特許第6073219号(P6073219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073219光活性有機材料を用いる強化半導体素子及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073219
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】光活性有機材料を用いる強化半導体素子及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20170123BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170123BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20170123BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 616J
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310L
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-513229(P2013-513229)
(86)(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公表番号】特表2013-531884(P2013-531884A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】US2011038017
(87)【国際公開番号】WO2011150137
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】12/790,113
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】フォン,ホンハン
(72)【発明者】
【氏名】ハァ,ミンチェン
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−313913(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/013427(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0197884(US,A1)
【文献】 特開2004−228371(JP,A)
【文献】 特開2004−260057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタにおいて、
有機半導体層、
前記有機半導体層の表面の領域の内に配置されたチャネル、
前記有機半導体層の上に配置されたソース、
前記有機半導体層の上に配置されたドレイン、
前記有機半導体層と電気的に結合されたゲート、及び
光活性材料であって、
(a)前記有機半導体層に隣接し、前記有機半導体層と接触して、
(b)前記有機半導体層内に、または
(c)前記ソース、前記ドレイン及び前記ゲートの1つないしさらに多くの内に、
配された光活性材料、
を有し、
分子、陽子及び/またはイオンが前記光活性材料から前記有機半導体内に拡散する、
ことを特徴とするトランジスタ。
【請求項2】
前記光活性材料が、光酸発生体、光塩基発生体及び光ラジカル発生体の内の1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記光活性材料が、オニウム塩化合物及び非イオン性化合物からなる群からとられる少なくとも1つの化合物を含む、光酸発生体を含むことを特徴とする請求項2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
トランジスタを形成する方法において、
有機半導体層の表面の領域の内にチャネルを形成する工程、
前記有機半導体層と接触させて光活性材料を被着する工程、及び
分子、陽子及び/またはイオンが前記光活性材料から前記チャネル内に拡散するように前記光活性材料を露光する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2010年5月28日に出願された米国特許出願第12/790113号の優先権の恩典を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、トランジスタ、半導体実装抵抗器、ダイオード、等のような、半導体素子の作製に関する。そのようなトランジスタには、OLED、液晶ディスプレイ(LCD)、光起電力素子、集積回路、等を含む、エレクトロニクス用途のような、多くの技術分野において有用である、薄膜トランジスタ(TFT)がある。
【背景技術】
【0003】
電界効果トランジスタ(FET)のような、トランジスタは、用いられる基板技術のタイプ、作製プロセスの複雑さ、及びトランジスタの所望の機能及び特性に依存する様々なアーキテクチャを用いて作製することができる。フラットパネルディスプレイ工業においては、液晶ディスプレイ(LCD)のそれぞれのピクセルのスイッチングのためのディスクリートトランジスタとして用いるため、または有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイのそれぞれのピクセルの駆動に用いられるディスクリートトランジスタのためを含む、いくつかの目的のためにTFTが用いられる。もちろん、ディスプレイ技術には、アレイ制御回路、駆動回路及び検査回路のような、ディスクリートピクセル回路に関する回路を含む、TFTの他の多くの用途があり、そのような回路の多くはピクセルディスプレイ領域の周縁に配置することができる。
【0004】
FETは無機材料及び/または有機材料で形成することができる。従来の有機トランジスタは一般に、フィルム上または可撓性基板上に横方向に形成される。トランジスタの構造は、ゲート電極、ドレイン電極及びソース電極を、また有機半導電性層及び電気絶縁層(ゲート誘電体)も有する。有機半導電性層は、正孔、電子、または同時二極性電荷の輸送チャネルとして機能する。電極は、熱プロセス、電子ビーム蒸着、またはスパッタリングによって被着され、電極には通常、金属、金属化合物、導電性透明酸化物または導電性有機材料が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスタ性能に影響する2つの重要な要因:
(a)半導電性層の電界効果チャネル易動度、及び
(b)ドレイン/ソース電極からチャネルへのキャリアの電荷注入効率、
に関してFETの電気特性を向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
トランジスタ性能の確立に重要な要因には、
(a)半導体層の電界効果チャネル易動度、及び
(b)ドレイン/ソース電極からチャネルへのキャリアの電荷注入効率、
がある。電荷注入効率は電極/チャネル界面に沿って確立される接触抵抗によって測られる。高性能トランジスタは高易動度を、小閾下スイング、小接触抵抗及び大ON/OFF比とともに、有するべきである。
【0007】
いくつかの方法がトランジスタの電界効果チャネル易動度を高めるに有効であることが示されている。既知の方法の1つは、バッファ層の挿入による、チャネルとゲート誘電体の間の界面トラップまたは欠陥の低減である。このバッファ層は、誘電体の表面準位と反応するかまたは表面準位をパッシベートして、酸化シリコンの表面の水酸基のような、いくつかの表面化学準位の電荷トラップ性を最小限に抑えることができる、バッファ層は、自己組織化モノ(またはマルチ)レイヤー層または(ヘキサメチレンジシラザンまたはヘキサメチレンジシロキサン-HMDS-のような)小分子または(フルオロポリマーのような)ポリマーの層とすることができる。しかし、この手法はチャネルの真性易動度をさらに高めることはなく、易動度は依然としてチャネル材料のバルク特性によって決定される。
【0008】
別の既知の方法において、強酸を用いるチャネルへの化学ドーピングによって電界効果易動度に外因的に影響を与えることができる。このドーピングは導電度の意図的な増大をもたらすことができるが、ゲート変調の実質的な減少及びON/OFF比の低下も生じさせる。したがって、既知の方法による、易動度を高め、ON/OFF比を毀損しない、外因性ドープトチャネルの達成は未だ開発途上である。
【0009】
電極(ドレイン、ソース)と有機(または無機)半導電性層の間の接触抵抗は、材料不整合により、ほぼkΩのオーダーにあるかまたはさらに高く、チャネル長(ドレイン電極とソース電極の間の距離)が縮小された素子において電荷注入を大きく制限すると考えられる。ドレイン/ソース電極からチャネルへの電荷注入を向上させるためのいくつかの手法が文献により知られている。自己組織化モノレイヤー(SAM)が、トランジスタの性能を向上させるように誘電体またはコンタクトの表面を改変するために用いられる。そのようなモノレイヤーはある誘電体基板または導電性基板の上でしか組織化されることはなく、溶液処理された有機材料に撥水問題を生じ得る。さらに、F4TCNQのような、強く酸化/還元する小分子を、接触抵抗を低減するためにドレイン/ソース電極とチャネルの間に挿入することができる。しかし、SAM被着は通常、いくつかの表面化学官能基を有する金属または金属酸化物の表面上に用いることができる、自己制限プロセスである。したがって、SAM被着は、SAM被着の前にドレイン/ソース電極があらかじめ被着され、あらかじめパターニングされる、底面コンタクト構造をもつトランジスタへの適用に適する。しかし、有機チャネルの表面上の分子組織化は自明ではないから、上面コンタクト構造をもつトランジスタへの適用には適していない。金属ドレイン/ソース電極の他に、導電性ポリマーがチャネルとの低接触抵抗界面を形成すると思われるが、上面電極としての導電性ポリマーのパターニングには特定のフォトレジスト族及び処理/現像溶剤が必要である。レーザ干渉パターニングは、有機トランジスタで短チャネル長を達成するために導電性ポリマーをパターニングするための別法である。
【0010】
ドレイン電極及びソース電極に対する接触抵抗低減に加えて、有機チャネルの上面の高導電度電極のパターニングが強く要求されている。例えば、サブミクロンチャネル/上面コンタクト有機トランジスタを作製することが望ましいであろう。ポリ(アクリル酸)またはポリ(4-スチレンスルホン酸)内に水中でカーボンナノチューブを分散させると、やはり光パターニングが可能な、高導電度電極を得ることができる。シャドウマスク法で約5μmまで短くしたチャネル長を達成することができるが、そのようなプロセスはチャネルがさらに短い素子の作製では実用にならない。侵襲性有機溶剤及び強塩基性現像液を含む、従来のフォトレジスト系も、化学的損傷により、有機チャネルの上面の上面コンタクトのパターニングには適合しない。
【0011】
これまで、リソグラフィ制御(処理)によりチャネルの半導電性状態を直接に導電状態に転換することで、高導電性の、高解像度パターニングされた電極を形成できる、汎用方法はなかった。
【0012】
本明細書に開示される実施形態例は、トランジスタベース素子の作製に関連する技術におけるこれらの技術的不備を克服する。本明細書に説明され、開示される方法及び装置は、光酸発生体によって選択またはパターニングされた領域上に、有機トランジスタ及び対応する電子デバイスにおける高易動度有機チャネル及び/または高導電度有機オーミックコンタクトを提供する。
【0013】
一実施形態例において、トランジスタ素子は、基板、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極、誘電体層、及び有機半導電性チャネル層を有する。これらの層は横型または縦型のトランジスタ素子を形成するため、様々な順序で積層することができる。有機半導電性チャネル層は、小分子、オリゴマーまたは、チオフェンまたはその他の半導電性ユニットを含めることができる、ポリマーを含むことができる。この有機技術の本質は、選択的に
(a)有機半導電性チャネルの電界効果易動度の工学的操作、及び
(b)光酸発生体(PAG)を用いる、パターニング可能な、チャネルとのオーミックコンタクトの形成、
を可能にする。
【0014】
電界効果易動度を高める場合、PAGは有機半導電性チャネル内に取り入れられるかまたはチャネルの表面上に被着される。チャネルとの有機オーミックコンタクトを形成する場合、PAGは、単体または、レジストのような、他の担体との混合物として、コンタクトドレイン/ソース領域上に被着される。これらのPAGは、チャネルの処理領域を定めるため、リソグラフ法によって光子または電子で活性化させることができる。PAGの活性化または不活性化のプロセスを調節するために、またPAGの拡散を制御するためにも、レーザまたは熱輻射のような、熱エネルギーを素子に選択的に印加することができる。PAGの活性化を調節または抑制するため、HMDSのような塩基性化合物を配することができる。
【0015】
本明細書に開示される1つないしさらに多くの実施形態にしたがえば、方法及び装置は、光活性有機材料から内部に拡散された陽子を含む半導体層、半導体層上または内に配置されたチャネル、半導体層上または内に配置されたソース、半導体層上または内に配置されたドレイン、及び半導体層に電気的に結合されたゲートを有する、トランジスタを提供する。
【0016】
本明細書に開示される1つないしさらに多くの別の実施形態にしたがえば、方法及び装置は、半導体層、半導体層上または内に配置されたチャネル、半導体層上または内に配置されたソース、半導体層上または内に配置されたドレイン、及び半導体層に電気的に結合されたゲートを有し、ソース、ドレイン及びゲートの内の1つないしさらに多くに光酸材料がドープされている、トランジスタを提供する。
【0017】
本明細書に開示される1つないしさらに多くのまた別の実施形態にしたがえば、方法及び装置は、半導体層、半導体層上または内に配置されたチャネル、半導体層に電気的に結合されたソース、半導体層に電気的に結合されたドレイン、半導体層に電気的に結合されたゲート、及び、
(i)ソースとチャネルの間、及び
(ii)ドレインとチャネルの間、
の内の少なくとも1つに配置された光酸材料の層を有する、トランジスタを提供する。
【0018】
本明細書に開示される1つないしさらに多くのまた別の実施形態にしたがえば、トランジスタを形成する方法は、半導体層上または内にチャネルを形成する工程、半導体層に接触させて光活性有機材料を被着する工程、及び光活性有機材料からチャネル内に陽子が拡散するように光活性有機材料を露光する工程を含む。
【0019】
その他の態様、特徴、利点、等は、当業者には、本明細書の実施形態の説明を添付図面とともに読めば明らかになるであろう。
【0020】
本明細書に開示される実施形態の様々な態様を説明する目的のため、現在好ましい形態が図面に示されるが、開示される実施形態が示される精確な構成及び手段に限定されないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は光活性材料から内部に陽子が拡散された半導体層を用いていFETトランジスタの簡略な側面図である。
図2A図2A図1のFETの作製に用いるに適する多くの光活性材料を示す。
図2B図2B図1のFETの作製に用いるに適する多くの光活性材料を示す。
図3A図3Aは、光活性材料から内部に陽子が拡散された半導体層を用いているFETトランジスタ(底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)の簡略な側面図である。
図3B図3Bは、光活性材料から内部に陽子が拡散された半導体層を用いているFETトランジスタ(底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)の簡略な側面図である。
図3C図3Cは、光活性材料から内部に陽子が拡散された半導体層を用いているFETトランジスタ(上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)の簡略な側面図である。
図3D図3Dは、光活性材料から内部に陽子が拡散された半導体層を用いているFETトランジスタ(上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)の簡略な側面図である。
図4A図4Aは、図3AのFETトランジスタを作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図4B図4Bは、図3BのFETトランジスタを作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図4C図4Cは、図3CのFETトランジスタを作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図4D図4Dは、図3DのFETトランジスタを作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図5A図5Aは、ドレイン電極、ソース電極及び/またはゲート電極に光活性材料ドーピング(例えば光酸ドーピング)を用いている、FETトランジスタ(底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図5B図5Bは、ドレイン電極、ソース電極及び/またはゲート電極に光活性材料ドーピング(例えば光酸ドーピング)を用いている、FETトランジスタ(底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図5C図5Cは、ドレイン電極、ソース電極及び/またはゲート電極に光活性材料ドーピング(例えば光酸ドーピング)を用いている、FETトランジスタ(上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図5D図5Dは、ドレイン電極、ソース電極及び/またはゲート電極に光活性材料ドーピング(例えば光酸ドーピング)を用いている、FETトランジスタ(上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図6A図6Aは、(i)ソースとチャネルの間及び(ii)ドレインとチャネルの間の少なくとも一方に配置された光酸材料の層を用いている、FETトランジスタ(底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図6B図6Bは、(i)ソースとチャネルの間及び(ii)ドレインとチャネルの間の少なくとも一方に配置された光酸材料の層を用いている、FETトランジスタ(底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図6C図6Cは、(i)ソースとチャネルの間及び(ii)ドレインとチャネルの間の少なくとも一方に配置された光酸材料の層を用いている、FETトランジスタ(上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図6D図6Dは、(i)ソースとチャネルの間及び(ii)ドレインとチャネルの間の少なくとも一方に配置された光酸材料の層を用いている、FETトランジスタ(上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ)を作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図である。
図7図7は、リソグラフ法を用いて光活性材料から陽子が内部に拡散された半導体層を用いている、FETトランジスタを作製するためのプロセスフロー及び中間構造の例の簡略な側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同様の参照数字が同様の要素を示す、図面を参照すれば、1つないしさらに多くの実施形態にしたがうトランジスタ100の側面図が図1に示されている。トランジスタ100は、薄膜トランジスタ(TFT)のような、FETトランジスタの形態にあることができ、LCD、OLEDディスプレイのような、ディスプレイ及び/またはその他の技術における使用に対する用途がある。トランジスタ100は半導体層102を有する。ゲートコンタクト及び/または電極(または単に「ゲート」)104が半導体層上または内に配置され、ドレインコンタクト及び/または電極(または単に「ドレイン」)106及びソースコンタクト及び/または電極(または単に「ソース」)108も同様である。ゲート106は絶縁(または誘電体)層110に重ねて配置され、したがって、絶縁(誘電体)層はゲート104と半導体層102の間にある。ゲート誘電体層110は、酸化物層、有機層、無機層、またはその他のタイプの層のような、何らかの形態の絶縁層である。本説明の目的のため、誘電体層110はゲート酸化物層110と称されることがある。ゲート酸化物110の下の半導体層102の領域はトランジスタ100のチャネル103である。ゲート電極、ドレイン電極及びソース電極は、技術上周知の手法を用いて、透明導電性酸化物、導電性ポリマー、化学的にドープされた有機層または金属で形成することができる。
【0023】
本明細書に開示され、説明される実施形態には、(トランジスタ、抵抗器、ダイオード、集積回路、等のような)半導体素子に、特に有機半導体素子に、特定の用途がある。しかし、無機のトランジスタ、抵抗器、ダイオード、集積回路、等のような、その他のいずれかのタイプの半導体素子にも本発明の方法及び装置の使用が有益であり得ることに注意されたい。
【0024】
本明細書に開示され、説明される実施形態例は、光活性材料の使用によりトランジスタ100の性能を向上させるという特徴を有する。例えば、光活性材料の使用により、チャネル103の電界効果易動度が向上することが分かっており、少なくともドレイン106及びソース108に付随する電気コンタクトの導電性が向上し得る。図1に簡略に示されるように、トランジスタ100は、要素120として簡略に示される光活性材料を有する。光活性材料120は半導体層102,ゲート104,ドレイン106及び/またはソース108の内にまたは上に配することができる。光活性材料は、光酸発生体、光塩基発生体及び光ラジカル発生体の内の1つを含むことができる。本明細書に用いられるように、語句「光酸発生体」はいずれかの有機光酸材料または感光性酸性材料を指す。光酸発生体は、光子、電子ビームまたはX線エネルギーのような、輻射エネルギーによって選択的に除去され得る、(ターシャリー(第三級)ブトキシカルボニル基(t-Boc基)に限定されない)少なくとも1つの開裂基を有することができる。しかし、光酸発生体はいずれかの特定の波長のエネルギーで照射される必要はないことに注意されたい。
【0025】
例として、多くの光活性材料を示す図2A〜2Bを参照すれば、光酸発生体はイオン性(オニウム塩)化合物及び非イオン性化合物からなる群からとられる少なくとも1つの化合物を含むことができる。光酸発生体がイオン性(オニウム塩)化合物を含む場合、そのような化合物は、金属材料、スルホン酸塩材料、スルホニルイミド材料及びスルホニルメチド材料からなる群からとることができる。光酸発生体が非イオン性化合物を含む場合、そのような化合物は、有機ハロゲン化物材料、スルホン酸エステル材料、スルホン酸塩材料及びスルホン材料からなる群からとることができる。光酸発生体がスルホン酸エステル材料を含む場合、そのような材料は、2-ニトロベンジルエステル材料、芳香族スルホン酸塩材料、オキシムスルホン酸塩材料、N-スルホニルオキシイミド材料、スルホニルオキシケトン材料及びDNQ 4-スルホン酸塩材料からなる群からとることができる。光酸発生体がスルホン材料を含む場合、そのような材料は、ジスルホン材料、ケトスルホン材料及びスルホニルジアゾメタン材料からなる群からとることができる。
【0026】
特定の有機トランジスタまたは無機トランジスタの実施形態の文脈における(光酸発生体のような)光活性材料の使用に関するさらなる詳細は、別の図面を参照して与えられるであろう。半導体層102のチャネルの移動度を高めるため、本明細書における広範な態様の実施形態が、
(i)半導体層102に隣接し、半導体102と接触して、または
(ii)半導体層102内に、
光活性材料が配されることを考えていることは当然である。本明細書に説明される実施形態、特徴及び有益な結果はいずれの特定の動作理論にも限定されないが、光活性材料120の光子照射が光活性材料120からの分子の半導体層102内への拡散及び半導体層102内での陽子(及び対イオン)の放出を生じさせると考えられる。光活性材料120の分解フラグメントが半導体層102内に拡散するかまたは半導体層102と相互作用して所望の結果が達成されるとすることも可能である。
【0027】
光活性材料120が半導体層102内に配されている場合、光活性材料120を半導体層102内に均一に分布させることができ、あるいは不均一に分布させることができる。半導体層102内の光活性材料120の分布は、例えば、光活性材料の源からの陽イオン(及び/または、対イオンのような、その他のイオン)を、光エネルギーに応答して半導体層102内に拡散させることで、達成することができる。光活性材料120が、半導体層102に隣接し、半導体102と接触して、配されている場合、光活性材料120はそのような陽子またはその他のイオンの源としてはたらくことができる。
【0028】
図3A〜3Dを参照すれば、光活性材料120が半導体層102内に配されている(有機トランジスタまたは無機トランジスタとすることができる)トランジスタの様々な構成が示される。
【0029】
図3Aに示されるように、底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Aは、半導体層102の一方の側(底面)上に被着された誘電体層110を有することができ、ゲート電極104が誘電体層110上に配置されている。ドレイン電極106及びソース電極108が半導体層102の反対側(上面)上に配置される。光酸発生体(及び/または光酸発生体から拡散される、陽子、または対イオン、等)のような、光活性材料120が半導体層102内に、好ましくはチャネル内に及び/またはチャネルに隣接して、配される。
【0030】
図3Bに示されるように、底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100Bは、半導体層102の一方の側(底面)上に配置されたドレイン電極106及びソース電極108を有することができ、誘電体層110も半導体層102の同じ側の上に配置されている。ゲート電極104が誘電体層110上に配置される。この場合も、光酸発生体(及び/または光酸発生体から拡散される、陽子、対イオン、等)のような、光活性材料120が半導体層102内に、好ましくはチャネル内に及び/またはチャネルに隣接して、配される。
【0031】
図3Cに示されるように、上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100Cは、(ガラス材料またはガラス-セラミック材料のような)基板112を有することができ、ドレイン電極106及びソース電極108が基板112上に被着される。半導体層102が、ドレイン電極106,ソース電極108及び基板112の上に被着される。誘電体層110が半導体層102の対向側(上面)上に被着され、ゲート電極104が誘電体層110上に配置される。この場合も、光酸発生体のような、光活性材料120が半導体層102内に、好ましくはチャネル内に及び/またはチャネルに隣接して、配される。
【0032】
図3Dに示されるように、上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Dは、半導体層102がその上に被着されている、基板112を有することができる。ドレイン電極106,ソース電極108及び基板112の上に被着され、誘電体層110が、ドレイン電極106,ソース電極108及び半導体層102に重ねて被着される。ゲート電極104が誘電体層110上に配置される。やはり、光酸発生体(及び/または光酸発生体から拡散される、陽子、対イオン、等)のような、光活性材料120が半導体層102内に、好ましくはチャネル内に及び/またはチャネルに隣接して、配される。
【0033】
トランジスタ構造100A,100B,100C,100Dの(例えば光エネルギーの印加による)光子照射は、光活性材料120を活性化して、チャネル電荷輸送に寄与するような態様で半導体層102のチャネル内に陽子を放出するためにはたらくことができることに注意されたい。本明細書で後にさらに論じられるであろうように、光子照射はドレイン電極106及び/またはソース電極108の被着の前または後に、及び/または誘電体層110の被着の前または後に、実施することができる。
【0034】
図4A〜4Dを参照すれば、光活性材料120が半導体層102に隣接し、半導体層102に接触して、配されているトランジスタの様々な構成が示される。例えば、光活性材料120は、半導体層102の上及び/または下に被着することができ、及び/または半導体層10の横側面上にまたは横側面に隣接して被着することができる。
【0035】
図4Aに示されるように、底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Aを作製することができ、光活性材料は、半導体層102の、ドレイン106及びソース108が配置されている側に被着される。さらに詳しくは、ゲート104が半導体層102の第1の側に、絶縁性酸化物層110を介して、結合される。(源とみなすことができる)光活性材料122が半導体層102の、第1の側と表裏をなす、第2の側に隣接し、第2の側と接触して配される。光活性材料源122は、直接被着、フォトリソグラフパターニング、等のような、既知の方法によって被着することができる。
【0036】
下向き矢印で示されるように、(光エネルギー、光子エネルギー、電子ビームエネルギー及び/またはX線エネルギーのような)輻射エネルギーが中間構造に、陽子、対イオン、等が光活性材料源122から半導体層102(特に、半導体材料層102のチャネルに)拡散及び輸送されるように、印加される。光子照射中に、光活性材料源122からチャネル内への分子(または、陽子、対イオン、等)の拡散及びこれに続く陽子の放出を補助するため、熱エネルギー及び/またはその他の外部エネルギーを(同じく矢印で示されるように)印加することができる。
【0037】
さらに、光活性材料源122が他の層で覆われていない場合、光活性材料源122からの陽子の放出を制御するため、追加の塩基性化合物層を用いることができる。例えば、ヘキサメチレンジシラザンまたはヘキサメチレンジシロキサン(HMDS)のような、塩基性化合物を、光活性材料源122及び/または半導体層102内に拡散する分子の活性化を調節及び/または抑制するために配することができる。HMDSは、技術上周知であるように、例えばスピンコート及びこれに続く熱ベーキングプロセスによって、被着することができる。
【0038】
図4Bに示されるように、底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100Bを作製することができ、光活性材料は、半導体層102の、ゲート104,ドレイン106及びソース108が配置されている側と表裏をなす側に被着される。さらに詳しくは、ゲート104が半導体層102の第1の側に、絶縁性酸化物層110を介して、結合される。光活性材料源122が半導体層102の、第1の側と表裏をなす、第2の側に隣接し、第2の側と接触して配される。この場合も、分子、陽子、対イオン、等が光活性材料源122から半導体層102(特に半導体層102のチャネル)内に拡散及び輸送されるような、中間構造への輻射エネルギー(及び、おそらくは熱エネルギー及び/またはその他の外部エネルギー)の印加を下向き矢印が示す。やはり、光活性材料源122が他の層で覆われていない場合、光活性材料源122からの陽子の放出を制御するため、追加の塩基性化合物層を用いることができる。
【0039】
図4Cに示されるように、上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100Cを作製することができ、光活性材料は半導体材料層102の横側面上に被着される。例えば、ゲート104が半導体層102の第1の側に、絶縁性酸化物層110を介して、結合される。光活性材料源122が半導体層102の、第1の側に直交する及び/または第1の側の横なる、第2の側に隣接し、第2の側と接触して配される。先の実施形態と同様に、分子、陽子、対イオン、等が光活性材料源122から半導体層102内に拡散及び輸送されるような、中間構造への輻射エネルギー(及び、おそらくは熱エネルギー及び/またはその他の外部エネルギー)の印加を下向き矢印が示す。
【0040】
図4Dに示されるように、上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Dを作製することができ、光活性材料は絶縁層(例えば誘電体層または酸化物層)110と半導体層102の間に被着される。例えば、半導体層102が基板112上に被着される。ドレイン電極106及びソース電極108が半導体層102の第1の側に被着される。光活性材料源122が半導体層102に隣接し、半導体層102に接触するように、及び光活性材料源122が絶縁層110と半導体層102の第1の面の間になるように、光活性材料源122がドレイン106,ソース108及び半導体材料層102に重ねて被着される。ゲート電極104が誘電体層110上に配置される。先の実施形態と同様に、分子、陽子、対イオン、等が光活性材料源122から半導体層102内に拡散及び輸送されるような、中間構造への輻射エネルギー(及び、おそらくは熱エネルギー及び/またはその他の外部エネルギー)の印加を下向き矢印が示す。
【0041】
図5A〜5Dを参照すれば、金属を含まない、ゲート104A,ドレイン106A及び/またはソース108Aのコンタクト(好ましくは有機コンタクト)が作製中に光活性材料を用いて形成される、様々なトランジスタ構成が示される。例えば、半導体層102の上に、下に、及び/または少なくともある程度は中に、光活性材料源122を被着することができる。その後、半導体層102内に(特にチャネルの領域に)拡散して(ドープされて)、ドレイン106A及びソース108Aの電極を形成する、分子、陽子、対イオン、等が輻射エネルギーの印加により光活性材料源122から放出される。
【0042】
図5Aに示されるように、底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Eを作製することができ、光活性材料は半導体層102の、ドレイン106A及びソース108Aが配置されるべき、第1の側上に被着される。さらにまたはあるいは、ゲート104Aを形成するため、半導体層102の、ドレイン106A及びソース108Aが配置されるべき第1の側と表裏をなす、第2の側上に光活性材料を被着することができる。光活性材料と半導体層102の第2の側の中間に酸化物層110を被着することができる。この場合も、光活性材料源122は、直接被着、フォトリソグラフパターニング、等のような、既知の方法によって被着することができる。
【0043】
下向き矢印で示されるように、(光エネルギー、光子エネルギー、電子ビームエネルギー及び/またはX線エネルギーのような)輻射エネルギーが、光活性材料源122の導電度が制御されるように中間構造に印加される。適切な(及び周知の)マスク手法により、それぞれドレイン電極及びソース電極として機能する、独立領域106A,108Aを形成することができる。そのような電極106A,108Aは、金属を含まない有機コンタクト、例えば有機導電体として機能することができる。電極106A,108Aの導電度は
(i)光活性材料源122の組成、及び(ii)輻射エネルギーが印加されている露光時間の内の1つないしさらに多くにより、作製中に制御することができる。同様に、ゲート電極104Aを形成するため、半導体層102の第1の側上の光活性材料源122の導電度に作用することができる。そのようなゲート電極104Aも、金属を含まない有機コンタクト、例えば有機導電体として機能することができる。
【0044】
中間構造への輻射エネルギーの印加は、分子、陽子、対イオン、等の(半導体層102の第1の側上に被着されている)光活性材料源122から半導体層102(特に半導体層102のチャネル)内への拡散及び輸送もおこさせることができる。これは半導体層102内の要素120によって簡略に示される。
【0045】
先に説明した実施形態と同様に、光子照射中の、光活性材料源122からチャネル内への分子、等の拡散、及びこれに続く陽子の放出を補助するため、(同じく矢印で示されるように)熱エネルギー及び/またはその他の外部エネルギーを印加することができる。
【0046】
上述した手法は他の、(i)底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100F、(ii)上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100G,及び(iii)上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Hをそれぞれ示す、図5B,5C及び5Dのトランジスタ構成にも適用することができる。これらの構成のそれぞれにおいて、ゲート104A,ドレイン106A及びソース108Aの内の1つないしさらに多くは、金属を含まない有機コンタクト、例えば有機導電体として機能することができる。さらに、中間構造への輻射エネルギーの印加は、やはり半導体層102内の要素120によって簡略に示されるように、分子、陽子及び/またはイオン、等の(ドレイン106A及びソース108Aに用いられる)光活性材料源122から半導体層102(特に半導体層102のチャネル)内への拡散及び輸送もおこさせることができる。
【0047】
図6A〜6Dを参照すれば、金属のゲート104,ドレイン106及び/またはソース108の電極が用いられ、作製中に光活性材料が電荷注入を向上させるために用いられる、様々なトランジスタ構成が示される。例えば、半導体層102の上に、下に、及び/または少なくともある程度は中に、光活性材料源122を被着することができる−ここで、光活性材料源122は、(i)ソース108とチャネル(または半導体層102)の間、及び(ii)ドレイン106とチャネル(または半導体層102)の間の少なくとも一方に配される。その後、輻射エネルギーの印加によって、光活性材料源122から分子、陽子及び/またはイオン、等が放出されて、半導体層102内に(特にチャネルの領域に)拡散する(ドープされる)。拡散(ドープ)領域は要素120によって簡略に示される。上述した手法は、(i)底面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100I,(ii)底面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100J,(iii)上面ゲート/底面コンタクトトランジスタ100K,及び(iv)上面ゲート/上面コンタクトトランジスタ100Lをそれぞれ示す、図6A,6B,6C及び6Dのトランジスタ構成に適用することができる、
1つないしさらに多くの別の実施形態にしたがえば、(前述したトランジスタのような)半導体素子の作製中の光活性材料120及び/または光活性材料源122の使用は、チャネルパターニングとドーピングを同時に実施するためにフォトリソグラフプロセスと組み合わせることができる。本明細書の実施形態のいずれもそのような組合せプロセスにしたがって作製することができるが、議論の目的のため、移動度が高められた、短チャネル/上面コンタクト/リフトオフトランジスタ100Mを示す、図7を参照する。全般に、プロセスは、半導体層102上または内にチャネルを形成する工程、半導体層102と接触させて光活性材料124を被着する工程及び光活性材料124からチャネルに分子、陽子及び/またはイオン、等が拡散するように、光活性材料124を露光する工程、を含む。
【0048】
さらなる詳細は、半導体層102の一方の側上の酸化物層110の配置及び酸化物層110上のゲート電極104の配置を示す、図7の(a)を含む。図7の(b)は、光活性材料124を含むフォトレジストが作製されて半導体層102上に(例えば半導体層102のチャネルに重ねて)コーティングされることを示す。フォトレジスト/光活性材料124上のドレイン及びソースが配置されるべき領域への(矢印で示される)光子の透過及び照射を可能にするため、(要素150として簡略に示される)適するマスクが用いられる。図7の(c)を参照すれば、フォトリソグラフプロセスによる、光子照射の適用が、(要素120で示されるように)光活性材料124から半導体層102内への分子の拡散及び半導体層102内での陽子の放出をおこさせると考えられる。光活性材料124の分解フラグメントが半導体層102内に拡散し、半導体層102と相互作用して、所望の結果が達成されることもあり得る。陽子だけでなく、対イオンも機構に影響することがあり得る。図7の(d)は、引き続く、フォトリソグラフィプロセスによるフォトレジスト/光活性材料124の現像で得られた、フォトレジスト/光活性材料124がエッチング除去されたかまたは別の手段で除去された領域及びフォトレジスト/光活性材料124が残っている他の領域を示す。図7の(e)は、金属のドレイン106及びソース108のコンタクト/電極を形成するための、半導体層102の露出面への金属膜被着の適用を示す。図7の(f)は、残りのフォトレジスト/光活性材料124のリフトオフによる、パターンが形成された(チャネルを含む)半導体層102の形成を示す。
【0049】
これまでに示され、説明された構造は簡略化されていることが当業者には理解されるであろうが、ディスクリートトランジスタ構造の設計上の微妙な詳細の多くをそのような半導体構造の作製における使用に利用できることは当然である。ただし、そのような詳細は簡潔及び明解の目的のため、本明細書には示されておらず、説明されていない。
【0050】
1つないしさらに多くの実施形態において、上記実施形態で論じた層102の半導体材は厚さが約10〜200nm程度の実質的単結晶材料の形態にあり得る。用語「実質的」は、半導体材料が通常は、格子欠陥または少しの結晶粒界のような、本質的に含まれるかまたは意図的に加えられた内部欠陥または表面欠陥を少なくともいくらかは含むという事実を考慮するために用いられる。議論の目的のため、半導体層102はシリコンで形成されるとする。しかし、半導体材料を、III-V族半導体(すなわち、GaAs,GaP,InP,等)、IV-IV族半導体(すなわち、SiGe,SiC)、元素半導体(すなわち、Ge)またはII-VI族半導体(すなわち、ZnO、ZnTe,等)のような、シリコンベース半導体またはその他のいずれかのタイプの半導体とし得ることは当然である。
【実施例】
【0051】
実施例1
上述した構造、材料及びプロセスの内のいくつかを用いて、2つの高易動度上面コンタクトトランジスタを作製した。それぞれについて、チオフェンコポリマーのような、有機半導電性材料の薄層を絶縁基板上に配した。例えば、3mg/ミリリットルのP2TDC17FT4の1,2-ジクロロベンゼン溶液をn++Si<100>/SiO(30nm厚)ウエハ上にスピンコートした。脱水のため、酸化物ウエハをN環境内でプリベークした。次いで(純度が99%より高い)HMDSを3000rpmでスピンコートし、さらにN環境内において150℃で15分ベークした。3mg/ミリリットルのP2TDC17FT4の1,2-ジクロロベンゼン溶液を1krpmでSiOウエハ上にスピンコートして、20〜30nm厚の薄膜を形成した。添加量が20重量%より多いフッ素化光酸発生体(非イオン性PAG)と混合したフッ素化カリクスアーレンを含む、新規のネガタイプi線フォトレジストをP2TDC17FT4層上にスピンコートした(この結果、図7の(a)に示した構造と同様の構造が得られた)。フォトレジストを標準型i線ステッパを用いて365nm光子照射で選択的に露光し、ハイドロフルオロエーテル溶剤を用いて現像して、Au蒸着によってドレイン電極及びソース電極を形成するための2つの開口領域を形成した。この結果、図7の(b),(c),(d),(e)の構造と同様の構造が得られた。次いでフォトレジストを除去し、ハイドロフルオロエーテル:HMDS(9:1)の溶剤を用いてリフトオフを実施することでチャネルを形成した。この結果、図7の(f)に示される構成と同様の構成のトランジスタが得られた。
【0052】
いくつかの性能特性を下の表に示す。
【表1】
【0053】
実施例2
上述した構造、材料及びプロセスの内のいくつかを用いて、光酸発生体を用いた有機オーミックコンタクトを有するトランジスタ素子を作製した。チオフェンのような、有機半導電性材料の薄層を絶縁基板上に溶液流延することでトランジスタを作製した。例えば、3mg/ミリリットルのP2TDC17FT4の1,2-ジクロロベンゼン溶液をn++Si<100>/SiO(200nm厚)ウエハ上にスピンコートした。脱水のため、酸化物ウエハをN環境内でプリベークした。次いで(純度が99%より高い)HMDSを3000rpmでスピンコートし、さらにN環境内において150℃で15分ベークした。P2TDC17FT4溶液を1krpmでスピンコートして、20〜30nm厚の薄膜を形成した。それぞれが約40nm厚の、2つのAu上面電極をシャドウマスクを介してポリマー層上に真空蒸着した。50〜200μmのチャネル長及び0.8〜1.8mmのチャネル幅を有するトランジスタ素子は、0.05cm−1−1のFET易動度代表値を示し、閾電圧は〜−10V,ON/OFF比は>10であった。ハイドロフルオロエーテル:PGMEA補助溶剤(4:1重量%)内に溶解させた光酸発生体(非イオン性PGA)をトランジスタ素子の上面に(1krpmで)スピンコートし、あるいは滴下流延した。2つの上面Au電極間に有機オーミックコンタクトを形成するため、トランジスタチャネルを、標準型i線ステッパまたはシャドウマスクを用いるフォトリソグラフィプロセスにより波長が365nmのUV光の下で選択的に露光した。ドレイン電極とソース電極の間の電流−電圧特性は直線になり、電極間のオーミック伝導の形成を示した。さらに、0〜−90Vの範囲の様々なゲート電圧においてゲート変調は見られなかった。
【0054】
いくつかの性能特性を下の表に示す。
【表2】
【0055】
特定の特徴及び態様を参照して実施形態を本明細書に説明したが、これらの実施形態が例示のためでしかないことは当然である。したがって、例示実施形態に数多くの改変がなされ得ること及び本開示の精神及び範囲を逸脱せずに他の構成が案出され得ることは当然である。
【符号の説明】
【0056】
100 トランジスタ
102 半導体層
103 チャネル
104 ゲート
106 ドレイン
108 ソース
110 絶縁(誘電体)層
112 基板
120 光活性材料
122 光活性材料源
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7