(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073175
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】水抜きパイプの設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20170123BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
E02D17/20 106
E02D3/10 101
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-85177(P2013-85177)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-206023(P2014-206023A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】中澤 公博
(72)【発明者】
【氏名】丸山 栄
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌敏
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−000535(JP,A)
【文献】
特開平11−303070(JP,A)
【文献】
特開2008−255694(JP,A)
【文献】
特開2006−226051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00〜 17/20
E02D 1/00〜 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に水抜きパイプを圧入し、地盤を構成する砂層に水抜きパイプの水抜き孔を配設する水抜きパイプの設置方法であって、
地盤にパイプをパイロット圧入してモータトルクが急変した地盤深さLと地盤深さL以深の砂層の層厚Tを特定し、本工事で適用するパイプに対し、地盤深さLに相当する長さ区間には水抜き孔を設けず、地盤深さL以深の砂層の層厚Tに相当する区間に水抜き孔を開設して水抜きパイプを製作し、
モータにて水抜きパイプを地盤内に回転圧入している過程で、モータトルクが急変した際に水抜きパイプが砂層に到達したと特定して、該砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを地盤内に設置する水抜きパイプの設置方法。
【請求項2】
モータにて水抜きパイプを地盤内に回転圧入している過程で、モータトルクが急変しない場合は水抜きパイプが盛土もしくは粘性土内を通過していると特定し、モータトルクが急変した際に水抜きパイプが砂層に到達したと特定して、該砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを地盤内に設置する請求項1に記載の水抜きパイプの設置方法。
【請求項3】
水抜きパイプを設置する対象地盤が斜面を有する斜面地盤であり、
前記斜面地盤内にある砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを設置し、斜面地盤の砂層から水抜きを実施して斜面安定を図る請求項1または2に記載の水抜きパイプの設置方法。
【請求項4】
水抜きパイプを設置する対象地盤が地下水位が高く、砂層を有して液状化の危険性のある軟弱地盤であり、
前記軟弱地盤内にある砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを設置し、軟弱地盤の砂層から水抜きを実施して地盤の耐液状化性能の向上を図る請求項1または2に記載の水抜きパイプの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、斜面地盤の安定を図ることや、液状化の危険性のある地盤の耐震性能と耐液状化性能を向上させるべく、地盤を構成する砂層から水抜きをおこなう際に適用される水抜きパイプの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切土や盛土の斜面を安定させる工法として、あるいは、地下水位の高い砂層における耐震性能と耐液状化性能を向上させる工法として、排水工法が一般に適用されている(液状化対策では、地下水位低下工法と称されることが多い)。たとえば特許文献1には、盛土斜面の補強対策として複数の水抜きパイル(水抜きパイプ)を打設する技術の開示がある。
【0003】
たとえば従来の斜面安定工法に排水工法が適用されるに当たっては、現地の土層モデルに基づいて水溜りとなっている砂層をある程度特定し、斜面の地表から地盤内の砂層までの長さを特定し、これに一定の長さを付加して水抜きパイプの長さを決定し、決定された定尺長の水抜きパイプを斜面に打ち込んで、もしくは圧入して斜面地盤内に設置している。
【0004】
定尺長の水抜きパイプには、これが地盤内に設置された際に砂層内に位置すると想定される箇所に均一な間隔で水抜き孔が開設される。
【0005】
しかしながら、実際には、同じ対象斜面であっても、水抜きパイプが設置される部位によって想定される砂層までの長さが異なっていたり、あるいは、実際の砂層の深度や層形状が想定していたものと相違することなどから、複数の定尺長の水抜きパイプを使用しても、地盤内の砂層に水抜き孔が正しく位置決めされる水抜きパイプの割合は、施工場所等によって相違するものの、2〜3割程度の場合もある。
【0006】
このように、当初想定していた地盤内の砂層の位置と水抜きパイプの設置位置が相違することがあり得る。このような場合には斜面地盤内から十分に水抜きが実行されないことから、施工された排水設備にて斜面の地滑り等に対する斜面安定が十分に保証されているとは言い難い。
【0007】
また、このような定尺長の水抜きパイプを液状化の懸念のある地下水位の高い地盤に適用した場合も同様であり、十分な地下水位低下を実現できない可能性があることから、地震時の過剰間隙水圧の消散が不十分となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−26861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、斜面安定工法や液状化対策工法の一環として排水工法を適用するに当たり、水抜きパイプに開設された水抜き孔を砂層に精緻に位置決めしながら水抜きパイプを地盤内に設置することのできる、水抜きパイプの設置方法を提供することを目的としている。
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による水抜きパイプの設置方法は、地盤に水抜きパイプを圧入し、地盤を構成する砂層に水抜きパイプの水抜き孔を配設する水抜きパイプの設置方法であって、モータにて水抜きパイプを地盤内に回転圧入している過程で、モータトルクが急変した際に水抜きパイプが砂層に到達したと特定して、該砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを地盤内に設置するものである。
【0011】
本発明による水抜きパイプの設置方法は、モータを使用して水抜きパイプを地盤内に圧入した際に、水抜きパイプが粘性土から砂層に入った段階でモータトルクが急変する(モータトルクが相対的に低い値から高い値へ変化する)という本発明者等の知見に基づき、このモータトルクが急変したことをもって水抜きパイプが砂層に到達したことを特定する方法である。この方法により、水抜きパイプのたとえば先端に開設されている複数の水抜き孔を砂層内に精緻に位置決めすることができる。
【0012】
本発明者等による上記知見によれば、礫を含む砂層は勿論のこと、礫を含まない砂層であっても粘性土から砂層にパイルが進入した段階でモータトルクが急激に上昇する傾向があることが分かっている。
【0013】
より具体的には、不透水層である粘性土ではモータトルクの推移は滑らかである。たとえば地表から地中に向かって、粘性土は圧密等によって深部へ行くにつれて硬質になり、N値も大きくなる傾向にある。このような粘性土内ではモータトルクの推移は滑らかであり、変化の程度は一般に小さい。これに対し、砂層では砂同士が噛合い、パイプの回転圧入の際には粘性土に比して大きなモータトルクを要することが一因として挙げられる。砂層が礫を含む場合は、パイプが礫に噛合い、より一層大きなモータトルクを要することになる。
【0014】
ここで、本明細書における「砂層」とは、礫混じりの砂層、礫を含まない砂層の双方を含んでおり、中砂、細砂、シルト質細砂、粘土混じり細砂なども砂層に包含される。また、この「礫」には、転石、玉石も含まれる。また、「粘性土」には、ローム層、シルト層、凝灰質層などが含まれる。
【0015】
たとえば、粘性土、砂層、粘性土、砂層といった互層構造地盤において、一つの砂層を水抜きのターゲット層とする場合であっても、全ての砂層を水抜きのターゲット層とする場合であっても、このモータトルクの急変をもって砂層を特定することにより、水抜きパイプに開設された水抜き孔をターゲットとなる1つもしくは複数の砂層に精緻に位置決めすることができる。
【0016】
適用される水抜きパイプは、塩ビ管や鋼管など、所望の剛性や耐久性に応じて適宜素材のパイプが適用される。
【0017】
たとえば鋼管を用いる場合には、筒状の鋼管を使用するほかにも、筒状の鋼管の周囲に一枚以上の螺旋羽根を備えたものを使用することができる。このような鋼管は回転圧入(貫入)によって地盤内に強固に設置されるとともに、回転圧入の際の螺旋羽根の回転によって螺旋羽根に推進力として作用した受動抵抗力がそのまま引抜き抵抗力となり、大きな引抜き支持力を発揮することにもなる。
【0018】
また、本発明による設置方法では、全旋回機や油圧モータ等を利用して水抜きパイプを回転圧入にて地盤内に設置することから、低騒音かつ低振動の施工を実現できる。
【0019】
また、本発明による水抜きパイプの設置方法の好ましい実施の形態は、地盤にパイプをパイロット圧入してモータトルクが急変した地盤深さLと地盤深さL以深の砂層の層厚Tを特定し、本工事で適用するパイプに対し、地盤深さLに相当する長さ区間には水抜き孔を設けず、地盤深さL以深の砂層の層厚Tに相当する長さ区間に水抜き孔を開設して水抜きパイプを製作し、これを地盤内に設置するものである。
【0020】
水抜きパイプにはじめから多数の水抜き孔を開設しておくことで、モータトルクにて砂層を検知する方法に誤差があっても、砂層に水抜き孔を位置決めすることは可能になる。しかしながら、パイプに水抜き孔を必要以上に設けておくことは、加工手間がかかることは勿論のこと、パイプの剛性を低下させることから好ましくなく、パイプが塩ビ管からなる場合は剛性低下が顕著となる。
【0021】
そこで、本実施の形態の設置方法では、地盤にパイプをパイロット圧入してモータトルクが急変した地盤深さLと地盤深さL以深の砂層の層厚Tを特定し、この結果に基づいて水抜きパイプの所定部位に所望数で所望寸法の水抜き孔を開設するものである。より具体的には、パイロット圧入の結果に基づいて水抜きパイプの長さと、水抜き孔の開設位置が決定される。たとえば、5mの深さから砂層が現れ、砂層の層厚が2mであり、次いで層厚3mの粘性土が現れている場合に、この5m〜7m範囲に水抜き孔が開設された全長8〜10m程度の水抜きパイプをパイロット圧入結果に基づいて作製し、これを実際の施工にて適用することができる。
【0022】
なお、施工対象地盤が広範囲に及ぶ場合には、対象地盤を複数にエリア分けし、エリアごとにパイロット圧入を実施して、水抜きパイプの長さと、水抜き孔の開設位置を決定するのがよい。
【0023】
上記する本発明の水抜きパイプの設置方法が適用される対象地盤は、排水施工を必要とする多様な地盤がその対象となる。
【0024】
たとえば、水抜きパイプを設置する対象地盤が斜面を有する斜面地盤であり、前記斜面地盤内にある砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを設置し、斜面地盤の砂層から水抜きを実施して斜面安定を図る際に本発明の水抜きパイプの設置方法が好適である。
【0025】
また、水抜きパイプを設置する対象地盤が地下水位が高く、砂層を有して液状化の危険性のある軟弱地盤であり、前記軟弱地盤内にある砂層内に水抜き孔を配設するようにして水抜きパイプを設置し、軟弱地盤の砂層から水抜きを実施して地盤の耐液状化性能の向上を図る際に本発明の水抜きパイプの設置方法が好適である。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から理解できるように、本発明の水抜きパイプの設置方法によれば、モータを使用して水抜きパイプを地盤内に圧入した際に、モータトルクが急変したことをもって水抜きパイプが砂層に到達したことを特定することにより、水抜きパイプに開設されている複数の水抜き孔を砂層内に精緻に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の水抜きパイプの設置方法の施工事例1を説明した模式図であって、地盤にパイプをパイロット圧入している状況を説明した図である。
【
図2】施工事例1において斜面地盤に水抜きパイプが設置された状況を説明した模式図である。
【
図3】本発明の水抜きパイプの設置方法の施工事例2を説明した模式図であって、地盤にパイプをパイロット圧入している状況を説明した図である。
【
図4】施工事例2において液状化危険度の高い地盤に水抜きパイプが設置された状況を説明した模式図である。
【
図5】実際の土質1の柱状図にN値の変化線とモータトルクの変化線を示した図である。
【
図6】実際の土質2の柱状図にN値の変化線とモータトルクの変化線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の水抜きパイプの設置方法の実施の形態を説明する。なお、図示例は、斜面地盤や液状化危険度の高い地盤にパイプをパイロット圧入した後に水抜きパイプを設置する方法を示しているが、水抜きパイプの設置対象地盤は、斜面地盤や液状化危険度の高い地盤以外にも、粘性土と砂層の互層地盤であって排水工法による水抜き効果を期待する多様な地盤が施工対象であることは勿論のことである。さらに、現地の地盤性状に関する詳細な情報が存在する場合には、パイプのパイロット圧入を省略して水抜きパイプを設置してもよい。
【0029】
(水抜きパイプの設置方法の施工事例1)
図1は本発明の水抜きパイプの設置方法の施工事例1を説明した模式図であって、地盤にパイプをパイロット圧入している状況を説明した図であり、
図2は施工事例1において斜面地盤に水抜きパイプが設置された状況を説明した模式図である。
【0030】
図示する施工対象地盤は、表層に2つの砂層G3,G4が積層し、これらの側面に形成された斜面にその傾斜に沿って粘性質の堆積層G2(粘性土)が堆積し、この堆積層G2の表層に盛土G1が形成されたものであり、盛土G1の側面に所定勾配の斜面Sが造成されたものである。
【0031】
このような斜面地盤では、傾斜した堆積層G2の下面まで地下水が溜り(湧水や浸透水など)、この下面を地下水位とした地下水ラインが形成され易い。
【0032】
そして、この地下水によって地下水位を境界として地滑り等の法面崩壊が励起される危険性がある。
【0033】
そこで、図示する斜面地盤に対して排水施工を実施し、地下水ラインを下げて法面崩壊を抑制するべく、本発明の水抜きパイプの設置方法を適用するものである。
【0034】
まず、
図1で示すように、鋼管Kの先端付近に螺旋羽根Bが取り付けられたパイロットパイプPPを不図示のモータを使用して回転させながら(X2方向)圧入していく(X1方向)。
【0035】
パイロットパイプPPの圧入に当たり、モータトルクを管理者が随時計測し、施工長さ(斜面Sの地表面からパイプが圧入された深度)ごとのモータトルクを記録する。
【0036】
図示する層構成では、モータトルクは最初の盛土G1,次の堆積層G2(粘性土)までは徐々に上昇し、パイロットパイプPPが堆積層G2から砂層G4に進入した段階でモータトルクが急変して急激に上昇する。
【0037】
管理者は、このモータトルクが急変する施工長さをもって砂層G4に到達したことを確認し、地表から砂層G4までの到達長さを特定する。
【0038】
このパイロット圧入を、斜面Sの高さ方向で水抜きパイプを設置するレベルごとに実施し、各施工レベルにおける砂層G4までの長さを特定する。
【0039】
このようなパイロット圧入による砂層G4までの長さの特定が終了したら、水抜きパイプに水抜き孔を開設する加工に入る。
【0040】
図2で示すように、水抜きパイプ10は、
図1で示すパイロットパイプPPと同様、鋼管1の先端付近に螺旋羽根3を備えたものである。
【0041】
この鋼管1に対し、特定された砂層G4までの長さを勘案して、水抜きパイプ10が地盤内に設置された際に水抜き孔2が砂層G4に位置決めされる位置に水抜き孔2を開設する。
【0042】
この水抜き孔2の断面寸法や数は、所望の水抜き性能を担保できることを前提として、可能な限り小寸法で小数に設定されるのが水抜きパイプ10の剛性低下抑制の観点から好ましい。
【0043】
図示する方法によれば、モータトルクの急変位置が砂層G4の位置であり、この層が水抜き対象層であることが精緻に特定されることから、鋼管1の所望部位に可及的に小寸法で少数の水抜き孔2を設けることができ、初期の水抜き作用を期待できるとともに、水抜きパイプ10の剛性確保も図ることができる。
【0044】
所望数の水抜きパイプ10が斜面地盤の所望部位に設置されることで、図示するように地下水ラインを所望に下げることができ、高い斜面安定性を保証することができる。
【0045】
(水抜きパイプの設置方法の施工事例2)
図3は本発明の水抜きパイプの設置方法の施工事例2を説明した模式図であって、地盤にパイプをパイロット圧入している状況を説明した図であり、
図4は施工事例2において液状化危険度の高い地盤に水抜きパイプが設置された状況を説明した模式図である。
【0046】
図示する地盤性状は、地表側から順に粘性土G5,砂層G6,粘性土G7となっており、たとえば表層の粘性土G5の層厚Lは比較的薄く(1〜数m)、砂層G6は10m程度かそれ以上に層厚Tを有し、砂層G6の表層が地下水位となっている地盤である。なお、図示する地盤では各層が比較的傾斜のない水平な層を形成している。
【0047】
このように表層に厚みのある砂層が存在し、地下水位が高い地盤では液状化の危険性が高くなる。
【0048】
この液状化危険度の高い地盤に対し、
図3で示すように、鋼管Kの先端付近に螺旋羽根Bが取り付けられたパイロットパイプPPを不図示のモータを使用して回転させながら圧入していく。
【0049】
パイロットパイプPPの圧入に当たり、モータトルクを管理者が随時計測し、施工長さ(地表面からパイプが圧入された深度)ごとのモータトルクを記録する。
【0050】
図示する層構成では、モータトルクは最初の粘性土G5までは徐々に上昇し、パイロットパイプPPが粘性土G5から砂層G6に進入した段階でモータトルクが急変して急激に上昇する。
【0051】
そして、さらにパイロットパイプPPの掘進が進み、砂層G6から下方の粘性土G7に進入した段階でモータトルクが急変して今度は急激に減少する。
【0052】
管理者は、このモータトルクが急変する施工長さLをもって砂層G6に到達したことを確認し、地表から砂層G6までの到達長さLを特定する。
【0053】
このパイロット圧入を、地表において一定エリアごとに各エリアの代表点で実施し、各代表点における砂層G6までの長さLを特定する。
【0054】
このようなパイロット圧入による砂層G6までの長さの特定が終了したら、水抜きパイプに水抜き孔を開設する加工に入る。
【0055】
この鋼管1に対し、特定された砂層G6までの長さLを勘案して、水抜きパイプ10が地盤内に設置された際に水抜き孔2が砂層G6に位置決めされる位置(砂層G6に対応する長さTの区間)に水抜き孔2を開設する。
【0056】
図示する方法によっても、モータトルクの急変位置(最初の急変位置が深度Lの位置、次の急変位置が深度L+Tの位置)が砂層G6の位置(区間)であり、この層が水抜き対象層であることが精緻に特定されることから、鋼管1の所望部位に可及的に小寸法で少数の水抜き孔2を設けることができ、初期の水抜き作用を期待できるとともに、水抜きパイプ10の剛性確保も図ることができる。
【0057】
所望数の水抜きパイプ10が液状化危険度の高い施工エリアに複数設置されることで、図示するように地下水ラインを所望に下げることができ、液状化危険度を所望に低減することができる。
【0058】
[実際の土質におけるモータトルクの変化を測定した実験とその結果]
本発明者等は、2種の実際の土質のN値を測定するとともに、土層構成(土層や層厚など)を特定し、かつ鋼管を回転圧入した際のモータトルクを測定し、粘性土から砂層に移行した際のモータトルクの変化の態様を確認した。
図5,6はそれぞれ、実際の土質の柱状図にN値の変化線とモータトルクの変化線を示した図である。
【0059】
図5で示す土質1の柱状図において、表層から3.5m程度まではローム層、3.5m〜6m以浅までは砂層が堆積している。
【0060】
深度1〜2mのローム層のN値は3〜4程度であり、同様に深度4〜5mの砂層のN値も同様に4程度であるのに対し、モータトルクは、深度3.5m程度の粘性土と砂層の間で急変して上昇し、同程度のN値であってもモータトルクの値は粘性土と砂層で大きく相違することが確認できた。
【0061】
また、深度の深い場所においても、粘性土と砂層の境界にてモータトルクの急変する箇所が確認でき、このモータトルクの急変箇所をもって粘性土と砂層の境界であると特定できる確証が得られた。
【0062】
また、
図6で示す他の土質2の柱状図においても、深度5m程度まで続く粘性土の範囲ではモータトルクが徐々に増加する一方で、深度5mでモータトルクが急変して上昇し、深度5m〜6mの砂層でモータトルクが高くなり、深度6m以深の粘性土でモータトルクが急変して減少し、さらに深度7m以浅の砂層との境界で再度モータトルクが急変して上昇することが確認できる。
【0063】
この実験結果より、モータトルクの急変箇所をもって粘性土と砂層の境界であると特定し、この特定結果に基づいて水抜きパイプの所望範囲に水抜き孔を設け、これを地盤の砂層に精緻に位置決めできることが実証されている。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…鋼管、2…水抜き孔、3…螺旋羽根、10…水抜きパイプ、PP…パイロットパイプ、K…鋼管、B…螺旋羽根、S…斜面、G1…盛土、G2…粘性土(堆積層)、G3…砂層、G4…砂層、G5…粘性土、G6…砂層、G7…粘性土