(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3半導体層を形成するために前記第1導電型の不純物をイオン注入して生じる欠陥の濃度がピークとなる位置が、前記第4半導体層の中に存在することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のダイオード。
前記第1電極と前記第2電極との間に印加する逆方向電圧が、耐圧電圧未満の電圧である第1逆方向電圧より大きいときに流れる逆方向電流の逆方向電圧に対する傾きが、前記第1電極と前記第2電極との間に印加する逆方向電圧が前記第1逆方向電圧より小さいときに流れる逆方向電流の逆方向電圧に対する傾きよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のダイオード。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための各図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、以下の実施形態の説明では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明は繰り返さずに適宜省略する。
【0015】
なお、以下の実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として、n型Si基板を用いたダイオードをもとに説明するが、これに限定されるものではない。第1導電型をp型、第2導電型をn型として、p型Si基板を用いた場合も、n型Si基板を用いた場合と同様に、取り扱うことができる。
【0016】
<第1実施形態>
[ダイオードの構成]
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るダイオードの構成について説明する。なお、
図1は、第1実施形態に係るダイオード1のアクティブ領域の模式的断面図である。ターミネーション領域については記載を省略しているが、ターミネーション領域には、p型ウェルと電極とをリング状に配置したFLR(Field Limiting Ring)型等の従来のターミネーション構造が用いられる。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態に係るダイオード1は、n
−ドリフト層101と、アノードp層102と、アノードp
−層103と、カソードn層104と、カソードバッファn層105と、低ライフタイム領域層106と、アノード電極107と、カソード電極108と、で構成されている。
なお、以下の説明では製造工程の途中の段階を含めて、半導体層部分の全体をSi基板100と呼ぶ。
【0018】
n
−ドリフト層(第1半導体層)101は、n型Siからなる半導体層であって、イオン注入や拡散等により変性されない、もとのn型Si基板のままのn型半導体領域からなるn型半導体層である。
カソードn層(第3半導体層)104は、Si基板100の裏面側であるカソード側に設けられ、n
−ドリフト層101よりも高濃度のn型不純物領域からなるn型半導体層である。
カソードバッファn層(第3半導体層、第5半導体層)105は、カソードn層104のn
−ドリフト層101側に隣接して設けられ、カソードn層104よりも低濃度でn
−ドリフト層101よりも高濃度のn型不純物領域からなるn型半導体層である。カソードバッファn層105はなくてもよいが、カソードバッファn層105を設けることにより、ダイオード1に逆方向電圧が印加されたときに、PN接合からアノード側への空乏層の伸びが抑制され、耐圧が向上する。
低ライフタイム領域層(第4半導体層)106は、カソードバッファn層105とn
−ドリフト層101との間に形成され、低ライフタイム領域層106におけるキャリアのライフタイム(寿命)がカソードバッファn層105におけるキャリアのライフタイムよりも短いn型半導体層である。低ライフタイム領域層106は、カソードバッファn層105と隣接する位置に設けられており、n型不純物としてカソードバッファn層105が含有するn型不純物と同種の不純物(元素)を含有している。
なお、これらのn型半導体層の構造については、後記する[イオン注入とレーザアニールの条件]の説明と共に、更に詳細に説明する。
【0019】
アノードp層(第2半導体層)102は、Si基板100の表面側であるアノード側に局所的に設けられ、p型不純物領域からなるp型半導体層である。
アノードp
−層103は、Si基板100の表面側であるアノード側であって、アノードp層102が設けられていない領域に設けられ、アノードp層102よりも低濃度のp型不純物領域からなるp型半導体層である。
すなわち、p型半導体層は、Si基板100の表面側において、厚さが薄く低濃度のp型不純物領域層であるアノードp
−層103が形成され、局所的に高濃度のp型不純物領域からなる厚さの厚いアノードp層102が設けられたウェル構造を有している。
【0020】
本実施形態では、アクティブ領域においてアノードp層102を局所的に配置したウェル構造を有しており、アノード電極107からのホール注入量を抑制しリカバリをソフト化するように、すなわち、リカバリ時の電圧の跳ね上がりや振動が低減されるように構成されている。
【0021】
図1に示した局所的に配置されたアノードp層102は、アノード側であるSi基板100の表面から見た平面視で、ドット(円)状、ストライプ状等の形状で形成することができる。例えば、アノードp層102を、直径10μmの円形とし、この円の間の距離を10μmにて配置することができる。アノードp層102の深さは3〜10μm程度、p型不純物のピーク濃度は1×10
17〜1×10
19cm
−3程度にすることができる。なお、アノードp層102の不純物濃度や寸法は、ダイオードの耐圧、仕様により適宜設定される。
【0022】
Si基板100の表面側において、アノードp層102が設けられた領域以外の領域にはアノードp層102よりも低濃度のp型不純物領域からなるアノードp
−層103が形成されている。アノードp
−層103のp型不純物のピーク濃度は1×10
15〜1×10
17cm
−3程度にするのが好ましい。
【0023】
アノードp
−層103を設けると、アノードp
−層103がない場合と比べ、アノード電極107から流れるリーク電流を低減することができる。なお、このリーク電流が許容できる場合は、アノードp
−層103をなくして、p型半導体層として局所的に設けられたアノードp層102のみで構成するようにしてもよい。その場合は、アノードp
−層103を形成するためのp型不純物のイオン注入工程等を省いて工程を簡略化することができる。
【0024】
アノード電極(第1電極)107は、アノードp層102にオーミック接続された電極である。
カソード電極(第2電極)108は、カソードn層104にオーミック接続された電極である。
【0025】
[ダイオードの製造方法]
次に、
図2から
図5を参照(適宜
図1参照)して、第1実施形態に係るダイオード1のアクティブ領域の構造の製造方法の一例について説明する。なお、ターミネーション領域の構造もアクティブ領域の構造と同時に作製するが、ターミネーション領域の構造の製造方法は従来のダイオードと同じであるので説明は簡略化する。
【0026】
(基板の準備)
まず、ダイオード1を作製するためのSi基板100として、Siウエハを準備する。Siウエハには、耐圧に応じた比抵抗を有するFZ(Floating Zone)ウエハを用いることができる。本実施形態では、FZウエハのバルクをn
−ドリフト層101とする。FZウエハの比抵抗は、例えば600Vの耐圧をもつダイオードでは25Ωcm程度、1.2kVの耐圧をもつダイオードでは55Ωcm程度とすることができる。
【0027】
(アクティブ領域形成工程)
図示しない最初の工程で、Si基板100の表面全体に熱酸化により酸化膜を形成する。次に、アノードp
−層103を設ける領域であるアクティブ領域を形成するためのフォトリソグラフィ工程を行う。このフォトリソグラフィ工程では、Si基板100の表面にレジスト材料を塗布、露光、現像することで、アクティブ領域の全面が開口したレジストを形成する。なお、このとき、ターミネーション領域において、p型ウェルを形成する領域もレジストを開口する。続いて、レジストの開口部に露出した酸化膜をウェットエッチングで除去し、レジストも除去する。この工程で、Si基板100の表面には、アクティブ領域の全面と、ターミネーション領域のp型ウェルを形成する領域とが開口した酸化膜が形成される。
【0028】
(アノードp
−層形成工程)
その後、
図2に示すように、熱酸化によりSi基板100の表面にインプラスルー酸化膜109を形成し、アクティブ領域形成工程で形成した酸化膜とインプラスルー酸化膜109とからなる酸化膜の厚膜部をマスクとして、薄膜部であるインプラスルー酸化膜109越しにアノードp
−層103を形成するためのp型不純物をイオン注入する。これによって、アクティブ領域には全面にアノードp
−層103のp型不純物がイオン注入される。
【0029】
(アノードp層形成工程)
次に、
図3に示すように、アノードp層102を形成するためのフォトリソグラフィ工程を行う。このフォトリソグラフィ工程では、Si基板100の表面にレジスト材料を塗布、露光、現像して、アクティブ領域のアノードp層102を形成する領域に開口を有するレジスト110を形成する。なお、このとき、不図示のターミネーション領域において、p型ウェルを形成する領域もレジストを開口する。
【0030】
その後、レジスト110をマスクとして、アノードp層102を形成するためのp型不純物をイオン注入する。このとき同時に、不図示のターミネーション領域のp型ウェルを形成する領域にもp型不純物のイオン注入が行われる。
【0031】
次に、レジスト110を除去した後、高温アニールと酸化とを行うことで、
図4に示すようにイオン注入したp型不純物を拡散させてアノードp層102及びアノードp
−層103を形成すると共に、Si基板100の表面に形成されている酸化膜(不図示)を成長させる。
【0032】
(アノード電極形成工程)
続いて、コンタクト部を形成するためのフォトリソグラフィ工程を行う。このフォトリソグラフィ工程では、レジスト材料を塗布、露光、現像して、アクティブ領域の全面に開口を有するレジスト(不図示)を形成する。
続いて、レジストの開口部に露出した酸化膜(不図示)をエッチングで除去し、レジストも除去する。その後、アノード電極107となる導電性材料からなる膜、例えば、AlSi膜をスパッタ又は蒸着で形成する。
そして、不図示のターミネーション領域のp型ウェル上に設けられる電極を形成するためのフォトリソグラフィ工程とエッチング工程を行うことで、p型ウェル上の電極が形成される。このとき、
図4に示すように、アクティブ領域の全面に形成されたままのAlSi膜がアノード電極107となる。
【0033】
次に、不図示のターミネーション領域に設けられる電極を加工するためのレジストを除去した後、ターミネーション領域に保護膜を形成する。保護膜の形成法としては、例えば、ポリイミドの前駆体材料と感光材料とを含有する溶液を塗布し、ターミネーション領域を露光して前駆体をポリイミド化することで、ターミネーション領域上にポリイミド保護膜を形成することができる。
以上で、アノード側の構造が完成する。
【0034】
次に、
図5に示すように、カソード側の構造を形成する。
(裏面研削工程)
まず、Si基板100であるSiウエハの裏面を研削し、ウエハ厚を薄くする。ウエハ厚は、耐圧に応じて異なり、例えば、600V耐圧品では70μm程度、1200V耐圧品では120μm程度である。研削のダメージ層が残らないように、機械的な研磨の後に、化学的なエッチングを行うことが好ましい。例えば、8インチウエハのようにSi基板100の口径が大きい場合には、ウエハ割れが起きにくいように、TAIKO研削(「TAIKO」は登録商標)と呼ばれる研削方法を用いることが好ましい。この研削方法は、ウエハ周囲にリング状にウエハ厚が厚い部分を残す研削方法である。
なお、3.3kV以上の耐圧のダイオードでは、仕上がりのSiウエハ厚が厚いので、Siウエハの裏面の研削を行う必要はない。
【0035】
(カソードバッファn層・カソードn層・低ライフタイム領域形成工程)
その後、Si基板100の裏面側からウエハ全面に、カソードバッファn層105及びカソードn層104を形成するためのn型不純物のイオン注入を順次に行う。このとき、カソードバッファn層105を形成するためのn型不純物のイオン注入は、カソードn層104を形成するためのn型不純物のイオン注入よりも、低濃度かつ高い打ち込みエネルギーで深く打ち込まれるように行う。
【0036】
続いて、イオン注入したn型不純物を活性化させるためにレーザアニールを行う。活性化にレーザアニールを使うことで、Si基板100のアノード側である表面側に形成した電極及び保護膜(不図示)が耐熱温度以上に加熱されずに、裏面側のn型不純物の活性化を行うことができる。このとき、カソードバッファn層105を形成するためにn型不純物が注入された領域の内で、レーザアニールによる活性化が十分に行われたカソードn層104側の領域がカソードバッファn層105となり、活性化率が低いn
−ドリフト層101側の領域が低ライフタイム領域層106となる。
【0037】
レーザアニールに用いるレーザは、波長532nmのYLF(Yttrium Lithium Fluoride)レーザの第2高調波、同等の波長を持つ波長532nmのYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、波長532nmのYVO
4レーザ等のレーザ等を用いることができる。また、更に波長の短い波長308nmのXeClエキシマレーザ、波長248nmのKrFエキシマレーザを用いることもできる。レーザ照射のエネルギーや波長は、n型不純物を活性化させる深さに応じて適宜選択することができる。
なお、イオン注入とレーザアニールの条件の詳細については後記する。
【0038】
(カソード電極形成工程)
レーザアニール後に、カソード側である裏面にカソード電極108を形成する。なお、カソード電極108は、金属等の適宜な導電性材料を用いて、アノード電極107と同様の方法で形成することができる。
その後、必要に応じて、ウエハ全域についてのキャリアのライフタイムを調整するために、裏面側から電子線照射を行い、更に、電子線照射によるダメージ回復のためにアニール処理を行うようにしてもよい。
【0039】
(分割工程)
最後にウエハをダイシングなどで分割してダイオード1のチップが完成する。
【0040】
[イオン注入とレーザアニールの条件]
次に、イオン注入とレーザアニールの条件について説明する。
イオン注入により生成される欠陥の濃度がピークとなる深さは、レーザアニールによりイオン注入されたn型不純物が活性化される深さよりも、深い方が望ましい。欠陥の濃度がピークとなる深さの方が深くすることで、欠陥分布の深さ方向のばらつき及びレーザアニールで活性化される深さ方向のばらつきによる、低ライフタイム領域層106に残存する欠陥の量のばらつきを低減することができる。
【0041】
ここで、
図6を参照(適宜
図1参照)して、カソード側であるn型半導体層の深さ方向の構造について説明する。
図6は、後記する条件で作製した実施例に係るダイオードについて、Si基板100の裏面、すなわちカソード側の表面からの深さ方向のn型不純物の濃度プロファイル(実線)及び活性化されたn型不純物の濃度プロファイル(破線)を示したものである。
【0042】
n型不純物の濃度プロファイルは、ダイオード1のSi基板100のカソード側の表面からの2次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によりn型不純物元素の濃度を測定することで求めることができる。また、活性化されたn型不純物の濃度プロファイルは、拡がり抵抗(SR:Speading Resistance)の深さ方向の分布を測定し、測定したSR値をキャリア濃度に換算して求めることができる。
また、活性化率は、(SR測定で求めたキャリア濃度)/(SIMS測定で求めたn型不純物濃度)と定義することとする。ここで、キャリア濃度とは、SR測定で求めた活性化されたn型不純物の濃度のことである。
【0043】
図6に示した濃度プロファイルについて説明する。
Si基板100のカソード側の表面(深さ0μm)から0.3μm程度の深さまでの領域Aは、SIMS測定により求めた不純物濃度及びSR測定で求めたキャリア濃度が共に、1×10
19cm
−3以上の高濃度であり、かつ略一定値である。この領域は、カソードn層104を形成するためにn型不純物としてのリンを高濃度でイオン注入した領域であり、レーザアニールでSi基板100のカソード側の表面付近の結晶が溶融したためにボックス状のプロファイルになっている。この領域Aがカソードn層104に相当する。
【0044】
なお、この領域のキャリア濃度が低いと、導通時にカソード電極108からの電子注入が減るので、ダイオード1の順方向電圧が上がってしまう。また、導通時のカソード側のキャリア濃度が低くなるために、リカバリ時に電圧の跳ね上がり・振動が起こりやすくなってしまう。従って、カソードn層104のキャリア濃度は、より高濃度である方が好ましく、1×10
19cm
−3以上であることが望ましい。
【0045】
カソードn層104を示すボックス状のプロファイルの領域Aにおけるn型不純物の活性化率は、レーザの照射エネルギーにもよるが、20〜100%程度になる。なお、カソードn層104は、活性化率が100%未満であっても、キャリア濃度自体が高濃度であればよい。
【0046】
なお、Si基板100のカソード側の表面からの深さが0.3μm付近のn型不純物濃度及びキャリア濃度が急激に減少する領域の活性化率に関しては、現状では十分な精度が得られないため、詳細な検討は省略する。十分な精度が得られないのは、SR測定における深さ方向の原点に十分な精度が得られないことと、PN接合付近では空乏層の影響を受けてSR測定の精度が落ちることとによるものである。
【0047】
Si基板100のカソード側の表面から0.3〜2.7μmまでの深さの領域(領域B及び領域C)は、カソードバッファn層105を形成するためにn型不純物を注入した領域である。この領域の中で、0.3〜1.0μmまでの深さの領域Bは、SIMS測定で求めたn型不純物濃度とSR測定で求めたキャリア濃度とが一致しており、活性化率はほぼ100%である。レーザ照射でSi基板100のカソード側の表面を過熱した熱が1.0μmの深さまで十分に伝わり、n型不純物が十分に活性化されたためである。この領域Bが電気的に有効なカソードバッファn層105に相当する。
【0048】
カソードバッファn層105を形成するためにn型不純物が注入された深さ0.3〜2.7μmまでの領域の中で、1.0μmよりも深い部分である領域Cは、SIMS測定で求めたn型不純物濃度と比べて、SR測定で求めたキャリア濃度が低く、n型不純物の活性化率が低下している領域である。レーザ照射による熱がこの領域には十分に伝わらず、イオン注入による欠陥が残存して活性化率が低く、活性化率が1%未満となる領域が含まれている。欠陥が残存することで、この領域Cがキャリアのライフタイムが短い領域となっており、この領域Cが低ライフタイム領域層106に相当する。
また、2.7μm以上の領域Dは、n型不純物のイオン注入がされない領域であり、n
−ドリフト層101に相当する。
【0049】
ここで、低ライフタイム領域層106について定義する。低ライフタイム領域層106は、前記したように
図6に示したプロファイルに基づいて定めることができる。このときに、カソードバッファn層105と低ライフタイム領域層106との境界近傍、及び低ライフタイム領域層106とn−ドリフト層101との境界近傍において、活性化率が10%以下の領域を低ライフタイム領域層106と定義する。活性化率10%以下は、後記するように、リカバリ損失の低減効果が得られる活性化率である。
【0050】
図6に示した例では、カソードバッファn層105の形成のためにイオン注入したn型不純物のピーク濃度の深さは1.2μm程度である。また、欠陥量のピーク深さは、n型不純物としてリンを720keVのエネルギーでイオン注入した場合にはn型不純物のピーク濃度の深さよりも10%程度浅くなるので、1.1μm程度となる。
なお、欠陥のピーク濃度は、Si原子が変
位するのに必要なエネルギー等を用いた計算やプロセスシミュレーションで知ることができる。また、ここで欠陥と呼んでいるのは、イオン注入によって生成される再結合中心の元となる欠陥のことである。
【0051】
これに対して、レーザアニールによりイオン注入されたn型不純物が十分に活性化され、活性化されたn型不純物の濃度がピークとなる深さは、
図6に示すように、1.0μm程度であり、プロセスシミュレーションにより求められる欠陥のピーク濃度の深さ(1.1μm)の方が深くなっている。
【0052】
イオン注入により生成される欠陥の濃度がピークとなる深さを、レーザアニールにより活性化されるn型不純物のピーク濃度の深さよりも深くするためには、欠陥の分布をより深くするか、レーザアニールによりn型不純物が活性化される深さをより浅くする。
【0053】
欠陥の分布を深くするためには、イオン注入するn型不純物として、より軽い元素を用いるか、イオン注入のエネルギーを高くする。イオン注入する元素としてプロトン(水素)やヘリウムを用いると、イオン注入の飛程が大きくなり過ぎるため、イオン注入の深さ方向の幅が大きくなり過ぎてしまい、かつ、大掛かりなサイクロトロンの粒子線照射装置を必要としてしまう。従って、LSI(大規模集積回路)の製造において、n型不純物層を形成するのに用いられるn型不純物元素の中で最も軽いリンを用いるのが最も望ましい。
【0054】
また、イオン注入のエネルギーを高くするほどn型不純物を深く打ち込むことができる。このとき、イオン注入のエネルギーは、装置が可能な範囲内、及び欠陥層を生成する際に必要な制御性を確保できる範囲内で高くすることが好ましい。
【0055】
レーザアニールによりn型不純物が活性化される深さをより浅くするには、レーザ照射でSi基板100に伝えるエネルギーを小さくするか、レーザの波長を短くする。
例えば、
図6に示した例では、レーザの照射エネルギーは1.5J/cm
2であったが、この照射エネルギーを小さくすることで、更にn型不純物が活性化される深さが浅くなる。また、レーザの照射時間を短くしたり、回数を減らしたりすることでもn型不純物が活性化される深さを浅くすることができる。
【0056】
また、レーザの波長に関しては、
図6に示した例では、波長532nmのYLFレーザの第2高調波を用いたが、更に波長の短い波長308nmのXeClエキシマレーザ、波長248nmのKrFエキシマレーザを用いることで、更にn型不純物が活性化される深さを浅くすることができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係るダイオードの構成について説明する。なお、
図7は、第2実施形態に係るダイオード1Aのアクティブ領域の模式的断面図である。ターミネーション領域については記載を省略しているが、第1実施形態と同様に、p型ウェルと電極とをリング状に配置したFLR型等の従来のターミネーション構造が用いられる。
【0058】
図7に示すように、第2実施形態に係るダイオード1Aは、
図1に示した第1実施形態に係るダイオード1に対して、アノードp層102がウェル構造を有さず、またアノードp
−層103を設けずに、アノード側のアクティブ領域の全面にアノードp層(第2半導体層)102を形成していることが異なる。他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明は省略する。
【0059】
本実施形態に係るダイオード1Aは、アノード電極107側のアクティブ領域上の全面にアノードp層102を形成するため、アノードp層102を局所的に形成するためのフォトリソグラフィ工程が不要となり、アノードp
−層103を形成するためのイオン注入の工程も省略できるため、製造コストを低減できる。他の工程については、第1実施形態と同様であるから説明は省略する。
【0060】
<第3実施形態>
次に、
図8を参照して、本発明の第3実施形態に係るダイオードの構成について説明する。なお、
図8は、第3実施形態に係るダイオード1Bのアクティブ領域の模式的断面図である。ターミネーション領域については記載を省略しているが、第1実施形態又は第2実施形態と同様に、p型ウェルと電極とをリング状に配置したFLR型等の従来のターミネーション構造が用いられる。
【0061】
図8に示すように、第3実施形態に係るダイオード1Bは、
図7に示した第2実施形態に係るダイオード1Aに対して、カソードバッファn層105を設けずに、低ライフタイム領域層(第4半導体層)106が、カソードn層(第3半導体層)104のn
−ドリフト層(第1半導体層)101側の面と隣接する位置に設けられていることが異なる。また、低ライフタイム領域層106は、n型不純物としてカソードn層104が含有するn型不純物と同種の不純物(元素)を含有しており、キャリアのライフタイムは、カソードn層104におけるキャリアのライフタイムよりも短くなるようにn型不純物の活性化率が低く調整されている。
なお、低ライフタイム領域層106の好ましい深さ及び厚さは、第1実施形態と同様である。また、他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明は省略する。
【0062】
本実施形態に係るダイオード1Bは、カソードバッファn層105を有さないため、カソードバッファn層105を形成するためのn型不純物のイオン注入は行わなくてもよい。第1実施形態に係るダイオード1(ダイオード1Aも同様)の製造方法において、カソードバッファn層105を形成するためにイオン注入するn型不純物の代わりに、カソードn層104を形成するためにイオン注入するn型不純物を使って、ボックス状の高濃度のn型不純物層(
図6の領域Aに相当)よりも深い位置に、電気的に有効なn型不純物層を設ける。こうすることで、カソード側のイオン注入の回数を1回にすることができる。この場合、深い位置に欠陥層を生成するために、カソードn層104を形成するためのn型不純物のイオン注入をより高エネルギーにするか、レーザアニールによる欠陥層が回復する深さを浅くするために、レーザ照射のエネルギーをより小さくする。これによって、カソードn層104に接する領域に、
図6の領域Cと同様のプロファイルを有する活性化率の低い領域を、低ライフタイム領域層106として形成することができる。他の工程については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるから説明は省略する。
【0063】
なお、第3実施形態に係るダイオード1Bにおいて、第1実施形態に係るダイオード1と同様に、p型半導体層の構造を、アノードp層102とアノードp
−層103とによるウェル構造を形成するようにしてもよい。また、アノードp
−層103を設けずに、アノードp層102のみをウェル構造で形成するようにしてもよい。
【0064】
<第4実施形態>
次に、
図9を参照して、本発明の第4実施形態に係る電力変換システムについて説明する。
図9に示す第4実施形態に係る電力変換システム10は、本発明によるダイオードを用いた電力変換システムである。
【0065】
図9に示すように、本実施形態に係る電力変換システム10は、モータ駆動用の3相インバータ回路を備えるものである。半導体スイッチング素子であるIGBT200a〜200fには、それぞれ本発明によるダイオード201a〜201fが逆並列に接続されている。すなわち、ダイオード201a〜201fはフリーホイールダイオードとして動作する。これらのダイオード201a〜201fとしては、前記した何れかの実施形態又はその変形例に係るダイオードが用いられる。IGBT(第1半導体スイッチング素子)200a〜200cとIGBT(第2半導体スイッチング素子)200d〜200fとが、それぞれ1個ずつ組み合わされて2個直列に接続され、従って、IGBTとダイオードとの逆並列回路が2個直列に接続されて、それぞれ1相分のハーフブリッジ回路が構成されている。
【0066】
ハーフブリッジ回路は交流の相数分、本実施形態では3相分備えられている。2個のIGBT200aとIGBT200dとの直列接続点、すなわち2個の逆並列回路の直列接続点より、交流出力が出ており、U相の交流出力として誘導機や同期機などのモータ206と接続されている。他のハーフブリッジ回路も同様に、2個のIGBTの直列接続点から、それぞれV相及びW相の交流出力が出ており、モータ206と接続されている。
【0067】
上アーム側のIGBT200a〜200cのコレクタは共通接続され、整流回路203の直流高電位側と接続されている。また、下アーム側のIGBT200d〜200fのエミッタは共通接続され、整流回路203のアース側と接続されている。整流回路203は、交流電源202の交流を直流に変換する。IGBT200a〜200fは、オン・オフスイッチングすることにより、整流回路203から受電した直流を交流に変換してモータ206を駆動する。上アーム駆動回路204及び下アーム駆動回路205は、それぞれ上アーム側のIGBT200a〜200c及び下アーム側のIGBT200d〜200fのゲートに駆動信号を与え、IGBT200a〜200fをオン・オフ動作させる。
【0068】
本実施形態によれば、本発明によるダイオードをフリーホイールダイオードとしてIGBT200a〜200fに逆並列に接続したので、スイッチング時のリカバリ損失を低減できる。これにより、電力変換システム10全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0069】
本発明の実施形態は前記したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲内において、種々の実施形態が可能である。たとえば、逆導通型の半導体スイッチング素子に内蔵されたダイオードに本発明を適用してもよい。また、
図9に示した電力変換システム10におけるIGBT200a〜200fに代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、接合型バイポーラトランジスタ、接合型FET、静電誘導型トランジスタ、GTOサイリスタ(Gate Turn Off Thyristor)などの半導体スイッチング素子を用いることができる。
【実施例】
【0070】
次に、
図1及び適宜に分析結果を示す図を参照して、
図1に示した本発明の第1実施形態に係るダイオード1を作製した実施例について説明する。
(作成条件)
本実施例のダイオードは、Si基板100としてn型Siウエハを用い、カソードバッファn層105を形成するためのn型不純物としてリンを、エネルギー720keV、オフ角0°、ドース1×10
12cm
−2で注入する。また、カソードn層104のn型不純物としてリンを、エネルギー60keV、オフ角7°、ドース1×10
15cm
−2で注入する。その後、注入したn型不純物を活性化させるためのレーザアニールとして、波長532nmのYLFレーザの第2高調波を1.5J/cm
2のエネルギーで照射した。
【0071】
また、比較例1として、実施例のダイオードにおいて、イオン注入したn型不純物を活性化させるためのレーザアニールとして、レーザ照射エネルギーを2.0J/cm
2と高くしてダイオードを作製した。なお、比較例1におけるイオン注入の条件及びその他の条件は、実施例における条件と同じである。すなわち、比較例1は、カソードバッファn層105は有するが、低ライフタイム領域層106を有さない構造のダイオードである。
【0072】
更に、比較例2として、実施例のダイオードにおいて、カソードバッファn層105を形成するためのn型不純物の注入を行わないダイオードを作製した。すなわち、比較例2は、カソードバッファn層105及び低ライフタイム領域層106を有さない構造のダイオードである。
【0073】
(分析結果)
本実施例のダイオードのカソード側の分析結果を
図6に示す。なお、分析結果である
図6の詳細な説明は前記した通りであるから、ここでの説明は省略する。
【0074】
図10に、比較例1のダイオードのSIMS測定により求めたn型不純物の濃度プロファイル(実線)と、SR測定により求めたキャリア濃度プロファイル(破線)とを示す。
図10に示すように、SIMS測定により求めたn型不純物の濃度プロファイルと、SR測定により求めたキャリア濃度プロファイルとが、Si基板100のカソード側の表面(深さ0μm)から図示した3μmの深さまで略一致している。レーザアニールにおけるレーザの照射エネルギーを高くすると、レーザ照射による熱が3μmの深さまで十分に伝わるようになり、カソードバッファn層を形成するためにn型不純物を注入した領域の全域で、n型不純物がほぼ100%活性化され、低ライフタイム領域層106が形成されていないことが分かる。
【0075】
言い換えれば、従来のダイオードの製造工程と同じ工程のままで、イオン注入とレーザ照射の条件を調整することにより、
図1及び
図6に示したように、イオン注入により生成された欠陥が残存する低ライフタイム領域層106をカソードバッファn層105に隣接する位置に形成することが可能となることが分かる。
【0076】
(逆方向特性)
図11に、実施例(実線)及び比較例1(破線)のダイオードの逆方向特性の波形を示す。
図11に示すように、比較例1のダイオードの逆方向特性は、耐圧の1500Vまで特に傾きの変化点は存在せずリーク電流は単調に増加している。
これに対し、実施例のダイオードでは、耐圧の1500Vよりも低い1200V近辺に傾きの変化点が存在し、1200V以上の電圧では逆方向電流の増加の傾きが大きくなっている。実施例のダイオードでは、逆方向電圧を印加すると、アノード側のPN接合から空乏層が伸び、逆方向電圧が1200Vになると、空乏層が欠陥の残存した低ライフタイム領域層106に達して低ライフタイム領域層106に電界がかかり、欠陥に起因したリーク電流が流れる。このために、傾きの変化点を有し、この変化点の後ではリーク電流の増加が顕著になる逆方向特性の波形となる。この逆方向特性から、低ライフタイム領域層106に欠陥が存在していることが分かる。
【0077】
本実施例のダイオードでは、
図6に領域Cとして示したように、低ライフタイム領域層106は、Si基板100のカソード側の表面(カソード電極108とカソードn層104とが接する面)から1.2〜2.4μmの浅い領域に存在する。すなわち、低ライフタイム領域層106が存在する深さ(低ライフタイム領域層106とn
−ドリフト層101とが接する面のSi基板100のカソード側の表面からの深さ(距離))は、2.4μmである。n
−ドリフト層101へのイオン注入のエネルギーを高くすると、低ライフタイム領域層106の深さは深くなるが、一般的に半導体製造で使用するイオン注入装置の上限エネルギーである3MeVでリンをイオン注入しても、低ライフタイム領域層106の深さは5μm程度である。一般的に、フリーホイールダイオードは、リカバリ時の電圧の跳ね上がりや振動を抑制するために、逆方向電圧が印加されたときに伸びる空乏層が、カソード側の表面から少なくとも10μm以上の領域には届かないようにSi基板の厚さが設計される。よって、本発明のダイオードでは、空乏層が低ライフタイム領域層106にまで達してリーク電流を増加させずに済む。すなわち、カソードバッファn層105を形成するイオン注入によって低ライフタイム領域層106を形成することで、低ライフタイム領域層106の深さが5μm以下となり、カソードn層104、カソードバッファn層105及び低ライフタイム領域層106の各層が良好に機能するように形成した上で、逆方向電圧印加時にリーク電流の増加が現れないようにすることができる。
【0078】
これに対し、プロトンやヘリウムの照射で低ライフタイム領域層106を形成する場合、照射粒子が軽いので、照射エネルギーにもよるが、低ライフタイム領域層106の厚さは10〜70μm程度と厚くなる。このため、形成される低ライフタイム領域層106のSi基板100のカソード側の表面から最も深い位置が深くなる。この場合、低ライフタイム領域層106が浅い領域に形成される場合と比べ、リーク電流の増加が始まる電圧が低くなる。このため、低ライフタイム領域層106に印加される電圧も大きくなり、リーク電流が問題となる。
【0079】
また、プロトンやヘリウムの照射で低ライフタイム領域層106を形成する場合、粒子が軽いためにイオン注入の飛程が大きく、注入イオンの深さ方向の分布範囲が広くなる。このため、低ライフタイム領域層106を、厚さやその中に存在する欠陥量を良好に制御して形成するのが難しい。
【0080】
本実施例のように、カソードのn層(カソードn層104及びカソードバッファn層105)を形成するためのn型不純物と同じリンのイオン注入を使うと、厚さや欠陥量を良好に制御して、低ライフタイム領域層106を形成することができる。リンの代わりに、より質量が重いヒ素(As)やアンチモン(Sb)を用いてもよい。なお、リンより質量が重いAsやSb等の元素を用いる場合、レーザ照射の熱が十分な熱が伝わらない深さに低ライフタイム領域層106を形成するためには、より高エネルギーでイオン注入をすればよい。
【0081】
(リカバリ時の電流・電圧波形)
図12に、実施例(実線)及び比較例1(破線)のダイオードの、150℃におけるリカバリ特性の電流波形及び電圧波形を示す。
電圧波形は、実施例のダイオードも比較例1のダイオードもほぼ同じである。一方、電流波形は、図中矢印で示す部分であるテール電流が、比較例1のダイオードに比べ、本実施例のダイオードの方が小さく(0に近く)なっている。
これは、リカバリ時にn
−ドリフト層101中に残存するキャリアが、n
−ドリフト層101よりもライフタイムの短い低ライフタイム領域層106により早く消滅させられるため、テール電流が小さくなったものである。
【0082】
テール電流が小さくなった結果、比較例1のダイオードでは11mJであったリカバリ損失が、本実施例のダイオードでは6mJにまで、約半分近く低減されている。なお、リカバリ損失の低減量は、ダイオードの仕様、評価条件に依存するので、必ずしも同程度のリカバリ損失の低減効果が得られるわけではないが、特にテール電流が大きい場合に大きな低減効果が得られ、本発明の有用性が高い。
【0083】
(リカバリ損失)
図13に、実施例(実線)及び比較例1(破線)のダイオードの定格電流における順方向電圧VFとリカバリ損失Errのトレードオフ関係を表すグラフを示す。順方向電圧VFとリカバリ損失Errは、共に150℃で測定した結果である。各3点ずつの測定点は、Si基板100の深さ方向に均一にライフタイム制御を行う電子線照射の照射量を変化させたものである。
【0084】
図13に示すように、電子線照射量を増やすほど、順方向電圧VFは増加し、リカバリ損失Errは減少する。本実施例のダイオードでは、欠陥層の導入で若干の順方向電圧VFの増加はあるが、前記したテール電流の低減効果により、比較例1のダイオードよりもリカバリ損失Errが低減され、順方向電圧VFとリカバリ損失Errのトレードオフ関係が改善されている。
【0085】
図14に、低ライフタイム領域層106のn型不純物の活性化率とリカバリ損失との関係を示す。カソードバッファn層105を形成するn型不純物のイオン注入のドースを増やすか、イオン注入後のレーザ照射のエネルギーを小さくすることで、低ライフタイム領域層106の活性化率を低下させる。
図14より分かるように、低ライフタイム領域層106の活性化率が10%以下の領域を有することが好ましい。活性化率が10%以下の領域を有することで、リカバリ時にn
−ドリフト層101に残存するキャリアを迅速に消滅させ、テール電流を低減することができる。
【0086】
(カソードバッファn層の効果)
図15に、実施例(実線)及び比較例2(破線)のダイオードの逆方向特性の測定結果を示す。なお、
図15に示した実施例の逆方向特性は、
図11に示した実施例の逆方向特性と同じものである。
図15に示すように、実施例のダイオードにおいて電気的に有効なカソードバッファn層105が存在することで、逆方向電圧の印加時に空乏層の伸びが抑制され、カソードバッファn層105を有さない比較例2のダイオードと比べ、耐圧が1200Vから1500Vに向上しているのが分かる。
【0087】
なお、比較例2の構成のダイオードと同様に、カソードバッファn層105を設けない第3実施形態に係るダイオード1B(
図8参照)は、前記したように、カソードバッファn層105を設けたダイオードに比べて耐圧は低下するが、工程を簡略化することができる。また、カソードバッファn層105を設けず、かつカソードn層に隣接して低ライフタイム領域層106も設けないダイオードに比べて、カソードn層104に隣接する位置に低ライフタイム領域層106を設けることにより、パンチスルー状態となる耐圧(
図15においては1200V付近)より低い電圧で、逆方向電流の傾きの変化点が生じる。このため、
図11に示した実施例及び比較例1の関係と同様に、第3実施形態に係るダイオード1Bにおいてもテール電流が低減され、従って、リカバリ損失が低減される。