特許第6073325号(P6073325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073325三元混合酸化物上でのアルコール及びエーテルの触媒脱水
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073325
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】三元混合酸化物上でのアルコール及びエーテルの触媒脱水
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20170123BHJP
   C07C 1/247 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 11/10 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 11/12 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 11/173 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 11/18 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 11/20 20060101ALI20170123BHJP
   B01J 27/198 20060101ALN20170123BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   C07C1/24
   C07C1/247
   C07C11/10
   C07C11/12
   C07C11/173
   C07C11/18
   C07C11/20
   !B01J27/198 X
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-530682(P2014-530682)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-534167(P2014-534167A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2012052989
(87)【国際公開番号】WO2013039705
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年8月27日
(31)【優先権主張番号】13/234,277
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ウィリアム ノーマン
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−99596(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/046227(WO,A1)
【文献】 特開昭64−68335(JP,A)
【文献】 特開平5−17392(JP,A)
【文献】 特開昭61−229840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−71/00
B01J 27/00−27/32
C07B 61/00
C07D 309/00−309/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウム−チタン−リン酸化物触媒の存在下に酸素化有機化合物を反応させて、アルケン、ジエン、又はこれらの組み合わせを生成することを含み、前記酸素化有機化合物が、アルコール及びエーテルからなる群から選択され、バナジウム−チタン−リン酸化物触媒は式VTi
(式中、aは0.3〜6.0であり、bは4.0〜13.0であり、そしてcは酸素以外の成分の価数を満たすのに必要な原子の数である)を有する、酸素化有機化合物の脱水方法。
【請求項2】
前記有機化合物は少なくとも1〜6個のアルコール官能基、少なくとも1〜3個のエーテル基、少なくとも1〜6個の炭素原子又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機化合物はエタノール、n−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、イソ-プロパノール、n−ブタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、n−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、シクロペンタノール、シクロペンタンジオール、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロピラン、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、及びメチルテトラヒドロピランからなる群より選ばれる、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記方法の温度は250℃〜500℃である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記方法の温度は300℃〜450℃である、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記方法の温度は325℃〜375℃である、請求項記載の方法。
【請求項7】
00℃〜600℃の温度にて空気中で反応運転同士の間に触媒を再生することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
圧力は0.1〜100バール絶対圧(bara)である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
圧力は1〜50baraである、請求項記載の方法。
【請求項10】
圧力は1〜20baraである、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はバナジウム−チタン−リン混合酸化物触媒を用いたアルコール及びエーテルからのアルケン、ジエン及びアルデヒドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
地質化学的方法は生物学的材料を濃縮しそして脱水することにより、エネルギー密度の高い非再生可能な有機フィード原料を作成してきた。化学業界は、以来、この貴重であるが、限られた資源を活用するための優雅で効率的な方法を開発してきた。現在の方法が非経済的になった場合に、再生可能なバイオベースの原料を市場性の高い製品へと転化することにより石油化学製造を補完することの重要性が大きくなるであろう。しかしながら、生成物選択性を最大にしながら、生物学的材料から50質量%までの水を除去することは研究界への重大な課題を提起する。ピペリレンは、例えば、石油産業の副生成物であり、プラスチック、接着剤及び樹脂の製造のための重要な原料である。副生成物の生成を削減するプロセス改良のために、商業ピペリレン供給はますます限定されている。石油業界からのピペリレンのデカップリングは、したがって、この貴重な製品に有利なルートを提供しうる。
【0003】
このC5混合物の主要成分は1,3−ペンタジエンであり、一般に、ピペリレンと呼ばれ、1,4−ペンタジエンは少量成分であり、1,3−異性体に異性化することができる。生物由来原料である2−メチル−テトラヒドロフラン(2−Me−THF)の触媒脱水は、1,3−ペンタジエンへの競争力のある代替経路を提供することができる。従来技術によるこの反応の報告範囲が限定されており、具体例に欠けるが、この転化を行うのに酸性触媒が必要であることは明らかである。アルミナ上に担持された種々の金属酸化物、リン酸塩及び二酸化チタンは、報告によると、脱水反応を行う。例えば、リン酸ホウ素触媒は91%選択率で、40%の2−Me−THFを1,3−ペンタジエンへ転化して、36%の単一パス収率及び3.1モル1,3−ペンタジエン/Kg触媒/hの空時収率(STY)を提供することが報告されている。
【0004】
ピペリレン重合及びガス状分解生成物の生成などの二次反応はこの反応に収量損失をもたらす。触媒コークス化は、性能を妨げるだけでなく、触媒の不活性化につながる可能性のある反応体及び生成物に対する触媒感度を妨げることがある。この反応に好適な触媒は、したがって、高い2−Me−THF転化率及び高いペンタジエンへの選択率を示し、運転と運転の間の活性を維持するであろう。
【0005】
ジ−アルコール及び環状エーテル基質が対応するジエンをもたらすことができる一方で、モノ−アルコールなどの他の基質の脱水は有用なアルケン生成物を提供することができる。例えば、ペンタンジオールがペンタジエン異性体の混合物を生成する一方で、n−ペンタノールは直鎖ペンテンの混合物を形成するものと期待される。テトラヒドロピラン及び3−メチル−テトラヒドロフランは、両方とも環状エーテルであり、それぞれ、ペンタジエン異性体及びイソプレンを生成することが期待される。
【0006】
例えば、バイオディーゼル共製品であるグリセロールなどのトリ−アルコール基質は、脱水時にアクロレインへと転化されうることが知られている。この製品は、アクリル酸への直接商業前駆体であるが、特に、酸性触媒表面上で非常に反応性でありかつ重合する傾向がある。ヒドロキシアセトン(アセトール)及びアセトンの生成もこの反応からの可能な生成物である。このように、アクロレインへのグリセロールの触媒脱水は重大な選択性の課題を提起することができる。
【0007】
上記の脱水反応を促進することができ、再利用可能であり、大量の水の存在下で脱活性化しない触媒は非常に有用であろう。
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な要旨
第一の態様において、本発明はバナジウム−チタン−リン酸化物触媒の存在下に有機化合物を反応させ、それにより、前記有機化合物を脱水することを含む、酸素化有機化合物の脱水方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
1つの実施形態によると、本明細書中に記載の触媒は上記の脱水反応を促進することができる。該触媒は再使用可能であり、そして大量の水の存在下に脱活性化しない。
【0010】
バナジウム、チタン及びリン(V−Ti−P)からなる三元バナジウムリン酸化物(VPO)は両性触媒であり、二元V−P類似体よりも高い収量でアクリレートを生成することが報告されているが、脱水反応における使用のためには研究されていない。このように、ある実施形態によると、本明細書中に開示の本発明はバナジウム−チタン−リン(V−Ti−P)酸化物触媒による不飽和炭化水素及びアルデヒドの製造方法に関する。例えば、V−Ti−P触媒は2−メチル−テトラヒドロフランの高転化を示すだけでなく、良好な収率でピペリレンを製造し、そして運転同士の間に活性を維持することを驚くべきことに発見した。2−Me−THFのピペリレンへの転化はこの貴重な前駆体分子への魅力的な代替経路を提供する。現在の石油化学経路に対する競争力のある代替方法を提供することに加えて、2−Me−THFがレブリン酸及びフルフラールなどの生物由来化学物質から製造されるので、この脱水反応の効率的な触媒作用はより維持可能なアプローチを提供する。「ピペリレン(単数又は複数)」は1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン又はそれらの組み合わせであることが意図される。以下の実施例に示すとおり、V−Ti−P触媒は、95%という高い2−Me−THF転化率、81%というピペリレンへの選択率、65%という高いパス当たりのピペリレン収率及び15モルピペリレン/Kg触媒/h以下のSTYを示す。空気中での再生時には、触媒性能は、完全に再現可能である。このことは、V−Ti−P材料が有機反応体、生成物及び共生成水による脱活性化に耐性であることを示唆している。
【0011】
以前に開示されたリン酸ホウ素触媒の2−Me−THFの性能を再現する試みは成功しなかった。従来技術に記載のように触媒を調製したが、この材料を用いた各実験は、高2−Me−THF転化率をもたらしたが、ピペリレンへの選択性がほとんどなかった。実際に、従来技術に記載した反応器条件を使用して、本質的にピペリレンを提供しなかった。反応器から取り出したときに、空気中で400℃にて再生した後にも、触媒及び反応管が広範囲なコークス堆積物で汚染されていることが明らかであった。一方、Vi−Ti−P触媒は、同様の処理時にコークス生成の目に見える証拠を示さない。
【0012】
V−Ti−P触媒は他の生物由来の化学物質を対応する脱水アルケン及びジエンへ転化することもできる。例えば、n−ペンタノールは100%転化率で、直鎖状及び枝分かれ鎖ペンテンの混合物への81%選択率で脱水されうる。1,5−ペンタンジオールは100%転化率で脱水され、38%選択率でピペリレン、39%選択率でフィードの部分脱水から生じるテトラヒドロピラン(THP)を提供することができる。基質として、THPは、V−Ti−P触媒上で脱水するよりも難しい環状エーテルである。それが本質的に低い塩基性を有するという事実のために、2−Me−THFよりも低い反応性である。それにもかかわらず、THPは45%の選択率及び44%転化率でピペリレンに転化されうる。
【0013】
以下に議論する実施例の大部分は様々な基質の脱水のために同一の反応条件を用いる。反応器の温度は、例えば、n−ペンタノール及び1,5−ペンタンジオールなどの第一級アルコール基質の選択的転化を補助するのに適している約350℃であった。他方、第二級アルコールの脱水は、転化率が100%であっても、かなり少ない選択性であった。第二級アルコールは、通常、第一級同族体よりも反応性が高く、従って、より低い反応器温度はこれらの脱水反応の選択率を向上させることができる。
【0014】
アクロレイン、α,β−不飽和アルデヒドへのグリセロール脱水は液相及び気相の両方で酸触媒作用を介して起こることが知られている。この反応は興味深い。というのは、それが現在、プロピレンの二段酸化により製造されるアクリル酸に対する継続的な代替品を提供するからである。V−Ti−P触媒は、高い転化率及び中程度の選択率でグリセロールの水溶液をアクロレインへ転化することができる。グリセロール中に存在する第二級アルコール官能基のために、この反応を行うのに必要な反応器温度は上記の基質のものよりもかなり低い。例えば、300℃で行った場合には、グリセロール転化率は92%であり、アクロレインへの選択率は56%であり、52%のパス当たり収率及び4モルアクロレイン/Kg触媒/hのSTYを提供する。
【0015】
ある実施形態によると、脱水反応で用いたV−Ti−P触媒は多くの方法に従って調製することができる。しかしながら、典型的には、触媒はメタバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム前駆体を水中に懸濁させ、続いて、85%リン酸を添加することによって得られる。次いで、この溶液を、水溶性チタン前駆体(TBALDH)の水溶液に添加する。得られた懸濁液を高温で撹拌し、次いで、蒸留による水の除去を行う。空気中での得られた固形分の焼成は所望の触媒を提供する。触媒組成物は一般式VTiを有し、ここで、a=0.3〜6.0であり、好ましくは1.0〜4.0であり、b=2.0〜13.0であり、好ましくは4.0〜10.0であり、そしてcは酸素以外の成分の価数を満たすために要求される原子数である。
【0016】
ある実施形態によると、方法は少なくとも1〜6個のアルコール官能基、少なくとも1〜3個のエーテル基、及び、少なくとも1〜6個の炭素原子又はそれらの組み合わせを含む酸素化有機化合物の脱水を含む。例えば、このような有機化合物としては、エタノール、n−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、イソ−プロパノール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、n−ブタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、1,2,3,4−ブタンテトロール(トレイトール、エリスリトール)、n−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、シクロペンタノール、シクロペンタンジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4,5−ペンタンペントール(キシリトール)、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロピラン、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、ヘキサントリオール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、メチルテトラヒドロピラン、1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキソール(ソルビトール)を挙げることができ。ケトン、ラクトン、アルデヒド、エステル及びカルボン酸などの官能基は、また、基質分子中に存在してもよい。さらに、窒素、リン、硫黄などの酸素以外のヘテロ原子は基質分子中に存在してもよい。
【0017】
本発明のある実施形態によると、方法から生じる生成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン、ブタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、イソプレン、テトラヒドロピラン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、メチルテトラヒドロピラン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、アセトン、ヒドロキシアセトン、アクロレインが挙げられる。有機化合物は、約250℃〜約500℃、約300℃〜約450℃、又は、約325℃〜約375℃の処理温度で、V−Ti−P触媒上で脱水される。さらに、窒素又は酸素欠乏空気などの任意の非反応性キャリアガスは、約10SCCM〜1000SCCM、又は、約50SCCM〜500SCCM、又は、約80SCCM〜100SCCMで使用されうる。非反応性キャリアガスは合計フィードの0.1〜90モル%、10〜70モル%、又はさらには40〜60モル%の範囲の濃度で存在することができる。さらに、酸素などの反応性ガスも反応の間に導入されてよく、それにより、コークスの蓄積の量を最少にすることができる。酸素成分の濃度は、0.1〜25モル%、1〜15モル%、又は、さらには2〜5モル%の範囲であることができる。コークス堆積の場合には、触媒は反応運転同士の間に、空気中で約300℃〜約600℃の温度で再生することができる。
【0018】
方法は、約0.1〜約100バール絶対圧(bara)、約1〜約50bara、又は、さらには、約10〜20baraの圧力で運転されうる。
【0019】
ある実施形態によると、脱水反応のためのフィード材料は有機化合物である。有機化合物が所望のフィード温度で液体形態であるならば、それは水などの希釈剤と混合されてもよい。有機化合物が所望のフィード温度で固体であるならば、それは水性又は有機溶媒中に溶解することができる。さらに、ある実施形態によると、この反応のための液体フィード速度は、約1.0〜約1000mL/Kg触媒/分、約5〜約500mL/Kg触媒/分、又は、約10〜100mL/Kg触媒/分であることができる。ブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの抑制剤は重合を最少にするために生成物に添加されてもよい。
【0020】
実施例
材料
メタバナジン酸アンモニウム(99+wt%NHVO)、リン酸(85wt%、HPO)、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(水中50wt%溶液)、ホウ酸、及び、アルコール及びエーテル基質を商業供給業者から購入し、受け取ったまま使用した。
【0021】
略語
XRD=X−線回折、SCCM=標準立方センチメートル/分、2−Me−THF=2−メチルテトラヒドロフラン、3−Me−THF=3−メチルテトラヒドロフラン、THP=テトラヒドロピラン、3−Me−THP=3−メチルテトラヒドロピラン、1,4−C =1,4−ペンタジエン、1,3−C =1,3−ペンタジエン、STY=空時収率
【0022】
ガスクロマトグラフィー手順
液体製品サンプルを、測定された時間にわたって収集し、秤量し、そしてガスクロマトグラフィーにより分析した。サンプルを内部標準溶液7.86gと一緒に1.0XXXg(Xは秤に示される実際の数値)の記録重量にバイアル中で秤量した。内部標準溶液を、75.00gのシクロペンタノンを1000mLフラスコ中に秤量し、次いで、アセトニトリルでフラスコにその体積まで満たすことによって調製した。全ての成分を分離するために、各サンプルを、可能な検体に較正したShimadzu 2010ガスクロマトグラフに注入した。この手順を用いて、グリセロールの脱水反応を除くすべての脱水反応からの生成物を分析した。
【0023】
内部標準品として約0.15gのTHFと一緒にGCバイアル中で約1.2gのサンプルを秤量することによって、グリセロール脱水からの液体生成物サンプルを分析した。全ての成分を分離するために、各サンプルを、可能な検体に較正したHP5890ガスクロマトグラフに注入した。
【実施例】
【0024】
例1.300℃でのV−Ti−P触媒上での2−メチル−THFの気相脱水
500mL1つ口丸底フラスコ中で、300mLの脱イオン水中にメタバナジン酸アンモニウム(19.455g)を最初に懸濁させることにより触媒を調製した。70℃で1時間加熱した後に、85%のオルトリン酸(105.4g)を70℃で15分かけて添加し、淡橙色溶液を提供した。残留反応体を、最小量の水で反応フラスコ中に洗浄した。50wt%のチタン(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(TBALDH)溶液(218.45g)を、凝縮器及びメカニカルスターラを備えた1L3つ口ケトル反応器に添加した。V/P溶液をゆっくりとTBALDH溶液中に注ぎ、淡緑色の懸濁液を提供した。V/Pフラスコを30mLの水ですすぎ、そして内容物を反応フラスコに加えた。次いで、混合物を700〜800rpmで130℃にて16時間撹拌した。その後、水を4〜6時間かけて蒸留により除去し、得られた湿った淡緑色固形分をセラミック皿に移し、そしてマッフル炉中で300℃にて16時間、空気中で加熱した。得られた固形分を粉砕し、の8×14メッシュに篩い分けした。その後、8×14メッシュに篩い分けしたものを石英管中で空気(60SCCM)中で450℃にて6時間焼成し、淡緑色の不規則な形状のペレットを提供した。この材料はBET表面積が51.4m/gであり、X線回折により非晶性であり、X線蛍光分光法によって決定して、モル組成が1.0V−2.0Ti−5.1Pである。
【0025】
2−メチル−THFの脱水は、長さ=61cm(24インチ)を有する25mm外径(21mm内径)の石英反応管中で行った。反応器への熱はバーンステッドインターナショナル電気管状炉(タイプF21100)によって提供した。石英反応器はチューブの基部から上方20cm(8インチ)にくぼみを有していた。くぼみのある反応器の領域は炉の加熱部分の基部付近に位置していた。また、反応器は反応器頂部からくぼみの下方1インチ程度まで伸びているサーモウェルを備えていた。反応器をくぼみの上方約2.5インチの高さまで石英チップで最初に装填し、触媒が炉の中央に配置することができるようにした。次いで、反応器を、5.0gの触媒で装填した。サーモウェル内の熱電対を触媒床の中央付近に配置した。十分な石英チップ(約2.5インチ)を、炉の加熱領域の頂部に達するように触媒充填物の上方の領域に加えた。液体生成物を、トラップを有するドライアイス凝縮器を備えた三つ口フラスコに回収した。第一レシーバーの基部及びドライアイストラップは各々液体生成物の排出を可能にするストップコックを備えていた。
【0026】
80SCCMに設定した窒素キャリアガス及び0.2mL/分の無水2−メチルテトラヒドロフランフィード速度を用いて脱水反応を行った。炉の温度を300℃に設定した。液体サンプルを3時間後に回収し、質量測定し、有機生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。第一レシーバーに回収した二相材料を「レシーバー」とラベル付けし、無水テトラヒドロフランをGC分析の前にサンプルを均質化するために添加した。運転完了の30分後にドライアイストラップレシーバーから収集される材料を「トラップ1」とラベル付けする。トラップを室温に温めたときにドライアイストラップレシーバーから収集される材料を「トラップ2」とラベル付けし、無水テトラヒドロフランをGC分析前にサンプルを均質化するために添加した。
【0027】
本例はV−Ti−P触媒が2−Me−THFのピペリレンへの脱水に活性であることを示す。基質のほぼ60%が転化され、そして1,4−ペンタジエン及び1,3−ペンタジエンへの生成物選択率は、それぞれ、約10%及び60%である。この反応のSTY、すなわち、速度は8.6モル1,3−ペンタジエン/Kg触媒/hである。
【0028】
例2.350℃でのV−Ti−P触媒上での2−メチル−THFの気相脱水
本例の脱水反応を例1により行ったが、400℃で128SCCMの空気流を用いて運転の前に触媒を16時間再生した。その後、炉の温度を350℃に調節し、キャリアガスを窒素(80SCCM)に変更した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。本例は2−Me−THF転化率(88%)がこの反応器温度で高く、そして1,3−ペンタジエンへの選択率が66%に増加し、一方、1,4−ペンタジエンへの選択率が5.5%に低下されることを示す。1,3−ペンタジエンへのこの反応の全体としてのパス当たり収率は約59%であり、そして速度は14モル1,3−ペンタジエン/Kg触媒/hである。
【0029】
例3.例2の反応器条件の再現性
本例の脱水反応を例2により行ったが、0.02gのBHT抑制剤をサンプルバイアルに添加した。触媒の性能を表1に要約する。サンプルの有機成分の質量%分析データを表2に要約する。本例はV−Ti−P触媒性能が空気中での再生の後に完全に再現可能であることを明らかに示す。同一の2−Me−THF転化率(88%)は観測され、そして1,3−ペンタジエンへの選択率、1,4−ペンタジエンへの選択率及び高生産速度は前例に記載のものと本質的に同一である。揮発画分(トラップ2)中の1,3−ペンタジエン及び1,4−ペンタジエンの合計濃度は約82質量%である。
【0030】
例4:2−Me−THFのピペリレンへの脱水の寿命研究
本例の脱水反応を例2により行ったが、反応を8時間行った。液体サンプルを2、4、6及び8時間で取った。触媒の性能を表3に要約する。本例は、初期データポイント後に、ピペリレンへの選択率が80%付近で一定であるが、転化率が時間とともに徐々に減少することを示し、それは、おそらくコークス生成によるものである。少量の酸素を共フィードすることは本方法において有利であることができる。というのは、コークスは生成時に燃焼し、それにより、一定の活性を維持するからである。
【0031】
比較例1:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THF脱水
61.83gのホウ酸及び115.29gの85wt%のリン酸及び100gの脱イオン水を500mLビーカー中で混合することにより、従来技術に記載されるとおりに本例での触媒を調製した。2時間の機械攪拌後に、白色ペーストをセラミック皿に移し、そして110℃にて16時間乾燥した。その後、白色固形分を粉砕し、8×14メッシュに篩い分けし、そして350℃で3時間、100SCCM空気流下に焼成した。5gのこの材料を、その後、石英反応管に装填した。2−Me−THFの脱水を例2に記載されるとおりに行った。触媒の性能を表1に要約する。本例は、同一の反応器条件で、リン酸ホウ素触媒がV−Ti−P触媒の選択率の半分未満でピペリレンを生じさせることを示す。さらに、反応の物質収支は77%であり、一方、V−Ti−P触媒反応の物質収支は94%であり、このことはコークス又は気体副生成物への広範なフィード分解を示している。
【0032】
比較例2:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THF脱水の繰り返しの試み
本例での脱水反応を比較例1により行ったが、運転の前に、触媒を400℃で128SCCMの空気流を用いて16時間再生した。その後、炉温度を350℃に調節し、キャリアガスを窒素(80SCCM)へと変更した。触媒の性能を表1に要約する。本例はV−Ti−P触媒と異なり、リン酸ホウ素触媒が上手く再生せず、又は、前の運転から脱活性化し、又は、その両方である。2−Me−THF転化率は本反応では顕著に高いが(98%)、ピペリレンへの選択率は10%未満である。
【0033】
比較例3:リン酸ホウ素触媒を用いた2−Me−THFの脱水
本例で使用した触媒は前例で使用した触媒装填物と同一であった。脱水実験を前例と同一の反応器構成で行ったが、触媒を128SCCMの空気流を用いて、400℃にて16時間再生した。その後、炉温度を350℃に設定し、2−Me−THFフィード速度を0.0759mL/分、そして窒素流を0SCCMに設定した。これらの反応器設備は/g触媒基準で従来技術にて議論したものと同一であった。本例は、以前に開示された条件で反応を行ったときに、転化率が98%であっても、リン酸ホウ素触媒が2−Me−THFからピペリレンを本質的に生成しないことを示す。61%という低い物質収支はコークス又は気体副生成物への広範なフィード分解を示している。実際、反応管は再生を試みた後にも暗い堆積物で被覆されていた。これらの結果は、低い転化率であるが、ピペリレンへの高い選択率であると報告している従来技術の結果と合致しない。
【0034】
例5:V−Ti−P触媒上での3−メチル−テトラヒドロフランの脱水
本例の脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、3−メチル−テトラヒドロフランを液体フィードとして使用した。本例において使用される触媒は例4において使用されるのと同一の触媒装填物であったが、使用前に、128SCCMの空気流で、400℃にて16時間再生されたものであった。触媒の性能を表4に要約する。本例は3−Me−THFの脱水が対応する2−Me−THF反応ほどには効率的でないことを示す。転化率は58%であり、そしてイソプレンへの選択率はわずか14%であった。驚くべきことに、1,3−ペンタジエンは11%選択率で生成し、そのことは基質炭素骨格の転位を示している。
【0035】
例6:V−Ti−P触媒上でのn−ペンタノールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、n−ペンタノールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例はV−Ti−P触媒が非常に活性であり、そしてn−ペンタノール脱水に選択性があることを明らかに示し、100%転化率及びペンテン異性体への81%選択率を与えた。
【0036】
例7:V−Ti−P触媒上での1,4−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、1,4−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は基質転化率が100%であるが、ピペリレンへの選択率が25%未満であることを示す。基質が非常に反応性である第二級アルコールを含むことに基づいて、反応器温度が本例において高すぎたことが合理的に仮定される。反応器温度を低下させることで、ピペリレンへの選択率を増加させることが期待される。
【0037】
例8:V−Ti−P触媒上での1,5−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、1,5−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。本例は、基質が100%転化され、1,3−ペンタジエンへの選択率が34%であり、環式エーテルのテトラヒドロピラン(THP)への選択率が35%であったことを示す。後者の生成物の生成は基質の部分脱水によるものであり、一方、前者の生成物は完全な脱水から生じる。
【0038】
例9:V−Ti−P触媒上でのテトラヒドロピランの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、テトラヒドロピランを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は、THPがスクリーニングされた他の基質ほど反応性でないことを示す。転化率は41%であり、ピペリレンへの選択率は45%であった。
【0039】
例10:V−Ti−P触媒上での3−メチル−1,5−ペンタンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを液体フィードとして使用した。本例は、基質が100%転化され、3−メチル−テトラヒドロピランへの選択率が34%であり、そして3−メチル−1,3−ペンタジエンへの選択率が11%であったことを示す。
【0040】
例11:V−Ti−P触媒上での2,5−ヘキサンジオールの脱水
本例の脱水反応は例5に記載のとおりに行われたが、2,5−ヘキサンジオールを液体フィードとして使用した。触媒の性能を表4に要約する。本例は、基質が100%転化され、ヘキサジエン異性体への選択率が45%であったことを示す。第二級アルコールを含む基質を用いる上記の例で記載されるとおり、本例での生成物選択率も反応器温度を低下させたときに、より高いであろう。
【0041】
例12:V−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例の脱水反応は例1に記載のとおりに行われたが、脱イオン水中のグリセロールの30質量%溶液を液体フィードとして使用し、そして反応器温度を250℃に設定した。また、新鮮な5gのV−Ti−P触媒装填物を用い、そして二相生成物サンプルをTHFでなく無水エタノールで均質化した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が37%であり、一方、アクロレインへの選択率が23%であったことを示す。
【0042】
例13:275℃でのV−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例での脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、反応器温度を触媒再生後に275℃に設定した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が69%であり、一方、アクロレインへの選択率が60%であったことを示す。
【0043】
例14:300℃でのV−Ti−P触媒上でのグリセロールの脱水
本例での脱水反応は例2に記載のとおりに行われたが、反応器温度を触媒再生後に300℃に設定した。触媒の性能を表5に要約する。本例は、転化されたグリセロールの量が92%であり、一方、アクロレインへの選択率が56%であったことを示す。
【0044】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0045】
本発明をその好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、変更及び変形は本発明の精神及び範囲内で行うことができることは理解されるであろう。
本開示は以下も包含する。
[1]
バナジウム−チタン−リン酸化物触媒の存在下に酸素化有機化合物を反応させて、それにより、前記有機化合物を脱水することを含む、酸素化有機化合物の脱水方法。
[2]
前記方法はアルケン、ジエン、アルデヒド又はそれらの組み合わせを生成する、上記態様1記載の方法。
[3]
前記有機化合物は少なくとも1〜6個のアルコール官能基、少なくとも1〜3個のエーテル基、少なくとも1〜6個の炭素原子又はそれらの組み合わせを含む、上記態様1記載の方法。
[4]
前記有機化合物はエタノール、n−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、イソ-プロパノール、1,2,3−プロパントリオール、n−ブタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、1,2,3,4−ブタンテトロール、n−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、シクロペンタノール、シクロペンタンジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4,5−ペンタンペントール、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロピラン、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、ヘキサントリオール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、メチルテトラヒドロピラン及び1,2,3,4,5,6−ヘキサンヘキソールからなる群より選ばれる、上記態様3記載の方法。
[5]
前記方法の温度は約250℃〜約500℃である、上記態様1記載の方法。
[6]
前記方法の温度は約300℃〜約450℃である、上記態様5記載の方法。
[7]
前記方法の温度は約325℃〜約375℃である、上記態様6記載の方法。
[8]
約300℃〜約600℃の温度での空気中での方法操作と方法操作との間に触媒を再生することをさらに含む、上記態様1記載の方法。
[9]
圧力は約0.1〜約100バール絶対圧(bara)である、上記態様1記載の方法。
[10]
圧力は約1〜約50baraである、上記態様9記載の方法。
[11]
圧力は約10〜約20baraである、上記態様10記載の方法。
[12]
前記触媒は式VTi
(式中、aは0.3〜6.0であり、bは2.0〜13.0であり、そしてcは酸素以外の成分の価数を満たすのに必要な原子の数である)を有する、上記態様1記載の方法。