特許第6073237号(P6073237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073237着色された、硬質陽極酸化された外面を有する調理用容器を得るための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073237
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】着色された、硬質陽極酸化された外面を有する調理用容器を得るための方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20170123BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20170123BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A47J27/00 107
   A47J36/04
   A47J36/02 B
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-539315(P2013-539315)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-542826(P2013-542826A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】FR2011052690
(87)【国際公開番号】WO2012066253
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】1059522
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ルビオ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン テュフェ
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン ベリュー
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0138661(US,A1)
【文献】 特表2010−525095(JP,A)
【文献】 特開2000−000167(JP,A)
【文献】 特開2008−154659(JP,A)
【文献】 特開平11−346928(JP,A)
【文献】 特開平08−256906(JP,A)
【文献】 特開昭62−136789(JP,A)
【文献】 特開平02−149229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/02
A47J 36/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理用容器(1)を得るための方法であって、
アルミニウム製外面(11)および内面(12)を有するボウル(10)を作り出すステップと、
前記ボウル(10)の少なくとも外面(11)の陽極酸化を実施するステップと、
ゾルゲルコーティングを前記陽極酸化された外面(11)上に施すステップと
を含み、
前記陽極酸化は硬質陽極酸化層を得るための硬質陽極酸化であり、
少なくとも1つの着色ステップが、前記硬質陽極酸化に続いて、前記ゾルゲルコーティングステップの前に行われ、前記着色ステップまたは前記着色ステップの1つが、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を前記硬質陽極酸化層に閉じ込めることをさらに特徴とする方法。
【請求項2】
前記硬質陽極酸化層は、少なくとも1つの金属イオンおよび対イオンから構成された金属塩で着色され、前記金属イオンは遷移金属から選択されることを特徴する請求項1に記載の調理容器(1)を得るための方法。
【請求項3】
前記着色ステップまたは前記着色ステップの1つが、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を含む着色浴を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項4】
前記ゾルゲルコーティングステップが、着色する目的で無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を使用することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項5】
前記方法が、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施すステップを含むことを特徴とし、前記ボウル(10)の前記外面(11)の硬質陽極酸化を実施する前記ステップが、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施す前記ステップに続いて行われることをさらに特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項6】
前記方法が、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施す前記ステップの前に前記ボウル(10)の前記外面(11)および前記内面(12)の事前の硬質陽極酸化を実施するステップを含むことを特徴とし、前記ボウル(10)の前記外面(11)の硬質陽極酸化を実施する前記ステップが、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施す前記ステップの後の前記ボウル(10)の前記外面(11)を酸洗いするステップに続いて行われることをさらに特徴とする請求項に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項7】
前記方法が、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施すステップを含むことを特徴とし、前記ボウル(10)の前記外面(11)の硬質陽極酸化を実施する前記ステップが、PTFEコーティングを前記ボウル(10)の前記内面(12)上に施す前記ステップの前に行われることをさらに特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項8】
アルミニウム製外面(11)及び内面(12)を有するボウル(10)と、
前記ボウル(10)の少なくとも前記アルミニウム製外面(11)上に形成された陽極酸化層と、
前記アルミニウム製外面(11)上の前記陽極酸化層の外側に形成されたゾルゲルコーティング層と、
を備えた調理用容器(1)であって、
前記陽極酸化層は硬質陽極酸化層であり、
前記調理用容器(1)は更に、前記硬質陽極酸化層と前記ゾルゲルコーティング層との間に形成された少なくとも1つの着色層を備え、前記着色層または前記着色層の1つが、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を前記硬質陽極酸化層に閉じ込めることを特徴とする調理用容器(1)。
【請求項9】
前記硬質陽極酸化層は、少なくとも1つの金属イオンおよび対イオンから構成された金属塩で着色され、前記金属イオンは遷移金属から選択されることを特徴する請求項8に記載の調理用容器(1)。
【請求項10】
前記着色層は、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を備えたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の調理用容器(1)。
【請求項11】
前記ボウル(10)が、少なくとも1つのアルミニウム製表面を有する基板(13)のスタンピング加工によって得られることを特徴とする請求項1に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項12】
前記基板(13)が、2つのアルミニウム製表面を有することを特徴とする請求項11に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項13】
前記基板(13)が、固体アルミニウムから作製されることを特徴とする請求項11または12に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項14】
前記基板(13)が、アルミニウム製表面およびステンレス鋼製表面を有する共積層体によって形成されることを特徴とする請求項11に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項15】
前記ボウル(10)が、ダイキャストアルミニウムから作製されることを特徴とする請求項1に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項16】
前記ボウル(10)の前記外面(11)が、ブラシ掛けされたまたはマイクロブラストされた表面を有することを特徴とする請求項11から15までのいずれか一項に記載の調理用容器(1)を得るための方法。
【請求項17】
前記ボウル(10)が、強磁性材料から作製された少なくとも1つのインサートを備えることを特徴とする請求項8または10に記載の調理用容器(1)。
【請求項18】
調理用容器(1)と、前記調理用容器(1)に取り付けられたハンドル(2)とを備える台所用品(100)であって、前記調理用容器(1)が請求項8、9、10または17に適合することを特徴とする台所用品(100)。
【請求項19】
加熱手段(250)に関連付けられた調理用容器(1)を備える電気調理機器(200)であって、前記調理用容器(1)が請求項8、9、10または17に適合することを特徴とする電気調理機器(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用容器を備える調理機器および調理器具の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、ただし限定されないが、カセロール、フライパン、または中華鍋などの台所用品、および食品を収容するように設計されたボウルを備える電気調理機器にも関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、硬質陽極酸化された表面層を有するアルミニウム製調理用容器の生産について開示している。この表面層は、所望の場合色付けされ得る。こうして得られた表面は、陽極酸化されない表面より洗浄が容易である。そうではあるが、こうして得られた表面は、汚れがこびり付かない層でコーティングされた表面ほど洗浄は容易ではない。
【0004】
特許文献2および特許文献3は、硬質陽極酸化されたアルミニウム製基板上にPTFEなどの汚れがこびり付かないコーティングを有する調理用容器の生産を提案している。したがって硬質陽極酸化は、PTFEコーティングの前に実施される。この構成は、PTFEコーティングの摩耗および引っかきの抵抗性を改善することを可能にする。通常、PTFEコーティングは、このタイプのコーティングの機械的抵抗性が限定されることにより、調理用容器の内側表面をコーティングするために主に使用される。
【0005】
特許文献4は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製基板を備える台所用品の少なくとも1つの表面上にゾルゲルコーティングを施すことを開示しており、この場合この基板は、陽極酸化されたアルミニウム製基板になり得る。この文献は、5から100μmまでの間の陽極酸化層の厚さを想定している。他の表面は、所望の場合PTFEでコーティングすることができる。ゾルゲルコーティングは、調理用容器の皿洗い機に対する抵抗性、また前記調理用容器の難燃性も改善することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】GB 1 099 486
【特許文献2】EP 0 424 072
【特許文献3】EP 0 902 105
【特許文献4】EP 1 894 502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐久性質のものである調理用容器の外側の陽極酸化された表面の着色を提案することである。
【0008】
本発明の別の目的は、皿洗い機で使用される洗剤に対して抵抗性を有する調理用容器の外側の陽極酸化された表面の着色を提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、調理に使用される炎に耐えることができる調理用容器の外側の陽極酸化された表面の着色を提案することである。
【0010】
本発明の追加の目的は、前記調理用容器の内側表面のPTFEコーティングと適合性がある調理用容器の外側の陽極酸化された表面の着色を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、調理用容器を得るための方法であって、以下のステップ:
【0012】
−アルミニウム製外面および内面を有するボウルを作り出すステップと、
【0013】
−ボウルの少なくとも外面の硬質陽極酸化を実施するステップと、
【0014】
−ゾルゲルコーティングを陽極酸化された外面上に施すステップと
を含み、
【0015】
少なくとも1つの着色ステップが、硬質陽極酸化に続いて行われ、1つの着色ステップまたは複数の着色ステップは、ゾルゲルコーティングステップの前および/またはその間に行われる、方法によって達成される。
【0016】
これらの構成は、1つの着色ステップまたは複数の着色ステップに使用される顔料および/または染料を硬質陽極酸化された層内および/またはゾルゲルコーティング内に閉じ込めることによってこれらを保護することを可能にする。こうして耐久性の着色を得ることができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、着色ステップまたは着色ステップの1つは、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を含む着色浴を使用する。したがって、顔料および/または染料を硬質陽極酸化された層内に閉じ込めることが、前記硬質陽極酸化された層の多孔性により達成可能である。
【0018】
別の実施形態によれば、ゾルゲルコーティングステップは、着色する目的で無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を使用する。したがって、顔料および/または染料をゾルゲルコーティング内に閉じ込めることが、達成可能である。
【0019】
好ましい実施形態によれば、前記方法は、PFTEコーティングをボウルの内面上に施すステップを含む。PFTEコーティングを施すステップは、所望の場合、表面仕上げおよび1つまたは複数の中間層の配設を含むことができる。PTFEコーティングは、特に、積層化によって作り出すことができる。
【0020】
次いで、1つの実施形態によれば、ボウルの外面の硬質陽極酸化を実施するステップは、PTFEコーティングをボウルの内面に施すステップに続いて行われる。PTFEコーティングに続いて実施される陽極酸化は、ボウルの外面を陽極酸化するだけであり、それによってボウルの外面および内面の陽極酸化に比べて処理時間を短縮し、電流および酸の消費を低減することを可能にするという利点を有する。さらには、PTFEは、陽極酸化を実施するために通常使用される硫酸浴に効果的に耐える。PTFEコーティングおよび硬質陽極酸化のステップに続いて実施される着色は、ゾルゲルコーティングを施す方がPTFEコーティングを施すよりも低い温度が使用されるため、顔料および/または染料、特に有機顔料および/または染料のより広範な選択肢を使用することを可能にする。
【0021】
方法は、任意選択で、PTFEコーティングをボウルの内面上に施すステップの前にボウルの外面および内面の事前の硬質陽極酸化を実施するステップを含み、ボウルの外面の硬質陽極酸化を実施するステップは、PTFEコーティングをボウルの内面上に施すステップの後のボウルの外面を酸洗いするステップに続いて行われる。この事前の硬質陽極酸化処理は、ボウルの内面および外面を含み、PTFEコーティングを施す前に硬質の土台を得ることを可能にする。
【0022】
別の実施形態によれば、ボウルの外面の硬質陽極酸化を実施するステップは、PTFEコーティングをボウルの内面上に施すステップの前に行われる。この硬質陽極酸化処理は、ボウルの内面および外面を含み、PTFEコーティングを施す前に硬質の土台を得ることを可能にする。PTFEコーティングを施した後に外面の硬質陽極酸化が続く事前の硬質陽極酸化と比較して、提案された方法は、ステップの数を低減することができるが、PTFEコーティングを施す間に遭遇する温度に耐えることができる顔料または染料、すなわち無機顔料の使用を課す。色の選択は、ここでさらに低減される。
【0023】
この目的はまた、前述した特徴の少なくとも1つに適合する方法によって得られた調理用容器によっても達成される。
【0024】
有利な実施形態によれば、ボウルは、少なくとも1つのアルミニウム製表面を有する基板のスタンピング加工によって得られ、この表面はこのときボウルの外面を形成する。
【0025】
次いで1つの実施形態によれば、基板は、2つのアルミニウム製表面を有する。基板は、特に、固体アルミニウムまたは2つのアルミニウム製表面および鋼心を有する共積層体から作製することができる。鋼は、所望の場合ステンレス鋼の中から選択することができる。
【0026】
次いで別の実施形態によれば、基板は、アルミニウム製表面およびステンレス鋼製表面を有する共積層体によって形成され、前記ステンレス鋼製表面は、有利には、PTFEコーティングが施されるように設計される。
【0027】
別の有利な実施形態によれば、ボウルは、ダイキャストアルミニウムから作製される。
【0028】
有利な実施形態によれば、ボウルの外面は、ブラシ掛けされたまたはマイクロブラストされた表面を有する。陽極酸化処理は、表面材料が変更される表面処理であり、1つまたは複数の層が既存表面に付加される表面コーティングではない。硬質陽極酸化処理は、平滑なまたは研磨された表面状態には限定されず、特に、ブラシ掛けされたまたはマイクロブラストされた表面上の陽極酸化も考えられる。
【0029】
誘導加熱適合性の調理用容器を得るために、ボウルは、有利には、強磁性材料から作製された少なくとも1つのインサートを備える。
【0030】
この目的はまた、調理用容器と、少なくとも1つのリベットによってまたは溶接によって前記調理用容器に取り付けられたハンドルとを備える台所用品によって達成され、前記調理用容器は、上述した特徴の少なくとも1つに適合する。
【0031】
この目的はまた、加熱手段に関連付けられた調理用容器を備える電気調理機器によって達成され、前記調理用容器は、上述した特徴の少なくとも1つに適合する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、限定的ではないが付属の図に示す実施形態の例を検討することによってより明確に理解されるであろう。
図1】本発明の調理用容器1を示す図である。
図2】本発明の調理用容器1を備える台所用品100を示す図である。
図3】本発明の調理用容器1を備える電気調理機器200の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1および2に示す調理用容器1は、アルミニウム製外面11および内面12を有するボウル10を備える。
【0034】
一実施形態によれば、ボウル10は、ボウル10の外面11を形成するように設計された少なくとも1つのアルミニウム製表面を有する基板13のスタンピング加工によって得られる。
【0035】
一実施形態によれば、基板13は、ボウル10の外面11および内面12それぞれを形成するように設計された2つのアルミニウム製表面を有する。
【0036】
基板13は、任意選択で、固体アルミニウムから作製することができる。特に、アルミニウム合金3003が、この目的に使用可能である。次いで、ボウル10を作り出すために使用される基板13が、アルミニウム製シート内で切断される。
【0037】
別の実施形態によれば、基板13は、アルミニウム製表面およびステンレス鋼製表面を有する共積層体によって形成され、アルミニウム製表面は、ボウルの外面11を形成するように設計され、ステンレス鋼製表面は、ボウル10の内面12を形成するように設計される。
【0038】
別の実施形態によれば、ボウル10は、ダイキャストアルミニウムから、たとえばAlSi12合金で作製される。
【0039】
任意選択では、ボウル10の外面11は、必ずしも平滑または研磨されたものではなく、特に、ブラシ掛けされたまたはマイクロブラストされた表面を有することができる。
【0040】
ボウル10は、任意選択で、誘導による加熱が可能である調理用容器1を作り出すために、フェライト系鋼などの強磁性材料から作製された少なくとも1つのインサートを含むことができる。強磁性材料は、フェライト系ステンレス鋼であることが好ましい。任意選択では、強磁性材料から作製されたインサートは、1つまたは複数の穿孔を有するプレートによって形成することができる。インサートは、有利には、高温または低温のスタンピング加工によって基板13のアルミニウムに組み付けられ、またはキャストアルミニウムによってコーティングされ、1つの穿孔または複数の穿孔は、好ましくはアルミニウムによって充填される。強磁性材料から作製されたインサートは少なくとも1つの可視部分を有することができ、この可視部分は、酸性化学物質浴、具体的には1つの陽極酸化浴または複数の陽極酸化浴内でマスキングすることによって保護することが必要である。
【0041】
本発明の調理用容器1は、以下のステップ:
【0042】
−アルミニウム製外面11および内面12を有するボウル10を作り出すステップと、
【0043】
−ボウル10の少なくとも外面11の硬質陽極酸化を実施するステップと、
【0044】
−ゾルゲルコーティングを陽極酸化された外面11上に施すステップと
を含み、
【0045】
少なくとも1つの着色ステップが、硬質陽極酸化に続いて行われ、1つの着色ステップまたは複数の着色ステップは、ゾルゲルコーティングステップの前および/またはその間に行われる、方法によって作り出される。
【0046】
より正確には、硬質陽極酸化に続いて行われる前記1つの着色ステップまたは複数の着色ステップは、前記陽極酸化された外面の硬質陽極酸化に続いて陽極酸化された外面上で行われる。
【0047】
方法は、有利には、PTFEコーティングをボウルの内面上に施すステップを含む。PTFEコーティングを施すステップは、特に、積層化によって行うことができる。所望の場合、ボウル10のPTFEコーティングされた内面12の抵抗性を改善するために、PTFEコーティングを施すステップに充填剤入りPTFEを使用することができる。特に、補強充填剤として鉱物粒子を使用することができる。PTFE調理表面を得るために、PTFEコーティングは、400℃を上回る温度(通常は約420℃)まで加熱される。
【0048】
一実施形態によれば、ボウル10の外面11の硬質陽極酸化を実施するステップは、PTFEコーティングをボウル10の内面12上に施すステップの前に行われる。硬質陽酸化後にPTFEコーティングを得ることは、特許文献3に詳細に開示されている。この構成は、硬質の土台を得ることを可能にし、したがってPTFEコーティングの機械的抵抗性が改善される。しかし、ほとんどの着色された製品は上述した温度に耐えることができないため、PTFEコーティングの仕上げに必要な温度は、着色の可能性を限定する。
【0049】
別の実施形態によれば、ボウル10の外面11の硬質陽極酸化を実施するステップは、PTFEコーティングをボウル10の内面12上に施すステップに続いて行われる。この実施形態の利点は、着色された製品の幅広い選択肢、つまり無機顔料だけでなく有機顔料または有機染料を使用できることにある。
【0050】
任意選択では、ボウル10の外面11および内面12の事前の硬質陽極酸化を実施するステップが、PTFEコーティングをボウル10の内面12上に施すステップの前に考えられる。この事前の硬質陽極酸化処理は、得られるべきPTFEコーティングの下方に硬質の土台を可能にする。しかし、着色ステップが、着色されたゾルゲルコーティングの使用に限定されない限り、この着色ステップに進む前に前記外面11を再陽極酸化するために、ボウル10の外面11の酸洗いがここで必要とされる。ボウル10の外面11の硬質陽極酸化を実施するステップが、次いで、PTFEコーティングをボウル10の内面12上に施すステップの後のボウル10の外面11を酸洗いするステップに続いて行われる。
【0051】
硬質陽極酸化の前の表面処理は、任意選択で、酸脱脂またはアルカリ脱脂および/または酸洗いまたはアルカリ洗いおよび/または硝酸中和を含むことができる。約50℃の温度で50g/lの濃度のNaOH浴内で数分間脱脂することが、満足のいく結果を生じさせる。
【0052】
硬質陽極処理は、特に、浴内に浸すことによって実施することができる。事前の陽極酸化処理もまた、浴内に浸すことによって実施することができる。硬質陽極酸化は、引っかき傷および衝撃に対して良好な抵抗性を有するという利点を有する。したがって、エナメル加工と比較して、材料のより幅広い選択肢が、ボウル10の内面12のPTFEコーティングによって与えられた洗浄特性を犠牲することなくボウル10を作り出すために考えられる。
【0053】
硬質陽極酸化は、たとえば、130g/lの濃度のHSOの浴を用いて、約10℃の温度で90分間、約1.8A/dmの電流密度を用いて達成可能である。これより高い電流密度を用いた約0℃のこれより低い温度では、処理時間を短縮することができる。
【0054】
10μmから30μmの間の厚さを有する硬質陽極酸化された層は、約350Hvの硬度を有し、耐久性および着色の任意選択性の両方に関して満足のいく結果を生じさせる。
【0055】
好ましい特徴によれば、陽極酸化された外面11は、30nmより小さい、好ましくは20nmより小さいサイズの孔を有する。
【0056】
一実施形態によれば、着色ステップは、たとえば、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を含む着色浴を使用する。無機顔料(たとえば、Clariantからの黄色のOrminal Gold4Nなど)は、300℃またはさらには400°Cも超え得る温度に対して良好な抵抗性を有する。特定の無機顔料は、したがって、ボウル10の内面12にPTFEコーティングを施す前にボウル10の外面11を着色することに適している。有機顔料および/または有機染料は通常、高い温度に対する抵抗性が無機顔料より小さいが、有機顔料および有機染料の方が無機顔料よりも利用可能な色の選択肢がより広い。したがって黄色、緑、赤、栗色、青または薄茶などの色を得ることができる。有機顔料および/または有機染料は、PTFEコーティングをボウル10の内面12に施した後にボウル10の外面11を着色することにより適している。
【0057】
硬質陽極酸化層の着色は、少なくとも1つの金属イオンおよび対イオンから構成された金属塩で得ることができる。遷移金属の中から金属イオンを選択することが好ましい。対イオン、またはリガンドは、好ましくは水性または溶媒の媒体中に完全に溶けることができ、金属イオンを硬質陽極酸化層の孔構造内へと浸透させることを容易にする。金属イオンは、その後、所望の色相を生じさせる酸化物を得るために、標準的な熱処理によって酸化される。使用される金属塩の滴定およびタイプは、所望の色相および着色力によって変わるが、取り扱いおよび保管設備およびコストによっても変わる。
【0058】
方法は、ゾルゲルコーティングを陽極酸化された外面上に施すステップを含む。ゾルゲルコーティングステップは、ボウル10の外面11の硬質陽極酸化のステップに続いて行われる。ボウル10の外面11により良好な難燃性を与えることにより、このゾルゲルコーティングは、顔料および/または染料、特に有機顔料または有機染料のより広範な選択肢を使用することを可能にする。このゾルゲルコーティングはまた、皿洗い機内で使用される洗剤に抵抗性を有することができる調理用容器を得ることも可能にする。特に、ゾルゲルコーティングは、特許文献4において説明された方法にしたがって施すことができる。ゾルゲルコーティングの焼き付け用の温度は約300℃であることが好ましい。この温度は、ゾルゲルコーティングに良好な緻密特性を与えることを可能にし、したがってゾルゲルコーティングを、摩耗、炎、および皿洗い機に対する抵抗性を有するようにする。この温度は、過度のものではなく、PTFEを劣化させることはない。この温度はまた、有機顔料および/または有機染料の使用とも適合性がある。
【0059】
任意選択では、ゾルゲルコーティングステップは、着色する目的で無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料を使用することができ、この場合、染料または顔料の1つだけのタイプを使用することができる。したがってゾルゲルコーティングは、所望の着色を得るために、ボウル10の外面11の硬質陽極酸化とボウル10の硬質陽極酸化された外面11のゾルゲルコーティングの間の着色ステップの代わりに、またはこれに加えて顔料および/または染料を付加することによって着色することができる。
【0060】
PTFEコーティングステップおよびゾルゲルコーティングステップは、任意選択では、少なくとも1つの共通の焼き付けを含むことができる。
【0061】
本発明の方法は、特に、実施形態の以下の実施例を含むことができる。
【実施例1】
【0062】
内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための透明ゾルゲル。
【実施例2】
【0063】
内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例3】
【0064】
内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例4】
【0065】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の事前の硬質陽極酸化、内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための透明ゾルゲル。
【実施例5】
【0066】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の事前の硬質陽極酸化、内面12のPTFEコーティング、硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例6】
【0067】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の事前の硬質陽極酸化、内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例7】
【0068】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11および内面12の着色、内面12のPTFEコーティング、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための透明ゾルゲル。
【実施例8】
【0069】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11および内面12の着色、内面12のPTFEコーティング、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例9】
【0070】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11および内面12の着色、内面12のPTFEコーティング、外面11の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例10】
【0071】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11および内面12の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための透明ゾルゲル。
【実施例11】
【0072】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、硬質陽極酸化された外面11および内面12の着色、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【実施例12】
【0073】
硬質の土台を得るためのボウル10の両方の表面の硬質陽極酸化、着色され硬質陽極酸化された外面11をコーティングするための着色されたゾルゲル。
【0074】
図2は、調理用容器1と、少なくとも1つのリベット3によって前記調理用容器1に取り付けられたハンドル2とを備える台所用品100を示している。この目的を達成するために、リベット3は、調理用容器1のボウル10内に開けられた穴内に挿入される。所望の場合、ハンドル2を調理用容器1に取り付けるために複数のリベット3を使用することができる。ハンドル2を調理用容器1に取り付けるために2個から4個の間のリベット3を使用することが好ましい。あるいは、ハンドル2は、溶接によって前記調理用容器1に取り付けることもできる。所望の場合、別のハンドル4を、少なくとも1つの他のリベット5によってまたは溶接によって前記調理用容器1に取り付けることができる。
【0075】
図3は、加熱手段250に関連付けられた調理用容器1を備える電気調理機器200を示している。調理用容器1は、加熱手段250を備える加熱基部210内に配置されるボウルを形成する。ボウル10の外面11は、加熱手段250上に載置する。外面11は、所望の場合、加熱手段250と一体的に形成することができる。
【0076】
あるいは、ボウル10の内面12は、必ずしもPTFEでコーティングされず、他のタイプのコーティングを任意選択で考えることができる。
【0077】
あるいは、ボウル10の内面12は、必ずしもコーティングされない。特に、ボウル10の内面12は、所望の場合研磨することができる。
【0078】
本発明は、本明細書で説明した実施形態の例に限定されず、特許請求の範囲内に数多くの改変形態を包含する。
図1
図2
図3