特許第6073234号(P6073234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073234補正されたサイジングラダーを使ってサイズ分析を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073234
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】補正されたサイジングラダーを使ってサイズ分析を行う方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   G01N27/447 315C
   G01N27/447 315Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-537798(P2013-537798)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公表番号】特表2013-541721(P2013-541721A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011059015
(87)【国際公開番号】WO2012061528
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年11月1日
(31)【優先権主張番号】13/287,052
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/409,772
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506076709
【氏名又は名称】カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】カンポレーゼ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】バット、アドヴィット
(72)【発明者】
【氏名】モルホ、ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュー、フイ
(72)【発明者】
【氏名】サマーズ、ケン
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−520710(JP,A)
【文献】 特表2006−509996(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02105736(EP,A1)
【文献】 特表2005−526956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイズ分析を行う方法であって、
(a)サイジングラダーを提供する工程と、
(b)前記サイジングラダー中のピークごとに濃度を提供する工程と、
(c)分別装置内の試料を複数の成分に分離する工程と、
(d)ラダーピーク(i)の泳動時間(t)までの試料濃度を計算する工程と、
(e)次式を使って、前記泳動時間(t)までの前記試料濃度を、前記泳動時間(t)までのサイジングラダー濃度に対して正規化する工程であって、
(i)=C(t)/C(i)
式中、C(t)は、泳動時間tまでの累積試料濃度であり、
(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である
前記正規化する工程と、
(f)次式を使って前記サイジングラダーピーク(i)の泳動時間を補正する工程であって、
=f(t,C,p,p,...p
式中、fは、t、C、および任意の数の指定パラメータ(p)の関数である
前記補正する工程と、
(g)前記複数の成分の各成分について工程(d)〜(f)を反復する工程と、
(h)前記補正されたラダーピーク泳動時間を使って、前記分別装置内に配置された前記複数の成分のサイズ分析を行う工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記サイジングラダーピーク(i)の泳動時間は、次式を使って補正され、
=t[1-C(i)LTA]
式中、tは、i番目のラダーピークの補正された泳動時間であり、
LTAは、ラダー時間制御係数である
方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記分離された成分の1若しくはそれ以上を、収集ウェルへ送る工程を有するものである方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記サイジングラダーピーク(i)の泳動時間を補正する工程は、0<C(i)LTA<0.1の場合にのみ実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料成分を分離および単離する装置およびシステムと、その各々の使用方法との分野に関する。特に、本明細書で説明するのは、補正されたサイジングラダー(sizing ladder)を使ってサイズ分析を行う方法である。
【背景技術】
【0002】
分離分析法は生物学的研究の大きな部分を占め、異なる生体試料、反応生成物などの特徴付けを可能にしている。広く普及しているいくつかの分離分析法の例としては、巨大分子種、例えばタンパク質および核酸の電気泳動分離などがある。電気泳動、例えばキャピラリー電気泳動は、付加的な特徴付けができるよう秩序立てて巨大分子種を分離する非常に効果的な方法として確立されてきた。タンパク質および核酸の分子は、電気泳動システムを使ってルーチン的に分別および特徴付けされる分子種の主な2つの例である。
【0003】
分離分析法には、これまでマイクロ流体装置およびマクロ流体装置の双方が応用されている。分子、特に巨大分子種の電気泳動手段による分離に使用される新規なマイクロ流体装置および方法の例は、米国特許第5,958,694号、第6,032,710号、および第7,419,784号などに説明されている。そのような装置では、分離することが望まれる巨大分子種を含んだ試料がマイクロ流体基板内に設けられた分離チャネルの一端に配置され、そのチャネルの長手方向に沿って電圧勾配がかけられる。試料成分(「断片」とも呼ばれる)は、前記チャネルの長手方向に沿ってその内部に設けられた分離(ふるい分け)マトリックスを通過して電気泳動的に輸送され、分解される。分離された成分は、次いで前記チャネルの長手方向に沿った検出点(通常、試料導入点から下流にある分離チャネルの末端付近)で検出される。検出後、前記分離された成分は、通常、当該装置内の収集槽またはウェル(あるいは外部装置、例えばマイクロピペッターを通じて例えばマルチウェルプレート)へと後続の抽出または処分用に送られる。
【0004】
多くの状況では、さらなる処理または分析、例えば制限酵素修飾、T4連結、PCR増幅、質量分析、またはポリヌクレオチドキナーゼ反応のため、選択された対象断片、例えばDNA断片を、分離マトリックス中でバンドに分離した後で抽出することが望ましい。選択された対象DNA断片(ならびに他の望ましい核酸およびタンパク質断片)を分離マトリックス(例えば、アガロースゲル)から抽出および単離するため研究室の研究者らが使用する一般的な工程は、分離マトリックスから望ましい断片を切り取ったのち切り取られた断片を抽出および純化する工程を伴う。まず、分離された断片に紫外(UV)光が照射されてその断片が染色され、分離されたバンドが可視化される。次に、かみそりの刃を使って、対象各断片の上および下が手作業で切断され、ふるい分けた1若しくはそれ以上のスライスが取り出し可能になる。次いで種々の溶液および加熱を使ってふるい分けマトリックスを溶解し、取り出されたスライスからDNAが抽出される。DNAは、標準的な固相抽出(固体表面、例えばガラスにDNAを結合させたのち洗浄し、最後に溶出させる)により、さらに純化される。収集されたDNAは、続けてさらなる処理または分析に使用できる。ただし、この抽出工程は時間と手間がかかり、DNAを損傷してしまうおそれがある(例えば、対象断片を切り取るための当該断片への照射中、DNAが長時間紫外光にさらされるとDNAのニッキングが起こるおそれがある)。
【0005】
そのため、分離分析法を実施する際は、前記装置自体の中で、分離された成分のうち1若しくはそれ以上を、さらなる分析または処理用に単離または抽出することも可能であることが望ましい。収集または単離された断片は多種多様な工程に使用でき、それらの工程としては例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)を使った増幅、細菌プラスミド、バクテリオファージ、および小型の動物ウイルス中に小〜中サイズのDNA鎖をクローニングして十分な量の純粋なDNAを生産し、その化学分析を可能にするための連結反応、ハイスループットの配列決定に使用されるアダプターライゲーション、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)などを使った質量分析計でのさらなる分析のため分離済みタンパク質または核酸成分を適切なマトリックスに溶解する反応、さらなる分析のため1若しくはそれ以上の分離済みタンパク質または核酸成分に標識剤を結合させる結合反応、または他の同様な検出後工程が含まれる。また、PCR試料の場合は、試料中で主な核酸断片から比較的小さいダイマーおよびプライマー分子を分離したのち、さらなる分析または処理用に前記主な核酸断片を単離および収集するとともに、前記比較的小さいプライマーおよびダイマー成分を除去したのち処分するため廃液槽またはセルへ送れるようにすることが重要である。
【0006】
既知サイズの標準的な基準は、標準的DNAサイジングラダーのうち、例えばDNA分離用のもの、またはタンパク質など分子量がわかっている標準的ポリペプチドの分離用のものを分離することにより得られる。そのようなサイジングラダーでは、未知の断片のサイズを決定できる。分別なしの(すなわち、成分の単離を伴わない)一般的な分離アッセイにおいて、標準的なサイジングラダーを分離する工程は、試料物質を複数の試料成分へと分離するため分離チャネルを通じて第1の試料物質を輸送する前に行われる。そのため、いかなるサイズ分析を行う場合も、ラダー全体および分離済みの全試料成分は、そのサイズ分析前に検出器を通過することになる。(以前の実験で得られたラダーは保管されることが多く、アーカイバルラダー(archival ladder)と呼ばれることがある。)あるいは、ラダーを試料と並行させてもよい(その場合、リアルタイムラダーと呼ばれることもある)。いずれの場合も、いかなるサイズ分析を行う場合も、ラダー全体および分離済みの全試料成分は、そのサイズ分析前に検出器を通過する。
【0007】
分別を実現するには、対象試料成分が検出器を通過する前にサイズ分析を行うことにより、選択された1若しくはそれ以上の対象分離済み成分を、その選択された1若しくはそれ以上の試料成分の決定されたサイズに基づき、分離チャネルから試料成分収集位置へと転流させることができるようにする必要がある。すなわち、分別装置は、精確な時間を決定して対象物質を試料成分収集位置へと転流させるため、リアルタイムでサイジング(サイズ決定)を行う必要がある。したがって、分別装置におけるサイジングを改善するため、補正されたサイジングラダーを使ってサイズ分析を行う方法を提供することが有利である。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第7,419,784号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2007/0245184号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2009/0149640号明細書
(特許文献4) 米国特許第6,221,603号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、サイズ分析を行う方法である。この方法では、アーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する。第1の分別装置内の分離チャネルを通過する標準的なサイジングラダーについて泳動時間を測定し、前記分離チャネルが、その内部に配置された一定量の第1のふるい分けゲルバッチを有することにより、第1のふるい分けゲルサイジングラダー泳動時間を含む第1のふるい分けゲルサイジングラダーが得られる。前記第1のふるい分けゲルサイジングラダー泳動時間の、前記アーカイバルラダー泳動時間に対する比を決定することにより、第1の補正値が得られる。この第1の補正値を、第1の情報格納手段にエンコードする。前記第1の情報格納手段を第2の分別装置に取り付け、前記第2の分別装置の分離チャネルは、その内部に配置された一定量の前記第1のふるい分けゲルバッチを有する。前記情報格納手段にエンコードされた前記第1の補正値を読み出して各アーカイバルラダー泳動時間に適用することにより、第1の補正されたアーカイバルサイジングラダーが得られる。次に、前記第1の補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記第2の分別装置内に配置された試料の分離された成分に関するサイズ分析を行う。
【0009】
サイズ分析を行う別の方法では、アーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する。低標準マーカーを含む試料を分別装置の分離チャネルに装填する。複数の分離された成分へと前記試料を分離する。前記低標準マーカーが検出されることにより、低標準マーカーの泳動時間が得られる。前記低標準マーカーの泳動時間をそれに対応するアーカイバルサイジングラダーの泳動時間に整合させることにより、補正されたアーカイバルサイジングラダーが得られる。次に、前記補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う。
【0010】
サイズ分析を行うさらに別の方法では、(a)複数のアーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する。(b)分別装置の第1のチャネルに標準的なサイジングラダーを装填する。(c)前記分別装置の第2のチャネルに試料を装填する。(d)複数の分離された成分へと前記試料を分離する。(e)前記標準的なサイジングラダーを前記試料と並行して分離することにより、複数のリアルタイムラダーピークを含むリアルタイムラダーが得られる。(f)式CF=(trt,i−trt,i−1)/(ta,i−ta,i−1)を使って補正係数(CF)を計算する。式中、trt,iは、最も最近のリアルタイムラダーピークが検出された時間、trt,i−1は、前回のリアルタイムラダーピークが検出された時間、(ta,i−ta,i−1)は、リアルタイムラダーピーク(i)に対応するアーカイバルラダーピークとリアルタイムラダーピーク(i−1)に対応するアーカイバルラダーピークとの泳動時間の差である。(g)未検出のリアルタイムラダーピークに対応する各アーカイバルラダー泳動時間に前記補正係数を適用することにより、1若しくはそれ以上の補正されたアーカイバルラダー泳動時間を得る。(h)検出されたリアルタイムラダーピーク泳動時間および補正されたアーカイバルラダー泳動時間から成る補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う。(i)前記複数のリアルタイムラダーピークの各々について、工程(f)〜(g)を反復する。
【0011】
サイズ分析を行うさらに別の方法では、以下の工程が行われる。(a)サイジングラダーを提供する。(b)前記サイジングラダー中のピークごとに濃度を提供する。(c)分別装置内の試料を複数の成分に分離する。(d)各ラダーピーク(i)の泳動時間(t)までの試料濃度を計算する。(e)式C(i)=C(t)/C(i)を使って、泳動時間(t)までの試料濃度を、その泳動時間(t)までの前記サイジングラダー中の濃度に対し正規化する。式中、C(t)は、泳動時間(t)までの累積試料濃度、C(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である。(f)化学式t*=f(t,C,p,p,...p)を使って、サイジングラダーピーク(i)の泳動時間を補正する。式中、fは、t、C、および任意の数の指定パラメータ(p)の関数である。(g)前記複数の成分の各成分について工程(c)〜(f)を反復する。そして(h)前記補正されたラダーピーク泳動時間を使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う。
【0012】
以上に述べた本発明の特徴および利点等は、添付の図面を参照して以下の現在好適な実施形態に関する詳細な説明を読むことにより、さらに明らかになるであろう。前記図面において、同様な参照番号は同一または機能的に同様な要素を示している。前記詳細な説明および図面は、本発明を限定せず、むしろ単に例示するものであり、本発明の範囲は、添付の請求項およびその均等物により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試料物質を複数の試料成分に分離したのち前記試料物質の1若しくはそれ以上の試料成分を単離する装置の概略図である。
図2図2は、試料物質を複数の試料成分に分離したのち前記試料物質の1若しくはそれ以上の試料成分を単離する別の装置の概略図である。
図3図3は、本発明に基づいてサイズ分析を行う1つの方法のフローチャートであり、この方法では、ふるい分けゲルのバッチごとの変動について補正を行う。
図4図4は、本発明に基づいてサイズ分析を行う別の方法のフローチャートであり、この方法では、試料中の低標準マーカーを使ってアーカイバルサイジングラダーを補正する。
図5図5は、本発明に基づいてサイズ分析を行うさらに別の方法のフローチャートであり、この方法では、リアルタイムの標準的なサイジングラダーを使ってアーカイバルサイジングラダーを補正する。
図6図6は、本発明に基づいてサイズ分析を行うさらに別の方法のフローチャートであり、この方法では、アーカイバルサイジングラダーまたはリアルタイムサイジングラダーの濃度と異なる試料濃度について補正を行う。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および2は、試料物質を複数の試料成分に分離したのち前記試料物質の1若しくはそれ以上の試料成分を単離する装置を例示したものである。この装置は、第1および第2の挟持チャネル1および2と、スイッチング領域3と、装填ウェル4と、収集ウェル5と、収集脚部6と、廃液脚部7と、分離チャネル8と、ふるい分けマトリックス9と、貯留槽10〜12とを有する。貯留槽10および11は廃液槽である。図1の装置は、単一のバッファ槽12を有する一方、図2の装置は、3つのバッファ槽、貯留槽12、13、および14を有する。これら図示した装置は、同時係属米国特許出願第12/843,557号に詳述されている。
【0015】
動作時には、装填ウェル4に試料を導入する。バッファ槽12に電圧を印加し、異なる電圧を廃液槽11に印加して分離チャネル8内で試料を電気泳動的に複数の試料成分に分離する。初期には、廃液槽10への電気接続を行わずに収集脚部6内の電流をゼロに保つことにより、単離および収集することが望ましい試料の成分がスイッチング領域3に達するまで、分離された試料を廃液脚部7および廃液槽11の方向へ誘導する。あるいは、この流体誘導システムは、廃液槽10での電圧を制御してゼロ電流を保つ。なお、用語「ゼロ電流」は、その他の脚部における電流と比べて無視できる電流、例えば他の脚部の電流の2%未満の電流を示すことに注意すべきである。
【0016】
単離および収集すべき1若しくはそれ以上の成分がスイッチング領域3内に入ると、廃液槽10に電圧が印加され、廃液槽11ではゼロ電流が維持される。これにより、試料の流れの方向が廃液脚部7から収集脚部6に切り替わる。試料の望ましい成分のみを単離するようにタイミングを合わせて試料の流れが再方向付けされる。前記1若しくはそれ以上の望ましい成分が収集脚部6内に入り収集ウェル5の位置に移動すると、廃液槽10への電流を再び制御してゼロにし、廃液槽11で元の電圧を再開することにより、試料の流れが廃液脚部7および廃液槽11の方向に戻る。廃液槽10への電気接続部でゼロ電流が適用されると、収集脚部6への移動は停止し、前記望ましい1若しくはそれ以上の試料成分は収集脚部6内の収集ウェル5の位置にとどまる。次に、その試料成分は、例えばピペッターを使って手作業で収集ウェル5から取り出されるか、または自動の試料移し変え装置で吸引される。
【0017】
本発明は、補正されたアーカイバルまたはリアルタイムサイジングラダーを使ってサイズ分析を行う方法を提供することにより、上述の装置等を使って対象試料成分を単離する(すなわち、断片化した試料を分別する)正確さと精度を改善する。
【0018】
分別が起こるようにするには、分離された試料成分の流れに含まれる成分(「断片」とも呼ばれる)のサイジングをリアルタイムで行って、望ましい成分のみを収集位置に転流する必要がある。図1および2に例示した装置、または当該技術分野で知られている他の分別装置を使って分別を実現するには、当該装置に対して切替電圧を印加して、次に印加解除する時間を決定し、望ましいサイズ範囲についてのみ収集脚部へ流れを転流させる必要がある。この決定は、泳動時間とサイズ間の関係を決定し、この決定結果を使って、その後の分析で切り替えを適用したのち解除すべき時間を計算することにより行う。
【0019】
サイジングは、断片サイズをその断片の分離チャネルでの泳動時間と関係付ける値の表を提供するアーカイバルサイジングラダーを使って実現される。アーカイバルラダーは、例えばDNA分離用、または分子量がわかっている標準的ポリペプチド分用(タンパク質分離用)の標準的DNAサイジングラダー(長さが異なるDNA分子の溶液)を、既知の条件下で、試料の分離および分別に使用される装置と同じ構成を有する装置において、分離および検出することにより得られる。(なお、本明細書における用語「ラダー」は、分離して検出する物質またはその物質から分離された成分の泳動時間のどちらでも示すことができ、前記分離された成分は、一般に電気泳動図でピークとして識別される分離された成分である。この意図された意味は、以降具体的に説明され、またはこの用語を文脈中で読むことにより明らかになるであろう。)
【0020】
アーカイバルラダーは実験で得られるため、その実験に使用する特定の分離条件に限って言えば完全に正確である。それらの条件は場合により異なる。そのため、アーカイバルラダーは、実際の試料分離条件に基づいて、サイジングを行う前に補正することが好ましい。なお、後述する方法のいずれにおいても、アーカイバルラダーは、前記装置を受容するよう構成された計器のメモリに永続的に格納される。あるいは、前記装置に(例えば、カードで)取り付けられ若しくは設けられた記憶手段にラダー情報をエンコードして提供し、前記計器で読み出すこともできる。このラダー情報は、前記装置で1若しくはそれ以上のサイズ分析を行う際に使用されるアーカイバルラダーとなる。前記ラダー情報は、アーカイバルラダーの補正値を提供するため使用される情報格納手段と同じもの、または別個のアーカイバルラダー情報格納手段にエンコードすることができる。以下の方法は、互いに独立して行え、それらの方法をすべて含んだ組み合わせを含むいかなる組み合わせでも使用できる。1つの方法から得られる補正されたサイジングラダーは、その後行われる方法用のアーカイバルまたは格納済みラダーとすることができる。
【0021】
ふるい分けゲルのバッチごとの変動に対するアーカイバルラダーの補正
幾何学的および電気的な条件は1つの装置から別の装置へ容易に再現できるが、計器に格納されたアーカイバルラダーを利用するときに使用されるゲルの厳密なふるい分け特性を再現することは比較的難しい。ふるい分けゲルのバッチごとの変動について補正を行うには、装置充填に使用される各ゲルバッチにおける標準的なサイジングラダーの泳動時間を測定して、それらの泳動時間と、そのバッチ用のアーカイバルラダーの泳動時間との比を決定すればよく、これにより前記アーカイバルラダー表に含まれる泳動時間ごとの補正値が得られる。
【0022】
この比は、情報格納手段、例えば各装置に貼付したバーコードまたは各装置に提供されるカードに印刷したバーコードへとコード化でき、前記装置が計器にロードされるときその計器に読み込まれる。前記比は、試料が導入される直前にアーカイバルラダーの泳動時間に対して適用され、それらの補正された時間が試料断片のサイジングに使用され、そのサイジングを使って、収集位置へ対象断片を転流させるための転流時間を決定することができる。補正値は、例えば、前記アーカイバルサイジングラダーに含まれる泳動時間の−30%〜+30%の範囲にわたる。
【0023】
図3は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。アーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する(ブロック310)。第1の分別装置内の分離チャネルを通過する標準的なサイジングラダーについて泳動時間を測定し、前記分離チャネルが、その内部に配置された一定量の第1のふるい分けゲルバッチを有することにより、第1のふるい分けゲルラダー泳動時間を含む第1のふるい分けゲルサイジングラダーが得られる(ブロック315)。前記第1のふるい分けゲルサイジングラダー泳動時間の、前記アーカイバルラダー泳動時間に対する比を決定することにより、第1の補正値を得る(ブロック320)。この第1の補正値を、第1の情報格納手段にエンコードする(ブロック325)。前記第1の情報格納手段を第2の分別装置に取り付け(ブロック330)、前記第2の分別装置の分離チャネルは、その内部に配置された一定量の前記第1のふるい分けゲルバッチを有する。前記情報格納手段にエンコードされた前記第1の補正値を読み出して(ブロック335)各アーカイバルラダー泳動時間に適用することにより、第1の補正されたアーカイバルサイジングラダーを得る(ブロック340)。前記第1の補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記第2の分別装置内に配置された試料の分離された成分に関するサイズ分析を行う(ブロック345)。前記分離された成分の1若しくはそれ以上は、収集ウェルへ送ることができる。
【0024】
上記の方法は、さらに以下の工程を有することができる。第3の分別装置内の分離チャネルを通過する前記標準的なサイジングラダーについて泳動時間を測定し、前記分離チャネルが、その内部に配置された一定量の第2のふるい分けゲルバッチを有することにより、第2のふるい分けゲルサイジングラダーが得られる。前記第2のふるい分けゲルサイジングラダー泳動時間の、前記アーカイバルラダー泳動時間に対する比を決定することにより、第2の補正値を得る。この第2の補正値を、第2の情報格納手段にエンコードする。その情報格納手段を第4の分別装置に取り付け、前記第4の分別装置の分離チャネルは、その内部に配置された一定量の前記第2のふるい分けゲルバッチを有する。前記情報格納手段にエンコードされた前記第2の補正値を読み出して各アーカイバルラダー泳動時間に適用することにより、第2の補正されたアーカイバルサイジングラダーを得る。次に、前記第2の補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記第4の分別装置内に配置された試料の分離された成分に関するサイズ分析を行う。
【実施例1】
【0025】
この例において、装置は、以下の情報を含む2Dマトリックス・バーコード・ラベルを含む。
【0026】
・バージョン
・アッセイ
・製造日付
・有効期限
・反復番号
・シリアライゼーション番号
・ラダー補正データ
【0027】
このバーコードは最大26文字から成り、各文字は、64の印刷可能なASCII文字のうち1つを有する。使用するASCII文字は、62の英数字に文字「?」および「@」を加えたものである。これにより、最大6426の異なるコードが可能になる。
【0028】
バーコードの文字読み出し値は、それに対応した数値へとバーコードリーダーにより変換され、それらの値は、文字位置に基づく入力用ソフトウェアにより使用される。
【0029】
本発明で特に重要な点は、各ラダーピークがアーカイバルラダーと比べた泳動時間の変化を%単位で表す数値を有することである。すべての文字を使用する必要はなく、可能性として最大16の異なるピークが利用できる。データの範囲は−30%〜+30%、増分1%であり、次のようにバーコード文字セットにマップされる。
【0030】
文字'0' = 10進0 = ヌル (データなし)
文字'1' = 10進1 = −30%
文字'2' = −29%
...
文字'w' = 10進60 = +29%
文字'x' = 10進61 = +30%
【0031】
試料中の低標準マーカーを使ったアーカイバルラダーの補正
電気泳動的に分離中の試料は、一般に1若しくはそれ以上の基準となる標準物質(標準マーカーとも呼ばれる)とともに分析にかけられ、それらを使って試料成分が特徴付けされる。本実施形態において、試料に含まれる低標準マーカーはアーカイバルラダーと併用されてアーカイバルラダーが補正され、それにより、リアルタイムの断片サイジングが改善される。本明細書における用語「低標準マーカー(low standard marker)」は、サイズ分析を行うために使用されているラダーの第1のピークに該当するマーカーである。本方法は、上述したバッチごとのふるい分けゲル補正方法と組み合わせて使用でき、そのふるい分けゲル補正方法を分析開始時に実施することで、本方法に使用するアーカイバルラダーが得られる。
【0032】
低標準マーカーが試料に含まれる場合は、分析中にアーカイバルラダーと標準および試料マーカーとを整合させる(アラインメントする)ことにより、前記ラダーに対して試料の泳動時間が調整される。転流時間は、試料中の低標準マーカーが検出器を通過した後、前記整合させた試料の泳動時間を使って補正される。低標準マーカーを分析にかけると、アーカイバルサイジングラダーを補正するための既知の点が得られる。
【0033】
図4は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。アーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する(ブロック410)。低標準マーカーを含む試料を分別装置の分離チャネルに装填する(ブロック415)。複数の分離された成分に前記試料を分離する(ブロック420)。前記低標準マーカーが検出されることにより、低標準マーカーの泳動時間が得られる(ブロック425)。前記低標準マーカーの泳動時間をそれに対応するアーカイバルサイジングラダーの泳動時間に整合させることにより、補正されたアーカイバルサイジングラダーが得られる(ブロック430)。次に、前記補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う(ブロック435)。前記分離された成分の1若しくはそれ以上は、収集ウェルへ送ることができる。なお、この文脈において、補正されたアーカイバルサイジングラダーを得るための低標準マーカーの泳動時間とそれに対応するアーカイバルサイジングラダーの泳動時間の整合は、アーカイバルラダーの泳動時間(前記低マーカーを含む)が比(ts,lm/ta,lm)で乗算されることを意味し、式中、ts,lmおよびta,lmは、それぞれ試料およびアーカイバル低マーカー時間である。このような整合により、前記アーカイバルラダーデータの生成に使用される電場と試料の分離に使用される電場との間に生じうる差が補正される。
【0034】
リアルタイムの標準的なサイジングラダーを使ったアーカイバルラダーの補正
リアルタイムラダーから得られる情報、すなわち試料と並行して(例えば、試料と並列に)分析される標準的なサイジングラダーをアーカイバルラダーと併用すると、分離された試料成分のサイジングを改善することができる。アーカイバルラダーは、リアルタイムのラダーおよび試料と厳密に同じ条件下では分析されない可能性があるため、前記アーカイバルラダーのピーク間の泳動時間と前記リアルタイムの前記ラダーの対応するピーク間の泳動時間は異なる可能性がある。例えば、アーカイバルラダーの300BPピークと200BPピークが240秒分離され、リアルタイムラダーの300BPピークと200BPピークが216秒分離される場合がある。前記アーカイバルラダーおよび前記リアルタイムラダーのそのような泳動時間の違いを使用して前記アーカイバルラダーを補正(すなわち更新)することができ、試料成分のサイジングを改善できる。
【0035】
補正係数(correction factor:CF)は、次式を使って決定される。
CF = (trt,i−trt,i−1)/(ta,i−ta,i−1
式中、trt,iは、最も最近のリアルタイムラダーピークが検出された時間である。
rt,i−1は、前回のリアルタイムラダーピークが検出された時間である。
【0036】
(ta,i−ta,i−1)は、リアルタイムラダーピーク(i)に対応するアーカイバルラダーピークとリアルタイムラダーピーク(i−1)に対応するアーカイバルラダーピークとの泳動時間の差である。
【0037】
そのため、前記アーカイバルラダーの300BPピークと200BPピークが240秒分離され、前記リアルタイムラダーの300BPピークと200BPピークが216秒分離されている上記の例では、補正係数(CF)が90%となる。
【0038】
前記リアルタイム(標準的なサイズ分析)ラダーでまだ見られていないピークに対応する前記アーカイバルラダー泳動時間に前記補正係数を適用すると、アーカイバルラダー泳動時間を補正したものが以下のように得られる。
a,i+1 = trt,i + (ta,i+1−ta,i) × CF
a,i+2 = ta,i+1 + (ta,i+2−ta,i+1) × CF
a,i+3 = ta,i+2 + (ta,i+3−ta,i+2) × CF
以下同様
【0039】
新たなリアルタイムラダーの各ピークが検出されるに伴い、上記の工程が繰り返され、すなわち新たな補正係数が決定され、前記リアルタイムラダーの未検出ピークに対応する元のアーカイバルラダーの泳動時間に前記新たな補正係数が適用されて、補正されたアーカイバルラダー泳動時間が生成される。これらの補正されたアーカイバルラダー泳動時間は、実質的に、期待されるリアルタイムラダーピークに予測される泳動時間である。このように、補正されたアーカイバルサイジングラダーの各々は、前記検出されたリアルタイムラダーピークの実際の泳動時間と、期待されるリアルタイムラダーピークに予測される泳動時間とを含む。分離された試料成分のサイジングは、最も最近補正されたアーカイバルラダーを使って行われる。
【0040】
図5は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。複数のアーカイバルラダー泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する(ブロック510)。分別装置の第1のチャネルに標準的なサイジングラダーを装填する(ブロック515)。前記分別装置の第2のチャネルに試料を装填する(ブロック520)。複数の分離された成分へと前記試料を分離する(ブロック525)。前記標準的なサイジングラダーを前記試料と並行して分離することにより、複数のリアルタイムラダーピークを含むリアルタイムラダーが得られる(ブロック530)。式CF=(trt,i−trt,i−1)/(ta,i−ta,i−1)を使って補正係数(CF)を計算する。式中、trt,iは、最も最近のリアルタイムラダーピークが検出された時間、trt,i−1は、前回のリアルタイムラダーピークが検出された時間、(ta,i−ta,i−1)は、リアルタイムラダーピーク(i)に対応するアーカイバルラダーピークとリアルタイムラダーピーク(i−1)に対応するアーカイバルラダーピークとの泳動時間の差である(ブロック535)。未検出のリアルタイムラダーピークに対応する各アーカイバルラダー泳動時間に前記補正係数を適用することにより、1若しくはそれ以上の補正されたアーカイバルラダー泳動時間を得る(ブロック540)。検出されたリアルタイムラダーピーク泳動時間および補正されたアーカイバルラダー泳動時間から成る補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う(ブロック545)。前記複数のリアルタイムラダーピークのそれぞれについて、ブロック535〜545の工程を反復する(ブロック550)。前記分離された成分の1若しくはそれ以上は、収集ウェルへ送ることができる。代替実施形態では、ブロック535〜545の前記工程を分離された成分が前記収集ウェルへ送られる時間、その直前、またはその直後までのみ、繰り返すことができる。
【0041】
試料濃度に関するアーカイバルラダーの補正
分離チャネル中の試料断片のサイズは、通常、標準的なサイジングラダーの既知サイズの断片の泳動時間と比較を行うにより決定され、そのサイジングは、ラダーの断片と同じサイズの試料断片が同じスピードでゲル中を移動するという仮定に基づく。この仮定は、試料中の物質濃度が標準的なサイジングラダー中と異なる場合、有効でない可能性がある。試料の濃度が標準的なサイジングラダー中の濃度を超える場合、試料の断片は、標準的なサイジングラダー中の等サイズ断片と異なるスピードで移動する。この泳動変化は、例えば試料物質の濃度が高く、逆方向に流れる荷電色素を枯渇させてしまうため、結果として上流断片が標準的なサイジングラダー中と同じサイズの断片より速くゲル中を移動することから生じる。
【0042】
試料中のこの加速に関する補正は、標準的なサイジングラダーを使って試料中の断片サイズを計算する前に、標準的なサイジングラダーの断片泳動時間に対し、濃度の相対補正を適用することにより行える。例えば、前記補正は、特定のラダー断片が検出される時点まで、ラダー濃度の試料濃度に対する比に比例させることができる。経験的に決定された加速係数をその濃度比で乗算すると、標準的なサイジングラダーの断片泳動時間を低減するための割合が得られる。なお、本方法については、標準的なサイジングラダーは、アーカイバルラダー、または分離中の試料と並行して分析するリアルタイムラダーのどちらか一方であってよい。
【0043】
図6は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。サイジングラダーを提供する(ブロック610)。前記サイジングラダーのピークごとに濃度を提供する(ブロック615)。分別装置において試料が複数の成分へと分離される(ブロック620)。各ラダーピーク(i)の泳動時間(t)までの前記試料の濃度を計算する(ブロック625)。式C(i)=C(t)/C(i)を使って、泳動時間(t)までの試料濃度を、その泳動時間(t)までの前記サイジングラダー中の濃度に対し正規化(C)する。式中、C(t)は、泳動時間(t)までの累積試料濃度、C(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である(ブロック630)。化学式t=f(t,C,p,p,...p)を使って、サイジングラダーピーク(i)の泳動時間を補正する。式中、fは、t、C、および任意の数の指定パラメータ(p)の関数である(ブロック635)。前記複数の成分の各成分について、ブロック620〜635の工程を反復する(ブロック640)。前記補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、検出された成分のサイズ分析を行う(ブロック645)。ブロック635の工程で使用される式の厳密な形態は、t=t[1-C(i)LTA]であり、式中、tはi番目のラダーピーク補正された泳動時間、LTAは以下の例で示すラダー時間制御係数である。
【実施例2】
【0044】
試料の濃度が断片の移動度に及ぼす影響を明らかにするため、試料の濃度がラダーの濃度より高い場合にラダー時間を加速する。この影響は小さく、正確にモデル化することが難しいため、単純な線型補正を使用する。ラダーピークごとに、そのピークの泳動時間までの試料濃度を計算する。この濃度を、ラダー中の全濃度に対して正規化する(C)。
(i) = C(t)/C(i)
式中、C(t)は、泳動時間tまでの累積試料濃度である。
【0045】
(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である。
【0046】
次式を使ってラダー時間を補正する。
= t [1 - C (i) LTA ]
式中、tは、i番目のラダーピークの補正された泳動時間である。
【0047】
LTAは、ラダー時間制御係数である。
【0048】
経験的分析によると、22ng/μlと比較して試料濃度100ng/μlの場合、抽出サイズ500BPで試料のサイジングを補正するには0.007の値で十分な時間制御を行えることがわかった。
【0049】
このサイジング補正は、全抽出分析中にわたり計算できるため、いつ分別を開始および終了するかに関する決定は、この補正を含むことになる。また、この補正はC(i)>1.0の場合のみ適用でき、各ラダー泳動時間の85%を超えずに、すなわち0<C(i)LTA<0.1で泳動時間を低減させる。
【0050】
本明細書に開示する本発明の実施形態は、現時点で好適なものと考えられているが、本発明の要旨を変更することなく、種々変形することができる。本発明の範囲は添付の請求項に示されており、均等物の意味および範囲内のすべての変更形態および修正形態は、その意味および範囲に含まれるよう意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6