(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073352
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】安定性が向上したω−3脂肪酸およびHMG−COA還元酵素阻害剤を含む経口複合製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/202 20060101AFI20170123BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170123BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20170123BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20170123BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20170123BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170123BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20170123BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170123BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A61K31/202
A61K47/10
A61K9/48
A61K47/34
A61K47/14
A61K31/232
A61K47/38
A61K47/32
A61K31/351
A61K31/22
A61K31/404
A61K31/40
A61K31/4418
A61K31/505
A61K31/47
A61K47/02
A61P43/00 111
A61P3/06
【請求項の数】24
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-542243(P2014-542243)
(86)(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-533685(P2014-533685A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】KR2012009718
(87)【国際公開番号】WO2013073884
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0120493
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0128926
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】599139534
【氏名又は名称】ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ウンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンイル
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ジョンス
【審査官】
常見 優
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭60−500867(JP,A)
【文献】
特表昭60−500623(JP,A)
【文献】
特表2009−529531(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/134614(WO,A1)
【文献】
特表2008−522970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K47/00−47/48
A61K31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)医薬的に有効な成分としてω-3脂肪酸が充填された、ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセルを含む、カプセルコア;
(2)該カプセルコアの表面上に形成されている、耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層;および、
(3)該第1コーティング層の表面上に形成されている、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層、
を含む、経口複合製剤であって、該塩基性安定化剤が、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)およびそれらの混合物からなる群から選択される、経口複合製剤。
【請求項2】
該硬または軟カプセルの総重量に基づいて、該ソルビトールが1〜40重量%の範囲の量であって、該ソルビタンが1〜45重量%の範囲の量である、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項3】
該硬または軟カプセルがグリセロールまたはその誘導体を該カプセルの総重量に基づいて最大で20重量%の量で含む、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項4】
該グリセロールまたはその誘導体が、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、またはそれらの誘導体である、請求項3に記載の経口複合製剤。
【請求項5】
該ω-3脂肪酸が、天然または合成ω-3脂肪酸;それらの医薬的に許容されるエステル、誘導体、前駆体または塩;およびそれらのいずれの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項6】
該エステルが、モノ-、ジ-およびトリグリセリド、ならびにω-3脂肪酸のメチルおよびエチルエステルからなる群から選択され;そして、該誘導体が、ω-3脂肪酸の多糖誘導体およびポリオキシエチレン誘導体からなる群から選択される、請求項5に記載の経口複合製剤。
【請求項7】
該ω-3脂肪酸が、エイコサペンタ-5,8,11,14,17-エン酸(エイコサペンタエン酸, EPA)、ドコサヘキサ-4,7,10,13,16,19-エン酸(ドコサヘキサエン酸, DHA)、および/またはα-リノレン酸ならびにそれらの前駆体からなる群から選択される、請求項5に記載の経口複合製剤。
【請求項8】
該ω-3脂肪酸が該カプセルコアの総重量に基づいて70〜95重量%の範囲の量である、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項9】
該耐水性コーティング物質が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、エチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項10】
該耐水性コーティング物質がエチルセルロースを含む、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項11】
該耐水性コーティング物質が、該第1コーティング層の総重量に基づいて15〜75重量%の範囲の量である、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項12】
該HMG-CoA還元酵素阻害剤が、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、ピバスタチン、およびそれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項13】
該HMG-CoA還元酵素阻害剤が、100重量部の該カプセルコアに基づいて0.05〜20重量部の範囲の量である、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項14】
該塩基性安定剤が、該第2コーティング層の総重量に基づいて0.01〜40重量%の範囲の量である、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項15】
該塩基性安定剤が炭酸マグネシウムであって、その量が該第2コーティング層の総重量に基づいて5〜40重量%の範囲である、請求項14に記載の経口複合製剤。
【請求項16】
該塩基性安定剤が炭酸水素ナトリウムであって、その量が該第2コーティング層の総重量に基づいて0.01〜2重量%の範囲である、請求項14に記載の経口複合製剤。
【請求項17】
該塩基性安定剤が水酸化マグネシウムであって、その量が該第2コーティング層の総重量に基づいて0.01〜2重量%の範囲である、請求項14に記載の経口複合製剤。
【請求項18】
該第2コーティング層が、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を0.1:1〜200:1の重量比で含む、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項19】
該塩基性安定剤が炭酸マグネシウムであって、該HMG-CoA還元酵素阻害剤および炭酸マグネシウムが0.1:1〜3.0:1の重量比を有する、請求項18に記載の経口複合製剤。
【請求項20】
該塩基性安定剤が炭酸水素ナトリウムであって、該HMG-CoA還元酵素阻害剤および炭酸水素ナトリウムが10:1〜100:1の重量比を有する、請求項18に記載の経口複合製剤。
【請求項21】
該塩基性安定剤が水酸化マグネシウムであって、該HMG-CoA還元酵素阻害剤および水酸化マグネシウムが10:1〜100:1の重量比を有する、請求項18に記載の経口複合製剤。
【請求項22】
該第2コーティング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるコーティング物質を含む、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項23】
該経口複合製剤が、100重量部の該カプセルコアに基づいて、1〜20重量部の範囲の量の第1コーティング層、および3〜30重量部の範囲の量の第2コーティング層を含む、請求項1に記載の経口複合製剤。
【請求項24】
工程:
i)ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセルにω-3脂肪酸を充填してカプセルコアを製造すること;
ii)該コアの表面上に、耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層を形成させること;および、
iii)該第1コーティング層の表面上に、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層を形成させること、
を含む、請求項1に記載の経口複合製剤を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬または軟カプセルに充填されたω-3脂肪酸、およびHMG-CoA還元酵素阻害剤を含む経口複合製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水産油脂(一般的に魚油とも称される)は、脂質代謝を調節するω-3脂肪酸(例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA))の主要な供給源である。ω-3脂肪酸は、有害な副作用をもたらすことなく、血清トリグリセリド(TG)および血清低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの濃度を低下させ、収縮期血圧、拡張期血圧および心拍数を低下させ、そして、リン脂質複合体(血液凝固因子)の活性化を抑制することができる。
【0003】
現在、処方薬として利用できるω-3脂肪酸は、ω-3脂肪酸エチルエステル(これ以降、「ω-3脂肪酸エステル」と称する)である。すなわち、それらは、ω-3脂肪酸のエチルエステル化された化合物(DHAおよびEPAを含む魚油から得られた多価不飽和脂肪酸である)であり、登録商標OMACORとして販売されている。そのようなω-3脂肪酸エステルは、特許文献1、2および3に開示されるように、通常はカプセル形態(例えば、ゼラチンカプセル)に製剤化される。
【0004】
一方で、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A(HMG-CoA)還元酵素阻害剤は3-ヒドロキシラクトンまたは対応する開環ジヒドロキシ酸を含み、しばしば「スタチン」と称される。
【0005】
現在、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);特許文献4参照)、プラバスタチンナトリウム塩(PRAVACHOL(登録商標);特許文献5参照)、フルバスタチンナトリウム塩(LESCOL(登録商標);特許文献6参照)、アトルバスタチンピバスタチン(LIPITOR(登録商標);特許文献7参照)、セリバスタチンナトリウム塩(リバスタチンとしても知られる;特許文献8参照)、ロスバスタチンカルシウム塩(CRESTOR(登録商標);特許文献9参照)、およびピバスタチンカルシウム塩(LIVARO(登録商標);特許文献10参照)を含む様々な種類の合成および半合成HMG-CoA還元酵素阻害剤が、高濃度の血清コレステロールを制御するために用いられている。
【0006】
スタチンは、典型的には、コレステロール濃度を正常範囲内に維持するために用いられている。スタチンは、体内でのコレステロール合成速度を制御するHMG-CoA還元酵素の阻害を介してコレステロールの産生を減少させることによってか、あるいは、血液中に既に存在する低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールを除去する肝臓の能力を高めることによって、コレステロールを低下させる。従って、スタチンの主な機能は、LDLコレステロールを減少させることである。スタチンは、冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを3分の1まで低下させるが、TGおよび血清HDLにおける効果は限られていることが知られている。
【0007】
しかしながら、過剰量のLDLおよびTGの両方が高コレステロール血症および混合型脂質異常症において見られており、これらの疾患の処置におけるω-3脂肪酸エステルまたはスタチンの単剤療法は、その低い有効性に悩まされていた。対照的に、高脂血症のためのω-3脂肪酸エステルとスタチンとの組み合わせ療法は、血清HDLコレステロールを上昇させ、一方でLDL-コレステロールおよびTGを低下させ得るという利点を有する。従って、ω-3脂肪酸エステルと他の薬物の複合製剤についてかなりの研究がされてきた。しかしながら、2つの異なる薬物を直接混合した場合、該薬物間の薬物の安定性が保証されないという不都合が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,502,077号
【特許文献2】米国特許第5,656,667号
【特許文献3】米国特許第5,698,594号
【特許文献4】米国特許第4,444,784号
【特許文献5】米国特許第4,346,227号
【特許文献6】米国特許第5,354,772号
【特許文献7】米国特許第5,273,995号
【特許文献8】米国特許第5,177,080号
【特許文献9】韓国特許第105431号
【特許文献10】韓国特許第101149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの理由から、本発明者らは、ω-3脂肪酸およびHMG-CoA還元酵素阻害剤を含む経口複合製剤について研究を行った。典型的には、グリセロールが軟および硬カプセル製剤の製造において可塑剤として用いられる。しかしながら、本発明者らは、HMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロスバスタチン)を含む層(ω-3脂肪酸エステルおよびグリセロールを含むカプセルコアにコーティングされている)を含む製剤を加速条件下において保存した場合に特異的な下記式(I)の関連物質が増大する、という予期せぬ現象を見いだした。
【化1】
【0010】
従って、本発明者らは、グリセロールまたはその誘導体の使用に代わる、複合製剤の安定性を向上させるための方法を開発するように努めた。こうした努力の結果、ソルビトールおよびソルビタンとともにω-3脂肪酸が硬または軟カプセル中に封入されているコアを含む製剤であって、該コアは耐水性物質を含む分離コーティングでコーティングされており、さらにHMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性の安定剤を含む薬物の層でコーティングされている、該製剤が得られた。本発明の製剤は、安定性が向上しており、関連物質の産生の良好な阻害効果を示す。
【0011】
従って、本発明の目的は、ω-3脂肪酸およびHMG-COA還元酵素阻害剤を含む、長期保存安定性が向上した経口複合製剤を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、該経口複合製剤を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によると、
(1)ソルビトール、ソルビタン、および医薬的に有効な成分としてのω-3脂肪酸を含む硬または軟カプセルを含むカプセルコア;
(2)カプセルコアの表面に形成されている、耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層;および、
(3)第1コーティング層の表面に形成されている、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層、
を含む、経口複合製剤を提供する。
【0014】
本発明の別の態様によると、工程:
i)ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセルにω-3脂肪酸を充填してカプセルコアを製造すること;
ii)耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層を該カプセルコアの表面上に形成させること;および、
iii)HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層を該第1コーティング層の表面上に形成させること、
を含む経口複合製剤の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記および他の目的および特徴は、添付の図面と合わせた本発明の以下の説明から明らかとなるであろう。ここで、該図面は、各々、以下を示す。
【
図1】カプセルの組成による関連物質の産生率を比較するグラフ。
【
図2】実施例2で製造されたロスバスタチン-含有複合製剤についての関連物質の産生率(%)。
【
図3】比較実施例2で製造されたロスバスタチン-含有複合製剤についての関連物質の産生率(%)。
【
図4】比較実施例3および4において製造されたアトルバスタチン-含有複合製剤についての関連物質の産生率(%)。
【
図5】実施例3および4において製造されたアトルバスタチン-含有複合製剤についての関連物質の産生率(%)。
【
図6】実施例5〜8および比較実施例5および6について製造されたラクトンの増大を示すグラフ。
【
図7】実施例5〜8および比較実施例5および6について製造された未知の関連物質の増大を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、(1)ソルビトール、ソルビタンおよび医薬的に有効な成分としてのω-3脂肪酸を含む硬または軟カプセルを含むカプセルコア;(2)該カプセルコアの表面上に形成されている、耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層;ならびに、(3)該第1コーティング層の表面上に形成されている、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層を含む、経口複合製剤を提供する。
【0017】
以下に、本発明の経口複合製剤に含まれる成分を詳細に説明する。
【0018】
(a)カプセルコア
本発明の複合製剤は、ソルビトール、ソルビタンおよび医薬的に有効な成分としてのω-3脂肪酸を含む硬または軟カプセルを含むカプセルコアを含む。本発明の実施態様において、本発明の複合製剤は、ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセル、ならびに該カプセル中に含まれる医薬的に有効な成分としてのω-3脂肪酸を含む。
【0019】
ソルビトールの量は、硬または軟カプセルの総重量に基づいて、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは7〜25重量%の範囲であってよい。また、ソルビタンの量は、硬または軟カプセルの総重量に基づいて、1〜45重量%、好ましくは3〜35重量%、より好ましくは6〜30重量%の範囲であってよい。本発明の一実施態様において、硬または軟カプセルの総重量に基づいて、ソルビトールは14〜15重量%の範囲、例えば、約14.5重量%の量で含まれていてよく、ソルビタンは11〜12重量%の範囲、例えば、約11.6重量%の量で含まれていてよい。
【0020】
硬または軟カプセルが上記の範囲でソルビトールおよびソルビタンを含む場合、加速条件下での長期保存の間に生成される関連物質がかなり減少するので、該複合製剤の保存安定性が向上する。
【0021】
本発明の一実施態様において、ソルビトールおよびソルビタンは、それらを含む溶液(以降、「ソルビトールソルビタン溶液」)の形態で用いられうる。例えば、ソルビトールソルビタン溶液は、溶媒(例えば、蒸留水)中でソルビトールおよびソルビタンを混合させることによって製造され、硬または軟カプセルの製造において用いられうる。
【0022】
USP-NF標準に従って、ソルビトールおよびソルビタンは、各々、ソルビトールソルビタン溶液の総重量に基づいて少なくとも25重量%および少なくとも15重量%の量で含まれていてよい。例えば、ソルビトールは、ソルビトールソルビタン溶液の総重量に基づいて25〜30重量%の範囲の量で含まれていてよく、一方、ソルビタンは、ソルビトールソルビタン溶液の総重量に基づいて15〜42重量%の範囲の量で含まれていてよい。
【0023】
本発明において、ソルビトールソルビタン溶液は、硬または軟カプセルの総重量に基づいて20〜70重量%、例えば、30〜60重量%の範囲の量で含まれていてよい。
【0024】
本発明の一実施態様において、ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセルは、ゼラチン:ソルビトールソルビタン溶液の重量比が1:0.4〜1:1.2の範囲、例えば、約1:0.7であってよい。
【0025】
本発明の硬または軟カプセルは、グリセロールまたはその誘導体を、カプセルの総重量に基づいて0〜20重量%の範囲の量で含んでよい。
【0026】
一般的に、ゼラチンは、より容易な成形を目的として弾性を高めるためにカプセルの材料として用いられる。また、鋳型が原因で生じ得る損傷または保存時の形状の変化を防ぐために、可塑剤を、カプセルの材料として用いてもよいか、または外部からカプセルに加えてもよい。可塑剤の例としては、グリセロールまたはその誘導体、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油、などが挙げられうる。
【0027】
本発明で用いる硬または軟カプセルは、主成分としてゼラチンを有する通常の硬または軟カプセルであることができ、プルランまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含んでよいか;あるいは、グリセロールまたはその誘導体(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、またはそれらの誘導体)を、含まないか、あるいはカプセルの総重量に基づいて最大で20重量%、例えば、0.1〜20重量%の量で含んでもよい。
【0028】
本発明において、「ω-3脂肪酸」は、天然または合成のω-3脂肪酸であってよく、その全ての可能な形態を包含する。例えば、ω-3脂肪酸の遊離酸の誘導体化形態、例えば、医薬的に許容されるエステル、誘導体、前駆体、塩、またはそれらのいずれの混合物、ならびにω-3脂肪酸の非誘導体化形態(すなわち、遊離酸)が、本発明において用いられうる。ω-3脂肪酸の、特定の、ただし非限定的な例は、エイコサペンタ-5,8,11,14,17-エン酸(エイコサペンタエン酸, EPA)、ドコサヘキサ-4,7,10,13,16,19-エン酸(ドコサヘキサエン酸, DHA)および長鎖ω-3多価不飽和脂肪酸(例えば、α-リノレン酸)である。本発明で用いることができるω-3脂肪酸のエステルのいくつかの例は、グリセロールとのもの(例えば、モノ-、ジ-およびトリグリセリド)および第一級アルコールとのもの(例えば、ω-3脂肪酸のメチルおよびエチルエステル)である。ω-3脂肪酸の前駆体のいくつかの例としては、対応するω-3脂肪酸油の前駆体(例えば、EPA、DHAおよびα-リノレン酸の前駆体)が挙げられる。ω-3脂肪酸の誘導体のいくつかの例としては、ω-3脂肪酸の多糖誘導体およびポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。実施態様において、ω-3脂肪酸は、EPA、DHA、EPAもしくはDHAのトリグリセリド、EPAもしくはDHAのエチルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0029】
ω-3脂肪酸、その医薬的に許容されるエステル、誘導体、または塩、ならびにそれらの混合物は、それらの純粋な形態で用いられうるか、あるいはそれらを含む魚油(好ましくは高純度の魚油濃縮物)、エゴマ油または海洋微細藻類油として含まれうる。
【0030】
本発明において、ω-3脂肪酸は、カプセルコアの総重量に基づいて、70〜95重量%の範囲の量で含まれうる。
【0031】
可塑剤としてグリセロールまたはその誘導体を含む通常の硬または軟カプセルと異なり、本発明で用いる硬または軟カプセルは、ソルビトールおよびソルビタンを含むとともに、グリセロールまたはその誘導体を用いないかあるいはほんの少しの量(例えば、カプセルの総重量に基づいて最大で20重量%の量)で用いて、カプセルを製造するための通常の方法に従って、製造されうる。そのように得られた該カプセルにω-3脂肪酸を充填して、カプセルコアを得てもよい。
【0032】
(b)第1コーティング層
本発明の経口複合製剤において、第1コーティング層は、カプセルコア内のゼラチンの水分を含めた様々な成分がHMG-CoA還元酵素阻害剤-含有第2コーティング層の溶解速度および関連物質の産生に影響を与えるのを防ぐために、カプセルコアをカプセルに封入する耐水性コーティング物質を含む。
【0033】
具体的には、HMG-CoA還元酵素阻害剤がω-3脂肪酸を含むカプセルコア上に直接コーティングされている場合、ゼラチンカプセルの水分がHMG-CoA還元酵素阻害剤の含量に影響を与え、その溶解速度を低下させ、その関連物質を増大させ得る。しかしながら、本発明においては、耐水性コーティング物質を有する該第1コーティング層をω-3脂肪酸-含有カプセルコアとHMG-CoA還元酵素阻害剤-含有第2コーティング層との間に形成させることで、水分ならびに他の潜在的リスクの影響を最小化している。
【0034】
耐水性コーティング物質の例は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、エチルセルロース、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい(例えば、エチルセルロース)。
【0035】
本発明の一実施態様によると、エチルセルロースを耐水性コーティング物質として使用することによって、他の物質を使用する場合よりも、関連物質の量が顕著に低下される(試験例4参照)。
【0036】
耐水性コーティング物質は、第1コーティング層の総量に基づいて15〜75重量%、例えば、16〜72重量%の範囲の量で用いられうる。
【0037】
該第1コーティング層は、耐水性コーティング物質を、水、エタノール、またはそれらの混合物(例えば、1:1〜1:3(例えば約3:7)の重量比の水とエタノールの混合溶媒)中に溶解または分散させてコーティング溶液を得た後、該カプセルコアの表面上に該溶液を塗布することにより、形成されうる。
【0038】
該第1コーティング層は、100重量部のカプセルコアに基づいて1〜20重量部、例えば、4〜10重量部の範囲の量で、該カプセルコアの表面上にコーティングされうる。第1コーティング層の量が1重量部未満である場合、該第1コーティング層が薄くなりすぎて、2つの薬物の分離および水移動に影響を与え、関連物質の産生の阻害を低下させる。一方で、該量が20重量部を超える場合、該第1コーティング層が厚くなりすぎて、ω-3脂肪酸とHMG-CoA還元酵素阻害剤の組み合わせ療法の効果を顕著に低下させる。
【0039】
(c)第2コーティング層(HMG-CoA還元酵素阻害剤コーティング層)
本発明の経口複合製剤において、該第2コーティング層は、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含み、第1コーティング層の表面上にコーティングされている。
【0040】
HMG-CoA還元酵素阻害剤は、HMG-CoAのメバロネートへの還元をブロックすることにより血中の脂質およびコレステロールの濃度を低下させるので、高脂血症、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症の予防および治療に用いられ得る。
【0041】
本発明において、該HMG-CoA還元酵素阻害剤は、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、ピバスタチンおよびそれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択されてもよい(例えば、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)。該HMG-CoA還元酵素阻害剤は、100重量部のカプセルコアに基づいて0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜8重量部の量で用いられうる。
【0042】
該HMG-CoA還元酵素阻害剤の一つの欠点は、その化学構造に起因して加水分解が生じやすく、該加水分解により加水分解産物としてラクトン構造を有する関連物質が産生され、それによりその効力が低下されることである。本発明において、該第2コーティング層は塩基性安定剤を含み、該塩基性安定剤はHMG-CoA還元酵素阻害剤の加水分解を防ぐことにより関連物質の産生を阻害する。本発明の経口複合製剤は、HMG-CoA還元酵素阻害剤およびω-3脂肪酸の両方を含み、従って、HMG-CoA還元酵素阻害剤の加水分解を阻害し得る成分を選択して関連物質の産生を防ぐことが重要である。
【0043】
本発明で用いる塩基性安定剤は、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)およびそれらの混合物からなる群から選択されうる(例えば、炭酸マグネシウムまたは炭酸水素ナトリウム)。アルカリ性であっても、医薬組成物として許容できない溶解度である難溶性物質(例えば、炭酸カルシウム(CaCO
3))は、好ましくない。
【0044】
本発明において、塩基性安定剤は、第2コーティング層の総重量に基づいて0.01〜40重量%の範囲の量で用いられうる。例えば、第2コーティング層の総重量に基づいて、炭酸マグネシウムは5〜40重量%の範囲の量で、炭酸水素ナトリウムは0.01〜2重量%の範囲の量で、そして、水酸化マグネシウムは0.01〜2重量%の量で、用いられうる。
【0045】
本発明の一実施態様によると、炭酸水素ナトリウムに類似する特定の物質(例えば、炭酸カルシウム)は、未知の関連物質の産生を効果的に防ぐことができなかった(試験例3参照)。
【0046】
本発明において、該第2コーティング層は、HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を0.1〜200:1の重量比で含む。例えば、塩基性安定剤が炭酸マグネシウムである場合、HMG-CoA還元酵素阻害剤:炭酸マグネシウムの重量比は0.1:1〜3.0:1であってよく;炭酸水素ナトリウムの場合、HMG-CoA還元酵素阻害剤:炭酸水素ナトリウムの重量比は10:1〜100:1であってよく;水酸化マグネシウムの場合、HMG-CoA還元酵素阻害剤:水酸化マグネシウムの重量比は10:1〜100:1であってよい。
【0047】
一方、本発明の第2コーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されるコーティング物質を含んでよい。本発明において、該製剤は、第2コーティング層を含むことによって、HMG-CoA還元酵素阻害剤を急速に放出することができる。
【0048】
本発明の一実施態様によると、該第2コーティング層は、第2の医薬的活性成分としてのHMG-CoA還元酵素阻害剤ならびにポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーの混合物を、水、エタノールまたはそれらの混合物(例えば、約3:7の重量比の水とエタノールの混合溶媒)中に溶解または分散させてコーティング溶液を得た後、該溶液を該第1コーティング層の表面上に塗布することにより形成されうる。
【0049】
本発明において、該コーティング物質は、該第2コーティング層の総重量に基づいて25〜85重量%、好ましくは25〜80重量%の範囲の量で用いられうる。
【0050】
第2コーティング層は、該第1コーティング層の表面上に、100重量部のカプセルコアに基づいて3〜30重量部、好ましくは5〜20重量部、例えば、3〜10重量部の範囲の量でコーティングされていてよい。
【0051】
本発明による経口複合製剤は、必要な場合、他の医薬的に許容される添加剤、例えば、崩壊剤、希釈剤、安定剤、結合剤および滑沢剤をさらに含んでよい。
【0052】
本発明はまた、工程:(i)ソルビトールおよびソルビタンを含む硬または軟カプセルにω-3脂肪酸を充填してカプセルコアを製造すること;(ii)耐水性コーティング物質を含む第1コーティング層を該コアの表面上に形成させること;および(iii)HMG-CoA還元酵素阻害剤および塩基性安定剤を含む第2コーティング層を該第1コーティング層の表面上に形成させることを含む、本発明の経口複合製剤の製造方法を提供する。
【0053】
本発明の方法において、上記の工程(iii)において、該第2コーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーまたはそれらの混合物をさらに含んでよい。
【0054】
本発明の一実施態様によると、本発明の経口複合製剤の製造方法は、以下の工程:(1)可塑剤としてソルビトールおよびソルビタンを含むカプセルを、カプセルを製造するための通常の方法で製造した後、該カプセルにω-3脂肪酸を充填してカプセルコアを製造すること;(2)耐水性コーティング物質を適切な溶媒中(例えば、エタノールと水の混合液中)に溶解させることにより得られたコーティング溶液を該カプセルコア上に塗布し、次いで該溶液を乾燥させることにより、該カプセルコアをカプセル封入する第1コーティング層を形成させること;および、(3)コーティング物質(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーまたはそれらの混合物)およびHMG-CoA還元酵素阻害剤を塩基性安定剤およびいずれの医薬的に許容される添加剤と一緒に適切な溶媒中(例えば、エタノールと水の混合液中)に溶解させることにより得られたコーティング溶液を、該第1コーティング層の表面上に塗布し、次いで該溶液を乾燥させることにより、該第1コーティング層上に第2コーティング層を形成させることを含んでもよい。そのように製造された複合製剤を、コート錠剤形態に製剤化してもよく、経口投与することができる。
【0055】
工程(1)において、該カプセルはグリセロールまたはその誘導体を含んでもよく、それはカプセルの総重量に基づいて最大で20重量%の量で含まれていてよい。
【0056】
本発明の方法に従って製造された経口複合製剤は、6か月間の加速条件下(40℃および75%RH)における長期保存の間、関連物質の産生を有意に減少させることにより、良好な長期保存安定性を示した。
【0057】
本発明の製剤は、未知の関連物質に関するICHガイドラインの要件(すなわち、0.5重量%未満)を満たす。未知の関連物質の量が0.5重量%を超える場合、該製剤を高額の費用を必要とする多くの毒性試験(例えば、反復毒性試験、遺伝毒性試験など)で試験する。しかしながら、本発明は、未知の関連物質の産生量がより少なく、さらなる毒性試験を実施する必要がない製剤が得られるので、対費用効果が高い。
【0058】
本発明による経口複合製剤は、LDL-コレステロールおよびTG濃度の両方ともを低下させると同時に血清HDLコレステロール濃度を上昇させることができる2つの医薬的に活性な成分、すなわち、ω-3脂肪酸およびHMG-CoA還元酵素阻害剤を含む。従って、本発明による経口複合製剤は、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠動脈性心疾患(CHD)、脂質異常症、血清総コレステロール濃度の上昇、および血清LDLコレステロール(LDL-C)濃度の上昇、ならびに血清HDLコレステロール(HDL-C)濃度の低下を効果的に予防または治療するために用いられ得る。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は本発明の好ましい実施態様を説明するために提供されるものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0060】
参考実施例:軟または硬カプセルの組成ならびに主成分間の適合性試験
軟または硬カプセルの成分とスタチンとの間の相互作用を評価するために、以下の試験を実施した。
【0061】
具体的には、カプセルの主成分であるゼラチン(グレード:165ブルーム, Geltech, 韓国);可塑剤としてよく用いられるグリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG400);ならびにソルビトールソルビタン溶液(ROQUETTE, フランス, NFグレード, 27.5 wt%のソルビタンおよび34.4 wt%のソルビトールの固形分を含む)を、ロスバスタチンカルシウムとの相互作用を評価するために試験した。表1に記載の成分に従って、全ての成分を混合し、100℃で2時間加熱し、その後、HPLC分析により評価した。
【0062】
HPLC分析を、約250 mmの長さのステンレススチールカラム(5 μm C
18を充填)または類似のカラム(Inertsil-ODS2, GL sciences)を用いて、水:アセトニトリル:1%(v/v)トリフルオロ酢酸溶液(62:37:1(v/v))の移動相で流速 0.75 mL/分にて、実施した。関連物質のピークを、ロスバスタチンの主要なピークと比較して、定量的に分析した。
表1
【表1】
【0063】
参考実施例1〜6の分析結果を要約している
図1は、ある1つの問題の関連物質(以降、RRT 0.72)(様々な他の関連物質のうちで急速に増大した)の産生率(%)を比較する。
図1に示すとおり、該問題の関連物質が、参考実施例1(ロスバスタチンのみを含む)、2(可塑剤なしでロスバスタチンを含む)、および4(ソルビトールソルビタン溶液とともにロスバスタチンを含む)を除いた、残りの参考実施例において、グリセロールまたはグリセロール誘導体との反応から産生された。従って、ロスバスタチンの保存安定性は異なる種類の可塑剤によって影響され得ることが示唆される。
【0064】
さらに、該関連物質(RRT 0.72)をさらなる調査のために分離し、該関連物質がロスバスタチンとグリセロール間の反応の副生成物であることを見いだした。上記結果に基づいて、本発明者らは、通常の可塑剤(すなわち、グリセロール)の代替物としてソルビトールソルビタン溶液を用いて以下の実験を続けた。
【0065】
実施例1-1〜1-3および比較実施例1:カプセルの製造およびカプセル組成に依存した効果
ω-3脂肪酸エステル油をカプセル封入するために用いられうる軟カプセル材料の可能量に限度があることから、ゼラチンとソルビトールソルビタン溶液の適切な混合比を決定するために、異なる組成の軟カプセルを製造して安定性試験を実施した。
【0066】
1)カプセルの製造
実施例1-1〜1-3および比較実施例1のカプセルを、表2に記載の成分に基づいて通常の方法を用いて軟または硬ゼラチンカプセルを製造し、次いで、そのようにして得られたゼラチンカプセルに1,000 mgのω-3脂肪酸エステル油(KD pharma, ドイツ, EPグレード)を充填することによって、得た。実施例1-1〜1-3のカプセルにおいてはソルビトールソルビタン溶液を可塑剤として用い、一方、比較実施例1のカプセルにおいてはグリセロールを用いた。また、遅延崩壊を防ぐために、少量のグリシンを実施例1-1〜1-3のカプセルに加えた。
表2
【表2】
【0067】
2)カプセル組成に依存した、乾燥後の外観および加速条件における安定性の比較
可塑剤の比率が異なる軟カプセルの外観における安定性を、実施例1-1〜1-3で製造した軟カプセルにおいて比較した。実施例1-1、1-2および1-3におけるゼラチン:可塑剤の重量比は、各々、約1:0.7、1:0.4および1:1.2である。
【0068】
ゼラチン:可塑剤の比が1:0.4である場合、実施例1-1〜1-3によるカプセルの製造プロセスの間に、該カプセルに亀裂が生じたことが観察された。該比が1:1.2を超えた場合、カプセルはゼラチン不足に起因して不規則な形状に形成され、このことは軟カプセルの製造プロセスにおける困難性を示している。また、該カプセルを、乾燥条件(25℃および15%RH)および加速条件(40℃および75%RH)下において1週間保存した。その結果、実施例1-1のカプセルの外観は、実施例1-2および1-3のカプセルと比較して、歪み、伸張、サイズの変化などをほとんど示さないことが観察された。
上記の結果に基づいて、ソルビトールソルビタン溶液を含む実施例1-1の軟カプセルを用いて以下の実験を続けた。
【0069】
3)カプセル組成による崩壊時間の比較
軟または硬カプセルのカプセル組成による崩壊時間を分析するために、実施例1-1および比較実施例1において製造されたカプセルを用い、韓国薬局方に記載の溶出試験方法に基づいて、溶出試験を実施した。その結果、実施例1-1および比較実施例1のカプセルの崩壊時間は、可塑剤の種類に関係なく、各々、9分および8分30秒(両方とも韓国薬局方の許容範囲内である)であった。
【0070】
実施例2:ロスバスタチンを含む経口複合製剤の製造
カプセルコアとして実施例1-1のカプセルを用いて、第1および第2コーティングを、表3に記載の成分に基づいて塗布した。第1コーティング層について、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびエチルセルロース(Aqualon N7グレード, ASHLAND)をエタノールと水の重量比3:7の混合溶媒に溶解させ、そのようにして得られた混合液で、コーティング装置(Sejong, SFC-30)を用いて耐水性コーティングを施した。続いて、第2コーティング層について、ロスバスタチンカルシウム、塩基性安定剤(MgCO
3)、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(コリコートIR, BASF)をエタノールと水の重量比3:7の混合溶媒に溶解させ、そのようにして得られた混合液で、コーティング装置(Sejong, SFC-30)を用いて第2コーティングを施した後、乾燥させて、経口複合製剤を得た。
表3
【表3】
【0071】
比較実施例2:ロスバスタチンを含む経口複合製剤の製造
実施例2の方法(実施例1-1のカプセルの代わりに比較実施例1のカプセルを用いることを除く)を繰り返して、比較実施例2の経口複合製剤を得た。
【0072】
試験実施例1:ロスバスタチンの安定性試験
安定性試験を実施して、ロスバスタチンを含む経口複合製剤のカプセル組成による関連物質の産生率を比較した。
【0073】
実施例2および比較実施例2で製造した経口複合製剤を、密閉した高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに入れ、加速保存条件(40℃および75%RH)下において保存した。試験開始時ならびにその1、3および6か月後にサンプルを採取し、HPLC分析により評価した。HPLC分析を、約250 mmの長さのステンレススチールカラム(5 μm C
18を充填)または類似のカラム(Inertsil-ODS2, GL sciences)を用いて、水:アセトニトリル:1%(v/v)トリフルオロ酢酸溶液(62:37:1(v/v))の移動相で流速0.75 mL/分にて、実施した。関連物質のピークを、ロスバスタチンの主要なピークと比較して、定量的に分析した。結果を、
図2および3に示す。
【0074】
図2および3に示す通り、ソルビトールおよびソルビタンを含む本発明の複合製剤(実施例2)は、グリセロールを含む比較実施例2の複合製剤と比較して、RRT 0.72 関連物質、3R,5S ラクトン-関連物質および全関連物質の量の減少を示したことから、本発明の複合製剤は加速保存条件下において最大6か月まで向上した安定性を有することが示唆される。
【0075】
特に、実施例2の複合製剤はRRT 0.72 関連物質の産生における顕著な減少を示したことから、ロスバスタチン複合製剤の開発においてグリセロールの代わりに代替可塑剤を用いることが適切であるという結論が導かれる。
【0076】
実施例3および4:アトルバスタチンを含む経口複合製剤の製造
カプセルコアとして実施例1-1のカプセルを用いて、第1および第2コーティングを、表4に記載の成分に基づいて塗布した。第1コーティング層について、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびエチルセルロースを、エタノールおよび水の重量比3:7の混合溶媒に溶解させ、そのようにして得られた混合液でコーティング装置(Sejong, SFC-30)を用いて、耐水性コーティングを施した。続いて、第2コーティング層について、アトルバスタチンカルシウム、塩基性安定剤、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを、エタノールおよび水の重量比3:7の混合溶媒に溶解させ、そのようにして得られた混合液でコーティング装置(Sejong, SFC-30)を用いて第2コーティングを施した後、乾燥させて、実施例3および4の経口複合製剤を得た。実施例3および4の製剤は、各々、アトルバスタチン形態IおよびVIIIを含む。
表4
【表4】
【0077】
比較実施例3および4:アトルバスタチンを含む経口複合製剤の製造
実施例3の方法(実施例1-1のカプセルの代わりに比較実施例1のカプセルを用いたことを除く)を繰り返して、比較実施例3および4の経口複合製剤を得た。比較実施例3および4の製剤は、各々、アトルバスタチン形態IおよびVIIIを含む。
【0078】
試験実施例2:アトルバスタチンの安定性試験
安定性試験を実施して、アトルバスタチンを含む経口複合製剤のカプセル組成による関連物質の産生率を比較した。
【0079】
実施例3および4ならびに比較実施例3および4で製造した経口複合製剤を、密閉した高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに入れ、加速保存条件(40℃および75%RH)下において保存した。試験開始時ならびにその1、3および6か月後にサンプルを採取し、アトルバスタチンの関連物質を、USP32のアトルバスタチンカルシウムモノグラフを参照して分析した。結果を
図4および5に示す。
【0080】
図4および5に示す通り、ソルビトールおよびソルビタン(実施例3および4)を含む本発明の複合製剤は、比較実施例3および4と比較して、全関連物質の量を減少させ、このことは本発明の複合製剤が加速保存条件下において最大6か月まで安定性を向上させたことを示唆している。試験実施例1中の同様の方法で、関連物質の増大はアトルバスタチンとグリセロール間の反応に起因していたことが予期される。
【0081】
それ故に、試験実施例1および2のロスバスタチンおよびアトルバスタチンの結果に基づいて、軟または硬カプセルに充填されたスタチンおよびいずれの他の薬物を含む複合製剤の研究について同様の結果が予期され得る。
【0082】
実施例5〜8ならびに比較実施例5および6:経口複合製剤の製造
軟カプセルを、表5に記載の成分に基づいて、ゼラチン、参考実施例で用いたソルビトールソルビタン溶液、およびグリシンを用いて軟カプセルを製造するための通常の方法で製造し、そのようにして得られた軟カプセルにω-3脂肪酸エチルエステルを充填した。
【0083】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびエチルセルロースを、エタノール(450 mg)および水(1,100 mg)と混合し、そのようにして得られた混合液でコーティング装置(Sejong, SFC-30)を用いて第1コーティングを施した後、乾燥させて、第1コーティング層でコーティングされたカプセルを得た。
【0084】
該第1コーティング層の表面を覆う第2コーティング層を形成させるために、ロスバスタチン(10 mg)をコリコートIRおよびポビドンに溶解させた後、下記表5に記載の量の炭酸水素ナトリウムを加えて、薬物コーティング溶液を製造した。該カプセルを、該薬物コーティング溶液を用いて上記と同一の方法でコーティングして、経口複合製剤を得た。
【0085】
実施例7および8の複合製剤を、1.25 mgのロスバスタチンにつき、各々、ロスバスタチン:炭酸水素ナトリウム=10:1および100:1の重量比(実施例5および6の複合製剤におけるものと実質的に同一のロスバスタチン:炭酸水素ナトリウムの比である)で製造した。
【0086】
比較実施例5および6の複合製剤を、上記の方法(炭酸水素ナトリウムの代わりに炭酸カルシウムを用いることを除く)を繰り返すことによって製造した。
表5
【表5】
【0087】
試験実施例3:産生された関連物質の分析
実施例5〜8および比較実施例5および6で製造した経口複合製剤を、密閉した高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに入れ、加速保存条件(40℃および75%RH)下で保存した。試験開始時ならびにその1、3および6か月後にサンプルを採取し、関連物質の産生率を、試験実施例1に記載されたものと同一の方法で分析した。その結果を、表6および7ならびに
図6および7に示す。
表6
【表6】
表7
【表7】
【0088】
表6および7に示す通り、塩基性安定剤として炭酸水素ナトリウムを含む実施例の複合製剤および炭酸カルシウムを含む比較実施例の複合製剤は、ラクトン関連物質の同様の増加をもたらした。しかしながら、本発明の複合製剤は、未知の関連物質の産生における阻害効果の向上を示した。
【0089】
図6および7は表6および7を図式化したものであり、ここで、
図7中の点線は未知の関連物質についてのICHガイドラインの要件(すなわち、0.5重量%未満)を示す。
図6および7に示す通り、炭酸カルシウムを含む比較実施例5および6の複合製剤は、6か月間保存後に、ICHガイドラインにより示される限度を超えた。
【0090】
試験実施例4:エチルセルロースの存在に依存して産生された関連物質の分析
耐水性コーティング物質としてのエチルセルロースの使用による関連物質の産生率を比較するために、実施例2の方法(第1コーティング層においてエチルセルロースを用いないことを除く)を繰り返して、比較実施例7の複合製剤を得た。
【0091】
比較実施例7および実施例2で製造した経口複合製剤を、密閉した高密度ポリエチレンボトルに入れ、加速保存条件(60℃)下で1週間保存した。サンプルを採取し、80%アセトニトリル(ACN)で抽出した後、HPLC分析により評価した。
【0092】
HPLC分析を、約250 mmの長さのステンレススチールカラム(5 μm C
18を充填)または類似のカラム(Inertsil-ODS2, GL sciences)を用いて、流速0.75 mL/分にて、水:アセトニトリル:1%(v/v)トリフルオロ酢酸溶液(62:37:1(v/v))の移動相で、実施した。関連物質RRT 0.72のピークを、ロスバスタチンの主要なピークと比較して、定量的に分析した。結果を表8に示す。
表8
【表8】
【0093】
表8に示す通り、エチルセルロースを用いた実施例2は、エチルセルロースを用いなかった比較実施例7と比較して、関連物質の産生における優れた阻害効果を示した。
【0094】
実施例9および10:経口複合製剤の製造
表9に記載の成分に基づいて、実施例5の方法(炭酸水素ナトリウムの代わりに水酸化マグネシウムを用いることを除く)を繰り返して、実施例9および10の経口複合製剤を得た。
表9
【表9】
【0095】
本発明は上記の特定の実施態様に関連して説明されているけれども、当業者によって様々な改変および変更がなされてもよく、またそれも添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であることが認識されるべきである。