【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的および/または他の目的は、吸着コンプレッサ・システムの操作方法であって、該システムは、熱源と、冷熱源と、少なくとも第1の吸着層および第2の吸着層とを備え、前記第1の層の初期温度は、前記第2の吸着層の初期温度よりも低く、前記システムにおいて、熱が伝熱流体(HTF)を用いて循環される方法によって達成される。この方法は、下記の相AおよびBを備え、
前記相Aは、
−前記第1の吸着層に前記第2の層から、場合によって前記熱源を経由して来るHTFを供給することにより加熱し、その一方で、前記第1の層において熱波を維持する工程と、−前記第1の層から、場合によって前記冷熱源を経由して来るHTFを前記第2の吸着層に供給することにより、前記第2の吸着層を冷却し、その一方で、前記第2の層において、熱波を維持する工程とを備え、
前記相Aを、前記第1の層および前記第2の層の出口温度が本質的に同じになるまで維持し、
前記相Bは、
−前記第1の層の前記HTFの流出物を前記熱源に供給する工程と、
−前記第2の層の前記HTF流出物を、前記冷熱源に供給する工程とを備え、
前記相Bは、前記第1の層における温度が本質的に均一になり、そして第2の層における温度も本質的に均一になり、かつ前記第1の層の相の温度よりも低くなるまで維持され、前記第1および第2の層を通る前記HTFの流速が前記相Aにおけるよりも高くてもよい方法である。
前記方法は、さらに後に続く相Cおよび相Dを備え、
前記相Cは、
前記第2の吸着層から前記冷熱源を経由して来るHTFを前記第1の吸着層(26A)に供給することにより、前記第1の吸着層(26A)を冷却する工程と、
前記第1の吸着層から前記熱源を経由して来るHTFを前記第2の吸着層(26C)に供給することにより、前記第2の吸着層(26C)を加熱する工程とを備え、
前記相Dは、
−前記第1の吸着層の前記HTF流出物を前記冷熱源に供給し、そして前記冷熱源から戻して前記第1の吸着層に供給する工程と、
−前記第2の吸着層の前記HTF流出物を前記熱源に供給し、そして前記熱源から戻して前記第2の吸着層に供給する工程とを備え、
前記第1の吸着層および前記第2の吸着層を通る流動方向が前記相AおよびCにおいて同じである。
【0017】
従来技術の熱波システムにおいては、単一のHTFループが用いられ、該単一のループは2つの吸着層とそれらの間に配置された加熱冷却装置とを内蔵している。可逆冷熱源ポンプまたは適切な切り替え弁を持つ一方向ポンプ切替弁を用いて、これらの層を貫通する熱波を、該熱波が層の両端の一方に到達した時点で逆転させる。このようにして、完全なサイクルが2つの半サイクルに分割される。それぞれの半サイクルは伝熱流体の流動方向が逆転した後に開始する。流れを反転する切り替えの瞬間は、熱波が突破する前、すなわち熱波が層の他方の側に到達したときである。
【0018】
理論に束縛されるつもりはないが、本発明者等の考えでは、実際には、熱波は、従来技術(例えば、米国特許第4610148号公報明細書および米国特許第4637218号公報明細書)において最初に示唆されたものよりも勾配が有意に緩やかである。つまり、熱波は、セルの長さに沿ってむしろ平坦な温度プロファイルを持つので、熱波が反転するときには、セルの端部に向かって吸着される冷媒の大部分が未だ吸着または脱着されていない。このことはSCPを顕著に制限する。これを改善する一つの方法は、熱波がより多くセルの端部に向かって進むことが許容されたとしても、より多くの冷媒が吸着または脱着され、より高いSCP値を達成できるようにし、それにより1つの半サイクルの間により多くの冷媒が吸着または脱着できるようにすることである。しかしながら、この場合、COPは急速に低下するが、これは加熱冷却装置にわたり温度差が漸増するためである。このように、COPとSCPの間にはトレードオフ関係が存在する。
【0019】
本発明は、SCPを改善するとともに高COPを維持する新しい熱波サイクルを提供する。
【0020】
本発明は、
図29A−Dを参照して説明することができる。簡単のため、この図においては、HTFの流動方向のみが示されているが、冷媒流体の接続および流動は図示されていない。なお、冷媒流体接続は層のいずれか一方の側に、あるいは層の両側にさえ配置してもよい。両側に配置する場合、一方の側を逆止弁を介して冷媒高圧ラインに、他方の側を逆止弁を介して冷媒低圧ラインに接続することができる。
【0021】
冷媒は、原理上は、当技術においてこの目的用として知られている任意の物質を用いることができる。好ましくは、冷媒は、アンモニア、水(蒸気)、二酸化炭素、メタノール、n−ブタン等から選択される。もっとも好ましいのは、アンモニア、特に吸着材料としての活性炭を組み合わせたものである。
【0022】
吸着材は、原理上この目的用として当技術において知られている任意の物質を用いることができる。好ましくは、吸着材は、活性炭、ゼオライト、金属有機構造体、BaCl
2等から選択される。
【0023】
本発明によると、全吸着脱着サイクルは4つの(2つではない)相に分割される。その内の相AおよびCは熱再生相であり、相BおよびDは非熱再生相である。本システムにおける吸着層は熱波作動吸着コンプレッサに適したものであることが必要である。
【0024】
相Aにおいて、層1は熱源からの高温HTFにより加熱される。熱波操作の故に、最初は冷たいHTFが層1を出る。その後このHTFは冷熱源によりさらに冷却される。同時に、層2は冷熱源からの冷たいHTFにより冷却される。やはり、熱波操作の故に、最初は高温のHTFが層2を出る。その後、このHTFは熱源によりさらに加熱される。
【0025】
ある時点において相2が開始される。これは基本的に層1と層2の2つの温度が相互に本質的に等しくなったときである。これらの出口温度は、出口温度同士の間の絶対温度差が熱源と冷熱源との間の温度差の40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満、典型的には0−5%であるときに、本質的に等しいと考えられる。HTF切り替えシステムを用いて、両層の温度が本質的に均一になるまで、層1を直接に熱源に、そして層2を直接に冷熱源に接続して、熱を生じることなく層内の熱波を終了させてもよい。
【0026】
相Aでは、熱は両層の間に再生される。
図28に示された実施例において、再生可能な熱の最大量は(時間当たりHTF流量が一定であるという仮定の下に)面積Xに比例する。この最大熱量が得られるのは、第1の層および第2の層の出口温度が上述のように本質的に同じであるときである。
【0027】
相Bにおいて、入口温度と出口温度との間の絶対差が、熱源と冷熱源との間の温度差の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満のとき、層温度は本質的に均一であると考えられる。
【0028】
図12および28は、相Aおよび相Bの間の層1および層2の出口温度の例を示す。斜線領域Aは、熱再生相の間にヒーターによりHTFに供給されることが必要な熱に比例し、斜線領域Bは、非再生相の間に供給されることが必要な熱に比例する。
【0029】
相Bの終点において、最初は冷たかった第1の層は、今はより熱い層となる。一方、最初は熱かった第2の層は、今はより冷たい層となっている。この操作は上述のように繰り返されるが、今度は2つの層の役割が入れ替わっている。
【0030】
例えば、次に、新しい熱再生相が相Cにおいて開始されてもよい。操作は相Aと同様であるが、層1および層2の役割は逆転されている。すなわち、層1は冷却、層2は加熱である。これに相Dが続く。相Dは、層1および2の役割が逆転されたもう1つの非再生相である。
【0031】
本発明のシステムにおいて、両層内の熱波の方向はすべての相について同じであってもよく、同じにするのが好ましい。あるいはまた、
図30に概念的に示すように、相AおよびBの後に、相CおよびDにおいてHTF流動方向および熱波の方向が逆転されてもよい。しかしながら、このようにするには、異なる、より複雑なHTF流体切替システムが必要である。
【0032】
上述の原理に基づいて多くの改変および変更を行うことが可能である。
【0033】
例えば、相同士の間の切替は、切替弁、特に三方弁を用いることにより行ってもよい。あるいはまた、
図32A−Dに示すように、二方弁を持つ別々のラインを用いてもよい。また、四方弁を用いてもよい(
図33A−D参照)。
【0034】
本発明の追加の利点の一つは、用いられるポンプはポンプの一方向にのみ動作することが必要とされるだけであり、そのために標準的な部品および工学的慣行を用いることが可能である。
【0035】
本発明の好適な一実施態様では、熱波作動型の吸着コンプレッサに好適な吸着セルが設けられている。この吸着セルは細長い固体吸着材料と、この固体吸着材料と直接伝熱接触する細長い伝熱流体チャネルとを備え、この吸着材料の特性寸法rは下記の関係が満たされるように選ばれる。
【数1】
【0036】
ここに、λ
effは有効熱伝導率、γは設計パラメータ、SCPは比冷却力であり、γ<0.0025K・m
3/kg、SCP>250W/kg、0.5<λ
eff<20W/mKである。特性寸法rは、吸着セルが円形断面を持つ場合は、吸着材料の半径であってもよい。断面が非円形(例えば多角形または楕円形)の場合、rは相当半径、すなわち当該非円形断面と同じ表面積を持つ円の半径である。
【0037】
伝熱流体チャネルd
HTFの特性寸法は、下記関係が満たされるように選ばれることができる。
【数2】
【0038】
ここに、Biotはビオ数、λ
HTFは伝熱流体の有効熱伝導率、Nuはヌセルト(Nusselt)数、d
HTFは伝熱チャネルの特性寸法である。ここに、0.1<λ
HTF<10W/m・K、ビオ数>1、および4<Nu<6である。
【0039】
これらの特定の寸法により、効率的な操作を得ることができる。以下に、さらに詳細に説明する。
【0040】
伝熱流体チャネルの特性寸法は1mm未満にすることができる。吸着材料の特性寸法は、好ましくは1cm未満である。吸着材料は、円筒状内壁内に配置してもよい。この円筒状内壁には冷媒チャネルが設けられている。伝熱流体チャネルは、環状伝熱流体チャネルであってもよい。この環状伝熱流体チャネルは、(円筒状)内壁と(円筒状)外壁の間の吸着材料の周りに同軸上に配置される。
【0041】
本発明は、さらに、上述の吸着セルのマトリックスを備えるクラスタに関する。このクラスタにおいて、個々の吸着セルの環状の伝熱流体チャネルは、その両方の遠位端において伝熱流体ヘッダーと流体接続している。伝熱流体ヘッダーは、伝熱流体を捕集または分配することができるマニホルドであり、個々の吸着セルの中央冷媒チャネルはその一方または両方の遠位端において冷媒ヘッダーと流体接続している。冷媒ヘッダーも、また、伝熱流体を捕集または分配することができるマニホルドである。
【0042】
このクラスタの伝熱流体マニホルドと冷媒マニホルドは、細長い吸着セルの端部に配置可能な、実質的にプレート形状の分配要素内に配置することができる。
【0043】
この分配要素は、3つの積み重ねられたプレート、すなわち吸着セルの外壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、第1の閉塞プレートと、吸着セルの内壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、中間プレートと、第2の閉塞プレートとを備える。伝熱マニホルドは第1の閉塞プレートと中間プレートとの間に配置され、冷媒マニホルドは中間プレートと第2の閉塞プレートとの間に配置される。
【0044】
伝熱マニホルドは、第1の閉塞プレートおよび/または中間プレートに機械加工、エッチング、プレス、パンチングまたはエンボスにより設けることができる。冷媒マニホルドは、同様に、第2の閉塞プレートに機械加工、エッチング、プレス、パンチングまたはエンボスにより設けることができる。
【0045】
これらのプレートは、クラスタの各遠位端において相互に接着、溶接、半田付けまたはボルト留めすることができる。
【0046】
クラスタは平行セルを備えていてもよい。これらの平行セルにおいては、個々の吸着セルの環状伝熱流体チャネルは、分配コネクタにそれらの遠位端の両方において接続され、冷媒コネクタに一方または両方の遠位端において接続される。
【0047】
分配コネクタは、任意の形状を有していてもよく、個々のセルのそれぞれにおいて理想的には全く同じ流れを生じる。分配コネクタは、例えば、回転対称スパイダー形状のコネクタであって、それぞれの伝熱流体脚は他の伝熱流体脚と実質的に同じ形を有するものであってもよい。T字コネクタは、それぞれの分配コネクタに接続されていてもよく、または伝熱マニホルドに接続されていてもよい。あるいはまた、分配コネクタまたは伝熱マニホルドは、2つの別々のコネクタを設けられていてもよい。
【0048】
本発明は、さらに、吸着コンプレッサに関する。この吸着コンプレッサは、少なくとも2つの上述のクラスタを備える。この吸着コンプレッサにおいて、クラスタの第1の側のT字コネクタのアームはそれぞれ第1の対の三方弁の切替側と流体接続しており、この流体接続は、個々のT字コネクタの異なるアームがそれぞれ異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。そして、クラスタの第2の側のT字コネクタのアームはそれぞれ第2の対の三方弁の切替側と流体接続しており、この流体接続は、個々のT字コネクタの異なるアームがそれぞれ異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。
【0049】
第1の対の三方弁のベース側は、通過する伝熱流体の温度を上昇させるように構成されているヒーターまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。第2の対の三方弁のベース側は、通過する伝熱流体を冷却するように構成されたクーラーまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。第1の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側は、熱交換器またはヒーターと流体接続されていてもよい。また、第1の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側は熱交換器またはクーラーと流体接続されていてもよい。
【0050】
伝熱流体チャネルは放射状導体、例えば波板を設けられていてもよい。
【0051】
セルまたはクラスタの吸着材料および/または冷媒チャネルは、それぞれ、一組の逆止弁を介して冷媒ループと流体接触していてもよい。この冷媒ループは、凝縮器、蒸発器、膨張弁を備え、この膨張弁の構成は、冷媒がセルまたはクラスタの吸着材料を出入り可能であり、かつ冷媒が冷媒ループを通って一方向にのみ導かれることが可能になっている。
【0052】
別体のセルまたはクラスタは、弁を備えた圧力等化管により相互に接続されていてもよい。冷媒ループは、さらに、補助容器と流体接続していてもよい。この補助容器は、吸着塊と温度調節可能なヒーターとを備える。
【0053】
本発明は、また、吸着セルのクラスタを2つ備える熱波の操作に好適な吸着コンプレッサに関する。この吸着コンプレッサの各クラスタは、伝熱流体チャネルを備え、個々のクラスタの伝熱流体チャネルはマニホルドと流体接続し、マニホルドはT字コネクタと接続している。クラスタの第1の側のT字コネクタ・アームは、それぞれ、第1の対の三方弁の切替側と流体接続し、この流体接続は、個々のT字コネクタのそれぞれの異なるアームが異なる三方弁の切替側と流体接続するようにしたものである。そしてクラスタの第2の側のT字コネクタのアームは、それぞれ、第2の対の三方弁の切替側と流体接続し、この流体接続は個々のT字コネクタのそれぞれの異なるアームが異なる三方弁の切替側流体接続されるようにしたものである。
【0054】
第1の対の三方弁のベース側は、ヒーターまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。このヒーターまたは熱交換器は通過する伝熱流体の温度を高くするように構成されている。第2の対の三方弁のベース側はクーラーまたは熱交換器と流体接続されていてもよい。このクーラーまたは熱交換器は通過する伝熱流体を冷却するように構成されている。
【0055】
第1の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第1の三方弁のベース側は、熱交換器またはヒーターと流体接続されていてもよい。また、第1の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側と、第2の対の三方弁の内の第2の三方弁のベース側は熱交換器またはクーラーと流体接続されていてもよい。
【0056】
本発明は、さらに、吸着材料を備える吸着セルに関する。この吸着セルにおいては、吸着材料が中央冷媒チャネルを設けられた円筒状内壁内に配置され、環状伝熱流体チャネルが内壁と外壁との間の吸着材料の周りに同軸上に配置される。
【0057】
本発明は、また、上述の吸着セルのマトリックスを備えるクラスタを包含する。このクラスタにおいては、個々の吸着セルの環状の伝熱チャネルが伝熱流体マニホルドと流体接続しており、個々の吸着セルの中央冷媒チャネルが冷媒マニホルドと流体接続している。伝熱マニホルドと冷媒マニホルドは、細長い吸着セルの端部に配置された実質的にプレート形状の分配要素内に配置されていてもよい。
【0058】
このクラスタにおける分配要素は、3つの積み重ねられたプレート、すなわち吸着セルの外壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、第1の閉塞プレートと、吸着セルの内壁に接続されかつこれを包囲する開口部を有する、中間プレートと、第2の閉塞プレートとを備える。伝熱マニホルドは第1の閉塞プレートと中間プレートとの間に配置され、冷媒マニホルドは中間プレートと第2の閉塞プレートとの間に配置される。伝熱マニホルドは中間プレートに機械加工またはエッチングにより設けることができ、冷媒マニホルドは中間プレートまたは第2の閉塞プレートに機械加工またはエッチングにより設けることができる。
【0059】
これらのプレートは、クラスタの各遠位端において相互に接着、溶接、半田付けまたはボルト留めすることができる。
【0060】
本発明は、また、例えば太陽ボイラーまたは廃熱スチームのような比較的に低カロリーの熱源、あるいはガス炎のような高カロリーの熱源を用いることにより冷却または加熱する方法に関する。本方法は、任意の順序で実行することができる下記工程を含む。すなわち、本方法は、
a)上述したような吸着コンプレッサを用意する工程、
b)第1のクラスタ内の吸着材料を第1のモードにおいて加熱し、この加熱は、ヒーターから層流で出る熱い伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な降下熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第1のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに、吸着された冷媒は、第1のクラスタの吸着材料から比較的高い圧力において脱着され、逆止弁を通って凝縮器に向かって強制的に送られ、凝縮され、そして強制的に膨張弁を通って蒸発するように放置されて蒸発器内において冷却動作を行う工程、
c)工程b)の間、第1のモードにおいて第2のクラスタ内の吸着材料を冷却し、この冷却は、クーラーから層流で出る冷たい伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な上昇熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第2のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに冷媒は、逆止弁を通して蒸発器に由来する比較的に低い圧力において、第2のクラスタの吸着材料により吸着される工程、
d)所定の瞬間において第2のモードに切替え、第1のクラスタ内の吸着材料を冷却し、この冷却は、クーラーから層流で出る冷たい伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な上昇熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第1のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに冷媒は、逆止弁を通して蒸発器に由来する比較的に低い圧力において、第1のクラスタの吸着材料により吸着される工程、
e)工程d)の間、第2のモードにおいて第2のクラスタの吸着材料を加熱し、この加熱は、ヒーターから層流で出る熱い伝熱流体を、クラスタの吸着セルの伝熱流体チャネルを通して、軸線方向の実質的に急峻な降下熱プロファイル、すなわち熱波が維持されかつ第2のクラスタ内の細長い吸着セルの長さに沿って徐々に押されるように、ポンプを用いて徐々に汲み出すことにより行い、ここに、吸着された冷媒は第2のクラスタの吸着材料から、比較的高い圧力において脱着され、逆止弁を通って凝縮器に向かって強制的に送られ、凝縮され、そして強制的に膨張弁を通って蒸発するように放置されて蒸発器内において冷却動作を行う工程、
f)第1のモードに切替え、工程a)−f)を繰り返す工程を含む。
【0061】
本方法において、第1のモードと第2のモードの間の切替およびその逆を一連の三方弁により行うことができる。流動方向は、モード間の各切替毎に復帰させることができる。これは、クラスタとクラスタが熱側と冷側を有し、比較的急峻な温度プロファイルが個々のクラスタを通して前後に送られ、ここにモードの切替は、毎回、クラスタ端部に、当該クラスタが実質的に完全に加熱され、かつ他のクラスタが実質的に冷却されていること、あるいはその逆を示す温度プロファイルが到達することにより始動される。
【0062】
本方法におけるクラスタ内の流動方向は、維持される。その結果、急峻な温度プロファイル、すなわち上昇下降する温度の熱波がクラスタを一方向にのみ押し通される。第1のモードと第2のモードの間、および第2のモードと第1のモードの間において、毎回、温度等化モードに切り替えることができる。この切替は、加熱されるべきクラスタをヒーターのみを有する回路内にショートカットさせ、同時に、冷却されるべきクラスタをクーラーのみを有する回路内にショートカットさせることにより行う。クラスタをショートカットさせることへの切替は、両クラスタを出る伝熱流体の温度が実質的に同じになったときに始動されるようにすることができる。
【0063】
ここに記載された方法は、下記の等式に従うサイクル時間を有していてもよい。
【数3】
【0064】
ここに、t
cycleは、収着セルまたはクラスタの全サイクル時間、すなわち、吸着および脱着モードに対する全サイクル時間であり、Δhは、冷却力を提供する冷媒ガスのエンタルピー変化[J/g]、Δx
netは、1つの吸着および脱着サイクルにおける、炭素のような吸着材料から吸着および脱着されるガスの正味の量をガスg/吸着材料gで表したものである。
【0065】
これらのヒート・ポンプの性能は、一般に2つのパラメータ、すなわち第1に性能係数(COP)、および第2に比冷却力(SCP)により把握される。性能係数は、熱冷却力P
coolingと熱入力P
inとの比である。
【数4】
【0066】
比冷却力は、熱冷却力を吸着材の質量(m
adsorber)により除したものである。
【数5】
【0067】
本発明によるヒート・ポンプにおいて、吸着材料としては、例えば固形アモルファス炭素含有材料を用いることができる。冷媒または吸着ガスとしては、NH
3を用いることができる。固体吸着材料と吸着ガスのこの特定の組合せを用いて、高SCPを達成することが可能であり、比較的にコンパクトで軽いコンプレッサが得られる。
【0068】
かかるヒート・ポンプのさらなる利点は、比較的に高いCOPと比較的に高い熱力学的効率、SCPとCOPを低下させることなく達成される比較的に高い温度適応性、比較的に一定な冷熱生成、典型的には分単位の範囲内の迅速な始動および停止、および比較的に高くないコストである。
【0069】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサ用のセルである。この吸着コンプレッサ用のセルは、吸着材料と、該吸着材料と伝熱接触している少なくとも1つの分離した伝熱流体チャネルとを備える。伝熱チャネルの直径または高さの相対的大きさ、すなわち、伝熱流体チャネルの高さに関する特性寸法、または吸着材料の特性寸法とその材料特性はビオ数によって決定される。ここに、ビオ数は1より大きいか、または1に等しい。
【0070】
本明細書においては、ビオ数は、吸着材料の耐熱性と伝熱流体の耐熱性の比を表す。これは等式3に示す通りである。
【0071】
吸着材料の耐熱性は、形状特性および材料特性から推定することができ、伝熱流体の耐熱性は、伝熱流体チャネルの形状的側面および伝熱流体チャネルの内部の主要な流動領域についての関連するヌセルト(Nusselt)関係から推定することができる。実際には,Biotの値が1より小さいほど、吸着材内ではなく、伝熱流体内に見出される半径方向の熱の差が大きくなる。これにより、最終的には、所与の特性寸法(例えば、半径)および吸着材料の熱伝導率に対して、熱波がより平坦化され(分散され)ることとなり、望ましくない。従って、ビオ数が1より大であることが効率的な操作のために必要である。吸着材料を含む細長い円筒状管の周りの同心伝熱流体ジャケットに関連するビオ関係は下記により表すことができる。
【数6】
【0072】
ここに、R
insideおよびR
surfaceは、吸着材と伝熱流体チャネルの耐熱性である。吸着材料の所与の特性寸法、例えば半径(r)および吸着材料の所与の有効熱伝導率(λ
ads)に対して、ビオ数を増加して熱波を急峻にするために、一連の設計上の事項、すなわち、特性寸法、例えば伝熱流体チャネルの直径(d
HTF)を減少させること、または伝熱流体の有効熱伝導率(λ
HTF)を増加させること、を検討することができる。
【0073】
この関係におけるヌセルト(Nusselt)数は、層流に対しては、約5である。乱流の発生は、圧力降下を低く保つためには、避けるのが好ましいので、このヌセルト数は変更しないのが好ましい。
【0074】
伝熱流体が水であるときは、λ
HTFは約0.6W/mKである。吸着材料が市販のアモルファス炭素であるときは、λ
adsは約0.8W/mKである。吸着材料の特性寸法(例えば、半径)が0.5cmに選ばれているときは、伝熱チャネルの直径は1mm未満、または吸着材料の特性寸法(例えば、半径)の5分の1未満であることが必要である。
【0075】
まとめると、吸着コンプレッサの効率的な操作のためには、伝熱チャネルの直径または高さと、吸着材料の特性寸法(例えば、半径)または高さとの間の寸法関係は下記に従う必要がある。
【数7】
【0076】
これから分かることは、伝熱流体チャネルは小さくなければならない、ということである。他方、熱伝達流体チャネルの直径または高さは小さすぎるものを選ぶことができない。これは、伝熱流体チャネルの長さにわたる流体圧力の低下が大きくなると、効率の損失が生じるからである。層流用の環状の細長いチャネルにわたる圧力降下Δpは下記により与えられる。
【数8】
【0077】
このチャネルを通る質量流量は、セルにおいて必要とされる熱出力P
in,
HTF、ヒーターを出る伝熱流体の温度とヒーターに入る伝熱流体の温度との間のサイクル時間に基づく平均温度差またはクーラーの前後の温度差ΔTによって決定される。
【数9】
【0078】
必要とされる熱出力は、実際の熱冷却力P
coolingをCOPにより除したものとして表すことができる。
【数10】
【0079】
ここに、冷却力は実際には、比冷却力にセル内の吸着材料の質量m
cellを乗じたものである。等式2参照。等式2は、密度ρ
adsに吸着材料の体積を乗じたものとして書き直すことができる。
【数11】
【0080】
等式6−8を等式5と組み合わせることにより、圧力降下を設計パラメータと当該伝熱流体の特定の性質のみで表すことができる。
【数12】
【0081】
圧力降下における効率の損失が多すぎないように、伝熱流体が水である場合、圧力降下は、典型的には、約1バールより大きくすべきではない。熱油(thermal oil)が用いられる場合、圧力降下は数バールを超えてはならない。
【0082】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサである。この吸着コンプレッサは、少なくとも2つの、吸着材料のセルまたはセルのクラスタであって、伝熱流体チャネルにより包囲され、または伝熱流体チャネルと伝熱接続しているものを備え、該クラスタは、それぞれ、伝熱流体の入口と出口において、T字コネクタを備え、T字コネクタの枝はそれぞれ弁と流体接続している。
【0083】
セルまたはクラスタに近いT字コネクタのこの特定の配置により、伝熱流体導管の非常に限られた部分のみが冷たい伝熱流体と熱い伝熱流体の双方に直面する。この部分が小さいほど、熱い流体と冷たい流体の間の混合損失が生じる頻度がより少なくなり、これらの混合損失が最小限に抑えられる。
【0084】
T字コネクタの枝のそれぞれは弁と流体接続している。一方、T字コネクタの幹は当該セルまたはセルのクラスタの伝熱流体チャネルと流体接続している。好ましくは、これらの弁は三方弁である。しかしながら、代替的に、二方弁の適切な組合せを用いてもよい。ヒーターとクーラーは三方弁と流体接続していてもよい。その接続の構成は、該三方弁の設定に応じた4つの操作モードを用いて伝熱流体をポンプで汲み出すことができるようにしたものである。これら4つのモードに含まれる第1のモードでは、ヒーター、第1のセルまたはクラスタ、クーラー、第2のセルまたはクラスタを通り、再びヒーターに戻る伝熱流体の単一のループが配置されている。第2のモードは、2つの別個のショートカット回路備える。その1つのショートカット回路では、伝熱流体はヒーターから第1のセルまたはクラスタに流れ、再びヒーターに戻る。もう1つのショートカット回路では、伝熱流体はクーラーから第2のセルまたはクラスタに流れ、再びクーラーに戻る。第3のモードは、また、1つのループまたは回路を備え、今度は伝熱流体は第2のセルまたはクラスタ内のヒーターからクーラー、第1のセルまたはクラスタに流れ、そして再びヒーターに戻る。最後に、第4のモードは、再び2つの別個のループを備える。今度は、1つのループが接続するヒーターを第2のセルまたはクラスタと閉じたループにおいて接続し、さらなるループはクーラーを第1のセルまたはクラスタと接続する。
【0085】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサである。この吸着コンプレッサは、吸着材料の少なくとも2つのセルまたはセルのクラスタを備える。該セルまたはクラスタは、伝熱流体チャネルにより包囲され、かつ、この伝熱流体チャネルと伝熱接触している。これらのクラスタは、それぞれ、それらの伝熱流体入口および出口に十字コネクタを備えている。ここに、それぞれのセルまたはセルのクラスタの十字コネクタの第1の枝は、第1のまたは第2の三方弁と流体接続しており、その流体接続は、両方のセルまたはセルのクラスタの十字コネクタのそれぞれが異なる三方弁と流体接続しているように、かつ十字コネクタの残りの2つの枝がそれぞれマニホルドに流体接続しているようになされる。
【0086】
セルまたはクラスタに近い十字コネクタのこの特定の配置の故に、伝熱流体導管のごく限られた部分だけが、冷たい、熱いおよび中程度に温かい伝熱流体に直面する。この部分が小さいほど、熱い流体と冷たい流体の間の混合損失の発生が少なくなり、これらの混合損失が最低限になる。
【0087】
本発明のさらなる態様は、吸着コンプレッサを操作する方法である。この方法は、上述のような2つの吸着クラスタを備える。ここに、熱および冷たい伝熱流体はポンプで汲み出される。これは、伝熱チャネルを通ってセルまたはクラスタの長さにわたって、実質的に連続的に移動する熱波が生成されるように行われる。
【0088】
本発明のさらなる態様は、ヒート・ポンプである。このヒート・ポンプでは、冷媒ループ内にバッファ容器を有する分岐が配置される。この容器には固体吸着材料と温度コントローラとが設けられている。かかるシステムにおいて、バッファの温度を制御することにより、吸着される冷媒の量が制御できる。この制御は冷却操作に利用可能な冷媒が制御可能であるように行うことができる。冷媒の量を減少させることにより、凝縮器および蒸発器のそれぞれにおける凝縮および/または蒸発圧力を制御することができる。これらの圧力は、凝縮器および蒸発器の操作温度に関する。
【0089】
このように、例えば冷却温度を調節する洗練された方法が、ヒート・ポンプのオン−オフ・モードを回避することができるように、提供され、例えば、より正確な、一定した冷却温度が得られる。この温度を制御された吸着バッファは、上述のヒート・ポンプにおいて実際的であり得るけれども、そうであっても、既存のヒート・ポンプにも実際的に用いることができる。