【実施例】
【0024】
例1.300℃でのV−Ti−P触媒上での2−メチル−THFの気相脱水
500mL1つ口丸底フラスコ中で、300mLの脱イオン水中にメタバナジン酸アンモニウム(19.455g)を最初に懸濁させることにより触媒を調製した。70℃で1時間加熱した後に、85%のオルトリン酸(105.4g)を70℃で15分かけて添加し、淡橙色溶液を提供した。残留反応体を、最小量の水で反応フラスコ中に洗浄した。50wt%のチタン(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(TBALDH)溶液(218.45g)を、凝縮器及びメカニカルスターラを備えた1L3つ口ケトル反応器に添加した。V/P溶液をゆっくりとTBALDH溶液中に注ぎ、淡緑色の懸濁液を提供した。V/Pフラスコを30mLの水ですすぎ、そして内容物を反応フラスコに加えた。次いで、混合物を700〜800rpmで130℃にて16時間撹拌した。その後、水を4〜6時間かけて蒸留により除去し、得られた湿った淡緑色固形分をセラミック皿に移し、そしてマッフル炉中で300℃にて16時間、空気中で加熱した。得られた固形分を粉砕し、の8×14メッシュに篩い分けした。その後、8×14メッシュに篩い分けしたものを石英管中で空気(60SCCM)中で450℃にて6時間焼成し、淡緑色の不規則な形状のペレットを提供した。この材料はBET表面積が51.4m
2/gであり、X線回折により非晶性であり、X線蛍光分光法によって決定して、モル組成が1.0V−2.0Ti−5.1Pである。
【0025】
2−メチル−THFの脱水は、長さ=61cm(24インチ)を有する25mm外径(21mm内径)の石英反応管中で行った。反応器への熱はバーンステッドインターナショナル電気管状炉(タイプF21100)によって提供した。石英反応器はチューブの基部から上方20cm(8インチ)にくぼみを有していた。くぼみのある反応器の領域は炉の加熱部分の基部付近に位置していた。また、反応器は反応器頂部からくぼみの下方1インチ程度まで伸びているサーモウェルを備えていた。反応器をくぼみの上方約2.5インチの高さまで石英チップで最初に装填し、触媒が炉の中央に配置することができるようにした。次いで、反応器を、5.0gの触媒で装填した。サーモウェル内の熱電対を触媒床の中央付近に配置した。十分な石英チップ(約2.5インチ)を、炉の加熱領域の頂部に達するように触媒充填物の上方の領域に加えた。液体生成物を、トラップを有するドライアイス凝縮器を備えた三つ口フラスコに回収した。第一レシーバーの基部及びドライアイストラップは各々液体生成物の排出を可能にするストップコックを備えていた。
【0026】
80SCCMに設定した窒素キャリアガス及び0.2mL/分の無水2−メチルテトラヒドロフランフィード速度を用いて脱水反応を行った。炉の温度を300℃に設定した。液体サンプルを3時間後に回収し、質量測定し、有機生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。第一レシーバーに回収した二相材料を「レシーバー」とラベル付けし、無水テトラヒドロフランをGC分析の前にサンプルを均質化するために添加した。運転完了の30分後にドライアイストラップレシーバーから収集される材料を「トラップ1」とラベル付けする。トラップを室温に温めたときにドライアイストラップレシーバーから収集される材料を「トラップ2」とラベル付けし、無水テトラヒドロフランをGC分析前にサンプルを均質化するために添加した。
【0027】
本例はV−Ti−P触媒が2−Me−THFのピペリレンへの脱水に活性であることを示す。基質のほぼ60%が転化され、そして1,4−ペンタジエン及び1,3−ペンタジエンへの生成物選択率は、それぞれ、約10%及び60%である。この反応のSTY、すなわち、速度は8.6モル1,3−ペンタジエン/Kg触媒/hである。
【0028】
例2.350℃でのV−Ti−P触媒上での2−メチル−THFの気相脱水
本例の脱水反応を例1により行ったが、400℃で128SCCMの空気流を用いて運転の前に触媒を16時間再生した。その後、炉の温度を350℃に調節し、キャリアガスを窒素(80SCCM)に変更した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。本例は2−Me−THF転化率(88%)がこの反応器温度で高く、そして1,3−ペンタジエンへの選択率が66%に増加し、一方、1,4−ペンタジエンへの選択率が5.5%に低下されることを示す。1,3−ペンタジエンへのこの反応の全体としてのパス当たり収率は約59%であり、そして速度は14モル1,3−ペンタジエン/Kg触媒/hである。
【0029】
例3.例2の反応器条件の再現性
本例の脱水反応を例2により行ったが、0.02gのBHT抑制剤をサンプルバイアルに添加した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。本例はV−Ti−P触媒性能が空気中での再生の後に完全に再現可能であることを明らかに示す。同一の2−Me−THF転化率(88%)は観測され、そして1,3−ペンタジエンへの選択率、1,4−ペンタジエンへの選択率及び高生産速度は前例に記載のものと本質的に同一である。揮発画分(トラップ2)中の1,3−ペンタジエン及び1,4−ペンタジエンの合計濃度は約82質量%である。
【0030】
例4:2−Me−THFのピペリレンへの脱水の寿命研究
本例の脱水反応を例2により行ったが、反応を8時間行った。液体サンプルを2、4、6及び8時間で取った。触媒の性能を表3に要約する。本例は、初期データポイント後に、ピペリレンへの選択率が80%付近で一定であるが、転化率が時間とともに徐々に減少することを示し、それは、おそらくコークス生成によるものである。少量の酸素を共フィードすることは本方法において有利であることができる。というのは、コークスは生成時に燃焼し、それにより、一定の活性を維持するからである。
【0031】
比較例1:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THF脱水
61.83gのホウ酸及び115.29gの85wt%のリン酸及び100gの脱イオン水を500mLビーカー中で混合することにより、従来技術に記載されるとおりに本例での触媒を調製した。2時間の機械攪拌後に、白色ペーストをセラミック皿に移し、そして110℃にて16時間乾燥した。その後、白色固形分を粉砕し、8×14メッシュに篩い分けし、そして350℃で3時間、100SCCM空気流下に焼成した。5gのこの材料を、その後、石英反応管に装填した。2−Me−THFの脱水を例2に記載されるとおりに行った。触媒の性能を表1に要約する。本例は、同一の反応器条件で、リン酸ホウ素触媒がV−Ti−P触媒の選択率の半分未満でピペリレンを生じさせることを示す。さらに、反応の物質収支は77%であり、一方、V−Ti−P触媒反応の物質収支は94%であり、このことはコークス又は気体副生成物への広範なフィード分解を示している。
【0032】
比較例2:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THF脱水の繰り返しの試み
本例での脱水反応を比較例1により行ったが、運転の前に、触媒を400℃で128SCCMの空気流を用いて16時間再生した。その後、炉温度を350℃に調節し、キャリアガスを窒素(80SCCM)へと変更した。触媒の性能を表1に要約する。本例はV−Ti−P触媒と異なり、リン酸ホウ素触媒が上手く再生せず、又は、前の運転から脱活性化し、又は、その両方である。2−Me−THF転化率は本反応では顕著に高いが(98%)、ピペリレンへの選択率は10%未満である。
【0033】
比較例3:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THFの脱水
本例で使用した触媒は前例で使用した触媒装填物と同一であった。脱水実験を前例と同一の反応器構成で行ったが、触媒を128SCCMの空気流を用いて、400℃にて16時間再生した。その後、炉温度を350℃に設定し、2−Me−THFフィード速度を0.0759mL/分、そして窒素流を0SCCMに設定した。これらの反応器設備は/g触媒基準で従来技術にて議論したものと同一であった。本例は、以前に開示された条件で反応を行ったときに、転化率が98%であっても、リン酸ホウ素触媒が2−Me−THFからピペリレンを本質的に生成しないことを示す。61%という低い物質収支はコークス又は気体副生成物への広範なフィード分解を示している。実際、反応管は再生を試みた後にも暗い堆積物で被覆されていた。これらの結果は、低い転化率であるが、ピペリレンへの高い選択率であると報告している従来技術の結果と合致しない。
【0034】
例5:V−Ti−P触媒上での3−メチル−テトラヒドロフランの脱水
本例の脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、3−メチル−テトラヒドロフランを液体フィードとして使用した。本例において使用される触媒は例4において使用されるのと同一の触媒装填物であったが、使用前に、128SCCMの空気流で、400℃にて16時間再生されたものであった。触媒の性能を表4に要約する。本例は3−Me−THFの脱水が対応する2−Me−THF反応ほどには効率的でないことを示す。転化率は58%であり、そしてイソプレンへの選択率はわずか14%であった。驚くべきことに、1,3−ペンタジエンは11%選択率で生成し、そのことは基質炭素骨格の転位を示している。
【0035】
例6:V−Ti−P触媒上でのn−ペンタノールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、n−ペンタノールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例はV−Ti−P触媒が非常に活性であり、そしてn−ペンタノール脱水に選択性があることを明らかに示し、100%転化率及びペンテン異性体への81%選択率を与えた。
【0036】
例7:V−Ti−P触媒上での1,4−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、1,4−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は基質転化率が100%であるが、ピペリレンへの選択率が25%未満であることを示す。基質が非常に反応性である第二級アルコールを含むことに基づいて、反応器温度が本例において高すぎたことが合理的に仮定される。反応器温度を低下させることで、ピペリレンへの選択率を増加させることが期待される。
【0037】
例8:V−Ti−P触媒上での1,5−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、1,5−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。本例は、基質が100%転化され、1,3−ペンタジエンへの選択率が34%であり、環式エーテルのテトラヒドロピラン(THP)への選択率が35%であったことを示す。後者の生成物の生成は基質の部分脱水によるものであり、一方、前者の生成物は完全な脱水から生じる。
【0038】
例9:V−Ti−P触媒上でのテトラヒドロピランの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、テトラヒドロピランを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は、THPがスクリーニングされた他の基質ほど反応性でないことを示す。転化率は41%であり、ピペリレンへの選択率は45%であった。
【0039】
例10:V−Ti−P触媒上での3−メチル−1,5−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。本例は、基質が100%転化され、3−メチル−テトラヒドロピランへの選択率が34%であり、そして3−メチル−1,3−ペンタジエンへの選択率が11%であったことを示す。
【0040】
例11:V−Ti−P触媒上での2,5−ヘキサンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、2,5−ヘキサンジオールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は、基質が100%転化され、ヘキサジエン異性体への選択率が45%であったことを示す。第二級アルコールを含む基質を用いる上記の例で記載されるとおり、本例での生成物選択率も反応器温度を低下させたときに、より高いであろう。
【0041】
例12:V−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例の脱水反応は例1に記載のとおりに行われたが、脱イオン水中のグリセロールの30質量%溶液を液体フィードとして使用し、そして反応器温度を250℃に設定した。また、新鮮な5gのV−Ti−P触媒装填物を用い、そして二相生成物サンプルをTHFでなく無水エタノールで均質化した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が37%であり、一方、アクロレインへの選択率が23%であったことを示す。
【0042】
例13:275℃でのV−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例での脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、反応器温度を触媒再生後に275℃に設定した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が69%であり、一方、アクロレインへの選択率が60%であったことを示す。
【0043】
例14:300℃でのV−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例での脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、反応器温度を触媒再生後に300℃に設定した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が92%であり、一方、アクロレインへの選択率が56%であったことを示す。
【0044】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0045】
本発明をその好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、変更及び変形は本発明の精神及び範囲内で行うことができることは理解されるであろう。
本開示は以下も包含する。
[1]
バナジウム−チタン−リン酸化物触媒の存在下に酸素化有機化合物を反応させて、それにより、前記有機化合物を脱水することを含む、酸素化有機化合物の脱水方法。
[2]
前記方法はアルケン、ジエン、アルデヒド又はそれらの組み合わせを生成する、上記態様1記載の方法。
[3]
前記有機化合物は少なくとも1〜6個のアルコール官能基、少なくとも1〜3個のエーテル基、少なくとも1〜6個の炭素原子又はそれらの組み合わせを含む、上記態様1記載の方法。
[4]
前記有機化合物はエタノール、n−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、イソ-プロパノール、1,2,3−プロパントリオール、n−ブタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、1,2,3,4−ブタンテトロール、n−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、シクロペンタノール、シクロペンタンジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4,5−ペンタンペントール、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロピラン、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、ヘキサントリオール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、メチルテトラヒドロピラン及び1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキソールからなる群より選ばれる、上記態様3記載の方法。
[5]
前記方法の温度は約250℃〜約500℃である、上記態様1記載の方法。
[6]
前記方法の温度は約300℃〜約450℃である、上記態様5記載の方法。
[7]
前記方法の温度は約325℃〜約375℃である、上記態様6記載の方法。
[8]
約300℃〜約600℃の温度での空気中での方法操作と方法操作との間に触媒を再生することをさらに含む、上記態様1記載の方法。
[9]
圧力は約0.1〜約100バール絶対圧(bara)である、上記態様1記載の方法。
[10]
圧力は約1〜約50baraである、上記態様9記載の方法。
[11]
圧力は約10〜約20baraである、上記態様10記載の方法。
[12]
前記触媒は式VTiaPbOc
(式中、aは0.3〜6.0であり、bは2.0〜13.0であり、そしてcは酸素以外の成分の価数を満たすのに必要な原子の数である)を有する、上記態様1記載の方法。