特許第6073254号(P6073254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コール サステイナブル エナジー ソリューションズ ベー.フェー.の特許一覧

特許6073254吸着コンプレッサ・システムの操作方法およびそれに使用する吸着コンプレッサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073254
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】吸着コンプレッサ・システムの操作方法およびそれに使用する吸着コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   F25B17/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2013-554412(P2013-554412)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-505854(P2014-505854A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】NL2012050105
(87)【国際公開番号】WO2012115513
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】2006277
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513206290
【氏名又は名称】コール サステイナブル エナジー ソリューションズ ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ブルハー,ヨハネス ファース
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ロベルト ヤン
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−213528(JP,A)
【文献】 国際公開第1986/006821(WO,A1)
【文献】 国際公開第1988/002089(WO,A1)
【文献】 特表昭56−501330(JP,A)
【文献】 特開2001−304715(JP,A)
【文献】 特開2004−333027(JP,A)
【文献】 特表2012−506817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着コンプレッサ・システムの操作方法であって、
前記システムは、熱源(32)と、冷熱源(31)と、少なくとも第1の吸着層(26A)および第2の吸着層(26C)とを備え、前記第1の吸着層(26A)の初期温度は、前記第2の吸着層(26C)の初期温度よりも低く、前記システムにおいて、熱が伝熱流体(HTF)を用いて循環され、
前記方法は下記の相Aおよび相Bを備え、
前記相Aは、
−前記第2の吸着層(26C)から、前記熱源(32)を経由して来るHTFを前記第1の吸着層(26A)に供給することにより前記第1の吸着層を加熱し、その一方で、前記第1の吸着層(26A)において熱波を維持する工程と、
−前記第1の吸着層(26A)から、前記冷熱源(31)を経由して来るHTFを前記第2の吸着層(26C)に供給することにより前記第2の吸着層(26C)を冷却し、その一方で、前記第2の吸着層(26C)において、熱波を維持する工程とを備え、
前記相Aを、前記第1の吸着層(26A)および前記第2の吸着層(26C)の出口温度が本質的に同じになるまで維持し、
前記相Bは、
−前記第1の吸着層(26A)の前記HTFの流出物を前記熱源(32)に供給し、そして前記熱源(32)から戻して前記第1の吸着層(26A)内に供給する工程と、
−前記第2の吸着層(26C)の前記HTF流出物を前記冷熱源(31)に供給し、そして前記冷熱源(31)から前記第2の吸着層(26C)に戻して供給する工程とを備え、
前記相Bは、前記第1の吸着層(26A)における温度が本質的に均一になり、そして第2の吸着層(26C)における温度も本質的に均一になり、かつ前記第1の吸着層(26A)の相の温度よりも低くなるまで維持され、前記第1の吸着層(26A)および第2の吸着層(26C)を通る前記HTFの流速が前記相Aにおけるよりも高くてもよく、
前記方法は、さらに後に続く相Cおよび相Dを備え、
前記相Cは、
前記第2の吸着層から前記冷熱源を経由して来るHTFを前記第1の吸着層(26A)に供給することにより、前記第1の吸着層(26A)を冷却する工程と、
前記第1の吸着層から前記熱源を経由して来るHTFを前記第2の吸着層(26C)に供給することにより、前記第2の吸着層(26C)を加熱する工程とを備え、
前記相Dは、
−前記第1の吸着層の前記HTF流出物を前記冷熱源に供給し、そして前記冷熱源から戻して前記第1の吸着層に供給する工程と、
−前記第2の吸着層の前記HTF流出物を前記熱源に供給し、そして前記熱源から戻して前記第2の吸着層に供給する工程とを備え、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層を通る流動方向が前記相AおよびCにおいて同じである方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法において、
前記第1の吸着層および第2の吸着層を通る流動方向が前記相A、B、CおよびDにおいて同じである方法。
【請求項3】
伝熱流体(HTF)により熱が循環される吸着コンプレッサにおいて、
ヒーターと、
クーラーと、
少なくとも第1の吸着層(26A)および第2の吸着層(26C)と、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層の第1の側および第2の側にそれぞれ設けられたHTF分配コネクタまたはHTFヘッダーとを備え、
HTF分配コネクタまたは前記HTFヘッダーには、T字コネクタ(16,16A,16B)または2つの別個のコネクタ設けられ、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層前記第1の側の前記T字コネクタ(16、16A、16B)のアームまたは前記2つの別個のコネクタのそれぞれが、第1の対の三方弁(53、56)のうちの別々の三方弁の切替側と流体接続しており、か
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層の前記第2の側の前記T字コネクタ(16、16A、16B)のアームまたは前記2つの別個のコネクタのそれぞれは、第2の対の三方弁(54、55)のうちの別々の三方弁の切替側と流体接続しており
前記第1の吸着層(26A)の初期温度は、前記第2の吸着層(26C)の初期温度よりも低く、
前記吸着コンプレッサにおいて、下記の相Aおよび相B、さらに後に続く相Cおよび相Dにより前記HTFを循環し、
前記相Aは、
前記第2の吸着層から、前記ヒーターを経由して来るHTFを前記第1の吸着層に供給することにより前記第1の吸着層を加熱し、その一方で、前記第1の吸着層において熱波を維持する工程と、
前記第1の吸着層から、前記クーラーを経由して来るHTFを前記第2の吸着層に供給することにより前記第2の吸着層を冷却し、その一方で、前記第2の吸着層において、熱波を維持する工程とを備え、
前記相Aを、前記第1の吸着層および前記第2の吸着層の出口温度が本質的に同じになるまで維持し、
前記相Bは、
前記第1の吸着層の前記HTFの流出物を前記ヒーターに供給し、そして前記ヒーターから戻して前記第1の吸着層内に供給する工程と、
前記第2の吸着層の前記HTF流出物を前記クーラーに供給し、そして前記クーラーから前記第2の吸着層に戻して供給する工程とを備え、
前記相Bは、前記第1の吸着層における温度が本質的に均一になり、そして第2の吸着層における温度も本質的に均一になり、かつ前記第1の吸着層の相の温度よりも低くなるまで維持され、前記第1の吸着層および第2の吸着層を通る前記HTFの流速が前記相Aにおけるよりも高くてもよく、
前記相Cは、
前記第2の吸着層から前記クーラーを経由して来る前記HTFを前記第1の吸着層に供給することにより、前記第1の吸着層を冷却する工程と、
前記第1の吸着層から前記ヒーターを経由して来る前記HTFを前記第2の吸着層に供給することにより、前記第2の吸着層を加熱する工程とを備え、
前記相Dは、
前記第1の吸着層の前記HTF流出物を前記クーラーに供給し、そして前記クーラーから戻して前記第1の吸着層に供給する工程と、
前記第2の吸着層の前記HTF流出物を前記ヒーターに供給し、そして前記ヒーターから戻して前記第2の吸着層に供給する工程とを備え、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層を通る流動方向が前記相Aおよび相Cにおいて同じである吸着コンプレッサ。
【請求項4】
請求項に記載の吸着コンプレッサであって、
前記第1の対の三方弁(53、56)の内の第1の三方弁(53)のベース側と、前記第2の対の三方弁(54、55)の内の第1の三方弁(54)のベース側は前記ヒーター(32)と流体接続しており、
前記第1の対の三方弁(53、56)の内の第2の三方弁(56)のベース側と前記第2の対の三方弁(54、55)の内の第2の三方弁(55)のベース側は前記クーラー(31)と流体接続している吸着コンプレッサ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の吸着コンプレッサであって、
前記第1の吸着層の前記第1の側は、前記第1の対の三方弁を介して前記ヒーターおよび前記クーラーと選択的に接続され、
前記第1の吸着層の前記第2の側は、前記第2の対の三方弁を介して前記クーラーおよび前記ヒーターと選択的に接続され、
前記第2の吸着層の前記第1の側は、前記第1の対の三方弁を介して前記クーラーおよび前記ヒーターと選択的に接続され、
前記第2の吸着層の前記第2の側は、前記第2の対の三方弁を介して前記ヒーターおよび前記クーラーと選択的に接続される吸着コンプレッサ。
【請求項6】
請求項1に記載の方法を実施するための吸着コンプレッサであって、
前記熱源と、前記冷熱源と、前記少なくとも第1の吸着層および第2の吸着層とを備え、
当該システムにおいて、熱が伝熱流体(HTF)を用いて循環され、
4つの三方弁を備える吸着コンプレッサ。
【請求項7】
請求項1に記載の方法を実施するための吸着コンプレッサであって、
前記熱源と、前記冷熱源と、前記少なくとも第1の吸着層および第2の吸着層とを備え、
当該システムにおいて、熱が伝熱流体(HTF)を用いて循環され、
2つの四方弁を備える吸着コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着コンプレッサおよびその操作方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ヒート・ポンプに一体化された吸着コンプレッサであって、固体吸着材の層を通過する熱波を利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるコンプレッサは、例えば、米国特許公報第4610148号公報明細書に記載されている。該公報明細書の内容はその全体が本明細書において参照される。この吸着コンプレッサでは、吸着材の2つの層が用いられ、これらは外郭構造内に配置され、該外郭構造を貫通して熱交換チャネルが配置されている。熱交換チャネルは、一組のポンプと、冷却作用を有する追加の熱交換器と、加熱作用を有する熱交換器とを備える熱交換流体の閉じた回路に接続されている。これらの吸着剤層の外郭構造側は、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器とを備えるヒート・ポンプに接続されている。これら二層は、それぞれ逆止弁によりヒート・ポンプの凝縮器側と蒸発器側との両方に接続されている。吸着ヒート・ポンプにおける熱波を検討している刊行物のさらなる例は、米国特許第4637218号公報明細書;Jones J.A.(Heat recovery systems & CHP 13(1993)363−371);Pons M.,Applied thermal engineering,16(1996)395−404);Sun L.M.et al.(Int J.Heat mass transfer,40(1997)281−293);Zheng W.et al.(Heat and mass transfer 31(1995)1−9);Wang,R.Z.(Renewable and sustainable energy reviews 5(2001)1−37);およびCritoph,R.E.et al.(Applied Thermal Engineering 24(2004)661−678)である。
【0003】
米国特許第4610148号公報明細書に記載されている層はゼオライトを含み、適用された冷媒または吸着蒸気は水である。吸着層に由来する水蒸気は、一組の逆止弁を通ってヒート・ポンプの凝縮器に案内される。そこでは、水蒸気は高圧凝縮器内で凝縮され、この凝縮された水は圧力解放弁を通って案内される。圧力解放弁では、凝縮された水はジュール=トムソン効果により、温度が実質的に断熱的に降下し、それによって冷却力を提供する。低圧蒸発器内で、水は再蒸発され、一組の逆止弁を通して、冷たくて蒸気を吸着させる前述の吸着層に戻ることができる。蒸発器は、ヒート・ポンプの実際の熱冷却力を提供する。
【0004】
吸着蒸気を固体吸着材料から追い出すのは、該材料を伝熱流体と一緒に加熱することにより行う。蒸発器において、実質的に一定な冷却力を得るために2つの吸着層が選ばれる。一方の層は加熱されて吸着蒸気を追い出し、他方の層は吸着蒸気の再吸着のために冷却される。
【0005】
一連の逆止弁によりこの交互操作が可能となり、実質的にいつでも高圧蒸気が凝縮器に提供され、一方、比較的低圧の蒸気が蒸発器から撤退させられる。
【0006】
吸着材料の回分(バッチ)冷却および回分加熱に関する効率を向上するために見出されたのは、固体吸着材料の加熱と冷却を、該固体材料を通して移動する温度プロファイルを前進後退させて行うと、ヒート・ポンプ性能が実質的に向上することである。この比較的に細長い材料を通して温度プロファイルを前進後退させることは、熱波(thermal wave)として知られている。
【0007】
このような熱波の利用はさらなる利点を有する。すなわち、2つの吸着セルしか必要としないこと、比較的単純な流れ図でよいこと、および比較的均一な冷媒の質量流量をサイクル全体にわたって提供できることである。
【0008】
これらのシステムが用いられる理由は、駆動熱として低カロリー廃熱または太陽熱由来のものを使用することができ、使用する吸着蒸気またはガスは、オゾン層に無害の非フレオン型のものから選ぶことができるからである。
【0009】
これらのシステムの欠点は、凝縮器と、蒸発器と、2つの吸着層のサイズが比較的に大きいことである。水が冷媒として用いられているので、全システムが減圧下においてのみ動作することが可能であり、そのため、このシステムの比冷却力(SCP)が低下する。
【0010】
ゼオライトを吸着材として用いる別のヒート・ポンプが米国特許第4637218号公報明細書に記載されている。該公報明細書の全内容が本明細書において参照される。このシステムにおいても、やはり、水が冷媒として用いられている。この刊行物には、吸着層の外郭−管構造と吸着層の1ブロック様配置が記載されている。このシステムも、やはり、サイズが比較的に大きい。これは、蒸発と凝縮のために適用された水蒸気が比較的に低圧であることによる)。
【0011】
P.Hu et al.(Energy Conversion and Management 50(2009)255−261)は、環状容器内に吸着層を備え、熱交換流体が内側にある冷凍システムを記載している。
【0012】
A.Sateesh et al.(International Journal of Hydrogen Energy 35(2010)6950−6958)は単一ステージ金属水素化物ヒート・ポンプを記載している。このヒート・ポンプは、金属水素化物粉体が化学変化を受ける吸収プロセスに基づいている。「吸収プロセス」という用語は、一般に化学的吸収に基づくプロセスに用いられる。一方、「吸着プロセス」は物理的吸着を指す。
【0013】
Z.Dehouche et al.(Applied Thermal Engineering 18(1998)457−480)は多価水素化物システムのための熱波の概念を記載している。このシステムも、本発明による物理的変化ではなく、化学変化に基づいている。
国際出願公開第2010/049147号パンフレット明細書は従来のバッチ式熱再生方法を記載している。熱波の仕様は開示も示唆もされていない。
米国特許第5505059号公報明細書はヒート・ポンプ・システムの操作方法を記載している。この方法は伝熱流体を必要としない。実際、冷媒、例えばアンモニアが吸着層の加熱と冷却の両方に使用されている。
【0014】
既知の熱波に基づく吸着ヒート・ポンプ・システムは効率の改善、特に性能係数(COP)と比冷却力(SCP)に関する改善が得られるけれども、さらにCOPとSCPとを改善することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、当技術におけるヒート・ポンプおよび吸着コンプレッサの上述および/または他の課題を軽減または解決するとともに、その一方でそれらの利点を維持および/または改善することである。さらに詳しくは、本発明の目的は、完成したヒート・ポンプのサイズと吸着コンプレッサのサイズとを減少させること、より実際的な層構成を提供すること、およびよりコストのかからない操作効率のよいシステムおよび方法を提供することであってもよい。さらなる目的は、COPとSCPとが改善された、吸着コンプレッサの操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的および/または他の目的は、吸着コンプレッサ・システムの操作方法であって、該システムは、熱源と、冷熱源と、少なくとも第1の吸着層および第2の吸着層とを備え、前記第1の層の初期温度は、前記第2の吸着層の初期温度よりも低く、前記システムにおいて、熱が伝熱流体(HTF)を用いて循環される方法によって達成される。この方法は、下記の相AおよびBを備え、
前記相Aは、
−前記第1の吸着層に前記第2の層から、場合によって前記熱源を経由して来るHTFを供給することにより加熱し、その一方で、前記第1の層において熱波を維持する工程と、−前記第1の層から、場合によって前記冷熱源を経由して来るHTFを前記第2の吸着層に供給することにより、前記第2の吸着層を冷却し、その一方で、前記第2の層において、熱波を維持する工程とを備え、
前記相Aを、前記第1の層および前記第2の層の出口温度が本質的に同じになるまで維持し、
前記相Bは、
−前記第1の層の前記HTFの流出物を前記熱源に供給する工程と、
−前記第2の層の前記HTF流出物を、前記冷熱源に供給する工程とを備え、
前記相Bは、前記第1の層における温度が本質的に均一になり、そして第2の層における温度も本質的に均一になり、かつ前記第1の層の相の温度よりも低くなるまで維持され、前記第1および第2の層を通る前記HTFの流速が前記相Aにおけるよりも高くてもよい方法である。
前記方法は、さらに後に続く相Cおよび相Dを備え、
前記相Cは、
前記第2の吸着層から前記冷熱源を経由して来るHTFを前記第1の吸着層(26A)に供給することにより、前記第1の吸着層(26A)を冷却する工程と、
前記第1の吸着層から前記熱源を経由して来るHTFを前記第2の吸着層(26C)に供給することにより、前記第2の吸着層(26C)を加熱する工程とを備え、
前記相Dは、
−前記第1の吸着層の前記HTF流出物を前記冷熱源に供給し、そして前記冷熱源から戻して前記第1の吸着層に供給する工程と、
−前記第2の吸着層の前記HTF流出物を前記熱源に供給し、そして前記熱源から戻して前記第2の吸着層に供給する工程とを備え、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層を通る流動方向が前記相AおよびCにおいて同じである
【0017】
従来技術の熱波システムにおいては、単一のHTFループが用いられ、該単一のループは2つの吸着層とそれらの間に配置された加熱冷却装置とを内蔵している。可逆冷熱源ポンプまたは適切な切り替え弁を持つ一方向ポンプ切替弁を用いて、これらの層を貫通する熱波を、該熱波が層の両端の一方に到達した時点で逆転させる。このようにして、完全なサイクルが2つの半サイクルに分割される。それぞれの半サイクルは伝熱流体の流動方向が逆転した後に開始する。流れを反転する切り替えの瞬間は、熱波が突破する前、すなわち熱波が層の他方の側に到達したときである。
【0018】
理論に束縛されるつもりはないが、本発明者等の考えでは、実際には、熱波は、従来技術(例えば、米国特許第4610148号公報明細書および米国特許第4637218号公報明細書)において最初に示唆されたものよりも勾配が有意に緩やかである。つまり、熱波は、セルの長さに沿ってむしろ平坦な温度プロファイルを持つので、熱波が反転するときには、セルの端部に向かって吸着される冷媒の大部分が未だ吸着または脱着されていない。このことはSCPを顕著に制限する。これを改善する一つの方法は、熱波がより多くセルの端部に向かって進むことが許容されたとしても、より多くの冷媒が吸着または脱着され、より高いSCP値を達成できるようにし、それにより1つの半サイクルの間により多くの冷媒が吸着または脱着できるようにすることである。しかしながら、この場合、COPは急速に低下するが、これは加熱冷却装置にわたり温度差が漸増するためである。このように、COPとSCPの間にはトレードオフ関係が存在する。
【0019】
本発明は、SCPを改善するとともに高COPを維持する新しい熱波サイクルを提供する。
【0020】
本発明は、図29A−Dを参照して説明することができる。簡単のため、この図においては、HTFの流動方向のみが示されているが、冷媒流体の接続および流動は図示されていない。なお、冷媒流体接続は層のいずれか一方の側に、あるいは層の両側にさえ配置してもよい。両側に配置する場合、一方の側を逆止弁を介して冷媒高圧ラインに、他方の側を逆止弁を介して冷媒低圧ラインに接続することができる。
【0021】
冷媒は、原理上は、当技術においてこの目的用として知られている任意の物質を用いることができる。好ましくは、冷媒は、アンモニア、水(蒸気)、二酸化炭素、メタノール、n−ブタン等から選択される。もっとも好ましいのは、アンモニア、特に吸着材料としての活性炭を組み合わせたものである。
【0022】
吸着材は、原理上この目的用として当技術において知られている任意の物質を用いることができる。好ましくは、吸着材は、活性炭、ゼオライト、金属有機構造体、BaCl等から選択される。
【0023】
本発明によると、全吸着脱着サイクルは4つの(2つではない)相に分割される。その内の相AおよびCは熱再生相であり、相BおよびDは非熱再生相である。本システムにおける吸着層は熱波作動吸着コンプレッサに適したものであることが必要である。
【0024】
相Aにおいて、層1は熱源からの高温HTFにより加熱される。熱波操作の故に、最初は冷たいHTFが層1を出る。その後このHTFは冷熱源によりさらに冷却される。同時に、層2は冷熱源からの冷たいHTFにより冷却される。やはり、熱波操作の故に、最初は高温のHTFが層2を出る。その後、このHTFは熱源によりさらに加熱される。
【0025】
ある時点において相2が開始される。これは基本的に層1と層2の2つの温度が相互に本質的に等しくなったときである。これらの出口温度は、出口温度同士の間の絶対温度差が熱源と冷熱源との間の温度差の40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満、典型的には0−5%であるときに、本質的に等しいと考えられる。HTF切り替えシステムを用いて、両層の温度が本質的に均一になるまで、層1を直接に熱源に、そして層2を直接に冷熱源に接続して、熱を生じることなく層内の熱波を終了させてもよい。
【0026】
相Aでは、熱は両層の間に再生される。図28に示された実施例において、再生可能な熱の最大量は(時間当たりHTF流量が一定であるという仮定の下に)面積Xに比例する。この最大熱量が得られるのは、第1の層および第2の層の出口温度が上述のように本質的に同じであるときである。
【0027】
相Bにおいて、入口温度と出口温度との間の絶対差が、熱源と冷熱源との間の温度差の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満のとき、層温度は本質的に均一であると考えられる。
【0028】
図12および28は、相Aおよび相Bの間の層1および層2の出口温度の例を示す。斜線領域Aは、熱再生相の間にヒーターによりHTFに供給されることが必要な熱に比例し、斜線領域Bは、非再生相の間に供給されることが必要な熱に比例する。
【0029】
相Bの終点において、最初は冷たかった第1の層は、今はより熱い層となる。一方、最初は熱かった第2の層は、今はより冷たい層となっている。この操作は上述のように繰り返されるが、今度は2つの層の役割が入れ替わっている。
【0030】
例えば、次に、新しい熱再生相が相Cにおいて開始されてもよい。操作は相Aと同様であるが、層1および層2の役割は逆転されている。すなわち、層1は冷却、層2は加熱である。これに相Dが続く。相Dは、層1および2の役割が逆転されたもう1つの非再生相である。
【0031】
本発明のシステムにおいて、両層内の熱波の方向はすべての相について同じであってもよく、同じにするのが好ましい。あるいはまた、図30に概念的に示すように、相AおよびBの後に、相CおよびDにおいてHTF流動方向および熱波の方向が逆転されてもよい。しかしながら、このようにするには、異なる、より複雑なHTF流体切替システムが必要である。
【0032】
上述の原理に基づいて多くの改変および変更を行うことが可能である。
【0033】
例えば、相同士の間の切替は、切替弁、特に三方弁を用いることにより行ってもよい。あるいはまた、図32A−Dに示すように、二方弁を持つ別々のラインを用いてもよい。また、四方弁を用いてもよい(図33A−D参照)。
【0034】
本発明の追加の利点の一つは、用いられるポンプはポンプの一方向にのみ動作することが必要とされるだけであり、そのために標準的な部品および工学的慣行を用いることが可能である。
【0035】
本発明の好適な一実施態様では、熱波作動型の吸着コンプレッサに好適な吸着セルが設けられている。この吸着セルは細長い固体吸着材料と、この固体吸着材料と直接伝熱接触する細長い伝熱流体チャネルとを備え、この吸着材料の特性寸法rは下記の関係が満たされるように選ばれる。
【数1】
【0036】
ここに、λeffは有効熱伝導率、γは設計パラメータ、SCPは比冷却力であり、γ<0.0025K・m/kg、SCP>250W/kg、0.5<λeff<20W/mKである。特性寸法rは、吸着セルが円形断面を持つ場合は、吸着材料の半径であってもよい。断面が非円形(例えば多角形または楕円形)の場合、rは相当半径、すなわち当該非円形断面と同じ表面積を持つ円の半径である。
【0037】
伝熱流体チャネルdHTFの特性寸法は、下記関係が満たされるように選ばれることができる。
【数2】
【0038】
ここに、Biotはビオ数、λHTFは伝熱流体の有効熱伝導率、Nuはヌセルト(Nusselt)数、dHTFは伝熱チャネルの特性寸法である。ここに、0.1<λHTF<10W/m・K、ビオ数>1、および4<Nu<6である。
【0039】
これらの特定の寸法により、効率的な操作を得ることができる。以下に、さらに詳細に説明する。
【0040】
伝熱流体チャネルの特性寸法は1mm未満にすることができる。吸着材料の特性寸法は、好ましくは1cm未満である。吸着材料は、円筒状内壁内に配置してもよい。この円筒状内壁には冷媒チャネルが設けられている。伝熱流体チャネルは、環状伝熱流体チャネルであってもよい。この環状伝熱流体チャネルは、(円筒状)内壁と(円筒状)外壁の間の吸着材料の周りに同軸上に配置される。
【0041】
本発明は、さらに、上述の吸着セルのマトリックスを備えるクラスタに関する。このクラスタにおいて、個々の吸着セルの環状の伝熱流体チャネルは、その両方の遠位端において伝熱流体ヘッダーと流体接続している。伝熱流体ヘッダーは、伝熱流体を捕集または分配することができるマニホルドであり、個々の吸着セルの中央冷媒チャネルはその一方または両方の遠位端において冷媒ヘッダーと流体接続している。冷媒ヘッダーも、また、伝熱流体を捕集または分配することができるマニホルドである。
【0042】
このクラスタの伝熱流体マニホルドと冷媒マニホルドは、細長い吸着セルの端部に配置可能な、実質的にプレート形状の分配要素内に配置することができる。
【0043】
この分配要素は、3つの積み重ねられたプレート、すなわち吸着セルの外壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、第1の閉塞プレートと、吸着セルの内壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、中間プレートと、第2の閉塞プレートとを備える。伝熱マニホルドは第1の閉塞プレートと中間プレートとの間に配置され、冷媒マニホルドは中間プレートと第2の閉塞プレートとの間に配置される。
【0044】
伝熱マニホルドは、第1の閉塞プレートおよび/または中間プレートに機械加工、エッチング、プレス、パンチングまたはエンボスにより設けることができる。冷媒マニホルドは、同様に、第2の閉塞プレートに機械加工、エッチング、プレス、パンチングまたはエンボスにより設けることができる。
【0045】
これらのプレートは、クラスタの各遠位端において相互に接着、溶接、半田付けまたはボルト留めすることができる。
【0046】
クラスタは平行セルを備えていてもよい。これらの平行セルにおいては、個々の吸着セルの環状伝熱流体チャネルは、分配コネクタにそれらの遠位端の両方において接続され、冷媒コネクタに一方または両方の遠位端において接続される。
【0047】
分配コネクタは、任意の形状を有していてもよく、個々のセルのそれぞれにおいて理想的には全く同じ流れを生じる。分配コネクタは、例えば、回転対称スパイダー形状のコネクタであって、それぞれの伝熱流体脚は他の伝熱流体脚と実質的に同じ形を有するものであってもよい。T字コネクタは、それぞれの分配コネクタに接続されていてもよく、または伝熱マニホルドに接続されていてもよい。あるいはまた、分配コネクタまたは伝熱マニホルドは、2つの別々のコネクタを設けられていてもよい。
【0048】
本発明は、さらに、吸着コンプレッサに関する。この吸着コンプレッサは、少なくとも2つの上述のクラスタを備える。この吸着コンプレッサにおいて、クラスタの第1の側のT字コネクタのアームはそれぞれ第1の対の三方弁の切替側と流体接続しており、この流体接続は、個々のT字コネクタの異なるアームがそれぞれ異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。そして、クラスタの第2の側のT字コネクタのアームはそれぞれ第2の対の三方弁の切替側と流体接続しており、この流体接続は、個々のT字コネクタの異なるアームがそれぞれ異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。
【0049】
第1の対の三方弁のベース側は、通過する伝熱流体の温度を上昇させるように構成されているヒーターまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。第2の対の三方弁のベース側は、通過する伝熱流体を冷却するように構成されたクーラーまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。第1の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側は、熱交換器またはヒーターと流体接続されていてもよい。また、第1の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側は熱交換器またはクーラーと流体接続されていてもよい。
【0050】
伝熱流体チャネルは放射状導体、例えば波板を設けられていてもよい。
【0051】
セルまたはクラスタの吸着材料および/または冷媒チャネルは、それぞれ、一組の逆止弁を介して冷媒ループと流体接触していてもよい。この冷媒ループは、凝縮器、蒸発器、膨張弁を備え、この膨張弁の構成は、冷媒がセルまたはクラスタの吸着材料を出入り可能であり、かつ冷媒が冷媒ループを通って一方向にのみ導かれることが可能になっている。
【0052】
別体のセルまたはクラスタは、弁を備えた圧力等化管により相互に接続されていてもよい。冷媒ループは、さらに、補助容器と流体接続していてもよい。この補助容器は、吸着塊と温度調節可能なヒーターとを備える。
【0053】
本発明は、また、吸着セルのクラスタを2つ備える熱波の操作に好適な吸着コンプレッサに関する。この吸着コンプレッサの各クラスタは、伝熱流体チャネルを備え、個々のクラスタの伝熱流体チャネルはマニホルドと流体接続し、マニホルドはT字コネクタと接続している。クラスタの第1の側のT字コネクタ・アームは、それぞれ、第1の対の三方弁の切替側と流体接続し、この流体接続は、個々のT字コネクタのそれぞれの異なるアームが異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。そしてクラスタの第2の側のT字コネクタのアームは、それぞれ、第2の対の三方弁の切替側と流体接続し、この流体接続は個々のT字コネクタのそれぞれの異なるアームが異なる三方弁の切替側流体接続されるようにしたものである。
【0054】
第1の対の三方弁のベース側は、ヒーターまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。このヒーターまたは熱交換器は通過する伝熱流体の温度を高くするように構成されている。第2の対の三方弁のベース側はクーラーまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。このクーラーまたは熱交換器は通過する伝熱流体を冷却するように構成されている。
【0055】
第1の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側は、熱交換器またはヒーターと流体接続されていてもよい。また、第1の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側は熱交換器またはクーラーと流体接続されていてもよい。
【0056】
本発明は、さらに、吸着材料を備える吸着セルに関する。この吸着セルにおいては、吸着材料が中央冷媒チャネルを設けられた円筒状内壁内に配置され、環状伝熱流体チャネルが内壁と外壁との間の吸着材料の周りに同軸上に配置される。
【0057】
本発明は、また、上述の吸着セルのマトリックスを備えるクラスタを包含する。このクラスタにおいては、個々の吸着セルの環状の伝熱チャネルが伝熱流体マニホルドと流体接続しており、個々の吸着セルの中央冷媒チャネルが冷媒マニホルドと流体接続している。伝熱マニホルドと冷媒マニホルドは、細長い吸着セルの端部に配置された実質的にプレート形状の分配要素内に配置されていてもよい。
【0058】
このクラスタにおける分配要素は、3つの積み重ねられたプレート、すなわち吸着セルの外壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、第1の閉塞プレートと、吸着セルの内壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、中間プレートと、第2の閉塞プレートとを備える。伝熱マニホルドは第1の閉塞プレートと中間プレートとの間に配置され、冷媒マニホルドは中間プレートと第2の閉塞プレートとの間に配置される。伝熱マニホルドは中間プレートに機械加工またはエッチングにより設けることができ、冷媒マニホルドは中間プレートまたは第2の閉塞プレートに機械加工またはエッチングにより設けることができる。
【0059】
これらのプレートは、クラスタの各遠位端において相互に接着、溶接、半田付けまたはボルト留めすることができる。
【0060】
本発明は、また、例えば太陽ボイラーまたは廃熱スチームのような比較的に低カロリーの熱源、あるいはガス炎のような高カロリーの熱源を用いることにより冷却または加熱する方法に関する。本方法は、任意の順序で実行することができる下記工程を含む。すなわち、本方法は、
a)上述したような吸着コンプレッサを用意する工程、
b)第1のクラスタ内の吸着材料を第1のモードにおいて加熱し、この加熱は、ヒーターから層流で出る熱い伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な降下熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第1のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに、吸着された冷媒は、第1のクラスタの吸着材料から比較的高い圧力において脱着され、逆止弁を通って凝縮器に向かって強制的に送られ、凝縮され、そして強制的に膨張弁を通って蒸発するように放置されて蒸発器内において冷却動作を行う工程、
c)工程b)の間、第1のモードにおいて第2のクラスタ内の吸着材料を冷却し、この冷却は、クーラーから層流で出る冷たい伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な上昇熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第2のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに冷媒は、逆止弁を通して蒸発器に由来する比較的に低い圧力において、第2のクラスタの吸着材料により吸着される工程、
d)所定の瞬間において第2のモードに切替え、第1のクラスタ内の吸着材料を冷却し、この冷却は、クーラーから層流で出る冷たい伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な上昇熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第1のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに冷媒は、逆止弁を通して蒸発器に由来する比較的に低い圧力において、第1のクラスタの吸着材料により吸着される工程、
e)工程d)の間、第2のモードにおいて第2のクラスタの吸着材料を加熱し、この加熱は、ヒーターから層流で出る熱い伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な降下熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第2のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに、吸着された冷媒は第2のクラスタの吸着材料から、比較的高い圧力において脱着され、逆止弁を通って凝縮器に向かって強制的に送られ、凝縮され、そして強制的に膨張弁を通って蒸発するように放置されて蒸発器内において冷却動作を行う工程、
f)第1のモードに切替え、工程a)−f)を繰り返す工程を含む。
【0061】
本方法において、第1のモードと第2のモードの間の切替およびその逆を一連の三方弁により行うことができる。流動方向は、モード間の各切替毎に復帰させることができる。これは、クラスタとクラスタが熱側と冷側を有し、比較的急峻な温度プロファイルが個々のクラスタを通して前後に送られ、ここにモードの切替は、毎回、クラスタ端部に、当該クラスタが実質的に完全に加熱され、かつ他のクラスタが実質的に冷却されていること、あるいはその逆を示す温度プロファイルが到達することにより始動される。
【0062】
本方法におけるクラスタ内の流動方向は、維持される。その結果、急峻な温度プロファイル、すなわち上昇下降する温度の熱波がクラスタを一方向にのみ押し通される。第1のモードと第2のモードの間、および第2のモードと第1のモードの間において、毎回、温度等化モードに切り替えることができる。この切替は、加熱されるべきクラスタをヒーターのみを有する回路内にショートカットさせ、同時に、冷却されるべきクラスタをクーラーのみを有する回路内にショートカットさせることにより行う。クラスタをショートカットさせることへの切替は、両クラスタを出る伝熱流体の温度が実質的に同じになったときに始動されるようにすることができる。
【0063】
ここに記載された方法は、下記の等式に従うサイクル時間を有していてもよい。
【数3】
【0064】
ここに、tcycleは、収着セルまたはクラスタの全サイクル時間、すなわち、吸着および脱着モードに対する全サイクル時間であり、Δhは、冷却力を提供する冷媒ガスのエンタルピー変化[J/g]、Δxnetは、1つの吸着および脱着サイクルにおける、炭素のような吸着材料から吸着および脱着されるガスの正味の量をガスg/吸着材料gで表したものである。
【0065】
これらのヒート・ポンプの性能は、一般に2つのパラメータ、すなわち第1に性能係数(COP)、および第2に比冷却力(SCP)により把握される。性能係数は、熱冷却力Pcoolingと熱入力Pinとの比である。
【数4】
【0066】
比冷却力は、熱冷却力を吸着材の質量(madsorber)により除したものである。
【数5】
【0067】
本発明によるヒート・ポンプにおいて、吸着材料としては、例えば固形アモルファス炭素含有材料を用いることができる。冷媒または吸着ガスとしては、NHを用いることができる。固体吸着材料と吸着ガスのこの特定の組合せを用いて、高SCPを達成することが可能であり、比較的にコンパクトで軽いコンプレッサが得られる。
【0068】
かかるヒート・ポンプのさらなる利点は、比較的に高いCOPと比較的に高い熱力学的効率、SCPとCOPを低下させることなく達成される比較的に高い温度適応性、比較的に一定な冷熱生成、典型的には分単位の範囲内の迅速な始動および停止、および比較的に高くないコストである。
【0069】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサ用のセルである。この吸着コンプレッサ用のセルは、吸着材料と、該吸着材料と伝熱接触している少なくとも1つの分離した伝熱流体チャネルとを備える。伝熱チャネルの直径または高さの相対的大きさ、すなわち、伝熱流体チャネルの高さに関する特性寸法、または吸着材料の特性寸法とその材料特性はビオ数によって決定される。ここに、ビオ数は1より大きいか、または1に等しい。
【0070】
本明細書においては、ビオ数は、吸着材料の耐熱性と伝熱流体の耐熱性の比を表す。これは等式3に示す通りである。
【0071】
吸着材料の耐熱性は、形状特性および材料特性から推定することができ、伝熱流体の耐熱性は、伝熱流体チャネルの形状的側面および伝熱流体チャネルの内部の主要な流動領域についての関連するヌセルト(Nusselt)関係から推定することができる。実際には,Biotの値が1より小さいほど、吸着材内ではなく、伝熱流体内に見出される半径方向の熱の差が大きくなる。これにより、最終的には、所与の特性寸法(例えば、半径)および吸着材料の熱伝導率に対して、熱波がより平坦化され(分散され)ることとなり、望ましくない。従って、ビオ数が1より大であることが効率的な操作のために必要である。吸着材料を含む細長い円筒状管の周りの同心伝熱流体ジャケットに関連するビオ関係は下記により表すことができる。
【数6】
【0072】
ここに、RinsideおよびRsurfaceは、吸着材と伝熱流体チャネルの耐熱性である。吸着材料の所与の特性寸法、例えば半径(r)および吸着材料の所与の有効熱伝導率(λads)に対して、ビオ数を増加して熱波を急峻にするために、一連の設計上の事項、すなわち、特性寸法、例えば伝熱流体チャネルの直径(dHTF)を減少させること、または伝熱流体の有効熱伝導率(λHTF)を増加させること、を検討することができる。
【0073】
この関係におけるヌセルト(Nusselt)数は、層流に対しては、約5である。乱流の発生は、圧力降下を低く保つためには、避けるのが好ましいので、このヌセルト数は変更しないのが好ましい。
【0074】
伝熱流体が水であるときは、λHTFは約0.6W/mKである。吸着材料が市販のアモルファス炭素であるときは、λadsは約0.8W/mKである。吸着材料の特性寸法(例えば、半径)が0.5cmに選ばれているときは、伝熱チャネルの直径は1mm未満、または吸着材料の特性寸法(例えば、半径)の5分の1未満であることが必要である。
【0075】
まとめると、吸着コンプレッサの効率的な操作のためには、伝熱チャネルの直径または高さと、吸着材料の特性寸法(例えば、半径)または高さとの間の寸法関係は下記に従う必要がある。
【数7】
【0076】
これから分かることは、伝熱流体チャネルは小さくなければならない、ということである。他方、熱伝達流体チャネルの直径または高さは小さすぎるものを選ぶことができない。これは、伝熱流体チャネルの長さにわたる流体圧力の低下が大きくなると、効率の損失が生じるからである。層流用の環状の細長いチャネルにわたる圧力降下Δpは下記により与えられる。
【数8】
【0077】
このチャネルを通る質量流量は、セルにおいて必要とされる熱出力Pin,HTF、ヒーターを出る伝熱流体の温度とヒーターに入る伝熱流体の温度との間のサイクル時間に基づく平均温度差またはクーラーの前後の温度差ΔTによって決定される。
【数9】
【0078】
必要とされる熱出力は、実際の熱冷却力PcoolingをCOPにより除したものとして表すことができる。
【数10】
【0079】
ここに、冷却力は実際には、比冷却力にセル内の吸着材料の質量mcellを乗じたものである。等式2参照。等式2は、密度ρadsに吸着材料の体積を乗じたものとして書き直すことができる。
【数11】
【0080】
等式6−8を等式5と組み合わせることにより、圧力降下を設計パラメータと当該伝熱流体の特定の性質のみで表すことができる。
【数12】
【0081】
圧力降下における効率の損失が多すぎないように、伝熱流体が水である場合、圧力降下は、典型的には、約1バールより大きくすべきではない。熱油(thermal oil)が用いられる場合、圧力降下は数バールを超えてはならない。
【0082】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサである。この吸着コンプレッサは、少なくとも2つの、吸着材料のセルまたはセルのクラスタであって、伝熱流体チャネルにより包囲され、または伝熱流体チャネルと伝熱接続しているものを備え、該クラスタは、それぞれ、伝熱流体の入口と出口において、T字コネクタを備え、T字コネクタの枝はそれぞれ弁と流体接続している。
【0083】
セルまたはクラスタに近いT字コネクタのこの特定の配置により、伝熱流体導管の非常に限られた部分のみが冷たい伝熱流体と熱い伝熱流体の双方に直面する。この部分が小さいほど、熱い流体と冷たい流体の間の混合損失が生じる頻度がより少なくなり、これらの混合損失が最小限に抑えられる。
【0084】
T字コネクタの枝のそれぞれは弁と流体接続している。一方、T字コネクタの幹は当該セルまたはセルのクラスタの伝熱流体チャネルと流体接続している。好ましくは、これらの弁は三方弁である。しかしながら、代替的に、二方弁の適切な組合せを用いてもよい。ヒーターとクーラーは三方弁と流体接続していてもよい。その接続の構成は、該三方弁の設定に応じた4つの操作モードを用いて伝熱流体をポンプで汲み出すことができるようにしたものである。これら4つのモードに含まれる第1のモードでは、ヒーター、第1のセルまたはクラスタ、クーラー、第2のセルまたはクラスタを通り、再びヒーターに戻る伝熱流体の単一のループが配置されている。第2のモードは、2つの別個のショートカット回路備える。その1つのショートカット回路では、伝熱流体はヒーターから第1のセルまたはクラスタに流れ、再びヒーターに戻る。もう1つのショートカット回路では、伝熱流体はクーラーから第2のセルまたはクラスタに流れ、再びクーラーに戻る。第3のモードは、また、1つのループまたは回路を備え、今度は伝熱流体は第2のセルまたはクラスタ内のヒーターからクーラー、第1のセルまたはクラスタに流れ、そして再びヒーターに戻る。最後に、第4のモードは、再び2つの別個のループを備える。今度は、1つのループが接続するヒーターを第2のセルまたはクラスタと閉じたループにおいて接続し、さらなるループはクーラーを第1のセルまたはクラスタと接続する。
【0085】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサである。この吸着コンプレッサは、吸着材料の少なくとも2つのセルまたはセルのクラスタを備える。該セルまたはクラスタは、伝熱流体チャネルにより包囲され、かつ、この伝熱流体チャネルと伝熱接触している。これらのクラスタは、それぞれ、それらの伝熱流体入口および出口に十字コネクタを備えている。ここに、それぞれのセルまたはセルのクラスタの十字コネクタの第1の枝は、第1のまたは第2の三方弁と流体接続しており、その流体接続は、両方のセルまたはセルのクラスタの十字コネクタのそれぞれが異なる三方弁と流体接続しているように、かつ十字コネクタの残りの2つの枝がそれぞれマニホルドに流体接続しているようになされる。
【0086】
セルまたはクラスタに近い十字コネクタのこの特定の配置の故に、伝熱流体導管のごく限られた部分だけが、冷たい、熱いおよび中程度に温かい伝熱流体に直面する。この部分が小さいほど、熱い流体と冷たい流体の間の混合損失の発生が少なくなり、これらの混合損失が最低限になる。
【0087】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサを操作する方法である。この方法は、上述のような2つの吸着クラスタを備える。ここに、熱および冷たい伝熱流体はポンプで汲み出される。これは、伝熱チャネルを通ってセルまたはクラスタの長さにわたって、実質的に連続的に移動する熱波が生成されるように行われる。
【0088】
本発明のさらなる態様は、ヒート・ポンプである。このヒート・ポンプでは、冷媒ループ内にバッファ容器を有する分岐が配置される。この容器には固体吸着材料と温度コントローラとが設けられている。かかるシステムにおいて、バッファの温度を制御することにより、吸着される冷媒の量が制御できる。この制御は冷却操作に利用可能な冷媒が制御可能であるように行うことができる。冷媒の量を減少させることにより、凝縮器および蒸発器のそれぞれにおける凝縮および/または蒸発圧力を制御することができる。これらの圧力は、凝縮器および蒸発器の操作温度に関する。
【0089】
このように、例えば冷却温度を調節する洗練された方法が、ヒート・ポンプのオン−オフ・モードを回避することができるように、提供され、例えば、より正確な、一定した冷却温度が得られる。この温度を制御された吸着バッファは、上述のヒート・ポンプにおいて実際的であり得るけれども、そうであっても、既存のヒート・ポンプにも実際的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
本発明をさらに説明するために、添付図面を参照して例示的実施形態が説明される。
添付図面中、
図1図1は、本発明の第1の実施形態に従う吸着セルの概念的断面側面図である。
図2図2は、図1の断面側面図の切り欠き詳細図である。
図3図3は、本発明のさらなる実施形態に従うクラスタの概念的斜視図である。
図4図4は、本発明のさらなる実施形態に従うスパイダー・コネクタの概念的斜視図である。
図5図5は、図3に従う概念的側面図である。
図6A図6は、本発明のさらなる実施形態に従う、接続ヘッダーまたはマニホルドを有する吸着セルのクラスタの概念的斜視図である。
図6B図6Bは、2つの吸着コンプレッサ層を有する実施例を説明する図である
図7図7は、第1のモードの操作における本発明のさらなる実施形態に従うコンプレッサ内の伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図8図8は、第2のモードの操作における図7の流れ図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に従う吸着コンプレッサを備えるヒート・ポンプの概念的流れ図である。
図10A図10Aは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10B図10Bは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10C図10Cは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10D図10Dは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10E図10Eは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10F図10Fは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10G図10Gは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10H図10Hは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図10I図10Iは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図11A図11Aは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図11B図11Bは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図11C図11Cは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図11D図11Dは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図12図12は、本発明に従う2つの吸着層クラスタの出口における概念的温度プロファイルである。
図13図13は、本発明に従うCOPとSCPの間の典型的な関係を表す図である。
図14図14は、等式3および9を結合して描いた結合グラフである。
図15図15は、本発明に従う伝熱流体チャネルの代替的実施形態の断面図である。
図16図16は、本発明に従う吸着材料および伝熱流体チャネルのさらなる実施形態の形状の断面図である。
図17図17は、本発明に従う吸着材料および伝熱流体チャネルのさらなる実施形態の断面図である。
図18A図18Aは、本発明に従う吸着材料および伝熱流体チャネルの形状のさらなる実施形態の概念的斜視図である。
図18B図18Bは、本発明に従う吸着材料の一実施形態の概念的斜視図である。
図19図19は、本発明に従う冷媒の流れ図の代替的実施形態の概念的図である。
図20図20は、本発明に従う吸着セル・クラスターの代替的実施形態の概念的斜視図である。
図21A図21Aは、図20に従うクラスタの概念的上面図である。
図21B図21Bは、図20に従うクラスタの概念的側面図である。
図21C図21Cは、図20に従うクラスタの概念的正面図である。
図21D図21Dは、図20に従うクラスタのA−A線に沿う概念的断面図である。
図21E図21Eは、図21Dの概念的詳細切り欠き図である。
図21F図21Fは、図21の概念的詳細切り欠き図である。
図22A図22Aは、図21Fの分配要素の概念的分解斜視図である。
図22B図22Bは、図21Fの分配要素の概念的分解斜視図である。
図22C図22Cは、図21Fの分配要素の概念的分解斜視図である。
図23A図23Aは、図20に従うクラスタの概念的部分切開斜視図である。
図23B図23Bは、図23Aの概念的詳細斜視図である。
図24図24は、本発明に従う吸着セル・クラスターのさらなる実施形態を示す図である。
図25A図25Aは、図24に従うクラスタの概念的上面図である。
図25B図25Bは、図24に従うクラスタの概念的正面図である。
図25C図25Cは、図25Bに従うクラスタのA−A線に沿う概念的断面図である。
図25D図25Dは、図25Cの概念的詳細切り欠き図である。
図26A図26Aは、図24に従うクラスタの分配要素の概念的分解斜視図である。
図26B図26Bは、図24に従うクラスタの分配要素の概念的分解斜視図である。
図26C図26Cは、図24に従うクラスタの分配要素の概念的分解斜視図である。
図26D図26Dは、図24に従うクラスタの分配要素の概念的分解斜視図である。
図27A図27Aは、図24に従うクラスタの概念的切開斜視図である。
図27B図27Bは、図27Aのクラスタの概念的詳細切り欠き図である。
図28図28は、本発明に従う2つの吸着層クラスタの出口における概念的温度プロファイルを示す図である。
図29A図29Aは、本発明方法の根底をなす原理を説明する図であり、伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す。
図29B図29Bは、本発明方法の根底をなす原理を説明する図であり、伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す。
図29C図29Cは、本発明方法の根底をなす原理を説明する図であり、伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す。
図29D図29Dは、本発明方法の根底をなす原理を説明する図であり、伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す。
図30図30は、伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図31A図31Aは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す図である。
図31B図31Bは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図を示す図である。
図32A図32Aは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図32B図32Bは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図32C図32Cは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図32D図32Dは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図33A図33Aは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図33B図33Bは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図33C図33Cは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図33D図33Dは、本発明のさらなる実施形態における伝熱流体の流動の概念的流れ図である。
図34図34は、本発明に従う吸着材料および伝熱流体チャネルの形状のさらなる実施形態の断面図である。
図35図35は、本発明に従う吸着材料の一実施形態の概念的斜視図である。
図36図36は、本発明に従う2つの吸着層クラスタの入口および出口における測定された温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本明細書において用いられている表現「有効熱伝導率」は、主要な伝熱方向における熱伝導率[W/mK]であると了解されるが、限定的に解釈されるべきではない。例えば、吸着材に対しては、これは、同軸上に配置された管のデザインにおいて、半径方向の熱伝導率である。この熱伝導率は、図18において提示されているように、伝熱プレートレットによって向上させることができる。
【0092】
伝熱流体中では、同軸管デザインと同様に、これは半径方向の熱伝導率である。波形の伝導材料が伝熱流体チャネル内に配置されているときは、主要な伝熱方向は接線方向、すなわち波板の蛇行路に実質的に垂直である。
【0093】
本明細書において用いられている表現「特性寸法」は、主要伝熱方向における吸着材料または伝熱流体チャネルの関連する高さ、幅、直径、(相当)半径または厚さ[m]を指すものと了解されるが、これに限定されるものではない。例えば、同軸管デザインにおいては、吸着材料の特性寸法はその(相当)半径であり、伝熱流体チャネルの特性寸法はその幅または高さである。吸着材プレートが伝熱流体チャネルの間に挟まれている積層板デザインの場合は、特性寸法は吸着材料の高さの半分である。その理由は、伝熱は吸着材料層の両面に実質的に対称に起きるからである。その場合、このことは、特性寸法が伝熱流体チャネルの高さの半分である伝熱流体チャネルに対しても当てはまる。
【0094】
さらにまた、波形の伝導要素が適用された伝熱流体チャネルにおいて、図15に示すように、特性寸法は、波形伝導要素の2つの連続する蛇行路の間の幅の半分である。
【0095】
本明細書において用いられている「比冷却力」という表現は、限定するつもりはないが、冷却力を吸着コンプレッサの質量によって除したもの[W/kg]を指すものと了解される。
【0096】
本明細書において用いられている量「γ」は、限定されないが、主要な伝熱方向における熱波内の吸着材料にわたる最大温度差を、吸着材料の密度で除したものを反映する設計パラメータを指すと了解される。量「γ」は下記等式10に示される通りに定義される。
【0097】
本明細書において用いられている「三方弁のベース側」という表現は、限定されないが、三方弁の接続側を指すものと了解される。これは、弁を切り替えることにより、三方弁の第1の切替側または第2の切替側のいずれかに接続することができる。この接続は、ベース側と2つの切替側のいずれか一方との間に流体接続が得られるように行われる。本明細書および特許請求の範囲において用いられている「細長い」という表現は、限定されないが、物理的存在の性質であって、その1つの次元(dimension)、例えば第1の次元における測定値またはサイズが他の2つの次元における測定値またはサイズよりもはるかに大きいことを指すものと了解される。一般に、例えば、少なくとも1つの次元が他の2つの次元から少なくとも2倍離れている場合は、「細長い」と認識することができる。
【0098】
図は本発明の例示的実施形態を示すものであり、いかなる方法および形態においても本発明を限定するものではない。明細書および図を通して、同じまたは対応する参照符号は同じまたは対応する要素に用いられている。
【0099】
図1において、本発明に従う吸着セルの概念的側面断面図が示されている。この吸着セルは、その詳細が図2から明らかであるように、第1の伝熱流体コネクタ2と第2の伝熱流体コネクタ3が環状伝熱流体チャネル2aとキャップ5により流体接続している。キャップ5は、伝熱流体接続導管を接続するための第1のコネクタ6と、円筒状壁11上にキャップを接続するためのスカート7とを備える。円筒状壁11は吸着セルの外郭構造と伝熱流体チャネル2aの外郭構造となっている。環状の外郭構造11内に、内郭構造12が同軸上に配置されている。この内郭構造は伝熱チャネル2aの管状内壁となっている。管状内壁12内部に、固体吸着材料10の層が配置されている。管状内壁12は複数のキャップ8により保持され、その内の1つには蒸気コネクタ4が設けられている。この環状の伝熱チャネル2aの寸法は小さく選ばれる。ここに管状の外壁と内壁の間のキャップ間隙は1mm以下である。固体吸着材料を有する内壁12の内径は2cm未満、例えば約1.5cm未満に選ばれる。吸着材料の内部に、蒸気通過チャネルが配置されていてもよい。このチャネルは、管状外壁11と管状内壁12にそれぞれ同軸上となるように配置してもよい。
【0100】
内壁12を正確に位置決めするために、環状のチャネル2aはスペーサーを備えていてもよい。これらのスペーサーは、例えば、管状外郭構造11内の明確に定義された圧痕(impressions)により得られ、管状内壁を保持して位置決めするスタッドとなっている。
【0101】
図3は、本明細書に詳細に説明され図1および2に図示されている吸着セルのクラスタを示す。図3の実施形態において、8つのセルがクラスタとして配置される。ここに、伝熱流体コネクタは、1つの分配コネクタ15に接続される。この分配コネクタ15は対称的な脚を有するスパイダー型コネクタであってもよい。この分配コネクタはT字コネクタ16に接続されている。蒸気導管4は、その一方の側において吸着セル1の円筒状内壁12内部の吸着材料に接続され、その他方の側において蒸気導管コネクタ17に接続されている。これにより、蒸気導管4は一組の逆止弁を介してヒート・ポンプの蒸発器または凝縮器のいずれかに接続している。
【0102】
図4は、スパイダー型分配コネクタ13の詳細図である。
【0103】
図5は、図3に従う吸着セル・クラスタの概念的側面図である。図5において、分かるように、細長い吸着セルの細長いクラスタの両端上に伝熱コネクタが配置され、スパイダー・コネクタ15を用いて吸着セルのそれぞれの環状伝熱チャネルをT字ヒーター・コネクション16に接続する。蒸気導管は、もう一方で、本実施形態においては、細長いセル・クラスタの一方の側のみに接続される。蒸気導管は、代替的に、両端に配置されていてもよい。その理由は、蒸気が比較的熱い側または比較的冷たい側のいずれかに沿って案内されて出入りすることが好ましいからである。
【0104】
図6は、2つの吸着セル・クラスタの配置を示す概念的斜視図である。第1の吸着セル・クラスタ26aは、伝熱T字コネクタ16aを用いて、伝熱入口マニホルド(またはヘッダー)20と伝熱出口マニホルド21とに接続されている。蒸気マニホルド18aおよび18bは、それぞれコネクタ23および22を通って、蒸気マニホルド25に接続されている。両導管23および22はT字コネクタ24に接続され、T字コネクタ24はこれらの導管を蒸気マニホルド25に接続する。
【0105】
図7に、第1の操作モードにおける、吸着セル・クラスタ26a、26b、26cおよび26dを通る伝熱流体循環の概念的流れ図が描かれている。本発明をよりよく説明するために、蒸気流動管は除外されている。しかしながら、吸着層26a、26b、26cおよび26dはそれぞれ蒸気導管を用いて、一組の逆止弁を通って凝縮器、圧力解放弁および蒸発器に接続されている。かかる配置は、ヒート・ポンプおよび冷凍機に見出すことができる(さらなる詳細については図9参照)。
【0106】
図7において、ヒーターまたは熱交換器32は出口導管34に配置され、それぞれの冷却モードの間、ヒーターまたは熱交換器32に比較的熱い伝熱流体が供給される。この比較的熱い伝熱流体は、再加熱された吸着クラスタ26Aおよび26Bの熱側39Aおよび39Bに、それぞれ、由来するか、再加熱された吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dの熱側39Cおよび39Dに、それぞれ由来する。ヒーターまたは熱交換器32は、さらに、入口導管36に接続される。この入口導管36は、再加熱された伝熱流体を、吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bの熱側39Aおよび39Bに、または吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dの熱側39Cおよび39Dに、それらの各加熱モードの間、案内するためのものである。
【0107】
ヒーターまたは熱交換器32は、例えば、ガス燃焼ヒーターまたは熱交換器であって、例えば太陽熱システムに由来する通常の補助伝熱流体により供給されるものであってもよい。図7において、吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bは冷却降温モードにあり、一方、吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dは加熱昇温モードにある。ヒーターまたは熱交換器32を出た熱い伝熱流体は三方弁27により入口マニホルド20cを通って吸着セル・クラスタ26cおよび26dに案内される。このモードの間、吸着材料は特定の方法で加熱される。すなわち、温度プロファイルまたはフロントがむしろ急峻であるか、このモードの開始時において熱い端部39Cおよび39Dに近い状態で加熱される。吸着セル・クラスタの熱い端部における熱い伝熱流体の流入の間、温度プロファイルまたはフロント(熱波ともいわわる、米国特許第4610148号公報明細書参照)は個々のセルを通って押され、それぞれ吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dの冷側40Cおよび40Dに到達する。
【0108】
熱い伝熱流体が吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dの伝熱チャネル2A内に流入する間、むしろ急峻な温度プロファイルの故に、比較的冷たい伝熱流体が吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dの冷側40Cおよび40Dを出る。比較的冷たい伝熱流体は、出口マニホルド21A、三方弁29および出口導管3を通ってクーラーまたは熱交換器31に押し出される。
【0109】
吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dに由来する伝熱流体は、比較的に冷たいけれども、吸着セル・クラスタ26Aおよび26Cを再冷却するためにさらに冷却する必要がある。
【0110】
伝熱流体T字コネクタ16を三方弁27−30と組み合わせて適用することにより、伝熱流体の冷たい部分と温かい部分を混合しても、ごく限定された熱量しか失われない。毎回、T字コネクタ16の一方のアームとこれに接続されたマニホルドが機能するように切り替えられ、他方のアームとこれに接続された関連するマニホルドは、行き止まりの導管に接続されるため、アイドリング状態である。このように、モード1において、図7に従い、入口マニホルド20Aおよび20Dと同様に、出口マニホルド21Bおよび21Cが閉じられる。このように、モード2において、図8に示されるように、入口マニホルド20Cおよび20Bと同様に、出口マニホルド21Aおよび21Dが閉じられる。導管33−36、T字コネクタ16と三方弁27−30を含むマニホルド20A−Dおよび21A−Cはすべて適切に熱絶縁されているので、熱損失は最低限に抑えられる。
【0111】
温度プロファイルまたはフロントが冷側40Cおよび40Dに到達すると、熱検知器(図示しない)は信号をコントローラ(図示しない)に送る。これにより、4つの三方弁27,28,29および30が切り替え可能になる。三方弁27−30を切り替えることにより、本システムは瞬間的に第2のモードに切り替わる。
【0112】
第2のモードにおいては、図8に示すように、吸着セル・クラスタ26Cおよび26Dは冷却降温モードにあり、一方、吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bは加熱昇温モードにある。ヒーターまたは熱交換器32を出る熱い伝熱流体は、今度は三方弁27により案内され、入口マニホルド20Dを通って吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bに至る。このモードの間、吸着材料はモード1における吸着セル・クラスタと同様に加熱される。すなわち、すなわち、このモードの開始時において、熱い端部39Aおよび39Bに近い、むしろ急峻な温度プロファイルまたはフロントを有する。吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bの熱い端部において熱い伝熱流体が流入する間、温度プロファイルまたはフロント(温度波(temperature wave)ともいわれる、米国特許第4610148号公報明細書参照)は個々のセルを通して押され、吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bの冷側40Aおよび40Bにそれぞれ到達する。
【0113】
吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bの伝熱チャネル12A内に熱い伝熱流体が流入する間、むしろ急峻な温度プロファイルの故に、比較的冷たい伝熱流体が吸着セル・クラスタ26Aおよび26Bの冷側40Aおよび40Bを出る。温度プロファイルまたはフロントが冷側40Aおよび40Bに到達すると、熱検知器(図示しない)が信号をコントローラ(図示しない)に送ることができ、これにより4つの三方弁27、28、29および30が切り替えられる。三方弁27−30を切り替えることにより、本システムは瞬間的に切り替えられて第1のモードに戻り、本サイクルが新たに開始できるようになる。
【0114】
熱交換器またはクーラー31は、吸着層を冷却するために用いられる伝熱流体の部分を冷却降温する。吸着層26cおよび26dの入口における熱い伝熱流体は、クラスタ26cおよび26d内の個々の吸着セルの環状壁を通して案内され、個々の吸着セル内の内壁11内部の吸着材料を徐々に加熱昇温する。クラスタの熱側のT字コネクタの両アームはそれぞれ第1の対の三方弁の切替側と流体接続しており、この流体接続は、個々のT字コネクタのそれぞれの異なるアームが異なる三方弁の切替側と流体接続するように行われる。
【0115】
吸着材料を加熱昇温することにより、吸着された蒸気が吸着材料から徐々に解放される。個々の吸着セルの長さ方向において、熱い伝熱流体のフロントは、冷たい伝熱流体を、個々のセル内の環状伝熱チャネルを通して出口マニホルド21aに向けて徐々に放出する。この出口マニホルドは、伝熱流体の三方接続弁29に、クーラー/熱交換器31に向けて接続される。
【0116】
図9に、吸着セルまたはクラスタの管側と吸着された冷媒の流れの概念図が示されている。吸着セル26A−Dのクラスタの管側はマニホルド25Aおよび25Bを経由し、一組の逆止弁41A、41Bおよび42A、42Bを通して凝縮器46および蒸発器49に接続されている。凝縮器46は、導管47および膨張弁48を経由して蒸発器49に接続されている。
【0117】
吸着セル26Aおよび26Bのクラスタを加熱する間、冷媒ガスは比較的高圧で吸着材料から追い出され、逆止弁41Aおよび41Bにより凝縮器46に向けて案内される。凝縮器46では、熱が高圧ガスから除去され、高圧ガスは凝縮して液体になる。凝縮器を出た後、液化されたガスは膨張弁4により絞られ、膨張弁でガスの温度と圧力が顕著に降下する。低圧において、凝縮されたガスは蒸発器49内で沸騰し始め、周囲から熱を集めてガスを再蒸発する。蒸発器49を出るこの低圧の冷媒ガスは、逆止弁42Aおよび42Bを通って冷却モードにある吸着材に案内され、ガスを捕集し、吸着する。
【0118】
図示していないが、本システムの効率をさらに向上させるために、導管45および50内に向流熱交換器を一体化してもよい。このように、導管45内の比較的に温かい冷媒が導管50からの比較的に冷たい冷媒により冷却されてから凝縮器46内で凝縮される。
【0119】
図7、8および9の流れ図は、実地では結合される。この結合は、結合された設備で、豊富な比較的低カロリーの熱源を用いて、実質的に一連の弁および逆止弁以外の機械的設備なしに、比較的に高度の熱冷却を実行できるようになされる。
【0120】
別の実施形態において、クラスタ26A−Dまたはセル1の長さに沿う温度プロファイルは、(軸方向の分散の結果)比較的に平坦化されている場合、流れを切り替えるトリガーが、冷却への切替または加熱への切替のいずれでも、非常に早く生じることがあり、吸着セルの操作が効率的でなくなる。従って、性能係数は経済的なサービスに対して低すぎることがある。伝熱流体の熱を最大限に利用するために、サイクルの熱いおよび冷たい部分の両方にショートカットを一体化してもよい。冷却すべきクラスタ26Aおよび26B、または26Cおよび26Dは、クーラー31に接続することができる。そして加熱すべきクラスタ26Cおよび26D、または26Aおよび26Bは、熱交換器またはヒーター32に接続することができる。従って、実質的に4つのモードの操作が可能である。これは2つの方法で実行することができる。すなわち、第1に、クラスタ26A−Dまたはセル1の外郭構造内の流動方向を維持することにより、第2に、冷却から加熱へおよびその逆に切り替えるときに流動方向を切り替えることにより実行することができる。
【0121】
図10A−Dにおいて、第1の代替手段が示されている。この第1の代替手段は、ショートカットを有し、クラスタ26A−Dの流動方向を替えない。同様の流動スキームが図10E−10Iに示されている。ここでは、個々の要素の配置が異なるだけで、流動ラインは、図10A−Dの場合と同じである。図10Aにおいて、第1モードのサイクルが示されている。このモードでは、伝熱流体はヒーター32から三方弁53を通ってクラスタ26Aにポンプで送られ、クラスタ26A内で固体吸着材料が加熱される。クラスタ26Aを出た伝熱流体は、熱波がクラスタ26を通って移動する間、依然として比較的に冷たく、そして三方弁55を通ってクーラー31に案内される。ここで、比較的に冷たい伝熱流体が追加的に冷却される。この冷却された伝熱流体は三方弁56を通ってクラスタ26Cに案内される。クラスタ26Cは冷却モードにあり、従って、その管の中の固体吸着材料にガスを吸着する。クラスタ26Cを出た伝熱流体は依然として比較的に熱く、三方弁54を通ってヒーター32に案内される。
【0122】
従って、クラスタ26Aは加熱される。この場合、熱い熱波フロントは上方に移動する。そしてクラスタ26Cが冷却される。この場合、冷たい熱波フロントは下方に移動する。
【0123】
比較的平坦化された(分散された)熱波が現れると、ある瞬間にサイクルが第1のショートカット・モードに切り替えられる。これは図10Bに示される。切替時の最適の瞬間は、以下に図12を参照して説明される通りである。切替の間、三方弁54および55は切り替えられる。その結果、ヒーター32とクラスタ26Aは第1の分離されたサイクルにあり、そしてクーラー31とクラスタ26Cは第2の分離されたサイクルにある。従って、クラスタ26Aは依然としてさらに加熱されるが、クラスタ26Aを出る伝熱流体の流れは案内されて、今度はクーラー31ではなくヒーター32に戻る。その一方で、クラスタ26Cは依然として冷却されるが、クラスタ26Cを出る流れは、ヒーター32ではなくクーラー31に戻される。
【0124】
ある瞬間に熱波が完全に出現すると、クラスタ26Aをさらに加熱したり、クラスタ26Cをさらに冷却したりすることは不可能である。
【0125】
その瞬間において、サイクルは逆転される。この逆転は、冷却されたクラスタ26Cが再加熱され、加熱されたクラスタ26Aが再冷却されるように行われる。これは、図10Cに示すように、第3の操作モードに切り替えることにより行うことができる。
【0126】
この図において、クラスタ26Aは今度は冷却され、クラスタ26Cは今度は加熱される。ひとたび比較的平坦化された(分散された)熱波がクラスタ26Aおよび26C内に出現すると、図10Dに示すように、サイクルは第2のショートカット・モードに切り替わる。この図において、ヒーター32とクラスタ26は第3の閉じたサイクルを形成し、一方、クーラー31とクラスタ26Aは第4の閉じたサイクルを形成する。クラスタ26Aおよび26Cの両方において完全な熱波が出現すると、システムは再び第1の操作モードに切り替えられる。
【0127】
図10A−10Dにおいて、熱い熱波(thermal wave)と冷たい熱波(thermal wave)の両方がクラスタ26Aと26Cを通って全て一方向に進行する。一方、図7および8の実施形態では、熱波はクラスタ26A−D内で前後(一方向および逆方向)に送られる。従って、図10A−Dにおけるクラスタ26Aおよび26Cには、もはや熱側、冷側が存在しない。
【0128】
実際、熱波をクラスタ内で前後するように送り、その一方で、平坦化された(分散された)熱波による効率の損失を依然として回復させることも可能である。図11A−11Dに、そのような操作のための概念的流れ図が示されている。これらの図において、クラスタは、それぞれの端部において、T字コネクタの代わりに十字コネクタを設けられている。
【0129】
第1のモードにおいて、図11Aに示されているように、クラスタ26Eは加熱され、クラスタ26Fは冷却される。クラスタ26Eにおいて、伝熱流体は上方に流れ、一方、クラスタ26F内で伝熱流体は下方に流れる。ひとたび熱波が出現すると、操作は第2のモードに切り替えられる。この第1のモードでは、出現する熱波は、実際にクラスタ26Eの冷側40Eに到達する熱いフロントと、同時に、クラスタ26Fの熱い端部39Fに到達する冷たいフロントである。図7および8に示される実施形態では、この瞬間にクラスタ内の流れが逆転されていると考えられる。しかしながら、熱波は、性能を得るために、より平坦化されて(分散されて)いてもよいので、第2のモードにおいて、クラスタ26Eはさらに加熱され、クラスタ26Fはさらに冷却される。しかしながら、流出する流れはいずれも逸らされる。このモードでは、図11Bに示されるように、クラスタ26Eから出る流れは、クーラー31Bではなくヒーター32Bに導かれる。その一方で、クラスタ26Fを出る流れはヒーター32Bではなく、クーラー31Bに案内される。
【0130】
熱波の尾部が出現すると、クラスタ26Eおよび26Fの両方における流動方向が逆転される。図11Cにより表されるこのモードでは、クラスタ26Fが加熱され、クラスタ26Eが冷却される。次いで、クラスタ26E内の流動方向が下方に指向され、クラスタ26F内では上方に指向される。ひとたび、第3のモードにおいて、クラスタ26Eおよび26F内に熱波が出現し始めると、システムは、図11Dに示されるように、第4のモードに切り替えられる。このモードでは、クラスタ26Eとクーラー31Bは第1のサイクル内で連結され、クラスタ26Fとヒーター32Bは一つのサイクル内で連結される。
【0131】
熱波の尾部が出現すると、システムは切り替えられてその第1の操作モードに戻る。
【0132】
弁とマニホルドの構成は、熱い伝熱流体と冷たい伝熱流体が通過する必要があるのはごく一部の導管だけであるように設計されている。このように、本発明に従うシステムの実施形態内で、熱い伝熱流体と冷たい伝熱流体に直面するバルブは一つもない。従って、効率の損失を最低限にすることができる。
【0133】
第1のモードから第2のショートカット・モードに切り替える適切な瞬間の決定は、システムの全体効率またはCOPの最大化によって決まる。
【0134】
確認されたモデリングから明らかなように、実際、熱波は、図12に示されるように、むしろ平坦化されて(分散されて)いる。この図において、クラスタ26Aおよび26Cの流出温度は、図10A−Dに示されるように、および上述のように、熱波がこれらのクラスタを通過する時間に関連付けて描かれている。出口温度は、理論上は、他方のクラスタを加熱または冷却するのに使用することができる伝熱流体の温度である。他方のクラスタに流入する前に、伝熱流体の温度がクーラー31とヒータ32内の最初のレベルに戻される。これらの温度が最初の温度から逸脱すればするほど、より高い温度差を橋渡しする必要があり、一層の努力をすることが必要とされる。理想的な状況においては、熱波は非常に急峻であり、温度の偏差は、第1のモードの間、比較的に小さく、実質的に一定である。
【0135】
図12において、実線はクラスタ26Aの出口における温度を表す。クラスタ26Aは時間0において熱く、冷却モードにある。一方、クラスタ26Cは冷たく、加熱モードにある。クラスタ26Aの温度はいくつかの時間間隔に分けて説明される。
【0136】
・0−100秒 流出する流体の線形の温度降下が見られる。比較的に冷たい伝熱流体が流入するので、クラスタ26Aの第1の部分が急速に冷却される。顕著な吸着が吸着層のその部分に起きるため、層全体が減圧される。この圧力降下のために、吸着層の温かい部分が脱着し始める。脱着熱が必要とされ、これにより層の温度が低下する。セルは熱交換器のように作製されているので、クラスタ26Aを通過しこれを出る熱流体も冷却される。
【0137】
・100−550秒 クラスタ26Aは冷たく、ガスは吸着クラスタ26Aの吸着材料側に流入し、吸着される。流出温度は、しばらく、一種の「プラトー(plateau)」において実質的に一定であるが、ついで250秒において、徐々に降下する。実際、図12における結果が示すように、熱勾配は、例えば米国特許公報第4610148号公報明細書において予想され、記載されているようには急峻ではない。
【0138】
・550−1200秒 クラスタ26Aから流出する伝熱流体の温度は、依然として、クラスタ26Cから流出する伝熱流体の温度よりも低い。
【0139】
550秒において、クラスタ26Cから流出する伝熱流体の温度は、クラスタ26Aから流出する伝熱流体の温度よりも高くなる。その時点で、システムは、図10Bに示されるように、第1のモードから第2のショートカット・モードに切り替えられるべきである。
【0140】
まさにこの瞬間において、クラスタ26Aを出る伝熱流体を加熱し、これをクラスタ26Cをさらに加熱するために使用することは、効率的でない。より効率的であるのは、この伝熱流体を冷却し、これを全く同じクラスタ26Aにおいて再使用してこのクラスタ26Aをさらに冷却することである。
【0141】
すべての操作切替モードにおいて、図7−11に示されるように、さらなる効率ゲインが得られるのは、分離されたセルまたは分離されたクラスタの吸着側の圧力が、吸着から脱着への切替とその逆の切り替との間で、等化されているときである。かかるオプションは、図9において破線で表された追加のショートカット・ライン62Bを必要とする。このショートカット・ライン62Bは、ショートカット弁63Bを有する。
【0142】
図1、2および10A−Dに示されるように、同軸外郭−管デザインにおいて確認された数値シミュレーションから、COPとSCPの間の関係が得られ、図13に示されるようなグラフとして描かれている。この図において、横軸上の結合パラメータγが縦軸上のCOPに対して表示されている。結合パラメータγは次のように定義される。
【数13】
【0143】
ここに、λadsは、固体吸着材料の熱伝導率であり、rは、細長い管内の固体吸着材料の(相当)半径である。この図から推定することができるように、γの値が高いと、COPは0.4の値になる傾向があり、この値はバッチ式加熱−冷却をするコンプレッサで熱波が存在しないものを表す。さらに推定することができるように、(相当)半径が小さいと、比較的に高いCOPが達成可能である。しかしながら、SCPは低下する。
【0144】
COPとSCPは、一般に、所望の量であり、技術的仕様と商業上の理由によって決定される。ひとたびこれらが与えられ、このグラフから特定の吸着材料が選ばれると、吸着材料の(相当)半径を推定することができる。
【0145】
このプロットの結果は下記を暗示している。
−γが増加するとCOPが減少するのは、吸着材料に対して熱が流入流出する熱波の位置において半径方向の勾配が増大することによって引き起こされる。これらの半径方向の勾配は、熱波の急峻さを低減するものと考えられる。実際には、熱波は吸着セル1の細長い方向において不鮮明になり、出口温度が、熱いセルにおいては早期に降下し、冷たいセルにおいては早期に上昇する。
−半径方向の勾配の増大は、結合パラメータγ内の3つのパラメータ、すなわちSCP、rおよびλによって下記のように影響され得る。
−SCPにより比例的に、SCPはセルのパワー入力に直接関係するので、論理的に半径方向の勾配は直接パワー入力に関係する。
−吸着材料の(相当)半径の二乗に比例して、セル内の吸着材料の質量とともに入力パワーが増加し、SCPを一定に維持する必要があり、セルの質量はrの二乗に比例する。
−吸着材料の半径方向熱伝導率の逆数に比例して、より高い伝熱輸送は熱勾配を低下させる。
【0146】
COPは、セルが細長い限り、セルの長さには実質的に関係がない。ここに、長さを直径で除した値が少なくとも10であるのが妥当である。実地上は、1mのセルが20個でも0.5mのセルが40個でも差がない。いずれの状況においても、SCPは一定である。しかしながら、セルの長さは、等式9から推定できるように、伝熱流体チャネル内における粘性圧力降下によるパワー損失に対して実質的な影響を有する。
【0147】
従って、最大COPは、最小のSCPにおいて達成される。これは既知のトレードオフである。より興味深いのは、吸着材料の熱伝導率は高くなければならないということであり、あまり知られていないことであるが、吸着材料の(相当)半径を減少させることよりもはるかに重要である。吸着材料の(相当)半径を最低限にするこの等式10はγに対してもっとも大きな影響を及ぼす。
【0148】
しかしながら、吸着材料の(相当)半径が小さくなると、セルの数が大きくなる。セルの数は下記式により計算することができる。
【数14】
【0149】
この(相当)半径および等式4を用いて、伝熱流体チャネルの最大直径を決定することができる。加えて、等式9から最大圧力降下を推定することができる。この圧力降下とビオ数は、図14に示されるように、伝熱流体チャネルの厚さに対してプロットすることができる。
【0150】
この図において、圧力降下は右側の縦軸に目盛られており、ビオ数は左の縦軸に目盛られている。環状伝熱流体チャネルの直径は横軸に目盛られている。ラインL1は計算された圧力降下を表し、ラインL2は計算されたビオ数を示す。この図から推定することができるのは、一方で、直径が水力学的圧力降下によるパワー損失が大き過ぎることはないか否か、他方で、ビオ数が低過ぎることはないか否かである。
【0151】
この図は、アモルファス炭素を吸着材として、NHを冷媒または吸着ガスとして、水を伝熱流体として,同心管のデザインにおいて組み合わせるために、作業ウィンドウが提供されることを示している。このウィンドウは、伝熱流体チャネルの直径を約0.1−0.4mmにすることが可能である。
【0152】
熱油が伝熱流体として用いられる場合、比較的に低い熱伝導率のために、ビオ数は極端に狭い伝熱流体チャネルを要求し、受け入れられない圧力降下をもたらす。依然として作業範囲を提供するために、放射状熱導体を伝熱チャネル内に挿入してもよい。
【0153】
伝熱流体の熱伝導率は、約0.1および10W/mKの間で選ぶことができる。ここに、水銀のような使用可能な流体に対して、熱伝導率は約7−10W/Kmであり、水は約0.3−1.0W/Kmである。熱油の熱伝導率は0.1−0.6W/Kmであってもよい。作業可能な範囲は、0.1と10W/Kmの間であってもよい。しかしながら、圧倒的に0.1と1W/kmの間である。
【0154】
サイクル時間に対しては、下記等式が得られる。
【数15】
【0155】
ここに、tcycleは収着セルまたはクラスタの全サイクル時間、すなわち、吸着−脱着モードのための全サイクル時間、Δhは、冷却力(典型的に、アンモニアについては1.2MJ/kgである)を提供する冷媒ガスのエンタルピー変化[J/g]である。Δxnetは、一回の吸着−脱着サイクルにおいて炭素から吸着−脱着されるガスの正味の量を、ガスg/吸着材料gで表したものである(典型的には、0.15アンモニアg/炭素g)。
【0156】
図15において、かかる放射状導体の一例が示されている。この図において、波形の薄い金属シート61が吸着材料10の内壁12の周りに設けられている。
【0157】
図16において、吸着材料10、内壁12および外壁11のさらなる代替的配置が示されている。この実施形態では、吸着材料を含む一連の管が外壁11によって覆われている。独立した隣接する管の間において外壁を溶接または半田付けしてもよい。この構成の利点は、より高い能力のクーラーまたはヒート・ポンプはかなりの量の吸着材料を必要とするが、多数のチャネルが1工程で接続・製造されると、より迅速に製造できることである。
【0158】
あるいはまた、図17に示されるように、伝熱流体チャネルが吸着材料により事実上包囲されている、実質的な三次元構造も作製することができる。かかる三次元構造の無限形状が可能である。もっとも、この場合は、伝熱流体チャネルの直径は、クラスタ内で、細長い方向にもその断面方向にも、実質的に変化しない。その理由は、「間違った流れ(false flows)」は吸着コンプレッサの効率を急速に悪くするからである。実際、これらの配置において、伝熱流体チャネルの相対的な大きさと、吸着材料の大きさは、依然として等式4またはその幾何学的均等物に従わなければならない。
【0159】
吸着材料の半径方向の伝導率を改善するために、例えば、放射状導体を吸着材料内に挿入してもよい。例えば、伝熱性ラメラ62Aは吸着材料10内において、個々の吸着ユニット68Bの間に配置されてもよい。吸着ユニット68Bは、典型的に円筒状、例えば、図18Aに示されるように、錠剤(ピル)の形状である。他の解決策としては、伝熱性炭素繊維をアモルファス炭素内に組み込むことが考えられる。これらの炭素繊維は、バッキー・チューブといった炭素ナノ繊維を含んでいてもよい。
【0160】
他の実施形態において、本発明の吸着セルまたはそのクラスタはユニット(68B)と、伝導性ラメラ(62A)とを備える。伝導性ラメラ(62A)は、ピルにより形成され、ピルは伝熱性材料製のカップにより少なくとも部分的に包囲され、該カップは該ピルを含む。緊密に適合するカップは、好ましくは、セルの壁と同じ材料、典型的にはステンレス鋼で作製され、セルとカップの間の熱膨張により生じる不整合を最低限にしている。別体の高伝導性材料の薄いシート(例えば、アルミニウムまたはグラファイト)を、カップの底部の一方または両方の側上に追加してセル壁から吸着ピル内への良好な伝熱を確保することができる。この実施形態は、図35に概念的に示されている。
【0161】
全体が伝導性材料、例えばアルミニウムからからなるカップ(111)を設けることも可能である。
【0162】
カップは、冷媒用のチャネルとなる1つまたはそれ以上の開口部(70)を含んでいてもよい。
【0163】
適用された本発明の範囲内で利用可能である代替的吸着材料は、活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機骨格金属(metal organic frameworks)である。代替的に利用可能である冷媒は、二酸化炭素,ヒドロフルオロカーボン(HFC、例えば、R−134a冷媒)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC、例えば、R−123冷媒)、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、イソブテン、イソペンタン、プロピレン、ホルムアルデヒドおよびフッ化ビニルである。他の好適な冷媒も本発明の範囲内で利用可能である。
【0164】
図18Bにおいて、個々の吸着ピル68Bは、放射状ミクロチャネル69を設けられ、吸着材料の透過性を向上させている。吸着材料の透過性が低くなる場合、これらのチャネルにより、冷媒ガスまたは蒸気の半径方向の輸送が吸着コンプレッサの効率の制限因子となることが防止される。これらのマイクロチャネルにより、冷媒チャネル70への輸送および冷媒チャネル70からの冷媒の輸送が支持され得る。
【0165】
吸着ピル68Bの製造中は、放射状マイクロチャネル69の形状を、吸着ピルのプレス成形型にあらかじめ存在させておいて、後で吸着ピルを機械加工する必要がないようにしてもよい。あるいはまた、これらのマイクロチャネル69は吸着材料に機械加工またはエッチングにより設けてもよい。これらのマイクロチャネル69は、個々のピル68Bの一方または両方の対向端部に適用することができる。
【0166】
図19において、吸着材料10を含むバッファ容器は図9の冷媒ループに組み込まれる。このループ内の冷媒の量は、バッファ容器63Aの温度を調整することにより調整できる。このために、温度コントローラ65は、弁68Aを制御して温度を所定の値に維持できる。ループ内部の冷媒の量を調整することにより、凝縮器46および蒸発器49内の圧力を替えることができ、それにより、沸騰温度および凝縮温度を変えることができる。このように、これらの温度を設定する洗練された方法を得ることができる。膨張弁48の調整も行って、蒸発器49と凝縮器46の両方における相対的圧力および温度を調整できる。
【0167】
図20−23Bにおいて、代替的な吸着セル・クラスタ26が示されている。この吸着セル・クラスタ26において、10x10個の平行吸着セル1のマトリックスが2つの分配要素71および72の間に配置される。分配要素71および72は一組の3つのプレート75、76および77を備える。
【0168】
第1のプレート、すなわち冷媒導管プレート75は、冷媒マニホルド78を冷媒導管22、25に接続するための冷媒ガス開口部73を備える。冷媒導管22、25は、例えば図9または19に示すように、冷媒ループに導く。冷媒マニホルド78は、冷媒導管プレート75の材料から機械加工またはエッチングにより作製される。冷媒マニホルド78は、10個の冷媒副マニホルド79と流体接続している。副マニホルド79は、分離リブ81により相互に分離されている。副マニホルド79において、冷媒案内スタッドが、吸着セル1の内管12に冷媒を案内するために配置されている。
【0169】
マニホルド78および副マニホルド79は、熱伝達導管プレート76の下面により閉じられている。熱伝達導管プレート76の上面は、伝熱流体マニホルド82を備え、伝熱流体マニホルド82は伝熱流体開口部74を通って伝熱流体T字コネクタ16に接続してもよい。マニホルド82は、10個の伝熱流体副コネクタ83と流体接続している。これらの副マニホルド83は、個々の吸着セル1の環状伝熱流体チャネル2Aと流体接続している。
【0170】
マニホルド82と副マニホルド83は、閉塞プレート77により閉じられる。閉塞プレート77は円筒状外壁11を閉塞プレート77に接続するための開口部を備える。
【0171】
これらのプレート75、76および77は接着、半田付けまたは溶接により相互接続することができる。個々の吸着セルの円筒状外壁11および円筒状内壁12は、同様に、プレート77および76にそれぞれ溶接、接着および/または半田付けすることができる。
【0172】
図23Bの概念的切り欠き図において、3つのプレートの配置がさらに詳細に示される。この図において、個々の吸着セル1の円筒状外壁11は、閉塞プレート77内の開口部に接続される。各円筒状外壁11の端部は、閉塞プレート77の内面と実質的に同一平面である。円筒状内壁12はさらに延在し、伝熱流体導管プレート76の接続開口部85Aに接続されている。従って、流体接続が伝熱流体副マニホルド83と環状伝熱流体チャネル2Aとの間に得られる。
【0173】
個々の吸着セルの円筒状内壁12の端部は、熱伝達導管プレート76と接続されている。円筒状内壁12の端部は、伝熱流体導管プレートの上面と実質的に同一平面にある。従って、流体接続が冷媒副マニホルド79と吸着材料10との間に得られる。
【0174】
図24において、クラスタの分配要素の代替の配置が示されている。別々のプレート91、93、94およびガスケット92は、一組のボルト90によって一緒に保持される。この配置では、閉塞プレート91は一連の補強リブ89と補強リング95とが設けられている。これらのリブ89およびリング95により、閉塞プレート91に対する構造的一体性が与えられ、閉塞プレート91に冷媒ガスの圧力に耐える強度が与えられる。閉塞プレートの補強リング95を通って、ガスケット92のボルト穴97、ツイン・コンジット・プレート93のボルト穴103、および閉塞プレート94のボルト穴104を配置することができる。
【0175】
ツイン・コンジット・プレート93は、その上面に冷媒マニホルド100を設けられ、その下面に伝熱流体マニホルド106を設けられている。これらのマニホルド100および106はツイン・コンジット・プレート93の材料から機械加工によって作製することができる。あるいはまた、この材料にエッチングにより作製してもよい。冷媒マニホルド100には、約20バールまでのかなり高い圧力が存在することが考えられる。冷媒をマニホルドとシステムの内部に含むように、ツイン・コンジット・プレート93と閉塞プレート91との間にガスケットを配置してもよい。
【0176】
図26A−Dに示す実施形態では、伝熱流体と冷媒の両方用に単一のマニホルドが示されているけれども、代替的に、図22A−Cに示す実施形態で行われるように、1つのマニホルドと別体の複数の副マニホルドを有する構成も利用可能である。
【0177】
あるいはまた、第2のガスケットをツイン・コンジット・マニホルドと閉塞プレート94との間に適用して伝熱流体を含むようにしてもよい。
【0178】
図27Aおよび27Bにおいて、図24に従うクラスタの詳細切開図が示されている。この配置において、個々の吸着セルの伝熱流体チャネル2Aは、伝熱流体マニホルド106と流体接続し、吸着材料10は、冷媒ヘッダー100と流体接続している。
【0179】
冷媒ヘッダー100は、冷媒導管86に接続される。この冷媒導管86は、図9または19に示されるように、冷媒ループと流体接続していてもよい。伝熱ヘッダー106は伝熱導管87と流体接触しており、この伝熱導管87はコネクタ88の幹部と接続される。
【0180】
従って、クラスタ26は、図7−9、10A−Iに示されるように、概念的流れ図において一体化して、クラスタ26A−Dに替わることができる。
【0181】
クラスタ26は、同様に図11A−Dに従う流れ図において一体化することができるが、その場合は、T字コネクタ88は十字コネクタに置き換えて適合させることが必要となる。1つのクラスタ内で同時に移動する熱波を提供するために、主要流動抵抗が伝熱チャネル2A内に残存していなければならない。つまり、伝熱流体マニホルド82、106の設計は、それらマニホルドの流動抵抗が1つのクラスタ内のすべてのセルのすべての伝熱流体チャネル2Aの全流動抵抗よりも少なくとも1けた小さくなるように、行われることが必要である。
【0182】
クラスタの冷媒接続は、以下に説明するように、一面または両面において行うことができる。
【0183】
伝熱流体導管内のT字コネクタは、クラスタの各端部におけるマニホルド82、106の2つの伝熱出口によって置き換えてもよい。
【0184】
プレート75−77、91−95は接着、溶接、半田付けおよび/またはそれらの組合せにより結合することができる。円筒状壁は他のプレート内または上に接着、焼ばめ、溶接、半田付またはねじ込みすることができる。
【0185】
吸着セル1のマトリックスは四角のマトリックスとして提示されているが、別の構成、例えばハニカム構造型の構成も同様に可能である。
【0186】
本発明は、広範囲の分野において、特に廃熱が利用可能である分野であって、エアコン、例えば自動車、特にトラック用途のエアコンから、冷凍機その他の用途にわたる分野において利用可能である。
【実施例】
【0187】
本発明の熱波操作方法と、記載された熱波操作に好適な吸着コンプレッサ層との組み合わせから得られる性能改善を実証するための実験構成が構築された。この構成は下記のシステム要素からなる。
2つの吸着コンプレッサ層であって、図6Bに示されるように、それぞれ2つのクラスタからなり、各クラスタは8つの吸着セルからなるもの。
ヒーター、クーラーおよび4つの三方弁を有し、図10において示されるように接続された、HTFシステムであって、図10F−10Iに従って切り替えることができるもの。
冷媒ループであって、図9に示すように、逆止弁、凝縮器、蒸発器および4つの流量制限部材を内蔵したもの。
制御システムであって、三方弁を調整し、関連する温度、圧力、流量およびパワーを測定するのに適したもの。
【0188】
この実験構成を用いて、特許請求の範囲に記載された熱波操作方法が明確に示され、そして期待されたヒート・ポンプ操作が実証され、COPの改善と高いSCPとが組み合わせて得られた。図36は、2つの吸着層の入口(112、114)および出口(113、115)温度の典型的な測定値を時間の関数として示す。示された領域Xは、このサイクルにおける2つの層の間で再生される熱の量に比例する。なお、この特定の測定において、サイクルの終点において温度差が残った。これはこの実験構成におけるコンプレッサ層の熱隔離が不十分であった結果である。
【0189】
本発明は、図示され、明細書中に説明された例示的な実施形態に限定されるものではない。種々の改変は、特許請求の範囲において要点が記載されている本発明の範囲内の変形例であると考えられる。
【符号の説明】
【0190】
1 吸着セル 61 波板
2A 環状伝熱流体チャネル 62A ラメラ
2 伝熱流体コネクタ 62B 等化導管
3 伝熱流体コネクタ 63A バッファ容器
4 蒸気コネクタ 63B 等化弁
5 キャップ 64 ヒーター
6 導管コネクタ 65 温度コントローラ
7 スカート 66 バッファ・コンジット
8 内側キャップ 67 弁
9 内側キャップ結合部分 68A 制御弁
10 吸着材料 68B 吸着ピル
11 円筒状外壁 69 放射状ミクロチャネル
12 円筒状内壁 70 冷媒ガスチャネル
13 分配コネクタ 71 分配要素
14 接続開口部 72 分配要素
15 ヘッダー・コネクタ 73 冷媒ガス開口部
16 伝熱流体T字コネクタ 74 伝熱流体開口部
17 蒸気導管コネクタ 75 冷媒導管プレート
18 蒸気ヘッダー・マニホルド 76 熱伝達導管プレート
19 蒸気ヘッダー・コネクタ 77 閉塞プレート
20 伝熱流体入口ヘッダー 78 冷媒マニホルド
20a−d 伝熱流体入口マニホルド 79 冷媒副マニホルド
21a−d 伝熱流体出口マニホルド 80 吸着材料固定スタブ
21 伝熱流体出口ヘッダー 81 分離リブ
22 蒸気導管 82 伝熱流体マニホルド
23 蒸気導管 83 伝熱流体副マニホルド
24 蒸気マニホルドT字コネクタ 84 分離リブ
25 蒸気マニホルド 85A 内管接続開口部
26a−d 吸着セル・クラスター 85B 分配要素
27 熱い伝熱流体入口三方弁 86 冷媒導管
28 熱い伝熱流体出口三方弁 87 伝熱流体導管
29 冷たい伝熱流体出口三方弁 88 T字コネクタ
30 冷たい伝熱流体入口三方弁 89 補強リブ
31 クーラー/熱交換器 90 ボルト
32 ヒーター/熱交換器 91 閉塞プレート
33 冷たい伝熱流体注入導管 92 ガスケット
34 熱い伝熱流体排出導管 93 ツイン・コンジット・プレート
35 冷たい伝熱流体排出導管 94 閉塞プレート
36 熱い伝熱流体注入導管 95 補強リング
37 ポンプ 96 ボルト穴
38 ポンプ 97 ボルト穴
39A−F 熱側 98 リブ
40A−F 冷側 99 端部
41A−B 逆止弁 100 冷媒マニホルド
42A−B 逆止弁 101 スペーサ・リング
43 高圧ガス導管 102 内側管接続開口部
44 高圧ガス導管 103 ボルト穴
45 高圧ガスマニホルド 104 ボルト穴
46 凝縮器 105 外側管接続開口部
47 膨張導管 106 伝熱流体マニホルド
48 膨張弁 L1 ビオ数を表す線
49 蒸発器 L2 圧力降下を表す線
50 低圧ガスマニホルド P1−P4 ポンプ
51 低圧ガス導管 107A−H 二方弁
52 低圧ガス導管 108A−B 四方弁
53 三方弁 109 伝熱流体チャネル
54 三方弁 110A−B 波板
55 三方弁 111 カップ
56 三方弁 112 ベッド1入口温度
57 三方弁 113 ベッド1出口温度
58 三方弁 114 ベッド2入口温度
59 マニホルド 115 ベッド2出口温度
60 マニホルド
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図21F
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図26C
図26D
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図29C
図29D
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図32C
図32D
図33A
図33B
図33C
図33D
図34
図35
図36