(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るダイナミックブレーキ回路の検査方法を有したモータ駆動電力変換装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
サーボモータ2は、速度、位置を検出するエンコーダ3をモータ軸に内蔵し、また、サーボモータ2には無励磁動作形電磁ブレーキ(以下、オフブレーキと略す)4が組み込まれ、モータ運転時はオフブレーキ4の励磁コイルに電圧を与えブレーキを開放し、モータ出力軸を固定保持する場合は励磁コイルの電圧を切りブレーキを掛ける。サーボアンプ8は、プログラマブルロジックコントローラ(以下PLCと略す)6からの位置、速度指令により、サーボモータ2のエンコーダ3からの位置、速度をリアルタイムにフィードバックし、指令どおりに動作するよう運転制御する。サーボアンプ8の動力源は、商用交流電源12から主電源スイッチ13を通して昇圧コンバータ7に入力される。昇圧コンバータ7は、PLC6からの指令が与えられると、三相(または単相)全波整流して交流から直流に変換し、またサーボモータ2の最高回転速度をより高速にするための昇圧回路が内蔵されており、昇圧した直流電圧がサーボアンプ8に動力源として与えられる。
【0019】
上位マイコン装置5は、装置全体の生産管理や、マンマシン系インターフェースを制御し、表示器に生産情報や警報を表示または、ブザー音を発する最上位装置である。PLC6は、上位マイコン装置5からの生産指示により、電力変換装置であるサーボアンプ8へ指令を与え、その結果サーボモータ2が動作し、サーボモータ2の現在位置、速度検出情報をリアルタイムでPLC6にフィードバックして、指令どおりに運転しているかどうかを監視する。
【0020】
また、サーボアンプ8とサーボモータ2間を接続しているU、V、Wの動力ケーブルからDBRモジュール9に接続されている。DBRモジュール9は、サーボアンプ8が運転中、正常なサーボ制御が不可能になった非常停止時、サーボモータ2に組み込まれたオフブレーキ4が励磁コイルの時定数分遅れて動作するため、先にダイナミックブレーキによりサーボモータ2を発電状態にしてダイナミックブレーキ抵抗器33−1、33−2、33−3に接続し、サーボモータ2で発電された電力をジュール熱に変換し、制動トルクを生じさせサーボモータ2を減速させ、回転速度が低速まで減速した後、遅れてオフブレーキ4が働き、サーボモータ2の出力軸を固定保持し停止させる。
DB故障検出ボード10は、DBRモジュール9のダイナミックブレーキ回路が故障していないかどうか検査を行うボードであり、DC制御電源11から直流電源が与えられ、PLC6からの検査手順に従い接点指令が与えられ、その検査結果を出力端子からPLC6へ報告する。
【0021】
なお、
図1の破線枠で囲まれた14、15、16は、次に示す実装配置図の
図2の配置場所を示し、一番外側の破線枠は、ダイナミックブレーキ回路の検査方法を有したモータ駆動電力変換装置1の全体を示す。
【0022】
図2は本発明の実施例を走行台車に使用した実装構造を示す図である。
【0023】
走行台車16は車輪(前輪)21−1と車輪(後輪)21−2で、設置面23であるレール上を走行し、オフブレーキ4が組み込まれエンコーダ3がモータ軸に内蔵されたサーボモータ2が走行台車16上に据え付けられ、サーボモータ2の出力軸にプーリー25−1,車輪側プーリー25−2を通して、後輪21−2にタイミングベルト24で連結されている。台車搭載盤14は、
図1に破線で囲まれた14のサーボアンプ8、DBRモジュール9、DB故障検出ボード10とDC制御電源11が収納され、走行台車16上に搭載されている。運搬するワーク22は、ある地点で走行台車16に積まれ、正常動作ではオフブレーキ4を解除し、別の位置までサーボ制御により加速、一定速走行後、サーボ制御による減速位置決め停止し、オフブレーキで出力軸が固定保持された後、ワーク22が降ろされ一つの作業工程が終了する。
【0024】
また、設置面23の床に据え付けられた固定制御盤15には、上位マイコン装置5、PLC6、昇圧コンバータ7、主電源スイッチ13が収納され、外部から商用交流電源12が固定制御盤15内に動力ケーブルで引き込まれている。そして、台車搭載盤14のサーボアンプ8に供給する昇圧コンバータ7で昇圧した直流電圧動力線はケーブルで固定制御盤15の中継端子台18から、設置面23の上部に水平に張られた案内レール19にハンガークランプ20で固定され、カーテン状に垂らしたカーテンケーブル17を通して、走行台車16の台車搭載盤14の上に垂直に立てられたガイドに沿って、取り込まれる。なお、カーテンケーブル17は走行台車16の移動と共に伸縮させ、電力を確実に取り込むことができる。
【0025】
また、PLC6からサーボアンプ8、DB故障検出ボード10への入出力信号および各種の入力/出力接点信号は、走行する走行台車16と固定制御盤15間で直線上で見通すことができる位置に設置して、PLC6の図には記載してない光通信モジュールを使用する。
【0026】
図3は本発明の実施例のDBRモジュール9、DB故障検出ボード10等をより詳細に説明した図(実施例1)である。商用交流電源12、主電源スイッチ13、昇圧コンバータ7、サーボアンプ8、サーボモータ2については
図1で説明したので省略する。
【0027】
DBRモジュール9はサーボアンプ8とサーボモータ2のモータケーブルU、V、Wより、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1(U相)、30−2(V相)、30−3(W相)を通してダイナミックブレーキ抵抗器33−1、33−2、33−3に接続され、ブレーキ側スイッチの短絡接点30−4によりデルタ結線を構成される。ブレーキ側スイッチのコイル30Cは、PLC6からの入力接点51で指令がI4端子に与えられ、オンで操作電源55を通してコイル30Cが励磁されブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−4が開(オフで閉)となる。なお、PLC6からの入力接点50は指令がI3端子に与えられ、コイル13Cがオンで主電源スイッチ13が閉(オフで開)となる。通常運転中は、コイル13Cがオンで主電源スイッチ13が閉となり、ブレーキ側スイッチのコイル30Cはオンになり、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−3、およびブレーキ側スイッチの短絡接点30−4は開、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3はサーボモータ2から切り離され、サーボアンプ8によりサーボモータ2がサーボ制御により運転される。
【0028】
ここで、PLC6からダイナミックブレーキ動作指令が入るとコイル30Cがオンからオフになると同時に、別途PLC6からの指令でサーボアンプ8の出力は遮断され、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−4は閉となり抵抗器33−1〜33−3はデルタ結線が構成されて、サーボモータ2は発電状態から抵抗器で消費する接続となり電力をジュール熱に変換し、制動トルクを生じサーボモータ2を減速させる。回転速度が低速まで減速した後、PLC6からの指令で遅れてオフブレーキ4が働き、サーボモータ2の出力軸を固定保持し停止される。
【0029】
次に、DB故障検出ボード10より、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の抵抗値を計測する場合について説明する。
【0030】
抵抗値を測定する前の状態は、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−3および短絡接点30−4は閉となり、抵抗器33−1〜33−3はデルタ結線されている。そして抵抗値計測に入ると、デルタ結線の一端を開いて抵抗器33−1〜33−3を3直列接続にするため、ブレーキ側スイッチのコイル30Cをオンに切り換え、短絡接点30−4の開動作と同時に、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−3も開となる。
【0031】
DB故障検出ボード10では、抵抗値を測定するために基準抵抗36、固定抵抗37および固定抵抗38とダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値でブリッジを構成し、固定抵抗37、38接続点にDC制御電源11の一端P24を接続し、別の一端0Vは、基準抵抗36とダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3を3直列して接続される点に、バイアス抵抗短絡スイッチの短絡接点35−1と抵抗値計測用スイッチ34を介して接続される。なお、この点はDB故障検出ボード10のコモン電位0Vと兼用している。ブリッジの残った2点は、差動増幅回路40に入力される。
【0032】
なお、ブリッジの平衡状態について、
図8の抵抗を測定するブリッジの各部の電圧と原理を説明する図に基づき述べる。同図において、ブリッジの出力電圧をVb0とし平衡状態ではVb0=0となり、基準抵抗36をR36、固定抵抗37をR37、固定抵抗38をR38とおいて、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値をR33とし、個々の抵抗値33−1をR331、抵抗値33−2をR332、抵抗値33−3をR333とすると、
(数1) R33=R331+R332+R333
(数2) R36/R37=R33/R38
(数3) R33=R36×R38/R37
となる。
【0033】
予め基準抵抗36、固定抵抗37、38は既知である。また、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値R33は、非常停止毎、ダイナミックブレーキ動作時に瞬時大きな発電制動電流すなわち、ダイナミック電流が流れ、その度、抵抗器には発熱膨張、冷却収縮の1サイクルのストレスが印加される。これらが何回も繰り返され、抵抗値が少しずつ変化することを経年変化と呼ぶ。この経年変化に応じて常にブリッジ出力電圧Vb0=0となるように固定抵抗38を可変させ、そして可変させた抵抗38の抵抗値が計測できたとすれば合成抵抗R33の値は前記数3の式で求められる。しかし、出力電圧Vb0=0を常時調整すること、および、抵抗38の抵抗値を自動で計測することは簡単なことではない。このため、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値の真値を基準抵抗値R36とし、経年変化の小さい高精度の抵抗を選定し、固定抵抗37、38も基準抵抗値に準ずる高精度の抵抗を選定すれば、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値R33が経年変化し、これに対応してブリッジの出力電圧Vb0は、0から徐々に外れ大きくなる。差動増幅回路40の出力が零からの許容値を設定し、この値を越えたときコンパレータで比較し、異常としてPLC6に出力する。
【0034】
差動増幅回路40では、
図8に示す、ブリッジの一方の基準電圧Vrを基準にし、他方のR38とダイナミックブレーキ抵抗器3直列の分圧電圧Vfを差動演算するので、抵抗値の上限を設定する上限値設定コンパレータ42には直接入力し、抵抗値の下限を設定する下限値設定コンパレータ43には反転回路41を介して入力する。上限値コンパレータ42の入出力特性を
図10に、反転回路41の入出力特性を
図9に、反転回路41と下限値設定コンパレータ43を含めた入出力特性を
図11に示す。ここで経年変化により、上限値設定コンパレータ42では上限を越えると出力がHレベルからLレベルとなり、下限値設定コンパレータ43では下限を越えると出力がHレベルからLレベルとなり異常(Lレベル)を出力する。なお、上限、下限ともコンパレータ42、43には出力のチャタリング防止機能を持たせ、レベルの不安定防止を図っている。上限値設定コンパレータ42と下限値設定コンパレータ43の出力は、AND回路45で両者の出力が共にHレベルの時、H出力となるAND論理演算され、差動増幅回路40の出力からAND回路45の出力までの特性を
図12に示す。
図12からわかるように、基準値Vr付近では出力はHレベルで正常、経年変化で抵抗値が一定許容範囲から増加しても減少しても異常を検出し、Lレベルを出力する。
【0035】
また、DB故障検出ボード10には、短絡状態が正常であるかどうかを検出する機能がある。ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値R33の両端をブレーキ側スイッチの短絡接点30−4で短絡し、DB故障検出ボード10とダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3迄の間のケーブルが断線、ブレーキ側スイッチの短絡接点30−4自身の接点の接触不良や、DB故障検出ボード10内の抵抗値計測用スイッチ34の接触不良など、DB故障検出ボード10自身が正常かどうかを検出するためである。しかし、短絡状態は零Ωであるが、一般に抵抗4本で構成するブリッジに零Ω抵抗設定することはブリッジが構成できない。このため基準抵抗を零Ω(R36=0)でなく、前述でダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値を測定したときと同じ基準抵抗値R36をそのまま使用する。そして
図8のR33に相当する抵抗はバイアス抵抗を新たに追加する。このバイアス抵抗は基準抵抗36と同じ抵抗値とし、バイアス抵抗(実際は基準抵抗36と同じ値)+(短絡接点30−4の抵抗値)として測定する。すなわち、
図8で基準抵抗R36が零Ω、測定される側のR33が短絡接点間抵抗で零Ω近傍値であるためブリッジが構成できないので、このほぼ零Ωの両抵抗に基準抵抗R36をそれぞれ追加して、零Ωを計測するのである。そして両抵抗に追加したそれぞれの基準抵抗R36は次の差動増幅回路40で同じ電圧として差動演算されるため、キャンセルされ打ち消される。
図3に示すバイアス抵抗39はそのために設けた抵抗で、短絡状態を測定するとき挿入し、そのときバイアス抵抗短絡スイッチの短絡接点35−1は開とする。なお、以前説明したダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値を測定するときは、バイアス抵抗短絡スイッチの短絡接点35−1は閉とする。なおバイアス抵抗39には基準抵抗36と同一の高精度の抵抗値を使用する。
【0036】
そして短絡状態を検出するとき、差動増幅回路40はそのまま使用し、短絡設定コンパレータ44は、前述のコンパレータ42、43と分けて短絡設定コンパレータ44で短絡状態の許容値の判定値を設定する。短絡設定コンパレータ44の特性は
図13に示している。なお、ブリッジとしては、R36部分は(基準抵抗36)とし、R33部分は(バイアス抵抗39)+(抵抗計測用スイッチ接点34の閉抵抗値)+(測定点までのケーブルの抵抗値)となる。
【0037】
図13のHレベルの短絡時の抵抗値の許容範囲には、ケーブルの抵抗値を含む値、および閉時の接点抵抗値を含めて設定する。このとき入力電圧がVrより小さい部分については、零Ωを測定しているので負性抵抗がないため記載していない。短絡設定コンパレータ44の出力は、バイアス抵抗短絡スイッチの切替接点35−2で、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値を測定しているAND回路45の出力と切り替えてフォトカプラ46で回路絶縁しYC1、YE1端子から出力する。抵抗値計測用スイッチ34のコイルは、抵抗値計測用スイッチのコイル34C、バイアス抵抗短絡スイッチの短絡接点35−1およびバイアス抵抗短絡スイッチの切替接点35−2のコイルは、バイアス抵抗短絡スイッチのコイル35Cとして、DC制御電源11のP24の電源から、PLC6からの接点指令48、49を介してI1端子,I2端子に接続される。コイル34C、35Cの両端にはノイズ吸収用フライホイルダイオード47が接続されている。
【0038】
次に、本発明の他の実施例のDBRモジュール、DB故障検出ボード部分をより詳細に説明した図(実施例2)について、
図4により説明する。
図4と
図3の相違箇所は、
図3ではDBRモジュール9内のブレーキ側スイッチの入力側接点30−1(U相)、30−2(V相)、30−3(W相)とブレーキ側スイッチの短絡接点30−4は、同じひとつのブレーキ側スイッチのコイル30Cで動作する。
図4ではブレーキ側スイッチのコイルが2つに分離独立し、入力側接点に対する部分の一つはスイッチになりブレーキ側スイッチ31に、コイルはブレーキ側スイッチのコイル31Cとなる。短絡接点に対する部分は一つのスイッチになり短絡スイッチ32に、コイルは短絡スイッチのコイル32Cになる。
図4ではこのように接点が、入力側接点と、短絡接点が別々にスイッチとして動作する。この2つのスイッチは、PLC6からの指令ではI5端子に入力接点52、I6端子に入力接点53で与えられ、それぞれのコイル31C、32Cを励磁する。その他については
図3と同じである。このため、
図4では、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値が正常かどうかを検出する機能と、短絡状態が正常であるかどうかを検出する機能の他に、短絡スイッチ32を開、ブレーキ側スイッチ31を閉としてダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3を通してサーボアンプ8、サーボモータ2側も測定ができる。ここで、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3はダイナミック制動時、デルタ接続されており、抵抗値測定時はデルタ結線の一端を短絡スイッチ32で開とする。
【0039】
サーボモータ2はスター結線で抵抗値測定時はダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の背後に接続されている。第三の検査をする場合、
図8の基準抵抗36は、第二の検査の基準抵抗をそのままとして、
図9、
図10、
図11、
図12に示されるような、DB故障検出ボード10の差動増幅回路40、反転回路41、上限値設定コンパレータ42、下限値設定コンパレータ43、AND回路45の特性もそのままで測定する。そして第二の検査と第三の検査を、基準抵抗36を変えないで
図9〜12の特性も同じとして、共用で使用でき、そして、第三の検査において、サーボモータ2、モータケーブルのU相、W相の欠相を検出した内容について、
図14の説明図に示している。
【0040】
コンパレータの設定方法は、上限値設定コンパレータ42、下限値設定コンパレータ43は、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3とサーボモータ2の巻線抵抗のそれぞれの値を把握して第二の検査と第三の検査を、基準抵抗36を変えない条件で、特定の故障を検出できる条件を求める。例えば振動でモータ端子のネジが緩んだ場合の欠相、モータケーブルが断線した場合の欠相である。仮にダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3を0.3Ωとし、サーボモータ2の巻線抵抗器をスター結線からデルタ結線に等価変換した値をダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の値と同じ0.3Ωとした場合について、下記のように算出される。なお、下記(1)〜(5)では、左から右の順に、検査番号、測定値、被測定側の条件を示している。
【0041】
(1)第二の検査(DB抵抗3直列) 0.9Ω 正常時
(2)第三の検査(DB抵抗、ケーブル、モータ) 0.45Ω 正常時
(3)第三の検査(DB抵抗、ケーブル、モータ) 0.72Ω U相欠相時
(4)第三の検査(DB抵抗、ケーブル、モータ) 0.45Ω V相欠相時
(5)第三の検査(DB抵抗、ケーブル、モータ) 0.72Ω W相欠相時
算出条件
1)DB抵抗の定数R331=R332=R333=0.3Ω
2)モータ巻線抵抗Ru=Rv=Rw=0.1Ω・・・スター結線時
(モータ巻線をデルタ結線等価変換時Ruv=Rvw=Rwu=0.3Ω)
【0042】
図14では、上記の算出条件1)、2)で仮に設定した場合、第二の検査に限ると入力電圧を抵抗R33に相当する測定値に換算するとVr→0.9ΩでAND回路出力はHレベルで正常と判断する。しかし、第三の検査でU、W相欠相時は0.72ΩでAND回路出力はHレベルとし、これを故障と判断する。そして欠相していない正常時およびV相欠相時は0.45ΩでAND回路出力はLレベルとすれば、正常時はLレベルになるが、V相欠相も含まれるので判定はできない。しかし、少なくともU相とW相欠相の故障はAND回路出力がHレベルになることで検出できる。V相欠相しているかまたは正常かは、DB故障検出ボード10では不明であるが、サーボアンプ8が運転すればサーボアンプの保護回路が異常と判定できる。実際に運転する前に、少しでも特定の故障が運転せずに抵抗値測定で使用部品にストレスを与えることなく検出できることは、信頼性上大きなメリットになる。運転開始してからではサーボアンプ8がU、W相欠相で回転子の磁石の位置により、大きな突入電流が流れ、過電流トリップで検出し遮断するが、検出器の検出遅れによる間は遮断できないので、過電流トリップレベルをさらに大きく越えてから遮断となる。この場合サーボアンプ8の主回路インバータを構成するスイッチング素子は少なからずストレスを蓄積し、繰り返しの寿命回数が減少するのである。欠相がU、V、Wの3相の内、2相がDB故障検出ボード10で運転スタート前に特定されれば、インバータを構成するスイッチング素子に過大電流を流さずにストレスを与えないで故障が検出できるので、寿命が維持でき、信頼性が高くなる。
【0043】
次に、下記表1に実施例1、3の、第一、第二の検査データパターンと警報表示を示す。第一の検査、第二の検査の結果を、HレベルとLレベルで記載し、そのパターンが1〜4までありその合否判定を○、×で示し警報表示している。パターン1は第一の検査(短絡状態)および第二の検査(ダイナミックブレーキ抵抗器の3直列した合成値)とも正常で“正常です”と表示される。パターン2は、第一の検査(短絡状態)は正常で測定ケーブルは正常で断線していないことが示されている。そして、第二の検査(ダイナミックブレーキ抵抗器の3直列した合成値)が異常で、劣化していることを示されているので“DB抵抗が劣化しています。交換してください“と警報される。パターン3は第一の検査(短絡状態)が異常で、第二の検査(ダイナミックブレーキ抵抗器の3直列した合成値)が正常ということから、短絡接点が接触不良ということが明白であり、”短絡接点が接触不良です。交換してください。”と適切な指示が表示される。パターン4は第一の検査(短絡状態)、第二の検査(ダイナミックブレーキ抵抗器の3直列した合成値)共異常のため、DB抵抗までのケーブルが断線していることを示しているので、“DB抵抗までのケーブルが断線しています。交換してください”と適切な警報が与えられるので作業者はその指示通り修理して異常の場合は指摘された部品を交換してから再度最初の手順から実施し、正常になってから運転スタートすればよいのである。
【0045】
下記表2は実施例2、4の、第一、第二、第三の検査データパターンと警報表示を示す。表2は、表1に対し、第三の検査が追加されている。なお、第一の検査、第二の検査で故障が検出された場合は、まず第一の検査、第二の検査で指摘された故障を修理した後、再度最初から検査手順を行う。表のパターン1−1は第一、第二の検査合格で、第三の検査がLレベルで
図14のa)と判定されたものである。DB回路は正常であるが、正常、V相欠相の故障が含まれるため判定不明で周辺回路の判定はサーボ側での確認となる。警報表示は“DB回路は正常です。周辺回路はサーボ側で確認してください”と表示され、作業者は非常停止で動作するダイナミックブレーキ回路は正常なので、安心して運転スタートできる。そして運転中エラーがなければ正常である。また、異常の場合はV相欠相を確認する。
【0047】
表2のパターン1−2は、第一、第二の検査合格で、第三の検査がHレベルで
図14のb)のHレベルであり、その場合、DB回路は正常であるが、サーボモータ2、またはモータケーブルのU相、W相が欠相または断線していることが示されている。警報表示は“DB回路は正常です。モータまたはモータケーブルのU相、W相が欠相または断線しています。ネジの緩みなど再接続、断線の場合は代品に交換ください”と明確に案内され、作業者はその案内通りに作業すればよい。パターン2,3,4は表1と同じため説明は省略する。
【0048】
次に、
図7aは、
図3の実施例を一部変形したDBRモジュールの部分説明図(実施例3)である。
【0049】
図7aではダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3に接続されるブレーキ側スイッチの入力側接点30−1、30−3がU、V、Wの3線のうちU、Wの2線を開閉した場合である。接点を入れる相が決められているわけではなく、任意の2相を接点で開閉できれば良い。これは抵抗値を測定する際、主電源スイッチが開いている時に閉じることが許容される抵抗値計測用スイッチ13より、昇圧コンバータ7、サーボアンプ8には電位が生じない、または内部のコンデンサ、インダクタンスに蓄えられた電荷や、起磁力が放電されている状態であって、抵抗値を測定するときその回路が周辺に接続される場合、接続箇所が1点までは廻り回路が構成されないため抵抗値の測定が可能となる。回路の動作としては、
図3と同一のため説明は省略する。
【0050】
また、
図7bは
図4の実施例を一部変形したDBRモジュールの部分説明図(実施例4)である。
【0051】
図7bも、
図7aと同様にブレーキ側スイッチ31のU相接点、W相接点の2線を開閉した場合である。接点を入れる相が決められているわけではなく、任意の2相を接点で開閉できれば接続箇所が1点までは廻り回路が構成されないため抵抗値の測定が可能となる。回路の動作としては、
図4と同一のため説明は省略する。
【0052】
実際の運転タイムチャートについて、
図5に、
図3、
図7aの実施例に係るタイミングを示したタイムチャートを示す。
【0053】
図5に示すように、最初に上位マイコン装置5、PLC6の制御電源を投入し、主電源スイッチ13が開いているとき、すなわち、昇圧コンバータ7、サーボアンプ8の動力駆動電源はオフの状態で、サーボモータ2のオフブレーキ4はブレーキ状態が保持されたままで、DB故障検出ボード10にDC制御電源11が与えられ、抵抗値計測用スイッチ34をオンする。主電源スイッチ13は開の時のみ抵抗値計測用スイッチ34が閉じることができるよう回路的にインターロックが掛けられている。この時点のブレーキ側スイッチのコイル30Cはオフで、ブレーキ側スイッチの入力側接点30−1〜30−3(
図7aは入力側接点30−1と30−3)およびブレーキ側スイッチの短絡接点30−4は閉状態で、バイアス抵抗短絡スイッチ35−1は開である。ここでDB故障検出ボード10のDC制御電源11が立ち上がると、第一の検査が開始されダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値R33の両端をブレーキ側スイッチの短絡接点30−4で短絡し、短絡状態が正常であるかどうかを検出する。この第一検査では、DB故障検出ボード10とダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3迄の間のケーブル断線、ブレーキ側スイッチの短絡接点30−4自身の接点の接触不良、DB故障検出ボード10内の抵抗値計測用スイッチ34の接触不良など、DB故障検出ボード10自身が正常かどうかを検出する。第一の検査の結果はDB故障検出ボード10の出力であるフォトカプラ46から、PLC6に出力する。次に、ブレーキ側スイッチのコイル30Cとバイアス抵抗短絡スイッチのコイル35Cがオフからオンし変化し、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3の3直列した合計値R33が、許容範囲かどうかを検査し、第二の検査結果はDB故障検出ボード10の出力であるフォトカプラ46から、PLC6に出力し、一定時間後DB故障検出ボード10のDC制御電源11をオフする。第一の検査および第二の検査でPLC6では予め登録された検査状況パターンと比較し、異常があれば故障箇所を、詳細に表示器に表示し、作業者に表1の警報を発し、修理または、運転制約を追加(一例として最高速度を制限すれば安全な停止制動距離が確保できる)し、警報がすべて消えたとき運転が可能となる。運転するには、主電源スイッチ13オンし、昇圧コンバータ7のラン指令が入力され、PN間直流電圧が上昇し、昇圧後、ブレーキ側スイッッチ30をオンしサーボアンプ8のサーボON指令と同時に、オフブレーキ4を解除してサーボモータ2を運転する。
【0054】
図6は、
図4の実施例に係るタイミングを示したタイムチャートである。
【0055】
図6における、
図5との相違点は、ブレーキ側スイッチ30が、ブレーキ側スイッチ31と短絡スイッチ32になり、第三の検査が追加となったことである。第一、第二の検査までは同じであるが、第三の検査ではブレーキ側スイッチ31をオフにし、他は第二の検査のままで、ダイナミックブレーキ抵抗器33−1〜33−3を通してサーボアンプ8、サーボモータ2側も測定する。第三の検査ではダイナミックブレーキ回路の特定の故障U相、W相の欠相の検出を行う。
【0056】
第一の検査、第二の検査および第三の検査で、PLC6では予め登録された検査状況パターンと比較し、異常があれば故障箇所を、詳細に表示器に表示し、作業者に表2の警報を発し、修理または、運転制約を追加し、警報がすべて消えたとき運転が可能となる。運転するには、主電源スイッチ13オンし、昇圧コンバータ7のラン指令が入力され、PN間直流電圧が上昇し、昇圧後、ブレーキ側スイッッチ31をオンしサーボアンプ8のサーボON指令と同時に、オフブレーキ4を解除してサーボモータ2を運転する。
【0057】
図15は本発明の実施例を3軸構成とした部分ブロック説明図である。各サーボアンプ8からサーボモータ2のモータケーブル61−1、61−2、61−3とモータケーブル61−1、61−2、61−3から各DBRモジュール9に配線されるDBケーブル62−1、62−2、62−3は単線で図示しているが、U、V、Wの3本を意味している。そしてDB故障検出ボード10は各軸毎設置しているが、PLC6およびDB故障検出ボード10に制御電源を供給しているDC制御電源11は1台で、PLC6の接点出力モジュールより、1軸〜3軸DB故障検出ボードセレクトスイッチ63−1、63−2、63−3で、1軸から順次測定していき、データ収集はPLC6の入力モジュールのひとつの端子で入力できるので多軸の場合有利となる。
【0058】
図16は、
図15の実施例のタイミングを示し、3軸分のDB故障検出ボードの軸切換のタイミングを示し1軸〜3軸毎の第一の検査、第二の検査、第三の検査の部分のタイムチャートを示す。1軸〜3軸のDB故障検出ボード10は共通のDC制御電源11から1軸〜3軸DB故障検出ボードセレクトスイッチ63−1、63−2、63−3で1軸、2軸、3軸と切換ており、PLC6のX11のデータ入力は1つの端子で済んでいる。