【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はその目的を、軸方向、半径方向、および方位方向を有するターボ機械用の環状燃焼室にして、第1の環状壁と第2の環状壁を備え、各環状壁は燃焼室の筐体の少なくとも一部を画定する環状燃焼室であって、第1の環状壁と第2の環状壁は方位係合によって協働する相補型組立手段を有する、環状燃焼室によって達成する。
【0006】
当然のことながら、第1の環状壁は第1の相補型組立手段を有し、第2の環状壁は第2の相補型組立手段を有し、第1の相補型組立手段と第2の相補型組立手段は、相互係合によって協働することが可能になるような方法でそれぞれが互いに対して相補的となる。第1の相補手段は、方位係合によって第2の相補手段と協働する。言い換えれば、第1の相補型組立手段と第2の相補型組立手段は、燃焼室の軸方向を中心にそれらを互いに対して回るようにすることによって相互に係合される。
【0007】
方位係合による相補型組立手段同士間の協働は、軸方向係合と比較して燃焼ガスの漏れを低減することを可能にする。明確には、半径方向の熱膨張が軸方向の熱膨張よりも小さいことから、方位係合によって形成されたアセンブリは、第1の環状壁と第2の環状壁の間の恒久的な接触を維持することを可能にし、そのようにして、燃焼室の使用条件に関わらず、ガス漏れがほとんどまたは全くないことを保証する。さらに、このような方位係合は、軸方向の係合によるよりも小さな隙間を使用することを、あるいは隙間を全く使用しないことさえも可能にする。さらに、第1の環状壁と第2の環状壁の相互係合は、それらが分解されるのを可能にする。したがって、従来技術による第1の環状壁と第2の環状壁のアセンブリと比較して、本発明の方位係合による組み立ては、取り外し可能であるという側面と、燃焼ガスの漏れを低減し、さらには漏れが極少量またはゼロであるという側面とを併せ持つという利点を有する。さらに、このような方位係合による組み立ては、従来技術の組み立てよりも簡単に実施できる。特に、係合の方位方向は、現状技術よりも簡単に軸方向のまわりでの位置合わせおよび心合わせを達成することを可能にする。また、本発明の組み立てはボルトを使用しないことから、亀裂の形成が回避される。特に、アセンブリが方位係合によって実施されることから、半径方向および軸方向の熱膨張が、相互係合され続けながら滑動することが可能である第1の相補型組立手段と第2の相補型組立手段によって容易に収容される。したがって、このような滑動は、第一にアセンブリの満足な形状を保持しながら熱膨張を補償することを可能にし、第二に熱膨張中の亀裂の発生を助長することになる詰まりを回避することを可能にする。
【0008】
有利なことに、第1の環状壁と第2の環状壁は、方位係合によって協働する相補型組立手段を有し、相補型組立手段は、第1の環状壁から第1の方向の方位に延在する複数の第1の舌部と、第2の環状壁から第1の方向と反対の第2の方向の方位に延在する複数の第2の舌部とを備え、第1の舌部と第2の舌部は方位係合によって協働する。
【0009】
当然のことながら、協働する第1の舌部と第2の舌部の間で、各第1の舌部は、第1の舌部が係合によって協働する相手の第2の舌部と合致する。したがって、第1の舌部間の何がしかの数の舌部が、同じ数の第2の舌部と協働する。例えば、相補型組立手段が10個の第1の舌部と12個の第2の舌部を備える場合、3つの第1の舌部だけが、3つの第2の舌部と方位係合によって協働することが可能である。一変形形態では、10個の第1の舌部が、10個の第2の舌部と協働する。したがって、第1の環状壁と第2の環状壁を一緒に組み立てられた状態に保持するように、舌部は互いに係合することによって、互いに摩擦力を、かつ/または互いに弾性支承力を及ぼす。したがって当然のことながら、第1の舌部と第2の舌部は方位係合中に弾性的に変形する。したがって第1の舌部と第2の舌部は弾性舌部である。特に、このことは第1の壁と第2の壁を所定の締め付けトルクで組み立てることを可能にする。
【0010】
第2の環状壁は、第1の環状壁が第1の舌部を有するのと同じ数の第2の舌部を有することが好ましく、各第1の舌部は第2の舌部と方位に係合することによって協働する。このことは、アセンブリの機械的強度を向上させること、および燃焼ガスの漏れを低減することを可能にする。
【0011】
有利なことに、第1の環状壁は半径方向に延在する第1の環状フランジを有し、第2の環状壁は半径方向に延在する第2の環状フランジを有し、第1のフランジと第2のフランジは軸方向に互いに対して支えあうことによって協働する。
【0012】
至極当然のことながら、相補型組立手段が相互に係合されるとき、第1のフランジと第2のフランジは、互いに対して支えあうことによって協働する。第1のフランジと第2のフランジの間の支えあいの協働は、第1の壁が第2の壁に対して軸線に沿った方向に遮断されることを可能にする。さらに、第1の環状フランジと第2の環状フランジは有利なことに、燃焼ガスの漏れをさらに低減するように、互いに対して支えあう協働密閉面を相互に形成する。
【0013】
有利なことに、第1の舌部は第1の環状フランジ内に形成され、第2の舌部は第2の環状フランジ内に形成される。
【0014】
したがって、第1の環状フランジと第2の環状フランジは軸線に沿って第1の方向に互いに対して支えあうことによって協働し、第1の舌部と第2の舌部は、それらが方位に係合されると、軸線に沿って第1の方向と反対の第2の方向に互いに対して支えあうことによって協働する。フランジおよび舌部の相補形状は、第一に、アセンブリが確実かつ機械的に強いことを保証すること、第二に燃焼ガスの漏れを低減することを可能にする。また舌部は、環状フランジ上に配置されることによって、互いに対して滑動することによって熱膨張差、特に半径方向の膨張を補償する。したがって、アセンブリは熱膨張に対して比較的非感受性であり、燃焼室が使用される熱条件に関わらず、係合は確実なままである。一実施形態では、第1の舌部と第2の舌部はレーザ切断によって機械加工される(第1の環状壁と第2の環状壁は金属で作製される)。これは、第1の環状壁または第2の環状壁の機械加工中に舌部を単一動作で形成することを可能にする。これは、切断の精度、したがってアセンブリの品質を向上させる働きをする(機械強度の向上、漏れの低減)。
【0015】
有利なことに、第1の舌部は、第1のフランジに対して軸線に沿って第1の方向に予備形成角度を形成し、第2の舌部は、第2のフランジに対して軸線に沿って第2の方向に第1の方向と反対に予備形成角度を形成する。
【0016】
このようにして予備形成されている、即ち、舌部が形成されているフランジに対して所定の角度を係合される前に形成される舌部同士は、互いに係合し易い。第1の舌部と第2の舌部は各々、それぞれ第1のフランジと第2のフランジに対して1°から5°(角度)の範囲の予備形成角度を形成することが好ましい。第1の舌部と第2の舌部は各々、それぞれ第1のフランジと第2のフランジに対して2°(角度)の予備形成角度を形成することがより好ましい。「約」という用語は、プラス半度またはマイナス半度の角度値(即ちこの例では2°±0.5°)を意味する。この2°の値は、方位係合のための所定の締め付けトルクを保証する満足な剛性と共にコンパクトな構成をも有する弾性舌部を軸方向に形成することを可能にする。
【0017】
有利なことに、燃焼室は、第2の環状壁の第1の環状壁に対する(またはその逆の)回転を阻止する阻止手段を有する。
【0018】
阻止手段は、第1の環状壁と第2の環状壁の方位方向への相対的な動きを阻止する働きをする。したがって、相補型組立手段同士が方位に係合されると、阻止手段は係合をロックし、相補型組立手段同士がばらばらになるのを防止する。これは、第1の環状壁と第2の環状壁の相互連結に対してより高い信頼性を保証することを可能にする。
【0019】
有利なことに、第1の環状壁は少なくとも1つの第1の阻止手段を有し、第2の環状壁は少なくとも1つの第2の阻止手段を有する。少なくとも1つの第1の阻止手段が少なくとも1つの第2の阻止手段と協働して、第1の環状壁が第2の環状壁に対して回るのを阻止する。
【0020】
有利なことに、第1の壁は複数の第1の阻止手段を有し、第2の壁は複数の第2の阻止手段を有する。第1の阻止手段または第2の阻止手段は均等に方位に分配されるが、第1の阻止手段と第2の阻止手段のうちの他方の阻止手段は均等に方位に分配されない。
【0021】
第1の変形形態では、阻止手段は、第1の環状壁を第2の環状壁に固定する少なくとも1つのネジを備える。
【0022】
有利なことに、ネジは第1の環状フランジと第2の環状フランジを通り抜け、それらを一緒に保持する。
【0023】
当然ながら、固定ネジは、壁の厚みの中に直接ねじ込まれる(即ち、第1の環状フランジと第2の環状フランジにねじ込むことによって直接それらと協働する)か、あるいはナットの助けによって定位置内に保持され、ナット‐ボルト式の固締具が第1の環状フランジと第2の環状フランジを一緒に締め付けるかのいずれかである。言うまでもなく、このようなネジは、フランジを通るその係合穴の近傍に亀裂を発生させない。これは、ネジが熱膨張を阻止せず、亀裂をもたらす可能性のある局所応力を発生させないことによる。
【0024】
この第1の変形形態では、第1の壁(または第1のフランジ)はネジを通す第1の穴を1つのみ、または複数の穴を有することができ、第1の穴(複数可)は1つまたは複数の第1の阻止手段を形成し、第2の壁(または第2のフランジ)はネジを通す第2の穴を1つのみ、または複数の穴を有することができ、第2の穴(複数可)は1つまたは複数の第2の阻止手段を形成する。第1の阻止手段(または第1の穴)は、ネジ連結によって、第2の阻止手段(または第2の穴)と協働して、第1の環状壁が第2の環状壁に対して回るのを阻止する。
【0025】
第2の変形形態では、阻止手段は、第1の環状壁に固定された少なくとも1つの第1の突起部と、第2の環状壁に固定された少なくとも1つの第2の突起部とを備え、相補型組立手段同士は第1の方向に係合によって方位に協働し、第1の突起部と第2の突起部は、第1の方向には弾性係合によって方位に協働し、第1の方向と反対である第2の方向には第1の突起部と第2の突起部は当接して方位に協働する。
【0026】
相補型組立手段同士が方位に係合されると、第1の突起部は第2の突起部と係合する。係合運動中、一方または両方の突起部が、一方の突起部が他方の突起部の向こうに移るのを可能にするように弾性変形される。例えば、第2の環状壁を第1の環状壁に対して所定位置の方位に位置決めすることによって、係合が完了された後は、第1の突起部と第2の突起部は互いに脱係合し、それらの初期形状に戻る。したがって、第1の環状壁と第2の環状壁の係合は、ストロークの終わりにあるか、または封鎖された相補型組立手段によって第1の方向の方位にも阻止され(例えば、それらをこの第1の方向に解除するためには、振動によって、または燃焼室内の熱膨張差によって生成される力よりも大きな締め付けトルクを送達することが必要となる)、当接して協働する2つの突起部によって第1の方向と反対の第2の方向の方位にも阻止される。
【0027】
当然のことながら、阻止手段が複数の第1の突起部と複数の第2の突起部とを備えるとき、少なくとも1つの第1の突起部が少なくとも1つの第2の突起部と協働する。1つまたは複数の他の第1の突起部が、それぞれ1つまたは複数の他の第2の突起部と協働することも可能である。
【0028】
有利なことに、第1の突起部は第1のフランジから実質的に半径方向に延在し、第2の突起部は第2のフランジから実質的に半径方向に延在する。
【0029】
この第2の変形形態では、この第1の突起部または各第1の突起部は第1の阻止手段を形成し、この第2の突起部または各第2の突起部は第2の阻止手段を形成する。
【0030】
第3の変形形態では、阻止手段は、第1の環状フランジと第2の環状フランジから選択された一方のフランジ内に形成された、第1の環状フランジと第2の環状フランジから選択された他方のフランジ内に形成された隙間内に係合される少なくとも1つの折畳み式羽根を備える。
【0031】
当然のことながら、第1のフランジまたは第2のフランジは折畳み式羽根を有し、第1のフランジと第2のフランジのうちの他方のフランジは、相補型組立手段同士が方位に係合されると折畳み式羽根が折畳まれることにより中に係合される隙間(即ち窓部または切出し部)を有する。例えば、隙間は、フランジの自由縁部のそばで開いており、この隙間はU字形状を形成する。したがって、羽根を隙間内に係合させるためには、隙間のU字形状の底部の中に羽根を折り込むことよってそれを畳むだけでよい。U字形状の垂直方向の縁部は、折り畳まれた羽根の縁部と当接して協働することによって、第1の環状壁と第2の環状壁の間の相対的な方位方向の動きを制限および/または阻止する。
【0032】
この第3の変形形態では、この折畳み式羽根または各折畳み式羽根は第1の連結手段を形成し、この隙間または各隙間は第2の連結手段を形成する(またはその逆)。
【0033】
本発明は、本発明の燃焼室を含むターボ機械も提供する。
【0034】
本発明は、本発明の環状燃焼室を組み立てるための組立方法であって、
対面する第1の環状壁および第2の環状壁の相補型組立手段を提供するステップと、
第2の環状壁を第1の環状壁に対して回すことによって相補型組立手段同士を方位に係合するステップとを備える方法も提供する。
【0035】
当然のことながら、方位に係合するように回すこととは、軸方向を中心に実行される。
【0036】
有利なことに、環状燃焼室は、第2の環状壁の第1の環状壁に対する回転を阻止する阻止手段を含み、前記方法は、第2の環状壁が第1の環状壁に対して回る(方位方向に)のを阻止するステップをさらに備える。
【0037】
非制限的な例としてここに与えられる本発明の様々な実施形態についての以下の詳しい記述を読めば、本発明およびその利点がより充分に理解されることが可能である。記述は添付図面を参照する。