【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
高純度金属級シリコン(UMG‐Si)は、一般的に、ドーパント不純物について補償状態にある。シリコンは、電子アクセプタおよびドナーの両方の型のドーパント不純物を含有する場合に、補償されているとされる。
【0003】
アクセプタドーパントの濃度N
Aおよびドナードーパントの濃度N
Dに応じて、複数の補償レベルを定めることができ、完全な補償は、N
A=N
Dにて得られる。通常、アクセプタ型の不純物は、ホウ素原子であり、ドナー型の不純物は、リン原子である。
【0004】
図1は、金属級シリコンインゴットの位置hに対するホウ素濃度[B]およびリン濃度[P]を表す。
【0005】
両型の不純物が同時に存在することから、このシリコンの導電型は、より高い濃度を有する方の不純物によって決定される。インゴットの最下部分(低h)では、ホウ素原子の濃度がリン原子の濃度よりも大きく、この場合、シリコンは、p‐導電型である。他方、上部分では、リン濃度がホウ素濃度を上回っている。この場合、シリコンは、n‐導電型である。
【0006】
高さh
eqでは、従って、インゴットは、導電型の変化を示し、
図1の例ではp‐型からn‐型である。この高さでは、ホウ素とリンの濃度が等しく([B]
heq=[P]
heq)、これは、シリコンが完全に補償されていることを意味する。
【0007】
UMG‐Siウェハから光起電力セルを作製するには、ドーパント含有量の厳格な制御が必要である。アクセプタドーパントおよびドナードーパントの濃度は、実際、変換効率などのセルの電気的特性に影響を与える。
【0008】
従って、特に追加の精製工程が必要かどうかを判断するために、シリコンインゴット中のドーパント濃度を知ることは重要であると考えられる。また、インゴットを製造するために用いられるシリコン供給原料中のドーパント濃度を知ることも有用である。そして、この情報により、光起電力セルの製造方法を最適化することが可能となる。
【0009】
ドーパント濃度の特定は、一般的には、シリコンインゴットの供給業者により、その結晶化完了時に行われる。種々の異なる技術が用いられ得る。
【0010】
特許文献1の特許出願には、補償シリコンインゴット中のドーパント濃度を特定するための方法が記載されている。インゴットの高さ全体にわたる電気抵抗率が測定され、p‐型導電性とn‐型導電性との間の遷移が検出される。この遷移が、実際には、抵抗率のピークをもたらす。次に、接合部での抵抗率の値および実験による関係から、p‐n接合部におけるホウ素およびリンの濃度が算出される。次に、インゴット全体のドーパント濃度が、シェイルの式(Scheil's equation)により、そこから差し引かれてよい。
【0011】
非特許文献1には、ドーパント濃度を特定するための別の技術が記載されている。導電型が変化する高さh
eqがまず特定される。次に、特許文献1のように、電気抵抗率ρが測定される。しかし、それは、p‐n遷移部ではなく、インゴットの下端部、すなわち固化開始部分に相当する領域にて測定される。パラメータh
eqおよびρは、次に、シェイルの式に代入され、インゴット中の濃度プロファイルが特定される。
【0012】
抵抗率測定に基づくこれらの技術は、しかし、満足されるものではない。実際、これらの技術で得られたドーパント濃度値と予想値との間には大きな相違が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
抵抗率の測定ではなく、電荷キャリア濃度qの測定に基づいて、補償シリコンサンプル中のドーパント不純物の濃度を特定するための方法が、本明細書にて提案される。濃度qは、ホール効果、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)、C‐V特性の測定、または露光下における電荷キャリアの寿命時間を用いる技術によって測定される。濃度q、およびインゴット中のp‐n遷移部(または場合によってはn‐p遷移部)の位置h
eqから、サンプルのアクセプタおよびドナードーパント濃度を正確に算出することができる。
【0023】
定義上、シリコンインゴットは、アクセプタ型およびドナー型のドーパント不純物を含んでなる。ドーパント不純物は、単一の原子から構成されていても、または熱ドナーなどの(複合的な)原子のクラスターから構成されていてもよい。以下の記述では、アクセプタ型不純物としてはホウ素原子、およびドナー型不純物としてはリン原子である例を取り上げる。しかし、砒素、ガリウム、アンチモン、インジウムなどのその他のドーパントも想定され得る。
【0024】
インゴットは、好ましくは、チョクラルスキー法によって引き上げられる。固化開始部分に相当する領域は、以降、「インゴットの最下部」または「インゴットの基底部」と称され、高さは、固化軸に沿ったインゴットの寸法を示す。特に、p‐n遷移部の高さh
eqは、インゴットの最下部に対して算出され、その全高さのパーセント(相対高さ)として表される。
【0025】
図2は、特定するための方法の好ましい実施形態の工程を表す。
【0026】
第一の工程F1にて、インゴットの高さh
eqは、p‐型からn‐型を例とする導電型の変化が見られる高さとして特定される(
図1)。p‐n遷移の検出を可能とするいくつかの技術について、以下で詳細に記載する。
【0027】
第一の技術は、インゴットの種々の高さにて電気抵抗率を測定することから成る。
【0028】
図3は、補償シリコンインゴットにおける、相対高さに対する電気抵抗率の測定の例である。抵抗率ピークは、インゴットの全高さの約76%の位置で現れている。
【0029】
このピークは、シリコンが完全に補償されている場合に得られる導電型の変化に帰することができる。実際、リン濃度[P]が次第にホウ素濃度[B]に近づくに従って(
図1)、遊離電荷キャリアの数はゼロへと向かう。これは、リン原子によって供与される電子が、ホウ素原子によって供与されるホールを補償することに起因する。そして、抵抗率は大きく上昇する。[B]
heq=[P]
heqである平衡状態に到達した後、電荷キャリア(電子)の数が増加するに従って、抵抗率は低下する。
【0030】
従って、抵抗率ピークの横座標は、インゴットにおける導電型変化の位置h
eqに対応する。この例では、h
eqは76%に等しい。
【0031】
抵抗率測定は、4点プローブ法、または誘導結合を例とする非接触法により、簡便な方法で実施することができる。
【0032】
第二の技術は、インゴットの高さ全体にわたって、導電型を直接測定することから成る。導電型の特定は、表面光電圧(SPV)測定法に基づいている。そのような測定の原理は、以下の通りである。レーザーが、インゴットの表面に周期的に適用され、それによって、電子‐ホール対が一時的に発生する。インゴットの表面とプローブとの間の容量結合により、表面電圧の特定が可能となる。
【0033】
照射下での表面電位と暗下での表面電位との間の相違、より詳細にはこの相違の徴候により、インゴットの試験領域における導電型を特定することができる。SPV法による導電型の測定は、例えば、SEMILAB社から販売されている装置PN‐100によって行われる。
【0034】
図3のインゴットの場合、導電型の測定により、p‐型からn‐型への変化が、インゴットの全高さの約76%の位置であることが示される。
【0035】
化学研磨に基づく別の技術を用いて、チョクラルスキー法によって得られた単結晶シリコンインゴットにおけるh
eqを特定することができる。インゴットの複数の部分を、酢酸(CH
3COOH)、フッ化水素酸(HF)、および硝酸(HNO
3)を含有する浴へ浸漬する。処理時間は、浴の温度に応じて変動する。1分から10分より成ることが好ましい。例として、化学浴は、49%のフッ化水素酸の体積1に対して、99%の酢酸溶液の体積3および70%の硝酸溶液の体積3を含んでなる。また、リン酸(H
3PO
4)を酢酸の代わりとしてもよい。
【0036】
発明者らは、このような工程の完了後、インゴットの抵抗率が最も高い部分、すなわち、p‐n遷移が起こる部分が、スワール(swirls)と称される同心状の円または楕円の形状の結晶欠陥を示すことを観察した。そしてインゴットのこの領域の位置が、高さh
eqに対応する。
【0037】
有利には、インゴットは、例えばダイヤモンドソーを用いて、複数のウェハへとダイシングされ、次にこのウェハが、化学処理に供される。
【0038】
図4は、化学研磨工程を経たウェハの3枚の写真を含む。中央のウェハP2が、表面に結晶欠陥を示していることを観察することができる。ウェハP2は、従って、インゴットの遷移領域から得られたものである。ウェハP1およびP3は、それぞれ、導電型の変化の前および後に位置するインゴットの領域を代表するものである。
【0039】
化学浴は、好ましくは、上述の3種類の酸のみを含有する水溶液である。すなわち、これは、水、硝酸、フッ化水素酸、および酢酸またはリン酸によって形成される。金属などのその他のいずれの化学種も含まない浴を用いることで、特定の用途(特に、光起電力)への使用を不可能としてしまうシリコンウェハの汚染が防止される。
【0040】
図2の工程F2では、電荷キャリア濃度q
0が、遷移領域とは異なるインゴットの領域にて測定される。この好ましい実施形態では、測定は、インゴットの基底部で実施され、このことによって、続いて行われるドーパント濃度の算出(工程F3)が簡便となる。種々の技術を用いることができる。
【0041】
論文"Electron and hole mobility reduction and Hall factor in phosphorus-compensated p-type silicon"(F.E. Rougieux et al., Journal of Applied Physics 108, 013706, 2010)にて用いられているホール効果による測定では、補償シリコンサンプル中の電荷キャリア濃度q
0を特定することができる。
【0042】
この技術では、まず、シリコンサンプルの調製が必要である。例えば、厚さ約450μmのシリコンウェハが、インゴットの最下端部から取り出される。次に、10×10mm
2の表面を有するバーが、レーザーによってウェハから切り出される。4つのInGa電気接点が、バーの側面に形成される。
【0043】
ホール効果による測定は、好ましくは、周囲温度にて実施される。これにより、ホールキャリア濃度q
0Hを得ることができ、それによって、以下の関係を用いてq
0を算出することができる。
【数1】
【0044】
上述の論文から得たホール因子r
Hは、補償シリコンにおいて、0.71におよそ等しい。
【0045】
図3に対応するインゴットでは、得られたq
0Hの値は、約1.5
*10
17cm
−3であり、すなわち、インゴットの最下部における電荷キャリア濃度q
0は、約9.3
*10
16cm
−3である。
【0046】
別の選択肢として、電荷キャリア濃度q
0は、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)によって測定することもできる。FTIR技術は、シリコンにおける赤外線の吸収を、この赤外線の波長λに対して測定するものである。ドーパント不純物、ならびに電荷キャリアが、この吸収に寄与する。しかし、論文"Doping concentration and mobility in compensated material: comparison of different determination methods"(J. Geilker et al., 25
th European PV Solar Energy Conference and Exhibition, Valencia, 2010)には、電荷キャリアによる吸収が、λ
2およびq
02の関数として変動することが示されている。従って、FTIRスペクトル上の吸収を測定することにより、q
0の値をそこから推定することができる。
【0047】
ホール効果による測定とは異なり、FTIR測定は、非接触であり、シリコンインゴット上に直接適用することができる。
【0048】
濃度q
0はまた、C‐V(容量‐電圧)測定法によって特定することもできる。この測定には、インゴットの最下部から取られたシリコンサンプルの調製が必要である。例えば金属製であるゲートがサンプル上に堆積されて、MOS容量が作り出される。次に、電気容量が、ゲートに印加された電圧に従って測定される。論文"Determination of the base dopant concentration of large area crystalline silicon solar cells"(D. Hinken et al., 25
th European PV Solar Energy Conference and Exhibition, Valencia, 2010)に記載のように、容量C(V)の二乗の導関数は、q
0に比例する:
【0050】
Vに対する1/C
2のプロットの傾きを測定することにより、q
0を特定することができる。
【0051】
酸素原子を含んでなるホウ素ドーピングインゴットの場合、インゴットの最下部を照射することによってホウ素‐酸素複合体を活性化することから成る最後の技術が、q
0の特定のために想定され得る。光子の形態でのエネルギーの入力は、実際に、結晶化が起こる際に形成される複合体の空間的配置を改変する。
【0052】
q
0の特定は、これらのホウ素‐酸素複合体の照射下における活性化速度を表すモデルの使用を含む。このモデルは以下の通りである。
【0053】
論文"Kinetics of the electronically stimulated formation of a boron-oxygen complex in crystalline silicon"(D.W. Palmer et al., Physical Review B 76, 035210, 2007)には、結晶シリコン中で活性化されたホウ素‐酸素複合体の濃度N
*relが、露光時間tの指数関数として変動することが示されている:
【0055】
R
genは、これらの複合体の発生速度であり、以下の関係式で与えられる:
【0057】
E
Aは、活性化エネルギー(E
A=0.47eV)、k
Bは、ボルツマン定数、Tは、インゴットの温度(単位はケルビン)である。
【0058】
ホウ素のみでドーピングされたシリコンの場合、Palmer et al.の論文によると、項κ
0は、ホウ素原子の濃度の二乗に比例する(κ
0=A・[B]
02)。
【0059】
他方、補償シリコンの場合、ホウ素原子の濃度[B]
0は、正味のドーピング、すなわち、ホウ素とリンとの濃度の差、[B]
0−[P]
0に置き換える必要がある。この正味のドーピングは、電荷キャリア濃度q
0と同等である。
【0060】
そして、ホウ素‐酸素複合体の発生速度R
genと電荷キャリア濃度q
0との間の関係を、そこから推定することができる:
【0062】
Aは、5.03
*10
−29s
−1・cm
6に等しい定数である。
【0063】
従って、q
0の特定のために、任意の時点でのホウ素‐酸素複合体の濃度N
*relが測定され、続いて関係式(1)および(2)が用いられる。
【0064】
濃度N
*relは、経時での電荷キャリアの寿命時間τの変動を測定することによって得ることができる。N
*relおよびτは、実際は、以下の関係式で関連付けられ:
【0065】
【数6】
および
【数7】
式中、τ
0は、露光前のキャリアの寿命時間であり、N
*(∞)は、N
*(t)の限界(最大)値、すなわち、すべての複合体が活性化された場合のホウ素‐酸素複合体の濃度である。N
*relは、実際は、ホウ素‐酸素複合体の相対濃度である。
【0066】
寿命時間測定は、好ましくは、IC‐QssPC技術、IC‐PCD技術、またはμW‐PCD技術によって実施される。これらの技術は、従来からのものであり、本出願において詳細に取り扱わない。
【0067】
シリコンインゴットは、好ましくは、強度が1mW/cm
2から10W/cm
2より成る白色光に供され、インゴットの温度は、0℃から100℃より成る。白色光源は、例えば、ハロゲンランプまたはキセノンランプである。
【0068】
図5は、シリコンインゴットの最下部における、白色光への露光時間に対するキャリアの寿命時間τのプロットである。この例では、シリコンの温度は、52.3℃であり、光の強度は、約0.05W・cm
−2である。
【0069】
この曲線プロットから、ホウ素‐酸素複合体の相対濃度N
*relを算出し、そこから濃度q
0を推定することが可能である(関係式1から5)。この技術によって得られたq
0の値は、約6.3
*10
16cm
−3である。
【0070】
光照射下でのキャリアの寿命時間τのモニタリングは、
図5の場合のように連続的であってよく、または、ウェハもしくはインゴットが、2つの寿命時間測定期間の間の停止期間にわたって暗下に置かれる限りにおいて、非連続的であってもよい。
【0071】
別の選択肢としての実施形態では、濃度N
*relは、電荷キャリアの拡散長L
Dの測定によって特定され、それは、その寿命時間に直接依存する:
【0073】
L
Dの値は、レーザー光誘起電流(LBIC)マッピングから得ることができる。項μは、サンプル中のキャリアの移動度である。しかし、式(4)にて簡約されるため、それが既知である必要はない。
【0074】
寿命時間または拡散長の測定を介するホウ素‐酸素複合体の活性化に関連する技術は、簡便に実施される。実際、ホール効果による測定とは異なり、サンプル調製の必要はまったくない。さらに、これは非接触であり、従って、インゴットのp‐型領域へ直接適用することができる。
【0075】
好ましくは、インゴットは、ドーパント(ドナーおよびアクセプタ)ならびに酸素以外の不純物を含まない。特に、インゴットが鉄を含まないことが有利である。
【0076】
上述の濃度q
0を特定するための技術は(工程F2)、高さh
eqを特定するための技術(F1)のうちのいずれの1つと共に用いることも可能である。工程F2はまた、工程F1の前に実施することも可能である。
【0077】
図2の工程F3は、工程F1で特定された高さh
eqおよび工程F2で測定された濃度q
0から、インゴットの最下部のホウ素およびリンの濃度を算出することに対応する。この算出は、以下に示す形でインゴット中のホウ素およびリンの濃度の変動を表すものであるシェイル‐ガリバー則(Scheil-Gulliver's law)に基づいている。
【0079】
[B]
hおよび[P]
hは、インゴットの任意の高さhにおけるホウ素とリンの濃度である。[B]
0および[P]
0は、インゴットの最下部におけるホウ素とリンの濃度を示す。最後に、k
Bおよびk
Pは、それぞれ、ホウ素およびリンの分配係数(sharing coefficients)であり、偏析係数とも称される(k
B、k
P<1)
【0080】
高さh
eqでは、シリコンは完全に補償されている。そこから、以下の関係式が推定される:
【0082】
[B]
heqおよび[P]
heqを、式(6)および(7)で置き換えると、関係式(8)は、以下のようになる:
【0084】
さらに、インゴットの最下部におけるホウ素の濃度[B]
0およびリンの濃度[P]
0は、以下の関係式で関連付けられる:
【数13】
【0085】
関係式(10)は、インゴットの最下部がp‐型である場合に有効である。リンおよびガリウムによって例えば得られるn‐型の場合、逆の関係式が得られる:
【数14】
【0086】
方程式(9)および(10)の系を解くことによって、h
eqおよびq
0の関数としての[B]
0および[P]
0の濃度の式が得られる。
【0088】
従って、関係式(11)および(12)は、p‐n遷移の高さh
eqおよび電荷キャリア濃度q
0から、インゴットの最下部におけるホウ素およびリンの濃度の算出を可能とするものである。そして、インゴット全体のドーパント濃度は、関係式(7)および(8)によって算出することができる。
【0089】
さらに、インゴットの引き上げに用いられるシリコン供給原料中の初期ホウ素およびリン濃度を直接算出することも可能である。[B]
Cおよび[P]
Cで記されるこれらの濃度は、関係式(11)および(12)より、以下の方法で推定される:
【0091】
インゴットの最下部がn‐型である場合、関係式(11)から(14)のq
0は、関係式(10’)に従って、−q
0に置き換えられる。
【0092】
式(11)から(14)は、すべてのアクセプタおよびドナーについて作り出すことができる。アクセプタドーパントの濃度N
Aおよびドナードーパントの濃度N
Dを特定するためには、単にホウ素およびリンの分配係数(sharing coefficients)k
Bおよびk
Pを、用いられるアクセプタおよびドナードーパントの係数k
Aおよびk
Dに置き換える必要があるだけである。
【0093】
以下の表1は、これまでに得られたh
eqおよびq
0を示す。インゴットの最下部でのホウ素およびリンの濃度[B]
0および[P]
0は、上記で想定されたq
0を特定するための3つの技術のうちの2つ、ホール効果およびホウ素‐酸素複合体の活性化速度のモニタリング(表中「LID」で示す)について、関係式(11)および(12)を用いて算出した。比較のために、表1は、[B]
0および[P]
0濃度の予測値(レファレンスサンプル)、ならびに先行技術の方法(抵抗率)で得られた値も示す。
【0095】
図2の方法(ホール効果、LID)によって得られたドーパント濃度の値は、先行技術の方法で得られたものよりも予測値に近いことが分かる。従って、工程F3の計算を実施する際に抵抗率を用いないことにより、補償シリコンインゴット中のホウ素濃度およびリン濃度の正確な値が得られる。
【0096】
ドーパント含有量を特定するための方法を、インゴットの最下部における電荷キャリア濃度(q
0)の測定に関連して記載した。しかし、この濃度は、インゴットのいずれの領域においても特定することができる(q)。その場合、方程式(6)から(14)はそれに応じて改変される。
【0097】
この方法を、単一の種類のアクセプタドーパント、ホウ素、および単一の種類のドナードーパント、リン、について記載した。しかし、複数種類のアクセプタドーパントおよび複数種類のドナードーパントを用いることもできる。その場合、n個の方程式による系が得られることになる(nは、未知要素の数、すなわち、異なるドーパントの数である)。この方程式を解くために、電荷キャリア濃度qの測定が、インゴットの異なる高さにて、n−1回行われ、1回の測定は、ドーパント濃度の平衡(p‐型ドーパント濃度の合計=n‐型ドーパント濃度の合計)が得られる高さh
eqで行われる。