特許第6073148号(P6073148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073148脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073148
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/08 20060101AFI20170123BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20170123BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B01J38/08ZAB
   B01D53/56 300
   B01D53/50 100
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-21673(P2013-21673)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-151252(P2014-151252A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 典生
(72)【発明者】
【氏名】倉田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 広
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−058067(JP,A)
【文献】 特開2008−073665(JP,A)
【文献】 特開2002−316051(JP,A)
【文献】 特開平06−007643(JP,A)
【文献】 特開昭51−063387(JP,A)
【文献】 特開昭56−007634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73
B01D 53/86−90
B01D 53/94−96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼設備から発生する排ガス中の酸性ガス成分を中和処理するための薬剤を排ガス中に導入する薬剤導入部と、前記排ガス中の飛灰および/または反応生成物を処理する集塵装置と、アンモニアが供給され、前記排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する脱硝触媒装置とを有する排ガス処理装置において、該脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生装置であって、
前記脱硝触媒装置の入口側流路と出口側流路とを閉鎖して排ガス流路を遮断する閉鎖手段と、該閉鎖手段によって遮断された前記脱硝触媒装置の上流および下流の排ガス流路に接続する再生ガス流路と、該再生ガス流路に設けられた硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去装置,ガス給送手段および加熱手段によって循環系を形成する再生ガス処理系が構成され、
前記脱硝触媒の再生時に、前記循環系内において循環する再生ガスが350〜500℃に加熱され、該再生ガス中の、再生時に発生する硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去処理を、前記除去装置によって行うとともに、
再生時に発生するアンモニア成分が、該アンモニア成分を含む前記再生ガスを循環的に前記脱硝触媒に接触させることによって、該再生ガス中のアンモニア成分の一部と酸素との酸化反応により窒素酸化物が生成され、生成された該窒素酸化物が、前記アンモニア成分との脱硝反応により窒素と水分に分解され、除去されることを特徴とする脱硝触媒の再生装置。
【請求項2】
前記除去装置にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物が充填されるとともに、前記脱硝触媒装置の下流かつ前記除去装置の上流に硫黄酸化物濃度検出器または/および塩素化合物濃度検出器を備え、前記脱硝触媒の再生時の硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度によって、前記脱硝触媒の再生処理の完了を判定することを特徴とする請求項1記載の脱硝触媒の再生装置。
【請求項3】
前記薬剤導入部から排ガス中に導入される薬剤としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物を使用するとともに、前記除去装置にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物が充填されることを特徴とする請求項1または2記載の脱硝触媒の再生装置。
【請求項4】
燃焼設備から発生する排ガス中の酸性ガス成分を中和処理するための薬剤を排ガス中に導入し、集塵装置により前記排ガス中の飛灰および/または反応生成物を処理するとともに、アンモニアが供給される脱硝触媒装置により排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する排ガス処理装置において、該脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生方法であって、
前記燃焼設備停止時に、前記排ガス処理系内のガスの一部を350〜500℃に加熱し、再生ガスとして前記脱硝触媒装置に循環的に供給する循環系を形成するとともに、再生時に発生する、該再生ガス中の硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去処理が行われ、同時に該再生ガス中のアンモニア成分について、前記再生ガスを循環的に前記脱硝触媒に接触させることによって、該再生ガス中のアンモニア成分の一部と酸素との酸化反応により窒素酸化物が生成され、生成された該窒素酸化物が、前記アンモニア成分との脱硝反応により窒素と水分に分解され、除去処理が行われることを特徴とする脱硝触媒の再生方法。
【請求項5】
前記脱硝触媒の再生時に、前記脱硝触媒装置の下流における再生ガス中の硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度を測定し、該硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度が所定値以下の状態において、前記脱硝触媒の再生処理が完了したと判定することを特徴とする請求項記載の脱硝触媒の再生方法。
【請求項6】
燃焼設備から排出され、廃熱ボイラ、減温塔を介して導入された排ガスを、中和処理、除塵処理および脱硝処理を行い、清浄化されたガスとして排出する排ガス処理装置であって、前記脱硝処理を行う脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生処理を、請求項1〜3のいずれかに記載の再生装置または請求項4または5記載の再生方法を用いて行うことを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置に関し、詳しくは、焼却設備などの燃焼設備から排出される窒素酸化物(NOx)を含む排ガスを通して脱硝処理する脱硝触媒装置における脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ゴミなどの廃棄物を焼却する焼却設備から排出される排ガス中には、NOx等の有害物質が含まれており、NOxは、排ガス中にアンモニア(NH)を吹き込むことにより、脱硝触媒を有する脱硝反応設備で分解除去される。しかし、排ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)や塩化水素(HCL)等とこのNHが反応して酸性硫安(NHHSO)や塩化アンモニウム(NHCL)等を生成して、脱硝触媒表面を被毒させ、触媒性能を経年的に劣化させる。
【0003】
そこで、劣化した触媒を再生して使用する方法が行われている。例えば、脱硝反応設備から一旦触媒を取り出し、加熱炉で酸性硫安および塩化アンモニウムを揮発させる方法(例えば特許文献1参照)、脱硝反応設備から一旦触媒を取り出し、水で酸性硫安および塩化アンモニウムを洗い流す方法、運転中の他系列の焼却設備より燃焼ガスを脱硝触媒装置に引き込み、脱硝触媒装置内で酸性硫安および塩化アンモニウムを揮発させて、再度他系列の排ガス処理設備に排出する方法、等がある。
【0004】
また、焼却炉を停止することなく触媒の再生を行うことができる触媒の再生方法として、触媒塔の内部を2室以上に分割して、1室ずつ触媒再生を行いながら、残りの室に排ガスを通して処理する方法も提案されている。具体的には、図6に示すように、触媒塔120内に充填され、焼却炉110から触媒塔120内に供給される排ガス中に含まれるNOxや有機ハロゲン化合物を分解するために用いられ、触媒塔120の内部を2室以上に分割し、1室ずつ触媒の再生を行いながら、残りの室に排ガスを通して排ガス中に含まれるNOxや有機ハロゲン化合物を分解することができる(例えば特許文献2参照)。
【0005】
さらに、脱硝触媒の再生を行う再生システムにおいて、より短時間でより最適な再生処理を行うこと、また、再生処理を好適な時間だけ行うことを課題として、図7のような再生処理システムの構成が提案されている(例えば特許文献3参照)。具体的には、燃焼機器202からの排ガスにアンモニア系物質を添加して脱硝触媒204で窒素酸化物の分解を行う排ガス処理において、燃焼機器202の運転停止時にパージガス供給手段238による送風とパージガス加熱手段240による加熱とによって脱硝触媒204の硫黄酸化物による劣化に対する再生処理が行われる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−219078号公報
【特許文献2】特開平10−192657号公報
【特許文献3】特開2012−071262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術の方法は、実動時においていくつかの課題があった。
(i)触媒反応塔の構造が複雑となり、そのための設備コストが必要となるため、少なくない処理コストを要するという問題があった。
(ii)また、触媒設備から劣化した触媒を取り出し、再生現場まで触媒を輸送して、再生設備に触媒を取り付けて再生を行うようにしている場合には、触媒の取り出し、輸送、取り付け時の衝撃などによって触媒が損傷するおそれがあり、さらに、水洗時に被毒物質と共に触媒成分である五酸化バナジウム(V)などの担持物が溶出するという問題があった。
(iii)内部を2室以上に分割された触媒塔を用いる方法では、再生中は、再生対象の触媒塔を脱硝に利用できないことから、触媒塔の再生中も排ガス中のNOxを脱硝処理するためには、触媒塔の容積を大きくする必要があった。
(iv)加熱分解による再生は、触媒表面に生成し、触媒の被毒をもたらす酸性硫安あるいは塩化アンモニウム等から、アンモニアや硫黄酸化物等を発生させることとなり、そのまま排出すると安全上あるいは法規制上でも問題となる可能性があり、再生ガスの清浄化処理が必要となる。
(v)また、従前からの課題であった、脱硝反応設備での排ガスの再加熱に伴う消費エネルギーの増大に対応して、近年、脱硝反応温度を約180〜200℃まで下げ、反応率を90%程度で行う脱硝処理が主流となっている。こうした脱硝触媒の使用温度では、触媒の被毒をもたらす酸性硫安あるいは塩化アンモニウム等の発生が多くなり、実機での再生処理の頻度が高くなっている。従って、再生効率が高く、複数回再生しても触媒機能が低下せず、簡便かつ短時間での再生処理ができる装置や方法の要請が高くなっている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、複雑で設備コストのかかる構成や除害処理等の別途の処理を要することなく、また触媒を脱硝触媒装置から取り外すことなく、現場で効率のよい触媒の加熱再生処理を繰返し行い、長期間所望の脱硝効率を維持することを可能とする脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法およびこれを用いた排ガス処理装置によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、燃焼設備から発生する排ガス中の酸性ガス成分を中和処理するための薬剤を排ガス中に導入する薬剤導入部と、前記排ガス中の飛灰および/または反応生成物を処理する集塵装置と、アンモニアが供給され、前記排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する脱硝触媒装置とからなる排ガス処理装置において、該脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生装置であって、前記脱硝触媒装置の入口側流路と出口側流路とを閉鎖して排ガス流路を遮断する閉鎖手段と、該閉鎖手段によって遮断された前記脱硝触媒装置の上流および下流の排ガス流路に接続する再生ガス流路と、該再生ガス流路に設けられた硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去装置,ガス給送手段および加熱手段によって循環系を形成する再生ガス処理系が構成され、前記循環系内において循環する再生ガスが350〜500℃に加熱されるとともに、該再生ガス中の、再生時に発生する硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去処理を、前記除去装置によって行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、燃焼設備から発生する排ガス中の酸性ガス成分を中和処理するための薬剤を排ガス中に導入し、集塵装置により前記排ガス中の飛灰および/または反応生成物を処理するとともに、アンモニアが供給される脱硝触媒装置により排ガス中の窒素酸化物を脱硝処理する排ガス処理装置において、該脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生方法であって、
前記燃焼設備停止時に、前記排ガス処理系内のガスの一部を350〜500℃に加熱し、再生ガスとして前記脱硝触媒装置に循環的に供給する循環系を形成するとともに、再生時に発生する、該再生ガス中の硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去処理を行うことを特徴とする。
【0012】
このとき、再生時に発生するアンモニア成分が、該アンモニア成分を含む前記再生ガスを循環的に前記脱硝触媒に接触させることによって、該再生ガス中のアンモニア成分の一部と酸素との酸化反応により窒素酸化物が生成され、生成された該窒素酸化物が、前記アンモニア成分との脱硝反応により窒素と水分に分解され、除去されることを特徴とする。排ガス処理装置に配設された脱硝触媒の再生においては、上記のようにいくつかの課題があった。本発明は、再生ガス処理系として、
(a)脱硝処理前後の排ガス処理系内のガスの一部を触媒再生用に利用する
(b)約350〜500℃に加熱された再生ガスを循環的に脱硝触媒に供給する
(c)被毒物質の加熱分解により発生するSOxや塩素化合物の除去処理を行う
ことによって、自己完結的に脱硝触媒の再生を可能としたものである。つまり、再生ガス処理系において、脱硝触媒の加熱によって被毒物質である酸性硫安や塩化アンモニウム等が分解され、アンモニアとSOxや塩素化合物等が発生するとともに、発生したSOxや塩素化合物は除去処理され、こうした成分を含まない再生ガスが循環される。一方、該分解によって発生したアンモニアを含む再生ガスは、循環流として高温条件(約350〜500℃)の脱硝触媒に再度接することによって、脱硝触媒から脱離したアンモニアの一部がNOxに酸化され、そのNOxと再生ガス中のアンモニアが触媒上で反応することによって、無害な窒素と水と変換される。従って、再生ガスの清浄化とともに、脱硝触媒の被毒物質は徐々に除去され、再生処理される。こうした構成によって、複雑で設備コストのかかる構成や除害処理等の別途の処理を要することなく、また触媒を脱硝触媒装置から取り外すことなく、現場で効率のよい触媒の加熱再生処理を繰返し行い、長期間所望の脱硝効率を維持することを可能とする脱硝触媒の再生装置、脱硝触媒の再生方法を提供することが可能となった。
【0013】
つまり、本発明は、前記脱硝触媒の再生処理において、前記再生ガスの加熱処理により前記脱硝触媒から脱離したアンモニア成分が、循環的に前記脱硝触媒に接触することによって、前記再生ガス中の酸素との酸化反応により窒素酸化物を生成するとともに、生成された該窒素酸化物が、前記アンモニア成分との脱硝反応により窒素と水分に分解され、除去されることを特徴とする。
上記の課題検証過程において、こうした機能を見出したもので、脱硝触媒の被毒となる酸性硫安や塩化アンモニウムを効果的に除去することができ、長期間所望の脱硝効率を維持することを可能となった。
【0014】
本発明は、上記脱硝触媒の再生装置であって、前記除去装置にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物が充填されるとともに、前記脱硝触媒装置の下流かつ前記除去装置の上流に硫黄酸化物濃度検出器または/および塩素化合物濃度検出器を備え、前記脱硝触媒の再生時に、該硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度によって、前記脱硝触媒の再生処理の完了を判定することを特徴とする。
また、本発明は、上記脱硝触媒の再生方法であって、前記脱硝触媒の再生時に、前記脱硝触媒装置の下流における再生ガス中の硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度を測定し、該硫黄酸化物濃度または/および塩素化合物濃度が所定値以下の状態において、前記脱硝触媒の再生処理が完了したと判定することを特徴とする。
また、前記薬剤導入部から排ガス中に導入される薬剤としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物を使用するとともに、前記除去装置にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物が充填されることを特徴とする。カルシウム系あるいはナトリウム系やカリウム系薬剤であって、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムなどを用いることによって、排ガス中の酸性成分の中和処理あるいは再生ガス中のSOx等の除去処理を行うことができる。
【0015】
上記の脱硝触媒の再生処理においては、脱硝触媒の加熱によって分解される被毒物質から発生する硫黄酸化物または/および塩素化合物が除去された再生ガスが循環されることを特徴とする。このとき、脱硝触媒が用いられるプロセスにおいては、こうした再生処理は極力短時間で効果的に行われることが要求される。本発明は、被毒物質から発生する硫黄酸化物または/および塩素化合物の濃度変化の検証において、再生処理を行いながら、その完了の判断が可能な指標として使用できることを見出したもので、こうした排ガス処理において常用される手段を用いて、簡便に、適正かつ時間的にも無駄のない再生処理を行うことが可能となった。また、こうした成分の測定は、再生処理と無関係に、排ガス処理プロセスの管理あるいは法的規制において必要とされる事項であり、新たな測定器の設置を行なうことなく、再生処理時に利用することも可能である。
【0016】
本発明は、燃焼設備から排出され、廃熱ボイラ、減温塔を介して導入された排ガスを、中和処理、除塵処理および脱硝処理を行い、清浄化されたガスとして排出する排ガス処理装置であって、前記脱硝処理を行う脱硝触媒装置に充填された脱硝触媒の再生処理を、上記の再生装置または再生方法を用いて行うことを特徴とする。
【0017】
燃焼設備から排出された排ガスの処理装置においては、脱硝触媒は重要な役割を果たすとともに、その再生処理はその脱硝機能を維持確保するために不可欠であるといえる。本発明は、上記(a)〜(c)のような自己完結的に脱硝触媒の再生を可能とするものであり、こうした再生装置または再生方法を用いることによって、設置現場においても効率のよい排ガス処理が可能な装置を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る脱硝触媒の再生装置の第1構成例を示す概略図
図2】本発明に係る脱硝触媒の再生装置の第2構成例を示す概略図
図3】本発明に係る脱硝触媒の再生装置または再生方法を用いた排ガス処理装置を例示する概略図
図4】本発明に係る脱硝触媒の再生処理の試験装置を例示する概略図
図5】本発明に係る脱硝触媒の再生処理の試験結果を例示する説明図
図6】従来技術に係る触媒の再生方法が適用される脱硝装置の構成例を示す概略図
図7】従来技術に係る脱硝触媒の再生処理システムの構成例を示す概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る脱硝触媒の再生装置(以下「本装置」という)は、脱硝触媒装置の入口側流路と出口側流路とを閉鎖して排ガス流路を遮断し、再生ガス流路と、そこに設けられた硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去装置,ガス給送手段および加熱手段によって循環系を形成する再生ガス処理系が構成され、循環系内において循環する再生ガスが350〜500℃に加熱されるとともに、再生ガス中の、再生時に発生する硫黄酸化物または/および塩素化合物の除去処理を、除去装置によって行うことを特徴とする。
【0020】
<本装置の1の実施態様(第1構成例)>
本装置の1つの実施態様の概略を、図1に示す(第1構成例)。燃焼設備(図示せず)から排出され、廃熱ボイラ、減温塔を介して中和処理および除塵処理(図示せず)された排ガスが、排ガス流路Loを介して本装置に導入され、アンモニア注入部1においてアンモニアが供給され、排ガス中の窒素酸化物(NOx)が脱硝処理される脱硝触媒装置2を介して、処理ガスとして煙突等(図示せず)から排出処理される。ここで、本装置の対象となるのは、脱硝処理を必要とする排ガス、具体的には、各種ボイラや焼却炉などの燃焼設備から排出された排ガスであり、NOx以外に、硫黄酸化物(二酸化硫黄や三酸化硫黄等、以下「SOx」ということがある)や塩素化合物(塩素や塩化水素等)の酸性成分が含まれる。
【0021】
排ガス流路Loが接続される本装置の排ガス流路Laには、アンモニア注入部1および脱硝触媒装置2とともに、ダンパ(閉鎖手段に相当)V1〜V4が設けられ、再生ガス流路Lbとの遮断や接続等の再生処理時に操作される。再生ガス流路Lbには、被毒物質である酸性硫安や塩化アンモニウム等が分解されて発生するSOxや塩素化合物等(以下「SOx等」ということがある)の除去装置3,ファン4(ガス給送手段に相当)およびヒータ5(加熱手段に相当)が設けられ、ダンパV1とV4を閉とし、ダンパV2とV3を開とすることによって、排ガス流路Laと循環系を形成する。
【0022】
通常の排ガス処理においては、ダンパV1とV4を開とし、ダンパV2とV3を閉とすることによって、排ガス流路Laに供給された排ガスにアンモニアが添加され、排ガス中のNOxが脱硝処理される。このとき、長期間の脱硝処理や排ガス中に高濃度のNOxやSOxや塩化化合物等が含まれる場合には、アンモニア注入部1,脱硝触媒装置2およびその間の排ガス流路Laには、酸性硫安や塩化アンモニウム等の生成物が残留し、特に脱硝触媒装置2に充填された脱硝触媒に対して被毒作用を及ぼすために、必要に応じて脱硝触媒の再生処理を行う必要がある。
【0023】
脱硝触媒の再生処理を行う場合、ダンパV1とV4を閉とすることによって、本装置への排ガスの新たな導入が停止され、ダンパV2とV3を開とすることによって、排ガス流路Laと排ガス流路Lbによって循環系が形成される。この状態で、ファン4およびヒータ5を作動させることによって、約350〜500℃に加熱された排ガスが、再生ガスとして循環系を循環し、再生処理が行われる。また、加熱処理に伴う温度上昇や酸性硫安等の分解に伴い発生するアンモニアガス等により循環系の内部圧力が上昇する場合には、循環ガスを逃がすための循環ガス吸収タンク(図示せず)を設置することができる。例えば、ヒータ5とダンパV2との間の再生ガス流路Lbに分岐部を設け、緩衝用のバッファタンクを接続する構成を挙げることができる。
【0024】
〔脱硝触媒の再生処理について〕
再生ガスの循環系を有する本装置における脱硝触媒の再生処理は、燃焼設備停止時に、
(a)脱硝処理前後の排ガス処理系内のガスの一部を触媒再生用に利用する
(b)約350〜500℃に加熱された再生ガスを循環的に脱硝触媒に供給する
(c)被毒物質の加熱分解により発生するSOx等の除去処理を行う
ことを特徴とし、自己完結的に脱硝触媒の再生を行うことができる。具体的には、再生ガス流路Lbに設けられたヒータ5で加熱された再生ガスが、ファン4で脱硝触媒装置2に循環的に給送されるとともに、再生ガス中に含まれるSOx等を除去することによって行われる。つまり、触媒表面を被毒している酸性硫安や塩化アンモニウムなどが加熱分解して発生したアンモニアとSOx等が触媒表面から脱離し、再生ガスに同伴されることによって触媒表面を再生し活性化することができる。なお、脱硝触媒の加熱によって発生したアンモニアは、硫安等の分解だけはなく、通常運転時に触媒表面に吸着していたアンモニアも含まれると推察される。
【0025】
本装置は、こうした処理に加え、脱硝触媒装置2から供出された再生ガス中に含まれるSOx等を除去装置3によって除去する構成を有する。つまり、加熱分解して発生したアンモニアを含む再生ガスは、SOx等が含まれない循環ガスとして高温条件(約350〜500℃)の脱硝触媒に再度接することになる。このとき、検証の結果、再生ガス中に含まれるアンモニアは、高温の脱硝触媒に接することによって反応し、無害な窒素と水となるとの知見を得た。つまり、こうした再生ガス処理系における再生ガスの循環によって、脱硝触媒の被毒を解消し再生できるとともに、再生ガス自体を大気に排出可能なレベルまで清浄化できることが検証できた。なお、このときの高温条件の脱硝触媒によるアンモニアの反応は、再生ガス中に残存するNOxとの脱硝反応,アンモニア自体の分解反応あるいはアンモニアの部分酸化により生じたNOxとアンモニアとの脱硝反応等が推察される。
【0026】
〔本装置の構成要素の機能について〕
脱硝触媒装置2には、脱硝触媒が充填され、反応温度約180〜200℃でNOxとアンモニアとの脱硝反応によって、窒素と水に変換される。脱硝触媒としては、V−TiO触媒などのような遷移金属の酸化物系触媒、白金族系酸化触媒、これらを組み合わせた触媒などからなる既存の坦持触媒あるいは混合触媒などを使用することができる。例えば、酸化チタンを坦体として五酸化バナジウム、三酸化タングステン、酸化モリブデン等を含む触媒などである。また、触媒の形状は、特に限定されず、粒状、ペレット状、ハニカム状など、いずれの形状のものも使用できる。圧力損失や、導入される排ガスの流量や流速、触媒反応の効率の良さなどを考慮して、ハニカム形状やペレット形状などを選択することが好ましい。
【0027】
本装置においては、再生ガスが循環する再生ガス処理系に、再生ガス中のSOx等の除去装置3が設けられ、ファン4は、再生ガス処理系に再生ガスを循環させる機能を有する。SOx等の除去処理に用いる薬剤としては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物が充填されることが好ましい。具体的には、カルシウム系あるいはナトリウム系やカリウム系薬剤であって、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムなどが例示され、特に水酸化カルシウムが好ましい。再生ガス中のSOx等は、薬剤(消石灰)を噴霧あるいは薬剤と接触させることにより反応して、除去処理される。薬剤の平均粒径は、5μm〜10μmが好ましく、ペレットや成形体が好ましい。例えばペレット状消石灰の充填層を有する除去装置3が挙げられる。
【0028】
再生ガスの循環系における加熱温度は、触媒部分において、被毒物質である酸性硫安や塩化アンモニウム等を分解し、再生に必要な温度である350℃〜500℃となるように制御することが好ましい。再生ガスの温度が350℃未満であると、脱硝触媒の再生効率が低くなって好ましくなく、500℃を超えると脱硝触媒が熱分解する可能性があり劣化するため好ましくない。また、本装置では、機能を明確にするためにヒータ5を明示したが、バンドヒータやスチーム等によって再生ガス流路Lbの外周全体を加熱保温することも可能である。
【0029】
〔本装置の他の構成例〕
本装置の他の実施態様を、図2に示す(第2構成例)。第1構成例において、脱硝触媒装置2の下流にSOx濃度検出器または/および塩素化合物濃度検出器(以下「濃度検出器6」という)を備え、脱硝触媒の再生時に、該SOx濃度または/および塩素化合物濃度によって、脱硝触媒の再生処理の完了を判定することを特徴とする。具体的には、SOx濃度または/および塩素化合物濃度が所定値以下の状態において、脱硝触媒の再生処理が完了したと判定する。濃度検出器6からの出力を受信した制御部7において、予め設定されたSOxまたは/および塩素化合物の基準値と比較し、基準値以下となったときに、ファン4,ヒータ5および除去装置3に対して停止指令が送信され、脱硝触媒の再生処理が完了する。再生処理を行いながら、被毒物質から発生するSOx等の濃度変化の検証を重ねるにつれ、再生処理完了の判断が可能な指標として使用できることを見出したもので、被毒物質の減少に伴う加熱分解によって発生するSOx等が減少するとの定性的な特性を、実測することによって定量的に把握できるとの検証結果を得た。SOx等の濃度測定は、排ガス処理プロセスの管理あるいは法的規制上、排ガス処理において常用される手段であり、こうした手段を用いることによって、簡便に、適正かつ時間的にも無駄のない再生処理を行うことが可能となった。また、常設の濃度検出器の利用が可能であれば、新たな測定器を設置することなく、再生処理時に指標として利用することも可能である。
【0030】
〔本装置を用いた脱硝触媒の再生方法〕
次に、本装置を用いた脱硝触媒の再生プロセスを詳述する。燃焼設備(図示せず)停止時に、再生ガスを350〜500℃に加熱して脱硝触媒装置3に循環的に供給する再生ガス処理系を形成するとともに、再生時に発生する、該再生ガス中のSOx等の除去処理を行うことを特徴とする。以下、図1の第1構成例に基づいて説明する。
【0031】
(1)燃焼設備の停止
本装置における脱硝触媒の再生は、通常、定期的あるいは一時的な休止時や定期点検時等の燃焼設備の停止時に行う。排ガス流路LaをダンパV1,V4によって遮断するとともに、閉状態であったダンパV2,V3を開状態にすることによって、脱硝触媒の再生に必要な再生ガス処理系の形成の準備が可能となる。
【0032】
(2)再生ガス処理系の形成
再生ガス流路Lbに設けられたファン4を作動させるとともに、除去装置3およびヒータ5を作動させることによって、脱硝触媒装置2から供出された再生ガス(残留していた排ガス)が、除去装置3およびヒータ5を介して、再度脱硝触媒装置2に導入される循環系が形成される。ヒータ5で加熱された再生ガスは、徐々に脱硝触媒の表面を被毒していた酸性硫安や塩化アンモニウムなどを分解し、触媒表面から脱離するSOx等あるいはNHを同伴しながら循環する。再生ガスは、温度350〜500℃程度で循環させることが好ましい。このとき、触媒の熱衝撃性を考慮して昇温速度は、30〜100℃/hが好ましい。
【0033】
(3)再生ガス中のSOx等の除去
SOx等あるいはアンモニアを同伴しながら循環する再生ガスは、除去装置3に導入され、除去装置3に充填あるいは除去装置3において消石灰等の薬剤と反応し、除去される。SOx等が除去された再生ガスは、アンモニアを同伴しながら再生ガス流路Lbから排ガス流路Laを経由して脱硝触媒装置2に導入され、高温の脱硝触媒に接して無害な窒素と水と変換される。
【0034】
<本発明に係る脱硝触媒の再生装置または再生方法を用いた排ガス処理装置>
次に、上記本発明に係る脱硝触媒の再生方法または再生装置を用いた排ガス処理装置10を、焼却炉20を燃焼設備とした場合を例として、図3に示す。焼却炉20から排出された排ガスが、廃熱ボイラ30および減温塔40を介して、排ガス処理装置10に導入され、清浄化された後、煙突50から排出される。このとき、排ガス処理装置10には、排ガス中の酸性成分の中和処理を行う中和処理装置11、排ガス中の粉塵等の除塵処理を行う集塵装置12、排ガスにアンモニアが注入されるアンモニア注入部1、および排ガス中のNOxを除去して排ガスを無害化する脱硝触媒装置2が設けられ、そこに内蔵されている脱硝触媒を再生するために、上記の再生方法または再生装置が用いられる。
【0035】
つまり、焼却炉20から排出された約1000〜1500℃程度の排ガスが、廃熱ボイラ30の動力源として、排ガスの温度が200〜350℃になるように熱回収され、さらに減温塔40において、200℃以下に急速冷却され、温度調整された排ガスが排ガス処理装置10に導入され、中和処理装置11における中和処理、集塵装置12における除塵処理および脱硝触媒装置2における脱硝処理が行われる。減温塔40では、循環水を用いることによって効果的に冷却することができる。このように、脱硝触媒装置の脱硝機能を維持確保することによって、設置現場においても効率のよく、排ガスを処理することができる排ガス処理装置を構成することができる。脱硝触媒装置2における脱硝反応温度は、約180〜200℃の低温条件で設定される。
【0036】
〔本装置の構成要素の機能について〕
本装置においては、排ガス中の酸性成分の中和処理手段として、中和用薬剤を導入する中和処理装置11が排ガス流路Laに設けられる。薬剤としては、カルシウム系あるいはナトリウム系やカリウム系薬剤であって、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムなどが例示され、特に水酸化カルシウムが好ましい。排ガス中のSOx等の酸性ガス成分に薬剤(消石灰)を噴霧することにより中和され、集塵装置12にて捕集される。薬剤の平均粒径は、5μm〜10μmが好ましい。以下、消石灰を用いた場合を例に説明する。
【0037】
中和処理装置11の下流側に設けられた集塵装置12では、排ガス中の粉塵等のみならず、中和反応によって発生する反応生成物である硫酸カルシウムや亜硫酸カルシウムなどが共存する水分によって生成する凝集物をも除塵処理される。これによって、後段の脱硝触媒装置2の負荷を軽減することができる。反応生成物を含む捕集された塵埃は、可能な限り薬剤導入部2に再循環して使用することが好ましい。集塵装置12としては、パルスジェット式、逆洗式などのバグフィルタ(ろ過式フィルタ)、電気集塵機あるいはサイクロン式集塵装置などを用いることができる。
【0038】
<実証試験>
現場での脱硝触媒の再生処理、脱硝性能回復率の確認および再生時に発生するSOガス、NHガスの処理方法の確立を目的として、実証試験を行った。なお、触媒の劣化工程に時間を要するため、本試験では、高濃度のSOにより加速劣化させた触媒を用い、繰り返し再生試験を実施した。また、試験装置によって、実動プラントから入手した劣化触媒が再生可能であることを確認した。
【0039】
(1)装置概要および試験手順
試験装置のフローを図4に示す。試験装置60は、熱風を発生するバーナ61,SOの注入部62,脱硝触媒の劣化を促進するためのSO酸化触媒63,アンモニアガスの注入部64および脱硝触媒65からなる「劣化部」60aと、脱硝触媒65を加温するための循環ファン66,循環ヒータ67および発生するSOガス除去用の消石灰ペレット充填層68からなる「再生部」60bで構成される。また、温度上昇や酸性硫安分解ガスにより、循環系の内部圧力が上昇した場合に循環ガスを逃がすための循環ガス吸収タンク69を設置している。触媒の劣化工程、再生工程を以下に示す。
【0040】
(1−1)劣化工程
劣化条件を表1に示す。A重油バーナ燃焼排ガスにアンモニアガスを注入することにより、窒素酸化物の除去と同時に触媒の劣化要因である酸性硫安を生成させる。触媒を加速劣化させるためSOガス(SO酸化触媒によりSOに転換)を脱硝触媒上流部に注入する。
【0041】
【表1】
【0042】
(1−2)再生工程
劣化させた触媒を循環ヒータにて常温から380℃まで30℃/hで昇温し、酸性硫安を分解する。酸性硫安の分解により生じたSOガスは、再生部に設置している特殊消石灰ペレット充填層で除去する。SOガスと共に発生するアンモニアガスは、再生部を循環する中で、脱硝触媒により一部が酸化され窒素酸化物となり、脱硝触媒内に残存するNHガスあるいは、酸性硫安の分解により新たに生じたアンモニアと反応して、無害な窒素と水に分解除去される。循環系内のSOおよびアンモニアガス濃度が0ppmとなるまで循環系内の温度を保持する。
【0043】
(1−3)劣化状況、再生状況の確認
劣化工程および再生工程終了後、それぞれ脱硝触媒上流部の触媒をサンプリングし、脱硝率を測定して触媒の劣化状況、再生状況の確認を行った。また、本実証試験では、実機から入手した劣化触媒を本実証装置で再生し、再生後の触媒と新品の触媒の脱硝性能から脱硝性能回復率の確認を行った。実プラントで使用済みの触媒の仕様を表2に示す。ここで、新品触媒と劣化触媒に係る反応定数比K/Koは、過剰NOとアンモニアの脱硝反応による通過NOの量から算出される反応率についての新品触媒と劣化触媒との比で表わすことができる。
【0044】
【表2】
【0045】
(2)試験結果
繰り返し再生試験結果を図5に示す。6回劣化、再生を繰り返し行い、K/Koが新品以上まで回復することを確認した。また、再生時間(循環系の昇温開始から再生終了まで)は、約20時間程度であった。再生品の脱硝性能が、新品(K/Ko=1)を上回っているが、触媒表面の被毒による新たな細孔の発生に伴う触媒の細孔容積が増加したためと考えられる。実プラントから入手した触媒の再生を行った結果、採取時のK/Koが0.36であったのに対し、再生後のK/Koが1.06まで回復していることから、本実証試験装置によって、実機のプラントで劣化した触媒についても再生が可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0046】
1 アンモニア注入部
2 脱硝触媒装置
3 除去装置
4 ファン(ガス給送手段)
5 ヒータ(加熱手段)
Lo,La 排ガス流路
Lb 再生ガス流路
V1〜V4 ダンパ(閉鎖手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7