(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073252
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ワッシャー組立体
(51)【国際特許分類】
F16F 1/373 20060101AFI20170123BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20170123BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20170123BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F16F1/373
F16B43/00 A
F16F1/36 G
F16F15/08 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-551288(P2013-551288)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公表番号】特表2014-504709(P2014-504709A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2012022374
(87)【国際公開番号】WO2012103097
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月26日
(31)【優先権主張番号】61/435,931
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アール. シャサー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ディー.ホルト
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−255975(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3021202(JP,U)
【文献】
実開昭59−112019(JP,U)
【文献】
実開昭56−163839(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/373
F16B 43/00
F16F 1/36
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを締結具および/または別の構造体から隔離するように構成されるワッシャー組立体において、
上部と、下部と、該上部と下部との間に設けられた側部と、中心軸とを有した環状のゴム製絶縁部であって、該ゴム製絶縁部は、更に、前記下部から軸方向に突出し前記ワークの表面に直接接触するように構成される少なくとも1つの突起部と、前記下部から軸方向に延びワークの穴内に篏合される中空の管状部とを有する環状のゴム製絶縁部と、
取外すことのできない一体物をなすように前記ゴム製絶縁部の前記上部に永久固定される金属強化部材とを具備し、
前記少なくとも1つの突起部は、通常作動状態中に圧縮されるように構成され、
前記金属強化部材は、前記通常作動状態中よりも該ワッシャー組立体に大きい力が印加される最大作動状態中に圧縮されるように構成されており、かつ、前記ワークの表面に接触しないように構成されており、
前記金属強化部材は、等間隔に設けた屈曲部を有する金属ワッシャー、又は波形のワッシャーを具備する、ワッシャー組立体。
【請求項2】
少なくとも1つの前記突起部は少なくとも1つの周方向リブを具備する請求項1に記載のワッシャー組立体。
【請求項3】
等間隔に設けた屈曲部の各々は、頂点において連結された傾斜ビーム部を具備する請求項1に記載のワッシャー組立体。
【請求項4】
前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部に永久的に接合されている請求項1に記載のワッシャー組立体。
【請求項5】
貫通穴を有するワークと、
頭部と一体に連結され前記貫通穴に挿通されるシャフトを有した締結具と、
前記締結具が前記ワークと直接接触しないように、前記ワークを前記締結具および/または別の構造体から隔離するように構成されるワッシャー組立体であって、該ワッシャー組立体が、
上部と、下部と、該上部と下部との間に設けられた側部と、中心軸とを有した環状のゴム製絶縁部であって、該ゴム製絶縁部は、更に、前記下部から軸方向に突出し前記ワークの表面に直接接触するように構成される少なくとも1つの突起部と、前記下部から軸方向に延びワークの前記貫通穴内に篏合される中空の管状部とを有する環状のゴム製絶縁部と、
取外すことのできない一体物をなすように前記ゴム製絶縁部の前記上部に永久固定される金属強化部材とを具備し、
前記少なくとも1つの突起部は、通常作動状態中に圧縮されるように構成され、
前記金属強化部材は、前記通常作動状態中よりも該ワッシャー組立体に大きい力が印加される最大作動状態中に圧縮されるように構成されており、かつ、前記ワークの表面に接触しないように構成されているワッシャー組立体とを具備し、
前記金属強化部材は、屈曲部を有する金属ワッシャー、又は波形のワッシャーを具備する、システム。
【請求項6】
少なくとも1つの前記突起部は少なくとも1つの周方向リブを具備する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
各屈曲部は頂点において連結された傾斜ビーム部を具備する請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部に永久的に接合されている請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、包括的には、ワッシャー組立体に関し、より詳細には、ゴム製絶縁部に接合した金属ワッシャーを含むワッシャー組立体に関する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2011年1月25日出願の米国仮特許出願第61/435,931号「Washer Assembly」に関し、該米国仮特許出願の優先権の利益を主張し、該米国仮特許出願は本願と一体をなすものとして引用する。
【背景技術】
【0003】
図1は、既知の防振アセンブリ10の断面図である。アセンブリ10は、上側ブッシュ12、下側ブッシュ14、上側ゴムグロメット16および下側ゴムグロメット18を含む。ブッシュ12、14とグロメット16、18とは分離しており、互いに独立している。すなわち、アセンブリ10が締結具とワークとの間に圧縮固定されていないときには、グロメット16、18はブッシュ12、14から容易に取り外れる。
【0004】
各ブッシュ12、14は、外方に広がる平板カラー22と一体に形成された中空円筒シャフト20を含んでおり、平板カラーは中空シャフト20に対して概ね垂直である。各グロメット16、18は、中央開口を有した概ね円形の本体24を含む。本体24はシャフト20の回りに嵌合する。
【0005】
図1に示すように、防振アセンブリ10はボルトのような締結具26および/またはワークピース(図示せず)を、フレームやパネル等のようなワーク28から隔離するように用いられる。ワーク28は、締結具26のシャフト32を挿通する貫通穴30を含む。さらに、ブッシュ12、14のシャフト20は、貫通穴30並びにグロメット16、18の部分に挿通される。このように、締結具26並びにブッシュ12、14はワーク28から隔離される。ゴムグロメット16、18のみがワーク28と接触し、それにより、ワーク28がこすれ、えぐれ等から保護される。
【0006】
グロメット16、18は、ブッシュ12、14のカラー22とワーク28との間に圧縮挟持される。グロメット16、18のゴムが標準負荷により固定されると、グロメット16、18に印加される力(すなわち「負荷」)の大きさが直接影響を受ける。グロメット16、18に作用する力によって、グロメット16、18が経時的に脆弱化する可能性がある。さらに、グロメット16、18のゴムが劣化、脆弱化する可能性がある。
【0007】
グロメット16または18等の通常のゴムグロメットは、例えば、ブッシュ12のカラー22に連結される締結具の頭部34により圧縮される。グロメット16、18が永久固化されると、グロメット16、18が受ける有効圧縮量が低減する。その結果、グロメット16、18がワーク28に与える保護負荷および隔離負荷がより小さくなる。
【0008】
一般に、ワーク28に印加される負荷が増大すると、ワーク28それ自体や或いは締結具26のずれのような重大な移動をもたらす可能性がある。その結果、グロメット16、18は不均衡な位置において永久固化し、さらにそれにより適切な防振性が毀損される可能性がある。一般に、圧縮されているゴム製グロメット16または18は時間と共に永久固化されてゆく。通常、ゴムが永久固化すると高が変化し、負荷および防振の利益が低減される。
【0009】
最大作動状態中に、500%〜1000%増大した力がグロメット16、18に印加される可能性がある。グロメット16、18は通常、この時間中に、システムが適切に機能し続けられないほど大きく動くことを許してしまう。
【発明の概要】
【0010】
或る特定の実施の形態が、ワークを締結具および/または別の構造体から隔離するように構成されるワッシャー組立体を提供する。該ワッシャー組立体は、上部と、下部と、該上部と下部との間に設けられた側部と、中心軸とを有した
環状のゴム製絶縁部であって、該ゴム製絶縁部は、更に、前下部から軸方向に突出し前記ワークの表面に直接接触するように構成される少なくとも1つの突起部
と、前記下部から軸方向に延びワークの穴内に篏合される中空の管状部とを有する
環状のゴム製絶縁部と、取外すことのできない一体物をなすように前記ゴム製絶縁部
の前記上部に永久固定される金属強化部材とを含む。前記突起部(複数の場合もある)は、通常作動状態中に圧縮されるように構成される。該金属強化部材は、前記通常作動状態中よりも該ワッシャー組立体に大きい力が印加される最大作動状態中に圧縮されるように構成され、かつ、前記ワークの表面に接触しないように構成されている。
【0011】
前記ゴム製絶縁部はゴム製絶縁リングを含むことができる。前記突起部(複数の場合もある)は少なくとも1つの周方向リブを含むことができる。
【0012】
前記金属強化部材は金属ワッシャーを含むことができる。前記金属ワッシャーは等間隔に設けた屈曲部を含むことができる。等間隔に設けた屈曲部の各々は、頂点において連結された傾斜ビーム部を含むことができる。任意選択的に、前記金属強化部材は波形のワッシャーを含むことができる。代替的にまたは付加的に、前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部上に固定される金属カップを含むことができる。前記金属カップは収容カフ(containing cuff)と一体に形成される平面状リムを含むことができる。
【0013】
前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部に永久的に接合することができる。また、前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部内に埋め込むことができる。
【0014】
或る特定の実施の形態が、貫通穴を有するワークと、頭部と一体に連結されたシャフトを有する締結具であって、前記シャフトは前記貫通穴を通る、締結具と、前記締結具が前記ワークと直接接触しないように、前記ワークを前記締結具および/または別の構造体から隔離するように構成されるワッシャー組立体とを備えるシステムを提供する。前記ワッシャー組立体は、上部と、下部と、該上部と下部との間に設けられた側部と、中心軸とを有した
環状のゴム製絶縁部であって、該ゴム製絶縁部は、更に、前下部から軸方向に突出し前記ワークの表面と直接接触するように構成される少なくとも1つの突起部
と、前記下部から軸方向に延びワークの前記貫通穴内に篏合される中空の管状部とを有する
環状のゴム製絶縁部と、取外すことのできない一体物をなすように前記ゴム製絶縁部
の前記上部に永久固定される金属強化部材とを含む。前記突起部(複数の場合もある)は、通常作動状態中に圧縮されるように構成され、かつ、前記ワークの表面に接触しないように構成されている。前記金属強化部材は、前記通常作動状態中よりも大きい力が前記ワッシャー組立体に印加される最大作動状態中に圧縮されるように構成される。前記金属強化部材は前記ワークに直接接触しない。
【0015】
或る特定の実施の形態が、ワークを締結具および/または別のワーク等の別の構造体から隔離するように構成されるワッシャー組立体を提供する。該ワッシャー組立体は、前記ワークの表面に直接接触するように構成される複数の等間隔の周方向リブを有するゴム製絶縁リングと、前記ゴム製絶縁部内に埋め込まれる金属強化部材とを含む。前記等間隔の周方向リブは、通常作動状態中に圧縮
されるように構成される。前記金属強化部材は、前記通常作動状態中よりも大きい力が前記ワッシャー組立体に印加される最大作動状態中に圧縮
されるように構成される。前記金属強化部材は前記ゴム製絶縁部の前記形状を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】1つの実施形態による金属ワッシャーを上方から見た斜視図である。
【
図3】1つの実施形態によるワッシャー組立体を上方から見た斜視図である。
【
図4】1つの実施形態によるワッシャー組立体を下から見た斜視図である。
【
図5】1つの実施形態による、ワークを締結具および別のワークから隔離するワッシャー組立体の等角図である。
【
図6】1つの実施形態による、ワークを締結具および別のワークから隔離するワッシャー組立体の軸方向断面図である。
【
図7】1つの実施形態によるワッシャー組立体の通常作動状態中および最大作動状態中のばね定数のチャートである。
【
図8】1つの実施形態によるワッシャー組立体を上方から見た斜視図である。
【
図9】1つの実施形態によるワッシャー組立体を下から見た斜視図である。
【
図10】1つの実施形態によるワッシャー組立体の正面図である。
【
図11】1つの実施形態によるワッシャー組立体の軸方向断面図である。
【
図12】1つの実施形態によるワッシャー組立体の正面図である。
【
図13】1つの実施形態によるワッシャー組立体の軸方向断面図である。
【
図14】1つの実施形態によるワッシャー組立体を下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されているかまたは図面に示されている構成部材の構成および配置の詳細にその適用が限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することが可能である。また、本明細書において使用される表現および用語は説明目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。「含む」および「備える」並びにその変形形の使用は、その前に挙げる部材(items)およびその均等物、並びに追加の部材およびその均等物を包含することを意味する。
【0018】
図2は、1つの実施形態による金属ワッシャー40すなわち金属強化部材を上方から見た斜視図である。ワッシャー40は、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼等のような種々の金属から形成することができる。ワッシャー40は概ね円形の本体42を含み、該本体は平面部44と、等間隔に設けた屈曲部46とを有する。すなわち、屈曲部46は互いに周方向に等距離だけ間隔を置いて配置されている。各屈曲部46は本体42の一部であり、本体42の、平面部44の平面から逸脱した波形、歯形その他の形状に形成された部分である。ワッシャー40は、図示される屈曲部よりも多いかまたは少ない数の屈曲部46を含むことができる。さらに、屈曲部46は、互いから不均等なパターンで間隔を置くことができる。
【0019】
各屈曲部46は対向する傾斜ビーム部48を含み、該傾斜ビーム部は、平面部44に一体に連結された近位端49と、頂点50において互いに連結された遠位端とを有している。こうして、各屈曲部46はV字状に形成される。然しながら、屈曲部46は、平面部44の平面から逸脱した様々な他の形状にて形成してもよい。例えば、屈曲部46は波形に形成してもよい。
【0020】
図3は、1つの実施形態によるワッシャー組立体60を上方から見た斜視図である。ワッシャー組立体60は、ベース部となるゴム製絶縁リング62に固定されたワッシャー40を含む。ワッシャー40は、接着や硬化等によりゴム製絶縁リング62に永久的に固定することができる。例えば、ワッシャー40は、接着剤によりゴム製絶縁リング62に固定して、次に硬化し、金属ワッシャー40と絶縁リング62のゴムとの間に強固な接合部を形成することができる。さらに、ワッシャー40は、ゴム製絶縁リング62に完全に埋め込むことができる。例えば、ワッシャー40は、ゴム製絶縁リング62により完全に包囲してもよい。この実施形態では、
図3は、明確にするために単にワッシャー40を示しているが、ワッシャー40は、ゴム製絶縁リング62内に完全に封入してもよいことは理解されよう。
【0021】
絶縁リング62は、中央開口66が貫通、形成された環状本体64を含む。本体64は、ワッシャー40の本体42の平面部44を支持する平面部68を含む。ワッシャー40の屈曲部46は対応の凹部70に受承される。凹部70は、環状本体64の全幅にわたって形成してもよいし、しなくてもよい。
図3に示される場合では、凹部70は、環状本体64の全幅にわたって形成されておらず、凹部70は、屈曲部46の幅と一致するように、外側部分に形成されている。こうして、環状本体64は、堅牢な内側リング支持部72によって強度および剛性が高くなっている。
【0022】
複数の周方向リブ74、タブ、隆起部、突起部等が、環状本体64の下側部分から延びている。リブ74は等間隔に配置されたギャップ部76により離間、配置されている。
【0023】
図4は、1つの実施形態によるワッシャー組立体60を下から見た斜視図である。
図4に示すように、周方向リブ74は内側凹状リム78を囲繞しており、該内側凹状リム78はそこから延びている中空の管状部80を囲繞している。特に
図6に示すように、管状部80は、ワークの貫通穴内に延びるように構成され、一方、リブ74はワークの平面部に当接するように構成される。
【0024】
図5は、1つの実施形態による、ワーク82を締結具84および別のワークから隔離するワッシャー組立体60の等角図である。2つのワッシャー組立体60が示されているが、より多いかまたはより少ないワッシャー組立体60を使用してもよい。例えば、ただ1つのワッシャー組立体60を使用することができる。
【0025】
締結具84は、ワッシャー40の平面部44に接触する固定フランジ86または圧縮リミッター部を含む。然しながら、締結具84と金属ワッシャー40の双方ともにワーク82の表面に接触しない。その代わりに、周方向リブ74がワーク82に接触する。ワーク82に接触する周方向リブ74は、通常作動状態で絶縁リング62のゴムが振動を減衰するとともにワーク82を締結具84から隔離する、第1の負荷減衰フェーズをもたらす。
【0026】
図示のように、ワッシャー40は、ワーク82から遠位に配置されるワッシャー組立体60の半体内に位置決めすることができる。そのため、絶縁リング62のゴムは、通常作動状態中にワーク82に印加される力を吸収することが可能である。然しながら、ワッシャー組立体60に印加される増大した力は、ワッシャー40により規定される剛性中枢体に最終的に移される。より剛性および強度が高いワッシャー40は、力に抵抗し、絶縁リング62に強度をもたらす。屈曲部46は増大した負荷を弾性的に吸収するように機能し、ワッシャー40の平面部44から増大した力を分散する。すなわち、屈曲部46はワッシャー40を強化し、(平坦なワッシャーとは異なって)ワッシャー40がひび割れを起こすかまたは別様に壊れる可能性を低減する。代替的に、ワッシャー40は絶縁リング62内の種々の高さに位置決めすることができる。
【0027】
図6は、1つの実施形態による、ワーク82を締結具84およびブラケット90等の別のワークから隔離するワッシャー組立体60の軸方向断面図である。上述したように、絶縁リング62の内側管状部80は、ワーク82の内周面と締結具84の回りのブッシュ87との間に挟持される。さらに、周方向リブ74はワーク82の平面部88に接触する。
【0028】
通常作動状態下で(第1の負荷フェーズ中に)、周方向リブ74は、ワーク82と絶縁リング62の環状本体64との間で圧縮される。この通常負荷フェーズ中には、ワッシャー40の金属屈曲部46(
図2〜
図6に示す)は圧縮されないままである。一方、最大作動状態中には、ワーク82に連結されたブラケット90に負荷がかけられると(すなわち、増大した力が作用すると)、ワーク82は上部絶縁リング62または下部絶縁リング62のいずれかをより大きく圧縮する傾向がある。然しながら、絶縁リング62における金属屈曲部46の位置決めに起因して、絶縁リング62の移動に対する抵抗が急激に増大する。増大した最大負荷点まで、ゴム製リブ74のみが圧縮される。負荷が増大しても、ゴム製絶縁リング62の全体が圧縮されることが、一体の金属ワッシャー40により防止される。そのため、(
図1に示す防振ゴムのような)標準的な防振ゴムに比べて、金属ワッシャー40による剛性支持によって、移動および永久固化は最低限に抑えられる。さらに、ゴム製絶縁リング62内の金属屈曲部46が、絶縁リング62の移動および圧縮に対する抵抗を実質的に増大することが見出されている。
【0029】
図7は、1つの実施形態によるワッシャー組立体60の通常作動状態および最大作動状態中のばね定数のチャートを示している。通常作動状態92(フェーズ1)中には、絶縁リング62の周方向リブ74が圧縮される。一方、最大作動状態94(フェーズ2)中には、金属ワッシャー40が、圧縮はするが、ワッシャー組立体60が高負荷状態下で作動することを可能にするように、ワッシャー組立体60に実質的な強度をもたらすと同時に変位を制御する。理解されるように、ワッシャー組立体60の圧縮が増大すると、ばね定数が劇的に増大する。
【0030】
図2〜
図7を参照すると、各ワッシャー組立体60は2つの異なる負荷状態をもたらす。第1のフェーズ92は、低負荷(通常)作動状態に用いられる。隔離されたワーク82が高負荷状態(最大作動)において絶縁リング62に一層大きい力を印加し始めると、絶縁リング62は第2の負荷フェーズ94に移行する。絶縁リング62は、急激に第1のフェーズよりも剛性が高くなり、そのような状態中に移動を制御するように用いられる。
【0031】
周方向リブ74は予負荷状態および通常作動状態に用いられる。屈曲部46を有するワッシャー40は最大負荷状態中に作用する。すなわち、通常作動中にゴム製絶縁リング62はワーク82を締結具84から隔離する。一方、負荷が増大すると、金属ワッシャー40は組立体60を強化する剛性支持体すなわち中枢体を提供し、ゴム製絶縁リング62が不所望の位置に永久固化されることを防止する。
【0032】
ワッシャー組立体60は、ワーク82と締結具84およびブラケット90等の別のワークとの間の減衰および振動隔離をもたらす。ワッシャー組立体60は、最大負荷状態中のシステムの移動を(金属ワッシャー40により)制限するのに通常必要である剛性のあるばね定数と、通常作動状態におけるゴム製絶縁リング62の既知であり信頼性のある防振効果とを兼ね備える。
【0033】
上述したように、ワッシャー組立体60はゴム製絶縁リング62に永久的に接合されたかまたはゴム製絶縁リング62内に形成された金属ワッシャー40を含む。ワッシャー組立体60は長寿命の防振ゴムを提供する。ゴムは形成されたワッシャー40に直接接合されるため、絶縁リング62のゴムは圧縮負荷とは異なって剪断負荷をかけられた状態にある。ゴムは原子的に、圧縮負荷とは異なって剪断負荷をかけられる場合にはるかに長い寿命を有し、経時的に最小限の永久固化量を受ける。金属ワッシャー40である中枢体を付加すると、組立体60は
図1に示す防振ゴム等の通常の防振ゴムに比べて経時的に少ない永久固化量を受ける。
【0034】
さらに、ゴム製絶縁リング62のみがワーク82に直接接触するため、ワッシャー組立体60はワーク82の金属またはプラスチックを、腐食の可能性をほとんどまたは全く伴わずに隔離することが可能である。ゴムのみが接触することにより、いかなる可能なガルバニ電池も排除される。ガルバニ電池は、異なる金属が互いに接触するときに形成される。一方の金属がアノードとして機能し、一方、他方の金属がカソードとして機能する。電子はアノードからカソードに移動する。例えば、炭素鋼とステンレス鋼とが水分を伴って接触する場合、炭素鋼はアノードとして機能し、ゆっくりと腐食する。然しながら、金属がワーク82に接触することを防止するワッシャー組立体60のゴムによる接触により、いかなる可能なガルバニ電池も消滅し、それにより腐食が防止される。
【0035】
図8は、1つの実施形態によるワッシャー組立体96を上方から見た斜視図である。
図9はワッシャー組立体96を下から見た斜視図である。
図10はワッシャー組立体96の正面図である。
図11はワッシャー組立体96の軸方向断面図である。
【0036】
図8〜
図11を参照すると、ワッシャー組立体96は、ワッシャー組立体60と同様であるが、ワッシャー組立体96がV字状屈曲部を有するワッシャーを有する代わりに波形ワッシャー98をゴム製絶縁リング100内に有することが異なる。波形ワッシャー98は、ワッシャー組立体60内に埋め込むことができる。ワッシャー98はワッシャー組立体60内のその位置を明確にするように破断様式で示されている。一方、ゴム製絶縁リング100は、上面が波形ワッシャー98を受けて保持するように形成することができる。波形ワッシャー98は、ゴム製絶縁リング100に永久的に接合することができる。
【0037】
図示のように、波形ワッシャー98はワッシャー組立体60の上部に近接して位置決めすることができる。ワッシャー組立体60と同様に、組立体60の下部におけるゴムが、通常作動状態中にまず圧縮される。一方、最大作動状態中に、波形ワッシャーが圧縮されると、組立体96のばね定数が劇的に増大する。ワッシャー98の波形状が、ワッシャー98の部分が互いの平面から逸脱することを確実にする。
【0038】
図12は、1つの実施形態によるワッシャー組立体102の正面図である。
図13は、ワッシャー組立体102の軸方向断面図である。
図14は、ワッシャー組立体102を下から見た斜視図である。
【0039】
図12〜
図14を参照すると、ワッシャー組立体102は上述したゴム製絶縁リングと同様のゴム製絶縁リング104と、絶縁リング104の上部にわたって接合された金属カップ106とを含む。金属カップ106は絶縁リング104の上面に重なる上部リム108を含む。上部リム108は絶縁リング104の上側側部にわたって形成される収容カフ110と一体に形成される。カップ106は絶縁リング104上に永久的に接合することができる。任意選択的に、カップ106はゴムの層がカップ106を包囲するように絶縁リング104内に埋め込むことができる。
【0040】
収容カフ110はゴム製絶縁リング104の上部を収容するバリアを提供する。さらに、カップ106はより大きい力の圧縮がワッシャー組立体102に印加されるとき、ゴム製絶縁リング104を収容して安定させることが可能である。重なる金属カップ106のほかでは、ワッシャー組立体102は上述したワッシャー組立体と同じように構成することができる。さらに、ワッシャー40またはワッシャー98等の内側ワッシャーは、増大した強度および耐久性をもたらすように、絶縁リング104内に埋め込むことができる。
【0041】
このように、実施形態は、広範囲の力に対して、移動を制御するとともにワークを締結具および/または別のワークから隔離するワッシャー組立体を提供する。実施形態は、増大した強度をもたらし不所望の永久固化を制限する金属ワッシャーに固定されるゴム製絶縁リングを提供する。実施形態は、2段階負荷耐久隔離、すなわち、ゴム製絶縁リングの一部分が圧縮される第1の段階および金属ワッシャーが圧縮する第2の段階の負荷耐久隔離をもたらすように構成されるワッシャー組立体を提供する。
図1に示すゴム製絶縁部等の従来から既知のゴム製絶縁部とは異なり、実施形態は最大作動状態中のシステムの移動を制限する。
【0042】
本発明の実施形態を説明するために上部、上側、底部、下側、中間、側部、水平、垂直、正面等の種々の空間および方向に関する用語を用いる場合があるが、そのような用語は図面に示される向きに関して用いられるにすぎないことが理解される。それらの向きは、上側部分が下側部分であり、逆もまた同様であり、水平が垂直になるといったように、反転させるか、回転させるか、または別様に変更することができる。
【0043】
上記の変形および変更は本発明の範囲内にある。本明細書に開示および規定されている本発明は、言及されているか、または本文および/若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組み合わせに及ぶことが理解される。これらの様々な組み合わせの全ては、本発明の種々の代替的な態様を構成する。本明細書に記載の実施形態は、本発明を実施するための分かっている最良の形態を説明しており、当業者が本発明を利用することを可能にする。特許請求の範囲は、従来技術が許容する範囲まで代替的な実施形態を含むものと解釈すべきである。
本発明の種々の特徴は添付の特許請求の範囲内に記載されている。
【符号の説明】
【0044】
40 金属ワッシャー
42 本体
44 平面部
46 屈曲部
48 傾斜ビーム部
49 近位端
50 頂点
60 ワッシャー組立体
62 絶縁リング
62 上部絶縁リング
62 下部絶縁リング
64 環状本体
66 中央開口
68 平面部
70 凹部
72 内側リング支持部
74 周方向リブ
76 ギャップ部
78 内側凹状リム
80 管状部
82 ワーク
84 締結具
86 固定フランジ
87 ブッシュ
88 平面部
90 ブラケット
92 通常作動状態(第1のフェーズ)
94 最大作動状態(第2のフェーズ)
96 ワッシャー組立体
98 波形ワッシャー
100 絶縁リング
102 ワッシャー組立体
104 絶縁リング
106 金属カップ
106 カップ
108 上部リム
110 収容カフ