特許第6073393号(P6073393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073393
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】針注入深さ調整付き針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/46 20060101AFI20170123BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20170123BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61M5/46
   A61M5/158 500T
   A61M5/32
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-33224(P2015-33224)
(22)【出願日】2015年2月23日
(62)【分割の表示】特願2013-511132(P2013-511132)の分割
【原出願日】2010年5月17日
(65)【公開番号】特開2015-126891(P2015-126891A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イー.ウェスト
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528274(JP,A)
【文献】 米国特許第06702784(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293826(US,A1)
【文献】 特表2006−501893(JP,A)
【文献】 国際公開第1995/001198(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/053570(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0209568(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0111064(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/019936(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第01133555(GB,A)
【文献】 国際公開第2010/053574(WO,A1)
【文献】 特開平06−219483(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/46
A61M 5/158
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、
前記ハブに固定され、近位端および患者に挿入できるように形成された遠位端を有する針と、
前記ハブに対して相対的に移動できるように前記ハブと係合する本体であって、前記針が通過するのを可能にするように構成された開口が形成された遠位端を有する本体とを備え、
前記本体は、前記ハブと係合して、前記針の前記遠位端が前記本体の前記遠位端から遠位方向に、患者への第1の注射深さに対応する、第1の距離だけ延びる前記ハブ上の第1の位置に解除可能に保持されることができ、
前記本体は、前記ハブと係合して、前記針の前記遠位端が前記本体の前記遠位端から遠位方向に、患者への第1の注射深さに対応する、前記第1の距離よりも短い第2の距離だけ延びる前記ハブ上の第2の位置に保持されることができ、
前記ハブは、前記本体を前記第1の位置から第2の位置へ付勢するように、前記本体に対して近位方向に変位可能である、
針組立体。
【請求項2】
前記ハブから離れる遠位方向に前記本体を付勢するばね要素と、
協働可能に結合されるカムトラックおよびカム従動子であって、前記カムトラックが、少なくとも第1の位置および第2の位置を有し、かつ前記本体または前記ハブのいずれかの上に配設され、前記協働するカム従動子が、前記カムトラックと向かい合う部分上に配設され、それによって前記ハブと前記本体との相対的な軸方向の移動を制限するカムトラックおよびカム従動子と
をさらに備え、
本体は、前記ハブに対して軸方向および回転方向に移動できるように前記ハブ上に配設され、
前記カムトラックおよび前記カム従動子は、注入手順中に協働し、前記本体が前記ばねによって付勢されて遠位方向軸方向へ移動するのを可能にし、それによって、前記本体は、前記本体と前記ハブが所定の範囲にわたって回転方向に移動した後、前記第1の位置から前記第2の位置に移動する、
請求項1に記載の針組立体。
【請求項3】
前記本体は、前記ハブ上の前記第2の位置に固定的に保持することができる、請求項2に記載の針組立体。
【請求項4】
前記本体は、前記カムトラック内の回り止めによって前記ハブ上の前記第2の位置に保持される、請求項2に記載の針組立体。
【請求項5】
前記カムトラックは、第3の位置を有し、前記本体は、前記針の前記遠位端が前記本体の前記遠位端の近位に配置される前記第3の位置に固定的に保持されることができる、請求項2に記載の針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針組立体に関し、より詳細には、注入の深さ調整が可能な針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、皮下注射および皮内注射のような様々な深さの医療用注入が周知である。従来技術では、針の周りに設けられたハードストップ(hard stop)を利用して注入時に適切な深さを確保することも周知である。
【発明の概要】
【0003】
さらに、特に皮内注射のような浅い注入を含むある注入時には密封が重要であることがある。注入された流体がポケットとして溜まる水疱または膨疹が皮膚に形成される場合があることがわかっている。圧力が上昇することによって、注入中または注入後に注入された流体が注入通路から滲み出すことがある。
【0004】
一態様において、本明細書では、ハブと、ハブに固定され、近位端および患者に挿入できるように形成された遠位端を有する針と、ハブに対して相対的に移動できるようにハブ上に配設され、針が通過するのを可能にするように構成された開口が形成された遠位端を有する本体とを備える針組立体が提供される。本体は、針の遠位端が本体の遠位端から遠位方向に第1の距離だけ延びるハブ上の第1の位置に解除可能に保持することができる。また、本体は、針の遠位端が本体の遠位端から遠位方向に、第1の距離よりも短い第2の距離だけ延びるハブ上の第2の位置に保持することができる。ハブは、本体に対して近位方向に変位可能であり、本体を付勢して第1の位置から第2の位置に移動させる。有利なことに、本発明では、第1の深さまでの針注入用のストップであって、より浅い第2の深さで注入を行うのを可能にするように調整可能なストップを提供し得る針組立体が提供される。
【0005】
他の態様では、本発明は、ハブと、ハブに固定され、近位端および患者に挿入できるように形成された遠位端を有する針と、ハブに対して移動できるようにハブ上に配設され、針が通過するのを可能にするように構成された開口が形成された遠位端を有する本体と、本体の遠位端上に配設された感圧接着剤とを備える針組立体が提供される。本体は、針の遠位端が本体の遠位端から遠位方向に第1の距離だけ延びるハブ上の第1の位置に解除可能に保持することができる。また、本体は、針の遠位端が本体の遠位端から遠位方向に、本体の遠位端から第1の距離よりも短い距離だけ延びるハブ上の第2の位置に保持することができるか、または本体の遠位端の近位に配置される。接着剤は、注入時に患者の皮膚に十分に付着するように構成され、それによって、本体が患者の皮膚にかなり固定されたままになり、ハブが本体に対して近位方向に移動するのが可能になり、したがって、本体が第1の位置から第2の位置へ移動する。
【0006】
本明細書では、「遠位」という用語およびその派生語は、使用時に患者に近づく方向を指し、「近位」という用語はおよびその派生語は、使用時に患者から遠ざかる方向を指すものとする。
【0007】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面を検討することによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明によって形成された針組立体の正面斜視図である。
図2図1の線2−2に沿った断面図である。
図3図2の部分3の拡大断面図である。
図4図6の部分4の拡大断面図である。
図5】第2の位置に示された図1と同じ針組立体を示す図である。
図6図5の線6−6に沿った断面図である。
図7】本発明によって形成された針組立体の第1の位置を示す図である。
図8】本発明によって形成された針組立体の第2の位置を示す図である。
図9】本発明によって形成された針組立体の変形実施形態の断面図である。
図10図9の部分10の拡大断面図である。
図11】本発明と一緒に使用できるトラック構成を示す図である。
図12】本発明と一緒に使用できるトラック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図を参照すると、医療用注入の深さを調整できるように形成された針組立体10が提供される。針組立体10は、様々な注入器に利用できるが、特にペン形注入器に使用するのに適している。
【0010】
針組立体10は概して、ハブ12と、ハブ12に固定された針14と、ハブ12に対して移動できるようにハブ12上に配設された本体16とを含む。本体16は、ストップとして働き、後述のように、患者に対する針14の許容注入深さを制限する。
【0011】
ハブ12は、管状部18と、付着のような任意の周知の方法で針14が取り付けられる横隔壁20とを含む。管状部18は、その近位端に縮径首部22を含むことが好ましい。隔壁20は、管状部18の内部、特に首部22を横切って延びてもよい。
【0012】
針組立体10を医療用注入器上に取り付けるように形成された取付け部材24が、管状部18の内部または外部のいずれかに設けられている。取付け部材24は、ルアー表面および/もしくはねじ山、または他の周知の取付け部材を含んでもよい。ハブ12は、高圧蒸気殺菌または他の形態の滅菌に耐えることのできる材料、たとえば熱可塑性材料で形成されることが好ましい。
【0013】
針14は、任意の周知の種類の針であってもよく、近位端26と、患者に挿入できるように形成された遠位端28とを含む。遠位端28は先鋭であってもよい。さらに、近位端26は、先鋭であってもよく、針組立体10が取り付けられた医療用注入器上に設けられた隔膜または他のクロージャを貫通して延びるのに十分な長さを有するように形成されてもよい。
【0014】
本体16は、スカート32が近位方向に延びる遠位端30を含む。スカート32は、環状に形成され、遠位端30の周囲を形成することが好ましい。スカート32は、ハブ12の首部22の上方で伸縮するようなサイズおよび形状を有する。針14が通過するのを可能にするように構成された開口34が本体16の遠位端30に形成されている。本体16は、高圧蒸気殺菌または他の形態の滅菌に耐えることのできる材料、たとえば熱可塑性材料で形成されることが好ましい。
【0015】
本体16は、ハブ12に対して移動できるようにハブ12上に配設されている。本体16とハブ12との相対的な移動は、首部22の周りのスカート32の伸縮運動によって実現されてもよい。ハブ12とスカート32は、それらが相互に十分に係合してスカート32またはハブ12を維持する保持力を生じさせるように形成されてもよい。
【0016】
図1図8を参照すると、針組立体10は、本体16、特に遠位端30が、患者に対する針14の初期注入の深さを制限するうえでハードストップとして働くように利用されることが好ましい。具体的には、図1図2、および図7を参照するとわかるように、針14の遠位端28が本体16の遠位端30から第1の距離D1だけ延びる(図7)本体16の第1の位置が示されている。本体16は、針14が患者に過度に挿入されないようにハードストップとして働くようにハブ12に対して第1の位置に保持されることが好ましい。本体16は、第1の位置に解除可能に保持され、その後そこから移動できることが好ましい。
【0017】
非制限的な例として、図2および図3を参照するとわかるように、好ましくは本体16上に形成された1つまたは複数の保持歯36を含む解除可能な保持構成が設けられてもよい。協働する第1の保持長穴38がハブ12上に形成されることが好ましい。保持歯36は、第1の保持長穴38に制限されたスナップ係合構成として入れ子状に収容されるように形成されている。第1の保持長穴38は、制限された深さを有するように形成され、それによって、十分な分離力の下で保持歯36と第1の保持長穴38とのスナップ係合を解除させ保持歯36をそこから付勢することができる。分離力は、ハブ12を本体16に対して近位方向に移動させることによって生じさせることが好ましい。
【0018】
好ましくはハブ12上に形成される第2の保持長穴40は、第1の保持長穴38から近位方向に形成されてもよい。第2の保持長穴40は、図5図6、および図8に示すように、針14の遠位端26が本体16の遠位端30から距離D2だけ延びるハブ12に対する本体16の第2の位置に対応する。距離D2は、距離D1よりも短い。このように、最初、本体16を第1の位置に配置することによって針14を患者に第1の深さまで挿入し、その後、ハブ12を本体16に対して近位方向に移動させることによって、本体16を第1の位置から第2の位置へ付勢してもよい。
【0019】
本体16は、ハブ12上の第2の位置に固定的に保持されてもよい。図3および図4に示すように固定的な保持を実現するには、第2の保持長穴40を第1の保持長穴38よりも大きい深さを有するように形成して保持歯36を保持長穴40に固定的に保持させ、したがって、ハブ12が本体16に対してさらに相対的に移動するのを抑制すればよい。特に、第2の保持長穴40は、保持歯36とのスナップ係合が解除されるのを妨げるのに十分な深さを有するように形成されてもよい。あるいは、後述のように、本体16がハブ12上の第2の位置に解除可能に保持されてもよい。ここで、第2の保持長穴40は、保持歯36とのスナップ係合を保持歯36によって解除できるように構成されるように第1の保持長穴38と同様に(たとえば、同じ深さに)形成されてもよい。当業者には理解されるように、保持歯36、第1の保持長穴38、第2の保持長穴40、および/または任意のさらなる保持長穴は、本明細書において説明するのと同様に動作するように一部がハブ12および/または本体16上に形成されても、全体がハブ12および/または本体16上に形成されてもよい。
【0020】
第1の位置および第2の位置は、針14の特定の注入深さに対応するように構成されてもよい。たとえば、第1の位置が皮下注射に対応する位置であってもよく、一方、第2の位置が皮内注射に対応する位置であってもよい。さらに、第1の位置が筋肉注射に対応する位置であり、一方、第2の位置が皮内注射に対応する位置であってもよく、同様に、選択される距離に応じて、深さの任意の組合せを使用し、それによって、2つの別個の組織区画を対象としてもよい。このように、針14を第1の深さまで注入し、次いで薬剤を投与するより浅い深さまで引き出してもよい。針14を最初に(距離D1における)より深い位置まで注入することによって、ハブ12上の本体16の第2の位置に対応する(距離D2における)より浅い注入での薬剤投与の過程で針14の周りにより優れた密封を実現することができる。
【0021】
使用時には、本体16を第1の位置に配置して針14を患者に挿入することが好ましい(図7)。本体16の遠位端30は、針14を患者の皮膚Sに挿入する深さを制限するハードストップとして働く。その後、注入器を作動させて薬剤を投与する前に、本体16を患者の皮膚Sに接触した状態に維持し、ハブ12を本体16に対して近位方向に移動させ、本体16を第2の位置に付勢する(図8)。ハブ12の近位方向への移動は、手動作用により、たとえば本体16を一方の手で患者の皮膚に接触させ、第2の手でハブ12を本体16に対して近位方向へ移動させる(たとえば、ハブ12を患者の皮膚Sから引き離す)ことによって実現されてもよい。医療用注入器の作動、したがって、薬剤の投与は、本体16を第2の位置に配置することによって行われてもよい。
【0022】
ハブ12を本体16に対して近位方向へ移動させる様々な態様を利用してもよい。上述のように、相対的な近位方向への移動は手動で生じさせてもよい。あるいは、相対的な近位方向への移動を受動的に生じさせても、手動作用と受動作用の組合せ(たとえば、手動トリガと受動的な作動)によって生じさせてもよい。
【0023】
非制限的な例として、ハブ12を本体16に対して受動的に相対的に近位方向に移動させるには、注入時に患者の皮膚に十分に付着するように構成された感圧接着剤層42を本体16の遠位端30上に設けてもよく、それによって、本体16が患者の皮膚にかなり固定されたままになり、ハブ12が本体16に対して近位方向に移動するのが可能になり、したがって、本体16が第1の位置から第2の位置へ移動する。本発明には様々な感圧接着剤を利用してもよい。層42は、針14を囲む連続的なパターン(たとえば、円板状パターン)または不連続な無作為パターンもしくは一定パターンを含む様々なパターンで配置されてもよい。
【0024】
針組立体10を最終的に患者から取り外さなければならないので、感圧接着剤層42を過度に付着すべきではないことに留意されたい。層42を取り除くことによる患者の不快感を最低限に抑えなければならない。本体16がハブ12に固定的に保持され、たとえば第2の位置に固定的に保持されている場合、患者の皮膚Sに対する層42の付着力よりも大きいハブ12に対する本体16の保持力が発生することが好ましい。この構成では、本体16がハブ12上の固定位置を維持した状態で、かつ患者の不快感を最低限に抑えて、患者の皮膚Sから本体16を取り外すことができる。
【0025】
上記で指摘したように、本体16に対するハブ12の近位方向への移動は、手動作用と受動作用の組合せによって生じさせてもよい。図9図12を参照するとわかるように、非制限的な例として、手動(すなわち、能動)作用と受動作用の組合せによって動作する針組立体10の変形実施形態が示されている。特に、手動トリガを利用して受動的な作動を生じさせる。この構成では、本体16をハブ12から離れる遠位方向に付勢するように構成されたばね44がハブ12と本体16との間に配設されている。ばね44は、コイル型または圧縮式のばねを含め、付勢力を発生させることのできる任意の既知の種類のばねであってもよい。ばね44を安定させるために、ばね44が配置されるウエル48を画定する二次壁46を首部22の内側に配設してもよい。ウエル48は、隔壁20と首部22との間に配設され、隔壁20が、本体16の内側の、ウエル48の各部分同士の間を延びてもよい。ばね44は、好ましくは本体16の遠位端30に作用するように位置する。
【0026】
1つまたは複数の従動子または突起50が、本体16、特にスカート32から内側に延びるように形成されることが好ましい。これに応じて、1つまたは複数のカムトラック52がハブ12内、特に首部22の所に形成される。突起50ごと1つのトラック52が設けられることが好ましいが、複数組の突起/トラック52を設けてもよい。突起50が本体16から延び、トラック52がハブ12内に形成される好ましい実施形態として説明したが、当業者には、1つまたは複数の突起50をハブ12上に形成してもよいこと、および/または1つまたは複数のトラック52を本体16上に形成してもよいことが諒解されよう。本明細書では1つの突起50および1つのトラック52を参照するが、複数の突起50および複数のトラック52を設けてもよいことが理解されよう。
【0027】
図11を参照すると、トラック52は、少なくとも上述の第1の位置および第2の位置を形成するように構成される。図11を参照するとわかるように、トラック52は、矢印によって表される、ばね44によって発生する付勢力に対して概ね横方向に延びる第1のトラック部54を有してもよい。第2のトラック部56が、第1のトラック部54と連通し、第1のトラック部54から延びており、第2のトラック部56が、ばね44によって発生する付勢力と概ね一直線になるように配置されている。第2のトラック部56は、第1のトラック部54よりもさらに遠位まで延びるように形成されている。(図11では参照符号1によって表されている)第1の位置では、突起50が第1のトラック部54内に入れ子状に配置される。突起50と第1のトラック部54が協働して相互に係合することによって、ばね44によって生じるハブ12と本体16との相対的な軸方向への移動が妨害される。
【0028】
使用時には、針44を患者に対して、第1の位置である本体16による初期深さまで挿入する。本体16は、ハードストップとして働き、患者に対する針14の挿入範囲を制限する。針14が最大限に挿入されてから、医療用注入器が作動するまでの間に、ハブ12と本体16との間に所定の範囲の相対的な回転を生じさせ、突起50を第1のトラック部54から第2のトラック部56に付勢する。突起50とトラック52が相互に係合することによって、ハブ12と本体16との相対的な回転の範囲が制限される。第2のトラック部56に入った後、ばね44は、本体16をハブ12に対して遠位方向に付勢するように解放される。突起50の回転は手動によって開始され、それにより、ばね44の力によってハブ12と本体16が受動的に相対的に移動することができる。
【0029】
本体16が患者の皮膚と相互に係合するため、ばね44が解放されると、実際にはハブ12が本体16に対して近位方向に移動する。相対的な近位方向への移動の範囲は、突起50と第2のトラック部56の最遠位部とが相互に係合することによって制限される。この位置は、薬剤の投与を実現することのできる本体16の第2の位置に対応する。上述のように、第1の位置および第2の位置は、それぞれの異なる注入深さに対応する位置であってもよく、たとえば、第1の位置が皮下注射深さに対応する位置であり、第2の位置が皮内注射深さに対応する位置であってもよい。
【0030】
本体16を第2の位置に固定的に保持させてもよい。図11を参照するとわかるように、第2のトラック部56に、突起50が第2の位置においてスナップ係合するくぼみ58を設けてもよい。突起50をくぼみ58にスナップ係合すると、本体16をハブ12に対して固定的に保持することができる。
【0031】
針組立体10を第1の位置および第2の位置で使用するように説明したが、さらなる位置を利用してもよい。たとえば、図12を参照するとわかるように、トラック52には、第1のトラック部54と第2のトラック部56の中間の第3のトラック部60を設けてもよい。第3のトラック部60は、第1のトラック部54と連通し、ばね44によって発生するばね力と一致する方向において第1のトラック部54から遠位方向に延びる一次部分62を有してもよい。第3のトラック部60は、一次部分62と第2のトラック部56との間において横方向(ばね44のばね力の方向に対して横方向)に延びる二次部分64をさらに含む。突起50を拘束し解除可能に保持する1つまたは複数の保持要素66を二次部分64に沿って配設してもよい。したがって、使用時において、突起50は最初、第1のトラック部54内の第1の位置(参照符号1によって表されている)にある。第1のトラック部54から第3のトラック部60の一次部分62内に、ハブ12と本体16を相対的に回転させることによって突起50を手動で付勢する。突起50が一次部分62に入ると、ばね44が突起50を、参照符号2Aによって表されている第2の位置へ変位させる。1つまたは複数の保持要素66が、突起50を第2の位置に維持し、突起50がさらに遠位方向に前進するのを抑制する。保持される位置は、第2の位置またはそれに近接した位置であってもよく、参照符号2Bによって表されている。ハブ12と本体16をさらに相対的に回転させ、突起50を1つまたは複数の保持要素66を越えて第2のトラック部56内に付勢することによって、ハブ12を本体16に対してさらに相対的に近位方向に移動させることができる。ばね44は、突起50を第2のトラック部56に沿って変位させる。突起50を、ばね44の力によって、第2のトラック部56の最遠位位置(参照符号3によって表されている)と一致する第3の位置に付勢してもよく、この位置において、突起50はくぼみ58にスナップ係合することができる。
【0032】
図12を参照すると、トラック52の3つの位置は、3つの異なる使用位置に対応する位置、すなわち、医療用注入器を作動させ薬剤を投与する前に実現される皮下注射深さに対応する第1の位置(位置参照符号1)、薬剤を投与する場所の皮内注射深さのようなより浅い注入深さに対応する第2の位置(位置参照符号2A/2B)、および薬剤を投与した後で本体16の遠位端30の近位に配置される針14の遠位端28に対応する第3の位置(位置参照符号3)であってもよい。第3の位置において、遠位端28は本体16によって覆われ、それ以上接触しないように遮蔽される。本体16を使用後に遮蔽(第3の)位置に固定的に保持することが好ましい。任意のロック構成を利用して本体16を第3の位置に固定的に保持してもよい。
【0033】
当業者には諒解されるように、針組立体10には様々な注入深さに対応する様々な位置を設けてもよい。図1図8に示されている針組立体10の変形実施形態では、2つよりも多くの位置を形成し、さらなる保持長穴を設けてもよい。たとえば、針14の遠位端28が本体16の遠位端30の近位に遮蔽状態で配置される固定的な保持を実現する第3の保持長穴を設けてもよい。手動作用または受動作用(たとえば、層42)を使用して本体16を第3の位置またはそれに続く任意の位置に付勢してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12