【実施例】
【0026】
以下の実施例では該発明に基づく好適な方法について説明する。しかしながら、これらの実施例は実例を示すためのものであり、その内容のいかなるものも発明全体の適用範囲を制約するものでないことは当然である。
【0027】
<1.材料>
(a)100%乳酸;液体でありかつ単量体の乳酸を含む;直鎖状ポリマー酸でありn=2またはそれ以上;エステル化による水分およそ5.5%;ニューイングランド州ブレイヤー、Purac社より入手。
(b)L−ラクチド、(S,S)−ラクチドとしても知られ、両方のR’基が−CH
3であるジラクチド;Purac社より入手。
(c)水酸化ナトリウム;水中で50%(質量);イリノイ州シカゴ、KA Steel Chemicals社より入手。
(d)水酸化カルシウム;無水物粉末;ミズーリー州カンサスシティー、Mississippi Lime社より入手。
(e)ステアリン酸;10%のパルミチン酸および90%のステアリン酸から構成;テネシー州メンフィス、PMC Group社から入手。
(f)ステアリン酸ナトリウム;55%のパルミチン酸および45%のステアリン酸から構成;イリノイ州シカゴ、HallStar社より入手。
(g)ステアリン酸カリウム;55%のパルミチン酸および45%のステアリン酸から構成;イリノイ州シカゴ、HallStar社より入手。
(h)ステアリン酸アルミニウム;工業銘柄、トリステアリン酸アルミニウムとしても知られる;脂肪酸部分は25%のパルミチン酸および63%のステアリン酸から構成;アルミニウムの電荷は+3である;マサチューセッツ州ウォードヒル、Alfa Aesar 社より入手。
(i)水酸化テトラメチルアンモニウム;水中に25%(質量);ウィスコンシン州ミルウォーキー、Aldrick 社より入手。
(j)オレイン酸(79%)、低力価白色食品グレード;微量成分としてパルミチン酸(4%)、ステアリン酸(2%)、およびリノレイン酸(11%);オハイオ州コプリー、Chemical Associates of Illinois 社より入手。
(k)カプリン酸(99%);ペンシルバニア州ブルーベル、Acme Hardesty 社より入手。
(l)ラウリン酸(99%);ペンシルバニア州ブルーベル、Acme Hardesty 社より入手。
(m)ヘキサン類(OmniSolv 高純度溶媒);ニュージャージー州ギッブスタウン、EMD Chemicals 社より入手。
【0028】
<2.用語>
(a)パルミトイル−n−ラクチレート、ここに n=1、2、3、など;パルミチン酸がエステル化されて乳酸または直鎖状の重合した乳酸基となったもの、ここに n は乳酸分子の数を示す。
(b)ステアロイル−n−ラクチレート、ここに n=1、2、3、など;ステアリン酸がエステル化されて乳酸または直鎖状の重合した乳酸基となったもの、ここに n は乳酸分子の数を示す。
(c)二乳酸:乳酸の直鎖状2量体で、一般的には2つの乳酸分子のエステル化またはジラクチドの加水分解の何れかにより形成される。
(d)t=0 は原材料が−OHまたは−COOH化合物、またはその化合物の混合物にカチオンと共に加えられた時のことである。
【0029】
<3.GC−FID手順>
全てのラクチレートの形は以下の手順により決定された。先ず、1.00±0.02gのサンプルをビーカー内に20mLのエチルエーテルおよびかき混ぜ棒と共に入れた。ビーカーを時計皿でフタして、次いでサンプルが溶解するまでかき混ぜながら30〜35℃で加熱した。次に、2.00±0.05gのRexyn101H(ペンシルバニア州ピッツバーグ、Fisher Scientific社)をサンプルにかき混ぜながら加えた。溶液が不透明から透明になるにしたがって、かき混ぜ速度を増した。5分間で溶液が透明にならなかった場合には、溶液が透明になるまでさらに Rexynを0.5g刻みで加えた。
【0030】
スターラーを停止し、1〜2分間放置して樹脂をビーカーの底に沈めた。次に、エーテルの上澄み2mLをピペットでバイアル瓶内に入れた。パスツールピペットを用いて、2mLのジアゾメタン(ウィスコンシン州ミルウォーキー、Aldrick社より入手しDiazald
TM から Diazald
TM キットの手順にしたがって調合した)をバイアル瓶に加えた。もしも特定のサンプルの溶液が淡い黄色を少なくとも30秒間保持しなかった場合は、溶液が淡い黄色を少なくとも30秒間保持するまで滴状に加えた。
【0031】
バイアル瓶をエーテルが蒸発するまで35〜40℃に加熱し、その後10mLのメチレンクロライドをバイアル瓶に加え、次いでこれにフタをして混合した。次に、1.5mLの該溶液をバイアル瓶からサンプルバイアル瓶へ移してフタをし、以下のものを装備したVarian3800 のGCシステムのオートサンプラーにセットした:オートサンプラー、インジェクター、プログラム可能なカラムオーブン、水素炎イオン化検出器(FID)、およびデータ処理器。GCのカラムはSupelco Equity
TM−1(15m x 0.53mm x 1.5μmフィルム)であった。
【0032】
GCシステムの設定は次の通りであった:インジェクター温度=300℃;温度傾斜速度=30分の間10℃/分;検出器温度=300℃;メイクアップフロー 35mL/分;水素流=30mL/分;空気流=300mL/分;初期S/N比=50;初期ピーク幅=4秒;初期タンジェント高さ=25%;初期ピーク面積排除=3000;ヘリウム流量=8.0mL/分;パルスpsi=14.0;パルス持続時間=0.20分;および注入容積=1.0μl。
【0033】
<4.カルシウム含有量の決定>
ラクチレート製品内のカルシウムレベルは次の様な手順により決めた。空のきれいな坩堝をブンゼンバーナーで十分に加熱し確実に完全な脱水状態にした。坩堝をデシケータ内に15分間放置して熱平衡に到達させた。坩堝を秤量し、次いで1から1.5gのテストサンプルを坩堝内に入れた。プロパントーチを用いて20分間サンプルを加熱し全ての可燃性物質を取り除くと共に確実にサンプルを酸化させた。坩堝をデシケータ内に15分間戻して熱平衡に到達させた。それからサンプルを再度秤量した。カルシウムのパーセンテージは酸化カルシウムパーセントから下記の方程式を用いて計算した。
【数1】
それぞれのテストは3回実施され、反応製品について平均が報告された。
【0034】
<5.ナトリウムカチオン含有量の決定>
ラクチレート製品内のナトリウムレベルはメトラーDL55自動滴定装置を用いて決定した。設定は下の表に示されている。
【0035】
【表2】
それぞれのテストは3回実施され、反応製品については平均値が報告された。
【0036】
<6.カリウムカチオン含有量の決定>
カリウムの含有量を決定するために、モル質量Mを23(ナトリウムの原子量)から39(カリウムの原子量)に変更したことを除き、ナトリウム含有量の決定(上の5節)で辿ったものと同じ手順を辿った。
【0037】
<7.テトラメチルアンモニウムのカチオンの決定>
この手順にメトラーDL55自動滴定装置を用いてテトラメチルアンモニウムのカチオンレベルを決定した。設定は5節の表に示されたものと以下の相異点を除いて同様であった。
【0038】
【表3】
それぞれのテストは3回実施され反応製品について、平均値が報告された。
【0039】
<8.酸価の決定>
酸価は次の手順にしたがって決定した。サンプルを以下の表にしたがってフラスコ内に計量した。
【0040】
【表4】
A 下の実施例のために選択された質量はそれぞれの実施例で得られた酸価に対応する上記の質量であった。
【0041】
もしも計量したサンプルが15g未満なら、試薬アルコールを25mL加えた。もしも計量したサンプルが15g以上なら、試薬アルコールを50mL加えた。どちらにしても計量したサンプルはアルコール内に入れられ、完全に溶解するまで加熱およびかき混ぜられた。数滴の混合指示薬溶液(ナイルブルーおよびフェノールフタレイン)を加えた。サンプルを室温より少し高めまで放冷すると同時にサンプルが溶解したままであることを確認した(必要なら、いくらか再加熱する)。溶液をかき混ぜながら、0.1NKOH溶液を用いて安定したピンクの終点に達するまで速やかに滴定した。酸価はサンプル内の滴定酸類を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。酸価は次の様に計算された:
【数2】
それぞれのテストは3回実施され、反応製品について平均値が報告された。
【0042】
<9.エステル価の決定>
エステル価は次の手順により決定した。フラスコ内にある質量1±0.02gのサンプル内に存在する遊離酸を上に記載した酸価決定手順にしたがってKOHにより中和した。次に、10mLの0.5N水酸化カリウムメタノールをサンプル内に計り込んだ。溶液にかき混ぜ棒を加えた。フラスコをホットプレート上に置き凝縮器に取り付け、続いてサンプルを1時間還流して完全に鹸化することを確実にした。次いでサンプルを室温より幾分暖めまで冷却しそれから0.1N HClにより安定した青の終点まで逆滴定しながら同時に滴定の間ずっとサンプルが確実に溶解したままである様に(例えば、わずかな加熱により)した。空試料を同じ条件の下で滴定した。エステル価は次の様に計算した:
【数3】
それぞれのテストは3回実施され、反応製品について平均値が報告された。
【0043】
<10.回収可能な乳酸>
ラクチレート製品内の回収可能な乳酸の割合は上述した様に全て決定しているナトリウム、カルシウム、またはカリウムの割合、酸価(AV)、およびエステル価(EV)から計算した。
【0044】
ステアロイルカルシウムラクチレート類に対し、回収可能な乳酸は次の様に計算した。
% LA = [(Ca
2+* 7.0242) + (AV * 0.23513) + (EV * 0.22021)] - 46.452
【0045】
ステアロイルナトリウムラクチレート類に対し、回収可能な乳酸は次の様に計算した。
% LA = [(Na
+* 6.1825) + (AV * 0.2353) + (EV * 0.22021)] - 46.452
【0046】
カリウムステアロイルラクチレート類、アルミニウムステアロイルラクチレート類、N(CH
3)
4 ステアロイルラクチレート類、オレイルラクチレート類、およびカプリン酸−ラウリン酸ラクチレート類については、回収可能な乳酸は下に記載した様に計算した。回収可能な全乳酸の導出にあたっては、ラクチレート製品を恰もこれが在来技術により製造されたかの様に扱った。用いた論理的根拠および実施された計算は次の通りであった。
【0047】
合計初期質量、m
0、は次の物質収支方程式により与えられる:
【数4】
【0048】
【数5】
したがって、合計初期質量は次の様に書き換えられた:
【数6】
【0049】
反応の始めに存在していた酸性種の合計量、H
O は以下の様に注入された脂肪酸および乳酸の量および中和の程度による:
【数7】
酸価は最終製品内に存在する酸性種の量に関係する。エステル種が生じるにしたがって酸性種の量は減少する:
【数8】
【0050】
エステル化反応の化学量論を用い、酸性種の量は測定された酸価の観点から次の様な関係で表現された:
【数9】
同様に、測定されたエステル価はエステル化反応の化学両論に左右されて生じた水の量による:
【数10】
存在するカチオンの割合は注入された塩基および失われた水の質量による:
【数11】
【0051】
方程式2〜6は6つの未知の変数から成る線形方程式の系である。未知の数が方程式の数を上回るため、1つの変数は任意である。したがって、合計初期質量を任意のどの様な値にも選ぶことができる。このため、方程式を次の様にベクトルマトリックス形式(A・x=b)に書き換えた。
【数12】
【0052】
次いで上の方程式は両側に5x5マトリックスの逆数(すなわち、x=A
−1・b)を乗じて解かれた。解は反応器に注入された脂肪酸、乳酸、および水酸化化合物の相対質量を初期の酸性種の量およびエステル化反応により生じた水の質量と共に与えた。ひとたび乳酸およびエステル化による水の質量が判ると、次の方程式を用いて乳酸の割合が計算された。
【数13】
【0053】
<11.コントロール用反応−100%乳酸を用いるラクチレートの形成>
【化3】
【0054】
この手順では、187.26gのステアリン酸および193.08gのステアリン酸ナトリウムを、中央の首を介してオーバーヘッドかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を装着した4つ首、1000mL、丸底フラスコに加えた。脇の首は温度計(−10から300℃)、窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)、および均圧用サイドアーム付きの添加ロートでフタをした。フラスコを加熱するために可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いた。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を400mL/分に設定した。
【0055】
次に、119.2gの100%乳酸を添加ロートに加えた。反応温度が180℃に達した時、乳酸を反応物中に注入した(1モル乳酸:1モルステアリン酸:0.5モルNa)。添加はt=10分50秒で完了し、反応温度は173〜182℃の間で変動した。添加の間および後で、目盛ピペットを用いて少量のサンプル(それぞれ2〜5mL)を引き出し時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0056】
t=28分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=1時間で混合物を金属板の上に注ぎ固化させた。できた製品は灰色がかった白色の、表面がべとつくワックス状の固体で、次の様な特性を持っていた:
(a)QCデータ:酸価170.77、エステル価55.53、ナトリウム3.07%、および合計回収可能乳酸24.32%;および
(b)GC−FID:乳酸3.63%、2乳酸0.11%、L−ラクチド1.32%、パルミチン酸21.33%、ステアリン酸52.83%、パルミトイル−1−ラクチレート4.78%、ステアロイル−1−ラクチレート12.16%、パルミトイル−2−ラクチレート0.75%、ステアロイル−2−ラクチレート1.67%、パルミトイル−3−ラクチレート0.11%、およびステアロイル−3−ラクチレート0.20%。
【0057】
100%乳酸を用いると期待するラクチレートの分析結果を達成するためには下に記載した本発明の反応に比べると長い反応時間を必要とした。
【0058】
<実施例1> 市販ステアリン酸ナトリウムおよびL−ラクチドの低速添加
この実施例においては、395.47gのステアリン酸および426.30gのステアリン酸ナトリウムを4つ首、2000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。
【0059】
フラスコを加熱するために可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いた。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を400mL/分に設定した。この時点における反応物は液体中に粒子のある懸濁物であった。
【0060】
3番目の側枝はシリコン加熱テープを巻いた均圧用サイドアーム付きの添加ロートでフタをした。テープはアナログ式の温度調節器に接続されていた。次に、202.12gのL−ラクチドを添加ロートに加え放置して溶融した。
【0061】
反応温度が179℃に達した時、L−ラクチドを反応物(0.56モルL−ラクチド:1モル脂肪酸:0.58モルナトリウム)にゆっくり加えた。添加はt=1時間13分に終了し、反応温度は180℃に維持した。
【0062】
添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0063】
t=1時間44分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。混合物を金属板の上に注ぎ固化した。できた製品は光沢のある、脆い、オレンジブラウン色をしたカラメルの香りのある固体であった。
【0064】
製品の特性は次の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 90.39;エステル価 141.66;ナトリウム3.14%;および合計回収可能乳酸 25.41%;および
(b)GC−FID:パルミチン酸 13.36%;ステアリン酸 31.83%;パルミトイル−1−ラクチレート11.42%;ステアロイル−1−ラクチレート 26.39%;パルミトイル−2−ラクチレート 3.13%;ステアロイル−2−ラクチレート7.27%;パルミトイル−3−ラクチレート 0.85%;ステアロイル−3−ラクチレート 1.84%;パルミトイル−4−ラクチレート0.46%;およびステアロイル−4−ラクチレート 0.73%。
【0065】
上の結果は本発明の反応が在来技術による反応よりずっと速く進むことを示している。上で説明したコントロール反応はこの実施例と同様の組成物に到達するには少なくとも5時間を要する。
【0066】
<実施例2> L−ラクチドおよび市販のステアリン酸ナトリウムを用いるラクチレート調製物
【化4】
【0067】
この手順においては、196.68gのステアリン酸および202.80gのステアリン酸ナトリウムを4つ首、1000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。3番目の側枝はシリコン加熱バンドを巻いた均圧用サイドアーム付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を400mL/分に設定した。
【0068】
次に、100.52gのL−ラクチドを添加ロートに加えた。デジタル調節器を120℃に設定してL−ラクチドを溶融した。反応物温度が180℃に達した時、L−ラクチドを反応物に注入した(L−ラクチド0.5モル:ステアリン酸 1モル:Na0.5モル)。添加はt=2.5分に完了し、反応温度は180℃に維持した。添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0069】
t=28分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=1時間で、混合物を金属板の上に注ぎ固化した。できた製品は光沢のある、脆い、オレンジブラウン色をしたカラメルの香りのある固体であった。製品の特性は次の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 93.37、エステル価 137.39、ナトリウム3.07%、および合計回収可能乳酸 24.74%;および
(b)GC−FID:2乳酸 0.63%;L−ラクチド1.42%、パルミチン酸19.06%、ステアリン酸 45.83%;パルミトイル−1−ラクチレート6.78%;ステアロイル−1−ラクチレート 16.44%;パルミトイル−2−ラクチレート 1.45%;ステアロイル−2−ラクチレート3.56%;パルミトイル−3−ラクチレート 0.56%;ステアロイル−3−ラクチレート 1.27%;パルミトイル−4−ラクチレート0.32%;およびステアロイル−4−ラクチレート 0.73%。
【0070】
ラクチレートの形成は非常に急速に起こり、かつコントロール反応の場合よりずっとより急速であった。さらに、この実施例は反応を実行するために180℃が好適な温度であることを示している。
【0071】
<実施例3> L−ラクチドおよびその場でステアリン酸ナトリウムを発生させることを用いるラクチレート調製物
【化5】
【0072】
この実施例では4つ首、1000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたもので393.36gのステアリン酸が入ったものを用いた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。3番目の側枝は開放したままにした。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。ステアリン酸を溶融し(〜70℃)、次いで窒素拡散を700mL/分に設定した。
【0073】
次に55.80gの水酸化ナトリウム(50%)水溶液を3番目の側枝経由で反応物に加えた。添加はt=7分に完了し、温度を100〜110℃の間に維持した。できた混合物は幾分粘稠かつ不透明であった。
【0074】
泡立ちを最小にするためにかき混ぜ速度を増した。反応は135℃に達するまではやや粘稠であった。温度はt=1時間3分に172℃に達し、殆ど完全に透明な混合物になった。
【0075】
3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が95℃に達した時、100.52gのL−ラクチドを添加ロートに加え放置して溶融した。
【0076】
反応温度が180℃に達した時、t=3時間23分にL−ラクチドを反応物に注入した(L−ラクチド0.5モル:ステアリン酸1モル:Na0.5モル)。添加はt=3時間25分に完了し(反応物注入2分)、反応温度は180℃に維持した。L−ラクチドの添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0077】
t=3時間53分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=4時間24分に、混合物を金属板の上に注ぎ固化した。得られた製品は光沢の無い、非常に脆い、オレンジブラウン色をしたカラメルの香りのある固体で、次の様な特性を示した:
(a)QCデータ:酸価 84.66、エステル価 139.30、ナトリウム3.08%、および合計回収可能乳酸 23.15%;および
(b)GC−FID:2乳酸 0.10%;L−ラクチド 0.42%、パルミチン酸3.23%、ステアリン酸 60.73%;パルミトイル−1−ラクチレート1.23%;ステアロイル−1−ラクチレート 24.84%;パルミトイル−2−ラクチレート 0.25%;ステアロイル−2−ラクチレート5.43%;ステアロイル−3−ラクチレート 1.53%;およびステアロイル−4−ラクチレート 0.80%。
【0078】
この実施例により到達したラクチレートレベルは市場で購入したステアリン酸ナトリウムを用いて得られたもの(実施例2)よりわずかに高かった。
【0079】
<実施例4> L−ラクチドおよび市販のステアリン酸カリウムを用いるラクチレート調製物
【化6】
【0080】
4つ首、1000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものを準備し、196.68gのステアリン酸および214.21gのステアリン酸カリウムをフラスコに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。
【0081】
可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を400mL/分に設定した。反応物は液体と懸濁した固体の混合物であった。
【0082】
3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が95℃に達した時、100.52gのL−ラクチドを添加ロートに加え放置して溶融した。反応温度が180℃に達した時、L−ラクチドを反応物に注入した(L−ラクチド0.5モル:ステアリン酸 1モル:K0.5モル)。添加はt=34秒で完了し、反応温度は180℃に維持した。反応中、温度は180〜186℃の間で変動した。
【0083】
添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。t=30分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=1時間で、混合物を金属板の上に注ぎ固化した。できた製品は光沢のある、脆い、コーヒー色をしたカラメルの香りのある固体であった。製品分析は以下の通り:
(a)QCデータ:酸価 88.95、エステル価 119.22、カリウム5.43%、および合計回収可能乳酸 20.34%;および
(b)GC−FID:2乳酸 0.16%;L−ラクチド 0.68%、パルミチン酸15.93%、ステアリン酸 43.92%;パルミトイル−1−ラクチレート7.39%;ステアロイル−1−ラクチレート 19.93%;パルミトイル−2−ラクチレート 2.06%;ステアロイル−2−ラクチレート4.87%;パルミトイル−3−ラクチレート 0.68%;ステアロイル−3−ラクチレート 1.57%;パルミトイル−4−ラクチレート0.32%;およびステアロイル−4−ラクチレート 0.70%。
【0084】
この方法により到達したラクチレートレベルは市場で購入したステアリン酸ナトリウムを用いて到達したもの(実施例2)よりわずかに高かった。この実験はラクチレート類を形成するためにカリウムカチオン類がL−ラクチド類と共に使用できることを示した。斯くして、これらの結果を実施例2のそれと組み合わせると他の第I族カチオン類が効くことを示す。
【0085】
<実施例5> L−ラクチドおよび2段階カルシウム添加を用いるラクチレート類の製造
【化7】
【0086】
この手順においては、393.36gのステアリン酸を4つ首、1000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えこの実施例で用いた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。3番目の側枝は開放したままにした。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を700mL/分に設定し、さらに150℃で0.62gの水酸化カルシウムを3番目の側枝を経由して加えた。反応物は靄がかかった様になったがt=6分までにほぼ透明になった。
【0087】
3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が90℃に達した時、100.52gのL−ラクチドをロートに加え放置して溶融した。
【0088】
添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。反応温度が180℃に達した時、t=1時間11分にL−ラクチドを反応物に注入し1分足らずで完了した(L−ラクチド0.5モル:ステアリン酸 1モル:Ca0.4モル)。反応は170〜179℃の間で変動した。
【0089】
t=1時間37分に42gの水酸化カルシウムの添加を始めた。添加はt=1時間51分に完了した。水酸化カルシウムの添加中、反応温度は190℃まで上昇しそれから175℃まで下がった。水を放出した結果、反応物の粘土が増大した。t=3時間13分に、反応温度は164℃まで下がり、反応混合物は不透明になった。t=3時間17分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=3時間44分に、混合物を金属板の上に注ぎ固化した。得られた製品は光沢のある、脆い、オレンジブラウン色をしたカラメルの香りのある固体であった。最終製品の分析は以下の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 83.63、エステル価 99.45、カルシウム4.71%、および合計回収可能乳酸 28.17%;および
(b)GC−FID:L−ラクチド 0.58%、パルミチン酸 2.32%、ステアリン酸53.75%;パルミトイル−1−ラクチレート 1.53%;ステアロイル−1−ラクチレート 32.44%;パルミトイル−2−ラクチレート0.29%;ステアロイル−2−ラクチレート 6.63%;ステアロイル−3−ラクチレート 1.05%;およびステアロイル−4−ラクチレート0.16%。
【0090】
この実験はL−ラクチド類からラクチレートを形成するために、カルシウムカチオンがカリウムおよびナトリウムカチオンと同様に使えることを示している。この実施例は他の2価のカチオン類でも反応が起きることを示している。
【0091】
<実施例6> L−ラクチドおよび市販のアルミニウムトリステアレートを用いるラクチレート類の製造
この手順においては、196.67gのステアリン酸および204.35gのアルミニウムトリステアレートを4つ首、1000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。一端ステアリン酸が溶融すると(〜70℃)、窒素拡散を400mL/分に設定した。反応物はやや粘稠でかつ液体および幾らかの固体の混合物であった。
【0092】
3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が105℃に達した時、100.52gのL−ラクチドをロートに加え放置して溶融した。
【0093】
反応温度が153℃に達した時、L−ラクチドを反応物内に注入した(L−ラクチド0.5モル:脂肪酸 1モル:アルミニウム 0.167モル)。添加はt=1分26秒で完了した。反応物を180℃まで加熱しこれに23分を要した。加熱段階の間、粘度は低下し、このため固体は溶液中に引き込まれた。反応物は180〜185℃の間に24分間維持した。
【0094】
添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0095】
t=48分に加熱を停止し、加熱マントルを取り外した。混合物が冷えるにしたがい粘度が上昇した。t=1時間6分に、そして120〜130℃の間の温度で、混合物を金属板の上に注ぎ固化した。得られた製品は光沢の無い、灰色がかった白色または淡い黄色の固体であまり脆くは無かった。最終製品の分析は以下の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 150.04、エステル価 153.30、アルミニウム1.62%、および合計回収可能乳酸 30%;および
(b)GC−FID:2乳酸 0.19%;L−ラクチド 3.72%、パルミチン酸17.74%、ステアリン酸 70.94%;パルミトイル−1−ラクチレート0.56%;ステアロイル−1−ラクチレート 2.09%;パルミトイル−2−ラクチレート 0.10%;ステアロイル−2−ラクチレート0.38%;パルミトイル−3−ラクチレート 0.06%;ステアロイル−3−ラクチレート 0.22%;およびステアロイル−4−ラクチレート0.16%。
【0096】
この実験はL−ラクチド類からラクチレートを形成するために、アルミニウムカチオンがナトリウムおよびカルシウムカチオン類と同様に使えることを示している。さらに、この実施例は他の3価のカチオン類でも反応が成功裏に実施できることを示している。
【0097】
<実施例7> L−ラクチドおよびその場でテトラメチルアンモニウムステアレートを発生させることを用いるラクチレート類の製造
この実施例においては、393.36gのステアリン酸を4つ首、2000mL、丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は均圧用側枝付きの500mL添加ロートでフタをした。3番目の脇の首のアセンブリーは直腕部に温度計(−10〜300℃)、および曲腕部にBarret 蒸留受器(真空ジャケット付き、容量10mL)を持つ「Y」チューブから成っていた。小型の「円筒型」還流凝縮器(200mm、ニュージャージー州ビンランド、ChemGlass社)が蒸留受器の上にあった。凝縮器はそのジャケットを通って流れる水道水で冷却した。
【0098】
次に、254.29gの水酸化テトラメチルアンモニウムを添加ロートに加えた。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。一端ステアリン酸が溶融して83℃に達した時、水酸化テトラメチルアンモニウムをフラスコに3分間未満で加えた。物質が溶液から沈殿し始めた。熱の入力を停止し、650mLのヘキサンを添加ロート経由で反応物に加えた。溶媒がフラスコ内に入ったところで、添加ロートをテフロン
TMの栓に置き替えた。
【0099】
不透明の液体および粘稠なゲルを含む混合物の温度をゆっくり上げるため、熱の入力をオンにした。温度が79℃の時、200mLのヘキサンをフラスコに加えた(ヘキサンの合計としては850mL)。
【0100】
容器温度が85℃になると反応物は激しく還流し、さらに液体部分は半透明になった。ヘキサンおよび水の共沸混合物が形成され「Y」チューブの温度計の読みは59〜60℃の間であった。水は Barrett 蒸留受器の底部に集められかつ定期的に風袋を計量した250mLの三角フラスコに抜き出した。
【0101】
ゲルの溶解過程を促進するため、加熱マントルをある時点で取り除きヒートガンを用いてゲルを軟化した。一端ゲルが溶媒和すると、温度は61〜65℃の間に留まり同時に蒸気温度は60℃であった。t=3時間で、50mLのヘキサンをフラスコに加え、ヘキサンの合計は900mLとなった。
【0102】
13時間後(合計では16時間)、容器の温度は66℃、および蒸気温度は64℃で、これはヘキサン−水共沸混合物の沸点より上である。この段階の間に水とヘキサン層の間の9.25gの不透明層と同様に176.85gの水が Barrett 受器経由で反応物から取り除かれた。水の大半が取り除かれるにつれ、反応物の泡立ちが減りかつ透明になった。
【0103】
蒸留受器の閉止コックが開かれ、ヘキサンを1000mL三角フラスコに抜き出した。温度が90℃に近づくにつれ、材料は再び泡立ち始めた。この段階は3時間かかり775mLのヘキサンをもたらした。テフロン
TM 閉止栓、および3番目の脇の首のガラス器具を取り外した。
【0104】
次の日、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。反応器の材料が固化してしまっているため、管を材料の表面に位置させると共に400mL/分に設定した。加熱入力をオンにして、フラスコ内の材料を放置して溶融した。
【0105】
3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が100℃に達した時、100.52gのL−ラクチドをロートに加え放置して溶融した。
【0106】
反応温度が85℃に達した時、L−ラクチドを反応物内に注入した(L−ラクチド0.5モル:脂肪酸 1モル:テトラメチルアンモニウムイオン0.5モル)。添加はt=1分45秒で完了した。添加後、粘度および泡立ちの両方が減少した。拡散管を反応物表面より下に押し込み、窒素拡散を400mL/分に維持した。
【0107】
反応物を180℃まで加熱したが、これには40分を要した。反応物は178〜186℃の間に保った。明るい黄緑色の凝縮物がS字曲部に形成された。添加後、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0108】
t=1時間10分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外した。t=1時間40分、および80℃の温度で、混合物の少量部分を金属板の上に注ぎ同時に残りはガラス瓶内に注入した。できた製品は濃い茶赤色であった。薄いフィルムはフルーツレザーの粘稠度であった。このものは低い応力の下ではしなやかであったが、急激な応力を加えるとパチンと割れてしまう。香りはカラメルまたはコーヒーに類似していた。
【0109】
最終製品の分析は以下の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 123.12;エステル価 93.22;テトラメチルアンモニウム6.23%;および合計回収可能乳酸 16.7%;および
(b)GC−FID:L−ラクチド 0.10%;3乳酸 0.13%;パルミチン酸 7.70%;ステアリン酸 67.84%;パルミトイル−1−ラクチレート1.65%;ステアロイル−1−ラクチレート 14.65%;パルミトイル−2−ラクチレート 0.39%;ステアロイル−2−ラクチレート0.3.36%;パルミトイル−3−ラクチレート 0.10%;ステアロイル−3−ラクチレート0.96%;およびステアロイル−4−ラクチレート 0.22%。
【0110】
この実験はL−ラクチド類からラクチレートを形成するために、テトラメチルアンモニウムがナトリウムおよびカリウムと同様に使えることを示している。さらに、この実施例は他の有機物をベースとした錯イオン類でも反応が実施できることを示している。
【0111】
<実施例8> L−ラクチドならびにその場でカプリン酸およびラウリン酸ナトリウム塩を発生させることを用いるラクチレート類の製造
この手順においては、120.17gのカプリン酸および139.70gのラウリン酸を4つ首、1000mLのフラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。3番目の側枝は開放したままにした。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。
【0112】
一端脂肪酸が溶融すると(〜35℃)、窒素拡散を700mL/分に設定した。3番目の側枝を経由して55.80gの量の水酸化ナトリウムの水溶液を反応物に加えた。添加はt=1分50秒で完了し、温度は60℃から100℃に上昇した。できた混合物は不透明で、わずかに粘稠で泡立っていた。
【0113】
反応物が160℃に達した時、3番目の側枝はS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が95℃に達した時、100.52gのL−ラクチドをロートに加え放置して溶融した。
【0114】
反応温度が170℃に達した時、t=2時間55分にL−ラクチドを反応物に注入した(L−ラクチド 0.5モル:脂肪酸 1モル:ナトリウム 0.5モル)。添加はt=2時間56分に完了した(注入55秒)。温度は登り続けたが次の30分の間は180〜188℃の間に維持した。
【0115】
L−ラクチドの添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0116】
t=3時間5分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し80〜100℃の間まで混合物を冷却した。t=3時間35分に混合物を琥珀色のガラス瓶に移した。最終製品は当初はすっぱいカラメルの香りのする琥珀色の、オレンジイエローの粘稠な液体であった。時間と共にいくらか固体が形成された。サンプルは混ぜると注ぐことができた。
【0117】
最終製品の分析は以下の通りであった:
(a)QCデータ:酸価 125.36、エステル価 172.94、ナトリウム3.86%、および合計回収可能乳酸 27.0%;および
(b)GC−FID:(これらのラクチレートに対しては利用できる標準が限定的であった。最終的に識別できたもののみが記載されている。多分他の種類もサンプル中に存在する);2乳酸0.38%;L−ラクチド 1.61%;カプリン酸26.27%、ラウリン酸 31.36%;カプリック−1−ラクチレート12.61%;ラウロイル−1−ラクチレート 15.39%;およびラウロイル−2−ラクチレート 3.36%。
【0118】
この実施例はラクチレート類を形成するためにL−ラクチド類と共に、カプリン酸およびラウリン酸の脂肪酸がステアリン酸およびパルミチン酸と同様に使えることを示している。さらに、この実験は他の飽和、有機酸がこの反応で機能しうることを示している。
【0119】
<実施例9> L−ラクチドおよびその場でオレイン酸ナトリウム塩類を発生させることを用いるラクチレートの製造
この手順においては、381.04gのオレイン酸を4つ首、1000mLの丸底フラスコで中央の首を介して上部にかき混ぜ器(ガラス棒に取りつけたPTFEパドルおよび Ace Glass trubore 軸封装置)を付けたものに加えた。1つの脇の首は温度計(−10から300℃)でフタをし、2番目の脇の首は窒素拡散導管(角度のあるガラス管上に“A”型ガラスフリット付)でフタをした。3番目の側枝は開放したままにした。可変抵抗器に接続した加熱マントルを用いてフラスコを加熱した。脂肪酸は室温で液体であったため、反応器が組上がると同時に窒素拡散を700mL/分に設定した。
【0120】
3番目の側枝を経由して55.80gの量の水酸化ナトリウム水溶液を反応物に加えた。添加はt=50秒で完了した。できた混合物は粘稠で泡立っていた。
【0121】
反応物が173℃に達した時、3番目の側枝をS字に曲がったジョイントおよびシリコン加熱バンドを巻いた均圧用側枝付きの添加ロートでフタをした。バンドをデジタル式の温度調節器に接続した。J型の熱電対を調節器に接続し加熱バンドおよび添加ロートの間に押し込んだ。デジタル調節器はL−ラクチドを溶融するために125℃に設定した。温度が95℃に達した時、100.52gのL−ラクチド(L−ラクチド0.5モル:脂肪酸 1モル:ナトリウム 0.5モル)をロートに加え放置して溶融した。
【0122】
反応温度が184℃に達した時、t=3時間2分にL−ラクチドを反応物に注入した。添加はt=3時間4分に完了した(注入2分22秒)。温度は次の30分の間180〜185℃の間に維持した。
【0123】
L−ラクチドの添加中および後に、目盛りピペットを用いて少量(それぞれ2〜5mL)のサンプルを抜き出し、時間経過による反応組成物を測定した。少量のサンプルを20mLバイアル瓶に移し実験台上で放冷した。
【0124】
t=3時間32分に加熱を停止した。加熱マントルを取り外し、混合物を80〜100℃の間まで冷却した。t=4時間2分に混合物を琥珀色のガラス瓶に移した。製品はすっぱいカラメルの香りのする琥珀色の、オレンジイエローの粘稠な液体であった。最終製品の分析は以下の通りであった:
(1)QCデータ:酸価 83.04、エステル価 130.11、ナトリウム2.9%、および合計回収可能乳酸 19.2%;および
(2)GC−FID:2乳酸 0.65%;パルミチン酸 2.66%;リノレイン酸8.56%;オレイン酸 55.31%;ステアリン酸1.33%;パルミトイル−1−ラクチレート 1.33%;モノおよびジ不飽和オクタデシノイル−1−ラクチレート 22.67%;ステアロイル−1−ラクチレート0.47%;パルミトイル−2−ラクチレート 0.24%;モノおよびジ不飽和オクタデシノイル−2−ラクチレート 4.78%;ステアロイル−2−ラクチレート0.08%;およびモノおよびジ不飽和オクタデシノイル−3−ラクチレート 1.24%。
【0125】
この実施例はラクチレート類を形成するためにL−ラクチド類と共に、オレイン酸がステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、およびカプリン酸と同様に使えることを示している。同様に、この実験は他の不飽和、有機酸が機能しうることを示している。
【0126】
<実施例10> 溶液の熱量測定
この手順は無触媒および酸触媒の反応経路に関係する急速な過程を分析するために実施した。カプリル酸(オハイオ州シンシナティ、Proctor & Gamble社より入手)の0.1モル原液を0.7gのカプリル酸と49gのジメチルスルホキシド(「DMSO」、ACS級、オハイオ州ソロン、Amresco 社より入手)とを混合して準備した。これを「無触媒の」サンプルと称した。2番目の原液は0.7gのカプリル酸と0.5gのリン酸(85%、ニュージャージー州ギッブスタウン、EMD Chemical 社より入手)および49gのDMSOとを混合して準備した。これを「酸触媒の」サンプルと称した。2番目の原液のカプリル酸およびリン酸の濃度は両方とも0.1モルであった。全ての質量は AND HM−200 分析用天秤の上で正確に測定した。
【0127】
溶液熱量測定は200rpmに設定されたかき混ぜ機モーターを装備した3456−1 Microsolution Calorimeter (TA Instruments)を用いて測定した。各々の実験試行は3回実施され、結果を平均した。各々の試行において、それぞれ精密に秤量されたL−ラクチドサンプル(およそ26〜40mg)を含む3つの40μLアンプルは、マイクロソリューションカロリーメータの別々の固体サンプル口に装填された。それから実験により、生のままのDMSO、DMSO溶液内の0.1モルカプリル酸溶液、DMSO内の0.1モルカプリル酸/0.1モルリン酸溶液、またはDMSO内の0.1モルカプリル酸溶液に34mgの濃H
2SO
4(ニュージャージー州、J.T. Baker 社より入手)を追加したものの何れかを20mLのガラスまたはハステロイ反応容器内に正確に5g計量した。この反応容器を次いで溶液カロリーメーター上に組み込んだ。溶液カロリーメーターのアセンブリー全体をTAM III (TA Instruments)20mLカロリーメーターのサンプル側内に降ろした。比較参照はDMSOを第2のそろいの20mLのガラスまたはハステロイ反応容器内に正確に5g計量して準備しTAM III カロリーメーターの参照側内に降ろした。系を反応開始前に50℃、60℃、または70℃の何れかに設定した浴温度に放置して平衡化させた。L−ラクチドの各サンプルをかき混ぜた溶媒混合物内に直接注入し、そして観測された全熱量を記録した。この手順を時間が経過した(すなわち、室温で6ヶ月経過したL−ラクチド)および新鮮な(すなわち、2〜8℃で保管した)L−ラクチドで繰り返した。結果を表2(時間経過のL−ラクチド)および3(新鮮なL−ラクチド)に示してある。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
観測された熱は酸およびL−ラクチド反応物間の反応の証拠をもたらしている。
【0131】
さらに60℃の触媒入りおよび60℃の無触媒サンプルもGC−FID分析にかけた。リテンションタイム(「RT」)10.8分にピークが観察された。構成成分レベル(未修整面積パーセント)は:9%(50℃で無触媒);38%(60℃で酸触媒入り);13%(70℃で無触媒);および37%(70℃で酸触媒入り)であった。オクチル−1−ラクチレート標準液はRT11.0分で溶離することが判かっていた。斯くして、RT10.8分の成分は構造的にオクチル−1−ラクチレートに類似しているが(MSおよびFT−IRデータ)、しかしオクチル−1−ラクチレートとは異なることが確認された。オクチル−1−ラクチレートはそれぞれのサンプルにトレース量で存在していた。斯くして、L−ラクチドはこれらの温度およびこれらの反応条件の下でオクタン酸と反応しラクチレート類を形成すると結論づけることができる。
【0132】
<実施例11> アンプルの静的熱速度測定
この手順は無触媒の反応経路に関係したより遅い反応過程を分析するために実施した。反応サンプルは90から100mgのL−ラクチドおよび5gの0.1モルカプリル酸のDMSO溶液を20mLハステロイ反応容器内に計量して準備した。反応容器を封じた後これをTAM III 20mLカロリーメーターのサンプル側内に降ろした。比較参照は5gのDMSOを第2のそろいのハステロイ反応容器内に計量しTAM III カロリーメーターの参照側内に降ろして準備した。反応容器を測定位置に降ろす前に系は50℃、60℃、または70℃の何れかに設定した浴温度に放置して平衡化させた。反応による熱流信号を40〜60時間に亘り集めた。この信号を静的熱速度分析および最適合線の計算のために送り出す前に基線補正をおこなった。結果は表4〜6および
図1に示してある。
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】
A k’のためのE
aおよび ln Aは50℃および60℃のデータのみを用いて計算した。
【0136】
下記の計算が
図1および上の表で用いられた。
【数14】
【0137】
総合的に、実施例10および11の結果はジラクチド反応が酸触媒有りおよび無触媒の両方の反応条件の下で、実施例1〜9に示された様な部分的な中和化または「塩基アタック」反応過程と同様に実行されることを示している。このことは製造業者にその特定の目的のために最適な条件を選択するためのより多くの選択肢を与えている。さらに、ジラクチド反応は溶媒を伴いまたは伴わずに実行でき、かつ反応経路は在来技術に関係する直接エステル化経路とは根本的に異なる。
【0138】
<実施例12> アンプルの静的互換性測定
この実験はジラクチドのモノグリセリド類およびジグリセリド類の様なアルコール類との反応性を分析するために実行した。3つのサンプル、2つのバックグラウンドサンプルおよび1つの反応サンプル、を別々の20mLステンレススティール反応容器に準備した。バックグラウンドサンプルは8.84gの BFP 75 PLM(60%のモノジグリセリド、イリノイ州ドルトン、Caravan Ingredients 社より入手)および8.85gのL−ラクチドを別々の反応容器に移して準備した。反応サンプルは4.39gの BFP 75 PLM および4.53gのジラクチドを3番目の反応容器に移して準備した。それぞれの反応容器を封じた後、反応容器をTAM III 20mLマルチカロリーメーターのチャンネルの1つの中に降ろした。マルチカロリーメーターは常時搭載されている全熱容量が57J/Kの対照標準を用いた。反応容器を測定位置内に降ろす前に、系を130℃に設定した浴温度に放置して平衡化した。それぞれのサンプルの熱流信号を17時間に亘り集めた。これらの信号を分析のために送り出す前に基線補正をおこなった。
【0139】
図2は2つのバックグラウンドサンプルおよび反応の(実験)信号の出力対時間の形を示す。総熱量に関するヘスの法則によると、相互作用を示さない2成分の単純混合の予想される出力信号は次の様に与えられる:
【数15】
ここに: f
iは系内のi番目の成分の割合である;および
P
iはi番目の成分に関係する純粋な出力信号である。
【0140】
この方程式は相互作用のない信号を計算するために用いられ、これはさらに
図2にも示されている。データから明らかに判る様に、観察された信号は相互作用のない信号より著しくより発熱性である(約17時間後で3.02mWより強い)。反応サンプルをさらに BFP GLP(ラクチレート化60%のモノジグリセリド、イリノイ州ドルトン、Caravan Ingredients 社より入手)についてGC−FIDで分析した。GC−FID分析結果はTAM反応サンプルの化学種の特性が市販されているラクチレート化モノジグリセリドと一致することを示した。これらのデータはL−ラクチドはモノおよびジグリセリド類と反応し、かつそれ故にグリセロール類およびグリコール類を含むアルコール類のラクチレート化エステルを作るために使用できることを証明している。