(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る汚泥処理システムについて、このシステムで実施される汚泥処理方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る汚泥処理システム10の全体構成図であり、一部を断面で示した側面図である。
図2は、
図1に示す汚泥処理システム10の平面図である。また、
図3は、
図1に示す汚泥処理システム10を反応槽12の内部に設置した処理施設14の構成図である。本実施形態に係る汚泥処理システム10は、下水や工場排水等の有機性排水を活性汚泥処理する反応槽12の内部や後段に設置され、活性汚泥を含む処理液を固液分離するシステムである。
【0019】
図1及び
図2に示すように、汚泥処理システム10は、活性汚泥を含む処理液(処理水)を貯留可能な水槽16と、水槽16内の処理液を掻き混ぜる掻き混ぜ装置(掻き混ぜ手段)18と、掻き混ぜ装置18で掻き混ぜられた直後の水槽16内の処理液を濃縮汚泥と分離液とに固液分離(濃縮、脱水)する固液分離装置(固液分離手段)20とを備える。
【0020】
先ず、水槽16は、
図1及び
図2に示すように、例えば直方体に形成されたプール状の容器であり、掻き混ぜ装置18及び固液分離装置20を水没可能な形状を有する。水槽16の一側壁の上部には、処理液を水槽16の内部へと投入するための投入口16aが設けられ、他側壁の上部には、固液分離装置20で分離された分離液を水槽16の外部へと排出するための排出口16bが設けられている。投入口16aからの処理液の投入及び排出口16bからの分離液の排出は、図示しないポンプ等の動力源を用いて行なってもよく、水面高さからの溢れ出しを利用したオーバーフロー方式を用いて行なってもよい。
【0021】
図1から明らかなように、水槽16内での液体の流通方向は、投入口16aから排出口16bに向かう方向(
図1で右から左に向かう方向)である。この際、
図2に示すように、投入口16aは、水槽16の一側壁において一側方に寄った位置に設けられ、排出口16bは、水槽16の他側壁において他側方に寄った位置に設けられている。従って、水槽16内を流れる液体は、
図2に示す平面視で、右側の投入口16aから左側の排出口16bに向かって流れつつ、上側から下側へと対角線上に流れるため、水槽16内の全域に略均等な流れを生じさせることができ、一部に滞留等が生じることを最小限に抑えることができる。
【0022】
水槽16底部の固液分離装置20の上流側(投入口16a側)近傍には、固液分離装置20によって分離され、付近に滞留し或いは沈降する濃縮汚泥を外部へと引き抜き、排出するための汚泥排出口16cが設けられている。汚泥排出口16cには、図示しないポンプ等が接続される。汚泥排出口16cは、水槽16の底部以外に設けてもよく、例えば、
図3に示す処理施設14では、汚泥排出口16cを底部に設けず、上部から固液分離装置20の上流側近傍へと水没させた返送汚泥ライン16dで濃縮汚泥を引き抜く構成を例示している。
【0023】
次に、掻き混ぜ装置18は、
図1及び
図2に示すように、図示しないブラケットや軸受け等によって水面の上方で回転可能に軸支された回転板22と、回転板22の上面中心に回転軸が嵌合されたモータ24と、回転板22の下面に下方に向けて突設された複数本(
図2では8本)の棒部材26とを備える。棒部材26は、その下端が、水槽16の底面より多少上方に配置される長さに規定されている。
【0024】
掻き混ぜ装置18は、モータ24を回転駆動して回転板22を回転させ、各棒部材26を水槽16内で旋回させることで、投入口16aから投入された水槽16内の処理液を掻き混ぜることができる攪拌装置(攪拌手段)である。掻き混ぜ装置18による処理液の掻き混ぜ速度(攪拌速度)は、一般的な攪拌装置のものより緩くゆっくりとしたものに制御され、例えば、0.5〜3m/min程度の回転速度に設定される。掻き混ぜ棒(攪拌棒)となる棒部材26の設置本数は適宜変更可能である。また、
図2では、棒部材26を回転板22の下面に1周設置した構成を例示しているが、例えば、同心円で2周以上設置してもよく、回転板22の下面にランダムに突設してもよい。棒部材26は、円柱状の棒以外にも角柱状の棒の他、狭幅な板状部材等で構成してもよい。
【0025】
次に、固液分離装置20は、
図1及び
図2に示すように、水槽16内を処理液の流通方向で上流側(投入口16a側)と下流側(排出口16b側)とに仕切るように水槽16の幅方向(処理液の流通方向に直交する方向)に渡って配設されており、金属スクリーンや膜等で構成された網体(メッシュやパンチングメタル)である。固液分離装置20は、掻き混ぜ装置18の直後の下流位置に配置されており、詳細は後述するが、掻き混ぜ装置18によってフロック化(凝集)した活性汚泥のフロック状態が崩れる前に当該固液分離装置20に到達可能な程度に掻き混ぜ装置18の近傍位置に配置される。この固液分離装置20の網目のピッチは、掻き混ぜ装置18によってフロック化された活性汚泥を通さず、液体分のみを通過させることができる程度、例えば、0.5mm〜5mm、に形成されるとよい。
【0026】
本実施形態では、投入口16aから水槽16内に処理液が投入され、排出口16bから分離液が水槽16外へと排出されるため、上流側(投入口16a側)から下流側(排出口16b側)に向かって処理液の押し出し流れが形成される。このため、固液分離装置20では、加圧装置や吸引装置を別途設置することなく、上記の押し出し流れによる水圧を利用して、処理液中でフロック化した活性汚泥をトラップし、固形分である濃縮汚泥を分離し、液体分である分離液のみを通過させて固液分離処理を行なうことができる。なお、固液分離装置20は、その左右端面及び下端面が、水槽16の左右内面と底面とに完全に固着されていなくてもよく、多少の隙間はあってもよい。
【0027】
本実施形態の場合、以上のように構成される汚泥処理システム10は、
図3に示すように、反応槽12の内部に一部が水没した状態で設置されて処理施設14を構成する。
【0028】
そこで、次に、処理施設14について説明する。
【0029】
処理施設14は、
図3に示すように、有機性排水を活性汚泥処理するための生物反応槽である反応槽(曝気槽)12を備え、反応槽12の水面付近に半没させた状態で汚泥処理システム10が設置されている。反応槽12は、例えば、前段の最初沈殿池28と後段の最終沈殿池30との間に設置され、汚泥処理システム10は、反応槽12内の流出側(最終沈殿池30側)に寄って設置される。
【0030】
反応槽12内の活性汚泥を含む処理液は、処理液流入口32からオーバーフローによって汚泥処理システム10に並設された一次貯留槽34に流入する。一次貯留槽34は、その側壁に形成された投入口16aにより水槽16と連通しており、処理液は該投入口16aから水槽16内に流入する。一次貯留槽34を設けたことにより、水槽16内で掻き混ぜ装置18によって掻き混ぜられている処理液や固液分離装置20で分離された濃縮汚泥と、反応槽12内の処理液とが容易に混ざることを防止できる。なお、
図3では、一次貯留槽34を汚泥処理システム10の水槽16外に設けた構成を例示しているが、例えば、水槽16内に図示しない仕切り壁を立設することで水槽16内に一次貯留槽を形成した構成としてもよい。
【0031】
掻き混ぜ装置18によって掻き混ぜられた直後に固液分離装置20で固液分離された分離液は、水槽16の側壁に形成された排出口16bから反応槽12の外部に排水される。一方、固液分離装置20で固液分離された濃縮汚泥は、固液分離装置20の上流側近傍に水没設置された返送汚泥ライン16dによって水槽16外へと引き抜かれる。返送汚泥ライン16dは、途中の三方弁36で2方に分岐しており、一方のライン38aは反応槽12内の流入側への戻りラインであり、他方のライン38bは反応槽12外、若しくは最初沈殿池28側への排出ラインとなっている。
【0032】
返送汚泥ライン16dの使用方法としては、上記のように、反応槽12の後段に最終沈殿池30が設置されている施設の場合には、反応槽12内での菌の濃度を維持するために、ライン38aのみを用いて濃縮汚泥を反応槽12内に全て返送するとよい。一方、反応槽12の後段に最終沈殿池30が設置されていない設備の場合には、ライン38aによって反応槽12内に濃縮汚泥を返送しつつ、反応槽12内のSS濃度が所定値(例えば、5000ppm)となった場合に、ライン38bを開放し、濃縮汚泥の一部を外部に排出するとよい。
【0033】
図3では、汚泥処理システム10を反応槽12の内部に設置し、この反応槽12内の活性汚泥を汚泥処理システム10によって固液分離する構成を例示しているが、汚泥処理システム10は単体のユニットとして反応槽12の外部に該反応槽12とは別体で設置しても勿論よい。例えば、図示しない配管で反応槽12内から活性汚泥を含む処理液を引き抜き、これを反応槽12の外部に設置した汚泥処理システム10で固液分離する構成としてもよい。又は、
図3に示すように、最終沈殿池30から反応槽12の流入側への返送ライン40に汚泥処理システム10を接続し、この返送ライン40を流通する活性汚泥を含む処理液の一部を汚泥処理システム10で固液分離する構成としてもよい(
図3中の(A)参照)。さらには、最初沈殿池28からの引抜ライン42を流通する活性汚泥を含む処理液と、返送ライン40を流通する処理液とを混合した混合汚泥を含む処理液が流れる混合ライン43に汚泥処理システム10を接続し、これを流れる混合汚泥を固液分離する構成としてもよい(
図3中の(B)参照)。
【0034】
次に、以上のように構成される汚泥処理システム10による汚泥処理方法及びその作用効果について説明する。
【0035】
図3に示すように、処理施設14の反応槽12内では、図示しない曝気装置によって活性汚泥処理がなされており、この上澄み部分が処理液流入口32を介して一次貯留槽34へと流入することで、活性汚泥を含む処理液が投入口16aから水槽16内へと投入される。なお、汚泥処理システム10を返送ライン40に接続し(
図3中の(A)参照)、或いは返送ライン40と引抜ライン42との混合ライン43に接続している場合には(
図3中の(B)参照)、活性汚泥を含む処理液は、これら各ライン40,43から投入口16aを介して水槽16内に投入される。
【0036】
汚泥処理システム10では、このような活性汚泥を含む処理液が投入口16aから水槽16内に投入され、排出口16bから排出される流通過程において、先ず、投入口16aから投入された処理液を掻き混ぜ装置18で上記したようにゆっくりとした速度で掻き混ぜる緩速攪拌を行う。そうすると、処理液中に含まれる活性汚泥は、掻き混ぜ装置18で掻き混ぜられることにより、ある程度の滞留時間(例えば、処理液の流通速度が20m
3/hの場合に5分程度)を受けながらフロック化(凝集)しつつ、固液分離装置20に到達する。
【0037】
ここで、掻き混ぜ装置18による活性汚泥のフロック化(フロッキュレーション)について説明すると、回転板22によって水槽16内を旋回する棒部材26の周辺部では、汚泥が棒部材26の脇を通り抜ける際に、この脇を通るように素早く移動する汚泥と、その周囲でゆったりと滞留しながら流通する汚泥との間に速度差ができて両者が接触する。そして、この接触による衝撃と生じる力とにより、活性汚泥がフロック化するものと考えられ、この現象は、経験上も実験上も確認されている。なお、処理液を掻き混ぜて活性汚泥のフロックを生成する掻き混ぜ手段としては、棒部材26を液中で旋回させる構成以外であっても勿論よく、要は処理液を適切に掻き混ぜて活性汚泥のフロックを生成することができるものであればよい。
【0038】
固液分離装置20に到達した処理液中では、掻き混ぜ装置18での掻き混ぜ作用によって活性汚泥がフロック化しているので、上記のように網体で構成された固液分離装置20によって固液分離される。この際、固液分離装置20は、掻き混ぜ装置18によって生成された活性汚泥のフロックが崩れる前、例えば凝集後所定時間(2分間程度)内に固液分離処理をできるように、掻き混ぜ装置18の下流側近傍に配置されている。これにより、フロック化した活性汚泥は固液分離装置20によって円滑に固液分離される。
【0039】
そして、固液分離された分離液が固液分離装置20を通過して水槽16内の下流側へと流通して排出口16bから水槽16外へと排出され、濃縮汚泥が返送汚泥ライン16dによって水槽16外へと引き抜かれることで、活性汚泥の固液分離処理が完了する。なお、上記のように、汚泥処理システム10を返送ライン40等に接続した構成の場合には、分離された濃縮汚泥は、例えば水槽16の底部に設けた汚泥排出口16cから水槽16外へと引き抜かれる(
図1参照)。
【0040】
上記では、掻き混ぜ装置18を1台設置した構成を例示したが、水槽16内に掻き混ぜ装置18を複数台設置しても勿論よい。例えば、
図4に示す汚泥処理システム10aでは、投入口16aから排出口16bへと向かう処理液の流通方向に沿って長さ寸法を拡大した水槽16を用い、この水槽16内の固液分離装置20より上流側に、処理液の流通方向に沿って3台の掻き混ぜ装置18を並設している。従って、汚泥処理システム10aでは、水槽16内での活性汚泥の滞留時間を増加させつつ、固液分離装置20に到達するまでに多段の掻き混ぜ装置18によって確実にフロック化させることができると共に、そのフロックを維持することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る汚泥処理システム10(10a)によれば、活性汚泥を含む処理液を貯留可能な水槽16と、水槽16内に設置され、処理液を掻き混ぜる掻き混ぜ装置18と、水槽16内に設置され、掻き混ぜ装置18で掻き混ぜられた処理液を濃縮汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置20とを備える。
【0042】
このように汚泥処理システム10(10a)では、活性汚泥を含む処理液を貯留する1つの水槽16内に、掻き混ぜ装置18と固液分離装置20とを設置している。このため、掻き混ぜ装置18により水槽16内で凝集剤等の薬剤を用いることなく無薬注で又は薬剤使用量を大幅に低減した状態で活性汚泥をフロック化させ、同時に、このフロック化した状態を維持したままの活性汚泥を水槽16内でそのまま固液分離装置20により固液分離することができる。従って、薬剤の使用コストや薬剤注入用の設備等を設けることなく低コストで汚泥の濃縮濃度を十分に高めることができる。また、反応槽12の後段に、機械濃縮機や重力濃縮機を設置する必要がなくなるため、設備の設置スペースを小さくすることができ、さらに設備コストや維持コストも低減できる。
【0043】
汚泥処理システム10(10a)では、水槽16内での処理液の流通方向で、掻き混ぜ装置18の下流側に固液分離装置20を設置している。このため、水槽16内を処理液が流通する間に、掻き混ぜ装置18による活性汚泥のフロック化と、固液分離装置20によるフロック化した活性汚泥の固液分離とを連続的に行なうことができて効率がよい。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態に係る汚泥処理システム50について説明する。
【0045】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る汚泥処理システム50の全体構成図であり、一部を断面で示した側面図である。
図6は、
図5に示す汚泥処理システム50の平面図である。本実施形態に係る汚泥処理システム50は、上記第1の実施形態に係る汚泥処理システム10(10a)と同様、下水や工場排水等の有機性排水を活性汚泥処理する反応槽12(
図9参照)の内部や後段に設置され、活性汚泥を含む処理液を固液分離するシステムである。なお、
図5及び
図6において、
図1〜
図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、以下の各図についても同様とする。
【0046】
図5及び
図6に示すように、汚泥処理システム50は、活性汚泥を含む処理液を貯留可能な水槽52と、水槽52内の処理液を掻き混ぜる一対の掻き混ぜ装置54,54と、掻き混ぜ装置54で掻き混ぜられた直後の水槽52内の処理液を濃縮汚泥と分離液とに固液分離(濃縮、脱水)する固液分離装置(固液分離手段)56とを備える。
【0047】
本実施形態に係る汚泥処理システム50は、上記第1の実施形態に係る汚泥処理システム10と比べて、特に固液分離装置56の構成が大きく異なる以外は、略同様な構成となっている。
【0048】
すなわち、水槽52は、処理液の流通方向で上流側となる底部の一部に段差が設けられている以外は、
図1に示す水槽16と同様であり、水槽52に代えて、底部の段差のない水槽16を用いても勿論よい。また、掻き混ぜ装置54は、回転板22の下面に突設される棒部材26の本数が4本に設定されている以外は、
図1に示す掻き混ぜ装置18と同様である。なお、本実施形態の場合には、掻き混ぜ装置54を水槽52内の両側部にそれぞれ寄った位置に一対設けているが、掻き混ぜ装置54は1台のみでもよく、また、棒部材26の本数も適宜変更可能である。
【0049】
次に、固液分離装置56の構成について説明する。
【0050】
固液分離装置56は、
図5及び
図6に示すように、円筒形状のろ過体58と、ろ過体58の内部に回転可能に設けられたスクリュー60とを備え、ろ過体58の一端側の流入口(投入口)58aから当該ろ過体58の内部へと流入した活性汚泥を含む処理液を、スクリュー60の回転力によって他端側へと搬送しつつ濃縮汚泥と分離液とに固液分離(濃縮、脱水)するスクリュープレス型分離機である。固液分離装置56で分離された濃縮汚泥は排出口58bから外部へと排出され、分離液は水槽52内に流出される。
【0051】
スクリュー60は、ろ過体58の軸心と同軸上に延在し、一端側(流入口58a側)から他端側(排出口58b側)に向かって漸次拡径するスクリュー軸62と、スクリュー軸62の外周面にらせん状に設けられたスクリュー羽根64とを有する。
【0052】
スクリュー軸62は、例えば、軸受66a,66bによってその両端部が軸支され、一端側に連結されたモータ68からの回転駆動力によって回転可能である。
図5及び
図6では、スクリュー軸62の一端部及びこれを軸支する一方の軸受66bを水槽52内で水没させた構成を例示しているが、スクリュー軸62の両端部を水槽52の外部に突出させ、この突出部分を軸受66b等で軸支する構成等としてもよい。
【0053】
スクリュー軸62は、上記のように、一端側から他端側に向かって漸次拡径するテーパ形状を有するため、該スクリュー軸62の外周面とろ過体58の内周面との間に形成される空間は、一端側(上流側)から他端側(下流側)に向かって次第に狭くなり、これにより処理液中の活性汚泥を圧搾し、固液分離する。
【0054】
スクリュー軸62の他端側には、ろ過体58の内部で固液分離された濃縮汚泥を圧密するテーパコーン70が設けられている。テーパコーン70は、スクリュー軸62の外周面に該スクリュー軸62と同軸に設けられ、スクリュー軸62よりも大きな傾斜角度で拡径する傾斜面70aを有する。テーパコーン70は、例えば、スクリュー軸62の外周面に軸方向に移動可能に外挿され、図示しない油圧シリンダやエアシリンダ等の加圧装置によってろ過体58側に向かって付勢されている。
【0055】
図7は、ろ過体58の一部省略斜視図であり、図面の見易さを確保するため、周方向に複数配列されて当該ろ過体58の外周面を形成するプレート72のうちの一部のみを図示したものである。
図8は、ろ過体58を正面側から見た構成図である。
【0056】
図5〜
図8に示すように、ろ過体58は、スクリュー60の一端側(小径側)が挿通される円形の流入口58aが開口形成された薄板矩形状の支持板74と、スクリュー60の他端側(大径側)が挿通される円形の開口部76aが開口形成された薄板円環状の支持板76とを備える。これら支持板74,76間に、それぞれの流入口58a及び開口部76aの周縁部の周方向に沿って複数(
図8では14枚の構成を例示)のプレート72が配列され、各プレート72によって当該ろ過体58の外周面が形成されている。ろ過体58は、例えば水槽52の底面や側面に固着された図示しない基台やブラケット等によって支持板74,76が支持されることで、水槽52内の所定位置に固定・設置される。
【0057】
排出口58bは、スクリュー軸62の下流側の拡径した外周面から連続するテーパコーン70の傾斜面70aと、支持板76の開口部76aとの間に形成された環状の隙間を管状のカバー部材77で塞ぐことで形成されており、カバー部材77の下部に、水槽52の側壁を貫通する配管が連結されることで水槽52の外部へと連通している。排出口58bは、ろ過体58内の下流側から濃縮汚泥を排出可能なものであれば、その設置位置や構造は特に限定されない。
【0058】
図5〜
図7に示すように、スクリュー60の投入側に設けられ、流入口58aが形成された支持板74は、その左右端面及び下端面が水槽52の底面及び左右側面に当接固定され、その上端面が水槽52内に貯留される処理液の水面よりも上方に突出するように設置されている。これにより、支持板74は、水槽52内を、投入口16aから処理液が投入される上流側部分と、固液分離装置56で分離された分離液が貯留される下流側部分とに仕切り、投入口16aからの処理液を固液分離装置56の流入口58aからろ過体58内へと確実に流通させる機能も有する。そこで、本実施形態では、
図6に示すように、水槽52内に投入された処理液を掻き混ぜる掻き混ぜ装置54を、支持板74で仕切られた水槽52内の上流側部分を通過するスクリュー軸62の左右側部にそれぞれ配置している。
【0059】
プレート72は、その長手方向がスクリュー軸62の軸方向と平行して配置されると共に、支持板74,76の両内面にそれぞれ突設された回転軸78,79により、長手方向両端面が軸支されている。すなわち、各プレート72は、回転軸78,79を軸中心として回転自由な状態で支持板74,76間に設置されている。一対の回転軸78,79は、互いの軸方向が同軸上となる位置に設けられ、その軸方向はスクリュー軸62の軸方向と平行している。
【0060】
このような各プレート72は、
図7及び
図8に示すように、隣接するプレート72の一部同士、つまり短辺方向で一端側となる側方部位同士が、周方向に順に積層するように配置される。この積層により、各プレート72の回転軸78,79を中心とする回転範囲が規制されると共に、隣接するプレート72間に形成される隙間(クリアランス)80が、当該ろ過体58の内外面間を連通し、処理液からの分離液(ろ液)を外部(水槽52内)に排出するろ過孔(孔部)80として機能する。つまり、ろ過体58は、その外周面がルーバー構造とされたルーバー型ろ過体となっている。各プレート72が回転可能であるため、ろ過孔80の開度は可変に構成されており、その開度(プレート72の積層方向での隙間80の高さ)は、例えば、0.5mm〜5mm程度の範囲に設定される。
【0061】
プレート72は、例えば、ステンレス鋼等からなる金属製で長方形の薄板(例えば、板厚2mm程度)で形成され、
図8に示すように、各プレート72は、運転時のスクリュー60の回転方向A1で前方方向に向かって順に積層されつつ、支持板74,76の内面で流入口58a及び開口部76aの周縁部の周方向に沿って1周するように配置されている。このように、十分な強度を持つプレート72を用いると、一般的な金属スクリーンのろ過体に比べて、ろ過体58の磨耗を低減し、ろ過体58の寿命を延ばすことができ、その交換サイクルを長期化することができるという利点がある。
【0062】
図7及び
図8に示すように、各プレート72の一端側の略中央には、ろ過体58の周方向を向いて開口するリング部材82が設置されている。各プレート72の各リング部材82に対し、ろ過体58の周方向に沿ってワイヤ83が順に挿通されており、ワイヤ83の両端部はまとめられて巻上ロール84に巻き掛けられている。巻上ロール84の回転方向を制御することにより、ワイヤ83を巻き上げ及び送り出しすることができる。ワイヤ83によって形成される円の直径を変化させることにより、各プレート72を回転軸78,79を中心として回転させ、その回転位相、つまりろ過孔80の開度を制御することができる。
図7では、ワイヤ83を1本のみ用いた構成を例示しているが、リング部材82をプレート72の長手方向に複数設置し、ワイヤ83を複数本用いた構成としてもよい。また、ワイヤ83は、チェーン等によって代替してもよい。
【0063】
各プレート72間の互いに重なり合う部位の端部には、コの字形のスペーサ86が着脱可能に取り付けられている。スペーサ86は、隣接するプレート72の表面に当接することで隙間80(ろ過孔80)の高さを規定するものである。つまり、スペーサ86は、固液分離装置56の運転時における活性汚泥からの押圧力やワイヤ83の巻き上げにより、積層された各プレート72の対抗面(表面)同士が当接・密着し、ろ過孔80が閉塞されることを防止するものである。
【0064】
スペーサ86は、プレート72に対して着脱可能に構成されているため、該スペーサ86を所望の高さを持つものに交換するだけで、ろ過孔80の開度を容易に規定・制御することができ、処理液の性状や処理量等に応じた最適な開度のろ過孔80を容易に形成することができる。なお、スペーサ86は、コの字形のもの以外であってもよく、例えばプレート72の内面又は外面に着脱可能なボルト等によって突起等を設けてもよく、さらには、プレート72の表面自体に凹凸を設けてもよい。また、スペーサ86の表面のプレート接触部分に弾性材質を使用してもよい。
【0065】
各プレート72は回転軸78,79によって回転自由に軸支されており、処理液からの押圧力によって揺動動作し、さらにワイヤ83によって互いに連係されている。このため、スペーサ86を設置しなくてもろ過孔80は十分に確保可能であるが、スペーサ86を設けることにより、ろ過孔80をより確実に確保することができ、しかも所望の開度(開口寸法、最小開度)に容易に規制することが可能となる。
【0066】
回転軸78は、支持板74内面の外縁近傍に突設され、複数(プレート72の設置枚数と同数)が周方向に沿って配列されたピン形状の固定軸である。同様に、回転軸79は、支持板76内面の外縁近傍に突設され、複数(プレート72の枚数と同数)が周方向に沿って配列されたピン形状の固定軸である。
【0067】
回転軸78の先端が、プレート72の長手方向の一端面に形成された軸穴87に回転可能な状態で挿入され、回転軸79の先端が、プレート72の長手方向の他端面に形成された軸穴88に回転可能な状態で挿入されることで、プレート72は、各回転軸78,79によって支持板74,76の対向面間で回転自由に軸支されている。本実施形態では、回転軸78,79が挿入される軸穴87,88をプレート72の端面の中心に形成した構成を例示したが(
図8等参照)、回転軸78,79は、プレート72の端面において、該端面の長手方向で中心よりも両端側に寄った位置に設けられてもよい。
【0068】
回転軸78,79は、プレート72の各端面にそれぞれ固定された状態で、各支持板74,76に形成された図示しない軸穴に回転可能な状態で挿入される構成であってもよく、また、プレート72の各端面及び各支持板74,76の内面にそれぞれ図示しない軸穴を設け、回転軸78,79の両端がそれぞれの軸穴に回転可能な状態で挿入される構成等であってもよい。
【0069】
以上のように構成される汚泥処理システム50は、上記の汚泥処理システム10(10a)の場合と同様、
図9に示すように、反応槽12の内部に一部が水没した状態で設置されて処理施設90を構成する。
【0070】
そこで、次に、処理施設90について説明する。
【0071】
処理施設90は、
図9に示すように、有機性排水を活性汚泥処理するための生物反応槽である反応槽(曝気槽)12を備え、反応槽12の水面付近に半没させた状態で汚泥処理システム50が設置されている。この処理施設90は、上記した処理施設14(
図3参照)と比べて、汚泥処理システム10に代えて汚泥処理システム50を設置した以外は、略同様な構成となっている。
【0072】
すなわち、反応槽12内の活性汚泥を含む処理液は、処理液流入口32からオーバーフローによって汚泥処理システム50に並設された一次貯留槽34に流入し、投入口16aを介して水槽52内に流入する。掻き混ぜ装置54によって掻き混ぜられた直後に流入口58aからろ過体58内に流入した処理液は、固液分離装置56で固液分離された後、分離液は、水槽52の側壁に形成された排出口16bから反応槽12の外部に排水される。
【0073】
一方、固液分離装置20で固液分離された濃縮汚泥は、排出口58bから水槽52に並設された濃縮液タンク(バッファタンク)92内へと排出される。濃縮液タンク92内に貯留された濃縮汚泥は、濃縮液タンク92内に水没設置された返送汚泥ライン16dによって水槽16外へと引き抜かれ、途中の三方弁36を介してライン38a,38bに適宜送られる。
【0074】
図3に示す処理施設14と同様、
図9に示す処理施設90についても、汚泥処理システム50を反応槽12の内部に設置し、この反応槽12内の活性汚泥を汚泥処理システム50によって固液分離する構成を例示しているが、汚泥処理システム50は単体のユニットとして反応槽12の外部に該反応槽12とは別体で設置しても勿論よい。例えば、図示しない配管で反応槽12内から活性汚泥を含む処理液を引き抜き、これを反応槽12の外部に設置した汚泥処理システム50で固液分離する構成としてもよい。又は、
図9に示すように、返送ライン40に汚泥処理システム50を接続し、この返送ライン40を流通する活性汚泥を含む処理液の一部を汚泥処理システム50で固液分離する構成としてもよい(
図9中の(A)参照)。さらには、返送ライン40と引抜ライン42との混合ライン43に汚泥処理システム50を接続し、これを流れる混合汚泥を含む処理液を固液分離する構成としてもよい(
図9中の(B)参照)。
【0075】
次に、以上のように構成される汚泥処理システム50による汚泥処理方法及びその作用効果について説明する。
【0076】
図9に示すように、処理施設14の反応槽12内では、図示しない曝気装置によって活性汚泥処理がなされており、この上澄み部分が処理液流入口32を介して一次貯留槽34へと流入することで、活性汚泥を含む処理液が投入口16aから水槽52内へと投入される。なお、汚泥処理システム50を返送ライン40に接続し(
図9中の(A)参照)、或いは返送ライン40と引抜ライン42との混合ライン43に接続している場合には(
図9中の(B)参照)、活性汚泥を含む処理液は、これら各ライン40,43から投入口16aを介して水槽52内に投入される。
【0077】
汚泥処理システム50では、このような活性汚泥を含む処理液が投入口16aから水槽52内に投入され、排出口16bから排出される流通過程において、先ず、上記した汚泥処理システム10の場合と同様、投入口16aから水槽52に投入された処理液を一対の掻き混ぜ装置54,54でゆっくりとした速度で掻き混ぜる緩速攪拌を行う。そうすると、処理液中に含まれる活性汚泥は、掻き混ぜ装置54で掻き混ぜられることにより、フロック化(凝集)しつつ、固液分離装置56の流入口58aに到達する。そして、流入口58aに到達した処理液中では、掻き混ぜ装置54での掻き混ぜ作用によって活性汚泥がフロック化しているので、固液分離装置56によって高い分離効率で円滑に固液分離される。
【0078】
ここで、固液分離装置56による処理液の固液分離動作について具体的に説明する。
【0079】
図10は、ろ過体58を構成する各プレート72の動作説明図であり、
図10(A)は、固液分離装置56が停止状態にある場合の各プレート72の状態の一例を示す説明図であり、
図10(B)は、固液分離装置56が運転状態にある場合の各プレート72の状態の一例を示す説明図である。
【0080】
先ず、水槽52内に活性汚泥を含む処理液又は水を注入し、予め固液分離装置56の全体が水没する程度まで水槽52内に処理液等を貯留させた状態としておき、その状態で投入口16aから処理液を水槽52内へと投入開始すると共に、固液分離装置56の運転を開始する。固液分離装置56の運転が開始されると、モータ68によってスクリュー60が回転駆動され、流入口58aを介して掻き混ぜ装置54によってフロック化された活性汚泥を含む処理液がろ過体58の内部に流入し始める。
【0081】
ろ過体58内に流入した処理液は、回転するスクリュー60のスクリュー羽根64によって回転力を受けつつ、ろ過体58の内周面、つまり周方向に並んだ各プレート72の内面に押圧されることで、排出口58bに向かって搬送され、同時にろ過体58によってろ過されて固液分離される。
【0082】
ここで、固液分離装置56では、固液分離装置56(ろ過体58)を水槽52内で水没させているため、ろ過体58の内外が処理液や水で満たされている。従って、
図8に示すように、ろ過体58内に投入されたフロック化した活性汚泥(処理液)W1は、ろ過体58の内外を満たすように予め貯留された処理液(水)W2中で浮遊するようにろ過体58内に滞留することになり、この状態でスクリュー60が駆動されるため、ろ過体58内の処理液を円滑に搬送しながら固液分離することができる。一般的な活性汚泥(を含む処理液)の比重は、1.05程度であることから、上記のように水槽52内に最初に処理液ではなく水を貯留させておいたとしても、ろ過体58内に活性汚泥を滞留させておくことは十分可能である。つまり、ろ過体58内に流入した活性汚泥は、フロック化しており、しかもろ過体58自体が水槽52内に浸漬されているため、ろ過体58内に処理液を流入させるそばからろ過孔80を通して該処理液が外部に漏れ出すことを防止でき、スクリュー60によって円滑に搬送し固液分離することが可能となっている。
【0083】
このような固液分離運転の運転開始前、固液分離装置56では、巻上ロール84を駆動してワイヤ83を送り出しておくことにより、各プレート72間の隙間80(ろ過孔80)は、例えば、
図10(A)に示すように、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。
【0084】
一方、運転時には、巻上ロール84を逆方向に駆動してワイヤ83を巻き上げておくことにより、各プレート72間の隙間80(ろ過孔80)を、例えば、
図10(B)に示すように、回転軸78,79よりも処理液の移動方向A2で上流側の上流側部位72bに設けられたスペーサ86が、重なり合って隣接するプレート72の下流側部位72aの外面と当接する開度となるように規制する。
【0085】
このように開度が規制されたろ過孔80は、
図10(B)に示すように、ろ過体58の内側から外側に向かう方向で、スクリュー60の回転方向A1(処理液の移動方向A2)と反対方向を向いて開口している。このため、ろ過孔80に処理液に含まれる固形分が詰まることや、該ろ過孔80から前記固形分が外部に排出されることを抑制しつつ、処理液がプレート72の内面に押圧力Pで押し付けられる。
【0086】
従って、ろ過体58の内容積の減少によって圧搾された処理液中の液体分である分離液は、ろ過孔80から水槽52内における支持板74より下流側部分へと円滑に流出されて貯留され(
図10(B)中の矢印L参照)、排出口16bから水槽52外へと排出される。一方、分離された固形分である濃縮汚泥は、排出口58bから濃縮液タンク92へと導入された後、返送汚泥ライン16dによって水槽16外へと引き抜かれることで、活性汚泥の固液分離処理が完了する。なお、上記のように、汚泥処理システム50を返送ライン40等に接続した構成の場合には、分離された濃縮汚泥は、例えば水槽52の底部に設けた排出口58bから水槽16外へと引き抜かれる(
図5参照)。
【0087】
この際、ろ過体58のろ過孔80から該ろ過体58外へと流出され、水槽52内の支持板74より下流側部分に貯留された分離液は、排出口16bからオーバーフローや図示しないポンプ動作等によって連続的に外部へと排水されるため、水槽52内で支持板74より下流側部分での液体は次第に清浄化される。また、この分離液中に含まれる固形分や予め水槽52内に投入された処理液中の固形分は、水槽52の底部に沈殿し、沈殿汚泥として図示しない汚泥排出手段等によって引き抜き処理される。
【0088】
所定量の処理液の固液分離運転が完了し、スクリュー60の回転を停止すると、再び巻上ロール84を駆動してワイヤ83を送り出し、ろ過孔80の開度を拡大させる(
図10(A)参照)。これにより、運転時に、仮にろ過孔80に固形物等が詰まった場合であっても、ろ過孔80の開度の拡大によって該固形物は容易に該ろ過孔80から脱落するため、従来のスクリーンのような目詰まりを除去するメンテナンス作業をなくすことができ、又は大幅に軽減することができる。このメンテナンス時、スクリュー60を逆回転させると、各プレート72が逆方向に回転され、ろ過孔80の開度が変動するため、詰まった固形物を一層確実に落とすことができる。
【0089】
固液分離装置56では、運転時に、ろ過孔80への固形分等の目詰まりが生じた場合には、該運転を一時停止し、内部に処理液が滞留している状態のままで、スクリュー60の回転停止又は逆回転を行うことで、詰まった固形分を容易に除去し、すぐに脱水運転を再開することも可能である。換言すれば、例えば1日に1回等、所定のタイミングでスクリュー60を回転停止又は逆回転させると、ろ過孔80での目詰まりを定期的に除去することができるため、実質的にメンテナンスフリーな状態で当該固液分離装置56を稼動させることができる。
【0090】
固液分離装置56では、ワイヤ83やこれを挿通させるリング部材82等を省略することも可能である。この場合、運転開始前では、各プレート72に外力が作用していないことから、各プレート72の回転軸78,79を中心とする回転位相は自由位置にある。このため、各プレート72間の隙間80(ろ過孔80)は、例えば、
図10(A)に示すように、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。一方、運転が開始されると、
図10(B)に示すように、スクリュー羽根64が回転方向A1に回転されるのに伴い、らせん状のスクリュー羽根64からの回転力を受けて、処理液も回転方向A1と同一の移動方向A2に向かってスクリュー60の回転速度よりも多少遅い速度で移動しつつ、ろ過体58の直径方向外方へと向かう方向の押圧力Pでプレート72内面に押し付けられる。この際、処理液は、移動方向A2の移動力と押圧力Pとを受けて、プレート72の内面のうち、回転軸78,79よりも移動方向A2で下流側に位置した下流側部位72aの内面を強く加圧し、該プレート72を
図10(B)で反時計方向に回転させる。
【0091】
つまり、運転中には、全てのプレート72が処理液によって同一方向の回転力を受けるため、各プレート72は、回転軸78,79よりも処理液の移動方向A2で上流側の上流側部位72bに設けられたスペーサ86が、重なり合って隣接するプレート72の下流側部位72aの外面と当接し、該スペーサ86の高さ分の開度に一律に規定されたろ過孔80(隙間80)が複数形成されることになる。
【0092】
上記では、掻き混ぜ装置54を2台設置した構成を例示したが、水槽52内に設置する掻き混ぜ装置54を1台としても勿論よい。この場合には、例えば、スクリュー軸62の上方となる位置に、
図6に示す掻き混ぜ装置54よりも回転板22の直径の大きなものを設置し、棒部材26がスクリュー軸62に接触しないように、
図6に示すものよりも短いものを用いればよい。また、
図4に示す汚泥処理システム10aの場合と略同様に、掻き混ぜ装置54を水槽52内での処理液の流通方向に沿って複数台並設した構成としても勿論よい。
【0093】
本実施形態に係る汚泥処理システム50は、
図11に示すように、掻き混ぜ装置54をスクリュー軸62に一体化させた掻き混ぜ装置54aとして構成した固液分離装置56aを備えた汚泥処理システム50aとして構成してもよい。
【0094】
掻き混ぜ装置54aは、水槽52内で支持板74より上流側部分を延在するスクリュー軸62の外周面に、その軸方向に沿って複数本の棒部材94を外径方向に突出させた構成からなる。上記した棒部材26の場合と同様、棒部材94は、円柱状の棒以外にも角柱状の棒の他、狭幅な板状部材等で構成してもよい。
【0095】
従って、汚泥処理システム50aでは、固液分離装置56aを運転開始し、モータ68によってスクリュー軸62が回転駆動されると、その外周面から放射方向に突出した各棒部材94が水槽52内で旋回するため、投入口16aから投入された処理液を掻き混ぜて、そこに含まれる活性汚泥をフロック化することができる。この際、汚泥処理システム50aを構成する掻き混ぜ装置54aでは、当該掻き混ぜ装置54aの駆動用のモータ等が不要となり、スクリュー60のモータ68を利用することができるため、システムが簡素化され、コストも低減することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る汚泥処理システム50は、
図12に示すように、掻き混ぜ装置54をスクリュー軸62に一体化させた掻き混ぜ装置54bとして構成した固液分離装置56bを備えた汚泥処理システム50bとして構成してもよい。
【0097】
掻き混ぜ装置54bは、スクリュー羽根64が設けられたスクリュー軸62の外周面に、その軸方向に沿って複数本の棒部材96を各スクリュー羽根64の間で外径方向に突出させた構成からなる。上記した棒部材26の場合と同様、棒部材96は、円柱状の棒以外にも角柱状の棒の他、狭幅な板状部材等で構成してもよい。
【0098】
従って、汚泥処理システム50bでは、固液分離装置56bを運転開始し、モータ68によってスクリュー軸62が回転駆動されると、その外周面で各スクリュー羽根64の間から放射方向に突出した各棒部材96がスクリュー羽根64と共にろ過体58内で旋回するため、流入口58aからろ過体58内に流入した処理液を掻き混ぜて、そこに含まれる活性汚泥をフロック化させつつ、固液分離することができる。この際、汚泥処理システム50bを構成する掻き混ぜ装置54bにおいても、
図11に示す掻き混ぜ装置54aと同様、当該掻き混ぜ装置54bの駆動用のモータ等が不要となり、スクリュー60のモータ68を利用することができるため、システムが簡素化され、コストも低減することができる。しかも、スクリュー60とろ過体58による処理液の固液分離動作を行いながら、常にろ過体58内で掻き混ぜ装置54bによって活性汚泥をフロック化させることができるため、一旦フロック化した活性汚泥が一定時間後に崩れて元のフロック前の状態に戻る前に迅速に固液分離することができ、固液分離効率を一層向上させることができる。
【0099】
勿論、上記した固液分離装置56,56a,56bを構成するろ過体は、プレート72を用いたろ過体58以外の構成のものであってもよく、例えば、従来公知の構成のように、メッシュやパンチングプレート等を用いた円筒形状のスクリーンを用いたものであってもよい。
【0100】
以上のように、本実施形態に係る汚泥処理システム50(50a,50b)によれば、上記した汚泥処理システム10(10a)と同様、活性汚泥を含む処理液を貯留可能な水槽52と、水槽52内に設置され、処理液を掻き混ぜる掻き混ぜ装置54(54a,54b)と、水槽52内に設置され、掻き混ぜ装置54(54a,54b)で掻き混ぜられた処理液を濃縮汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置56(56a,56b)を備える。このため、掻き混ぜ装置54(54a,54b)により水槽52内で凝集剤等の薬剤を用いることなく無薬注で又は薬剤使用量を大幅に低減した状態で活性汚泥をフロック化させ、同時に、このフロック化した状態を維持したままの活性汚泥を水槽52内でそのまま固液分離装置56(56a,56b)によって固液分離することができる。従って、薬剤の使用コストや薬剤注入用の設備等を設けることなく低コストで汚泥の濃縮濃度を十分に高めることができる。また、反応槽12の後段に、機械濃縮機や重力濃縮機を設置する必要がなくなるため、設備の設置スペースを小さくすることができ、さらに設備コストや維持コストも低減できる。
【0101】
汚泥処理システム50(50a)においても、水槽52内での処理液の流通方向で、掻き混ぜ装置54(54a)の下流側に固液分離装置56(56a)を設置している。このため、水槽52内で処理液が流通する間に、掻き混ぜ装置54(54a)による活性汚泥のフロック化と、固液分離装置56(56a)によるフロック化した活性汚泥の固液分離とを連続的に行なうことができて効率がよい。
【0102】
一方、汚泥処理システム50bでは、掻き混ぜ装置54bを固液分離装置56bと一体化させた構成を採用している。このため、スクリュー60とろ過体58による処理液の固液分離動作を行いながら、常にろ過体58内で掻き混ぜ装置54bによる活性汚泥のフロック化が維持されるため、一旦フロック化した活性汚泥が崩れてフロック前の状態に戻ることを防止しながら固液分離することができ、高い固液分離効率を維持することができる。このような掻き混ぜ装置54bを構成する棒部材96を、汚泥処理システム50,50aのスクリュー軸62に設置することも可能である。
【0103】
汚泥処理システム50(50a,50b)において、固液分離装置56(56a,56b)は、掻き混ぜ装置54(54a,54b)で掻き混ぜられた処理液が流入する流入口58aを有し、複数のろ過孔80が開口形成された円筒形状のろ過体58の内部へと流入口58aから流入する処理液を、該ろ過体58の内部に回転可能に設けられたスクリュー60の回転によって搬送すると同時に濃縮汚泥と分離液とに固液分離するスクリュープレス型分離機として構成されている。このように、スクリュープレス型分離機である固液分離装置56(56a,56b)を水没させて運転することにより、活性汚泥を含む処理液をろ過体58内の液中で浮遊させながら固液分離することができる。従って、凝集剤が注入された処理液のみならず、凝集剤が注入されていない処理液であっても、掻き混ぜ装置54(54a,54b)によるフロック化の作用と相まって、該処理液がろ過体58内への投入後すぐに該ろ過体58外へと漏れ出してしまうことを防止しながら固液分離することができ、凝集剤等の注入のための設備費や維持管理費を削減又は低減することができる。
【0104】
固液分離装置56(56a,56b)において、ろ過体58は、スクリュー60の軸方向と平行する回転軸78,79によって軸支された状態で周方向に沿って配列された複数のプレート72によって形成されると共に、隣接する各プレート72の一部が周方向に順に積層するように設置され、ろ過孔80を、積層した各プレート72間の隙間80によって形成している。プレート72を回転軸78,79によって回転可能とすることで、ろ過孔80の開度を可変にできる。従って、運転時にはろ過孔80の開度を狭くすることで、処理液中の固形分を通さず、分離液のみを円滑に流出させることができる一方、運転停止時やメンテナンス時にはろ過孔80の開度を広くすることで、該ろ過孔80に詰まった固形分等を容易に除去することができ、メンテナンス性が向上し、オーバーホール費用等も低減することができる。
【0105】
固液分離装置56(56a,56b)では、回転軸78,79によるプレート72の回転位相を位置決めする位置決め手段として、リング部材82、ワイヤ83及び巻上ロール84を備えたことにより、運転時及び運転停止時において、プレート72の回転位相、つまりろ過孔80の開度を制御することができる。また、このような位置決め手段を用いれば、ろ過孔80が閉塞されることが阻止されるため、スペーサ86を省略することもできる。なお、プレート72の位置決め手段は他の構成であってもよく、例えば、各プレート72の回転軸78,79を中心とする回転位相を個別に制御可能なモータ等を用いてもよい。
【0106】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。