(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度に基づいて、前記加熱手段から前記被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように前記加熱手段の動作を制御する自動調理処理を行う加熱制御手段とを有する加熱調理器を備える加熱調理システムであって、
前記加熱調理器とは別の機器が有する、調理者からの音声による動作指示を受け付ける音声受付手段と、前記音声受付手段が受け付けた動作指示を解析して、当該動作指示に対応する前記加熱制御手段への動作命令を決定する音声解析手段とを備え、
前記加熱調理器が有する前記加熱制御手段は、
前記自動調理処理として、前記加熱手段の加熱動作を開始させた後、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過すると前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止する処理を行っているとき、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容し、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容しないように構成され、
前記機器が有する前記音声解析手段が決定した前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令の伝達を受けて、当該動作命令が、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反しないと判断して前記動作命令を実行するように前記加熱手段の動作を制御し、前記音声解析手段が決定した前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令が、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反すると判断して前記動作命令を実行しないように構成されている加熱調理システム。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロや電磁調理器などの加熱調理器には、自動調理機能が搭載されているものもある。例えば、鍋やフライパンなどの被加熱物の温度が設定上限温度に到達すると加熱手段による加熱を自動的に停止するような安全性を目的とした自動調理処理や、「自動湯沸しモード」や「自動炊飯モード」などの利便性を目的とした自動調理処理がある。何れの場合も、温度検出手段を用いて被加熱物の温度を検出し、その温度に基づいて加熱手段から被加熱物へ与える熱エネルギーが調節される。
【0003】
特許文献1に記載の加熱調理器は、被加熱物(容器2)を加熱する加熱手段(バーナ1)と、被加熱物の温度を検出する温度検出手段(温度センサ5)と、温度検出手段が検出した被加熱物の温度に基づいて、加熱手段から被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように加熱手段の動作を制御する自動調理処理を行う加熱制御手段(信号処理部6、駆動部7)とを有する。そして、加熱調理器によって上述したような自動調理処理を行うことができる。
【0004】
尚、例えば、ガスコンロにおいて「自動湯沸しモード」での自動調理処理が行われていたとしても、容器(被加熱物)に入っている水の量が多い場合には、沸騰を検出した後、自動消火するまでの間に吹きこぼれが発生する可能性もある。従って、沸騰を検出したことをガスコンロが音などで調理者に通知した後、自動消火されるまでの間に調理者が手動で消火操作を行わなければならないこともある。このようなとき、例えば使用者がコンロから離れて別の作業を行っている場合には消火操作だけのために現在行っている作業を中断して消火しに行かなければならなかったり、手が汚れている場合は一度汚れを落とした後で消火操作を行わなければならない。従って、調理者の作業能率の低下や、操作が間に合わないことによる吹きこぼれの発生を生じさせるという問題がある。
【0005】
特許文献2には、調理者が発した音声により動作を制御する加熱調理器(電子レンジ)が記載されている。このような加熱調理器であれば、調理者は、実際に手動で操作入力を行わなくても、離れた場所から加熱調理器の動作を制御できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の加熱調理器(電子レンジ)の技術を、ガス燃焼式や電磁式の加熱手段を有する加熱調理器に適用した場合、調理者が発した音声による動作指令を受け付けてその動作指令に基づいて加熱手段の動作が行われるようになると、加熱手段による加熱動作が誤って行われるような状況が発生し得る。例えば、加熱調理器が音声認識を誤った場合や、調理者が動作指令として意図せずに発した会話の一部を加熱調理器が動作指令として受け付けた場合や、周囲のテレビなどから発せられる音声を加熱調理器が動作指令として受け付ける場合などが考えられる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、音声による動作指令の適否を判定して実行できる加熱調理器及び加熱調理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱調理器の特徴構成は、被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度に基づいて、前記加熱手段から前記被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように前記加熱手段の動作を制御する自動調理処理を行う加熱制御手段とを備える加熱調理器であって、
調理者からの音声による動作指示を受け付ける音声受付手段と、
前記音声受付手段が受け付けた動作指示を解析して、当該動作指示に対応する前記加熱制御手段への動作命令を決定する音声解析手段とを備え、
前記加熱制御手段は、
前記自動調理処理として、前記加熱手段の加熱動作を開始させた後、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過すると前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止する処理を行っているとき、
前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容し、
前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容しないように構成され、
前記音声解析手段が決定した
前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令が
、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反しな
いと判断して前記動作命令を実行するように前記加熱手段の動作を制御し、
前記音声解析手段が決定した
前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令が
、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反す
ると判断して前記動作命令を実行しないように構成されている点にある。
ここで、「動作命令が自動調理処理の内容に反しない」とは、動作命令が自動調理処理の動作或いは目的と矛盾することなく整合することを意味し、「動作命令が自動調理処理の内容に反する」とは、動作命令が自動調理処理の動作或いは目的と矛盾することを意味する。
【0010】
上記特徴構成によれば、加熱制御手段は、温度検出手段が検出した被加熱物の温度に基づいて、加熱手段から被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように加熱手段の動作を制御する自動調理処理
として、加熱手段の加熱動作を開始させた後、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過すると加熱手段の出力を弱める又は加熱停止する処理を行っているとき、音声解析手段が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反しなければ動作命令を実行するように加熱手段の動作を制御し、音声解析手段が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反すれば動作命令を実行しない。
本特徴構成では、加熱制御手段は、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過するまでの間は加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容し、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達する前は加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容しない。そして、加熱制御手段は、音声解析手段が決定した加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという動作命令が、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過するまでの間にあれば、動作命令は自動調理処理の内容に反しないと判断して動作命令を実行するように加熱手段の動作を制御し、音声解析手段が決定した加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという動作命令が、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達する前にあれば、動作命令は自動調理処理の内容に反すると判断して動作命令を実行しない。つまり、音声受付手段が音声を受け付け、音声解析手段が加熱制御手段への動作命令を決定したとしても、加熱制御手段は、その動作命令に従った加熱手段の動作制御を必ず行う訳ではなく、自動調理処理の内容に反するか否かが判定される。その結果、音声受付手段が受け付けた音声のうち、自動調理処理の内容に反しないものだけが適当に加熱手段の動作制御に用いられる。言い換えると、調理者の意図とは異なる形で音声受付手段が音声を受け付け或いは音声解析手段が音声解析したとしても、或いは、調理者の意図通りに音声受付手段が音声を受け付けて音声解析手段が音声解析したとしても、自動調理処理の内容と整合しないものを適当に排除することができる。
従って、音声による動作指令の適否を判定して実行できる加熱調理器が提供される。
【0011】
本発明に係る加熱調理器の別の特徴構成は、調理者からの操作入力による動作指示を受け付ける操作入力受付手段を備え、
前記加熱制御手段は、前記操作入力受付手段が受け付けた動作指令に応じた前記加熱手段の動作制御を、前記自動調理処理による前記加熱手段の動作制御よりも優先して実行する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、加熱制御手段は、操作入力受付手段が受け付けた動作指令に応じた加熱手段の動作制御を、自動調理処理による加熱手段の動作制御よりも優先して実行する。つまり、調理者の意図(即ち、操作入力受付手段が受け付けた動作指令)に沿って、加熱手段の動作を制御できる。その結果、調理者が音声によって入力した動作指示が、自動調理処理の内容に反するとして加熱調理器で実行されなかったとしても、調理者は操作入力受付手段を用いて加熱手段の動作制御を行うことができる。
【0013】
本発明に係る加熱調理器の更に別の特徴構成は、前記加熱制御手段が前記動作命令を実行しない旨を調理者に通知する通知手段を備える点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、調理者が音声によって入力した動作指示が、自動調理処理の内容に反するとして加熱調理器で実行されなかったことの通知を受けることができる。その結果、調理者は音声入力のやり直しなどの対処を即座に行える。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱調理システムの特徴構成は、被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度に基づいて、前記加熱手段から前記被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように前記加熱手段の動作を制御する自動調理処理を行う加熱制御手段とを有する加熱調理器を備える加熱調理システムであって、
前記加熱調理器とは別の機器が有する、調理者からの音声による動作指示を受け付ける音声受付手段と、前記音声受付手段が受け付けた動作指示を解析して、当該動作指示に対応する前記加熱制御手段への動作命令を決定する音声解析手段とを備え、
前記加熱調理器が有する前記加熱制御手段は、
前記自動調理処理として、前記加熱手段の加熱動作を開始させた後、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過すると前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止する処理を行っているとき、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容し、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前は前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容しないように構成され、
前記機器が有する前記音声解析手段が決定した
前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令の伝達を受けて、当該動作命令が
、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達してから前記所定期間経過するまでの間にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反しな
いと判断して前記動作命令を実行するように前記加熱手段の動作を制御し、前記音声解析手段が決定した
前記加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという前記動作命令が
、前記温度検出手段が検出した前記被加熱物の温度が前記設定上限温度に到達する前にあれば、前記動作命令は前記自動調理処理の内容に反す
ると判断して前記動作命令を実行しないように構成されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、加熱制御手段は、温度検出手段が検出した被加熱物の温度に基づいて、加熱手段から被加熱物へ与える熱エネルギーを調節するように加熱手段の動作を制御する自動調理処理
として、加熱手段の加熱動作を開始させた後、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過すると加熱手段の出力を弱める又は加熱停止する処理を行っているとき、音声解析手段が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反しなければ動作命令を実行するように加熱手段の動作を制御し、音声解析手段が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反すれば動作命令を実行しない。
本特徴構成では、加熱制御手段は、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過するまでの間は加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容し、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達する前は加熱手段の出力を弱める又は加熱停止することを許容しない。そして、加熱制御手段は、上記機器が有する音声解析手段が決定した加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという動作命令が、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達してから所定期間経過するまでの間にあれば、動作命令は自動調理処理の内容に反しないと判断して動作命令を実行するように加熱手段の動作を制御し、上記機器が有する音声解析手段が決定した加熱手段の出力を弱める又は加熱停止するという動作命令が、温度検出手段が検出した被加熱物の温度が設定上限温度に到達する前にあれば、動作命令は自動調理処理の内容に反すると判断して動作命令を実行しない。つまり、音声受付手段が音声を受け付け、音声解析手段が加熱制御手段への動作命令を決定したとしても、加熱制御手段は、その動作命令に従った加熱手段の動作制御を必ず行う訳ではなく、自動調理処理の内容に反するか否かが判定される。その結果、音声受付手段が受け付けた音声のうち、自動調理処理の内容に反しないものだけが適当に加熱手段の動作制御に用いられる。言い換えると、調理者の意図とは異なる形で、音声受付手段が音声を受け付け或いは音声解析手段が音声解析したとしても、自動調理処理の内容と整合しないものを適当に排除することができる。
加えて、音声受付手段及び音声解析手段は加熱調理器とは別の機器に設けられており、加熱調理器が備えていなくてもよい。加熱調理器に音声受付手段が設けられている場合であれば調理者は加熱調理器に音声が直接届く位置から、好ましくは加熱調理器の傍で音声入力を行う必要があるが、本特徴構成のように加熱調理器とは別の機器に音声受付手段が設けられていれば、調理者は加熱調理器に音声が直接届かない位置からも音声入力を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の加熱調理器10A(10)について説明する。
図1は、第1実施形態の加熱調理器10Aの構成を示す図である。加熱調理器10Aは、被加熱物Xを加熱する加熱手段1と、被加熱物Xの温度を検出する温度検出手段3と、温度検出手段3が検出した被加熱物Xの温度に基づいて、加熱手段1から被加熱物Xへ与える熱エネルギーを調節するように加熱手段1の動作を制御する自動調理処理を行う加熱制御手段2とを備える。
【0019】
加熱手段1としては、ガスを燃焼して発生する火炎により鍋やフライパンなどの被加熱物Xを加熱するガス燃焼式のバーナーや、電磁誘導加熱式の加熱コイルなどを利用できる。加熱制御手段2は、加熱手段1としてのバーナーへのガス供給量を調節すること、或いは、加熱手段1としての加熱コイルへの供給電力を調節することで、加熱手段1から被加熱物Xへ与える熱エネルギーを調節することができる。
【0020】
操作入力受付手段4は、加熱開始・加熱停止の動作指令や、例えば加熱量の調節の動作指令などを行うための様々なタイプのスイッチやダイヤルなどで構成される。調理者は、この操作入力受付手段4を手動操作して、加熱開始・加熱停止の動作指令や、例えば火力の調節の動作指令などを行うことができる。操作入力受付手段4で行われた動作指令は加熱制御手段2に伝達され、その動作指令に応じた加熱手段1の動作制御を加熱制御手段2は行う。
【0021】
温度検出手段3は、鍋やフライパンなどの被加熱物Xに接触して温度を検出する接触式のセンサや、被加熱物Xから放出される赤外線を検出し、その赤外線のエネルギーを温度に換算する非接触式のセンサなどを利用できる。或いは、加熱調理器10としての電磁調理器の天板上に被加熱物Xが直接載せられる場合であれば、その天板の温度を検出することで、被加熱物Xの温度を知ることもできる。
【0022】
本実施形態において、加熱調理器10Aの加熱制御手段2は、温度検出手段3の検出結果に基づいて加熱手段1から被加熱物Xへ与える熱エネルギーを能動的に調節する自動調理処理を実行する。例えば、加熱制御手段2は、温度検出手段3が検出した被加熱物Xの温度が設定上限温度に到達すると加熱手段1による加熱を自動的に停止するような、安全性を目的とした自動調理処理を実行する。他にも、加熱調理器10Aにおいて、例えば、「自動湯沸しモード」や「自動炊飯モード」などの自動調理機能が搭載されている場合、操作入力受付手段4でそれらの調理モードでの動作指令が行われると、加熱制御手段2は、温度検出手段3が検出した被加熱物Xの温度に基づいて調理途中の被加熱物Xの温度調節から消火(加熱停止)に至るまで、加熱手段1から被加熱物Xへ与える熱エネルギーを自動調節する、利便性を目的とした自動調理処理を実行する。
【0023】
加えて、加熱調理器10Aは、調理者からの音声による動作指示を受け付ける音声受付手段5と、音声受付手段5が受け付けた動作指示を解析して、当該動作指示に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定する音声解析手段6とを備える。
音声受付手段5は、マイクロホンなどを用いて実現できる。そして、音声受付手段5が受け付けた音声は、音声解析手段6に伝達されてその内容が解析される。例えば、音声受付手段5が「消火」という音声を受け付けたとき、その音声信号が音声受付手段5から音声解析手段6に伝達され、「消火」という動作指令の意味が認識される。そして、音声解析手段6は、「消火」という動作指示に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定する。
【0024】
以上のように、加熱制御手段2は、操作入力受付手段4が受け付けた調理者の手動操作入力よる動作命令に従った加熱手段1の動作制御と、音声受付手段5が受け付けた調理者の音声入力による動作命令に従った加熱手段1の動作制御と、温度検出手段3の検出結果に基づく自動調理処理による加熱手段1の動作制御とを行うことができるように構成されている。但し、本実施形態では、加熱制御手段2は、操作入力受付手段4が受け付けた動作指令に応じた加熱手段1の動作制御を、上記自動調理処理による加熱手段1の動作制御よりも優先して実行する。また、加熱制御手段2は、操作入力受付手段4が受け付けた動作指令に応じた加熱手段1の動作制御を、音声受付手段5が受け付けた調理者の音声入力による動作命令に従った加熱手段1の動作制御よりも優先して実行する。
【0025】
加えて、加熱制御手段2は、音声解析手段6が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反しなければ動作命令を実行するように加熱手段1の動作を制御し、音声解析手段6が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反すれば動作命令を実行しないように構成されている。
【0026】
図2は、加熱調理器10Aの動作例を示すフローチャートである。
調理者が操作入力受付手段4を手動操作して、加熱手段1の動作開始(即ち、加熱開始)を指令すると、加熱制御手段2は、加熱手段1の加熱動作を開始させると共に、
図2に示すフローチャートを開始する。このとき、加熱制御手段2は、上述したような安全性を目的とした自動調理処理を開始する。加えて、上述したような利便性を目的とした自動調理処理が操作入力受付手段4によって設定されれば、加熱制御手段2は、その自動調理処理も開始する。
【0027】
工程#100において、加熱調理器10Aの音声受付手段5は、音声入力を受け付けると、その音声信号を音声解析手段6に伝達する。工程#102において、音声解析手段6は、音声受付手段5から伝達された音声信号(即ち、調理者からの音声による動作指示)を解析する。そして、音声解析手段6は、解析の結果として得られたその動作指示に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定する。例えば、音声受付手段5が「消火」という音声を受け付けたとき、音声解析手段6は「消火」に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定する。
【0028】
工程#104において、加熱制御手段2は、音声解析手段6が決定した動作命令が現在実行中の自動調理処理の内容に反しているか否かの判定を行う。そして、加熱制御手段2は、音声解析手段6が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反しなければ動作命令を実行するように加熱手段1の動作を制御し(工程#106)、音声解析手段6が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反すれば動作命令を実行せずにこのフローチャートの初めにリターンする。例えば、音声解析手段6が「消火」に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定したとしても、自動調理処理の内容(例えば「火力維持」)に動作命令:「消火」が反すれば、加熱制御手段2はその動作命令を実行せずに自動調理処理による加熱手段1の動作制御を継続する。
【0029】
尚、加熱制御手段2は、音声受付手段5が音声入力を受け付けていないときは(工程#100において「No」のときは)、操作入力受付手段4が受け付けた調理者の手動操作入力よる動作命令に従った加熱手段1の動作制御と、温度検出手段3の検出結果に基づく自動調理処理による加熱手段1の動作制御とを並行して実行している。
【0030】
以上のように、音声受付手段5が音声を受け付け、音声解析手段6が加熱制御手段2への動作命令を決定したとしても、加熱制御手段2は、その動作命令に従った加熱手段1の動作制御を必ず行う訳ではなく、自動調理処理の内容に反するか否かが判定される。その結果、音声受付手段5が受け付けた音声のうち、自動調理処理の内容に反しないものだけが適当に加熱手段1の動作制御に用いられる。言い換えると、調理者の意図とは異なる形で音声受付手段5が音声を受け付け或いは音声解析手段6が音声解析したとしても、或いは、調理者の意図通りに音声受付手段5が音声を受け付けて音声解析手段6が音声解析したとしても、自動調理処理の内容と整合しないものを適当に排除することができる。
尚、加熱制御手段2は、操作入力受付手段4が受け付けた動作指令に応じた加熱手段1の動作制御を、自動調理処理による加熱手段1の動作制御よりも優先して実行するように構成されているので、調理者の意図(即ち、操作入力受付手段4が受け付けた動作指令)に沿って加熱手段1の動作を制御できる。その結果、調理者が音声によって入力した動作指示が、自動調理処理の内容に反するとして加熱調理器10Aで実行されなかったとしても、調理者は操作入力受付手段4を用いて加熱手段1の動作制御を行うことができる。
【0031】
<第2実施形態>
第2実施形態の加熱調理器10B(10)は、複数の加熱手段1を備えている点で、上記第1実施形態の加熱調理器10Aと異なっている。以下に第2実施形態の加熱調理器10Bについて説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0032】
図3は、第2実施形態の加熱調理器10Bの構成を示す図である。図示するように、加熱調理器10Bは、一方の被加熱物X1(X)を加熱するために用いられる、加熱手段1A(1)及び加熱制御手段2A(2)及び温度検出手段3A(3)及び操作入力受付手段4A(4)の組、並びに、他方の被加熱物X2(X)を加熱するために用いられる、加熱手段1B(1)及び加熱制御手段2B(2)及び温度検出手段3B(3)及び操作入力受付手段4B(4)の組を備える。つまり、加熱制御手段2Aは、加熱手段1Aの動作を制御するためだけに機能し、加熱手段1Bの動作制御には関与しない。同様に、加熱制御手段2Bは、加熱手段1Bの動作を制御するためだけに機能し、加熱手段1Aの動作制御には関与しない。
【0033】
加えて、加熱調理器10Bは、音声受付手段5と音声解析手段6とを備える。音声受付手段5が受け付けて、音声解析手段6が決定した動作命令は、加熱制御手段2A及び加熱制御手段2Bの両方に伝達される。即ち、加熱調理器10Bは、加熱手段1を複数台備えているが、一組の音声受付手段5及び音声解析手段6をそれら複数の加熱手段1の制御のために共用している。
【0034】
次に、一組の音声受付手段5及び音声解析手段6がそれら複数の加熱手段1の制御のために共用されるときの動作例について説明する。
図4は、第2実施形態の加熱調理器10Bの動作例を示す図である。尚、
図4では、加熱手段1がガス燃焼式のバーナーである場合を例示する。尚、第2実施形態の加熱調理器10Bの動作例を示すフローチャートは
図2と同様である。
【0035】
図4に示すように、時刻t1において、加熱制御手段2Aは、操作入力受付手段4Aが調理者から点火指令(加熱手段1Aの加熱開始指令)を受け付けたことに応じて、加熱手段1Aを点火させる。加えて、加熱制御手段2Aは、加熱手段1Aを点火させたあと、上記第1実施形態で説明したような安全性や利便性などを目的とした自動調理処理を開始する。
その後、時刻t2において、加熱制御手段2Bは、操作入力受付手段4Bが調理者から点火指令(加熱手段1Bの加熱開始指令)を受け付けたことに応じて、加熱手段1Bを点火させる。加えて、加熱制御手段2Bは、加熱手段1Bを点火させたあと、安全性や利便性などを目的とした自動調理処理を開始する。
【0036】
時刻t3において、温度検出手段3Aは被加熱物X1の温度が設定温度(例えば、安全性を目的として、過熱防止のために設定されている上限温度など)に到達したことを検出し、その検出結果は加熱制御手段2Aに伝達される。その結果、加熱制御手段2Aは、自動調理処理において、加熱手段1Aの火力を弱める又は消火(加熱停止)させるタイミングであると判定する。つまり、加熱制御手段2Aは、時刻t3以降の自動調理処理の内容として、「加熱手段1Aの火力を弱める又は消火(加熱停止)する」という自動調理処理の内容を決定する。但し、本実施形態では、加熱制御手段2Aは、時刻t3において即座に加熱手段1Aの火力を弱める又は消火(加熱停止)するのではなく、所定期間待機する。
【0037】
その後、時刻t4において、調理者が「消火」という音声を発すると、音声受付手段5はその音声入力を受け付け(
図2の工程#100において「Yes」と判定)、音声解析手段6は「消火」という動作指令を解析して、その「消火」という動作指示に対応する加熱制御手段2への動作命令を決定する(
図2の工程#102)。そして、音声解析手段6から、加熱制御手段2A及び加熱制御手段2Bの両方に、「消火」という動作命令を伝達する。
【0038】
図4に示すように、時刻t4の時点では、加熱制御手段2Aが行う自動調理処理は、加熱手段1Aの火力を弱めること又は消火することを許容する内容である。つまり、時刻t4の時点では、「加熱手段1Aの火力を弱める又は消火する」という動作命令は、加熱制御手段2Aが行っている自動調理処理の内容に反しない(
図2の工程#104において「Yes」)。
これに対して、加熱制御手段2Bが、自動調理処理において加熱手段1Bの火力を弱める又は消火することを許容するのは、
図4中に破線で示すように、時刻t4よりも後の時刻t5において温度検出手段3Bが被加熱物X2の温度が設定温度に到達して以降になる。従って、時刻t4の時点では、「加熱手段1Bの火力を弱める又は消火する」という動作命令は、加熱制御手段2Bが行っている自動調理処理の内容に反し(
図2の工程#104において「No」)、その動作命令を実行することは適当ではない。
【0039】
従って、時刻t4において加熱制御手段2Aは、加熱手段1Aを消火するという動作命令を実行する(
図2の工程#106)。
これに対して、時刻t4において加熱制御手段2Bは、加熱手段1Aを消火するという動作命令を実行しない。
【0040】
以上のように、音声受付手段5が受け付けて音声解析手段6が音声解析して決定された動作命令について、自動調理処理の内容に反するか否かを判定する手順を経ることで、複数の加熱手段1を有する加熱調理器10Bであっても誤動作が発生しないようになる。
【0041】
<第3実施形態>
第3実施形態の加熱調理器10C(10)は、通知手段7を備える点で上記実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の加熱調理器10Cについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0042】
図5は、第3実施形態の加熱調理器10Cの構成を説明する図である。
図5は、第1実施形態で説明した
図1の加熱調理器10Aの改変例として説明するが、第2実施形態で説明した
図3の加熱調理器10Bにこの通知手段7を設ける改変を行ってもよい。
【0043】
図5に示すように、加熱調理器10Cは、通知手段7を備える。この通知手段7は、音声や光学的な手段などを用いて調理者に情報を通知するための手段である。例えば、通知手段7としてのスピーカを用いて音声メッセージを出力することで調理者に具体的な情報を伝達することや、単なる鳴動を出力することで調理者に注意を促すことなどが可能である。他にも、通知手段7としての情報表示器に文字情報を表示することで調理者に具体的な情報を伝達することや、通知手段7としてのランプを点灯・消灯・点滅などさせることで調理者に注意を促すことができる。
【0044】
図6は、第3実施形態の加熱調理器10Cの動作例を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図2に示したフローチャートに対して工程#108を追加したものである。即ち、工程#104において加熱制御手段2は、音声解析手段6が決定した動作命令が現在実行中の自動調理処理の内容に反しているか否かの判定を行い、音声解析手段6が決定した動作命令が自動調理処理の内容に反すれば(
図6の工程#104において「No」)、その動作命令を実行しないことを通知手段7から通知する。例えば、通知手段7としてのスピーカを用いて「消火しません」などの音声メッセージを出力することや、通知手段7としてのランプを点滅させることなどを行う。尚、加熱調理器10Cが複数の加熱手段1を備える場合、複数の加熱手段1に対応して複数の通知手段7を備えてもよいし、一つの通知手段7を共用するように備えてもよい。
このように、調理者は、音声によって入力した動作指示が、自動調理処理の内容に反するとして加熱調理器10Cで実行されなかったことの通知を受けることができる。その結果、調理者は音声入力のやり直しなどの対処を即座に行える。
【0045】
<第4実施形態>
上記実施形態では、加熱調理器10(10A〜10C)がその機器内に音声受付手段5及び音声解析手段6を備えている例を説明したが、音声受付手段5及び音声解析手段6が加熱調理器10とは別の機器に設けられていてもよい。
図7は、加熱調理器10D(10)と機器40とで構成される加熱調理システムの構成を説明する図である。
【0046】
機器40は、少なくとも音声受付手段42と音声解析手段43と通信手段41とを有する機器である。音声受付手段42及び音声解析手段43については、上記実施形態で説明した音声受付手段5及び音声解析手段6の構成と同様である。通信手段41は、他の機器(後述する加熱調理器10Dなど)との間で有線通信又は無線通信を行うことができる機能部である。
図7に示す例では機器40は音声出力手段44を更に有しており、この音声出力手段44は上記第3実施形態で説明した通知手段7の機能を実現する。従って、機器40が音声出力手段44を必須の構成要素とする訳ではない。機器40は、例えば、台所に設置されている給湯温度等の設定用のリモコン機器や、持ち運び可能な携帯型端末機器(携帯電話、情報端末等)などによって実現できる。
【0047】
機器40において、音声受付手段42が調理者からの音声による動作指示を受け付けると、その音声信号が音声受付手段5から音声解析手段6に伝達される。音声解析手段6は、その音声信号を解析して加熱制御手段2への動作命令を決定し、通信手段41を介して加熱調理器10Dへその動作命令を伝達する。
【0048】
加熱調理器10Dは、加熱手段1と加熱制御手段2と温度検出手段3と操作入力受付手段4と通信手段8とを備える。このうち、加熱手段1と加熱制御手段2と温度検出手段3と操作入力受付手段4とについては上記実施形態で説明したのと同様の構成であり及び同様に動作する。また、通信手段8は他の機器(上述した機器40など)の間で有線通信又は無線通信を行うことができる機能部である。
【0049】
加熱調理器10Dにおいて、加熱制御手段2は、機器40の音声解析手段43が決定した上記動作命令の伝達を通信手段8によって受けて、その動作命令が加熱調理器10Dで行われている自動調理処理の内容に反しなければその動作命令を実行するように加熱手段1の動作を制御し、その動作命令が自動調理処理の内容に反すればその動作命令を実行しない。また、加熱制御手段2は、その動作命令を実行しないことを通信手段8を介して機器40に伝達してもよい。その場合、機器40では、その伝達を通信手段41で受けて、加熱調理器10Dが動作命令を実行しない旨の通知を音声出力手段44から出力することができる。
【0050】
以上のように、この加熱調理システムでは、音声受付手段42及び音声解析手段43は加熱調理器10Dとは別の機器40に設けられており、加熱調理器10Dが備えていなくてもよい。加熱調理器10に音声を受け付ける手段が設けられている場合であれば調理者は加熱調理器10に音声が直接届く位置から、好ましくは加熱調理器10の傍で音声入力を行う必要があるが、この加熱調理システムのように加熱調理器10Dとは別の機器40に音声受付手段42等が設けられていれば、調理者は加熱調理器10Dに音声が直接届かない位置からも音声入力を行うことができる。
【0051】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、加熱調理器10や機器40や加熱調理システムなどの構成について具体例を挙げて説明したが、本発明はそれらの具体例に限定されるものではなく、加熱調理器10や機器40や加熱調理システムなどの構成を適宜変更してもよい。
【0052】
<2>
上記実施形態では、調理者が「消火」という動作指令を音声で発する例を説明したが、他の様々な動作指令を発してもよい。例えば、「火を弱める(加熱を弱める)」などの動作指令を調理者が行ってもよい。