(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変調および復調する際に用いた変調方式を単一周波数の振幅変調、位相変調、周波数変調としたことを特徴とする請求項1、2、5、7、8の何れかに記載の電磁波計測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、DPC法の簡単な説明をする。
DPC法によれば、コヒーレントな電磁波を対象物に照射し、この電磁波の照射軸に対して、ファーフィールドに配置された複数のディテクタによりそれぞれ信号を検出し、これら検出された信号強度の内の照射軸に対して対称位置にあるディテクタ間の信号強度の差出力を用いることにより、対称物のプロファイル情報を取得できる。この際、定性的にいえば、測定対象物の傾きが一方向に大きくなれば、一方のディテクタに入射される信号が大きくなる。また、測定対象物の傾きが逆方向に大きくなれば、他方のディテクタに入射される信号が大きくなる。
【0009】
従って、対応するディテクタ同士の差出力は、プロファイルの傾きの大きさに関連する情報を示すことになる。この時、測定対象物から出力される信号自体が微弱であったり、プロファイルが微小であると傾きが小さくなったりするので、差出力が微弱になる。
以上より、DPC法を用いた方法であっても、ディテクタから出力される信号が弱いと、外部からのノイズに影響されやすくなる。
【0010】
次に、結像光学系を用いた従来の顕微鏡における対物レンズのOTF特性について、以下に説明する。
結像光学系を用いた従来の顕微鏡においては、対物レンズにて捉える対称物の空間周波数の1次回折光の成分と0次回折光の成分とが干渉して像形成を行うため、レンズの開口に1次回折光が入射されないと、その空間周波数は再現されないことになる。他方、低い周波数から高い周波数に至るにつれてその1次回折光の回折角は次第に大きくなるので、レンズに入力される1次回折光の量が減っていくことになる。その結果として、1次回折光が入力されない周波数がカットオフになり、低い周波数から高い周波数に至る途中で、変調度が次第に落ちていくようになる。
【0011】
以上が対物レンズのOTF特性であり、したがって、結像系においては対物レンズに入力される1次回折光には自ずと限界があるので、再現される対称物の空間周波数に関連して分解能も自ずと限界があることになる。このように周波数の高い空間周波数の再現は、信号が小さくなるので、外乱ノイズの影響を受けやすくなる。
【0012】
以上の定性的な説明を定量化して、以下に詳細に説明する。
図11のように開口半径がaで焦点距離がfの対物レンズ11に平行光束が入射しているとする。なお、
図11においては、照射光軸を光軸L0で表し、この光軸L0に対して角度Θだけ傾く傾斜光軸を光軸L1で表している。通常の結像を用いた倒立型顕微鏡では、
図11のように光束が試料Sを透過する透過型となるが、光束が試料Sで折り返される反射型として考えてもよい。また、式を簡単にするために、1次元の開口として扱う。
【0013】
また、簡単のために試料Sが高さhでピッチdの正弦波状の形状をしているものとする。すなわち、光学的な位相θが以下の式で表される。
θ=2π(h/λ)sin(2πx/d)・・・・・(1)式
試料Sから回折された光の振幅Eは、焦点距離fだけ離れた面において、(1)式のフーリエ変換とレンズの開口とのコンボリューションとして、与えられるので、以下のように表される。ただし、(1)式の位相のフーリエ変換であるベッセル関数は、±1次まで取るものとする。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、(2)式のフーリエ変換が結像に寄与する。
したがって、強度Iは下記(3)式のようになる。
【0016】
【数2】
【0017】
この(2)式の意味するところは、d=λf/2a=0.5λ/NAより小さいピッチの情報は欠落するということであるが、これは、矩形開口のビーム径(sinc(ka)=0の最初の暗環半径wは、ka=πを満たすので、w=0.5λ/NAとなる )と一致する。また、d>0.5λ/NAでもdが小さいほど変調度が低下することを意味している。これを1/dの空間周波数と変調度との関係を示せば、MTFとなっている。
【0018】
以上に示したように、通常の結像光学系では、対物レンズ11のNAによって再現される空間周波数のリミットは、必然的にd=λf/2a=0.5λ/NAとなり、この値よりも小さいものは、どのようにしても再現されないことになる。
【0019】
他方、DPC法においても、ファーフィールドに配置された受光素子上での0次回折光と1次回折光の関係は結像光学系と同様なので、空間周波数のリミットは結像光学系と同様になる。また、上記した結像光学系に関する議論は、光波だけでなくコヒーレントな電磁波を結像する像形成装置全体に適用できる。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、DPC法により外部のノイズを除去してより微弱な強度の信号を取得し、かつ、通常のDPC法の再現空間周波数では取得不可能な空間周波数を取得し、実効上、分解能の高い電磁波計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成させるために、本発明は、コヒーレントな電磁波を変調してから測定対象物に対して照射する照射手段と、
該照射手段から照射される電磁波の照射軸を挟んで対称な位置に配置され、おのおの
測定対象物で0次回折波と±1次回折波に回折された電磁波を検出する
少なくとも2つの
検出素子を有する電磁波検出手段と、
これら2つの検出素子でおのおの検出された電磁波を前記変調に対応した復調を行い、これら
測定対象物で回折された電磁波の出力間の差信号を作成する信号作成手段と、
この差信号の位相差あるいは出力差を求め
て測定対象物のプロファイル情報を得る計測手段と、
を含む電磁波計測システムとされるものである。
【0021】
さらに、上記目的を達成させるために、本発明は、変調した光を測定対象物に収束照射する光源と、
収束照射の照射光軸上に位置し、前記測定対象物から出射された光束を平行な光束に変換する第1のレンズと、
第1のレンズからの透過光の内の照射光軸を挟んだ各側部分の光をそれぞれ受光する
少なくとも2つの
受光素子を有する第1の受光素子と、
前記照射光軸に対して第1の受光素子の
受光素子が受光する各側にそれぞれ傾きを有した傾斜光軸上に位置し、かつ、前記測定対象物から出射された光束をそれぞれ平行な光束とする一対の第2のレンズと、
第1のレンズから出射された光束と前記各第2のレンズから出射された光束とをそれぞれ干渉させる光学素子と、
該光学素子により干渉された各光束を受光する一対の第2の受光素子と、
変調されている前記光源からの光を前記変調に対応した復調を行ってから、第1の受光素子の照射光軸を挟んで位置する
受光素子間の出力差および、一対の第2の受光素子間の出力差をそれぞれ検出する出力差検出部と、
を含む電磁波計測システムとされるものである。
【0022】
また、本発明においては、前記第2のレンズからの出射光を前記光学素子に反射させる反射鏡が第2のレンズと光学素子との間に配置され、
該光学素子が、
第1のレンズから出射された平行な光束を分割する第1のビームスプリッターと、
前記反射鏡から反射された光束と前記第1のビームスプリッターで分割された光束とを合成させる第2のビームスプリッターと、
を含むものや、前記一対の第2の受光素子が、複数の
受光素子によりそれぞれ構成され、かつ照射光軸を挟んで相互に対称な位置に配置されているものが好適である。
【0023】
また、上記目的を達成させるために、本発明は、変調した光を測定対象物に平行照射する光源と、
平行照射の照射光軸に位置し、前記測定対象物から出射された光束を分割する第1のビームスプリッターと、
第1のビームスプリッターからの透過光の内の照射光軸を挟んだ各側部分の光をそれぞれ受光する
少なくとも2つの
受光素子を有する第1の受光素子と、
前記照射光軸に対して第1の受光素子の
受光素子が受光する各側にそれぞれ傾きを有した傾斜光軸上に位置し、かつ、前記測定対象物から出射された光束と第1のビームスプリッターで分割された光束とをそれぞれ干渉させる一対の第2のビームスプリッターと、
一対の第2のビームスプリッターにより干渉された各光束をそれぞれ受光する一対の第2の受光素子と、
変調されている前記光源からの光を前記変調に対応した復調を行ってから、第1の受光素子の照射光軸を挟んで位置する
受光素子間の出力差および、一対の第2の受光素子間の出力差をそれぞれ検出する出力差検出部と、
を含む電磁波計測システムとされるものである。
【0024】
また、本発明においては、前記一対の第2の受光素子が、複数の
受光素子によりそれぞれ構成され、かつ照射光軸を挟んで相互に対称な位置に配置されているものが好適である。
【0025】
さらに、上記目的を達成させるために、本発明は、変調した光を測定対象物に収束照射する光源と、
収束照射の照射光軸に対して傾きを有した傾斜光軸上に位置し、かつ、前記測定対象物から出射された光束を平行な光束とするレンズと、
該レンズに入射される光束の前記照射光軸に近い該レンズの部分を通過する第1の光束と該照射光軸から遠い該レンズの一方の半面を通過する第2の光束を干渉させる第1の光学素子と、
第1の光学素子により干渉された光束をそれぞれ検出する複数の第1の受光素子と、
前記傾斜光軸に対して前記第1の光学素子と反対方向に配置され、前記第1の光束と前記第2の光束を干渉させる第2の光学素子と、
第2の光学素子により干渉された光束をそれぞれ検出する複数の第2の受光素子と、
変調されている前記光源からの光を前記変調に対応した復調を行ってから、複数の第1の受光素子の任意の受光出力と複数の第2の受光素子の任意の受光出力との差の出力値を検出する出力差検出部と、
を含む電磁波計測システムとされるものである。
【0026】
さらにまた、上記目的を達成させるために、本発明は、変調した光を測定対象物に平行照射する光源と、
平行照射の照射光軸に対して傾きを有した傾斜光軸上に有る第1の光学素子と、
第1の光学素子により干渉された光を検出する複数の第1の受光素子と、
平行照射の照射光軸に対して第1の光学素子と逆の傾きを有した傾斜光軸上に有る第2の光学素子と、
第2の光学素子により干渉された光を検出する複数の第2の受光素子と、
変調されている前記光源からの光を前記変調に対応した復調を行ってから、複数の第1の受光素子の任意の受光出力と複数の第2の受光素子の任意の受光出力との差の出力値を検出する出力差検出部と、
を含み、
第1の光学素子および第2の光学素子が、
傾斜光軸上に位置し、かつ、前記測定対象物から出射された光束を収束させる第1のレンズと、
該第1のレンズから出射される光束の照射光軸に近い該第1のレンズの一方の半面の第1の光束を平行な光束とする第2のレンズと、
照射光軸から遠い該第1のレンズの他方の半面の第2の光束を平行な光束とする第3のレンズと、
第2のレンズと第3のレンズより出射された光束同士を干渉させる光学素子と、
をそれぞれ有する電磁波計測システムとされるものである。
【0027】
また、これら本発明においては、前記第1および第2の光学素子は、
前記光束同士を干渉させる光学素子として、
前記第1の光束
における像を反転する第1のプリズムと、
第1のプリズムからの光束と前記第2の光束と
の何れかをシフトして重ねる第2のプリズムと、
を含むものや、前記第1および第2の光学素子は、
前記光束同士を干渉させる光学素子として、
前記第2の光束を反射するミラーと、
前記第1の光束と該ミラーで反射された光束を合成するビームスプリッターと、
を含むものや、前記第1および第2の光学素子は、
前記光束同士を干渉させる光学素子として、収束レンズもしくは、収束レンズと拡大光学系を含むものや、前記第1および第2の光学素子は、
前記光束同士を干渉させる光学素子として、収束レンズと該収束レンズの焦点付近に配置されたグレーティングを含むものや、変調および復調する際に用いた変調方式を単一周波数の振幅変調、位相変調、周波数変調としたものが好適である。
【0028】
請求項に係る発明の作用を以下に説明する。
前述のようにDPC法は、試料に照射された電磁波に対してファーフィールドであって、電磁波の照射軸に対して対称に配置されたディテクタ同士の差動信号を検出することにより、試料のプロファイル情報を得るものである。
【0029】
ところで、電磁波を用いての像の形成は、像自体の有する空間周波数の0次回折波と±1次回折波の干渉によるものと考えてよい。光学系のMTFカーブは、光学系の対物レンズが受け取る1次回折光の量に直接的に関係する。したがって、対物レンズに入射されない1次回折光を有する空間周波数は、結像に寄与しないために、必然的にカットされる。この最小の空間周波数が光学系のカットオフ周波数となる。
【0030】
一方、光学的なDPC法においては、レーザーのようなコヒーレント光を用いる。つまり、 試料に照射されたコヒーレント光の1次回折光と0次回折光との干渉の結果が、コヒーレント光の光軸に対して対称でファーフィールドに配置された受光素子に反映されることで、試料が測定または観察される。この際、試料の空間周波数が決定されるのは、結像光学系と同様になる。
【0031】
ここで、試料から反射され、あるいは試料を透過された光の0次回折光は、照射された時の光の絞り角、すなわち、対物レンズのNAに依存した広がり角を有して、試料から出射される。同様に1次回折光は、空間周波数に依存した方向に角度を変え、さらに0次回折光と同じ広がり角で出射される。このことから、受光素子上で0次回折光と±1次回折光が重なり合った部分だけで、試料のプロファイル情報が得られる。
【0032】
以上より、空間周波数が高いと、これら0次回折光と1次回折光とが干渉できなくなり、その空間周波数が再現されないことになる。そこで、これらの0次回折光と1次回折光とを受光素子に導く前に干渉させることで、再現される空間周波数の大幅な向上が実現される。このことから、試料と受光素子の間の空間に、干渉計(ファブリペロー、マッハ・ツェンダ等)を構築して、この箇所で0次回折光と1次回折光を干渉させるようにしている。
【0033】
他方、0次回折光および1次回折光の各主光線軸の間に光軸を有するレンズを配置し、試料から回折された0次回折光もしくは1次回折光を平行光束とし、その片方の光に対して、ダブプリズムのような光学素子で像を反転し、さらに0次回折光と1次回折光が重なるようにロンボイドプリズムのような光学素子で平行シフトして、0次回折光と1次回折光を干渉させることが考えられる。これを1次回折光と0次回折光との間及び−1次回折光と0次回折光との間の2系統で行うことにより、ファーフィールドに配置した2組の受光素子の差動信号がより大きな空間周波数情報を有することになり、実質的に分解能が向上する。
【0034】
また、0次回折光および1次回折光の各主光線軸の間に光軸を有するレンズを配置し、0次回折光の一部と1次回折光、−1次回折光の一部を拡大して
受光素子のピッチと形成された干渉ピッチとがほぼ同じになるように調整して、選択的に受光素子を使うことが考えられる。
【0035】
さらに、0次回折光および1次回折光の各主光線軸の間に光軸を有するレンズを配置し、試料から回折された0次回折光もしくは1次回折光を平行光束とし、拡大レンズ系により受光素子に0次回折光と1次回折光とを導くことで、受光素子上では、拡大された干渉縞が形成される。この際、1次回折光と0次回折光との間及び−1次回折光と0次回折光との間の2系統で行い、一方の受光素子が最大光量のときに他方の受光素子でほぼ0になるように、受光素子を調整する。
さらに、0次回折光および1次回折光の各主光線軸の間に光軸を有するレンズを配置し、試料から回折された0次回折光もしくは1次回折光を平行光束とし、この平行光束をレンズにより集光し、ほぼレンズの焦点付近に配置した適正な格子ピッチを有するグレーティングにより、実質上0次回折光と1次回折光を相互にシフト重ね合わせることで、干渉させる。
【0036】
これにより、ファーフィールドに配置した2組の受光素子の差動信号がより大きな空間周波数情報を有することになり、実質的な分解能が向上する。さらに、本発明は、試料から出射された0次回折光と1次回折光の干渉情報を用いているので、照射光学系の影響は少ない。したがって、照射スポットが多少大きくても検出される空間周波数を高くすることが可能である。
【0037】
本発明に係る電磁波計測システムは、画像処理等で行う推定法やレーリー限界にある変調度を無理やりデジタル処理等で引き揚げる手法に比較して、本質的に高い空間周波数を物理的に取得しているので、試料の有する本来の情報を取得していることになる。したがって、似非信号となることはない。
また、ファーフィールドに配置した2組の受光素子の差動信号が本来有する奥行き情報も同時に取得しているので、横分解能と同時に縦分解能にも優れた電磁波計測システムを提供することができ、レーザー走査顕微鏡に好適なものである。
【0038】
また、DPC法を用いた場合においては、2つの受光素子同士の差の出力を取得するが、外部から各々の受光素子に光が不均衡に入射されると信号に影響が出る。特に、観察対称物の透過光量が少ない場合や僅かな屈折率の変化があるような場合、微弱な信号光を電気的に大きなゲインで増幅する必要性が生じる。この様な場合、僅かな外乱光により、大きなノイズを生じ信号の極めて小さい成分が検出不能となる。
【0039】
特に、上記したような0次回折光と1次回折光をシフトして重ねるような光学系においては、光を照射された試料から受光素子まで、いくつかの光学素子を挿入する必要性があり、外乱光が混入しやすくなる。そこで、照射する光を変調し、受光素子からの信号もこの変調信号に基づいて復調することにより、これらの外乱光の影響を極めて小さくすることができ、実際の設計の自由度が向上し、さらにS/N比が格段に向上する。
【0040】
また、上記した可視光である光波を用いたものに限らず、DPC法を採用し、光波のかわりにコヒーレントな電磁波を用いると共に、受光素子の代わりに電磁波に対応した検出器を用いることで、同様な効果ももたらすことができる。すなわち、電磁波に変調を加え、検出器の差動出力を取得する際に、変調に対応した復調を行うことで、外部からの電磁波の影響を減少させることができる。
【発明の効果】
【0041】
上記したように、本発明の電磁波計測システムでは、試料に収束照射された光の信号をファーフィールドに配置された複数の受光素子の光軸を含む線に対して対称な受光素子同士の出力差として検出するような装置とし、試料からの1次回折光と0次回折光および−1次回折光と0次回折光の全部あるいは一部を実効上干渉させる光学系を配置し、それぞれの干渉強度を受光する対称的に配置した受光素子間で差信号を取得することにした。
【0042】
実効上干渉させる光学系は、0次回折光と±1次回折光を別個に入射させるレンズを用いて、平行光とした0次回折光と±1次回折光を干渉させるか、0次回折光の光軸に対して傾斜させた光軸を有する2組のレンズにより、0次回折光と±1次回折光の一部をシフトして重ねる光学系か結像系と拡大光学系を用いる。この様にすると、同じNAを有するレンズを用いた結像光学系と比較して、1.5倍以上の空間周波数を取得することが可能となる。したがって、通常の結像光学系では得られない鮮明な光学像を得ることができる。
【0043】
さらに、照射する光に変調を加え、受光素子間の出力差を取得する際に変調に対応した復調を行うことにより、出力差をきわめて精度よく検出することができる点と、受光素子で受光される光が非常に微弱でも検出回路系のゲインを高くすることで、高精度に検出できる点と、検出される信号は変調信号だけなので、外乱光の影響を受けることもなくなる点から、さらに高精度な検出ができ、非常に微弱でコントラストの低い位相情報やわずかな屈折率変化に対しても非常に高い分解能で観察、計測することが可能となる。この効果は光の代わりにコヒーレントな電磁波を用いても同様に生じる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明に係る電磁波計測システムの実施例1から実施例7を各図面に基づき、詳細に説明する。
【実施例1】
【0046】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例1を以下に
図1および
図2を参照しつつ説明する。
図1は本実施例の電磁波計測システムを透過型電子顕微鏡に適用した際の構成を示す概略図である。
図1に示すように、コヒーレントな電磁波とされる電子ビームを照射する照射手段である電子銃1と対向して収束レンズ2と収束絞り3が順次配置されていて、これらの下方に測定対象物である試料Sが設置されている。この試料Sのさらに下方に電磁波検出手段である検出器5を構成する一対の分割検出素子5A、5Bが位置している。但し、電子銃1から照射される電子ビームの中心軸である照射軸Lを挟んで対称な位置にこれら一対の分割検出素子5A、5Bは配置されていて、これら一対の分割検出素子5A、5Bが電子銃1からの電子ビームをおのおの検出することになる。
【0047】
この一方、電子銃1内には図示しないコントロールグリッドがあり、このコントロールグリッドに強度変調としてAM変調が加えられている。但し、変調は振幅を一定にした位相変調や周波数変調であってもよい。また、一対の分割検出素子5A、5Bには、一対の分割検出素子5A、5Bでおのおの検出された電子ビームを前記変調に対応した復調を行い、これら電子ビームの出力間の差信号を作成する信号作成手段である信号作成器30が接続されており、この信号作成器30に、差信号の位相差あるいは強度差である出力差を求めて計測値を得る計測手段であるデータ処理部31が、接続されている。
【0048】
以上より、本実施例では、
図1に示すように、電子銃1にて強度変調された電子ビームが、収束レンズ2、収束絞り3を経て試料Sに照射されると共に、この試料Sを透過して一対の分割検出素子5A、5Bによりそれぞれ検出され、電子ビームの一対の分割検出素子5A、5Bでの出力間の差信号が信号作成器30により作成され、この差信号の位相差あるいは出力差がデータ処理部31により求まる。
【0049】
この際、信号作成器30にて電子銃1での変調に対応した復調がされる。具体的には、 照射軸を挟んで分割された一対の分割検出素子5A、5B間の差出力をこの信号作成器30で得るときに、電子銃1で加えた変調方式に対応した復調方式で復調する。この様にすることにより、変調する際に加えられた周波数よりも小さい周波数変動が生じた場合あるいは熱起因等のランダムノイズがある場合であっても、復調時にキャンセルされるので、本実施例による透過型電子顕微鏡は外部ノイズに対して強くなる。
【0050】
図2は本実施例の電磁波計測システムを光学顕微鏡に適用した際の構成を示す概略図である。
図2に示すように、コヒーレントな電磁波とされるレーザー光を照射する照射手段である半導体レーザー6と対向して、レーザー光を平行光束とするコリメーターレンズ7および光束を収束する対物レンズ8が順次配置されていて、これらの下方に試料Sが設置されている。この試料Sのさらに下方に電磁波検出手段である受光素子9を構成する一対の分割受光素子9A、9Bが位置している。
【0051】
但し、半導体レーザー6から出射された光束の中心軸である照射軸Lを挟んで対称な位置に一対の分割受光素子9A、9Bが配置されていて、これら一対の分割受光素子9A、9Bが半導体レーザー6からのレーザー光をおのおの検出することになる。
【0052】
この一方、半導体レーザー6内においてレーザー光にAM変調が加えられて強度変調される。但し、変調は、上記したように振幅を一定にした位相変調や周波数変調であってもよい。 また、一対の分割受光素子9A、9Bには、一対の分割受光素子9A、9Bでおのおの検出された光の出力間の差信号を作成する信号作成器30が接続されており、この信号作成器30に、差信号の位相差あるいは強度差である出力差を求めて計測値を得るデータ処理部31が、接続されている。
【0053】
以上より、本実施例では、
図2に示すように、強度変調されて半導体レーザー6から出射されたレーザー光が、コリメーターレンズ7にて平行光とされ、この平行光が対物レンズ8にて収束させて、試料Sに照射され、この試料Sで回折されたレーザー光が透過光となる。そして、照射軸Lを挟んで試料Sから実質上ファーフィールドとなる位置に配置された一対の分割受光素子9A、9Bによりこの透過光がそれぞれ検出され、レーザー光の一対の分割受光素子9A、9Bでの出力間の差信号が信号作成器30により作成され、この差信号の位相差あるいは出力差がデータ処理部31により求まる。
【0054】
この際、信号作成器30にて半導体レーザー6での変調に対応した復調がされる。具体的には、照射軸Lを挟んで分割された一対の分割受光素子9A、9B間の差出力をこの信号作成器30で得るときに、半導体レーザー6で加えた変調方式に対応した復調方式で復調する。この様にすることにより、外乱光があっても、復調時にキャンセルされるので、外乱光による変動に対して光学顕微鏡が極めて強くなる。
【0055】
以上より特に、試料Sの透過量が小さい場合や、検出感度が小さい場合(試料S内の屈折率変化や深さ変化が非常に小さく信号が小さい場合)にも外乱光により邪魔されず、本実施例は極めて有効なものである。
なお、
図1および
図2において、走査系が示されていないが、走査系は走査デバイスにいわゆる瞳伝達系を配置することで実現できるので、走査系をともに省略した。
【0056】
これらの定量的な関係を主に光学顕微鏡に適用した
図2を参照に以下に述べる。
簡単のために試料Sが高さhでピッチdの正弦波状の形状をしているものとする。すなわち、光学的な位相θが以下の(4)式で表されるとする。
θ=2π(h/λ)sin(2πx/d+θ0)・・・・・(4)式
また、半導体レーザー6の印加電流に対する光出力強度は、
図3のようになる。つまり、電流の閾値をIthとし、スロープ効率をγとすれば、光出力Pは、P=γ(I−Ith)で表される。
ここで、電流Ioを中心として、振幅Ia、変調周波数fmのAM変調とすれば、印加電流Iは、I=Ia・cos(2πfmt)+Ioで表される。
従って、光出力Pは、P=γ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct) となる。すなわち、半導体レーザー6に与えられる強度変調は、(γ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)となる。なおfcは光の振動数で、キャリアとみなすことができる。
【0057】
他方、試料Sから回折された光の振幅Eは、焦点距離fだけ離れた面において、(4)式のフーリエ変換とレンズの開口とのコンボリューションとして、与えられるので、以下のように表される。ただし、(4)式の位相のフーリエ変換であるベッセル関数は、±1次まで取るものとする。
そして、この光の振幅Eは、光軸を中心にした境界を対象軸とした2つの受光素子で受光され、以下の(5)式で表される。
【0058】
【数3】
【0059】
光軸を中心とした正の方向の強度I
+と負の方向の強度I
-は、それぞれ下記(6)式及び(7)式で与えられる。
【0060】
【数4】
【0061】
【数5】
【0062】
従って、DPCの出力である2つの受光素子の差出力は、下記(8)式で与えられる。
【0063】
【数6】
【0064】
(8)式に示すように、差の出力のうち変調成分でないaの係数項は、外乱があると変動する。この一方、変調成分であるωmにかかわる項は、外乱があっても変化しない。すなわち、半導体レーザーの強度変調信号cosωmtとこれと直交する信号sinωmtで検波する。
ここで、復調方法については、包絡線検波を行うか、いわゆる直交変換を行えばよい。直交変換の場合、検出された(6)式や(7)式の光強度信号に、cos(2πfmt)をかけて、周期T=1/fmで実効上の積分を行う。
たとえば、デジタル処理では、適正にcos(2πfmt)をサンプリングして、{γ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)}
2との積を1周期にわたり加算することで、試料で回折された光による変調された信号を検波することができる。
また、直交検波を行うと、cosωmtに関して残る項は下記式となる。
【0065】
【数7】
【0066】
sinωmtに関しては、残る項はない。従って、直交検波の結果、強度変化が下記式に比例する。
【0067】
【数8】
【0068】
位相はcos(θ0)の符号によりπだけ異なる信号となる。強度はピッチdが小さくなると低下していき、d=λf/2a=0.5λ/NAより小さいピッチの情報は欠落する。これは、矩形開口のビーム半径(sinc(ka)=0の最初の暗環半径wは、ka=πを満たすので、w=0.5λ/NAとなる)と一致する。
【0069】
また、d>0.5λ/NAでもdが小さいほど変調度が低下することを意味している。これを1/dの空間周波数と変調度との関係を示せば、MTFとなっている。特に、変調度が低い高周波成分の再生の場合や、実効的な高さあるいは屈折率の差がもたらす光学距離hの違いが微小であるとJ0とJ1の積が小さくなる場合には、上記式が小さくなる。
このため、変調項を含まない項は、外乱ノイズの影響を受けやすくなる。しかしながら、この微小な信号をとらえるために変調と対応する復調を行うと、この様な外部ノイズの影響を受けることがなくなる。
【0070】
したがって、検出回路系のゲインを高くすることで、高精度な検出ができる。なお、復調方式も上記した例では、直交検波の例をあげたが、包絡線検波などでも良い。また、変調方式は強度変調だけではなく、上記のように変調と対応した復調ができればよいので位相変調でも周波数変調でも良い。
【0071】
以下に、おもに別の横分解能の向上の手法と本発明の手法とを組み合わせたものを述べる。
【実施例2】
【0072】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例2を以下に
図4を参照しつつ説明する。なお、変復調に関する説明は、実施例1と同様なので詳細は割愛するが、レーザー光源10に強度変調とされるγ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)を加え、対応する復調方式で信号を検出するという内容は実施例1と同様である。
以下の数式において、強度変化に係る時間変化の項は、具体的に記載していないが、振幅Eには、強度変調項であるγ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)が掛っているとみなし、強度Iには、{γ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)}
2のように積の形で掛っているとみなせば、復調された直交検波の結果、どのようになるか簡単に推察できる。
【0073】
図4は、本実施例の電磁波計測システムの構成を示す概略図である。この
図4に示すように、光を照射する光源であるレーザー光源10が図示しない光学機器を介して、対物レンズ11と対向して配置され、このレーザー光源10が照射した光が、透過物の測定対象物である試料Sに収束照射されている。このレーザー光源10の収束照射の照射光軸とされる光軸L0上には、凸レンズとされる第1のレンズであるレンズ15が位置していて、試料Sを透過して出射された光束をレンズ15が平行な光束に変換している。
【0074】
このレンズ15の下方の光軸L0上には、レンズ15から出射された平行な光束をそれぞれ左右に分割する2つの第1のビームスプリッター12A、12Bが連続して配置されており、この下方にこの光を受光する第1の受光素子26が位置している。ただし、この第1の受光素子26は、光軸L0を挟んで位置する2つの分割受光素子26A、26Bにより構成されていて、右側寄りの分割受光素子26Aが、レンズ15からの透過光の内の光軸L0の右側寄り部分を受光し、左側寄りの分割受光素子26Bが、レンズ15からの透過光の内の光軸L0の左側寄り部分を受光することになる。
【0075】
この一方、光軸L0に対して
図4の右側に傾きを有した傾斜光軸とされる光軸L1上には、凸レンズとされる第2のレンズであるレンズ16が位置しており、このレンズ16が試料Sから出射された光束を平行な光束としている。この光軸L1上には、この平行な光束を反射するための反射鏡18が配置されており、また、この反射鏡18の下方には、第2のビームスプリッター13が位置している。このため、レンズ16と第2のビームスプリッター13との間に配置される反射鏡18が、レンズ16からの出射光を第2のビームスプリッター13側に反射させている。また、第2のビームスプリッター13の下方には、複数の分割受光素子から構成される第2の受光素子群24が位置している。
【0076】
さらに、2つの第1のビームスプリッター12A、12Bの内の上側の第1のビームスプリッター12Aが分割された光束を第2のビームスプリッター13側に送り出している。このため、レンズ15から出射された光束とレンズ16から出射された光束とを第2のビームスプリッター13が干渉させて、この光束を第2の受光素子群24が受光するようにさせている。
【0077】
他方、上記と同様の構成を有したレンズ17、反射鏡19、第2のビームスプリッター14および、第2の受光素子群25が照射光軸L0を挟んで対称に、
図4の左側にも配置されている。以上より、2つの第1のビームスプリッター12A、12Bおよび左右の第2のビームスプリッター13、14が、レンズ15から出射された光束とレンズ16、17から出射された光束とを干渉させている。
【0078】
さらに、前述の分割受光素子26A、26B、受光素子群24、25が、これら受光素子26A、26B、受光素子群24、25からの信号を比較するための比較器33にそれぞれ接続され、この比較器33が、最終的にデータを処理して試料Sのプロフィル等を得るデータ処理部34に繋がっている。このため、比較器33及びデータ処理部34が、光軸L0を挟んで位置する第1の受光素子26の分割受光素子26A、26B間の出力差および、一対の第2の受光素子群24、25間の出力差を検出する出力差検出部とされている。
【0079】
以上のことより、この
図4に示す対物レンズ11で収束された光は、測定対象物である試料S上にスポットを形成する。このスポットは理想的には回折限界の径を有し、このスポット径内における試料Sのパターンの空間周波数情報が透過光として回折される。ここで、試料Sの有する空間周波数の1次回折光でレンズ15に入射されない空間周波数を考えた場合、レンズ15には試料Sを透過した0次回折光と上記空間周波数よりも低い空間周波数成分の光が入射される。このことで、レンズ15単体では、レンズ15の有するカットオフ周波数まで、試料Sのパターンが再現されうることになる。
【0080】
ところが、レンズ15に入射されない空間周波数はカットされ、像情報に欠落を生じることになる。そこで、
図4に示すように0次回折光の光軸L0に対して、レンズ16及びレンズ17が相互に対象な位置であって、ある傾きを有して配置されている。0次回折光の光軸L0に対するこのレンズ16及びレンズ17の光軸L1、L2の傾き角は、試料Sのコントラストが最大になる空間周波数に匹敵するようにする。
【0081】
すなわち、レンズ16の光軸L1上の光束は、反射鏡18で折り返され、ビームスプリッター12Aにより分離された0次回折光の光軸L0上の光束とビームスプリッター13により合成される。合成された光自体は受光素子群24に導かれる。したがって、0次回折光とレンズ16から出射される1次回折光とを干渉させて受光素子群24が受光する。このとき、最も高いコントラストを有する光束は、レンズ16の光軸L1に一致する空間周波数の光束となるからである。
【0082】
上記した光学系と0次回折光の光軸L0に対して反対方向に同様な光学系について考えた場合、レンズ17の傾斜光軸とされる光軸L2上の光束は反射鏡19で折り返され、このレンズ17の光軸L2上の光束は、ビームスプリッター12Aを経てビームスプリッター12Bにより折り返された0次回折光の光軸L0上の光束と、ビームスプリッター14により合成される。合成された光自体は受光素子群25に導かれる。0次回折光とレンズ17から出射される−1次回折光とを干渉しつつ受光素子群25が受光する。
【0083】
ここで、受光素子群24は複数の分割受光素子よりなり、おのおのの分割受光素子は0次回折光と1次回折光で干渉された干渉縞を適当なピッチでサンプリングした干渉縞強度を取得する。つまり、0次回折光の光軸L0と1次回折光の光軸L1が傾きを持たなければ、光束内で一様な干渉強度となるが、多少傾きを有した場合には一様なピッチの干渉縞を生じるからである。この干渉縞のピッチは、1次回折光の出射角度によるので、レンズ16に入射される空間周波数を反映したものとなる。
【0084】
また、受光素子群25も複数の分割受光素子よりなり、おのおのの分割受光素子は0次回折光と−1次回折光で干渉された干渉縞を適当なピッチでサンプリングした干渉縞強度を取得し、上記と同様に動作する。
【0085】
したがって、受光素子群24、25は、複数の分割受光素子によりそれぞれ構成される形で配置され、空間周波数の反映した情報が取得できるようになる。受光素子群24,25の実質上対応する空間周波数を取得している受光素子の差の出力を取得することにより、より高い空間周波数情報を取得できるようになる。
【0086】
以上は、DPC法の光学系において特に有効となる。簡単のために上記においては透過光学系で説明したが、試料面に対して反射する方向に本電磁波計測システムを配置しても同様な効果をもたらすことになる。
【0087】
上記光学系により取得できる実質的な空間周波数を大きくできる点を以下に定量的に明らかにする。ただし、説明を簡単にするために試料Sが高さhでピッチdの正弦波状の形状をしているものとする。すなわち、光学的な位相θが以下の式で表される。
θ=2πh/λsin(2πx/d+θ0)・・・・・(4)式
【0088】
試料Sから回折された光の振幅Eは、fだけ離れた面においては、(4)式のフーリエ変換とレンズの開口とのコンボリューションとして、与えられるので、以下のように表される。ただし、(4)式の位相のフーリエ変換であるベッセル関数は±1次まで取るものとする。ここで、E
0、E
1は、おのおの0次回折光と1次回折光が入射されるレンズ15、レンズ16を経た複素振幅分布である。おのおの(9)、(10)式で表される。
【0089】
【数9】
【0090】
同様にE
-1を−1次回折光が入射されるレンズ17を経た振幅分布である複素振幅分布であるとすると、下記(11)式のようになる。
【0091】
【数10】
【0092】
0次回折光の複素振幅分布を表す(9)式と1次回折光の複素振幅分布を表す(10)式とから、レンズ15の光束とレンズ16の光束とをビームスプリッター12A,13で合成して、受光素子群24上で干渉させた結果とされる受光素子群24上の強度I
1は、下記式のようになる。
【0093】
【数11】
【0094】
同様に0次回折光の複素振幅分布を表す(9)式と−1次回折光の複素振幅分布を表す(11)式とから、レンズ15の光束とレンズ17の光束とをビームスプリッター14,12Bで合成して受光素子群25上で干渉させた結果とされる受光素子群25上の強度I
2は、下記式のようになる。
【0095】
【数12】
【0096】
ただし、上記強度I
1と強度I
2は簡単のために0次回折光および±1次回折光の光路差が実質上ないものとした。このようにして、受光素子群24と受光素子群25との差出力を表すと下記式のようになる。
【0097】
【数13】
【0098】
ここで、単独の受光素子を用いずに、適正個数の分割受光素子よりなる受光素子群としたのは、受光素子と空間周波数が対応関係にすることになるので、受光量より試料Sに含まれる空間周波数成分の分布も考慮に入れた解析ができるからである。
他方、もし0次回折光と1次回折光とを干渉させないと、±1次回折光の強度は、下記式のようになり、差出力を取得すると0となる。
【0099】
【数14】
【0100】
また、たとえ和の出力を取得したとしても位相情報θ0は完全に失われることになり、試料Sにその空間周波数が存在するか否かの情報だけとなり、プロファイル情報等の知りたい情報を取得することはできない。
【0101】
以下、上記光学系を具体的に適用して効果のあるDPC法の光学系について述べる。ここで、
図2を用いて本発明のDPC法における透過光学系を説明する。また、
図5は本発明のDPC法における反射光学系の概略図を示す。
【0102】
まず、
図2と同様の光学系を有した本実施例によれば、半導体レーザー6からの光束がコリメーターレンズ7により平行光束とされ、対物レンズ8に入射された後、試料Sに収束される。試料Sに収束された光は透過光となり、受光素子9に入射される。この受光素子9は、試料Sから実質上ファーフィールドとなる位置に配置され、照射軸である光軸Lに対して対称に2分割された分割受光素子9A、9Bとされている。さらに、前述の受光素子群24、25が、図示しないものの
図4と同様に存在している。但し、レンズ15,16,17、ミラー、ビームスプリッター等は省略する。
【0103】
この結果、光軸L上の収束光束が試料Sの屈折率分布や凸凹により0次回折光と±1次回折光とに分離され、分離されたこれらの光が干渉しつつ、分割受光素子9A、9B、受光素子群24、25に受光される。これに伴い、試料Sの屈折率分布や凸凹の情報が、0次回折光と±1次回折光との干渉情報に基づき、分割受光素子9A、9B、受光素子群24、25が、これら受光素子9A,9B、受光素子群24、25からの信号を信号作成器30の替わりに、
図4に示す比較器33が比較する。そして、この比較データをデータ処理部31の替わりに、
図4に示すデータ処理部34が処理して試料Sのプロフィル等を得る。このとき、光軸Lに対して対象な受光素子9の2つの分割受光素子9A、9B間の差出力に試料Sの上記情報が反映され、空間周波数の高い情報、すなわち横分解能の大幅な向上が図れるようになる。
【0104】
これに対して、
図5は反射光学系の概略図であり、
図2の透過光学系と異なるのは、コリメーターレンズ7と対物レンズ8との間に配置されたビームスプリッター29により光束の一部を取り出し、この光束を2分割された分割受光素子9A、9Bからなる受光素子9でそれぞれ受光することにより、これらの差出力を検出することである。この際、試料Sからの反射平行光は、実質上ファーフィールド情報であることになる。なお、上記実施例では走査光学系を省略したが、走査系は走査デバイスに対していわゆる瞳伝達系を配置することにより実現できる。
【0105】
また、これら
図2での説明と同様に
図5の光学系の受光素子部分に
図4に示す光学系を用いることで、反射光学系において、空間周波数の高い情報、すなわち横分解能の大幅な向上が図れるようになる。この一方、試料Sに照射する光束を平行光束として、
図4に示すレンズ15,16,17を省き、その他の光学系は上記実施例と同じようにすることで、平行光束系に対応した電磁波計測システムとすることもできる。
【0106】
さらに、DPC法に比較すると、本発明のように半導体レーザー6を直接変調した方法では、位相変化および強度変化をきわめて精度よく検出できる点と、受光素子9で受光される光が非常に微弱でも検出回路系のゲインを高くすることで、高精度に検出できる点と、検出される信号は変調信号だけなので、外乱光の影響を受けることもなくなる点とを有することから、さらに高精度な検出ができることになる。
【0107】
下記の実施例においては、DPC法の光学系の受光素子部分に以下の実施例の受光素子系を適用することとし、受光素子系以外の光学系については上記同様であるので、これらの光学系の説明は省略する。
また、半導体レーザーの直接変調に関する利点も実施例1と同様なので、変復調関係の説明は割愛するが、本実施例を含め以下の実施例では、試料Sと受光素子間に光学系が挿入されているので、特に光軸L1側と光軸L2側とでバランスが外乱光により崩れやすい。この場合においても、変復調により外乱光の影響がなくなるので、このアンバランスが解消され、受光される光が非常に微弱でも検出回路系のゲインを高くすることで、高精度に検出でき、さらに高精度な検出が可能になる。
【実施例3】
【0108】
本実施例においては、0次回折光の光軸L0に対してレンズを傾斜して設置することで、0次回折光の一部だけでなく、同じレンズを用いた場合に比較してより高い空間周波数を有した1次回折光の一部を取り入れることで、これら0次回折光と1次回折光の干渉を実現している。
【0109】
なお、実施例2と同様に、変復調に関する説明は実施例1と同様なので、詳細は割愛するが、レーザー光源10に強度変調とされるγ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)を加え、対応する復調方式で信号を検出するという内容は実施例1と同様である。
以下の数式において、強度変化に係る時間変化の項は、具体的に記載していないが、振幅Eには、強度変調項であるγ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)が掛っているとみなし、強度Iには、{γ(Ia・cos(2πfmt)+Io)cos(2πfct)}
2のように積の形で掛っているとみなせば、復調された直交検波の結果、どのようになるか簡単に推察できる。
【0110】
本実施例は、
図6に示すように、平行光束が対物レンズ11に入射し、試料Sに収束されるまでは、
図4と同様である。ただし、本実施例においては、試料Sを透過した0次回折光の一部と1次回折光の一部とを、0次回折光と1次回折光との間の中間的な傾き角を有した光軸L3だけ傾けた状態のレンズ36に取り入れる。そして、上記一部の1次回折光と上記一部の0次回折光をロンボイドプリズム39のようなものにより、光束同士をシフトして重ね合わせることで、お互いの光束同士を干渉させる。
【0111】
また、ロンボイドプリズム39の一面を半透鏡39Aとし、この半透鏡39Aと反対の面を半透鏡39Bにし、それぞれの面を通過して光を受光する受光素子40,41,42を配置する。ここで、受光素子40と受光素子41は、それぞれ0次回折光の一部と1次回折光の一部との干渉結果を反映し、受光素子42は、レンズ36の0次回折光の一部が含まれる領域に回折される低い空間周波数の1次回折光と0次回折光の一部との干渉結果を反映する。
【0112】
以下の式にて、0次回折光と1次回折光とが干渉した結果について説明する。
まず、
図6で示した光学系と同様の光学系を、
図6では示していないが0次回折光の光軸L0と対称となるように、−1次回折光に対しても配置する。これら対応する各受光素子の出力差を取得すると以下のように考えられる。説明を簡単にするために、試料Sが高さhでピッチdの正弦波状の形状をしているものとすれば、光学的な位相θが以下の式で表される。
【0113】
θ=2πh/λsin(2πx/d+θ0)・・・・・(4)式
【0114】
試料Sから回折された光の振幅Eは、fだけ離れた面においては、(4)式のフーリエ変換とレンズの開口とのコンボリューションとして与えられるので、以下のように表される。
ただし、(4)式の位相のフーリエ変換であるベッセル関数は±1次まで取るものとする。
図6に示すように光軸L3をレンズ36のほぼsin
-1(NA)に相当する角度ξだけ傾ける。この際、光軸L3に対する垂直方向をy軸とし、(1)式の空間周波数1/dに相当する1次回折光の中心位置をY1とする。
このとき、上記(2)式を参考にして、光軸L3を角度ξだけ傾けた場合、(2)式の0次回折光は中心がaだけずれ、1次回折光の中心軸がy1になるので、下記の(12)式で複素振幅分布E
1が与えられる。
【0115】
【数15】
【0116】
同様に0次回折光の光軸L0に対して、1次回折光と対称な光学系における−1次回折光に関しては、下記の(13)式となる。
【0117】
【数16】
【0118】
図6の光学系は、レンズ36の光軸L3を0次回折光と1次回折光との間の境界に実質上シフトして重ねているので、(12)式は、下記の(12)’式となる。
【0119】
【数17】
【0120】
このようにy1=aのときに複素振幅分布E
1は最も大きく、y1=2aのときに0となる。
y1=2aは、0次回折光から見れば、3aに相当した空間周波数までの情報を取得したことになる。したがって、同じNAのレンズを用いた時に比較して1.5倍の空間周波数まで取得できたことになる。その分、光学的な分解能が実質的に向上したことになる。
【0121】
他方、0次回折光の光軸L0に対して、1次回折光と対称な光学系における−1次回折光に関しては、同様にして−1次回折光の光軸L2に垂直方向をy’軸とすると、下記の(13)’式となる。
【0122】
【数18】
【0123】
このようにy1=-aのときに複素振幅分布E
-1は最も大きく、y1=-2aのときに0となる。
y1=-2aは、0次回折光から見れば、-3aに相当した空間周波数までの情報を取得したことになる。したがって、同じNAのレンズを用いた時に比較して1.5倍の空間周波数まで取得できたことになる。その分、光学的な分解能が実質的に向上したことになるのは、1次回折光と同様である。
さて、この様にして得た情報に対して、受光素子40と受光素子41の和の出力とそれと等価な−1次回折光の受光素子間で差出力ΔIを下記の式により得るようにする。
【0124】
【数19】
【0125】
これは、実質的に実施例1と同様な式となっている。ただし、実施例1に比較すると光学系はよりシンプルで、かつロンボイドプリズムのような簡単な素子で構成しており、レンズを一体的に成形するなどすれば、安定的な光学系とすることが可能である。なお、ロンボイドプリズムを、実質上2つのハーフミラーで構成しても同様な効果をもたらすことができる。
【実施例4】
【0126】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例4を
図7を参照しつつ、以下に説明する。
図7は、本実施例の電磁波計測システムの構成を示す概略図である。この
図7に示すように、本実施例においては、0次回折光の光軸L0に対して、レンズ36を傾斜して設置することで、0次回折光の一部だけでなく、同じレンズを用いた場合に比較してより高い空間周波数を有した1次回折光の一部を取り入れ、結像光学系にて干渉を実現している。なお、図示しないものの、本実施例においては、軸L0に対して対象な位置に同様な光学系が配置されている。なお、変復調に関する説明は実施例1と同様なので、詳細は実施例2、3と同様に割愛する。
【0127】
レンズ36を傾けて0次回折光の一部と1次回折光の一部を取得するところまでは、実施例3と同様である。本実施例では、レンズ36により平行光束にした回折光同士をレンズ52にて集光する。このレンズ52により回折光同士が焦点近傍で重なり合って、実質的に干渉する。ただし、0次回折光と±1次回折光との干渉ではないので、試料S自体の結像とは異なる。
【0128】
さらに、レンズ52の実効的な焦点距離を長くすることで、干渉縞のピッチを広げることができる。もし、レンズ36とレンズ52の焦点距離が同じであれば、当然等倍となり、試料Sの空間周波数となる。これに対して、他方の−1次回折光の光学系にて干渉された結果は、ピッチがずれた干渉縞となる。しかしながら、干渉縞のピッチに対して受光素子が大きいと、±1次回折光を受光する素子の位置あわせが困難になる。
【0129】
そこで、拡大光学系53により干渉縞自体を拡大し、受光素子50の大きさにほぼ等しくすれば、±1次回折光で自然と逆位相となるので、0次回折光がバイアスになるような形で明暗が逆になる。この様にすれば、極めて簡単に空間周波数の高い領域まで、情報を取得することができるようになる。本実施例の場合、レンズ52を用いているので、このレンズ52に入射される0次回折光と1次回折光の位相差がそのまま反映される程度の波面収差は許容される。したがって、高額なレンズを用いる必要性はない。
【0130】
なお、本実施例においては、焦点距離が多少異なるレンズであっても、お互いの受光素子の受けとる光量に大きな変化がなく、レンズ面内の波面収差が大きくなければ、干渉縞のピッチが多少変わる程度なので、そのまま用いることができる。また、取得できる空間周波数の限界は、
図7とほぼ同じ原理なので、1.5倍程度となる。この光学系は、レンズ系だけを用いて構成しているので、非常にシンプルで、外乱に対しても強い。しかしながら、本実施例では、拡大光学系53を用いているので、信号強度が低下しやすく、±1次回折光の方向で外乱光によるバランスの崩れが生じやすい。このため、変復調による外乱ノイズの除去はこのアンバランスを修正する大きな効果をもたらす。
【実施例5】
【0131】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例5を
図8を参照しつつ、以下に説明する。
図8は、本実施例の電磁波計測システムの構成を示す概略図である。なお、実施例2、3、4と同様に、変復調に関する説明は、実施例1と同様なので、詳細は割愛する。
この
図8に示すように、本実施例においては、試料Sに収束した光を入射せず、比較的大きな径を有する平行光束を入射することとする。この場合において、0次回折光の光軸L0に対して、レンズ36を傾斜して設置することとした。このことで、0次回折光の一部だけでなく、同じレンズを用いた場合に比較してより高い空間周波数を有した1次回折光の一部を取り入れることができる。なお、図示しないものの、本実施例においては、軸L0に対して対象な位置に同様な光学系が配置されている。
【0132】
ただし、レンズ36を傾けて0次回折光の一部と1次回折光の一部を取得するところまでは、実施例2と同様である。本実施例では、0次回折光および1次回折光をそれぞれ集光光束とするが、レンズ36のそれぞれの焦点位置に焦点を有する別々のレンズ64,65を配置し、これらのレンズ64,65により集光光束を平行光束とする。この様に平行光束にした以降は、
図6および
図7に示す光学系を用いて、0次回折光の一部と1次回折光の一部とを干渉させる。
【0133】
この場合、試料Sに入射される光束径は大きいので、面内の情報が平均化されてしまう。そこで、入射された平行光束に図示しない制限開口を設けることで、その部分の情報として解釈するか、もしくは規則正しいパターン中の不規則パターンの検出が可能となる。 つまり、規則正しい1次回折光の方向が設計上予め分かっているので、その1次回折光の方向はレンズ36の焦点にマスクすることで抑えることができる。
【0134】
この一方、それ以外の成分はレンズ64、65に入射されるので、欠陥部からの情報を検出することができる。たとえば、半導体ウェハー上の欠陥検査や、ナノ構造の不均一性の検査等への適用が可能である。なお、取得できる空間周波数の限界は、
図7とほぼ同じ原理なので、1.5倍程度となる。また、変復調に関する効果は、後段に用いる干渉光学系に依存するので、実施例3,4に準拠する。
【実施例6】
【0135】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例6を以下に
図9を参照しつつ説明する。
図9は、本実施例の電磁波計測システムの構成を示す概略図である。なお、実施例2、3、4、5と同様に、変復調に関する説明は、実施例1と同様なので、詳細は割愛する。本実施例は
図7と同様な光学系に採用されるものであるが、本実施例においては、この
図9に示すように拡大光学系53をなくす替りに、回折格子であるグレーティング54をレンズ52の焦点付近に配置した構造としている。なお、図示しないものの、本実施例においては、軸L0に対して対象な位置に同様な光学系が配置されている。
【0136】
この結果、試料Sにより回折された0次回折光と1次回折光がグレーティング54により、さらに回折され、0次回折光と1次回折光が実質上干渉するようになる。
図9において、斜線を施した部分が、0次回折光と1次回折光が重なる干渉部Kであるが、光軸L3に対して、逆側にも同様な干渉部Kが存在する。
【0137】
ここで、グレーティング54が明暗パターンの正弦波状で構成されていれば、グレーティング54による回折波は、0次回折光、±1次回折光で位相差がない。この場合、光軸L3に対して対称な部分の位相差は同じなので、重なった部分は同相となる。従って、本実施例では、受光素子50はグレーティング54から出力された少なくとも2つの領域の上記干渉部Kを含む部分の光量を取得すればよい。
【0138】
ただし、光軸L0に対して干渉部Kが対称で同相であるが、試料Sで回折された−1次回折光では、この干渉部Kの位相が180度反転する。これに対して、干渉部K以外の強度は、試料Sで回折された±1次回折光の方向で同一となるため、±1次回折光の強度の差動出力を取ると、干渉部Kのみの情報が残ることになる。
【0139】
この一方、グレーティング54が位相差を生じる実質上の正弦波状で構成されていると、グレーティング54による0次回折光と±1次回折光で位相差が180°生じる。この場合、上記したように受光素子50をグレーティング54から出力された少なくとも1つの領域の干渉部Kを含む光量を取得すればよい。ただし、上記と異なる点は、グレーティング54の有する位相差が反映することになるので、グレーティング54のビームに対する位置も反映する。従って、グレーティング54のビームに対する位置調整が必要になる。
【0140】
なお、位置調整は非常に簡単で、あらかじめ用意した、ある空間周波数を有する位相格子の試料Sに対して、走査による観察される両側の受光素子50の強度変調が最大になるように調整し、かつ、両側で位相差が180°になる様にすればよい。±1次回折光の強度の差動出力が、干渉部Kのみの情報が残ることは上記と同様である。なお、グレーティングを用いると、外乱光のスペクトルにより検出する受光素子上に強度分布が生じ、場所による差異が生じやすいが、変復調することによりこれらの影響をなくすことができる。
【実施例7】
【0141】
本発明に係る電磁波計測システムの実施例7を以下に
図10を参照しつつ説明する。
図10は、本実施例の電磁波計測システムの構成を示す概略図である。なお、実施例2、3、4、5、6と同様に、変復調に関する説明は、実施例1と同様なので、詳細は割愛する。
本実施例は
図9と同様なグレーティング54を別の光学系に採用したものであるが、本実施例においては、この
図10に示すように、レンズ15、16、17を有する他、反射鏡18、19を有する実施例1に近似した構造とされている。ただし、ビームスプリッター12A、12B、13、14等が無い替りに、レンズ55が反射鏡18の下方に配置され、このレンズ55と受光素子57との間であって、レンズ55の焦点位置にグレーティング54が配置された構造となっている。
【0142】
さらに、レンズ15が大型とされて、このレンズ15を透過した光束の一部がレンズ55に入射されて、実施例5と同様に作用する。また、レンズ56が反射鏡19の下方に配置され、上記と同様にこのレンズ56と受光素子58との間であって、レンズ56の焦点位置にグレーティング54が配置された構造となっている。このため、これらレンズ56、グレーティング54、受光素子58等によっても、上記と同様に作用する。なお、グレーティングを用いると、外乱光のスペクトルにより検出する受光素子上に強度分布が生じ、場所による差異が生じやすいが、変復調することによりこれらの影響をなくすことができる。
【0143】
なお、本発明で用いられる電磁波の周波数領域としては、すべての周波数の電磁波が適用可能である。例えば光の波長に関しても、紫外光、可視光、赤外光のいずれについても、使用可能である。但し、用途により試料に対する波長は選択され、たとえば、吸収の多い波長はS/N比が悪くなるので避けるとか、蛍光と併用すれば蛍光発色が可能な波長を選択するとかすることが、考えられる。
他方、変調の周波数に関しては、試料の表面状態の計測や観察等をリアルタイムにハイビジョンクラスで画像化する場合には、60MHz程度の周波数で変調を行うことが考えられ、このようにすれば楽に画像化を実現できる。また、このように画像として表現する場合の他、データとして取得する場合等により、変調周波数は適宜選択することができる。
【0144】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。