【文献】
Z. Abbas, J. Perez Holmberg, A. K. Hellstroem, M. Hagstroem, J. Bergenholtz, M. Hasselloev and E. Ahlberg,Synthesis, characterization and particle size distribution of TiO2 colloidal nanoparticles,Colloids Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects,2011年 4月 8日,384(2011),pp.254-261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属酸化物の粒子が、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、またはイリジウムの酸化物のうちの1種以上から本質的になる粒子をさらに含む請求項6に記載の生体適合性部材。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明の態様によるTiO
2ナノ粒子のX線回折のグラフを示している。
【
図2】
図2a〜cは、8nm(
図2a)および22nm(
図2b、c)のTiO
2粒子、市販のTiO
2粒子(
図2d)を含む表面、ならびに粒子のない、ダブルエッチングした表面(
図2e)の高分解能SEM画像を示している。
【
図3】
図3は、ナノサイズTiO
2粒子を含む表面および参照表面(TS)に対して行ったサイクリックボルタンメトリーから得たボルタモグラムを示している。
【
図4】
図4は、ここで調査した様々なチタン(Ti)表面についてのMott-Schottkyプロットを示すグラフを示している。
【
図5】
図5は、ナノサイズTiO
2粒子を含む金表面についてのMott-Schottkyプロットを示すグラフを示している。
【
図6】
図6は、ナノサイズTiO
2粒子を含む表面および参照表面の状態密度(DOS)をフラットバンド電位を基準とした電位に対して示すグラフを示している。
【
図7】
図7は、疑似体液に浸漬してからそれぞれ12時間、72時間、および1週間後の、5種類の様々な表面へのアパタイト付着量を示すグラフである。
【
図8A】
図8a−dは、疑似体液に浸漬してから12時間後の、8nm(
図8)、22nm(
図8b)のTiO
2粒子、市販のTiO
2粒子(
図2c)を含むチタン表面、および粒子のない参照表面(
図8d)の高分解能SEM画像を示している。
【
図8B】
図8a−dは、疑似体液に浸漬してから12時間後の、8nm(
図8)、22nm(
図8b)のTiO
2粒子、市販のTiO
2粒子(
図2c)を含むチタン表面、および粒子のない参照表面(
図8d)の高分解能SEM画像を示している。
【
図8C】
図8e−hは、
図8a−dの表面のEDXスペクトルを示すグラフおよび選択された元素の原子濃度の記録を示している。
【
図8D】
図8e−hは、
図8a−dの表面のEDXスペクトルを示すグラフおよび選択された元素の原子濃度の記録を示している。
【
図9】
図9a−cは、疑似体液に浸漬してから12時間後(
図9a)、72時間後(
図9b)、および1週間後(
図9c)の、22nmのTiO
2粒子を含むチタン表面を示すSEM画像である。
【
図10】
図10a−bは、本発明の態様によるナノ粒子で覆われたチタン表面を示すSEM画像である。
【
図11】
図11a−bは、本発明の態様によるナノ粒子で被覆した表面のAFM画像である。
【
図12】
図12は、本発明の態様によるナノ粒子で被覆したチタンフィクスチャーの250,000倍の倍率でのFEG−SEM画像である。
【
図13】
図13は、仔ウシの骨に取り付け、取り外した後の、本発明の態様によるナノ粒子で被覆したチタンフィクスチャーの100,000倍の倍率でのFEG−SEM画像である。
【
図14】
図14は、本発明の態様による表面上で成長した骨芽細胞において検出されたcbfaの遺伝子発現レベルを示すグラフである。
【
図15】
図15は、本発明の態様による表面の成長した骨芽細胞において検出されたBMP−2の遺伝子発現レベルを示すグラフである。
【
図16】
図16は、本発明の態様による表面上で成長した骨芽細胞によって分泌されたIL−6のレベルを示すグラフである。
【0045】
発明の詳細な説明
例1:粒子を含んだ表面の調製および特徴付け
1.1 サンプル調製および特徴付け
1.1.1 サンプル調製
二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子をTiCl
4の制御加水分解によって合成して、清浄な表面の粒子を得た。0℃で合成するが、コロイド分散液の透析および貯蔵を8nmサイズの粒子では0℃、22nmでは20℃で行うことにより、様々な大きさのTiO
2粒子を得た。
【0046】
典型的な合成では、TiCl
4(99%)を−16℃で冷却し、この溶液5.2±0.05mlを、200mlの脱イオン水(Milli−Q)に、激しく撹拌しながら滴下した。合成は、大部分、1:40のTiCl
4:H
2O体積比を使用して行い、実現されるTiO
2濃度は18g/lであった。反応温度、透析時間/温度、および貯蔵時間/温度を調節することにより、様々な大きさのTiO
2粒子が得られる。透析ステップは、凝塊形成を回避するのに重要であり、得られる懸濁液は、主として単一のナノ粒子からなる。合成の詳細は、Z. Abbas、J. Perez Holmberg、A.-K. Hellstrom、M. Hagstrom、J. Bergenholtz、M. Hassellov、およびE. Ahlberg、Colloids Surf. A: Physicochem. Eng. Aspects, 2011, doi:10.1016/j.colsurfa.2011.03.064で見ることができる。合成によって、粒子が実質的に単分散である分散液が得られる(Perez Holmberg、Z. Abbas、E. Ahlberg、M. Hassellov、およびJ. Bergenholtz、J. Phys. Chem. C, 2011出版是認)。
【0047】
個々の粒径が30〜80nmの範囲であり、アナターゼ対ルチルの比が4:1である市販のTiO
2粒子(Degussa P25)を慎重に洗浄して、有機表面種を除去し、超音波浴で処理して、分散した溶液を得た。しかしながら、動的光散乱によって、より大きい凝集物の存在が示され、系を完全に分散させるのは不可能であった。粒子を、Ti(旋削表面を有するグレード4ディスク、直径1.1cm)またはAuディスク(SiCペーパー(4000)で研磨したもの、直径0.6cm)上に、数ステップでスピンコーティングした。スピンコーティングした後、サンプルを脱イオン水ですすぎ、使用前に乾燥させておいた。ナノ粒子を含んだ表面の補完物として、ナノ構造のTS+AT1(シュウ酸およびフッ化水素酸で順次処理した旋削表面)表面をこの調査に含めた。
【0048】
1.1.2 粒径分布の測定
合成したTiO
2ナノ粒子の粒径分布は、Z. Abbas、J. Perez Holmberg、A.-K. Hellstrom、M. Hagstrom、J. Bergenholtz、M. Hassellov、およびE. Ahlberg、Colloids Surf. A: Physicochem. Eng. Aspects, 2011, doi:10.1016/j.colsurfa.2011.03.064に記載されているように、エレクトロスプレー走査移動粒径測定器(ES−SMPS)法によって得ることができる。
【0049】
1.1.3 表面トポグラフィー
高分解能SEM画像は、1kVで作動させたLeo Ultra 55 FEG SEMを使用して記録した。表面粗さ分析は、原子間力顕微鏡法(AFM)(Nanoscope(登録商標)Multimode IIIa、Digital Instruments)を使用して行った。タッピングモードAFM測定を、1サンプルあたり3点で、また10×10、5×5、および3×3μmの3つの異なる走査サイズで実施した(走査振動数0.8Hz、512ライン)。AFMデータをMeX(登録商標)19(Alicona Imaging GmbH)ソフトウェアにインポートし、そこで粗さ分析および3D−表面粗さパラメータの算出を行った。いくつもの走査サイズを使用し、MeX(登録商標)ソフトウェアにおいて様々なサイズのガウスフィルタを適用することにより、10μm〜150nmの範囲のトポグラフィーのフィーチャについての情報が得られる。
【0050】
1.1.4 表面分析
CuKα照射(λ=1.54056Å)を利用するSiemens D5000粉末回折計を結晶相の特定に使用した。サンプルの異なる深さからの情報を得るために、X線回折を異なる入射角で測定した。XPS分析については、単色AlKαをX線源とするQuantum 2000 ESCA走査顕微鏡(Physical Electronics、米国)を使用した。
【0051】
1.1.5 電気化学測定
サイクリックボルタンメトリーおよびインピーダンス測定は、Gamry Reference 600(商標)ポテンシオスタット/ガルバノスタット/ZRAを使用して実施した。電気化学測定は、静止条件に使用される、特別に設計された三電極セルにおいて行った。サンプルを、旋削表面を電解質に向けてセルの底に置く。大きなPtカウンター電極をサンプルの周囲に同心円状に置いて、最適な電流分布を確保し、参照電極をセルの中央に配置する。このセル配置は、すべての種類の平面サンプルに有用であり、インピーダンス測定において良好な特徴を示す。すべての電位は、Ag/AgCl(飽和KCl、E=0.197Vvs.she)参照電極を基準とする。電気化学インピーダンス(EIS)測定は、脱気した0.5M H
2SO
4中で実施し、インピーダンス測定中はN
2ガスによる継続的な弱いパージを続けた。インピーダンススペクトルは、1kHz〜10mHzの振動数範囲において、9ポイント/ディケードおよび振幅10mVrmsとして、一定電位で記録した。電位は、+1から−0.5Vまで50mVずつ上げ、次のスペクトルを記録する前の待ち時間を300秒とした。サイクリックボルタンメトリーは、50mVs
-1の掃引速度を使用して、0.1M KOH中で得た。
【0052】
1.2.表面特徴付けの結果
1.2.1粒径分布
0℃および室温で貯蔵した分散液についての、貯蔵してから1週間および3週間後に得た粒径分布は、非常に似通っていた。以前の分析(Z. Abbasら、Colloids Surf. A: Physicochem. Eng. Aspects, 2011, doi:10.1016/j.colsurfa.2011.03.064)において、サイズ分布の狭いTiO
2コロイド状ナノ粒子を得ることができることが示されている。分布は、半値全幅(FWHM)を平均径で割った比として測定され、35〜40%であることがわかった。
【0053】
1.2.2 XRDおよびXPS
図1に、8または22nmの粒子を含んだ懸濁液から得た粉末形態のナノ粒子のX線回折を示す。粒子は、分析する前に120℃で16時間乾燥させた。主相はアナターゼであるが、2θ=30.8°における反射によって示されるように、ブルッカイトの弱い寄与を伴う。広い回折ピークから、粒子は、より小さいクリスタライト(約4nm)からなることが示唆され、成長調査によって、粒子は、最初に生成したこの大きさの沈殿がゆっくりと凝集して生成することが示された。
図1への挿入図において、チタンに接着させた粒子についての回折パターンを示す。ナノ粒子層は薄いので、シグナルは非常に弱いが、主アナターゼピークを認めることができる。これは、粒子の相が、堆積および乾燥後に残存することを示している。チタンに接着させたP25粒子は、典型的な回折パターンを示し、アナターゼとルチルの比は約4/1である。TS+AT1変更態様については、酸化物からの回折ピークを認めることができず、沈殿した層が非晶質であるか、または薄すぎて検出されないことが示唆される。
【0054】
ナノ粒子層に対して行ったXPS分析では、微量の塩化物を伴って純粋なTiO
2が示される。Ti金属についてのシグナルは認められなかったため、皮膜が表面を完全に覆っていることが示唆される。より少ない価数のチタンイオンは認められなかった。炭素シグナルは、すべてのサンプルについて同様であり、表面の汚染と関連付けられる。
【0055】
1.2.3 表面トポグラフィーの結果
図2に、それぞれ8nm(TS+8nm、
図2a)または22nm(TS+22nm、
図2b;Au+22nm、
図2c)のTiO
2粒子を含む表面の高分解能SEM画像を示す。3種すべての表面がかなり滑らかに見える。これら表面のSEM画像から、下にある基材は、完全に覆われているように思われる。これは、本研究で使用した他の2種の変更態様については当てはまらない。P25の懸濁液は、粒子の凝塊を含んでおり、こうした凝塊が、スピンコーティング手順の際にTi表面へと移った。結果として、表面粗さは大きいが、間に旋削表面が見える(
図2d)。シュウ酸およびフッ化水素酸で順次エッチングしたTS+AT1表面については、むしろより大きい沈殿が生成し、間に非常に薄い酸化物層が存在する。球形のナノ粒子とは対照的に、TS+AT1表面上の沈殿は、高さ0.45μm(5つの山と谷の最大高さの平均から求めたもの、S
10z)の棒とみなすことができる(
図2eを参照されたい)。
【0056】
表面のトポグラフィー分析を、重複する走査サイズおよび様々なサイズのガウスフィルタを使用するAFM分析によって実施して、表面の特色についての情報を10〜0.150μmの範囲で得た。MeX(登録商標)ソフトウェアを使用して3D−表面粗さパラメータを算出しており、異なる3パラメータについての値を表1に載せる。
【表1】
【0057】
S
a値(平均高さ)は、表面TS+P25およびTS+AT1で、ナノ粒子を含む表面および旋削表面より有意に大きい。これら表面処理はどちらも、旋削表面の上部において、それを完全に覆うことなく追加の表面構造を誘導した(
図2d〜e)。8および22nm粒子の層は、それぞれ、旋削表面を粒子で完全に覆い、旋削跡が覆われているので、今度は表面粗さの低下が引き起こされた(
図2a〜bおよび表1を参照されたい)。22nm粒子の層を適用した後にS
a値が低下する金基材(
図2c)でも、同じ傾向が認められる。TS+8nmとTS+22nmの表面についてのS
a値にはわずかな差しかないが、より小さい粒子でより低い値が得られたことは、粒子の曲率が表面粗さに反映されることを示唆している。傾きの二乗平均(S
dq)は、界面せん断強さと相関することが示されており、したがって、歯科インプラント用途について吟味するのに重要なパラメータである。生体力学的観点から、大きいS
dq値が望ましいことがある。S
dr(展開面積)値の傾向は、S
aおよびS
dq値と同じ傾向に従い、ナノ粒子を含む表面について最も小さい値が得られる。
【0058】
1.3. 電気化学的特徴付け
1.3.1 サイクリックボルタンメトリー(CV)
図3では、ボルタモグラムの例を示して、走査範囲および走査回数の影響を、1種類の電極(
図3a)、異なる粒径(
図3b)、部分的に被覆された電極(
図3c)、および異なる基材(
図3d)について例示する。基材としてのTiで得られるボルタモグラムの一般的特色は、最も負の電位における対称性の過程およびそれより負でない電位におけるピークを伴う、同じものである。最も負の電位で認められる過程は、伝導帯における電荷の蓄積、すなわち反応(1)、または伝導帯直下のトラップの充填、すなわち反応(2)のせいであるとされている。どちらの場合でも、プロトンの吸着が起こって、酸溶液中で電荷均衡が実現される。
【数1】
【0059】
アルカリ溶液中では、電解質カチオンはおそらく、電荷を釣り合わせる種(すなわち、この場合ではK+の吸着)である。より負傾向でない電位におけるピークは、伝導帯より下の表面状態の充填、すなわち、(2)によるTi(IV)のTi(III)への還元のせいであるとされている。反応(2)については、アルカリ溶液中でもTiO(OH)の生成が可能である。あるいは、より負傾向でない電位におけるピークは、皮膜中の粒界におけるトラップ状態のせいであるとすることもできる。通常、最も負の電位における電流は、指数関数的に増加し、最終的に、水の還元によって水素放出が起こる。ナノ粒子で覆われた電極であるTS+8nmおよびTS+22nmについて、陰極電荷と陽極電荷に対称性が認められたことは、電位が−1.8Vに制限される場合、ファラデー過程が関与しないことを示唆している。より負傾向の電位に分極すると、水素放出により電流がさらに増加する(表示せず)。ナノ粒子で覆われた電極についての他の調査とは対照的に、負方向への走査において、電流は、水素放出が始まる前に、極大を経る。この理由はわかっていないが、伝導帯直下のエネルギーレベルの完全な充填と関連付けることができる。より負傾向でない電位におけるピークは、表面状態または上で言及したような皮膜中の粒界におけるトラップ状態の充填のせいであるとされている。この調査では、皮膜は焼結させておらず、粒界の量は少ないと予想され、したがって、ピークは、表面状態によるものである見込みが最も高い。正の電位限界は0Vであったが、これは、負方向への走査の際に充填された表面帯を完全に空にするのに十分でなかった。このことは、後続の掃引に対して認められるはるかに小さいピークから明らかである(
図3a)。ピーク電位は、被覆に応じて変化し、TS+8nm電極で最も負のピーク電位、続いてTS+22nmおよびTS+P25表面となっている(
図3bおよび表2)。より負傾向の電位における過程についての電流も、粒子の種類に左右され(
図3b)、粒径が小さくなるのに伴って活性表面積が増すことが示唆されて、ナノ粒子皮膜の活性表面積と関連付けられた。チタン金属上に常に存在する自然酸化物については、粒子で覆われた電極と比べてより負傾向でない電位(−0.89V)において還元ピークが出現し、酸化還元過程は、−0.81Vにおける酸化ピークを伴って、いくらかの可逆性を示す。こうした電位における酸化還元過程のいくらかの可逆性は、TS+P25電極でも認められる(
図3c)。自然に生成した酸化物についての合計電荷は、TS+P25より少ないが、これは、利用可能な表面積がP25のナノ粒子皮膜より大きくなるので、予想されたことでる。TS+P25についてのボルタモグラムをよく見ると、自然に生成した酸化物を伴う、覆われていない表面の寄与があることが示唆される(ピークの肩として示される)。これは、多孔質構造において、覆われていない表面が目に見える、
図2dのSEM画像と一致する。しかしながら、より負傾向の電位における過程は、同じであり、TS+P25電極について、より高い陽極電荷を伴う可逆性があることだけが異なる。この過程の可逆性は、TS+8nmおよびTS+22nm電極では、TS+P25および旋削表面と比べて高く、おそらくはより小さい粒径およびくっきりとした表面と関連付けられる。可逆性の欠如は、ファラデー過程のためである場合もあり、それは、22nmのTiO
2粒子で覆われた金電極Au+22nmの場合におそらく当てはまる。還元ピークは、伝導帯により近く、水素放出は、酸化ピークが認められないので、おそらくはより負傾向の電位において起こる(
図3d)。しかしながら、小さい酸化ピークが、Ti被覆電極について認められるピークとほぼ一致して、−0.82Vにおいて認められる。このピークは、TiO
2粒子の表面上のエネルギー状態が空になることに伴う。
【0060】
ボルタンメトリー応答に基づき、またファラデー過程が起こらないことを仮定すると、バンドギャップ内状態密度(DOS)および電子密度は、式3を使用して求めることができる。
【数2】
【0061】
ここで、g
0(−eE)は、0ケルビンで有効なバンドギャップ内DOSの最初の推定値である。Eは電極電位であり、Lは層の厚さであり、eは元素の電荷であり、Aは表面積であり、νは掃引速度である。実験データには、2種類の状態、すなわち、最も負の電位における伝導帯の指数関数的な裾g
tail(−eE)に関連する状態、およびガウス様分布g
gauss(−eE)を伴うバンドギャップの状態を示す(式4および5を参照されたい)。
【0062】
g
tail(−eE)=g
tail,BEexp[−αFE/RT] (4)
ここで、g
tail,BEは、伝導帯の端におけるDOSであり、αは、裾のバンドギャップへの伸びと関連付けられる。ガウス分布は、式5で示される。
【数3】
【0063】
ここで、g
tail,BEは、バンドギャップにおける状態の完全な充填に相当し、E
pはピーク電位であり、σは、ピーク電位に関する標準偏差である。実験データをこれらの式に適合させようとしたが、バンドギャップにおける状態がガウス分布から逸脱し、信頼できる値を得ることができなかった。多孔質のナノ構造皮膜では、指数関数的増加に伴う電荷は、界面面積に比例することが以前から示されている。粒子層の正確な厚さは不明であるので、指数関数的な項から抽出される値は、(粒子のない)参照表面の面積で正規化した界面面積の算出に限って使用することができる(表2)。これらの値を展開面積S
drと比較すると、P25が最大のS
dr値を有してはいるが、活性面積については、旋削表面よりわずかに高いだけであることがわかる。対照的に、TS+8nmおよびTS+22nm表面の滑らかな外観は、より大きい界面面積をもたらし、最小のナノ粒子で得られる活性面積は最大である。一致がないことは、S
drが物理(受動)面積を表すのに対し、界面(活性)面積は、電解質と接触して創出されるものであることに起因する。
【0064】
1.3.2 電気化学インピーダンス分光法(EIS)
インピーダンスデータは、100kHz〜10mHzの振動数範囲において、振幅10mVrmsで、電位に対して測定した。液抵抗(R
sol)と直列の1つまたは2つの時定数からなる同等の回路を使用することにより、インピーダンスデータを適合させた。各時定数は、酸化物に関連した抵抗と並列の定相位要素(CPE)からなる。時定数の横分布については、液抵抗を計算に含めるが、表面に対して垂直の時定数の分布については、これを省いてよいことが証明された。多孔質の酸化物が生成し、電解質が多孔質相の大部分に浸透し得る、ここで調査する系では、時定数の分布は、表面が多孔質であるために横方向に生じ、したがって、実効キャパシタンスは、式6を使用して算出した。
【数4】
【0065】
ここで、R
solは液抵抗、R
filmは、酸化物皮膜抵抗と関連付けられ、αは、CPE要素についてのばらつき要因(dispersion factor)である。実効キャパシタンスを使用して、半導電性二酸化チタン層の電気的特性を、よく知られているMott-Schottkyの関係式、すなわち式7を用いて予測した。
【数5】
【0066】
ここで、C
scは、空間電荷キャパシタンスであり、ε
rは、TiO
2の誘電率であり、ε
0は、真空の誘電率であり、N
dは、電荷担体の数であり、eは、電子の電荷であり、Eは、印加電位であり、E
fbは、フラットバンド電位である。ここでは、二重層キャパシタンスが、空間電荷キャパシタンスよりはるかに高いことが想定される。式7によれば、線形の依存性が予想され、その傾きから電荷担体の数を、またその切片からフラットバンド電位を求めることができる。
【0067】
図4に、様々な表面についてのMott-Schottkyプロットを示す。8および22nm粒子を含むTi表面については、Mott-Schottky挙動は同じであり、1本の曲線だけをグラフに示す。これらの表面では、すべての表面について非線形の挙動が認められるフラットバンド電位に近いことを除き、線形Mott-Schottkyの関係が見出される。TS+P25およびTS+AT1表面については、最も正の電位において傾きの変化が認められる。電荷担体の数は、各電位において、Mott-Schottkyプロットの傾きから算出しており、
図4への挿入図に示す。Mott-Schottky曲線の傾きの変化にもかかわらず、電荷担体の数は、みごとに一定であり、最も線形である領域についての値を、以下の表2に、フラットバンド電位と共に示す。フラットバンド電位は、異なる表面でも同様であった。
【0068】
P25で覆われた表面では、0.4Vより高い電位において傾きが大きく増し、1.6倍低いドナー密度が得られる。この線を外挿すると、0Vに近い見かけのフラットバンド電位を得ることができる。この値は、同じ基礎材料上の陽極酸化された層について見出されるものと同じである。フラットバンド電位は、この研究で使用するpHで−0.35Vに近くなることが予想されるので、見かけのフラットバンド電位は、おそらくは表面状態による影響を受ける。陽極酸化された皮膜の場合でも、還元ピークが認められ、エネルギーバンドがバンドギャップにある表面状態を表している。
【0069】
Au+22nm電極についてのMott-Schottkyプロットは、他の電極と比べて異なって見える(
図5)。この場合では、キャパシタンスを、一定振動数100Hzで得られるインピーダンス値から算出した。比較のために、キャパシタンス値を同じようにして算出した、TS+22nm電極についてのMott-Schottky曲線も示す。Au+22nm表面では、キャパシタンスは、正電位から出発して一定であり、すなわち、電位と無関係である。したがって、このキャパシタンスは、絶縁酸化物皮膜のキャパシタンスと関連付けられる。フラットバンド電位に近づくと、曲線が急速に変化する。酸化物キャパシタンスについて補正することにより、ドナー密度およびフラットバンド電位を推定することができる(以下の表2を参照されたい)。酸化物キャパシタンス値から、式8を使用して、平均酸化物厚さを算出することができる。28nmの値が得られ、金の場合では、表面に粒子の単層しか接着していないことが示唆される。
【数6】
【0070】
ここで、ε
0は、真空の誘電体誘電率(dielectric permittivity)であり、ε
rは、TiO
2の誘電率(60)であり、Aは電極面積であり、Cはキャパシタンスである。
【0071】
電荷担体の数は、金に対するナノ粒子皮膜では、チタン上の同じ皮膜よりはるかに少ない。これは、TiO
2ナノ粒子が、チタン上の薄い酸化物皮膜と、金金属より密接に相互作用していることを示唆している。結果として、サイクリックボルタンメトリーで観察された表面状態は、粒子だけでなく、粒子とTi上の自然酸化物皮膜との界面に起因すると結論付けてよいことになる。TS+AT1表面については、電荷担体の数がナノ粒子皮膜より多く、また自然酸化物(TS)よりも多い(表2)。伝導率がわずかに高い一つの理由は、金属相中の水素化チタンの存在である可能性がある。しかしながら、ブラスティングしたサンプルでは、AT1処理を施した表面の伝導率が、ブラスティングしたサンプルより低いことがわかっている(I. MattissonおよびE. Ahlberg、Appl. Surf. Sci., 2011出版是認)。
【0072】
ボルタンメトリー測定をアルカリ溶液中で行い、酸溶液において得た、実験的に求めたフラットバンド電位を使用し、ネルンストのpH変化を想定することにより、pH13、Efb=−1.1±0.1Vについてフラットバンド電位を算出した。
図6では、状態密度(DOS)を、フラットバンド電位を基準とした電位に対してプロットしている。
【0073】
8nm粒子を有する表面については、フラットバンド電位より高いエネルギーにおいてDOSの極大が起こるが、他の表面では、極大は、E
fbの近く(TS+22nm)、またE
fbに関して正電位(TS+P25およびTS)にある。エネルギーバンドの位置は、生体活性化合物の吸着、ひいては表面がin−vivoで機能する能力にとって重要となり得る。これについては、疑似体液に浸漬した後に得られた結果に関して、以下でさらに論述する。
【表2】
【0074】
例2:表面生物活性の評価
2.1.サンプル調製
2.1.1 疑似体液(SBF)への浸漬
A. Oyane、H. M. Kim、T. Furuya、T. Kokubo、T. Miyazaki、およびT. Nakamura、J. Biomech. Mater. Res. A, 2003, 65, 188-195に記載の改定SBF処方に従って、SBF溶液を37℃で調製した。1M NaOHを使用して溶液のpHを7.00±0.05とし、調製したSBF溶液を新鮮なうちに使用した。
【0075】
上記例1.1に従って調製したサンプルを、処理した表面を逆さまにして、40mlのSBF溶液に個々に浸漬し、固定した。1部門につき9つのサンプルを37.0℃で浸漬し、1部門につき3つのサンプルを、それぞれ、浸漬してから12時間、72時間、および1週間後に評価した。1部門および浸漬時間につき1つのサンプルでX線回折(XRD)分析を実施して、サンプルの化学組成を精査した。すべてのサンプルタイプについて、SEM(ESEM XL30、FEI Company)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)(Apollo 14、EDAX)分析を、1サンプルにつき3時点で実施して、生成したアパタイトの量および形態を評価した。使用したSEM設定は、10kV、作動距離10mm、および分析面積126×102μmであった。
【0076】
2.2 結果
サンプルをSBF溶液に12時間、72時間、および1週間浸漬することにより、表面によるアパタイト核生成誘導能を評価した。SBF溶液は、イオンをヒト血漿に類似した濃度で含有し、SBF溶液の処方は様々でよい。本紙面では、Oyanoらが示した改定SBF処方を使用した。サンプルは、処理した表面を逆さまにつるして固定して、重力による沈殿を防いだ。
【0077】
生成したアパタイトの量は、EDXによって測定した。アパタイト付着量(Θ)は、式9を使用して、SBF溶液への浸漬の後と前のチタンシグナルの比から算出した。アパタイトが浸漬の間に生成した唯一の沈殿であると想定されている。
【数7】
【0078】
結果は
図7に示しており、興味深いことに、アパタイトの早期の核生成は、TiO
2ナノ粒子を含む表面で、参照(TS)およびTS+AT1表面と比べて有意に多い。SBFに72時間浸漬した後、粒子を含んだ表面と参照の差は少なくなり、それに代わってTS+AT1表面が最高のアパタイト付着量を示す。この傾向は、1週間後も続く(
図7)。異なる表面の形態をSEMによって精査し、明確な差が得られた。
【0079】
図8a〜dに、チタン表面TS+8nm(
図8a)、TS+22nm(
図8b)、TS+P25(
図8c)、および参照表面TS(
図8d)の高分解能SEM画像を示す。アパタイト結晶核生成部位が見られ、円で印をつけている。さらに、(電子殻Kに起因する電子から放出されたエネルギーを測定する)EDX分析によって、試験表面(
図8e〜g)上に、参照表面(TS、
図8h)と比べてより多い量のカルシウム(Ca)およびリン(P)が存在することが確認される。EDX分析は、各表面について一点だけで実施した。
【0080】
表面粗さがアパタイト生成に及ぼす影響は、以前に精査されており、0.2〜0.6μmのR
a値に相当する表面粗さで、連続的で密着性のあるアパタイト層が種々の材料上に生成することが示されている。測定技術および分析に違いがあるために、粗さパラメータの絶対値を比較することは難しい。しかしながら、相対値を使用することはでき、浸漬してから1週間後の結果は、粗い表面の方が、より滑らかな表面と比べて、厚く密着性のあるアパタイト層の形成に好都合であるという以前の発見を裏付けている(表2)。
【0081】
TS+P25表面を除くすべての表面で、特徴の異なる割れたアパタイト層が観察された。
【0082】
TS+8nmおよびTS+22nm表面上に形成されたアパタイト層は、まずフィブロネクチン溶液中で、その後ハンクス緩衝食塩水(HBSS)中で1週間インキュベートした、チタン上に形成されたアパタイト層と似通った別のタイプの割れを示した(A. P. Do Serro、A. C. Fernandes、およびV. S. B. de Jesus、J. Biomed. Mater. Res., 2000, 49, 345-352)。亀裂または割れは、乾燥収縮によって引き起こされることが示唆されており、浸漬時間が増すにつれてより大きく深くなることが観察されている。別の説明は、表面上の核が成長し、最終的に完全に覆う皮膜を形成する、厚いアパタイト層の3D成長機序と関係している。異なる核が相互作用し始めたとき、応力がかかり、アパタイト層に亀裂が入る。この機序は、12時間後には沈殿が存在しないが、72時間後には完全に覆う皮膜を有するTS+AT1表面について当てはまると思われる。核生成の機序は、ナノ粒子を有する表面については異なると思われる。表面上の特定の部位において急速にヒドロキシアパタイトが沈殿した後、2D成長へと続くが、2D成長では、層は、下にある基材と弱い相互作用しか示さない。2D層の生成は、一般に観察されるより大きい凝塊の生成を防ぐと思われ、結果として、層は薄いままとなる。ナノ粒子で覆われた表面上に認められる早期の核生成を、
図9でTS+22nm表面について示す。12時間後、はっきりした沈殿が認められるが(
図9aにおいて矢印をつけた)が、表面は、沈殿物で完全に覆われてはいない。この段階での沈殿物のCa/P比は、1.7(多くの試験点の平均)に近く、沈殿物の間ではCaおよびPシグナルが得られなかった。これは、熱力学的に最も安定した相であるヒドロキシアパタイト(Ca
5(PO
4)
3(OH))の生成を示唆している。ヒドロキシアパタイトは、骨中の主なミネラルであり、高い機械的強度を得るのに非常に重要である。72時間の浸漬後、表面は、薄いアパタイト層で覆われ、亀裂ができ始める(
図9b)。亀裂は、沈殿物と層の不適合によって引き起こされる応力により、最初の沈殿物から伝わるように思われる。1週間浸漬した後、アパタイト層は十分に展開するが依然として薄い(
図9c)。
【0083】
この調査において、表面粗さに関係なく、すべての表面(TS+P25を除く)が割れを伴った(表2)。TS+8nmおよびTS+22nm表面のアパタイト層は、下にある表面から分離していると思われる。しかしながら、これに関連して、in vivoの状況では、本明細書に記載するような生体適合性部材が生体組織に移植された後、タンパク質やプロテオグリカンなどの巨大分子、および細胞が、移植後数時間以内に部材表面に誘因されることが観察されるはずであり、これらの存在および/または活性によって、アパタイトのいかなる2−Dまたは3−D層の生成も事実上妨げられることになると考えられる。したがって、in vitroで1週間後に生成したアパタイト層の特性は、in vivo移植結果とほとんど関連しないといえる。生成したアパタイト皮膜のCa/P比をEDX測定値から算出し、72時間および1週間の浸漬後のすべての表面で、1.42〜1.56の範囲であることがわかった。これは、Ca/P比=1.5のリン酸三カルシウム(Ca
3(PO
4)
2)の生成を示唆するかもしれない。
【0084】
生成したアパタイト層の化学組成を斜入射(gracing angle)X線回折(GI−XRD)によって分析した。EDX測定値は、1週間後のTS、TS+8nm、TS+22nm、およびTS+P25表面についてむしろ高いアパタイト付着量を示すが、弱く広い回折シグナルしか得られなかった。このことは、生成した層が非晶質であることを示唆している。SBF溶液からの均質な成長は、非晶質相の生成から始まり、引き続いて小さいアパタイト結晶が生成する(Z. Z. Zyman、D. V. Rokhmistrov、およびV. I. Glushko、J. Mater. Sci., Mater. Med., 2010, 21, 123-130)。
【0085】
より厚いアパタイト層が得られたTS+AT1表面については、SBFに浸漬してから72時間後および1週間後に、ヒドロキシアパタイトのはっきりした回折ピークが認められる。
【0086】
長期の結果は、より粗い表面上では、厚いアパタイト層の展開が促進されることを示唆している。しかしながら、ナノ粒子を含んだより滑らかな表面は、より急速な核生成、および非晶質アパタイトの薄い2D層の生成を示す。表面によるヒドロキシアパタイト核生成誘導能とin−vivo応答との相関については、T. KokuboおよびH. Takadama、Biomaterials, 2006, 27, 2907-2915で精査されている。
【0087】
したがって、SBF溶液への浸漬は、異なる表面の生物活性の尺度となり得る。この調査では、2タイプの核生成および成長挙動を観察した。より粗い表面では、核生成が最初は遅れるが、始まってしまえば、厚い層が形成される。これらの層は、皮膜における応力によって引き起こされた亀裂を有する。小さいアナターゼナノ粒子を有するより滑らかな表面では、最初の沈殿は急速であるが、ヒドロキシアパタイトの小さい核が少ししか形成されず、表面の残部が覆われないままである。
【0088】
十分に分散した小さいナノ粒子からできた表面皮膜では、表面上に多孔質層が創出される。この結果、旋削表面、およびP25の凝塊を含んだ表面と比べて、インピーダンス測定から求められるドナー密度もより大きくなり、活性面積もより大きくなる。その上、かなり高い伝導率を有する参照表面(TS)でアパタイト生成が制限されるので、物理的表面粗さは、アパタイト生成において重要な役割をもつと思われる。早期の核生成については、ナノ粒子で覆われた表面が好ましいと思われる。
【0089】
例3:ナノ粒子で被覆された表面の調製および特徴付け
3.1 サンプル調製
TiO
2ナノ粒子は、上述のとおりのTiCl
4の制御加水分解によって合成した。反応温度、透析時間/温度、および貯蔵時間および/または温度を制御することにより、粒径が約20nmであるTiO
2ナノ粒子を得た。粒子は、主としてアナターゼからなり、ブルッカイトの痕跡は少なかった。以下のスキームに従って、旋削した脱脂チタンディスクに粒子をスピンコーティングした。サンプル群A1については、1回だけスピンコーティングステップを実施し、サンプル群A5は、5回スピンコーティングにかけた。スピンコーティング後、サンプルを水中ですすぎ、50℃で5分間乾燥させておいてから、包装し、21kGyでβ線滅菌した。
【0090】
3.2 サンプルの特徴付け
以下の技術を使用して、2種のサンプル表面A1およびA5を特徴付けした。
【0091】
−走査電子顕微鏡法(SEM)(XL30、FEI Company、5651 GG Eindhoven, the Netherlands)
−電界放出銃走査電子顕微鏡法(FEG−SEM)(Leo Ultra 55 FEG SEM)
−エネルギー分散型X線分光法(EDXまたはEDS)(XL30、FEI Company、5651 GG Eindhoven, the Netherlands)
−X線光電子分光法(XPS)(Quantum 2000 ESCA走査顕微鏡、Physical Electronics、米国ミネソタ州Chanhassen、およびCasaXPSソフトウェア)
−X線回折(XRD)(CuKα照射、λ=1.54056Åを使用するSiemens D5000粉末回折計)
−原子間力顕微鏡法(AFM)(Nanoscope(登録商標)Multimode IIIa、Digital Instruments)
−接触角測定法(EQ−Q−2857、SY−0302)
3.2.1 走査電子顕微鏡法
SEMおよびFEG−SEMを使用して、3種の異なるサンプル表面の形態を精査した。普通の環境SEMを使用して個別のナノ粒子を検出するのは不可能であるので、ナノ構造表面A1およびA5の確認には主としてFEG−SEMを使用した。より高い倍率で画像を得るために、inLense検出器を、電位の低下、および結果としてのより短い作動距離と組み合わせて使用した。A1サンプル表面の画像を
図10aに、サンプル表面A5の画像を
図10bに、どちらも倍率100,000倍で示す。ナノ粒子被覆層の厚さは、画像では見て取ることができないが、個別のナノ粒子が、表面上の小さい白色のドットとして目に見える。
【0092】
図10a〜bに示すSEM画像において、A1およびA5表面は類似して見える。しかしながら、表面粗さが異なっている。表面粗についてはAFMを使用して測定し、以下でさらに論述する。
【0093】
3.2.2 エネルギー分散型X線分光法(EDX)
2種のサンプルA1およびA5バルク材料の全体としての元素組成の定性的および定量的な元素分析値は、EDXを使用して求めた。EDXは、約1〜2μmの深さからの情報を収集するが、このことは、この方法では、最も外側の層についての限られた情報しか検出できないことを意味する。分析は、化学組成が位置および/または侵入深さによって変化するか調査するために、各サンプルの異なる3箇所(サンプルの異なる縁における2箇所および中央の1箇所)において、3段階の異なる加速電圧(5、15および30kV)で実施した。
【0094】
元素の定量化から、サンプルA1およびA5は、類似した組成を有することが観察された。EDX分析からの値は相対的であるので、異なるサンプルおよび加速電位について、酸素/チタン、窒素/チタン、および炭素/チタンの比をそれぞれ算出した(表3を参照されたい)。サンプルA1およびA5は、類似した元素組成を有するとみなすことができる。さらに、両方のサンプル群で、チタンに対する酸素、窒素、または炭素それぞれの比は、加速電圧(すなわち、分析深さ)に応じて減少すると結論付けることもできる。
【表3】
【0095】
3.3.3 X線光電子分光法(XPS)
ナノ粒子で覆われた表面の化学組成は、X線光電子分光法(XPS)を使用して求めており、データを表4に示す。2種のサンプル表面A1およびA5は、類似した化学組成を有し、主にチタン、酸素、および炭素の存在を示す。サンプル調製手順が手作業であるため、両方のサンプルで、多量の炭素が検出された。ナノ粒子合成からの塩素の痕跡は、どちらのサンプル表面についても確認されなかった。
【0096】
Casa XPSソフトウェアを使用して、検出された元素のさらに詳しい分析も実施した。すべてのサンプルについて、465および459eVにおけるTi2p1/2およびTi2p3/2の結合エネルギーが認められた。この二重項は、Ti(IV)によるものであり、TiO
2がサンプル表面上の主な成分であることを示す。表面A1およびA5両方について、それぞれ454.6eVおよび461.4eVにおけるTi金属二重項も確認された。Ti金属ピークは、下にあるチタン基材に起因するものであり、表面A1およびA5上においてTiO
2ナノ粒子被覆が薄いため確認することができる。
【0097】
両方のサンプル表面が、Ti−O結合に起因する、531eVにおけるはっきりとしたO1sピークを示した。加えて、より高い結合エネルギーにおける肩も観察された。O1sスペクトルのデコンボリューションによって、酸素の炭素への結合に起因する533eVにおけるピークが得られた。O1sスペクトルについてのように、C1sスペクトルも、より高い結合エネルギーにおいて肩を有する主要な種を示した。285.5eVにおける主ピークは、炭化水素(C−CおよびC−H)の存在によるものであるとされており、大気条件下の酸化物層上にしばしば見られる。より高い結合エネルギー(289eV)における肩は、それぞれC−OおよびC=O種によるものであるとされている。
【表4】
【0098】
3.3.4 X線回折(XRD)
表面A1およびA5それぞれに対してX線回折測定を実施した。両方のサンプル表面で、7つすべてのチタン金属シグナルが示された。金属シグナルは、単結晶表面でのように不揃いに配向していなかったが、これはおそらく、バルク材料が冷間加工されているためである。二酸化チタン(ルチル)からのシグナルは表面上に存在しなかったが、これはおそらく、酸化物層が薄いためである。酸化物ピークの欠如は、酸化物がx線非晶質である、すなわち、粒径がブラッグの限界を超えているために、はっきりとした反射パターンを得ることができないことを示唆する場合もある。
【0099】
3.3.5 原子間力顕微鏡法(AFM)
表面粗さをさらに精査するために、AFM画像も記録した。
図11aはA1表面を示し、
図11bはA5表面を示す。MeX(登録商標)ソフトウェアを使用して3D表面粗さパラメータを算出し、異なる3つのパラメータについての値を表5に載せる。
【0100】
AFM画像から、表面A1およびA5が、旋削表面の上部を覆う追加の表面構造を有するのを認めることができる。
【0101】
サンプルA1(
図10a)およびA5(
図10b)のSEM画像から、これら2つの表面は、下にある基材が同程度に覆われて、全く似通って見える。しかしながら、AFM画像(
図12a〜b)を注視すると、そうでないことが明白である。サンプルA5(
図11b)では、下にある基材が、厚く滑らかな酸化物皮膜を生じさせる幾層かのナノ粒子の層で完全に覆われている。サンプルA1(
図11a)も、覆っているナノ粒子の被覆を有するが、構造がA5のものほど滑らかでない。これは、表5の表面粗さパラメータによっても裏付けられ、A1のS
a値がA5と比べてやや高いことを見て取ることができる。傾きの二乗平均(S
dq)は、界面せん断強さと相関することが示されており、したがって、歯科インプラント用途について吟味するのに重要なパラメータである。生体力学的観点からは、大きいS
dq値が望ましく、表面A1がA5に比べて若干有利となっている。S
dr(展開面積)値の傾向は、S
aおよびS
dq値と同じ傾向に従い、最も厚いナノ粒子層を有する表面、すなわちA5について得られた値が最も小さい。
【表5】
【0102】
3.3.6 接触角
接触角測定を使用して、表面A1およびA5の親水性を判定した。両方のサンプル表面が、通常の定義、すなわち接触角<90°に従って、親水性であった(表6を参照されたい)。
【表6】
【0103】
3.3 考察
A1およびA5サンプルは、同じタイプの基材、すなわち旋削チタン(グレード4)ディスクから調製したものである。どちらの場合でも、スピンコーティングされたナノ粒子の層が、下にある基材を覆っている。ナノ構造はあまりに小さいため、通常の環境SEMを使用して確認することができず、したがって、高分解能FEG−SEMによってサンプルを分析した。これらの画像において、表面A1およびA5は、個別のナノ粒子またはナノ粒子の集団が、下にある金属構造の上部に沈積しており、全く似通って見える。しかしながら、SEM画像をAFM画像と比較すると、下にある表面構造がナノ粒子の皮膜で完全に覆われて、連続的な被覆が形成されていることが明らかである。サンプル群A1は、1回しかスピンコーティングしていなかったが、サンプル群A5については、スピンコーティング手順を5回繰り返した結果、はるかに厚い被覆が得られた。これは、表面A5についてA1と比べて低いS
a値が示される表面粗さ測定によっても検証された。
【0104】
接触角測定では、両方のサンプルが親水性であったことが示された。XPS分析では、サンプルが清浄であり、表面が主に、チタン、酸素、および炭素で構成されていたことが示され、またTiO
2が、サンプル表面表に存在する主な成分であることも示された。加えて、サンプルA1およびA5の両方で、Ti金属シグナルを観察することができ、A5被覆がA1被覆より厚いものの、ナノ粒子被覆が薄いことを示唆している。
【0105】
XPS分析では、両方のサンプル表面がTiO
2によって覆われていたことが示されたが、XRD分析では、酸化物からの反射が少しも示されなかった。層が薄すぎるため、XRDによって酸化物を検証することはできない。
【0106】
例4:ナノ粒子被覆の密着
4.1 サンプル調製
Abbasら、Nanoparticles Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 384 (2011) 254-261に従って、粒径が19.5nmであるTiO
2ナノ粒子の溶液を調製した。ナノ粒子溶液を、工業用として純粋で清掃したチタンフィクスチャー(旋削したもの、ブラスティングまたは酸エッチングなし)に、次のとおりにスピンコーティングした。フィクスチャーをサンプルホルダーに乗せ、1400rpmで回転させる間、ナノ粒子溶液に浸した。ナノ粒子溶液に浸した後、フィクスチャーをすすぎ用の水に浸した。次いで、残留している水を除去するために、フィクスチャーを4500rpmで約30秒間回転させた。フィクスチャーをオーブンにおいて50℃で数分間乾燥させた。
【0107】
フィクスチャーは、
図12に示す、倍率250,000倍でのFEG−SEMによって評価した。分析から、表面がナノ粒子を示したことが明らかになった。
【0108】
4.2 骨に取り付けた後の評価
試験を実施して、ナノ粒子被覆が、死んだ仔ウシの骨にフィクスチャーを取り付けた後、骨から取り外した後、および続く洗浄手順後に表面上に残存するかどうか精査した。結果から、ナノ粒子被覆は、仔ウシの骨へのフィクスチャーの取り付けによる影響を受けないと思われ、また続く洗浄手順でも無傷の状態であることが示された。
図13は、仔ウシの骨から取り外し、清掃した後の、ナノ粒子被覆されたチタンフィクスチャーを示す、倍率100,000倍でのFEG−SEM画像である。多少の骨残留物が表面上に残った。ナノ粒子は、それでもねじ山の頂部にも密着していた。
【0109】
例5:in vitroでの細胞応答の評価
ヒト由来間葉系幹細胞モデルを使用しての細胞増殖および骨形成分化マーカーについての実験室用アッセイを使用して、上記例3.1に従って調製したサンプル表面の効果を評価した。
【0110】
5.1 サンプル
上述のサンプルA1およびA5に加えて、工業用として純粋な機械加工されたチタンディスク(「Ti」)を対照として使用した。
【0111】
5.2 細胞培養
ヒト口蓋間葉系細胞(HEPM1486、ATCC)を、アール塩、10%ウシ胎児血清(FBS)、Pen/Strep抗生物質[25mg/ml]、アスコルビン酸[50mg/mL]、ピルビン酸Na[1mM]、非必須アミノ酸[0.1mM]、L−グルタミン[2mM]を含有するイーグル最小必須培地(EMEM)において、5%CO
2と共に培養した。細胞培養には、HEPM細胞のトリプシン(typsin)による単離、(血球計算器での)計数、ペレット化、および50,000細胞/10μlでの懸濁を伴った。10μlの細胞懸濁液(Micromass approach)を、各試験および対照表面上に播き、培養物を1時間密着させた後、1mlのEMEM+10%FBSを穏やかに灌流させた(Stanford、Jacobsonら、1995、Journal of Biological Chemistry 270(16):9420-9428)。
【0112】
アッセイについては、3ディスク/群/時点を使用した。アッセイは、アッセイ終始点を0、1、4、8、および14日目として、14日目まで実施した。0時点は、播く前に作製した細胞懸濁液の一定分量とした。培地の交換は、4日毎に行った。ディスクをインキュベートする24ウェルディッシュの各ウェルから100μlの培地を集めた。
【0113】
集めた培地は、骨に関連したタンパク質発現についてのプロテオミクスアッセイに向けて貯蔵した。プロテオミクス測定のための、培地からの培地の収集は、0、1、2、4、6、8、12日目に行った。
【0114】
5.3 細胞増殖および細胞活性
5.3.1 細胞増殖アッセイ
細胞増殖は、標準的なMTTアッセイを使用して、14日間にわたって測定した。Vybrant MTT細胞増殖アッセイ(Molecular Probes Kit V−13154)は、水溶性MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)の不溶性ホルマザンへの変換を利用するマイクロプレート吸光度アッセイである。次いでホルマザンは可溶化され、マイクロタイタープレートリーダーにおいて570nmで読み出される。
【0115】
HEPM細胞のマイクロドット(50,000細胞/10μl培地)を、24ウェルプレートの中のディスクに乗せた。(細胞接着を可能にするために)1時間経過後、ディスクに、アスコルビン酸[50mg/ml]を補充したEMEM 1mlを灌流させた。培地は、10%FBSおよびPen/strepも含有していた。24時間後、Invitrogen Vybrant MTT細胞増殖アッセイに従って、1日目のサンプルを集めた。サンプルをSDS−HCl溶液中にて37℃で終夜インキュベートし、次いで混合し、570nmの吸光度を読み取った。この手順を2日目、4日目、6日目、8日目、および14日目のサンプルについて繰り返した。
【0116】
細胞増殖を検量線と対照した。以下のことが観察された。
【0117】
1日目:すべての表面において、A1およびA5表面上で、1日目のTiと比べて細胞が接着し、生存可能であったことが示された。A1表面上でTiと比べて細胞の数の増加が認められた。
【0118】
4日目:A1およびA5表面において、Tiと比べて細胞の数の減少が示された。
【0119】
8日目:8日後、A1およびA5両方の表面で、Ti表面と比べて細胞の数の減少が示された。
【0120】
14日目:14日後のTiと同等の数の細胞が示され、A1およびA5表面上の細胞が回復した。
【0121】
5.3.2 骨関連遺伝子マーカーの遺伝子発現レベル
アルカリホスファターゼ、cbfa1、オステオカルシン、およびBMP−2についての骨芽細胞遺伝子発現の変化を、多重および実時間PCR戦略を使用して、0、1、4、8および14日目に分析した。微量培養物(50,000細胞/10μl培地)を、以前に記載されているとおりに、対照としてのプラスチック上に、3通りに播いた(Schneider、Zahariasら、2004. Journal of Biomedical Materials research. 69A 3:462-468)。接着させて1時間後、ウェルをEMEM/10%FBSおよび50mg/mlのアスコルビン酸で灌流させた。0、1、4、8および14日目に、全細胞RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて、製造者の使用説明書に従って抽出した。次いで細胞をホモジナイズし(QIAshredder column、Qiagen)、RNeasyカラムにかけ、すすぎ、溶離させた。260nmでの吸光度からRNA濃度を算出し、260nmと280nmの吸光度の比からRNA純度を求めた。抽出されたRNAを鋳型として使用して、TaqMan逆転写試薬(Applied Biosystems)を用いて逆転写反応を実施し、PTC−200 Peltier Thermal Cycler(MJ Research)においてRT反応を実施した。25℃で最初の10分が経過後、反応混合物を48℃で30分間インキュベートし、95℃で5分間加熱し、引き続いて4℃に冷やした。TaqManリボソームRNA対照試薬キット(Applied Biosystems)を使用して、内因性対照としての18sリボソームRNAを検出した。
【0122】
次いで、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用する、50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で15秒間を40サイクル、および60℃で1分間の熱サイクルパラメータによる多重PCRによって、アルカリホスファターゼ、cbfa1、オステオカルシン、およびBMP−2ターゲット、ならびに内因性rRNA対照を増幅した。ABI Prism 7300実時間PCR検出系において、96ウェル光学反応プレート(Applied Biosystems)で、実時間PCR反応を実施した。骨形成性遺伝子(ここではBMP−2およびcbfa1だけを例示した)のためのRNA抽出およびRT−PCRプロトコールは、Perinpanayagam,H.(2002)が記載している方法に従った。簡潔に述べると、培養物を収穫し、PBS中ですすぎ、全細胞RNAを抽出した。実時間PCRプライマーおよびRUNX−2/Cbfa1用のプローブは、その遺伝子のエキソン1および2に対応する294bpの既知のラット配列(Xiaoら(1998) Journal of Biological Chemistry, 273(49): 32988-32994)から、Primer Expressソフトウェア(Perkin Elmer)によって設計して、エキソン接合部に重なり合った80bpの産物を生成した。DNAプローブは、5’−レポーター色素FAM(6−カルボキシフルオレセイン)および3’−クエンチャー色素TAMRA(6−カルボキシ−N,N,N’,N’−テトラメチルローダミン)で修飾した。各反応試験管において、ΔCt(ここで、ΔCt=(FAM)Ct−(VIC)Ctである)を算出することにより、Cbfa1レベルを18S rRNAに対して正規化した。定数を差し引いて、ΔΔCt(ここで、ΔΔCt=ΔCt−kであり、kは、概算の最小ΔCt値に適合させた)を得た。cbfa1の相対的レベルを2
(-ΔΔCt)として算出した。
【0123】
異なる時点で次の結果が認められた。
【0124】
1日目:試験表面上のBMP−2、cbfa1、アルカリホスファターゼ、またはオステオカルシンの遺伝子発現には、Tiと比べて差異がない。
【0125】
4日目:表面A1上でBMP−2およびcbfa1の発現が増加し、A5上でアルカリホスファターゼの発現がわずかに増加したが、すべての試験表面上でオステオカルシンの発現が減少した。
【0126】
8日目:すべての試験表面上でBMP−2応答が増加し、A1表面上ではTiと比べて有意に高い値が示された。cbfa1発現については、A5表面上ではTi対照表面に対してより高いレベルが、A1上では同等のレベルが示された。全般に、すべての表面上で低いレベルのアルカリホスファターゼ発現が観察された。
【0127】
14日目:A1表面上でBMP−2発現が有意に増加した。Ti対照とA1は、同等のレベルのcbfa1発現を示したが、A5表面は、対照(Ti)と比べて増加したレベルを示した。対照と比べて、アルカリホスファターゼまたはオステオカルシン発現レベルは上昇しなかった。アルカリホスファターゼレベルは低い。
【0128】
cbfa発現を
図14に、BMP−2発現を
図15に示す。
【0129】
5.3.3 タンパク質レベル測定
in vitroで発現された骨形成性タンパク質マーカー(オステオカルシン、オステオポンチン、およびオステオプロテグリン(osteoprotegrin))の最も客観的な測定が実現される、多重キットを選択した。簡潔に述べると、50μlの細胞培養上清を、抗ヒト多重タンパク質マーカービーズと共に、4℃で18時間インキュベートし、結合していない材料を濾過によって除去した(Assay Millipore、米国マサチューセッツ州ビルリカ)。25μlの抗ヒト多重ペプチドビオチンレポーターを加え、反応液を暗所にて室温で1.5時間インキュベートした。25μlのストレプトアビジン−フィコエリトリンを加え、プレートを室温でさらに30分間インキュベートした。25μlの停止溶液を加え、プレートをプレートリーダー(Model 100 IS、Luminex、米国テキサス州オースティン)で読み取った。各サンプル中のサイトカインIL−6およびTNF−αの濃度を、Beadviewソフトウェア(Millipore、米国マサチューセッツ州ビルリカ)を使用して基準から外挿した(2.3から10,000pg/ml)。
【0130】
すべての表面が通常の回復過程を辿り、いずれの表面上でも特別に高いタンパク質レベルは示されなかった。炎症誘発性サイトカインTNF−aおよびIL−6については、8日後および14日後にIL−6のレベルの増大が示され、A1表面上で最も高い値が認められた。IL−6応答を
図16に示す。
【0131】
5.3.4 要約および結論
試験表面では、全般に、Ti対照表面と同等の増殖が示された。一般に、増殖は分化より顕著であった。このことは、4日目に最高点に達したが後の時点で下降している、アルカリホスファターゼ発現の低い活性によって示された。骨誘発性BMP−2は、4日目から14日目までのA1表面についてだけ認められた。骨芽細胞分化マーカーcbfa1は、4日目から14日目までのA5上で増加した。
【0132】
試験表面上でのIL−6レベルのわずかな増大は、BMP−2の遅れとなって現れた可能性もある。
【0133】
ナノ粒子で被覆された表面A1およびA5は、分化にわずかな影響を及ぼすが、これら表面は、このin vitro調査において骨芽細胞の増殖を促進するというのが一般的な傾向である。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
生体組織との接触用表面を有する生体適合性部材であって、前記表面は金属酸化物の粒子を含み、前記粒子は平均粒径が100nm未満である生体適合性部材。
[2]
前記粒子は平均粒径が25nm未満である[1]に記載の生体適合性部材。
[3]
前記粒子は、エレクトロスプレー走査移動粒径測定器(ES−SMPS)によって得られる粒径分布が40%までである[1]又は[2]に記載の生体適合性部材。
[4]
前記粒子が概ね球形の形状を有する[1]〜[3]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[5]
前記金属酸化物が少なくとも部分的に結晶質である[1]〜[4]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[6]
前記金属酸化物が二酸化チタンを含む[1]〜[5]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[7]
前記二酸化チタンの主形態がアナターゼである[6]に記載の生体適合性物品。
[8]
前記金属酸化物の粒子が、二酸化チタンから本質的になる粒子を含み、場合により、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、またはイリジウムの酸化物のうちの1種以上から本質的になる粒子をさらに含む[6]または[7]に記載の生体適合性部材。
[9]
前記粒子が層を形成している[1]〜[8]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[10]
前記層は、厚さが、8nm〜約1μm、典型的には50nm〜500nm、たとえば100nm〜400nmの範囲内にある[9]に記載の生体適合性部材。
[11]
前記層が前記粒子の単層である[9]または[10]に記載の生体適合性部材。
[12]
前記層が前記粒子の連続層である[9]から[11]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[13]
前記層が前記表面を完全に覆っている[9]から[12]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[14]
前記粒子が前記層全体に均質に分布している[9]から[13]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[15]
前記粒子が焼結していない[1]〜[14]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[16]
前記粒子の少なくとも一部が焼結している[1]から[14]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[17]
前記粒子がなく、自然金属酸化物で覆われた表面を有する対応する生体適合性部材に対する、前記表面の電気化学的相対活性表面積(Aaa)は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも1.8である[1]〜[16]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[18]
前記表面を有する基材を含み、この基材が金属材料を含む[1]〜[17]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[19]
前記金属材料が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、およびイリジウム、ならびにこれらの合金から選択され、好ましくはチタンまたはチタン合金を含む[18]に記載の生体適合性部材。
[20]
前記粒子と接触している前記基材の一部が、酸化チタン、好ましくは自然酸化チタンを含む[1]〜[19]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[21]
生体組織への移植用である[1]〜[20]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[22]
歯科インプラント、好ましくはデンタルフィクスチャーである[21]に記載の生体適合性部材。
[23]
整形外科用インプラントである[21]に記載の生体適合性部材。
[24]
疑似体液に浸漬されたとき、12時間以内にその表面上でヒドロキシアパタイト結晶の核生成を誘導する[1]〜[23]の何れか一に記載の生体適合性部材。
[25]
a)表面を有する基材を準備することと、
b)平均粒径が100nm未満である金属酸化物の粒子の、溶媒中の分散液を準備することと、
c)前記粒子の分散液を前記基材の表面に適用することと
を含む、生体適合性部材の製造方法。
[26]
前記粒子は平均粒径が25nm未満である[25]に記載の方法。
[27]
前記粒子が前記溶媒中に完全に分散している[25]または[26]に記載の方法。
[28]
前記分散液をスピンコーティングによって適用する[25]〜[27]の何れか一に記載の方法。
[29]
d)前記溶媒を蒸発させること
をさらに含む[25]〜[28]の何れか一に記載の方法。
[30]
e)前記粒子を焼結させること
をさらに含む[25]〜[29]の何れか一に記載の方法。
[31]
金属酸化物の粒子の前記分散液を、
b−i)水中でTiCl4の制御加水分解を行って、コロイド分散液を得ること、および
b−ii)前記コロイド分散液の透析を行うこと
によって準備する[25]〜[30]の何れか一に記載の方法。
[32]
前記基材が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、およびイリジウム、ならびにこれらの合金から選択される金属を含む[25]〜[31]の何れか一に記載の方法。
[33]
前記基材の表面が自然酸化物を含む[25]〜[32]の何れか一に記載の方法。
[34]
ステップc)の前の前記基材本体の表面が、表面粗化処理、たとえば、アブレッシブブラストおよび/または化学エッチングにかけられている[25]〜[33]の何れか一に記載の方法。
[35]
前記基材本体が旋削される[25]〜[33]の何れか一に記載の方法。
[36]
前記基材本体の表面が研磨される、[25]から[33]の何れか一に記載の方法。