特許第6073205号(P6073205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073205メタノール資化性酵母ピキア・パストリスにおけるインビボ非天然アミノ酸発現
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073205
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】メタノール資化性酵母ピキア・パストリスにおけるインビボ非天然アミノ酸発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/19 20060101AFI20170123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C12N1/19ZNA
   C12N15/00 A
【請求項の数】30
【外国語出願】
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2013-207554(P2013-207554)
(22)【出願日】2013年10月2日
(62)【分割の表示】特願2010-537955(P2010-537955)の分割
【原出願日】2008年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-39554(P2014-39554A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年11月1日
【審判番号】不服2016-5634(P2016-5634/J1)
【審判請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/007,341
(32)【優先日】2007年12月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジー.・シュルツ
【合議体】
【審判長】 大宅 郁治
【審判官】 長井 啓子
【審判官】 松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/068802(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/094593(WO,A1)
【文献】 FEMS Microbiol.Rev.,vol.24,p.45−66(2000)
【文献】 J.Mol.Biol.,vol.371,p.112−122(2007)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12N 1/19
MEDLINE/CAPlus/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)非天然アミノ酸と;
b)メタノール資化性酵母細胞において直交tRNA(O−tRNA)を前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と;
c)セレクターコドンを認識し、メタノール資化性酵母細胞においてO−RSにより前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化される直交tRNA(O−tRNA)と
を含むメタノール資化性酵母細胞であって、
メタノール資化性酵母細胞がPichia pastoris細胞であり、
O−RS及びO−tRNAが、大腸菌(Escherichia coli)由来のTyrRS及びチロシルtRNACUAから又は大腸菌由来のLeuRS及びロイシンtRNACUAから進化させたO−RS及びO−tRNAの直交対であり、前記O−RS及びO−tRNAの直交対により組み込まれる前記非天然アミノ酸が、p−アセチルフェニルアラニン、p−アジドフェニルアラニン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、p−(プロパルギロキシ)フェニルアラニン、p−メトキシフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、DMNB−S、ダンシルアラニン、及びDMNB−Cからなる群より選択され、
O−RSが第1の核酸から発現され、当該1の核酸が、ゲノムに組み込まれた、O−RSをコードするポリヌクレオチドを含み、
O−tRNAが第2の核酸から発現され、当該2の核酸が、ゲノムに組み込まれた、O−tRNAをコードするポリヌクレオチド、或いはO−tRNAを含むポリヌクレオチドを含み、
前記第1及び第2の核酸が各々、ARG4遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、AOX1遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座に組み込まれてなる、細胞。
【請求項2】
i)O−RSが誘導的プロモーターから発現される、は、
ii)O−RSが構成的プロモーターから発現される、
請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記i)における誘導的プロモーターがAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーターを含む請求項に記載の細胞。
【請求項4】
前記ii)における構成的プロモーターがYPT1プロモーター又はGAPプロモーターである請求項2に記載の細胞。
【請求項5】
O−tRNAがPGK1プロモーターから発現される、
請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
該当ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含み、
i)前記ポリヌクレオチドがO−tRNAにより認識されるセレクターコドンを含む;
ii)前記ポリヌクレオチドがシングルコピーとしてゲノムに組込まれている;
iii)前記ポリヌクレオチドがマルチコピーとしてゲノムに組込まれている;
iv)前記i)及び前記ii)を満たす;又は
v)前記i)及び前記iii)を満たす;
請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
該当ポリペプチドがHSA、ヒト中性エンドペプチダーゼ(NEP)、抗体、Fab、Fv、α1アンチトリプシン、アンジオスタチン、抗血友病因子、アポリポ蛋白質、アポ蛋白質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン、T39765、NAP−2、ENA−78、gro−a、gro−b、gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG、カルシトニン、cキットリガンド、サイトカイン、CCケモカイン、単球化学誘引蛋白質−1、単球化学誘引蛋白質−2、単球化学誘引蛋白質−3、単球炎症性蛋白質−1α、単球炎症性蛋白質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262、CD40、CD40リガンド、cキットリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα、MGSA、GROβ、GROγ、MIP1−α、MIP1−β、MCP−1、ヒト表皮増殖因子(hEGF)、上皮好中球活性化ペプチド、エリスロポエチン(EPO)、剥離毒素、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、FGF21、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン変異体、増殖因子、増殖因子受容体、ヘッジホッグ蛋白質、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ICAM−1、ICAM−1受容体、LFA−1、LFA−1受容体、ヒトインスリン、ヒトインスリン様増殖因子(hIGF)、hIGF−I、hIGF−II、ヒトインターフェロン、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールチュリン、好中球阻害因子(NIF)、ヒトオンコスタチンM(OSM)、骨形成蛋白質、腫瘍遺伝子産物、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱外毒素A、発熱外毒素B、発熱外毒素C、リラキシン、レニン、SCF/cキット、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE、ステロイドホルモン受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、毒素性ショック症候群毒素、チモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)、ヒト腫瘍壊死因子α、ヒト腫瘍壊死因子β、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、VLA−4蛋白質、VCAM−1蛋白質、ヒト血管内皮増殖因子(hVEGEF)、hVEGF165、ウロキナーゼ、Mos、Ras、Raf、Met、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、テストステロン受容体、アルドステロン受容体、LDL受容体、炎症性分子、シグナル伝達分子、転写アクチベーター、転写サプレッサー、ヒアルリン、CD44、コルチコステロン、ヒト甲状腺ペルオキシダーゼ(hTPO)、破傷風毒素Cフラグメント、ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI)、ヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)、ヒトアンチトロンビンIII、BP320抗原、ヒトカスパーゼ3、B型肝炎表面抗原、ヒト性ステロイド結合蛋白質(hSBP)、ヒトエンドスタチン、又はgp120を含む請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
組込みが非必須遺伝子をコードする遺伝子座で遺伝子置換により行われる請求項6に記載の細胞。
【請求項9】
非必須遺伝子がAOX1である請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
細胞がメタノール利用表現型を示し、メタノール利用表現型がmutである請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
細胞がメタノール利用表現型を示し、メタノール利用表現型がMutである請求項6に記載の細胞。
【請求項12】
該当ポリペプチドが誘導的プロモーター又は構成的プロモーターから発現される請求項6に記載の細胞。
【請求項13】
誘導的プロモーターがAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーターを含む請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
構成的プロモーターがYPT1プロモーター又はGAPプロモーターである請求項12に記載の細胞。
【請求項15】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドをメタノール資化性酵母細胞で生産する方法であって、
a)i)非天然アミノ酸と;
ii)メタノール資化性酵母細胞において直交tRNA(O−tRNA)を前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と;
iii)O−RSにより前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化される直交tRNA(O−tRNA)と;
iv)該当ポリペプチドをコードし、O−tRNAにより認識される少なくとも1個のセレクターコドンを含む該当核酸
を含むメタノール資化性酵母細胞を準備する段階と;
b)セレクターコドンに応答して該当ポリペプチドの翻訳中に該当核酸の選択位置に非天然アミノ酸を組込むことにより、選択位置に非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドを生産する段階を含む方法であって、
メタノール資化性酵母細胞がPichia pastoris細胞であり、
O−RS及びO−tRNAが、大腸菌(Escherichia coli)由来のTyrRS及びチロシルtRNACUAから又は大腸菌由来のLeuRS及びロイシンtRNACUAから進化させたO−RS及びO−tRNAの直交対であり、前記O−RS及びO−tRNAの直交対により組み込まれる前記非天然アミノ酸が、p−アセチルフェニルアラニン、p−アジドフェニルアラニン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、p−(プロパルギロキシ)フェニルアラニン、p−メトキシフェニルアラニン、p−ヨードフェニルアラニン、DMNB−S、ダンシルアラニン、及びDMNB−Cからなる群より選択され、
O−RSが、細胞のゲノムのプロモーターの下流に組み込まれた、O−RSをコードする第1のポリヌクレオチドから発現されると共に、O−tRNAが、細胞のゲノム内に組み込まれ、構成的プロモーターの転写調節下にある、O−tRNAをコードする第2のポリヌクレオチドから発現され、
前記第1及び第2のポリヌクレオチドが各々、ARG4遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、AOX1遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座に組み込まれてなる、方法。
【請求項16】
O−RSを準備する段階が
i)誘導的プロモーターからO−RSを発現させる段階;
ii)構成的プロモーターからO−RSを発現させる段階;
を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記i)における誘導的プロモーターがAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーターを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ii)における構成的プロモーターがYPT1プロモーター又はGAPプロモーターである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
構成的プロモーターがPGK1プロモーターを含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ポリペプチドをコードする該当核酸を準備する段階が、HSA、ヒト中性エンドペプチダーゼ(NEP)、抗体、Fab、Fv、α1アンチトリプシン、アンジオスタチン、抗血友病因子、アポリポ蛋白質、アポ蛋白質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン、T39765、NAP−2、ENA−78、gro−a、gro−b、gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG、カルシトニン、cキットリガンド、サイトカイン、CCケモカイン、単球化学誘引蛋白質−1、単球化学誘引蛋白質−2、単球化学誘引蛋白質−3、単球炎症性蛋白質−1α、単球炎症性蛋白質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262、CD40、CD40リガンド、cキットリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα、MGSA、GROβ、GROγ、MIP1−α、MIP1−β、MCP−1、ヒト表皮増殖因子(hEGF)、上皮好中球活性化ペプチド、エリスロポエチン(EPO)、剥離毒素、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、FGF21、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン変異体、増殖因子、増殖因子受容体、ヘッジホッグ蛋白質、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ICAM−1、ICAM−1受容体、LFA−1、LFA−1受容体、ヒトインスリン、ヒトインスリン様増殖因子(hIGF)、hIGF−I、hIGF−II、ヒトインターフェロン、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールチュリン、好中球阻害因子(NIF)、ヒトオンコスタチンM(OSM)、骨形成蛋白質、腫瘍遺伝子産物、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱外毒素A、発熱外毒素B、発熱外毒素C、リラキシン、レニン、SCF/cキット、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE、ステロイドホルモン受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、毒素性ショック症候群毒素、チモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)、ヒト腫瘍壊死因子α、ヒト腫瘍壊死因子β、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、VLA−4蛋白質、VCAM−1蛋白質、ヒト血管内皮増殖因子(hVEGEF)、hVEGF165、ウロキナーゼ、Mos、Ras、Raf、Met、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、テストステロン受容体、アルドステロン受容体、LDL受容体、炎症性分子、シグナル伝達分子、転写アクチベーター、転写サプレッサー、ヒアルリン、CD44、コルチコステロン、ヒト甲状腺ペルオキシダーゼ(hTPO)、破傷風毒素Cフラグメント、ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI)、ヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)、ヒトアンチトロンビンIII、BP320抗原、ヒトカスパーゼ3、B型肝炎表面抗原、ヒト性ステロイド結合蛋白質(hSBP)、ヒトエンドスタチン、又はgp120をコードする核酸を準備する段階を含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
該当核酸を準備する段階が構成的プロモーター又は誘導的プロモーターの転写制御下の核酸を細胞のゲノムに組込む段階を含む請求項15に記載の方法。
【請求項22】
核酸をゲノムに組込む段階が、核酸をシングルコピー又はマルチコピーとしてゲノムに組込む段階を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
核酸をゲノムに組込む段階が、AOX1遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、ARG4遺伝子、AOX2遺伝子、MET2遺伝子をコードする遺伝子座に、又はAOX1の遺伝子座5’に核酸を組込む段階を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
誘導的プロモーターがAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーターを含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
構成的プロモーターがYPT1プロモーター又はGAPプロモーターである請求項21に記載の方法。
【請求項26】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドを生産する段階が、適切に作製したメタノール資化性酵母細胞を1:9比の緩衝複合メタノール培地(BMMY):緩衝最少メタノール(BMM)中で培養する段階と、培養液を振盪フラスコで増殖させ、ポリペプチドの発現を誘導する段階を含む請求項15に記載の方法。
【請求項27】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドを生産する段階が、ペーストのコンシステンシーに達するまで培養液を増殖させてポリペプチドを産生させる段階を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
産生されるポリペプチドが
i)硫酸化されている;
ii)グリコシル化されている;
iii)1個以上のジスルフィド結合を含む;
iv)10mg/Lまでの濃度で前記細胞から発現される;又は
v)前記i)、前記ii)、前記iii)及び前記iv)のいずれか2以上の組合せである;
請求項15に記載の方法。
【請求項29】
産生されるポリペプチドが10mg/Lまでの濃度で前記細胞から発現される請求項15に記載の方法。
【請求項30】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドを生産する段階が、
a)YPD培地に適切なPichia pastoris株のコロニーを接種し、第1の培養液を作製する段階と;
b)第1の培養液を振盪フラスコに入れ、振盪フラスコを29℃〜30℃の温度にて280rpmの速度で振盪し、飽和付近まで増殖させる段階と;
a)緩衝グリセロール酵母エキス培地(BMGY)1リットルに第1の培養液を接種し、第2の培養液を作製する段階と;
b)OD600が8.0になるまで第2の培養液を増殖させる段階と;
c)第2の培養液を1500×gで5分間遠心し、ペレットを形成する段階と;
d)1:9比の緩衝複合メタノール培地(BMMY):緩衝最少メタノール(BMM)200mlにペレットを再懸濁し、第3の培養液を作製する段階と;
e)その後、24時間おきに第3の培養液にメタノールを終濃度0.5%まで120〜144時間添加し、ポリペプチドの発現誘導を維持する段階
を含む請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国仮出願第61/007,341号、発明の名称「メタノール資化性酵母ピキア・パストリスにおけるインビボ非天然アミノ酸発現(IN VIVO UNNATURAL AMINO ACID EXPRESSION IN THE METHYLOTROPHIC YEAST PICHIA PASTORIS)」、発明者Travis Youngら、出願日2007年12月11日の優先権と特典を主張し、その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する。
【0002】
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
本発明は米国エネルギー省、材料科学部からの助成番号DE−FG03−00ER46051として米国政府助成下に創出された。米国政府は本発明に所定の権利を有する。
【0003】
(発明の技術分野)
本発明は蛋白質化学、例えば翻訳生化学の分野に関する。本発明は非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドをピキア・パストリス(Pichia pastoris)等のメタノール資化性酵母で生産するための組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0004】
異種直交tRNA/アミノアシルtRNAシンテターゼ対(O−tRNA/O−RS対)により高い効率と高い忠実度で非天然アミノ酸をポリペプチドに部位特異的に組込むことができる(Deiters, et al. (2003) "Adding Amino Acids with Novel Reactivity to the Genetic Code of Saccharomyces cerevisiae." J Am Chem Soc 125:11782-11783(非特許文献1); Wang, et al. (2001) "Expanding the Genetic code of Escherichia coli" Science 292:498-500(非特許文献2); Chin, et al. (2003) "An Expanded Eukaryotic Genetic Code." Science 301:964-7(非特許文献3))。これらのO−tRNA/O−RS対はそのコグネイト非天然アミノ酸を認識するが、それらが使用されている系に内在するtRNA、アミノアシルtRNAシンテターゼ又はアミノ酸とは有意に交差反応しない。今日までに、この技術により、大腸菌、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及び哺乳動物細胞で合成された蛋白質にユニークな立体的及び/又は化学的性質を有する30種類を越える各種非天然アミノ酸の遺伝的にコードされた組込みが可能になっている(Xie, J, et al. (2006) "A chemical toolkit for proteins-an expanded genetic code." Nature Rev Mol Cell Biol 7:775-782(非特許文献4); Wang, L, et al. (2005) "Expanding the genetic code." Agnew Chem Int Edit 44:34-66(非特許文献5); Liu, et al. (2007) "Genetic incorporation of unnatural amino acids into proteins in mammalian cells." Nature Methods 4:239-244(非特許文献6))。この技術は生物学的性質を強化し、毒性を低減し、及び/又は半減期を延長した治療用蛋白質の開発及び大規模生産に特に有用であると思われる。
【0005】
大腸菌及び出芽酵母発現システムは異種蛋白質を合成するために広く使用されており、非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質の大規模合成に応用することができる("Adding Amino Acids with Novel Reactivity to the Genetic Code of Saccharomyces Cerevisiae." J Am Chem Soc 125:11782-11783(非特許文献1); Wang, et al. (2001) "Expanding the Genetic code of Escherichia coli." Science 292:498-500(非特許文献2))。
【0006】
しかし、これらの発現システムのうちで、望ましい生物学的活性を示すために硫酸化、グリコシル化又は翻訳後修飾を必要とすることが多い組換え哺乳動物蛋白質の生産に好適なものは皆無である。更に、これらの宿主のうちで治療用蛋白質の生産に最適なものも皆無であり、大腸菌で産生された蛋白質は通常、高濃度の発熱性化合物(例えば内毒素)を含有しており、出芽酵母で合成された蛋白質は潜在的に抗原性のα1,3グリカン結合を含んでいる可能性がある。
【0007】
他方、Pichia pastoris等のメタノール資化性酵母は異種蛋白質の組換え発現システム用として魅力的な候補であるとみなされている(Lin-Cereghino,et al.(2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66(非特許文献7))。メタノール資化性酵母はその真核細胞内機構により、生物学的に活性な哺乳動物蛋白質を合成するために必要な翻訳後フォールディング、プロセシング及び修飾イベントの多くを実施することができる。出芽酵母で発現される蛋白質と異なり、P. pastoris等のメタノール資化性酵母により産生される蛋白質は異種発現される糖蛋白質の下流プロセシングを妨げる恐れのある高マンノース型グリカン構造を含んでいる可能性が低い。
更に、メタノール資化性酵母で合成される蛋白質は発熱性及び抗原性化合物を含まない。
【0008】
メタノール資化性酵母発現システムは大規模蛋白質合成に特に有用である。例えば、酵母P. pastorisは出芽酵母、細菌、昆虫又は哺乳動物系の10〜100倍のレベルで組換え蛋白質の発現を可能にする。更に、P. pastoris等のメタノール資化性酵母は単純な規定塩類培地で容易に培養することができ、バキュロウイルス発現システムや哺乳動物組織培養に必要な高価な培地添加物や装置が不要である。更に、P. pastorisは遺伝子操作が可能であり、出芽酵母用に開発されている多数の分子微生物学技術をP. pastoris用に応用することができる。
【0009】
複雑な翻訳後修飾を含む生物学的に活性な異種蛋白質を生産することが可能な低コスト発現システムで非天然アミノ酸を蛋白質に部位特異的に組込むための新規ストラテジーが必要とされている。メタノール資化性酵母で合成されたポリペプチドに非天然アミノ酸を組込むように機能するO−tRNA/O−RS対及び発現システムの開発が当分野で必要とされている。以下の開示から明らかなように、本明細書に記載する発明はこれら及び他の必要を満たすものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Deiters, et al. (2003) "Adding Amino Acids with Novel Reactivity to the Genetic Code of Saccharomyces cerevisiae." J Am Chem Soc 125:11782-11783
【非特許文献2】Wang, et al. (2001) "Expanding the Genetic code of Escherichia coli" Science 292:498-500
【非特許文献3】Chin, et al. (2003) "An Expanded Eukaryotic Genetic Code." Science 301:964-7
【非特許文献4】Xie, J, et al. (2006) "A chemical toolkit for proteins-an expanded genetic code." Nature Rev Mol Cell Biol 7:775-782
【非特許文献5】Wang, L, et al. (2005) "Expanding the genetic code." Agnew Chem Int Edit 44:34-66
【非特許文献6】Liu, et al. (2007) "Genetic incorporation of unnatural amino acids into proteins in mammalian cells." Nature Methods 4:239-244
【非特許文献7】Lin-Cereghino,et al.(2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ユニークな官能基を有する非天然アミノ酸を蛋白質に部位特異的に組込むことにより、立体的、化学的又は生物学的性質を強化又は新規にした蛋白質を作製することが可能になった。このような蛋白質は治療又は医薬用途に利用できるので、複雑な翻訳後修飾を含む生物学的に活性な異種蛋白質を生産することが可能な低コスト発現システムで生産できるならば有益であろう。本発明はメタノール資化性酵母(例えばPichia pastoris)発現システムで非天然アミノ酸を蛋白質に部位特異的に組込むために有用な方法と組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1側面において、本発明はメタノール資化性酵母(例えばPichia pastoris)で合成されたポリペプチドに非天然アミノ酸を組込むための組成物を提供する。前記組成物は非天然アミノ酸と、メタノール資化性酵母細胞において直交tRNA(O−tRNA)を前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と、セレクターコドンを認識し、メタノール資化性酵母細胞においてO−RSにより前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化される直交tRNA(O−tRNA)を含むメタノール資化性酵母細胞からなる。メタノール資化性酵母細胞としては、例えばCandida細胞、Hansenula細胞、Torulopsis細胞、又はPichia細胞(例えばPichia pastoris細胞)が挙げられる。メタノール資化性酵母細胞は場合により例えば本明細書に記載する非天然アミノ酸のいずれかを含むことができる。
【0013】
細胞のO−RSとO−tRNAは場合によりゲノムに組込まれた核酸から発現させることができる。例えば、場合により例えばARG4遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、AOX1遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座に、O−RSをコードするポリヌクレオチドを含む核酸と、O−tRNAをコードするか又は含む核酸を組込むことができる。場合により、O−RSは誘導的プロモーター(例えばAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーター)から発現させることができる。場合により、O−RSは構成的プロモーター(例えばYPT1プロモーター又はGAPプロモーター)から発現させることができる。O−tRNAは場合により高レベル構成的プロモーター(例えばPGK1プロモーター)から発現させることができる。メタノール資化性酵母細胞のO−RSとO−tRNAは場合により非真核生物(例えば大腸菌)に由来する。
【0014】
メタノール資化性酵母細胞は場合により該当ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含むことができ、前記ポリヌクレオチドはO−tRNAにより認識されるセレクターコドンを含む。該当ポリペプチドをコードする核酸は場合によりシングルコピーとしてゲノムな組込むことができ、組込みは場合により非必須遺伝子(例えばAOX1)をコードする遺伝子座で遺伝子置換により行い、その結果、mutメタノール利用表現型を有する細胞を得ることができる。場合により、該当ポリペプチドをコードする核酸をマルチコピーとしてゲノムに組込み、Mutメタノール利用表現型を有する細胞を得ることができる。核酸によりコードされる該当ポリペプチドとしては限定されないが、場合により本明細書に記載する蛋白質及びポリペプチドのいずれかが挙げられる。該当ポリペプチドは場合により誘導的プロモーター(例えばAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーター)から発現される。場合により、該当ポリペプチドは構成的プロモーター(例えばYPT1プロモーター又はGAPプロモーター)から発現させることができる。
【0015】
別の側面において、本発明は選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドをメタノール資化性酵母細胞で生産するための方法を提供する。これらの方法は、非天然アミノ酸と、メタノール資化性酵母において直交tRNA(O−tRNA)を前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と、O−RSにより前記非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化される直交tRNA(O−tRNA)と、該当ポリペプチドをコードし、O−tRNAにより認識される少なくとも1個のセレクターコドンを含む該当核酸を含むメタノール資化性酵母細胞を準備する段階を含む。メタノール資化性酵母細胞は場合によりCandida細胞、Hansenula細胞、Torulopsis細胞、又はPichia細胞(例えばPichia pastoris細胞)とすることができる。前記方法は更にセレクターコドンに応答して該当ポリペプチドの翻訳中に該当核酸の選択位置に非天然アミノ酸を組込むことにより、選択位置に非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドを生産する段階を含む。非天然アミノ酸を準備する段階は、場合により本明細書に記載する非天然アミノ酸のいずれかを準備する段階を含むことができる。
【0016】
O−RSを準備する段階は、場合によりプロモーターの下流でO−RSをコードするO−RSポリヌクレオチドを細胞のゲノムに組込む段階と、コードされるO−RSを発現させる段階を含むことができる。O−RSポリヌクレオチドを細胞のゲノムに組込む段階は、場合によりARG4遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、AOX1遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座にポリヌクレオチドを組込む段階を含むことができる。O−RSは場合により誘導的プロモーター(例えばAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーター)又は構成的プロモーター(例えばYPT1プロモーター又はGAPプロモーター)から発現させることができる。
【0017】
O−tRNAを準備する段階は、アンバーサプレッサーtRNA、オーカーサプレッサーtRNA、オパールサプレッサーtRNA、又は4塩基コドン、レアコドンもしくは非コーディングコドンを認識するtRNAを準備する段階を含む。O−tRNAを準備する段階は、場合により高レベル構成的プロモーターの下流でO−tRNAをコードするO−tRNAポリヌクレオチドを細胞のゲノムに組込む段階と、O−tRNAを発現させる段階を含むことができる。O−tRNAポリヌクレオチドを細胞のゲノムに組込む段階は、場合によりARG4遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、AOX1遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座にポリヌクレオチドを組込む段階を含むことができる。O−tRNAは場合によりPGK1プロモーターから発現させることができる。
【0018】
該当ポリペプチドをコードする該当核酸を準備する段階は、限定されないが、本明細書に記載する蛋白質及びポリペプチドのいずれかを場合によりコードする核酸を準備する段階を含むことができる。該当核酸を準備する段階は、場合により該当核酸を誘導的プロモーター(例えばAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ICL1プロモーター、又はFLD1プロモーター)、又は構成的プロモーター(例えばYPT1プロモーター又はGAPプロモーター)の転写制御下に置く段階を含むことができる。該当核酸を準備する段階は更に前記核酸を細胞のゲノムに組込む段階を含むことができる。該当核酸は場合により例えばAOX1遺伝子、ADE1遺伝子、HIS4遺伝子、URA3遺伝子、ARG4遺伝子、AOX2遺伝子、又はMET2遺伝子をコードする遺伝子座でシングルコピーとしてゲノムに組込むことができる。場合により、該当核酸を例えばAOX1遺伝子の遺伝子座5’でマルチコピーとして細胞のゲノムに組込むことができる。
【0019】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドを生産する段階は場合により、適切に作製したメタノール資化性酵母細胞(例えばCandida細胞、Hansenula細胞、Torulopsis細胞、又はPichia細胞、例えばPichia pastoris)を1:9比の緩衝複合メタノール培地(BMMY):緩衝最少メタノール(BMM)中で培養する段階と、培養液を振盪フラスコで増殖させ、ポリペプチドの発現を誘導する段階を含むことができる。場合により、選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドを生産する段階は、ペーストのコンシステンシーに達するまで酵母培養液を増殖させる段階を含むことができる。生産されるポリペプチドは場合によりジスルフィド結合を含んでいてもよいし、硫酸化されていてもよいし、及び/又はグリコシル化されていてもよい。産生されるポリペプチドは場合により10mg/Lまでの濃度で培養液から発現させることができる。
【0020】
選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドをPichia pastorisで生産する段階は、YPD培地に適切なPichia pastoris株のコロニーを接種し、第1の培養液を作製する段階と、第1の培養液を振盪フラスコに入れ、29℃〜30℃の温度にて280rpmで振盪し、飽和付近まで増殖させる段階と、第1の培養液を使用し、緩衝グリセロール酵母エキス培地(BMGY)1リットルに接種し、第2の培養液を作製する段階を含むことができる。前記方法はOD600が8.0になるまで第2の培養液を増殖させる段階と、第2の培養液を1500×gで5分間遠心し、ペレットを形成する段階と、1:9比の緩衝複合メタノール培地(BMMY):緩衝最少メタノール(BMM)200mlにペレットを再懸濁し、第3の培養液を作製する段階を含む。最後に、選択位置に非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドをPichia pastorisで生産する方法は、その後、24時間おきに第3の培養液にメタノールを終濃度0.5%まで120〜144時間添加し、ポリペプチドの誘導を維持する段階を含む。
【0021】
キットも本発明の特徴である。例えば、キットは非天然アミノ酸と本発明のメタノール資化性酵母細胞を含むことができる。細胞は場合によりそのゲノムに組込まれたO−tRNAをコードする核酸及び/又はO−RSをコードする核酸を含むことができ、例えばO−RSとO−tRNAは上記プロモーターのいずれかの転写制御下にある。キットは本発明の細胞を使用するためのコンポーネントを含むことができ、例えば、1個以上のセレクターコドンを含み、該当ポリペプチドをコードする核酸をメタノール資化性酵母細胞のゲノムに組込むための説明書が挙げられる。キットはキットコンポーネントを保持するための容器と、キットで提供される細胞を使用して本発明の任意方法を実施するための説明書、例えば選択位置に1個以上の非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドを生産するための説明書を含むことができる。
【0022】
当業者に自明の通り、本発明により提供される方法、キット及び組成物は単独で使用することもできるし、組合せて使用することもできる。例えば、選択位置に非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドを生産するために、本明細書に記載する方法で本発明のメタノール資化性酵母細胞を使用することができる。上記の代用又は追加として、例えば硫酸化ポリペプチド、グリコシル化ポリペプチド、及び/又は1個以上のジスルフィド結合を含むポリペプチドを10mg/Lまでの濃度で生産するためにこれらの方法を使用することができる。本明細書に記載する本発明の特徴の他の組合せも当業者に認識されよう。
【0023】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定生物系に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの記載を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形の不定冠詞及び定冠詞はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)」と言う場合には、場合により2個以上のRS分子の組合せを含み、「核酸」又は「細胞」と言う場合には、場合により実際問題として核酸の多数のコピー又は多数の細胞を含む。
【0024】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味を有する。本発明の試験の実施には本明細書に記載するものに類似又は等価の任意方法及び材料を使用することができるが、好ましい材料と方法は本明細書に記載するものである。本発明の記載及び特許請求の範囲において、以下の用語は以下の定義に従って使用される。
【0025】
コグネイト:「コグネイト」なる用語は共働する成分又は所定の相互特異性の側面を有する成分、例えばO−RSがO−tRNAを非天然アミノ酸で特異的にアミノアシル化する直交tRNA(O−tRNA)と直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を意味する。
【0026】
から誘導:本明細書で使用する「から誘導」なる用語は特定分子もしくは生物から単離された成分、あるいは特定分子もしくは生物又は特定分子もしくは生物からの情報を使用して作製された成分を意味する。例えば、第2のポリペプチドから誘導されるポリペプチドは第2のポリペプチドのアミノ酸配列と同一又は実質的に同様のアミノ酸配列を含むことができる。ポリペプチドの場合には、誘導種は例えば自然突然変異誘発、人工的特異的突然変異誘発又は人工的ランダム突然変異誘発により得ることができる。ポリペプチドを誘導するために使用される突然変異誘発は意図的に特異的でも意図的にランダムでもよいし、各々の混合でもよい。第1のポリペプチドから誘導される別のポリペプチドを作製するためのポリペプチドの突然変異誘発は(例えばポリメラーゼの非忠実性に起因する)ランダムなイベントとすることができ、誘導されたポリペプチドの同定は例えば本明細書に記載するような適当なスクリーニング法により実施することができる。ポリペプチドの突然変異誘発は一般にポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの操作を伴う。
【0027】
コードする:本明細書で使用する「コードする」なる用語は第1の分子又は配列鎖とは異なる第2の分子又は配列鎖の生産を誘導するためにポリマー巨大分子又は配列鎖中の情報を使用する任意プロセスを意味する。本明細書ではこの用語を広義に使用し、種々に適用することができる。所定側面において、「コードする」なる用語は新規に合成された相補的姉妹鎖をDNA依存性DNAポリメラーゼによりコードさせるための鋳型として2本鎖DNA分子の一方の鎖を使用する半保存的DNA複製プロセスを意味する。別の側面において、「コードする」なる用語は第1の分子とは異なる化学的性質を有する第2の分子の生産を誘導するためにある分子中の情報を使用する任意プロセスを意味する。例えば、DNA分子は(例えばDNA依存性RNAポリメラーゼ酵素を使用する転写プロセスにより)RNA分子をコードすることができる。また、RNA分子は翻訳プロセスのようにポリペプチドをコードすることもできる。翻訳プロセスについて使用する場合には、「コードする」なる用語はアミノ酸をコードするトリプレットコドンにも適用する。所定側面において、RNA分子は例えばRNA依存性DNAポリメラーゼを使用する逆転写プロセスによりDNA分子をコードすることができる。別の側面において、DNA分子はポリペプチドをコードすることができ、この場合に使用する「コードする」とは当然のことながら転写プロセスと翻訳プロセスの両者を意味する。
【0028】
〜に応答して:本明細書で使用する「〜に応答して」なる用語は本発明のO−tRNAがセレクターコドンを認識し、tRNAと結合した非天然アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖に組込むのを媒介するプロセスを意味する。
【0029】
非真核生物:本明細書で使用する「非真核生物」なる用語はモネラ界(別称原核生物界)に属する生物を意味する。非真核生物(例えば原核生物)はその構成が単細胞であり、出芽又は分裂による無性生殖であり、膜結合核又は他の膜結合オルガネラをもたず、染色体が環状であり、オペロンが存在し、イントロン、メッセージキャッピング及びポリA mRNAが存在せず、更に他の生化学的特徴(例えば特徴的リボソーム構造)により一般に真核生物から区別できる。原核生物は真正細菌及び古細菌(始原細菌という場合もある)亜界を含む。シアノバクテリア(藍藻類)とマイコプラズマをモネラ界の別々の分類にする場合もある。
【0030】
直交:本明細書で使用する「直交」なる用語は細胞又は翻訳系に内在する対応分子に比較して低効率で細胞の内在成分と共働するか、あるいは細胞の内在成分と共働できない分子(例えば直交tRNA(O−tRNA)及び/又は直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS))を意味する。tRNA及びアミノアシルtRNAシンテターゼに関して直交とは、内在tRNAが内在tRNAシンテターゼと共働する能力に比較して直交tRNAが内在tRNAシンテターゼと共働できないか又は低効率(例えば20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満の効率)でしか共働できず、あるいは、内在tRNAシンテターゼが内在tRNAと共働する能力に比較して直交アミノアシルtRNAシンテターゼが内在tRNAと共働できないか又は低効率でしか共働できないことを意味する。
直交分子は細胞内に機能的に正常な相補的内在分子をもたない。例えば、細胞中の直交tRNAがこの細胞の任意内在RSによりアミノアシル化される効率は内在tRNAが内在RSによりアミノアシル化される効率に比較して低いか又はゼロである。別の例では、直交RSが該当細胞の任意内在tRNAをアミノアシル化する効率は内在tRNAが内在RSによりアミノアシル化される効率に比較して低いか又はゼロである。第1の直交分子と共働する第2の直交分子を細胞に導入することができる。例えば、直交tRNA/RS対は対照(例えば対応するtRNA/RS内在対、又は活性直交対)の効率に比較して所定の効率(例えば45%の効率、50%の効率、60%の効率、70%の効率、75%の効率、80%の効率、90%の効率、95%の効率、又は99%以上の効率)で細胞において共働する導入相補成分を含む。
【0031】
直交アミノアシルtRNAシンテターゼ:本明細書で使用する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)とは該当翻訳系においてO−tRNAをアミノ酸で優先的にアミノアシル化する酵素である。O−RSがO−tRNAに負荷するアミノ酸は天然、非天然又は人工のいずれかを問わずに任意アミノ酸とすることができ、本明細書では限定しない。シンテターゼは場合により天然に存在するチロシルアミノ酸シンテターゼと同一又は相同であるか、O−RSと呼ぶシンテターゼと同一又は相同である。
【0032】
直交tRNA:本明細書で使用する直交tRNA(O−tRNA)とは該当翻訳系に直交性のtRNAであり、tRNAは例えば(1)天然に存在するtRNAと同一であるか又は実質的に類似しているか、(2)自然又は人工突然変異誘発により天然に存在するtRNAから誘導されるか、(3)(1)又は(2)の野生型又は突然変異体tRNA配列の配列を考慮する任意プロセスにより誘導されるか、(4)野生型又は突然変異体tRNAと相同であるか、(5)直交tRNAシンテターゼの基質として指定する任意特定tRNAと相同であるか、あるいは(6)直交tRNAシンテターゼの基質として指定する任意特定tRNAの保存変異体である。O−tRNAはアミノ酸を負荷した状態でも負荷しない状態でも存在することができる。更に当然のことながら、「O−tRNA」は場合によりコグネイトシンテターゼにより非天然アミノ酸を負荷(アミノアシル化)される。実際に、当然のことながら、本発明のO−tRNAは翻訳中にセレクターコドンに応答して成長中のポリペプチドにほぼ任意の非天然アミノ酸を挿入するために有利に使用される。
【0033】
ポリペプチド:ポリペプチドは必ずしもそうでなくてもよいが、一般に共有ペプチド結合により結合した任意長のアミノ酸残基(天然又は非天然又はその組み合わせ)の任意オリゴマーである。ポリペプチドは任意起源に由来することができ、例えば天然に存在するポリペプチド、組換え分子遺伝技術により作製されたポリペプチド、細胞もしくは翻訳系に由来するポリペプチド、又は無細胞合成手段により作製されたポリペプチドが挙げられる。ポリペプチドはそのアミノ酸配列(例えばその成分アミノ酸残基の一次構造)により特徴付けられる。本明細書で使用するポリペプチドのアミノ酸配列とは全長配列に限定されず、部分配列でも完全配列でもよい。更に、ポリペプチドは特定生理活性の有無により限定されない。本明細書で使用する「蛋白質」なる用語はポリペプチドと同義である。「ペプチド」なる用語は限定されないが、例えば2〜25アミノ酸長の短いポリペプチドを意味する。
【0034】
優先的にアミノアシル化する:本明細書で直交翻訳系に関して使用する場合に、O−RSが発現系で任意内在tRNAに負荷するよりも効率的にO−tRNAにアミノ酸を負荷するときにO−RSはコグネイトO−tRNAを「優先的にアミノアシル化する」。即ち、O−tRNAと所与の任意内在tRNAがほぼ等モル比で翻訳系に存在するとき、O−RSは内在tRNAに負荷するよりも高頻度でO−tRNAに負荷する。O−RSにより負荷されるO−tRNAとO−RSにより負荷される内在tRNAの相対比は高いことが好ましく、従って、O−tRNAと内在tRNAが等モル濃度で翻訳系に存在する場合にはO−RSはO−tRNAに排他的、又はほぼ排他的に負荷することが好ましい。O−tRNAとO−RSが等モル濃度で存在する場合にO−RSにより負荷されるO−tRNAと内在tRNAの相対比は1:1を上回り、好ましくは少なくとも約2:1、より好ましくは5:1、更に好ましくは10:1、更に好ましくは20:1、更に好ましくは50:1、更に好ましくは75:1、更に好ましくは95:1、98:1、99:1、100:1、500:1、1,000:1、5,000:1又はそれ以上である。
【0035】
(a)O−RSが内在tRNAに比較してO−tRNAを優先的にアミノアシル化するとき、及び(b)O−RSがO−tRNAを任意天然アミノ酸でアミノアシル化する場合に比較してそのアミノアシル化が非天然アミノ酸に特異的であるときにO−RSは「O−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する」。即ち、非天然アミノ酸と天然アミノ酸がO−RSとO−tRNAを含む翻訳系に等モル量で存在するとき、O−RSは天然アミノ酸よりも高頻度で非天然アミノ酸をO−tRNAに負荷する。非天然アミノ酸を負荷されたO−tRNAと天然アミノ酸を負荷されたO−tRNAの相対比は高いことが好ましい。O−RSはO−tRNAに排他的、又はほぼ排他的に非天然アミノ酸を負荷することがより好ましい。天然アミノ酸と非天然アミノ酸の両者が等モル濃度で翻訳系に存在するとき、O−tRNAの非天然アミノ酸負荷とO−tRNAの天然アミノ酸負荷の相対比は1:1を上回り、好ましくは少なくとも約2:1、より好ましくは5:1、更に好ましくは10:1、更に好ましくは20:1、更に好ましくは50:1、更に好ましくは75:1、更に好ましくは95:1、98:1、99:1、100:1、500:1、1,000:1、5,000:1又はそれ以上である。
【0036】
セレクターコドン:「セレクターコドン」なる用語は翻訳プロセスでO−tRNAにより認識され、内在tRNAにより認識されないコドンを意味する。O−tRNAアンチコドンループはmRNA上のセレクターコドンを認識し、そのアミノ酸(例えば非天然アミノ酸)をポリペプチドのこの部位に組込む。セレクターコドンとしては例えば終止コドン(例えばアンバー、オーカー及びオパールコドン)等のナンセンスコドン、4塩基以上のコドン、レアコドン、天然又は非天然塩基対から誘導されるコドン及び/又は同等物を挙げることができる。
【0037】
抑圧活性:本明細書で使用する「抑圧活性」なる用語は一般に、読み飛ばさないと翻訳終結又は誤訳(例えばフレームシフト)をもたらすコドン(例えばアンバーコドンや4塩基以上のコドンであるセレクターコドン)の翻訳読み飛ばしを行うtRNA(例えばサプレッサーtRNA)の能力を意味する。サプレッサーtRNAの抑圧活性は第2のサプレッサーtRNA又は対照系(例えばO−RSをもたない対照系)に比較して観測される翻訳読み飛ばし活性の百分率として表すことができる。
【0038】
抑圧効率は当分野で公知の多数のアッセイの任意のものにより測定することができる。
例えば、β−ガラクトシダーゼレポーターアッセイを使用することができ、例えば本発明のO−tRNAを含むプラスミドと共に誘導体化lacZプラスミド(構築物はlacZ核酸配列中にセレクターコドンを有する)を適当な生物(例えば直交成分を使用することができる生物)に由来する細胞に導入する。コグネイトシンテターゼも(ポリペプチド又は発現時にコグネイトシンテターゼをコードするポリヌクレオチドとして)導入することができる。細胞を培地で所望密度(例えばOD600=約0.5)まで増殖させ、例えばBetaFluor(登録商標)β−ガラクトシダーゼアッセイキット(Novagen)を使用してβ−ガラクトシダーゼアッセイを実施する。比較可能な対照(例えば所望位置にセレクターコドンではなく対応するセンスコドンを有する誘導体化lacZ構築物から観測される値)に対するサンプルの活性百分率として抑圧百分率を計算することができる。
【0039】
サプレッサーtRNA:サプレッサーtRNAは一般にポリペプチドの翻訳中に終止コドンに応答してアミノ酸の組込み(即ち「読み飛ばし」)を可能にすることにより、所与翻訳系でメッセンジャーRNA(mRNA)の読取りを変更するtRNAである。所定側面において、本発明のセレクターコドンはサプレッサーコドンであり、例えば終止コドン(例えばアンバー、オーカー又はオパールコドン)、4塩基コドン、レアコドン等である。
【0040】
翻訳系:「翻訳系」なる用語は成長中のポリペプチド鎖(蛋白質)にアミノ酸を組込む成分を意味する。翻訳系の成分としては例えばリボソーム、tRNA、シンテターゼ、mRNA等を挙げることができる。
【0041】
非天然アミノ酸:本明細書で使用する「非天然アミノ酸」なる用語は20種類の標準天然アミノ酸の1種又は希少天然アミノ酸(例えばセレノシステイン又はピロリジン)以外の任意アミノ酸、修飾アミノ酸、及び/又はアミノ酸類似体を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】ヒト血清アルブミン(HSA)をコードする遺伝子をPichia pastorisゲノムに組込む準備として構築したプラスミドを示す。
【0043】
図2】p−アセチルフェニルアラニルtRNAシンテターゼ(pApaRS)とtRNACUA3コピーを含むポリヌクレオチドをコードする遺伝子をPichia pastorisゲノムに組込む準備として構築したプラスミドを示す。
【0044】
図3】p−アセチルフェニルアラニルtRNAシンテターゼ(pApaRS)とtRNACUAを発現するPichia pastoris株におけるHSAの発現をモニターするためにメタノール誘導条件下で実施した実験の結果を示す。
【0045】
図4】非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニン(pApa)のHSAへの組込みを確認するために実施した液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析実験の結果を示す。
【0046】
図5】p−アセチルフェニルアラニン(pApa)のHSAへの組込みを確認するために実施したMALDI質量分析実験の結果を示す。
【0047】
図6】本発明で利用される各種プラスミドの模式図である。
【0048】
図7a】非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニンがセレクターコドンに応答してアミノ酸37位でHSAに組込まれる忠実度と特異性を測定するために実施した実験の結果を示す。
図7b】非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニンがセレクターコドンに応答してアミノ酸37位でHSAに組込まれる忠実度と特異性を測定するために実施した実験の結果を示す。
図7c】非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニンがセレクターコドンに応答してアミノ酸37位でHSAに組込まれる忠実度と特異性を測定するために実施した実験の結果を示す。
【0049】
図8】最適化アンバー抑圧についてpApaRSを比較するために実施した実験の結果を示す。
【0050】
図9】PAOX2、PYPT1、PICL1、PFLD1、PGAP、又はPAOX1で誘導したaaRSによるアンバー抑圧レベルを測定するために実施し、培地中のrHSAE37pApa濃度によりアッセイした実験の結果を示す。
【0051】
図10図10aはABT−510ペプチドとrHSAE37pApaのオキシムライゲーションの模式図である。図10bは結合の程度を測定するために実施したMALDI質量分析の結果を示す。
【0052】
図11】P. pastorisでpApa以外の非天然アミノ酸(例えば構造3〜9)をrHSAE37Xに組込むために本発明の直交翻訳系を使用できることを実証するために実施した実験を示す。
【0053】
図12】pPIC3.5k及びpREAVカセットをGS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSに組込むのに成功したか否かを調べるために形質転換体4株で実施したPCRの結果を示す。
【0054】
図13】1回の形質転換からのGS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSの別個のクローン4株におけるpApaRS−His6xのウェスタンブロットを示す。pApaRS蛋白質は検出できなかった。
【0055】
図14】rHSAE37XがMut突然変異体でより強く発現されるか否かを調べるために実施した実験の結果を示す。
【0056】
図15】各種P. pastoris遺伝子プロモーターを増幅するために実施したPCRの結果を示す。
【0057】
図16】プロモーター誘導によるpApaRS産生の関数としてrHSAE37pApaのアンバー抑圧を示す図9の結果の棒グラフである。
【0058】
図17】BSA標準又は試験蛋白質発現からの未精製rHSAWT培地25μlを泳動させた蛋白質ゲルを示す。
【0059】
図18図11fのレーン2からのrHSAE37DMNB−C蛋白質をキモトリプシンで消化後のLC−MS/MSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明はメタノール資化性酵母(例えばPichia pastoris)における非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドの生産を容易にする。非天然アミノ酸を組込んだポリペプチドは新規な生物学的性質、毒性低減、活性強化、及び/又は半減期延長を示す治療剤として利用することができる。メタノール資化性酵母(例えばPichia pastoris)におけるO−RS/O−tRNA対の使用はこのような蛋白質の生産に関して他の直交システム(例えば大腸菌や出芽酵母)に勝るいくつかの有益な利点がある。第1に、酵母(例えばP. pastoris)の真核細胞内構造により、生物学的活性のために複雑な翻訳後修飾(例えばグリコシル化、ジスルフィド結合形成、硫酸化、アセチル化、プレニル化及び蛋白分解プロセシング)を必要とする非天然アミノ酸(UAA)を組込んだ蛋白質(例えばヒト血清アルブミン(HSA)やヒト中性エンドペプチダーゼ(NEP)等の哺乳動物蛋白質)の合成が可能になる。従って、細菌系では最終的に不活性な抱合体となる多数の蛋白質がメタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)では生物学的に活性な分子として生産される。第2に、メタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)で生産されたUAAを組込んだ蛋白質は特に治療用に意図された蛋白質の効力を妨げる可能性のある高濃度の発熱物質(例えばリポ多糖類)や抗原(例えば高マンノース型オリゴ糖)を含まない。第3に、P. pastorisにおける外来遺伝子の遺伝子操作には多数の定着技術及び方法(例えば遺伝子ターゲティング、高頻度DNA形質転換、機能的相補によるクローニング)を利用できる(Lin-Cereghino, et al., (2002) "Production of recombinant proteins in fermenter cultures of the yeast Pichia pastoris." Curr Opin Biotechnol 13:329-332)。内在性の誘導的プロモーター及び選択マーカーを利用できるため、このメタノール資化性宿主により産生可能なUAAを組込んだ蛋白質の範囲の柔軟性が増す。
【0061】
これらの利点に加え、P. pastoris等のメタノール資化性酵母はUAAを組込んだ複雑な蛋白質の低コストで大規模な合成にも好適である。メタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)は単純な規定塩類培地で容易に培養され、例えばバキュロウイルス発現システムや哺乳動物組織培養に必要な高価な培地添加物や装置が不要である。
P. pastoris等のメタノール資化性酵母は非常に高い細胞密度まで増殖することができ、理想的な条件下では細胞懸濁液がペーストのコンシステンシーになる点まで増殖することができる。その特徴的な増殖速度により、組換えP. pastoris株は異種蛋白質(例えばUAAを組込んだ蛋白質)を高レベル(例えば出芽酵母の10〜100倍のレベル)で生産することができる。メタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)は遺伝子操作が容易であり、組換え蛋白質生産が経済的であり、一般に真核蛋白質に付随する翻訳後修飾を実施できるため、UAAを組込んだ異種蛋白質の発現に有利なシステムである。
【0062】
直交翻訳系成分
非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質をメタノール資化性酵母で合成するための新規組成物及び方法の理解は直交tRNAと直交アミノアシルtRNAシンテターゼの対に付随する活性を理解することにより更に深められる。これらのポリペプチドへの非天然アミノ酸の組込みは所望非天然アミノ酸を認識し、セレクターコドン(例えば、アンバーナンセンスコドンTAG)に応答して蛋白質に組込むように直交tRNA(O−tRNA)と直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を適応させることにより実施される。これらの直交成分は宿主細胞(例えばP. pastoris細胞)の翻訳機構の内在成分又は天然アミノ酸と交差反応しない。本明細書に記載する1例で使用される直交成分としては、O−RS(例えば大腸菌チロシルtRNAシンテターゼから誘導されるO−RS)と、宿主細胞(例えばP. pastoris)で直交対として機能するO−tRNA(例えば突然変異体チロシルtRNACUAアンバーサプレッサー)が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する非天然アミノ酸とはセレノシステイン及び/又はピロリジンと20種類の遺伝的にコードされるαアミノ酸以外の任意アミノ酸、修飾アミノ酸又はアミノ酸類似体を意味する。20種類の天然アミノ酸の構造については、例えばL. Stryer著Biochemistry, 3rd ed. 1988, Freeman and Company, New York参照。本発明の非天然アミノ酸は側鎖基が天然アミノ酸と異なるが、非天然アミノ酸は蛋白質を構成する20種類のαアミノ酸以外の天然化合物でもよい。本発明で利用される非天然アミノ酸としては、p−(プロパルギルオキシ)フェニルアラニン、p−メトキシフェニルアラニン、ダンシルアラニン、DMNB−セリン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、O−4−アリル−L−チロシン、O−プロパルギル−L−チロシン、L−Dopa、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨードフェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、チロシンアミノ酸の非天然類似体;グルタミンアミノ酸の非天然類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然類似体;セリンアミノ酸の非天然類似体;スレオニンアミノ酸の非天然類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、スルホニル、スルホ、セレノ、エステル、チオ酸、硼酸、ボロン酸、ホスホ、ホスホノ、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、アルコキシアミン、ヒドロキシルアミン、ケト、もしくはアミノで置換されたアミノ酸、又はその任意組み合わせ;光活性化可能な架橋基を有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規官能基を有するアミノ酸;別の分子と共有又は非共有的に相互作用するアミノ酸;金属結合性アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;フォトケージド及び/又は光異性化可能なアミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有アミノ酸;グリコシル化又は糖鎖修飾アミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコール又はポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学分解性又は光分解性アミノ酸;延長側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換アミノ酸(例えば糖置換セリン等);炭素結合糖含有アミノ酸;糖置換システイン;酸化還元活性アミノ酸;α−ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,αジ置換アミノ酸;βアミノ酸;スルホチロシン、4−ボロノフェニルアラニン、又はプロリン以外の環状アミノ酸が挙げられる。
【0064】
本発明は場合により複数のO−tRNA/O−RS対を含む。例えば、本発明は更に別のO−tRNA/O−RS対を含むことができ、第2のO−RSは第2のO−tRNAを第2の非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化し、第2のO−tRNAは第2のセレクターコドンを認識する。例えばユニーク3塩基コドン、ナンセンスコドン(例えばアンバーコドン(UAG)又はオパールコドン(UGA)等の終止コドン)、非天然コドン、少なくとも4塩基のコドン、レアコドン等の多数の異なるセレクターコドンを遺伝子(例えばベクター核酸及び/又は相補核酸のコーディング配列)に導入することができる。これらの異なるセレクターコドンを使用して(例えば少なくとも1個の非天然アミノ酸を含む)複数の非天然アミノ酸の同時部位特異的組込みを可能にする複数の直交tRNA/シンテターゼ対を使用することができる。O−tRNA/O−RS対がメタノール資化性酵母細胞の環境でその直交性を保持する限り、このようなO−tRNA/O−RS対は各種起源の任意のものに由来することができる。
【0065】
O−tRNA及び/又はO−RS、非天然アミノ酸、セレクターコドン、並びに1個以上の非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質の作製に適した直交翻訳系を作製及び/又はその特異性を改変するための方法は一般に例えば国際公開番号WO2002/086075、発明の名称「直交tRNA−アミノアシルtRNAシンテターゼ対を作製するための方法及び組成物(METHODS AND COMPOSITION FOR THE PRODUCTION OF ORTHOGONAL tRNA-AMINOACYL-tRNA SYNTHETASE PAIRS)」;WO2002/085923、発明の名称「非天然アミノ酸のインビボ組込み(IN VIVO INCORPORATION OF UNNATURAL AMINO ACIDS)」;WO2004/094593、発明の名称「真核遺伝子コードの拡張(EXPANDING THE EUKARYOTIC GENETIC CODE)」;WO2005/019415(出願日2004年7月7日);WO2005/007870(出願日2004年7月7日);及びWO2005/007624(出願日2004年7月7日)に記載されている。これらの各出願の開示内容全体を本願に援用する。各々その開示内容全体を本願に援用するWang and Schultz "Expanding the Genetic Code," Angewandte Chemie Int. Ed., 44(1):34-66 (2005); Deiters et al. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15:1521-1524 (2005); Chin et al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 9026-9027;及び国際公開番号WO2006/034332(出願日2005年9月20日)も参照。その他の詳細は米国特許第7,045,337号、第7,083,970号、第7,238,510号、第7,129,333号、第7,262,040号、第7,183,082号、第7,199,222号、及び第7,217,809号に記載されている。
【0066】
メタノール資化性酵母における異種蛋白質の発現と精製
4種類の公知メタノール資化性酵母属(例えばHansenula,Pichia,Candida,及びTorulopsis)は代謝経路が共通であるため、メタノールを単独炭素源として利用することができる。メタノール誘導に転写調節応答し、酵素のいくつかは迅速に高レベルで合成される。これらの遺伝子の発現を制御するプロモーターは最強で最も厳密に調節される酵母プロモーターであるため、メタノール資化性酵母は組換え蛋白質の大規模生産用宿主として非常に魅力的になっている。これらのメタノール資化性酵母の細胞は迅速に高密度まで増殖させることができ、培地の単純な操作により産物発現レベルを調節することができる。これまでにP. pastoris、P. methanolica、P. angusta(別称Hansenula polymorpha)及びCandida boidiniiで発現システムが開発されており、これらのシステムは例えばHouard, et al. (2002) "Engineering of non-conventional yeasts for efficient synthesis of macromolecules: the methylotrophic genera." Biochimie 84:1089-1093; Gellison (2002) Hansenula Polymorpha: Biology and Applications, 1st Ed., Wiley-VCH, NY;米国特許第6,645,739号、Gellisen (2000) "Heterologous protein production in methylotrophic yeasts." Applied Microbiology and Biotechnology 54:741-750に更に詳述されている。これらのシステムの多くは市販されており、例えば学術及び産業研究室用としてArtes BiotecnologyからHansenulaキット、InvitrogenからPichiaキットが市販されている。
【0067】
好ましい1態様では、異種蛋白質をメタノール資化性酵母P. pastorisから発現精製する。例えば「メタノール資化性酵母における株構築方法及びストラテジー」の欄で後述するように、その調節特性がこの目的に好適なアルコールオキシダーゼ1(AOX1)プロモーターから外来遺伝子をP. pastorisで発現させることができる。AOX1プロモーターは大半の炭素源(例えばグリセロール、グルコース、又はエタノール)で酵母の増殖中に強く抑制されるが、メタノールで増殖中には高度に誘導される(Tschorp et al. (1987) "Expression of the lacZ gene from two methanol-regulated promoters in Pichia pastoris." Nucl Acids Res 15:3859-3876)。PAOX1により調節される遺伝子によりコードされる蛋白質の発現は一般にメタノール上で増殖させたP. pastoris細胞における総可溶性蛋白質の≧30%に達することができる。組換え蛋白質を生産するためには、まずPAOX1の制御下の発現株を抑制性炭素源で増殖させてバイオマスを作製(例えば培養密度を最大化)した後に、単独エネルギー源としてメタノール含有培地(例えばBMGY、BMMY、又はBMM)に転換し、外来遺伝子の発現を誘導する。
【0068】
他方、所定の蛋白質をコードする異種遺伝子の発現にはメタノールにより誘導されないプロモーターも有利な場合がある。この発現システムにおけるAOX1プロモーターの代替プロモーターはP. pastoris GAP、FLD1、AOX2、ILC1及びYPT1プロモーターである。これらのプロモーターの調節、これらのプロモーターから外来遺伝子を発現させるために有益であると思われる環境、及びP. pastorisにおけるこれらのプロモーターによる外来蛋白質の発現に関する更に詳細は例えばSears, et al. (1998) "A Versatile Set of Vectors for Constitutive and Regulated Gene Expression in Pichia pastoris." Yeast 14:783-790; Vassileva, et al. (2001) "Expression of hepatitis B surface antigen in the methylotrophic yeast Pichia pastoris using the GAP promoter." J Biotechnology 88:21-35; Shen, et al. (1998) "A strong nitrogen-source regulated promoter for controlled expression of foreign genes in the yeast Pichia pastoris." Gene 216:93-102; Lin-Cereghino,et al. "Expression of foreign genes in the yeast Pichia pastoris." Genetic Engineering Principles and Methods, Vol.23 1st Ed. Ed. Jane K. Setlow, Springer, NY:(2005)に記載されている。
【0069】
P. pastoris又は他のメタノール資化性酵母における異種蛋白質の発現は振盪フラスコ培養で実施することができるが、発酵槽では例えば乾燥細胞重量>100g/L、湿潤細胞重量>400g/L、>500 OD600単位/mlの超高密度の細胞密度を達成するようにpH、通気及び炭素源供給速度等のパラメーターを制御できるので、このシステムで発現される蛋白質レベルは一般に発酵槽培養のほうが著しく高い(例えばLin-Cereghino, et al. (2002) "Production of recombinant proteins in fermenter cultures of the yeast Pichia pastoris" Curr Opin Biotechnol 13:329-332参照)。P. pastoris発現システムの顕著な特徴は発現株が振盪フラスコ培養から高密度発酵槽培養に規模拡大し易いことである。
【0070】
異種蛋白質(例えばP−AOX1の転写制御下の遺伝子によりコードされる蛋白質)をP. pastoris又は他のメタノール資化性酵母の発酵槽培養で発現させるためには一般に3段階法が使用される。第1段階では、非発酵性PAOX1抑制性炭素源を含む単純な規定培地で培養P. pastoris又は他のメタノール資化性酵母発現株を培養し、細胞増殖させる。第2段階は増殖を制限する速度でグリセロールを培養液に供給して培養液のバイオマスを更に増加し、誘導用の細胞を作製する遷移相を構成する。第3段階では、細胞を代謝性メタノールに生理的に順化させ、組換え蛋白質を合成させるような速度でメタノールを培養液に加える。その後、所望の増殖速度と蛋白質発現速度に達するまでメタノール供給速度を周期的に上方修正する(Lin-Cereghino, et al. "Expression of foreign genes in the yeast Pichia pastoris." Genetic Engineering Principles and Methods, Vol.23 1st Ed. Ed. Jane K. Setlow, Springer, NY:(2005))。
【0071】
P. pastorisを増殖させることができる培地は廉価で、十分に規定されており、炭素源(例えばグリセロール及び/又はメタノール)、ビオチン、塩類、微量成分、及び水から構成される。培地は発熱物質と毒素を含まないため、人体用の薬剤の生産に適合可能である。
【0072】
P. pastoris又は他のメタノール資化性酵母で発現される組換え蛋白質は細胞内でも細胞外でも産生させることができる。この酵母は内在蛋白質を低レベルでしか分泌しないので、分泌される組換え蛋白質は培地中の蛋白質の大半を構成することができる。
従って、組換え蛋白質を培地に加えると、蛋白質精製の第1段階として機能することができ、苛酷な酵母溶解プロトコルに従う必要がなくなり、内在P. pastoris蛋白質による組換え蛋白質の汚染の可能性が避けられる。他方、蛋白質安定性及びフォールディング要件により、培地への異種蛋白質の分泌は一般にその天然宿主により通常分泌される蛋白質のみに限定される。しかし、既製発現カセットにより実施者が培地への分泌を可能にするようにその天然分泌シグナル、出芽酵母α因子プレプロペブチド、又はP. pastoris酸性ホスファターゼ(PHO1)シグナルをコードする配列とインフレームで該当遺伝子をクローニングできるキットが入手可能であり、例えばオリジナルピキア発現キット(Invitrogen)、マルチコピーピキア発現キット(Invitrogen)、ピキア蛋白質発現システム(Research Corporation Technologies)が挙げられる。P. pastorisから細胞内組換え蛋白質を回収する技術は多数のものが開発されている(Shepard, et al. (2002) "Recovery of intracellular recombinant proteins from the yeast Pichia pastoris by cell permeabilization." J Biotechnology 99:149-160;米国特許第6,821,752号)。
【0073】
一般蛋白質精製方法
種々の蛋白質精製法が当分野で周知であり、メタノール資化性酵母で発現されるUAAを組込んだ蛋白質の精製分析に適用することができる。これらの技術及びポリペプチド分析に必要な他の技術としては、R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982); Deutscher, Methods in Enzymology Vol.182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. N.Y. (1990); Sandana (1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.; Bollag, et al. (1996) Protein Methods,2nd Edition Wiley-Liss, NY; Walker (1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ; Harris and Angal (1990) Protein Purification Applications: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Harris and Angal Protein Purification Methods:A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes (1993) Protein Purification: Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag, NY; Janson and Ryden (1998) Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications, Second Edition Wiley-VCH, NY;及びWalker (1998) Protein Protocols CD-ROM版 Humana Press, NJ;とその引用文献に記載されているものが挙げられる。
【0074】
メタノール資化性酵母における株構築方法及びストラテジー
該当遺伝子を高度に誘導性のメタノール資化性酵母プロモーターの制御下に置く核酸構築物を構築するためには大腸菌での複製に適したシャトルベクターが一般に使用される。
メタノール資化性酵母ではプラスミドが比較的不安定であるため、通常では発現構築物を直鎖化し、例えばPichia細胞、Hansenula細胞、Candida細胞、又はTorulopsis細胞に形質転換し、ゲノムに組込む。組込みは一般に部位特異的であるが、Hansenula polymorphaでは高頻度の不均一組込みが認められている(Agaphonov, et al. (2005) "Defect of vacuolar protein sorting stimulates proteolytic processing of human urokinase-type plasminogen activator in the yeast Hansenula polymorpha." FEMS Yeast Reseach 5:1029-1035)。メタノール資化性酵母の一般分子操作(例えば形質転換、遺伝子ターゲティング、機能的相補によるクローニング、入手可能な選択マーカーの使用等)に関するその他の詳細は例えばPeberdy, Ed. (1991) Applied Molecular Genetics of Fungi. Cambridge University Press, UK; Hansenula Polymorpha: Biology and Applications, 1st Ed., Wiley-VCH; Higgins and Cregg. Pichia Protocols (Methods in Molecular Biology), 1st Ed. Humana Press: New Jersey (1998) とその引用文献に記載されている。
【0075】
好ましい1態様では、メタノール資化性酵母P. pastorisで異種遺伝子を発現させる。P. pastorisにおける大半の外来遺伝子の発現は、発現ベクターへの該当遺伝子の導入 P. pastorisゲノムへの発現ベクターの導入、及び外来遺伝子により発現される蛋白質の産生用の推定発現株の分析の基本的な3段階により実施することができ、その手法については「メタノール資化性酵母における株構築方法及びストラテジー」の欄で上述した通りである。幸いにも、P. pastorisの分子遺伝子操作技術(例えばDNA形質転換、遺伝子ターゲティング、遺伝子置換、及び機能的相補によるクローニング)は出芽酵母について記載されている技術と同様である。他方、出芽酵母とは対照的にP. pastorisではプラスミドが不安定であるので、該当蛋白質をコードする発現構築物を相同組換えによりP. pastorisゲノムに組込む。P. pastorisの分子遺伝子操作プロトコルは例えばCregg, et al. (1985) "Pichia pastoris as a host system for transformations." Molec Cell Biol 5:3376-3385; Lin-Cereghino, et al. "Expression of foreign genes in the yeast Pichia pastoris." Genetic Engineering Principles and Methods,Vol.23 1st Ed. Ed. Jane K. Setlow, Springer, NY:(2005); Higgins and Cregg. Pichia Protocols(Methods in Molecular Biology),1st Ed.Humana Press:New Jersey (1998); Lin-Cereghino, et al. (2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66とその引用文献に詳細に記載されている。
【0076】
種々のP. pastoris宿主株及び発現ベクターが入手可能である。ほぼ全てのP. pastoris発現株はNRJAL−Y111430(Northern Regional Research Laboratories, Peoria, IL)に由来する。大半の発現株は適切な相補的マーカーを含む発現ベクターの選択を可能にする1個以上の栄養要求性マーカーを有する。宿主株はAOX1、AOX2、又は両者の欠失によりメタノール代謝能が異なる場合がある。実際に、AOX1及び/又はAOX2に突然変異を有する株は野生型株よりも外来蛋白質の良好な産生株となる場合がある(Cregg. et al. (1987) "High level expression and efficient assembly of hepatitis B antigen in the methylotrophic yeast, Pichia pastoris." Bio/Technology 5:479-485; Chiruvolu, et al. (1997) "Recombinant protein production in an alcohol oxidase-defective strain of Pichia pastoris in fed-batch fermentation." Enzyme Microb Technol 21:277-283)。しかし、aox1株もAOX1プロモーターから高レベルの外来蛋白質の発現を誘導する能力を維持する。所定の組換え蛋白質の発現がより有益になるようなプロテアーゼ欠損宿主株を含む宿主株に関するより詳細な情報は例えばBrierley, et al. (1998) "Secretion of recombinant insulin-like growth factor-1 (IGF-I)." Methods Mol Biol 103:149-177; White, et al. (1995) "Large-scale expression, purification, and characterization of small fragments of thrombomodulin: the roles of the sixth domain and of methionine 388." Protein Eng 8:1177-1187から入手可能である。
【0077】
大半のP. pastoris発現ベクターは大腸菌で維持するための複製起点と、一方又は両方の生物で機能的な選択マーカー(例えばARG4,HIS4,ADE1,URA3,TRP1並びにP. pastorisで選択可能な所定の抗生物質(例えばZeocin(登録商標)やGeneticin(登録商標))及び/又は大腸菌で選択可能な多数の抗生物質耐性マーカーのいずれかを含む大腸菌/P. pastorisシャトルベクターとして設計されている。一般に、発現ベクターは5’AOX1プロモーター配列と転写終結用のAOX1由来配列を含み、その間にマルチクローニングサイトが位置する。AOX1プロモーターは多数の外来蛋白質を発現させるために使用するのに成功しているが、例えば食料品生産のように、このプロモーターの使用が適切ではないと思われる状況もある。この発現システムにおけるAOX1プロモーターの代替プロモーターはP. pastoris AOX2、ICL1、GAP、FLD1、及びYPT1プロモーターである。上記プロモーターのいずれかを含む発現ベクターの一般図と可能なベクター成分のリストも例えばLin-Cereghino, et al. "Expression of foreign genes in the yeast Pichia pastoris." Genetic Engineering Principles and Methods, Vol.23 1st Ed. Ed. Jane K. Setlow, Springer, NY:(2005) 及びLin-Cereghino, et al. (2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66に記載されている。更に、多数のベクターのDNA配列がInvitrogenウェブサイト(www.invitrogen.com)に掲載されており、個別に又はP. pastoris発現キットとしてInvitrogenから販売されている。
【0078】
一般分子クローニング方法及び技術
例えば「メタノール資化性酵母における株構築方法及びストラテジー」の欄で上述したように該当遺伝子を発現構築物にクローニングするために核酸を単離、クローニング、及び増幅する手順は文献に詳細に記載されており、例えば該当遺伝子を提供し、メタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)で発現させるために本発明で使用することができる。これらの技術の更に詳細はBerger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger); Sambrook, et al. Molecular Cloning-A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vol.1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 2000 ("Sambrook"); The Nucleic Acid Protocols Handbook Ralph Rapley (ed) (2000) Cold Spring Harbor, Humana Press Inc. (Rapley); Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al. eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (2007年補遺版) ("Ausubel"); PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis, et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990) (Innis); Chen, et al. (ed) PCR Cloning Protocols, Second Edition (Methods in Molecular Biology, volume 192) Humana Press; in Viljoen, et al. (2005) Molecular Diagnostic PCR Handbook Springer;及びDemidov and Broude (eds) (2005) DNA Amplification: Current Technologies and Applications. Horizon Bioscience, Wymondham, UKに記載されている。例えばその後の核酸単離のための例えば細胞単離及び培養に関する他の有用な参考文献としては、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley-Liss, New Yorkとその引用文献; Payne, et al. (1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY; Gamborg and Phillips (eds) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York)及びAtlas and Parks (eds) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton,FLが挙げられる。
【0079】
細胞からプラスミド又は他の該当核酸を精製するためのキットも多数市販されている(例えばEasyPrep(登録商標)、FlexiPrep(登録商標)(いずれもPharmacia Biotech製品);StrataClean(登録商標)(Stratagene製品);QIAprep(登録商標)(Qiagen製品)参照)。単離及び/又は精製した任意核酸を更に操作して他の核酸を作製し、細胞にトランスフェクションするために使用し、発現の目的で生物に感染させるために関連ベクターに導入し、及び/又は同等の操作を行うことができる。典型的なクローニングベクターは転写及び翻訳ターミネーターと、転写及び翻訳開始配列と、特定ターゲット核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは場合により少なくとも1個の独立ターミネーター配列と、真核生物又は原核生物又は両者(例えばシャトルベクター)でカセットの複製を可能にする配列と、原核系と真核系の両者の選択マーカーを含む包括的発現カセットを構成する。Sambrook, Ausubel及びBerger参照。更に、Operon Technologies Inc.(Huntsville, AL)等の各種販売会社からほぼ任意核酸を特別注文又は標準注文することができる。
【0080】
該当蛋白質及びポリペプチド
本発明はメタノール資化性酵母(例えばP. pastoris)により合成された蛋白質に非天然アミノ酸を組込むための組成物と方法を提供する。本発明は生物学的性質を強化し、毒性を低減し、及び/又は半減期を延長した治療用蛋白質の開発及び大規模生産に特に有用であると思われる。本明細書に記載する方法と組成物を使用することにより最も有益に発現されるこのような治療用、診断用、及び他のポリペプチドの例としては限定されないが、HSA、ヒト中性エンドペプチダーゼ(NEP)、抗体、Fab、Fv、α1アンチトリプシン、アンジオスタチン、抗血友病因子、アポリポ蛋白質、アポ蛋白質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン、T39765、NAP−2、ENA−78、gro−a、gro−b、gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF4、MIG、カルシトニン、cキットリガンド、サイトカイン、CCケモカイン、単球化学誘引蛋白質−1、単球化学誘引蛋白質−2、単球化学誘引蛋白質−3、単球炎症性蛋白質−1α、単球炎症性蛋白質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262、CD40、CD40リガンド、cキットリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン、上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα、MGSA、GROβ、GROγ、MIP1−α、MIP1−β、MCP−1、ヒト表皮増殖因子(hEGF)、上皮好中球活性化ペプチド、エリスロポエチン(EPO)、剥離毒素、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、FGF21、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン変異体、増殖因子、増殖因子受容体、ヘッジホッグ蛋白質、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ICAM−1、ICAM−1受容体、LFA−1、LFA−1受容体、ヒトインスリン、ヒトインスリン様増殖因子(hIGF)、hIGF−I、hIGF−II、ヒトインターフェロン、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールチュリン、好中球阻害因子(NIF)、ヒトオンコスタチンM(OSM)、骨形成蛋白質、腫瘍遺伝子産物、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱外毒素A、発熱外毒素B、発熱外毒素C、リラキシン、レニン、SCF/cキット、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE、ステロイドホルモン受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、毒素性ショック症候群毒素、チモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、ヒト腫瘍壊死因子(hTNF)、ヒト腫瘍壊死因子α、ヒト腫瘍壊死因子β、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、VLA−4蛋白質、VCAM−1蛋白質、ヒト血管内皮増殖因子(hVEGEF)、hVEGF165、ウロキナーゼ、Mos、Ras、Raf、Met、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、テストステロン受容体、アルドステロン受容体、LDL受容体、炎症性分子、シグナル伝達分子、転写アクチベーター、転写サプレッサー、ヒアルリン、CD44、コルチコステロン、ヒト甲状腺ペルオキシダーゼ(hTPO)、破傷風毒素Cフラグメント、ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI)、ヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)、ヒトアンチトロンビンIII、BP320抗原、ヒトカスパーゼ3、B型肝炎表面抗原、ヒト性ステロイド結合蛋白質(hSBP)、ヒトエンドスタチン、又はgp120が挙げられる。
【0081】
キット
キットも本発明の特徴である。例えば、キットは非天然アミノ酸と本発明のメタノール資化性酵母細胞を含むことができる。細胞は場合によりそのゲノムに組込まれたO−tRNAをコードする核酸及び/又はO−RSをコードする核酸を含むことができ、例えばO−RSとO−tRNAは上記プロモーターのいずれかの転写制御下にある。キットは本発明の細胞を使用するためのコンポーネントを含むことができ、例えば、1個以上のセレクターコドンを含み、該当ポリペプチドをコードする核酸をメタノール資化性酵母細胞のゲノムに組込むための説明書が挙げられる。キットはキットコンポーネントを保持するための容器と、キットで提供される細胞を使用して本発明の任意方法を実施するための説明書、例えば選択位置に1個以上の非天然アミノ酸を組込んだ該当ポリペプチドを生産するための説明書を含むことができる。
【0082】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により特許請求の範囲に記載する発明を限定するものではない。当然のことながら、本明細書に記載する実施例及び態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に想到され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
【実施例1】
【0083】
非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質のPichia pastoris発現システムの構築
非天然アミノ酸(UAA)をポリペプチドに組込むには、遺伝的にコードされる直交tRNACUA(OtRNA)/直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)対の進化により、蛋白質を構成する20種類の天然αアミノ酸の現在のレパートリーに「21番目のアミノ酸」を追加する必要がある。M. jannaschii tyrRSの特異性をチロシンから大腸菌発現システムでO−RSとして使用するための該当非天然アミノ酸に変更するために指向的進化を利用する。同様に、大腸菌tyrRS又はleuRSの特異性を夫々チロシン又はロイシンから出芽酵母発現システムでO−RSとして使用するための該当非天然アミノ酸に変更することができる。突然変異体ライブラリーの半合理的設計により、30種類を上回るアミノアシルtRNAシンテターゼを出芽酵母と大腸菌でその対応する非天然アミノ酸について進化させることに成功している(Xie, et al. (2005) "An expanding genetic code." Methods 36:227-38; Xie, et al. (2006) "A chemical toolkit for proteins:an expanded genetic code." Nat Rev Mol Cell Biol 7:775-82)。このインビボ部位特異的手法により、化学的tRNAアミノアシル化又は固相合成の効率を越えるレベルで新規化学官能基の蛋白質組込みが可能になった。今日までに、ユニークな化学反応基としては、光解離性基、グリコシル化アミノ酸、光架橋基、ケトン官能基、金属キレート基、及びIRプローブが検討されている(Xie, et al. (2005) "An expanding genetic code." Methods 36:227-38; Wang, et al. (2006) "Expanding the genetic code." Annu Rev Biophys Biomolec Struct 35:225-249)。本研究ではユニークなケトン残基であるp−アセチルフェニルアラニンと、アジド残基であるp−アジドフェニルアラニンに着目する(Zhang, et al. (2003) "A new strategy for the site-specific modification of proteins in vivo." Biochemistry 42:6735-46)。これらの残基を蛋白質に組込むと、例えばオキシム又はヒドラジドライゲーションにより小分子、ペプチド、又はポリエチレングリコール(PEG)の部位特異的結合が可能になる。
【0084】
これまでに、進化型直交シンテターゼを使用して非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質のインビボ発現は大腸菌、出芽酵母、及び哺乳動物細胞で報告されている(Lie, et al. (2007) "The genetic incorporation of unnatural amino acids into proteins in mammalian cells." Nature Methods 4:239-244)。
非天然アミノ酸を組込んだ多数の組換え発現蛋白質をこのような大腸菌及び出芽酵母発現システムで生産することができるが、これらのシステムは硫酸化蛋白質、グリコシル化蛋白質、又は複雑なジスルフィド架橋を含む蛋白質(例えばヒト血清アルブミン(HSA)やヒト中性エンドペプチダーゼないしネプリライシン(NEP))を合成することができない。HSAとNEPはいずれも複雑なジスルフィド結合を含み、生物学的に活性なNEPの産生にはグリコシル化が必要であるため、大腸菌又は出芽酵母でこれらの蛋白質を高収率で発現させることはできない。
【0085】
非天然アミノ酸を組込んだHSA又はNEP変異体を発現させるためには、新規インビボUAA発現システムを異種蛋白質発現改善に適応させる必要がある。例えば、Pichia pastoris発現システムは硫酸化、グリコシル化、又は高度に架橋した哺乳動物蛋白質を首尾よく産生できることが繰返し実証されている(Lin-Cereghino, et al. (2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66)。出芽酵母で産生される蛋白質とは対照的に、P. pastorisで産生される蛋白質は下流のプロセシングを妨げる恐れのある高マンノース型グリカン構造を含む可能性が低く、更にP. pastorisで産生される蛋白質は潜在的に抗原性のα1,3グリカン結合を含まない。更に、P. pastorisにおける組換え蛋白質発現レベルは出芽酵母における発現レベルよりも数桁高くすることができる(Lin-Cereghino, et al. (2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66)。
進化型UAAシンテターゼを出芽酵母からP. pastorisに移すと、非天然アミノ酸を組込んだ機能的哺乳動物蛋白質(例えばHSAやNEP)の発現を強化することができる。
【0086】
P. pastorisではプラスミドが相対的に不安定性であるため、該当蛋白質(例えばヒト血清アルブミン(HSA))と、ORSとO−tRNA(例えば夫々アセチルフェニルアラニルtRNAシンテターゼ(pApaRS)とtRNACUA)をコードするDNA構築物をマルチコピーピキア発現キット(Invitrogen)及び他の文献(Lin-Cereghino, et al. (2000) "Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris." FEMS Microbiol Rev 24:45-66)に記載されているように各々組換えによりPichia pastorisゲノムに組込んだ。構築物をJames Cregg研究所の寄贈品であるPichia pastoris株GS200のゲノムに導入した。GS200はアルギニンとヒスチジンを含有しない培地では増殖することができない。HIS4遺伝子を含むHSA構築物をGS200ゲノムのAOX1遺伝子座に組込み、O−RSとO−tRNAをコードし、ARG4遺伝子を含む構築物をGS200のARG4遺伝子座に組込んだ。
【0087】
aox1::HSA遺伝子置換と5’AOX1遺伝子挿入の2種類の方法によりHSA突然変異体HSA−Glu37TAGのゲノム組込みを実施した。この突然変異体をPichia pastorisでの発現に選択したのは、例えばセレクターコドンTAGに応答して突然変異体蛋白質に組込まれる非天然アミノ酸はHSA蛋白質の一重目の螺旋で溶媒に接触可能であるので、その後のインビトロ結合反応が可能になるためである。国立衛生研究所、哺乳動物遺伝子コレクション(アクセション番号BC023034)から野生型HSA(WT HSA)のヌクレオチド配列を入手し、QuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)に記載されている方法に従って作製した上記突然変異体の作製に備えてpYES2.1ベクターにクローニングした。突然変異体HSA対立遺伝子及びWT HSAを各々BamHI及びEcoRI制限部位の間でpPIC3.5kに再クローニングし、WT及び突然変異体の両者のHSA発現をAOX1プロモーター及びターミネーターの転写制御下に置いた(図1)。HSAの24アミノ酸哺乳動物「プレプロ」リーダー配列(例えばアミノ酸配列MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR)はP. pastoris分泌シグナルに適合可能であり、培地への蛋白質の放出を可能にする。このプレプロ配列は成熟HSAには存在しない(Yeh, et al. (1992) "Design of Yeast-Secreted Albumin Derivatives for Human Therapy:Biological and Antiviral Properties of a Serum Albumin-CD4 Genetic Conjugate." Proc Natl Acad Sci USA 89:1904-8)。
【0088】
各々HIS4とGeneticin(登録商標)(Gen)マーカーをコードするpPIC3.5k−HSA構築物をSacIで直鎖化し、5’AOX1遺伝子座への挿入を誘導し、GenHisargMut表現型を有するGS200形質転換体を得るか、又はBglIIで直鎖化し、aox1::HSA遺伝子置換を誘導し、GenHisargmut表現型を有するGS200形質転換体を得た。得られたフラグメントを使用し、コンピテントGS200細胞をエレクトロポレーションにより形質転換した。
【0089】
マルチコピーピキア発現キット(Invitrogen)及び他の文献(例えばSears, et al. (1998) "A Versatile Set of Vectors for Constitutive and Regulated Gene Expression in Pichia pastoris." Yeast 14:783-790及びBecker, et al.(1991) "High Efficiency Transformation of yeast by electroporation." Methods Enzymol Ed. Jon Abelson, et al. 194:182-187参照)に記載されている標準方法を使用して酵母細胞をエレクトロコンピテントにした。pPIC3.5k−HSAカセットをそのゲノムに保有するPichia pastoris形質転換体をヒスチジン不含再生デキストロースベース(RDB)寒天プレートでヒスチジン原栄養性について選択した。次に0.25〜4.0mg/mL Geneticin(登録商標)を添加した酵母エキスペプトンデキストロース(YPD)寒天プレートで形質転換体をGeneticin(登録商標)耐性についてスクリーニングした。aox1::HSA遺伝子置換からの形質転換体は0.25mg/mL Geneticin(登録商標)を添加したYPDプレートで増殖し、HSA−Glu27TAGカセット1コピーがゲノムに存在していることが分かったが、5’AOX1挿入からの形質転換体は2.5mg/mL Geneticin(登録商標)を添加したYPDプレートで増殖し、HSA−Glu27TAGカセットのマルチコピーがゲノムに存在していることが分かった。aox1::HSA遺伝子置換からのHSA−Glu37TAG形質転換体1株と、5’AOX1挿入からのHSA−Glu37TAG形質転換体1株を釣菌し、エレクトロコンピテントにした。WT HSA(mutarg表現型)1コピーを保有するGS200クローンを発現対照用に凍結した。
【0090】
p−アセチルフェニルアラニルtRNAシンテターゼ(pApaRS)とtRNACUAをコードするインサートを含むようにPeter Schultz研究所からの最適化出芽酵母発現プラスミドであるpPR1−PGK1+3SUP4−tRNACUAからプラスミドpREAVを構築した(図2)。この直交アミノアシルtRNAシンテターゼ/直交tRNA対は大腸菌に由来し、非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニンを出芽酵母発現システムに組込むために従来最適化されている(Chen, S. et al. (2007) "An Improved System for the Generation and Analysis of Mutant Proteins Containing Unnatural Amino Acids in Saccharomyces cerevisiae." Journal Molec Bio 371:112-22)。
【0091】
pPR1−PGK1+3SUP4−tRNACUAはtRNACUAのタンデムコピー3個をコードする。pREAVを構築するために、pPR1−PGK1+3SUP4−tRNACUAベクターを鋳型として使用してPCRを実施し、2u起点とTRPマーカーをコードするベクター上の領域のすぐ外側に配置された制限部位KpnI及びHindIIIを含むpPR1由来プラスミドを作製した。ARG4(アクセション番号AF321097)をJames Cregg研究所の寄贈品であるプラスミドpBLARGからPCRにより増幅し、KpnI及びHindIII制限部位に挟まれたARG4をコードするフラグメントを作製した。KpnI/HindIII ARG4フラグメントを上記pPR1由来ベクターにライゲーションし、2u起点とTRPマーカーに置換した。次にAflII及びAscI制限部位をPCRによりADH1プロモーターの外側でこの構築物に導入した。pApaRSをコードするNotI/EcoRIインサートをNotI及びEcoRI消化により直鎖化したpPIC3.5Kプラスミドにクローニングし、pApaRS発現をAOX1プロモーター及びターミネーターの転写制御下に置いた。pApaRSをコードする遺伝子であるAOX1プロモーターとAOX1転写ターミネーターを含むフラグメントをこのpPIC3.5K由来構築物から増幅し、AflII及びAscI制限部位に挟まれたPAOX1−pApaRS−TAOX1フラグメントを作製した。AflII/AscIで消化した上記pPR1誘導体にこのフラグメントをライゲーションし、pREAV−pApaRSを作製した(図2)。最終pREAV−pApaRS構築物は大腸菌pUC oriを含み、pApaRSをコードする遺伝子をAOX1プロモーター及び転写ターミネーターの制御下に置き、bla(例えばβ−ラクタマーゼ、ARG4及びtRNACUA3コピーをコードする遺伝子)をPGK1プロモーターの転写制御下に置く(図2)。
【0092】
次にpREAV−pApaRSをAatII消化により直鎖化し、直鎖化構築物を使用し、突然変異体HSA対立遺伝子を保有する先に単離したエレクトロコンピテントGS200株2株を形質転換した。アルギニン不含RDBプレートでアルギニン原栄養性について形質転換体を選択し、0〜2.5mg/mL Geneticin(登録商標)を添加したYPDプレートで上記のようにGeneticin(登録商標)耐性について再スクリーニングした。次にこれらの株を下記後続実験で使用し,HSA発現レベルとPichia pastorisにおける突然変異体HSA蛋白質への非天然アミノ酸pApaの組込みをモニターした。
【0093】
形質転換体(例えばMut単離株20株とmut単離株20株)をメタノール誘導条件下で120〜144時間増殖させた。GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS mut単離株1株とGS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mut単離株1株は各々高レベルの突然変異体HSAを発現することが判明し、HSA対立遺伝子でO−tRNAによりコードされるセレクターコドンのアンバー抑圧が予想されるので、これらの単離株を更に分析することにした。変性ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)で遠心した培地の20ulサンプルのゲル電気泳動によりHSA発現をモニターした。ポリアクリルアミドゲル上でサンプルを泳動させ、クーマシー染色して可視化した処、非天然アミノ酸p−アセチルフェニルアラニン(pApa)の存在下のみでHSA発現が認められた(図3)。mut単離株からの蛋白質収率は約10〜12mg/mlであり、Mut単離株からの収率は10〜15mg/mlであった。
【0094】
セレクターコドンに応答して非天然アミノ酸p−アジドフェニルアラニン(pAzpa)を蛋白質に組込むように構築した株でこれらの実験を繰返した。大腸菌に由来し、出芽酵母発現システムで非天然アミノ酸pAzpaを組込むように既に最適化されたp−アジドフェニルアラニンシンテターゼ(pAzpaRS)が従来記載されている(Chen, S. et al. (2007) "An Improved System for the Generation and Analysis of Mutant Proteins Containing Unnatural Amino Acids in Saccharomyces cerevisiae." Journal Molec Bio 371:1 12-22)が、これをEagIとNcoIで予め消化しておいたpREAVにクローニングした。この構築物を従来記載されているようにAatIIで直鎖化し、GS200 HSA−37TAG Mut株に形質転換した。得られた形質転換体を上記のように分析した処、GS200 HSA−37TAG pREAV−pAzpaRS Mut単離株1株は非天然アミノ酸pAzpaを組込んだ高レベルのHSAを発現することが判明したため、この単離株をその後の実験に使用することにした。この単離株はpAzpaを添加した培地のみで突然変異体HSA蛋白質を発現した。
【0095】
HSAへの非天然アミノ酸pApaの組込みを確認するために、マルチコピーピキア発現キット(Invitrogen)に記載されている方法を多少変更して使用し、HSA発現規模を拡大するように調製物を作製した。要約すると、GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mutのコロニー1株と、GS200 HSA−WT pREAV−pApaRSのコロニー1株を各々独立して液体YPD培地でほぼ飽和まで増殖させた。これらの2種類の培養液を使用し、緩衝グリセロール酵母エキス培地(BMGY)各1Lに接種し、29〜30℃で振盪下に増殖させた。16〜20時間後に培養液は各々約8.0の光学密度(OD600)に達していたので、1500×gで5分間遠心した。1:9比の緩衝複合メタノール培地(BMMY):緩衝最少メタノール(BMM)200mlに細胞ペレットを再懸濁した。24時間おきにメタノールを1:9 BMMY:BMMに終濃度0.5%まで添加し、誘導を維持した。144時間にわたって24時間おきに両者培養液から20ulずつ分取した。経時的に分取したサンプルを遠心して細胞をペレット化し、蛋白質含量を分析するために上清をSDS変性ポリアクリルアミドゲル上で泳動させた。Pichia pastoris発現システムで3日間メタノール誘導後に、クーマシー染色したポリアクリルアミドゲル上にHSAの分子量に対応するバンドが一般に認められる。SDS−PAGE上でサンプルを泳動させ、クーマシー染色して可視化した処、5日間メタノール誘導後に、GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mut株から発現されるHSAの力価は10〜12mg/Lに達したが、野生型HSAでは25〜30mg/Lであった。
【0096】
GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mutより発現されるpApaを組込んだ突然変異体HSA蛋白質と、WT HSA蛋白質を標準精製技術により精製した(例えばSumi, et al. (1999) "Purification of recombinant human serum albumin:efficient purification using STREAMLINE." Bioseparation 8:195-200; Wantanabe, et al. (2001) "In vitro and in vivo properties of recombinant human serum albumin from Pichia pastoris purified by a method of short processing time." Pharm Res 18:1775-1781参照)。要約すると、GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS MutとGS200 HSA−wt pREAV−pApaRSの培養液を3000×gで10分間遠心した。各培養液の上清を回収し、80%まで硫酸アンモニウムの添加により各々から蛋白質を沈殿させた後に10,000×gで20分間遠心した。得られたペレットをバッファーA(25mM Tris−HCl,25mM NaCl,1mM EDTA pH=8.5)+Roche Complete(登録商標)プロテアーゼインヒビターカクテルに再可溶化し、バッファーA+Roche Complete(登録商標)プロテアーゼインヒビターカクテルで一晩透析し、MonoQアニオン交換カラムでFPLCにより精製した。0−80%バッファーB(バッファーA+1M NaCl)の直線勾配を使用して画分を溶出させ、SDS PAGEでHSAの有無について分析した。20%〜30%バッファーBで溶出した画分はHSAを含有していることが判明したので、PBS(pH=7.6)で透析し、サイズ排除カラムで更に精製した。サイズ排除カラムで精製中に画分を分取し、SDS PAGEによりHSAに有無について分析した。
PBS(pH=7.6)13ml〜15.5mlで溶出した画分はHSAを含有していることが判明したので、濃縮し、C8逆相HPLCカラムで精製した。水中40−46%アセトニトリル,0.1%トリフルオロ酢酸の直線勾配を使用して画分を溶出させ、分取し、SDS PAGEでHSAの有無について分析した。水中42−45%アセトニトリル,0.1%トリフルオロ酢酸でC8カラムから溶出した画分はHSAを含有していることが判明した。
【0097】
GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mutにより発現されるHSAへのpApaの組込みを確認するために、蛋白質をトリプシン消化後に液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析法(LC−MS/MS)により分析した。LC−MS/MS分析の結果を図4に示す。図4は過酢酸で酸化したペブチドALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKの三重荷電前駆体イオン(m/z=847.765)の部分注釈付きタンデム質量スペクトルを示す。E*は成熟HSAのE37のpApaによる置換を表す。観測されるフラグメントイオン系列により置換が明白に裏付けられる。
【0098】
GS200 HSA−37TAG pREAV−pApaRS Mutにより発現されるHSAへのpApaの組込みを確認するために更に実験を行った。WT HSAとアミノ酸37位にpApaを組込んだHSAを各々150mM NaCl,50mM NaOAc(pH=4.7)中でアミノオキシ基を含む1.1kDaペブチドの存在下にインキュベートした。次にサンプルを上記のようにC8逆相HPLCカラムで精製し、未反応の1.1kDaペブチドを除去し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法により分析した。pH=4.7でアミノオキシ基はケトンと直交ライゲーションを生じ、オキシムライゲーションを形成することが知られている(Dirksen, et al. (2006) "Nucleophilic catalysis of oxime ligation." Angew Chem Int Ed Engl 45:7581-4)。従って、アミノ酸37位にpApa(例えば、アミノ酸37位に溶媒接触可能なケト基)を組込んだ突然変異体HSA蛋白質は上記1.1kDaペブチドとオキシムライゲーションを形成すると予想された。MALDI分析の結果によると、pApaを組込んだHSAのみが約1kDaの質量増加を示す(図5)。他方、WT HSAの質量は変化せず、突然変異体HSA蛋白質への非天然アミノ酸pApaの部位特異的組込みが更に確認された。
【実施例2】
【0099】
メタノール資化性酵母Pichia pastorisの遺伝子レパートリーの拡張
非天然アミノ酸による蛋白質突然変異誘発の有用性を増すために、メタノール資化性酵母Pichia pastorisにおける組換え発現システムを開発した。8種類の非天然アミノ酸に特異的なアミノアシルtRNAシンテターゼ/サプレッサーtRNA(aaRS/tRNACUA)対を真核転写制御因子間に挿入し、P. pastorisゲノムに安定的に組込んだ。メタノール資化性酵母からの突然変異体蛋白質の収率は150mg l−1を上回り、出芽酵母で報告されている収率よりも一桁以上良好であった。更に、ケトアミノ酸(p−アセチルフェニルアラニン,図11,構造1)を組込んだヒト血清アルブミン突然変異体をこのシステムで効率的に発現させることができ、スロンボスポンジンペプチドミメティックと選択的に高収率で結合できることを示す。この手法によると、既存システムでは発現が実際的でない非天然アミノ酸との複合蛋白質を高収率で生産できると思われる。
【0100】
最近、本発明者らは新規性質を有する多様な非天然アミノ酸(フルオロフォア、金属イオンキレート基、フォトケージド基、光架橋基、NMR、結晶構造分析及びIR用プローブ、並びに翻訳後修飾アミノ酸)を原核生物と真核生物の両者で遺伝的にコードさせることが可能な手法を開発した1−3。これはナンセンス又はフレームシフトコドンに応答して所望の非天然アミノ酸を選択的に挿入するように意図された直交アミノアシルtRNAシンテターゼ/サプレッサーtRNA(aaRS/tRNACUA)対の進化により達成される。これまでに、40種類を越える非天然アミノ酸を大腸菌、出芽酵母、及び数種類の哺乳動物細胞株の遺伝子レパートリーに追加するためにこの手法が利用されている1,2,4。これらのシステムにおける直交性は、(翻訳における機能を維持しながら)宿主アミノアシル化機構と移植されるaaRS/tRNA対の間に交差アミノアシル化が生じないように別個のtRNA因子を有する直交aaRS/tRNACUA対を宿主生物に移植することにより達成される。現在のシステムでは、大腸菌ではMethanococcus jannaschiiチロシルRS/tRNACUA対から誘導され、出芽酵母2,6又は哺乳動物細胞では大腸菌チロシル又はロイシルRS/tRNACUA対から誘導されるaaRS/tRNACUA対を使用した場合にこれは最も成功することが立証されている。その後、該当非天然アミノ酸を認識し且つ20種類の標準アミノ酸の1種を認識しないように直交aaRSの特異性を改変するために指向的進化を使用する。
【0101】
細菌宿主で容易に発現されない蛋白質を大量生産するようにこの手法を拡張するためには、低コストで拡張性があり、複雑な翻訳後修飾蛋白質を生産できる組換えシステムが望ましい。このような宿主の1例は大腸菌と同等の収率で哺乳動物蛋白質を産生することが可能なPichia pastorisである。腫瘍壊死因子(TNF)、破傷風毒素Cフラグメント(TTC)、及びヒト血清アルブミン(HSA)等の治療用蛋白質は高密度発酵で発現レベルが>10g l−1であった8−11。P. pastorisがこのような収率で蛋白質を産生できるのは、最も高度に制御される最強の公知プロモーターの1種であるそのアルコールオキシダーゼ1プロモーター(PAOX1)によると考えられる12。更に、P. pastorisは大腸菌で発現される治療用蛋白質を汚染する可能性のある内毒素を含まず、出芽酵母のように抗原性のα1,3グリカン結合を生じない13。更に、抗炎症性抗体における重要な糖結合であるシリル化の制御を含め、P. pastorisにおけるグリコシル化パターンを調節することが可能になった14。これらの理由から、本発明者らは非天然アミノ酸をP. pastorisで遺伝的にコードさせるための手法の開発に着手した。本願では、この宿主で発現される組換えヒト血清アルブミン(rHSA)に8種類の非天然アミノ酸を高い収率と忠実度で部位特異的に導入したことを報告する。
【0102】
結果
2遺伝子カセット発現システムの設計。P. pastorisで自律的に複製するプラスミドは相対的に不安定である15ため、該当標的遺伝子とaaRS/tRNACUA対を2個の異なるプラスミドでカセット内にコードさせ、安定的にゲノムに組込んだシステムを考案した。二重栄養要求株GS200(arg4,his4)を蛋白質発現用宿主株として使用し、該当遺伝子を市販pPIC3.5kプラスミド(HIS4,Gen)に挿入した(図6a)16。短命な治療用ポリペプチドの血清半減期を延長する融合蛋白質又はペプチドバイオコンジュゲートを作製するのに有用であるため、rHSAをモデル蛋白質として使用した17−19。大腸菌と出芽酵母におけるrHSAの発現は蛋白質の複雑なジスルフィド架橋により実際的ではない。PCR突然変異誘発法によりGlu37TAG突然変異体rHSA(rHSAE37X)を作製し、AOX1プロモーター及びターミネーター下で発現させ、pPIC3.5k−rHSAE37Xを作製した。Glu37は溶媒接触可能な螺旋に含まれるので、この部位に導入した化学的に反応性の非天然アミノ酸(即ちp−アセチルフェニルアラニン,図11,構造1)とペプチドの結合を容易にし、比較的嵩高な基を組込んだ場合にも天然蛋白質構造及びフォールディングの妨害を最小にできると考えられる。HSAの24アミノ酸哺乳動物「プレプロ」リーダー配列(図6e)はP. pastorisにおける発現に完全に適合可能であり、培地への成熟蛋白質の放出を可能にする20。蛋白質発現の陽性対照として、野生型rHSA(rHSAWT)を使用して同様にpPIC3.5k−HSAWTを作製した。このプラスミドを5’AOX1プロモーターで直鎖化すると、カセットの1コピー以上のゲノム組込みが可能になり、一般にコピー数が多いほど標的蛋白質の総収率も高くなる21。このような組込みではAOX1遺伝子は無傷のままであり、酵母はメタノールを迅速に利用する能力(Mut表現型)を維持する。あるいは、AOX1カセットのいずれかの側の直鎖化により遺伝子置換を実施し、AOX1遺伝子をpPIC3.5kベクターで置換することもできる16。AOX1をもたない酵母はメタノール利用に弱いほうのAOX2遺伝子に依存し、表現型はmutである。rHSAの発現は一般にmut酵母で実施される22ので、pPIC3.5k−HSAE37Xを直鎖化してAOX1遺伝子に代用し、GS200−rHSAE37X(HIS4,arg4,Gen,mut)を得た。成功した形質転換体はヒスチジン不含最少培地プレートと、0.25mg ml−1までのアミノグリコシド抗生物質ゲネチシンを含有するリッチ培地プレートで正常に増殖した。
【0103】
直交aaRS/tRNACUA対をゲノムに組込むために、先に開発した出芽酵母での組換え過剰発現用のpPR1−PPGK1+3SUP4−tRNATyrCUAベクター23図6b)を改変した。先に出芽酵母24で進化させたp−アセチルフェニルアラニン(pApa,図11,構造1)に特異的なアミノアシルtRNAシンテターゼ(pApaRS)をHisタグと共にアルコール脱水素酵素1プロモーター(PADH1)及びターミネーター(TADH1)の間に挿入し、その発現をアッセイした。5’CCAをもたないコグネイト大腸菌tRNATyrCUAを3個のタンデム反復配列としてホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PPGK1)の背後に挿入した。転写後プロセシングを助長するために、先述したようにtRNAを酵母サプレッサーtRNA遺伝子SUP4に由来する領域で挟んだ23。真核下流プロセシングによりtRNA機能に必要な5’CCAを付加する。pPR1−PPGK1+3SUP4−tRNAtyrCUAの2μ起点とオロチジン5−リン酸脱炭酸酵素(URA3)マーカーをアルギノコハク酸リアーゼ(ARG4)コーディング領域で置換し、組換え真核ARG4ベクター(pREAV−PADH1−pApaRS)(図6c)を得た。このカセットは真核複製起点をもたないので、このカセットの複製はゲノム組込みの場合のみに可能である。ARG4コーディング領域におけるpREAV−PADH1−pApaRSの直鎖化とその後のGS200−HSAE37Xへの形質転換により、完全に原栄養性のP. pastoris GS200−HSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen,mut)を得た。陽性対照として、pREAV−PADH1−pApaRSベクターを同様にGS200−HSAWTにクローニングし、完全に原栄養性のmut,rHSAWTを発現するP. pastoris株を得た。
【0104】
P. pastorisにおけるアンバー抑圧。GS200−HSAWT/pREAV−PADH1−pApaRSから単離したクローンはメタノール誘導条件下で増殖させた場合に2〜3日後にドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)ゲルでクーマシー染色により検出可能な全長rHSAWTを産生した。他方、GS200−HSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSからのクローンは主炭素源としてメタノールとpApaアミノ酸補充下に6日間増殖させた場合に全長rHSAE37pApaを産生することができなかった。全構築物のゲノムの組込みをゲノムPCR(図12)により確認した処、tRNACUAの転写は出芽酵母における同一カセットの転写の約1.5倍であることがノーザンブロット分析により判明した(図7a)。他方、His6xタグではウェスタンブロットによりpApaRSを検出できなかった(図13)。これらの結果から、アンバー抑圧の欠如はpApaRSの組込み不良に関係があることが分かった。従って、強力なPAOX1プロモーターでpApaRSの発現を誘導するようにpREAVを更に改変し、強化型コザックコンセンサス配列(ACCATGG)25をpApaRS遺伝子の5’末端に付加した。更にADH1ターミネーター(TADH1)をAOX1ターミネーター(TAOX1)で置換し、pREAV−PAOX1−pApaRS(図6d)を得た。GS200−rHSAE37Xに形質転換し、上記と同一の表現型を有するGS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRSを得た。この形質転換からのクローンはメタノールとpApaアミノ酸の存在下のみに、rHSAWTを保有する同一クローンの約10〜20%のレベルで全長rHSAE37pApaを産生した。メタノール誘導から2〜3日後にSDS−PAGEゲルにより蛋白質が検出可能になり、24時間おきに0.5%までメタノール補充下の発現から6日後にピークを示した(図7b)。pREAVカセット、pPIC3.5kカセット、メタノール補充、又はpApaアミノ酸を含まない酵母はクーマシー染色により検出可能な蛋白質を産生することができなかった。pApaアミノ酸の不在下では蛋白質発現が生じないことから、pApaRS/tRNAtyrCUA対と内在アミノアシル化機構の間に交差アミノアシル化は生じないと判断される。rHSAE37XへのpApaの部位特異的組込みをトリプシン消化、LC−MS/MSにより確認した(図7c)。観測されたフラグメントイオンから、この非天然アミノ酸は残基37に特異的に組込まれたと判断される。
【0105】
発現の最適化。rHSAE37pApaの発現を最適化する目的で、pPIC3.5k−rHSAE37XをAOX1遺伝子の5’領域の遺伝子座に挿入する(こうしてAOX1遺伝子の完全性を維持する)ことによりGS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen)迅速メタノール利用(Mut)突然変異体を作製した。このようなゲノム挿入により多量化が可能になり、Genと該当遺伝子のタンデムコピーが得られる。得られたクローン1.0mg ml−1までのゲネチシンに耐性を示したが、上記mutクローンはゲネチシンが0.25mg ml−1を越えると死滅し、カセットのマルチコピーの組込みに一致した7,16。単離したクローンからの全長rHSAE37pApa発現をメタノールとpApaアミノ酸の存在下で分析した処、mutクローンに比較して約1.5〜2.0倍の蛋白質が産生されることが分かった(図14)。rHSAE37pApaの収率を更に増すために、pREAVベクターでpApaRS転写を誘導する能力について(PAOX1を含む)6種類の異なるプロモーターを比較した。転写産物mRNAレベルと、pApaRS蛋白質レベルと、総rHSAE37pApa収率をアッセイした。酵母GTP結合蛋白質I(YPT1)26,27及びグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAP)12,28に由来する2種類の構成的プロモーターと、アルコールオキシダーゼII(AOX2)29、ホルムアルデヒド脱水素酵素I(FLD1)12、イソクエン酸リアーゼI(ICL1)12に由来する3種類のメタノール誘導性プロモーターをそれらのメタノール誘導適合性に基づいて選択した。2個のリプレッサー結合配列の一方を欠失させることによりプロモーターを強化する短縮型PAOX2を使用した。シンテターゼの過剰産生が酵母に有害な場合又はrHSAE37Xの産生から細胞エネルギーを奪う場合には、多少弱いPYPT1及びPGAPプロモーター26を使用すると有用であると思われる。全プロモーターをその5’非翻訳領域と共にP. pastorisゲノムDNAからPCRにより増幅した(図15)。配列確認後に、各プロモーターをPAOX1の代わりにpApaRSの5’側でpREAVベクターに挿入し、先に作製したMut GS200−HSAE37Xに形質転換した(図8a)。ターミネーターはTAOX1のままとした。6日間メタノール誘導後にPPromoter−pApaRS発現レベルをノーザンブロットとウェスタンブロットによりモニターし、PAOX1−pApaRSと比較した(図8b〜d)。P. pastorisの固有の発現変動により、クローン2株をウェスタンブロット分析に選択し、産生能の高いほうのクローンをノーザンブロットにより分析した。PFLD1はmRNAレベルでPAOX1よりも4倍良好なpApaRS転写を誘導し、5倍のpApaRS蛋白質を産生した。PGAP、PYPT1、PICL1、及びPAOX2はいずれもPFLD1よりもpApaRS発現が低かった。この結果と一致し、培地へのrHSAE37pApa発現により測定した場合に総アンバー抑圧はPFLD1−pApaで最高であった(図9)。最大収率は>150mg l−1であり、即ちrHSAWT収率(352mg l−1)の約43%であった(図16,17)。
【0106】
rHSAE37pApaとのオキシムライゲーション。この改変型rHSAが生理活性ペプチドのキャリヤーとして有用であることを立証するために、rHSAE37pApaのユニークなケト側鎖と抗血管新生ペプチドABT−510のオキシムライゲーションを実施した(図10)。このスロンボスポンジン−1(TSP−I)プロペルジンタイプ1反復配列ミメティックはヒトで強力な抗腫瘍活性を示すが、静脈内投与した場合に腎クリアランスが速い30−32。6番目のL−ノルバリン残基の代わりにユニークなε−(2−(アミノオキシ)アセチル)−L−リジンUAAを有する9アミノ酸ペプチドミメティックを合成した。TSP−1の既知構造−活性関係によると、この位置の修飾は生物学的活性を有意に変化させないと予想される33。pH<5のとき、アミノオキシ基はpApaのケト基と選択的なオキシムライゲーションを生じ、ABT−510ペプチドをrHSAE37pApaの残基37と共有結合させる(図10a,上段)。従来の結合プロトコルは効率的なライゲーションのためにアニリン触媒を使用していた34,35が、75μM rHSAE37pApaと30倍過剰のペプチドを使用して一晩反応させると、rHSAE37pApaとのオキシムカップリングはアニリンを使用せずに約77%進行した。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法によりペプチドによるrHSAE37pApaの誘導体化の程度を確認した(図10b)。同一条件下でrHSAWT(残基37のグルタミン酸)をアミノオキシ修飾ABT−510ペプチドで処理した場合にはMALDI質量分析法により結合は観測されなかった。
【0107】
遺伝子レパートリーへの8種類のUAAの追加。この新規に作製された組換え発現システムの汎用性を立証するために、出芽酵母法により進化させた非天然aaRSをpREAV−PFLD1に挿入した。p−ベンゾイルフェニルアラニン(pBpa,光架橋基,図11,構造3)、p−アジドフェニルアラニン(pAzapa,光架橋基,化学反応性,図11,構造4)36、p−(プロパルギルオキシ)フェニルアラニン(pPpa,化学反応性,図11,構造5)36、p−メトキシフェニルアラニン(pMpa,構造/機能プローブ,図11,構造6)、及びp−ヨードフェニルアラニン(pIpa,重原子,図11,構造7)に特異的なaaRSを最適化pREAV−PFLD1ベクターでいずれもPFLD1の後方に挿入した(図11a,b)。比較のために、野生型大腸菌チロシルRS(wt,図11,構造2)も新規発現ベクターに挿入した。GS200−HSAE37X(HIS4,arg4,Gen,Mut)に形質転換後、rHSAE37Xの37位のアンバー突然変異を抑圧するその能力についてpREAV−PFLD1−pApaRSを保有する株と選択したクローンを比較した。抑圧効率はpApa及びpAzapa突然変異体で同等(rHSAWTの効率の40〜45%)であり、pIpa以外の他の全突然変異体はrHSAWTの効率の>25%を発現した。コグネイトアミノ酸の不在下で蛋白質発現は認められず、この新規システムの高度の直交性が立証された(図11c)。
【0108】
最近、出芽酵母で蛋白質に他の非天然アミノ酸を組込むために第2の直交大腸菌ロイシル由来RS/tRNACUA対(aaRSをLeuRSと呼ぶ)を作製した37,38
この直交対に由来する非天然LeuRSを新規P. pastoris発現システムに適応させるために、pREAV−PFLD1プラスミドのtRNA領域を改変した。PPGK1の下流の既存のtRNATyrCUAカセットを切除し、先述したように、5’CCAをもたず、SUP4セグメントにより分離されたtRNALeu5CUAの3個のタンデム反復配列に対応するコーディング領域で置換し、pREAVleu−PFLD1を作製した。4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルセリン(DMNB−S,フォトケージドセリン,図11,構造8)37と2−アミノ−3−(5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1スルホンアミド)プロパン酸(ダンシルアラニン,ダンシルフルオロフォア,図11,構造9)38に特異的なLeuRS突然変異体をPFLD1の後方に挿入し、pREAVleu−PFLD1−LeuRS(図11d〜f)を作製した。Mut GS200−rHSAE37Xに形質転換後に、選択したクローンを使用し、対応する変異体HSAE37Xを発現させた(図11f)。DMNB−Sに特異的なLeuRS突然変異体はDMNB−Sのシステインアナログ(DMNB−C)を受容することが最近示されており、これらの発現実験では合成し易いことからこのアナログを使用している。コグネイトアミノ酸の不在下でも少量の全長蛋白質が産生されたが、トリプシン消化物のLC−MS/MSの結果、対応する非天然アミノ酸の存在下におけるシステムの高い忠実度が確認された(図18)。抑圧効率は3日間発現後にrHSAE37DMNB−CではrHSAWTの効率の約37%であり、rHSAE37dansylではrHSAWTの効率の23%であった。
【0109】
考察
出芽酵母で非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質の発現を最適化しようとする従来の試みの結果、モデルシステムで8〜15mg l−1の最大収率が得られたが、これは本発明で開発されたP. pastorisシステムで実証された収率よりも一桁以上低い。Wang研究所の研究の結果、酵母におけるナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)経路のノックダウンにより蛋白質発現を2倍まで増加できることが最近明らかになった39。tRNACUA転写を誘導するためにSNR52に由来するプロモーターの使用と組合せると、出芽酵母で従来産生された約15mg l−1という突然変異体蛋白質収率の300倍の収率に達することができた39。このように、NMD経路のUPF1遺伝子のノックダウンとSNR52−tRNACUAプロモーターシステムの使用を組合せると、P. pastorisにおける収率を更に増加することができる。更に、Kobayashi研究所における研究の結果、P. pastorisからのrHSAWTの収率は標準振盪フラスコよりも流加発酵で発現させた場合のほうが一桁以上良好(>10g l−1)であることが判明した10
【0110】
結論として、本発明者らはメタノール資化性酵母への非天然アミノ酸の生合成的組込み方法を拡張した。2種類のaaRS/tRNACUA対がP. pastorisで直交性であることが判明したため、rHSAE37Xの残基37のアンバーコドンに応答して8種類の異なる非天然アミノ酸を組込んだ突然変異体蛋白質を発現させるために使用した。この汎用性レベルから、この発現システムは出芽酵母で現在進化中のシンテターゼと共に多数の他の非天然アミノ酸に利用でき、本明細書に記載する非天然アミノ酸又はaaRS/tRNACUA対に限定されないと予想される。この新規システムは収率と忠実度が高いため、ユニークな生物学的及び薬理的性質を有する治療用蛋白質を有用な量で得られると考えられる。例えば、蛋白質を部位特異的にペグ化又は架橋するためにはオキシムライゲーションや銅触媒1,3−シクロ付加反応(「クリックケミストリー」)等の化学反応を利用することができ、放射性同位体と結合させるためには金属イオン結合性アミノ酸を組込むことができ、夫々HSA等のキャリヤー蛋白質又は抗体等のターゲティング蛋白質とペブチド又は毒素コンジュゲートを形成することができる。更に、上記rHSAE37pApa−ABT−510コンジュゲートはインビトロ抗血管新生アッセイで現在試験中である。グルコーゲン様ペブチド1ミメティック(GLP−1)や副甲状腺ホルモン(PTH)ペブチドを含む他の迅速に清澄化されたペブチドにも、内在非免疫原性キャリヤーとしてのrHSAE37pApaの使用を拡大する試みが現在進行中である。
【0111】
方法
pPIC3.5k−rHSAの構築。rHSA遺伝子は哺乳動物遺伝子コレクション(NIH)遺伝子アクセションBC034023から入手した。pPIC3.5k直鎖化16に適合できるように、プライマー(IDT)として、BglII(781)にはBglII 1F,5’−GAC AGA CCT TAC CAA AGT CCA CAC GGA ATG CTG CCA TG−3’及びBglII 1R,5’−GGT AAG GTC TGT CAC TAA CTT GGA AAC TTC TGC AAA CTC AGC TTT GGG−3’を使用し、BglII(817)にはBglII 2F,5’−CAT GGA GAC CTG CTT GAA TGT GCT GAT GAC AGG GCG G−3’及びBglII 2R,5’−CAA GCA GGT CTC CAT GGC AGC ATT CCG TGT GGA C−3’を使用し、改変Quik Change突然変異誘発(Stratagene)プロトコル40によりrHSAからBglII部位を除去し、rHSAWTを作製した。改変Quik Changeプロトコルと、プライマーとしてGlu37 F’,5’−GAT TGC CTT TGC TCA GTA TCT TCA GCA GTG TCC ATT TTA GGA TCA T−3’及びGlu37 R’,5’−GTT TTT GCA AAT TCA GTT ACT TCA TTC ACT AAT TTT ACA TGA TCC TAA AAT GG−3’を使用して37番目のGlu残基をアンバーコドンTAGで置換し、rHSAE37Xを作製した。プライマーとしてHSAフォワード,5’−ATC CGA GGA TCC AAA CGA TGA AGT GGG TAA CCT TTA TTT CCC TTC TTT TTC−3及びHSAリバース,5’−GCT AAC GAA TTC ATT ATA AGC CTA AGG CAG CTT GAC TTG CAG C−3’を使用してrHSAWTとrHSAE37XrHSAWTを増幅し、EcoRIとBamHI(NEB)で消化し、同様に消化したpPIC3.5kベクター(Invitrogen,ベクターマップはhttp://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/ppic3.5kpao man.pdfで閲覧可能)にライゲーションし、pPIC3.5k−rHSAWT又はpPIC3.5k−rHSAE37Xを作製した。構築物をDNAシーケンシングにより確認し、大腸菌DH10B(Invitrogen)で増幅した。
【0112】
pREAVの構築。プライマーとしてpESC F,5’−TAC CAC TAG AAG CTT GGA GAA AAT ACC GCA TCA GGA AAT TGT AAA CGT−3’及びpESC R,5’−GTG AGG GCA GGT ACC GTT CTG TAA AAA TGC AGC TCA GAT TCT TTG TTT G−3’を使用し、TRP及び2μ起点領域を除いてpApaRSを保有するpPR1−PPGK1+3SUP4−tRNAtyrCUAベクター23をPCRにより増幅し、制限部位KpnI及びHindIIIを付加し、HindIII及びKpnI(NEB)で消化した。プライマーとしてARG4 F new,5’−AAA TAT GGT ACC TGC CCT CAC GGT GGT TAC GGT−3’及びARG4 R new,5’−CAT TTC AAG CTT CTA GTG GTA GGA ATT CTG TAC CGG TTT AC−3’を使用してARG4コーディング領域をpBLARG(Keck Graduate Institute,Claremont,CAのJames Cregg研究所の寄贈品)から増幅し、KpnI及びHindIIIで消化し、同様に消化したpPR1−PPGK1+3SUP4−tRNAtyrCUA PCR産物にライゲーションし、組換え真核ARG4ベクターpREAV−PADH1−pApaRSを作製した。pREAV−PAOX1−pApaRSを作製するために、AOX1プロモーター及びターミネーター配列をpPIC3.5kから誘導した。プライマーとしてKETO−Koz−F,5’−TTC TGA GAA TTC ACC ATG GCA AGC AGT AAC TTG ATT AAA CAA TTG C−3’及びKetoRS R 6xHis,5’−TAG GCT CGG CCG CTT AGT GGT GGT GGT GGT GGT GTT TCC AGC AAA TCA GAC AGT AAT TCT TTT TAC−3’を使用してpApaRSを増幅し、EcoRI及びNotI(NEB)で消化し、同様に消化したpPIC3.5kにライゲーションし、pPIC3.5k−pApaRSを作製した。プライマーとしてpESC−AOX−KETO F,5’−ATC GTA CTT AAG GAA AGC GTA CTC AAA CAG ACA ACC ATT TCC−3’及びpESC−AOX−KETO R,5’−TTC TCA GGC GCG CCA TCG CCC TTC CCA ACA GTT GCG−3’を使用し、PADH1−pApaRS−TADH1領域を除いてpREAV−PADH1−pApaRSをPCRにより増幅し、制限部位AscI及びAflIIを付加した。プライマーとしてpPIC−keto AOX5 F,5’−ATC GTA CTT AAG AGA TCT AAC ATC CAA AGA CGA AAG GTT GAA TGA AAC−3’及びpPIC−keto AOXTT R,5’−TGC ACA GGC GCG CCA AGC TTG CAC AAA CGA ACT TCT CAC TTA ATC TTC−3’を使用してpPIC3.5k−pApaRSからPAOX1−pApaRS−TAOX1コーディング領域を増幅し、AscIとAflII(NEB)で消化し、同様に消化したpREAV−PADH1−pApaRS PCR産物にライゲーションし、pREAV−PAOX1−pApaRSを作製した。サイズマッピングとシーケンシングにより構築物を確認した。
【0113】
P. pastorisへのカセットの形質転換。Keck Graduate InstituteのJames Cregg研究所の寄贈品である二重栄養要求株GS200(his4,arg4)を宿主P. pastoris株として使用した。酵母コンピテンシー、形質転換、及び培地組成に関するプロトコルはマルチコピーピキア発現キット−バージョンF16(Invitrogen,http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/pichmulti_man.pdfでマニュアルを閲覧可能)に記載されている。要約すると、GS200−rHSAE37X(HIS4,arg4,Gen,mut)を作製するために、pPIC3.5k−rHSAE37X 20μgをBglII(NEB)で直鎖化し、エタノール沈殿により10μlまで濃縮し、2mmエレクトロポレーションキュベット(Fisher)で新たにコンピテントになった80μlのGS200に加え、GenePulser Xcell(BioRad)でP. pastoris設定(2000V,25μF,200Ω)下にエレクトロポレーションした。細胞を1M冷ソルビトール1mlで回収した。
L−アルギニン(arg)4mg ml−1を添加した再生デキストロースバクト寒天(RDB)プレート(15cm)に回収した細胞250μlを撒き、30℃でインキュベートした。3日後に、酵母ペプトンデキストロース(YPD)培地1mlを加えた96ウェル2mlブロック(Nunc)にコロニーを釣菌し、一晩増殖させた(29.2℃,300r.p.m.)。培養液を100倍に希釈し、ゲネチシン(Invitrogen)0.25ml−1を添加したYPD寒天プレートに1〜2μlレプリカを撒き、30℃でインキュベートした。4日後に、コロニーG3は良好な増殖を示したので、釣菌し、コンピテントにした。回収した細胞をL−ヒスチジン(his)とargを含まないRDBプレートに撒いた以外はコンピテントG3で上記プロトコルを使用して形質転換を実施し、GS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRSとGS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen,mut)を作製した。3日後に、96ウェル2mlブロックにコロニーを釣菌し、0.25mg ml−1ゲネチシンに対する耐性について上記のように再スクリーニングした。同様にGS200−rHSAWT/pREAV−PADH1−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen,mut)を作製し、コロニーF2を単離した。pREAV−PAOX1−pApaRSをGS200に形質転換させることによりGS200−pREAV−PAOX1−pApaRS(his4,ARG4,Gen,mut)を作製したが、his4mg ml−1を添加したRDBプレートに撒き、ゲネチシン耐性についてそれ以上スクリーニングしなかった。
【0114】
試験蛋白質発現。全蛋白質発現実験はマルチコピーピキア発現キット16に記載されているmutのプロトコルに従った。要約すると、ゲネチシン0.25mg ml−1を添加したプレートからGS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRS、GS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRS又はGS200−rHSAWT/pREAV−PADH1−pApaRSのコロニー14株を釣菌し、緩衝グリセロール複合培地(BMGY)(29.2℃,300r.p.m.)10ml中でほぼ飽和(OD600〜12〜18)まで増殖させた。培養液を1500g(10分間)で遠心し、2mM pApaアミノ酸(SynChem)を添加した緩衝メタノール複合培地(BMMY)2mlに再懸濁した。0.5%となるように24時間おきにメタノールを補充しながら6日間増殖を続けた。蒸発を考慮して培地又は滅菌水200μl(培養液容量の10%)を24時間おきに加えた。24時間おきに培地50μlを取出し、3000g(5分間)で遠心により細胞を分離した。清澄化培地25μlをSDSローディングバッファー12.5μlに加え、1分間95℃に加熱し、4−20%トリス−グリシンSDS−PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動させた(150V 1時間)。3日後にGS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS及びGS200−rHSAWT/pREAV−PADH1−pApaRS発現における66.5kDaのバンドがクーマシー染色(40%メタノール,10%酢酸,50%水,0.1%(w/v)クーマシーブリリアントブルーR250(Sigma−Aldrich))により明白に検出可能になり、6日後にピークを示した。GS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRSのクローンG3−2とGS200−rHSAWT/pREAV−PADH1−pApaRSのF2−wtが最高の発現を示したのでその後の比較に使用した。GS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSからのクローンでクーマシー染色により発現を示したものは皆無であった。アンバー抑圧がpApaに特異的であることを確認するために、GS200、G3、GS200−pREAV−PAOX1−pApaRS、G3−2、及びF2−wtからのクローンを2mM pApaと0.5%メタノールの存在下又は不在下で上記のように発現させた(図7b)。
【0115】
tRNAノーザンブロット。G3−2及びGS200のP. pastorisクローン2株と、SCY4−pPR1−PPGK1+2SUP4−tRNA及びSCY4の出芽酵母クローン2株を夫々の発現条件下で増殖させ、Purelink miRNA Isolation Kit(Invitrogen)に同梱のプロトコルと試薬によりマイクロRNA(miRNA)を回収した。各サンプルからのRNA 2μgを6% Novex TBE-Ureaゲル(Invitrogen)2枚にロードし、180Vで1時間泳動させた。0.5×TBEバッファー(Invitrogen)中でXCeIl Surelock Mini−Cell(Invitrogen)と同梱プロトコルを使用してRNAをBiodyne Bナイロンメンブレン(Pall Life Science)に転写した。メンブレンをUV Stratalinker 2400(Stratagene)で自己架橋させた。North2South Chemiluminescent Hybridization and Detection Kit(Pierce)に同梱のプロトコルと試薬を使用してハイブリダイゼーションと検出を行った。要約すると、tRNAserに特異的なビオチン化プローブ:tRNAser cere 1,5’−/5Biosg/CAT TTC AAG ACT GTC GCC TTA ACC ACT CGG CCA T−3’、tRNAser cere 2,5’−/5Biosg/GAA CCA GCG CGG GCA GAG CCC AAC ACA TTT CAA G−3’、tRNAser pich 1,5−/5Biosg/CTG CAT CCT TCG CCT TAA CCA CTC GGC CAT CGT A−3’、tRNAser pich 2,5’−/5Biosg/ACA CGA GCA GGG TTC GAA CCT GCG CGG GCA GAG C−3’の存在下で第1のブロットをインキュベートし、tRNAtyrCUAに特異的なビオチン化プローブ:tRNA 5’biot,5’−/5Biosg/GGA AGG ATT CGA ACC TTC GAA GTC GAT GAC GG−3’及びtRNA 3’biot,5’−/5Biosg/TCT GCT CCC TTT GGC CGC TCG GGA ACC CCA CC−3’の存在下で第2のブロットをインキュベートした。プローブを55℃で一晩インキュベートし、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートに結合させ、ルミノール/エンハンサー安定性ペルオキシド溶液(Pierce)で検出した(図7a)。Photoshop CS2(Adobe)を使用してバンド密度により相対tRNA量を測定した。
【0116】
rHSAE37Xの拡張発現、精製及び質量分析。rHSAE37pApaの拡張発現のために、試験発現プロトコルを改変した。YPDでの飽和G3−2培養液20mlをBMGY 1Lに接種し、OD600〜12〜18まで増殖させた(〜24h,29.2℃,300r.p.m.)。培養液を1500gで遠心し、10% BMMYと2mM pApaを添加した緩衝最少メタノール(BMM)200mlに再懸濁した。6日間増殖(メタノール及び容量補充下に29.2℃,300r.p.m.)後に、培養液を3000gで遠心し、細胞を捨て、培地を0.22μmフィルター(Milipore)に流した。4℃で50%飽和(58.2g)までゆっくりと撹拌下にNHSOを添加することにより培地を硫安(NHSO)沈殿させ、20,000gで20分間遠心し、再び75%飽和(31.8g)までNHSOを加え、20,000gで20分間遠心した。2回目の沈殿はrHSAE37pApaを含有していたので、FPLCバッファーA(25mM Tris−HCl,25mM塩化ナトリウム,1mM EDTA,1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche),pH=8.5)に再懸濁させた。再可溶化した蛋白質をAKTA FPLC精製装置(Amersham Biosciences)(20−35%バッファーB(バッファーA+1M NaCl)で溶出)でMonoQ 5/5カラム(GE Healthcare)により精製した。画分をSDS−PAGEゲルにより分析し、一緒にし、30MWCO透析カセット(Pierce)によりPBSで透析し、AKTA FPLC精製装置(0.5ml min−1のPBS中に14分後に溶出)でSuperdex 200 10/300 GL(GE Healthcare)により精製した。画分をSDS−PAGEゲルにより分析し、一緒にし、Dynamax HPLC(Rainin)(水中40−46% MeCN,0.1% TFAで溶出)でC8 Vydac HPLCカラム(300mm,200Å,5μm,Grace)により精製した。画分をSDS−PAGEゲルにより分析し、rHSAE37pApaを含有する画分を瞬間凍結し、凍結乾燥して白色粉末とした。同様にF2−wtからrHSAWTの精製を行った。
【0117】
トリプシン消化,ナノRPLC−MS/MS。精製したrHSAE37Xを還元条件(10mM TCEP,1MグアニジニウムHCl,100mMトリエタノールアミンHCl,pH=7.8)下に一晩トリプシンで消化した。消化物を逆相固相抽出法(Sep−Pak,C18,Waters)により精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥したペプチドを氷上で過ギ酸(濃ギ酸9部+30% H 1部)41の存在下に1時間インキュベートすることによりシステインからシステイン酸及びメチオニンからメチオニンスルホンへの酸化を実施した。過剰のメルカプトエタノールの添加と水で20倍に希釈することにより反応をクエンチした。LTQ Orbitrapハイブリッド質量分析計(ThermoElectron)を装着したHPLCシステム(Agilent Technologies)を使用してナノRPLC−MS/MSを実施した。トリプシン消化物を通気カラム装置42のプレカラム(4cm,100μm i.d.,5μm,Monitor C18,Column Engineering)に流速〜2μl min−1でロードした。10分間のロード/洗浄時間後に、プレカラムを分析用カラム(10cm,75μm i.d.,5μm C18)に交換することにより溶出を開始した。クロマトグラフィープロファイルは40分間〜100ml min−1で100%溶媒A(0.1%酢酸水溶液)→50%溶媒B(アセトニトリル中0.1%酢酸)とした。先ず高分解能Orbitrapスキャン(m/z500〜2,000)を記録した後に10データ依存性MS/MSスキャン(相対衝突エネルギー=35%;3Da単離窓)を記録するように質量分析計をプログラムしたトップテンスキームに従ってデータ依存性MS/MS獲得を実施した。変動修飾としてpApaによる蛋白質同定用にMASCOT(Matrixscience, London, UK)を使用して生データをSwissProt 51.6データベースで検索した。
【0118】
Mut表現型の創製。GS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen,Mut)を作製するために、pPIC3.5k−rHSAE37X 20μgをSacI又はSalI(NEB)で直鎖化し、先述したように新たにコンピテントになったGS200に形質転換した。細胞を1M冷ソルビトール1mlに回収し、arg 0.4mg ml−1を添加したRDBプレートに撒いた。YPD 1mlを加えた2ml 96ウェルブロックにコロニーを釣菌し、飽和まで(29.2℃,300r.p.m.)増殖させ、100倍に希釈し、ゲネチシン0〜3.0mg ml−1を添加したプレートにレプリカを撒いた。ゲネチシン1.0mg ml−1まで生存したクローン1D12をコンピテントにし、先述したようにpREAV−PAOX1−pApaRSで形質転換し、Arg又はHisを含まないRDBプレートに撒いた。1ml 96ウェルブロックにコロニーを釣菌し、飽和まで増殖させ、100倍に希釈し、ゲネチシン1.0mg ml−1プレートで再スクリーニングした。生存クローン14株を釣菌し、pApaアミノ酸とメタノールの存在下でrHSAE37pApa発現について試験した。一貫性のために、上記のようなmutプロトコルを使用した。
クローンK5は最大の蛋白質発現を示したため、試験発現でG3−2と比較した(図14)。Photoshop CS2(Adobe)を使用してバンド密度により蛋白質の相対量を測定した。
【0119】
pREAV−PPromoter−pApaRSの構築。夫々以下のプライマー:PAOX2 F,5’−GTA TCG CTT AAG TCC AAG ATA GGC TAT TTT TGT CGC ATA AAT TTT TGT C−3’及びPAOX2 R,5’−CGT TAG CCA TGG TTT TCT CAG TTG ATT TGT TTG TGG GGA TTT AGT AAG TCG−3’;PYPT1 F,5’−GTA TCG CTT AAG CAT ATG ATG AGT CAC AAT CTG CTT CCA CAG ACG AG−3’及びPYPT1 R,5’−CGT TAG CCA TGG GAC TGC TAT TAT CTC TGT GTG TAT GTG TGT ATT GGG C−3’;PICL1 F,5’−GTA TCG CTT AAG GAA TTC GGA CAA ATG TGC TGT TCC GGT AGC TTG−3’及びPICL1 R,5’−CGT TAG CCA TGG TCT TGA TAT ACT TGA TAC TGT GTT CTT TGA ATT GAA AG−3’;PFLD1 F,5’−GTA TCG CTT AAG GCA TGC AGG AAT CTC TGG CAC GGT GCT AAT GG−3’及びPFLD1 R,5’−CGT TAG CCA TGG TGT GAA TAT CAA GAA TTG TAT GAA CAA GCA AAG TTG G−3’;PGAP1 F,5’−GTA TCG CTT AAG GGA TCC TTT TTT GTA GAA ATG TCT TGG TGT CCT CGT C−3’及びPGAP1 F,5’−CGT TAG CCA TGG TGT GTT TTG ATA GTT GTT CAA TTG ATT GAA ATA GGG AC−3’(図15)を使用してPAOX2、PYPT1、PICL1、PFLD1、PGAPの5種類のプロモーターをゲノムDNA(P. pastoris GS200)から別々にPCR増幅した。PCR増幅フラグメントをAflIIとNcoI(NEB)で消化し、(アガロースゲル精製によりPAOX2コーディング領域の除去後に)同様に消化したpREAV−PAOX1−pApaRSにライゲーションし、pREAV−PPromoter−pApaRSを作製した。配列確認後、(先に構築したpREAV−PAOX1−pApaRSを含む)プラスミドをAatIIで直鎖化し、新たにコンピテントになったGS200−rHSAE37X(クローン1D12)に形質転換し、先述したようにArg又はHis不含RDBプレートに撒き、GS200−rHSAE37X/pREAV−PPromoter−pApaRS(HIS4,ARG4,Gen,Mut)を作製した。生存クローンを0.75及び1.0mg ml−1でゲネチシン耐性についてスクリーニングした。BMGYを加えた1mL 96ウェルプレートに各プロモーターに対応するクローン48株を釣菌し、飽和まで増殖させた(29.2℃,24h,300r.p.m.)。飽和培養液を1500gで10分間遠心し、細胞をBMMY 200μL+2mM pApaアミノ酸に再懸濁した。6日(補充下に29.2℃,300r.p.m.)後に、3000gで10分間遠心することにより培地を清澄化し、96ウェルピンツールを使用して清澄化培地1〜2μLを0.45ミクロンニトロセルロースメンブレン(Bio−Rad)にスポットした。標準ウェスタンブロット法43を使用してメンブレンをHSA抗体[1A9]HRPコンジュゲート(Abcam)でプローブし、ECL HRP化学発光検出試薬及びプロトコル(GE Healthcare)により検出した。各プロモーターに対応する最高発現度のクローン2株(AOX2:A6,B7;YPT1:D11,B7;ICL1:E5,H3;FLD1:E11,F3;GAP:B7,B10;及びAOX1:E3,E7)を平行試験発現に選択した(図8)。
【0120】
pApaRSノーザンブロット。最高発現度のAOX2,B7;YPT1,D11;ICL1,H3;FLD1,E11;GAP,B7;及びAOX1,E3を試験発現条件下で6日間増殖させた。細胞3×10個(OD600=1.0で2.5ml)を採取し、RiboPure−Yeast Kit(Ambion)試薬及びプロトコルにより全RNAを単離した。各RNAサンプル13μgを2%ホルムアルデヒドゲル(2%アガロース,20mM MOPS,8mM酢酸ナトリウム,2.2mMホルムアルデヒド,pH=7.0)にロードした。NorthernMaxホルムアルデヒドロード色素(Ambion)3容量をRNA1容量と混合し、65℃まで15分間加熱し、5分間氷冷後、ロードした。ゲルを電気泳動(50Vで2時間)させ、18S及び28S rRNAの臭化エチジウム染色により均等なローディングを確認した(図8c,上段)。RNAを標準ブロット装置により10×SSCバッファー(1.5M塩化ナトリウム,0.15Mクエン酸ナトリウム,pH=7.0)中でBiodyne Bナイロンメンブレン(Pall Life Science)に吸着させた。メンブレンを2×SSCバッファーでリンスし、乾燥し、UV Stratalinker 2400(Stratagene)で自己架橋させた。North2South Chemiluminescent Hybridization and Detection Kit(Pierce)に同梱のプロトコルと試薬を使用してハイブリダイゼーションと検出を行った。要約すると、400〜500μgのビオチン化プローブ:ketoRS3 biot 5’−/5Biosg/TGA GAC GCT GCT TAA CCG CTT C−3’及びketoRS4 biot 5’−/5Biosg/TAA AGA AGT ATT CAG GAT CGG ACT G−3’を55℃で一晩インキュベートし、ストレプトアビジン−HRPコンジュゲートに結合させ、ルミノール/エンハンサー安定性過酸化物溶液(Pierce)で検出した(図8c,下段)。Photoshop CS2を使用してバンド密度により相対mRNA力価を測定した。
【0121】
pApaRSウェスタンブロット。クローンAOX2:A6,B7;YPT1:D11,B7;ICL1:E5,H3;FLD1:E11,F3;GAP:B7,B10;及びAOX1:E3,E7を試験発現条件下で培養し、ペレット化し(3000g,10分間)、YeastBuster(Novagen)2ml+10mM β−メルカプトエタノール及びComplete(Roche)プロテアーゼインヒビタータブレットで溶解させた。サンプルを20,000gで清澄化し、溶解液15μlを4−20% SDS−PAGEゲル上で泳動させた(1:15h,150V)。トビンの転写バッファー(24mMトリス塩基,192mMグリシン,20%エタノール)中でTrans−Blot SDセミドライ転写セル(Bio−Rad)を使用して蛋白質を0.45ミクロンニトロセルロースメンブレン(Bio−Rad)に転写した(2h,20V,100mAmp)。ゲル上の残留蛋白質をクーマシー染色し(図8b,上段)、均等なローディングを確認した。標準ウェスタンブロット法43と抗His6x−HRP標識抗体(Sigma−Aldrich)を使用してメンブレンをブロットし、ECL(GE Healthcare)HRP化学発光検出試薬及びプロトコルにより検出した(図8b,下段)。Photoshop CS2を使用してバンド密度により相対発現率を測定した。
【0122】
rHSAE37X−ABT−510オキシムライゲーション。6番目のL−ノルバリン残基の代わりにε−(2−(アミノオキシ)アセチル)−L−リジンを使用してABT−510ペプチドミメティックを合成した(Anaspec)(配列:Ac−Sar−Gly−Val−D−aloIle−Thr−Lys(Aoa)−Ile−Arg−Pro−NEt MW=1097.3 Da)。オキシムライゲーションバッファー(1.5M塩化ナトリウム,500mM酢酸ナトリウム,pH=4.4)200μl中で75μM rHSAE37pApa又はrHSAWT(1.0mg)にペプチド2.25mM(0.5mg)を加え、一晩37℃でインキュベートした。反応混合物をDynamax HPLC(Rainin)(水中40−46%アセトニトリル,0.1%で溶出)でC8 Vydac HPLCカラム(300mm,200Å,5μm,Grace)により精製した。画分を分取し、一緒にし、クーマシー染色SDS−PAGEゲルにより分析した。シナピン酸マトリックスと共にリニアMALDI−TOF MS Biflex III(Burker Daltonics)計器を使用して無傷の蛋白質質量測定を実施した。E37pApa突然変異によるrHSAWT+ペプチドとrHSAE37pApaペプチドの−60Daの質量差(905Da−60Da=845Da)を使用し、ライゲーション効率を測定した(〜77%)。蛋白質による処理前後でrHSAWTの質量は殆ど変わらなかった。
【0123】
pREAV−PFLD1−(シンテターゼtyr)構築及び形質転換:プライマーとしてKETO−Koz−F及びKetoRS R 6xHis(上記)を使用してチロシン(wt)、pBpa、pAzapa、pPpa、pMpa、及びpIpaに特異的な非天然aaRSをPCRにより増幅し、NcoIとEagI(NEB)で消化し、(アガロースゲル精製によりpApaRS領域の除去後に)同様に消化したpREAV−PFLD1−pApaRSにライゲーションした。配列確認後、先述したようにプラスミドをGS200−rHSAE37Xクローン1D12に形質転換し、GS200−rHSAE37X/pREAV−PFLD1−(シンテターゼtyr)(HIS4,ARG4,Gen,Mut)を作製した。各形質転換からクローン12株を選択し、先述したように96ウェルフォーマットでドットブロットによりスクリーニングした。各々から最良産生株(tyr,A9;pBpa,B7;pAzapa C9;pPpa,D6;pMpa,E6;及びpIpa,F6)を選択し、試験発現でFLD1,E11と比較した(図11c)。
Photoshop CS2を使用してバンド密度により相対蛋白質収率を測定した。
【0124】
pREAV−PFLD1−(シンテターゼleu)構築及び形質転換:pREAVleu−PFLD1を作製するために、5’CCAをもたず、SUP4セグメントにより分離されたtRNALeu5CUAの3個のタンデム反復配列に対応するセクションをを合成し(DNA2.0)、プライマーとしてLeu tRNA F,5’−AAG GAA GCT AGC CTC TTT TTC AAT TGT ATA TGT G−3’及びLeu tRNA R,5’−CGT ACA CGC GTC TGT ACA GAA AAA AAA GAA AAA TTT G−3’を使用してPCR増幅した。得られた643bp産物をNheIとMluI(NEB)で消化し、(アガロースゲル精製によりチロシルtRNAの除去後に)同様に消化したpREAV−PFLD1−pApaRSにライゲーションし、pREAVleu−PFLD1−pApaRSを作製した。プライマーとしてLeuRS F,5’−ATT CAC ACC ATG GAA GAG CAA TAC CGC CCG GAA GAG−3’及びLeuRS R,5’−TTA ATT CGC GGC CGC TTA GCC AAC GAC CAG ATT GAG GAG TTT ACC TG−3’を使用してDMNB−S及びダンシル非天然アミノ酸に特異性を有するaaRSを増幅し、NcoIとNotI(NEB)で消化し、(アガロースゲル精製によりpApaRSコーディング領域の除去後に)同様に消化したpREAVleu−PFLD1−pApaRSにライゲーションし、pREAVleu−PFLD1−DMNB−S又はpREAVleu−PFLD1−ダンシルを作製した(図11d)。配列確認後、プラスミドをGS200−rHSAE37X(クローン1D12)に形質転換し、上記のように96ウェルドットブロットフォーマットでスクリーニングした。緩衝最少メタノール(BMM)培地中で誘導後3日間試験発現条件下に増殖させた場合にクローンA:A5(DMNB−S)及びB:G12(ダンシル)が成功産生株と同定された。比較のためにrHSAWTをBMMY中で3日間発現させた(図11f)。上記のようにLC−MS/MSによりダンシル及びDMNB−S(アミノ酸アナログ)の組込みを更に確認した(図18)。Photoshop CS2により相対バンド密度を測定した。
【0125】
図面の説明
図6:真核生物におけるアンバー抑圧用ベクターであり、マーカー(栗色)、複製起点(黒)、標的蛋白質(オレンジ色)、制御因子(緑色)、及びサプレッサーtRNA(「tRNA(CUA)」,淡青色)を示す。(a)P. pastorisへのインビボマルチコピー組込み及び発現用の市販pPIC3.5kシャトルベクター16のマップ。rHSAE37X(オレンジ色)をAOX1プロモーター及びターミネーター間にサブクローニングする。(b)PADH1制御下のpApaRS/tRNAtyrCUA対を保有する出芽酵母の最適化アンバー抑圧ベクター23。tRNACUA反復配列はSUP4遺伝子に由来する領域(図示せず)により分離され、PPGK1により誘導される。(c)pREAV−PADH1−pApaRSを作製するように2μ真核起点とTRPマーカーをARG4で置換した改変型pPR1−PPGK1+3SUP4−tRNAプラスミド。(d)PADH1とTADH1をAOX1に対応するもので置換し、pREAV−PAOX1−pApaRSを作製した。(e)rHSAE37Xの最初から61個のアミノ酸。プレプロリーダーペプチド(青,緑)は培地へのrHSAE37Xの放出を可能にし、輸送中に開裂され、アスパラギン酸から開始する成熟蛋白質(rHSA,オレンジ色)を生じる。成熟rHSAの37番目の残基(X,赤)はアンバーコドンに応答して組込まれた非天然アミノ酸を表す。
【0126】
図7:P. pastorisにおけるpApaによるアンバー抑圧。(a)ノーザンブロット(下段ゲル)を使用して出芽酵母+pPR1−PPGK1−3SUP4−tRNA(レーン1)とP. pastoris+pREAV−PADH1−pApaRS(レーン2)におけるサプレッサーtRNATyrCUA転写をアッセイした。陰性対照として、レーン3及び4は夫々ベクターを導入しない出芽酵母及びP. pastoris株である。上段ゲルは内在セリンtRNAのノーザンブロットを示し、全サンプルで等量のmiRNAが作製されることを実証する。(b)システムの忠実度をアッセイするために、6日間増殖からの清澄化培地25μlを変性SDS−PAGEゲル上で分析し、クーマシー染色した。レーン2はGS200であり;レーン3はGS200−HSAE37Xであり;レーン4はGS200−pREAV−PAOX1−pApaRSであり;レーン5〜7はGS200−HSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRSであり;レーン8はGS200−HSAWT/pREAV−PADH1−pApaRSである。両方のベクターを導入し、メタノールとpApaアミノ酸(pApaAA)の存在下で増殖させた酵母のみでアンバー抑圧が生じる。(c)成熟rHSAE37pApaの残基37に非天然アミノ酸pApa(E*で示す)を組込んだトリプシン処理ペプチドのMS/MS断片化(上段)。観測されるフラグメントイオン系列により置換が明白に裏付けられる。配列イオンを標準命名法44で表す。
【0127】
図8:最適化アンバー抑圧に関するpApaRSプロモーターの比較。(a)プロモーター領域(緑,赤輪郭)の変動を示すpREAV−PPromoter−pApaRSの直線マップ。ゲノムDNAからプロモーターをPCR増幅した(図12)。(b)各々GS200−rHSAE37XをpREAV−PPromoter−pApaRSで形質転換したクローン2株を主炭素源としてのメタノールの存在下に6日間増殖させ、溶解させ、SDS−PAGEゲル上で分離した(上段ゲル)。ゲルをクーマシー染色し、均等なローディングを確認した。溶解液をpApaRs−His6xについてウェスタンブロットにより分析した(下段ゲル)。(c)bで大半の蛋白質を産生したクローンをpApaRS mRNA転写についてノーザンブロットにより分析した(下段ゲル)。18s及び28sリボソームRNAのバンドを臭化エチジウムで染色し(上段ゲル)、RNA完全性と均等なローディングを確認した。(d)染色したバンドの密度の2回平均により測定したbの棒グラフ。誤差線は分散を表す。
【0128】
図9:培地中でrHSAE37pApaによりアッセイしたPAOX2、PYPT1、PICL1、PFLD1、PGAP、又はPAOX1で誘導したaaRSによるアンバー抑圧レベル。各プロモーターシステムからのクローン2株を主炭素源としてのメタノールとpApaアミノ酸の存在下に個々に6日間増殖させた。清澄化培地25μlを変性SDS−PAGEゲル上で泳動させ、クーマシー染色した。BSA対照によるバンド密度(図17)によりrHSAWT(レーン15)を計算した処、351.6mg l−1であった。密度によると、PFLD1(レーン9及び10の平均)は43%ないし151.2mg l−1の蛋白質を発現した(図16)。
【0129】
図10:ABT−510ペプチドとrHSAE37pApaのオキシムライゲーション。(a)ライゲーションの模式図。ABT−510ペプチドは6番目の残基としてε−(2−(アミノオキシ)アセチル)−L−リジンを有する。75μM rHSAE37pApa(青)を2.25mMペプチドの存在下に37℃で一晩インキュベートすると、オキシム結合が形成される(右上)。同一条件下でrHSAWT(赤)と反応は生じない。(b)MALDI質量分析により結合の程度を示す。ペプチドをケト含有rHSAE37pApa(青)の存在下にインキュベートすると、rHSAWT(赤)の存在下でインキュベートした場合に比較して905Daの質量シフトを生じ、rHSAE37pApaの約77%がABT−510と結合していると判断される。
【0130】
図11:遺伝子レパートリーへの8種類の非天然アミノ酸の追加。(a)大腸菌チロシルRS遺伝子(オレンジ色)とチロシルサプレッサーtRNAカセット(tRNA(CUA),淡青色)を含む最適化pREAV−PFLD1ベクターの模式図。(b)特異的な大腸菌チロシルRSを有する6種類の非天然アミノ酸(1,3〜7,本文に記載)とチロシン(2)の構造。(c)非天然アミノ酸1,3〜7とその対応するaaRSの存在下(+)及び不在下(−)におけるrHSAE37X(ここで、Xは非天然アミノ酸として定義される)の発現。未精製清澄化培地25μlをSDS−PAGEゲル上で泳動させ、クーマシー染色した。レーン2は野生型(wt)チロシルRSによるrHSAE37Y発現である。レーン15はrHSAWTの発現である。(d)大腸菌ロイシルRS遺伝子(LeuRS,オレンジ色)とロイシルサプレッサーtRNAカセット(leu−tRNA(CUA),淡青色,赤輪郭)を含む最適化pREAVleu−PFLD1ベクターの模式図。(e)特異的大腸菌ロイシルaaRSを有するDMNB−C及びダンシル非天然アミノ酸(8,9,本文に記載)の構造。(f)非天然アミノ酸8,9とその対応するLeuRSの存在下(+)及び不在下(−)におけるrHSAE37Xの発現。各蛋白質発現からの未精製清澄化培地25μlをSDS−PAGEゲル上で分析し、クーマシー染色した。レーン4は同じく3日後のrHSAWTの発現である。
【0131】
図12:非天然アミノ酸抑圧システムの3成分のゲノムDNAからのPCR増幅であり、pPIC3.5k及びpREAVカセットをGS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSに組込むのに成功したことを示す。1回の形質転換からクローン4株を選択し、1〜4とした。予想PCR産物はrHSA 1851bp、pApaRS 1317bp、及びtRNAカセット1100bpであった。クローン2にpApaRS増幅が生じないのは技術的アーチファクトであると思われる。
【0132】
図13:1回の形質転換からのGS200−rHSAE37X/pREAV−PADH1−pApaRSのクローン4株におけるpApaRS−His6xのウェスタンブロット。pApaRS蛋白質は検出できなかった。
【0133】
図14:GS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS(Mut)培養液(レーン1)又はGS200−rHSAE37X/pREAV−PAOX1−pApaRS(mut)培養液(レーン2)からの清澄化培地25μlをSDS−PAGEゲル上で分析し、クーマシー染色した。Mutクローンはバンド密度により測定した場合に約1.5〜2.0倍の量のrHSAE37Xを発現する。
【0134】
図15:5種類の異なるプロモーターに特異的なプライマーを使用し、その対応するプロモーターをゲノムDNAからPCR増幅した。臭化エチジウム染色したゲルを示し、PCR産物の両側に1kb+ラダーを示す。PCRの予想長はPAOX2 342bp、PYPT1 508bp、PICL1 683bp、PFLD1 597bp、及びPGAP 493bpである。
【0135】
図16図9の棒グラフであり、プロモーター誘導によるpApaRS産生の関数としてrHSAE37pApaのアンバー抑圧を示す。図9に示すSDS−PAGEゲル上のクーマシーバンド密度により蛋白質産生を測定した。rHSAWT図17に示すように定量した。
【0136】
図17:BSA標準又は試験蛋白質発現からの未精製rHSAWT培地25μlをSDS−PAGEゲル上で泳動させた。レーン7はrHSAWT試験蛋白質発現培地の1倍希釈液とした。BSA標準バンド密度(レーン1〜4)をプロットし、直線フィットした。
rHSAWTバンドの密度(2×レーン7及びレーン8)は平均で83.33又は351.55mg ml−1であった。同一rHSAWTサンプルの百分率として非天然蛋白質(他の図ではrHSAE37X)の収率を求めた。
【0137】
図18:消化でトリプシンの代わりにキモトリプシンを使用した以外は方法のセクションに記載したように図11fのレーン2からのrHSAE37DMNB−C蛋白質をトリプシン消化後にLC−MS/MS分析した。最上段クロマトグラム(黒)は24.45分〜60.05分に泳動したLC−MS/MSの合計イオンカウント数(TIC)を示す。3段目(緑)と4段目(青)のクロマトグラムはキモトリプシン処理ペプチドXDHVKLVNEVTEFに対応する夫々2+及び3+荷電種のイオン抽出であり、ここでX(rHSAの37番目の残基)はDMNB−C(ピーク下総面積「MA」=224582204)である。5段目(芥子色)と6段目(紫)のクロマトグラムはキモトリプシン処理ペプチドXDHVKLVNEVTEFに対応する夫々2+及び3+荷電種のイオン抽出であり、ここでXはロイシンのイソロイシンである(ピーク下総面積「MA」=20029397)。次のように計算を行った:百分率E37DMNB−C=224582204/(224582204+20029397)*100=91.8%及び百分率E37L=20029397/(224582204+20029397)*100=8.2%。Xにおける他の天然アミノ酸の組込みに対応する測定可能な量のイオン種は検出されなかった。
【0138】
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【0139】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用する全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用し、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で本明細書に援用すると個々に記載しているものとみなす。
図1
図2
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図7a
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図8
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]