(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073102
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】複連式混合弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/22 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
F16K11/22 B
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-223373(P2012-223373)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-74480(P2014-74480A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(72)【発明者】
【氏名】長濱 健一郎
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−175200(JP,A)
【文献】
特開2010−249253(JP,A)
【文献】
特開2008−281260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水の温度を個別に調整する複連式混合弁装置であって、
水流入口を有する管状水室及び湯流入口を有する管状湯室が横並びに連設されるとともに、前記管状水室と管状湯室との間に水と湯の混合比率を調整するためのロータリー式の第1弁体及び第2弁体がそれぞれ個別に回動可能に嵌挿され、かつ、前記第1弁体によりその温度が調整された温水を第1供給先に送るための第1流出口と前記第2弁体によりその温度が調整された温水を第2供給先に送るための第2流出口とが設けられ、
前記管状水室と管状湯室とは、断面円形とされ、それらの中心線が同一平面上に配置されていることを特徴とする複連式混合弁装置。
【請求項2】
温水の温度を個別に調整する複連式混合弁装置であって、
水流入口を有する管状水室及び湯流入口を有する管状湯室が隔壁部を介して横並びに連設されるとともに、前記隔壁部に前記管状水室と管状湯室とに開口する両面窓付き円筒面部からなる第1弁体嵌挿部及び第2弁体嵌挿部が並設され、水と湯の混合比率を調整するためのロータリー式の第1弁体及び第2弁体がその周壁の一部を前記窓から前記管状水室及び管状湯室に露出させた状態で前記第1弁体嵌挿部及び第2弁体嵌挿部にそれぞれ個別に回動可能に嵌挿され、かつ、前記第1弁体によりその温度が調整された温水を第1供給先に送るための第1流出口と前記第2弁体によりその温度が調整された温水を第2供給先に送るための第2流出口とが設けられていることを特徴とする複連式混合弁装置。
【請求項3】
前記管状水室と管状湯室とは、断面円形とされ、それらの中心線が同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の複連式混合弁装置。
【請求項4】
前記管状水室と管状湯室とは、共に直管状とされて相互に平行に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項5】
前記第1弁体及び第2弁体の回転軸線は、前記管状水室及び管状湯室の中心線に対して直交配置されていることを特徴とする請求項1,3,4のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項6】
前記第1流出口と第2流出口とは、前記管状水室と管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側と他面側に逆向きに配置されていることを特徴とする請求項5に記載の複連式混合弁装置。
【請求項7】
前記第1弁体の直上に前記第1流出口が設けられるとともに、前記第2弁体の直下に前記第2流出口が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の複連式混合弁装置。
【請求項8】
前記水流入口及び湯流入口は、前記管状水室及び管状湯室の中心線に対して直交配置されていることを特徴とする請求項1,3から7のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項9】
前記水流入口と湯流入口とは、前記管状水室と管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側と他面側に逆向きに設けられていることを特徴とする請求項8に記載の複連式混合弁装置。
【請求項10】
前記水流入口及び湯流入口は、共に前記第1弁体もしくは第1流出口と前記第2弁体もしくは第2流出口との間に設けられていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項11】
前記管状水室及び管状湯室における前記第1弁体と前記水流入口もしくは湯流入口との間、及び/又は、前記管状水室及び管状湯室における前記第2弁体と前記水流入口もしくは湯流入口との間に逆止弁が装着されていることを特徴とする請求項10に記載の複連式混合弁装置。
【請求項12】
前記水流入口に逆止弁が装着されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項13】
前記逆止弁は、弁座と、該弁座に接離する弁体と、該弁体を保持する弁棒と、前記弁棒が摺動自在に嵌挿される筒状ガイド部と、前記弁棒に保持された弁体を前記弁座に押し付ける方向に付勢する圧縮コイルばねからなる閉弁ばねと、を備えていることを特徴とする請求項11又は12に記載の複連式混合弁装置。
【請求項14】
前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータを備えていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項15】
前記水流入口、管状水室、湯流入口、管状湯室、隔壁部、第1及び第2弁体嵌挿部、第1及び第2流出口は弁本体として一体に成形されていることを特徴とする請求項2から14のいずれか一項に記載の複連式混合弁装置。
【請求項16】
前記管状水室と管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側に、前記水流入口及び湯流入口のうちの一方、前記第1流出口及び第2流出口のうちの一方、並びに、前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータのうちの一方が垂設され、前記弁本体の上下方向他面側に、前記水流入口及び湯流入口のうちの他方、前記第1流出口及び第2流出口のうちの他方、並びに、前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータのうちの他方が垂設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複連式混合弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と湯を混合して所望温度の温水を得ることのできる混合弁装置に係り、例えば、温水の供給先(用途)が複数箇所あり、かつ、その供給先毎に温水の温度を個別に調整することが要求される給湯システム等に使用するのに好適な複連式混合弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給湯システム等に使用される混合弁として、例えば下記特許文献1等にも見られるように、弁本体と、該弁本体内に回動可能に嵌挿された概略円筒状の弁体と、該弁体を回動させる駆動手段(ステッピングモータ)とを備え、前記弁本体に水流入口及び湯流入口が設けられるとともに、前記弁体の周壁部に、前記水流入口及び湯流入口の開口面積を連続的に変化させるべく一つないし複数の調整用開口部が設けられ、前記弁体を回動させることにより水と湯の混合比率、言い換えれば、導出される温水の温度を調整するようにされた混合弁が知られている。
【0003】
このような混合弁が用いられる給湯システム、特に、例えば特許文献2に例示される如くに、温水の供給先(用途)が、例えば、風呂(浴室)、給湯(キッチン)、ルーム暖房等のように複数箇所あり、かつ、その供給先毎に温水の温度を個別に調整することが要求される給湯システムにおいては、前記した如くの混合弁をその供給先(用途)の数に合わせて複数個使用するようになっている。詳細には、かかる従来の給湯システムにおいては、例えば、ヒートポンプユニット等の加熱手段により給水(水道水)を所定温度に加熱してタンクに貯留しておく(所定温度に保つべく循環させる)ようにされ、このタンクの湯を配管を介して、風呂用、給湯用等の各混合弁の湯流入口に分配するとともに、給水(水道水)を配管を介して各混合弁の水流入口に分配し、各混合弁において所要温度の温水が得られるように水と湯の混合比率を調整して、その流出口から配管を介して必要部所に供給するようになっている。
【0004】
なお、前記した如くの混合弁においては、特許文献1にも見られるように、逆流(漏れ)等を防止するため、前記水流入口や湯流入口に逆止弁を配置することが知られている。前記逆止弁としては、前記水流入口や湯流入口が通常断面円形に形成されること等から、該水流入口や湯流入口に嵌挿される円筒状ないし円形リング状部分を有する、シール性や汎用性の高いものが普通は用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-236982号公報
【特許文献2】特開2003-176953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来の給湯システムにおいては、温水供給先(用途)の数に応じた個数の混合弁を必要とするとともに、各混合弁に湯と水をそれぞれ分配するための配管及び継手類が必要となるため、配管系の部品点数が多くなるとともに、その占有スペースも大きくなり、構成部材のレイアウトに大きな制約が課せられるとともに、設備コストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、通常単独で使用される混合弁をそのまま温水供給先(用途)の数に応じた個数分使用するようにされているので、配管系以外の、水と湯の混合に供せられる混合弁部分の総部品点数も多くなり、この点からも総コストが高くなる嫌いがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、温水供給先(用途)が複数ある給湯システム等において配管類等を削減できて設備コストを低く抑えることができるとともに、通常の混合弁を複数個使用する場合に比して部品点数を削減できる複連式混合弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る複連式混合弁装置は、基本的には、水流入口を有する管状水室及び湯流入口を有する管状湯室が横並びに連設されるとともに、前記管状水室と管状湯室との間に水と湯の混合比率を調整するためのロータリー式の第1弁体及び第2弁体がそれぞれ個別に回動可能に嵌挿され、かつ、前記第1弁体によりその温度が調整された温水を第1供給先に送るための第1流出口と前記第2弁体によりその温度が調整された温水を第2供給先に送るための第2流出口とが設けられ
、前記管状水室と管状湯室とは、断面円形とされ、それらの中心線が同一平面上に配置されていることを特徴としている。
【0010】
より具体的な好ましい態様では、水流入口を有する管状水室及び湯流入口を有する管状湯室が隔壁部を介して横並びに連設されるとともに、前記隔壁部に前記管状水室と管状湯室とに開口する両面窓付き円筒面部からなる第1弁体嵌挿部及び第2弁体嵌挿部が並設され、水と湯の混合比率を調整するためのロータリー式の第1弁体及び第2弁体がその周壁の一部を前記窓から前記管状水室及び管状湯室に露出させた状態で前記第1弁体嵌挿部及び第2弁体嵌挿部にそれぞれ個別に回動可能に嵌挿され、かつ、前記第1弁体によりその温度が調整された温水を第1供給先に送るための第1流出口と前記第2弁体によりその温度が調整された温水を第2供給先に送るための第2流出口とが設けられる。
【0011】
前記管状水室と管状湯室
とは、好ましくは、断面円形とされ、それらの中心線が同一平面上に配置される。
前記管状水室と管状湯室
とは、好ましくは、共に直管状とされて相互に平行に配置される。
【0012】
前記第1弁体及び第2弁体の回転軸線は、好ましくは、前記管状水室及び管状湯室の中心線に対して直交配置される。
前記第1
流出口と第2
流出口とは、好ましくは
前記管状水室と管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側と他面側に逆向きに配置される。
【0013】
他の好ましい態様では、前記第1弁体の直上に前記第1流出口が設けられるとともに、前記第2弁体の直下に前記第2流出口が設けられる。
【0014】
前記水流入口及び湯流入口は、好ましい態様では、前記管状水室及び管状湯室の中心線に対して直交配置される。
前記水流入口と湯流入口
とは、好ましくは
前記管状水室と管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側と他面側に逆向きに設けられる。
【0015】
前記水流入口及び湯流入口は、好ましくは、共に前記第1弁体もしくは第1流出口と前記第2弁体もしくは第2流出口との間に設けられる。
【0016】
他の好ましい態様では、前記管状水室及び管状湯室における前記第1弁体と前記水流入口もしくは湯流入口との間、及び/又は、前記管状水室及び管状湯室における前記第2弁体と前記水流入口もしくは湯流入口との間に逆止弁が装着される。
他の好ましい態様では、前記水流入口に逆止弁が装着される。
【0017】
前記逆止弁は、好ましい具体的な態様では、弁座と、該弁座に接離する弁体と、該弁体を保持する弁棒と、該弁棒が摺動自在に嵌挿される筒状ガイド部と、前記弁棒に保持された弁体を前記弁座に押し付ける方向に付勢する圧縮コイルばねからなる閉弁ばねと、を備える。
【0018】
他の好ましい態様では、前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータを備える。
【0019】
他の好ましい態様では、前記水流入口、管状水室、湯流入口、管状湯室、隔壁部、第1及び第2弁体嵌挿部、第1及び第2流出口は弁本体として一体に成形される。
【0020】
別の好ましい態様では、前記管状水室と前記管状湯室とが横並びに連設されてなる弁本体の上下方向一面側に、前記水流入口及び湯流入口のうちの一方、前記第1流出口及び第2流出口のうちの一方、並びに、前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータのうちの一方が垂設され、前記弁本体の上下方向他面側に、前記水流入口及び湯流入口のうちの他方、前記第1流出口及び第2流出口のうちの他方、並びに、前記第1弁体を回転駆動する第1モータ及び前記第2弁体を回転駆動する第2モータのうちの他方が垂設される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る複連式混合弁装置は、従来型の混合弁を2つ以上合わせた機能を持つ。すなわち、各混合弁に共通の、水流入口、管状水室、湯流入口、及び管状湯室を有し、それらに第1弁体、第1モータ、及び第1流出口を加えたものが一つの混合弁として働き、また、同様に、第2弁体、第2モータ、及び第2流出口を加えたものがもう一つの混合弁として働く。
【0022】
したがって、本発明の複連式混合弁装置を、供給先毎に温水の温度を個別に調整することが要求される給湯システムに適用する場合は、水流入口に水用配管を接続し、湯流入口に湯用配管を接続し、各流出口には、それぞれ従来と同様に温水供給配管を接続すればよく、これにより、従来は湯用配管及び水用配管がそれぞれ複数本必要であったが、本発明の複連式混合弁装置が用いられた給湯システムでは、湯用配管及び水用配管がそれぞれ1本ずつで済む。このため、給湯システムにおける配管系の部品点数を削減できるとともに、コンパクトに纏めることができ、構成部材のレイアウト自由度が高められて、設備コストを低く抑えることができる。
【0023】
また、従来は通常単独で使用される混合弁をそのまま温水供給先(用途)の数に応じた個数分使用するようにされているが、本発明の複連式混合弁装置では、水と湯の混合比率を任意に独立して変えることのできるロータリー式の弁体及びそれを回転駆動するモータを複数個備えているものの、水流入口、管状水室、湯流入口、管状湯室、隔壁部、弁体嵌挿部、複数個の流出口等は弁本体として一体に成形されるので、水と湯の混合に供せられる混合弁部分の総部品点数も削減でき、この点からもコストを抑えることができる。
【0024】
また、本発明の構成によれば、通常は弁本体から突出した部分となる水流入口及び湯流入口、第1流出口及び第2流出口、第1弁体を回転駆動する第1モータ、第2弁体を回転駆動する第2モータ等の配置自由度を高くすることができ、そのため、例えば、弁本体の上下方向一面側と他面側に、それぞれ、水流入口及び湯流入口のうちの一方と他方、第1流出口及び第2流出口のうちの一方と他方、並びに、第1モータ及び第2モータのうちの一方と他方、を配置すること等ができる。その結果、複連式混合弁装置の小型化を図ることができるとともに、その占有スペースを小さくすることができ、設置場所に応じて、その上下等に配管接続用スペース等を容易に確保し得、給湯システムへの組み込み等の便宜を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す斜視図。
【
図2】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す正面図。
【
図3】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す左側面図。
【
図4】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す右側面図。
【
図5】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す平面図。
【
図6】本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の複連式混合弁装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6は、本発明に係る複連式混合弁装置の一実施例を示す斜視図、正面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図である。
図7は、
図2のA-A矢視断面図、
図8から
図12は、
図7のB-B、C-C、D-D、E-E、F-Fの各矢視断面図である。なお、
図7以降の断面図において、本発明の理解にさほど必要とはしない部分(ステッピングモータ51、52の内部等)は、その図示やハッチングを省略している。
【0027】
また、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、
図1の方向矢印表示を基準としており、実際の設置状態での位置、方向を指すものではない。
【0028】
図示実施例の複連式混合弁装置1は、例えば、温水の供給先(用途)が、風呂(浴室、シャワー)と給湯(キッチン)のように2箇所あり、かつ、その供給先毎に温水の温度を個別に調整することが要求される給湯システムに使用されるもので、従来型の2つの混合弁の役割を担うもので、基本的には、水流入口21を有する管状水室11及び湯流入口22を有する管状湯室12が隔壁部15(
図7参照)を介して横並びに連設されてなる弁本体10を備える。
【0029】
管状水室11と管状湯室12は、共に同一径の直管状(断面円形)とされ、それらの中心線Q1、Q2が同一平面上に平行に配置されている。
【0030】
前記水流入口21及び湯流入口22は、管状水室11及び管状湯室12の中心線Q1、Q2に対して直交するとともに、相互に逆向きに配置されている。詳しくは、水流入口21は、弁本体10の上面側で左右方向中央部付近に上向きに垂設され、その下部の半分程度が前記管状水室11に開口せしめられている(
図5、
図9参照)。一方、湯流入口22は、弁本体10の下面側で左右方向中央部付近に下向きに垂設され、その上部の半分程度が前記管状湯室12に開口せしめられている(
図6、
図9参照)。
【0031】
弁本体10の隔壁部15の左端近くと右端近くには、
図7に示される如くに、管状水室11と管状湯室12とに開口する窓18、18が形成された両面窓付き円筒面部からなる第1弁体嵌挿部16と第2弁体嵌挿部17が並設されている。
【0032】
第1弁体嵌挿部16と第2弁体嵌挿部17には、ロータリー式の概略円筒状の第1弁体31及び第2弁体32がその周壁の一部を当該第1弁体嵌挿部16及び第2弁体嵌挿部17から管状水室11及び管状湯室12に露出させた状態で、それぞれ個別に回動可能に嵌挿されている。
【0033】
第1弁体31及び第2弁体32は、この例においては基本構成が同じもので、
図8、
図10に示される如くに、それらの回転軸線O1、O2が管状水室11及び管状湯室12の中心線Q1、Q2に対して直交配置されるとともに、第1弁体31と第2弁体32は、逆向き、すなわち、第1弁体31は逆立(上向き)、第2弁体32は正立(下向き)で配在されている。
【0034】
弁本体10の下面側の左端近く(の筒状保持部25)には第1弁体31を回転駆動する第1モータ(ステッピングモータ)51が弁本体10に対して垂直に取り付けられ、弁本体10の上面側の右端近く(の筒状保持部25)には第2弁体32を回転駆動する第2モータ(ステッピングモータ)52が弁本体10に対して垂直に取り付けられている。
【0035】
次に、
図10を参照しながら正立している第2弁体32の方を代表して、弁体31、32の構成を説明する。
【0036】
弁体32(31)の天井部付き周壁部33には、管状水室11及び管状湯室12(窓18、18)に対する開口面積を連続的に変化させるべく概略楕円形の調整用開口部34が設けられ、前記弁体32(31)をモータ52(51)で回動させることにより水と湯の混合比率、言い換えれば、導出される温水の温度を調整するようにされている。
【0037】
弁体32の周壁部33の天井部の上面中央には、軸部35が突設されている。この軸部35は、第2弁体嵌挿部17上に設けられた段差部付き筒状保持部25に挿入されてクリップ状係止具29で保持された支持部材26に回動可能に嵌挿されている。この軸部35の下部にはOリングが装着され、その上部には、弁体32の回転は許容するが下方への抜けを阻止する弁体係止具としてのクリップ27が装着され、さらにその上には、モータ52のロータ(の軸)と一体回転可能に連結するためのスプライン軸部36(スプラインは図示省略)及び非円形断面(Dカット形状等)の凸部37が設けられている。
【0038】
一方、弁本体10の上面側(第1弁体31の直上)には、第1弁体31によりその温度が調整された温水を第1供給先(例えば風呂)に送るための第1流出口41が垂設され、弁本体10の下面側(第2弁体32の直下)には、第2弁体32によりその温度が調整された温水を第2供給先(例えばキッチン)に送るための第2流出口42が垂設されている。
【0039】
また、前記管状水室11及び管状湯室12の右端部には、それらの内部に嵌挿される例えば3本(枚)の断面円弧状部24a及びその先端に設けられた円環状部24bからなる挿入部24Bと盲蓋部24Aを有する蓋状部材24が超音波溶着等により被着されている。なお、この蓋状部材24(の挿入部24B)は、後述する逆止弁60の抜け止めストッパとしても機能する。また、管状湯室12の左端部にも、上記蓋状部材24が被着されているが、管状水室11の左端部は、蓋はされておらず、水のみを外部に送るための水流出口43が横向きに突設されて開口している。
【0040】
ここで、本実施例の複連式混合弁装置1では、前記した水流入口21、管状水室11、湯流入口22、管状湯室12、隔壁部15、第1及び第2弁体嵌挿部16、17、第1及び第2流出口41、42、及び水流出口43は、合成樹脂材料を素材として一体に成形されている。
【0041】
また、管状水室11と管状湯室12とが横並びに連設されてなる弁本体10の上下方向一面側(上面側)に、水流入口21、第1流出口41、並びに、第2弁体を回転駆動する第2モータ52が垂設され、弁本体10の上下方向他面側(下面側)に、湯流入口22、第2流出口42、並びに、第1弁体31を回転駆動する第1モータ51が垂設されている。
【0042】
一方、管状水室11における第2弁体32と水流入口21とのの間には、管状湯室12側からの湯が水流入口21側に逆流(漏出)するのを防ぐべく逆止弁60が装着され、また、管状湯室12における第1弁体31と湯流入口22との間、及び、第2弁体32と湯流入口22との間には、それぞれ管状水室11側からの水が湯流入口22側に逆流(漏出)するのを防ぐべく逆止弁60が装着されており、さらに、水流入口21にも逆止弁60が装着されている。
【0043】
各逆止弁60は同一構成であるので、以下、管状水室11に装着されている逆止弁60を代表して説明する(
図7参照)。図示の逆止弁60は、その中心線から下半分が閉状態、上半分が開状態を示しており、管状水室11に嵌挿される弁座62が設けられた円筒状の弁座部材61と、前記弁座62に接離するゴム製シール材(パッキン)からなる弁体63と、該弁体63を保持すべく、弁体抜け止め用の頭部65a、弁体受け部65b、及び円柱状の胴部65cを有する弁棒65と、弁座部材61の内周側に配置され、弁棒65の胴部65cが摺動自在に嵌挿される筒状ガイド部66と、弁座部材61と筒状ガイド部66とを連結する3本の連結板部67(
図10参照)と、前記弁棒65に保持された弁体63を弁座62に押し付ける方向(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばねからなる閉弁ばね68とを備える。当該逆止弁60(弁座部材61)は、管状水室11に形成された段差部11dと前述した蓋状部材24(の挿入部24B)とで抜け止め係止されるようになっている。なお、閉弁ばね68は、弁棒65の弁体受け部65bと3本の連結板部67の内周側端部に設けられたばね受け溝69(の底部)との間に縮装されている。また、前記管状水室11と弁座部材61との間にはOリング等のシール材が介装されている。
【0044】
前記した構成を有する弁体31、32は、
図1においてM1、M2で示される湯水混合部を構成し、弁体31、32をモータ51、52によりそれぞれ適宜の角度回動させることにより、管状水室11内の水と管状湯室12内の湯とが所望の比率で混合され、それによって、流出口41、42から供給先に送られる温水の温度が個別に調整されることになる。
【0045】
すなわち、本実施例の複連式混合弁装置1は、従来型の混合弁を2つ合わせた機能を持つ。詳しくは、2つの混合弁に共通の、水流入口21、管状水室11、湯流入口22、及び管状湯室12を有し、それらに第1弁体31、第1モータ51、及び第1流出口41を加えたものが一つの混合弁として働き、また、同様に、第2弁体32、第2モータ52、及び第2流出口42を加えたものがもう一つの混合弁として働く。
【0046】
このような構成とされた本実施例の複連式混合弁装置1では、供給先毎に温水の温度を個別に調整することが要求される給湯システムに適用する場合は、水流入口21に水用配管を接続し、湯流入口22に湯用配管を接続し、各流出口41、42には、それぞれ従来と同様に温水供給配管を接続すればよい。したがって、従来は湯用配管及び水用配管がそれぞれ複数本必要であったが、本実施例の複連式混合弁装置が用いられた給湯システムでは、湯用配管及び水用配管がそれぞれ1本ずつで済む。このため、給湯システムにおける配管系の部品点数を削減できるとともに、コンパクトに纏めることができ、構成部材のレイアウト自由度が高められて、設備コストを低く抑えることができる。
【0047】
また、従来は通常単独で使用される混合弁をそのまま温水供給先(用途)の数に応じた個数分使用するようにされているが、本実施例の複連式混合弁装置1では、水と湯の混合比率を任意に独立して変えることのできるロータリー式の弁体及びそれを回転駆動するモータを複数個備えているものの、水流入口、管状水室、湯流入口、管状湯室、隔壁部、弁体嵌挿部、複数個の流出口等は弁本体として一体に成形されるので、水と湯の混合に供せられる混合弁として機能する部分の総部品点数も削減でき、この点からもコストを抑えることができる。
【0048】
さらに、本発明構成によれば、通常は弁本体10から突出した部分となる水流入口21及び湯流入口22、第1流出口41及び第2流出口42、第1弁体を回転駆動する第1モータ51及び第2弁体を回転駆動する第2モータ52等の配置自由度を高くすることができるので、上記実施例のように、弁本体10の上下方向一面側(上面側)に、水流入口21、第1流出口41、並びに、第2弁体を回転駆動する第2モータ52を垂設し、弁本体10の上下方向他面側(下面側)に、湯流入口22、第2流出口42、並びに、第1弁体31を回転駆動する第1モータ51を垂設することができ、その結果、複連式混合弁装置の小型化を一層図ることができるとともに、その占有スペースをさらに小さくすることができ、設置場所に応じて、その上下等に配管接続用スペース等を容易に確保し得、給湯システムへの組み込み等の便宜を図ることができる。
【0049】
なお、上記実施例では、ロータリー式の弁体を2個使用して従来型の2つの混合弁の機能を達成するもの、つまり温水供給先が2カ所ある場合の複連式混合弁装置を例示したが、温水供給先が3カ所以上必要とされる場合には、その温水供給先の数に応じて弁体、モータ、流出口の個数を増やせばよく、この場合も本発明を上記実施例と同様に適用できる。
【0050】
また、第1弁体31及び第2弁体32は、それぞれ逆向きに配置されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、第1弁体31及び第2弁体32を同じ向きに配置し、第1流出口41及び第2流出口42をそれぞれ同じ方向に開口させるようにしても良い。
【0051】
さらに、管状水室11と管状湯室12は、それらの中心線Q1、Q2が同一平面上に平行に配置されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、同一平面上に非平行に配置されても良く、さらに中心線Q1、Q2がねじれの位置となるように、管状水室11と管状湯室12とを配置しても良い。
【0052】
さらにまた、第1弁体31及び第2弁体32は、基本構成が同じであるものとして説明したが、それぞれ異なる大きさ、形状のものであっても良いことは当然である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・複連式混合弁装置
10・・・弁本体
11・・・管状水室
12・・・管状湯室
15・・・隔壁部
16・・・第1弁体嵌挿部
17・・・第2弁体嵌挿部
18・・・窓
21・・・水流入口
22・・・湯流入口
31・・・第1弁体
32・・・第2弁体
33・・・周壁部
34・・・調整用開口部
41・・・第1流出口
42・・・第2流出口
51・・・第1モータ
52・・・第2モータ
60・・・逆止弁