(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含フッ素共重合体(A)と前記イソシアネート系硬化剤(B)の合計100質量部に対して、前記オキサゾリン基含有ポリマー(C)が12〜40質量部配合された、請求項1に記載のポリカーボネート用含フッ素樹脂水性塗料組成物。
前記イソシアネート系硬化剤(B)が、該イソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基が保護されたブロックイソシアネート化合物である、請求項1または2に記載のポリカーボネート用含フッ素樹脂水性塗料組成物。
前記含フッ素共重合体(A)中の水酸基の全モル数に対する、前記イソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基の全モル数の比率(NCO/OH)が、0.2〜2.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネート用含フッ素樹脂水性塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリカーボネート用含フッ素樹脂水性塗料組成物(以下、「水性塗料組成物」ともいう。)は、水酸基を有する含フッ素共重合体(A)と、イソシアネート系硬化剤(B)と、オキサゾリン基含有ポリマー(C)と、水とを含有し、ポリカーボネートからなる基材(以下、「ポリカーボネート基材」ともいう。)への塗膜形成に使用される。
【0011】
〔水酸基を有する含フッ素共重合体(A)〕
本発明の水性塗料組成物は、水に合成樹脂が乳化または分散または溶解している組成物であって、前記合成樹脂は、水酸基を有する含フッ素共重合体(A)(以下、「含フッ素共重合体(A)」ともいう。)を含んでいる。
【0012】
含フッ素共重合体(A)は、フッ素を含有するとともに、水酸基を含有する共重合体であれば特に制限はないが、フルオロオレフィン系化合物に基づく構成単位(u1)と、水酸基を有する単量体に基づく構成単位(u2)と、水酸基を有しない単量体に基づく構成単位(u3)とを有する共重合体が好ましい。
【0013】
(構成単位(u1))
重合により構成単位(u1)を形成するフルオロオレフィン系化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
CF
2=CF
2、CClF=CF
2、CHCl=CF
2、CCl
2=CF
2、CClF=CClF、CHF=CCl
2、CH
2=CClF、CCl
2=CClF等のフルオロエチレン。
CF
2ClCF=CF
2、CF
3CCl=CF
2、CF
3CF=CFCl、CF
2ClCCl=CF
2、CF
2ClCF=CFCl、CFCl
2CF=CF
2、CF
3CCl=CClF、CF
3CCl=CCl
2、CClF
2CF=CCl
2、CCl
3CF=CF
2、CF
2ClCCl=CCl
2、CFCl
2CCl=CCl
2、CF
3CF=CHCl、CClF
2CF=CHCl、CH
3CCl=CHCl、CHF
2CCl=CCl
2、CF
2ClCH=CCl
2、CF
2ClCCl=CHCl、CCl
3CF=CHCl、CH
2BrCF=CCl
2等のフルオロプロペン類。
CF
3CCl=CFCF
3、CF
2=CFCF
2CClF
2、CF
3CF
2CF=CCl
2等の炭素数4以上のフルオロオレフィン系化合物。
これらの中で、CF
2=CF
2、CClF=CF
2が、塗膜の耐候性に優れる点で好ましい。
【0014】
含フッ素共重合体(A)の構成単位全体のうち、構成単位(u1)の含有割合は、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましく、45〜55モル%がさらに好ましい。
構成単位(u1)の含有割合が上記範囲であると、充分な耐候性の塗膜が得られやすく、また、含フッ素共重合体(A)のガラス転移温度が高くなりすぎず、非晶質で良好な塗膜が得られやすい。
含フッ素共重合体(A)の分子中に存在する構成単位(a1)は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0015】
(構成単位(u2))
構成単位(u2)を構成する水酸基を有する単量体としては、例えば、水酸基含有ビニルエーテル、水酸基含有ビニルエステル、水酸基含有アリルエーテル、水酸基含アリルエステル等の水酸基を有するエチレン性単量体である。
【0016】
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチル−4−ビニロキシメチルシクロヘキサン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類が挙げられる。これらの中でも2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0017】
水酸基含有ビニルエステルとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル類が挙げられる。
【0018】
これらのなかでは、水酸基含有ビニルエーテルまたは水酸基含有ビニルエステルが好ましく、水酸基含有ビニルエーテルがより好ましい。なかでも、重合性、架橋性の点から、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
【0019】
含フッ素共重合体(A)の構成単位全体のうち、構成単位(u2)の含有割合は、5〜40モル%が好ましく、8〜35モル%がより好ましい。
構成単位(u2)の含有割合が上記範囲の下限値以上であると、成膜時に架橋をした際、充分な架橋密度が得られやすい。また、上記範囲の上限値以下であると、塗膜にしたときに充分な耐水性が得られやすい。
含フッ素共重合体(A)の分子中に存在する構成単位(u2)は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0020】
(構成単位(u3))
構成単位(u3)を構成する水酸基を有しない単量体としては、水酸基を有しないエチレン性単量体であり、例えば、アルキルビニルエーテル、アルキルカルボン酸ビニルエステル、アルキルアリルエーテル、アルキルカルボン酸アリルエステル等が挙げられ、フッ素原子を有しない単量体であることが好ましい。構成単位(u3)を構成する水酸基を有しない単量体は、これらのなかから、所望の塗膜物性(硬度、光沢、顔料分散性など)に応じて、適宜選択される。
【0021】
構成単位(u3)を構成する水酸基を有しない単量体としては、具体的には、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル、酢酸ビニル、吉草酸ビニル、またはピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルが好ましく、特に、エチルビニルエーテルまたはシクロヘキシルビニルエーテルに基づく構成単位は、構成単位(u1)との交互共重合性がよく、含フッ素共重合体(A)のガラス転位温度を調整しやすい点で、好ましい。
【0022】
含フッ素共重合体(A)の構成単位全体のうち、構成単位(u3)の含有割合は、0〜45モル%が好ましく、3〜35モル%がより好ましく、5〜30モル%がさらに好ましい。
構成単位(u3)の含有割合が上記範囲であると、得られる塗膜の柔軟性が良好となる。
含フッ素共重合体(A)の分子中に存在する構成単位(u3)は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0023】
含フッ素共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、3,000〜200,000が好ましい。含フッ素共重合体(A)のMwが上記範囲の下限値以上であると、形成される塗膜の耐候性が良好になりやすい。また、含フッ素共重合体(A)のMwが上記範囲の上限値以下であると、水性塗料組成物の粘度が適度となり、取扱い性が良好になりやすい。含フッ素共重合体(A)のMwは、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される値である。
【0024】
含フッ素共重合体(A)の水酸基価は、5〜300[mgKOH/g]が好ましく、5〜150[mgKOH/g]がより好ましい。含フッ素共重合体(A)の水酸基価が上記範囲内であると、成膜時に充分な架橋密度が得られやすく、塗膜の耐水性も優れる。
【0025】
〔その他の合成樹脂〕
本発明の水性塗料組成物には、含フッ素共重合体(A)以外の他の合成樹脂が、含フッ素共重合体(A)と共に水に乳化または分散または溶解していてもよい。
他の合成樹脂としては、含フッ素共重合体(A)以外のフッ素系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
含フッ素共重合体(A)以外のフッ素系樹脂としては、特許第2955336号に記載のフルオロオレフィンに基づく構成単位および親水性部位を有するマクロモノマーに基づく構成単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。ここで、親水性部位とは、親水性基を有する部位、または親水性の結合を有する部位、およびこれらの組合せからなる部位を意味する。また、マクロモノマーとは片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーのことである。この含フッ素共重合体を含有させた場合は、水性塗料組成物の機械的安定性および化学的安定性が改良される点で好ましい。
【0026】
本発明の水性塗料組成物において、水に乳化または分散または溶解している合成樹脂中に占める含フッ素共重合体(A)の比率は、10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、優れた耐候性を付与する観点からは55〜100質量%がさらに好ましい。
【0027】
〔イソシアネート系硬化剤(B)〕
本発明の水性塗料組成物は、イソシアネート系硬化剤(B)を含む。含フッ素共重合体(A)の水酸基(OH)と、イソシアネート系硬化剤(B)のイソシアネート基(NCO)が反応することにより、含フッ素共重合体(A)が架橋して硬化する。
イソシアネート系硬化剤(B)としては、ポリイソシアネート化合物または該ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック化剤により保護されたブロックイソシアネート化合物が使用でき、ブロックイソシアネート化合物が水性塗料組成物の貯蔵安定性の点で好ましい。
イソシアネート系硬化剤(B)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルジフェニルなどの芳香族ポリイソシアネート類;ビス−(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート類;クルードトリレンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネートなどのクルードポリイソシアネート類;カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネートなどの変性ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0029】
これらのポリイソシアネート類はビューレット型、イソシアヌレート環型、ウレトジオン型等により、2量体または3量体になっているものであってもよい。
【0030】
ブロック化剤としては、アルコール類、フェノール類、カプロラクタム類、オキシム類、活性メチレン化合物類などが例示される。これらのうち低温で解離するものが、未硬化膜を硬化させる際の加熱温度を低くできる点で好ましい。
通常、ブロック化剤は140℃以上で解離するものが多いが、低温解離型としては120℃以下で解離するものが良く、この様な性質のブロック化剤としては、炭素数1〜3のアルキル基を1個または2個有するピラゾール誘導体が挙げられる。なかでもジメチルピラゾールが好ましく、3,5−ジメチルピラゾールがより好ましい。
【0031】
ブロックイソシアネート化合物の好ましい具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートを、3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたBaxenden社製のTrixene7986(製品名)、Trixene Aqua BI220(製品名)などが挙げられる。
【0032】
本発明の水性塗料組成物において、含フッ素共重合体(A)中の水酸基の全モル数に対する、イソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基の全モル数の比率(NCO/OH)は、0.2〜2.0が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.4〜0.6がさらに好ましい。
該比率(NCO/OH)が上記範囲内であると、ポリカーボネート基材上に形成されて高温高湿条件下で保持された後でも、より優れた密着性を保持する塗膜を形成できる。また、上記範囲の上限値以下であると、塗膜の透明性が優れ、上記範囲の上限値以下であると、塗膜の耐水性、耐候性も優れやすい。上記範囲の下限値以上であると、耐溶剤性、塗膜硬度の良好な塗膜が得られやすい。
【0033】
〔オキサゾリン基含有ポリマー(C)〕
本発明の水性塗料組成物は、下記式(1)で表されるオキサゾリン基を有するオキサゾリン基含有ポリマー(C)を含む。オキサゾリン基含有ポリマー(C)を上述のイソシアネート系硬化剤(B)と共に含有することにより、水性塗料組成物から形成された塗膜のポリカーボネート基材への密着性は、高温高湿条件下で保持された後でも、良好に持続する。
【0035】
オキサゾリン基含有ポリマー(C)は、例えば、オキサゾリン基を有する単量体(c1)と、必要に応じて使用される他の単量体(c2)とを重合することにより得られる。
オキサゾリン基を有する単量体(c1)としては、オキサゾリン基と重合性の不飽和結合とを有する単量体が使用でき、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0036】
必要に応じて使用される他の単量体(c2)としては、オキサゾリン基とは反応せず、オキサゾリン基を有する単量体(c1)の不飽和結合と反応して重合する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用できる。
【0037】
オキサゾリン基含有ポリマー(C)は、例えば、オキサゾリン基を有する単量体(c1)と、必要に応じて使用される他の単量体(c2)とを公知の重合法により、水性媒体中で重合する方法で製造できる。
水性媒体としては、水;または、水とメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン等の混合溶液;が挙げられる。
【0038】
オキサゾリン基を有する単量体(c1)と、必要に応じて使用される他の単量体(c2)との単量体混合物中、オキサゾリン基を有する単量体(c1)の割合は、5質量%以上であることが好ましい。この範囲であると、適切なオキサゾリン価のオキサゾリン基含有ポリマー(C)が得られ、これをイソシアネート系硬化剤(B)と併用することによる効果、すなわち、高温高湿条件下で保持された後でも、ポリカーボネート基材への密着性に優れる塗膜を形成できる効果が充分に得られる。オキサゾリン基含有ポリマー(C)のオキサゾリン価は、12000[g−solid/eq.]以下が好ましく、50〜10000[g−solid/eq.]がより好ましく、120〜550[g−solid/eq.]が特に好ましい。
なお、ここで「オキサゾリン価」とは、オキサゾリン基1mol当たりの重合体の質量である。
【0039】
オキサゾリン基含有ポリマー(C)は、含フッ素共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)の合計100質量部に対して、固形分基準で、12〜40質量部配合されることが好ましく、14〜40質量部がより好ましく、14〜20質量部がさらに好ましい。オキサゾリン基含有ポリマー(C)の配合量が上記範囲の下限値以上であると、高温高湿条件下で保持された後でも、ポリカーボネート基材への密着性に優れる塗膜を形成でき、上記範囲の上限値以下であると、塗膜の透明性も優れる。
【0040】
〔硬化触媒〕
本発明の水性塗料組成物は、硬化触媒を含有することが好ましい。硬化触媒としては、水分散性または水溶性等を有し、水性塗料組成物への配合時に、水性塗料組成物の液の均一性を損なわず、沈殿物を生じ難いものが好ましい。
硬化触媒は、樹脂の硬化触媒として公知の化合物から適宜選択して用いることができるが、本発明の水性塗料において、含フッ素共重合体(A)の乳化または溶解または分散の安定性を保ちつつ、良好な硬化促進効果が得られやすい硬化触媒として、以下の化合物が挙げられる。
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩、フェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のジアザビシクロウンデセン系触媒;
チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩等の有機チタン系触媒;
p−トルエンスルホン酸アミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩、ジノニルナフタレンスルホン酸アミン塩、ジノニルナフタレンジスルホン酸アミン塩、アルキルリン酸アミン塩等の、有機酸アミン塩系触媒;
トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール等のアミン系触媒。
【0041】
これらの硬化触媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。より強度が高い塗膜(硬化膜)が得られやすい点で、2種以上を併用することが好ましい。
例えば、ジアザビシクロウンデセン系触媒から選ばれる1種以上と、有機チタン系触媒から選ばれる1種以上を併用することが好ましい。
または、ジアザビシクロウンデセン系触媒から選ばれる1種以上と、有機酸アミン塩系触媒から選ばれる1種以上を併用することが好ましい。
特に、ジアザビシクロウンデセン系触媒として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩を用い、これと有機チタン系触媒から選ばれる1種以上、または有機酸アミン塩系触媒から選ばれる1種以上とを併用することがより好ましい。
有機チタン系触媒としては、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が特に好ましい。
有機酸アミン塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩、U−CAT 18X(製品名、サンアプロ社製、特殊アミン塩)が特に好ましい。
【0042】
本発明の水性塗料組成物における硬化触媒の含有量は、水性塗料組成物100質量%中、0.001〜3.0質量%が好ましく、0.001〜1.0質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、良好な硬化促進効果が得られやすく、上記範囲の上限値以下であると良好な貯蔵安定性が得られやすい。
【0043】
〔その他の成分〕
本発明の水性塗料は、造膜助剤、表面調整剤(レベリング剤)、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、シランカップリング剤等の添加剤を適宜含有することが好ましい。
【0044】
造膜助剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(以下、「EHDG」ともいう。)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(以下、「EHG」ともいう。)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ(2−メチルプロピオネート)、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。造膜助剤を含有させる場合、その含有量は、含フッ素共重合体(A)とその他の合成樹脂の合計(固形分)の100質量部に対し、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0045】
表面調整剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等が好ましく挙げられる。
増粘剤としては、ポリウレタン系会合性増粘剤等が好ましく挙げられる。
【0046】
本発明の水性塗料組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。該水性塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)を含有し、該含フッ素共重合体(A)は耐候性に優れるため、紫外線吸収剤をさらに含むことにより、耐候性が非常に優れる塗膜を形成できる。
【0047】
紫外線吸収剤としては、公知の種々のものが使用できる。特に透明塗料として上塗り塗装で用いる場合に適した紫外線吸収剤としては、
サリチル酸メチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸クレジル、サリチル酸ベンジル等のサリチル酸エステル類;
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、アデカ・アーガス社製のT−57として販売されているような高分子量変性品等のベンゾフェノン類;
2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−ネオペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、チバ・ガイギー社製のチヌビン900、1130として販売されているような高分子量変性品等のベンゾトリアゾール類;
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−シアノ−β−メチル−4−メトキシ桂皮酸メチル等の置換アクリロニトリル類;
2,2’−チオビス(4−オクチルフェノレート)ニッケル錯塩、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)}−n−ブチルアミン・ニッケル錯塩等のニッケル錯塩;
センカ社製のシャインガードTA−22として販売されているような水系のヒドロキシフェニルトリアジン類;
p−メトキシベンジリデンマロン酸ジメチル、レゾルシノールモノ安息香酸エステル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等の紫外線吸収剤;およびビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等があり、これらは1種または2種以上の混合物として組み合わせて用いることもできる。
【0048】
紫外線吸収剤は、含フッ素共重合体(A)とその他の合成樹脂の合計(固形分)の100質量部あたり0.1〜20質量部、特には0.1〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。紫外線吸収剤の量が少なすぎる場合においては、耐光性の改良効果が充分に得られず、また、多すぎる場合には、その効果が飽和してしまい、適当とはいえない。
【0049】
光安定剤としてはアデカ・アーガス社製のMARK LA 57,62,63,67,68(いずれも製品名)、チバ・ガイギー社製のチヌビン622LD(製品名)、チヌビン123DW(製品名)などのようなヒンダードアミン系の光安定剤が挙げられる。これらは、1種または2種以上の混合物として紫外線吸収剤と組み合わせて用いることもできる。
【0050】
消泡剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸塩類、液体脂肪油硫酸エステル類、脂肪族アミンおよび脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アクリル系ポリマー、シルコーン混合アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
消泡剤の消泡効果は親水基と疎水基のバランス(HLB価)で左右され、HLBが6以下、特に4以下のものが好ましく採用される。
【0051】
カップリング剤としては、 アミノ基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基などを有するシランカップリング剤が挙げられ、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「Z−6040(製品名)」として販売されているグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
なお、塗膜の光沢を調整する必要がある場合は、常用の無機または有機のツヤ消剤を添加すればよい。
また、着色が必要な場合には、市販の有機顔料、無機顔料、有機染料、これらを複合化した顔料もしくは染料等の着色材を分散若しくは混合添加すればよい。
【0053】
〔水性塗料組成物〕
本発明の水性塗料組成物は、有機溶媒を含まないもの、または有機溶媒を含み、水性塗料用組成物の全質量中における有機溶媒の含有量が10質量%以下であるもの、好ましくは3質量%以下であるもののいずれかであることが好ましい。
含有し得る有機溶媒としては、例えば、含フッ素共重合体(A)、イソシアネート系硬化剤(B)、オキサゾリン基含有ポリマー(C)の各製造工程に由来する残留物、これらを乳化、分散、溶解させるために使用される媒体としての有機溶媒、上述の各添加剤に含まれる有機溶媒等が挙げられる。
【0054】
本発明の水性塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)を含む合成樹脂が水に乳化または溶解または分散している組成物であればよく、例えば含フッ素共重合体(A)を含む合成樹脂が水に乳化しているエマルション塗料組成物が好適である。
【0055】
エマルション塗料組成物は、乳化重合で製造された合成樹脂のエマルションと、他の成分、すなわち、イソシアネート系硬化剤(B)およびオキサゾリン基含有ポリマー(C)と、必要に応じて使用される添加剤とを混合する方法で調製できる。合成樹脂のエマルションは、例えば、比較的多量に界面活性剤を用いた乳化重合により製造する方法、親水性マクロマーをフルオロオレフィン、ビニルエーテルなどと共重合させて、界面活性剤を用いないで製造する方法、合成樹脂を溶液重合などの別の方法で製造し、その後、該合成樹脂からエマルションを調製する方法等で製造できる。
【0056】
本発明の水性塗料組成物において、含フッ素共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とオキサゾリン基含有ポリマー(C)との合計の固形分濃度は、ポリカーボネート基材を保護するための充分な膜厚を得る点から、10〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
【0057】
〔ポリカーボネート塗装物品の製造方法〕
本発明のポリカーボネート塗装物品の製造方法は、本発明の水性塗料組成物をポリカーボネート基材の表面に塗布して未硬化膜を形成し、該未硬化膜を例えば加熱により硬化させる方法である。
水性塗料組成物のポリカーボネート基材上への塗布は、ロールコーター、バーコーター等を用いた公知の方法を採用できる。
【0058】
未硬化膜を硬化させるために加熱する際の加熱温度は、水の沸点以上が好ましく、イソシアネート系硬化剤(B)として、ブロックイソシアネート化合物を用いる場合には、ブロックイソシアネート化合物のブロック化剤が解離する温度(解離温度)以上とする。上限は、水性塗料組成物中の成分の熱分解が生じない温度範囲とする。
例えば、イソシアネート系(B)硬化剤が、解離温度が120℃以下である低温解離型のブロックイソシアネート化合物である場合、加熱温度は110〜250℃が好ましい。加熱温度が高いほど、未硬化膜の乾燥および硬化は速く進む。加熱時間は、加熱温度に応じて、好ましい硬化状態が得られる時間に設定することができる。
本発明の水性塗料組成物は短時間の加熱で硬化させることができ、数分間(例えば2〜5分間)の加熱でも硬化させることが可能である。
【0059】
以上説明したように、本発明の水性塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)をベースとし、イソシアネート系硬化剤(B)とオキサゾリン基含有ポリマー(C)とを共に配合したものである。そのため、イソシアネート系硬化剤(B)とオキサゾリン基含有ポリマー(C)の相乗効果により、該水性塗料組成物で形成された塗膜は、ポリカーボネート基材に対して優れた密着性を発揮し、高温高湿条件下に保持された場合でも密着性が良好に持続する。そのため、本発明の水性塗料組成物を塗布するにあたって、あらかじめポリカーボネート基材に対してプライマー層を設ける必要がない。また、密着性向上のために、コロイダルシリカを配合する必要がないため、コロイダルシリカを配合することに起因する水性塗料組成物の貯蔵安定性低下、塗膜におけるクラック発生等の懸念が生じない。
本発明の水性塗料組成物の奏する優れた密着性は、ポリカーボネート基材に対して選択的に発揮される。この詳細な理由は明らかではないが、後述するように、本発明の水性塗料組成物から形成された塗膜を例えばポリエチレンテレフタレート基材やガラス基材に対して設けても、ポリカーボネート基材に対して発揮されるような、高温高湿条件下での優れた密着性は得られない。
【0060】
本発明の水性塗料組成物は、例えば屋外において、窓材(自動車等の車両用の窓材、家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓材等)、公共施設等の屋根、バルコニー、カーポート、アーケード、高速道路の透光性遮音壁等の建材などとして使用されるポリカーボネート基材の表面のコーティングに好適に使用される。本発明の水性塗料組成物を、ポリカーボネート基材の表面に塗布し、硬化させることにより、ポリカーボネート塗装物品を製造できる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
なお、下記の表1に示す各成分は、以下のとおりである。
〔含フッ素共重合体(A1)〕
旭硝子社製、フルオロオレフィン系化合物に基く構成単位(u1)と、水酸基を有する単量体に基づく構成単位(u2)と、水酸基を有しない単量体に基づく構成単位(u3)とを有する、フッ素樹脂エマルション「ルミフロンFE−4400(商品名)」(水酸基価=55mgKOH/g;固形分48質量%。)。
〔イソシアネート系硬化剤(B1)〕
Baxenden社製のブロックイソシアネート化合物「Trixene Aqua BI220(製品名)」:ヘキサメチレンジイソシアネートと3,5−ジメチルピラゾール(ブロック化剤)との反応物、解離温度110〜120℃、固形分40質量%、溶媒は水およびCoasol混合液。なお、Coasolとはジカルボン酸とジイソブチルエーテルの混合物である。
〔オキサゾリン基含有ポリマー(C)〕
日本触媒社製「エポクロスWS−700(製品名)」:アクリル系の主鎖を有するオキサゾリン基含有ポリマー、溶媒は水、pH7〜10、オキサゾリン価([g−solid/eq.]、計算値)=220、固形分25質量%。
【0062】
〔カップリング剤〕
東レ・ダウコーニング社製シランカップリング剤「Z6040(製品名)」:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
〔表面調整剤(レベリング剤)〕
サンノプコ社製「SNウェット126(製品名)」:変性シリコーン系湿潤剤(有効成分93質量%)。
【0063】
〔紫外線吸収剤〕
センカ社製「シャインガードTA−22(製品名)」:ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、有効成分30質量%。
〔光安定剤〕
BASF社製「チヌビン123DW(製品名)」:ヒンダードアミン系光安定剤、有効成分30質量%。
【0064】
〔硬化触媒1〕
サンアプロ社製「U−CAT SA 603(製品名)」:ジアザビシクロウンデセンギ酸塩。
〔硬化触媒2〕
マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC−400(製品名)」:チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)の2−プロパノール溶液、有効成分80質量%。
【0065】
〔造膜助剤1〕
ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル。
〔造膜助剤2〕
エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル。
【0066】
〔例1〕
表1に示す配合量で、含フッ素共重合体(A1)、イソシアネート系硬化剤(B1)、オキサゾリン基含有ポリマー(C1)、その他の各種成分を混合し、水を加えて全量を100質量部とし、エマルション形態の水性塗料組成物を得た。
なお、表1中の配合量の単位は質量部である。
また、表1中に記載の各成分について、固形分量(有効成分量)が100質量%ではないものについては、各成分それぞれの固形分量(有効成分量)を記載した。固形分量(有効成分量)の単位は質量%である。例えば、表1中、含フッ素共重合体(A1)は、配合量が「50.2(質量部)」、固形分量(有効成分量)が「48(質量%)」であるため、水性塗料組成物100質量部中に含まれる含フッ素共重合体(A1)の固形分量(有効成分量)は、「50.2×0.48=24.1(質量部)」である。水性塗料組成物100質量部中に含まれる各成分の固形分量(有効成分量)についても、表1に記載した。
また、表2に示すように、例1の水性塗料組成物において、含フッ素共重合体(A1)とイソシアネート系硬化剤(B1)の合計100質量部に対する、オキサゾリン基含有ポリマー(C1)の配合量(固形分基準)は18質量部で、含フッ素共重合体(A1)中の水酸基の全モル数に対する、イソシアネート系硬化剤(B1)中のイソシアネート基の全モル数の比率(NCO/OH)は0.4である。
【0067】
〔例2〜14〕
表1に示す水以外の成分のうち、イソシアネート系硬化剤(B1)とオキサゾリン基含有ポリマー(C1)の配合量のみを例1から変更し、さらに水の量を調整することにより全量を100質量部とし、表2に示す例2〜14のエマルション形態の水性塗料組成物を調製した。
【0068】
〔塗膜の密着性〕
以下のようにして、各例で得られた水性塗料組成物から塗膜を形成し、その密着性を評価した。
ポリカーボネート基材(ポリカーボネート板、タキロン社製、「PC1600ポリカーボネートプレート(製品名)」)に、バーコーターを用いて水性塗料組成物を塗布し、未硬化膜を形成した後、120℃の恒温乾燥器中で20分乾燥させて、乾燥膜厚が約5μmの塗膜を形成した。
形成された塗膜付きのポリカーボネート基材を、温度121℃、湿度100%RH、圧力0.105MPaの高温高湿条件下で48時間保持するプレッシャークッカー試験(以下、「PCT試験」ともいう。)に供し、該PCT試験前後における塗膜の密着性を評価した。
密着性は、JIS K 5600−5−6に記載の1mm角×100マス・クロスカット法に従って行い、下記の基準にて3段階で評価した。
○:クロスカット部の剥離面積が5%以下(JIS K 5600−5−6分類の「0〜1」に対応。)。
△:クロスカット部の剥離面積が5%を超えて、65%未満(JIS K 5600−5−6分類の「2〜4」に対応。)。
×:クロスカット部の剥離面積が65%以上(JIS K 5600−5−6分類の「5」に対応。)。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果に示されるように、イソシアネート系硬化剤(B1)とオキサゾリン基含有ポリマー(C1)とを併用した例1〜8の水性塗料組成物から形成された塗膜は、PCT試験前はもちろん、高温高湿条件下におけるPCT試験後にも、ポリカーボネート基材に対して優れた密着性を有していた。
これに対して、イソシアネート系硬化剤(B1)を配合していない例14の水性塗料組成物は、PCT試験前の密着性は優れたが、PCT試験後にはクロスカット部の剥離面積が65%以上となり密着性が低下した。また、オキサゾリン基含有ポリマー(C1)を配合していない例10〜12の水性塗料組成物も、PCT試験前の密着性は優れたが、PCT試験後には低下した。オキサゾリン基含有ポリマー(C1)を配合しておらず、イソシアネート系硬化剤(B1)の配合量が比較的多い例13の水性塗料組成物や、イソシアネート系硬化剤(B1)とオキサゾリン基含有ポリマー(C1)のいずれをも配合していない例9の水性塗料組成物から形成された塗膜は、PCT試験前の密着性も不充分であった。
【0072】
なお、例1の水性塗料組成物を用いて、ポリエチレンテレフタレート基材におけるコロナ表面処理された表面に、塗膜を形成したが、該塗膜の密着性は、PCT試験前で「○」、PCT試験後で「×」という結果であった。また、例1の水性塗料組成物を用いて、フロート板ガラス(JIS R3202)の表面に、塗膜を形成したが、該塗膜の密着性は、PCT試験前で「×」、PCT試験後で「×」という結果であった。塗膜の形成方法、乾燥条件等はポリカーボネート基材を用いた場合と同様にした。
この結果から、本発明の水性塗料組成物の優れた密着性は、ポリカーボネート基材に対して選択的に発揮されることがわかった。