【文献】
C. Sweet et al.,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2002,Vol.46, No.4,p.996−1004
【文献】
BIOCRYST PHARMACEUTICALS, INC. ANNOUNCES PRELIMINARY PHASE III TRIAL RESULTS FOR INFLUENZA NEURAMINIDASE INHIBITOR, PERAMIVIR,BCRX_News_2002_6_25_General_News.pdf,2002.06.25発行
【文献】
P. Chand et al,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2005,Vol.13, No.12、p.4071−4077
【文献】
S. Bantia, et al,Antiviral Research,2006,Vol.69, No.1,p.39−45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
インフルエンザウイルスに対して用いられるノイラミニダーゼ阻害薬であるペラミビルは、in vitroおよび実験的に感染させたマウスにおいて、インフルエンザウイルスに対して著しい活性を有することがこれまでに示されている。(Govorkova et al.,(2001)、Smee et al.,(2001))。残念ながら、本薬剤を用いた臨床試験で示されたヒトのインフルエンザに対する阻害効果は十分ではなかった。こうした不十分な効果は、患者に対する1日1回の経口投与では薬剤が十分に吸収されないことに起因する。
ペラミビルは、マウスに静脈内投与(i.v.)された場合に十分に吸収されること、また血漿中の化合物の濃度が少なくとも6時間にわたって比較的高値で維持されることが明らかになっている。本明細書に示した一連の実験では、ペラミビルの静脈内投与による単回治療が、インフルエンザウイルスに感染させたマウスを保護することが示される。
【0014】
従って、本発明の特定の実施形態は、ヒトのウイルス感染を治療する方法を提供し、本方法は、効果的な抗ウイルス活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物、
【0015】
【化23】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩を静脈内経路によってヒトに投与するステップを含む。
【0016】
特定の実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0017】
【化24】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0018】
特定の実施形態においては、ウイルス感染はインフルエンザ感染である。特定の実施形態においては、ウイルス感染はA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である。特定の実施形態においては、ウイルス感染は式H
xN
yで表されるウイルス株によって引き起こされ、式中、Xは1〜16の整数であり、Yは1〜9の整数である。特定の実施形態においては、インフルエンザはH3N2型、H1N1型、H5N1型、鳥インフルエンザ、または季節性インフルエンザである。
【0019】
特定の実施形態においては、効果的な抗ウイルス活性を有する量は最大約800mgである。特定の実施形態においては、効果的な抗ウイルス活性を有する量は最大約400mgである。特定の実施形態においては、効果的な抗ウイルス活性を有する量は最大約300mgである。特定の実施形態においては、効果的な抗ウイルス活性を有する量は最大約200mgである。
【0020】
特定の実施形態においては、単回の静脈内投与で効果的な用量の全量が投与される。特定の実施形態においては、複数回の静脈内投与で効果的な用量の全量が投与される。
【0021】
特定の実施形態においては、式Iaの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩が投与される。
【0022】
特定の実施形態においては、化合物の投与から12時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルス感染の原因となるウイルスのIC
50より高値を示す。
【0023】
本発明の特定の実施形態は、ヒト体内のノイラミニダーゼを阻害する方法を提供し、本方法は、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物、
【0025】
【化26】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩を静脈内経路によってヒトに投与するステップを含む。
【0026】
特定の実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0027】
【化27】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0028】
特定の実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量は最大約800mgである。特定の実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量は最大約400mgである。特定の実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量は最大約300mgである。特定の実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量は最大約200mgである。
【0029】
特定の実施形態においては、単回の静脈内投与で効果的な阻害活性を有する用量の全量が投与される。特定の実施形態においては、複数回の静脈内投与で効果的な阻害活性を有する用量の全量が投与される。
【0030】
特定の実施形態においては、式Iaの化合物、あるいはその医薬的に許容可能な塩が投与される。
【0031】
特定の実施形態においては、方法は、ノイラミニダーゼ阻害薬をヒトに経口投与するステップをさらに含んでもよい。
【0032】
特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬はカルボン酸オセルタミビルである。
【0033】
特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0034】
【化28】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0035】
特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0037】
【化30】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0038】
特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、式Iaの化合物、またはこれの医薬的に許容可能な塩である。
【0039】
特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、最大20日間投与される。特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、最大10日間投与される。特定の実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、最大5日間投与される。
【0040】
本発明の特定の実施形態は、ヒトへの静脈内投与に適した単位投薬形態を提供し、本単位投薬形態は、最大約800mgの式I、II、III、またはIVの化合物、
【0041】
【化31】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩を含む。
【0042】
特定の実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0043】
【化32】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0044】
特定の実施形態においては、単位投薬形態は最大約400mgの化合物または塩を含む。特定の実施形態においては、単位投薬形態は最大約300mgの化合物または塩を含む。特定の実施形態においては、単位投薬形態は最大約200mgの化合物または塩を含む。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、包装材料、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0046】
【化33】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩、ならびに静脈内経路によって化合物をヒトへ投与するための手順書を含むキットを提供する。
【0047】
特定の実施形態においては、静脈内投与に適した製剤中に化合物が提供される。
【0048】
特定の実施形態においては、キットは最大約800mgの化合物または塩を含む。特定の実施形態においては、キットは最大約400mgの化合物または塩を含む。特定の実施形態においては、キットは最大約300mgの化合物または塩を含む。特定の実施形態においては、キットは最大約200mgの化合物または塩を含む。
【0049】
本発明の特定の実施形態は、包装材料、本明細書に記載の単位投薬形態、ならびに静脈内経路によって化合物をヒトに投与するための手順書を含むキットを提供する。
【0050】
本発明の特定の実施形態は、感染の臨床症状を呈するグループの各メンバーに対して薬剤の投与を静脈内注射で行うことによる、インフルエンザウイルスの源に暴露された哺乳動物のグループの平均寿命の延長、または死亡率の低下を目的とする静脈内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0051】
【化34】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0052】
特定の実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0053】
【化35】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0054】
特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスは鳥インフルエンザウイルスである。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスである。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスはH5N1型、またはその変異株である。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスは式H
xN
yで表されるウイルス株であり、式中、Xは1〜16の整数であり、Yは1〜9の整数である。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスはH3N2型インフルエンザウイルス、H1N1型インフルエンザウイルス、H5N1型インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、または季節性インフルエンザウイルスである。
【0055】
特定の実施形態においては、感染症状を呈するグループの各メンバーに対して、薬剤の静脈内投与が1回だけ行われる。特定の実施形態においては、感染症状を呈するグループの各メンバーに対して薬剤の静脈内投与が複数回行われる。
【0056】
特定の実施形態においては、感染の臨床症状を呈するグループのメンバーは、ノイラミニダーゼ阻害薬の経口投与による治療を受ける。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬はカルボン酸オセルタミビルである。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式I、II、III、またはIVの化合物、
【0057】
【化36】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0058】
【化37】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式Iaの化合物、またはこれの医薬的に許容可能な塩である。
【0059】
特定の実施形態においては、ウイルスの源は感染した鳥である。特定の実施形態においては、ウイルスの源は感染症状を呈する哺乳動物である。
【0060】
特定の実施形態においては、使用は死亡率の低下を目的とする。
【0061】
本発明の特定の実施形態は、グループの各メンバーに対して薬剤の投与を静脈内注射で行うことによる、インフルエンザウイルスの源に暴露された哺乳動物のグループの平均寿命の延長、または死亡率の低下を目的とする静脈内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0062】
【化38】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0063】
特定の実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0065】
【化40】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0066】
特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスは鳥インフルエンザウイルスである。特定の実施形態においては、鳥インフルエンザウイルスはH5N1型、またはその変異株である。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスは式H
xN
yで表されるウイルス株であり、式中、Xは1〜16の整数であり、Yは1〜9の整数である。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスである。特定の実施形態においては、インフルエンザウイルスはH3N2型インフルエンザウイルス、H1N1型インフルエンザウイルス、H5N1型インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、または季節性インフルエンザウイルスである。
【0067】
特定の実施形態においては、グループの各メンバーに対して薬剤の静脈内投与が1回だけ行われる。特定の実施形態においては、グループの各メンバーに対して薬剤の投与が複数回行われる。
【0068】
特定の実施形態においては、グループのメンバーは、ノイラミニダーゼ阻害薬の経口投与による治療を受ける。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬はカルボン酸オセルタミビルである。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式I、II、III、またはIVの化合物、
【0070】
【化42】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0071】
【化43】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。特定の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬は式Iaの化合物、またはこれの医薬的に許容可能な塩である。
【0072】
特定の実施形態においては、ウイルスの源は感染した鳥である。特定の実施形態においては、ウイルスの源は感染症状を呈する哺乳動物である。
【0073】
特定の実施形態においては、使用は死亡率の低下を目的とする。
【0074】
本発明の特定の実施形態は、ヒトに対して薬剤の投与を静脈内注射で行うことにより、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的な化合物の血漿濃度を達成することを目的とする静脈内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0075】
【化44】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、ヒトに対して薬剤の投与を筋肉内注射で行うことにより、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的な化合物の血漿濃度を達成することを目的とする筋肉内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0078】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0079】
特定の実施形態においては、化合物の注射から12時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0080】
インフルエンザウイルス、A/Duck/MN/1525/81(H5N1型)ウイルスに感染させたマウスを、ウイルスへの暴露の1時間前に、用量20mg、10mg、3mg/kgのペラミビルの単回静脈内投与で治療した。使用した用量のうち高用量の2つでは、死亡を予防し、肺硬化の発生を抑え、肺におけるウイルス力価を抑えるなど、ペラミビルのマウスに対する有意な保護効果が示された。3mg/kgの用量の肺に関連するパラメータに対する抑制効果は中等度であった。化合物は、同時に行った毒性対照試験において良好な耐容性を示したと考えられた。これらのデータは、ペラミビルの単回静脈内投与による治療がインフルエンザウイルスに感染したマウスに有効であることを示す。
【0081】
本発明に用いられる化合物は当該技術分野で公知であり、利用可能な方法を用いて当業者が合成することも可能である(例として、米国特許第6,562,861号を参照されたい)。
【0082】
ラジカル、置換基、ならびに範囲に関して本明細書に記載した特定の値はもっぱら説明のためのものであって、ラジカルや置換基に関するその他の規定値または規定範囲内にあるその他の値を除外するものではない。
【0083】
式I、II、III、またはIVの特定の化合物は、式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物
【0084】
【化46】
【化47】
またはこれらの医薬的に許容可能な化合物である。
【0085】
式I、II、III、またはIVの特定の化合物は、(1S,2S,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−エチルブチル)−4−グアニジノ−2−ヒドロキシシクロペンタン−カルボン酸、(1S,2S,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−プロピルペンチル)−4−グアニジノ−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸、(1R,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−プロピルペンチル)−4−グアニジノシクロペンタンカルボン酸、または(1R,3R,4R)−3−(1−アセトアミド−2−エチルブチル)−4−グアニジノシクロペンタンカルボン酸、またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0086】
式Iの特定の化合物は、式Iaの化合物、またはこれの医薬的に許容可能な塩である。
【0087】
1つ以上のキラル中心を持つ化合物は、光学活性体およびラセミ体の形で存在する場合があり、また光学活性体およびラセミ体の形で分離される場合があることが当業者に理解されるであろう。いくつかの化合物は多形性を示す場合がある。本明細書に記載の有益な特性を有する、式I、II、III、またはIVの化合物のラセミ体、光学活性体、多形体、または立体異性体の全て、あるいはこれらの混合物の使用が本発明に含包されることを理解すべきであり、本明細書に記載の標準的試験、または当該技術分野で周知のその他の同様の試験を用いて、光学活性体を調合する方法(例えば、再結晶法によるラセミ体の分割、光学活性を有する出発物質からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフ分離)、および抗ウイルス(例、抗インフルエンザ)活性を測定する方法は当該技術分野で周知である。
【0088】
安定した非毒性の酸性塩または塩基性塩を形成するのに十分な塩基性度または酸性度を化合物が有する場合、化合物を塩として投与するのが適切な場合がある。医薬的に許容可能な塩の例は、生理学的に許容可能なアニオンを形成する酸を用いて形成された有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、およびα−グリセロリン酸塩である。適切な無機塩も形成されてもよく、これには塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、および炭酸塩が含まれる。
【0089】
当該技術分野で周知の標準的な手順、例えば、アミンなどの十分な塩基性度を有する化合物を、生理学的に許容可能なアニオンを提供する適切な酸と反応させることによって医薬的に許容可能な塩を得てもよい。カルボン酸のアルカリ金属(例としてはナトリウム、カリウム、またはリチウム)またはアルカリ土類金属(例としてはカルシウム)塩も作製可能である。
【0090】
式I、II、III、またはIVの化合物を医薬組成物として調合し、哺乳動物の宿主、例えばヒトの患者に静脈内経路によって投与することができる。活性化合物またはその塩の溶液は水で調合することができ、任意では非毒性界面活性剤と混合してもよい。分散液も同様に、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、トリアセチン、ならびにこれらの混合溶液、ならびに油で調合することができる。通常の保存条件および使用条件下において、これらの調合液は微生物の増殖を防ぐために保存料を含む。
【0091】
注射または注入に適した医薬的な投薬形態には、滅菌注射剤または注入剤あるいは分散液の即時調製に適した、また任意でリポソームにカプセル化された有効成分(1種または複数種)を含む滅菌水溶液または分散液、または滅菌パウダーが含まれ得る。いかなる場合においても、最終的な投薬形態は滅菌済みの液体であり、製造および保存条件の下で安定でなくてはならない。液状担体または賦形剤は、例えば水、エタノール、ポリオール(例としてはグリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、ならびにそれらの適切な混合液を含む溶剤または液状分散媒であってもよい。例えば、リポソームを形成すること、分散液の場合では求められる粒子サイズを維持すること、または界面活性剤を使用することなどによって、適切な流動性を維持することができる。各種の抗菌剤および抗真菌剤、例としてはパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを使用することで、微生物の働きを抑えることができる。多くの場合では、等張剤、例えば糖類、緩衝液、または塩化ナトリウムを含有するのが好ましいであろう。吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどを組成物中に使用することにより、注射用組成物の持続的吸収が実現される。
【0092】
有効成分(1種または複数種)を、上述したその他任意の成分とともに適切な溶媒に添加し、その後任意で濾過滅菌を行うことにより滅菌注射剤を調合できる。滅菌注射剤の調合に用いる滅菌パウダーの場合、好適な調合方法は真空乾燥や凍結乾燥技術であり、これらの技術を用いることで、あらかじめ濾過滅菌を行った溶液中に存在する有効成分のパウダーに加えて任意の追加の所望成分を得ることができる。
【0093】
本明細書において用いる語句「治療する」、「〜の治療」、および「治療」には、任意の症状の進行を防ぐ目的で病状/病態の臨床症状が発生する前に化合物を投与するステップだけでなく、病状/病態の1つ以上の臨床症状が発生した後に、その病状/病態の任意のそうした症状、性状、または特徴を軽減する、または取り除くことを目的として化合物を投与するステップが含まれる。そうした治療が絶対的に有用である必要はない。本明細書において下記で説明するように、ウイルスへの暴露に先立って活性化合物を投与することができる。薬剤は、ウイルスへの暴露後(例、1、2、3、4、または5日以内)に投与することもできる。
【0094】
本明細書中で用いる語句「単位投薬形態」は、特定の量の薬剤を含む静脈内投与製剤に関連し、単回投与でその全量を投与することを目的としている。これは、投薬量を量り分ける必要がある、瓶入りの薬などの量が一定でない薬剤の供給とは区別される。
【0095】
一実施形態においては、本発明はヒトのウイルス感染を治療する方法を提供し、本方法は、効果的な量の式I、II、III、またはIVの化合物、またはこれらの医薬的に許容可能な塩を静脈内投与によってヒトに投与するステップを含む。一般的には、単回静脈内投与で効果的な量が投与される。いくつかの実施形態においては、複数回投与で効果的な量が投与される。従って、本発明の方法を用いることで患者の服薬遵守が正しく守られ、必要とされる効果的な薬剤の用量は少量となる。
【0096】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約1000mgである。
【0097】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約800mgである。
【0098】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約600mgである。
【0099】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約500mgである。
【0100】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約400mgである。
【0101】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約300mgである。
【0102】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約200mgである。
【0103】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約150mgである。
【0104】
本発明の一実施形態においては、効果的な阻害活性を有する量の式I、II、III、またはIVの化合物は最大約75mgである。
【0105】
本発明の方法によれば、式I、II、III、またはIVの化合物は静脈内経路でヒトに投与される。本発明の一実施形態においては、式I、II、III、またはIVの化合物は静脈内経路でヒトに単回投与される。本発明の別の実施形態においては、ノイラミニダーゼ阻害薬もヒトに経口投与される。本発明の一実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬はカルボン酸オセルタミビルである。本発明の一実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は式I、II、III、またはIVの化合物、
【0106】
【化48】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。本発明の一実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は式Ia、IIa、IIIa、またはIVaの化合物、
【0107】
【化49】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩である。本発明の一実施形態においては、経口投与されるノイラミニダーゼ阻害薬は、式Iaの化合物、またはこれの医薬的に許容可能な塩である。
【0108】
本発明の方法によれば、式I、II、III、またはIVの化合物、またはこれらの医薬的に許容可能な塩を、抗ウイルス剤(例、インフルエンザに対する活性を有する薬剤)または抗生物質などの1つ以上の追加の治療薬とともに投与することができる。
【0109】
本発明の静脈内投与製剤は、抗ウイルス剤(例、インフルエンザに対する活性を有する薬剤)および抗生物質などの1つ以上の追加の治療薬を含むこともできる。
【0110】
従って、ウイルス感染の治療を目的とするペラミビルの静脈内投与を本明細書において説明する。ウイルス感染の治療を目的とするペラミビルの筋肉内投与も本明細書において説明し(実施例2を参照されたい)、これは2006年4月12日に出願された国際出願PCT/US2006/013535号に記載の、ウイルス感染の治療を目的とするペラミビルの筋肉内投与の例をさらに示し、その開示内容は参照により本明細書に援用する。さらには、本明細書に記載の通り、静脈内注射および筋肉内注射でペラミビルをヒトに投与することによって、血漿ペラミビル濃度が高値を示し、血漿内半減期が延長することが予想外に見出された。
【0111】
本明細書において説明するように、本明細書に記載の化合物をインフルエンザウイルスなどのウイルスの治療に用いることができる。例えば、以下の菌株のうちのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせの治療に化合物を用いることができる。下記の表において、「H」は血球凝集素の種類を表し、「N」はノイラミニダーゼの種類を表す。Xが1〜16の整数でありYが1〜9の整数である式H
xN
yを、表中に示す組み合わせを説明するのに用いることもできる。
【0113】
【表1】
ウイルスは、例えば鳥ウイルスまたはヒト化鳥ウイルスであってもよい。従って、語句「鳥ウイルス」には、鳥型のウイルスおよびヒト化型の鳥ウイルスの両方が含まれる。
【0114】
本発明の特定の実施形態は、ヒトに対して薬剤の投与を静脈内注射で行うことにより、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的な化合物の血漿濃度を達成することを目的とする静脈内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0116】
【化51】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0117】
本発明の特定の実施形態は、ヒトに対して薬剤の投与を筋肉内注射で行うことにより、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的な化合物の血漿濃度を達成することを目的とする筋肉内注射に用いられる薬剤の製造における、式I、II、III、またはIVの化合物、
【0118】
【化52】
またはこれらの医薬的に許容可能な塩の使用も提供する。
【0119】
本発明の特定の実施形態は、ヒトへの静脈内投与用に調合されたペラミビルを含む組成物も提供する。本発明の特定の実施形態は、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的なペラミビルの血漿濃度を達成することによる、ウイルスの治療に用いられる静脈内投与用に調合されたペラミビルを含む組成物も提供する。
【0120】
本発明の特定の実施形態は、ヒトへの筋肉内投与用に調合されたペラミビルを含む組成物も提供する。本発明の特定の実施形態は、ヒトにおいてウイルスの治療に効果的なペラミビルの血漿濃度を達成することによる、ウイルスの治療に用いられる筋肉内投与用に調合されたペラミビルを含む組成物も提供する。
【0121】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約12時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0122】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約24時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0123】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約36時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0124】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約48時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0125】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約60時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0126】
本発明の特定の実施形態においては、注射から少なくとも約72時間後の化合物の血漿濃度は、ウイルスのIC
50よりも高値を示す。
【0127】
本発明の特定の実施形態においては、ウイルスはインフルエンザウイルスである。本発明の特定の実施形態においては、ウイルスは鳥インフルエンザウイルスである。本発明の特定の実施形態においては、ウイルスはH5N1型、またはその変異株である。
【0128】
これより、下記の限定されない実施例を用いて本発明の例を示す。
【実施例】
【0129】
(実施例1) A型インフルエンザウイルス感染に対するペラミビルの静脈内治療の効果
実験デザイン:LD100と考えられる量のインフルエンザウイルスを、鼻腔からマウスに感染させた。ウイルスへの暴露の1時間前に、20mg、10mg、および3mg/kgの用量のペラミビルを単回静脈内投与することで、10匹のマウスグループの治療を行った。上記の治療と並行して、20匹の感染マウスにプラセボ(滅菌生理食塩水)を静脈内経路で投与した。薬剤で治療した感染マウスとプラセボで治療した対照マウスを、死亡しているかどうか21日間毎日観察した。毒性対照として、感染させた動物と並行して3匹の非感染マウスに対し最高用量の化合物を用いて治療を行った。全ての毒性対照マウスを死亡しているかどうか21日間観察し、初回治療の直前および最終治療の18時間後に体重を測定した。5匹の正常対照の体重を測定した。
【0130】
表2.マウスにおけるA型インフルエンザウイルス感染に対するペラミビルの単回静脈内治療の効果
【0131】
【表2】
b第21日目以前に死亡したマウスの死亡までの平均日数
生理食塩水で治療した対照と比較したとき、
**P<0.01、
***P<0.001。
【0132】
本実験で誘導した感染では、マウスの55%が死に至り(表1)、死亡までの平均日数は9.1日であった。20mgおよび10mg/kgのペラミビルの単回静脈内注射の感染動物に対する保護効果は高く、100%が感染を克服した(P<0.01)。並行して実験を行った毒性対照は全て生存し体重が増加したことから、本実験における化合物の耐容性が良好であったことが示された。
【0133】
これらのデータは、ペラミビルを単回静脈内注射で用いた場合、有効なインフルエンザ阻害剤であることを示す。
【0134】
(実施例2) ヒトにおけるペラミビルを用いた静脈内治療および筋肉内治療の効果
静脈内投与および筋肉内投与を用いて安全性および薬物動態パラメータを評価するため、健康なボランティアの人によるプラセボ対照第I相臨床試験において、ペラミビルの検討を行った。血漿中の薬剤の濃度を測定するため、薬剤の投与後の各種時間ポイントにおいて対象から血液サンプルを採取した。静脈内投与および筋肉内投与の経時変化プロットをそれぞれ
図1および
図2に示す。
【0135】
静脈内投与試験では、ペラミビル濃度は線形の薬物動態を示し、血漿内半減期は通常では見られないほど延長し、その長さは12時間を超えていた。
2mg/kg以上の用量では、投与から48時間後の血漿ペラミビル濃度は、H5型ウイルスを含む、検討を行った全てのインフルエンザウイルスの菌株のIC
50より高値を示す。4mg/kgより多い用量では、さらに72時間後の時点においても薬剤濃度はIC
50より高値を示す。
【0136】
筋肉内投与試験でもペラミビル濃度は線形の薬物動態を示し、血漿内半減期は通常では見られないほど延長していた。投与から72時間後の時点においても、ペラミビルの濃度は検討を行った全てのインフルエンザウイルスの菌株のIC
50値より依然として高値を示す。
【0137】
ヒトのボランティアにおいては、ペラミビルの血漿内半減期の延長や高濃度という所見は通常では認められない予想外のものであり、ペラミビルの静脈内投与および筋肉内投与がヒトのインフルエンザの治療において有益であることを示すものである。
【0138】
本明細書において言及した全ての出版物、特許、特許出願は、参照することにより本明細書に引用したものとする。先行する明細書において、本発明をその特定の実施形態との関連において説明し、例を示すために詳細を説明したが、本発明はさらなる実施形態を許容するものであり、また本発明の基本原理を逸脱することなしに、本明細書において記載した一部の詳細を大幅に変更してもよいことは当業者には明らかであろう。
【0139】
本発明を説明する文脈において用いられる語句「a」および「an」および「the」、ならびに類似の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、単数形および複数形の両方を含むものと解釈すべきである。用語「〜を含む」、「〜を持つ」、および「〜を含有する」は、別段の注記がない限り、広い解釈ができる用語(open ended terms)(すなわち、「それらを含むが限定されないという意味」)と解釈すべきものである。本明細書における値域の記述は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲内のそれぞれ個別の値を個々に参照する簡単な方法としての役割を果たすだけのものであり、それぞれ個別の値は、あたかも本明細書で個々に列挙されるかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、任意適切な順序で実施することができる。本明細書中に与えられた、任意かつ全ての実施例、または例示的な語句(例えば、〜など)は、本発明をより明確にするためのものに過ぎず、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。