(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073334
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ヘルニア修復デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
A61F2/08
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-533466(P2014-533466)
(86)(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公表番号】特表2015-501169(P2015-501169A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012058241
(87)【国際公開番号】WO2013049791
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】61/541,591
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】コーエン, マシュー
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−508632(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0069930(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0173804(US,A1)
【文献】
特表平06−508787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルニア修復デバイスであって、
組織欠損にわたって延在するように構成される外科用メッシュと、
複数のフィラメントループであって、その外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループと、
前記フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される組織引込部材であって、各組織引込部材は、前記組織引込部材が前記外科用メッシュから離間される第1の位置と、前記組織引込部材が前記外科用メッシュに隣接して位置付けられることによって前記組織欠損を囲繞する組織の引込を促進する第2の位置との間における前記フィラメントループの周りでの摺動可能移動のために構成される、組織引込部材と
を備える、ヘルニア修復デバイス。
【請求項2】
複数の組織引込フラップをさらに備え、各フラップは、その固定端において前記外科用メッシュの外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合され、そこから自由端に内向きに延在し、各フラップは、前記フラップが前記外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、前記フラップが前記外科用メッシュから伸張することによって前記組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その前記固定端の周りで移動可能である、請求項1に記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項3】
1つのフィラメントループが、前記複数の組織引込フラップの各々に結合される、請求項2に記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項4】
各フラップは、その前記自由端に頂点を有する略三角形形状の構成を画定し、前記フィラメントループは、その前記頂点に接近して前記フラップに結合される、請求項3に記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項5】
前記フラップは、生体材料から形成される、請求項2〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項6】
前記外科用メッシュに結合されて構造支持を前記外科用メッシュに提供するように構成される弾性的に変形可能な支持アセンブリをさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項7】
前記外科用メッシュは、実質的に円形の構成を画定し、前記支持アセンブリは、前記外科用メッシュの前記外側周縁の近傍で前記外科用メッシュの周りに環状に配置される、請求項6に記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項8】
前記支持アセンブリは、その長さの少なくとも一部に沿って蛇行形状の構成を画定する、請求項6に記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項9】
前記組織引込部材は、それを通して延在する第1の離間内腔および第2の離間内腔を含み、前記第1の内腔および第2の内腔の各々は、それを通して前記フィラメントループのうちの一部を摺動可能に受け入れるように構成される、請求項1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項10】
前記組織引込部材は、それを通して画定される固定ウィンドウを含み、前記固定ウィンドウは、前記組織欠損を囲繞する組織の遠位表面への前記外科用メッシュの固着を促進するように構成される、請求項1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
【請求項11】
組織欠損を修復するためのデバイスであって、前記デバイスは、
外科用メッシュと、
複数のフィラメントループであって、その外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループと、
前記フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される組織引込部材と
を含み、
前記デバイスは、前記外科用メッシュが組織欠損にわたって延在するように、前記組織欠損内に位置付けられるように構成され、
前記組織引込部材は、前記フィラメントループに沿って前記外科用メッシュに隣接する位置へ遠位方向に摺動するように構成され、
前記フィラメントループは、前記組織欠損に隣接する組織を引き込むように近位に引張されるように構成される、デバイス。
【請求項12】
前記外科用メッシュは、前記引き込まれた組織の遠位表面に固着されるように構成される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
各組織引込部材は、それを通して画定される固定ウィンドウを含み、前記固定ウィンドウは、前記組織欠損を囲繞する組織の前記遠位表面への前記外科用メッシュの固着を促進するように構成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記組織引込部材は、前記フィラメントループに沿って近位方向に摺動するようにさらに構成され、
前記フィラメントループは、前記外科用メッシュから分離されるようにさらに構成される、請求項12〜13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスはさらに、前記外科用メッシュに結合されて構造支持を前記外科用メッシュに提供するように構成される弾性的に変形可能な支持アセンブリを備える、請求項11〜13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項16】
前記支持アセンブリは、弾性的に変形されることによって、前記組織欠損内での前記デバイスの位置付けを促進する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記支持アセンブリは、その長さの少なくとも一部に沿って蛇行形状の構成を画定する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記組織引込部材は、それを通して延在する第1の離間内腔および第2の離間内腔を含み、前記第1の内腔および第2の内腔の各々は、それを通して前記フィラメントループの一部を摺動可能に受け入れるように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスはさらに、複数の組織引込フラップを含み、各フラップは、その固定端において前記外科用メッシュの前記外側周縁に結合され、そこから自由端に内向きに延在し、各フラップは、前記フラップが前記外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、前記フラップが前記外科用メッシュから伸張することによって前記組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その前記固定端の周りで移動可能である、請求項11〜13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項20】
前記複数のフィラメントループのうちの1つは、前記複数の組織引込フラップの各々に結合される、請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2011年9月30日に提出された米国特許仮出願第61/541,591号の利益と、この米国特許仮出願に対する優先権を主張し、その米国特許仮出願の全内容は、本明細書において参照により援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、ヘルニア修復デバイスに関し、より具体的には、ヘルニア修復において使用するための外科用メッシュ補綴具に関する。
【背景技術】
【0003】
縫合糸、フィラメント、およびステープル等の創傷閉鎖デバイス、ならびにメッシュまたはパッチ補強等の他の修復デバイスが、しばしば、組織欠損、例えば、ヘルニア状態の組織、ならびに他の損傷組織および/または罹患組織を修復するために使用される。例えば、ヘルニアの場合、外科用メッシュまたはパッチは、一般に、腹壁を補強するために使用される。外科用メッシュは、概して、欠損にわたって延在するようなサイズにされ、腹壁に合致するために撓曲または屈曲するように適合させられる。外科用メッシュは、典型的に、メッシュを周囲組織に接着、縫合、またはステープル留めすることによって定位置に保持される。
【0004】
しかしながら、難点が、ヘルニア修復手順の過程の間、特に、外科用メッシュを適切に位置付けること、および/またはメッシュを周囲組織にしっかりと添着することに関して生じ得る。これらの難点は、多くの場合、解剖学的空間制約および/または手術部位への縮小もしくは限定されたアクセスに起因する。メッシュの不適切な位置付けあるいは添着は、再ヘルニア化、組織に対する外科用メッシュの脱落もしくは組織に対する再位置付け、および/または欠損への内臓の侵入をもたらし得る。
【0005】
特許文献1は、パッチ部材、補強要素、およびそこから延在する一対のループ状要素を含む複数の構造から形成される埋め込み型修復デバイスを開示する。ループ状要素は、それを通して挿入される縫合糸(または他の把持要素)を含む。使用時、埋め込み型修復デバイスは、組織欠損の中に挿入され、縫合糸が、引張されることによって、埋め込み型修復デバイスを組織に対して位置付ける。ループ状部分は、次いで、組織に固着され、埋め込み型修復デバイスを定位置に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,828,854号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態によると、ヘルニア修復デバイスが提供される。ヘルニア修復デバイスは、組織欠損にわたって延在するように構成される外科用メッシュと、その外側周縁の近傍で外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループとを含む。組織引込部材は、フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される。組織引込部材の各々は、組織引込部材が外科用メッシュから離間される第1の位置と、組織引込部材が外科用メッシュに隣接して位置付けられることによって組織欠損を囲繞する組織の引込を促進する第2の位置との間において、フィラメントループの周りでの摺動可能移動のために構成される。
【0008】
一実施形態では、ヘルニア修復デバイスはさらに、複数の組織引込フラップを含む。各フラップは、その固定端において、外科用メッシュの外側周縁の近傍で外科用メッシュに結合され、そこから自由端に内向きに延在する。各フラップは、フラップが外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、フラップが外科用メッシュから伸張することによって組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その固定端の周りで移動可能である。そのような実施形態では、フィラメントループのうちの1つは、組織引込フラップの各々に結合されてもよい。
【0009】
別の実施形態では、組織引込フラップの各々は、その自由端に頂点を有する略三角形形状の構成を画定する。この実施形態では、フィラメントループは、その頂点に接近してフラップに結合されてもよい。さらに、フラップは、外科用メッシュから形成されてもよい。
【0010】
さらに別の実施形態では、弾性的に変形可能な支持アセンブリ(例えば、複数の支持部材から形成される)は、外科用メッシュに結合され、構造支持を外科用メッシュに提供するように構成される。より具体的には、外科用メッシュは、実質的に円形の構成を画定してもよく、支持アセンブリは、その外側周縁の近傍で外科用メッシュの周りに環状に配置されてもよい。さらに、支持アセンブリは、その長さに沿って蛇行形状の構成を画定してもよい。
【0011】
なおも別の実施形態では、組織引込部材は、それを通して延在する第1および第2の離間内腔を含む。内腔の各々は、それを通してフィラメントループの一部を摺動可能に受け入れるように構成される。
【0012】
なおもさらに別の実施形態では、組織引込部材は、それを通して画定される固定ウィンドウを含む。固定ウィンドウは、組織欠損を囲繞する組織の遠位表面への外科用メッシュの固着を促進するように構成される。
【0013】
組織欠損を修復する方法もまた、本開示に従って提供される。方法は、前述の実施形態のいずれかに従うヘルニア修復デバイスを提供するステップと、外科用メッシュが組織欠損にわたって延在するようにヘルニア修復デバイスを組織欠損内に位置付けるステップと、フィラメントループに沿って外科用メッシュに隣接する位置に組織引込部材を遠位方向に摺動させるステップと、フィラメントループを近位方向に引張することによって組織欠損に隣接する組織を引き込むステップとを含む。
【0014】
一実施形態では、方法はさらに、外科用メッシュを引き込まれた組織の遠位表面に固着するステップを含む。組織引込部材の各々の固定ウィンドウは、組織欠損を囲繞する組織の遠位表面への外科用メッシュの位置付けおよび固着を促進するために使用されてもよい。
【0015】
別の実施形態では、方法はさらに、フィラメントループに沿って組織引込部材を近位方向に摺動させるステップと、フィラメントループを外科用メッシュから分離するステップとを含む。
【0016】
さらに別の実施形態では、支持アセンブリは、組織欠損内でのヘルニア修復デバイスの位置付けを促進するように弾性的に変形される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
ヘルニア修復デバイスであって、
組織欠損にわたって延在するように構成される外科用メッシュと、
その外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループと、
前記フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される組織引込部材であって、各組織引込部材は、前記組織引込部材が前記外科用メッシュから離間される第1の位置と、前記組織引込部材が前記外科用メッシュに隣接して位置付けられることによって前記組織欠損を囲繞する組織の引込を促進する第2の位置との間において、前記フィラメントループの周りでの摺動可能移動のために構成される、組織引込部材と、
を備える、ヘルニア修復デバイス。
(項目2)
複数の組織引込フラップをさらに備え、各フラップは、その固定端において前記外科用メッシュの外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合され、そこから自由端に内向きに延在し、各フラップは、前記フラップが前記外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、前記フラップが前記外科用メッシュから伸張することによって前記組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その前記固定端の周りで移動可能である、項目1に記載のヘルニア修復デバイス。
(項目3)
1つのフィラメントループが、前記組織引込フラップの各々に結合される、項目2に記載のヘルニア修復デバイス。
(項目4)
各フラップは、その前記自由端に頂点を有する略三角形形状の構成を画定し、前記フィラメントループは、その前記頂点に接近して前記フラップに結合される、項目3に記載のヘルニア修復デバイス。
(項目5)
前記フラップは、外科用メッシュから形成される、項目2〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
(項目6)
前記外科用メッシュに結合されて構造支持を前記外科用メッシュに提供するように構成される弾性的に変形可能な支持アセンブリをさらに備える、項目1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
(項目7)
前記外科用メッシュは、実質的に円形の構成を画定し、前記支持アセンブリは、前記外科用メッシュの前記外側周縁の近傍で前記外科用メッシュの周りに環状に配置される、項目6に記載のヘルニア修復デバイス。
(項目8)
前記支持アセンブリは、その長さの少なくとも一部に沿って蛇行形状の構成を画定する、項目6に記載のヘルニア修復デバイス。
(項目9)
前記組織引込部材は、それを通して延在する第1の離間内腔および第2の離間内腔を含み、前記第1の内腔および第2の内腔の各々は、それを通して前記フィラメントループのうちの一部を摺動可能に受け入れるように構成される、項目1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
(項目10)
前記組織引込部材は、それを通して画定される固定ウィンドウを含み、前記固定ウィンドウは、前記組織欠損を囲繞する組織の前記遠位表面への前記外科用メッシュの固着を促進するように構成される、項目1〜4のいずれかに記載のヘルニア修復デバイス。
(項目11)
組織欠損を修復する方法であって、前記方法は、
ヘルニア修復デバイスを提供するステップであって、前記ヘルニア修復デバイスは、
外科用メッシュと、
その外側周縁の近傍で前記外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループと、
前記フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される組織引込部材と
を含む、提供するステップと、
前記外科用メッシュが前記組織欠損にわたって延在するように、前記ヘルニア修復デバイスを組織欠損内に位置付けるステップと、
前記フィラメントループに沿って前記外科用メッシュに隣接する位置へ、前記組織引込部材を遠位方向に摺動させるステップと、
前記フィラメントループを近位に引張することによって、前記組織欠損に隣接する組織を引き込むステップと
を含む、方法。
(項目12)
前記外科用メッシュを前記引き込まれた組織の遠位表面に固着するステップをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
各組織引込部材は、それを通して画定される固定ウィンドウを含み、前記固定ウィンドウは、前記組織欠損を囲繞する組織の前記遠位表面への前記外科用メッシュの固着を促進するように構成される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記フィラメントループに沿って前記組織引込部材を近位方向に摺動させるステップと、
前記フィラメントループを前記外科用メッシュから分離するステップと
をさらに含む、項目12〜13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記ヘルニア修復デバイスはさらに、前記外科用メッシュに結合されて構造支持を前記外科用メッシュに提供するように構成される弾性的に変形可能な支持アセンブリを備える、項目11〜13のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記支持アセンブリは、弾性的に変形されることによって、前記組織欠損内での前記ヘルニア修復デバイスの位置付けを促進する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記支持アセンブリは、その長さの少なくとも一部に沿って蛇行形状の構成を画定する、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記組織引込部材は、それを通して延在する第1の離間内腔および第2の離間内腔を含み、前記第1の内腔および第2の内腔の各々は、それを通して前記フィラメントループの一部を摺動可能に受け入れるように構成される、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記ヘルニア修復デバイスはさらに、複数の組織引込フラップを含み、各フラップは、その固定端において前記外科用メッシュの前記外側周縁に結合され、そこから自由端に内向きに延在し、各フラップは、前記フラップが前記外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、前記フラップが前記外科用メッシュから伸張することによって前記組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その前記固定端の周りで移動可能である、項目11〜13のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記フィラメントループのうちの1つは、前記組織引込フラップの各々に結合される、項目19に記載の方法。
【0017】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示に従って提供されるヘルニア修復デバイスの一実施形態の上面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のヘルニア修復デバイスの引込部材の側面図である。
【
図4】
図4は、組織欠損内に位置付けられる
図1のヘルニア修復デバイスの長手方向断面図であって、引込部材は、第1の位置に配置される。
【
図5】
図5は、組織欠損内に位置付けられる
図1のヘルニア修復デバイスの長手方向断面図であって、引込部材は、第2の位置に配置される。
【
図6】
図6は、組織欠損を囲繞する組織を引き込む
図1のヘルニア修復デバイスの長手方向断面図である。
【
図7】
図7は、組織欠損を囲繞する組織を引き込む
図1のヘルニア修復デバイスの横方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態は、図面を参照して詳細に説明され、類似の参照番号は、同様または同一の要素を同定する。本明細書で使用される場合、用語「遠位」がユーザからより遠い説明されている部分を指す一方、用語「近位」は、ユーザにより近い説明されている部分を指す。
【0020】
ここで
図1〜3を参照すると、本開示に従って提供されるヘルニア修復デバイスの一実施形態が、示され、概して参照番号100によって同定される。ヘルニア修復デバイス100は、組織欠損「D」の中に挿入するために構成される外科用メッシュ110を含む(
図4〜6参照)。外科用メッシュ110は、略平坦の円形構成(ただし、他の構成も想定される)を画定し、組織欠損「D」にわたって延在するような寸法にされる(
図4〜6)。メッシュ110は、欠損「D」(
図4〜6)および欠損「D」を囲繞する組織(
図4〜6)の解剖学的構造に合致するように可撓性であることが想定される。メッシュ110は、任意の好適な生体材料(例えば、合成生体材料または天然材料)から形成されてもよく、それらは、生体吸収性材料および生体分解性材料を含み得る。
【0021】
メッシュ110はまた、少なくとも1つの生体活性剤を含んでもよい。用語「生体活性剤」は、本明細書で使用される場合、その最も広範な意味で使用され、臨床使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。生体活性剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の剤、組織成長、細胞成長、細胞分化に影響を及ぼすかまたはそれに関与する化合物、付着防止化合物、免疫反応等の生物学的作用を引き起こすことが可能であり得る化合物であり得るか、あるいは1つまたはそれよりも多くのの生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たし得る。例えば、外科用メッシュ110は、組織へのメッシュ110の付着を阻止するために(例えば、その遠位表面が)付着防止剤でコーティングされても、かつ/または埋込の間の一時的疼痛を緩和するための局所麻酔剤でコーティングされてもよい。生体活性剤は、任意の好適な物質の形態(例えば、膜、粉末、液体、ゲル、およびそれらの組み合わせ等)で、外科用メッシュ110に適用されてもよいことが、想定される。
【0022】
図1〜3を継続して参照すると、ヘルニア修復デバイス100は、外科用メッシュ110に結合される一対の支持部材120a、120b(集合的に、支持アセンブリ120)を含む。支持アセンブリ120は、
図2に最も良く見られるように、2つの支持部材120a、120b(ただし、2つよりも多いまたは少ない支持部材120a、120bも想定される)から形成され、これらの支持部材は、略環状形状の支持アセンブリ120を画定するように協働する。支持アセンブリ120は、メッシュ110の近位表面上で、その外側周縁に接近して(例えば、円形メッシュ110の周りに環状に)配置されても、任意の好適な方式(例えば、接着、溶接等)でメッシュ110に係合されてもよい。支持アセンブリ120は、構造支持を外科用メッシュ110に提供するように構成される一方、外科用メッシュ110が組織欠損「D」(
図4〜6)内に挿入および位置付けられることもまた可能にする。したがって、支持アセンブリ120は、弾性的に可撓性の材料、または任意の他の好適な可撓性材料、または半剛性材料から形成されてもよい。さらに、
図1および2に示されるように、支持アセンブリ120は、形状が略環状であっても、その長さに沿った蛇行構成を画定してもよいが、他の構成も想定される。加えて、支持アセンブリ120の支持部材120a、120bは、相互に係合されることによって、例えば、連続支持アセンブリ120を形成しても、または図に示されるように、その間に複数の間隙(例えば、2つの間隙)を画定してもよい。
【0023】
ここで
図1および2を参照すると、ヘルニア修復デバイス100は、メッシュ110に結合された複数の組織引込フラップ130(例えば、4つの組織引込フラップ130a〜d)を含む。各組織引込フラップ130は、例えば、接着、溶接、縫着等を介して、その外側周縁に接近してメッシュ110に係合される固定端132を含む。組織引込フラップ130は、メッシュ110の外側周縁から自由端134へ内向きに延在する。より具体的には、組織引込フラップ130は、実質的に三角形形状の構成を画定してもよく、底辺は、固定端132を構成し、頂点は、自由端134を構成する。組織引込フラップ130は、外科用メッシュ材料を含む任意の好適な材料(例えば、合成生体材料または天然材料)から形成されてもよく、それらは、生体吸収性材料および生体分解性材料を含んでもよい。以下により詳細に説明されるように、組織引込フラップ130は、組織引込フラップ130がメッシュ110と同一平面にある第1の位置(
図5参照)と、組織引込フラップ130がメッシュ110から近位方向に伸張する第2の位置(
図6参照)との間において、外科用メッシュ110に対して移動可能である。
【0024】
依然として
図1および2を参照すると、フィラメント140のループ(例えば、縫合糸、スレッディング(threading)、ワイヤ等)が、その自由端134に接近して組織引込フラップ130a〜dの各々に結合される。より具体的には、各フィラメントループ140a〜dは、組織引込フラップ130がその第1の端部142において外科用メッシュ材料から形成されてそこから第2の端部144に接近して延在する実施形態では、対応する組織引込フラップ130a〜dを通して(例えば、メッシュを通して)配置される。中間区画146は、フィラメントループ140a〜140dのそれぞれの第1および第2の端部142、144を相互接続する。代替的に、フィラメントループ140は、任意の他の好適な方式で組織引込フラップ130に固着されてもよい。複数のフィラメントループ140が、各組織引込フラップ130に固着されること、または1つのフィラメントループ140が、複数の組織引込フラップ130に固着されることもまた、想定される。
【0025】
ここで
図1および3を参照すると、各フィラメントループ140は、その上に摺動可能に配置される組織引込部材150を含む。より具体的には、各組織引込部材150は、基部152と、それを通して延在する一対の内腔154とを含む。各内腔154は、組織引込部材150が組織引込フラップ130から離間された位置(
図4参照)(例えば、フィラメントループ140の第2の端部144における)から組織引込フラップ130に隣接する位置(
図5参照)(例えば、フィラメントループ140の第1の端部142における)にフィラメントループ140に沿って摺動され得るように、それを通してフィラメントループ140の長さを摺動可能に受け入れるように構成される。組織引込部材150の基部152は、任意の好適な生体適合性材料(例えば、ポリマー)から形成され、構成が実質的に剛性、半剛性、または可撓性であってもよい。
【0026】
組織引込部材150はさらに、
図3に最もよく見られるように、その遠位端155から延在する一対のフィンガ156を含む。各内腔154は、フィンガ156のうちの1つを通して延在する。したがって、理解され得るように、フィラメントループ140は、基部152と組織引込部材150のフィンガ156との両方を通して延在するように構成される。さらに、固定ウィンドウ158が、フィンガ156間に画定され、より詳細に説明されるように、組織欠損「D」(
図4〜6)を囲繞する組織の遠位表面への組織引込フラップ130(
図1〜2参照)の固着を促進する。
【0027】
ここで
図4〜7を参照して、ヘルニア修復デバイス100の使用および動作が、説明される。最初に、ヘルニア修復デバイス100は、組織欠損「D」を通して、組織欠損「D」の遠位側に挿入される。外科用メッシュ110の可撓性構成および支持アセンブリ120の弾性的可撓性構成に起因して、ヘルニア修復デバイス100は、周囲組織への最小限の外傷を伴う組織欠損「D」を通しての通過を促進するように、折畳、巻回、屈曲、または別様に操作されてもよい。いったん組織欠損「D」を通して挿入されると、
図4〜5に示されるように、ヘルニア修復デバイス100は、支持アセンブリ120が組織欠損「D」の周りに実質的に環状に配置されるように配向され、組織引込フラップ130が、組織の遠位表面に隣接して位置付けられる。この時点において、
図5に示されるように、組織引込フラップ130は、第1の位置において配置されたままであり、組織引込フラップ130は、メッシュ110と実質的に同一平面にある。さらに、この位置では、組織引込フラップ130の自由端134は、組織欠損「D」に隣接し、かつその遠位に位置付けられ、したがって、フィラメントループ140が組織欠損「D」を通して近位方向に延在することを可能にする。
【0028】
図4および5を参照すると、いったんヘルニア修復デバイス100が前述のように位置付けられると、組織引込部材150は、定位置に摺動されてもよい。より具体的には、フィンガ156によって先導される組織引込部材150は、矢印「R」の方向に、フィラメントループ140に沿って、かつそれに対して遠位方向に摺動される。
図5に最もよく見られるように、組織引込部材150は、第1の位置(
図4)から第2の位置(
図5)に並進され、組織引込部材150は、組織引込フラップ130に隣接し、かつメッシュ110と組織欠損「D」を囲繞する組織の遠位表面との間に少なくとも部分的に位置付けられる。
【0029】
図5に示されるように、組織引込部材150が組織引込フラップ130に隣接した位置にある場合、ヘルニア修復デバイス100は、組織欠損「D」を囲繞する組織に位置付けられ、かつそれに固着され得る。ヘルニア修復デバイス100を位置付けるために、臨床家は、フィラメントループ140を把持し、矢印「P」の方向で近位方向に引張し、その結果として、組織引込フラップ130と、最終的にはメッシュ110および支持アセンブリ120とは、近位方向に引張されることによって、メッシュ110を組織欠損「D」を囲繞する組織の遠位表面に近接するように動かすことにより、メッシュ110を組織欠損「D」に対して自動的に中心付ける。
【0030】
図6および7と併せて
図5を継続して参照すると、フィラメントループ140のさらなる近位方向への引張が、第1かつメッシュ110に対して実質的に同一平面である位置から、第2かつメッシュ110に対して伸張された位置への組織引込フラップ130の移動をもたらす一方、メッシュ110は、支持アセンブリ120によって、組織欠損「D」を囲繞する組織の遠位表面に隣接する近接位置に維持される。組織引込フラップ130が伸張位置に接近するように引張されるにつれて、組織欠損「D」に隣接する組織は、上向きおよび外向きに引き込まれ、組織の遠位表面の少なくとも一部を暴露する。前述のように、組織引込フラップ130に隣接して位置付けられる組織引込部材150も同様に、フィラメントループ140が近位方向に引張されることによって組織欠損「D」を囲繞する組織の引込を促進するにつれて、上向きおよび外向きに移動される。
【0031】
図7に最もよく見られるように、組織の遠位表面が少なくとも部分的に暴露されると、臨床家は、任意の好適な方式(例えば、接着、タッキング(tacking)、縫合等)で組織引込フラップ130を組織の遠位表面に固着してもよい。前述のように、第2の位置では、組織引込部材150は、組織引込フラップ130に隣接して位置付けられる。より具体的には、組織引込部材150のフィンガ156は、対応する組織引込フラップ130に隣接して位置付けられる。理解され得るように、この位置では、固定ウィンドウ158が、開口部を提供することによって、臨床家に固定点におけるより良好な可視化を提供し、組織引込フラップ130を組織の遠位表面に固着するための外科用器具(図示せず)が、それを通して挿入されてもよい。さらに、固定ウィンドウ158はまた、組織引込フラップ130を組織に固着するためのガイドとして役割を果たし、組織引込フラップ130が適切な位置において組織に固着されることによって治癒プロセスの間にメッシュ110を定位置に維持することを確実にするのに役立つ。
【0032】
その後、いったんヘルニア修復デバイス100が組織欠損「D」を囲繞する組織の遠位表面に固着されると、臨床家は、組織引込部材150を第2の位置から第1の位置(
図4参照)に戻すように近位方向に並進させてフィラメントループ140を解放することによって、静止または非引込位置へ戻ろうとする組織欠損「D」を囲繞する組織の付勢下で、組織引込フラップ130が第1の位置に戻ることを可能にしてもよい。その後、フィラメントループ140は、組織引込フラップ130から除去(例えば、切除)されることによって、メッシュ110を組織欠損「D」内に固着したままで残してもよい。
【0033】
本開示のヘルニア修復デバイスは、組織欠損にわたって延在するように構成される外科用メッシュと、その外側周縁の近傍で外科用メッシュに結合される複数のフィラメントループと、フィラメントループの各々の周りに摺動可能に配置される組織引込部材とを含む。組織引込フラップの各々は、組織引込部材が外科用メッシュから離間される第1の位置と、組織引込部材が外科用メッシュに隣接して位置付けられることによって組織欠損を囲繞する組織の引込を促進する第2の位置との間において、フィラメントループのまわりでの摺動可能移動のために構成される。
【0034】
本開示の実施形態のいずれかでは、複数の組織引込フラップは、外科用メッシュの外側周縁の近傍で外科用メッシュに結合される。フラップは、その固定端において外科用メッシュに結合され、そこからその自由端に内向きに延在する。各フラップは、フラップが外科用メッシュと実質的に同一平面にある第1の位置と、フラップが外科用メッシュから伸張することによって組織欠損を囲繞する組織を引き込む第2の位置との間において、その固定端の周りに移動可能である。フィラメントループは、組織引込フラップの各々に結合されてもよい。各フラップは、フィラメントループがフラップの頂点に接近してフラップに結合され得るように、その自由端に頂点を有する略三角形形状の構成を画定してもよい。さらに、任意の実施形態では、フラップは、外科用メッシュから形成されてもよい。
【0035】
本開示の実施形態のいずれかでは、弾性的に変形可能な支持アセンブリは、外科用メッシュに結合されることによって、構造支持を外科用メッシュに提供してもよい。すなわち、外科用メッシュは、支持アセンブリが外科用メッシュの外側周縁の近傍において外科用メッシュの周りに環状に配置され得るように、実質的に円形の構成を画定してもよい。支持部材はまた、その長さの少なくとも一部に沿って蛇行形状の構成を画定してもよい。
【0036】
本開示の実施形態のいずれかでは、組織引込部材は、それを通して延在する第1および第2の離間内腔を含む。第1および第2の内腔の各々は、それを通してフィラメントループの一部を摺動可能に受け入れるように構成される。組織引込部材はまた、それを通して画定される固定ウィンドウを含んでもよく、固定ウィンドウは、組織欠損を囲繞する組織の遠位表面への外科用メッシュの固着を促進するように構成されてもよい。
【0037】
前述から、かつ種々の図面を参照して、当業者は、ある程度の改変もまた同一の範囲から逸脱することなく本開示に行なわれる得ることを、理解する。本開示のいくつかの実施形態は図面に示されるが、本開示はそれらに限定されないことが意図され、なぜなら、本開示は当該技術が許容する限り広範な範囲であって、明細書も同様に読まれることが、意図されるからである。したがって、前述の説明は、限定としてではなく、単に、特定の実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付の請求項の範囲および趣旨の内の他の改変を想定する。