特許第6073180号(P6073180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073180ナノインプリント方法及びそのための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073180
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ナノインプリント方法及びそのための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20170123BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B29C59/02 ZZNM
   H01L21/30 502D
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-93613(P2013-93613)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213551(P2014-213551A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】弓場 賢治
(72)【発明者】
【氏名】森 裕久
(72)【発明者】
【氏名】宮内 昭浩
(72)【発明者】
【氏名】荻野 雅彦
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/070546(WO,A1)
【文献】 特開2009−226856(JP,A)
【文献】 特開2004−337913(JP,A)
【文献】 特開2006−035506(JP,A)
【文献】 特開2001−058352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一表面に微細転写パターンを有し、電磁誘導により加熱可能な部材を含んで形成した矩形状で板状の型と、
当該型の微細転写パターン形成面にシート状の被転写体を供給するための被転写体供給手段と、
前記被転写体供給手段により供給される被転写体を前記型の微細転写パターン形成面に加圧して転写する加工部とを備えてなるナノインプリント装置において、前記加工部は、更に、
前記被転写体を、前記型の微細転写パターン形成面に対して、前記型の一辺から対向する他の一辺まで、順次、前記被転写体の線状に延びた領域において加圧しながら移動する加圧手段と、
前記板状の型の微細転写パターン形成面の反対の面から、前記加圧手段と共に移動しながら、前記型の線状に延びた領域に電磁波を照射する誘導加熱手段を備え
前記加圧手段を前記型の微細転写パターン形成面の側に配置し、前記誘導加熱手段を前記型を挟んで前記加圧手段の対向する側に配置したことを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載したナノインプリント装置において、前記型は、ニッケル(Nickel)、軟鉄(Mild Steel)、鉄(Iron)、ケイ素鋼(Silicon iron)、純鉄の一つ、又は、組み合わせた材料で形成されていることを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載したナノインプリント装置において、前記シート状の被転写体は、連続的に供給されることを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項4】
前記請求項に記載したナノインプリント装置において、前記加圧手段は、その回転軸を前記シート状の被転写体の供給方向に延びて配置した加圧ローラーで構成したことを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項5】
前記請求項に記載したナノインプリント装置において、前記加圧手段は、その回転軸を前記シート状の被転写体の供給方向に対して直交する方向に延びて配置した加圧ローラーで構成したことを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載したナノインプリント装置であって、更に、前記加圧ローラーの移動方向の下流側に、前記加圧ローラーに追従して移動し、前記板状の型における前記誘導加熱手段により加熱された領域の近傍を冷却する冷却手段を備えていることを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項7】
前記請求項に記載したナノインプリント装置であって、更に、前記型を間に挟んで、前記加圧ローラーの対向する位置に、前記加圧ローラーの移動に伴って移動する他のローラーを設けたことを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項8】
前記請求項に記載したナノインプリント装置において、更に、前記誘導加熱手段を前記他のローラーの内部に設けたことを特徴とするナノインプリント装置。
【請求項9】
シート状の被転写体を、電磁誘導により加熱可能な部材を含んで形成した矩形状で板状の型の少なくとも一表面に形成した微細転写パターン上に供給し、
供給される前記被転写体を前記型の微細転写パターン形成面に加圧して転写するナノインプリント方法において、
前記型の微細転写パターン形成面の側に配置した加圧手段を、前記型の微細転写パターン形成面に対して、前記被転写体の線状に延びた領域において加圧しながら、順次、前記型の一辺から対向する他の一辺まで移動すると共に、
前記板状の型の微細転写パターン形成面の反対の面から、前記加圧手段と共に移動しながら、前記型の線状に延びた領域に、前記型を挟んで前記加圧手段の対向する側に配置した誘導加熱手段により、電磁波を照射して加熱することを特徴とするナノインプリント方法
【請求項10】
前記請求項に記載したナノインプリント方法において、前記加圧手段により加圧される前記被転写体の線状に延びた領域は、前記シート状の被転写体の供給方向に対して直交する方向に延びて配置されていることを特徴とするナノインプリント方法
【請求項11】
前記請求項10に記載したナノインプリント方法において、前記被転写体の線状に延びた領域を、前記加圧手段により加圧し、かつ、前記誘導加熱手段により加熱した後に、冷却手段により冷却することを特徴とするナノインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント技術に関し、特に、連続するシート状の基板(被転写体)に型(モールド又はスタンパ)を加熱・押圧して微細構造物を形成するのに好適な熱式のナノインプリント方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノインプリント技術は、電子線描画装置やリソグラフィ技術等に代え、比較的安価に、基板上に微細加工を実現するための技術として、例えば、微細化、集積化が進んだ高精度の半導体集積回路の製造工程等を始めとして、各種の分野に用いられるようになってきている。
【0003】
なお、ナノインプリント技術には、大別して、例えば、以下の特許文献1のように、凹凸を形成するフィルムの表面に光硬化性の樹脂を凹凸形成層として塗布し、その後、所望の凹凸形状を形成するためのロール型(モールド)を押圧し、その状態で紫外線等を照射し、当該紫外光の照射領域の凹凸形成層を硬化するもの、即ち、光ナノインプリント方法や装置が既に知られている。
【0004】
また、これとは異なり、凹凸を形成するフィルムの表面に、例えば、シリコンウエハをスタンパとして用い、これを加熱・押圧して微細構造物を形成する熱式のナノインプリント技術も、既に、例えば、以下の特許文献2等により知られている。
【0005】
更に、以下の特許文献3によれば、上記特許文献1と同様に光ナノインプリント方式に関し、更には、これを熱方式にも適用可能なものではあるが、ローラーを長く(装置の大型化)した場合にも、均一に、当該ローラーを、被転写体である基板上に押し付けることにより、微細パターンの正確な転写を可能するナノインプリント方法や装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−292008号公報
【特許文献2】特許第4220282号
【特許文献3】特開2007−281099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしならが、上述した従来技術による従来技術、特に、本発明が関わる上記特許文献2に開示される熱式のナノインプリント法や装置は、25ナノメートル以下の微細パターンの正確/精密な形成には好適であるが、しかしながら、シリコンウエハをスタンパとして用いることから、当該スタンパを加熱して被転写体であるフィルムの表面に均一な圧力で押圧しなければならず、また、加熱・押圧時の昇温とその後の冷却サイクルに時間を要するため、転写のスループットが必ずしも十分ではない。
【0008】
これに対して、上記の特許文献3、特に、その図5及び6には、ローラーから供給される樹脂フィルムを、ランプヒーターや電気式の内蔵式カートリッジヒータによって樹脂フィルムのガラス転移点温度以上に加熱して保持された平板上に、平板状のモールドと共に搭載し、その表側及び裏側に設けたローラーにより、当該平板を樹脂フィルムやモールドと共に挟み込み、そして、当該ローラーをその状態で回転/移動させながら微細パターンを正確/精密に形成する装置が開示されているが、しかしながら、かかる従来技術においても、以下の様な課題が存在する。
【0009】
即ち、平板を均一な温度で加熱/保持することは難しく、特に、ガラス転移点温度を超えて、被転写体の溶融温度に近い温度まで加熱した場合には、ローラーから供給される樹脂フィルムが張力により切断されること等が考えられる。加えて、微細パターンの正確/精密な形成のためには、加熱した樹脂フィルムの表面に所望の凹凸形状を押圧して形成した後、直ちに、これを冷却することが重要であるが、しかしながら、上記特許文献3には、かかる冷却手段についての考慮がされていない。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、特に、シリコンウエハなどの板状のスタンパを用いて、ナノメートル単位の微細パターンを正確/精密に形成する場合などに好適な、平板状のモールドを用いてローラーから供給される樹脂フィルムの表面に微細パターンを転写するに適した、転写のスループットにも優れたナノインプリント方法及びそのための装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、まず、少なくとも一表面に微細転写パターンを有し、電磁誘導により加熱可能な部材を含んで形成した板状の型と、当該型の微細転写パターン形成面にシート状の被転写体を供給するための被転写体供給手段と、前記被転写体供給手段により供給される被転写体を前記型の微細転写パターン形成面に加圧して転写する加工部とを備えてなるナノインプリント装置において、前記加工部は、更に、被転写体を、前記型の微細転写パターン形成面に対して、その一辺から対向する他の一辺まで、順次、線状に延びた領域において加圧しながら移動する加圧手段と、前記板状の型の微細転写パターン形成面の近傍において、前記加圧手段と共に移動しながら、前記線状に延びた領域に電磁波を照射する誘導加熱手段を備えているナノインプリント装置が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記に記載したナノインプリント装置において、前記型は、ニッケル(Nickel)、軟鉄(Mild Steel)、鉄(Iron)、ケイ素鋼(Silicon iron)、純鉄の一つ、又は、組み合わせた材料で形成されていることが好ましく、更には、前記誘導加熱手段を、前記板状の型の微細転写パターン形成面と反対の面の側に配置、又は、前記板状の型の微細転写パターン形成面の側に配置することが好ましい。更には、前記シート状の被転写体は、連続的に供給されることが好ましく、加えて、前記加圧手段は、その回転軸を前記シート状の被転写体の供給方向に延びて配置した加圧ローラーで構成し、又は、その回転軸を前記シート状の被転写体の供給方向に対して直交する方向に延びて配置した加圧ローラーで構成することが好ましい。更には、前記加圧ローラーの移動方向の下流側に追従して移動し、前記板状の型における前記誘導加熱手段により加熱された領域の近傍を冷却する冷却手段を備えていることが、更に、前記型を間に挟んで、前記加圧ローラーの対向する位置に、前記加圧ローラーの移動に伴って移動する他のローラーを設けることが、そして、更に、前記誘導加熱手段を前記他のローラーの内部に設けることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するために、シート状の被転写体を、電磁誘導により加熱可能な部材を含んで形成した板状の型の少なくとも一表面に形成した微細転写パターン上に供給し、供給される被転写体を前記微細転写パターン形成面に加圧して転写するナノインプリント方法において、加圧手段を、前記型の微細転写パターン形成面に対して、線状に延びた領域において加圧しながら、順次、前記型の一辺から対向する他の一辺まで移動すると共に、前記板状の型の微細転写パターン形成面の近傍において、前記加圧手段と共に移動しながら、前記線状に延びた領域の近傍に、誘導加熱手段により、電磁波を照射して加熱するナノインプリント方法が提供される。
【0014】
そして、本発明によれば、前記に記載したナノインプリント方法において、前記加圧手段により加圧される前記線状に延びた領域は、前記型上において、前記シート状の被転写体の供給方向に対して直交する方向に延びて配置されていることが好ましく、更には、前記線状に延びた領域を、前記加圧手段により加圧し、かつ、前記誘導加熱手段により加熱した後に、冷却手段により冷却することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、シリコンウエハなどの板状のスタンパを用いて、ナノメートル単位の微細パターンを正確/精密に形成する場合などに好適な、平板状のモールドを用いてローラーから供給される樹脂フィルムの表面に微細パターンを転写するに適した、転写のスループットにも優れたナノインプリント方法及びそのための装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態になるナノインプリント装置を採用した連続式微細加工装置の構成を示す図である。
図2】上記連続式微細加工装置において適用される本発明になるナノインプリント方法、及び、その装置の概略構成を説明する図である。
図3】上記ナノインプリント装置における転写時の動作を説明するための一部拡大断面図である。
図4】上記ナノインプリント装置における転写時の各部の移動動作を説明するための側面図である。
図5】上記ナノインプリント装置の変形例の概略構成を示す図である。
図6】上記ナノインプリント装置の更に変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0018】
まず、添付の図1には、本発明になるナノインプリント装置を提供した具体的な一例として、例えば、パーソナルコンピュータの表示画面上に取り付けられる反射防止膜として、透光性の樹脂フィルムの表面に、外光の反射防止を目的としたナノレベルの微細な凹凸加工を施すための連続式微細加工装置の構成が示されており、特に、図1の左図はその正面図を、そして、図1の右図はその側面図をそれぞれ示している。なお、この装置は、長尺の基材であるインプリントフィルムの表面に、板状のスタンパにより、連続的に反射防止パターンを形成するものである。
【0019】
図にも示すように、連続式微細加工装置では、長尺の基材であるインプリントフィルムをロール状に巻いた原反ローラー10が装着され、当該原反ローラー10の側方に配置された加工部20においては、原反ローラー10から連続的に供給されるインプリント材料フィルムFの表面に、ナノレベルの微細な凹凸加工が施され、その後、上記原反ローラー10の上方に配置された完成品ローラー30に巻き取られる。なお、実際には、その後、その表面にナノレベルの微細な凹凸加工が施された反射防止膜フィルムは、所定形状に整形され、反射防止膜として完成する(但し、実際には、更に、所定の寸法に切断されて製品となる)。
【0020】
続いて、上記加工部20において適用される本発明になるナノインプリント方法及び装置について、添付の図2〜4を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、図2には、本発明になるナノインプリント方法を実施するための装置の構成が示されている。この図にも示すように、本発明になるナノインプリント装置は、基本的には、スタンパ(金型)200と、当該スタンパ(金型)との間に原反ローラー10から供給されるインプリント材料フィルムFを挟み込み、図に矢印で示すように、回転しながらインプリント材料フィルムFの長手方向(より具体的には、原反ローラー10からインプリント材料フィルムFが供給される方向)に沿って移動すると共に、ここには図示しない機構によりインプリント材料フィルムFの表面(図では、裏面)に加圧される加圧ローラー202と、そして、当該加圧ローラー202の移動に伴って、より具体的には、これと等速度で移動する誘導加熱ユニット203とによって構成される。
【0022】
なお、上記のスタンパ(金型)200は、例えば、ガラス等の透磁性に優れた板状の部材の一部(例えば、裏面側)に、以下にも詳細に説明するが、電磁誘導により加熱可能な、例えば、鉄系の金属の板を重ね合わせ、又は、層状に形成されて構成されており、その少なくとも一方の面(本例では、図の裏側)には、転写すべきナノメートル単位の微細パターン201が形成されている。或いは、これに代えて、例えば、ナノメートル単位の微細パターンが形成されたシリコンウエハを微細パターン形成面として利用する場合には、当該スタンパ(金型)200の一方の面(本例では、図の裏側)に固定される。又は、当該スタンパ(金型)200を、全体として、電磁誘導により加熱可能な金属板で形成し、その一方の面(裏面)に転写すべきナノメートル単位の微細パターン201が形成されていてもよい。
【0023】
また、ここで、上述したスタンパ(金型)200を構成する具体的な材料の具体的な例としては、比透磁率の高い材料、例えば、ニッケル(Nickel)、軟鉄(Mild Steel)、鉄(Iron)、ケイ素鋼(Silicon iron)、純鉄(Purified iron)等を、採用することが出来る。
【0024】
また、加圧ローラー202は、インプリント材料フィルムFの供給方向に直交する方向の回転軸を有しており、その外周表面には、例えば、ゴム等の弾性材を被覆して形成されている。また、当該誘導加熱ユニット203は、上記スタンパ(金型)200の微細転写パターン形成面とは反対の面上において、上記加圧ローラー202の配置方向に沿って延長されて構成されており、そして、上記加圧ローラー202と共に移動すると共に、上記スタンパ(金型)200の微細パターン形成面201とは反対の面に向かって交流磁界を発生する。また、図中の符号204は、上記誘導加熱ユニット203に対して発熱用の電磁波を発生させるため、例えば、1kkHz〜800kHzの範囲の周波数を有する数キロワット程度の電力(電流)を断続(オン・オフ)可能にして供給するための、所謂、インバータからなるIH電源を示している。
【0025】
続いて、図3(A)は、上述したナノインプリント装置における、ナノインプリント方法、即ち、上記スタンパ(金型)200と、上記加圧ローラー202と、上記誘導加熱ユニット203による、インプリント材料フィルムFへの転写の原理を説明する図である。
即ち、図からも明らかなように、インプリント材料フィルムFは、上記のスタンパ(金型)200と加圧ローラー202との間に配置されており、そして、図に矢印で示す加圧ローラー202の移動に伴って、スタンパ(金型)200の微細パターン形成面201に加圧されて微細パターンの転写が行われる。その際、上記の誘導加熱ユニット203から発生する磁力線により、上記スタンパ(金型)200の一部、即ち、加圧ローラー202によって加圧される線状の部分(インプリント材料フィルムFの供給方向に対して垂直方向に線状に延びた領域)が、上述した電磁誘導により加熱可能な金属板の誘導加熱により、加熱されることとなる。なお、上述したように、加圧ローラー202によって加圧される線状の部分がインプリント材料フィルムFの供給方向に対して垂直方向に延びた領域となるように設定することによれば、特に、連続的に供給されるインプリント材料フィルムFに対して連続的に転写を行なうことが可能となることから、好ましいであろう。なお、ここで、上記スタンパ(金型)200は、一例として、数十mm(10〜40mm)程度の厚さを有し、そして、その一方の面に形成又は取り付けられる微細パターン201の厚さは数十μm(50〜100μm)程度である。また。上記では、誘導加熱ユニット203は、上記スタンパ(金型)200の微細転写パターン形成面とは反対の面側に配置されるものとして説明したが、加圧ローラー202によって加圧される線状の部分に近接した配置されていればよく、例えば、加圧ローラー202の進行方向に僅かに隔てて配置してもよい。
【0026】
即ち、上記の誘導加熱ユニット203によるスタンパ(金型)200の線状の必要最小限の領域での加熱により、これに対向するインプリント材料フィルムFも加熱され、その結果、例えば、そのガラス転移点付近まで加熱され、加圧ローラー202からの圧力によってスタンパ(金型)200の微細パターンの形成面201に密着して入り込む。その際、上述したように、インプリント材料フィルムFは、スタンパ(金型)200と加圧ローラー202との間で、線状の部分(領域)だけが加熱され、かつ、加圧ローラー202の移動に伴い、徐々に加圧されることから、当該スタンパ(金型)200と加圧ローラー202との間のフィルムFの内部には、気泡が混入し難く、また、たとえ気泡が混入しても、当該加圧ローラー202の移動(特に、回転を伴う移動)により外部に押し出されることとなる。その後、インプリント材料フィルムFは冷却され、その表面には、微細パターンが正確/精密に形成されることとなる。
【0027】
このように、加熱された金型であるスタンパに、ローラーで加圧しながら成形することで、金型の微細パターンの凹部に滞留する空気を効果的に追い出すことによれば、従来方式に比較して、その成形速度を飛躍的に向上させることができる。また、転写時のインプリント材料フィルムFへの加熱領域も、従来の金型の全体的な加熱に比較し、ほぼ線状に限定された最小限の領域だけでよいことから、その後における冷却も、比較的簡単に(例えば、その後の放熱や、スタンパ(金型)本体への熱伝導など)、実現することが出来る。即ち、線状に限定された領域だけを局部的に加熱することで、加熱時におけるフィルムからのガスの発生を抑制することができ、安定した微細形状を得ることができる。
【0028】
また、インプリント材料フィルムFの加熱・転写後の冷却を促進するため、図3(B)にも示すように、上述した加熱部の下流側に追従して、加圧ローラー202側と、及び/又は、誘導加熱ユニット203側に、例えば、エアブロア等の冷却手段205を、更に設けてもよい。なお、その際、当該冷却手段205も、上記誘導加熱ユニット203と共に、加圧ローラー202に従って移動するように構成することが好ましい。また、上述した冷却手段205として、水冷式の冷却装置、又は、ペルチェ素子などの冷却素子を利用することも可能である。
【0029】
続いて、添付の図4により、上述したナノインプリント装置における、インプリント材料フィルムFの供給を含め、各部の動作について、添付の図4を参照しながら説明する。
【0030】
上述したスタンパ(金型)200の微細パターン201のインプリント材料フィルムFへの転写時には、図4(A)に示すように、加圧ローラー202は、スタンパ(金型)200との間に当該インプリント材料フィルムFを挟み、かつ、加圧した状態で、図の矢印方向(インプリント材料フィルムFの供給方向に反対の方向)に移動する。なお、その際には、当該インプリント材料フィルムFは停止した状態となっている。
【0031】
その後、加圧ローラー202がスタンパ(金型)200の端部に到ると、加圧ローラー202、又は、スタンパ(金型)200(又は、双方)が矢印で示すように、インプリント材料フィルムFから僅かに離れる方向に移動し、そして、加圧ローラー202は、これに伴って移動してきた誘導加熱ユニット203と共に、上記図4(A)に示した位置に戻る。その際、上記原反ローラー10から供給されるインプリント材料フィルムFも移動する。この時のインプリント材料フィルムFの移動量としては、スタンパ(金型)200に対し、既にその表面に微細パターンが転写された領域が含まれない値に設定される。
【0032】
なお、これら加圧ローラー202、誘導加熱ユニット203、更には、冷却手段205の上述した移動は、適宜、ここでは図示しない移動機構によって実現可能であることは、当業者であれば明らかであろう。
【0033】
このように、本発明になるナノインプリント装置及びその方法によれば、インプリント材料フィルムFへの転写がほぼ連側的に行うことが可能であり、スタンパ(金型)200全体に代え、その一部である加圧される線状の部分だけを加熱し、その後、直ちに冷却することから、加圧後の変形もなく、微細パターンが正確/精密に形成されることとなり、かつ、転写のスループットにも優れている。
【0034】
更に、添付の図5には、上述したナノインプリント装置の変形例が示されており、即ち、図からも明らかなように、当該変形例になるナノインプリント装置では、スタンパ(金型)200とインプリント材料フィルムFを間に挟み、上述した加圧ローラー202に対向して配置された円筒状のローラー206が設けられており、かつ、当該円筒状のローラー206の内部には、上述した誘導加熱ユニット203が、当該ローラーの内周面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、このローラー206は、透磁性に優れた材料によって形成される。
【0035】
なお、かかる変形例においては、当該ローラー206は、図に矢印で示すように、当該加圧ローラー202と共に回転すると共に、その移動に伴ってこれと等速度で移動する。その際、上記の誘導加熱ユニット203は、常に、ローラー206の内周面を摺動しながら最下部に位置するようになっており、発生する磁界を、上記スタンパ(金型)200の一部、即ち、加圧ローラー202によって加圧される線状の部分、又は、その近傍に照射して、加熱する。なお、このローラー206は、スタンパ(金型)200を、その背面(即ち、微細パターン201の形成面と反対の面)から支持するだけでもよく、又は、上記加圧ローラー202と共に、又は、それに代わって、スタンパ(金型)200をインプリント材料フィルムFに対して加圧するようにしてもよい。即ち、この変形例は、スタンパ(金型)200を、例えば、薄く、かつ、電磁誘導により加熱可能な部材により形成した場合等において、特に、好適であろう。
【0036】
なお、以上に述べた実施例や変形例では、インプリント材料フィルムFにパターンを転写するスタンパ(金型)200は、その下面側に微細パターン201が形成されているもの(この場合、塵等が表面に付着し難いと言う利点がある)について説明したが、しかしながら、本発明は、これに限定されることなく、スタンパ(金型)200の上面側に、微細パターン201を形成し、又は、シリコンウエハを微細パターン形成面201を取り付けてもよい。なお、その場合には、インプリント材料フィルムFは、スタンパ(金型)200の上面を移動して配置され、また、上記の加圧ローラー202や誘導加熱ユニット203、更には、ローラー206等も反対側に配置されることとなる。加えて、誘導加熱ユニット203は、例えば、図5に破線で示すように、線状の加圧点から、僅かに外れ、例えば、インプリント材料フィルムFの供給の上流側(又は、加圧ローラー202の進行側)に配置してもよい。
【0037】
また、上記の加圧ローラー202は、加圧手段の好適な一例であり、上述したように、インプリント材料フィルムFを、スタンパ(金型)200の微細パターン201の形成面に対して線状の部分(領域)だけを押圧するものであればよい。即ち、本発明では、上記の実施例に限定されるものではなく、例えば、棒状の部材を用い、これを移動(摺動)可能に構成してもよい。また、転写時における加圧ローラー202の移動方向は、上記では、インプリント材料フィルムFの供給方向に対して対向する方向(即ち、逆方向)として説明したが、これに代えて、添付の図6にも示すように、インプリント材料フィルムFの供給方向に沿って(供給方向に直交する方向に)移動するように構成することも可能であろう(但し、ここでは、上記図5に示した変形例の加工部の構成を採用した例を示す)。
【0038】
即ち、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…原反ローラー、20…加工部、30…完成品ローラー、200…スタンパ(金型)、201…微細パターン形成面、202…加圧ローラー、203…誘導加熱ユニット、206…ローラー、F…インプリント材料フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6