【実施例1】
【0025】
この例において、装置は、以下の情報を含む2Dマトリックス・バーコード・ラベルを含む。
【0026】
・バージョン
・アッセイ
・製造日付
・有効期限
・反復番号
・シリアライゼーション番号
・ラダー補正データ
【0027】
このバーコードは最大26文字から成り、各文字は、64の印刷可能なASCII文字のうち1つを有する。使用するASCII文字は、62の英数字に文字「?」および「@」を加えたものである。これにより、最大64
26の異なるコードが可能になる。
【0028】
バーコードの文字読み出し値は、それに対応した数値へとバーコードリーダーにより変換され、それらの値は、文字位置に基づく入力用ソフトウェアにより使用される。
【0029】
本発明で特に重要な点は、各ラダーピークがアーカイバルラダーと比べた泳動時間の変化を%単位で表す数値を有することである。すべての文字を使用する必要はなく、可能性として最大16の異なるピークが利用できる。データの範囲は−30%〜+30%、増分1%であり、次のようにバーコード文字セットにマップされる。
【0030】
文字'0' = 10進0 = ヌル (データなし)
文字'1' = 10進1 = −30%
文字'2' = −29%
...
文字'w' = 10進60 = +29%
文字'x' = 10進61 = +30%
【0031】
試料中の低標準マーカーを使ったアーカイバルラダーの補正
電気泳動的に分離中の試料は、一般に1若しくはそれ以上の基準となる標準物質(標準マーカーとも呼ばれる)とともに分析にかけられ、それらを使って試料成分が特徴付けされる。本実施形態において、試料に含まれる低標準マーカーはアーカイバルラダーと併用されてアーカイバルラダーが補正され、それにより、リアルタイムの断片サイジングが改善される。本明細書における用語「低標準マーカー(low standard marker)」は、サイズ分析を行うために使用されているラダーの第1のピークに該当するマーカーである。本方法は、上述したバッチごとのふるい分けゲル補正方法と組み合わせて使用でき、そのふるい分けゲル補正方法を分析開始時に実施することで、本方法に使用するアーカイバルラダーが得られる。
【0032】
低標準マーカーが試料に含まれる場合は、分析中にアーカイバルラダーと標準および試料マーカーとを整合させる(アラインメントする)ことにより、前記ラダーに対して試料の泳動時間が調整される。転流時間は、試料中の低標準マーカーが検出器を通過した後、前記整合させた試料の泳動時間を使って補正される。低標準マーカーを分析にかけると、アーカイバルサイジングラダーを補正するための既知の点が得られる。
【0033】
図4は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。アーカイバルラダーの泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する(ブロック410)。低標準マーカーを含む試料を分別装置の分離チャネルに装填する(ブロック415)。複数の分離された成分に前記試料を分離する(ブロック420)。前記低標準マーカーが検出されることにより、低標準マーカーの泳動時間が得られる(ブロック425)。前記低標準マーカーの泳動時間をそれに対応するアーカイバルサイジングラダーの泳動時間に整合させることにより、補正されたアーカイバルサイジングラダーが得られる(ブロック430)。次に、前記補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う(ブロック435)。前記分離された成分の1若しくはそれ以上は、収集ウェルへ送ることができる。なお、この文脈において、補正されたアーカイバルサイジングラダーを得るための低標準マーカーの泳動時間とそれに対応するアーカイバルサイジングラダーの泳動時間の整合は、アーカイバルラダーの泳動時間(前記低マーカーを含む)が比(t
s,lm/t
a,lm)で乗算されることを意味し、式中、t
s,lmおよびt
a,lmは、それぞれ試料およびアーカイバル低マーカー時間である。このような整合により、前記アーカイバルラダーデータの生成に使用される電場と試料の分離に使用される電場との間に生じうる差が補正される。
【0034】
リアルタイムの標準的なサイジングラダーを使ったアーカイバルラダーの補正
リアルタイムラダーから得られる情報、すなわち試料と並行して(例えば、試料と並列に)分析される標準的なサイジングラダーをアーカイバルラダーと併用すると、分離された試料成分のサイジングを改善することができる。アーカイバルラダーは、リアルタイムのラダーおよび試料と厳密に同じ条件下では分析されない可能性があるため、前記アーカイバルラダーのピーク間の泳動時間と前記リアルタイムの前記ラダーの対応するピーク間の泳動時間は異なる可能性がある。例えば、アーカイバルラダーの300BPピークと200BPピークが240秒分離され、リアルタイムラダーの300BPピークと200BPピークが216秒分離される場合がある。前記アーカイバルラダーおよび前記リアルタイムラダーのそのような泳動時間の違いを使用して前記アーカイバルラダーを補正(すなわち更新)することができ、試料成分のサイジングを改善できる。
【0035】
補正係数(correction factor:CF)は、次式を使って決定される。
CF = (t
rt,i−t
rt,i−1)/(t
a,i−t
a,i−1)
式中、t
rt,iは、最も最近のリアルタイムラダーピークが検出された時間である。
t
rt,i−1は、前回のリアルタイムラダーピークが検出された時間である。
【0036】
(t
a,i−t
a,i−1)は、リアルタイムラダーピーク(i)に対応するアーカイバルラダーピークとリアルタイムラダーピーク(i−1)に対応するアーカイバルラダーピークとの泳動時間の差である。
【0037】
そのため、前記アーカイバルラダーの300BPピークと200BPピークが240秒分離され、前記リアルタイムラダーの300BPピークと200BPピークが216秒分離されている上記の例では、補正係数(CF)が90%となる。
【0038】
前記リアルタイム(標準的なサイズ分析)ラダーでまだ見られていないピークに対応する前記アーカイバルラダー泳動時間に前記補正係数を適用すると、アーカイバルラダー泳動時間を補正したものが以下のように得られる。
t
*a,i+1 = t
rt,i + (t
a,i+1−t
a,i) × CF
t
*a,i+2 = t
*a,i+1 + (t
a,i+2−t
a,i+1) × CF
t
*a,i+3 = t
*a,i+2 + (t
a,i+3−t
a,i+2) × CF
以下同様
【0039】
新たなリアルタイムラダーの各ピークが検出されるに伴い、上記の工程が繰り返され、すなわち新たな補正係数が決定され、前記リアルタイムラダーの未検出ピークに対応する元のアーカイバルラダーの泳動時間に前記新たな補正係数が適用されて、補正されたアーカイバルラダー泳動時間が生成される。これらの補正されたアーカイバルラダー泳動時間は、実質的に、期待されるリアルタイムラダーピークに予測される泳動時間である。このように、補正されたアーカイバルサイジングラダーの各々は、前記検出されたリアルタイムラダーピークの実際の泳動時間と、期待されるリアルタイムラダーピークに予測される泳動時間とを含む。分離された試料成分のサイジングは、最も最近補正されたアーカイバルラダーを使って行われる。
【0040】
図5は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。複数のアーカイバルラダー泳動時間を含むアーカイバルサイジングラダーを提供する(ブロック510)。分別装置の第1のチャネルに標準的なサイジングラダーを装填する(ブロック515)。前記分別装置の第2のチャネルに試料を装填する(ブロック520)。複数の分離された成分へと前記試料を分離する(ブロック525)。前記標準的なサイジングラダーを前記試料と並行して分離することにより、複数のリアルタイムラダーピークを含むリアルタイムラダーが得られる(ブロック530)。式CF=(t
rt,i−t
rt,i−1)/(t
a,i−t
a,i−1)を使って補正係数(CF)を計算する。式中、t
rt,iは、最も最近のリアルタイムラダーピークが検出された時間、t
rt,i−1は、前回のリアルタイムラダーピークが検出された時間、(t
a,i−t
a,i−1)は、リアルタイムラダーピーク(i)に対応するアーカイバルラダーピークとリアルタイムラダーピーク(i−1)に対応するアーカイバルラダーピークとの泳動時間の差である(ブロック535)。未検出のリアルタイムラダーピークに対応する各アーカイバルラダー泳動時間に前記補正係数を適用することにより、1若しくはそれ以上の補正されたアーカイバルラダー泳動時間を得る(ブロック540)。検出されたリアルタイムラダーピーク泳動時間および補正されたアーカイバルラダー泳動時間から成る補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、前記分離された成分のサイズ分析を行う(ブロック545)。前記複数のリアルタイムラダーピークのそれぞれについて、ブロック535〜545の工程を反復する(ブロック550)。前記分離された成分の1若しくはそれ以上は、収集ウェルへ送ることができる。代替実施形態では、ブロック535〜545の前記工程を分離された成分が前記収集ウェルへ送られる時間、その直前、またはその直後までのみ、繰り返すことができる。
【0041】
試料濃度に関するアーカイバルラダーの補正
分離チャネル中の試料断片のサイズは、通常、標準的なサイジングラダーの既知サイズの断片の泳動時間と比較を行うにより決定され、そのサイジングは、ラダーの断片と同じサイズの試料断片が同じスピードでゲル中を移動するという仮定に基づく。この仮定は、試料中の物質濃度が標準的なサイジングラダー中と異なる場合、有効でない可能性がある。試料の濃度が標準的なサイジングラダー中の濃度を超える場合、試料の断片は、標準的なサイジングラダー中の等サイズ断片と異なるスピードで移動する。この泳動変化は、例えば試料物質の濃度が高く、逆方向に流れる荷電色素を枯渇させてしまうため、結果として上流断片が標準的なサイジングラダー中と同じサイズの断片より速くゲル中を移動することから生じる。
【0042】
試料中のこの加速に関する補正は、標準的なサイジングラダーを使って試料中の断片サイズを計算する前に、標準的なサイジングラダーの断片泳動時間に対し、濃度の相対補正を適用することにより行える。例えば、前記補正は、特定のラダー断片が検出される時点まで、ラダー濃度の試料濃度に対する比に比例させることができる。経験的に決定された加速係数をその濃度比で乗算すると、標準的なサイジングラダーの断片泳動時間を低減するための割合が得られる。なお、本方法については、標準的なサイジングラダーは、アーカイバルラダー、または分離中の試料と並行して分析するリアルタイムラダーのどちらか一方であってよい。
【0043】
図6は、本発明に係るサイズ分析を行う方法のフローチャートを示したものである。サイジングラダーを提供する(ブロック610)。前記サイジングラダーのピークごとに濃度を提供する(ブロック615)。分別装置において試料が複数の成分へと分離される(ブロック620)。各ラダーピーク(i)の泳動時間(t
i)までの前記試料の濃度を計算する(ブロック625)。式C
N(i)=C
S(t
i)/C
L(i)を使って、泳動時間(t
i)までの試料濃度を、その泳動時間(t
i)までの前記サイジングラダー中の濃度に対し正規化(C
N)する。式中、C
S(t
i)は、泳動時間(t
i)までの累積試料濃度、C
L(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である(ブロック630)。化学式t
*i=f(t
i,C
N,p
1,p
2p
3,...p
n)を使って、サイジングラダーピーク(i)の泳動時間を補正する。式中、fは、t
i、C
N、および任意の数の指定パラメータ(p
n)の関数である(ブロック635)。前記複数の成分の各成分について、ブロック620〜635の工程を反復する(ブロック640)。前記補正されたアーカイバルサイジングラダーを使って、検出された成分のサイズ分析を行う(ブロック645)。ブロック635の工程で使用される式の厳密な形態は、t
*i=t
i*[1-C
N(i)
*LTA]であり、式中、t
*iはi番目のラダーピーク補正された泳動時間、LTAは以下の例で示すラダー時間制御係数である。
【実施例2】
【0044】
試料の濃度が断片の移動度に及ぼす影響を明らかにするため、試料の濃度がラダーの濃度より高い場合にラダー時間を加速する。この影響は小さく、正確にモデル化することが難しいため、単純な線型補正を使用する。ラダーピークごとに、そのピークの泳動時間までの試料濃度を計算する。この濃度を、ラダー中の全濃度に対して正規化する(C
N)。
C
N(i) = C
S(t
i)/C
L(i)
式中、C
S(t
i)は、泳動時間t
iまでの累積試料濃度である。
【0045】
C
L(i)は、i番目のラダーピークまでのラダーピーク濃度の総和である。
【0046】
次式を使ってラダー時間を補正する。
t
*i = t
i * [1 - C
N (i)
* LTA ]
式中、t
*iは、i番目のラダーピークの補正された泳動時間である。
【0047】
LTAは、ラダー時間制御係数である。
【0048】
経験的分析によると、22ng/μlと比較して試料濃度100ng/μlの場合、抽出サイズ500BPで試料のサイジングを補正するには0.007の値で十分な時間制御を行えることがわかった。
【0049】
このサイジング補正は、全抽出分析中にわたり計算できるため、いつ分別を開始および終了するかに関する決定は、この補正を含むことになる。また、この補正はC
N(i)>1.0の場合のみ適用でき、各ラダー泳動時間の85%を超えずに、すなわち0<C
N(i)
*LTA<0.1で泳動時間を低減させる。
【0050】
本明細書に開示する本発明の実施形態は、現時点で好適なものと考えられているが、本発明の要旨を変更することなく、種々変形することができる。本発明の範囲は添付の請求項に示されており、均等物の意味および範囲内のすべての変更形態および修正形態は、その意味および範囲に含まれるよう意図されている。