特許第6073173号(P6073173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6073173-粘着剤およびそれを用いた画像表示装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073173
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】粘着剤およびそれを用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20170123BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170123BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20170123BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   G02F1/1333
   G02F1/1335
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-75184(P2013-75184)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198798(P2014-198798A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由紀
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】宝田 翔
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】疋田 貴巳
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−224258(JP,A)
【文献】 特開2012−137726(JP,A)
【文献】 特開2002−249596(JP,A)
【文献】 特開2013−032472(JP,A)
【文献】 特開2006−342258(JP,A)
【文献】 特開2012−087240(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026118(WO,A1)
【文献】 特開2014−025056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面透明板とタッチパネルとの間、前面透明板と画像表示パネルとの間、またはタッチパネルと画像表示パネルとの間に配置して用いられる粘着剤であって、
アクリル系ベースポリマーと、軟化点が70℃〜150℃の水素添加型テルペンフェノール樹脂とを含有し、
前記水素添加型テルペンフェノール樹脂は、テルペンのモル比率が0.1〜0.7であり、
前記アクリル系ベースポリマーは、アルコール性ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび窒素含有モノマーからなる群から選択される1以上のモノマーユニットの含有率が、構成モノマー成分全量に対して、3〜50重量%であり、
粘着剤組成物の全量100重量部に対する、前記アクリル系ベースポリマーの含有量が45〜95重量部であり、かつ、前記アクリル系ベースポリマーと前記水素添加型テルペンフェノール樹脂の含有量の合計が、70重量部以上である、粘着剤。
【請求項2】
粘着剤組成物の全量100重量部に対して光硬化性化合物を2〜50重量部含有する、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
画像表示パネルの表面に、タッチパネルおよび前面透明板の少なくとも一方を備え、
前記前面透明板と前記タッチパネルとの間、前記前面透明板と前記画像表示パネルとの間、および前記タッチパネルと前記画像表示パネルとの間のいずれかに、請求項1または2に記載の粘着剤からなる粘着剤層を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの前面に透明板またはタッチパネルを備える画像表示装置の形成に用いられる粘着剤に関する。さらに、本発明は当該粘着剤を用いた画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。画像表示パネル(液晶パネルや有機ELパネル)の外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、画像表示パネルの視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。また、タッチパネルを備える表示装置では、一般に、画像表示パネルの視認側にタッチパネルが配置されている(以下、前面透明板とタッチパネルとを併せて「前面透明部材」と称する場合がある)。
【0003】
このように、画像表示パネルの視認側に前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材が配置される場合、パネル表面を保護するため、これらの層間に0.5〜1.5mm程度の空隙を設けるエアーギャップ構造(中空構造)を構成することが行われている。しかし、エアーギャップ構造部分の空気の屈折率が約1であるのに対して、画像表示パネルの偏光板や前面透明部材等を構成するプラスチック材料やガラス材料の屈折率は1.5程度であるため、界面での反射や屈折が大きくなる。そのため、エアーギャップ構造を有する画像表示装置では、画像表示パネルから発した映像光の拡散・散乱や、太陽光等の外光反射が生じやすく、画像表示装置の視認性を低下させるとの問題がある。
【0004】
上記のような問題を解消するため、近年、上記エアーギャップ構造部分に、ガラスや樹脂等と屈折率が近い透明な光学樹脂を充填する「層間充填構造」が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。層間充填構造では、上記エアーギャップ内に光学樹脂が充填されることにより、界面の屈折率差が減少するため、反射や散乱に起因する視認性の低下が抑制される。また、エアーギャップ内に光学樹脂が充填されることにより、画像表示装置全体の強度が増すため、万が一、前面透明板等が破損した場合であっても、その形成材料であるガラス等が飛散することを防ぐといった効果も得られる。さらに、層間充填剤を構成する光学樹脂として粘着剤を用いることで、画像表示パネルと前面透明部材とを接着して固着することができる。
【0005】
前面透明部材の画像表示パネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。周縁部に印刷が施されると、印刷部分の境界に、10μm〜数十μm程度の段差が生じるが、層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差部に気泡が生じ易いとの問題が生じ得る。かかる問題に鑑み、特許文献3では、粘着材の弾性率を所定範囲として、貼り合わせ時の粘着材に流動性を持たせることによって、段差追従性(段差吸収性)を付与し、印刷段差部周辺の気泡発生を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−8851号公報
【特許文献2】特開2008−281997号公報
【特許文献3】特開2012−87240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3で提案されているように、粘着剤の流動性を高めることが、印刷段差部周辺の気泡の抑制に有効である。粘着材の流動性を高める方法としては、粘着材を構成するベースポリマーの低分子量化や架橋度低下等が一般的である。しかしながら、ベースポリマーの低分子量化や架橋度低下を行うと、粘着剤層の移着や、端面からのはみ出しが生じ易くなり、作業性の低下や周囲の汚染を招く傾向がある。すなわち、一般に、段差追従性を高めようとすると、粘着剤のハンドリング性が低下する傾向がある。
【0008】
また、層間充填剤を設けた画像表示パネルが、高温高湿環境に長時間曝されると、層間充填剤が白濁するとの問題を生じ得る。上記特許文献3では、層間充填剤(粘着剤)を構成するベースポリマーが、極性基含有モノマー成分を含有する場合に、白濁を解消し得ることが記載されている。しかしながら、極性の高いベースポリマーは流動性が低いため、段差追従性が低く、上述の気泡の問題を生じ易くなる。そのため、層間充填剤として用いられた場合における、段差追従性とハンドリング性とを両立し、かつ高温高湿環境下での白濁を生じ難い光学粘着剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑みて検討の結果、所定のポリマーと粘着付与剤とを含有する粘着剤が、通常の取扱い時のハンドリング性が良好であり、かつ段差追従性に優れ、さらに白濁の発生が抑制されることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、前面透明板とタッチパネルとの間、前面透明板と画像表示パネルとの間、またはタッチパネルと画像表示パネルとの間に配置して用いられる粘着剤に関する。本発明の粘着剤は、アクリル系ベースポリマーと、軟化点が70℃〜150℃の水素添加型テルペンフェノール樹脂とを含有する。水素添加型テルペンフェノール樹脂は、テルペンのモル比率が0.1〜0.7であることが好ましい。
【0011】
粘着剤組成物の全量100重量部に対する、アクリル系ベースポリマーの含有量は、45〜95重量部が好ましい。また、アクリル系ベースポリマーと水素添加型テルペンフェノール樹脂の含有量の合計は、70重量部以上が好ましい。アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する極性モノマーユニットの含有率が、3〜50重量%であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、画像表示装置に関する。本発明の画像表示装置は、画像表示パネルの表面に、タッチパネルおよび前面透明板の少なくとも一方を備え、前面透明板とタッチパネルとの間、前面透明板と画像表示パネルとの間、およびタッチパネルと画像表示パネルとの間のいずれかに、前記粘着剤からなる粘着剤層を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤は、所定の粘着付与剤を含有するため、層間充填剤として用いられた場合に、ハンドリング性に優れ、段差追従性を有するとともに、高温高湿環境下での白濁が生じ難い。そのため、本発明の粘着剤は、前面透明板とタッチパネルとの間、前面透明板と画像表示パネルとの間、またはタッチパネルと画像表示パネルとの間の層間充填剤として、画像表示装置の形成に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】層間充填剤を備える画像表示装置の構成例を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の粘着剤は、画像表示パネルとタッチパネルとの間、タッチパネルと前面透明板との間、画像表示パネルと前面透明板との間等の層間充填剤として用いられる。
【0016】
図1は、本発明の粘着剤の一使用形態にかかる画像表示装置を模式的に表す断面図である。図1に示す画像表示装置100では、液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示パネル10の表面に、タッチパネル30および前面透明板70を備える。画像表示パネル10とタッチパネル30との間の粘着剤層21やタッチパネル30と前面透明板70の粘着剤層22は、いわゆる「層間充填剤」であり、各部材の固着に加えて、界面の屈折率差を低減し、光の反射や散乱に起因する視認性の低下を抑制する機能を有する。また、層間充填剤は、タッチパネル30や画像表示パネル10への外表面からの衝撃や押圧に対するクッション層としての作用も有する。
【0017】
[粘着剤の組成]
本発明の粘着剤は、ベースポリマーおよび粘着付与剤を含有する。
【0018】
ベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを主成分とするものが用いられる。アクリル系ポリマーは、光学透明性および接着性に優れ、かつ適度な柔軟性を有する。アクリル系ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするものが用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラキル等が挙げられる。
【0020】
粘着剤の流動性を高める等の目的で、アクリル系ベースポリマーは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットとして、アルキル基が分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。前記例示のモノマーの中でも、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。なお、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を併用することもできる。また、これらの分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルと併用して用いられてもよい。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分全量に対する、アルキル基が分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましい。
【0022】
ベースポリマーを構成するアクリル系ポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ベースポリマーが高極性モノマーユニットを含有することにより、層間充填剤として用いられた場合の、高温高湿下での粘着剤の白濁が抑制される。高極性モノマーユニットとしては、ヒドロキシ基含有モノマーや窒素含有モノマーが好ましい。
【0023】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のアルコール性ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく用いられる。
【0024】
窒素含有モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0025】
ベースポリマー中の高極性モノマー成分の割合は特に制限されないが、構成モノマー成分全量に対して、3〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。高極性モノマーの含有量が3重量%以上であれば、高温高湿環境での粘着剤の白濁が抑制される傾向がある。また、極性モノマーの含有量が50重量%以下であれば、粘着剤が適度の柔軟性を有し、段差追従性を有し得る。
【0026】
ベースポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと上記高極性モノマーとの共重合体である場合、構成モノマーの並びはランダムであっても、ブロックであってもかまわない。また、ベースポリマーは、複数種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、複数種の高極性モノマーの共重合体であってもよい。
【0027】
上記のアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合(活性エネルギー線重合法)等が挙げられる。透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、または活性エネルギー線重合法が好ましい。
【0028】
上記のアクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の使用量は、特に制限はされないが、例えば、アクリル系ベースポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0029】
ベースポリマーの分子量は、適宜に調整されるが、例えば、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5万〜200万程度、好ましくは、7万〜180万程度である。
【0030】
本発明の粘着剤は、上記ベースポリマーが、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。
【0031】
架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常、0〜10重量部の範囲であり、好ましくは0〜5重量部である。架橋剤の含有量が多すぎると、粘着剤の柔軟性が低下し、被着体への密着性が低下する場合がある。粘着剤組成物として架橋剤が用いられる場合、架橋構造を形成するために加熱工程を経るのが好ましい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0032】
粘着剤中には、接着力の調整等を目的として、各種のシランカップリング剤を添加することもできる。粘着剤にシランカップリング剤が添加される場合、その添加量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部程度であり、0.03〜2.0重量部程度が好ましい。
【0033】
本発明の粘着剤は、上記のアクリル系ベースポリマー以外に、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーを含有してもよい。層間充填剤として求められる透明性、段差追従性等を付与する観点から、粘着剤組成物の全量100重量部に対する上記アクリル系ベースポリマーの含有量は45重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、55重量%以上がさらに好ましい。
【0034】
本発明の粘着剤は、上記アクリル系ベースポリマーに加えて、粘着付与剤を含有する。粘着付与剤としては、水素添加型テルペンフェノール樹脂が用いられる。水素添加型テルペンフェノール樹脂の軟化点は、70〜150℃が好ましく、70℃〜140℃がより好ましい。軟化点は、JIS K2207「環球式軟化点試験方法」により測定することができる。
【0035】
粘着付与剤としての水素添加型テルペンフェノール樹脂の軟化点が上記範囲であれば、粘着剤の弾性率に所期の温度依存性が付与され得る。すなわち、常温では弾性率が高く(流動性が低く)、粘着剤層の移着や端面からのはみ出しを抑止しつつ、層間充填剤としての被着体との貼り合わせの際の加熱環境では、粘着剤の弾性率が低く(流動性が高く)段差追従性が付与され得る。
【0036】
水素添加型テルペンフェノール樹脂は、テルペンのモル比率が0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましい。テルペンのモル比率が前記範囲の水素添加型テルペンフェノール樹脂は、上記の極性基含有アクリルベースポリマーとの相溶性に優れる。そのため、所定の軟化点を有し、かつテルペン含有率が所定範囲の水素添加型テルペンフェノール樹脂を、粘着付与剤として用いることにより、高温高湿環境における白濁が抑制され、かつ段差追従性を有する粘着剤が得られる。上記水素添加型テルペンフェノール樹脂は、フェノール部のベンゼン環も水素添加されたものが好ましい。ベンゼン環が水素添加されることにより、より無色透明に近付くとともに、耐熱性が向上する傾向がある。水素添加型テルペンフェノール樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターNH」等を用いることができる。
【0037】
前記範囲の軟化点を有し、かつ極性基を含有するアクリル系ベースポリマーとの相溶性を持たせる観点から、水素添加型テルペンフェノール樹脂の重量平均分子量は200〜5000程度が好ましく、500〜3000程度がより好ましい。
【0038】
粘着剤組成物の全量100重量部に対する上記水素添加型テルペンフェノール樹脂の含有量は、5〜55重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましく、15〜45重量部がさらに好ましい。また、粘着剤組成物の全量100重量部に対する上記アクリル系ベースポリマーと水素添加型テルペンフェノール樹脂の含有量の合計は、70重量部以上が好ましく、80重量部以上がより好ましく、85重量部以上がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーと水素添加型テルペンフェノール樹脂の含有量の合計が過度に小さいと、粘着力や透明性の低下等を招く場合がある。
【0039】
粘着剤層中には、必要に応じて上記の水素添加型テルペンフェノール樹脂以外の粘着付与剤を添加してもよい。例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。透明性を確保する観点から、これらの粘着付与剤も水素添加型のものが好ましく用いられる。また、スチレン系の粘着付与剤として、ベンゼン環の一部または全部が水添されたものを用いることもできる。
【0040】
粘着剤中に、水素添加型テルペンフェノール樹脂以外の粘着付与剤を含有する場合、その軟化点は、70〜150℃が好ましく、70℃〜140℃がより好ましい。粘着剤の白濁を抑止する観点から、水素添加型テルペンフェノール樹脂以外の粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物の全固形分100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明の粘着剤は、硬化のタイミングの制御や、確実性等の観点から、光硬化性であることが好ましい。光硬化の方法としては、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーと光ラジカル発生剤を含有する系に、紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。特に、光感度の高さや、選択できる材料が豊富であることから、エチレン性不飽和化合物と光ラジカル発生剤を用いたシステムが好ましい。光硬化性のエチレン性不飽和化合物は、単官能化合物であってもよく、多官能化合物であってもよい。
【0042】
光硬化性のモノマーまたはオリゴマーは、2種以上が併用されてもよい。光硬化性粘着剤を構成するためには、上記光硬化性化合物を、粘着剤組成物中にモノマー又はオリゴマーとして存在させる必要がある。そのため、ベースポリマーを重合後、系中に光硬化性化合物が添加されることが好ましい。
【0043】
本発明の粘着剤が光硬化性粘着剤である場合、光硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物の全固形分100重量部に対して、2〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。光硬化性化合物の含有量が過度に大きいと、硬化前の粘着剤の流動性が高くなり、ハンドリング性の低下や汚染を招く場合がある。
【0044】
光硬化性粘着剤は、粘着剤組成物中に光ラジカル発生剤を含有することが好ましい。光ラジカル発生剤としては、1個または複数のラジカル発生点を分子中に有する化合物が用いられ、例えば、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、単官能型光ラジカル発生剤と多官能型光ラジカル発生剤とを適宜併用してもよい。光ラジカル発生剤の含有量は、粘着剤組成物の全固形分100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜8重量部がより好ましい。
【0045】
[粘着剤層の形成]
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。これらの中でも、ダイコーターを使用することが好ましく、特にファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターを使用することがより好ましい。
【0046】
塗布後の粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜15分、特に好ましくは10秒〜10分である。
【0047】
[粘着剤層の物性]
粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率G’25℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましく、3.0×10Pa〜7.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。25℃(常温)における貯蔵弾性率が過度に小さいと、粘着剤層をカットする際や、貼り合せの際の加圧によって、端面から粘着剤がはみ出して、汚染等の不具合を招く場合がある。一方、25℃における貯蔵弾性率が過度に大きいと、カット時またはカット後に、粘着剤の端面(カット面)において、割れや欠けが発生し易くなる傾向がある。
【0048】
粘着剤層は、80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。粘着剤層のG’80℃は、5.0×10Pa以下がより好ましく、3.0×10Pa以下がさらに好ましく、1.0×10Pa以下が特に好ましい。G’ 80℃を前記範囲とすることで、加熱環境における粘着剤層の流動性が適宜の範囲となる。そのため、被着体(例えば、図1の前面透明板70)が、印刷部70a等の段差や隆起等を有している場合でも、粘着剤層の形状が段差形状に追従し、気泡の混入が抑制される。また、常温で貼り合わせが行われる場合でも、粘着剤層のG’80℃が1.0×10Pa以下であれば、貼り合わせ後の加熱によって、貼り合わせ時に混入した段差付近の気泡を効果的に除去できる。
【0049】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、ベースポリマーの構造や分子量、添加剤の種類や含有量等を調整することにより、上記範囲に調整し得る。特に、本発明では、所定の軟化点を有する水素添加型テルペンフェノール樹脂からなる粘着付与剤が用いられることで、粘着剤層の弾性率に上記の温度依存性を付与できる。すなわち、25℃(常温)では、粘着付与剤の軟化点以下であるために、粘着剤層の弾性率が高く、加熱時には粘着付与剤が軟化するために、高温での弾性率が小さくなる。
【0050】
また、本発明では、粘着剤層がタッチパネルや前面透明板等の被着体と貼り合わせられる際の80℃貯蔵弾性率が、画像表示装置形成後の最終製品における粘着剤層の80℃貯蔵弾性率よりも小さいことが好ましい。例えば、光硬化性あるいは熱硬化性の粘着剤を用いる場合、硬化前に貼り合わせを行えば、粘着剤層は適度の接着性および流動性を有する。一方、貼り合せ時やオートクレーブ等で加熱処理を行った後に、活性光線照射や加熱により粘着剤の硬化を行うことで、粘着剤層の貯蔵弾性率を大きくして、粘着剤層の剥がれ等の不具合を抑制できる。
【0051】
特に、貼り合せ時の接着性および流動性と、画像表示装置形成後における接着の信頼性とを両立する観点から、粘着剤層は、硬化後の80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましく、3.0×10Pa〜7.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。また、貼り合せ時の接着性および流動性と、画像表示装置形成後の接着信頼性とを両立する観点から、粘着剤層の硬化後のG’80℃は、硬化前のG’80℃の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。
【0052】
[粘着剤の用途]
前述のように、本発明の粘着剤は、画像表示パネルとタッチパネルとの間、タッチパネルと前面透明板との間、画像表示パネルと前面透明板との間の層間充填剤として好適に用いられる。粘着剤層は、実用に供するまでの間、粘着剤層の露出面を保護する目的で、必要に応じて、保護シートが剥離可能に貼着されることが好ましい。保護シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等が挙げられる。表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0053】
保護シート付き粘着剤層は、必要に応じて所望サイズにカットされて実用に供される。一般には、長尺状に形成された保護シート付き粘着剤層が、画像表示装置のサイズ(画面サイズ)と合致する製品サイズにカットされる。カット方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃および皿刃等のカッターや、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。
【0054】
画像表示装置の形成において、粘着剤層の貼り合せ手順や、貼り合わせ方法等は特に限定されない。図1に示す前面透明板70における印刷部70aのような非平坦部を有する部材との貼り合わせに際しては、印刷部70a等の非平坦部付近の気泡を除去するために、脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。加熱により脱泡が行われる場合、加熱温度は、一般的に30℃〜150℃程度、好ましくは40°〜130℃、より好ましくは50℃〜120℃、さらに好ましくは60℃〜100℃の範囲である。また、加圧が行われる場合、圧力は一般に0.05MPa〜2MPa程度、好ましくは0.1MPa〜1.5MPa,より好ましくは0.2MPa〜1MPaの範囲内である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[合成例]
<合成例1>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を75重量部、N−ビニルピロリドン(NVP)を25重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部、および酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、70℃にフラスコを加熱し、5時間反応させて重量平均分子量(Mw)80万のアクリル系ポリマーを得た(以下、このベースポリマーを「ポリマー1」と称する)。
【0057】
<合成例2>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、2EHAを65重量部、メタクリル酸メチル(MMA)を10重量部、NVPを15重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を10重量部、重合開始剤としてAIBNを0.2重量部、および酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、70℃にフラスコを加熱し、5時間反応させて重量平均分子量(Mw)80万のアクリル系ポリマーを得た(以下、このベースポリマーを「ポリマー2」と称する)。
【0058】
[実施例1,2、および比較例1〜5]
上記ポリマー1,2をベースポリマーとして用い、表1に示す化合物を混合溶解して、粘着剤組成物を調した(表1中の粘着剤組成の数字は、いずれも重量部)。調した粘着剤組成物溶液を、PETセパレータ上に、乾燥後厚みが100μmとなるように塗布・乾燥して、粘着剤層を得た。
なお、表1において、粘着付与剤1(YSポリスターNH)は、ヤスハラケミカル製の水素添加型テルペンフェノール樹脂であり、軟化点は130℃、テルペン比率は0.5モルである。粘着付与剤2(YSポリスターUH)は、ヤスハラケミカル製の水素添加型テルペンフェノール樹脂であり、軟化点は115℃、テルペン比率は0.8モルである。粘着付与剤3(YSレジン SX100)は、ヤスハラケミカル製のスチレンオリゴマーであり、軟化点は100℃である。粘着付与剤4(パインクリスタル KE−311)は、荒川化学工業製の水素化ロジンエステルであり、軟化点は95℃である。光硬化性化合物(NKエステル APG‐400)は、新中村化学工業製のポリエチレングリコールジアクリレート(二官能アクリレート)である。重合開始剤(イルガキュア184)は、チバスペシャリティケミカル製のアルキルフェノン系の光重合開始剤である。
【0059】
[評価]
<評価用疑似画像表示装置の作製>
平坦なガラス板(0.7mm×50mm×100mm)に、各実施例および比較例で得られた粘着剤層を貼り合わせた後、PETセパレータを剥離した。セパレータ剥離後の粘着剤の露出面上に、黒色インク(厚み20μm)が周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm×50mm×100mm、インク印刷幅:端部から10mm)を、印刷面と粘着剤層が接するよう載置した後、真空熱圧着装置で熱圧着して貼り合せを行った(温度80℃、圧力0.3MPa、圧力保持時間5秒)。その後、オートクレーブ処理を行った(50℃、0.5MPa、30分)。実施例2のみ、オートクレーブ処理後に、ガラス板側からメタルハライドランプ(300mW/cm)で紫外線を照射し、光硬化性粘着剤の硬化を行った(積算光量:3000mJ/cm)。このようにして、評価用疑似画像表示装置が得られた。
【0060】
<気泡の評価>
評価用疑似画像表示装置の黒色インク印刷部の内側近傍を、倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、粘着剤層中の気泡の有無を確認した(初期評価)。また、85℃のオーブンに48時間投入後、同様の方法で気泡の有無を確認した。
【0061】
<白濁>
上記の試料(評価用疑似画像表示装置)における、粘着剤層の白濁の有無を目視で確認した(初期評価)。60℃95%RHの恒温恒湿槽内に、試料を240時間投入した。その後、試料後取り出し、25℃50%の環境下で24時間保管後に、粘着剤層の白濁の有無を目視で確認した。
【0062】
上記各実施例および比較例の粘着剤層の組成、および各評価結果の一覧を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
粘着付与剤1を含有する粘着剤が用いられた実施例1,2は、いずれも気泡がなく、かつ高温高湿環境に暴露後も白濁が生じていなかった。粘着付与剤を含有しない粘着剤が用いられた比較例1,2では、粘着剤の白濁は生じなかったが、印刷部(段差)付近で気泡が発生していた。
【0065】
一方、比較例3〜5では、軟化点が所定範囲内の粘着付与剤を含有する粘着剤が用いられたため、気泡は発生していなかった。しかしながら、テルペンのモル比率が0.8である粘着付与剤2が用いられた比較例3では、高温高湿環境に暴露する前から粘着剤の白濁が生じていた。これは、粘着剤を構成するアクリル系ベースポリマーと、テルペン比率の高い水素添加型テルペンフェノールとの相溶性が低いことに起因すると推定される。また、比較例4,5では、初期では白濁が生じていなかったものの、高温高湿環境に暴露後の粘着剤層に白濁が見られた。
【0066】
以上の結果から、所定の粘着性付与剤を含有する粘着剤のみが、層間充填剤として用いた場合における、段差追従性と、高温高湿環境暴露時の白濁抑止の両方を満足し得ることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
10 :画像表示パネル
21,22:粘着剤層(層間充填剤)
30 :タッチパネル
70 :前面透明板
100 :画像表示装置
図1