(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下における、前記ダイシングシートから前記ダイボンドフィルムを剥離する際の剥離力が0.01N/20mm以上2N/20mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルム。
測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下における、前記ダイシングシートから前記ダイボンドフィルムを剥離する際の剥離力の、0℃で72時間放置前後における変化率が、−75%〜75%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルム。
前記ダイボンドフィルムの0℃での引張破断伸度が10%以上500%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルム。
前記ダイボンドフィルムは、有機樹脂成分全体に対して、アクリル系共重合体を85重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルム。
前記ダイボンドフィルムは、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを含むモノマー原料を重合して得られ、且つ、官能基としてエポキシ基、又は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(ダイシングシート付きダイボンドフィルム)
本発明の一実施形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムについて、以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【0029】
図1に示すように、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイシングシート11上にダイボンドフィルム16が積層された構成を有する。ダイシングシート11は基材12上に粘着剤層14を積層して構成されており、ダイボンドフィルム16は、粘着剤層14上に設けられている。
【0030】
なお、本実施形態では、ダイシングシート11には、ダイボンドフィルム16に覆われていない部分14bが存在する場合について説明するが、本発明に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムは、この例に限定されず、ダイシングシート全体を覆うようにダイボンドフィルムがダイシングシートに積層されていてもよい。
【0031】
ダイボンドフィルム16の0℃での損失弾性率は、20MPa以上500MPa以下であり、18MPa以上400MPa以下が好ましく、15MPa以上300MPa以下がより好ましい。ダイボンドフィルム16の0℃での損失弾性率が500MPa以下であるため、低温状態においてある程度の柔軟性を有する。従って、低温状態で輸送する場合に、ダイボンドフィルム16にひび割れやカケが発生することを抑制できる。また、ダイボンドフィルム16が、低温状態においてある程度の柔軟性を有するため、ダイシングシート11との密着性が向上する。その結果、低温輸送時等において、ダイシングシート11とダイボンドフィルム16とが剥離してしまうことを抑制することが可能となる。
また、ダイボンドフィルム16の0℃での損失弾性率が20MPa以上であるため、フィルムとしての形状を維持することができる。
なお、ダイボンドフィルムの0℃での損失弾性率は、実施例記載の方法による。
前記損失弾性率は、ダイボンドフィルム16を構成する材料によりコントロールすることができる。例えば、ダイボンドフィルム16を構成する熱可塑性樹脂の種類や含有量、フィラーの平均粒径や含有量を適宜選択することによりコントロールすることができる。
【0032】
ダイボンドフィルム16は、0℃での引張破断伸度が10%以上500%以下であることが好ましく、12%以上400%以下であることがより好ましく、15%以上300%以下であることがさらに好ましい。ダイボンドフィルム16の0℃での引張破断伸度が10%以上であると、低温輸送中により破断し難くすることができる。また、ダイボンドフィルム16の0℃での引張破断伸度が500%以下であると、ダイボンドフィルムとダイシングシートとの剥離を防ぐことができる。
前記引張破断伸度は、ダイボンドフィルム16を構成する材料によりコントロールすることができる。例えば、ダイボンドフィルム16を構成する熱可塑性樹脂の種類や含有量、フィラーの平均粒径や含有量を適宜選択することによりコントロールすることができる。
【0033】
ダイボンドフィルム16を構成する材料としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0034】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体チップの信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0035】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸のエステル又はメタクリル酸のエステル(アルキルアクリレート、又は、アルキルメタクリレート)の1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル系共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0036】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマー、アクリロニトリルが挙げられる。
【0037】
なかでも、ダイボンドフィルム16は、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを含むモノマー原料を重合して得られ、且つ、官能基としてエポキシ基、又は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含有することが好ましい。官能基としてエポキシ基、又は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含有すると、架橋形成工程における加熱により前記官能基により架橋を形成することができる。また、前記アクリル系共重合体が、アクリロニトリルを含むモノマー原料を重合して得られたものであると、架橋形成工程での凝集力を向上させることができる。その結果、架橋形成工程後の接着力を向上させることができる。
【0038】
前記熱可塑性樹脂の配合割合としては、特に限定されないが、柔軟性付与の観点から、ダイボンドフィルム16全体に対して、35重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。また、耐熱性の観点から、ダイボンドフィルム16全体に対して、100重量%以下であることが好ましく、98重量%以下であることがより好ましい。
【0039】
なかでも、ダイボンドフィルム16は、有機樹脂成分全体に対して、アクリル系共重合体を85重量%以上含有することが好ましく、88重量%以上含有することがより好ましく、90重量%以上含有することがさらに好ましい。ダイボンドフィルム16が、有機樹脂成分全体に対して、アクリル系共重合体を85重量%以上含有すると、低温状態で輸送する場合に、ひび割れやカケが発生することをより抑制することができる。
【0040】
また、ダイボンドフィルム16は、軟化点が0℃以下の熱架橋剤を含むことが好ましい。軟化点が0℃以下の熱架橋剤を含むと、低温状態においても固定成分の含有量が抑えられるため、低温状態で輸送する場合に、衝撃等により割れにくいダイボンドフィルムとすることができる。また、軟化点が0℃以下の熱架橋剤を含むと、加熱により熱可塑性樹脂の有する官能基と架橋構造を形成することができる。本明細書において、熱架橋剤とは、熱可塑性樹脂の有する官能基と架橋構造を形成させるものをいう。
なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。次に、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。次に、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃±5℃に15分間保つ。次に、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。次に、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0±0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0041】
軟化点が23℃以下の熱架橋剤の具体例としては、軟化点が23℃以下のエポキシ樹脂や、軟化点が23℃以下のフェノール樹脂を挙げることができる。ただし、複数種の熱架橋剤を添加する場合、熱架橋剤が、熱可塑性樹脂の有する官能基と好適に架橋構造を形成するように選択することが好ましく、熱架橋剤同士が反応しないように選択することが好ましい。
【0042】
前記熱架橋剤の含有量は、有機樹脂成分全体に対して、0.5〜35重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜15重量%であることがさらに好ましい。前記熱架橋剤の含有量が、有機樹脂成分に対して、0.5重量%以上であると熱可塑性樹脂の有する官能基と好適に架橋構造を形成させることができる。一方、35重量%以下であると、モールド時にその熱と圧力により、被着体とダイボンドフィルムとの隙間を埋めることができる。
【0043】
前記エポキシ樹脂は、軟化点が0℃以下であれば、特に限定されず、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂を用いることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0044】
前記フェノール樹脂は、軟化点が0℃以下であれば、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0045】
また、ダイボンドフィルム16には、その用途に応じてフィラーを適宜配合することができる。前記フィラーの配合は、導電性の付与、熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記フィラーとしては、無機フィラー、及び、有機フィラーが挙げられるが、取り扱い性の向上、熱電導性の向上、溶融粘度の調整、チキソトロピック性付与等の特性の観点から、無機フィラーが好ましい。前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。熱電導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカが好ましい。また、上記各特性のバランスがよいという観点からは、結晶質シリカ、又は、非晶質シリカが好ましい。また、導電性の付与、熱電導性の向上等の目的で、無機フィラーとして、導電性物質(導電フィラー)を用いることとしてもよい。導電フィラーとしては、銀、アルミニウム、金、胴、ニッケル、導電性合金等を球状、針状、フレーク状とした金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0046】
前記フィラーの平均粒径は、0.001〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.6μmであることがより好ましい。前記フィラーの平均粒径を0.001μm以上とすることにより、ダイボンドフィルムの高粘度化を防ぐことができる。また、1μm以下とすることにより、ダイボンドフィルムからのフィラーの飛び出しを抑制することができ、被着体へのダメージを抑えることができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
前記フィラーの添加量としては、ダイボンドフィルム16全体に対して、0〜60重量%が好ましく、0〜50重量%がより好ましい。
【0047】
なお、ダイボンドフィルム16には、前記フィラー以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
ダイボンドフィルム16の厚さ(積層体の場合は、総厚)は特に限定されないが、3〜200μmが好ましく、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
【0049】
ダイシングシート11は、上述の通り、基材12上に粘着剤層14が積層された構成を有している。
【0050】
ダイシングシート11の0℃での損失弾性率は、10MPa以上500MPa以下であることが好ましく、8MPa以上400MPa以下がより好ましく、5MPa以上300MPa以下がさらに好ましい。ダイシングシート11の0℃での損失弾性率が500MPa以下であると、低温状態においてある程度の柔軟性を有する。従って、低温状態で輸送する場合に、ダイシングシート11にひび割れやカケが発生することを抑制できる。また、ダイシングシート11が、低温状態においてある程度の柔軟性を有するため、ダイボンドフィルム16との密着性が向上する。その結果、低温状態において、ダイシングシート11とダイボンドフィルム16とが剥離してしまうことをより抑制することが可能となる。
また、ダイシングシート11の0℃での損失弾性率が10MPa以上であるため、フィルムとしての形状を維持することができる。
なお、ダイシングシートの0℃での損失弾性率は、実施例記載の方法による。
前記損失弾性率は、ダイシングシート11を構成する材料によりコントロールすることができる。例えば、ダイシングシート11を構成する熱可塑性樹脂の種類や含有量、によりコントロールすることができる。
【0051】
基材12は、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)等が挙げられる。基材12は、後述する粘着剤層14が放射線硬化型粘着剤で形成されている場合、当該放射線を透過させる材料から形成されていることが好ましい。
【0052】
基材12の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。基材12は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種の材料をブレンドしたものを用いることができる。
【0053】
基材12の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0054】
粘着剤層14の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウエハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0055】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0056】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0057】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0058】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万〜300万程度であり、特に好ましくは30万〜100万程度である。
【0059】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、さらには0.1〜5重量部配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0060】
粘着剤層14は、放射線硬化型粘着剤により形成してもよい。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0061】
例えば、
図1に示すダイボンドフィルム16のウエハ貼り付け部分16aに合わせて放射線硬化型の粘着剤層14を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分14aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分14aにダイボンドフィルム16が貼付けられるため、粘着剤層14の前記部分14aとダイボンドフィルム16との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、放射線を照射していない部分は十分な粘着力を有しており、前記部分14bを形成する。前記部分14bには、ウエハリングを強固に固定することができる。
なお、ダイシングシート全体を覆うようにダイボンドフィルムをダイシングシートに積層する場合には、ダイボンドフィルムの外周部分にウエハリングを固定することができる。
【0062】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0063】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0064】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0065】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0066】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計の点で容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0067】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0068】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0069】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0070】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0071】
放射線硬化型の粘着剤層14中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層14に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。即ち、
図1に示すウエハ貼り付け部分16aに対応する部分14aを着色することができる。従って、粘着剤層14に放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができ、ウエハ貼り付け部分16aを認識し易く、ワークの貼り合せが容易である。また光センサー等によって半導体チップを検出する際に、その検出精度が高まり、半導体チップのピックアップ時に誤動作が生ずることがない。
【0072】
放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフエニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0073】
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、さらに、色調を変化させる場合は種々公知の発色剤を組合せて用いることもできる。
【0074】
この様な放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に放射線硬化型接着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、粘着剤層14中に10重量%以下、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%であるのが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、粘着剤層14に照射される放射線がこの化合物に吸収されすぎてしまう為、粘着剤層14の前記部分14aの硬化が不十分となり、十分に粘着力が低下しないことがある。一方、充分に着色させるには、該化合物の割合を0.01重量%以上とするのが好ましい。
【0075】
粘着剤層14を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、粘着剤層14に於ける前記部分14aの粘着力<その他の部分14bの粘着力、となるように粘着剤層14の一部を放射線照射してもよい。
【0076】
粘着剤層14に前記部分14aを形成する方法としては、基材12に放射線硬化型の粘着剤層14を形成した後、前記部分14aに部分的に放射線を照射し硬化させる方法が挙げられる。部分的な放射線照射は、ダイボンドフィルム16ウエハ貼り付け部分16a以外の部分に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に放射線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。放射線硬化型の粘着剤層14の形成は、セパレータ上に設けたものを基材12上に転写することにより行うことができる。部分的な放射線硬化はセパレータ上に設けた放射線硬化型の粘着剤層14に行うこともできる。
【0077】
また、粘着剤層14を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、基材12の少なくとも片面の、ウエハ貼り付け部分16aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに放射線硬化型の粘着剤層14を形成した後に放射線照射して、ウエハ貼り付け部分16aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分14aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作成することができる。かかる製造方法によれば、効率よくダイシングシート付きダイボンドフィルム10を製造可能である。
【0078】
なお、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層14の表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、粘着剤層14の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0079】
粘着剤層14の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止やダイボンドフィルム16の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0080】
ダイシングシート付きダイボンドフィルム10において、測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下における、ダイシングシート11からダイボンドフィルム16を剥離する際の剥離力は、0.01N/20mm以上2N/20mm以下であることが好ましく、0.02N/20mm以上1.5N/20mm以下であることがより好ましく、0.03N/20mm以上1.0N/20mm以下であることがさらに好ましい。前記剥離力が0.01N/20mm以上であると、低温状態で輸送する場合に、ダイシングシート11とダイボンドフィルム16とが剥離してしまうことをより抑制することが可能となる。また、前記剥離力が、2N/20mm以下であると、ピックアップ時に好適に剥離させることかできる。
【0081】
ダイシングシート付きダイボンドフィルム10において、測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下における、ダイシングシート11からダイボンドフィルム16を剥離する際の剥離力の、0℃で72時間放置前後における変化率は、−75%〜75%の範囲であることが好ましく、−50%〜50%の範囲であることがより好ましく、−40%〜40%の範囲であることがさらに好ましい。前記変化率が、−75%〜75%の範囲であると、0℃で保存した際にフィルム特性の変化が少ないといえる。従って、長期間の保存が可能となる。
【0082】
ダイシングシート付きダイボンドフィルム10のダイボンドフィルム16は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルム16を保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、粘着剤層14にダイボンドフィルム16を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイシングシート付きダイボンドフィルム10のダイボンドフィルム16上にワーク(半導体ウエハ)を貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0083】
本実施の形態に係るダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、例えば、次の通りにして作製される。
先ず、基材12は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0084】
次に、基材12上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層14を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層14を形成してもよい。その後、基材12上に粘着剤層14をセパレータと共に貼り合わせる。これにより、ダイシングシート11が作製される。
【0085】
ダイボンドフィルム16は、例えば、次の通りにして作製される。
先ず、ダイボンドフィルム16の形成材料である接着剤組成物溶液を作製する。当該接着剤組成物溶液には、前述の通り、前記樹脂や、その他必要に応じて各種の添加剤等が配合されている。
【0086】
次に、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚さとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ、ダイボンドフィルム16を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に接着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させてダイボンドフィルム16を形成してもよい。その後、基材セパレータ上に接着剤層をセパレータと共に貼り合わせる。
【0087】
続いて、ダイシングシート11及びダイボンドフィルム16からそれぞれセパレータを剥離し、接着剤層14とダイボンドフィルム16とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば30〜50℃が好ましく、35〜45℃がより好ましい。また、線圧は特に限定されず、例えば0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。これにより、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10が得られる。
【0088】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置の製造方法について説明する。
以下では、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0089】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、前記に記載のダイシングシート付きダイボンドフィルムを準備する工程と、
前記ダイシングシート付きダイボンドフィルムのダイボンドフィルムと、半導体ウエハの裏面とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記半導体ウエハを前記ダイボンドフィルムと共にダイシングして、チップ状の半導体チップを形成するダイシング工程と、
前記半導体チップを、前記ダイシングシート付きダイボンドフィルムから前記ダイボンドフィルムと共にピックアップするピックアップ工程と、
前記ダイボンドフィルムを介して、前記半導体チップを被着体上にダイボンドするダイボンド工程とを含むものである。
【0090】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、まず、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10を準備する(準備する工程)。ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイボンドフィルム16上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離して、次の様に使用される。以下では、
図1、及び、
図2を参照しながらダイシングシート付きダイボンドフィルム10を用いた場合を例にして説明する。
【0091】
まず、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10におけるダイボンドフィルム16の半導体ウエハ貼り付け部分16a上に半導体ウエハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り合わせ工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。マウントの際の貼り付け温度は特に限定されず、例えば40〜90℃の範囲内であることが好ましい。
【0092】
次に、半導体ウエハ4のダイシングを行う(ダイシング工程)。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングの方法は特に限定されないが、例えば半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシングシート付きダイボンドフィルム10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0093】
次に、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップ5を剥離するために、半導体チップ5のピックアップを行う(ピックアップ工程)。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングシート付きダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0094】
ピックアップ条件としては、チッピング防止の点で、ニードル突き上げ速度を5〜100mm/秒とすることが好ましく、5〜10mm/秒とすることがより好ましい。
【0095】
ここでピックアップは、粘着剤層2が放射線硬化型である場合、該粘着剤層2に放射線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2のダイボンドフィルム16に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。放射線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、放射線照射に使用する光源としては、公知のものを使用することができる。なお、粘着剤層に予め放射線照射し硬化させておき、この硬化した粘着剤層とダイボンドフィルムとを貼り合わせている場合は、ここでの放射線照射は不要である。
【0096】
次に、ピックアップした半導体チップ5を、ダイボンドフィルム16を介して被着体6に接着固定する(ダイボンド工程)。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウエハ等)であってもよい。
【0097】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体チップをマウントし、半導体チップと電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0098】
次に、ダイボンドフィルム16を加熱して架橋構造を形成させ、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる(架橋形成工程)。加熱温度は、80〜200℃、好ましくは100〜175℃、より好ましくは120〜160℃で行うことができる。また、加熱時間は、0.1〜24時間、好ましくは0.1〜3時間、より好ましくは0.2〜1時間で行うことができる。また、架橋形成は、加圧条件下で行なってもよい。加圧条件としては、1〜20kg/cm
2の範囲内が好ましく、3〜15kg/cm
2の範囲内がより好ましい。加圧下での架橋形成は、例えば、不活性ガスを充填したチャンバー内で行なうことができる。なお、ダイボンドフィルム16を介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、後硬化工程に供することができる。
【0099】
熱処理後のダイボンドフィルム16の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム16の剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、ワイヤーボンディング工程の際に、当該工程における超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム16と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。すなわち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップが動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0100】
次に、必要に応じて、
図2に示すように、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する(ワイヤーボンディング工程)。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。本工程は、ダイボンドフィルム16の架橋形成を行うことなく実行することもできる。
【0101】
次に、必要に応じて、
図2に示すように、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する(封止工程)。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護するために行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行うことができる。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂8を硬化させると共に、ダイボンドフィルム16を介して半導体チップ5と被着体6とを固着させる。すなわち、本発明においては、後述する後硬化工程が行われない場合においても、本工程においてダイボンドフィルム16による固着が可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。また、本封止工程では、シート状の封止用シートに半導体チップ5を埋め込む方法(例えば、特開2013−7028号公報参照)を採用することもできる。
【0102】
次に、必要に応じて加熱を行い、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる(後硬化工程)。封止工程においてダイボンドフィルム16が完全に架橋形成していない場合でも、本工程において封止樹脂8と共にダイボンドフィルム16の完全な架橋形成が可能となる。本工程における加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0103】
なお、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ダイボンド工程による仮固着の後、ダイボンドフィルム16の加熱処理による架橋形成工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、さらに半導体チップ5を封止樹脂8で封止して、当該封止樹脂8を硬化(後硬化)させてもよい。この場合、ダイボンドフィルム16の仮固着時の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム16の仮固着時における剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程における超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム16と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。すなわち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップが動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。なお、仮固着とは、以降の工程において支障がないように、ダイボンドフィルムの架橋反応を完全に進行した状態に至らない程度で該ダイボンドフィルムを加熱させて半導体チップ5を固定した状態をいう。なお、ダイボンドフィルムの加熱処理による架橋形成工程を経ることなくワイヤーボンディングを行う場合、上記後硬化させる工程は、本明細書における架橋形成工程に相当する。
【0104】
なお、本発明のダイシングシート付きダイボンドフィルムは、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合にも好適に用いることができる。このとき、半導体チップ間にダイボンドフィルムとスペーサとを積層させてもよく、スペーサを積層することなく、ダイボンドフィルムのみを半導体チップ間に積層させてもよく、製造条件や用途等に応じて適宜変更可能である。
【実施例】
【0105】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0106】
<ダイボンドフィルムの作製>
(実施例1)
下記(a)〜(b)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、商品名:SG−708−6、各主モノマーの含有量:エチルアクリレート51重量%、ブチルアクリレート26重量%、アクリロニトリル19重量%)
97部
(b)フィラー(アドマテックス社製、製品名:SO−E1、平均粒径:0.25μm)
100部
【0107】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムAを作製した。
【0108】
(実施例2)
下記(a)〜(b)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、商品名:SG−708−6、各主モノマーの含有量:エチルアクリレート51重量%、ブチルアクリレート26重量%、アクリロニトリル19重量%)
83部
(b)熱架橋剤(液状エポキシ樹脂(軟化点:0℃以下)、三菱化学社製、製品名:JER828)
12部
【0109】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムBを作製した。
【0110】
(実施例3)
下記(a)〜(b)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、商品名:SG−P3、各主モノマーの含有量:エチルアクリレート30重量%、ブチルアクリレート39重量%、アクリロニトリル28重量%)
90部
(b)熱架橋剤(液状フェノール樹脂(軟化点:0℃以下)、明和化成社製、製品名:MEH−8000H)
5部
【0111】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムCを作製した。
【0112】
(比較例1)
下記(a)〜(c)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、商品名:SG−708−6、各主モノマーの含有量:エチルアクリレート51重量%、ブチルアクリレート26重量%、アクリロニトリル19重量%)
80部
(b)常温(23℃)で固形のエポキシ樹脂(DIC社製、製品名:HP−7200L)
80部
(c)フィラー(アドマテックス社製、製品名:SO−E1、平均粒径:0.25μm)
300部
【0113】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムDを作製した。
【0114】
(比較例2)
下記(a)〜(b)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)ブチルアクリレート、及び、アクリロニトリルを主モノマーとするアクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、商品名:SG−28GM、各主モノマーの含有量:ブチルアクリレート86重量%、アクリロニトリル7重量%)
90部
(b)常温(23℃)で固形のフェノール樹脂(明和化成社製、製品名:MEH−7500)
5部
【0115】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムEを作製した。
【0116】
(ダイボンドフィルムの0℃での損失弾性率の測定)
実施例、及び、比較例に係るダイボンドフィルムの0℃での損失弾性率を測定した。具体的には、実施例、比較例のダイボンドフィルムについて、それぞれ厚さ200μmに積層し、幅10mm、長さ40mmの測定サンプルとした。次に、動的粘弾性測定装置(RSA(III)、レオメトリックサイエンティフィック社製)を用いて、−20〜300℃での損失弾性率を、チャック間距離22.5mm、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件下にて測定し、その際の0℃での損失弾性率を用いた。
【0117】
(ダイボンドフィルムの0℃での引張破断伸度の測定)
実施例、及び、比較例に係るダイボンドフィルムの0℃での引張破断伸度を測定した。具体的には、実施例、比較例のダイボンドフィルムについて、厚み200μmとなるように積層し、それぞれ初期長さ40mm、幅10mmの短冊状の測定片となる様に切断した。次に、テンシロン万能試験機(オートグラフ、島津製作所社製)を用いて引張速度50mm/分、チャック間距離10mmの条件下で、0℃に於ける引張破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
<ダイシングシート>
実施例1〜3、及び、比較例1〜2に係るダイシングシートA(実施例1〜3、及び、比較例1〜2で共通)を下記のようにして準備した。
【0119】
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)75部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)20部、過酸化ベンゾイル0.2部、及び、トルエン60部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
このアクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)8部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)1部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)4部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ30μmの粘着剤層前駆体を形成した。次いで、ポリプロピレン層(厚さ40μm)とポリエチレン層(厚さ40μm)の2層構造を有する厚さ80μmの基材フィルムを準備し、当該粘着剤前駆体表面にポリプロピレン層を貼り合わせ面として基材フィルムを貼り合わせた。その後、50℃にて24時間保存をした。粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ紫外線を500mJ照射して、粘着剤層を形成した。これにより、ダイシングシートAを得た。
なお、基材の幅は、390mm、長さは200000mmである。また、紫外線は、各円形照射間の中心間距離が380mmとなるように照射した。
【0120】
(ダイシングシートの0℃での損失弾性率の測定)
実施例、及び、比較例に係るダイシングシートの0℃での損失弾性率を測定した。具体的には、実施例、比較例のダイシングシートについて、それぞれ厚さ200μmに積層し、幅10mm、長さ40mmの測定サンプルとした。次に、動的粘弾性測定装置(RSA(III)、レオメトリックサイエンティフィック社製)を用いて、−20〜300℃での損失弾性率を、チャック間距離22.5mm、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件下にて測定し、その際の0℃での損失弾性率を用いた。
【0121】
<ダイシングシート付きダイボンドフィルムの作製>
(実施例1)
ダイボンドフィルムAを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。
【0122】
(実施例2)
ダイボンドフィルムBを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。
【0123】
(実施例3)
ダイボンドフィルムCを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。
【0124】
(比較例1)
ダイボンドフィルムDを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。
【0125】
(比較例2)
ダイボンドフィルムEを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。
【0126】
(ダイシングシートからダイボンドフィルムを剥離する際の剥離力の測定)
引張試験機((株)島津製作所製、商品名「AGS−J」)を用いて、測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下で、ダイシングシートからダイボンドフィルムを剥離し、その際の剥離力を測定した。その際、ダイボンドフィルムの裏打ちテープとして日東電工製、BT−315を使用した。結果を表1に示す。
また、0℃で72時間放置後、同様の試験を行い、0℃で72時間放置前後における変化率を求めた。結果を表1に示す。
なお、前記変化率は、下記式により求めた。
[(放置後の剥離力)−(放置前の剥離力)]/(放置前の剥離力)×100(%)
【0127】
(冷蔵保管後の外観評価)
作成したダイシングシート付きダイボンドフィルムを、直径が5cmの巻き芯に巻き取った。このときのダイシングシート付きダイボンドフィルムに加えた巻き取り張力は、12N/mとした。その後、0℃の冷暗所にて72時間保管した後、23℃の冷暗所に72時間保管した。再び0℃の冷暗所にて72時間保管した後、23℃の冷暗所にてダイシングシート付きダイボンドフィルムを取り出し、ダイボンドフィルムにひび割れやカケが発生しているか否かを目視にして確認した。また、ダイシングシートとダイボンドフィルムとに剥離が生じていないかを確認した。
ダイボンドフィルムにひび割れやカケが発生しておらず、且つ、ダイシングシートとダイボンドフィルムとに剥離が生じていない場合を〇、ダイボンドフィルムにひび割れやカケが発生しているか、ダイシングシートとダイボンドフィルムとに剥離が生じている場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】