特許第6073367号(P6073367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073367
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】フィルタペーパインサート
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/08 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   A47J31/08
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-547776(P2014-547776)
(86)(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公表番号】特表2015-502224(P2015-502224A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012069417
(87)【国際公開番号】WO2013091921
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】11195667.8
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014155
【氏名又は名称】メリタ オイローパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Melitta Europa GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ アウス デア フュンテン
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート ペアチュ
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136678(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19516800(DE,A1)
【文献】 特開2008−253700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出飲料を製造するためのフィルタペーパインサート(1)であり、フィルタペーパから成る少なくとも2つの層(2)を有し、該層は、装入可能な内室を形成するため、底部(4)と、互いに対向する側部(3、5)とにおいて互いに結合されており、フィルタペーパには、通過率を高めるために多数のスリット(11、13、15)が設けられているフィルタペーパインサートにおいて、
フィルタペーパインサート(1)の底部(4)に隣接して配置された下部領域(8)に形成されている、面積当たりのスリット(11)の数が、装入口に隣接して配置された上部領域(10)に形成されているスリットの数よりも少なく、
1つのスリット(11、13、15)を含むフィルタペーパの領域が複数設けられ、該領域のうち少なくとも1つの領域にエンボス加工部(20、21、22)が設けられており、該エンボス加工部(20、21、22)は略鉢状に形成され、前記スリット(11、13、15)は該エンボス加工部(20、21、22)の底部区分(25)に形成されていることを特徴とする、フィルタペーパインサート。
【請求項2】
前記上部領域(10)に設けられたスリット(15)が、前記下部領域(12)に設けられたよりも長尺に形成されている、請求項1記載のフィルタペーパインサート。
【請求項3】
前記スリット(11、13、15)が波形に形成されている、請求項1又は2記載のフィルタペーパインサート。
【請求項4】
前記スリット(11、13、15)の長さが、1.5mmより大きく形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項5】
波形の前記スリット(11、13、15)の波の振幅が、前記スリット(11、13、15)の長さの少なくとも20%である、請求項1から4までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項6】
前記スリット(11、13、15)の長さが、6mmより小さく形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項7】
前記上部領域(10)と前記下部領域(8)との間に中部領域(9)が設けられており、該中部領域に設けられているスリット(13)の数は、前記下部領域(12)におけるよりも多く、かつ前記上部領域(16)におけるよりも少なく設定されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項8】
前記スリット(11、13、15)は水平方向の列を成して配置されており、前記スリット(11、13、15)間の距離は5〜40mmである、請求項1から7までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項9】
前記上部領域(10)に設けられた前記スリット(11、13、15)間の距離が、前記下部領域(8)におけるよりも小さいことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項10】
前記下部領域(8)に設けられた前記スリット(11)が、前記上部領域(10)におけるよりも短いことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項11】
少なくとも前記下部領域(8)及び上部領域(10)が、エンボス加工部により互いに分離されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項12】
前記下部領域(8)と前記中部領域(9)と前記上部領域(10)とが、それぞれ枠形のエンボス加工部により取り囲まれている、請求項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項13】
前記スリット(11、13、15)がS字形に形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【請求項14】
前記エンボス加工部(20、21、22)は、フィルタペーパの2つの層(2)においてそれぞれ外側に向かって突出している、請求項1から13までのいずれか1項記載のフィルタペーパインサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の抽出飲料を製造するためのフィルタペーパインサートに関する。
【0002】
欧州特許第763994号明細書には、抽出飲料のためのフィルタが開示されている。このフィルタは繊維材料から成る2つの層を有し、両層には複数の孔が設けられている。孔径は0.1〜0.4mmと小さく、孔の周縁領域において、ある程度の繊維密度を有している。これにより、コーヒー粉のような比較的小さい粉末であっても通過させずに留めておくことができる。しかしながらこれらの小孔の問題点は、25〜100μm大きさの油分子まで留めてしまうことである。このような油、特にコーヒー飲料におけるコーヒーの油分は風味を伝えるものであり、この油分子を濾し取ることで、コーヒーの風味が落ちてしまう。
【0003】
欧州特許出願公開第2067420号明細書には、フィルタペーパから製造されたフィルタ挿入体が開示されている。このフィルタペーパにはパーフォレーションが設けられ、透過率の異なる複数の領域が形成されている。ここにもまた、これらの微小なパーフォレーションは粉末だけでなく、風味を伝える大きな油分子をも濾し取ってしまうという問題がある。
【0004】
独国特許出願公開第19516800号明細書には、コーヒー又は茶葉の芳香抽出物を製造するためのフィルタペーパインサートが開示されている。このフィルタペーパインサートには、切り込みを入れて線状に形成した多数のスリットが設けられている。これらのスリットは、抽出過程における水圧により開口する。しかしながらこの水圧によるスリットの開口は、通過率の上昇を招き、そのためフィルタペーパインサート内の抽出用の湯の滞留時間が比較的短くなり、コーヒー粉がコーヒー抽出物に混じることがあった。さらにこの単位面積当たり均等に形成されたスリットを有するフィルタペーパインサートは、その高さに亘り均一な通過性を有するため、コーヒー粉や茶葉の量が異なると、抽出時間も様々に異なるという問題点を有する。
【0005】
従って本発明の課題は、最適な風味を体感できる上に、抽出時間を最適に調整できる抽出飲料製造用フィルタペーパインサートを提供することにある。
【0006】
上記課題は、請求項1に記載した特徴的構成を有するフィルタペーパインサートによって解決される。
【0007】
本発明によるフィルタペーパには、通過率を上昇させるためのスリットが多数設けられている。フィルタペーパインサートの底部に隣接して配置された下部領域に形成されている、面積当たりのスリットの数は、装入口に隣接して配置された上部領域に形成されているスリットの数よりも少ない。これにより、フィルタペーパインサート内の抽出用湯の滞留時間を、少量の抽出であっても十分に長く取れるようになる。量が多くなるにつれて単位面積当たりのスリット数が増えるため、抽出用湯は、フィルタペーパインサート内の所定の液面に達するとスムーズに流出する。フィルタペーパにスリットを設けることにより、コーヒー粉はそのほとんどが残るが、風味を伝える油分はむしろ通過する。これにより飲料中のコーヒー油の含量が増え、コーヒーの風味が増す。
【0008】
本発明の有利な形態によれば、上部領域のスリットを下部領域よりも長尺に形成する。これにより、上部領域における通過率を更に上げることができる。上記の油脂分は水よりも軽いため、フィルタペーパインサートの上部領域に多く存在する。従って、上部領域のスリットを長尺に形成することで、コーヒー油の含量を増やすことができる。
【0009】
これらのスリットは、有利には波形に形成する。これにより、フィルタペーパインサートに水圧がかかっても、スリットは比較的安定する。そのため、コーヒー粉の通過率は下げながらも、大きめの油分子は通過させる開口サイズが確保される。この時のスリット長は1.5mmより大きく、特に2.5mmより大きくしてよい。波形スリットの波の振幅は、スリット長の少なくとも20%、有利には少なくとも30%とする。これらのスリットは、例えばS字形とすることができ、その際この「S」字は、水平、垂直または斜め向きとすることができる。
【0010】
別のもう1つの実施形態によれば、上部領域と下部領域の間に中部領域を設け、そこに、面積当たりで下部領域よりも多く上部領域よりも少ない数のスリットを設ける。これによりこのフィルタペーパインサートには、通過率の異なる3つの芳香域(アロマゾーン)が形成される。
【0011】
最も好ましい外観を得るために、これらのスリットは水平方向の列を成して配置する。各スリット間の距離は、5〜40mm、特に8〜20mmとする。その際、上部領域における各スリット間の距離は、有利には下部領域におけるよりも小さく、有利には20%以上小さくする。さらに、下部領域のスリットは上部領域におけるよりも短く、有利には同様に20%以上短くする。
【0012】
通過率の異なるこれらの領域を最適に分離するために、有利には少なくとも上部及び下部領域を、エンボス加工部により互いに分離する。例えば、下部、中部及び/又は上部領域をそれぞれ縁取る、枠形のエンボス加工部を設けることができる。
【0013】
本発明のフィルタペーパインサートにより、有利にはろ過後のコーヒー油の含有率が0.025%より大きく、特に0.03%より大きくなるようにコーヒーをろ過することができる。コーヒー油の含有率を調べるには、約50gの計量したコーヒー粉に対し1100mlの熱湯を注いでろ過する。結果として、コーヒー油の含量が従来のフィルタペーパインサートに比べて格段に、特に2倍以上にも増えるため、風味が増す。
【0014】
本発明の別のもう一つの実施形態によれば、1つのスリットを有するフィルタペーパの少なくとも1つの領域を、エンボス加工する。その際、略鉢状のエンボス加工部が形成され、スリットはそのエンボス加工部の底部区分に形成されている。この時エンボス加工部のプロフィールは、スリットのプロフィールに合わせることができる。このようにして、コーヒー油分の抽出を、スリット部分のエンボス加工部によりさらに最適化できる。なぜなら、エンボス加工の際、スリット部分のパルプ繊維が強い圧力を受けて変形し、フィルタペーパの片面にはっきりとした凸部若しくは鉢状の凹部が生じるためである。エンボス加工部の底部区分に設けたスリットは、エンボス加工をしたことにより一層良好に開くため、コーヒー抽出の際、コーヒーは所期の通りスリットを通過する。
【0015】
有利には、フィルタペーパの両層におけるこれらのエンボス加工部は、それぞれ外側に突出して設けられる。これにより、フィルタペーパインサートを包みから取り出して開く際の取り扱いが容易になる。
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるフィルタペーパインサートを示す図である。
図2】本発明によるフィルタペーパインサートの別のもう1つの実施例を示す図である。
図3】エンボス加工を施した、本発明によるフィルタペーパインサートを示す図である。
図4図3記載のフィルタペーパインサートのエンボス加工部とスリットの詳細を示す図である(図4A及び図4B)。
【0018】
フィルタペーパインサート1は、フィルタペーパから成る2つの層2を有する。これらの層は、装入可能な内室を形成するために3つの側部において結合されている。一方の側部3において、両層は折り目縁を介して結合されている。底部4と他方の側部5には、層2同士を接合するエンボス継ぎ目6及び7が設けられている。フィルタペーパインサート1は、略円錐台状に形成される。フィルタペーパインサート1は、他の形状であってもよい。なおこの折り目縁は、側部ではなく底部に設けることもでき、また、図示のエンボス継ぎ目6及び7の代わりに1つのエンボス継ぎ目だけで、又はより多くのエンボス継ぎ目で両層2を接合することも可能である。
【0019】
フィルタペーパは、セルロース系繊維材料及び/又は合成繊維材料から成る。紙と不織布との混合材料であっても、ここではフィルタペーパとする。この材料の坪量は、例えば20〜100g/mとする。
【0020】
このフィルタペーパインサート1は、底部4に隣接して配置された下部領域8と、中部領域9と、フィルタペーパインサート1の装入口に隣接して配置された上部領域10とを有する。フィルタペーパの下部領域には波形スリット11が、中部領域9には波形スリット13が、上部領域には波形スリット15が、特に回転方式により切り込みを入れることによって設けられる。下部領域8の波形スリット11の長さは、2.5〜3.9mm、特に3.0〜3.4mmとする。これらのスリット11は水平方向の列を成して配置されており、2つのスリット間の距離は、10〜16mm、特に12〜14mmとする。この構成により、抽出部である下部領域8の通過率が最低となるため、コーヒー粉がふやけて膨らむようになる。
【0021】
中部領域9における波形スリットの長さは、3.0〜4.6mm、特に3.6〜4.0mmである。これらのスリット13は水平方向の列を成して配置され、2つのスリット間の距離は、7〜15mm、特に10〜12mmである。中部領域9は主抽出部であり、波形スリット13により最適な接触時間が得られる。波形スリット13は、溶けた油分子が通過できる大きさを有する。
【0022】
上部領域10における波形スリット15の長さは、3.5〜5.1mm、特に4.0〜4.6mmである。これらのスリット15は水平方向の列を成して配置され、2つのスリット間の距離は、5〜13mm、特に7〜11mmである。これにより、上部領域10では抽出用の湯が迅速に流れる。またこの上部領域10における迅速な流れにより、苦み物質の比率のバランスが保たれる。抽出過程の間上部に浮かぶ油分も、最適にコーヒー抽出物に加えられ、フィルタペーパインサート1に残されることもない。
【0023】
スリット11、13、15を波形に形成することにより、フィルタペーパは安定性を保つ。即ちこれらのスリット11、13、15は、抽出している間、コーヒー油が通過できる程度にまでは開くが、コーヒー粉はそのほとんどがフィルタペーパインサート1内に残される。
【0024】
下部領域8の周囲には枠形のエンボス加工部12が、中部領域9の周囲には枠形のエンボス加工部14が、上部領域の周囲には枠形のエンボス加工部16が設けられる。これにより、領域8、9、10は最適に互いに分離される。必要に応じて、枠形のエンボス加工部12、14、16を設けなくても良い。
【0025】
さらに、波形スリット11、13、15の作用を、コーヒー飲料中のコーヒー油分を検出する実験により測定した。この時比較例として、フィルタペーパに多数の孔を有するフィルタペーパインサートを使用した。
【0026】
本発明のフィルタペーパインサート1は、比較例と比較するように使用した。使用したフィルタペーパインサート1は、下部領域8において3.2mm長の波形スリットを有しており、スリット間の距離は13.0mmである。下部領域8には、2列の水平なスリット11の列が設けられている。
【0027】
中部領域9には、3.8mm長の波形スリット13が設けられている。このスリット13間の水平距離は11.0mmである。中部領域9には、4列の水平なスリット13の列が設けられている。
【0028】
上部領域10には、4.3mm長の波形スリット15が設けられている。このスリット15間の水平距離は9.0mmである。上部領域10には、4列の水平なスリット15の列が設けられ、それらの比率は、図1に概略記載した通りである。
【0029】
その後複数回の実験において、熱湯を注いで抽出したコーヒー中の油脂の含量を、ソックスレー抽出法により測定した。
【0030】
この実験においては、3個の異なるフィルタペーパインサートをコーヒー油の含有率に関して調べた。フィルタペーパインサートは、孔を有していないものと、複数の円形の小孔(芳香孔)を有するものと、図1記載の本発明による波形スリットを有するものを用いた。この分析の為に、各1100mlの沸騰した湯を使って、手作業による抽出を行った。この沸騰した湯を、挽いたコーヒー粉48gを入れた1×4サイズのフィルタペーパインサート内に注いだ。
【0031】
その際、まずコーヒー粉を約150mlの沸騰した湯で湿らせ、30秒間前もって湯に浸す。次に熱湯をフィルタペーパインサートの上縁まで注ぎ、残りの湯を加え続ける。
【0032】
その結果、芳香孔を有していないフィルタペーパインサートから出るコーヒーの油の含有率は0.015%であったのに対し、芳香孔を有する従来のフィルタペーパインサートでろ過したコーヒーは、平均して0.018%の油分を含んでいた。これに対し、本発明によるフィルタペーパインサートの場合、コーヒー油の含有率は平均して0.037%、即ち約2倍も多く含まれていた。これは、小孔の開口部の場合、コーヒー油がそこに残留するのに対し、図1記載の本発明によるフィルタペーパインサートの場合、より長いスリット11、13、15を通してより多くのコーヒー油分が通過することに基づく。これにより、コーヒーの芳香が確実に強くなる。
【0033】
【表1】
【0034】
図2に示すのは、本発明の変形例としてのフィルタペーパインサート1’であり、第1実施例と同じ部材には同じ符号を付して示す。このフィルタペーパインサート1’は、フィルタペーパから成る2つの層2を有し、両層は、一方の側部3において折り目縁を介して、底部4と他方の側部5においてエンボス継ぎ目6及び7を介して互いに結合されている。先の実施例と異なり、これ以外のエンボス加工部は設けず、波形スリット11、13、15のみがフィルタペーパに設けられている。ここでは下部領域8の波形スリット11は中部領域9の波形スリット13よりも短く形成され、中部領域9の波形スリット13は上部領域10の波形スリット15よりも短く形成されている。面積当たりのスリット11、13、15の数もまた、下部から上部に向かって増えていく。即ちスリットの長さも数も、上部に向かうにつれて増える。図3に示すフィルタペーパインサート1’は、本実施形態によれば、他にエンボス加工部を設けなくても本発明の利点が得られる。
【0035】
図3に示すもう1つの別の実施形態において、図3記載のスリット配置は図4に示すさらなるエンボス加工部と組み合わされる。下部領域8と中部領域9とは、エンボス線31によって分離され、中部領域9と上部領域10とは、エンボス線32によって分離されている。これらのスリットは、枠30によって取り囲まれる1つの領域に配置されている。この枠30は略円錐台状のプロフィールを有し、側部3とエンボス継ぎ目6及び7からそれぞれ一定の距離を置いて設けられている。
【0036】
図3に示す実施例において、これらのスリット11、13、15はそれぞれエンボス加工部20、21、22の内側に設けられている。これらのエンボス加工部20、21、22は、スリット11、13、15を製造する前か、製造後か、または製造と同時に設けることができる。これらのエンボス加工部20、21、22は波形に形成され、スリット11、13、15を取り囲み、0.5〜2.0mm、特に0.7〜1.3mmの幅を有している。これらのエンボス加工部20、21、22の長さは、スリット11、13、15の長さに合わせてあり、スリット11、13、15の長さに応じて有利には2〜6mmとする。
【0037】
図4A及び図4Bは、エンボス加工部20の横断面を示す。エンボス加工部21及び22も、やや長めに形成した以外は同様に形成される。エンボス加工部20は横断面で略鉢状に形成され、平板なフィルタペーパ23から略垂直に突出した側壁24を有する。これらの側壁24は、底部区分25を介して互いに結合されている。底部区分25には、その略中央部に位置するように波形のスリット11が切り込まれている。フィルタペーパから成るこの両層に、それぞれ外側に突出するスリット11とエンボス加工部20を設けたので、包みの中で重なり合ったフィルタペーパインサートを、より簡単に取り出すことができる。エンボス加工部20、21、22の深さ若しくは高さは、例えば0.05〜0.6mm、特に0.1〜0.4mmの範囲内とすることができる。これらのエンボス加工部20、21、22により、フィルタペーパの変形の際にエンボス領域に強い圧力がかかるため、スリット11、13、15がより簡単に開くようになる。これにより、抽出飲料内のコーヒー油の含量をさらに増やすことができる。
【符号の説明】
【0038】
1、1’ フィルタペーパインサート
2 層
3 側部
4 底部
5 側部
6 エンボス継ぎ目
7 エンボス継ぎ目
8 下部領域
9 中部領域
10 上部領域
11 スリット
12 エンボス加工部
13 スリット
14 エンボス加工部
15 スリット
16 エンボス加工部
20 エンボス加工部
21 エンボス加工部
22 エンボス加工部
23 フィルタペーパ
24 側壁
25 底部区分
30 枠
31 エンボス線
32 エンボス線
図1
図2
図3
図4A
図4B