【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
1.スリットの長さが15〜45mmのスリット状の空隙部を設けた下面板、下面板上に設けた一対の側面板、前記一対の側面板と垂直をなす軸まわりに起倒可能な留め具からなり、留め具には倒した時に下面板のスリット状の空隙部に向かって突き出す高さ3mm〜15mmの凸部を設け、一対の側面板には前記留め具を倒した状態で係合するための係合部を設け、スリット状の空隙部の上面に重ねたベルトの基端部を下面板の上部面に固定
し、
下面板の上部面よりベルトの基端部から先端部へ延びる方向とはスリット状の空隙部を挟んで反対側の下面板の上部面に、ベルトの基端部を固定することを特徴とするベルトのバックル。
2.留め具を倒した状態で、留め具に設けた凸部の先端が、下面板の上部面より上方に5mm、下方に5mmの範囲に位置する事を特徴とする1.記載のベルトのバックル。
3.一対の側面板と垂直をなす軸を、側面板に設けた溝の中で一対の側面板と平行に移動可能とすることで、前記留め具を平行に移動、揺動させ、側面板のストッパーとの係合を行うことを特徴とする
1.又は2.に記載のベルトのバックル。
である。
【0011】
本発明は、胴に巻付けて使用する洋装用のベルトのバックルであり、締結位置を無段階に調節するため摩擦力を利用している。特に、使用時にベルトの受ける張力(設計最大荷重)により、ベルトの先端部がバックルより引き抜かれないために、ベルトの先端部と基端部を重ね合わせたうえで、倒し込んだ留め具の凸部によりスリット状の空隙の中に押し込み、あえて人体側に向かって凸となるよう屈曲させて摩擦力を発生させている。
【0012】
この留め具に設けた凸部の高さは、低すぎるとベルトがあまり屈曲せず十分な摩擦力を発生させられないが、高すぎると操作が困難になるため、3mm〜15mmの範囲とする必要があり、好ましくは3mm〜10mmの範囲とすべきである。
【0013】
なお、このようにベルトを屈曲させる場合には、凸部の先端の位置が最も重要である。ベルトが厚く剛性が高い場合にはあまり下まで押し込む必要が無く下面板の上部面より上方に5mmとなる。逆に薄く剛性も低いベルトの場合には上部面の下5mmまでベルトを押し込む必要が有り、一般的に使用されるベルトの厚さや剛性などの物性より、実際には下面板の上部面の上3mmから、上部面から下に3mmの範囲とすることが好ましい。
【0014】
特に、このように、ベルトを屈曲させて摩擦力を発生させる目的は、ベルトの張力の方向と摩擦力を発生させる面が平行に近づいて滑り出さなくするためである。
つまり、特許文献1にあるようにな方式のバックルは通常人体とは逆向きに凸となるようにベルトを屈曲させて摩擦力を発生させているが、このような方向にベルトを屈曲させていると、バックルが人体から引き離される方向の力を受けた時に、
図5(b)のようにベルトが2次曲線形状となり摩擦面に対してベルトが受ける張力の方向が平行に近づいて滑り出す。
【0015】
そこで本発明では、あえて人体側に向かって凸となるようにベルトを屈曲させている。これにより、バックルが人体から引き離される方向の外力を受けた時にも、摩擦面に対してベルトが受ける張力の方向が平行にならずベルトの先端部が滑り出さない。つまり、このような力を受けた時に、ベルトが形成させられる2次曲線形状とは逆の傾きを、バックルによってベルトに強制するために、あえてバックルにより人体に向かって凸となるようにベルトの先端部を屈曲させている。
【0016】
さらに、このように人体に向かって屈曲させることにより、張力に比例して摩擦力も強化させることができるので、より強力にベルトを締結できる利点が生まれた。
つまり、スリット状の空隙の中でベルト先端部の下側となったベルトの基端部がバックルから引き出される張力を利用して、ベルトの先端部を留め具の凸部に押し付けて摩擦力をさら強化することまで可能となった。このように摩擦力を増加させるためには、
図1のようにスリット状の空隙を挟んで、締結時にベルトの先端部を引き出した側とは逆側に、ベルトの基端部をネジなどで固定するだけでよい。
【0017】
このように重要な部位であるスリット状の空隙部のスリットの長さは、基本的に使用するベルトの厚さに比例させて、薄い場合には短く、厚い場合には長く設計する。
さらに、留め具の軸を側面板に固定する場合には短く、軸を側面板の中でスライドさせる場合には長く設計する。
【0018】
ゆえに市販されている大体2〜4mm厚さの皮革製ベルト等を使用する場合には、スリット状の空隙の幅は15mm〜45mmの範囲になる必要がある。例えば、ベルトの厚さが2.5mmで軸を固定する場合にはスリット状の空隙の幅を20mmで設計し、同じくベルトの厚さが2.5mmで軸を平行に移動させる場合であれば、この幅に平行に移動する部分の12mmを足して32mmで設計、製作できる。つまりスリット状の空隙の幅はベルトの厚さや剛性、軸の平行移動や係合機構などによって15mm〜45mmの範囲で調節しなければならず、一般的な市販のベルトであれば20mm〜35mmの範囲が好ましい。
また、上記のようにベルトの両端部を屈曲させるための必須条件として、ベルトの基端部はこのスリット状の空隙の上に被せた状態で下面板の上部面で固定しなければならない。
【0019】
また、下面板上方に位置する一対の側面板では、この一対の側面板と垂直をなす軸まわりに、起倒可能な留め具を設けており、この起倒可能な留め具によりテコの原理を応用し、小さな力でも重ねた2枚のベルトを屈曲させる操作が容易となる。
また、留め具には、倒した時にスリット状の空隙に向かって突き出す高さ3mm〜15mmの凸部を設けてあり、この凸部の高さも使用するベルトの厚さと剛性、デザイン等により、この範囲内で調整する必要があるが一般的な皮革製ベルトの場合、好ましくはこの凸部の高さは5〜10mmの範囲で良い。しかし、例えば剛性が高く、厚さも4mmのベルトの場合には凸部の高さは3mmと低くし、厚さ2.5mmで一般的な剛性の皮革製ベルトの場合にはこの高さを12mmで設計、製作した。
【0020】
ベルトを締結する際には、この留め具を起こす事でベルトの先端部を差し込む空間をつくり出し、ベルトの先端部を留め具の下に通し、下面板の上部面に固定しているベルトの基端部の上に重ねた状態で引き出し、締結する位置を決め、留め具を倒してベルトの両端部を重ね合わせた状態でスリット状の空隙の中で屈曲させ、スリット状の空隙を形成する下面板の部材と、留め具の凸部との間で、痕が残らない程度の強さにてベルトの両端部を圧縮する。
【0021】
上記ベルトの締結方法について、さらに詳しく
図1を使って説明する。下面板の上部面では、ベルトの基端部から先端部へ延びる方向とはスリット状の空隙部を挟んで反対側の下面板の上部面に、ベルトの基端部を固定しておき、締結時には下面板に設けたスリット状の空隙部の上でベルトの基端部とベルトの先端部を重ね合わせ、この状態で留め具を倒し凸部により2枚重ねしたベルトの両端部を、スリット状の空隙に押し込む事により人体に向かって凸に屈曲させるが、この時2枚重ねしたベルトの両端部は二つの逆V字を含む形状に屈曲させられる。この時スリット状の空隙を形成する下面板の部材は逆V字形状に屈曲させられたベルトの両端部のどちらか一つかもしくは両方の逆V字形状部を圧縮することにより発生させた摩擦力によってベルトの先端部を締結することが本発明の基本原理である。
【0022】
さらに、前記のようにベルトを屈曲させて摩擦力により締結した後で、操作しやすく不用意に解除されない係合機構にて、この留め具を確実に固定する必要があるが、バックルの設計上簡素かつ単純な機構が望ましく、本発明では基本的にスライド(平行移動)機構により留め具を係合する機構を採用しているが、テコの原理や永久磁石によって構成する機構により係合する設計も可能である。
【0023】
また本発明のバックルは通常はステンレス鋼などの金属製とする事が好ましいが、エンジニアリングプラスティックなど他の材料で製作する事も可能である。