(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073400
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】発電所加熱および冷却運転過度事件の疲労評価における補正係数の算出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-75093(P2015-75093)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-215339(P2015-215339A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0054664
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512212391
【氏名又は名称】コリア、ハイドロ、アンド、ニュークリア、パワー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOREA HYDRO & NUCLEAR POWER CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】プ・ミョンファン
(72)【発明者】
【氏名】クォン・チョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジェゴン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ソンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】オ・チャンギョン
(72)【発明者】
【氏名】シム・ヒジン
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0077873(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0079164(US,A1)
【文献】
HE-JIN SHIM et al.,"NEW APPROACH FOR FATIGUE DAMAGE MONITORING BASED ON ACTUAL OPERATING HISTORY OF NUCLEAR POWER PLANTS",NUCLEAR TECHNOLOGY ,米国,American Nuclear Society,2015年 4月,Vol.190,No.1,p88-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過度状態のタイプによる応力補正係数を用いた疲労使用係数の計算方法において、
設計運転条件を考慮して式(4)を用いて応力強度を計算する段階;
【数1】
前記計算した応力強度で最も大きい範囲をみせる過度状態条件を導出する段階
であって、過度状態類型による疲労影響を考察する段階;
交番応力強度(S
alt)を計算する段階;
交番応力強度(S
alt)を
ASME Sec.IIIで与えられる該当材料の疲労特性曲線に代入して許容反復回数を計算する段階;及び
実際の運転回数を許容反復回数に割って、疲労使用係数を計算する段階
を含み、
過度状態タイプによる応力補正係数(α)は、式(2)を用いて求めることを特徴とする応力補正係数を用いた疲労使用係数の計算方法。
(2)
【請求項2】
請求項1において、
応力補正係数(β)は、式(3)を用いて求めることを特徴とする応力補正係数を用いた疲労使用係数の計算方法。
(3)
【請求項3】
過度状態のタイプによる応力補正係数を用いて疲労使用係数を計算するコンピュータプログラムであって、
設計運転条件を考慮して式(4)を用いて応力強度を計算する段階
であって、過度状態類型による疲労影響を考察する段階;
【数2】
前記計算した応力強度で最も大きい範囲をみせる過度状態条件を導出する段階;
交番応力強度(S
alt)を計算する段階;
交番応力強度(S
alt)を
ASME Sec.IIIで与えられる該当材料の疲労特性曲線に代入して許容反復回数を計算する段階;及び
実際の運転回数を許容反復回数に割って、疲労使用係数を計算する段階
を含み、
過度状態タイプによる応力補正係数(α)は、式(2)を用いて求めることを特徴とする応力補正係数を用いて疲労使用係数を計算するコンピュータプログラム。
(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電所加熱および冷却運転過度事件の疲労評価において設計運転条件に対して求めた応力強度値に応力強度補正係数を乗じて、実際の運転条件における応力強度値として補正する疲労使用係数の計算方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の主な機器および配管の疲労設計は、ASME See. IIINB-3200及びNB-3600によって行われる。
図1(a)の黒色曲線は加熱設計条件であり、実際の発電所は
図1(a)の赤色のように設計条件より下の方で運転される。従って、運転中の発電所の疲労評価を設計条件にしたがって行う場合、実際の運転条件に比べて保守的に評価され、これは疲労寿命を短縮させる結果をもたらす。
【0003】
本発明と関連した韓国登録特許公報第10−1083121号(特許文献1)には、これを改善するために「特性疲労使用係数曲線を用いた過度状態基盤の疲労使用係数の算出装置及びその方法」が提案された。上記文献に提案された方法は
図1(a)の実際運転条件において
図1(b)のように1回の応力強度サイクルのみが発生するものと仮定しているが、実際には
図1(c)のように2回または運転条件によってそれ以上の応力強度サイクルが発生し得る。従って、上記文献による方法は疲労影響が過小評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10−1083121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、応力強度補正係数(α、β)に基づいて実際の運転条件に対する応力強度サイクル発生回数の計数化方法を一般化し、各運転条件による疲労使用係数を正確に計算できるようにすることである。
【0006】
本発明が解決しようとするもう一つの課題は、応力強度補正係数を用いて発生可能な運転条件に対する応力強度をデータベース化して速やかに疲労使用係数の計算ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決手段である応力強度補正係数(Correction Factor、α、β)を用いた疲労使用係数の計算方法についてみると、ステップ1は式(4)のように設計条件に対して求めた応力強度に実際の運転条件の特性に鑑みた応力強度補正係数を考慮して実際の運転条件に対する応力強度を計算する段階;
(4)
ステップ2は上記計算した応力強度において最も大きい範囲を示す過度状態条件を導出する段階;ステップ3は交番応力強度(Salt)を計算する段階;ステップ4は交番応力強度をASME Sec. IIIに与えられた特定材料に対する交番応力強度−許容サイクル線図に代入して、許容反復回数を計算する段階;ステップ5は実際運転サイクル数を許容サイクル数に割って、疲労使用係数を計算する段階を含む応力強度補正係数を用いた疲労使用係数の計算方法を提供することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は応力強度補正係数(α、β)を適用して実際の運転条件に対応する応力強度サイクル発生回数計数化方法を理想化して各運転条件による疲労使用係数を正確に計算できる有利な効果がある。
【0009】
本発明のもう一つの効果は応力強度補正係数を用いて発生可能な運転条件に対する応力強度をデータベース化すると、速やかに疲労使用係数の計算ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は設計加熱条件及び実際運転加熱条件とそれに該当する応力強度時間履歴を比較して図示したものである。
【
図2】
図2は設計及び実際運転時に発生可能な多様な加熱パターンを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための具体的内容について説明する。
【0012】
[疲労使用係数を計算する具体的方法]
図2は設計及び実際の運転条件において発生可能な多様な加熱形態を示したものである。ケース1は設計条件による加熱であり、ケース2は加熱−中間に特定温度維持−再加熱であり、ケース3は加熱−完全冷却−再加熱で行われる実際の運転条件である。
【0013】
設計条件の加熱/冷却率は100°F/hrであり、実際運転条件の加熱/冷却率は約50°F/hrである。
【0014】
図2において、加熱−温度維持−再加熱条件のケース2の場合、設計条件(Case1)と比較して追加応力サイクルが1回発生し、加熱−完全冷却−再加熱条件(Case3)の場合には、設計条件の上記ケース1(Case1)と比較して追加応力サイクルが2回発生する。
【0015】
従って、この時に追加的に発生する応力サイクルに対する影響は、設計条件(Case1)の疲労評価の結果と、運転条件(Case2,3)に対する疲労評価の結果を比較して導出した補正係数を用いて応力強度サイクル発生回数を一般化することができる。
【0016】
即ち、設計条件の疲労評価結果と運転条件に対する疲労評価結果の比較を通じて導出した補正係数を用いて応力強度サイクル発生回数を一般化する段階を含む。
【0017】
過度状態タイプによる応力強度補正係数(α)算出についてみよう。
【0018】
過度状態対応による応力強度補正係数(α)の算出のために任意の過度状態Aとの荷重の組合わせを仮定する。
図2の設計条件及び加熱−完全冷却−再加熱条件(Case3)の過度状態荷重の組合わせは表1のとおりである。表1は加熱条件における過度状態の組み合わせを示したものである。
【表1】
【0019】
過度状態タイプ2(Case3)が発生する場合、応力強度は過度状態タイプ1(Case1)とは異なる。従って、過度状態タイプ2に対する等価許容サイクル数は式(1)を用いて計算する。
【0020】
ここで、N1とN3は表1の各交番応力強度に対するサイクルをASME Sec.IIIに与えられた該材料に対する交番応力強度−許容サイクル線図に代入して求める。
(1)
このとき、等価
交番応力強度(S
eq)は式(1)を用いて求めた等価許容サイクル数(N
eq)をASME Sec.IIIに与えられた該材料に対する交番応力強度−許容サイクル線図に代入して求める。
【0021】
最終的に、過度状態タイプによる応力強度補正係数(α)は式(2)を用いて求める。
(2)
(α:過度状態タイプによる補正係数)
【0022】
次は、加熱/冷却率による応力強度補正係数(β)算出についてみよう。
【0023】
加熱/冷却率が変化すると応力強度も変わるため、各加熱/冷却率による応力強度補正係数(β)を求めて補正しなければならない。応力強度補正係数(β)は式(3)のように特定加熱/冷却率による応力強度と設計応力強度の比で求める。ここで特定の過熱/冷却率が設計条件における値比10%〜120%まで変わり得るとの仮定の下で求めることができる。
(3)
【0024】
S
Actualは実際運転過度状態に対する応力強度であり、S
Designは設計過度状態に対する応力強度を示したものである。
【0025】
次は、応力強度補正係数を用いた疲労使用係数の計算方法をみよう。
【0026】
本発明で提案する応力強度補正係数は、下記のように疲労使用係数の計算に用いられる。
【0027】
ステップ1:設計運転条件を考慮して式(4)を用いて応力強度を計算する段階である。
(4)
【数1】
【0028】
ステップ2:上記計算した応力強度で最も大きい範囲を示す過度状態条件を導出する段階である。
【0029】
ステップ3:交番応力強度(S
alt)を計算する段階である。
【0030】
ステップ4:交番応力強度をASME Sec.IIIに与えられた該材料に対する交番応力強度−許容サイクル線図に代入して許容サイクル数を計算する段階である。
【0031】
ステップ5:実際の運転回数を許容サイクル数に割って、疲労使用係数を計算する段階である。
【0032】
[疲労使用係数を計算する具体的装置]
上述の疲労使用係数を計算する方法は、適切なコンピュータ装置において適切なコンピュータプログラムを実行することにより、実施される。ここでの「適切なコンピュータプログラム」は、前記前記疲労使用係数を計算する方法をコンピュータ装置上で実行するためのプログラムである。
【0033】
前述のコンピュータ装置は、一般的なものであり、制御部(プロセッサ)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部を備える。制御部(プロセッサ)は、演算処理及びシステム全体の制御を行う。制御部は、CPU、MPU等のプロセッサを含み、所定のプログラムを実行することにより、所定のプログラムに対応する所定の機能を実現する。入力部は、コンピュータ装置に対する入力データを生成する若しくは受け取る部位であり、通常、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成される。表示部は、プロセッサ(制御部)による処理結果(例えば、計算された疲労使用係数)等を表示する部位であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等により構成される。記憶部は、制御部(プロセッサ)で稼働するプログラムや様々なパラメータデータ(例えば、ASEM Sec.IIIに与えられた特定材料に対する交番応力強度−許容サイクル線図に関するデータ)等を記憶している。外部機器インタフェース部は、プリンタ等の外部機器とのインタフェースとして動作する部位である。通信インタフェース部は、外部ネットワークと通信するためのインタフェースとして動作する部位である。これらのプロセッサ(制御部)、入力部、表示部、記憶部、外部機器インタフェース部、及び通信インタフェース部は、適切なバスにより相互に接続されている。コンピュータ装置は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、ワークステーション、又はタブレット端末のような情報処理装置で構成される。更に、コンピュータ装置は、様々なパラメータやデータ(例えば、応力強度)の記憶部としてのデータベースを備えてもよい。
【0034】
本開示に係るコンピュータプログラムは、上述の疲労使用係数を生産する方法をプログラムコードにより表したものであり、コンピュータ装置に係るハードウエア資源を利用して実行されることにより、上述の疲労使用係数を計算することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は発電所過熱及び冷却運転過度事件疲労評価において、設計運転条件に対して求めた応力強度値に応力強度補正係数を乗じて、実際の運転条件において求められる応強度値として補正する方法を疲労使用係数の計算に提供し、より正確な発電所加熱及び冷却運転過度事件の疲労評価ができるため、産業上利用可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0036】
UF(usage factor); 疲労使用係数
N; 許容可能なサイクルの数
N
eq; 均等な許容可能なサイクルの数
n; 応力サイクルの数
S; 応力強度
S
Actual; 実際運転過度状態に対する応力強度
S
Design; 設計過度状態に対する応力強度
S
alt; 交番応力強度
S
eq; 等価
交番応力強度
α; 過度パターンに対する応力補正係数
β; 加熱/冷却比に対する応力補正係数
S
1、S
A、S
3; 与えられた過度状態に対する応力強度