流しているので、スイッチング素子Q2には電流が流れていないことを示唆している。従って、
図10Bの状態でスイッチング素子Q2をオンすることは、スイッチング素子Q2に流れる電流が0の状態でスイッチング素子Q2をオンすることになり、ZCSとなって、スイッチング損失を抑制し、効率を向上することができる。
【0113】
図10Dには、定常時(
図8の期間A)において、スイッチング素子Q1がオフで、スイッチング素子Q2がターンオフ(オフ)されたときの電流の流れを示している。
図10Cの状態でスイッチング素子Q2をターンオフすると、
図10Dに示すように、スイッチング素子Q2を流れていた電流はスイッチング素子Q1の寄生ダイオードへと転流し、
図11に示すIQ1の波形のように、スイッチング素子Q1の電流は一旦マイナス側に振れることとなる。このタイミングで再びスイッチング素子Q1をターンオンすれば、スイッチング素子Q1に流れる電流が0の状態でスイッチング素子Q1をオンすることとなるため、前記と同様にZCSとなり、スイッチング損失を抑制し、効率を向上することができる。
【0114】
期間Aの開始時点でスイッチング素子Q4をターンオンすることにより充電される瞬停補償コンデンサCtk(4、
図9)の電圧が、別途定めた設定値に到達した時点で、既に説明したようにスイッチング素子Q4をターンオフして瞬停補償コンデンサCtkへの充電を停止する。その後は、
図10A〜10Dの処理を繰り返しても充電回路15からの出力が停止しているため、充電回路15の平滑コンデンサ(48、
図9)の電圧が飽和したところで、ダイオードD3及びD4の電流は0となり、次の充電処理が実行されるまで待機状態となる。
【0115】
次に、期間B(
図8)では、スイッチング素子Q3をオンすることにより、入力コンデンサCin(16、
図9)の役割を瞬停補償コンデンサCtk(4、
図9)が代わりに機能して
図10A〜10Dの動作が繰り返される。また、停電検出により期間C(
図8)となった場面も同様である。ただし、期間B及び期間Cでは、スイッチング素子Q4をオフ状態に維持し、充電回路15は充電機能を停止している。
【0116】
図11は、第3実施形態のスイッチング電源の定常時の期間Aにおける動作波形を示す図である。
図11において、Q1ゲートがハイ(High)でスイッチング素子Q1がオン、Q2ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q2がオフとなっている期間が
図10Aの状態に対応し、Q1ゲート、Q2ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1,Q2がオフとなっている期間が
図10Bの状態に対応し、Q1ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1がオフ、Q2ゲートがハイ(High)でスイッチング素子Q2がオンとなっている期間が
図10Cの状態に対応し、Q1ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q1がオフ、Q2ゲートがロー(Low)でスイッチング素子Q2,Q4がオフとなっている期間が
図10Dの状態に対応している。
【0117】
図11には、瞬停補償コンデンサCtkの電圧が充電設定電圧V2(=Vtk_lim)に到達する以前の、スイッチング素子Q4がオンで充電回路15が充電動作を行っている状態の動作波形を示しており、スイッチング素子Q1がオンのときに2次側のダイオードD1の電流ID1及び充電回路15のダイオードD3の電流ID3が生じ、スイッチング素子Q2がオンのときに2次側のダイオードD2の電流ID2及び充電回路15のダイオードD4の電流ID4が発生する。
【0118】
図示は省略するが、瞬停補償コンデンサCtkの電圧が充電設定電圧V2に到達して充電が完了した場合には、スイッチング素子Q4をオフして充電回路15の充電動作を停止する。これにより、
図11の電流ID3及び電流ID4は共に0となる。
【0119】
期間Aに続く期間B(
図8)あるいは停電発生時の期間C(
図8)における動作波形は、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数が期間Aよりも増大する点と、スイッチング素子Q4をオフする一方でスイッチング素子Q3をオンしている点を除けば、
図11において電流ID3及び電流ID4が共に0となっている状態と同じである。
【0120】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を
図9、
図12A及び
図12Bを参照して説明する。この第4実施形態は、回路構成や基本的な駆動手順は前記の第3実施形態とほぼ同じであるが、期間Aと期間Bとの移行時の処理を前記の第2実施形態と同様により詳細に規定するものである。
【0121】
第3実施形態のなかでも説明したように、交流電源1の周波数が概ね50〜60Hzであるのに対して、PFC(力率改善)動作をしている期間Aにおける駆動周波数fは60〜100kHz前後の範囲で大きく変化する。つまり
図8の横軸はQ1ゲートの制御パルス信号のスケールと大きな差があるため、切替時の動作について
図12Aを用いてより詳細に説明する。
【0122】
図9の回路図において、改めて、まず期間Aから期間Bに移行する際の動作を確認すると、スイッチング素子Q3をオンしたタイミングで、スイッチング素子Q1,Q2から見た入力電源が、ダイオードブリッジ2の出力から瞬停補償コンデンサCtkに切り替わり、駆動周波数fがf
0以下の範囲からfbに切り替えられて、入力電圧Vinの低下と共に0に近付いていたスイッチング素子Q1の電流IQ1はピーク電流レベルまで急速に立ち上げられる。
【0123】
この動作を
図12Aの波形図を用いて説明する。入力電圧Vinの低下にともなって入力コンデンサ16(Cin)の電圧(=全波整流電圧Vac)が低下すると、それぞれオン時間比率50%で相補的に動作しているスイッチング素子Q1,Q2の電流IQ1,IQ2(不図示)もまた低下する。このときのスイッチング周期はta(>1/f
0)である。
【0124】
ここでスイッチング素子Q3がオンされて、充電設定電圧V2に充電された瞬停補償コンデンサCtkが接続されると、両者の電位が等しくなるように入力コンデンサCinが充電されてCin電圧が上昇する。
図12Aでは安全のため、Cin電圧が瞬停補償コンデンサCtkの電圧と等しくなるまでの2周期はスイッチング素子Q1,Q2(不図示)の動作を停止している。
【0125】
なお、絶縁トランス9(Tr)のインダクタンスにより電流IQ1の急激な変化も抑制されるため、上記の2周期の停止期間は必ずしも設定しなくてもよい。また、回路条件によってはさらに長い周期を設けることも可能である。
【0126】
次に、Q1ゲートとQ2ゲートとの駆動周波数fをfbに増大させるが、その目的はピーク電流レベルが過大とならないようにすることにある。スイッチング素子Q1の電流IQ1は直前までの状態(=初期条件)にも影響されるので、直ちに電流値が過大とならない場合は、
図12Aのように数周期にわたって周期を段階的に絞ることで、連続的に駆動周波数を上げるようにしてもよい。
【0127】
続いて、期間Bから期間Aに移行する際の動作を、
図12Bを用いて説明する。期間B中の入力コンデンサCin及び瞬停補償コンデンサCtkの電圧であるCin電圧は、期間Bにおける放電処理により充電設定電圧V2よりも僅かに低下するが、本来20ms程度の瞬停期間を補償するためのエネルギーを蓄積しているので、1ms程度に過ぎない期間Bでの変化量は小さい。
【0128】
図12Bでは、期間Aを迎えるよりも数周期早くスイッチング素子Q3をオフしている。これにより、2次側に放電可能なエネルギー源は入力コンデンサCinのみに限られ、続く数周期でCin電圧及びそれに依存するスイッチング素子Q1の電流IQ1もまた大きく低下する。電流の低下と共に、周期tb(=1/fb)を期間Aの周期ta(>1/f
0)へと段階的に増加させて、入力コンデンサCinの電圧(Cin電圧)がダイオードブリッジ2の出力電圧(Vac)と一致したところで、期間Aの動作モードに切り替わる。
【0129】
このようにスイッチング素子Q3を早めにオフして、入力コンデンサCinの電圧がスムーズにダイオードブリッジ2の出力電圧と一致するように制御することで、電流IQ1も連続的な変化となるよう制御することができる。
【0130】
なお、期間Bから期間Aへの移行では、
図12Aのようにスイッチング素子Q1(及び不図示のスイッチング素子Q2)をオフする周期を設けていないが、タイミング調整のために数周期の停止期間を設けてもよい。
【0131】
以上、期間Aと期間Bとの移行時の詳細動作について説明した。
図8のスケールでは周期の桁が異なるため、駆動周波数fは不連続に変化するようにも見え、そのような制御も可能であるが、この第4実施形態のように短期間での連続的な制御を行っても、本発明の目的とする過電流防止と出力電圧リップルの抑制を実現できることは言うまでもない。
【0132】
さらに、ここでは期間Aと期間Bとの間の移行時について説明したが、瞬停を検出して、期間Aから期間Cに移行する場合、あるいは電源が復帰(復電)して期間Cから期間Aに移行する場合も、以上説明したような制御を実施できることは言うまでもない。
【0133】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を
図13と
図14とを参照して説明する。
図13には、第1実施形態のスイッチング電源基板を上から見た図を示している。この電源基板32の回路構成は、
図2の回路図と基本的には同じであり、
図13において、
図2の回路図と同じ構成要素には同じ符号を付与している。また、
図2にはない新たな構成要素も示している。
【0134】
図14には、薄型テレビに
図13に示した電源基板32を実装したときの形態を示している。
図14において、電源基板32は面実装基板であり、電源基板32は図面の上側が液晶パネル33の上向きになるように実装される。
【0135】
図13において、電源基板32の下部には入力コネクタ30があり、その近くにダイオードブリッジ2、入力コンデンサ16、充電回路15、及びパワーMOSFET5a(スイッチング素子Q1),5b(スイッチング素子Q2),5c(スイッチング素子Q3),5d(スイッチング素子Q4)が配置される。このうち、発熱部品であるダイオードブリッジ2とパワーMOSFET5a,5bとは、放熱のために厚さ1〜2mmのアルミ板31の上に取り付けられる。パワーMOSFET5c(スイッチング素子Q3),5d(スイッチング素子Q4)とダイオード10cとは、ほとんど発熱しないため基板に直に実装される。
【0136】
電源基板32の中央付近には、コントローラ51が配置され、各部からの検出信号が入力されると共に、駆動周波数fの出力制御信号がハイサイドとローサイドとの2出力のドライバIC29eに接続され、このドライバIC29eの出力によって、スイッチング素子Q1〜Q4が駆動される。
【0137】
さらに電源基板32の中央付近には、瞬停補償コンデンサ4が数個に分けて並べて実装される。また、コンデンサ8が実装される。電源基板32のコンデンサ実装位置の上側には絶縁トランス9が実装される。電源基板32においては、絶縁トランス9の上部が2次側となっており、このエリアにはダイオード10aがアルミ板31とは別のアルミ板31aに取り付けられて実装される。ダイオード10aの近傍には、出力平滑コンデンサ11が数個に分けて並べて実装される。電源基板32の最上部には、出力コネクタ40a,40b,40cが実装される。また、充電回路15を構成するダイオード10c、平滑コンデンサ48、及びコイル49も電源基板32に実装される。
【0138】
このように、本発明に係るスイッチング電源装置によれば、高効率な回路方式を採用することで、必要なコンデンサ容量の低減が可能となり、薄型タイプのコンデンサを並列実装することなどによって、電源基板32全体の厚みを10mm未満に抑制することができる。
【0139】
次に
図14を説明する。
図14の中央には薄型液晶テレビセットを背面から見た図を、下側には上から見た図を、右側には真横から見た図をそれぞれ示している。
【0140】
背面から見た図においては、テレビセットの背面カバーをはずした状態で記載しており、電源基板32は、中央の支柱34bと右側にある支柱34cの間に実装されている。テレビセットには電源ケーブル38が入力され、電源基板32の下方に実装されているフィルタ基板39に接続される。フィルタ基板39からの出力ケーブルは電源基板32の入力コネクタ30(
図13)に接続される。
【0141】
電源基板32の出力コネクタ40a,40b,40c(
図13)は、それぞれLEDドライバ基板35b、LEDドライバ基板35a、回路基板36に接続される。LEDドライバ基板35b,35aは、電源基板32から出力した24Vの直流電圧を入力し、LEDバックライト(不図示)の点灯に必要な電圧に昇圧あるいは降圧するコンバータ(不図示)を搭載した基板であり、LEDに流れる電流を制御することにより、LEDの輝度を調整することが可能である。LEDバックライト(不図示)自体は電源基板32や回路基板36などと液晶パネル33との間にあり、10mm前後の厚さである。
【0142】
なお、T−con(タイミングコントローラ)基板37には、電源基板32から回路基板36に入力した24Vの直流電圧を必要な電圧に変換した上で、回路基板36から電力が供給される。
【0143】
また、
図14に示したように、厚さ10mm未満の電源基板32を、液晶パネル33を用いたテレビセット、あるいは他の薄型の画像モニタ装置(不図示)の表示パネル部の背面に実装することと、LEDドライバにより駆動される10mm前後の厚さのLEDバックライト(不図示)を用いることにより、表示パネル部のセット厚みを20mm以上30mm以下に薄型化することが可能になる。
【0144】
[その他の実施形態]
なお、前記した第1〜第5実施形態では、スイッチング素子としてNチャネルのパワーMOSFETを用いたが、用途によってはPチャネルのスイッチング素子を用いてもよい。また、第1及び第3実施形態では、スイッチング電源の制御については、アナログ回路の構成を例にとって説明したが、デジタル制御としてもよい。デジタル制御の場合においても、様々な制御アルゴリズムの形態を用いることができる。
【0145】
また、交流電力の供給源としては、商用交流を前提に述べたが、商用交流に限らず、自家発電などを用いてもよく、交流電力を電源として用いる一般的な場合に広く適用することができる。また、電源電圧や各素子に加わる電圧の実施例や、表示装置や実装基板において具体的な形態の数値を例に挙げたが、これらは設計事項であって、他の電圧値や形状値においても、本発明を適用することによって、スイッチング電源が小型化され、このスイッチング電源を搭載する装置の小型化、軽量化、薄型化が可能となる。
【0146】
また、第5実施形態では本発明に係るスイッチング電源基板を搭載した薄型液晶テレビセットについて説明したが、これは単なる一例であって、本発明のスイッチング電源を用いれば、様々な電子機器の小型化、軽量化、薄型化を図ることができる。
【0147】
以上説明したように、これらの実施形態によれば、高調波抑制機能を有する交流入力の絶縁型スイッチング電源において、出力電圧変動を±10%前後に抑制し、かつ従来であれば入力電力がほぼ途絶えていた低入力電圧の位相においても電荷蓄積手段により絶縁された出力側に電力を伝送することができるため、全般的な入力電流の波高値を抑え、スイッチング損失を抑制して、1段変換による効果と共に電源効率の向上を図ることができる。
【0148】
また、電荷蓄積手段を3次巻線からのエネルギーで昇圧充電するため、電荷蓄積手段の容量を小さくすることができ、スイッチング電源の実装体積を低減し、電源の出力密度を向上させることができる。また、昇圧して高密度化した電荷蓄積手段のエネルギーを利用するに際してはスイッチング素子の駆動周波数を高く設定するため、素子破壊や磁気飽和といった誤動作を回避することができる。
【0149】
近年は多くの装置でデジタル制御が導入されており、例えば5V以下の低電圧で動作する制御IC系と、電力を要する電圧20Vの主系統が制御ICの出力信号でコントロールされる場合、瞬停などで制御系の電源が途絶えることは、アナログ制御系で構成される場合と比較して大きなトラブルとなりやすい。本発明の実施形態のような瞬停補償機能を有したスイッチング電源を用いることにより、制御系の動作が急停止することを回避でき、全体として高効率のシステムを構築することができる。