特許第6073291号(P6073291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073291水性塗料組成物、及び塗装物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073291
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】水性塗料組成物、及び塗装物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20170123BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170123BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20170123BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20170123BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C09D167/00
   C09D5/02
   C09D133/08
   C09D175/04
   C08G18/80
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302V
   B05D7/24 302G
   B05D7/24 302T
【請求項の数】9
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2014-509213(P2014-509213)
(86)(22)【出願日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2013060379
(87)【国際公開番号】WO2013151143
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-85687(P2012-85687)
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】石倉 稔
(72)【発明者】
【氏名】中藪 貴司
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】平井 克典
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235487(JP,A)
【文献】 特開2009−091571(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002569(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/010539(WO,A1)
【文献】 特開2009−155409(JP,A)
【文献】 特開2004−026958(JP,A)
【文献】 特開2002−322238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
B05D 1/36
B05D 7/24
C08G 18/80
C09D 5/02
C09D 133/08
C09D 175/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A);
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B);及び
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C);
を含有する水性塗料組成物であって、
前記アクリル変性ポリエステル樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性不飽和モノマーとラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂との共重合体であり、
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)のノニオン性親水基が、ポリオキシアルキレン基であり、
前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、活性メチレン系のブロックイソシアネート基を有する、
水性塗料組成物
【請求項2】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(I):
【化1】
式中、R1、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、下記一般式(II):
【化2】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りである。)
で示されるブロックイソシアネート基、及び下記一般式(III):
【化3】
式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りであり、R6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるブロックイソシアネート基を有する、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
一般式(I)において、R1がイソプロピル基であり、そして一般式(III)において、R6がイソプロピル基である、請求項2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の水性塗料組成物の製造方法であって、
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A);
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B);及び
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C);
を含む組成物を調製する工程を含み、
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV):
【化4】
(式中、R1は、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そして各R1は、お互いに、同一であるか又は異なる。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B11)と、下記一般式(VI):
【化5】
(式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてRは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される2級アルコール(b4)とを反応させることにより得られたブロックポリイソシアネート化合物を含む、方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水性塗料組成物の製造方法であって、
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A);
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B);及び
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C);
を含む組成物を調製する工程を含み、
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V):
【化6】
(式中、R6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R7は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B12)と、下記一般式(VI):
【化7】
(式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてRは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される2級アルコール(b4)とを反応させることにより得られたブロックポリイソシアネート化合物を含む、方法。
【請求項6】
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及びアクリル系重合体微粒子の水分散体(C)を、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、それぞれ、固形分として、10〜70質量部、1〜30質量部、及び10〜60質量部含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
メラミン樹脂(D)をさらに含有する、請求項1〜3、及び6のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
被塗物を、ベースコート塗料としての、請求項1〜3、及び6〜7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物で塗装して、上記被塗物上に未硬化のベースコート塗膜を形成するステップ、次いで
上記未硬化のベースコート塗膜を有する被塗物を、クリヤー塗料で塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成するステップ、
を含む、塗装物品の製造方法。
【請求項9】
被塗物を、上塗り塗料としての、請求項1〜3、及び6〜7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物で塗装し、上記被塗物の上に上塗り塗膜を形成するステップ、
を含む、塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物、及び当該水性塗料組成物を用いた塗装物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体又は自動車部品における複層塗膜形成方法として、(i)被塗物(電着塗装された鋼板、プラスチック等)に、プライマー塗料(中塗り塗料)を塗装し、加熱により、形成された未硬化のプライマー塗膜を硬化する工程、(ii)プライマー塗膜の上にベースコート塗料を塗装し、未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、及び(iii)未硬化のベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び(iv)加熱により、未硬化のベースコート塗膜と、未硬化のクリヤー塗膜とを硬化させる工程を含む3コート2ベーク方式が知られている。
【0003】
また、自動車車体又は自動車部品における複層塗膜形成方法として、(i)被塗物にプライマー塗料を塗装し、加熱により、形成された未硬化のプライマー塗膜を硬化させる工程、(ii)プライマー塗膜の上に上塗り塗料を塗装し、未硬化の上塗り塗膜を形成する工程、及び(iii)加熱により、未硬化の上塗り塗膜を硬化させる工程を含む2コート2ベーク方式(塗料を塗装後にプレヒート(予備加熱)工程を含んでもよい)も、広く知られている。
【0004】
一般に、上記3コート2ベーク方式は、光輝性顔料を含有するベースコート塗料を使用して、所謂メタリック色の塗膜を形成する場合に採用され、上記2コート2ベーク方式は、着色顔料を含有する上塗り塗料を使用して、白色、黒色等の所謂ソリッド色の塗膜を形成する場合に採用される。
【0005】
これに対し、近年、ライン工程の短縮及び省エネルギーの観点から、プライマー塗料を塗装後の加熱工程を省略し、(i)被塗物にプライマー塗料を塗装し、未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、(ii)未硬化のプライマー塗膜の上にベースコート塗料を塗装し、未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、(iii)未硬化のベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び(iv)加熱により、積層された塗膜を硬化させる工程を含む3コート1ベーク方式が検討されてる。
【0006】
また、(i)被塗物にプライマー塗料を塗装し、未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、(ii)未硬化のプライマー塗膜の上に上塗り塗料を塗装し、未硬化の上塗り塗膜を形成する工程、及び(iii)加熱により、積層された塗膜を硬化させる工程を含む2コート1ベーク方式、並びに(i)被塗物にベースコート塗料を塗装し、未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、(ii)未硬化のベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び(iii)加熱により、積層された塗膜を硬化させる工程を含む2コート1ベーク方式(塗料を塗装後にプレヒート(予備加熱)工程を入れてもよい)が検討されている。上記3コート1ベーク方式及び2コート1ベーク方式において、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、ベースコート塗料及び上塗り塗料として、水性塗料を用いたものが特に求められている。
【0007】
しかし、上記3コート1ベーク方式又は2コート1ベーク方式では、水性ベースコート塗膜(水性上塗り塗膜)とプライマー塗膜との間、水性ベースコート塗膜(水性上塗り塗膜)とクリヤー塗膜との間等において、各塗膜が混じり合い、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性が低下する場合があった。
【0008】
さらに、塗色ごとに多数の品種が必要となるベースコート塗料(上塗り塗料)においては、自動車車体用塗料と自動車部品用塗料とを共通化することにより、コスト削減及び色の一致性向上が可能となる。一方、自動車部品の材料であるプラスチックの耐熱性(及び/又は省エネルギー)を考慮すると、従来の120〜160℃よりもより低温で硬化する塗料、及び複層塗膜形成方法が求められる。
しかし、従来の水性ベースコート塗料(水性上塗り塗料)及び複層塗膜形成方法においては、低温で加熱すると、複層塗膜の硬化が不十分であり、複層塗膜の付着性、耐水性等が低下する場合があった。
【0009】
例えば、特許文献1には、基材上に、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を、順次ウェットオンウェットで形成する3コート1ベーク方式の塗膜形成方法において、中塗り塗膜を形成する中塗り塗料及びベース塗膜を形成するベース塗料が、アミド基含有アクリル樹脂及び硬化剤を含有するものであり、かつ中塗り塗料中に含まれる硬化剤が、脂肪族イソシアナート系の活性メチレンブロックイソシアナートからなる塗膜形成方法が記載されている。
【0010】
特許文献1には、硬化剤である該脂肪族イソシアナート系の活性メチレンブロックイソシアナートが、平均官能基数が3よりも大きいものである場合に、アミド基含有アクリル樹脂によって、粘性制御効果が発揮され、3コート1ベーク法で塗装した場合における各塗膜層間の界面でのなじみや反転が制御され、さらに、中塗り塗膜の硬化がベース塗膜及びクリヤー塗膜よりも先に開始し、充分なフロー性を確保することができ、電着塗膜の肌荒れに対する下地隠蔽性を優れたものとなるため、仕上がり外観に優れ、かつ塗膜物性、特に耐チッピング性に優れた複層塗膜が得られることが記載されている。
【0011】
特許文献2には、第1水性塗料、第2水性塗料、及びクリヤ塗料を順次ウェットオンウェットで塗装して複層塗膜を形成するための第2水性塗料用の水性塗料組成物が記載されている。上記水性塗料組成物は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部当り、(a)多官能性ビニルモノマー0.5〜10質量%(全モノマー成分に対する量)、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、及び他のビニル重合性モノマーを含有するモノマー混合物を乳化重合して得られるエマルション樹脂40〜60質量部、(b)アミド基含有水溶性アクリル樹脂1〜5質量部、(c)ウレタンエマルション5〜20質量部、及び(d)硬化剤15〜35質量部を含有する。
【0012】
特許文献2には、エマルション粒子内の架橋構造により、ウェットオンウェットで塗装された際に、クリヤー塗料成分が下層塗膜に浸入すること、すなわち、下層塗膜と上層塗膜との間で混層が生ずることが制御され、その結果、複層塗膜の形成の際の低エネルギー化が可能となり、外観及び耐水性に優れた複層塗膜が得られることが記載されている。また、特許文献2には、第2水性塗料が、(b)アミド基含有水溶性アクリル樹脂、(c)ウレタンエマルション及び(d)硬化剤の含有により貯蔵安定性にも優れることが記載されている。
【0013】
特許文献3には、プラスチック基材上に、水性プライマー、水性ベースコート塗料、クリヤー塗料を塗装し、3層を100℃以下の温度で同時に焼付けする塗装方法において、水性プライマーが、水性ポリオレフィン系樹脂及び水性アクリル系樹脂を含有するものであり、水性ベースコート塗料が、水性ポリウレタン樹脂、水酸基を含有する水性アクリル樹脂及び/又は水性ポリエステル樹脂並びにメラミン樹脂を含有するものであって、該メラミン樹脂が、ブチル/メチル混合エーテル化メラミン樹脂であり且つ1500〜3000の範囲内の重量平均分子量を有し、さらにクリヤー塗料が、水酸基含有樹脂及びイソシアネート架橋剤を含有するものであって、該イソシアネート架橋剤が、ウレトジオン構造を有するポリイソシアネート化合物とジイソシアネートの3量体以上の化合物とを含むものである場合に、付着性、耐水性及び耐久性に優れた複層塗膜を形成しうることが記載されている。
【0014】
特許文献4には、鋼板及びプラスチック基材の両方を有する基材上に、水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、形成された中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成した後、有機溶剤型クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、上記中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の三層を加熱し硬化させる複層塗膜の形成方法であって、上記水性ベース塗料が、樹脂固形分100質量%中、(a)架橋性モノマーを0.2〜20質量%含んだモノマー混合物をエマルション重合して得られるアクリル樹脂エマルションが固形分で10〜60質量%、(b)水溶性アクリル樹脂が固形分で5〜40質量%、及び(c)メラミン樹脂が固形分で20〜40質量%、(d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを塗料樹脂固形分100質量部に対して10〜40質量部含有することを特徴とする複層塗膜の形成方法において、鋼板及びプラスチック基材の外観が均一になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−153806号公報
【特許文献2】特開2007−297545号公報
【特許文献3】国際公開第2008/050778号
【特許文献4】特開2011−131135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1に記載の塗膜形成方法では、活性メチレンブロックイソシアナートの貯蔵安定性が低く、平滑性及び鮮映性の低下、硬化不足による付着性の低下が生じる場合がある。特許文献2に記載の塗膜形成方法では、中塗り塗料と水性ベースコート塗料との間、及び/又は水性ベースコート塗料とクリヤー塗料との間において、混層により、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性が低下し、そして焼付け温度が低い場合には、硬化不足により耐水性が低下する場合がある。
【0017】
特許文献3に記載の塗膜形成方法では、ベースコートの膜厚が厚く且つクリヤーコートの膜厚が薄くなった場合に、クリヤーコート塗料からベースコート塗料及びプライマー塗料に移行するポリイソシアネート化合物の量が少なくなり、硬化不足により耐水性が低下する場合がある。特許文献4に記載の塗膜形成方法では、焼付け温度が120℃未満に低下、ベースコート塗膜が厚膜化(30μm以上)、クリヤー塗膜が薄膜化(20μm未満)した場合等に、複層塗膜の硬化が不十分になるときがあった。
【0018】
従って、本発明は、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる水性塗料組成物を提供することを第1の目的とする。
【0019】
また、本発明は、複数の未硬化の塗膜を一度に加熱硬化させた場合、特に低温で一度に加熱硬化させた場合に、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成する水性塗料組成物を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定の水性塗料組成物を見いだした。
【0021】
本発明は、
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A);
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B);及び
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C);
を含有することを特徴とする水性塗料組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、ベースコート塗料として、上述の水性塗料組成物を塗装して、上記被塗物上に未硬化のベースコート塗膜を形成するステップ、次いで上記未硬化のベースコート塗膜上にクリヤコート塗料を塗装するステップを含む、塗装物品の製造方法を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、被塗物に、上塗り塗料として、上述の水性塗料組成物を塗装するステップを含む、塗装物品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水性塗料組成物は、複数の未硬化の塗膜を一度に加熱硬化させた場合、特に低温で一度に加熱硬化させた場合に、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の水性塗料組成物、及び塗装物品の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0026】
[アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)]
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)は、水性媒体に分散されているアクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を意味する。アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、アクリルで変性されたポリエステルを意味し、公知の方法により得られる。アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、例えば、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)及び重合性不飽和モノマー(a12)のラジカル重合、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とのエステル化反応等によって得られる。
【0027】
上記ラジカル重合は、ポリエステル樹脂中のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として、重合性不飽和モノマー(a12)をグラフト重合させる方法である。ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、特に限定されず、例えば、公知の方法でポリエステル樹脂を得た後、末端の水酸基と酸無水物含有不飽和モノマーとを反応させることによって得られる。あるいはラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分(a111)と、アルコール成分(a112)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって得られる。
【0028】
得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、後者の方法、すなわち、重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分(a111)と、アルコール成分(a112)とのエステル化反応又はエステル交換反応により製造されることが好ましい。特に、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から、重合性不飽和基を有する多塩基酸が、酸無水物基含有不飽和単量体を含むことが好ましい。
【0029】
上記酸無水物基含有不飽和単量体は、1分子中に、一又は複数の酸無水物基と、一又は複数のラジカル重合性不飽和基とを有する化合物、好ましくは酸無水物基と、ラジカル重合性不飽和基とを、それぞれ1つずつ有する化合物である。上記酸無水物基含有不飽和単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水2−ペンテン二酸、無水メチレンコハク酸、無水アリルマロン酸、無水イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸無水物、無水アセチレンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられ、そして平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から、無水マレイン酸であることが好ましい。
【0030】
酸成分(a111)は、上述の酸無水物基含有不飽和単量体以外に、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を含むことができる。
【0031】
上記脂肪族多塩基酸としては、例えば、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、並びに該脂肪族化合物の酸無水物及びエステル化物が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸と炭素数約1〜約4の低級アルキルとのエステル化反応物;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0032】
上記脂肪族多塩基酸は、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0033】
上記脂環族多塩基酸としては、1分子中に、1又は複数の脂環式構造と、2以上のカルボキシル基を有する化合物、並びに該脂環族多塩基酸の酸無水物又はエステル化物が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、主として約4〜約6員環の脂環式構造を有する。上記脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸と炭素数約1〜約4の低級アルキルとのエステル化反応物;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0034】
上記脂環族多塩基酸は、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又は4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸であることが好ましく、そして1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることがより好ましい。
【0035】
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルエステル、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0036】
上記芳香族多塩基酸は、フタル酸、イソフタル酸及びトリメリット酸、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されることが好ましい。
【0037】
また、酸成分(a111)は、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0038】
アルコール成分(a112)としては、1分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0039】
また、アルコール成分(a112)として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0040】
また、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、酸成分(a111)として、オレイン酸及びミリスチン酸等の不飽和脂肪酸を含むことができる。その場合には、不飽和脂肪酸のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として用いることができる。
【0041】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)は、得られる塗膜の平滑性及び耐水性の観点から、酸成分(a111)中の脂環族多塩基酸の含有量が、酸成分(a111)の合計量を基準として、約20〜約100モル%であることが好ましく、約25〜約95モル%であることがより好ましく、そして約30〜約90モル%であることがさらに好ましい。
【0042】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、特に限定されず、公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、酸成分(a111)及びアルコール成分(a112)を、窒素気流中、約150〜約250℃で約5〜約10時間加熱し、酸成分(a111)及びアルコール成分(a112)をエステル化又はエステル交換させることにより製造されうる。
【0043】
酸成分(a111)及びアルコール成分(a112)をエステル化反応又はエステル交換反応させる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて、又は連続して添加してもよい。また、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られたラジカル重合性不飽和基含有を反応させてハーフエステル化させ、カルボキシル基と、水酸基とを含有するポリエステル樹脂を製造することができる。また、ラジカル重合性不飽和基と、カルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂を合成した後に、当該ポリエステル樹脂に上記アルコール成分を付加させ、ラジカル重合性不飽和基と、カルボキシル基と、水酸基とを含有するポリエステル樹脂を製造することもできる。
【0044】
上記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の公知の触媒を反応系に添加することができる。
【0045】
また、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)は、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0046】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。上記油脂としては、上記脂肪酸の脂肪酸油を挙げることができる。上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)が挙げられる。
【0047】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネート;上記有機ポリイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;上記有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物;並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0048】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)と共重合可能な重合性不飽和モノマー(a12)としては、例えば、下記モノマー(i)〜(xx)等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等
【0049】
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:
イソボルニル(メタ)アクリレート等
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:
アダマンチル(メタ)アクリレート等
【0050】
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
【0051】
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
(ix)ビニル化合物:
N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等
【0052】
(xi)水酸基含有重合性不飽和モノマー:
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と、炭素数約2〜約8の2価アルコールとのモノエステル;(メタ)アクリル酸と、炭素数約2〜約8の2価アルコールとのモノエステルのε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等
【0053】
(xii)含窒素重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
【0054】
(xiii)重合性不飽和基を1分子中に2以上有する重合性不飽和モノマー:
アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
(xiv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
【0055】
(xv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
(xvi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等
【0056】
(xvii)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等
【0057】
(xviii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:
2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等
【0058】
(xix)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:
4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等
【0059】
(xx)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素原子数約4〜約7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0060】
本明細書において、「重合性不飽和基」は、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。上記重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0061】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0062】
アクリル酸変性ポリエステル樹脂(a1)は、ポリエステル樹脂とのグラフトのしやすさ、アクリル酸変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)の安定性等の観点から、重合性不飽和モノマー(a12)として、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと、(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーとを含むことが好ましい。
【0063】
アクリル酸変性ポリエステル樹脂(a1)は、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを、重合性不飽和モノマー合計質量を基準として、
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを、好ましくは約5〜約50質量%、より好ましくは約7〜約45質量%、そしてさらに好ましくは約15〜約40質量%、
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを、好ましくは約10〜約60質量%、より好ましくは約15〜約55質量%、そしてさらに好ましくは約20〜約50質量%、
含む。
【0064】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、例えば、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)及び重合性不飽和モノマー(a12)を、公知の方法で共重合することにより得られる。
【0065】
具体的には、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、例えば、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)、重合性不飽和モノマー(a12)、ラジカル開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤を添加し、約90〜約160℃で約1〜約5時間加熱することにより得られる。また、発熱が大きく温度が制御しにくい場合には、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)だけを先に添加し、次いで、他の原料を時間をかけながら添加してもよい。
【0066】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等が挙げられる。上記有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。また、上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類等が挙げられる。
【0067】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を安定的に製造する観点から、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂(a11)及び重合性不飽和モノマー(a12)の合計100質量部を基準として、重合性不飽和モノマー(a12)を、好ましくは約10〜約95質量部、より好ましくは約30〜約90質量部、そしてさらに好ましくは約65〜約85質量部の範囲で含む。
【0068】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、好ましくは約0〜約200mgKOH/g、より好ましくは約10〜約100mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約20〜約60mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0069】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、カルボキシル基をさらに有してもよく、その場合には、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、好ましくは約0.1〜約55mgKOH/g、より好ましくは約5〜約50mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約10〜約30mgKOH/gの酸価を有する。
【0070】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、好ましくは約1,000〜約20,000、より好ましくは約3,000〜約18,000、そしてさらに好ましくは約5,000〜約15,000の数平均分子量を有する。
【0071】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量が既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0072】
具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定する。
【0073】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を中和し、次いで水性媒体に分散することにより、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)が得られる。中和に用いる中和剤としては、アミン類、アンモニア等が挙げられる。上記アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられ、そしてトリエチルアミン及びジメチルエタノールアミンが好適である。アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)の中和度は、特に限定されるものではないが、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)中のカルボキシル基に対して、通常約0.3〜約1.0当量の範囲で中和される。
【0074】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を分散すべき水性媒体としては、水であってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。上記有機溶剤としては、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)の水性媒体中での安定性に支障を来さない有機溶剤である限り、公知のものをいずれも使用できる。
【0075】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤が好ましい。具体的には、上記有機溶剤として、例えば、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0076】
また、上記有機溶剤としては、水と混合しない不活性有機溶剤もアクリル変性ポリエステル樹脂(a1)の水性媒体中での安定性に支障を来たさない範囲で使用可能である。上記水と混合しない不活性有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられる。アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)は、環境保護の観点から、上記有機溶剤を、水性媒体の好ましくは50質量%以下の量で含む。
【0077】
アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)の中和及び水性媒体への分散は、公知の方法に従うことができ、例えば、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を、中和剤を含有する水性媒体中に、撹拌下で徐々に添加する方法、アクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を中和剤で中和した後、撹拌下で、水性媒体を中和されたアクリル変性ポリエステル樹脂(a1)に添加するか、又はこの中和されたアクリル変性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体に添加する方法等が挙げられる。
【0078】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B)」と省略する場合がある)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基がノニオン性親水基で修飾され、残りの一部又は全部のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されている化合物である。
本発明の水性塗料組成物では、ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、水性塗料組成物に含まれる水性媒体に分散されているか、又は溶解されている。
【0079】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)のイソシアネート基に、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)及びブロック剤(b3)を反応させることにより得られる(以下、このようにして得られたノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物を「ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B1)」と称する場合がある)。
【0080】
1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)(以下、「ポリイソシアネート化合物(b1)」と称する場合がある)のイソシアネート基と、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)(以下、「活性水素含有化合物(b2)」と称する場合がある)と、ブロック剤(b3)とを反応させる場合、ポリイソシアネート化合物(b1)、活性水素含有化合物(b2)及びブロック剤(b3)の反応の順序は、特に限定されない。
【0081】
具体的には、ポリイソシアネート化合物(b1)のイソシアネート基の一部に活性水素含有化合物(b2)を反応させた後、残りのイソシアネート基をブロック剤(b3)でブロックすることができ、そしてポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部をブロック剤(b3)でブロックした後、残りのイソシアネート基に活性水素含有化合物(b2)を反応させることができ、そしてポリイソシアネート化合物(b1)のイソシアネート基に活性水素含有化合物(b2)及びブロック剤(b3)を、一度に反応させることができる。
【0082】
[1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)]
1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0083】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0084】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−若しくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0085】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)若しくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)若しくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等が挙げられる。
【0087】
また、上記誘導体としては、例えば、上記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等が挙げられる。
【0088】
ポリイソシアネート化合物(b1)としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)の加熱時の黄変が発生しにくい観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びそれらの誘導体が好ましく、そして形成される塗膜の柔軟性の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がより好ましい。
【0089】
また、ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記ポリイソシアネート及び/又はその誘導体と、ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させることにより生成したプレポリマーであってもよい。上記ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物(b1)は、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーのポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0090】
ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及びブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、好ましくは約300〜約20,000、より好ましくは約400〜約8,000、そしてさらに好ましくは約500〜約2,000の数平均分子量を有する。
【0091】
また、ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及びブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子あたり、約2〜約100個の、平均イソシアネート官能基数を有することが好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性を高める観点から、平均イソシアネート官能基数は、約3以上であることが好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造時にゲル化を防ぐ観点から、上記平均イソシアネート官能基数は、約20以下であることが好ましい。
【0092】
[ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)]
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物が挙げられる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、並びにそれらの任意の組み合わせ、例えば、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基が挙げられる。なかでも、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性の観点から、活性水素含有化合物(b2)は、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(b21)であることが好ましい。
【0093】
ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(b21)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、約3以上、好ましくは約5〜約100、より好ましくは約8〜約45の連続するオキシエチレン基(ポリオキシエチレン基)を有することが好適である。
【0094】
また、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(b21)は、連続するオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。上記オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシヘキシレン基等が挙げられる。ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(b21)における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)を水分散させた後の貯蔵安定性の観点から、約20〜約100モル%の範囲内であることが好ましく、約50〜約100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が約20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0095】
また、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、好ましくは約200〜約2,000の数平均分子量を有する。上記数平均分子量は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性の観点から、約300以上であることがより好ましく、そして約400であることがさらに好ましい。上記数平均分子量は、形成される塗膜の耐水性の観点から、約1,500以下であることがより好ましく、そして約1,200以下であることがさらに好ましい。
【0096】
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(b2)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等のω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、そしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0097】
なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体を意味し、それらのブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれも含まれる。
【0098】
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、上記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
【0099】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、活性水素含有化合物(b2)を反応させる場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性及び硬化性、並びに形成される塗膜の付着性、平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)及び活性水素含有化合物(b2)を、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物(b2)中の活性水素のモル数が約0.03〜約0.6モルの範囲にあるように反応させることが好ましい。
【0100】
活性水素含有化合物(b2)中の活性水素のモル数は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の硬化性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、約0.4以下であることがより好ましく、そして約0.3以下であることがさらに好ましい。活性水素含有化合物(b2)中の活性水素のモル数は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の付着性、平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、約0.04以上であることがより好ましく、約0.05以上であることがさらに好ましい。
【0101】
[ブロック剤(b3)]
ブロック剤(b3)としては、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系イミン系、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ブロック剤(b3)の具体例を、下記に示す。
【0102】
(1)フェノール系;
フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等
(2)アルコール系;
エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等
(3)活性メチレン系;
マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸エステル等、
(4)メルカプタン系;
ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等
【0103】
(5)酸アミド系;
アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等
(6)酸イミド系;
コハク酸イミド、マレイン酸イミド等
(7)イミダゾール系;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール等
(8)尿素系;
尿素、チオ尿素、エチレン尿素等
【0104】
(9)オキシム系;
ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等
(10)カルバミン酸系;
N−フェニルカルバミン酸フェニル等
(11)アミン系;
ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等
【0105】
ブロック剤(b3)によるイソシアネート基のブロック化反応には、所望により反応触媒を用いることができる。上記反応触媒としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が挙げられる。
【0106】
上記オニウム塩は、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩であることが好ましい。上記反応触媒は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)及びブロック剤(b3)の合計固形分質量を基準として、好ましくは約10〜約10,000ppmの範囲内、そしてより好ましくは約20〜約5,000ppmの範囲内で用いられる。
【0107】
また、ブロック剤(b3)によるイソシアネート基のブロック化は、所望により、溶剤の存在下で、約0〜約150℃で実施することができる。上記溶媒は、非プロトン性溶剤であることが好ましく、そしてエステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等がより好ましい。反応が予定通り進行した後に、酸成分を添加して、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
【0108】
ブロック剤(b3)によるイソシアネート基のブロック化反応において、ブロック剤(b3)の量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルに対して、好ましくは約0.1〜約3モル、より好ましくは約0.2〜約2モルの比率で添加される。また、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基と反応しなかったブロック剤は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
ブロック剤(b3)は、形成される塗膜の低温硬化性の観点から、活性メチレン系であることが好ましい。
【0109】
ブロックポリイソシアネート化合物(B1)は、水性塗料組成物の安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(B11)又はブロックポリイソシアネート化合物(B12)であることが好ましい。
【0110】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B11)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B11)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B11)」と称する場合がある)は、下記一般式(IV):
【化1】
(式中、R1は、独立して、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表し、そして、R1は、お互いに、同一であるか又は異なる。)
で示されるブロックイソシアネート基、及びノニオン性親水基を有する。
【0111】
ブロックポリイソシアネート化合物(B11)は、ブロック剤(b3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系化合物を使用できる点から、R1が、炭素数約1〜約3のアルキル基であることが好ましい。
【0112】
また、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B1)と他の塗料成分との相溶性の観点から、R1は、炭素数約2又は約3のアルキル基であることが好ましく、そして得られるブロックポリイソシアネート化合物(B1)の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、R1は、イソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0113】
ブロックポリイソシアネート化合物(B11)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性水素含有化合物(b2)と、ブロック剤(b3)としての、炭素数約1〜約12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得られる。
【0114】
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル及びマロン酸ジtert−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル及びマロン酸ジイソプロピルがより好ましく、そしてマロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
【0115】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B12)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B12)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B12)」と称する場合がある)は、下記一般式(V):
【化2】
(式中、R6及びR7は、独立して、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、及びノニオン性親水基を有する。
【0116】
ブロックポリイソシアネート化合物(B12)は、ブロック剤(b3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系の化合物を使用できる点から、R6及びR7が、炭素数約1〜約3のアルキル基であることが好ましい。
【0117】
また、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B1)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、R6及びR7は、炭素数約2又は約3のアルキル基であることが好ましく、そして得られるブロックポリイソシアネート化合物(B1)の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、R6及びR7は、イソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0118】
ブロックポリイソシアネート化合物(B12)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1)と、活性水素含有化合物(b2)と、ブロック剤(b3)としての、炭素数約1〜約12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステル又は炭素数約1〜約12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させることによって得られる。ブロック剤(b3)は、炭素数約1〜約12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルであることが好ましい。
【0119】
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記イソブチリル酢酸エステルとしては、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
【0120】
また、上記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
【0121】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、水中での安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)に2級アルコール(b4)をさらに反応させることによって得られた、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(以下、「ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B2)と称する」であることが好ましい。
【0122】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B2)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B2)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B2)」と称する場合がある)は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)と、下記一般式(VI):
【0123】
【化3】
(式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数約1〜約12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される2級アルコール(b4)とを反応させることによって得られる。
【0124】
[2級アルコール(b4)]
2級アルコール(b4)は、一般式(VI)で示される化合物であり、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)と、2級アルコール(b4)との反応性を高める観点から、R2はメチル基であることが好ましい。また、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数が多いと、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B2)の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、R3は炭素数約1〜約3のアルキレン基であることが好ましく、そしてR4及びR5はメチル基であることが好ましい。
【0125】
2級アルコール(b4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(b4)の反応後に、未反応の2級アルコール(b4)の一部又は全部を蒸留除去することが比較的容易であることから、2級アルコール(b4)は、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールであることが好ましい。
【0126】
ブロックポリイソシアネート化合物(B2)は、水性塗料組成物の安定性の観点から、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B21)又はノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B22)であることが好ましい。
【0127】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B21)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B21)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B21)」と称する場合がある)は、例えば、下記一般式(IV):
【化4】
(式中、R1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そして各R1は、お互いに同一であるか、又は異なっている。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B11)と、2級アルコール(b4)とを反応させることによって得られる。
【0128】
上記反応により、ブロックポリイソシアネート化合物(B11)のR1の一方又は両方が、下記一般式(VII):
【化5】
(式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数約1〜約12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される基に置換される。
【0129】
上記反応により得られたブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I):
【化6】
(式中、R1、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数約1〜約12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、及び/又は下記一般式(II):
【化7】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りである。)
で示されるブロックイソシアネート基を有する。
【0130】
ブロックポリイソシアネート化合物(B11)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(B11)のR1の少なくとも一方を、一般式(VII)で示される基に置換できる方法であれば特に限定されない。上記反応としては、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(B11)のR1の少なくとも一方に由来するアルコールの一部又は全部を系外に蒸留除去することにより反応を促進させて、一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B21)を得る方法が好ましい。
【0131】
上記方法では、約20〜約150℃、そして好ましくは約75〜約95℃の温度で、所望により減圧し、約5分間〜約20時間、そして好ましくは約10分間〜約10時間、上記アルコールの一部又は全部を除去するのが一般的である。上記温度が低すぎると、ブロックポリイソシアネート化合物(B11)のアルコキシ基の交換反応が遅く、製造効率が低下し、そして上記温度が高すぎると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(B)が分解し、硬化性が低下する場合がある。
【0132】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B22)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B22)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(B22)」と称する場合がある)は、例えば、一般式(V):
【化8】
(式中、R6及びR7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B12)と、2級アルコール(b4)とを反応させることによって得られる。
【0133】
上記反応により、ブロックポリイソシアネート化合物(B12)のR7が、下記一般式(VII):
【化9】
(式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される基に置換される。
【0134】
上記反応により得られたブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(III):
【化10】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りであり、R6は、炭素数約1〜約12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基を有する。
【0135】
ブロックポリイソシアネート化合物(B12)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(B12)のR7を、一般式(VII)で示される基に置換できる方法であれば特に限定されない。上記反応としては、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(B12)中のR7に由来するアルコールの一部又は全部を系外に蒸留除去することにより反応を促進させて、一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B22)を得る方法が好ましい。
【0136】
上記方法では、約20〜約150℃、そして好ましくは約75〜約95℃の温度で、所望により減圧し、約5分間〜約20時間、そして好ましくは約10分間〜約10時間、上記アルコールの一部又は全部を除去するのが一般的である。上記温度が低すぎると、ブロックポリイソシアネート化合物(B12)のアルコキシ基の交換反応が遅く、製造効率が低下し、一方、上記温度が高すぎると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(B2)が分解し、硬化性が低下する場合がある。
【0137】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B2)の製造における、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(b4)の比率は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び製造効率の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(b4)が約5〜約500質量部の範囲内であることが好ましく、約10〜約200質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0138】
2級アルコール(b4)の比率が約5質量部未満になると、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(b4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、2級アルコール(b4)の比率が約500質量部を超えると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(B2)の濃度が低くなり、製造効率が低下する場合がある。
【0139】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(b4)の反応では、ブロックポリイソシアネート化合物(B2)の分子量を調整するために、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(b4)に、ポリオール化合物を加えてから上記除去操作を行ってもよい。
【0140】
ブロックポリイソシアネート化合物(B21)及びブロックポリイソシアネート化合物(B22)が、水中での安定性に優れる理由としては、それらがノニオン性親水基を有するため、水中で比較的安定に存在し、またそれらが分岐構造を有する炭化水素基を有するために、ブロックイソシアネート基が低極性化し加水分解されにくくなるためと推察される。
【0141】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、他の塗料成分との相溶性、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、付着性、耐水性及び耐チッピング性等の観点から、好ましくは約600〜約30,000の数平均分子量を有する。上記数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性、並びに形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、約10,000以下であることがより好ましく、そして約5,000以下であることがさらに好ましい。また、上記数平均分子量は、形成される塗膜の付着性、耐水性及び耐チッピング性の観点から、約900以上であることがより好ましく、そして約1,000であることがさらに好ましい。
【0142】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤との混合物であってもよい。上記界面活性剤は、水性塗料組成物の安定性の観点から、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0143】
[アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)]
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)は、水性媒体に分散されているアクリル系重合体微粒子を意味する。アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)は、例えば、公知の重合性不飽和モノマーを、公知の方法、例えば、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により共重合させることによって製造することができる。
【0144】
また、アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、少なくともその1種として、水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C1)を含有することが好ましい。
【0145】
水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーと、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとを、公知の方法、例えば、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により共重合させることによって製造することができる。
【0146】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1以上有する化合物である。上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)において、「モノマー(xi)」として例示されるもの、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0147】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)において、「モノマー(i)〜(x)、(xii)〜(xx)」として例示されるもの、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0148】
水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C1)は、その構成成分として、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーを、モノマー成分の合計質量を基準として、好ましくは約0.5〜約50質量%、より好ましくは約1.0〜約40質量%、そしてさらに好ましくは約1.5〜約30質量%含む。
【0149】
水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C1)を構成する水酸基含有アクリル系重合体微粒子は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、好ましくは約1〜約200mgKOH/g、より好ましくは約5〜約150mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約10〜約100mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0150】
また、上記水酸基含有アクリル系重合体微粒子は、塗料の貯蔵安定性、形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、酸価を有してもよい。その場合には、上記水酸基含有アクリル系重合体微粒子は、好ましくは約0.1〜約55mgKOH/g、より好ましくは約3〜約50mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約7〜約45mgKOH/gの酸価を有する。
【0151】
また、水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C1)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から、コア・シェル型であることが好ましい。
【0152】
上記コア・シェル型の水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体としては、コア部が共重合体(I)(以下、「コア部共重合体(I)」と称する場合がある)であり、シェル部が共重合体(II)(以下、「シェル部共重合体(II)」と称する場合がある)である、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)が好ましい。
【0153】
コア部共重合体(I)は、重合性不飽和基を1分子中に2以上有する重合性不飽和モノマー(I1)(以下、「モノマー(I1)」と称する場合がある)と、重合性不飽和基を1分子中に1つ有する重合性不飽和モノマー(I2)(以下、「モノマー(I2)」と称する場合がある)を、共重合成分として含む。また、シェル部共重合体(II)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)及びその他の重合性不飽和モノマー(II3)を、共重合成分として含む。
【0154】
コア部共重合体(I)を形成する、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(I1)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0155】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(I1)は、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有し、コア部共重合体(I)の所望の架橋度に応じて、適宜含まれうる。コア部共重合体(I)は、コア部共重合体(I)を構成する共重合成分の合計質量に基づいて、重合性不飽和基を1分子中に2以上有する重合性不飽和モノマー(I1)を、共重合成分として、好ましくは約0.05〜約20質量%、より好ましくは約0.1〜約10質量%、そしてさらに好ましくは約0.2〜約7質量%の範囲で含む。
【0156】
コア部共重合体(I)を形成する、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(I2)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(I1)と共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0157】
重合性不飽和基を1分子中に1つ有する重合性不飽和モノマー(I2)の具体例としては、例えば、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)において記載した、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして例示した重合性不飽和モノマーのうち、重合性不飽和基を1分子中に2以上有する重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるモノマー(i)〜(xii)、(xiv)〜(xx)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0158】
形成される塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(I2)が、少なくともその1種として疎水性重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0159】
本明細書において、上記疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が約4以上、好ましくは約6〜約18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。
【0160】
上記疎水性重合性不飽和モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0161】
形成される複層塗膜の鮮映性等の観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の重合性不飽和モノマーが好ましい。
【0162】
コア部共重合体(I)が、共重合成分として上記疎水性重合性不飽和モノマーを含む場合には、コア部共重合体(I)を構成する共重合成分の合計質量に基づいて、疎水性重合性不飽和モノマーを、共重合成分として、好ましくは約5〜約90質量%、より好ましくは約20〜約85質量%、そしてさらに好ましくは約40〜約75質量%含む。コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の水性媒体中における安定性、並びに得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性等に優れる観点からである。
【0163】
シェル部共重合体(II)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とする。
【0164】
シェル部共重合体(II)を形成する、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)は、得られるコア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)に、ブロックポリイソシアネート化合物(B)と架橋反応する水酸基を導入することによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の水性媒体中における安定性を向上する機能を有する。
【0165】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数約2〜約8の2価アルコールとのモノエステル;(メタ)アクリル酸と炭素数約2〜約8の2価アルコールとのモノエステルのε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0166】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されることが好ましく、そして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0167】
シェル部共重合体(II)は、シェル部共重合体(II)を構成する共重合成分の合計質量を基準として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)を、共重合成分として、好ましくは約1〜約40質量%、より好ましくは約4〜約25質量%、そしてさらに好ましくは約7〜約19質量%の範囲で含む。コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点からである。
【0168】
シェル部共重合体(II)を構成する、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)としては、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)において例示される、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(x)が挙げられる。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。シェル部が、共重合成分としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)を含むことにより、得られるコア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の水性媒体中における安定性が確保される。
【0169】
シェル部共重合体(II)は、シェル部共重合体(II)を構成する共重合成分の合計質量を基準として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)を、共有合成分として、好ましくは約0.1〜約30質量%、より好ましくは約2〜約25質量%、そしてさらに好ましくは約3〜約19質量%含む。コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性の観点からである。
【0170】
シェル部共重合体(II)を形成する、その他の重合性不飽和モノマー(II3)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)以外の重合性不飽和モノマーである。その他の重合性不飽和モノマー(II3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0171】
シェル部共重合体(II)を形成する、その他の重合性不飽和モノマー(II3)としては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、共重合成分として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを含まず、シェル部共重合体(II)が未架橋型であることが好ましい。
【0172】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)における、コア部共重合体(I)/シェル部共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性の向上の観点から、固形分質量比で、約5/95〜約95/5であることが好ましく、約50/50〜約85/15であることがより好ましく、そして約60/40〜約80/20であることがさらに好ましい。
【0173】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性等の向上の観点から、好ましくは約1〜約200mgKOH/g、より好ましくは約5〜約150mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約10〜約100mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0174】
また、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、塗料の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、酸価を有してもよい。その場合には、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、好ましくは約0.1〜約55mgKOH/g、より好ましくは約3〜約50mgKOH/g、そしてさらに好ましくは約7〜約45mgKOH/gの酸価を有する。
【0175】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2以上有する重合性不飽和モノマー(I1)や約0〜約20質量%と、重合性不飽和基を1分子中に1つ有する重合性不飽和モノマー(I2)約80〜約100質量%とからなるモノマー混合物を乳化重合して、コア部共重合体(I)のエマルションを得た後、当該エマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)約1〜約40質量%と、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)約0.1〜約30質量%と、その他の重合性不飽和モノマー(II3)約30〜約98.9質量%とからなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって得られる。
【0176】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、公知の方法により行うことができる。例えば、上記乳化重合は、界面活性剤の存在下で、上述のモノマーの混合物に重合開始剤を添加することにより実施されうる。
【0177】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0178】
また、上記アニオン性界面活性剤として、1分子中に、アニオン性基と、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中に、アニオン性基と、ラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤が挙げられ、反応性アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0179】
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができ、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるために好ましい。上記スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
【0180】
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩において、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基とを有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基とを有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0181】
上記乳化重合は、全モノマーの合計質量を基準にして、上記界面活性剤を、反応系に、好ましくは約0.1〜約15質量%、より好ましくは約0.5〜約10質量%、そしてさらに好ましくは約1〜約5質量%添加することにより実施される。
【0182】
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。また、上記重合開始剤に、所望により、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤として用いることができる。
【0183】
上記乳化重合は、全モノマーの合計質量を基準にして、好ましくは約0.1〜約5質量%、そしてより好ましくは約0.2〜約3質量%の上記重合開始剤を反応系に添加することにより実施される。上記重合開始剤は、特に制限されず、その種類及び量等に応じて適宜添加されうる。例えば、あらかじめモノマー混合物又は水性媒体に重合開始剤を添加してもよく、あるいは重合時に重合開始剤を反応系に一括して添加又は滴下することができる。
【0184】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、例えば、コア部共重合体(I)のエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)及びその他の重合性不飽和モノマー(II3)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって得られる。
【0185】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、所望により、上記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、上記モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、上記モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが好ましい。上記モノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0186】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、例えば、上記モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に反応系に滴下し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法により、コア部共重合体(I)の周囲にシェル部共重合体(II)を形成する。そのようにして得られるコア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(I1)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(I2)の共重合体(I)のコア部と、水酸基含有重合性不飽和モノマー(II1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(II2)及びその他の重合性不飽和モノマー(II3)の共重合体(II)のシェル部とを有する複層構造を有する。
【0187】
また、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、例えば、コア部共重合体(I)を得る工程と、シェル部共重合体(II)を得る工程との間に、他の樹脂層を形成する重合性不飽和モノマー(単体、又は2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層又はそれ以上の層を含むことができる。
【0188】
なお、本発明において、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア・シェル型構造」は上記コア部とシェル部とを有する構造を意味するものである。
【0189】
上記コア・シェル型構造は、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。また、上記コア・シェル型構造における多層構造の概念は、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
【0190】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)は、一般に約10〜約1,000nm、好ましくは約30〜約500nm、そしてより好ましくは約50〜約200nmの範囲内の平均粒径を有する。
【0191】
本明細書において、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0192】
コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の機械的安定性を向上させるために、コア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが好ましい。上記中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア水、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記中和剤は、中和後のコア・シェル型水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C11)のpHが約6.5〜約9.0となるような量で用いられることが好ましい。
【0193】
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物は、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)及びアクリル系重合体微粒子の水分散体(C)を含有する水性塗料組成物である。
【0194】
本発明の水性塗料組成物において、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)及びアクリル系重合体微粒子の水分散体(C)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、下記の範囲内にあることができる。
【0195】
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A):
好ましくは約10〜約70部、より好ましくは約15〜約60部、そしてさらに好ましくは約20〜約55部
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B):
好ましくは約1〜約30部、より好ましくは約2〜約20部、そしてさらに好ましくは約3〜約15部
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C):
好ましくは約10〜約60部、より好ましくは約20〜約50部、そしてさらに好ましくは約25〜約45部
【0196】
また、水性塗料組成物は、ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤をさらに含むことができる。上記硬化剤としては、公知の硬化剤が挙げられ、特に、アミノ樹脂が好適である。
【0197】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる、部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。上記アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0198】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、アルコールで、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0199】
上記アミノ樹脂としては、メラミン樹脂(D)が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0200】
また、メラミン樹脂(D)は、得られる塗膜の耐水性の観点から、好ましくは約400〜約6,000、より好ましくは約500〜約4,000、そしてさらに好ましくは約600〜約3,000の重量平均分子量を有する。
【0201】
メラミン樹脂(D)は、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等の商品名で市販されている。
【0202】
本発明の水性塗料組成物がメラミン樹脂(D)を含む場合には、水性塗料組成物は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、メラミン樹脂(D)を、通常約1〜約50質量部、好ましくは約5〜約40質量部、そしてより好ましくは約7〜約30質量部の範囲で含む。
【0203】
本発明の水性塗料組成物は、ポリウレタン樹脂をさらに含有してもよい。上記ポリウレタン樹脂としては、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。上記水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、及び芳香族ジイソシアネート化合物、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるジイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオール、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるポリオール化合物とを反応させたものが挙げられる。
【0204】
具体的には、例えば、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択されるジイソシアネートと、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオール、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるジオールと、低分子量ポリヒドロキシ化合物と、ジメチロールアルカン酸とを反応させてウレタンプレポリマーを作製し、上記ウレタンプレポリマーを3級アミンで中和し、中和されたウレタンプレポリマーを水中に乳化分散させ、所望によりポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤、停止剤等を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させたものが挙げられる。当該方法により、通常、平均粒径が約0.001〜約3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0205】
本発明の水性塗料組成物が、上記水酸基含有ウレタン樹脂を含む場合には、水性塗料組成物は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、上記水酸基含有ウレタン樹脂を、通常約1〜約50質量部、好ましくは約5〜約40質量部、そしてより好ましくは約7〜約30質量部の範囲内で含む。
【0206】
本発明の水性塗料組成物は、顔料をさらに含有することが好ましい。上記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本発明の水性塗料組成物は、着色顔料及び光輝性顔料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0207】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0208】
本発明の水性塗料組成物が上記着色顔料を含有する場合には、水性塗料組成物は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、上記着色顔料を、通常約1〜約150質量部、好ましくは約3〜約130質量部、そしてより好ましくは約5〜約110質量部の範囲で含む。
【0209】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄等で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0210】
上記光輝性顔料は、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン、酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、及び酸化チタン、酸化鉄等で被覆された雲母であることが好ましく、そしてアルミニウムであることがより好ましい。上記アルミニウムの例は、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムである。
【0211】
本発明の水性塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合には、水性塗料組成物は、上記光輝性顔料を、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常約1〜約50質量部、好ましくは約2〜約30質量部、そしてより好ましくは約3〜約20質量部の範囲で含む。
【0212】
本発明の水性塗料組成物は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び耐ワキ性向上等の観点から、疎水性溶媒をさらに含有することが好ましい。
上記疎水性溶媒は、20℃において、好ましくは約10g以下、より好ましくは約5g以下、そしてさらに好ましくは約1g以下の、100gの水に対する溶解度を有する。
【0213】
上記疎水性溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0214】
本発明の水性塗料組成物が疎水性溶媒を含有する場合には、水性塗料組成物は、上記疎水性溶媒を、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、一般に約2〜約100質量部、好ましくは約5〜約80質量部、そしてより好ましくは約8〜約60質量部の範囲で含む。
【0215】
また、本発明の水性塗料組成物は、所望により、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤をさらに含有することができる。
【0216】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0217】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOL ASE−60」、「ACRYSOL TT−615」、「ACRYSOL RM−5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0218】
上記会合型増粘剤はまた市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOL RM−8W」、「ACRYSOL RM−825」、「ACRYSOL RM−2020NPR」、「ACRYSOL RM−12W」、「ACRYSOL SCT−275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。上記ポリアマイド系増粘剤としては、楠本化成社製の「AQ−630」、「AQ−870」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0219】
本発明の水性塗料組成物が上記増粘剤を含有する場合には、水性塗料組成物は、上記増粘剤を、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常約0.01〜約15質量部、好ましくは約0.05〜約10質量部、そしてより好ましくは約0.1〜約5質量部の範囲で含む。
【0220】
[水性塗料組成物の調整]
本発明の水性塗料組成物は、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)及びアクリル系重合体微粒子の水分散体(C)、並びに所望によるブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤、ポリウレタン樹脂、顔料、疎水性溶媒及びその他の塗料用添加剤を、公知の方法により混合及び/又は分散することによって調製することができる。また、上記水性媒体としては、脱イオン水、脱イオン水と親水性有機溶媒との混合物等が挙げられる。
【0221】
上記親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0222】
本発明の水性塗料組成物は、一般に約10〜約60質量%、好ましくは約15〜約50質量%、そしてより好ましくは約20〜約40質量%の範囲の固形分濃度を有する。
【0223】
本明細書において、塗料、樹脂等の「固形分」は110℃で1時間乾燥させた後に残存する不揮発性成分を意味する。例えば、塗料の固形分は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、塗料に含有される基体樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、塗料の固形分濃度は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に塗料を量り取り、容器底面に該塗料を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する塗料成分の質量を秤量して、乾燥前の塗料の全質量に対する乾燥後に残存する塗料成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
【0224】
[塗装物品の製造方法]
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に塗装して、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる。本発明の水性塗料組成物は、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成できるため、水性塗料を塗り重ねる、塗装物品の製造方法において、ベースコート塗膜又は上塗り塗膜用の水性塗料として使用することが好ましい。
【0225】
上記複層塗膜が、平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性に優れる理由は明確ではないが、およそ下記のようなものだと推察される。
本発明の水性塗料組成物は、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)に含まれるアクリル変性ポリエステル樹脂(a1)によって耐水性に優れた塗膜を形成するものと推察される。
【0226】
一方、ブロックポリイソシアネート化合物(B)がノニオン性親水基を有するため、従来のブロックイソシアネート化合物と比較して水性塗料中で比較的安定に存在する。それにより、本発明の水性塗料組成物は、従来問題となっていた、平滑性の低さ、鮮映性の低さ、硬化不足に起因する付着性及び耐水性の低下等の問題点を改善することができる。
【0227】
また、アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)が、塗膜に適度なレオロジー特性を与えるため、複層塗膜間の混層が抑制され、平滑性、鮮映性に優れた複層塗膜が得られると推察される。
【0228】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が特定の分岐構造の炭化水素基を有する場合には、ブロックポリイソシアネート化合物(B)が適度に低極性化するため、複層塗膜間の混層が抑制されて平滑性及び鮮映性がよりいっそう向上する。また、適度な低極性化により、ブロックイソシアネート基の加水分解が抑制され、貯蔵安定性が高く、貯蔵後の耐水付着性が良好となると推察される。
【0229】
[被塗物]
水性塗料組成物を塗装すべき被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等は挙げられ、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0230】
上記被塗物の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等が挙げられ、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0231】
上記被塗物は、上記金属材料、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0232】
塗膜が形成された被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。
【0233】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、上記金属材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、上記被塗物は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0234】
[塗装方法]
本発明の水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、そして上記塗装方法により、水性塗料組成物のウェット塗膜を形成することができる。上記塗装方法において、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。本発明の水性塗料組成物の塗装において、所望により静電印加することができる。
【0235】
本発明の水性塗料組成物は、好ましくは約5〜約70μm、より好ましくは約10〜約50μm、そしてさらに好ましくは約20〜約40μmの厚さの効果塗膜が形成されるように塗装される。
【0236】
本発明の水性塗料組成物から形成されたウェット塗膜は、加熱により硬化する。加熱は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉が挙げられる。上記加熱は、好ましくは約60〜約160℃、より好ましくは約70〜約140℃、そしてさらに好ましくは約80〜約120℃の温度で、好ましくは約10〜約60分間、より好ましくは約20〜約40分間の間、実施される。
【0237】
本発明の水性塗料組成物から形成されたウェット塗膜は、ウェット塗膜を形成した後、上記加熱の前に、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等に付されることが好ましい。上記プレヒートは、好ましくは約40〜約100℃、より好ましくは約50〜約90℃、そしてさらに好ましくは約60〜約80℃の温度で、好ましくは約30秒間〜約15分間、より好ましくは約1〜約10分間、そしてさらに好ましくは約2〜約5分間実施される。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を、約30秒間〜約15分間吹き付けることにより実施される。
【0238】
本発明の水性塗料組成物は、自動車車体の外板部、自動車部品等の被塗物に、プライマー塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を3コート1ベーク方式で形成する方法において、ベースコート塗膜用のベースコート塗料として用いることができる。
上記方法は、例えば、下記方法Iに従って実施することができる。
【0239】
[方法I]
方法Iは、下記の工程1−1〜1−4を含む。
工程1−1:被塗物を、プライマー塗料で塗装し、上記被塗物の上に未硬化のプライマー塗膜を形成する工程
工程1−2:上記未硬化のプライマー塗膜を有する被塗物を、ベースコート用の水性塗料組成物で塗装して、その上に未硬化のベースコート塗膜を形成する工程
工程1−3:上記未硬化のプライマー塗膜と、上記未硬化のベースコート塗膜とを有する被塗物を、クリヤー塗料で塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
工程1−4:上記未硬化のプライマー塗膜、上記未硬化のベースコート塗膜及び上記未硬化のクリヤー塗膜を加熱し、硬化させる工程
【0240】
次に各工程について説明する。
[工程1−1]
・プライマー塗料
上記プライマー塗料としては、公知の中塗り塗料、プラスチック用プライマーが挙げられる。具体的には、上記プライマー塗料は、例えば、被膜形成性樹脂、架橋剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料及び溶媒を含有することができ、所望により、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、可塑剤、付着付与剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤、導電剤等の塗料添加剤を適宜含有することができる。
【0241】
上記被膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ、水酸基を含有していることが好ましい。上記プライマー塗料は、架橋剤を添加することにより架橋型とすることができ、あるいは架橋剤を添加せずに実質的に未架橋型とすることができる。また、上層の塗膜に含有される架橋剤の染み込みにより架橋する、浸透架橋型であってもよい。上記架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0242】
上記プライマー塗料組成物は、有機溶剤型、又は水性塗料型のいずれであってもよいが、水性塗料型が好ましい。上記プライマー塗料は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。上記プライマー塗料は、通常、好ましくは約3〜約40μm、より好ましくは約5〜約30μm、そしてさらに好ましくは約7〜約20μmの硬化膜厚を有するように塗装される。
【0243】
上記プライマー塗膜は、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の向上ワキの抑制の観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備乾燥)、エアブロー等を行うことができる。
【0244】
なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1:1999に規定された「硬化乾燥」の状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜を意味する。一方、本明細書において、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1:1999に規定される「指触乾燥」及び「半硬化乾燥」の状態を含む。
【0245】
上記プレヒート、エアブロー等を行なうことにより、塗膜の固形分濃度が、通常約60〜約100質量%、好ましくは約80〜約100質量%、そしてより好ましくは約90〜約100質量%の範囲内となるように調整される。
【0246】
本明細書において、塗膜の固形分濃度は、以下の方法により測定される。未硬化のプライマー塗膜のプレヒート後の固形分濃度を例に説明する。
プライマー塗料で被塗物を塗装すると同時に、あらかじめ質量(M1)を測定しておいたアルミホイル上にもプライマー塗料を塗装する。次いで、未硬化のプライマー塗膜を有する被塗物をプレヒートした後且つ次の塗料が塗装される前に、上記アルミホイルを回収し、その質量(M2)を測定する。次いで、回収したアルミホイルを、110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温(25℃)まで放冷した後に、上記アルミホイルの質量(M3)を測定し、以下の式に従って固形分濃度を求める。
【0247】
固形分濃度(質量%)={(M3−M1)/(M2−M1)}×100
上述の方法により、プライマー塗膜、ベースコート塗膜、及びクリヤー塗膜の任意の時点における固形分濃度を算出することができる。
【0248】
上記プレヒートは、好ましくは約40〜約100℃、より好ましくは約50〜約90℃、そしてさらに好ましくは約60℃〜約80℃の温度で、好ましくは約30秒間〜約15分、より好ましくは約1〜約10分間、そしてさらに好ましくは約2〜約5分間実施される。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温(25℃)又は約25〜約80℃の温度に加熱された空気を、約30秒間〜約15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0249】
[工程1−2]
工程1−2では、未硬化のプライマー塗膜上に、水性塗料組成物をベースコート塗料として塗装し、その上に未硬化のベースコート塗膜を形成する。上記水性塗料組成物は、上述の水性塗料組成物であることができる。
【0250】
本発明の水性塗料組成物は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。また、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0251】
ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、ベースコート塗膜は、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備乾燥)、エアブロー等に付されることが好ましい。
プレヒート(予備乾燥)、エアブロー等により、ベースコート塗膜の固形分濃度が、通常約60〜約100質量%、好ましくは約80〜約100質量%、そしてより好ましくは約90〜約100質量%の範囲となるように調整される。
【0252】
上記プレヒートは、好ましくは約40〜約100℃、より好ましくは約50〜約90℃、そしてさらに好ましくは約60℃以上〜約80℃の温度で、好ましくは約30秒〜約15分間、より好ましくは約1〜約10分間、そしてさらに好ましくは約2〜約5分間実施される。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は約25〜約80℃の温度に加熱された空気を、約30秒〜約15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0253】
方法Iにおいて、ベースコート塗膜は、通常約3〜約50μm、好ましくは約5〜約35μm、そしてさらに好ましくは約10〜約20μmの範囲の硬化塗膜を有するように塗装される。
【0254】
[工程1−3]
工程1−3では、上記未硬化のプライマー塗膜と、上記未硬化のベースコート塗膜とを有する被塗物を、クリヤー塗料で塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成する。
【0255】
上記クリヤー塗料としては、自動車車体、自動車部品又は家庭電気製品等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料、水性熱硬化性塗料、熱硬化性粉体塗料、熱硬化性粉体スラリー塗料等が挙げられ、有機溶剤型熱硬化性塗料が好ましい。
【0256】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、反応性不飽和基等を挙げることができる。
上記基体樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0257】
上記クリヤー塗料における基体樹脂及び架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。
【0258】
また、上記クリヤー塗料は、一液型又は多液型、例えば、二液型ウレタン樹脂塗料等であることができるが、上記クリヤー塗料を約70℃以上約120℃未満の温度で加熱硬化させる場合は、ブロックポリイソシアネート化合物を硬化剤と含む一液型ウレタン樹脂塗料であるか、又はブロックされていないポリイソシアネート化合物を硬化剤として含む二液型ウレタン樹脂塗料が好ましい。
【0259】
上記クリヤー塗料は、所望により、透明性を阻害しない程度の着色顔料、光輝性顔料、染料等を含むことができ、そして体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含むことができる。
【0260】
クリヤー塗料は、上記未硬化のプライマー塗膜と、上記未硬化のベースコート塗膜とを有する被塗物に、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装されることができ、塗装の際、静電印加されうる。
上記クリヤー塗料は、通常約10〜約80μm、好ましくは約15〜約60μm、そしてより好ましくは約20〜約50μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【0261】
また、未硬化のクリヤー塗膜を、所望により、室温で約1〜約60分間放置するか、又は約40〜約80℃の温度で、約1〜約60分間プレヒートすることができる。
【0262】
[工程1−4]
工程1−4では、上記未硬化のプライマー塗膜、上記未硬化のベースコート塗膜及び上記未硬化のクリヤー塗膜を加熱し、硬化させる。
未硬化のプライマー塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化される。
【0263】
上記加熱は、省エネルギー及び/又は基材の耐熱性の観点から、好ましくは約70℃〜約120℃、より好ましくは約70〜約110℃、そしてさらに好ましくは約80〜約100℃の温度で、好ましくは約10〜約60分間、そしてより好ましくは約15〜約40分間実施される。上記加熱により、プライマー塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜を一度に硬化させることできる。
【0264】
本発明の水性塗料組成物はまた、自動車車体又は自動車部品等の被塗物に、上塗り塗料を塗装して塗膜を形成する方法において、上塗り塗料として用いることができる。
上記方法は、例えば、下記方法IIに従って実施することができる。
【0265】
[方法II]
方法IIは、下記の工程2−1及び2−2を含む。
工程2−1:被塗物を、上塗り塗料としての水性塗料組成物で塗装して、上記被塗物上に上塗り塗膜を形成する工程
工程2−2:未硬化の上塗り塗膜を加熱し、硬化させる工程
【0266】
上記被塗物は、プライマー塗膜が形成されていてもよく、そして上記プライマー塗膜が硬化されているか、又は未硬化であることができる。
【0267】
工程2−1では、クリヤー塗膜を形成した後に、室温で約1〜約60分間のインターバルを設けるか、又はクリヤー塗膜が実質的に硬化しない加熱条件(例えば、約40〜約80℃の温度で約1〜約60分間)でプレヒート(予備加熱)又はエアブロー等を行うことができる。
【0268】
上記被塗物に、未硬化のプライマー塗膜が形成されている場合には、プライマー塗料を塗装後に、インターバルを設けるか、プレヒート又はエアブローを行なうことができる。
工程2−1において、上記クリヤー塗膜の加熱は、工程1−4と同様に実施することができる。
【0269】
方法IIにおいて水性塗料組成物は、通常約5〜約50μm、好ましくは約10〜約45μm、そしてより好ましくは約20〜約40μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
また、被塗物にプライマー塗膜が形成されている場合には、プライマー塗料は、通常約3〜約40μm、好ましくは約5〜約30μm、そしてより好ましくは約7〜約20μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【0270】
本発明の水性塗料組成物は、自動車車体、自動車部品等の被塗物に、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を2コート1ベーク方式で形成する方法において、ベースコート塗膜用のベースコート塗料として用いることができる。
上記方法は、例えば、下記方法IIIに従って実施することができる。
【0271】
[方法III]
方法IIIは、下記の工程3−1〜3−3を含む。
工程3−1:被塗物を、ベースコート用の水性塗料組成物を塗装し、被塗物の上に、未硬化のベースコート塗膜を形成する工程
工程3−2:上記未硬化のベースコート塗膜を有する被塗物を、クリヤー塗料で塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
工程3−3:上記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱し、硬化させる工程
【0272】
ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜の加熱は、工程1−4と同様に実施することができる。
また、工程3−1及び/又は工程3−2において、未硬化のベースコート塗膜及び/又は未硬化のクリヤー塗膜を、所望により、室温で約1〜約60分間のインターバルを設けるか、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件(例えば、約40〜約80℃の温度で約1〜約60分間)でプレヒート(予備加熱)するか、又はエアブロー等を行うことができる。
【0273】
ベースコート塗膜は、通常約3〜約50μm、好ましくは約5〜約35μm、そしてより好ましくは約10〜約20μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。また、クリヤー塗料は、通常約10〜約80μm、好ましくは約15〜約60μm、そしてより好ましくは約20〜約45μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【実施例】
【0274】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0275】
[水酸基含有アクリル樹脂(AC)の製造]
[製造例1]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル60部及びイソブチルアルコール15部を加え、窒素気流中で内容物を110℃に加温した。内容物の温度が110℃に達したら、スチレン10部、メチルメタクリレート48部、n−ブチルアクリレート26部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸6部及びアゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を、反応容器に3時間かけて滴下した。
【0276】
添加終了後、110℃で30分間熟成し、アゾビスイソブチロニトリル1部とエチレングリコールモノブチルエーテル15部の混合物を、反応容器内に1時間かけて滴下した。さらに110℃で1時間熟成をした後、冷却し、ジメチルアミノエタノールで当量中和し、脱イオン水を加えて水酸基含有アクリル樹脂(AC)の溶液を得た。水酸基含有アクリル樹脂(AC)の溶液の固形分は50%であった。
【0277】
[水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)の製造]
[製造例2]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を添加し、内容物を160℃から230℃まで3時間かけて昇温させ、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間、内容物を縮合反応させた。
【0278】
次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、反応容器に無水トリメリット酸38.3部を添加し、170℃で30分間反応させた後、内容物をエチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、固形分濃度70%の水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)の溶液を得た。水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)は、46mgKOH/gの酸価と、150mgKOH/gの水酸基価と、1,400の数平均分子量とを有していた。
【0279】
[顔料分散液の製造]
[製造例3]
混合容器に、製造例2で得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)の溶液42.9部(固形分30部)と、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)112部と、「ケッチェンブラックEC600J」(商品名、ライオン社製、導電性カーボン)8部と、脱イオン水137.1部とを添加し、内容物を混合した。次いで、2−(ジメチルアミノ)エタノールを用いて、内容物のpHを8.0に調整した。次いで、内容物と、分散メジアとしての直径約1.3mmφのガラスビーズとを広口ガラスビンに入れ、広口ガラスビンを密封し、そして広口ガラスビンをペイントシェイカーにて4時間振とうすることにより、顔料分散液(P−1)を得た。
【0280】
[製造例4]
JR−806の量を112部から264部に変更した以外、製造例3と同様にして、顔料分散液(P−2)を得た。
【0281】
[製造例5]
[プライマー塗料(X)の製造]
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(AC)の溶液30部(固形分15部)と、「タケラックWS5000」50部(固形分15部)(商品名、三井武田ケミカル社製、ポリウレタンディスパージョン、シラノール基含有の自己架橋型、固形分30%)と、「スーパークロンE−403」133.3部(固形分40部)(商品名、日本製紙社製、塩素化ポリプロピレンの水分散品、樹脂の塩素含有率15%、固形分30%)と、製造例3で得られた顔料分散液(P−1)300部とを混合容器に添加し、内容物を混合し、次いで、「ACRYSOL ASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水により、pH、濃度及び粘度を調整し、8.0のpHと、45%の固形分濃度と、40秒の粘度(フォードカップNo.4,20℃)の水性プライマー塗料(X−1)を得た。
【0282】
[アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)の製造]
[製造例6]
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸92.4部、アジピン酸52.6部、1,6−ヘキサンジオール82.6部、ネオペンチルグリコール10.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール32部、無水マレイン酸1.96部及びジブチル錫オキサイド0.12部を添加し、反応容器を、攪拌しながら160℃まで昇温した。次いで、内容物を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。
【0283】
240℃で90分間反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、反応容器にトルエン約15部を加え、水とトルエンとを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から、内容物の酸価の測定を開始し、内容物の酸価が3.5未満になったことを確認して加熱を停止した。次いで、反応容器からトルエンを減圧除去し、反応容器を冷却し、次いで、反応容器に2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール58部を加えた。反応容器を130℃まで冷却した後、反応容器に、スチレン8.7部、アクリル酸12.2部、アクリル酸−2−エチルヘキシル22.7部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.2部の混合物を、2時間かけて滴下した。
【0284】
130℃の温度を30分間保持した後、反応容器に、追加触媒としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.44部を加え、1時間熟成させた。次いで、反応容器を85℃まで冷却し、内容物をジメチルエタノールアミン14.6部で中和し、内容物に脱イオン水468.7部を加え、内容物を水分散させ、固形分35%のアクリル変性水性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)を得た。得られたアクリル変性水性ポリエステル樹脂は、35mgKOH/gの酸価と、11mgKOH/gの水酸基価と、13,000の数平均分子量を有していた。
【0285】
[製造例7〜15]
組成を下記表1に示されるように変更した以外は、製造例6と同様にして、アクリル変性水性ポリエステル樹脂の水分散体(A−2)〜(A−10)を得た。
【0286】
【表1】
【0287】
[製造例16]
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸92.4部、アジピン酸55.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール32部、1,6−ヘキサンジオール82.6部、ネオペンチルグリコール10.5部及びジブチル錫オキサイド0.12部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を160℃まで昇温し、次いで、反応容器を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。
【0288】
240℃で90分反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、反応容器にトルエンを加え、水とトルエンを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から、内容物の酸価の測定を開始し、内容物の酸価が3.5未満になったことを確認して、反応容器からトルエンを減圧除去し、反応容器を130℃まで冷却した。次いで、反応容器に、後述の変性用アクリル樹脂1)の溶液177.5部(固形分106.5部)を加え、キシレンを減圧除去した。
【0289】
次いで、反応容器の温度を175℃に保持し、内容物の酸価が35未満になったことを確認して、反応容器の加熱を停止し、冷却させた。次いで、反応容器を85℃まで冷却し、内容物に、ジエチルエタノールアミン1.77部と、脱イオン水657.5部をと添加し、内容物を水に分散させ、固形分35%のポリエステル樹脂の水分散体(A−11)を得た。得られたポリエステル樹脂は、35mgKOH/gの酸価と、9mgKOH/gの水酸基価と、13,000の数平均分子量とを有していた。
【0290】
1)変性用アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、キシレン50部を加え、窒素気流下で、反応容器を135℃に加温した。反応容器の温度が135℃に達したら、反応容器に、n−ブチルアクリレート82.2部、アクリル酸17.8部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.5部の混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器を135℃で30分間保持し、次いで、反応容器に、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2部とキシレン4部との混合物を1時間かけて滴下した。反応容器を135℃で1時間保持し、反応容器を冷却し、そして内容物をキシレン18.3部で希釈することにより、変性用アクリル樹脂を得た。変性用アクリル樹脂の固形分は、60%であった。
【0291】
[ポリエステル樹脂の水分散体(A−12)の製造]
[製造例17]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール82.6部、ネオペンチルグリコール10.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール32.0部、ヘキサヒドロ無水フタル酸46.2部、アジピン酸99.3部及びジブチル錫オキサイド0.12部を添加し、内容物を、攪拌しながら160℃まで昇温させた。次いで、内容物を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温した後、内容物を240℃で4時間縮合反応させ、縮合反応生成物を得た。
【0292】
次いで、上記縮合反応生成物に、無水トリメリット酸13.4部を添加し、170℃で30分間反応させて、縮合反応生成物にカルボキシル基を付加させた。次いで、縮合反応生成物を2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%のポリエステル樹脂の水分散体(A−12)を得た。得られたポリエステル樹脂は、35mgKOH/gの酸価と、6mgKOH/gの水酸基価と、6,000の数平均分子量とを有していた。
【0293】
[ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造]
[製造例18]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量約550)275部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を混合し、そして反応容器を窒素気流下で130℃で3時間加熱した。
【0294】
次いで、反応容器に、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を添加した。窒素気流下で攪拌しながら、反応容器にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、内容物を65℃で8時間攪拌し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。
【0295】
次いで、反応容器に4−メチル−2−ペンタノール3110部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保持しながら、反応容器から減圧下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−1)の溶液4920部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが585部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−1)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0296】
[製造例19]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」1610部、ユニオックスM−550」275部、「PEG#600」(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量約600)25部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を窒素気流下で130℃で3時間加熱した。
【0297】
次いで、反応容器に酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1140部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器に窒素気流下でナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、反応容器を65℃で8時間保持し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。反応容器に、4−メチル−2−ペンタノール3080部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保ちながら、減圧下で、反応容器から溶剤を3時間かけて留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−2)の溶液4930部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが580部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−2)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0298】
[製造例20]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「デュラネートTPA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率23.0%)1510部、「ユニオックスM−550」275部、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を窒素気流下で130℃で3時間加熱した。
【0299】
次いで、反応容器に、酢酸エチル550部及びマロン酸ジエチル975部を添加し、次いで、内容物を攪拌しながら、反応容器に、窒素気流下でナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、反応容器を65℃で8時間保持し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。
【0300】
次いで、反応容器に、4−メチル−2−ペンタノール3110部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保ちながら、減圧下で、反応容器から溶剤を3時間かけて留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−3)の溶液4530部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが340部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−3)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0301】
[製造例21]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」1610部、「ユニオックスM−550」275部、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を、窒素気流下で、130℃で3時間加熱した。
【0302】
次いで、反応容器に酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を添加し、次いで、内容物を攪拌しながら、反応容器に、窒素気流下でナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、反応容器を65℃で8時間保持し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。
【0303】
次いで、反応容器に、6−メチル−2−ヘプタノール3970部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保ちながら、減圧下で、反応容器から溶剤を3時間かけて留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−4)の溶液5310部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが585部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−4)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0304】
[製造例22]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量約550)275部、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を、窒素気流下、130℃で3時間加熱した。
【0305】
次いで、反応容器に酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器に窒素気流下でナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を添加し、反応容器を65℃で8時間保持し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−5)の溶液を得た。ブロックポリイソシアネート化合物(B−5)の溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量と、約60%の固形分濃度とを有していた。
【0306】
[製造例23]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」1610部及びヒドロキシピバリン酸236部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器を、窒素気流下で、130℃で3時間加熱した。
【0307】
次いで、反応容器に、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル930部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器に、窒素気流下で、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、反応容器を65℃で8時間保持した。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。
【0308】
次いで、反応容器に、4−メチル−2−ペンタノール2530部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保ちながら、減圧下で、反応容器から溶剤を3時間かけて留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(B−6)の溶液4450部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが475部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−6)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0309】
[製造例24]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)480部、酢酸エチル150部、及びマロン酸ジイソプロピル365部を添加し、内容物を攪拌しながら、反応容器に、窒素気流下で、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。
【0310】
得られた樹脂溶液は、約0.07モル/kgのイソシアネート量を有していた。次いで、反応容器に、4−メチル−2−ペンタノール870部を添加し、反応容器の温度を80〜85℃に保ちながら、減圧下で、反応容器から溶剤を3時間かけて留去した。次いで、反応容器に、4−メチル−2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物(B−7)の溶液1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(B−7)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0311】
[アクリル系重合体微粒子の水分散体(C)の製造]
[製造例25]
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水120部及び「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、乳化剤、有効成分25%)0.8部を添加し、内容物を撹拌しながら、反応容器を、窒素気流中で80℃に昇温させた。
【0312】
次いで、下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの5%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液2.5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成した。
【0313】
次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液3.8部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒径100nm、固形分30%のアクリル系重合体微粒子の水分散体(C−1)を得た。得られたアクリル系重合体微粒子は、17.2mgKOH/gの酸価と、27.2mgKOH/gの水酸基価とを有していた。
【0314】
コア部用モノマー乳化物:
脱イオン水54部、「アデカリアソープSR−1025」3.1部、アリルメタクリレート1部、スチレン10部、n−ブチルアクリレート35部、メチルメタクリレート10部、エチルアクリレート20部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート1部を混合することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0315】
シェル部用モノマー乳化物:
脱イオン水50部、「アデカリアソープSR−1025」1.8部、6%過硫酸アンモニウム水溶液0.04部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.3部、メタクリル酸2.6部、エチルアクリレート8部及びメチルメタクリレート7.1部を混合することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0316】
製造例26〜30
組成を下記表2に示すように変更した以外は、製造例25と同様にして、アクリル系重合体微粒子の水分散体(C−2)〜(C−6)を得た。
【0317】
【表2】
【0318】
なお、表2中のモノマーの略称は、それぞれ下記を意味する。
AMA:アリルメタクリレート
St:スチレン
nBA:n−ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MAAc:メタクリル酸
【0319】
[光輝性顔料分散液(AL)の製造]
[製造例31]
混合容器に、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)17.5部、2−エチル−1−ヘキサノール34.8部、リン酸基含有分散樹脂の溶液2)10部(固形分5部)、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(AL)を得た。
【0320】
2)リン酸基含有分散樹脂の溶液:
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、及びイソブタノール27.5部を含む混合溶剤を添加し、反応容器を110℃に加熱し、反応容器に、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性不飽和モノマー3)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、及びtert−ブチルパーオキシオクタノエート4部を含む混合物121.5部を、4時間かけて添加した。
【0321】
次いで、tert−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部及びイソプロパノール20部を含む混合物を、反応容器に1時間かけて滴下した。次いで、内容物を1時間攪拌しながら熟成させ、固形分濃度50%のリン酸基含有分散樹脂の溶液を得た。上記リン酸基含有分散樹脂は、83mgKOH/gの酸価と、29mgKOH/gの水酸基価と、10,000の重量平均分子量とを有していた。
【0322】
3)リン酸基含有重合性不飽和モノマー:
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、及びイソブタノール41部を添加し、反応容器を90℃に昇温し、反応容器にグリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下し、そして内容物を1時間攪拌して熟成させた。次いで、反応容器に、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性不飽和モノマーの溶液を得た。得られたリン酸基含有重合性不飽和モノマーは、285mgKOH/gのリン酸基に由来する酸価を有していた。
【0323】
[水性着色塗料(Y)の製造]
[実施例]
製造例6で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)50.0部(固形分40部)、製造例18で得られたブロックポリイソシアネート化合物(B−1)の溶液16.7部(固形分10部)、製造例25で得られた水酸基含有アクリル系重合体微粒子の水分散体(C−1)133.3部(固形分35部)、「サイメル325」(メラミン樹脂、商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、固形分80%)12.5部(固形分10部)、製造例31で得られた光輝性顔料分散液(AL)67.5部(樹脂固形分5部)、及び2−エチル−1−ヘキサノール10部を混合容器に入れ、内容物を均一に混合し、次いで「ACRYSOL ASE−60」、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水により、pH、固形分濃度及び粘度を調整して、8.0pHと、25%の固形分濃度と、40秒の粘度(フォードカップNo.4,20℃)とを有する水性着色塗料(Y−1)を得た。
【0324】
[実施例2〜28、及び比較例1〜4]
組成を下記表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、水性着色塗料(Y−2)〜(Y−32)を得た。
なお、下記表3の量は、全て固形分の値である。
【0325】
【表3-1】
【0326】
【表3-2】
【0327】
[試験板の作製]
[実施例29]
脱脂処理をしたポリプロピレン板(PP板)を、製造例5で得られたプライマー塗料(X−1)で、硬化膜厚が15μmとなるようにエアスプレー塗装し、PP板の上に未硬化のプライマー塗膜を形成した。未硬化のプライマー塗膜を有するPP板を、3分間静置した後、60℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化のプライマー塗膜を有するPP板を、実施例1で得られた水性着色塗料(Y−1)で、硬化膜厚が15μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、その上に未硬化のベースコート塗膜を形成した。
【0328】
未硬化のベースコート塗膜を有するPP板を、5分間静置し、60℃で5分間プレヒートした。次いで、未硬化のベースコート塗膜を有するPP板を、クリヤー塗料である、「ソフレックス#520クリヤー」(関西ペイント社製、商品名、ポリイソシアネート化合物含有2液アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)で、硬化膜厚が35μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成した。未硬化のクリヤー塗膜を有するPP板を、7分間静置し、次いで、80℃で30分間加熱することにより、上記プライマー塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜を一度に硬化させ、試験板を作製した。
【0329】
[実施例30〜55、及び比較例5〜8]
水性着色塗料(Y−1)を、表4に示される水性着色塗料(Y−2)〜(Y−27)及び(Y−29)〜(Y−32)のいずれかに変更した以外は、実施例29と同様にして試験板を作製した。
【0330】
[実施例56]
脱脂処理をしたポリプロピレン板(PP板)を、製造例5で得られたプライマー塗料(X−1)で、硬化膜厚が20μmとなるようにエアスプレー塗装し、PP板の上に未硬化のプライマー塗膜を形成した。未硬化のプライマー塗膜を有するPP板を、3分間静置した後、60℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化のプライマー塗膜を有するPP板を、実施例27で得られた水性着色塗料(Y−28)で、硬化膜厚が35μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、その上に未硬化の上塗り塗膜を形成した。
【0331】
未硬化のクリヤー塗膜を有するPP板を、3分間静置し、60℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化のクリヤー塗膜を有するPP板を、80℃で30分間加熱することにより、プライマー塗膜及び上塗り塗膜を一度に硬化させ、試験板を作製した。
【0332】
[評価]
実施例29〜56及び比較例5〜8で得られた各試験板を、下記の試験方法により評価した。結果を、併せて表4に示す。
【0333】
[試験方法]
平滑性:
各試験板を、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)でスキャンし、測定されるWc値で評価した。なお、Wc値は、その値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを意味する。
【0334】
鮮映性:
各試験板を、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)でスキャンし、測定されるWa値で評価した。なお、Wa値は、その値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを意味する。
【0335】
耐水付着性(初期):
各試験板を、40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、各試験板の複層塗膜を、カッターで素地に達するように格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのサイズのゴバン目を100個形成した。続いて、その表面にセロハンテープを貼り付け、20℃においてセロハンテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、以下の基準に従って評価した。
【0336】
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の縁が欠けていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の縁が欠けている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である
【0337】
耐水付着性(貯蔵後):
40℃で1ヶ月貯蔵した各水性着色塗料(Y)を用いて、複層塗膜を有する各試験板を作製した。各試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、そして20℃で12時間乾燥した後、各試験板の複層塗膜を、カッターで素地に達するように格子状に切り込み、2mm×2mmのサイズのゴバン目を100個形成した。その表面にセロハンテープを貼り付け、20℃においてセロハンテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
【0338】
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の縁が欠けていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の縁が欠けている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である
【0339】
【表4】
【0340】
本発明は、以下のJ1〜J11に関する。
[J1]
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A);
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B);及び
アクリル系重合体微粒子の水分散体(C);
を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【0341】
[J2]
ブロックポリイソシアネート化合物(B)のノニオン性親水基が、ポリオキシアルキレン基である、J1に記載の水性塗料組成物。
[J3]
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、活性メチレン系のブロックイソシアネート基を有する、J1又はJ2に記載の水性塗料組成物。
【0342】
[J4]
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(I):
【化11】
(式中、R1、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、下記一般式(II):
【化12】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りである。)
で示されるブロックイソシアネート基、及び下記一般式(III):
【化13】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りであり、R6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるブロックイソシアネート基を有する、J1〜J3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0343】
[J5]
一般式(I)において、R1がイソプロピル基であり、そして一般式(III)において、R6がイソプロピル基である、J4に記載の水性塗料組成物。
【0344】
[J6]
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV):
【化14】
(式中、R1は、上述の通りであり、そして各R1は、お互いに、同一であるか又は異なる。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B11)と、下記一般式(VI):
【化15】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りである。)
で示される2級アルコール(b4)とを反応させることにより得られたブロックポリイソシアネート化合物を含む、J1〜J5のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0345】
[J7]
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V):
【化16】
(式中、R6は、上述の通りであり、R7は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B12)と、下記一般式(VI):
【化17】
(式中、R2、R3、R4及びR5は、上述の通りである。)
で示される2級アルコール(b4)とを反応させることにより得られたブロックポリイソシアネート化合物を含む、J1〜J6のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0346】
[J8]
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及びアクリル系重合体微粒子の水分散体(C)を、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、それぞれ、固形分として、10〜70質量部、1〜30質量部、及び10〜60質量部含有する、J1〜J7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0347】
[J9]
メラミン樹脂(D)をさらに含有する、J1〜J8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0348】
[J10]
被塗物を、ベースコート塗料としての、J1〜J9のいずれか一項に記載の水性塗料組成物で塗装して、上記被塗物上に未硬化のベースコート塗膜を形成するステップ、次いで
上記未硬化のベースコート塗膜を有する被塗物を、クリヤー塗料で塗装し、その上に未硬化のクリヤー塗膜を形成するステップ、
を含む、塗装物品の製造方法。
【0349】
[J11]
被塗物を、上塗り塗料としての、J1〜J9のいずれか一項に記載の水性塗料組成物で塗装し、上記被塗物の上に上塗り塗膜を形成するステップ、
を含む、塗装物品の製造方法。